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パーキンソン病の構音障害、音声治療LSVT LOUDが有効/BMJ

 パーキンソン病患者の構音障害の治療において、Lee Silverman音声治療(Lee Silverman voice treatment:LSVT)は、国民保健サービスの言語聴覚療法(NHS SLT)を行う場合やSLTを行わない場合(非介入)と比較して、構音障害の影響の軽減に有効であり、またNHS SLTは非介入と比較して有益性はないことが、英国・ノッティンガム大学のCatherine M. Sackley氏らPD COMM collaborative groupが実施した「PD COMM試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年7月10日号に掲載された。英国41施設の無作為化対照比較試験 PD COMM試験は、英国の41施設で実施した実践的な非盲検無作為化対照比較試験であり、2016年9月~2020年3月に参加者を募集した(英国国立衛生保健研究所[NIHR]医療技術評価[HTA]プログラムの助成を受けた)。 特発性のパーキンソン病と診断され、発話または発声の問題を有する患者388例を登録した。LSVT LOUDを受ける群に130例(平均年齢69.9歳、女性30%)、NHS SLTを受ける群に129例(69.7歳、22%)、SLTを行わない非介入群(対照群)に129例(70.2歳、26%)を無作為に割り付けた。 LSVT LOUDは、対面または遠隔で行う50分のセッションで構成され、週4回、4週間行い、自宅での練習は、治療日は1日1回、5~10分まで、非治療日は1日2回、15分までとした。NHS SLTの施行時間は、患者の必要に応じて担当のセラピストが決定し、練習も許容された。 主要アウトカムは、無作為化から3ヵ月の時点での自己申告によるvoice handicap index(VHI)の総スコアとし、ITT解析を行った。VHIは、患者報告によるコミュニケーションの困難さの影響を評価する尺度であり、0~120点(点数が低いほど状態が良好)でスコア化した。VHIの感情、機能、身体的側面でも同様の結果 VHI総スコアの平均値は、LSVT LOUD群がベースラインの44.6点から3ヵ月後には35.0点に、NHS SLT群は46.2点から44.4点に、対照群は44.3点から40.5点に低下した。 対照群に比べLSVT LOUD群は改善度が有意に良好で(補正後群間差:-8.0点、99%信頼区間[CI]:-13.3~-2.6、p<0.001)、NHS SLT群との比較でもLSVT LOUD群の改善度は有意に優れた(-9.6点、-14.9~-4.4、p<0.001)。 一方、NHS SLT群と対照群の間には有意差を認めなかった(補正後群間差:1.7点、99%CI:-3.8~7.1、p=0.43)。 VHIのサブスケールである感情的側面(LSVT LOUD群vs.対照群[p<0.001]、LSVT LOUD群vs.NHS SLT群[p<0.001]、NHS SLT群vs.対照群[p=0.78])、機能的側面(それぞれp<0.001、p<0.001、p=0.97)、身体的側面(p=0.04、p=0.003、p=0.38)についても、同様の結果が得られた。有害事象(主に声のかすれ)はLSVT LOUD群で多い 有害事象は、LSVT LOUD群で36例(28%)に93件、NHS SLT群で16例(12%)に46件発生し、対照群では発現しなかった。有害事象の大部分は声のかすれであり、NHS SLT群(45件)に比べLSVT LOUD群(80件)で多かった。重篤な有害事象の報告はなかった。 著者は、「本試験の結果は、臨床的意思決定の指針となるエビデンスをもたらし、パーキンソン病患者における言語聴覚療法のリソースの使用を最適化する必要性を強調するものである」「本試験の知見はまた、言語聴覚療法の提供が介護者に及ぼす影響についても詳しく検討するよう促すものであり、介護者を含むさらなる研究が、パーキンソン病患者に対する今後の言語聴覚療法によるケアを最適化する可能性がある」としている。

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anemia(貧血)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第8回

言葉の由来貧血は英語で“anemia”といい、「アニィーミア」のように発音します。これはギリシャ語の“anaimia”に由来しています。単語の成り立ちは、「否定」を表す接頭辞である“an”と、「血液の状態または血液中に“あるもの”が多量に存在すること」を意味する接尾辞の“-emia”がくっついてできたもので、「血液がない状態」を表します。医学用語の多くは接頭辞と接尾辞を含んでおり、これらを知っておくと英語の医学用語を覚えたり理解したりすることがぐっとラクになります。たとえば、否定を表す接頭辞の“a-”や“an-”を使った医学に関連する用語としては以下のようなものがあります。aplastic無形成性の(例:aplastic anemia 再生不良性貧血)anoxic無酸素症の(例:anoxic brain injury 低酸素脳症)asymptomatic無症候性の(例:asymptomatic bacteriuria 無症候性細菌尿)atypical非定型の(例:atypical pneumonia 非定型肺炎)また、接尾辞の“-emia”を使った用語の例として、以下のようなものがあります。hyperlipidemia脂質異常症bacteremia菌血症hyperuricemia高尿酸血症hyperbilirubinemia高ビリルビン血症このように、1つの単語の接頭辞や接尾辞を意識して勉強することで、芋づる式に多くの単語を覚えることができ、新しい英単語を見たときにも意味が理解しやすくなります。さらに多くの接頭辞や接尾辞を勉強したいという方は、ウエストフロリダ大学のウェブサイトに医学用語に関連した接頭辞や接尾辞が詳しくまとまっており、参考になるでしょう。併せて覚えよう! 周辺単語多血症polycythemia白血球減少leukopenia血小板減少thrombocytopenia白血球増多症leukocytosis血小板増多症thrombocytosisこの病気、英語で説明できますか?Anemia is a condition where the body lacks enough healthy red blood cells or hemoglobin to carry adequate oxygen to the body's tissues. Red blood cells contain hemoglobin, an iron-rich protein that binds to oxygen and transports it from the lungs to all other organs and tissues in the body.講師紹介

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乳がん領域におけるがん遺伝子パネル検査後の治療到達割合(C-CATデータ)/日本乳癌学会

 2019年のがん遺伝子パネル検査の保険適用から5年が経過したが、治療到達割合の低さ、二次的所見の提供のあり方、人材育成や体制整備、高額な検査費用などの課題が指摘されている。京都府立医科大学の森田 翠氏らは、とくに臨床医として現場で感じる課題として「治療到達割合の低さ」に着目。がんゲノム情報管理センター(C-CAT)に登録されたデータを用いて日本人乳がん患者における遺伝子変異の頻度、エビデンスレベルの高い実施可能な治療への到達割合などを解析し、結果を第32回日本乳癌学会学術総会で発表した。 本研究では、2019年6月~2023年12月のC-CATデータ“Breast”3,900例から葉状腫瘍、血管肉腫などを除いた“Breast Cancer”3,776例を対象とした。臨床医が求める薬剤到達割合の基準を、・既存のコンパニオン診断では治療に結び付いていないこと・がん遺伝子パネル検査で初めて治療に結び付くもの・日本のPMDA承認薬であることと定義し、さらに基準1(乳がんを対象とした第III相試験が施行されているという従来の基準)と基準2(臓器横断的承認で、第I/II相試験も可とする新しい基準)を設定した。 主な結果は以下のとおり。・患者背景は、年齢中央値56歳、40~50代が54.8%を占め、すでにコンパニオン診断によりgBRCA1陽性と診断されていた症例が2.5%、gBRCA2陽性が4.3%であった。パネル検査はFoundationOne CDxが72.3%、FoundationOne Liquid CDxが16.7%、OncoGuide NCCオンコパネルシステムが10.6%で使用されていた。・検出された遺伝子変異はTP53が58.1%と最も多く、PIK3CAが36.0%、MYCが18.7%、CCNDIが15.0%、GATA3が13.8%と続いた。・検出頻度上位100の遺伝子変異について2024年の最新状況に基づき薬剤到達割合をシミュレーションした結果、PIK3CAの変異(検出頻度:36.0%)は基準1、2ともに19.0%(推奨される薬剤:カピバセルチブ+フルベストラント)、ERBB2の増幅(13.7%)はHER2陰性乳がんにおいて基準1、2ともに3.4%(抗HER2薬)、PTENの変異と欠失(13.4%)は基準1、2ともに5.0%(カピバセルチブ+フルベストラント)、AKT1の変異(7.9%)は基準1、2ともに3.4%(カピバセルチブ+フルベストラント)、NTRK1の遺伝子融合(2.6%)は基準2のみで0.05%(エヌトレクチニブ、ラロトレクチニブ)、BRAFV600E(1.4%)は基準2のみで0.21%(ダブラフェニブ+トラメチニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ)であった。・全体として、基準1を満たしたのは28.4%で、うち3.4%はHER2陰性乳がんにおけるERBB2増幅に対する抗HER2薬の適応、25.0%はAKT経路(PIK3CA/AKT1/PTEN)の遺伝子異常に対するカピバセルチブの適応であった。基準2を満たしたのは37.9%で、基準1からの増加分のうち9.2%はTMB-H、MSI-Hに対するペムブロリズマブの適応、0.3%はBRAF V600E、NTRK fusionsに対する各薬剤の適応であった。・PMDA非承認薬については、企業あるいは医師主導の治験に結び付いた症例は、C-CATデータから検出しうる範囲内で、全体で25例(0.7%)であった。・AKT経路の遺伝子変異を有する症例は全体で944例(25%)、ER陽性HER2陰性乳がんでは最大で50.9%を占めた。3遺伝子の包含関係については、重複する症例もあるが、PIK3CAが719例、AKT1が129例、PTENが190例であった。 森田氏は、HER2陰性乳がんにおけるERBB2増幅について、術前化学療法後にHER2が陽転化した割合が同じく3.4%であった過去の報告1)に触れ、偽陰性であった可能性を指摘。またAKT経路の遺伝子異常に対するカピバセルチブの適応については、FoundationOneをCDxで使用する際に現状では臨床現場で課題があること、働き方改革の観点からは、CGP検査の前倒しよりも3因子に限った小パネル検査を開発することを提案。TMB-H、MSI-Hに対するペムブロリズマブ、BRAF V600E、NTRK fusionsに対する各薬剤の適応については臓器横断的承認であり、承認の根拠となった臨床試験に乳がん症例が含まれておらず、臨床医が自信を持ってこれらの薬剤を使えるかというと疑問が残ると考察した。したがって、現状ではCGP検査による薬剤到達割合は、臨床医の実感どおり非常に低いことが本研究により示された。乳がん診療におけるがんゲノム医療の現状は、現場の負担と患者の期待が大きいことに比して薬剤への到達割合に課題が山積しているとし、今後は臨床医を対象に定期的に広くアンケート調査を実施することなどで、現場の状況を反映していくことも必要ではないかとして講演を締めくくった。

