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注射薬物使用者におけるHIV対策の普及率は世界的に極めて低い

注射薬物使用者におけるHIVの予防、治療、ケアサービスの世界的な普及率は極めて低いことが、オーストラリアNew South Wales大学薬物・アルコール研究センターのBradley M Mathers氏らによる系統的なレビューで明らかとなった。2007年現在の全世界の注射薬物使用者数は1,100~2,120万人にのぼり、そのうち80~660万人がHIVに感染したと推定される。これまで、注射薬物使用者におけるHIV対策の実態調査は行われていたが、普及状況の量的な検討はなされていなかったという。Lancet誌2010年3月20日号(オンライン版2010年3月1日号)掲載の報告。注射薬物使用者におけるNSPs、OST、ARTの普及率を算出研究グループは、注射薬物使用者におけるHIVの予防、治療、ケアサービスの普及状況について系統的なレビューを実施した。2004年以降に発行された審査論文(Medline、BioMed Central)、インターネット、灰色文献(grey-literature)のデータベースを系統的に検索した。国連機関や各国の専門家に当たってデータの提供依頼や照合を行った。各国のデータは、注射薬物使用者に対する主要な介入[注射針および注射器プログラム(NSPs)、オピオイド補充療法(OST)、その他の薬物治療、HIV検査と診察、抗レトロウイルス療法(ART)、コンドームプログラム]の規定の範囲内で取得した。注射薬物使用者集団の規模の予測値に基づいて、NSPs、OST、ARTの普及率を算出した。普及率には地域、国レベルで大きな差、世界的には極めて低い2009年までに、NSPsが82ヵ国で、OSTが70ヵ国で実施され、両方の介入が導入されたのは66ヵ国であった。地域および国レベルの普及率には実質的な差が認められた。注射針と注射器の配布は、オーストラリアが注射薬物使用者1人当たり年間に202と圧倒的に高かったのに対し、ラテンアメリカおよびカリブ海諸国は0.3、中東および北アフリカは0.5と低く、最低はサハラ以南のアフリカの0.1であった。注射薬物使用者100人当たりのOSTの施行数は、中央アジア、ラテンアメリカ、サハラ以南のアフリカの1以下から、西ヨーロッパの61までの差が認められた。HIV陽性の注射薬物使用者100人当たりのART施行数は、チリ、ケニア、パキスタン、ロシア、ウズベキスタンが1以下であり、6つのヨーロッパ諸国は100以上であった。世界全体では、注射薬物使用者1人当たりの月間の注射針と注射器の配布数は2(範囲1~4)、100人当たりのOSTは8(範囲6~12)であり、HIV陽性者100人当たりのART施行数は4(2~18)であった。著者は、「注射薬物使用者におけるHIVの予防、治療、ケアサービスの世界的な普及率は極めて低い」とし、「この高リスクの集団に対し、早急にこれらのサービスの拡充を図る必要がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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ステージⅢ大腸がん、75歳以上高齢者への術後補助化学療法実施率は5割程度

外科的切除術を受けたステージⅢ大腸がん患者で、75歳以上の高齢者のうち、術後補助化学療法を受けている割合は5割と、75歳未満の約9割に比べ、有意に低率であることが明らかになった。75歳以上患者への術後補助化学療法のレジメンは、毒性の弱いものが使用される傾向が強く、有害事象の発生率も低かった。米国RAND CorporationのKatherine L. Kahn氏らが、約700人の外科的切除術を受けたステージⅢ大腸がん患者について行った観察研究の結果、報告したもので、JAMA誌2010年3月17日号で発表した。オキサリプラチンを含むレジメン、75歳以上は14%のみ同研究グループは、2003~2005年にかけて、外科的切除術を受けたステージⅢ大腸がん、合わせて675人について調査を行った。その結果、75歳以上の人で術後補助化学療法を受けていたのは、202人中101人(50%)と、75歳未満の87%に比べ、有意に低率だった(実施率の差:37%、95%信頼区間:30~45%)。術後補助化学療法を受けた人のうち、レジメンにオキサリプラチン(商品名:エルプラット)を含んでいたのは、75歳以上では14人(14%)と、75歳未満の178人(44%)に比べ、有意に低率だった(実施率の差:30%、同:21~38%)。治療開始後150日時点での中止は65歳以上が4割術後補助化学療法の継続についてみてみると、治療開始後150日時点で治療を中止していたのは、65歳未満が25%に対し、65歳以上では40%に上った。有害事象については、患者全体の162人(24%)に、最低1回の遅延性臨床的有害事象が認められた。術後補助化学療法を受けている人の同発生率は28%と、受けていない人の13%に比べ、2倍超だった。術後補助化学療法を受けている人のうち、遅延性臨床的有害事象の補正後発生数1人当たり平均は、18~54歳が0.35、55~64歳が0.52、65~74歳が0.45だったのに対し、75歳以上は0.28と、低い傾向がみられた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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米国がんセンターの約8割以上で緩和ケアプログラムを提供

