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腎機能低下RAへの生物学的製剤、安全性・有効性が明らかに

 血液透析(HD)患者を含む慢性腎臓病(CKD)を併存する関節リウマチ(RA)患者の治療薬についてのエビデンスは限られている。今回、虎の門病院腎センター内科・リウマチ膠原病科の吉村 祐輔氏らはCKD患者における生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(bDMARD)の有効性・安全性を明らかにした。腎機能低下群においてもbDMARDの継続率はおおむね保持され、とくに、インターロイキン-6(IL-6)阻害薬は、推定糸球体濾過量(eGFR)が30mL/分/1.73m2未満の患者で薬剤継続率が有意に高く、無効による中止が少なかったことから、IL-6阻害薬はほかの bDMARDと比較し、単剤での治療がより有効であることを示唆した。Annals of the Rheumatic Diseases誌オンライン版2024年7月4日号掲載の報告。 本研究は、国内のHD患者を含むCKDを伴うRA患者において、最初に用いられたbDMARDの有効性・安全性を評価することを目的に、2004~21年に2つの医療機関でbDMARDを新規処方されたRA患者425例を対象に後ろ向きコホート研究を実施した。対象患者を腎機能レベルと処方されたbDMARDの作用機序別(TNFα阻害薬、IL-6阻害薬、アバタセプト[CTLA-4 Ig])で分類し、bDMARDの初回処方日から(1)最初のbDMARDの中止、(2)全死因死亡、(3)中止(追跡不能による打ち切り/2021年12月末の観察期間終了に伴う打ち切り)のいずれか早い日まで追跡調査した。 主要評価項目は薬剤の36ヵ月継続率で、副次評価項目は疾患活動性評価-C反応性蛋白/赤血球沈降速度(DAS28- CRP/ESR)の変化、プレドニゾロン投与量、薬剤中止理由(無効、感染、副作用、その他)などが含まれた。 主な結果は以下のとおり。・CKDステージはG1:165例、G2:140例、G3a:36例、G3b:14例、G4:27例、G5:43例だった。・処方の内訳はTNFα阻害薬347例(インフリキシマブ:112例、エタネルセプト:98例、セルトリズマブ:65例、ゴリムマブ:45例、アダリムマブ:27例)、IL-6阻害薬36例(トシリズマブ:34例、サリルマブ:2例)、アバタセプト42例だった。・eGFR(mL/分/1.73m2)区分を≥60、30~60、<30の3つに分け、薬剤の作用機序別に36ヵ月継続率を調査したところ、全bDMARD(45.2%、32.0%、41.4%)、TNFα阻害薬(45.3%、28.2%、34.0%)、IL-6阻害薬(47.4%、66.7%、71.4%)、アダパセプト(42.9%、37.5%、33.3%)であった。・腎機能低下群においてもbDMARDの継続率はおおむね保持されたが、eGFR<30患者のTNFα阻害薬の継続率はGFR≥60と比較し有意に低かった。・一方、IL-6阻害薬はeGFR<30患者において最も継続率が高く、無効による中止率も最も低かった (ハザード比:0.11、95%信頼区間:0.02~0.85、p=0.03)。・eGFR<30の患者のサブ解析において、HD患者と非HD患者でbDMARDの36ヵ月継続率に有意差を認めなかった。・全bDMARDは、すべてのグループにおいてDAS28-CRP/ESRを改善し、プレドニゾロンの投与量を減らした。・CKDが進行してもbDMARDの薬剤継続率は大幅に低下しなかった。 研究者らは「本研究結果より、HD患者を含むCKD合併RA患者に対する効果的かつ安全な治療選択肢として bDMARD、とくにIL-6阻害薬の検討を支持する」としている。

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地中海食はがんサバイバーの寿命を延ばす?

 地中海食は、がんサバイバーが心臓の健康を維持し、長生きするのに役立つことが、イタリアの研究で示唆された。ウンベルト・ベロネージ財団(イタリア)のMaria Benedetta Donati氏らが800人以上のがんサバイバーのデータを分析したこの研究の詳細は、「JACC CardioOncology」に7月2日掲載された。 地中海食は、新鮮な果物や野菜、全粒穀物、種子類、ナッツ類、豆類、オリーブオイルを多く摂取することに重点を置いた食事法である。この食事法では、魚介類の週2回以上の摂取、乳製品および脂肪分の少ないタンパク質を毎日少量摂取することを推奨している。 この研究では、イタリアの35歳以上の成人2万4,325人を対象にした研究(Moli-sani試験)のデータから抽出された802人(平均年齢63±12歳、女性59%)のがんサバイバーを対象に、地中海食の摂取と死亡リスクとの関連が検討された。対象者の食生活は、診断後、平均で8.8±8.3年にわたり調査されていた。また、試験参加前12カ月間の食生活は、インタビュアーにより実施された半定量的食物摂取頻度調査により評価されていた。地中海食の遵守度については地中海食スコアを算出し、0〜3点(遵守度が低い)、4〜5点(平均的な遵守度)、6〜9点(遵守度が高い)の3群に分類した。 その結果、地中海食スコアが2ポイント上昇するごとに全死亡リスクは16%(ハザード比0.84、95%信頼区間0.71〜0.99、P=0.038)、心血管疾患による死亡リスクは31%(同0.69、0.49〜0.97、P=0.032)、有意に低下することが示された。がんによる死亡リスクについては、有意な低下は認められなかった(同0.91、0.73〜1.12、P=0.37)。また、地中海食の高い遵守度は、全死亡リスク、特に心血管疾患による死亡リスクの大幅な低下と独立した関連を示し、低い遵守度を1とした場合のハザード比は、全死亡で0.68(95%信頼区間0.46〜0.99)、心血管疾患で0.42(同0.19〜0.93)であった。 こうした結果を受けてDonati氏は、「この結果は、がんや心血管疾患などの異なる慢性疾患が、実は同じ分子的メカニズムを共有していることを示唆するものだ」と述べている。同氏はさらに、「このメカニズムは、これらの疾患に共通する基盤と考えられており、文献上では『共通の土壌(common soil)』と呼ばれている」と説明する。 研究グループは、「治療法の向上により、がんサバイバーの数は今後増加することが予想される。そのため、良い食事法が、がんを克服した人の健康とウェルビーイングをいかに改善し得るかを理解することは極めて重要だ」と述べている。 ウンベルト・ベロネージ財団の科学委員会会長であるChiara Tonelli氏は、同財団のニュースリリースの中で、「この研究では、地中海食に心血管疾患による死亡リスクを低下させる効果のあることが示された。この結果は、地中海食が果物、野菜、オリーブオイルなど、抗酸化物質の天然供給源となる食品で構成されていることから説明できる可能性がある。心血管疾患による死亡リスクは、地中海食のような生物活性化合物が豊富な食事法により低下する可能性があるからだ」と述べている。

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認知症予防に有効な“4種の運動”の組み合わせ【外来で役立つ!認知症Topics】第19回

