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炭水化物制限で糖尿病患者のβ細胞機能が改善

 2型糖尿病患者を対象に、炭水化物制限食と高炭水化物食で介入した結果、前者において膵β細胞機能が改善したとする論文が、「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」に10月22日掲載された。米アラバマ大学バーミンガム校のBarbara A. Gower氏らが行った、12週間にわたるランダム化比較試験の結果として報告された。 この研究は、エネルギー量が等しい炭水化物制限(carbohydrate-restricted;CR〔炭水化物由来のエネルギーが約9%、脂質由来が約65%〕)食と、高炭水化物(higher carbohydrate;HC〔炭水化物由来が約55%、脂質由来が約20%〕)食が、2型糖尿病患者のβ細胞機能に与える影響を比較するために実施された。対象は、糖尿病診断からの経過が10年以内でHbA1cが8%以下のインスリン療法を行っていない、アフリカ系米国人(African American;AA)および欧州系米国人(European American;EA)の成人2型糖尿病患者57人。なお、AAは人種的にβ細胞の脆弱性がEAより高いと考えられている。 介入前後のデータが欠落しておらず解析対象とされたのは51人(CR群25人、HC群26人)だった。ベースライン時において、年齢、性別の分布、BMI、HbA1c、およびβ細胞機能(disposition index;DI)に有意差はなかった。HbA1cは、CR群が6.9±0.72%、HC群が6.7±0.47%であり、糖代謝異常の程度は比較的軽度の患者群だった。 血糖降下薬は介入前に中止され、介入中に3日連続で空腹時血糖が200mg/dLを超えた場合には投薬が再開された。食事は全てを支給し、宅配サービスによって参加者の自宅に届けられた。ベースライン時点と介入12週間後に、75g経口ブドウ糖負荷試験およびアルギニンを用いたグルコースクランプ法にて、糖代謝と膵β細胞機能を評価した。 12週後、急性C-ペプチド反応(アルギニン投与開始30分以内の上昇)は、CR群ではHC群に比べて約2倍に増加し有意な群間差が認められたが、人種別に見た場合、EAでは有意差がなかった。最大C-ペプチド反応はCR群では22%有意に増加し、HC群との間に有意差が認められたが、人種別に見た場合、AAでは有意差がなかった。DIはCR群では32%有意に上昇したが、これを人種別に見た場合、EAでは有意差がなかった。 著者らは、「われわれの研究は、エネルギー量が等しいCR食が、HC食に比べて急性および最大C-ペプチド反応の双方を含む、β細胞機能の指標に有益な影響をもたらすことを示唆しており、臨床的に重要な結果と言える。CRの継続が困難な患者が存在する可能性がある点は否めないが、CR食によって、軽度の2型糖尿病患者は投薬を中止し食事を楽しみながら、β細胞機能を改善できるのではないか」と総括している。なお、AAとEAで反応に差が見られた点について、「この反応の差の一部は人種固有のβ細胞機能の違いに起因するものと考えられる」と説明している。

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渡米7年目でも、Podcastで毎日英語の勉強【臨床留学通信 from Boston】第7回

渡米7年目でも、Podcastで毎日英語の勉強米国に7年もいれば英語は不自由なく話せると思われるかもしれませんが、実際はそうではありません。確かに臨床留学は研究留学に比べて英語を使う機会が格段に多く、話せないと話になりません。渡米してかなり苦労したのは事実ですが、医師になった後に、英語のシャワーを浴びるように英語漬けの環境に身を置けたのは良い経験でした。英語のレベルは、日本にいるだけでは到達はできなかったであろうところまで来たと思います。仕事をするうえでは、あらかじめ会話の内容を予想できることが多いためとくに問題はありません。ただ、日常会話では同僚が何を言っているのかよくわからないと感じることも時折あります。自宅では子供たちの教育上日本語をメインにしており、米国のニュースは一切流しません。病院でも疲れると「英語デトックス」と称して人があまりいないところで休憩することもあり、同僚と会話を楽しむことも少なかったので、正直なところ、自分の英語レベルは周りと比べてそれほど高くないと感じています。以前こちらの連載で、渡米前は英語の勉強を2~3時間を確保していたとお伝えしました。しかし、実践しようとしても、なかなか日常業務が忙しくて難しいかもしれません。私が最近やっていることは、主に車の通勤時間に、Podcastを活用し、循環器の最新知識を英語で学ぶことで、一石二鳥の時間活用を目指しています。私がとくにおすすめするPodcastは以下のとおりです。【循環器誌】JACC:former editor in chiefのValentin Fuster氏が、毎週すべてのoriginal articleやreviewを解説。ただしスペイン語なまりで、話すスピードは遅めです。1.5倍速で聴くのが良いです。AHAなどの学会に合わせて、著者と他のゲストスピーカーが会話するセッションもあります。網羅的に循環器の最近の流れを把握できます。Circulation on the Run:こちらもeditorたちが毎週いくつか簡単に論文内容を説明し、そのうちの1つの著者とディスカッションするもの。ESC TV today:欧州心臓病学会のPodcast。ホストの先生はアイルランドの方なので英語にややなまりあり。最初にいくつか最近掲載された論文を紹介し、トピックに沿ってディスカッションしています。2週間に1度の配信。JAMA Cardiology:こちらも著者との会話です。月に1度かそれ以下の更新なのが難点。【医学誌】NEJM:NEJM this weekという内容の紹介と、NEJM interviewsの2つが毎週あります。同様に、JAMAもclinical reviewとauthor interviewsがあります。【ACC関連】Eagle’s Eye ViewとACCEL LiteというPodcastが、英語がきれいで内容も最新のものがまとまっています。双方、1回分が10分以下で比較的短いので、いくつかまとめて聴きます。Medscape This Week in Cardiology:John Mandrola氏が、歯に衣着せぬ論調で最新の論文を紹介。英語もきれいです。CardioNerds:これは臨床留学を志す人必聴。米国の有名大学病院のcardiology fellowたちがほぼ毎週の頻度で40~50分ほど症例についてディスカッションし、supervisorがその病態の概説もするというもの。症例提示の仕方は参考になります。【一般的なニュース】 大統領選の前後はPBS News Hourを聴いていました。慣れたら1.5倍で聴き、(運転時は十分注意して)可能な限りシャドーイングをしてみてはいかがでしょうか。電車の時は聴くのに集中し、歩いている時は周りに人がいなければそこでシャドーイングするのが良いでしょう。聴くだけよりは口を動かしたほうが効果は高いと思います。なお科学的なテーマでは、Moment of Scienceがロングランでやっていて、transcriptもあるので、一つひとつの細かい単語を聴く癖を付けるのに効果的でした。科学的なテーマはTOEFL受験などでも必要だったため、このMoment of Scienceを聴いていました。1~2分と短いため、細かい単語の聴き取りや、ディクテーションにも良い教材になります。

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診療科別2024年下半期注目論文5選(消化器内科編)