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CAR19療法後再発LBCL、CAR22療法が有望/Lancet

 CD19を標的としたキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞(CAR19)療法後に疾患進行が認められた大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者において、CD22が免疫療法の標的として特定され、このCD22を標的としたCAR-T細胞(CAR22)療法により持続する臨床的有効性が認められたことが、米国・スタンフォード大学のMatthew J. Frank氏らCARdinal-22 Investigator groupが行った第I相の用量設定試験で示された。CD22はほぼ普遍的に発現しているB細胞表面抗原であるが、LBCLにおけるCAR22療法の有効性は不明であった。今回の結果について著者は、「有望ではあるが、第I相用量設定試験であることを認識することが重要である」とし、「さらなる検討を行い、長期有効性を確立するとともに、CAR22療法によって最も利益を受けられる患者サブグループを特定する必要がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2024年7月9日号掲載の報告。第I相試験で製造可能性、安全性、最大耐用量を検討 今回の単施設非盲検用量漸増第I相試験では、CAR19療法後に再発またはCD19陰性の大細胞型B細胞リンパ腫の成人(18歳以上)患者に対して、CAR22を2つの用量レベル(CAR22陽性T細胞として100万個または300万個/kg体重)で静脈内投与した。 主要評価項目は、CAR22の製造可能性、有害事象および用量制限毒性の発現頻度と重症度によって測定した安全性、および最大耐用量(すなわち、第II相の推奨用量)の特定であった。用量制限毒性、Grade3以上のサイトカイン放出群などの発現なし 2019年10月17日~2022年10月19日に計41例が適格性の評価を受けた。うち1例は治療を中止した。40例がアフェレーシスを受け、38例(95%)がCAR22の製造に成功し投与された。 38例は年齢中央値65歳(範囲:25~84)、女性が17例(45%)。32例(84%)は治療前の乳酸脱水素酵素(LDH)が上昇しており、11例(29%)はすべての前治療に不応であった。前治療ライン数は中央値4(範囲:3~8)。38例のうち37例(97%)が、前治療のCAR19療法後に再発していた。 確認された最大耐用量はCAR-T細胞100万個/kg体重であった。29例が最大耐用量を投与されたが、用量制限毒性またはGrade3以上のサイトカイン放出群、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(immune effector cell-associated neurotoxicity syndrome:ICANS)、免疫エフェクター細胞関連血球貪食性リンパ組織球症様症候群(immune effector cell-associated haemophagocytic lymphohistiocytosis-like syndrome)を発現した患者はいなかった。

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高齢の心臓手術患者、脳波ガイド下麻酔は術後せん妄を抑制せず/JAMA

 心臓手術を受ける高齢患者において、脳電図(EEG)ガイド下で脳波の抑制(suppression)を最小限にして行う麻酔投与は、通常ケアと比較して術後せん妄の発生を抑制しなかった。カナダ・モントリオール大学のAlain Deschamps氏らCanadian Perioperative Anesthesia Clinical Trials Groupが「Electroencephalographic Guidance of Anesthesia to Alleviate Geriatric Syndromes(ENGAGES)試験」の結果を報告した。術中の脳波の抑制は、全身麻酔の投与量が過剰であることを示唆するとともに、術後せん妄と関連することが先行研究で示されていた。JAMA誌2024年7月9日号掲載の報告。カナダの4病院で無作為化試験、通常ケアと比較 研究グループは、心臓手術を受ける高齢患者において、脳波の抑制を最小限にして行うEEGガイド下麻酔投与が、術後せん妄の発生を低減するかについて、多施設共同実臨床評価者患者盲検無作為化試験を行った。 2016年12月~2022年2月に、カナダの4病院で心臓手術を受ける60歳以上の高齢患者を募り、EEGガイド下麻酔投与群または通常ケア群に1対1の割合(病院で層別化)で割り付けた。追跡調査は2023年2月まで行った。 術中に麻酔薬濃度と脳波抑制時間を測定。主要アウトカムは、術後1~5日目のせん妄とし、副次アウトカムはICU入室期間、入院期間などとした。重篤な有害事象として、術中覚醒、合併症(大出血、脳卒中、胸骨創感染など)、30日死亡などを評価した。術後1~5日目のせん妄、EEGガイド下群18.15%、通常ケア群18.10% 患者1,140例(年齢中央値70歳[四分位範囲[IQR]:65~75]、女性282例[24.7%])が無作為化され(EEGガイド下群567例、通常ケア群573例)、1,131例(99.2%)が主要アウトカムの評価を受けた。 術後1~5日目のせん妄の発生は、EEGガイド下群102/562例(18.15%)、通常ケア群103/569例(18.10%)であった(群間差:0.05%、95%信頼区間[CI]:-4.57~4.67)。 EEGガイド下群は通常ケア群と比較して、揮発性麻酔薬の最小肺胞濃度中央値が0.14(95%CI:0.13~0.15)低く(0.66 vs.0.80)、EEGに基づく脳波抑制の総時間中央値が7.7分(95%CI:4.7~10.6)短かった。 ICU入室期間中央値に、有意な群間差はなかった(群間差:0日、95%CI:-0.31~0.31)。入院期間中央値についても有意な群間差はなかった(群間差:0日、95%CI:-0.94~0.94)。 術中に覚醒した患者はいなかった。合併症はEEGガイド下群64/567例(11.3%)、通常ケア群73/573例(12.7%)に、また30日死亡は8/567例(1.4%)、通常ケア群13/573例(2.3%)に発生した。

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高温短時間殺菌は鳥インフルエンザウイルスの除去に有効

 米国で鳥インフルエンザが乳牛の間で広がり続けている中、米食品医薬品局(FDA)と米国農務省(USDA)が実施した新たな研究で、摂氏100度以下の温度で行う殺菌法(パスチャライゼーション)の1つである高温短時間殺菌(HTST法)は、生乳中の鳥インフルエンザウイルスを効果的に死滅させることが明らかになった。FDAは、6月28日に発表したこの研究に関するニュースリリースの中で、「この結果は、食料品店で売られているパスチャライズド牛乳がH5N1型の高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)ウイルスに汚染されていない安全なものであることを示した最新の研究結果だ」と述べている。 FDA食品安全応用栄養センターディレクター代理のDon Prater氏はCBSニュースに対し、「逸話的なエビデンスはたくさんあったが、われわれはH5N1型のHPAIウイルスと牛乳に関する直接的なエビデンスを手に入れたかった」と話す。そして、「得られた結果は、小売店から収集した297点の乳製品のサンプルを調べ、その全てがH5N1型のHPAIウイルス陰性であったことを示した、FDAの最初の調査結果を補完するものだ。これらの研究結果は、商業的な牛乳のサプライシステムの安全性を強く裏付けるものだ」と語っている。 この最新の研究は、FDAとUSDAの研究者が、米国で牛乳の殺菌条件(温度と殺菌時間)が、H5N1型のHPAIウイルスの不活化に有効であるかどうかを検証したもの。そのために研究グループは、商業用の牛乳に使われる生乳のサンプルを、乳牛のH5N1型HPAIウイルス感染が報告されている4つの州の農場から計275点入手した。 これらのサンプルのRT-PCR検査から、158点(57.5%)はA型インフルエンザウイルス陽性と判定され、このうちの39点(24.8%)では感染性のあるウイルスが検出された。次に、これらのサンプルを人工的にH5N1型のHPAIウイルスで汚染した上で、米国で最も多く採用されているHTST法(72℃で15秒間加熱)で殺菌した。その結果、牛乳が72℃で保持される前の最高温度(72.5℃)まで加熱される過程でウイルスが死滅することが確認され、この殺菌方法は大きな安全マージンを提供することが示された。 米政府高官の報告によると、現時点では、鳥インフルエンザウイルスは感染牛から他の動物へ、そしてウイルスで汚染された生乳の飛沫を通して3人の酪農作業員へと広がっているという。CBSニュースによると、USDAのH5N1型HPAIウイルス対策の上級顧問代理であるEric Deeble氏は、「生乳を搾乳されていた牛の中に、これまでにH5N1型のHPAIウイルス感染が確認された牛はいない」と語ったという。 Prater氏らは次の研究で、生乳から作られたチーズでの鳥インフルエンザウイルス感染の有無を調べる予定であるとしている。 なお、FDAによると、この研究結果は、査読を経て「Journal of Food Protection」に掲載される予定であるという。