認知症に限らず、運動が心身の健康に良いとすることに反対する者はいないだろうと思っていた。ところが運動は良くないと言った人がいる。それは自動車王と言われるフォード自動車の創立者ヘンリー・フォードだ。彼は「君が健康なら運動する必要はない。君が病気なら運動などをしてはいけない」という有名な台詞を残している。さて1999年に、アーサー・F・クレーマーという学者が、Nature誌に1ページの記事で「早歩きのような有酸素運動が脳の健康に良い」という研究報告をした1)。これを端緒に、最近まで認知症予防の運動といえば有酸素運動という時代になった。ところが近年、米国スポーツ医学会からこれに関するパラダイムシフトがあった。それによれば、高齢者において有酸素運動のみではなく、レジスタンス運動(筋トレ)、また片足立ちのようなバランス運動の3つをやってこそ、運動の効果が生まれるとされる2)。レジスタンス運動といえば筋力をアップ、またバランス運動は認知機能への効果もさることながら高齢者に多い転倒予防にはとても大切だろう。また私自身はデュアルタスク運動も欠かせないと思う。エビデンスが確立した有酸素運動まず有酸素運動による前頭葉が関わる認知機能への効果は、この20年余りになされた多くの臨床研究から確立したものと考えていいだろう。レジスタンス運動は遂行機能に効果的レジスタンス運動とは、筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける動作を繰り返し行う運動。たとえばスクワットや腕立て伏せ、ダンベル体操など。10~15回程度の回数を反復し、それを1~3セット無理のない範囲(2~3日に1回程度)で行うことが勧められる。というのは、これは標的筋肉に負荷を集中する運動なので、その筋肉に疲労が残るだけに、十分な回復期間が必要になるわけだ。その効果は筋力・筋の持久力アップから体幹支持筋強化まで及ぶ。また、メタアナリシスから認知機能、とくに遂行機能への効果があると報告されている3)。注意すべきは循環器系への配慮。有酸素運動では動脈硬化度が一時的に低下するのに対し、レジスタンス運動の後では動脈硬化度が60分間にわたって増加する。レジスタンス運動中の一過性の循環器応答として、血圧の著しい上昇が古くから知られている。バランス運動は転倒予防にも静岡社会健康医学大学院大学の田原 康玄氏らの研究によれば、片足で20秒以上体のバランスを保てない人は、それができる人に比べて大脳の小血管の傷害の危険性が高く、認知機能が低下しているという4)。田原氏は、片足立ちのバランスが悪い人は、これが大脳疾患や認知機能の低下を示唆しているものとして注意を払うべきだと言う。この研究参加者は、841人の女性と546人の男性(平均年齢67歳)。参加者は片足立ちの測定と共に大脳のMRIを撮像し、大脳の小血管の状態が調べられた。その結果、20秒以上片足立ちできない人は大脳の小血管傷害(ラクナ梗塞や微小血管からの出血)が多くみられた。この結果から、「加齢に伴い増加する微小血管の傷害は動脈の可塑性を阻害するため、脳血流に悪影響を及ぼす」と考えられている。それはさておき、高齢者の転倒による大腿骨頸部骨折の重要性は深く広まった。その予防法として、ヒッププロテクターは一時世界的に注目され、わが国では柔道の受け身が注目されたこともある。しかし、決め手となる予防法はまだないようだ。その点、バランス運動は決め手にならないまでも、転倒を減らしてくれるものと期待される。デュアルタスク運動で脳を活性化さて近年、臨床研究の蓄積からデュアルタスク運動が、認知機能が健全な人はもちろん、認知症予備軍の軽度認知障害(MCI)の人や認知症の人にも有効とされる。その効果として、認知機能の改善のみならず運動、日常生活動作、QOLの改善まで報告されている。認知への効果からみると、デュアルタスクをやる時に生じる「まごつき」がポイントだろう。「まごつき」とは、思うように指示を実行できない自分への気づきからくる「おかしい、こんなはずでは、…エエィ!」という焦りだろう。そこでトライアルを繰り返し、ようやく「やった!!」に至るまでに繰り返す心の状態が「まごつき」だ。この「まごつき」こそ、これまでは使われていなかった神経細胞や神経回路を新たに活性化させることが期待できる。デュアルタスクに際しては、まず課題に示された運動を真似しようと企画(計画)し、また、自分が動作にした時「これで本当にいいのか?」と管理・制御するはずだ。ここまでのプロセスには「作動記憶」が関与する。ここまでの過程で要となるのは注意の分割だ。さらにこうした課題を正しくやり続けるには、集中・注意の持続が欠かせない。以上の働きでは、前頭葉付近の構造、とくに背側前運動野や頭頂間溝などが重要とされる。前頭葉は脳の司令部ともいわれるが、これは側頭葉や頭頂葉など他の重要な働きをする脳部位に指令を出してくれる場所という意味だ。米国スポーツ学会の高齢者向けの運動ガイドライン2)では、有酸素運動、レジスタンス運動、バランス運動の3つに、デュアルタスクあるいは太極拳まで加えた多種類の運動をバランス良くやることで、体力・知力の維持・増強のみならず、転倒事故の予防にもつながる可能性を強調している。参考1)Kramer AF, et al. Ageing, fitness and neurocognitive function. Nature. 1999 Jul 29;400(6743):418-419.2)2018 Physical Activity Guidelines Advisory Committee. 2018 Physical Activity Guidelines Advisory Committee Scientific Report. Washington, DC: U.S. Department of Health and Human Services, 2018.3)Landrigan JF, et al. Lifting cognition: a meta-analysis of effects of resistance exercise on cognition. Psychol Res. 2020 Jul;84(5):1167-1183.4)Tabara Y, et al. Association of postural instability with asymptomatic cerebrovascular damage and cognitive decline: the Japan Shimanami health promoting program study. Stroke. 2015 Jan;46(1):16-22.

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中等症~重症クローン病、リサンキズマブvs.ウステキヌマブ/NEJM

 中等症~重症のクローン病患者を対象としたリサンキズマブとウステキヌマブの直接比較試験において、リサンキズマブのウステキヌマブに対する、24週時の臨床的寛解の非劣性および48週時の内視鏡的寛解の優越性が認められたことが、28ヵ国187施設で実施された第IIIb相無作為化非盲検評価者盲検比較試験「SEQUENCE試験」で示された。フランス・Centre Hospitalier Regional Universitaire de NancyのLaurent Peyrin-Biroulet氏らが報告した。NEJM誌2024年7月18日号掲載の報告。24週時の臨床的寛解と48週時の内視鏡的寛解を直接比較 研究グループは、18~80歳で、3ヵ月以上前に中等症~重症のクローン病と診断され、1種類以上の抗TNF-α抗体製剤で効果不十分または不耐容の患者を、リサンキズマブ群またはウステキヌマブ群に1対1の割合に無作為に割り付け、標準用量を48週間投与した。 主要エンドポイントは2つで、24週時の臨床的寛解および48週時の内視鏡的寛解であった。臨床的寛解はクローン病活動指数(CDAI、範囲:0~600、高スコアほど疾患活動性が高い)が150未満、内視鏡的寛解は簡易版クローン病内視鏡スコア(SES-CD、範囲:0~56、高スコアほど重症)が4点以下かつベースラインから2点以上低下し、個々のサブスコアに1を超えるものがないこと、と定義した。 解析対象は、24週時の臨床的寛解については24週時の評価を完了した患者または試験から離脱した患者の最初の50%、48週時の内視鏡的寛解については全例であった。 主要エンドポイントは階層的に検定し、24週時の臨床的寛解で非劣性(両群のリスク差の95%信頼区間[CI]の下限が-10%より大きい)が検証された場合に、48週時の内視鏡的寛解について両側有意水準0.05で優越性を検定した(層別Cochran-Mantel-Haenszel検定)。 また、リサンキズマブまたはウステキヌマブを少なくとも1回投与されたすべての患者を対象として安全性を評価した。リサンキズマブは2つの主要エンドポイントを達成 計527例がリサンキズマブ群(262例)、ウステキヌマブ群(265例)に無作為化され、少なくとも1回の投与を受けた。リサンキズマブ群の7例が非標準用量投与のため除外され、リサンキズマブ群255例およびウステキヌマブ群265例が有効性解析対象集団(full intention-to-treat集団)となった。それぞれ230例(90.2%)および193例(72.8%)が割り付けられた治療を完了した。 2つの主要エンドポイントはいずれも達成された。24週時の臨床的寛解率は、リサンキズマブ群58.6%(75/128例)、ウステキヌマブ群39.5%(54/137例)、補正後群間差18.4ポイント(95%CI:6.6~30.3)であり、リツキシマブ群のウステキヌマブ群に対する非劣性が示された。 48週時の内視鏡的寛解率は、リサンキズマブ群31.8%(81/255例)、ウステキヌマブ群16.2%(43/265例)であり、補正後群間差15.6ポイント(95%CI:8.4~22.9、p<0.001)で、リツキシマブ群のウステキヌマブ群に対する優越性が確認された。 有害事象、重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象の発現率は両群で同程度であった。

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双極性障害、I型とII型の自殺リスク比較

 双極性障害(BD)は、疾病負担が大きく、自殺による死亡リスクの高い疾患である。これまで、双極性障害II型(BD-II)は、BDの軽症型とされてきたが、近年の文献では、双極性障害I型(BD-I)と同様の疾病負担と自殺傾向を有するとも報告されている。カナダ・Brain and Cognition Discovery FoundationのDonovan A. Dev氏らは、BD-IIのリスクを定量化し、BD-IとBD-IIにおける自殺リスクを評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2024年6月18日号の報告。 PRISMAガイドラインに従い、2023年6月30日までに公表された文献を、PubMed、OVID(Embase、Medline)、PsychINFOデータベースより検索した。対象文献は、事前に定義した適格基準に基づき選定した。BD-IおよびBD-IIと診断された患者の自殺リスクを比較するため、メタ解析を実施した。主な結果は以下のとおり。・8件の研究のうち、BD-IIの自殺率がBD-Iよりも高いと報告した研究が4件、有意な差がないと報告した研究が2件であった。・BD-Iの自殺率は、BD-IIよりも有意に高いと報告した研究は、2件であった。・BD-Iの自殺率に対するBD-IIのプールされたオッズ比は、1.00(95%信頼区間:0.75〜1.34)であった。 著者らは「BD-IとBD-IIの自殺リスクを報告した研究は少なく、異質性がある」としながらも「BD-IIの重症度は明らかであり、自殺リスクはBD-Iとそれほど違いはなく、BD-IIで報告される抑うつ傾向、併存疾患、ラピッドサイクルは、重大な死亡リスク因子の可能性がある」としている。

