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使用済みの油を使った揚げ物は脳に悪影響を及ぼす

 揚げ物はウエストを太くするだけでなく、脳にも悪影響を及ぼす可能性のあることが、ラットを用いた実験で示唆された。使用済みのゴマ油やヒマワリ油とともに餌を与え続けたラットでは肝臓や大腸に問題が生じ、その結果、脳の健康にも影響が及ぶことが明らかになった。タミル・ナードゥ中央大学(インド)のKathiresan Shanmugam氏は、「使用済みの油が脳の健康に及ぼす影響は、油を摂取したラットだけでなく、その子どもにも認められた」と述べている。この研究結果は、米国生化学・分子生物学会議(ASBMB 2024、3月23〜26日、米サンアントニオ)で発表された。 Shanmugam氏は、「高温で食べ物を揚げる調理法はいくつかの代謝疾患と関連付けられているが、揚げ油の摂取と健康への有害な影響に関する長期的な研究は実施されていない。われわれの知る限り、長期にわたる使用済み油の摂取が第一世代の子孫の神経変性を増加させるという報告は初めてだ」と話している。 研究グループは、食品は油で揚げることによりカロリーが大幅に増加する上に、再利用された揚げ油は、天然の抗酸化物質や健康上の利点の多くを失う一方、有害な化合物を増加させることが多いと説明する。今回、Shanmugam氏らは、揚げ油の長期にわたる摂取の影響を調べるため、雌の実験用ラットを30日にわたって、標準的な餌を与える群、未使用のゴマ油またはヒマワリ油0.1mLと標準的な餌を与える群、加熱使用済みのゴマ油またはヒマワリ油0.1mLと標準的な餌を食べる群の5群に分けた。餌の影響は、最初の子孫(第一世代)まで追跡された。 その結果、加熱使用済みのゴマ油またはヒマワリ油を摂取した群ではその他の群に比べて、総コレステロール、LDLコレステロール、およびTAG(トリアシルグリセロール)の値が有意に増加し、肝機能検査では、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)値とALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)値の有意な上昇が認められた。また、これらの群では、炎症マーカーのHs-CRP(高感度C反応性タンパク質)値とLDH(乳酸脱水素酵素)値が有意に上昇し、RT-PCR検査では、抗酸化物質遺伝子SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)とGPX(グルタチオンペルオキシダーゼ)の発現が有意に増加していることも示された。さらに、肝臓および大腸の組織学的解析では、加熱使用済みのゴマ油またはヒマワリ油を摂取した群では細胞構造に有意な損傷が見られた。ダメージを受けた大腸では、特定の細菌から放出される毒素であるエンドトキシンやリポ多糖に変化が生じ、「その結果、肝臓の脂質代謝が著しく変化し、重要な脳のオメガ-3脂肪酸であるDHAの輸送が減少し、これにより、これらのラットとその子孫では、神経変性が引き起こされた」とShanmugam氏は説明している。 Shanmugam氏は、「これらの結果は、使用済みの油の再利用が、肝臓・腸・脳の間の結合に影響を及ぼす可能性を示唆している」と述べている。ただし研究グループは、「これは初期の研究結果であり、動物実験の結果がヒトにも当てはまるとは限らない」と強調している。 研究グループは次の段階として、揚げ物の摂取がアルツハイマー病やパーキンソン病のような脳の病気、不安やうつ病のような気分障害に及ぼす潜在的な影響について研究したいと考えている。また、「これらの結果は、腸内細菌叢と脳の関係に関する新たな研究実施の可能性につながるものでもある」との見方を示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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約90%の心血管疾患患者はナトリウムを摂取し過ぎ

 心血管疾患の治療にはナトリウムの摂取を控えることが重要であるが、ほとんどの心血管疾患患者は摂取量を制限できていないようだ。新たな研究で、心血管疾患患者は概して、推奨されている1日当たりのナトリウム摂取量の2倍以上を摂取していることが明らかになった。ナトリウムは、人間の健康に不可欠ではあるが、過剰摂取は血圧を上昇させ、血管にダメージを与え、心臓の働きを悪くする上に、体液の貯留を引き起こして心不全などの症状を悪化させ得ると研究グループは指摘している。米Piedmont Athens Regional病院のElsie Kodjoe氏らによるこの研究結果は、米国心臓病学会(ACC 24、4月6〜8日、米アトランタ)で発表された。 米国の食事ガイドラインでは、心血管疾患患者ではナトリウムの摂取量を1日1,500mg(食塩相当量3.81g)に、健康な人でもナトリウム摂取量を1日2,300mg(食塩相当量5.84g)未満に制限することを推奨している。 この研究では、2009年から2018年の間に国民健康栄養調査(NHANES)に参加した、心血管疾患(脳卒中、心筋梗塞、心不全、冠動脈疾患、狭心症)患者3,170人の食事データの分析が行われた。対象者は24時間の間に摂取した全てのものを報告していた。 その結果、対象者の89%が1日当たりの推奨量を上回る、1日当たり平均3,096mgのナトリウムを摂取しており、この値は、米疾病対策センター(CDC)が以前に報告した全国の平均摂取量(3,400mg/日)をわずかに下回るに過ぎなかった。収入-貧困比(IPR)の増加は1日当たり46mgのナトリウム摂取量の増加と有意に関連していたが、この関連は年齢、性別、人種、教育レベルで調整すると有意ではなくなった。 これらの結果についてKodjoe氏は、「心血管疾患患者の摂取量と全国平均との間でナトリウム摂取量の差が比較的小さかった。このことは、心血管疾患患者は一般の人と比べて摂取量を積極的に制限しているわけではないこと、また、心血管疾患患者に対して推奨されている摂取量の2倍以上を摂取していることを示唆している」と話している。 Kodjoe氏は、「スーパーマーケットで売られている食品やテイクアウトの食事に含まれるナトリウム量を推定するのは困難だ」と指摘する。さらに同氏は、「ナトリウム量を示す食品ラベルは、その量を推測する助けにはなる。しかし、低ナトリウム食の遵守は、遵守に対する強い動機があるはずの心血管疾患患者にとってさえも極めて困難だ」と話す。そして、「心血管疾患患者が食事療法のガイドラインを守りやすくするためには、一般の人々が食事中のナトリウムの量を推定できるような、より実用的な方法を見つける必要がある」と主張している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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抗血小板療法を「軽くする」時代(解説:後藤信哉氏)