米国のがんセンターの約8割以上で、緩和ケアプログラムを設置・提供していることが、米国テキサス大学緩和ケア・リハビリ部門のDavid Hui氏らが行った、全米約140ヵ所のがんセンターに対する調査で明らかになった。なかでも、米国国立がんセンター(National Cancer Institute:NCI)認定のがんセンターでは、緩和ケアプログラムの設置率は98%に上っているという。JAMA誌2010年3月17日号掲載より。緩和ケア専門医はNCI認定センター92%、非指定は74%に同研究グループは、2009年6~10月にかけて、全米71ヵ所のNCI認定がんセンターと、無作為に抽出した全米71ヵ所のNCI非認定がんセンターに対し、調査を行った。調査票は、センター管理職や緩和ケア臨床プログラムの責任者に対し送付され、回収率はそれぞれ71%と82%だった。その結果、緩和ケアプログラムを設置していたのは、認定センター51ヵ所中50(98%)に対し、非認定センターでは50ヵ所中39(78%)だった(p=0.002)。また最低1人以上の緩和ケア専門の医師がいたのは、認定センターが92%、非認定センターは74%(p=0.04)、入院患者向け緩和ケア・コンサルテーション・チームを設置していたのは、それぞれ92%と56%(p

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集団認知行動療法が腰痛の治療に有用

集団認知行動療法が、プライマリ・ケアにおける腰痛治療として有用なことが、イギリスWarwick大学医学部のSarah E Lamb氏らによる無作為化試験で示された。国際的なガイドラインでは、非特異的な腰痛が持続する場合は積極的に身体を動かすことが推奨されている。プライマリ・ケアでは、通常の治療よりも看護師による積極的な運動の指導の方が効果は高いが長期には持続せず、理学療法(体系的運動療法、鍼灸、マニピュレーション、姿勢指導)の長期効果もわずかなことが示されている。認知行動療法の長期効果については相反する結果が混在しているが、集団で行う場合は同じ問題を持つ患者同士の相互作用による改善効果やコストの軽減が期待できるという。Lancet誌2010年3月13日号(オンライン版2010年2月26日号)掲載の報告。集団認知行動療法の有無で無作為割り付け研究グループは、プライマリ・ケアにおいて腰痛患者へのアドバイスに加え集団認知行動療法を行うアプローチの効果を評価するために、多施設共同無作為化試験を実施し、費用効果分析も行った。イングランドの56の一般診療(GP)施設から亜急性あるいは慢性の成人腰痛患者701例が登録され、積極的な疾患管理の指導を受けた。これらの患者が、最大6セッションの集団認知行動療法を受ける群(468例)あるいはそれ以上の介入は受けない対照群(233例)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、12ヵ月の時点におけるRoland Morris機能障害質問票および改訂Von Korff障害スコアのベースラインからの変化とした。評価は盲検下に行い、フォローアップデータが得られた全患者についてintention-to-treat解析を行った。有意な改善効果、医療コストの増加も少ない集団認知行動療法群の399例(85%)および対照群の199例(85%)で有効性の解析が可能であった。最も多い治療中止の理由は質問票への回答拒否であった。治療開始後12ヵ月の時点におけるRoland Morris機能障害質問票スコアのベースラインからの変化は、集団認知行動療法群が2.4と、対照群の1.1に比べ有意に優れていた(群間差:1.3、p=0.0008)。改訂Von Korff障害スコアのベースラインからの変化は、集団認知行動療法群が13.8%と、対照群の5.4%に比べ有意に優れていた(群間差:8.4%、p<0.0001)。改訂Von Korff障害スコアの疼痛スコアも、それぞれ13.4%、6.4%と、集団認知行動療法群が有意に優れた(群間差:7.0%、p<0.0001)。集団認知行動療法による質調整生存年(QALY)の増分は0.099であった。1QALY当たりのコストの増加は1,786ポンドであり、1QALY当たり3,000ポンドを閾値とした場合の費用効果の確率は90%以上に達した。両群とも、重篤な有害事象は認めなかった。著者は、「亜急性あるいは慢性の腰痛に対し、集団認知行動療法は有効であり、その効果は1年間持続し、医療コストも安価であった」と結論し、「本試験には都市部、地方部、富裕層居住区、貧困層居住区の患者が含まれる。また、年齢の上限を設けなかったため平均年齢が他の試験より高く、人種の割合もイギリスの現状を反映するものだ。したがって、得られた結果は広く適用可能と考えられる」としている。(菅野守:医学ライター)