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大ヒット書籍の著者に聞く、医師ならではのAIツールの「使いこなし」

2024年6月に発売された、近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚 篤司氏による『医師による医師のためのChatGPT入門:臨床がはかどる魔法のプロンプト』(医学書院)が評判になっている。CareNet.comが同時期に行った会員向け生成AI使用状況のアンケートでは、使用経験のある医師は約2割という結果だった。「AIで医師の仕事が大きく変わることは必至」という大塚氏に、執筆の動機や生成AIの上手な使い方について聞いた。使っている医師は約2割、一般よりも慎重か――CareNet.comのアンケートでは、生成AIを「現在使用している」と回答した医師は約20%でした。本の出版後、多くの医療者から感想を頂きましたが、そこで得た私の体感とも大きく外れてはいません。一般ビジネスパーソンを対象にした同様のアンケートでは4割超が使っている、といった結果もあるので、医師はまだ使用に慎重な面もあるのでしょう。使わない理由として「使いこなすのが難しそう」という意見が多かったようですが、生成AIはそこまで難しいものではありません。「AI」という言葉の響きから、プログラミングのような専門知識が必要だと思って敬遠する人が多いのかもしれませんが、そんなことはまったくない。「情報が正しいかどうか信頼できない」という意見もありますが、確かに生成AIが登場した当初のChatGPT 3.5ではハルシネーション(もっともらしいうそ)が問題視されていましたが、最近はそれを抑える使い方も出ており、間違った情報自体も減ってきている。初期のころの印象に引っ張られて使わないでいるのは、本当にもったいないと思います。まずは論文の翻訳・要約から――医師という職業特性を踏まえ、AIツールを使うべき場面は?最初はインプット部分、具体的には論文を読む場面でしょう。私自身、今では論文を最初から読むことはほとんどありません。まずChatGPTに論文の内容を翻訳・要約してもらい、それを読んでから気になる箇所を原文で確認したり、ChatGPTに詳しく聞いたりして、内容を深く理解しています。原文に目を通すのは、最終的に内容が間違っていないかを確認する程度。ガイドラインもPDFで読み込ませておけば、ChatGPTに質問するだけで該当箇所を示してくれるので調べる時間が節約できます。「どんな場面で使えばいいのかわからない」という方は、まずはGoogle検索をする場面で代わりにChatGPTに聞いてみるとよいでしょう。私は昨年からPythonのプログラミングを学びはじめたのですが、この学習にもChatGPTが大いに役立っています。自分で画像診断システムをつくろうとしているのですが、これも生成AI登場前では考えられなかったことです。アウトプット部分では、生成AIは文書の下書きが上手なので、定型的な文書、紹介状や症例報告などの下書きを任せています。文書の校正なども得意です。もちろん患者情報などは入力しませんが、入力することでできることも多いはず。医療においてAIをどこまでどう使うのか。できることが急速に増えているのに比してグレーゾーンが広いので、ルールづくりの議論を進める必要があるでしょう。まずはChatGPT、ツールによって得意分野はさまざま――ChatGPT以外にもさまざまなツールがありますが、どう使い分けているのでしょうか?私は、ほぼすべての生成AIツールを一度は課金して使っています。少し込み入ったことをするには無料版だと限界がありますし、フル機能で使ってみないとツールの良し悪しを判断できないからです。「とりあえず使ってみたい」という方は、マルチに使えるChatGPTの有料版から始めるとよいのではないでしょうか。一方、日本語の精度はClaudeが優れているので、より自然できれいな日本語の文章を作成したい場合はこちらがお勧めです。GeminiはGoogleが提供するツールの裏で動いているため、Google AI StudioのようなGoogleのサービスと相性が良い、という特徴があります。最近注目しているのが、テキストから動画を生成できるGen-3 Alphaです。動画はプロンプト(AIへの指示や質問)が同じでも毎回異なる結果が出力され、思いどおりのアウトプットを得るのが難しい面もありますが、そこが面白さでもあります。医療の仕事は「正確性」が求められるので、正確さを求められない生成AIの動画の用途を模索していたのですが、最近「使えるかも」と感じたのが「教育」分野です。たとえば、以前「ヘリオトロープ疹」の動画を作成してみました。ヘリオトロープ疹は、上まぶたに紫色の皮疹が出る疾患で、ヘリオトロープの花の色に似ていることから名付けられました。これを学生の記憶に残りやすいよう、ヘリオトロープ疹とヘリオトロープの花を組み合わせた動画にしました。バラの花と組み合わせた「バラ疹」にもトライしました。正確性よりも印象に残るイメージを生成するという点で、AIは有効なツールになりうる印象です。大塚氏が生成AIで作成した「バラ疹」のイメージ動画AIで激変する医師の仕事、自ら変化を生み出すために――医療者向けに生成AI使いこなしの書籍を執筆した動機は?学内やSNSでAIの使い方について聞かれることが増え、まとめる価値があるのではと考えました。日々変わるAIツールを本というメディアで伝える難しさはありましたが、基本的なことは網羅できたと思います。また、医師としての危機感も出版の動機です。AI技術を使えば、電子カルテに入力された情報から自動的に診断を行うシステムを簡単につくることができます。そうなると、どの科でも、医師免許と処方箋を書く権限がある医師が1人いれば、病院を運営できる未来が来るかもしれません。もちろん、AIがすべての医師の仕事を代替することは難しいでしょうが、AI技術の進化によって、医師の働き方が大きく変わることは間違いありません。大事なのは、その変化を“医療者自身”が生み出すこと。医療者以外が医療のAI開発に取り組めば、「AIを使って、いかに医療費や医師を削減するか」という視点ばかりになる危険性があります。だからこそ、医療者自らがAIツールを使い、その可能性と限界を知ることが重要です。AIツールを使いこなすことで、医師はより創造的な仕事に集中できるようになるはず。AIとより良く共存し、人間にしかできない医療を創造するために、医療者自らがAI技術に対する理解を深める必要がある。この本にはそうしたメッセージも込めました。大好評の書籍はこちら(ケアネット 杉崎 真名)

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日本人で増加傾向の口腔がん、その最大要因とはー診療ガイドライン改訂