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妊婦の睡眠体位は左側臥位じゃなくてもいい?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第261回

妊婦の睡眠体位は左側臥位じゃなくてもいい?妊娠中の仰臥位や右側臥位での睡眠は、下大静脈などを圧迫することがあるため、基本的に避けたほうがいいとされてきました。実際、左側臥位を勧める啓発を行っていた国もあります。死産の絶対リスクを推定した症例対照研究があって、左側臥位就寝する妊婦で1,000人当たり1.96、それ以外の姿勢で就寝する妊婦で1,000人当たり3.93というデータがこれを後押ししていた部分も大きかったようです1)。ただし、この研究のリミテーションとして、死産から25日程過ぎての面談であったため、「想起バイアス」がありうるということです。妊娠中の睡眠姿勢を前向きに評価した研究があります。Silver RM, et al. Prospective Evaluation of Maternal Sleep Position Through 30 Weeks of Gestation and Adverse Pregnancy Outcomes.Obstet Gynecol. 2019 Oct;134(4):667-676.対象は初産婦で単胎妊娠の女性8,706人でした。参加者は妊娠6~13週と22~29週の時点で、詳細な睡眠に関する質問票に回答しました。主要評価項目は、死産、妊娠高血圧症候群、胎児発育不全(SGA)の複合アウトカムでした。これらの転帰は、胎盤機能不全と関連があり、先行研究で非左側臥位睡眠との関連が報告されていたものです。結果、1,903人(22%)の女性が複合アウトカムを経験しました。しかし意外なことに、妊娠初期および中期のいずれにおいても、非左側臥位の就寝と複合アウトカムとの間に有意な関連はみられませんでした。それだけでなく、妊娠中期の非左側臥位は、むしろ死産リスクの低下と関連していました(調整オッズ比:0.27、95%信頼区間:0.09~0.75)。ただし、死産の症例数そのものが少なかったので、統計学的な解釈には注意が必要です。主観的ではなく、客観的に評価された(睡眠時体位を観察した)症例においても、複合アウトカムのリスクに有意差はありませんでした。では、右側臥位も大丈夫なのかというと、まだ結論は早いかもしれません。実際にこの研究、妊娠後期(30週以降)の睡眠姿勢については評価していません。後期の睡眠姿勢と妊娠転帰との関連については、まだ結論が出ていません。仰臥位そのものがしんどくなる妊婦も多いので、「横向きであれば好きなほうを向けばよい」くらいのスタンスで構わないのかもしれません。うつ伏せはさすがにやめておいたほうがよいでしょう。また、睡眠姿勢に関する過度な不安を抱かせないようにし、有害なイベントが発生した場合、母親に自責の念を抱かせないことも重要でしょう。1)Stacey T, et al. Association between maternal sleep practices and risk of late stillbirth: a case-control study. BMJ. 2011 Jun 14;342:d3403.

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尿検体の迅速検査【とことん極める!腎盂腎炎】第5回

尿検査でどこまで迫れる?【後編】Teaching point(1)尿定性検査の白血球陽性反応の細菌尿に対する感度は70〜80%程度であり、白血球反応陰性で尿路感染症を除外しない(2)硝酸塩を亜硝酸塩に変換できない(もしくは時間がかかる)微生物による尿路感染症もあり、亜硝酸塩陰性で尿路感染症を除外しない(3)尿pH>8の際にはウレアーゼ産生菌の関与を考える《今回の症例》70代女性が昨日からの悪寒戦慄を伴う発熱を主訴に救急外来を受診した。いままでも腎盂腎炎を繰り返している既往がある。また糖尿病のコントロールは不良である。腎盂腎炎を疑い尿定性検査を提出したが、白血球反応は陰性、亜硝酸塩も陰性であった。今回は腎盂腎炎ではないのだろうか…?はじめに尿検査はさまざまな要因による影響を受けるため解釈が難しく、尿検査のみで尿路感染症を診断することはできない。しかし尿検査の限界を知り、原理を深く理解すれば重要な情報を与えてくれる。そこで、あえて尿検査でどこまで診断に迫れるかにこだわってみる。前回、「尿検体の採取方法と検体の取り扱い」「細菌尿と膿尿の定義や原因」について紹介した。今回は引き続き、迅速に細菌尿を検知するための検査として有用な尿定性検査(試験紙)や尿沈渣、グラム染色などの詳細を述べる。1.白血球エステラーゼ(試験紙白血球反応)尿定性検査での白血球の検出は、好中球に存在するエステラーゼが特異基質(3-N-トルエンスルホニル-L-アラニロキシ-インドール)を分解し、生じたインドキシルがMMB(2-メトキシ-4-Nホルモリノ-ベンゼンジアゾニウム塩)とジアゾカップリング反応し、紫色を呈することを利用している。そのため顆粒球しか検出できず、リンパ球には反応しない。多少崩壊した好中球や腟分泌物で偽陽性となりうる。糖>3g/dL、タンパク>500mg/dL、高比重、酸性化物質の混入(ケトン尿)などで偽陰性となる1)。尿試験紙を保存している容器の蓋が開いた状態で2週間以上放置すると試薬が変色し、約半数で亜硝酸は偽陽性となる2)のため注意が必要である。日本で市販されている白血球反応は、(±):10〜25個/μL、(1+):25〜75個/μL、(2+):75〜250個/μL、(3+):500個/μLに相当する(尿沈渣鏡検での陽性と判定するWBC≧5/HPFは20個/μL相当)。2.亜硝酸塩尿定性検査の亜硝酸塩は、細菌の存在を間接的に評価する方法である。細菌が硝酸塩を還元し、亜硝酸塩とすることを利用して検出している。細菌の細胞質内に亜硝酸をつくる硝酸還元酵素もあるが、主にNap(periplasmic dissimilatory nitrate reductase)と呼ばれる酵素を有する細菌がperiplasmic space(細胞膜と細胞外膜の間)に亜硝酸塩を作った場合に検出できると考えられている3)。食品などから摂取した硝酸塩が尿中に存在すること、前述のような菌種が膀胱内に存在すること、尿路への貯留時間が4時間以上あることが必要である4)。腸内細菌目細菌やStaphylococcus属は硝酸塩を亜硝酸塩に還元でき、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)も還元できるが還元するのに時間がかかり、レンサ球菌や腸球菌は還元できない5)。硝酸塩を亜硝酸塩に変換できない微生物、pH<6.0、ウロビロノーゲン陽性、ビタミンC(アスコルビン酸)が存在する場合に偽陰性となる1)。血清ビリルビン値が高いときは、機序不明だが偽陽性が報告されている6)。3.尿pH意外に思われるかもしれないが、実は尿路感染症の診断において、尿定性検査での尿pHも有用である。尿pH<4.5もしくは>8.0の場合は生理的範囲では説明できない。尿路感染症の場合に酸性尿となることもあるが、臨床的意義が高いのはアルカリ尿のほうである。尿pH>8であれば、ウレアーゼ産生菌の関与を考える。細菌のもつウレアーゼが尿素を加水分解し、アンモニアが生成され尿pHが上昇する(図)7)。画像を拡大する代表的菌種はProteus mirabilis、Klebsiella pneumoniae、Morganella morganiiなど8)である。また、Corynebacterium属もウレアーゼを産生する。Escherichia coliはウレアーゼを産生することはなく、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、Enterococcus属も産生率は低い。尿路感染症での尿pHと培養結果を検討した研究では、pHが高いほどProteus mirabilisの頻度が高かったという報告もあり、実臨床でも起因菌の推定に有用である9)。また、尿pHが高いことは、リン酸マグネシウムアンモニウム結石(ストルバイトとも呼ばれる)ができやすいことにも関連する10)。グラム染色や尿沈渣でこれらを確認することで間接的に尿pHを予測することもできる。閉塞性尿路感染症+意識障害ではウレアーゼ産生菌による高アンモニア血症を鑑別する必要がある。4. 迅速検査の組み合わせから尿路感染症を診断するここまで各種検査の詳細について述べてきたが、いずれも単独で尿路感染症を診断できるものではない。しかしながら各種検査を正確に解釈し、組み合わせることで診断に迫ることができる。各種検査とその組み合わせによる診断特性についてまとめると表1~311-16)となる。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する白血球反応は膿尿検出の感度・特異度は比較的高いが、陽性であれば尿路感染症であるというわけではなく、また白血球反応が陰性で尿路感染症状がある患者では、尿沈渣や尿培養を検討する必要がある。亜硝酸塩は感度が低く、陰性でも尿路感染症を否定できないが、陽性なら尿路感染症を強く疑う根拠とはなる。逆に白血球エステラーゼと亜硝酸塩がともに陰性であれば尿路感染症の可能性を下げる。尿沈渣は簡便性に劣るが信頼性が高く、白血球数や細菌数によって尿路感染症の可能性を段階的に評価できる。尿グラム染色は迅速に施行することができ、得られる情報量も多く、診断特性が高い検査の1つである。とくに尿沈渣の検査を夜間・休日に施行できない施設では大きな武器となる。おわりに逆説的ではあるが、あくまで検査所見のみをもって尿路感染症を診断することができないことは繰り返し述べておく。検査を適切に解釈し、病歴・身体診察と組み合わせることでより正確な診断に迫れることは忘れないでほしい。本項が検査の解釈の一助となれば幸いである。《今回の症例の診断》昨日より頻尿を認めており、左CVA叩打痛も陽性であった。尿グラム染色ではレンサ状のグラム陽性球菌を認めた。尿定性での白血球反応陽性の感度が70%程度であること、腸球菌やレンサ球菌では亜硝酸塩は陰性になることを鑑みて、臨床所見とあわせて腎盂腎炎の疑いで入院加療とした。翌日、尿培養からB群溶連菌を認め、これに伴う腎盂腎炎と診断した。1)Simerville JA, et al. Am Fam Physician. 2005;71:1153-1162.2)Gallagher EJ et al. Am J Emerg Med. 1990;8:121-123.3)Morozkina EV, Zvyagilskaya RA. Biochemistry. 2007;72:1151-1160.4)Wilson ML, Gaido L. Clin Infect Dis. 2004;38:1150-1158.5)Sleigh JD. Br Med J. 1965;1:765-767.6)Watts S, et al. Am J Emerg Med. 2007;25:10-14.7)Burne RA, Chen YY. Microbes Infect. 2000;2:533-542.8)新井 豊ほか. 泌尿器科紀要 1989;35:277-281.9)Lai HC, et al. J Microbiol Immunol Infect. 2021;54:290-298.10)Daudon M, Frochot V. Clin Chem Lab Med. 2015;53:s1479-1487.11)Ramakrishnan K, Scheid DC. Am Fam Physician. 2005;71:933-942.12)Zaman Z, et al. J Clin Pathol. 1998;51:471-472.13)Williams GJ, et al. Lancet Infect Dis. 2010;10:240-250.14)Whiting P, et al. BMC Pediatr. 2005;5:4.15)Meister L, et al. Acad Emerg Med. 2013;20:631-645.16)Ducharme J, et al. CJEM. 2007;9:87-92.