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待機的冠動脈造影には、よりすぐれたリスク選別の方法が必要

心臓カテーテル検査適応患者の選別に関して、ガイドラインではリスクアセスメントと非侵襲検査を推奨している。米国デューク大学臨床研究所のManesh R. Patel氏らの研究グループは、実施されている非侵襲検査の種類と、冠動脈疾患が疑われる患者に施行するカテーテル検査の診断精度について、米国の最新サンプルデータを用いて検討を行った。NEJM誌2010年3月11日号掲載より。待機的心カテ検査の精度は3分の1強にとどまる試験は、2004年1月から2008年4月にかけてAmerican College of Cardiology National Cardiovascular Data Registryに参加する663病院で、待機的カテーテル検査を受けた冠動脈疾患の既往のない患者を同定し対象とした。患者の人口統計学的特性、リスクファクター、症状、非侵襲検査の結果について、閉塞性冠動脈疾患との関連性を調査。その際、閉塞性冠動脈疾患は左主幹冠動脈の直径50%以上の狭窄または主要心外膜血管の直径70%以上の狭窄と定義された。この研究では、合計39万8,978例の患者が対象となり、年齢中央値は61歳、男性が52.7%、26.0%に糖尿病が、69.6%に高血圧症がみられた。非侵襲検査は患者の83.9%に実施された。カテーテル検査から37.6%(14万9,739例)に閉塞性冠動脈疾患が認められ、冠動脈疾患なし(狭窄が全血管の20%未満と定義)は39.2%だった。リスク層別化の優れた方策の必要性を強調解析の結果、閉塞性冠動脈疾患の独立予測因子として、「男性」(オッズ比:2.70、95%信頼区間:2.64~2.76)、「高齢」(5歳加齢当たりオッズ比:1.29、95%信頼区間:1.28~1.30)、「インスリン依存性糖尿病を有する」(オッズ比:2.14、95信頼区間:2.07~2.21)、脂質異常症(同:1.62、1.57~1.67)だった。非侵襲検査の結果が陽性の患者は、検査を一つも受けなかった患者と比べ閉塞性冠動脈疾患を有する割合が高かったが、わずかだった(41.0%対35.0%、P

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心血管リスクを有する耐糖能異常(IGT)患者において、バルサルタンが2型糖尿病への進行を抑制-NAVIGATOR試験の結果から

 ノバルティスファーマ株式会社は18日、9,000名以上が参加した高血圧治療薬バルサルタンのランドマーク試験であるNAVIGATORの結果から、心血管疾患または心血管リスクのある耐糖能異常(IGT)患者において、バルサルタンが2型糖尿病への進行を遅らせることが明らかになったと発表した。それによると、バルサルタン群では、糖尿病の新規発症リスクが14%減少したが、心血管イベントのリスクは減少しなかった。またナテグリニド群では、糖尿病の新規発症リスクも、心血管イベントのリスクも減少しなかったという。●詳細はプレスリリースへhttp://www.novartis.co.jp/news/2010/pr20100318_02.html

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主要医学雑誌発表の薬剤試験論文、有効性検証比較(CE)試験は約3分の1