 『口腔癌診療ガイドライン2023年版 第4版』が昨年11月に4年ぶりに改訂された。口腔がんは歯科医も治療を担う希少がんだが、口腔がんを口内炎などと見間違われるケースは稀ではないという。そこで今回、日本口腔腫瘍学会学術委員会『口腔癌診療ガイドライン』改定委員会の委員長を務めた栗田 浩氏(信州大学医学部歯科口腔外科学 教授)に口腔がんの疫学や鑑別診断などについて話を聞いた。 本ガイドライン(以下、GL)では、日常的に出くわす臨床疑問に対してClinical Question(CQ)を設定、可能な限りのエビデンスを集め、GRADEアプローチに準じ推奨を提案している。希少がんであるがゆえ、少ないエビデンスから検証を行っていることもあり、FRQ(future research question)やBQ(background question)はなく、すべてがCQだ。同氏は「アナログな手法ではあるが、システマティック・レビューで明らかになっているCQの “隙間を埋める”ように、明らかにされていない部分のCQを作成し、全部で60個を掲載した」と作成経緯を説明した。口腔がん、日本人で多い発生部位やその要因 口腔がんとは、顎口腔領域に発生する悪性腫瘍の総称である。病理組織学的に口腔がんの90%以上は扁平上皮がんであり、そのほかには小唾液腺に由来する腺系がんや肉腫、悪性リンパ腫、転移性がんなどがあるが、本GLでは最も頻度が高い口腔粘膜原発の扁平上皮がんを「口腔がん」として記している。 口腔がんの好発年齢は50歳以降で加齢とともに増加し、男女比3:2と男性に多いのが特徴である。これまで国内罹患数は年間5,000~8,000人で推移していたが、近年の罹患数は年間1万人と増加傾向にあるという。これについて栗田氏は「もともと世界的にはインドや欧州での罹患率が高いが、日本人で増えてきているのは高齢化が進んでいることが要因」とコメントした。部位別発生率については、2020年の口腔がん登録*の結果によると、舌(47.1%)、下顎歯肉(18.4%)、上顎歯肉(11.9%)、頬粘膜(8.6%)、口底(6.6%)、硬口蓋(2.6%)、下顎骨中心性(1.7%)、下唇(0.8%)で、初診時の頸部リンパ節の転移頻度は25%、遠隔転移は1%ほどである。*日本口腔外科学会および日本口腔腫瘍学会研修施設における調査。扁平上皮がん以外も含む。 また、口腔がんの場合、口腔以外の部位にがんが発生(重複がん)することがあり、重複がんの好発部位と発生頻度は上部消化管がんや肺がんが多く、11.0~16.2%に認められる。これはfield cancerizationの概念1,2)で口腔と咽頭、食道は同一の発がん環境にあると考えられているためである(CQ1、p.80)。 これまで、全国がん登録を含め口腔がんの統計は口腔・咽頭を合算した罹患数の集計になっていたため、口腔がん単独としては信頼性の高いデータは得られていなかった。同氏は「咽頭がんと口腔がんでは性質が異なるので別個の疾患として捉えることが重要」と、口腔がんと咽頭がんは別物であることを強調し、「本GLに記されている罹患率は口腔がん登録のものを記しているため、全国がん登録の罹患状況とは異なる。その点に注意して本GLを手に取ってもらいたい。今後、口腔がんに特化したデータの収集を行うためにも口腔がん登録が厳正に進むことを期待する」と説明した。口腔がんが疑われる例、現在の治療法 口腔がんが生じやすい部位や状態は、舌がん、歯肉がん、頬粘膜がんの順に発生しやすく、鑑別に挙げられる疾患として口内炎、歯肉炎、入れ歯による傷などがある。「もし、口内炎であれば通常は3~4日、長くても2週間で治る。この期間に治らない場合や入れ歯が合わないなどの原因をなくしても改善しない場合、そして、白板症、紅板症のような前がん病変が疑われる場合は歯科や口腔外科へ紹介してほしい。またステロイド含有製剤の長期投与はカンジダなど別疾患の原因となる可能性もあり避けてほしい」と話した。 口腔がんの治療は主に外科療法で、口腔を含む頭頸部がんにも多くの薬剤が承認されているが、薬物療法のみで根治が得られることは稀である。再発リスク因子(頸部リンパ節節外進展やその他リスク因子)がある場合には、術後化学放射線療法や術後放射線療法を行うことが提案されている(CQ33、p.146)。外科手術や放射線療法の適応がない切除不能な進行がんや再発がんにおいては、第1選択薬としてペムブロリズマブ/白金製剤/5-FUなどが投与されるため、がん専門医と連携し有害事象への対応が求められる。口腔がんの予防・早期発見、まずは口腔内チェックから 口腔がんの主な危険因子(CQ2~4、p.81~85)として喫煙や飲酒、合わない入れ歯による慢性的な刺激、そしてウイルス感染(ヒトパピローマウイルス[HPV]やヒト免疫不全ウイルス[HIV]など)が挙げられるが、「いずれも科学的根拠が乏しい。早期発見が最も重要であり、50歳を過ぎたら定期的な口腔内チェックが重要になる」と強調した。 現在、口腔以外の疾患で入院している患者では周術期などの口腔機能管理(口腔ケア、栄養アセスメントの観点からの口腔内チェックなど)が行われており、その際に口腔がんが発見されるケースもある。健康で病院受診をしていない人の場合には、近年では各歯科医師会主導の集団検診や人間ドックのオプションとして選択することがリスク回避の場として推奨される。同氏は「歯周病検診は口腔機能をチェックするために、口腔がん検診は生活習慣病の一貫として受けてほしい。口腔がん検診は目に見えるため容易に行えるほか、前がん病変、口腔扁平苔癬、鉄欠乏性貧血、梅毒による前がん状態などの発見にもつながる」と説明した。 最後に同氏は「口腔がんは簡単に見つけられるのに、発見機会が少ないがゆえに発見された時点で進行がんになっていることが多い。進行がんでは顔貌が変化する、食事は取りづらい、しゃべることが困難になるなど、人間の尊厳が奪われ、末期は悲惨な状況の患者が多い。そのような患者を一人でも減らすためにも早期発見が非常に重要」とし、「診察時に患者の話し方に違和感を覚えたり、食事量の低下がみられたりする場合には、患者の口腔変化を疑ってほしい」と締めくくった。

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卵巣がんリスク、卵巣子宮内膜症/深部子宮内膜症では9.7倍/JAMA

 卵巣がんのリスクは、卵巣子宮内膜症や深部子宮内膜症を有する女性で顕著に高いことを、米国・ユタ大学のMollie E. Barnard氏らが、ユタ州住民データベース(Utah Population Database:UPDB)を用いたコホート研究の結果を報告した。子宮内膜症は卵巣がんのリスク増加と関連しているが、子宮内膜症のサブタイプと卵巣がんの組織型との関連は十分に明らかになっていなかった。著者は、「卵巣子宮内膜症ならびに深部子宮内膜症を有する女性は、卵巣がんのリスクと予防に関するカウンセリングによって恩恵を受ける可能性がある。スクリーニングと予防研究の対象として重要な集団となるだろう」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年7月17日号掲載の報告。1,100万人以上の住民データベースを用い子宮内膜症と卵巣がんのリスクを解析 研究グループは、ユタ州の1,100万人以上の情報を含むUPDBを用い、1992~2019年に子宮内膜症と診断された18~55歳の女性7万8,893例を同定し、出生年と出生地(ユタ州/それ以外)に関して1対5の割合でマッチさせた子宮内膜症を有していない女性37万9,043例(対照群)から成るコホートを構築した。 主要アウトカムは卵巣がんで、子宮内膜症の各サブタイプと卵巣がんの組織型との関連について、ロバスト分散推定によるCox比例ハザードモデルを用い、対照群に対する症例群の補正後ハザード比(aHR)とその95%信頼区間(CI)を算出するとともに、一般化線形モデルを用いて1万人当たりの補正後リスク差(aRD)を推定した。 子宮内膜症は、電子健康記録を用いて腹膜病変、卵巣子宮内膜症、深部子宮内膜症、卵巣子宮内膜症と深部子宮内膜症の併存、またはその他の5つに分類した。 また、卵巣がんについては、I型卵巣がん(類内膜がん、明細胞がん、粘液性がん、低異型度漿液性がん)、およびII型卵巣がん(高異型度漿液性がん)に分類した。子宮内膜症群では卵巣がんのリスクは4.2倍 解析対象は、初期コホートからベースライン時点でがん罹患歴のある症例、死亡、両側卵巣摘出およびindex date以前に卵巣がん診断歴のある症例を除外した45万906例(子宮内膜症群7万8,476例、対照群37万2,430例)で、子宮内膜症群の初回診断時の平均年齢は36歳(SD 10)であった。 子宮内膜症群は対照群と比較して、卵巣がんのリスクが高く(aHR:4.20[95%CI:3.59~4.91]、aRD:9.90[95%CI:7.22~12.57])、中でもI型卵巣がんのリスクが高かった(7.48[5.80~9.65]、7.53[5.46~9.61])。 子宮内膜症のサブタイプ別では、深部子宮内膜症および/または卵巣子宮内膜症を有する女性で卵巣がんのリスクが高く、全卵巣がん(aHR:9.66[95%CI:7.77~12.00]、aRD:26.71[95%CI:20.01~33.41])、I型卵巣がん(18.96[13.78~26.08]、19.57[13.80~25.35])、およびII型卵巣がん(3.72[2.31~5.98]、2.42[-0.01~4.85])であった。

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感謝の気持ちは寿命を延ばす

 感謝の気持ちを持つことは長生きの秘訣となる可能性が、新たな研究で示唆された。Nurses’ Health Study(NHS)に参加した4万9,000人以上の女性を対象にしたこの研究では、感謝の気持ちを測定する質問票での得点が高かった女性では、低かった女性に比べてあらゆる原因による死亡(全死亡)のリスクが9%低いことが明らかになったという。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のYing Chen氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Psychiatry」に7月3日掲載された。 Chen氏は、「感謝の気持ちを持つことで精神的苦痛が軽減する一方で、感情的ウェルビーイングと社会的ウェルビーイングは向上する可能性のあることは、過去の研究で示唆されている。しかし、感謝の気持ちと身体的健康との関連について分かっていることは少ない」と話している。 今回の研究では、NHS参加女性4万9,275人(ベースライン時の平均年齢79歳)を対象に、感謝の気持ちと全死亡および原因別死亡との関連が検討された。対象女性は2016年に、感謝の気持ちを評価する質問票に回答していた。この質問票は、「私の人生には、ありがたいと思うものがとても多い」や「感謝の気持ちを感じるものをリストアップすると大変長くなる」などの6項目の質問に、1(全く同意しない)から7(強く同意する)で回答する内容だった。対象者の死亡(全死亡、原因別死亡)については2019年12月まで追跡された。 平均3.07年にわたる追跡期間中に4,608人の死亡が確認された。最も多かった死因は心血管疾患(1,364人)であり、そのほかの死因は、呼吸器疾患、がん、神経変性疾患などだった。質問票の回答を総計したスコアに応じて対象者を高・中・低の3群に分け、ベースライン時の社会人口学的特性や社会・宗教的参加、メンタルヘルスなどを調整して解析した結果、高スコア群では低スコア群に比べて全死亡リスクが9%低いことが明らかになった(ハザード比0.91、95%信頼区間0.84〜0.99)。また、死因別に解析したところ、心血管疾患による死亡と感謝の気持ちは逆相関の関係にあり、高スコア群では低スコア群に比べて同死亡リスクが15%有意に低い(同0.85、0.73〜0.995)ことが示された。そのほかの死因(がん、呼吸器疾患、神経変性疾患、感染症、外傷、その他)でもリスク低下は認められたが、統計学的に有意ではなかった。 こうした結果を受けて研究グループは、「これらの結果に基づくと、人は感謝の気持ちを抱くものに心を傾けることで、健康を改善できる可能性がある」と述べている。またChen氏は、「先行研究では、週に数回、感謝していることを書き出したり話し合ったりするなど、意図的に感謝の気持ちを育む方法があることが示されている。健康的な老化の促進は公衆衛生の優先事項である。今後の研究で、長寿を増進する心理的資源としての感謝の気持ちに対する理解が深まることを期待している」と述べている。

