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こんな入浴を高齢者はやってはいけない

冬季に高齢者がやってはいけない入浴法■入浴事故を起こす3つの事項1)湯温42℃以上のお湯に浸かる2)10分以上の長湯をする3)かけ湯などをせず、勢いよくお湯に浸かる政府広報オンラインより引用(2024年12月16日閲覧)https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202111/1.htmlCopyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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酸化Mg服用患者へのNSAIDs、相互作用を最小限に抑える消化管保護薬は?【うまくいく!処方提案プラクティス】第65回

 今回は、慢性腰痛に対するアセトアミノフェンをセレコキシブへ変更する際の消化管保護薬の選択について、既存の酸化マグネシウムとの相互作用を考慮して処方提案を行った事例を紹介します。患者情報80歳、男性(在宅)基礎疾患脊柱管狭窄症、前立腺肥大症、認知症、骨粗鬆症在宅環境訪問診療を2週間に1回訪問看護毎週金曜日通所介護毎週水・土曜日処方内容1.タムスロシン錠0.2mg 1錠 分1 朝食後2.ドネペジル錠5mg 1錠 分1 朝食後3.セレコキシブ100mg 2錠 分2 朝夕食後4.酸化マグネシウム錠500mg 2錠 分2 朝夕食後5.アルファカルシドール05μg 1錠 分1 夕食後本症例のポイントこの患者さんは、腰部脊柱管狭窄症による慢性腰痛でアセトアミノフェンを服用していましたが、効果不十分のためセレコキシブ200mg/日への変更が検討されました。NSAIDsへの変更に伴い、高齢者は消化性潰瘍リスクが高い1)ため消化管保護薬の追加が必要と考えましたが、それに加えて酸化マグネシウムへの影響2)が懸念されました。酸化マグネシウムは胃内で水和・溶解することで薬効を発揮するため、胃内pHの上昇は本剤の溶解性と吸収に影響を与え、作用の減弱につながります。そのため、従来のPPIでは胃内pHの上昇により便秘を悪化させる可能性があります。そこで、P-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)であるボノプラザンの併用を提案することにしました。ボノプラザンは、従来のPPIと比較して、(1)24時間を通じて安定した胃酸抑制効果がある、(2)食事の影響を受けにくい、(3)酸化マグネシウムの溶解性への影響が比較的少ない、などの特徴があります2)。酸化マグネシウムとの相互作用が最小限であるということは、本症例のような高齢者の便秘管理において重要なポイントとなります。医師への提案と経過訪問診療に同行した際、医師と直接話をする機会を得ました。その場で、ボノプラザンの併用を提案しました。提案の際は、以下の点を具体的に説明しました2)。従来のPPIと異なる作用機序により、24時間を通じて安定した胃酸抑制効果が期待できる。食事の影響を受けにくく、服用タイミングの自由度が高い。従来のPPIと比較して酸化マグネシウムの溶解性への影響が少なく、便秘への影響を最小限に抑えられる可能性がある。医師からは、「高齢者の便秘管理は生活の質に直結する重要な問題であり、薬剤の相互作用を考慮した提案は非常に有用」と評価いただき、ボノプラザンが追加となりました。その後、患者さんは胃部不快感などの症状変化もなく、疼痛増悪もなく経過しています。このように、訪問診療という場面を生かした直接的なディスカッションにより、より深い薬学的介入が可能となった症例でした。なお、医療経済的考察として、P-CABを選択することで薬剤費が増加(約8倍)することが懸念されますが、便秘悪化による追加処方の回避、消化性潰瘍発症リスクの低減、服薬アドヒアランス向上による治療効果の安定化が期待できることから、潜在的なコスト削減効果があると思っています。1)日本消化器病学会編. 消化性潰瘍診療ガイドライン2020(改訂第3版). 2020:BQ5-7.2)タケキャブ錠 インタビューフォーム

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HR+乳がん、dose-dense術後補助化学療法が有益な患者の同定/JCO

 リンパ節転移陽性のエストロゲン受容体陽性(ER+)乳がん患者の一部は化学療法による効果が小さいことを示すエビデンスが増えてきている。米国・ダナファーバーがん研究所のOtto Metzger Filho氏らは、術後補助化学療法におけるdose-dense化学療法の有用性を検討したCALGB 9741試験において、12年間のアウトカムおよび内分泌療法への感受性を示すSET2,3スコアによりdose-dense化学療法が最も有益と考えられる患者を同定した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年1月2日号に掲載。 CALGB 9741試験は1,973例がdose-dense化学療法群と通常化学療法群に無作為に割り付けられた。化学療法スケジュールと予後および効果予測の交互作用のハザード比(HR)は、長期の無病生存期間(DFS)と全生存期間(OS)のCoxモデルから推定した。内分泌転写活性を示すバイオマーカーであるSET2,3の検査はER+乳がん女性のRNAサンプル682個に実施した。 主な結果は以下のとおり。・dose-dense化学療法は、全集団においてDFSを23%改善し(HR:0.77、95%信頼区間[CI]:0.66~0.90)、OSを20%改善した(HR:0.80、95%CI:0.67~0.95)。・dose-dense化学療法の有益性はER+およびER-のサブセットで認められ、治療群とERの状態との間に有意な交互作用は認められなかった。・SET2,3スコアが低いと予後不良だったが、閉経状態に関係なくdose-dense化学療法による予後は改善した(交互作用のp:DFS 0.0998、OS 0.027)。具体的には、内分泌転写活性が低いことがdose-dense化学療法の有益性を予測した。しかし、分子サブタイプによる腫瘍負荷および増殖によるシグネチャーは予測しなかった。 本研究の結果、SET2,3スコアがdose-dense化学療法の有益な患者を同定し、具体的には、腫瘍負荷、分子サブタイプ、閉経状態よりも、内分泌転写活性の低さでその有益性が予測されることが示唆された。

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ヘモクロマトーシス、HFE C282Yホモ接合体は糖尿病リスク高い/BMJ

 トランスフェリン飽和度またはフェリチンが正常、あるいはこれら両方が正常のヘモクロマトーシス患者は、ほとんどのガイドラインでHFE遺伝子型の判定が推奨されていないという。デンマーク・コペンハーゲン大学のMathis Mottelson氏らが、HFE遺伝子C282Yホモ接合体を有するヘモクロマトーシス患者は糖尿病のリスクが増加しており、糖尿病でC282Yホモ接合体の非保有者と比較して、糖尿病でC282Yホモ接合体の保有者は死亡率が高く、この集団の死亡の3割近くは糖尿病に起因する可能性があることを示した。研究の成果は、BMJ誌2024年12月9日号で報告された。デンマークの3つの集団の前向きコホート研究 研究グループは、血漿中の鉄、トランスフェリン飽和度、フェリチン濃度が正常であっても、HFE遺伝子C282Yホモ接合体を保有するヘモクロマトーシス患者は、糖尿病、肝疾患、心疾患のリスクが高いか否かを検証し、これらの疾患を持つC282Yホモ接合体の非保有者と比較して、保有者は死亡率が高いか否かについて検討する目的で、前向きコホート研究を行った(Capital Region of Denmarkなどの助成を受けた)。 解析には、デンマークの3つのコホート研究(Copenhagen City Heart Study、Copenhagen General Population Study、Danish General Suburban Population Study)のデータを用いた。 HFE遺伝子のC282Y変異およびH63D変異の有無を評価した13万2,542例(このうち422例がC282Yホモ接合体)を対象とし、研究への登録から最長27年間、前向きに追跡した。トランスフェリン飽和度、フェリチンが正常でも糖尿病リスクが高い C282Yホモ接合体の非保有者と比較した保有者の疾患別罹患率のハザード比(HR)は、糖尿病が1.72(95%信頼区間[CI]:1.24~2.39、p=0.001)、肝疾患が2.22(1.40~3.54、p<0.001)で、心疾患は1.01(0.78~1.31、p=0.96)であった。 年齢層別の5年間の糖尿病絶対リスクは、C282Yホモ接合体を保有する女性で0.54~4.3%、非保有女性で0.37~3.0%、保有男性で0.86~6.8%、非保有男性で0.60~4.8%であった。 試験登録時に得られた1回の血液サンプルの鉄、トランスフェリン飽和度、フェリチン濃度の値に基づく解析では、C282Yホモ接合体を有する集団は、トランスフェリン飽和度が正常(HR:2.00、95%CI:1.04~3.84)、またはフェリチンが正常(3.76、1.41~10.05)であっても糖尿病のリスクが上昇しており、フェリチンとトランスフェリン飽和度の両方が正常(6.49、2.09~20.18)でも糖尿病リスクが高かった。糖尿病による死亡の人口寄与割合は27.3% 糖尿病でC282Yホモ接合体を保有する集団では、糖尿病で非保有の集団よりも全死因死亡のリスクが高かったが(HR:1.94、95%CI:1.19~3.18)、糖尿病のないC282Yホモ接合体保有集団では死亡率は増加しなかった。 C282Yホモ接合体を保有する集団の死亡のうち、特定の疾患を有する集団における超過死亡を除外した場合に理論的に予防が可能な死亡の割合(人口寄与割合)は、糖尿病で27.3%(95%CI:12.4~39.7)、肝疾患で14.4%(3.1~24.3)であった。 一方、糖尿病や肝疾患のリスクは、H63Dヘテロ接合体、H63Dホモ接合体、C282Yヘテロ接合体、C282Y/H63D複合ヘテロ接合体を保有する集団では増加しなかった。 著者は、「これらの結果は、将来の遺伝性ヘモクロマトーシスの診療ガイドラインでは、C282Yホモ接合体を保有する集団においては糖尿病の発見と治療を優先することが重要となる可能性を示すものである」としている。