 筆者の循環器内科医としてのキャリアは1980年代に始まった。心筋梗塞は入院後も突然死リスクのある恐ろしい疾病であった。抗血小板薬としてアスピリンが標準治療と確立されつつある時代であった。PCIの適応は限局的で、基本的に急性冠症候群にはPCIの選択はなかった。t-PAが急性期予後を改善する薬剤として注目されていた。心筋梗塞発症後も血栓の再発による予後悪化が常に危惧されていた。 心筋梗塞急性期のPCIの普及により、発症後の生命予後は改善した。しかし、ステント血栓症などにより、急変が数週後に起こることがあった。薬剤溶出ステントでは、数ヵ月後のlate stent thrombosisも問題とされた。滅多に起きないけれど起こると重篤な合併症であるステント血栓症の予防のために、アスピリン・クロピドグレルの併用療法が普及した。標準量のクロピドグレルよりも強力なP2Y12阻害効果を有する用量のチカグレロル、プラスグレルも開発され普及した。抗血小板併用療法により重篤な出血合併症である頭蓋内出血も増えた。しかし、臨床医は血栓の予防に注目してきた。 冠動脈ステントの形状、材質、手技も改善した。ステント血栓症のリスクなどは低下してきた。重篤な血栓イベント以上に重篤な出血イベントの低減を目指す方向となった。アスピリンでも、アスピリン・クロピドグレルでも、アスピリン・チカグレロルでも、重篤な出血合併症が増加することは臨床試験の結果から明白であった。アスピリン、クロピドグレルは特許切れしているので、長期の使用を死守したいメーカーもいない。臨床医の方向は急性冠症候群の抗血小板療法を「軽くする」方向に向いた。本研究は、抗血小板療法を「軽くする」時代背景を反映したランダム化比較試験である。 急性冠動脈疾患でもIVUSを入れてしっかりと薬剤溶出ステントを入れた症例を対象として、ステント血栓症の懸念を減らした。90mg bidのチカグレロルは東アジアでは元々多すぎるとされた用量であった。過去の強い抗血小板薬が必要であった時代背景を踏まえて、本研究ではアスピリンを抜いても全体として大きな問題が起きないことを示した。抗血小板療法を「軽くする」時代に相応しい試験であった。

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英語で「急ぎの用件」は?【1分★医療英語】第128回

第128回 英語で「急ぎの用件」は?《例文1》This medication is time sensitive and must be taken every four hours without delay.(このお薬は時間どおりに、4時間ごとに遅れずに服用してください)《例文2》Your next appointment is time sensitive due to the prep required, so please arrive 15 minutes early.(次の予約は準備が必要になるため、時間厳守で15分前には来てください)《解説》「急ぎ」であることを伝える際、さまざまな言い方があります。カジュアルな言い回しでは、“This is urgent. Can you handle this ASAP?”(ASAP:as soon as possibleの略で発音は「エイサップ」)や、“Can you make it a high priority?”(優先させてもらえますか?)などと表現することもできます。“sensitive”は、「敏感な」という形容詞で、“sensitive skin”(敏感肌)、“hypersensitivity”(過敏症)といった病名のほか、片頭痛(migraine)の症状として“sensitive to light, sound and odor”(光、音、においに対する過敏反応)と表現するなど、医療現場でもさまざまな使われ方があります。“time”(時間)と組み合わせた“time sensitive”で、「時間に敏感な=時間厳守、急ぐ必要がある」という意味になります。相手を急かすときや、時間どおりにやる必要があり念を押したいときに、“This is time sensitive!”と言うことで、“urgent”(緊急)のニュアンスが伝わりやすくなります。「今すぐ」という意味だけでなく、「時間に限定的(時間どおりに)」と伝えるときも、例文のように使うことができます。ちなみに、詐欺メール(scam email)のタイトルにも、“TIME SENSITIVE”や“IMMEDIATE ACTION REQUIRED”と急かす言葉を入れ、「今すぐこのリンクをクリックしてください」と仕掛けてくる場合も多いので、だまされないよう気を付けてください。講師紹介

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第212回 三つ子の騒音百まで

三つ子の騒音百までヒトも動物もまったく静かに過ごせることなどなく、自然やヒトの営みで生じるありとあらゆる音と共にあります。催し物の喧騒、工事、交通騒音などでますます騒々しくなる世界の音環境は心配の種の1つです。どうやら騒音の害は生まれる前から始まるらしく、オーストラリアのチームが同国の固有の鳥であるキンカチョウ(zebra finch)を使って調べたところ、孵化前(すなわち卵のとき)と孵化後を交通騒音と共に過ごすこととその後の生涯に及ぶ健康の害との関連が示されました1-3)。キンカチョウは孵化してから巣立つまでしばらく親の世話を必要とする晩成鳥の一種で、交通騒音がほとんどないオーストラリアの砂漠地帯に生息します4)。同国のディーキン大学の生態学者Mylene Mariette氏とそのチームは許可を得て構内の鳥小屋で飼うキンカチョウの卵を夜間のみ拝借して、キンカチョウの鳴き声(以下、鳴き声)か交通騒音または静寂(silence)の中で過ごさせ、朝には親鳥がいる巣に戻しました。交通騒音か鳴き声で夜間を過ごした卵の雛は、羽化後4~13日目に卵のときと同様に夜間のみ拝借してそれら2つの音環境のいずれかの中で過ごさせ、朝に親のもとに戻しました。騒音の影響は早くも孵化前に生じるらしく、夜間を騒音と共に過ごした卵の孵化率は鳴き声と共に過ごした卵を下回りました。夜間を静寂の中で過ごした卵の孵化率はそれらの中間に位置していました。騒音は生まれた雛の経過にも影響し、発達の遅れと関連しました。卵のときと孵化後のどちらも交通騒音と共に過ごしたキンカチョウの孵化後12日時点での体重は、卵のときと孵化後のどちらも鳴き声と共に過ごしたキンカチョウを有意に下回りました。また、成鳥になってからの生殖への影響もあり、交通騒音と共に過ごしたキンカチョウは産み育てた仔の数が鳴き声と共に過ごしたキンカチョウの4割ほどでしかありませんでした。体内の生理的変化も観察され、卵や雛のときの交通騒音は染色体末端部のテロメア短縮と関連しました。テロメア短縮は細胞損傷を反映します。今回の研究で示唆されたような騒音の健康への害はヒトにも当てはまるかもしれません。騒々しい保育器や新生児棟での騒音が赤ちゃんに害を及ぼしている恐れがあります。妊婦やその赤ちゃんが病院で音に煩わされず過ごせるようにとくに配慮するに越したことはないようです4)。また、妊婦や赤ちゃんに限らず世間一般に蔓延する騒音をどこまでどう減らすかを見出すことにも今回の研究成果はやがて役立つでしょう2)。参考1)Meillere A, et al. Science. 2024;384:475-480.2)Traffic noise causes lifelong harm to baby birds / Science3)Noise pollution can harm birds even before they hatch / ScienceNews4)Slabbekoorn H. Science. 2024;384:380-382.