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小児・青年に対する抗精神病薬の生理学的影響の比較〜ネットワークメタ解析

 小児および青年における各抗精神病薬に対する生理学的反応の程度は、よくわかっていない。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMaria Rogdaki氏らは、神経精神疾患および神経発達障害を伴う小児および青年における各種抗精神病薬の生理学的変数への影響を評価するため、ネットワークメタ解析を実施した。The Lancet. Child & Adolescent Health誌2024年7月号の報告。 2023年12月22日までに公表された神経精神疾患および神経発達障害を伴う18歳未満の小児または青年を対象に抗精神病薬とプラセボを比較したランダム化比較試験(RCT)をMedline、EMBASE、PsycINFO、Web of Science、Scopusより検索し、ネットワークメタ解析を実施した。主要アウトカムは、体重、BMI、空腹時血糖、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド、プロラクチン、心拍数、収縮期血圧(SBP)、補正QT時間(QTc)のベースラインから急性期治療終了までの平均変化とした。複数の用量で検討されたマルチグループ試験では、すべての用量について各生理学的変数のサマリ値を算出した。Kilimプロットを用いて、すべての治療とアウトカムの結果を要約し、p値を用いて、治療効果と統計学的エビデンスの強さに関する情報を評価した。異質性はτ、バイアスリスクはCochrane Collaborationバイアスリスク評価ツール、ネットワークメタ解析の信頼性はConfidence in Network Meta-Analysis(CINEMA)appで評価した。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングした6,676件の研究より、47件のRCTをメタ解析に含めた。・分析対象は、プラセボ群2,134例、抗精神病薬群4,366例、治療中央値は7週間(IQR:6〜8)、平均年齢は13.29±2.14歳であった。・抗精神病薬には、アリピプラゾール、アセナピン、ブロナンセリン、クロザピン、ハロペリドール、ルラシドン、molindone、オランザピン、パリペリドン、ピモジド、クエチアピン、リスペリドン、ziprasidoneが含まれた。・各主要アウトカムに対するプラセボと比較した抗精神病薬の平均変化差(95%信頼区間)は次のとおり。【体重】−2.00kg(−3.61〜−0.39:molindone)〜5.60kg(0.27〜10.94:ハロペリドール)【BMI】−0.70kg/m2(−1.21〜−0.19:molindone)〜2.03kg/m2(0.51〜3.55:クエチアピン)【総コレステロール】−0.04mmol/L(−0.39〜0.31:ブロナンセリン)〜0.35mmol/L(0.17〜0.53:クエチアピン)【LDLコレステロール】−0.12mmol/L(−0.31〜0.07:リスペリドン、パリペリドン)〜0.17mmol/L(−0.06〜0.40:オランザピン)【HDLコレステロール】0.05mmol/L(−0.19〜0.30:クエチアピン)〜0.48mmol/L(0.18〜0.78:リスペリドン、パリペリドン)【トリグリセライド】−0.03mmol/L(−0.12〜0.06:ルラシドン)〜0.29mmol/L(0.14〜0.44:オランザピン)【空腹時血糖】−0.09mmol/L(−1.45〜1.28:ブロナンセリン)〜0.74mmol/L(0.04〜1.43:クエチアピン)【プロラクチン】−2.83ng/mL(−8.42〜2.75:アリピプラゾール)〜26.40ng/mL(21.13〜31.67:リスペリドン、パリペリドン)【心拍数】−0.20bpm(−8.11〜7.71:ziprasidone)〜12.42bpm(3.83〜21.01:クエチアピン)【SBP】−3.40mmHg(−6.25〜−0.55:ziprasidone)〜10.04mmHg(5.56〜14.51:クエチアピン)【QTc】−0.61ms(−1.47〜0.26:ピモジド)〜0.30ms(−0.05〜0.65:ziprasidone) 著者らは、「抗精神病薬に対し、小児および青年は、多様で臨床的に重要な生理学的反応を示す。さまざまな神経精神疾患および神経発達障害を伴う小児および青年の治療ガイドラインは、関連する代謝変化、プロラクチン変化、血行動態変化に関する各抗精神病薬の明確なプロファイルを反映するよう更新する必要がある」としている。

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蕁麻疹の診断後1年、がん罹患リスク49%増

 デンマークの医療データベースを使用したコホート研究によると、蕁麻疹患者はそうでない人と比較して、診断後1年間でがんに罹患するリスクが49%高く、その後の数年間でも6%のリスク増が見られたという。デンマーク・オーフス大学病院のSissel B. T. Sorensen氏らによる本研究は、British Journal of Dermatology誌オンライン版2024年6月27日号に掲載された。 研究者らは、デンマークの医療登録データを使用して遡及的コホート研究を実施し、蕁麻疹患者のがん罹患リスクと一般集団のリスクを比較した。1980~2022年に病院の外来、救急外来、入院において初診で蕁麻疹と診断された8万7,507例(女性が58%)を特定した。追跡期間中央値は10.1年だった。非黒色腫皮膚がんを含む偶発がんは、デンマークがん登録を使用して特定され、診断時の転移の程度によって分類された。蕁麻疹診断後1年内のがん罹患の絶対リスク、およびデンマークの全国がん罹患率で標準化された95%信頼区間(CI)と標準化罹患比(SIR)を計算した。 主な結果は以下のとおり。・観察群7,788例と対照群7,161例に基づいた、全がん種のSIRは1.09(95%CI:1.06~1.11)であった。追跡開始後1年間のがんリスクは0.7%(95%CI:0.6~0.7)であった。・追跡開始後1年間で蕁麻疹既往歴のある588例ががんと診断され、全がん種におけるSIRは1.49(95%CI:1.38~1.62)だった。・1年目以降、全がん種のSIRは減少し、7,200例のがん症例が観察された1.06(95%CI:1.04~1.09)時点で安定した。・追跡開始後1年間は血液がん、とくに非ホジキンリンパ腫(SIR:2.91、95%CI:1.92~4.23)、ホジキンリンパ腫(SIR:5.35、95%CI:2.56~9.85)のリスクが高かった。・診断されたがんの病期は、蕁麻疹診断歴のある人とない人で同様であった。 研究者らは「蕁麻疹診断時または診断後1年目に、がん罹患リスクが大きく上昇することがわかった。1年を超えた後も6%のリスク上昇が持続した。潜伏しているがんが蕁麻疹を促進する、あるいはがんと蕁麻疹が共通の危険因子を有している可能性がある」としている。