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運動による脳の活性化は翌日まで続く

 運動による脳の機能に対する急性効果は、従来考えられていたよりも長く続く可能性を示唆するデータが報告された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のMikaela Bloomberg氏らの研究によるもので、詳細は「International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity」に12月10日掲載された。 これまでに、運動後の数分から数時間ほどの間、認知機能に対する急性効果が生じることが報告されてきている。しかし、その効果が運動を行った翌日まで持続するのか、また、睡眠不足などの影響はあるのかという点はよく分かっていない。Bloomberg氏らは、加速度計を用いて身体活動量や睡眠時間、睡眠の質を把握し、翌日の認知機能との関連性を検討した。 研究参加者は、認知機能障害や認知症の兆候のない50~83歳の成人76人で、8日間にわたり加速度計を装着して生活。注意力、記憶力、精神運動速度(思考・判断およびそれに基づく身体反応の速さ)などの認知機能を評価するためのテストが毎日実施された。加速度計のデータは、中~高強度身体活動(MVPA)、軽強度身体活動、座位行動、睡眠時間、レム睡眠(脳は覚醒状態に近く、体動はほとんどない睡眠)、徐波睡眠(深い睡眠である一方、体動が生じることもある睡眠)の時間の把握に用いられた。 解析の結果、前日のMVPAの時間が30分長いと、エピソード記憶(ある出来事とその時間や場所の記憶)のスコア(P=0.03)と作業記憶(何かの作業をするための短期的な記憶)のスコアが(P=0.01)有意に高いという関連が認められた。反対に、座位行動時間が30分長いと、作業記憶スコアが有意に低下していた(P=0.03)。前夜の睡眠時間や睡眠の質を調整しても、これらの結果は変わらなかった。 他方、前日のMVPAの時間とは関係なく、前夜の睡眠時間が6時間以上の場合、6時間未満と比較してエピソード記憶のスコアが有意に高く(P=0.008)、精神運動速度が有意に速い(P=0.03)という関連が観察された。また、前夜のレム睡眠が30分長いごとに注意力スコアが有意に高く(P=0.04)、徐波睡眠が30分長いごとにエピソード記憶スコアが高い(P=0.008)という関連も認められた。 MVPAの具体的な運動としては、Bloomberg氏によると、「心拍数が上がるような運動のことであり、早歩き、ダンス、階段を上がることなど」であって、「計画的な運動である必要はない」という。そして同氏は、「われわれの研究は、このようなMVPAの認知機能に対する効果発現時間はこれまで考えられていたよりも長く、運動後の数時間だけでなく翌日まで続く可能性があることを示唆している」と述べている。 この関連のメカニズムについて論文には、「運動は脳への血流を増加させ、さまざまな認知機能をサポートする神経伝達物質の放出を刺激することで、脳を活性化させることが知られている。神経伝達物質に対する影響は運動後少なくとも数時間は持続することが報告されているが、運動に伴う他の影響は、より長期間持続するのではないか」という考察が加えられている。ただし、論文の上席著者であるUCLのAndrew Steptoe氏は、「本研究のみでは、運動による脳に対する急性効果が、脳の長期的な健康に寄与するかどうかは分からない。運動が認知機能の低下を遅らせ、認知症のリスクを抑制する可能性を示唆するエビデンスは少なくないが、いまだ議論の余地が残されている」と、慎重な姿勢を取っている。

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1回の肺CT検査でCNNがCOPDを正確に診断

 人工知能(AI)を活用した新しい肺検査によって、呼吸困難のある人が慢性閉塞性肺疾患(COPD)であるかどうかを確認できる可能性のあることが、新たな研究で示された。通常のCOPDの診断では、患者が完全に息を吸い込んだときと吐き出したときの2回のCT検査が必要であるが、新しい検査では、息を吸いこんだときに撮影したCT画像のみからCOPDを正確に診断できるという。米サンディエゴ州立大学数学・統計学分野のKyle Hasenstab氏らによるこの研究結果は、「Radiology: Cardiothoracic Imaging」に12月12日掲載された。 COPDは、細気管支炎や肺気腫などを含む進行性の肺疾患の総称であり、気流に制限が生じて呼吸能力が障害される病態を指す。現状ではCOPDには治療法がなく、世界で死亡原因としては3番目に多い。COPDの主な診断方法は、息を吸う力や吐く力を通じて肺機能を測定する検査(スパイロメトリー)であるが、Hasenstab氏によると、CTスキャンにより呼吸を妨げている可能性のある肺の損傷を検出して、COPDの診断に役立てている病院もあるという。しかし、「この種のプロトコルは、医療機関全体で、臨床的に標準化されているわけではない」と同氏は指摘する。その理由の一つは、医療スタッフがCT画像の撮像技術と読影力を身に付けるには、追加のトレーニングが必要な点にあるという。 今回の研究でHasenstab氏らは、AIがCT画像を解釈できればスタッフをトレーニングする必要性が減り、COPDのCT検査をより多くの人に提供できるかもしれないとの仮説を立てた。そして、2007年11月から2011年4月の間に吸気と呼気のCTを撮影し、スパイロメトリーも受けた8,893人(平均年齢59.6歳、男性53.3%)の検査データを用いて、この仮説を検証した。 Hasenstab氏らは、データから直接学習をするディープラーニングの手法の一つである畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて、臨床データ、および単一時相または多時相CT画像を基に、スパイロメトリーの測定値(1秒間の努力呼気量〔FEV1〕、予測FEV1%、および努力肺活量〔FVC〕に対するFEV1の比〔FEV1/FVC〕)を予測するモデルのトレーニングを行った。その後、予測されたスパイロメトリーの値から、COPDに関する世界的イニシアチブ(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease;GOLD)が定めた基準に基づきCOPDの重症度(ステージIからIVの4期)を予測した。 その結果、CNNモデルが予測したスパイロメトリー測定値と実測値との一致度は、中程度から良好であることが示された。この一致度は、臨床データを加えることで改善することも判明した。また、このモデルは単一時相CT画像のみからでも重症度を正確に予測することも示された。重症度が実際GOLDのステージと完全に一致、またはその誤差が1ステージ以内で一致した割合は59.8~84.1%であった。 Hasenstab氏は、「われわれの研究は、1回のCT検査と関連する臨床データに基づき、COPDを診断し重症度のステージを分類できることを示した」と述べている。同氏はまた、「CT検査を呼気時の1回に減らすことで、この診断法が現在よりも利用しやすくなり、また、患者の医療費、不快感、電離放射線への被曝量も軽減できる」と話している。