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第106回 肺炎球菌ワクチン、「プレベナー20」一強時代の到来か

「プレベナー20」とは成人・小児共に最も有効かつエビデンスがある肺炎球菌ワクチンは「プレベナー20®水性懸濁注」(PCV20)です。小児における、「肺炎球菌(血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F及び33F)による侵襲性感染症の予防」を効能または効果として、2024年10月から定期接種される見込みです。え…?10月…ッ!!?( ゚д゚) …   (つд⊂)ゴシゴシ  (;゚ Д゚) …!?ええっと、今7月ですよね。医療機関の契約変更、医師会やクリニックの調整、そして予診票…、もろもろの準備、間に合うんでしょうか。その想定を受けて水面下で定期接種の話が進んでいたものと推察されるので、ちゃんと間に合わせてくるのかもしれません。プレベナー13(PCV13)はPCV20の入れ替わりのような形で供給が終了になっていくものと予想されます。どちらもファイザー社製品なので、供給のバランスを取ればいいだけです。本当は、成人にも使いたいできれば成人にもPCV20を使いたいところです。――というのも、海外ではPCV20を接種するのが当たり前になっているためです。国際的には、肺炎球菌感染症のリスクが高い成人については、基本的にPCV20が推奨されています。これまで定期接種に長らく使われてきたニューモバックス(PPSV23)は、2024年4月から助成の範囲が縮小されました。5の倍数の年齢ごとにチャンスがあったものが、65歳固定になりました。基礎疾患がある場合は、60~64歳と広めに対象が設定されていますが、「チャンスが減った」ということで今後も接種率は低くなっていくかもしれません。…まあ、もともと接種率が低いんですけど…。現在、新しい肺炎球菌ワクチンとして、バクニュバンス(PCV15)が小児および成人を対象として用いられています。ただ、国際的にはPCV15を接種する場合、1年後にPPSV23を追加接種するほうが予防効果が高いとされています。現在65歳の方は、助成をフルに活用するならPPSV23→PCV15の順番で接種することが望ましいかもしれません。ただ、1回のワクチンが1万円→数千円になるくらいの助成なので、そこまでこだわらなくてもよいのではないかと思っていますが。いずれにしても、PCV15+PPSV23の連続接種が完了すると、PCV20単独よりも3つの血清型に追加防御が生じるため、こちらのほうを好む専門家もいます1)。PCV13は成人にも使用することができますが、PCV13の代わりにPCV20を導入することで、医療費の削減効果は2,039億円あるとされており、労働産生的な損失も加味すると、費用削減としては約3,526億円の効果が期待できるとされています2)。画像を拡大する図. 3種のワクチン接種プログラム(人口当たり)の費用対効果(文献2より引用、CC BY 4.0)図は、右軸にQALYの増加、縦軸に費用の増加をプロットしており、PCV13から他ワクチンに置き換わった場合の効果および費用の増分を算出しています。医薬品のアプレイザル(総合評価)では、かなりポジティブなデータとなっています。…なので、どの方向に転んでも、現時点でのエビデンスでは「PCV20推し」となるわけです。さて、肺炎球菌ワクチンは今後どうなるのか、要注目です!ちなみに、私は肺炎球菌ワクチンに関して、開示すべきCOIはありません!参考文献・参考サイト1)Mt-Isa S, et al. Matching-adjusted indirect comparison of pneumococcal vaccines V114 and PCV20 Expert Rev Vaccines. 2022 Jan;21(1):115-123.2)Shinjoh M, et al. Cost-effectiveness analysis of 20-valent pneumococcal conjugate vaccine for routine pediatric vaccination programs in Japan. Expert Rev Vaccines. 2024 Jan-Dec;23(1):485-497.

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統合失調症の肺炎リスクと抗精神病薬や抗コリン負荷との関連

 観察研究において、抗精神病薬は肺炎リスクと関連していることが示唆されているが、抗精神病薬の使用が肺炎リスクにどの程度影響を及ぼすのか、用量反応性、各薬剤と特異的に関連するかは不明である。オランダ・アムステルダム大学のJurjen J. Luykx氏らは、特定の抗精神病薬に関連する肺炎リスクを推定し、多剤併用療法、投与量、受容体結合特性が統合失調症患者の肺炎と関連しているかを調査した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2024年6月26日号の報告。 対象は、1972〜2014年のフィンランドレジストリデータより特定された、16歳以上の統合失調症または統合失調感情障害患者。診断、入院治療、専門外来治療に関するデータは退院レジストリ、外来での治療薬に関するデーは処方箋レジストリより収集した。フォローアップ期間は1996〜2017年、データ分析は2022年11月4日〜2023年12月5日に実施した。抗精神病薬の使用量は、用量別に低用量群(WHOが定義する1日用量[DDD]:0.6未満)、中用量群(DDD:0.6〜1.1)、高用量群(DDD:1.1以上)に分類した。特定の抗精神病薬単剤療法、多剤併用療法、抗コリン負荷に応じて、低、中、高に分類した。主要アウトカムは、肺炎発症による入院とした。肺炎リスクは、抗精神病薬未使用の場合を基準とし、調整済み個別(within-individual)Cox比例ハザード回帰モデルを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、統合失調症患者6万1,889例、平均年齢は46.2±16.0歳、男性の割合は50.3%(3万1,104例)であった。・22年間のフォローアップ期間中に、肺炎で1回以上入院した患者は8,917例(14,4%)、入院後30日以内に死亡した患者は1,137例(12.8%)であった。・全体では、抗精神病薬使用患者は、抗精神病薬未使用患者と比較し、肺炎リスクとの関連は認められなかった(調整ハザード比[aHR]:1.12、95%信頼区間[CI]:0.99〜1.26)。・抗精神病薬単剤療法では、抗精神病薬未使用患者と比較し、用量依存的に肺炎リスクの増加との関連が認められたが(aHR:1.15、95%CI:1.02〜1.30、p=0.03)、多剤併用療法では関連が認められなかった。・抗コリン負荷別に分類した場合、抗コリン負荷の高い抗精神病薬の使用と肺炎リスクとの関連が認められた(aHR:1.26、95%CI:1.10〜1.45、p<0.001)。・肺炎リスクの増加と関連していた抗精神病薬は次のとおりであった。【高用量クエチアピン】aHR:1.78(95%CI:1.22〜2.60)、p=0.003【高用量クロザピン】aHR:1.44(95%CI:1.22〜1.71)、p<0.001【中用量クロザピン】aHR:1.43(95%CI:1.18〜1.74)、p<0.001【高用量オランザピン】aHR:1.29(95%CI:1.05〜1.58)、p=0.02 著者らは「統合失調症患者の肺炎リスクと関連する抗精神病薬は、クロザピン(180mg/日以上)だけでなくクエチアピン(440mg/日以上)やオランザピン(11mg/日以上)も含まれることが示唆された。さらに、抗精神病薬単剤療法および抗コリン負荷の高い抗精神病薬の使用は、用量依存的に肺炎リスクを増加させる可能性がある。本知見は、肺炎リスクの高い抗精神病薬による治療を必要とする患者に対する予防戦略の必要性を示唆している」としている。

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“記憶のための薬”で治療してほしい【こんなときどうする?高齢者診療】第3回