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コロナ禍以降、自宅での脳卒中・心血管死が急増/日本内科学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行期において、自宅や介護施設での脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患による死亡が増加し、2023年末時点でも循環器疾患による死亡のトレンドが減少していないことが、白十字会白十字病院 脳血管内科の入江 克実氏らの研究グループによる解析で明らかになった。本研究は、4月12~14日に開催された第121回日本内科学会総会・講演会の一般演題プレナリーセッションにて、入江氏が発表した。 入江氏によると、国内での総死亡数の推移データにおいて、2023年末時点でもCOVID-19流行前と比べて超過死亡は増加しているという。COVID-19の5類移行後はピークアウトしつつあるが、2023年では12万人ほどの超過死亡が見込まれ、その主な死因としてCOVID-19や循環器疾患の増加が認められる。しかし、2017~22年度のDPC対象病院における循環器疾患死亡数の推移データによると、死亡数が大きく増加している傾向は認められない。そのため本研究では、同時期の病院外での循環器疾患による死亡の推移を検討した。 本研究では、政府統計e-Stat人口動態統計を用い、死亡場所別に2013~22年の総死亡数と循環器疾患死亡数を抽出した。死亡場所は、病院/診療所、介護施設/老人ホーム、自宅に分類した。主な疾患ごとにCOVID-19拡大前(2013~19年)の死亡数から回帰直線を求め、2020年以降の推計値を算出し、実測値との差分を超過死亡とした。都道府県別にも同様の抽出を行い、COVID-19前後で自宅死亡数とその増減率を比較検討した。 主な結果は以下のとおり。・総死亡の死亡場所について、2013~19年までは病院/診療所、介護施設/老人ホーム、自宅のいずれも±3%内で、死亡数の推移に大きな変化はみられない。しかし、コロナ拡大後、病院外では死亡数が増加し続け、2022年の超過死亡率は、自宅では35%、介護施設/老人ホームでは23%に増加していた。一方、病院/診療所では、2020~21年に-5%まで一過性の減少を示したが、2022年には元のトレンドに戻った。・脳梗塞による死亡では、2013~19年の病院、介護施設、自宅のいずれも±6%内だが、COVID-19拡大後の2022年の超過死亡率は、自宅ではとくに顕著に48%に増加し、介護施設では13%、病院では7%に増加していた。・脳出血による死亡では、2013~19年の病院、介護施設、自宅のいずれも±5%内だが、2022年の超過死亡率は、自宅では13%、介護施設では17%に増加していた。一方、病院では2020~21年では-5%まで減少し、2022年では-2%であった。・心筋梗塞による死亡では、2013~19年の病院、介護施設、自宅のいずれも±3%内だが、2022年の超過死亡率は、病院で16%まで増加し、他の疾患とは異なる傾向が認められた。介護施設では23%、自宅では12%と病院外の死亡も増加している。・心不全による死亡では、2013~19年ではいずれの場所でも±7%内だが、2022年の超過死亡率は、自宅では33%、介護施設では12%に増加していた。病院では2020~21年に一過性の減少を示し、2022年には元のトレンドに戻った。・都道府県別にみた脳卒中による自宅死亡数では、COVID-19前後の変化に地域差が見られ、とくに大阪府(30%増)と群馬県(30%増)での自宅死亡率が増加していた。・都道府県別にみた心疾患による自宅死亡数では、とくに福岡県(61%増)と神奈川県(38%増)での自宅死亡率が増加していた。 入江氏は本結果について、「コロナ流行期における循環器疾患による病院外死亡数の増加は、サージキャパシティの不足によるものなのか、病院との連携による在宅看取りが進んでいるためなのか、地域ごとに医療逼迫の振り返りをする必要がある。なお、本研究は2022年までのデータを示しているが、2023年11月までのデータから推計しても、死亡率はいまだに高いと予想されている。コロナに関連するフレイルへの対応に加えて、脳梗塞に対しては頭打ちとなっているDOAC処方への対策、心筋梗塞に対してはPCI介入の遅れについての検証など、コロナ禍での診療抑制の影響が残っていないか再検討が望ましい」と述べた。

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家族内での治療抵抗性うつ病の発生率

 抗うつ薬に対する治療反応と治療抵抗性うつ病のフェノタイプは、遺伝的根拠があると考えられる。治療抵抗性うつ病のフェノタイプと他の精神疾患との遺伝的感受性は、これまでの遺伝的研究でも確立されているが、これらの結果を裏付ける集団ベースのコホート研究は、これまでなかった。台湾・台北栄民総医院のChih-Ming Cheng氏らは、治療抵抗性うつ病の感受性および家族内での治療抵抗性うつ病と他の精神疾患との感受性を推定するため、台湾全国コホート研究を実施した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2024年4月3日号の報告。 2003~17年の台湾全人口(2,655万4,001人)を対象に、台湾国民健康保険データベースのデータを評価した。データ分析は、2021年8月~2023年4月に実施した。治療抵抗性うつ病は、現在のエピソードが3種類以上の抗うつ薬治療を経験し、それぞれ適切な用量および治療期間で行われていた場合と定義し、レセプトデータに基づき特定した。次に、治療抵抗性うつ病患者の1親等の特定を行った(3万4,467人)。対照群として、治療抵抗性うつ病患者を1親等に持たない人を1:4で指定し、誕生年、性別、親族関係を収集した。主要アウトカムは、治療抵抗性うつ病リスク、他の精神疾患リスク、さまざまな原因による死亡リスクとし、調整済み相対リスク(aRR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、修正ポアソン回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・本研究の参加者は、17万2,335人(男性:8万8,330人、女性:8万4,005人、フォローアップ開始時の平均年齢:22.9±18.1歳)であった。・治療抵抗性うつ病患者の1親等は、対照群と比較し、収入が低く、身体的併存疾患が多く、自殺死亡率が高く、治療抵抗性うつ病発症リスクが高く(aRR:9.16、95%CI:7.21~11.63)、他の精神疾患発症リスクが高かった。・治療抵抗性うつ病患者の1親等の各精神疾患別のaRRは、以下のとおりであった。【統合失調症】aRR:2.36、95%CI:2.10~2.65【双極性障害】aRR:3.74、95%CI:3.39~4.13【うつ病】aRR:3.65、95%CI:3.44~3.87【注意欠如多動症】aRR:2.38、95%CI:2.20~2.58【自閉スペクトラム症】aRR:2.26、95%CI:1.86~2.74【不安症】aRR:2.71、95%CI:2.59~2.84【強迫症】aRR:3.14、95%CI:2.70~3.66・感度分析とサブグループ解析により、アウトカムのロバストが検証された。 著者らは、「治療抵抗性うつ病の家族歴を有する患者は、自殺死亡リスクが高く、抗うつ薬治療に耐性傾向を示している。したがって抗うつ薬単独療法に固執せず、より集中的な治療を早期に検討される可能性がある」としている。