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糖尿病と腎臓病の併発は心臓病発症を大幅に早める

 2型糖尿病と慢性腎臓病(CKD)は、ともに心臓病のリスク因子だが、両者が併存していると、心臓病発症が大幅に早まるとする研究結果が報告された。米ノースウェスタン大学および同ボストン大学のVaishnavi Krishnan氏らが、米国心臓協会(AHA)の科学セッション(AHA Scientific Sessions 2024、11月16~18日、シカゴ)で発表した。 Krishnan氏らの研究には、AHAが構築した心血管疾患(CVD)イベント予測ツール「Predicting Risk of cardiovascular disease EVENTs(PREVENT)」が用いられた。PREVENTは、2011~2020年の米国国民健康栄養調査のデータに基づき開発されたもので、糖尿病やCKD、または喫煙習慣の有無、降圧薬や脂質低下薬の服用などの情報を基に、向こう10年間のCVDイベントの発症リスクを予測できる。通常、リスクが7.5%以上の場合に「CVDハイリスク」状態と判定する。 このPREVENTを使い、30~79歳の各年齢の人が、推定糸球体濾過量44.5mL/分/1.73m2以下(CKDステージ3に該当)のCKDのみを有する場合、2型糖尿病のみを有する場合、および、それら両者を有する場合、両者とも有さない場合に、CVDハイリスクと判定される年齢を割り出した。 その結果、2型糖尿病とCKDをともに有さない場合にCVDハイリスクと判定される年齢は、女性68歳、男性63歳だった。それに対して、CKDのみを有する場合、女性は60歳、男性は55歳でハイリスクと判定され、女性・男性ともに8年早くリスクが高まると予測された。また、2型糖尿病のみを有する場合は、女性は59歳、男性では52歳でハイリスクと判定され、女性は9年、男性は11年早くリスクが上昇すると予測された。 そして、CKDと2型糖尿病が併存している場合は、女性は42歳、男性は35歳でハイリスクと判定されることが分かった。つまり、2型糖尿病とCKDを有さない人に比べて、女性は26年、男性は28年も早く、CVDリスクが高い状態になると予測された。 Krishnan氏は、「われわれの研究により、CVDリスク因子が組み合わさることによる影響の大きさが明らかになり、実際に何歳からハイリスク状態になるのかを分かりやすく理解することが可能になった」と述べている。また、「例えば、血圧や血糖値が境界域まで上昇し腎機能がやや低下しているものの、高血圧、糖尿病、CKDとは診断されていない状態では、本人は自分のCVDリスクの高さを認識していないことが少なくない。そのような場合に、本研究のような手法によってリスクをはっきり自覚することは、その後の疾患管理に役立つだろう」と付け加えている。 ただし、研究者らは、この結果が一般人口のデータに基づきシミュレーションされたものであることを、解釈上の留意点として挙げている。本研究を主導した米ノースウェスタン医科大学のSadiya Khan氏も、「今回の報告は、疾患リスクモデルがどのくらい有用かを理解する最初のプロセスに当たる」としている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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MRIで膵臓がんの前駆病変を検出可能か

 膵臓がんは、膵臓自体が体の奥深くに位置しているため、生命を脅かすようになる前の早期段階で検出することは難しいことから、サイレントキラーと呼ばれている。しかし、拡散テンソル画像法(DTI)と呼ばれるMRI画像技術の一種が、膵臓がんのより早期の発見に役立つ可能性のあることが新たな研究で明らかになった。シャンパリモー臨床センター(ポルトガル)の放射線科医であるCarlos Bilreiro氏らによるこの研究結果は、「Investigative Radiology」に12月13日掲載された。研究グループは、これらの結果は膵臓がんリスクがある人の早期診断につながる可能性があると述べている。 膵臓がんは、米国ではがん関連死の第3位の原因である。膵臓がんの5年生存率は、早期に発見できれば44%だが、他臓器に転移すると約3%にまで急落する。残念なことに、膵臓がんの症状は、原因不明の体重減少、糖尿病の発症、黄疸など、他の病気の症状と混同されやすい。 研究グループの説明によると、膵臓がんの約95%は膵管腺がん(PDAC)と呼ばれるものであり、その多くは膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)と呼ばれる前駆病変から発生するが、これらの病変は、通常のスキャン方法では検出が容易ではない。しかし、研究グループは、DTIを使えばその検出が可能になるのではないかと考えた。論文の上席著者で、シャンパリモー・リサーチのNoam Shemesh氏は、「DTIは、組織内の水分子の拡散を利用する方法だ。これにより放射線科医は組織の微細構造を観察できる」と説明する。DTIは30年前に開発され、主に脳の画像診断に使用されている。Shemesh氏は、「DTIは新しい方法ではない。ただ、これまで膵臓がんの前駆病変の検出には使われていなかっただけだ」と話している。 この研究では、実験用マウス(PanINモデルマウス4匹、PDACモデルマウス6匹、対照6匹)のDTI画像によりPanINの検出とその特徴を識別できるかが検証された。まず、生体内でDTIを実施した後、膵臓組織を用いて超高磁場のMR顕微鏡でDTIおよびT2強調画像を取得し、組織学的な検証を行った。 その結果、DTIによりPanINとPDACを正確に検出できることが明らかになった。具体的には、拡散異方性の程度を表すFA(fractional anisotropy)、および主軸に垂直な方向への拡散性を表すRD(radial diffusivity)による判別能力を示す曲線下面積(AUC)は0.983(95%信頼区間0.932〜1.000)であった。また、平均拡散能を表すMD(mean diffusivity)および主軸方向への拡散性を表すAD(axial diffusivity)によるAUCは1.000(同1.000〜1.000)であった。さらに、MR顕微鏡と組織学的解析からは、MR画像で観察されるコントラストが、膵臓の微細構造の特徴に由来することが判明した。一方、DTIとT2強調画像との相関の検討では、特にADが病変の広がりや重症度と強い相関を示した。最後に、この結果を人に適応する可能性を検討するために、5人のヒトの膵臓組織を用いて観察を行った。その結果、マウスでの結果と同様に、PanINと正常膵臓との間に顕著なコントラストが確認された。 Shemesh氏は、「われわれは、患者から膵臓組織のサンプルを入手して調査し、マウスで得られた結果が人間にも当てはまることを確認した」と述べている。一方、Bilreiro氏は、「この研究は、膵臓がんの前駆病変の研究における画期的な出来事だと考えている」と話している。 ただし研究グループは、「人間の膵臓がんの検査にこの技術を適用できるようになるまでには、さらなる研究を行い、技術を磨く必要がある」との見方を示している。Shemesh氏は、「これは概念実証研究であり、すでに基本手段として用いられている方法を活用して実際に人間や患者を対象に試験を行うための基礎を提供したに過ぎない」と述べている。

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抗精神病薬誘発性体重増加にGLP-1受容体作動薬セマグルチドが有効