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ニルセビマブ、乳児のRSV感染症入院リスクを83%減少/NEJM

 実臨床において、長時間作用型の抗RSVヒトモノクローナル抗体であるニルセビマブは、RSウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)関連細気管支炎による入院リスクの低下に有効であることが示された。フランス・Paris Cite UniversityのZein Assad氏らが、生後12ヵ月未満の乳児を対象とした多施設共同前向きマッチング症例対照研究「Effectiveness of Nirsevimab against RSV-Associated Bronchiolitis Requiring Hospitalization in Children:ENVIE研究」の結果を報告した。RSVは細気管支炎の主な原因であり、世界中で毎年300万例が入院している。ニルセビマブ承認後の、実臨床におけるRSV関連細気管支炎に対する有効性については不明であった。NEJM誌2024年7月11日号掲載の報告。前向きマッチング症例対照研究でニルセビマブの有効性を検証 フランスでは2023~24年のRSウイルス感染症シーズンに向けて、2023年2月6日以降に同国で生まれたすべての小児にニルセビマブ単回投与を無料で行うことが推奨され、このニルセビマブプログラムは2023年9月15日にフランス都市圏で開始された。 研究グループは、2023年10月15日~12月10日に、PCR法でRSVが検出されたRSV関連細気管支炎のために入院した乳児を症例群、RSV感染とは関係のない症状で同じ病院を受診した乳児を対照群として、年齢、病院受診日、試験施設を2対1の割合でマッチさせ、交絡因子を調整した多変量条件付きロジスティック回帰モデルを用いて、ニルセビマブのRSV関連細気管支炎による入院に対する有効性を算出した。いくつかの感度解析も実施した。 解析対象は1,035例で、症例群690例(年齢中央値:3.1ヵ月[四分位範囲[IQR]:1.8~5.3)、対照群345例(3.4ヵ月[1.6~5.6])であった。このうち、症例群60例(8.7%)、対照群97例(28.1%)にニルセビマブ投与歴があった。入院リスクを83.0%減少、重症化リスクを67.2~69.6%減少 RSV関連細気管支炎による入院に対するニルセビマブの調整推定有効率は83.0%(95%信頼区間[CI]:73.4~89.2)であった。すべての感度解析で、主要解析と同様の結果が得られた。 小児集中治療室(NICU)入室を要するRSV関連細気管支炎に対するニルセビマブの有効率は69.6%(95%CI:42.9~83.8)(症例群14.0%[27/193例]vs.対照群32.2%[47/146例])、人工呼吸器を必要とするRSV関連細気管支炎に対する有効率は67.2%(95%CI:38.6~82.5)(症例群14.3%[27/189例]vs.対照群30.5%[46/151例])であった。 著者は本研究の限界として、観察症例対照試験であるため因果関係についての結論を導き出すことはできないこと、対照群ではRSVのPCR検査が実施されていないこと、さらに対照群は小児救急外来を受診した患者であったが症例群は入院患者であったこと、ニルセビマブの有効性が国内プログラム開始後の非常に早い段階で評価されたことなどを挙げている。

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片頭痛の予防薬は薬物乱用頭痛も減らす?

 慢性片頭痛に苦しんでいる人は、鎮痛薬を飲み過ぎると薬物乱用頭痛に襲われるという悪循環に陥ることがある。こうした中、片頭痛の予防薬として広く使用されているカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬のatogepant(商品名Qulipta、日本国内未承認)が、薬物乱用頭痛の回避にも役立つ可能性のあることが、英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)のPeter Goadsby氏らの研究で示された。CGRPは、片頭痛を誘発するタンパク質の1つである。この研究の詳細は、「Neurology」に6月26日掲載された。 慢性片頭痛とは、頭痛が月に15日以上の頻度で起こり、そのうち8日以上が片頭痛の診断基準を満たしている状態と定義されている。今回の研究には、755人の慢性片頭痛患者が参加した。参加者の平均的な1カ月当たりの片頭痛の日数は18.6~19.2日、頭痛薬の使用日数は14.5~15.5日だった。また、頭痛薬の使用歴について報告があった参加者の3分の2に当たる500人(66.2%)が頭痛薬の使用過多の基準を満たしていた。この基準は、頭痛薬の種類がアスピリンやアセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の場合は月に15日以上、トリプタン製剤やエルゴタミン製剤の場合は月に10日以上、複数の頭痛薬を併用した場合は月に10日以上使用した場合と定義された。 参加者は12週間にわたって、1)atogepant 30mgを1日2回、2)atogepant 60mgを1日1回、3)プラセボを摂取する群のいずれかにランダムに割り付けられた。 その結果、頭痛薬使用過多の基準を満たしていた患者のうち、プラセボを使用していた群と比べてatogepant 30mg群では1カ月当たりの片頭痛日数が約3日少なく(最小二乗平均の差−2.7日)、頭痛日数も約3日少なかった(同−2.8)。また、atogepant 60mg群では、プラセボ群と比べて片頭痛日数が約2日少なく(同−1.9)、頭痛日数も約2日少なかった(同−2.1)。Goadsby氏らによると、頭痛薬使用過多の基準を満たしていなかった研究参加者においても、同様の結果が示されたという。 さらに、頭痛薬使用過多の基準を満たしていた患者のうち、1カ月当たりの片頭痛の平均日数が50%以上減少した患者の割合は、プラセボ群の24.9%に対してatogepant 30mg群では44.7%、atogepant 60mg群では41.8%であることも示された。このほか、頭痛薬使用過多の基準を満たした患者の割合も、atogepant 30mg群では61.9%、atogepant 60mg群では52.1%減少したのに対し、プラセボ群では38.3%の減少にとどまっていた。 Goadsby氏は、「片頭痛持ちの人は、衰弱性の症状となることの多い頭痛を抑えるために鎮痛薬を多用する傾向がある。しかし、薬の使い過ぎは薬物乱用頭痛と呼ばれる頭痛を引き起こす可能性があるため、予防的な治療が必要だ」と言う。そして、「この結果に基づけば、atogepantによる治療は頭痛薬の使用量を減らし、薬物乱用頭痛の発生リスクを低下させ得ると考えられる。このことは、片頭痛を抱える人の生活の質(QOL)の向上をもたらす可能性がある」と「Neurology」のニュースリリースの中で述べている。ただし、今後、atogepantの有効性と安全性を評価するためのさらなる研究が必要である。 またGoadsby氏らは、今回の研究の限界として、頭痛や頭痛薬使用の状況が研究参加者の自己報告に基づいているため、報告が正確でない可能性も考えられることを挙げている。なお、この研究はatogepantを製造しているAbbVie社の資金提供により実施された。

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肺の空洞性病変の鑑別診断(1)[総論編]【1分間で学べる感染症】第7回

画像を拡大するTake home message肺の空洞性病変の鑑別診断は「CAVITY」で覚えよう。肺の空洞性病変を見たら、皆さんは何の鑑別を考えますか?鑑別診断は多岐にわたりますが、大まかな分類を覚えるのに 「CAVITY」という語呂合わせが有用です。CCancer がん(扁平上皮がん、肺転移)AAutoimmuneVVascular 血管性(肺塞栓症、敗血症性肺塞栓症)IInfection 感染(結核、非結核性抗酸菌症、細菌、真菌、寄生虫)※詳しくは次回説明します。TTrauma 外傷(肺気瘤)YYouth/congenital 若年性/先天性(非結核性抗酸菌症、細菌、真菌、寄生虫)重要な点は、「感染性だけではなく、非感染性の幅広い鑑別診断がある」ことを理解することです。診断には、気管支鏡検査や肺生検を要することも多いですが、その他の病歴や身体所見などを総合的に考慮し、診断のための検査を進める必要があります。1)Harding MC, et al. Fed Pract. 2021;38:465-467.2)Cho Y, et al. Am Osteopath Coll Radiol. 2019;8:18-24.