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不安定プラーク、至適薬物療法+予防的PCI追加で予後改善/Lancet

 冠動脈に血流を阻害しない不安定プラークを有する患者において、予防的経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の追加は至適薬物療法のみと比較し、高リスクの不安定プラークに起因する主要有害心血管イベントが減少したことを、韓国・蔚山大学のSeung-Jung Park氏らが、韓国、日本、台湾およびニュージーランドの計15施設で実施した医師主導の無作為化非盲検比較試験「PREVENT試験」の結果を報告した。著者は、「PREVENT試験は不安定プラークに対する局所治療の効果を示した最初の大規模臨床試験であり、今回の知見はPCIの適応を、血流を阻害しない高リスクの不安定プラークに拡大することを支持するものである」とまとめている。急性冠症候群や心臓死は不安定プラークの破裂および血栓症によって引き起こされることが多く、その多くは冠血流を阻害しない。不安定プラークに対するPCIによる予防的治療の安全性と心臓有害事象の減少に対する有効性は不明であった。Lancet誌オンライン版2024年4月8日号掲載の報告。狭窄率>50%、FFR>0.80の不安定プラークを有する患者が対象 研究グループは、心臓カテーテル検査を受けた18歳以上の安定冠動脈疾患または急性冠症候群の患者のうち、造影上の狭窄率>50%、冠血流予備量比(FFR)>0.80の病変を有し不安定プラークが確認された患者を対象とした。Webシステム(置換ブロック法、ブロックサイズ4または6)により糖尿病の有無および非標的血管への同時PCIの有無で層別化し、PCI+至適薬物療法群(PCI併用群)または至適薬物療法単独群(薬物療法群)に1対1の割合で無作為に割り付け、最後の登録患者が無作為化後2年に達するまで毎年追跡調査を行った。 不安定プラークは、(1)最小内腔面積<4.0mm2、(2)プラーク負荷>70%(血管内超音波検査)、(3)脂質に富むプラーク(近赤外分光法、4mm以内の最大脂質コア負荷指数が>315)、(4)TCFA(thin-cap fibroatheroma)(高周波血管内超音波検査または光干渉断層法)の4つの特徴のうち2つ以上を満たすプラークと定義された。 主要アウトカムは、2年間の心臓死・標的血管の心筋梗塞・虚血による標的血管血行再建術・不安定狭心症または進行性狭心症による入院の複合とした。ITT集団で評価し、初発までの期間はKaplan-Meier法で算出し、log-rank検定で比較した。PCI併用群で薬物療法群より2年複合イベントが有意に減少 2015年9月23日~2021年9月29日に、5,627例がスクリーニングされ、適格基準を満たした1,606例がPCI併用群(803例)または薬物療法群(803例)に無作為化された。1,177例(73%)が男性、429例(27%)が女性で、1,556例(97%)が2年間の追跡を完了した(PCI併用群780例、薬物療法群776例)。 主要アウトカムの2年複合イベントは、PCI併用群で3例(0.4%)、薬物療法群で27例(3.4%)に発生し、絶対群間差は-3.0%(95%信頼区間[CI]:-4.4~-1.8、p=0.0003)であった。予防的PCIの効果は、主要アウトカムの各要素において一貫していた。 重篤な臨床的有害事象は、PCI併用群と薬物療法群で差はなかった。2年以内の死亡は4例(0.5%)vs.10例(1.3%)であり(絶対群間差:-0.8%、95%CI:-1.7~0.2)、心筋梗塞は9例(1.1%)vs.13例(1.7%)であった(-0.5%、95%CI:-1.7~0.6)。

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免疫療法+個別化ワクチン、肝細胞がんの新治療法として有望

 標準的な免疫療法にオーダーメイドの抗腫瘍ワクチン(以下、個別化がんワクチン)を追加することで、肝細胞がんが縮小する患者の割合が、免疫療法のみを受けた場合の約2倍になることが、新たな研究で示された。米ジョンズ・ホプキンス・キンメルがんセンターの副所長であるElizabeth Jaffee氏らによるこの研究結果は、米国がん学会年次総会(AACR 2024、4月5〜10日、米サンディエゴ)で発表されるとともに、「Nature Medicine」に4月7日掲載された。研究グループは、肝細胞がんの診断後、5年間生存する患者の割合は10人に1人未満であるため、このワクチンは患者の生存の延長に役立つ可能性があると話している。 Jaffee氏らはこの研究に肝細胞がん患者36人を登録し、免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体)のペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)による通常の免疫療法に加え、個別化がんワクチンを投与して、その効果を調べた。個別化がんワクチンは、まず、生検で得た患者のがん細胞を分析し、コンピューターアルゴリズムにより変異が生じている遺伝子のうち、免疫系が認識できるタンパク質〔がん細胞で起こる遺伝子変異により新たに生じたがん抗原(ネオアンチゲン)〕を産生している遺伝子を特定した。この情報を基に、最大で40個のネオアンチゲンをコードするDNAを含む個別化がんワクチン(GNOS-PV02)を作成した。ワクチンが投与された患者では、免疫系がこれらのネオアンチゲンを認識し、それらを産生するがん細胞を攻撃するのを助ける。 個別化がんワクチンと抗PD-1抗体の組み合わせは、腫瘍に大きな打撃を与える。抗PD-1抗体は、腫瘍内で疲れ果て、がん細胞を破壊できなくなった免疫細胞のT細胞を再活性化する。このワクチンはまた、特定の変異タンパク質を標的とするT細胞を新たに呼び寄せて、この効果を補強する。 実際、抗PD-1抗体とともにこの個別化ワクチンを投与された患者の3分の1近く(30.6%)でがん細胞の縮小が認められた。この割合は、免疫療法のみを受けた場合の2倍に当たるという。さらに、8.3%の患者では、治療後の検査でがん細胞が見つからない完全奏効を達成した。 Jaffee氏は、「われわれは、開発中の個別化がんワクチンを使った治療で成果が得られて興奮している。この個別化がんワクチンは、治療の難しいがんに対する次世代の治療法として有望だ」と語っている。 一方、ジョンズ・ホプキンス大学医学部腫瘍学分野のMark Yarchoan氏は、「この研究は、個別化がんワクチンが抗PD-1抗体に対する臨床反応を高めることができるというエビデンスを提供するものだ」と話す。同氏は、「この知見を確認するためには、より大規模なランダム化比較試験が必要だ。それでも、今回の結果が非常に胸躍るものであることに変わりはない」と述べている。