Histological improvements following energy restriction and exercise: The role of insulin resistance in resolution of MASHMucinski JM, et al. J Hepatol. 2024;81:781-793.<MASHにおけるカロリー制限・運動療法の有用性>:肝臓、体組成、心肺フィットネスが大幅に改善代謝機能障害関連脂肪性肝炎(MASH)患者に対しカロリー制限、運動療法を同時に行うことにより肝臓、体組成、心肺フィットネスが大幅に改善することを証明しました。同治療によるMASH肝組織改善が、肝臓ではなく筋肉のインスリン感受性と関連していたことがとても興味深いです。Long-term liver-related outcomes and liver stiffness progression of statin usage in steatotic liver diseaseZhou XD, et al. Gut. 2024;73:1883-1892.<MASLDにおけるスタチンの有用性>:全死因死亡・肝関連有害事象発生を有意に低下国際共同研究で7,988例の代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)患者を平均4.6年観察。スタチンの使用は全死因死亡を76.7%、肝関連有害事象発生を62%低下させました。またスタチン使用は、フィブロスキャンで測定した肝硬度の進行も軽減させました。Alternating gemcitabine plus nab-paclitaxel and gemcitabine alone versus continuous gemcitabine plus nab-paclitaxel after induction treatment of metastatic pancreatic cancer (ALPACA): a multicentre, randomised, open-label, phase 2 trialDorman K, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2024;9:935-943.<ALPACA試験>:転移膵がんにおけるGEM+NabPTX減量療法の有用性と忍容性進行膵がんにおいてGEM+NabPTX療法は有害事象のため忍容性が問題となっていました。今回、 GEM+NabPTX を3サイクル実施後、 GEM+NabPTXとGEM単独投与を交互に行う減量レジメンが、従来の治療と同等の全生存期間と、より良好な忍容性を示すことが報告されました。[177Lu]Lu-DOTA-TATE plus long-acting octreotide versus high-dose long-acting octreotide for the treatment of newly diagnosed, advanced grade 2-3, well-differentiated, gastroenteropancreatic neuroendocrine tumours (NETTER-2): an open-label, randomised, phase 3 studySingh S, et al. Lancet. 2024;403:2807-2817.<NETTER-2試験>:進行NENに対する1次治療としてPRRTが有用これまで神経内分泌腫瘍(NEN)に対するPRRTは2次治療以降のレイトラインでの導入が推奨されてきましたが、本研究によりGrade2、3の高分化型NENにおいて1次治療でのPRRT早期導入の有用性が報告されました。Risk of colorectal neoplasia after removal of conventional adenomas and serrated polyps: a comprehensive evaluation of risk factors and surveillance use Polychronidis G, et al. Gut. 2024;73:1675-1683.<大腸がん・ポリープの再発予防>:高リスクの大腸ポリープは3年以内のサーベイランス大腸内視鏡が有益advanced adenomaのサーベイランスの最適な間隔は明らかではありませんでしたが、今回の報告では高リスクポリープが見つかった患者は、その後の大腸がんおよび高リスクポリープのリスクが高いため、3年以内の早期監視が有用である可能性が示されました。

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診療科別2024年下半期注目論文5選(呼吸器内科編)

Respiratory syncytial virus (RSV) vaccine effectiveness against RSV-associated hospitalisations and emergency department encounters among adults aged 60 years and older in the USA, October, 2023, to March, 2024: a test-negative design analysisPayne AB, et al. Lancet. 2024;404:1547-1559.<リアルワールドにおけるRSウイルスワクチンの有効性>:RSウイルスワクチンはRSウイルス関連の入院および救急外来受診を予防Test Negativeデザインにより、RSウイルスワクチンの60歳以上の成人におけるリアルワールドでの有効性を評価した初めての研究です。本研究により、リアルワールドにおいても、RSウイルス関連の入院や救急外来受診に対するワクチン予防効果が示されました。Cathepsin C (dipeptidyl peptidase 1) inhibition in adults with bronchiectasis: AIRLEAF®, a Phase II randomised, double-blind, placebo-controlled, dose-finding studyChalmers JD, et al. Eur Respir J. 2024:2401551.<AIRLEAF®試験>:気管支拡張症に対するカテプシンC阻害薬投与は最初の増悪までの時間を減少気管支拡張症の成人を対象に、カテプシンC阻害薬BI 1291583の有効性、安全性、および最適用量を評価した第II相無作為化比較試験です。BI 1291583は、最初の増悪までの時間に基づいて用量依存的にプラセボよりも有意な効果を示しました。今後、この薬剤の第III相試験(AIRTIVITY®)も予定されています。Neoadjuvant pembrolizumab plus chemotherapy followed by adjuvant pembrolizumab compared with neoadjuvant chemotherapy alone in patients with early-stage non-small-cell lung cancer (KEYNOTE-671): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trialSpicer JD, et al. Lancet. 2024;404:1240-1252.<KEYNOTE-671試験>:NSCLCへの周術期ペムブロリズマブ上乗せでOS改善:KN-671長期成績切除可能な早期非小細胞肺がん患者において、周術期のペムブロリズマブ+化学療法は、プラセボ+化学療法と比較して36ヵ月全生存率(71% vs.64%)および無イベント生存期間中央値(47.2ヵ月 vs.18.3ヵ月)を有意に改善しました。Durvalumab after Chemoradiotherapy in Limited-Stage Small-Cell Lung CancerCheng Y, et al. N Engl J Med. 2024;391:1313-1327.<ADRIATIC試験>:限局型小細胞肺がん、デュルバルマブ地固め療法でOS・PFS改善Efficacy and safety of tezepelumab versus placebo in adults with moderate to very severe chronic obstructive pulmonary disease (COURSE): a randomised, placebo-controlled, phase 2a trialSingh D, et al. Lancet Respir Med. 2024 Dec 6. [Epub ahead of print]<COURSE試験>:トリプル吸入療法使用中のCOPD患者を対象としたtezepelumab投与は増悪を改善せずトリプル吸入療法使用中の中等症から最重症COPD患者を対象としたtezepelumabの第IIa相試験の結果が報告されました。主要評価項目である年間中等度/重度増悪率において、プラセボ群との有意差は認められませんでしたが、好酸球数150cells/μL以上のサブグループでは増悪抑制効果がある可能性が示唆されました。

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第248回 GLP-1薬とてんかん発作を生じにくくなることが関連

GLP-1薬とてんかん発作を生じにくくなることが関連セマグルチドなどのGLP-1受容体作動薬(GLP-1 RA)とてんかん発作を生じにくくなることの関連が新たなメタ解析で示されました1)。たいてい60~65歳過ぎに発症する晩発性てんかん(late-onset epilepsy)を生じやすいことと糖尿病やその他いくつかのリスク要因との関連が、米国の4地域から募った45~64歳の中高年の長期観察試験で示されています2)。近年になって使われるようになったGLP-1 RA、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬を含む新しい血糖降下薬は多才で、糖尿病の治療効果に加えて神経保護や抗炎症作用も担うようです。たとえば血糖降下薬とパーキンソン病を生じ難くなることの関連が無作為化試験のメタ解析で示されており3)、血糖降下薬には神経変性を食い止める効果があるのかもしれません。米国FDAの有害事象データベースの解析では、血糖降下薬と多発性硬化症が生じ難くなることが関連しており4)、神経炎症を防ぐ作用も示唆されています。晩発性てんかんは神経変性と血管損傷の複合で生じると考えられています。ゆえに、神経変性を食い止めうるらしい血糖降下薬は発作やてんかんの発生に影響を及ぼしそうです。そこでインドのKasturba Medical CollegeのUdeept Sindhu氏らはこれまでの無作為化試験一揃いをメタ解析し、近ごろの血糖降下薬に発作やてんかんを防ぐ効果があるかどうかを調べました。GLP-1 RA、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬の27の無作為化試験に参加した成人20万例弱(19万7,910例)の記録が解析されました。血糖降下薬に割り振られた患者は半数強の10万2,939例で、残り半数弱(9万4,971例)はプラセボ投与群でした。有害事象として報告された発作やてんかんの発生率を比較したところ、血糖降下薬全体はプラセボに比べて24%低くて済んでいました。血糖降下薬の種類別で解析したところ、GLP-1 RAのみ有益で、GLP-1 RAは発作やてんかんの発生率がプラセボに比べて33%低いことが示されました(相対リスク:0.67、95%信頼区間:0.46~0.98、p=0.034)。発作とてんかんを区別して解析したところ、GLP-1 RAと発作の発生率の有意な低下は維持されました。しかし、てんかん発生率の比較では残念ながらGLP-1 RAとプラセボの差は有意ではありませんでした。試験の平均追跡期間は2.5年ほど(29.2ヵ月)であり、てんかんの比較で差がつかなかったことには試験期間が比較的短かったことが関与しているかもしれません。また、試験で報告されたてんかんがInternational League Against Epilepsy(ILAE)の基準に合致するかどうかも不明で、そのことも有意差に至らなかった理由の一端かもしれません。そのような不備はあったもの、新しい血糖降下薬が発作やてんかんを防ぎうることを今回の結果は示唆しており、さまざまな手法やより多様で大人数のデータベースを使ってのさらなる検討を促すだろうと著者は言っています1)。とくに、脳卒中患者などのてんかんが生じる恐れが大きい高齢者集団での検討を後押しするでしょう。参考1)Sindhu U, et al. Epilepsia Open. 2024;9:2528-2536.2)Johnson EL, et al. JAMA Neurol. 2018;75:1375-1382.3)Tang H, et al. Mov Disord Clin Pract. 2023;10:1659-1665.4)Shirani A, et al. Ther Adv Neurol Disord. 2024;17:17562864241276848.