老年医学の型「5つのM」で診察をするときに、「認知機能」は1つ目のMとして重要な項目です。皆さんもこんなケースに出合っていませんか?80歳男性。他院で軽度認知機能障害(MCI)と診断されている。2年前に受けた画像検査で「全体的な脳萎縮と脳室周囲白質に中等度の高信号」が認められている。日常生活動作(IADL)のうち、とくに金銭や自分の内服薬をマネジメントすることがより困難になり、妻とともにサービス付き高齢者住宅への転居を検討中。持病は高血圧、高脂血症。“記憶のための薬”で治療できるか知りたいと来院。認知機能に関して、治療薬に期待する患者や家族は少なくありません。患者の疑問に答える前に、軽度認知機能障害と認知症の違いを押さえておきましょう。軽度認知障害:約10%が認知症に移行軽度認知機能障害(Mild Cognitive Impairment)は、以前と比べて認知機能の低下がある状態を指します。具体的には、本人・家族から認知機能低下の訴えがあるものの、日常生活機能はほぼ正常で、ADLは自立しており、認知症ではないものとされています。1)MCIの段階から認知機能の維持や回復が見込める場合もありますが、1年の間にMCI患者の約10%、10人に1人は認知機能障害が進行し、認知症に移行する2)ことは疫学的に重要な視点です。認知症:進行性かつ不可逆。いずれ死に至る病認知症の診断基準はDSM-5に譲り3)、認知症患者を診るときに役立つ3つの特徴を押さえておきましょう。まず、認知症は物忘れとイコールではありません。記憶障害のみならず、注意、言語、時間や空間の認知、他人の感情を察知する能力など多岐にわたる認知機能に障害が出現します。2つ目に、認知症は進行性です。“子どもの成長の逆回し”と捉えるとわかりやすいでしょう。子どもは成長とともに日常生活の中で1人でできることが増えていきますが、認知症ではできないことが増えていきます。誰かのためにしていた仕事や家事、次に金銭や薬の管理といった日々の活動、続いて入浴や衣服の着脱など自分の身の回りのことと、サポートが必要となることが増えていき、最終的には食事を口に運ぶことや、嚥下や排泄などの生きるために最低限必要なことが、1人でできなくなっていくプロセスです。3つ目に、認知症は不可逆でいずれ死に至る病です。現在のところ薬剤や非薬剤的な介入で認知機能障害の進行を緩徐にすることはできても、根本的に認知症を治すことはできません。薬の効果は限定的。ではどうするか?薬を使うかどうかに関わらず、老年医学の型「5つのM」を用いて、現状を俯瞰してみましょう。Matters Most(本人が困っていること、大切にしていること、心配なことなど)に注目し、詳しく話を聞いてみることがよいきっかけになります。薬への期待以上によい介入をするためには、患者が何に困っているか、何が心配なのかなどの解像度を上げることが重要です。そのヒントは、認知症は「認知機能が働きにくくなったために生活上の問題が生じ、暮らしにくくなっている状態」4)と捉えることです。この表現の引用元である「認知症世界の歩き方」は医学書ではありませんが、認知症患者がどのような生活をしているか具体的にわかりやすく描かれています。私自身も読んでみて、患者の生活をより想像しやすくなり、診療・ケアがしやすくなるヒントがたくさんちりばめられていた、おすすめの一冊です。認知症、MCIいずれであっても、 “暮らしにくくなっていること”に注目すると、その原因や本人と家族が困っていることを想像しやすくなります。ここをスタート地点に介入やサポートの方法を探ると、薬剤投与以外にできることが見えやすくなります。このようなケースでも5つのMを活用してみてください!おすすめ図書認知症世界の歩き方 筧裕介 ライツ社.2021参考1)厚生労働省.生活習慣病予防のための健康情報サイトe-ヘルスネット.2)M Bruscoli, et al. Int Psychogeriatr. 2004 Jun;16(2):129-140.3)American Psychiatric Association. Diagnosticand statistical manual of mental disorders, Fifth Editon.DSM-5 Arlington, VA. American Psychiatric Association. 20134)筧裕介.認知症世界の歩き方.ライツ社.2021

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診療科別2024年上半期注目論文5選(糖尿病・代謝・内分泌内科編)

Post-trial monitoring of a randomised controlled trial of intensive glycaemic control in type 2 diabetes extended from 10 years to 24 years (UKPDS 91)Adler AI, et al. Lancet. 2024;404:145-155.<UKPDS 91>:早期からの血糖強化管理による糖尿病合併症低減効果は24年間持続する血糖の早期強化管理により合併症リスクが有意に低減し、その効果が長期にわたり持続する(メタボリックメモリー)ことを実証したUKPDSのさらなる延長報告です。まさに「鉄は熱いうちに打て」です。その効果はメトホルミンでもインスリン・SU薬でも認められました。Dapagliflozin in Myocardial Infarction without Diabetes or Heart FailureJames S, et al. NEJM Evid. 2024;3:EVIDoa2300286.<DAPA-MI>:急性心筋梗塞で入院した心不全・糖尿病のない患者において、ダパグリフロジンはプラセボと比較して総死亡・心不全入院のリスク低減効果に有意差なしSGLT2阻害薬は冠動脈疾患2次予防や心不全入院リスク低減の効果を有することが実証されていますが、それぞれのハイリスク者に限定した効果であることが示唆されました。同時期に、エンパグリフロジンでも同様の結果が報告されています(Butler J, et al. N Engl J Med. 2024;390:1455-1466)。Semaglutide in Patients with Obesity-Related Heart Failure and Type 2 Diabetes.Kosiborod MN, et al. N Engl J Med. 2024;390:1394-1407.<STEP-HFpEF DM>:2型糖尿病を有する肥満関連心不全(HFpEF)患者において、セマグルチドはプラセボと比較して有意に症状スコア(KCCQ-CSS)を改善体重減少が心不全症状改善の主因だと思われますが、 GLP-1受容体作動薬による血行動態改善作用も関与したことが想定されています。本研究では心不全入院や心不全急性増悪といった臨床的アウトカムを評価できるほどの検出力はありませんでした。非糖尿病患者においても同様の結果が報告されています(Kosiborod MN, et al. N Engl J Med. 2023;389:1069-1084)。Effects of Semaglutide on Chronic Kidney Disease in Patients with Type 2 Diabetes Perkovic V, et al. N Engl J Med. 2024;391:109-121.<FLOW>:2型糖尿病を有するCKD患者において、セマグルチドはプラセボと比較して有意にCKD進展を抑制GLP-1受容体作動薬には腎保護作用があることが期待されており、その機序として体重減少の他に、抗炎症・抗酸化ストレス・抗線維化作用が想定されています。本研究はCKD進展抑制を実証した点で臨床的意義が大きいでしょう。ただし、低リスク者での効果やSGLT2阻害薬等との併用効果を実証した質の高いエビデンスはまだありません。Effect of Fenofibrate on Progression of Diabetic RetinopathyPreiss D, et al. NEJM Evid. 2024:EVIDoa2400179.<LENS>:フェノフィブラートはプラセボと比較して早期糖尿病網膜症の進展を有意に抑制フェノフィブラートが中性脂肪低下作用とは独立して網膜保護効果を有することが示されました(本研究での中性脂肪中央値は138mg/dL)。本剤は腎機能低下者では投与禁忌である点や日本では網膜症への保険適用がない点に気をつけましょう。

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創閉鎖の審美的アウトカム、水平マットレス縫合vs.皮内縫合

 体幹および四肢の線状創の閉鎖において、連続水平マットレス縫合(HM)と連続皮内縫合(SQ)の審美的アウトカムは、どちらが優れるのか。米国・カリフォルニア大学デービス校のZachary Kwapnoski氏らは、これらの審美的アウトカムを評価することを目的に、無作為化評価者盲検比較試験を行った。その結果、評価スコアの合計点には有意差が認められなかったが、患者および評価者はいずれもSQのほうが優れると評価したことを報告した。HMとSQは、どちらも他の縫合法よりも優れるとされているが、これまでHMとSQの直接比較は行われていなかった。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2024年6月28日号掲載の報告。 研究グループは、体幹および四肢における線状創に対する連続HMと連続SQの審美的アウトカムを比較した。本試験には患者50例を登録し、手術創の片側には、連続HMまたは連続SQを施行し、もう一方には残りの手法を適用した。主要アウトカムは、術後3ヵ月以上経過時点のThe Patient and Observer Scar Assessment Scale(POSAS)スコアであった。 主な結果は以下のとおり。・POSAS合計スコアは、HMが19.49点、SQが17.76点であり、有意差はなかった(p=0.14)。・患者の評価スコアは、HMが4.71点、SQが3.50点(p=0.02)、評価者の評価スコアは、HMが3.87点、SQが3.29点であった(p=0.03)。 著者は本試験の限界として、単施設試験であり、比較的均質な集団であったことを指摘している。