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手掌と足底の皮疹の鑑別診断【1分間で学べる感染症】第2回

画像を拡大するTake home message発熱と皮疹の鑑別診断は多岐にわたるが、手掌(palms)と足底(soles)の皮疹の有無で鑑別診断をある程度絞り込むことができる可能性がある。手掌と足底の皮疹の鑑別疾患は「MR. SMITH」で覚えよう。発熱と皮疹の鑑別疾患は感染性・非感染性と多岐にわたります。手掌と足底に皮疹を来した場合、鑑別診断をある程度絞り込むことができる可能性があります。それでは、一体どのような鑑別疾患が挙げられるのでしょうか。ここでは、なかでも感染性に焦点を当てて解説していきます。語呂合わせとして「MR. SMITH」と覚えると、手掌と足底の皮疹の感染性の鑑別疾患を網羅的に挙げることができます。MMeningococcemia (Neisseria meningitidis) 髄膜炎菌による菌血症RRickettsia リケッチア感染症(日本紅斑熱など)S(Secondary) Syphilis 二期梅毒MMeasles, Mpox 麻疹、M痘IInfective endocarditis 感染性心内膜炎TToxic shock syndrome, Travelers (Dengue/Chikungunya/Zika) トキシックショック症候群、デング熱、チクングニヤ熱、ジカ熱などの蚊媒介感染症HHand-Foot-Mouth syndrome (Coxsackievirus), HIV, HSV (erythema multiforme) 手足口病、急性HIV感染や単純ヘルペス感染による多形滲出性紅斑皆さんも積極的に、手掌と足底に皮疹を呈していないかどうかを確認してみましょう。1)Hughes KL, et al. Am Fam Physician. 2018;97:815-817.2)Giorgiutti S, et al. N Engl J Med. 2019;381:1762.3)McKinnon HD Jr, et al. Am Fam Physician. 2000;62:804-816.4)Staples JE, et al. Clin Infect Dis. 2009;49:942-948.5)Saguil A, et al. Am Fam Physician. 2023;108:78-83.6)Volpicelli FM, et al. N Engl J Med. 2023;389:1033-1039.7)Long B, et al. Am J Emerg Med. 2023;65:172-178.8)He A, et al. Am J Clin Dermatol. 2017;18:231-236.

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日常診療に活かす 診療ガイドラインUP-TO-DATE 2024-2025

一瞬の迷いを確信へ ~これが日本の標準的治療~2010年の発行以来、多くの医療従事者に活用されている本書が2年ぶりに改訂しました。今版では日常診療で遭遇頻度の高い疾患を中心に19領域175疾患を取り上げ、各領域の第一人者が当該疾患に関連する複数の診療ガイドラインを精選し、そのポイントについて臨床知を加味して解説しています。本書は、(1)必要な情報をすぐに取り出せる紙面構成、(2)専門家の処方例を一目で把握、(3)標準的治療を最短距離でキャッチできます。巻頭企画では“社会健康医学”をテーマに専門家にご解説いただき、巻末付録では「おさえておきたい!希少疾患のガイドライン」を掲載し、ガイドラインの最新情報が入手できるようにまとめています。ぜひ診療ガイドラインを活かした質の高い医療の提供にお役立てください。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する日常診療に活かす 診療ガイドラインUP-TO-DATE 2024-2025定価13,200円(税込)判型A5判変型頁数1,120頁発行2024年2月監修門脇 孝、小室 一成、宮地 良樹ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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認知症の修正可能な3大リスク因子

 認知症のリスク因子の中で修正可能なものとしては、糖尿病、大気汚染、飲酒という三つの因子の影響が特に大きいとする研究結果が報告された。英オックスフォード大学のGwenaelle Douaud氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Communications」に3月27日掲載された。 Douaud氏らは脳画像データを用いて行った以前の研究で、アルツハイマー病やパーキンソン病、および加齢変化などに対して特に脆弱な神経ネットワークを特定している。このネットワークは、脳のほかの部分よりも遅れて思春期に発達し始め、高齢期になると変性が加速するという。今回の研究では、この脆弱な神経ネットワークの変性に関与している因子の特定を試みた。 研究には、英国で行われている一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」の参加者のうち、脳画像データやさまざまなライフスタイル関連データがそろっている3万9,676人(平均年齢64±7歳)のデータを利用。認知症リスクに影響を及ぼし得る161の因子と、脆弱な神経ネットワークの変性との関連を検討した。161の因子のうち、遺伝的因子などの修正不能のもの以外は、食事、飲酒、喫煙、身体活動、睡眠、教育、社交性、大気汚染、体重、血圧、糖尿病、コレステロール、聴覚、炎症、抑うつという15種類に分類した。 年齢と性別の影響を調整後の解析により、脆弱な神経ネットワークの変性への影響が強い修正可能な因子として、医師により診断されている糖尿病(r=-0.054、P=1.13E-24)、2005年時点の居住環境の二酸化窒素濃度(r=-0.049、P=5.39E-20)、アルコール摂取頻度(r=-0.045、P=3.81E-17)という三つの因子が特定された。また、遺伝的背景は多かれ少なかれ、脆弱な神経ネットワークの変性に影響を与えていることも分かった。 Douaud氏は、「われわれは既に特定の脳領域が加齢変化の初期に変性することをつかんでいたが、今回の研究により、その領域は糖尿病と交通関連の大気汚染、および飲酒に対しても脆弱であることが示された。また、その領域の変性は心血管死、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病のリスクにも関連があるようだ」と述べている。 論文共著者の1人である米テキサス大学リオグランデバレー校のAnderson Winkler氏は、「今回の研究は、脳の『弱点』とも言える脆弱な神経ネットワークに生じる変性のリスク因子について、その寄与の程度を定量的かつ網羅的に評価し得たことに意義がある」としている。