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オミクロン対応2価コロナワクチン、半年後の予防効果は?/感染症学会・化学療法学会

 第98回日本感染症学会学術講演会 第72回日本化学療法学会総会 合同学会が、6月27~29日に神戸国際会議場および神戸国際展示場にて開催された。本学会では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する最新知見も多数報告された。長崎大学熱帯医学研究所の前田 遥氏らの研究チームは、2021年7月から国内での新型コロナワクチンの有効性を長期的に評価することを目的としてVERSUS研究1)を開始しており、これまで断続的にその成果を報告している。今回は、2023年4月1日~11月30日の期間(XBB系統/EG.5.1流行期)における、オミクロン株BA.1およびBA.4-5対応2価ワクチンの有効性についての結果を発表した。本結果によると、2価ワクチンの入院予防効果について、接種から半年後でも高い有効性が持続することなどが明らかとなった。 本研究では、コロナワクチンの発症予防の有効性および入院予防の有効性を評価している。発症予防については、全国9都県15施設でCOVID-19を疑う症状で医療機関を受診した16歳以上を対象とした。入院予防については、全国10都府県12施設で呼吸器感染症を疑う症状が2つ以上ある、または新たに出現した肺炎像を認め、医療機関に入院した60歳以上を対象に調査を行った。検査陰性デザイン(test-negative design:TND)を用いた症例対照研究で、ワクチン未接種と比較した2価ワクチン接種の有効性(回数によらない)を推定している。ワクチン接種歴不明、ワクチンの種類不明の場合(起源株対応の従来型のワクチンか2価ワクチンか不明の場合)は解析から除外した。 主な結果は以下のとおり。【発症予防の有効性】・全体で7,494例が解析対象となった。年齢中央値44歳(四分位範囲[IQR]:28~63)、男性45.2%、基礎疾患のある人27.5%。・コロナワクチンの接種歴は、ワクチン接種なし13.1%、起源株対応の従来型ワクチンのみ接種41.6%、オミクロン株BA.1/BA.4-5対応2価ワクチン接種45.2%であった。・16~64歳での2価ワクチンの発症予防の有効性は、ワクチン接種なしと比較して、接種から7~90日では22.9%(95%信頼区間[CI]:-4.8~43.2)、91~180日では32.3%(7.7~50.4)、181日以上では2.9%(-21.5~22.5)となり、接種から半年間の有効性の低下が顕著であった。・65歳以上での2価ワクチンの発症予防の有効性は、ワクチン接種なしと比較して、接種から7~90日では40.8%(95%CI:6.1~62.7)、91~180日では52.2%(21.7~70.8)、181日以上では40.8%(3.8~63.5)であった。【入院予防の有効性】・60歳以上の1,170例が解析対象となった。年齢中央値83歳(IQR:75~89)、男性57.1%、高齢者施設入居者29.7%、基礎疾患のある人76.5%。・コロナワクチンの接種歴は、ワクチン接種なし16.3%、起源株対応の従来型ワクチンのみ接種22.9%、オミクロン株対応2価ワクチン接種60.8%であった。・2価ワクチンの入院予防の有効性は、ワクチン接種なしと比較して、接種から7~90日では59.6%(95%CI:31.2~76.2)、91~180日では69.4%(45.6~82.8)、181日以上では55.3%(19.1~75.3)であった。入院時呼吸不全あり、CURB-65で判断した重症度で入院時の重症度が中等症以上、入院時肺炎ありといったより重症の場合でも、ワクチンの有効性は全入院予防の有効性と比較して同等かそれ以上であった。 本研究により、オミクロン対応2価コロナワクチンの有効性について、発症予防はとくに若年者において低い値であったが、サンプルサイズは限られるものの、入院予防は接種から半年後も高い有効性が保たれていることが認められた。前田氏は、「ただし、より長期的に評価すると、接種から時間が経つにつれ効果は下がってくる可能性があるため、追加接種の必要性を考えるためにも継続して評価が必要である」と見解を示し、「新型コロナワクチン政策や流行株は各国で異なるため、国内におけるワクチンの有効性を評価することは、国内のワクチン政策を考慮する際にとくに重要であり、現在使用されているXBB.1.5対応ワクチンなどについても、今後も継続して評価をしていく」と語った。

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腎移植後の抗体関連型拒絶反応、抗CD38抗体felzartamabが有望/NEJM

 移植腎廃絶の主な原因である抗体関連型拒絶反応を呈した患者において、抗CD38モノクローナル抗体felzartamabは、許容可能な安全性および副作用プロファイルを示した。オーストリア・ウィーン医科大学のKatharina A. Mayer氏らが第II相二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。先行研究で、移植腎障害を引き起こす同種抗体とナチュラルキラー(NK)細胞を抑制するため、CD38を標的とすることが治療選択肢となる可能性が示唆されていた。NEJM誌2024年7月11日号掲載の報告。felzartamab(16mg/kg体重)を6ヵ月間で9回静脈内投与 研究グループは移植後180日以上経過後に抗体関連型拒絶反応を呈した患者を、felzartamab(16mg/kg体重)を9回静脈内投与する群またはプラセボを投与する群に割り付け、6ヵ月間投与し、その後6ヵ月間観察した。 主要アウトカムは、felzartamabの安全性および副作用プロファイル。重要な副次アウトカムは、24週および52週時点の腎生検の結果、ドナー特異的抗体値、末梢血NK細胞数、ドナー由来無細胞DNA値とした。重篤な有害事象はfelzartamab群1例vs.プラセボ群4例 2021年10月~2023年3月にウィーン医科大学とシャリテー-ベルリン医科大学で、腎移植を受け抗体関連型拒絶反応を呈した患者22例が無作為化された(各群11例)。移植を受けてから試験組み込みまでの期間中央値は9年(四分位範囲:5~18)であった。両群の特性は、年齢中央値(felzartamab群33歳、プラセボ群46歳)、eGFR中央値(60mL/分/1.73m2 vs.36mL/分/1.73m2)を除き、概してバランスは取れていた。 felzartamab群の8例で、軽度または中等度の注入に伴う反応がみられた。 重篤な有害事象は、felzartamab群1例とプラセボ群4例に発現。移植腎の廃絶がプラセボ群の1例で発現した。 24週および52週時点で腎生検を受けたのは、felzartamab群11例、プラセボ群10例であった。 24週時点で、形態学的な抗体関連型拒絶反応の消失が認められた割合は、felzartamab群(9/11例[82%])のほうがプラセボ群(2/10例[20%])よりも高く、その差は62%ポイント(95%信頼区間[CI]:19~100)であり、リスク比は0.23(95%CI:0.06~0.83)であった。 24週時点で、微小血管炎症スコアの中央値は、felzartamab群がプラセボ群よりも低く(0 vs.2.5)、平均群間差は-1.95(95%CI:-2.97~-0.92)だった。また、抗体関連型拒絶反応の確率を反映する分子スコア(0.17 vs.0.77)、ドナー由来無細胞DNA値(0.31% vs.0.82%)も低かった。 52週時点で、felzartamabの効果が認められた9例のうち3例で抗体関連型拒絶反応の再発が報告された。分子活性とバイオマーカー値はベースラインレベルに上昇していた。

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運動が化学療法による末梢神経障害の回避に有効か

 化学療法を受ける患者の多くが発症する化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)の回避に運動が有効である可能性が、新たな研究で示唆された。この研究では、運動をしなかった患者でCIPNを発症した者は、運動をした患者の約2倍に上ることが示されたという。バーゼル大学(スイス)のFiona Streckmann氏らによるこの研究結果は、「JAMA Internal Medicine」に7月1日掲載された。 研究グループによると、化学療法を受ける患者の70〜90%は、痛みやバランス感覚の問題、しびれ、熱感、ピリピリ感やチクチク感などのCIPNの症状を訴え、半数の患者は、がんの治療後もこのような症状が持続するという。 今回の研究では、オキサリプラチン、またはビンカアルカロイド系抗悪性腫瘍薬による化学療法を受ける158人のがん患者(平均年齢49.1歳、男性58.9%)を対象にランダム化比較試験を実施し、感覚運動トレーニング(sensorimotor training;SMT)と全身振動刺激(whole-body vibration;WBV)トレーニングがCIPNの発症や症状の低減に有効であるかどうかが検討された。対象者は、SMTを受ける群(55人)、WBVトレーニングを受ける群(53人)、および、運動は行わずに通常のケアのみを受ける群(対照群、50人)にランダムに割り付けられた。介入群(SMT群とWBV群)は、1回当たり15〜30分間のトレーニングセッションを週に2回、化学療法が終了するまで受けた。 ITT解析の結果、CIPNの発症率は、対照群で70.6%であったのに対し、SMT群では30.0%、WBVトレーニング群では41.2%であり、対照群に比べて介入群では有意に低いことが明らかになった。この結果は、介入に75%を超えて参加した者のみを対象にしたPPS解析ではさらに顕著であった(対照群73.3%、SMT群28.6%、WBVトレーニング群37.5%)。また、2種類の介入のうち、より効果が高かったのはSMTで、SMT群では対照群よりも、開眼/閉眼で両足立ちでのバランスコントロール、片足立ち、振動感覚、触覚、下肢の筋力の改善、および痛みと熱感の軽減の程度が大きく、化学療法の投与量削減を受けた患者が少なく、死亡率も低かった。 Streckmann氏は、「CIPNは、患者に必要な化学療法サイクルの計画通りの実施不可や、化学療法に含まれる神経毒性薬剤の投与量の削減、治療の中止など、臨床治療に直接的な影響を与える」と話す。同氏によると、現時点でCIPNの予防や回復に有効な薬剤は見つかっていない。それにもかかわらず、米国の医師は毎年、CIPNの治療に患者1人当たり推定1万7,000ドル(1ドル160円換算で272万円)を費やしているという。同氏は、「これに対し、運動は効果的である上に安価だ」と述べる。 Streckmann氏らは、支持療法としてがん治療に運動を取り入れるためのガイドラインを病院向けに作成中であるとしている。また、ドイツとスイスの6つの小児病院で、化学療法を受けている小児の末梢神経障害に対する運動の予防効果を確かめる研究が進行中であるという。