 抗精神病薬誘発性体重増加は、患者および臨床医にとって重要な臨床課題であり、抗精神病薬使用患者の体重増加を予防または回復するための適切な介入が求められる。最近、肥満管理の新たなアプローチとしてGLP-1受容体作動薬が大きな注目を集めている。GLP-1受容体作動薬セマグルチドは、顕著な体重減少をもたらすことが明らかとなっている薬剤である。オランダ・マーストリヒト大学のBea Campforts氏らは、抗精神病薬誘発性体重増加に対してもセマグルチドが同等の体重減少効果を示すかを調査した。BMC Psychiatry誌2024年11月30日号の報告。 日常的な外来診療における抗精神病薬誘発性体重増加の治療に対するセマグルチドの有効性および安全性を評価するため、プロスペクティブ非ランダム化コホート研究を実施した。その後、メトホルミンを使用している抗精神病薬誘発性体重増加患者を対照群として、結果を比較した。 主な結果は以下のとおり。・16週間後の体重減少は、セマグルチド群(10例)で4.5kg(95%信頼区間[CI]:−6.7〜−2.3、p<0.001)、メトホルミン群(26例)で2.9kg(95%CI:−4.5〜−1.4、p<0.001)。・この結果は、平均体重減少率がセマグルチド群で4%、メトホルミン群で2.5%に相当する。・セマグルチド群におけるBMIの減少は−1.7kg/m2(95%CI:−2.4〜−1.0、p<0.001)、ウエスト周囲径の減少は−6.8cm(95%CI:−9.7〜−3.8、p<0.001)。・メトホルミン群におけるBMIの減少は−0.8kg/m2(95%CI:−1.4〜−0.3、p=0.001)、ウエスト周囲径の減少は−3.4cm(95%CI:−5.4〜−1.3、p=0.001)。・両群間で、統計学的に有意な差は認められなかった。・両群ともに副作用は、典型的に軽度、一時的であり、主な副作用は悪心であった。・さらに、精神症状の軽減、QOL向上が認められた。 著者らは「セマグルチドは、精神疾患患者の抗精神病薬誘発性体重増加に対し実行可能で効果的かつ安全な治療オプションであることが示唆された。これらの結果を裏付けるためにも、さらなる調査が求められる」と結論付けている。

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生成AIにも認知機能障害!?/BMJ

 主要な大規模言語モデル(LLM)の認知機能についてモントリオール認知評価(MoCA)テストなどを用いて評価した結果、ChatGPT-4oを除いたLLMで軽度認知機能障害の兆候が認められたことを、イスラエル・Hadassah Medical CenterのRoy Dayan氏らが報告した。人間と同様に年齢が認知機能低下の重要な決定要因であり、「高齢」すなわちバージョンが古いチャットボットはMoCAテストの成績が不良である傾向がみられたという。著者は、「これらの結果は、近くAIが人間の医師に取って代わるという想定に疑問を投げ掛けるものであり、主要なチャットボットの認知機能障害は医療診断の信頼性に影響を与え、患者の信頼を損なう可能性がある」と述べている。これまで複数の研究により、LLMはさまざまな診断において人間の医師よりも優れていることが示されているが、AI自体が認知機能低下を来すかどうかは評価されていなかった。BMJ誌2024年12月20日号掲載の報告。ChatGPT、Claude、Geminiの認知機能をMoCAテストなどで評価 研究グループは、公開されているLLMまたはチャットボットのChatGPT-4および4o(開発:OpenAI)、Claude 3.5 Sonnet(Anthropic)、およびGemini 1.0および1.5(Alphabet)を対象とし、テキストベースのプロンプトを介したLLMとのオンラインの対話について検証した。 MoCAテスト(バージョン8.1)を用い、患者に与える課題と同じ課題をLLMに与え、公式ガイドラインに従い神経科医が採点し評価した。追加の評価として、Navon図形、Cookie Theft Picture Test、Poppelreuterの錯綜図、Stroop testも実施した。 主要アウトカムは、MoCAテストの総合スコア・視空間認知/実行機能およびStroop testの結果であった。MoCAスコアが最も良好なのはChatGPT-4o、30点満点で26点 MoCAテストの総合スコア(30点満点)は、ChatGPT-4oが26点で最も高く、次いでChatGPT-4およびClaudeが25点であり、Gemini 1.0は16点と最も低かった。 MoCAテストの視空間認知/実行機能の成績は、すべてのLLMで低いことが示された。すべてのLLMがTrail Makingの課題および視空間認知機能の時計描画を失敗し、ChatGPT-4oのみアスキーアートを使用するよう指示された後で立方体の書き写しに成功した。そのほかの主な課題である命名、注意、言語、抽象的思考などはすべてのLLMで良好であったが、Geminiは1.0および1.5ともに遅延再生の課題に失敗した。 Navon図形では、すべてのLLMが小さな「S」を認識したが、大きな「H」の構造を特定したのはChatGPT-4oとGeminiのみであった。 Cookie Theft Picture Testでは、すべてのLLMがクッキーの盗難の場面を正しく解釈できたが、前頭側頭型認知症でみられる共感の欠如が示唆された。 Poppelreuterの錯綜図では、すべてのLLMがオブジェクトを認識できなかったが、ChatGPT-4oとClaudeはほかのモデルよりわずかに良好であった。 Stroop testでは、すべてのLLMが第1段階を成功したが、第2段階を成功したのはChatGPT-4oのみであった。

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乳がん患者の脱毛に対するミノキシジル投与は安全かつ効果的

 発毛剤のロゲインやリアップの有効成分であるミノキシジルを化学療法の最中や治療後に服用すると、多くの乳がん患者で発毛が促され、心臓関連の重大な副作用も認められなかったとする研究結果が報告された。脱毛症の治療薬として知られるミノキシジルは、血管拡張作用により血圧を下げる効果も有することから高血圧の治療薬としても用いられている。しかし、この血管拡張作用が化学療法に伴う心臓関連の副作用を増大させ、胸痛、息切れ、体液貯留などを引き起こすのではないかと懸念されていた。米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部のDevyn Zaminski氏らが、NYUランゴン・ヘルスの資金提供を受けて実施したこの研究の詳細は、「Journal of the American Academy of Dermatology」に12月3日掲載された。 Zaminski氏らは、化学療法の副作用の一つである脱毛は、女性によっては、自信を失うほどの苦痛を引き起こすこともあり、脱毛を恐れて化学療法を思いとどまる患者もいると言う。今回の研究では、2012年から2023年までのNYUランゴン・ヘルスの電子記録システムを用いて、女性の乳がん患者に対するミノキシジル投与の安全性と有効性が検討された。対象は、脱毛症治療薬として処方された経口ミノキシジルを1カ月以上服用し、薬の忍容性に関するデータがカルテに記録されていた51人。このうちの25人は化学療法に加えて手術や放射線治療の組み合わせを、26人は手術または放射線治療のみを受けていた。 その結果、医師による評価と患者の自己報告の両方から、低用量の経口ミノキシジルを服用した全ての患者で、治療開始後3~6カ月以内に発毛の改善または脱毛の安定化が確認されたことが明らかになった。追加の治療や入院を必要とするような深刻な心臓関連の副作用が生じた患者はいなかった。NYUグロスマン医学部のKristen Lo Sicco氏は、「本研究により、ミノキシジルは患者にとって安全であり、効果的であることが明らかになった。ミノキシジルの有効性は、外見的に自分らしさを失った患者が、それを取り戻し、自分をある程度コントロールできるようになる助けとなる可能性がある」と述べている。 ただし、研究グループは、軽度の体液貯留といった心臓関連の副作用の中には、患者が気が付かない無症候性のものもあるため申告されておらず、その結果、患者の健康記録に記録されていなかった可能性があると指摘している。また、医師と患者による評価の一部が自己申告または観察によるものであることも、本研究の限界の一つであるとしている。 Lo Sicco氏は、「さらなる研究でこれらの結果を確認するとともに、ミノキシジルが他の種類のがん患者や異なる化学療法を受けている患者にも安全かどうかを確かめる必要がある」と述べている。