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CVD患者のフレイルと「アクティブな趣味」の関係

 心血管疾患(CVD)で入院した患者のうち、入院前にアクティブな趣味を持っていた患者は、退院時のフレイルのリスクが低いという研究結果が発表された。一方で、入院前に趣味があったとしても、その趣味がアクティブなものでなければ、リスクの低下は見られなかったという。これは飯塚病院リハビリテーション部の横手翼氏らによる研究であり、「Progress in Rehabilitation Medicine」に2月22日掲載された。 趣味を持つことと死亡や要介護のリスク低下との関連を示す研究はこれまでに報告されており、入院中の運動不足で身体機能が低下しやすいCVD患者でも、趣味を持つことが身体機能の維持やフレイルの予防に役立つと考えられる。そこで著者らは、入院前に行っていた趣味と退院時のフレイルとの関連について、趣味の内容にも着目して検討した。 研究対象は、2019年1月~2023年6月に飯塚病院に入院し、その後自宅に退院したCVD患者のうち、入院前から日常生活の介助を要する患者などを除いた269人(平均年齢68.4±11.5歳、男性72.2%)。対象患者のCVD・手術には、心不全、心筋梗塞、狭心症、冠動脈バイパス術、大動脈弁置換術、僧帽弁形成術、大動脈グラフト置換術が含まれた。 患者の状態が安定した後、入院前の趣味に関する情報を入手し、身体活動を伴う趣味(スポーツ、買い物、旅行など)を「アクティブな趣味」、それ以外の趣味(テレビ・映画鑑賞、スポーツ観戦、楽器演奏など)を「非アクティブな趣味」、趣味のない場合は「無趣味」に分類した。フレイルについては退院前日に、日本語版フレイル基準(J-CHS基準)の5項目(筋力低下、歩行速度低下、疲労感、体重減少、身体活動低下)により評価。3項目以上に該当する人を「フレイル」、1~2項目に該当する人を「プレフレイル」に分類した。 その結果、無趣味群(77人)ではプレフレイルの割合が61.4%、フレイルの割合が22.9%、非アクティブな趣味群(64人)では同順に53.2%、37.1%、アクティブな趣味群(128人)では同順に57.4%、13.9%だった。 次に、患者背景の差(年齢、性別、BMI、疾患、入院期間、就労状況、入院時の左室駆出率、入院前のフレイル)を調整して解析すると、アクティブな趣味群は、プレフレイルまたはフレイルのオッズ低下と有意に関連していることが明らかとなった(無趣味群と比較したオッズ比0.41、95%信頼区間0.17~0.90)。一方、非アクティブな趣味群ではこの関連は認められなかった(同1.56、0.52~4.64)。また、アクティブな趣味群では無趣味群と比べて、J-CHS基準の5項目のうち、歩行速度低下、疲労感、身体活動低下のオッズが有意に低かった。 以上から著者らは、「入院前にアクティブな趣味を持っていた患者は、趣味のない患者と比べて退院時にフレイルとなるリスクが低かった。一方で、非アクティブな趣味を持っていた患者では、リスクの低下は認められなかった」と結論。また、アクティブな趣味と疲労感の低下が関連していたことの説明の一つとして、アクティブな趣味を持つことが、入院中のリハビリテーションや理学療法への動機付けとなり、身体機能の維持に寄与する可能性があるとしている。

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肺がん診療ガイドラインのトリセツ【DtoD ラヂオ ここが聞きたい!肺がん診療Up to Date】第5回

第5回:肺がん診療ガイドラインのトリセツパーソナリティ日本鋼管病院 呼吸器内科 部長 田中 希宇人 氏ゲスト藤田医科大学病院 呼吸器内科・アレルギー科 大矢 由子 氏参考1)日本肺癌学会 肺癌診療ガイドライン2023(オンライン版)関連サイト専門医が厳選した、肺がん論文・ニュース「Doctors'Picks」(医師限定サイト)講師紹介

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アレクチニブによるALK陽性肺がん術後補助療法をFDAが承認/中外

 中外製薬は2024年4月19日、ALK阻害薬アレクチニブ(商品名:アレセンサ)について、ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対する腫瘍切除後の補助療法として、FDAより承認を取得したと発表。 今回の承認は、完全切除ALK陽性NSCLCの術後補助療法を対象とした国際第III相臨床試験であるALINA試験の成績に基づいている。 同試験では、完全切除したStageIB(腫瘍径4cm以上)~IIIA期(UICC/AJCC 第7版)のALK陽性NSCLCにおいて、アレクチニブはプラチナベース化学療法と比較して、再発または死亡のリスクを76%低下させることを示した(ハザード比[HR]:0.24、95%信頼区間[CI]:0.13~0.43、p<0.001)。探索的解析である中枢神経系(CNS)の無病生存期間についても、アレクチニブはプラチナベース化学療法と比較して、再発または死亡のリスクを78%低下させた(HR:0.22、95%CI:0.08~0.58)。アレクチニブの安全性および忍容性は過去の試験と同様であり、予期せぬ所見は認められなかった。 これらのデータは、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2023)のLate Breaking oral演題として講演発表され、New England Journal of Medicine誌にも掲載された。

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狭小弁輪を伴う大動脈弁狭窄症へのTAVR、自己拡張型弁vs.バルーン拡張型弁/NEJM