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マサチューセッツ総合病院に勤務開始、NEJMのEditorと交流【臨床留学通信 from Boston】第1回

マサチューセッツ総合病院に勤務開始、NEJMのEditorと交流米国の病院では7月から新年度です。7月1日が月曜日なのもあって、ボストン郊外に引っ越しして3日ほどで生活をセットアップし、新天地のハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院(MGH)で早速業務開始です。とはいっても、1日半ほどはオリエンテーションでした。ボストンのほうが住民に白人が多い印象ですが、とくに今までの施設で見たことがなかったAgainst Racism(人種差別反対)のコーナーがあり、ハーバードらしさを感じます。また、NEJMに毎週掲載される症例報告はMGHから提供されるのですが、そのEditorの先生に「何か面白い症例があったら教えてね」とオリエンテーションで説明がありました。興味深い症例があったら提示したいと思います。ただし、循環器は基本的に診断に難しい症例が少なく、難解なリウマチ系などの疾患がしばしばみられます。「Shout out Rheumatology(リウマチ学に敬意を表してください)」とも言われたので、リウマチ系の症例がよく提供されているのでしょう。NEJMの症例報告は、たとえばこちらから閲覧できます。Ganapathi L, et al. Case 20-2024: A 73-Year-Old Man with Recurrent Fever and Liver Lesions. N Engl J Med. 2024;390:2309-2319.鑑別診断から入り、最終的に病理がある症例が多く取り上げられるため、内科医の頭の体操にもってこいです。私は医学部6年生の時に内科に進むと決めてから、部活のテニスの合間など、英語の勉強も兼ねて読み始め、10年分ほどをその1年で読んでいました。また『Pocket Medicine』という本も内科医向けにMGHから出ていますが、文字どおりポケットにスッと入って、鑑別診断から最新治療まで、文献も含めてコンパクトにまとまっていておすすめです。私は研修医時代に、これで症例ごとに勉強していました。MGHでの具体的な業務内容は、次回以降に述べたいと思います。ColumnMGHの施設を紹介します。画像を拡大する現在のMGHの正面です。画像を拡大する1818年からあるMGHブルフィンチ棟です。画像を拡大する提供してもらった白衣です。白衣を着ると身が引き締まる思いですが、米国では約半数のスタッフは白衣をほとんど着ることはありません。スクラブのみ、または私服で仕事をしていることが多いです。しかし、なんとなくこの白衣は格好良いせいか、病院内で着ている人が多い印象です。今回から本連載のアイコンとなった金色のドームは、ボストンを象徴する建造物のマサチューセッツ州会議事堂です。MGHのブルフィンチ棟と同じ建築家のチャールズ・ブルフィンチによる設計で1798年に建設されました。

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重要性を増すゲノム診療科、その将来ビジョン/日本動脈硬化学会

 2023年に議員立法として成立した“良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律”、通称「ゲノム医療推進法」。詳細についての議論はこれから進んでいく模様だが、循環器領域においては、2022年度の診療報酬改定により動脈硬化に関連する難病への遺伝学的検査の対象疾患が拡大され、4疾患(家族性高コレステロール血症、原発性高カイロミクロン血症、無βリポタンパク血症、家族性低βリポタンパク血症1[ホモ接合体])の遺伝学的検査を含む複数の脂質異常症疾患が保険適用された。 そこで今回、厚生労働省のゲノム医療推進法基本計画ワーキンググループ委員である吉田 雅幸氏(東京医科歯科大学遺伝子診療科 科長/日本動脈硬化学会副理事長)が『我が国におけるゲノム医療と動脈硬化性疾患の遺伝子診断』と題し、遺伝子診断で直面する課題や将来展望について、プレスセミナーで話をした(主催:日本動脈硬化学会)。遺伝診断の将来ビジョン もしも、自分の家族が遺伝性大腸がんや遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)、希少な遺伝性疾患に罹患したら、ご自身の遺伝子検査をどの施設で受けられるかご存じだろうか。あるいは患者から遺伝子検査の相談を受けたら、紹介先などを即答できるだろうか-。一般的に遺伝性疾患の多くは原因不明で、仮に遺伝子疾患が疑われても患者はどこの病院や診療科へ受診するのが適切なのかわからないことが多い。吉田氏は「ゲノム医療の現場で生じている診断・治療に至る長い道のり“Diagnostic Odessey”に多くの時間を費やすのは、原因不明な希少疾患や未診断疾患で苦しむ患者やその家族。そのうえ、患者側が遺伝子診断の可能な施設を見つける手立てもない」と述べ、遺伝専門医にすぐにたどり着けない現状が希少疾患や難病などの早期診断・治療の足かせになっているとして問題提起した。 現在、政府が主導となりゲノム医療等実現推進協議会からタスクフォースを設置し、オールジャパン体制の下でゲノム医療の社会実装のために10万人の全ゲノムを解析して医療へ応用させることを目的とした「全ゲノム解析等実行計画2022」プロジェクトが進められている。策定計画によると、“全ゲノム解析等を実施し、解析結果の日常診療への導入による患者への還元をはじめ、質の高い情報基盤を構築することで、がん・難病などの克服に繋げていくこと”が狙いである。その一方で、100万人規模のゲノム解析研究を目指す英国などの諸外国と水準をそろえていくこと、ゲノム医療の社会実装には、患者・市民参画(Patient and Public Involvement:PPI)や倫理的・法的・社会的課題(Ethical, Legal and Social Issues:ELSI)の推進も併せて望まれるため、法令上の措置を含めた具体的な方策が必要とされている。患者-医療者双方のため、遺伝子検査の実績を可視化させよう このプロジェクトを実装していくためには、国民のゲノム医療へのアクセス確保が急務とされることから、同氏は「▽ゲノム医療の標榜診療科の制定、▽ゲノム医療関連人材の育成、▽患者・市民のゲノム医療・研究への参画」の3つを挙げた。たとえば、昨今の診療報酬点数表に収載されている遺伝性疾患数は、約10年前と比較し191疾患と大幅に増加しているにもかかわらず、ゲノム診療科を標榜する施設の開示がなされていない。同氏は「診療実績を可視化させることでその実績が院内でも周知され、診療科間の連携強化につながる。また、現在では診療報酬の請求からDPCへ反映されるため、そうなればNDB(National Database)におけるゲノム医療の利活用促進にもつながる」と強調した。また、日本動脈硬化学会のホームページに掲載されている『家族性高コレステロール血症(FH)の紹介可能な施設等一覧』では、FHに限られるが、遺伝学的検査の実施有無に関して近隣施設を検索することが可能であるため、「患者に外部施設を紹介する際などに参考になる」ことを説明した。  なお、同氏の所属施設である東京医科歯科大学の場合、遺伝子診療科において内科各科、小児科、外科、腫瘍センター、女性診療科、泌尿器科、耳鼻科が連携を取り、“横串”を通す診療各科横断的な遺伝子診療を実施している。遺伝専門医や認定カウンセラー不足、他県や他施設で補い合う ゲノム医療では、リスクなどがわかるように説明する必要があるため、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラー(非医師)による説明が欠かせない。ところが、前者は総医師数(医療施設従事者数:約31万人)のわずか0.53%(1,894人、2024年2月時点)、カウンセラーに至っては389人、5県で不在、9県で1人ずつしか在籍していないという。「このような人材不足をカバーするために、他県や関連病院との連携もさることながら、オンライン診療を駆使していく予定」と説明し、「将来的な治療との結びつきのためにも遺伝子解析は必要。循環器領域でいうPCSK9の遺伝子変異解析がそれにあたるが、エクソソーム解析(全ゲノムの5%)自体が砂金を探すようなプロジェクトとも言えるため、遺伝性疾患に対する治療薬の開発、遺伝学的検査の保険収載が進みつつあるなか、標榜診療科の策定や人材育成が必要となるだろう」とまとめた。