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若年性大腸がんが世界的に増加

 世界中で大腸がんに罹患する若者が増えているようだ。世界50カ国のうち27カ国で、若年性(50歳未満での発症)大腸がんの罹患率が上昇していることが、新たな研究で明らかになった。この研究の論文の筆頭著者である米国がん協会(ACS)がんサーベイランス研究のHyuna Sung氏は、「若年性大腸がんの増加は世界的な現象だ。これまでの研究では、主に高所得の西側諸国での増加が確認されていたが、今や世界中のさまざまな経済状況の国や地域で記録されている」と述べている。この研究結果は、「The Lancet Oncology」に12月11日掲載された。 この研究でSung氏らは、大腸がん罹患率に関する世界保健機関(WHO)国際がん研究機関のデータベースを用いて、若年層(50歳未満)と高齢層(50歳以上)における大腸がんの発症率の傾向を比較した。データには、世界の50カ国と領土(以下、国で表記)における2017年までの大腸がんの診断年、性別、5年ごとの年齢グループの発症データが含まれていた。 その結果、直近10年間(2008〜2017年、一部の国を除く)の若年性大腸がん罹患率の年平均変化率(average annual percentage change;AAPC)は50カ国中27カ国で上昇していることが示された。特にニュージーランド(AAPC 3.97%)、チリ(同3.96%)、プエルトリコ(同3.81%)、英イングランド(同3.59%)では、顕著な上昇が認められた。一方、高齢層でのAAPCに関しては、これら27カ国中14カ国で変化が認められないか(アルゼンチン、フランス、アイルランド、ノルウェー、プエルトリコ)、低下していた(オーストラリア、カナダ、ドイツ、イスラエル、ニュージーランド、スロベニア、イングランド、スコットランド、米国)。また、若年層と高齢層の双方でAAPCに上昇傾向が認められた13カ国のうち、チリ、日本、スウェーデン、オランダ、クロアチア、フィンランドでは若年層のAAPCの方が高齢層よりも高かったのに対し、タイ、マルティニーク(フランス海外県)、デンマーク、コスタリカでは若年層のAAPCの方が高齢層よりも低かった。 直近5年間(2013〜2017年、一部の国を除く)における10万人年当たりの若年性大腸がんの年齢調整罹患率(ASR)は、オーストラリア(ASR 16.5)、米国(同14.8)、プエルトリコ(同15.2)、ニュージーランド(同14.8)、韓国(同14.3)で特に高く、ウガンダ(同4.4)とインド(同3.5)で低かった。 Sung氏は、「この懸念すべき傾向が世界規模で広がっていることは、食習慣、運動不足、過体重に関連するがんを予防し、制御するための革新的なツールを開発する必要性を浮き彫りにしている」と述べている。その上で同氏は、「このような傾向の背後にある要因を特定し、世界中の若年層や地域のリソースに合わせた効果的な予防戦略を開発するには、継続的な取り組みが不可欠だ」と話す。同氏はさらに、「若年層やプライマリケア提供者の間で、直腸出血や腹痛、排便習慣の変化、原因不明の体重減少などの若年性大腸がんに特徴的な症状に対する認識を高めることは、診断の遅れを減らし、死亡率を低下させるのに役立つ可能性がある」と付け加えている。 一方、Cancer Research UKのMichelle Mitchell氏は、「年齢を問わず、がんの診断は患者とその家族に多大な影響を及ぼす。50歳以上の人に比べて若年成人でのがんの罹患率は依然として非常に低いものの、若年性大腸がん増加の原因を究明することは重要だ」と述べている。

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重症大動脈弁狭窄症に冠動脈疾患を合併した症例の治療方針を決めるのに、たった1年の予後調査でよいのか(解説:山地杏平氏)

 重症の大動脈弁狭窄症に冠動脈疾患を合併する場合、患者が80歳以上や高リスク症例であれば、経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)と経皮的冠動脈形成術(PCI)による経皮的治療が選択されることが多く、一方で、若年者やリスクが低い症例では、長期成績を踏まえ、大動脈弁置換術(SAVR)と冠動脈バイパス術(CABG)による外科手術が推奨されます。 TCW研究では、70歳以上の無症候性重症大動脈弁狭窄症かつ、50%以上の狭窄を有する2枝以上の冠動脈病変、もしくは20mm以上の病変、あるいは分岐部を含む左前下行枝病変を有する症例について、経皮的治療と外科手術を無作為比較しています。 実際に登録された症例の平均年齢は76歳で、STS-PROMスコアやEuroSCORE IIは2~3%と低く、低リスク症例が中心でした。当初の計画では328例の登録を予定していましたが、外科手術群で心臓死や重大な出血イベントが多くみられたため、172例の登録時点で試験が中止されました。カプランマイヤー曲線では両群間で明確な差が示されましたが、登録症例数が少ないため、絶対的なイベント数は多くなく、経皮的治療群では91例中4例(4%)にイベントが発生し、外科手術群では77例中17例(23%)に発生しました。 本試験では低左心機能(左室駆出率30%未満)や腎不全(eGFR 29mL/分/1.73m2未満)の症例が除外されています。それにもかかわらず、とくに、外科手術群での7例の死亡と9例の重大な出血イベントについては、発生率は高く感じられます。一方で、経皮的治療群のイベント数(死亡1例、脳梗塞1例、心筋梗塞2例、重大な出血イベント2例)は、逆に少なすぎるようにも思われます。重大な出血イベントについては、外科手術に関連するものとして理解できますが、外科手術群での死亡の多くは30日以降にみられており、偶然多かった可能性は否定できません。試験が予定登録数の約半分で中止されたため、統計的なパワー不足であることは注意が必要です。 CABGの良さは、左内胸動脈(LITA)を使って左前下行枝(LAD)に吻合することで、長期的なイベントリスクを低減することです。一方で、1年の予後はPCIとCABGであまり差はないように思います。70歳できちんとLITAをLADにつないで、将来のイベントを予防するメリットについては、今回の試験では評価されておらず、TCW研究結果をそのまま実臨床に反映させるには慎重な対応が必要です。

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高血圧患者の家庭脈拍数、66bpm以上で死亡リスク2倍超/帝京大

 診察室脈拍数は、心血管疾患の発症リスクや全死亡リスクと関連することが知られている。しかし、家庭脈拍数との関連は明らかになっていない。そこで、大久保 孝義氏(帝京大学医学部公衆衛生学講座 主任教授)、木村 隆大氏(帝京大学医学部附属溝口病院)らの研究グループは、高血圧を有する患者の家庭脈拍数と死亡、心血管イベントとの関連を検討した。その結果、家庭脈拍数が高いと全死亡リスクも高いことが示された。本研究結果は、Journal of the American Heart Association誌2024年12月17日号で報告された。 本研究は、日本人の家庭血圧の適正な降圧目標値を検討した無作為化比較試験「HOMED-BP試験」1)のサブ解析として実施された。対象患者は、心房細動や脳心血管疾患の既往歴のない40~79歳の高血圧(収縮期血圧135 mmHg以上または拡張期血圧85 mmHg以上)患者3,022例とした。家庭脈拍数は、降圧治療開始前5日間の測定結果の平均値をベースライン値とし、ベースライン値で5群(41.6~61.1bpm、61.2~66.1bpm、66.2~70.5bpm、70.6~76.2bpm、76.3~108.6bpm)に分類した。主要評価項目は全死亡、副次評価項目は主要心血管イベント(MACE)であった。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は59.4歳、女性の割合は50.2%(1,518/3,022例)、ベースライン時の家庭脈拍数の平均値は69.0bpmであった。・追跡期間中央値は7.3年であった。・ベースライン時の家庭脈拍数が高いと、全死亡リスクが高かった(bpm 1SD増加当たりのハザード比[HR]:1.52、95%信頼区間[CI]:1.24~1.92)。・治療中についても同様で、治療中の家庭脈拍数が高いと全死亡リスクが高かった(bpm 1SD増加当たりのHR:1.70、95%CI:1.39~2.08)。・全死亡リスクをベースライン時の家庭脈拍数別にみると、66.2~70.5bpm以上の3群でリスクが上昇した。各群のHRは以下のとおり。 41.4~61.1bpm:1.00(対照) 61.2~66.1bpm:1.00 66.2~70.5bpm:2.49 70.6~76.2bpm:2.21 76.3~108.6bpm:2.89・家庭脈拍数と診察室脈拍数の両者を含めた多変量解析では、家庭脈拍数が全死亡の有意な関連因子であったが、診察室脈拍数には有意な関連がみられなかった。・MACEと家庭脈拍数には有意な関連は認められなかった。 著者らは「家庭脈拍数が死亡リスクを予測する有用な指標であり、臨床において家庭脈拍に注意することの重要性を示した。高脈拍数と関連する改善可能な生活習慣(喫煙、座りがちな生活など)の特定や是正、指導の一助となることが期待される」とまとめた。