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線維筋痛症、治療用スマホアプリで症状改善/Lancet

 線維筋痛症の成人患者の管理において、スマートフォンアプリを用いて毎日の症状を追跡するアクティブコントロール群と比較して、アプリを用いたアクセプタンス・コミットメント療法(ACT)によるセルフガイド型のデジタル行動療法は、患者評価による症状の改善度が優れ、デバイス関連の安全性に関するイベントは発生しないことが、米国・Gendreau ConsultingのR. Michael Gendreau氏らが実施した「PROSPER-FM試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年7月8日号で報告された。 PROSPER-FM試験は、米国の25の地域施設が参加した第III相無作為化対照比較試験であり、2022年2月~2023年2月に患者のスクリーニングを行った(Swing Therapeuticsの助成を受けた)。 年齢22~75歳、初発の線維筋痛症と診断された患者275例(女性257例[93%]、白人229例[83%])を登録した。スマートフォン用の治療アプリ(Stanza)を用いたデジタルACT群に140例(年齢中央値49.0歳[四分位範囲[IQR]:40.5~59.0])、症状追跡アプリと、健康関連および線維筋痛症関連の教育資料へのアクセスを提供するアクティブコントロール群に135例(同49.0歳[41.0~57.0])を割り付けた。治療割り付け情報は、統計解析の担当者を除き、マスクされなかった。 主要エンドポイントは、12週の時点における症状の変化に対する患者の全般的印象度(patient global impression of change:PGIC)の改善とし、ITT解析を行った。PGICは、患者の自己評価に基づく治療の全般的な有益性の尺度であり、7つのカテゴリ(著しく改善、かなり改善、最小限の改善、変化なし、最小限の悪化、かなり悪化、著しく悪化)から患者が選択した。「最小限の改善」以上:70.6% vs.22.2%、「かなり改善」以上:25.9% vs.4.5% 12週の時点で、PGICの「最小限の改善」以上を達成した患者の割合(主解析)は、アクティブコントロール群が22.2%(30/135例)であったのに対し、デジタルACT群は70.6%(99/140例)と有意に良好であった(群間差:48.4%、95%信頼区間[CI]:37.9~58.9、p<0.0001)。 また、同時点におけるPGICの「かなり改善」以上の患者の割合は、アクティブコントロール群の4.5%(6/135例)と比較して、デジタルACT群は25.9%(36/140例)であり、有意に優れた(群間差:21.4%、95%CI:13.0~29.8、p<0.0001)。 改訂版Fibromyalgia Impact Questionnaire(FIQ)のベースラインから12週までの総スコアの変化(最小二乗平均)は、アクティブコントロール群が-2.2点であったのに対し、デジタルACT群は-10.3点と改善度が有意に高かった(群間差:-8.0点、95%CI:-10.98~-5.10、p<0.0001)。デバイス関連の有害事象の報告はない デバイス関連の有害事象は、両群とも報告がなかった。最も頻度の高い有害事象は、感染症および寄生虫症(デジタルACT群28%、アクティブコントロール群25%)であり、次いで精神障害関連イベント(14% vs.14%)だった。 全体的な患者満足度は、デジタルACT群が80%、アクティブコントロール群は85%であり、それぞれ80%および79%が当該アプリを再度使用すると回答した。 著者は、「線維筋痛症に対するデジタルACTによる介入は、安全かつ有効な治療選択肢であり、ガイドラインで推奨される行動療法を受ける際の実質的な障壁に対処可能と考えられる」としている。

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生成AI、医師がChatGPTのほかに利用しているのは/医師1,000人アンケート

 2022年11月の対話型AI「ChatGPT」の公開を皮切りに、さまざまな生成AIサービスがリリース&アップデートされ、活用が進んでいる。論文検索や翻訳、スライド作成など、医師の仕事にも活用の可能性が広がる中、CareNet.comでは会員医師1,026人を対象に、生成AIの現在の使用状況についてアンケートを実施した(2024年6月25日実施)。「現在使用している」と回答した医師は約2割、年代による差も 生成AIの現在の使用状況について聞いた結果、「現在使用している」と回答したのは21%。「使用経験はあるが、現在は使用していない」が22%、「過去、現在ともに使用していない」が57%であった。年代別にみると、「現在使用している」と回答した割合は20代・30代では28~29%だったのに対し、40代では19.8%、50代では15.2%と年代が高くなるごとに減少した。 診療科別にみると、「現在使用している」と回答した割合は救急科(50.0%)、総合診療科(36.4%)、神経内科・血液内科・リハビリテーション科(いずれも33.3%)で高かったのに対し、腎臓内科(3.2%)、耳鼻咽喉科(7.1%)、産婦人科(11.1%)などでは低い傾向がみられた。使用していない理由で最も多かったのは「使いこなすのが難しそう/難しいと感じた」 「現在使用していない」と回答した医師に対し、その理由を聞いたところ、「使いこなすのが難しそう/難しいと感じた」が44.5%と最も多く、「習得に時間がかかりそう/かかると感じた」が28.0%、「必要性を感じない」が25.2%と続いた。 「現在使用している」と回答した医師に対し、生成AIを実際どんな作業に活用しているかについて聞いたところ、「論文検索・データベース化」が45.8%と約半数を占め、「論文要約」(44.4%)、「翻訳」(36.0%)、「文章校正」(31.3%)、「抄録・論文の文案作成」(22.9%)と続き、その他の自由記述欄では「アイデア出し」や「シフト表作成」なども挙がった。 一方で「現在使用していない」と回答した医師に生成AIをどんな作業に活用したいかについて聞いた結果、「論文検索・データベース化」(11.9%)、「論文要約」(11.6%)、「翻訳」(10.8%)、「文章校正」(7.1%)と現在使用している医師と同様の傾向がみられたが、その次に多かったのは「スライド作成」(5.9%)であった。実際使用している生成AIサービスは? 「現在使用している」と回答した医師に対し、実際使用しているサービスを聞いたところ、「ChatGPT」は87.4%とほとんどの医師が使用しており、「Microsoft Copilot」(18.2%)、「Claude」(12.1%)、「Gemini」(11.7%)、「Perplexity」(8.4%)と続いた。「LUMIERE」、「Runway」、「Midjourney」、「Stable diffusion」などの動画・画像生成系は使用者が少なかった。 「現在使用していない」と回答した医師に使用したいサービスを聞いた結果、同じく「ChatGPT」が56.0%と最も多く、「Microsoft Copilot」(6.5%)、「Gemini」(5.0%)、「Claude」(4.6%)とおおよその傾向は現在使っている医師と同様であったが、「使ってみたいサービスはとくにない」との回答も37.8%みられた。有料版は使用していないとの回答が6割、一方で月額1万円以上との回答も 「現在使用している」と回答した医師に対し有料版使用の有無を聞いたところ、64.2%が「有料版は使用していない」と回答した一方、月額3,000円未満を支払っていると回答したのは15.1%、3,000円以上5,000円未満が14.2%、5,000円以上1万円未満が4.7%、1万円以上が1.9%だった。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。「生成AI、いま実際どのくらい使っていますか?」 医師1,000人に聞きました

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認定薬剤師のウェブ研修がオンデマンドでも可能に【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第135回

薬剤師研修・認定電子システム「PECS(Pharmacist Education Certificate System)」による研修認定薬剤師の認定および更新手続きの電子化からそろそろ3年が経過します。認定薬剤師の認定期間は3年間で、その間に30単位を取得して更新申請を行うことで更新されますので、更新の必要がある薬剤師さんのほぼ全員がこのPECSによる管理および更新を経験されているのではないでしょうか。このようなシステムは、導入されたときにはちゃんとできるだろうか…と周りに聞きながら恐る恐る試してみるものですが、自転車と同じで慣れてしまうとなんてことないですよね。かえってシール集めに励んでいたころのアナログ感を思い出して、クスっと笑ってしまいます。そのPECSの実施要綱が2024年6月に改正されました。今後1年間で段階的に適用されますので紹介します。1. 2024年7月1日から適用不正を行ったなどの研修実施機関の登録取消期間を5年から3年に変更※個人への影響はほぼなし2. 2024年10月1日から適用研修の種類に「ウェブ利用研修(集合研修アーカイブ配信)」が追加(1日につき4単位まで)3. 2025年1月15日から適用更新申請と再新規申請に関して文言を変更4. 2025年4月1日から適用e-ラーニング研修の単位付与条件として1日につき4単位までを追記1に関しては研修実施機関の登録取消に関する改正なので、受講者にはとくに影響がありません。3に関しては、再新規申請(更新手続期間中であって認定期間終了後の新規申請)を行った場合は更新申請を行うことはできないとあり、更新申請と再新規申請を同時に行った人がいたということでしょうか…。重複した申請を防ぐために文言が整理されたようです。薬剤師個人の更新などに影響があるのは、2と4と思われます。改正前までのウェブ利用研修は、即時配信または学術集会のみが対象でしたが、録画のアーカイブ配信も対象になります。ただし、1日につき4単位までと制限が付きます。そして、4にあるように、従来からあるe-ラーニング研修でも、1日につき4単位までという制限が付きます。想像の域を超えませんが、1日に何単位も取った人がいたのでしょう。もちろんその人たちは真面目に受講されているのだとは思いますが、1単位がおおむね90分で設定されているので、90分×4単位=360分で6時間になります。これ以上は現実的にちょっと難しいよね…というあたりで制限が設けられたのでしょう。これらの単位制限の改正には研修実施機関側のシステム上の改修などが伴うことから適用開始に時間が設けられているのかと思われます。薬剤師個人としては、アーカイブ配信が受講可能になることで研修の幅が広がるというメリットがあります。それぞれに個人の単位取得のスタイルがあると思うので、改正の適用開始時期を確認し、単位の取得漏れなどのないようにしてください。参考サイト研修認定薬剤師制度 実施要領 (jpec.or.jp)