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Ca拮抗薬・NSAID・テオフィリンと逆流性食道炎リスク/国立国際医療研究センター

 逆流性食道炎の有病率と薬剤などの危険因子について調査した結果、カルシウム拮抗薬、テオフィリン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の使用が逆流性食道炎の独立した予測因子であることが示唆された。国立国際医療研究センターの植田 錬氏らが、BMJ Open Gastroenterology誌2024年12月16日号で報告した。 この後ろ向き横断研究は、2015年10月~2021年12月に国立国際医療研究センターで食道・胃・十二指腸内視鏡検査を受けた患者を対象とし、質問票を用いて患者の特徴、病歴、喫煙・飲酒歴、内視鏡検査時に服用していた薬剤に関するデータを収集した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者1万3,993例中、逆流性食道炎の有病率は11.8%であった。・多変量ロジスティック回帰分析により、以下の因子が逆流性食道炎の独立した予測因子であることが示された。それぞれのオッズ比(95%信頼区間)は以下のとおり。- 男性:1.52(1.35〜1.72)、p<0.001- 肥満(BMI≧25):1.57(1.40〜1.77)、p<0.001- 喫煙:1.19(1. 02~1.38)、p=0.026- 飲酒:1.20(1.07~1.35)、p=0.002- 糖尿病:1.19(1.02~1.39)、p=0.029- 食道裂孔ヘルニア:3.10(2.78~3.46)、p<0.001- 重症萎縮性胃炎なし:2.14(1.77~2.58)、p<0.001- カルシウム拮抗薬の使用:1.22(1.06~1.40)、p=0.007- テオフィリンの使用:2.13(1.27~3.56)、p=0.004- NSAIDの使用:1.29(1.03~1.61)、p=0.026

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無症候性アテローム性動脈硬化症の負担は全死亡と関連

 無症候性アテローム性動脈硬化症では、頸動脈プラークの負荷(carotid plaque burden;cPB)と冠動脈石灰化(coronary artery calcium;CAC)が全死亡と有意に関連していることを明らかにした研究結果が、カルロス3世国立心血管研究センター(スペイン)のValentin Fuster氏らにより、「Journal of the American College of Cardiology」10月8日号に発表された。 アテローム性動脈硬化症は進行性のプロセスであるが、無症候性の段階でも、頸動脈での動脈硬化の程度や進行を定量化することで全死亡リスクを予測できるのかどうかについては、エビデンスがほとんどない。 BioImage研究は、リスクのある無症候性の成人におけるアテローム性動脈硬化症の負荷の評価を目的にした大規模研究で、2008年から2009年に無症候性の米国成人7,687人を登録して開始された。参加者は、頸動脈の超音波検査とCT検査によるCACスコアリングが実施されており、今回は、必要なデータのそろった5,716人(平均年齢68.9歳、女性56.7%)を解析対象とした。このうち732人は、中央値で8.9年後に再び頸動脈の超音波検査を受け、cPBの進行を評価されていた。参加者は、2021年10月まで全死亡について追跡された。 中央値12.4年の追跡期間中に901人(16%)が死亡していた。ベースラインのcPBとCACスコアを三分位数で3群に分類し、全死亡との関連をCox比例ハザード回帰分析により評価した。その結果、cPBとCACスコアはいずれも、年齢、性別、人種、心血管リスク因子、使用している薬剤で調整後も、全死亡と有意な関連を示し、三分位群のカテゴリーが1つ上がるごとのハザード比(HR)は、それぞれcPBで1.23(95%信頼区間〔CI〕1.16〜1.32、P<0.001)、CACスコアで1.15(同1.08〜1.23、P<0.001)であった。cPBとCACスコアをモデルに追加することで、全死亡リスクの予測精度は有意に向上した。向上の程度はcPBを追加する方が高かったことから、リスクの評価においてcPBはCACスコアよりも重要な指標であることが示唆された。 次に、頸動脈の超音波検査の再検査を受けた732人の参加者を対象に、cPBの進行と全死亡との関連をCox比例ハザード回帰分析により評価した。参加者を、ベースラインと追跡調査時のcPBの変化により、「進行なし(いずれの検査でもcPB=0)」「後退(cPBが減少)」「進行(cPBが増加)」に分類したところ、571人(78.0%)が「進行」、63人(8.3%)が「後退」、98人(13.4%)が「進行なし」に該当した。cPBの進行は、上述の因子の調整後も全死亡と有意な関連を示した(cPBが10mm3増加するごとのHR 1.03、95%CI 1.01〜1.04、P=0.01)。 著者らは、「アテローム性動脈硬化症の無症状期間の長さは、現時点では十分に活用されていないが、早期介入や予防策を講じる良い機会となり得る」と述べている。

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急性呼吸不全、高流量経鼻酸素vs.非侵襲的人工換気/JAMA

 急性呼吸不全患者への呼吸支持療法として、高流量経鼻酸素療法(HFNO)は非侵襲的人工換気(NIV)に対して非劣性なのか。ブラジル・Hcor Research InstituteのAlexandre Biasi CavalcantiらRENOVATE Investigators and the BRICNet Authorsは、急性呼吸不全患者を原因で5群に層別化して、無作為化非劣性検証試験「RENOVATE試験」を行い、4群(免疫不全の低酸素血症、呼吸性アシドーシスを来したCOPD増悪、急性心原性肺水腫[ACPE]、低酸素血症を伴うCOVID-19)について非劣性が示されたことを報告した。ただし、サンプルサイズや感度分析の観点から結果は限定的であるとしている。急性呼吸不全患者の呼吸支持療法として、HFNOとNIVはいずれも一般的に用いられている。JAMA誌オンライン版2024年12月10日号掲載の報告。ブラジルの33病院で実施、5群で7日以内の気管内挿管または死亡を評価 試験は2019年11月~2023年11月にブラジルの33病院で行われ、急性呼吸不全を呈し入院した18歳以上の患者を5群に層別化し、7日時点の気管内挿管または死亡の発生率について、HFNOのNIVに対する非劣性を検証した。5群の内訳は、(1)非免疫不全の低酸素血症群、(2)免疫不全の低酸素血症群、(3)呼吸性アシドーシスを来したCOPD増悪群、(4)ACPE群、(5)低酸素血症を伴うCOVID-19群(2023年6月26日に試験プロトコールに追加)であった。最終フォローアップは2024年4月26日。 主要アウトカムは、7日以内の気管内挿管または死亡で、患者群間の動的利用(dynamic borrowing)法を用いた階層ベイズモデルで評価した。非劣性は、オッズ比(OR)が1.55未満となる事後確率(NPP)が0.992以上と定義された。低酸素血症を伴うCOVID-19群でHFNOの非劣性を検証 1,800例が登録・無作為化され、1,766例(平均年齢64[SD 17]歳、女性707例[40%])が試験を完了した(HFNO群883例、NIV群883例)。 主要アウトカムの発生率は、HFNO群39%(344/883例)、NIV群38%(336/883例)であった。 非免疫不全の低酸素血症群では、主要アウトカムの発生率はHFNO群57.1%(16/28例)、NIV群36.4%(8/22例)であった。同患者の登録は無益性により途中で中止され、最終ORは1.07(95%信用区間[CrI]:0.81~1.39)、非劣性のNPPは0.989であった。 免疫不全の低酸素血症群では、主要アウトカムの発生率はHFNO群32.5%(81/249例)、NIV群33.1%(78/236例)であった(OR:1.02[95%CrI:0.81~1.26]、NPP:0.999)。 ACPE群では、主要アウトカムの発生率はHFNO群10.3%(14/136例)、NIV群21.3%(29/136例)であった(OR:0.97[95%CrI:0.73~1.23]、NPP:0.997)。 低酸素血症を伴うCOVID-19群では、主要アウトカムの発生率はHFNO群51.3%(223/435例)、NIV群47.0%(210/447例)であった(OR:1.13[95%CrI:0.94~1.38]、NPP:0.997)。 呼吸性アシドーシスを来したCOPD増悪群では、主要アウトカムの発生率はHFNO群28.6%(10/35例)、NIV群26.2%(11/42例)であった(OR:1.05[95%CrI:0.79~1.36]、NPP:0.992)。 しかしながら、5群にわたる動的利用法を用いない事後解析では、呼吸性アシドーシスを来したCOPD増悪群、免疫不全の低酸素血症群、ACPE群でいくつかの質的に異なる結果が示された。著者は、「これら患者群についてはさらなる試験が必要」としている。 重篤な有害事象の発現率は、HFNO群(9.4%)とNIV群(9.9%)で同程度であった。