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肝臓手術前の瀉血療法は輸血リスクを低減する

 カナダ、オタワ在住の2児の母であるRowan Laddさん(46歳)は、2022年、予定されている肝臓に転移したがんを摘出する手術を開始する前に、血液を採取して保存する可能性があると医師から説明を受けた際、不思議には思ったが害はないだろうと考えた。Laddさんは、「肝臓には血管がたくさんあるので大出血のリスクがあることは手術前の説明で聞いている。研究者達がそのリスクを低減させるために努力しているのは素晴らしいことだと思った」と振り返る。 実際、Laddさんが参加した臨床試験の結果によると、このような採血により肝臓手術中に必要となる輸血のリスクが半減することが明らかになった。この研究結果は、「The Lancet Gastroenterology & Hepatology」に12月9日掲載された。論文の筆頭著者で、オタワ大学(カナダ)肝膵胆道研究部長のGuillaume Martel氏は、「大規模な肝臓手術の直前に血液を患者から採取することは、出血量と輸血を減らすための方法としてこれまでわれわれが見出した中で最良の方法だ」と述べている。 Martel氏らは、肝臓手術を受けた患者の4分の1から3分の1は、過度の出血のため輸血が必要になると指摘する。肝臓手術の最も一般的な理由はがんであるが、残念ながら輸血ががんの再発リスクを高める可能性があるという。 Martel氏らは、2018年から2023年の間にカナダの4つの病院で、肝切除を受ける予定がある患者486人を登録し、循環血液量減少を目的とした瀉血療法を受ける群(245人、瀉血療法群)と通常のケアを受ける群(241人、通常ケア群)にランダムに割り付けた。瀉血療法群は、肝切除前に体重1kg当たり7~10mLの全血を採取された。 最終的に、瀉血療法群223人(平均年齢61.4歳、男性61%)と通常ケア群223人(平均年齢62.1歳、男性51%)を対象に解析が行われた。ランダム化後30日以内の赤血球輸血率は、瀉血療法群で8%(17/223人)、通常ケア群で16%(36/223人)であった。群間差は−8.8(95%信頼区間−14.8〜−2.8)、調整リスク比(aRR)は0.47(同0.27〜0.82)であり、瀉血療法群では輸血リスクが有意に低下していた。また、30日以内に重篤な合併症が生じた割合(瀉血療法群17%、通常ケア群16%)と、あらゆる合併症の発生率(それぞれ、61%、52%)に両群間で有意な差は認められなかった。 Martel氏は、循環血液量減少を目的とした瀉血療法について、「肝臓の血圧を下げることで効果を発揮する。この方法は安全で、簡単で、費用もかからないことから、出血リスクの高い肝臓手術では必ず検討すべきだ」と述べている。 Laddさんの手術は、輸血を必要とすることなく終わり、2年が経過した今もがんは再発していない。Laddさんはこの臨床試験について、「私が選ばれて本当に良かったと思うし、それが他の人の助けになることにも喜びを感じている。この手術は、私の命を救ってくれたと感じている。私は仕事を辞めて、リラックスし、自分のことを大事にするようになった。がんになったのは不運だったが、それが私の目を覚まさせてくれた。以前はただ生きているだけだったが、今は自分の人生を心から楽しんでいる」と話している。 研究グループは、瀉血療法は大幅なコスト削減につながることも指摘している。カナダでは、輸血には350ドル(1ドル154円換算で5万3,900円)以上かかるが、瀉血療法に使われる血液バッグとチューブのコストは20ドル(同3,080円)程度に過ぎない。研究グループは、この手順は現在、肝臓移植の手術で試験されているが、大量の出血を伴いがちな他の手術でも試験的に検討されるべきだとの考えを示している。論文の共著者であるモントリオール大学(カナダ)輸血医学部長のFrançois Martin Carrier氏は、「一度実施してみれば、医療従事者はこの処置の容易さが分かるし、それが手術に与える影響は劇的だ。これは現在、試験に参加した4つの病院で標準治療となっている。この研究結果が公表されれば、世界中の他の病院でもこの処置を採用し始めるはずだ」と述べている。

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乾癬性関節炎〔PsA:psoriatic arthritis〕

1 疾患概要■ 定義乾癬に関節炎(炎症性関節症)を伴ったもの。「関節症性乾癬」とも呼ばれる。乾癬は尋常性(局面型)乾癬が最も多いが、乾癬性紅皮症や汎発性膿疱性乾癬に関節炎が合併することもある。■ 疫学国内外でいくつもの疫学データがあり、乾癬患者の10%以下から多いものでは40%を超えるとする報告もある1)。日本乾癬学会の疫学データでは、乾癬患者の15.2%が2)、また、リウマチ科主導で行われた多施設共同のデータでは14.3%が乾癬性関節炎を有していた。 したがって、紹介患者を受け入れる基幹病院では、乾癬患者のおおよそ14~15%が乾癬性関節炎と推定される。東アジアにおける疫学をみると、乾癬患者における乾癬性関節炎の占める割合は、韓国は9~14.1% 、中国は5.3~7.1% と報告されている3)。働き盛りの青壮年期に多く、わが国では乾癬、乾癬性関節炎ともに男性が多い。■ 病因関節リウマチが滑膜炎であるのに対し、乾癬性関節炎は付着部炎がprimaryな変化と考えられている。付着部は、筋肉や腱が骨に付着する部位で、微細な外的刺激が繰り返し加わることにより付着部に炎症が惹起される。乾癬性関節炎でも二次的な滑膜炎がみられることもある。■ 症状皮膚症状と関節症状があり、皮膚症状は落屑性紅斑(乾癬)で、好発部位は頭、肘、膝、臍などだが、頭の先から足のつま先までどこにみられても不思議ではない。関節症状は末梢関節が侵される頻度が高いが、大関節(頸椎、腰椎、仙腸関節など)が侵されることもまれではない。末梢関節が侵されると、罹患関節の腫脹や変形がみられることもある。また、乾癬性関節炎の中には、皮膚症状が目立たない(非常に軽度の)場合もある。そのほか、爪乾癬(爪の点状陥凹、肥厚、白濁など)がみられることが多く、爪の変化とその近傍の第一関節の痛みや腫れが一緒にみられることもある。皮膚症状(乾癬)が先行、または皮膚症状と関節症状がほぼ同時期に出現する場合が9割以上を占め、関節炎が先行する頻度は少ない4)。■ 分類関節症状により、以下の5群に分けられている (Moll&Wrightの分類)5)。(1)非対称性関節炎型(Oligo-arthritis type)(2)関節リウマチ類似の対称性関節炎型(Poly-arthritis type)(3)定型的関節炎型(DIP type)(4)ムチランス型(5)強直性脊椎炎型(Ankylosing spondylitis[AS]type)■ 予後乾癬においてはさまざまな併存症がみられる。乾癬性関節炎においても、肥満、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症などの生活習慣病が多い。さらに、動脈硬化症や心筋梗塞の心血管病変が予後に影響することが多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)CASPAR(Classification criteria for psoriatic arthritis)の分類基準がある。炎症性関節症があるのが前提で、3点以上で乾癬性関節炎と診断するとあるが、そもそも患者は皮膚症状がないと皮膚科を受診しないので、乾癬があれば2点、爪乾癬がある(1点)かリウマトイド因子が陰性(1点)であれば、それだけで3点を超えてしまう。他の項目に、指趾炎と呼ばれる手や足の指の芋虫状の腫れ(1点)と、手足の単純X線所見で関節周囲の骨新生像(1点)があるが、どちらも早期にみられる所見ではない。乾癬性関節炎を診断するいくつかの特徴的な症状に、付着部炎や指趾炎があるが、これらがみられるときはすでに早期ではない。したがって早期診断はきわめて難しい。■ 鑑別診断高齢者は膝や腰を始め関節の痛みを訴えることが多い。変形性関節症や関節リウマチを始め、リウマチ性多発筋痛症、痛風、偽痛風など関節の痛みや変形を来すさまざまな疾患との鑑別を要する。とくに手指の変形性関節症を鑑別する必要がある。変形性関節症は、手指DIP関節の変形だけのものは容易だが、痛みを伴うinflammatory osteoarthritis、 erosive osteoarthritisは、乾癬性関節炎との鑑別が難しい。関節リウマチ患者は女性に多く、罹患関節数が少ないこと、DIP関節が罹患することはまれで、同一レベルの関節が侵されるのに対し(横方向)、乾癬性関節炎では同じ指の異なる関節が縦方向に侵され、“Ray distribution”と呼ばれる。血清リウマチ因子や抗CCP抗体は、乾癬性関節炎の1割程度でも陽性にみられる。関節滑膜の増殖は関節リウマチの方が強く、それを反映し両者の差異を検出しうる関節エコーが有用とされる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)乾癬性関節炎は、皮膚症状が優位な症例、関節症状が優位な症例、どちらも症状が顕著な症例などがある。したがって、皮膚、関節それぞれの重症度をまず評価する。GRAPPAのガイドラインでは、乾癬性関節炎の症状を、末梢関節炎、体軸性関節炎、付着部炎、指趾炎、乾癬、爪病変の6つのドメインに分け、それぞれの症状ごとに、外用薬、非ステロイド系消炎鎮痛薬、理学療法、ステロイド局注などでコントロール不十分な症例に対しての内服薬(synthetic DMARD)や注射薬(biologic DMARD)の治療法を提示している。内服薬は、通常の非ステロイド系消炎鎮痛薬に加え、メトトレキサートとアプレミラスト(商品名:オテズラ錠)が、乾癬性関節炎に使われる代表的な薬剤である。メトトレキサートは、骨髄抑制と肝障害が頻度の高い注意すべき副作用で、間質性肺炎やHBV再活性化なども頻度は少ないが注意しなくてはならない。アプレミラストは、消化器症状、頭痛の頻度の高い副作用ではあるが、重篤な症状は少ないので高齢者にも使いやすい。新規内服薬としてJAK阻害剤が登場したほか、乾癬性関節炎の関節変形の進行を抑制するには生物学的製剤が中心的に使用されている。生物学的製剤は、TNF、IL-17に対する抗体製剤が使われることが多いが、ほかにIL-23の標的薬もある。4 今後の展望乾癬の治療薬の進歩は目覚ましく、生物学的製剤やJAK阻害剤内服薬が、適応拡大も含めて今後も新規に参入してくると思われる。5 主たる診療科皮膚科、リウマチ内科、整形外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)患者会情報日本乾癬患者連合会(患者とその家族および支援者の会)1)山本俊幸. Visual Dermatology. 2017;16:690-693.2)Yamamoto T, et al. J Dermatol. 2017;44:e121.3)Yamamoto T, et al. J Dermatol. 2018;45:273-278.4)Yamamoto T, et al. J Dermatol. 2016;43:1193-1196.5)山本俊幸. 日皮会誌. 2022;132;19-25.公開履歴初回2025年1月8日