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英語で「不意を突かれる」は?【1分★医療英語】第140回

第140回 英語で「不意を突かれる」は?《例文1》We will monitor fungal infections so that we will not be caught off guard.(不意を突かれて不利にならないように、真菌感染は持続的に監視します)《例文2》We still cannot let our guard down.(まだ安心できません)《解説》“catch A off guard”という表現は、何か予期しない出来事や情報に対して驚きや戸惑いを感じるときに使われます。直訳すると「Aが油断した状態で捕らえられる」といった意味になりますが、より広く「思いがけない出来事」や「予期せぬ状況」に対する感情的な反応を表現します。医療現場では、予期しない悪い検査結果を知らされたときなどによく使われます。“deer in the headlights”(車のヘッドライトに照らされた鹿=ショック状態になる、呆然とする)も、この類似表現です。日本語では「蛇ににらまれたカエル」が近いニュアンスでしょうか。“be caught off guard”は「不意を突かれて不利な状態になる」という意味でも頻用され、予防的な検査や治療をする際の説明などに使うことができます《例文1》。“guard”を使った表現としては、“let our guard down”は「(安心して)防御を下げる」という意味になり、こちらも頻用されています《例文2》。講師紹介

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第224回 女性の生理をより楽にする環境に優しいナプキンを開発

女性の生理をより楽にする環境に優しいナプキンを開発生理出血をゲル状に固めて漏らさず留め、圧迫しても血を放出せずに保持し続けうる天然素材の生分解性粉末(バイオポリマー)を米国のバージニア工科大学のチームが開発しました1,2)。現行のナプキンやおむつなどで吸収剤として使われているポリアクリル酸(PAA)は埋め立て環境でほとんど分解しませんが、今回開発されたバイオポリマーは生分解性です。また、一旦収容した血の逆戻りや不快な蒸れを防ぐ作用はどうやらPAAを上回るようであり、そのバイオポリマー入りの生理用品なら環境への負担減少に加えて女性はより心安く生理期間を過ごせるようになりそうです。生理は生まれながらの体の営みですが、生理に対する偏見や支援の欠如が女児や女性を相当生き難くしています。生理は10~14歳ぐらいで始まり、その後たいてい1ヵ月ごとに繰り返され、3~7日ほど続きます。生理が停止するのは50歳ぐらいで、生涯の生理回数の中央値は451回です。女性は生涯に多ければ1万5,000個もの使い捨ての生理用品を使います。それほどに需要の大きな製品であるにもかかわらず生理用品は過去100年間にあまり進歩していません。使い捨てのナプキンは1888年、タンポンは1933年、出血を膣内で止める月経カップは1937年に開発されました。生理用ナプキンの使用中に漏れたり、月経カップの交換時に血が溢れたりするなどの気苦労や余計な手間のせいで女性はいらぬ引け目を感じ、思うように振る舞えなくなるかもしれません。バージニア工科大学のBryan Hsu氏のチームのバイオポリマーは、生理中の女性のそのような厄介事を取り払って生活の質を改善することを目指して開発されました。バイオポリマーはアルギン酸とグリセロールでできており、出血を吸収して凝固させます。膣を模す人工物とより調達が容易な月経血代替品のブタ血液を使って検討したところ、バイオポリマーや市販品のセルロース充填材はPAAに比べて血液をより多く吸収しました。また、圧迫や接触を模す検査をしたところ、セルロース充填材はほぼすべての血を放出してしまったのに対してバイオポリマーは最も多く血を保持しました。PAAはバイオポリマーの半量ほどを保持しました。バイオポリマーは月経カップの充填剤として使うことで、取り外しのときの血の漏出の心配を減らすこともできそうです。バイオポリマー入りの綿を内側に配した月経カップとそうでない月経カップをどっちがどっちだかわからない5人に人工膣から外してもらったところ、前者はほぼ血の漏出なしで済み、後者は常に漏出しました3)。バイオポリマーの成分の1つであるアルギン酸は海藻に含まれることで知られ、傷の止血パッドに使われることがあります。アルギン酸はカルシウムを頼りに架橋を形成してゲル状に固まります。血と混じるとアルギン酸の粘性が増して血がゲル状に固まるのは、血液に含まれるカルシウムを介した架橋のおかげのようです2,3)。バイオポリマーのもう1つの成分であるグリセロールは、どうやらポリマーがだまになるのを減らして血とポリマーの接触を促すことで、血をより吸収できるようにします。今回の研究成果を契機に生理の手当てのための新たな素材の開発が進み、ひいては女性の健康に技術や科学の目がより向けられるようになることを望むとHsu氏らは述べています。参考1)Bataglioli RA, et al. Matter. 2024 July 10. [Epub ahead of print]2)New period product offers progress in women’s health / Eurekalert3)Menstrual pads that turn blood solid could reduce the risk of leaks / NewScientist

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アジアのがん研究・臨床の最先端知見を共有、ASCO Breakthrough2024

 2024年8月8~10日、横浜で「ASCO Breakthrough2024」が開催される。本学会は、世界最大のがん学会である米国腫瘍臨床学会(ASCO)と日本癌治療学会(JSCO)・日本臨床腫瘍学会(JSMO)が共催し、アジア太平洋地域におけるがん治療の可能性や課題に焦点を当て、がん治療における最新の研究成果と技術革新を共有し、臨床医や研究者のネットワーキングを促進することを目的とする。2019年からスタートし、2023年からの3年間は日本(横浜)会場で開催される。 ASCO Breakthrough2024のプログラム委員長を務めるシンガポール国立がんセンター(National Cancer Centre Singapore)のMelvin Lee Kiang Chua氏は「ASCO Breakthroughがユニークなのはその包括性だ。新しい臨床試験や治療法、医薬品開発、AIやデジタルテクノロジーに携わるコミュニティが、東西から一堂に会する。がん治療に直接または間接的に関わるすべての人にとって有益な機会となるだろう」とコメントを寄せている。【注目演題の一部】(敬称略、発表・ディスカッションはすべて英語で行われる)1)人工知能とラーニングヘルスシステム8月8日 9:15~9:45セッション:Opening Remarks and Keynote演題:Plaiting the Golden Braid: How Artificial Intelligence Informs the Learning Health System演者:Andrew Daniel Trister, MD, PhD(Verily)司会:Bruce E. Johnson, MD, FASCO(Dana-Farber Cancer Institute)2)T細胞とインターベンション8月10日 9:10~9:40セッション:Opening Remarks and Keynote演題:Targeting Regulatory T Cells (Tregs) in Cancer: The Science, Trials, and Future演者:坂口 志文(大阪大学)司会:Melvin L.K. Chua, PhD, MBBS, FRCR(National Cancer Centre Singapore)3)がん治療と政策における公平性の構築8月9日 9:10~9:40セッション:Opening Remarks and Keynote演題:Building Equity in Cancer Care: From Policy to Action演者:Raffaella Casolino, MD, PhD(WHO)司会:吉野 孝之(国立がん研究センター東病院)4)胃がんにおけるネオアジュバントを使った臨床ソリューション8月9日 13:00~セッション:Clinical Solutions With Neoadjuvant Therapy:Gastric Cancer Cases演題:Gastric Cancer演者:Elena Elimova, MD(Princess Margaret Cancer Centre)司会:設楽 紘平(国立がん研究センター東病院)【開催概要】開催日時:2024年8月8日(木)~10日(土)開催場所:パシフィコ横浜ノース開催形式:現地またはオンライン(ハイブリッド開催)参加方法:公式ウェブサイトから登録参加費の一例(ASCO会員、現地+オンライン参加、7/26までに登録した場合):医師 725ドル研修医 240ドル患者・支援団体 240ドルプログラム詳細はこちら申し込みはこちら

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