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多発血管炎性肉芽腫症〔GPA:granulomatosis with polyangiitis〕

1 疾患概要■ 概念多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA)は抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)の主要疾患の1つで、血清中に出現するANCAと小型血管(臓器内動静脈、細動静脈、毛細血管)の肉芽腫性炎を特徴とする。罹患血管には免疫複合体の沈着はほとんどみられない(pauci-immune)。■ 疫学GPAは国が定める指定難病で、2022年度末の指定難病受給者証所持者数は3,437人であり、登録患者数は徐々に増加している。世界的には100万人当たり96.8人の患者数が報告されている。GPAは、日本を含むアジアよりも欧州、とくに緯度が高い地域で多くみられる傾向がある。■ 病因GPAは他の自己免疫性リウマチ性疾患と同様に、遺伝的要因と環境要因が相まって発症すると考えられている。ヨーロッパおよび北米におけるヨーロッパ系集団を対象としたゲノムワイド関連解析では、HLA-DPA1、DPB1遺伝子領域との関連が報告されており、臨床分類よりもPR3-ANCAとの関連がより強くみられる。日本人集団においてもDPB1*04:01の増加傾向が認められている。非HLA領域では、SERPINA1、PRTN3がヨーロッパ系集団で、ETS1の発現低下に関連する単塩基バリアントが日本人集団で関連することが報告されている。■ 症状GPAは発熱・倦怠感、体重減少、筋痛、関節痛などの全身症状と多彩な臓器症状を呈する疾患である。臓器病変は、眼(34~61%)、耳・鼻・咽喉頭(83~99%)、肺(66~85%)、心臓(8~25%)、消化管(6~13%)、腎臓(66~77%)、皮膚(33~46%)、中枢神経(8~11%)、末梢神経(15~40%)に出現する。眼病変、上・下気道病変、腎病変がとくに重要である。眼病変として、結膜炎、上強膜炎、強膜炎、眼球突出、鼻病変として鼻閉・膿性鼻汁・鼻出血、鼻粘膜の痂疲・潰瘍、鞍鼻、耳病変として滲出性または肉芽腫性中耳炎、咽喉頭病変として口腔内潰瘍、声門下狭窄による嗄声・呼吸困難がみられる。肺では肺肉芽腫性結節、肺胞出血、間質性肺炎がみられ、咳・息切れ・喀血などを呈する。腎では壊死性半月体形成性糸球体腎炎が典型的であり、しばしば急速進行性糸球体腎炎として発症する。■ 予後国内の前向きコホート研究では、治療開始後6ヵ月までの死亡率は1.9%で、治療開始後6ヵ月までに末期腎不全に至ったのは3.7%あった。中長期的には、治療に関連した副作用・合併症が問題となる。欧州における検討では、AAV患者を平均7.3年追跡すると65.6%の患者で治療に関連した副作用・合併症(高血圧、骨粗鬆症、糖尿病、心血管イベント、白内障など)がみられ、グルココルチコイドの早期減量・中止が重要と考えられる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)国内における診断には指定難病の診断基準が広く用いられている。国際的には、米国リウマチ学会と欧州リウマチ学会が共同で開発した分類基準(表1)を参考に診断することが多い。疾患特異的自己抗体として抗プロテイナーゼ3(抗PR3)抗体(PR3-ANCA)が知られている。活動期にはCRPが陽性となることが多い。GPAでみられる臓器病変を想定した問診と身体診察に血液検査と画像検査を組み合わせて診断および罹患臓器を検索し、活動性を評価する。表1 GPAの分類基準分類基準を使用する前に以下を考慮する。小・中型血管炎と診断された患者を多発血管炎性肉芽腫症に分類するために、本分類基準を適用すべきである。本分類基準を適用する前に、血管炎類似疾患の除外をすべきである。画像を拡大する10項目の中から該当項目のスコアを合計し、5点以上であれば多発血管炎性肉芽腫症に分類する。(難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究班.多発血管炎性肉芽腫症の分類基準[2024年9月20日アクセス]より引用)3 治療 (治験中・研究中のものも含む)ANCA関連血管炎の中でGPAと顕微鏡的多発血管炎(MPA)の標準治療は同一であり、難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究班が作成した診療ガイドラインに示されている。標準治療は、寛解導入治療と寛解維持治療で構成される。さらに、長期予後を改善するために、合併症リスクを最小限に抑える必要がある。寛解導入治療ではリツキシマブまたはシクロホスファミドのいずれかを、グルココルチコイドまたはアバコパン(商品名:タブネオス)またはその両者と併用する。リツキシマブはキメラ型抗CD20抗体で、375mg/体表面積1m2を週に1回、4週連続で投与する。シクロホスファミドは15mg/kgを0、2、4、7、10、13週に点滴静注で投与するパターンが標準だが、投与量は年齢と血清クレアチニン濃度で調整し(表2)、投与回数と投与間隔は原疾患の重症度と安全性のバランスで調整する。シクロホスファミドは経口投与(1~2mg/kg/日)も可能だが、副作用の観点から点滴静注が望ましい。表2 年齢および腎機能によるシクロホスファミド投与量の調節画像を拡大する(Ntatsaki E, et al. Rheumatology. 2014;53:2306-2309.より引用)アバコパンは経口の補体C5受容体阻害薬で、1回30mgを1日2回朝・夕に内服する。アバコパンは原則的にグルココルチコイドと併用する。アバコパンは腎機能改善に有用である可能性が示されている。アバコパンの副作用として重症肝機能障害(胆道消失症候群を含む)が報告されているので、血管炎の治療に精通した施設での使用が望ましい。標準的な寛解導入療法で使用するグルココルチコイドの投与量は2つの臨床試験結果から、以前よりも大幅に減量された(表3)。表3 寛解導入治療におけるグルココルチコイド減療法画像を拡大する(Walsh M, et al. N Engl J Med. 2020;382:622-631.およびFuruta S, et al. JAMA. 2021;325:2178-2187.より引用)血清クレアチニン濃度が5.7mg/dLを超える最重症の腎障害を伴うGPAでは、グルココルチコイドとシクロホスファミドに血漿交換が併用される場合がある。MPAおよびGPAに対する血漿交換のメタ解析から、欧州リウマチ学会の推奨では血清クレアチニン濃度が3.4mg/dLを超える腎障害で血漿交換を考慮する場合があるとされている。リツキシマブにより寛解導入した場合には、治療開始後6ヵ月から寛解維持治療に移行し、シクロホスファミド点滴静注の場合には、最終投与後3~4週間で寛解維持治療に移行する。寛解維持治療はリツキシマブまたはアザチオプリンを用いる。寛解維持療法におけるリツキシマブ投与方法は、375mg/体表面積1m2を6ヵ月ごと、500mg/回を6ヵ月ごと、1,000mg/回を4ヵ月または6ヵ月ごとなどがある。アザチオプリンは1~2mg/kg/日を使用し、開始前にNUDT15遺伝子多型検査を実施する。寛解維持治療における有効性はアザチオプリンよりもリツキシマブが有意に優れている。GPAはMPAよりも再発しやすい。寛解維持治療中は症状および検査をモニタリングし、早期に再発の兆候を把握する。腎病変は症状なく再発することがあるため、尿検査を定期的に実施する。寛解維持治療期間は、リツキシマブでは1年6ヵ月よりも4年、アザチオプリンでは1年よりも2年6ヵ月以上が有意に再発を防ぐことが示されている。個々の患者における寛解維持治療期間は、治療開始前の疾患活動性、治療経過、再発歴、合併症を参考に検討する。4 今後の展望GPAの分類基準が改訂され、診断に関する検討は一段落したと考えられる。治療に関する課題として、アバコパンを寛解導入に使用する際に適切なグルココルチコイドの使用方法、リツキシマブの寛解維持療法の標準化、アバコパンの安全性、新規の抗B細胞治療などが挙げられる。5 主たる診療科膠原病リウマチ内科、腎臓内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究(医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 多発血管炎性肉芽腫症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報全国膠原病友の会(患者とその家族および支援者の会)膠原病サポートネットワーク(患者とその家族および支援者の会)1)針谷正祥 責任編集. Evidence Base Medicineを活かす膠原病・リウマチ診療. メジカルビュー社.2020.2)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 針谷正祥ほか編集. ANCA関連血管炎診療ガイドライン2023. 診断と治療社.2023.3)Hellmich B, et al. Ann Rheum Dis. 20242;83:30-47.4)Ntatsaki E, et al. Rheumatology. 2014;53:2306-2309.5)Walsh M, et al. N Engl J Med. 2020;382:622-631.6)Furuta S, et al. JAMA. 2021;325:2178-2187.公開履歴初回2024年12月31日