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診療科別2024年下半期注目論文5選(循環器内科編)

Transcatheter Edge-to-Edge Repair for Severe Isolated Tricuspid RegurgitationDonal E, et al. JAMA. 2024 Nov 27. [Epub ahead of print]<Tri.Fr試験>:重症三尖弁逆流のカテーテル治療の時代がくるか?重症三尖弁逆流へのカテーテル治療であるedge-to-edge修復術(T-TEER)を至適薬物療法(OMT)に併用することによって、アウトカムが改善するかを検討。T-TEER+OMT療法はOMT単独療法と比較して、1年後の患者報告アウトカム指標と臨床イベントからなる複合スコアを改善しました。TriClip®による三尖弁カテーテル治療の適応について本邦でも議論が進むものと期待されます。Beta-Blocker Interruption or Continuation after Myocardial InfarctionSilvain J, et al. N Engl J Med. 2024;391:1277-1286.<ABYSS試験>:心筋梗塞既往患者でβ遮断薬の開始ではなく中断を検討、継続すべし薬剤の有効性と安全性を検討し、ポジティブな結果であれば新規の内服開始を薦めるという研究が多くなっています。しかしいったん開始した薬剤は永久に必要なのでしょうか。合併症のない心筋梗塞既往患者において、β遮断薬の長期中断について検討した本研究は興味深いものです。結果として、β遮断薬の中止は安全であると示すことはできませんでした。単純に解釈すれば継続投与が必要となります。β遮断薬を再評価する複数の臨床試験が進行中で、議論が続くと思われます。Pulmonary Vein Isolation vs Sham Intervention in Symptomatic Atrial FibrillationDulai R, et al. JAMA. 2024;332:1165-1173.<SHAM-PVI試験>:心房細動アブレーションの実手技vs.シャム(偽手技)、究極のランダマイズ試験これまでにも心房細動へのアブレーション治療についてのランダマイズ試験は存在し、改善効果を示してきました。しかしアブレーション実施の有無は、医師や患者本人には盲検化されていないため、QOLの改善が実手技を受けた患者のプラセボ効果ではないかとの批判がありました。実手技vs.シャム手技を比較する試験を計画し実施した著者に敬意を表します。シャム手技まで必要とするかとの意見もあると思われます。Finerenone in Heart Failure with Mildly Reduced or Preserved Ejection FractionSolomon SD, et al. N Engl J Med 2024;391:1475-1485.<FINEARTS-HF試験>:ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬フィネレノンは、HFmrEFとHFpEFに有効フィネレノンは、スピロノラクトンやエプレレノンと異なる非ステロイド骨格を有するミネラルコルチコイド受容体拮抗薬です。HFmrEFとHFpEFで、総心不全増悪イベントと心血管系による死亡の複合アウトカムを有意に抑制。SGLT2阻害薬に続いて、この患者群でイベント抑制効果を達成したことは興味深いものです。死亡に至った高カリウム血症はないものの、入院に至った高カリウム血症はフィネレノン群で多いことには注意が必要です。Rivaroxaban for 18 Months Versus 6 Months in Patients With Cancer and Acute Low-Risk Pulmonary Embolism: An Open-Label, Multicenter, Randomized Clinical Trial (ONCO PE Trial)Yamashita Y, et al. Circulation. 2024 Nov 18. [Epub ahead of print]<ONCO PE Trial>:がん合併の低リスク肺塞栓症患者には長期間のDOAC投与を ONCO PE試験は、リスクの低い肺塞栓症を合併したがん患者を対象に、直接経口抗凝固薬(DOAC)であるリバーロキサバンの投与期間を検討した研究。2024年11月に米国シカゴで開催されたAHA2024のLate Breakingで発表され、Circulation誌に同時掲載されました。DOACの投与期間は18ヵ月間投与群のほうが、6ヵ月間投与群より再発が少なく優れていました。

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高齢者の術後せん妄予防に最も効果的な薬剤は〜ネットワークメタ解析

 高齢患者における術後せん妄の発生率および死亡率は高く、予防戦略の必要性が求められている。さまざまな薬理学的予防戦略が有効であることが報告されているものの、高齢者を対象としたベネフィットや安全性は、依然として明らかになっていない。台湾・Chi Mei Medical CenterのTing-Hui Liu氏らは、高齢者患者における術後せん妄予防に対するさまざまな薬理学的介入の有効性をシステマティックに評価し、ランク付けするため、ネットワークメタ解析を実施した。Journal of Psychiatric Research誌2025年1月号の報告。 2023年8月1日までに公表されたランダム化比較試験(RCT)をPubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、PsycINFO、Google Scholarより検索した。対象RCTには、高齢患者における術後せん妄の薬理学的予防効果を調査した研究を含めた。事前に定義した事項に沿ってデータを抽出するため、PRISMAガイドラインを用いた。主要アウトカムは、術後せん妄の発生率とした。副次的アウトカムは、忍容性とし、すべての原因による中止または脱落率、すべての原因による死亡率により評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象RCT44件、対象患者1万1,178例をメタ解析に含めた。・これらの研究のうち、26件のRCTはプラセボのみとの比較試験であった。・プラセボと比較し、せん妄の発生率が有意に低かった薬剤は、次のとおり。【非定型抗精神病薬】オッズ比(OR):0.27、95%信頼区間(CI):0.12〜0.58【ハロペリドール】OR:0.42、95%CI:0.25〜0.71【デクスメデトミジン】OR:0.51、95%CI:0.37〜0.71【メラトニン受容体作動薬】OR:0.57、95%CI:0.33〜0.98・最も効果的な治療としてランク付けされた薬剤は、非定型抗精神病薬であった。・忍容性に関しては、プラセボまたは各薬理学的治療群において、脱落率およびすべての原因による死亡率に統計学的な差は認められなかった。 著者らは「高齢患者における術後せん妄に対する薬理学的介入は、非定型抗精神病薬、デクスメデトミジン、メラトニン受容体作動薬、ハロペリドールが効果的であることが特定された。とくに、非定型抗精神病薬は最も評価が高かった」とし「これらの結果をさらに確認するためにも、RCTの必要性が示唆された」と結論付けている。