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tisotumab vedotin、再発子宮頸がんの2次・3次治療に有効/NEJM

 再発子宮頸がんの2次または3次治療において、化学療法と比較してtisotumab vedotin(組織因子を標的とするモノクローナル抗体と微小管阻害薬モノメチルアウリスタチンEの抗体薬物複合体)は、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)が有意に延長し、新たな安全性シグナルの発現はないことが、ベルギー・Universitaire Ziekenhuizen LeuvenのIgnace Vergote氏らが実施した「innovaTV 301/ENGOT-cx12/GOG-3057試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年7月4日号で報告された。27ヵ国168施設の無作為化第III相試験 本研究は、日本を含む27ヵ国168施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、前治療後に病勢が進行した再発子宮頸がん患者におけるtisotumab vedotinの有効性と安全性の評価を目的に行われた(GenmabとSeagenの助成を受けた)。 再発または転移を有する子宮頸がんと診断され、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)performance-statusのスコアが0または1の患者502例(年齢中央値50歳[範囲:26~80]、前治療ライン数は1が61.4%、2が38.4%)を登録した。 tisotumab vedotin単剤(2.0mg/kg体重、3週ごと)の静脈内投与を受ける群に253例、担当医が選択した化学療法(トポテカン、ビノレルビン、ゲムシタビン、イリノテカン、ペメトレキセドのいずれか)を受ける群に249例を無作為に割り付けた。奏効率も有意に優れる 前治療薬として、全体の63.9%がベバシズマブの投与を、27.5%が抗PD-1または抗PD-L1抗体製剤の投与を受けていた。 主要評価項目であるOS中央値は、化学療法群が9.5ヵ月(95%信頼区間[CI]:7.9~10.7)であったのに対し、tisotumab vedotin群は11.5ヵ月(9.8~14.9)と有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.70、95%CI:0.54~0.89、両側p=0.004)。 12ヵ月時のOS率は、tisotumab vedotin群が48.7%(95%CI:41.0~55.8)、化学療法群は35.3%(28.0~42.7)であった。 PFS中央値は、化学療法群が2.9ヵ月(95%CI:2.6~3.1)であったのに比べ、tisotumab vedotin群は4.2ヵ月(4.0~4.4)と有意に優れた(HR:0.67、95%CI:0.54~0.82、両側p<0.001)。 また、確定された奏効の割合は、化学療法群の5.2%と比較して、tisotumab vedotin群は17.8%と有意に高率だった(オッズ比:4.0、95%CI:2.1~7.6、両側p<0.001)。毒性による投与中止は14.8% 初回投与の1日目から最終投与後30日までに有害事象が1件以上発現した患者の割合は、tisotumab vedotin群が98.4%、化学療法群は99.2%であり、Grade3以上の有害事象は、それぞれ52.0%および62.3%で発現した。tisotumab vedotin群では、14.8%の患者が毒性により投与を中止した。 とくに注目すべき有害事象では、眼イベントがtisotumab vedotin群で52.8%、化学療法群で6.3%に発現し、このうちGrade3以上はそれぞれ4.0%および0%であった。また、末梢神経障害イベントはそれぞれ38.4%および4.2%、Grade3以上は5.6%および0.4%に、出血イベントは42.0%および14.2%、Grade3以上は2.4%および2.9%に発現した。 著者は、「これらのデータを総合すると、tisotumab vedotinは、再発子宮頸がん患者の治療において化学療法よりも優先される2次または3次治療の選択肢となる可能性が示唆される」としている。

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知ってますか? HeLa細胞、感動の1冊を通じて研究倫理を考える【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第74回

「誠に申し訳ございませんでした」一列に並んだ皆が頭を下げます。フラッシュが一斉にたかれ、シャッター音が鳴り続けます。5秒ほどたったでしょうか。一斉に頭をゆっくりと上げます。謝罪会見の冒頭です。社会の注目が集まります。謝罪側は、企業のこともあれば、行政組織のこともあれば、大学である場合もあります。大学では、しばしば研究不正が指摘され、そのたびに謝罪会見が行われます。研究活動の不正行為文部科学省のガイドラインで定義は、捏造(Fabrication)・改ざん(Falsification)・盗用(Plagiarism)の3つを特定不正行為としています1)。これらの研究内容の不正だけでなく、研究費の不正使用が問題となる場合もあります。倫理指針を逸脱した研究活動が問題となる場合もあります。倫理が重要視されるのは、「臨床研究においては、被験者の福利に対する配慮が科学的及び社会的利益よりも優先されなければならない」という臨床研究の根本的規範があるからです。医の倫理の起源は、紀元前4世紀から伝わる「ヒポクラテスの誓い」であるそうですが、これは医師が医療行為を行う際の倫理であって、研究の倫理について議論されだしたのは、ずいぶんと時間を経た後のようです。研究者の倫理が論じられる契機としては、ジェンナーによる種痘や、パスツールによる狂犬病ワクチンなどの、開発の過程での人体実験的な側面が有名で、ご存じの方も多いと思います。研究倫理に関する原則は、過去の不適切な人体実験に対応するために作られてきたともいえます。HeLa細胞の医学研究への貢献HeLa(ヒーラ)細胞という名前の細胞をご存じでしょうか。世界中の研究者に用いられ、さまざまな医学研究に寄与し続けてきた細胞です。HeLa細胞はヒト子宮頸がん由来です。不死化しており無制限に細胞分裂を繰り返す能力を持っています。細胞ががん化するのは、遺伝子に突然変異が積み重なり、細胞が不死化することが原因です。正常の細胞は自己が生まれた組織の中で、必要な役割を担って何回か分裂したあと自然に死んでいきます。この不死化したHeLa細胞は、世界中の研究者の元に届けられました。ポリオワクチンの開発に大きく寄与しました。大量培養されたHeLa細胞に、ポリオウイルスを感染させてワクチンの安全性や効果を確認したのです。がんの研究はもちろんのこと、ウイルス感染や、原爆の被爆者への影響などの研究にも貢献しました。体外受精、クローン作成、遺伝子マッピングなどの生命科学の進歩を導きました。HeLa細胞を用いた学術論文は6万本以上といわれます。その過程で生物学的な研究材料を販売するビッグビジネスを創出し、数百万ドル規模の利益をもたらしました。HeLa細胞が問いかける研究倫理ヘンリエッタ・ラックスさんを称える像(バージニア州ロアノーク)HeLa細胞の名前の由来は、その細胞を採取されたヘンリエッタ・ラックス(Henrietta Lacks)さんの名前の頭文字に由来します。貧しいアフリカ系アメリカ人女性が、子宮頸がんで米国・メリーランド州のジョンズ・ホプキンス病院の人種隔離病棟に入院し、1951年に亡くなりました。問題は、その細胞の採取が本人や家族の同意を得ることなく無断で行われたことです。その家族は採取された細胞がもたらした利益とは無縁でした。彼女の夫や子供は、研究者たちが同意なしに調査しようとしたことを契機に、ヘンリエッタ・ラックスさんの身体に由来する細胞が生き続けていることを知ります。研究倫理という問題について、HeLa細胞とその科学への貢献、その家族の経験を通じて見事に描いた作品があります。レベッカ・スクルート著の『The Immortal Life of Henrietta Lacks』です。邦訳は『不死細胞ヒーラ ヘンリエッタ・ラックスの永遠なる人生』(中里 京子訳、講談社)です。文庫本として『ヒーラ細胞の数奇な運命 医学の革命と忘れ去られた黒人女性』(中里 京子訳、河出文庫)もあります。難しい学術書ではなく、感動的な人間関係を見事に描いた文学作品というべきでしょう。ストーリーの背景に、インフォームドコンセント・人種差別・科学の進歩・研究倫理という問題を織り込んでいます。タイトルに「不死:immortal」とありますが、細胞が不死化するだけでなく、永遠の家族愛が不死化していることを感じます。幼少期に母を亡くした子供たちが、知らない場所で、命を紡ぎ続けた母であるHeLa細胞と出会うシーンは涙を誘います。今年の夏も暑い毎日が続くようです。「暑い」を超えて「熱い」という気温です。寝苦しい夜となります。そんな時には、エアコンを一晩中駆動させて、読書に耽ってみてはいかがでしょうか。中高生のご子息のいる皆さまには、夏休みの宿題になっている読書感想文の素材の1冊としてもお薦めします。読書が苦手という皆さまには、映画化されていることもお伝えしましょう。書籍と同タイトルの作品を日本語字幕でPrime Videoでも視聴できます。これもお薦めです。参考文献・参考サイト1)文部科学省:研究活動の不正行為等の定義

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