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第247回 プラスチックの化学物質のたった1年間の影響で世界的に約60万例が死亡

プラスチックの化学物質のたった1年間の影響で世界的に約60万例が死亡世界の38ヵ国を調べたところ、プラスチックにたいてい含まれる3つの化学物質と関連する2015年のたった1年間の健康の害が1.5兆ドルの負担を強いました1,2)。言い換えると、それらの化学物質を使っていなければ1.5兆ドル分を浮かせられたことになります。メリーランド大学の経済学者Maureen Cropper氏らによる研究です。プラスチックは色付け、柔軟性、耐久性のために1万6,000を超える化学物質を使って製造されます。プラスチックから漏れ出した化学物質はそれらの普段使いによって多くの人に行き及んでいます。食品包装によく使われているプラスチック成分・ビスフェノールA(BPA)は内分泌を撹乱することで知られ、心血管疾患、糖尿病、生殖機能障害と関連します。食品加工、家庭用品、電気製品で使われるフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)は心血管が原因の死亡や発育不調との関連が知られます。繊維、家具、その他家庭用品に添加される難燃剤・ポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE)は神経に差し障るようであり、妊娠中にPBDEを被った母親の子は認知発達を損ないます。プラスチックに含まれる化学物質の中で最もよく調べられているそれら3つと関連する健康の害に的を絞り、できるだけ多くの国におけるそれらの害の蔓延を調べることをCropper氏らは目指しました。Cropper氏らは情報がそろっていて最も万全な検討ができた2015年のデータを使って、38ヵ国でのBPA、DEHP、PBDEの健康や経済への影響を推定しました。その結果、BPAは540万例の虚血性心疾患、35万例弱の脳卒中と関連し、43万例強の死亡を引き起こしていました。それら死亡の経済的損失は1兆ドル弱です。DEHPは55~64歳の中高齢者の16万例強の死亡と関連し、4千億ドル弱の経済的損失をもたらしました。PBDEは2015年生まれの子の知能指数(IQ)1,170万点の損失をもたらし、800億ドルを超える生産性損失と関連しました。それらを総ずると、38ヵ国でBPAとDEHPを排除していたら約60万例が死なずに済みました。また、PBDEも含めて3つとも排除していたら1.5兆ドルを捻出できたことになります。米国、カナダ、欧州連合(EU)加盟国はすでにBPA、DEHP、PBDEを減らす手立てを始めており、成果も示唆されています。たとえば米国では製造業界の規制や自主的な制限のかいがあって、BPAに起因する心血管死が2003年から2015年に60%減じています。そのような前向きな取り組みの一方で、プラスチックに使われている7割超の化学物質は毒性が検査されないままです。プラスチックの化学物質の害から健康を守るには化学物質を扱う法律を根本から変える必要があると著者は言っており2)、それら化学物質の健康への影響を減らす国際的な合意が国連条約(United Nations Global Plastics Treaty)に基づいて確立されることを望んでいます3)。参考1)Cropper M, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2024;121:e2412714121. 2)Health, Economic Costs of Exposure to 3 Chemicals in Plastic: $1.5T in a Year, Study Shows / University of Maryland3)These 3 plastic additives are lowering our IQ and killing us sooner, new study finds / MassLive.com

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タルラタマブ、既治療の小細胞肺がんでの承認根拠となったDeLLphi-301試験のアジア人データ/ESMO Asia2024

 腫瘍細胞上に発現するDLL3とT細胞上に発現するCD3に対する特異性を有するBiTE(二重特異性T細胞誘導)抗体タルラタマブ。既治療の小細胞肺がん(SCLC)患者を対象とした国際共同第II相試験「DeLLphi-301試験」において、タルラタマブ10mg投与例の奏効率は40%、無増悪生存期間(PFS)中央値は4.9ヵ月、全生存期間(OS)中央値は14.3ヵ月と良好な成績を示した1)。DeLLphi-301試験の結果に基づき、本邦では2024年12月27日に「がん化学療法後に増悪した小細胞肺癌」の適応でタルラタマブの製造販売承認を取得した。また、『肺癌診療ガイドライン2024年版』では、全身状態が良好(PS0~1)な再発SCLCの3次治療以降にタルラタマブを用いることを弱く推奨することが追加されている2)。欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia2024)において、DeLLphi-301試験のアジア人集団のpost-hoc解析結果を、赤松 弘朗氏(和歌山県立医科大学 内科学第三講座 准教授)が発表した。タルラタマブの投与方法と評価項目(DeLLphi-301試験) DeLLphi-301試験は3つのパートで構成された。対象は、プラチナダブレットを含む2ライン以上の治療歴を有するSCLC患者とした。パート1(用量探索パート)では176例を登録し、タルラタマブ10mg群(88例)と100mg群(88例)に1対1の割合で無作為に割り付け、投与した。パート2(用量拡大パート)では12例を登録し、パート1の結果に基づいてタルラタマブ10mgを投与した。パート3(reduced inpatient monitoringパート)では34例を登録し、タルラタマブ10mgを投与した。 投与方法は、割り付けられた治療群に基づき1日目にタルラタマブ1mgを投与し、8、15日目に10mgまたは100mgを投与、その後は2週ごとにタルラタマブ10mgまたは100mgを投与することとした。DeLLphi-301試験の評価項目は以下のとおりであった。[主要評価項目]ORR[副次評価項目]病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)、PFS、OS、安全性などタルラタマブ投与で最も多く認められた有害事象はCRS 今回はタルラタマブ10mgを投与されたアジア人集団43例(有効性の解析は41例)の結果が報告された。DeLLphi-301試験のアジア人集団のpost-hoc解析の主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は64.0歳(範囲:43~79)、男性の割合は81%であった。喫煙歴あり/なしの割合は84%/16%で、2ライン/3ライン以上の治療歴を有する割合は65%/35%であった。・ORRは46.3%(全体集団の10mg投与例:40.0%)、DCRは80.5%(同:70.0%)であった。また、DOR中央値は7.2ヵ月で、データカットオフ時点において奏効例の32%(6/19例)が1年以上治療を継続中であった。・PFS中央値は5.4ヵ月であり、6ヵ月PFS率は41.7%、12ヵ月PFS率は21.4%であった。・OS中央値は19.0ヵ月であり、12ヵ月OS率は67.4%、18ヵ月OS率は53.3%であった。・最も多く認められた有害事象は、サイトカイン放出症候群(CRS)で49%に発現したが、全例がGrade1/2であった。CRSのほとんどが1サイクル目に発現した。・免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)は、9.3%に発現したが、全例がGrade1/2であった。ICANSのほとんどが3ヵ月以内に発現した。・治療中止に至った有害事象は認められなかった。 本結果について、赤松氏は「既治療のSCLC患者に対するタルラタマブは、アジア人集団でも新たな安全性に関するシグナルは認められず、持続的な奏効と注目すべき生存成績がみられ、良好なベネフィット/リスクプロファイルを示した」とまとめた。なお、SCLCへのタルラタマブについては、再発SCLC患者を対象としてタルラタマブと化学療法を比較する国際共同第III相試験「DeLLphi-304試験」が進行中である。