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医師の学会発表と急性心筋梗塞の院内死亡率が関連~日本の後ろ向き研究

 臨床医が日本循環器病学会で発表している病院で治療された心筋梗塞患者は、発表していない病院で治療された患者より院内死亡率が低く、また、エビデンスに基づく薬剤処方が多かったことが京都大学の高田 大輔氏らによる後ろ向き研究でわかった。PLoS One誌2024年12月9日号に掲載。 本研究では、QIP(Quality Indicator/Improvement Project)に参加している日本の急性期病院の管理データベースを解析した。2014年4月1日~2018年12月31日に急性心筋梗塞で入院した患者を、入院した病院の医師がその年の日本循環器学会年次学術集会で発表があった患者(学会発表群)と、学会発表のなかった病院に入院した患者(対照群)に分け比較した。5つのモデル(未調整モデル、モデル1:性別・年齢・Killip分類・喫煙・救急車の使用・高血圧・心房細動・陳旧性心筋梗塞・糖尿病・腎臓病・慢性閉塞性肺疾患で調整、モデル2:モデル1に加え、入院年と各病院の年間入院数で調整、モデル3:病院コードでクラスター化し、モデル1と同じ変数で調整したマルチレベル分析、モデル4:モデル1に加え、因果媒介分析によりEvidence-based Practiceで調整)における院内全死亡リスクを、多変量ロジスティック回帰分析を用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・Killip分類または救急車の使用に関するデータがなかった3,544例を除外し、384の急性期病院における5万6,923例のデータを解析した。・エビデンスに基づく薬剤の処方は、学会発表群が対照群より有意に多かった。・モデル4を除いて、学会発表が低い院内死亡率と有意に関連していた。各モデルのオッズ比(95%信頼区間)は以下のとおり。 未調整モデル:0.68(0.65~0.72) モデル1: 0.73(0.68~0.79) モデル2:0.76(0.70~0.82) モデル3:0.84(0.76~0.92) モデル4:1.00(0.92~1.09) 著者らは「学会発表は院内死亡率の低下と関連しており、医師が学会発表を行う病院では患者がより多くのエビデンスに基づく診療の恩恵を受ける傾向がある」と結論した。一方、本研究の限界として、学会発表を日本循環器学会学術集会のみとしていること、今回調整していない組織文化や循環器医師のモチベーションなど、病院および個人の交絡因子があることを挙げている。

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早期/局所進行TNBCの術前補助療法、camrelizumab追加でpCR改善/JAMA

 早期または局所進行トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者の術前補助療法において、化学療法単独と比較して化学療法に抗PD-1抗体camrelizumabを追加すると、病理学的完全奏効(pCR)の割合を有意に改善し、術前補助療法期に新たな安全性シグナルは発現しなかったことが、中国・復旦大学上海がんセンターのLi Chen氏らが実施した「CamRelief試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年12月13日号に掲載された。中国の無作為化プラセボ対照第III相試験 CamRelief試験は、早期または局所進行TNBCの術前補助療法におけるcamrelizumab追加の有益性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年11月~2023年5月に中国の40病院で患者を登録した(Jiangsu Hengrui Pharmaceuticalsの助成を受けた)。 年齢18~75歳、StageIIまたはIIIの浸潤性TNBCの女性(性別は自己申告)で、乳がんに対する全身治療を受けておらず、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group performance-status(ECOG PS、0~5点、点数が高いほど機能障害が重度)のスコアが0または1点の患者を対象とした。 これらの患者を、術前補助療法(24週間)として、化学療法(2週ごと)との併用でcamrelizumab(200mg、2週ごと)またはプラセボの静脈内投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。化学療法は、最初の16週間はnab-パクリタキセル(100mg/m2)とカルボプラチン(曲線下面積[AUC]1.5)を28日間(1サイクル)の1、8、15日目に投与し、次の8週間はエピルビシン(90mg/m2)とシクロホスファミド(500mg/m2)を2週ごとに投与した。その後、手術を行い、術後補助療法として、camrelizumab群はcamrelizumab 200mgを2週ごとに最長1年間投与+標準治療、プラセボ群は標準治療のみを受けた。 主要評価項目はpCRで、両乳房とリンパ節に浸潤性腫瘍がない状態(ypT0/Tis ypN0)と定義した。副次評価項目のデータは不十分 441例(年齢中央値48歳[範囲:22~75]、StageIII 158例[35.8%]、リンパ節転移あり331例[70.5%])を、camrelizumab群(222例)またはプラセボ群(219例)に無作為に割り付けた。camrelizumab群の198例(89.2%)とプラセボ群の200例(91.3%)が手術を受けた。無作為化後の追跡期間中央値は14.4ヵ月(範囲:0.0~31.8)だった。 pCRを達成した患者は、プラセボ群で98例(44.7%)であったのに対し、camrelizumab群では126例(56.8%)と有意に達成患者割合が高かった(達成率の群間差:12.2%、95%信頼区間[CI]:3.3~21.2、片側p=0.004)。 データカットオフ(2023年9月30日)の時点で、副次評価項目である無イベント生存、無病生存、遠隔無病生存のデータは不十分であったが、18ヵ月無イベント生存率はcamrelizumab群86.6%、プラセボ群83.6%(ハザード比:0.80、95%CI:0.46~1.42)、12ヵ月無病生存率はそれぞれ91.9%および87.8%(0.58、0.27~1.24)、12ヵ月遠隔無病生存率は91.9%および88.4%(0.62、0.29~1.33)だった。 また、手術前の画像上の奏効は、camrelizumab群が194例(87.4%)、プラセボ群は181例(82.6%)で達成された(群間差:4.7%、95%CI:-1.8~11.1)。術後補助療法期にも新たな安全性シグナルは認めない 術前補助療法期に、Grade3以上の有害事象はcamrelizumab群198例(89.2%)、プラセボ群182例(83.1%)に発現した。両群とも血液毒性が主で、白血球数の減少がそれぞれ73.4%および67.6%、好中球数の減少が80.2%および77.2%、貧血が30.2%および21.9%に認めた。また、重篤な有害事象は、それぞれ77例(34.7%)および50例(22.8%)に発現し、camrelizumab群で致死的有害事象を2例(0.9%)に認めた。 camrelizumab群では、205例(92.3%)に免疫関連有害事象を認め、21例(9.5%)がGrade3以上であった。最も頻度が高かったのはreactive capillary endothelial proliferation(195例[87.8%])で、このうちGrade3以上は5例(2.3%)だった。 また、術後補助療法期のcamrelizumabの継続投与では、Grade3以上の有害事象、重篤な有害事象、免疫関連有害事象に関して、新たな安全性シグナルは認めなかった。 著者は、「これらの結果を先行研究と統合すると、とくに高リスクの患者における強力化学療法レジメンと併用した場合のcamrelizumabの有益性が示され、早期または局所進行TNBCの新たな治療選択肢となる可能性を支持する知見と考えられる」としている。

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