 狭小弁輪を伴う重症大動脈弁狭窄症患者において、バルーン拡張型弁を使用した経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)に対する自己拡張型弁を使用したTAVRの12ヵ月時点の臨床アウトカムに関する非劣性、および生体弁機能不全に関する優越性が検証された。米国・ペンシルベニア大学のHoward C. Herrmann氏らSMART Trial Investigatorsが、13ヵ国83施設で実施した無作為化試験「SMall Annuli Randomized To Evolut or SAPIEN Trial:SMART試験」の結果を報告した。狭小弁輪を伴う重症大動脈弁狭窄症患者は、TAVR後に弁の血行動態が低下し、心血管系臨床アウトカムが不良となるリスクが報告されていた。NEJM誌オンライン版2024年4月7日号掲載の報告。2つの主要複合エンドポイントを評価 研究グループは、症候性重症大動脈弁狭窄症で大動脈弁輪面積が430mm2以下の患者を、自己拡張型弁(Evolut PRO/PRO+/FX、Medtronic製)を用いるTAVR群、またはバルーン拡張型弁(SAPIEN 3/3 Ultra、Edwards Lifesciences製)を用いるTAVR群に、1対1の割合で無作為に割り付け、5年間追跡した。 主要エンドポイントは、12ヵ月時の死亡、後遺障害を伴う脳卒中または心不全による再入院の複合(非劣性を評価、非劣性マージン8%)、ならびに12ヵ月時の生体弁機能不全(大動脈弁平均圧較差20mmHg以上、重症prosthesis-patient mismatch[PPM]または中等症以上の大動脈弁逆流症、臨床的弁血栓症、心内膜炎、大動脈弁の再インターベンション)を測定する複合エンドポイント(優越性を評価、片側α=0.025)とした。 2021年4月~2022年9月に737例が無作為化され、このうち716例がTAVRを受け(as-treated集団)、解析対象集団に組み込まれた。患者背景は、平均年齢80歳、女性が87%、米国胸部外科医学会予測死亡リスク(STS-PROM)スコアの平均値は3.3%であった。自己拡張型弁のバルーン拡張型弁に対する非劣性および優越性を検証 第1の主要エンドポイントである12ヵ月時の死亡、後遺障害を伴う脳卒中または心不全による再入院の複合イベントの発生率(Kaplan-Meier推定値)は、自己拡張型弁群9.4%、バルーン拡張型弁群10.6%であった(群間差:-1.2%、90%信頼区間[CI]:-4.9~2.5、非劣性のp<0.001)。 第2の主要エンドポイントである12ヵ月時の生体弁機能不全の発生率(Kaplan-Meier推定値)は、自己拡張型弁群9.4%、バルーン拡張型弁群41.6%であった(群間差:-32.2%、95%CI:-38.7~-25.6、優越性のp<0.001)。 副次エンドポイントについては、12ヵ月時の大動脈弁平均圧較差が自己拡張型弁群で7.7mmHg、バルーン拡張型弁群で15.7mmHg、平均有効弁口面積がそれぞれ1.99cm2および1.50cm2、血行動態的構造的弁機能不全の発生率が3.5%および32.8%、女性における生体弁機能不全の発生率は10.2%および43.3%であった(すべてp<0.001)。また、30日時点の中等度または重症PPMは、自己拡張型弁群で11.2%、バルーン拡張型弁群で35.3%に認められた(p<0.001)。 主な安全性エンドポイントは、両群で類似していた。

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手術低~中等度リスク重症大動脈弁狭窄症、TAVI vs.SAVRの1年成績/NEJM

 手術リスクが低~中等度の症候性重症大動脈弁狭窄症患者において、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)は外科的大動脈弁置換術(SAVR)に対して、1年時の全死因死亡または脳卒中の複合アウトカムに関して非劣性であることが示された。ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのStefan Blankenberg氏らが、同国の38施設で実施した医師主導の無作為化非劣性試験「DEDICATE-DZHK6試験」の結果を報告した。TAVIとSAVRの両方が適応となる手術リスクが低い症候性重症大動脈弁狭窄症患者では、日常診療における適切な治療戦略に関するデータが不足していた。NEJM誌オンライン版2024年4月8日号掲載の報告。1,414例を無作為化、1年時の死亡・致死的/非致死的脳卒中の複合を比較 研究グループは、65歳以上の症候性重症大動脈弁狭窄症で、各施設の学際的なハートチームの臨床評価に基づく手術リスクが低~中等度、かつTAVIまたはSAVRの両方に適格であると判断された患者を、TAVI群またはSAVR群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 TAVIでは経大腿動脈アクセスが推奨されたが、代替アクセスも可能であった。また、SAVRでは、術者の裁量で外科的アクセス(胸骨切開または低侵襲アプローチ)が選択された。 主要アウトカムは、1年時の全死因死亡、致死的または非致死的脳卒中の複合とし、ITT解析を行った。 2017年5月~2022年9月に計1,414例が無作為化された(TAVI群701例、SAVR群713例)。患者の平均(±SD)年齢は74±4歳で、男性が790例(57%)、米国胸部外科医学会予測死亡リスク(STS-PROM)スコア中央値は1.8%(外科的低リスク)であった。1年時の主要アウトカム、TAVIはSAVRに対して非劣性 主要アウトカムである1年時の複合イベントの発生率(Kaplan-Meier推定値)は、TAVI群5.4%、SAVR群10.0%であり、死亡または脳卒中のハザード比(HR)は0.53(95%信頼区間[CI]:0.35~0.79、非劣性のp<0.001)であった。 副次アウトカムについては、全死因死亡の発生率がTAVI群2.6%、SAVR群6.2%(HR:0.43、95%CI:0.24~0.73)、脳卒中の発生率がそれぞれ2.9%、4.7%(0.61、0.35~1.06)であった。 治療直後処置合併症は、TAVI群で1.5%、SAVR群で1.0%にみられた。大出血または生命を脅かす出血の発生率はそれぞれ4.3%、17.2%であった(HR:0.24、95%CI:0.16~0.35)。