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手OAに電熱手袋は有効か?/BMJ

 バッテリー駆動型電熱線が内蔵され手指全体を温められるミトンタイプの手袋(電熱グローブ)は、手の変形性関節症(OA)患者の痛みや機能の改善に効果があるのか。デンマーク・Bispebjerg and Frederiksberg HospitalのCecilie Bartholdy氏らは無作為化対照試験を行い、6週間にわたる電熱グローブ使用は対照グローブ(温熱なし)使用と比較して、身体面および機能面に好ましい変化は認められなかったことを報告した。著者は「電熱グローブは、手OAに関連した問題や握力の評価に追加のベネフィットをもたらさなかった。手の痛みについてはわずかなベネフィットが検出されたが、過大評価されている可能性があった」と述べている。手OAはありふれた疾患で痛みや機能低下を引き起こす。既治療法の効果はわずか~中程度であり、米国リウマチ学会2020ガイドラインで「温めること」が症状緩和法として推奨されているが、その効果を裏付けるエビデンスの質は低かった。BMJ誌2024年12月17日号クリスマス特集号「SEASONS OF LOVE」掲載の報告。厳冬期6ヵ月間に介入、電熱グローブvs.対照グローブ 研究グループは、現行の温熱療法は特殊な機器と診療所などへの受診に時間を要するため非実用的と考え、入手が簡易な市販の電熱グローブによる温熱療法について検証した。手OA治療に電熱グローブを使用する試験はこれまで行われていない。 試験は、デンマークの首都コペンハーゲンの外来クリニックで42~90歳の手OA患者200例を対象に行われ、100例が電熱グローブ(介入)群に、100例を対照グローブ(対照)群に無作為に割り付けられた。 被験者は、ベースラインと6週間後にクリニックを受診する間に介入を受けた。ベースラインでは、試験の目的(電熱グローブが手OAに有益かを評価する)を教えられ、温熱機能があるまたはないいずれかのグローブを受け取ることが伝えられ、6週間にわたって毎日少なくとも15分グローブを着用するよう指示された。その後2週時と4週時に、グローブに関するあらゆる問題を解消するためと、グローブと鎮痛剤の使用日記を付けるよう促す電話フォローを受け、オンラインアンケートが実施された。6週間の介入は、温熱のあらゆるベネフィットが顕著になる可能性があるとして、デンマークで最も寒い月(10月1日~3月31日)に限定して実施。その結果、試験は2020~21年、2021~22年、2022~23年の3期にわたる冬シーズンで完了した。 主要アウトカムは、オーストラリア・カナダ手OA指数(AUSCAN、スコア範囲:0~100点)の機能サブスケールで測定した6週時点の手機能の変化。重要な副次アウトカムはいずれも6週時点で評価した、AUSCAN手疼痛サブスケール(スコア範囲:0~100点)、手OA関連問題の総合評価(VASスコア、スコア範囲:0~100)、握力(ニュートン単位)であった。副次アウトカムの解析は、階層的ゲートキーピングアプローチ法を用いて行った。有意差を示す群間差は示されず 介入群91例と対照群95例が、試験を完了した。被験者の平均年齢は71歳、女性が87%(173例)、BMI値は24.9(SD 4.4)。罹病期間中央値は10年(四分位範囲:5~15)であった。 6週時点のAUSCAN機能スコア変化は群間差:3.0点で、介入群でより良好な可能性が示唆された(95%信頼区間[CI]:-0.4~6.3、p=0.09)。 重要な副次アウトカムについては、介入群でより良好な傾向が観察されたのは、AUSCAN手疼痛スコアのベースラインからの変化であった(群間差:5.9、95%CI:2.2~9.5)。手OA関連問題の総合評価および握力は、そのような群間差は観察されず、それぞれ群間差は2.8点(-3.7~9.2)、2.3ニュートン(-16.3~21.0)であった。

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片頭痛予防にメラトニン介入が有望な可能性

 近年、とくにCOVID-19後において睡眠・覚醒障害の有病率が増加した。これに伴い、市販のサプリメントとしてメラトニンを使用するケースが有意に上昇した。メラトニンは、不眠症のマネジメントに有効であることは知られているが、使用用途はそれだけにとどまらないといわれている。その中でも、片頭痛の予防や治療に関しては、メラトニンの抗炎症、抗酸化、鎮痛作用が有効である可能性が示唆されており、研究者の大きな関心事項となっている。米国・California Institute of Behavioral Neurosciences & PsychologyのBhavana Nelakuditi氏らは、片頭痛予防に対するメラトニンの役割を評価し、標準療法およびプラセボと比較したメラトニンの有効性および副作用プロファイルを明らかにするため、システマティックレビューを実施した。Cureus誌2024年10月28日号の報告。 2024年6月までに公表された研究(英語または英語翻訳、ヒト対象、ランダム化比較試験)を6つのデータベースより検索し、関連文献735件を特定した。データの品質評価には、ROB-2評価ツールを用いた。 主な結果は以下のとおり。・適格基準、品質評価を満たしたランダム化対象試験7件(1,283例)を分析に含めた。・すべての研究において、メラトニンまたはアゴメラチン治療を行った片頭痛患者であり、従来の予防治療群またはプラセボ群との比較が行われていた。・レビューの結果、メラトニンは、片頭痛の頻度および重症度の軽減に対する有意な効果が示唆された。・用量依存的な作用およびベネフィットについては、以前として議論の余地が残った。・メラトニンは、体重管理にも役立つ可能性があり、追加研究の必要性が示唆された。

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冬季入浴中の事故を防ぐ6つの対策

冬季入浴中の事故を防ぐための6つの対策■入浴事故防止のために1)入浴前に脱衣所や浴室を暖めておく2)湯温は41℃以下、お湯に浸かる時間は10分までを目安にする3)浴槽から急に立ち上がらない4)食後すぐの入浴や、飲酒後、医薬品服用後の入浴は避ける5)お風呂に入る前に、同居する家族にひと声かける6)高齢者の家族は入浴中の高齢者の動向に注意する政府広報オンラインより引用(2024年12月16日閲覧)https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202111/1.htmlCopyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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J-CLEAR特別座談会(8)「胃酸分泌抑制薬の長期投与に伴う安全性は?」

J-CLEAR特別座談会(8)「胃酸分泌抑制薬の長期投与に伴う安全性は?」プロトンポンプ阻害薬(PPI)やカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)などの胃酸分泌抑制薬は、逆流性食道炎をはじめ、抗血栓薬やNSAIDsなどによる胃・十二指腸潰瘍の再発抑制のために処方されます。近年、抗血栓薬やNSAIDsなどを処方される高齢者の増加に伴い、胃酸分泌抑制薬の処方数も増加の一途をたどっています。一方で、その長期投与については、さまざまな有害事象も懸念されています。今回のJ-CLEAR特別座談会では、日本人を対象にP-CABの長期安全性を検証した「VISION研究」へ関わった専門家たちが、胃酸分泌抑制薬による「一般的リスク」「内視鏡所見の変化」「高ガストリン血症」「ピロリ除菌後の胃がんリスク」について、4回にわたってお送りします。なお、この番組は2024年11月28日に収録したもので、当時の情報に基づく内容であることをご留意ください。胃酸分泌抑制薬の長期投与に伴う安全性は?出演上村 直実 氏国立国際医療研究センター国府台病院名誉院長木下 芳一 氏兵庫県立はりま姫路総合医療センター病院長春間 賢 氏川崎医科大学総合医療センター総合内科2特別研究員/淳風会医療診療セクター長新倉 量太 氏東京医科大学消化器内視鏡学准教授

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低リスクDCIS、積極的モニタリングvs.標準治療/JAMA

 低リスク非浸潤性乳管がん(DCIS)に対する積極的モニタリング(6ヵ月ごとに乳房画像検査と身体検査を実施)は、ガイドラインに準拠した治療(手術±放射線治療)と比較して、追跡2年時点の同側乳房浸潤がんの発生率を上昇せず、積極的モニタリングの標準治療に対する非劣性が示された。米国・デューク大学のE. Shelley Hwang氏らCOMET Study Investigatorsが前向き無作為化非劣性試験「COMET試験」の結果を報告した。JAMA誌オンライン版2024年12月12日号掲載の報告。グレード1/2のDCIS女性を対象、同側浸潤がん診断の2年累積リスクを評価 研究グループは、2017~23年にUS Alliance Cancer Cooperative Groupのクリニック試験地100ヵ所で、ホルモン受容体陽性(HR+)グレード1/2のDCISと新規診断された40歳以上の女性995例を登録して試験を行った。 被験者は、積極的モニタリング群(484例)またはガイドライン準拠治療群(473例)に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、同側浸潤がん診断の2年累積リスクで、事前に計画されたITT解析およびper-protocol解析で評価した。非劣性マージンは0.05%。2年累積発生率、積極的モニタリング群4.2%、ガイドライン準拠治療群5.9% 957例が解析対象となった。積極的モニタリング群は63.7歳(95%信頼区間[CI]:60.0~71.6)、ガイドライン準拠治療群は63.6歳(55.5~70.5)であり、全体では15.7%が黒人女性、75.0%が白人女性であった。 事前規定された主要解析(追跡期間中央値36.9ヵ月)において、DCISの手術を受けたのは346例で(積極的モニタリング群82例、ガイドライン準拠治療群264例)、浸潤がんと診断されたのは46例(19例、27例)であった。 Kaplan-Meier法による同側浸潤がんの2年累積発生率は、積極的モニタリング群4.2%、ガイドライン準拠治療群5.9%で、群間差は-1.7%(95%CI上限0.95%)であり、積極的モニタリングのガイドライン準拠治療群に対する非劣性が示された。 浸潤がんの腫瘍特性は、両群間で統計学的な有意差はなかった。 また、全体として68.4%(665例)が内分泌療法の開始を報告していた(積極的モニタリング群345例[71.3%]、ガイドライン準拠治療群310例[65.5%])。これら内分泌療法を受けたサブグループの同側浸潤がんの発生率は、積極的モニタリング群3.21%、ガイドライン準拠治療群7.15%で、群間差は-3.94%(95%CI:-5.72~-2.16)であった。 著者は、「より長期の試験を行うことで、積極的モニタリングが永続的な安全性と忍容性を提供するかを明らかにできるだろう」とまとめている。

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第128回 年末年始、インフルエンザ・新型コロナの大流行が直撃

インフルエンザの流行曲線がヤバイさて毎年のように感染症に警戒しなければならない年末。昨シーズンは、新型コロナもインフルエンザも年明けからわりと流行していましたが、今シーズンはインフルエンザの流行曲線がほぼ直角に上がっています。第50週で19.06人。定点医療機関あたりの感染者数が5週間で1から一気にここまで上がりました(図)。やべえ!画像を拡大する図. インフルエンザとCOVID-19の定点医療機関あたりの感染者数(筆者作成)1)外来でも、インフル陽性、インフル陽性、新型コロナ陽性、インフル陽性…といった感じで報告が上がっていて、時折混ざってくる新型コロナにドキっとする日々です。幸いマイコプラズマは当地域では徐々に減ってきており、もともと風邪症状や気管支炎止まりのことが多いため、全体として入院を逼迫するような要因にはなっていません。マイコプラズマの感染者が若い人が中心、という理由もあるでしょう。しかし、インフルエンザや新型コロナに関しては、高齢者が罹患すると、わりと入院が必要になります。年末年始はまた大変なことになるのかなあと身構えています。新型コロナもじわじわ増えており、第50週で3.89人です。過去、この立ち上がりから流行を迎えなかったことはありません。ですから、ほどなく新型コロナも注意報レベルになることも既定路線でしょう。2年連続、同時流行。乾燥している病院インフルエンザウイルスは、相対湿度が40%を超えるとウイルスの活性化率が急速に低下することが知られています2)。ゆえに、医療機関においても40%ラインは確保したいところ。新型コロナも同様です。121ヵ国の気象データと新型コロナの感染者数・死亡者数を調べたアメリカのデータによると、室内の相対湿度を40~60%に維持することで、新型コロナの感染だけでなく、ひいては死亡者数まで低下するという研究結果が報告されています3)。温度環境は良好に管理されているものの、相対湿度については、多くの医療機関や高齢者福祉施設では40%を下回っています。そもそも、湿度をしっかり管理している病院って多くないかもしれません。レジオネラなどの院内アウトブレイクがあったら問題になりますし、加湿器はなかなか置けないかもしれませんね。参考文献・参考サイト1)厚生労働省:インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症の定点当たり報告数の推移2)Noti JD, et al. High Humidity Leads to Loss of Infectious Influenza Virus from Simulated Coughs. PLoS One. 2013;8(2):e57485.3)Verheyen CA, et al. Associations between indoor relative humidity and global COVID-19 outcomes. J R Soc Interface. 2022;19(196):20210865.

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重症血友病A、新たな第VIII因子発現遺伝子治療が有望/NEJM

 第VIII因子インヒビターのない重症血友病A患者において、レンチウイルスベクターを用いて遺伝子導入した自己造血幹細胞(HSC)による遺伝子治療は、安定した第VIII因子発現が得られ、第VIII因子活性は末梢血中のベクターのコピー数と相関することが、インド・Christian Medical College VelloreのAlok Srivastava氏らの検討で示された。研究の成果はNEJM誌オンライン版2024年12月9日号に掲載された。5例を対象とするインドの第I相試験 研究グループは、第VIII因子インヒビターのない重症血友病Aにおけるレンチウイルスベクターを用いた自己CD34陽性HSCによる第VIII因子発現遺伝子治療の安全性と有効性の評価を目的に、インドの単施設において第I相試験を行った(インド政府科学技術省などの助成を受けた)。 年齢22~41歳の男性患者5例を対象とした。骨髄指向性CD68プロモーターを有する新規F8導入遺伝子(ET3)を含むレンチウイルスベクター(CD68-ET3-LV)を用いて、自己HSCに導入用エンハンサーなし(第1群、2例)または導入用エンハンサーあり(第2群、3例)のいずれかで形質導入した。患者は、骨髄破壊的前処置後に遺伝子導入HSCの移植を受けた。 治療の安全性については、生着とレジメン関連毒性作用の評価を行い、有効性は第VIII因子活性と年間出血率で評価した。 5例の患者のCD68-ET3-LV導入自己CD34陽性HSCの投与量は、体重1kg当たり5.0×106~6.1×106であった。最終の製剤中のベクターコピー数は、第1群の2例が1細胞当たり1.0および0.6で、第2群の3例は1細胞当たり1.5、0.6、2.2だった。全例で生着、インヒビターの発現はない 予想どおり全例で重度の血球減少が発現し、絶対好中球数の最低値は0.1×109/L未満、血小板数最低値は20×109/L未満であった。一方、全例で生着が得られ、好中球生着までの期間中央値は11日(範囲:10~12)、血小板生着までの期間中央値は15日(12~15)だった。重症好中球減少の期間中央値は8日(7~11)、重症血小板減少の期間中央値は3日(1~7)であった。 移植特性は第1群と第2群で差がなかった。5例のうち4例は、遺伝子治療後1~3ヵ月までには血球数が正常範囲に戻った。残りの1例(第2群)は、治療後14ヵ月には血球数が正常範囲となった。 好中球減少と血小板減少を除き、グレード2以上の有害事象はどの患者にも発現しなかった。最も頻度の高い有害事象は、吐き気(±嘔吐)であった。また、第VIII因子インヒビターは、製剤の投与後にどの患者にも発現しなかった。投与後4~22ヵ月目に行った遺伝子組み込み部位解析では、安全性に関する懸念は認めなかった。 これらのデータは、導入用エンハンサーがこのレンチウイルスベクターの遺伝子組み込みプロファイルに悪影響を及ぼさないことを示している。治療前に年間20件以上の出血が0件に 内因性第VIII因子の発現は、第2群の1例で投与後18日目に早くも観察された。60日目の第VIII因子活性値は、第1群の2例では7.9 IU/dLおよび4.0 IU/dLであり、第2群の3例では28.0 IU/dL、14.2 IU/dL、36.6 IU/dLであった。 第1群の2例では、投与後28日目から最後の追跡調査までの第VIII因子活性の中央値は、5.2 IU/dL(範囲:3.0~8.7)および1.7 IU/dL(1.0~4.0)であり、末梢血ベクターコピー数はそれぞれ0.2および0.1であった。同様に、第2群の3例では、第VIII因子活性中央値は37.1 IU/dL(18.3~73.6)、19.3 IU/dL(6.6~34.5)、39.9 IU/dL(20.6~55.1)であり、末梢血ベクターコピー数はそれぞれ4.4、3.2、4.8だった。 遺伝子治療前に、5例は少なくとも年間20件の出血イベントを報告していたが、治療後の累積追跡期間81ヵ月(追跡期間中央値14ヵ月[範囲:9~27])の時点で、年間出血率は5例ともゼロであった。 著者は、「このfirst-in-human試験の初期結果は、血友病Aの遺伝子治療の新たな可能性を示すものである。すべての患者で、より若い時期に施行可能であり、第VIII因子の持続的発現をもたらすと考えられる。この予測が正しいかは、より多くの患者を対象とした長期の臨床試験で明らかになるだろう」としている。