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ChatGPTは医師の10倍の速さで事務作業をこなす

 医師の事務作業負担は、診察する患者の数を増やす上で妨げとなっているが、人工知能(AI)プログラムのChatGPT-4(以下、ChatGPT)を活用することで、その負担を効果的に軽減できる可能性が新たな研究で示唆された。ChatGPTは医師の10倍の速さで患者の退院時報告書を作成し、両者の作成した報告書の記述内容の質は専門家パネルにより同等と判断されたという。ウプサラ大学病院(スウェーデン)の整形外科医であるCyrus Broden氏らによるこの研究結果は、「ActaOrthopaedica」に3月21日掲載された。 この研究では、実際の症例に近い架空の整形外科症例の診療録を基に、整形外科医(若手の整形外科医と経験やスキルが高度な整形外科レジデント)とChatGPTにそれぞれの症例の退院時報告書を作成させ、その内容の質と効率性を15人の専門家パネルに評価してもらった。 その結果、整形外科医が作成した退院時報告書とChatGPTが作成した退院時報告書は、質の上では同等であると評価された。しかし、ChatGPTは整形外科医の10倍のスピードで報告書を作成していた。また、報告書の中のハルシネーション(事実とは異なる情報)の数は、ChatGPTが作成した報告書の中で4つ、整形外科医が作成した報告書の中では6つ見受けられた。 Broden氏らは、「これらの結果は、人間の整形外科医とChatGPTが作る退院時報告書は質の上では同等であるが、ChatGPTは人間の10倍の速さで書類を作成できることを明示するものだ」と話している。 研究グループは今後、1,000人の本物の患者の医療記録を用いたより大規模な研究で、医師の事務作業負担をAIが軽減できるかを検証する予定である。Broden氏は、「これは、多くの協力者を巻き込む、興味深く、多大なリソースを必要とするプロジェクトになるだろう。われわれはすでに、研究開始に必要な全てのデータ管理と機密保持の要件を満たすために精力的に取り組んでいるところだ」と話している。 Broden氏は、「事務作業は医師にとって悩みの種であり、患者を診る時間を奪い、医師のストレスレベルを高める原因となっている」と指摘する。そして、「何年もの間、医療の効率化をいかに図るかが議論の的となってきたが、生成AIとモデリング言語の進歩のおかげで、医療従事者の管理負担が軽減される可能性が芽生えた。これにより、医師は患者により多くの時間を割くことができるようになるだろう」と話している。

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薬剤溶出性バルーンがもたらす新たな世界(解説:山地杏平氏)

 パクリタキセルを用いた薬剤溶出性バルーン(商品名:Agent、 ボストン・サイエンティフィックジャパン)が、再狭窄に対する治療においてFDAで認可を受けるに当たり、通常のバルーンと比較するRCTが行われた。1次エンドポイントは、1年のIschemia-driven target lesion failureであり、予想通り、通常のバルーンでの28.6%のイベント発生率と比較し、Agentバルーンは17.9%と有意にイベント発生率は低く、これを受けて米国においてFDAで認可が得られた。 本邦では、2013年以降ビー・ブラウンのSeQuent Pleaseシリーズが、薬剤溶出性バルーンとして広く使われてきたが、こちらとAgentとを直接比較したAGENT Japan SV試験において、いずれの群もイベント発生率が低く、非劣性が示されることで、承認を受けている。 より新しい世代のバルーンを用いたボストン・サイエンティフィックジャパンのAgentは、通過性も良く、今まで治療が困難であった高度屈曲病変や、高度石灰化病変などにも使用が可能となることが予想される。一方で臨床研究に登録されるような症例は、そのような高リスク病変での治療は含まれておらず、その有用性については今後の知見が待たれる。さらには、これらのような薬剤溶出性バルーンを用いることで、その安全性が確認されれば、ステント留置に伴う遠隔期リスクが懸念される若年症例や、塞栓症リスクが高い症例において、ステント植え込みを行わないstrategyが可能となるかもしれない。

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セマグルチド、肥満関連の心不全・2型糖尿病に有効/NEJM

 肥満に関連した左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)と2型糖尿病を有する患者に対し、セマグルチドの週1回投与はプラセボ投与と比較し、1年時点で心不全関連の症状と身体的制限の軽減、および体重減少が大きかった。米国・Saint Luke's Mid America Heart InstituteのMikhail N. Kosiborod氏らSTEP-HFpEF DM Trial Committees and Investigatorsが、616例を対象とした無作為化試験の結果を報告した。肥満症と2型糖尿病は、HFpEF患者では一般的にみられ、症状の負荷が大きいことが特徴であるが、2型糖尿病を有する肥満に関連したHFpEFを標的とする治療法は、これまで承認されていない。NEJM誌2024年4月18日号掲載の報告。KCCQ-CSSと体重の変化を比較 研究グループは、BMI値が30以上で2型糖尿病を有するHFpEF患者を無作為に1対1の割合で2群に分け、セマグルチド(2.4mg)を週1回、またはプラセボをそれぞれ52週間投与した。 主要エンドポイントは、カンザスシティ心筋症質問票の臨床サマリースコア(KCCQ-CSS:0~100で数値が高いほど症状と身体的制限が少ない)のベースラインからの変化量、体重のベースラインからの変化率だった。 検証的副次エンドポイントは、6分間歩行距離の変化量と、階層的複合エンドポイント(死亡、心不全イベント、KCCQ-CSSの変化量の差、6分間歩行距離の変化量の差など)、およびC反応性蛋白(CRP)値の変化だった。KCCQ-CSS変化量平均値、セマグルチド群は13.7点、プラセボ群6.4点 2021年6月15日~2022年8月19日に計616例が無作為化された(セマグルチド群310例、プラセボ群306例)。52週時点で投与を受けていた(各群260例)被験者において、セマグルチドの計画用量2.4mgで投与を受けていた被験者は209例(80.4%)、プラセボの同用量投与被験者は248例(95.4%)であった。被験者の年齢中央値は69歳、女性が44.3%、BMI中央値は36.9、KCCQ-CSS中央値は59.4点、6分間歩行距離中央値は280mだった。 KCCQ-CSS変化量の平均値は、セマグルチド群13.7点、プラセボ群が6.4点だった(推定群間差:7.3点、95%信頼区間[CI]:4.1~10.4、p<0.001)。体重の変化率の平均値は、それぞれ-9.8%、-3.4%だった(推定群間差:-6.4%ポイント、95%CI:-7.6~-5.2、p<0.001)。 検証的副次エンドポイントの結果も、セマグルチド群がプラセボ群より良好だった。6分間歩行距離の変化量は、群間差の推定値14.3m(95%CI:3.7~24.9、p=0.008)、階層的複合エンドポイントのwin ratioは1.58(95%CI:1.29~1.94、p<0.001)、CRP値の変化に対する治療間比の推定値は0.67(95%CI:0.55~0.80、p<0.001)だった。 重篤な有害事象はセマグルチド群55例(17.7%)、プラセボ群88例(28.8%)で報告された。

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