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動物性から植物性タンパク質への摂取移行は心臓の健康に有益

 主なタンパク質源を肉から植物に切り替えると、心臓の健康に驚くべき効果がもたらされるようだ。30年にわたる研究により、動物性タンパク質に対する植物性タンパク質のエネルギー比率が最も高い人では、心血管疾患(CVD)リスクが19%、冠動脈性心疾患(CHD)リスクが27%低下することが示された。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のFrank Hu氏は、「われわれの多くが、植物性タンパク質を主なタンパク質源とする食生活にシフトしていく必要がある。肉の中でも、特に赤肉や加工肉の摂取を減らし、豆類やナッツ類の摂取量を増やすことでそれが可能になる。このような食生活は、人間の健康だけでなく地球の健康にも有益だ」と述べている。この研究の詳細は、「American Journal of Clinical Nutrition」12月号に掲載された。 この研究では、Nurses’ Health Study(NHS)I(1984〜2016年)参加女性7万918人、NHS II(1991〜2017年)参加女性8万9,205人、およびHealth Professionals Follow-up Study(1986〜2016年)参加男性4万2,740人の追跡データを用いて、植物性タンパク質と動物性タンパク質のエネルギー比率がCVD発症に与える影響を検討した。このエネルギー比率は、4年ごとに実施される食事摂取頻度調査を用いて、それぞれのタンパク質が全エネルギー摂取量に占める割合として計算された。 30年に及ぶ追跡期間中に、虚血性心疾患や脳卒中など1万6,118件のCVD症例が発生していた。解析の結果、植物性タンパク質と動物性タンパク質のエネルギー比率が上位10%の人(第10十分位群)では、下位10%の人(第1十分位群)と比較して、全CVDリスクが19%、CHDリスクが27%、有意に低いことが示された。このリスク低下は、タンパク質の摂取量が多い人で顕著であった。特に、タンパク質の摂取量が最も多く(全エネルギーの21%)、かつ植物性タンパク質と動物性タンパク質のエネルギー比率が高い人では、タンパク質の摂取量が最も少ない人(全エネルギーの16%)と比較して、CVDリスクが28%、CHDリスクが36%低いことが明らかになった。一方、脳卒中のリスクと動物性タンパク質および植物性タンパク質のエネルギー比率との間に有意な関連は認められなかった。ただし、赤肉や加工肉をナッツ類などの植物性食品に置き換えることで、脳卒中リスクは低くなることが示された。 研究グループによると、植物性タンパク質を中心とした食生活への完全移行はCHDリスクの低減に最も効果的な可能性があるが、CVDに対する効果は植物性タンパク質と動物性タンパク質の比率が約1対2で頭打ちになるとの考えを示している。 また、論文の筆頭著者である、ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のAndrea J Glenn氏は、「平均的な米国人での植物性タンパク質と動物性タンパク質のエネルギー比率は1対3である。しかし、われわれの研究結果は、CVDの予防には少なくとも1対2の比率の方がはるかに効果的であることを示唆している。CHDの予防には、1対1.3以上の比率で植物性タンパク質を摂取すべきだ」と話している。

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抗菌薬と手術、小児の虫垂炎に最善の治療法はどちら?

 過去数十年にわたり、小児の虫垂炎(いわゆる盲腸)に対しては、手術による虫垂の切除が一般的な治療とされてきた。しかし、新たな研究で、手術ではなく抗菌薬を使う治療が、ほとんどの症例で最善のアプローチであることが示唆された。この研究では、合併症のない虫垂炎(単純性虫垂炎)の治療に抗菌薬を使用することで、痛みが軽減し、学校を休む日数も減ることが示されたという。米ネムール小児医療センターのPeter Minneci氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American College of Surgeons」に11月19日掲載された。 本研究の背景情報によると、米国では、小児の入院理由として5番目に多いのが虫垂炎であり、また、入院中の小児に対して行われる外科手術の中で最も多いのが虫垂切除術だという。Minneci氏らは、2015年5月から2018年10月の間に中西部の小児病院で単純性虫垂炎の治療を受けた7〜17歳の小児1,068人のデータを分析し、1年間の追跡期間を通じて、抗菌薬による非手術的管理と手術的管理(緊急腹腔鏡下虫垂切除)の費用対効果を比較した。対象者の親には、子どもの虫垂を切除するか、手術回避の可否を確認するために少なくとも24時間の抗菌薬による点滴治療を行うかの選択肢が与えられていた。370人(35%)は抗菌薬による非手術的な管理、698人(65%)は手術的管理を選んでいた。 費用対効果の評価では、増分費用効果比(ICER)を主な指標として採用した。これは、非手術的管理と手術的管理の費用の差を健康アウトカムの差で割ったもので、1単位の質調整生存年(QALY)または障害調整生存年(DALY)を得るために必要な追加費用を意味する。1QALYまたは1DALY当たりの支払い意思額(WTP、支払っても良いと思う最大金額)を10万ドル(1ドル150円換算で1500万円)に設定し、この閾値を基準として費用対効果を評価した。 その結果、非手術的な管理は手術的管理よりも費用対効果の高いことが明らかになった。手術的管理にかかった費用は、1人当たり平均9,791ドル(1ドル150円換算で146万8,650円)であり、平均0.884QALYを獲得していた。一方、非手術的管理にかかった費用は1人当たり平均8,044ドル(同約120万6,600円)であり、平均0.895QALYを獲得していた。 Minneci氏は、「この結果は、合併症のない小児の急性虫垂炎に対しては、非手術的管理の方が手術的管理よりも1年を通して最も費用対効果の高い治療戦略であることを示している」と述べている。 Minneci氏はさらに、「われわれの研究は、抗菌薬のみの治療の方が小児にとって安全かつ効果的であるだけでなく、費用対効果も高いというベネフィットがあることを明らかにした。虫垂炎に対する非手術的管理は、安全かつ費用対効果の高い初期治療であり、手術に代わる合理的な選択肢だ」と述べている。 研究グループは今後、それぞれの治療法が失敗する頻度を比較し、虫垂炎の小児に病院ではなく自宅で抗菌薬を投与できるかどうかを検討する予定だとしている。

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