代表的な医学雑誌で発表された薬剤に関する試験論文のうち、「有効性を検証するための比較(comparative effectiveness:CE)試験」が占める割合は、約3分の1であることが報告された。CE試験とは、異なる治療法について、効果や安全性、コストなどの比較を行う試験のこと。米国・南カリフォルニア大学のMichael Hochman氏らが、代表的な医学雑誌6誌に発表された無作為化試験などについて調べ、JAMA誌2010年3月10日号で発表した。CE試験のうち2種以上の薬剤を比較した試験は43%Hochman氏らは、2008年6月1日~2009年9月30日の間に、NEJM、BMJ、Lancet、JAMA、Annals of Internal Medicine、Archives of Internal Medicineの6誌で発表された試験について調査を行った。薬剤に関する無作為化試験、観察研究、メタ解析は、合わせて328件あり、そのうちCE試験は約3分の1の104件だった。CE試験のうち、2種以上の薬剤について比較したものは45試験(43%)、薬物治療と非薬物治療の比較が行われていたものが11試験(11%)、異なる薬理作用間の比較が行われていたものが32試験(31%)、投与量についての比較が行われていたものは16試験(15%)だった。CE試験の9割が非営利組織からの資金援助で実行また、安全性に焦点を当てていたものは20試験(19%)で、費用対効果について言及していたのは、わずか2試験(2%)に留まった。さらに資金援助の状況について、営利組織からのみ資金援助を受けていた割合は、非CE試験は45%だったのに対し、CE試験は13%と有意に低率だった(p

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小児の重症感染症の危険信号となる臨床徴候を同定

外来診療における小児の臨床徴候のうち、重症感染症の危険信号(red flag)としてチアノーゼ、速い呼吸、末梢循環不全、点状出血発疹が重要であり、両親の心配や臨床医の直感も危険なことが、ベルギーLeuvenカトリック大学一般医療科のAnn Van den Bruel氏らが行った系統的なレビューで明らかとなった。小児重症感染症の死亡率や罹患率を低減するには早期の正確な診断が要件となるが、重篤な病態の罹患率は低く、また重症度が明確でない早期の時点で重篤な病態を呈する患児はほとんどいないため診断は容易でないという。プライマリ・ケアでは重篤な病態に至る患児は1%未満だが、臨床医には心配する両親を安心させ、重症患児を診断する義務がある。Lancet誌2010年3月6日号(オンライン版2010年2月3日号)掲載の報告。危険信号としての臨床徴候を尤度比で評価研究グループは、先進国における外来診療時の小児重症感染症の鑑別に有用な臨床徴候の同定を目的に系統的なレビューを行った。小児の重症感染症の臨床徴候を評価した論文を同定するために、データベース(Medline、Embase、DARE、CINAHL)を検索し、関連研究の参考文献リストに当たり、各研究者と連絡を取った。1,939の関連文献を同定し、さらに以下の6つの基準で論文の絞り込みを行った。1)診断精度や予測基準を評価する研究、2)対象は感染症以外の疾患がみられない1ヵ月~18歳の小児、3)外来診療、4)予後:重症感染症、5)外来診療で評価が可能な徴候、6)十分なデータが提示されている。試験の質の評価は、Quality Assessment of Diagnostic Accuracy Studiesの判定基準で行った。各臨床徴候について、重症感染症発現の尤度比(陽性尤度比)および非発現の尤度比(陰性尤度比)を算出した。陽性尤度比>5.0の臨床徴候を重症感染症の危険信号とし、陰性尤度比<0.2の場合は除外徴候とした。リスクのレベルに応じてとるべき臨床行動を同定すべき30の試験が解析の対象となった。チアノーゼ(陽性尤度比:2.66~52.20)、速い呼吸(同:1.26~9.78)、末梢循環不全(同:2.39~38.80)、点状出血発疹(同:6.18~83.70)が複数の研究で危険信号として同定された。プライマリ・ケアに関する一つの研究では、両親の心配(陽性尤度比:14.40、95%信頼区間:9.30~22.10)および臨床医の直感(同:23.50、同:16.80~32.70)が強力な危険信号であった。40℃以上の発熱は、重症感染症の罹患率が低い状況でも危険信号としての価値はあることが確認された。単一の臨床徴候のみで重症感染症の可能性を除外することはできなかったが、いくつかの徴候を組み合わせると可能であった。たとえば、呼吸困難がみられず、かつ両親の心配がない場合は、肺炎は高い確率で除外できた(陰性尤度比:0.07、95%信頼区間:0.01~0.46)。観察所見で重症度を判定するYale Observation Scaleは、重症感染症の確定(陽性尤度比:1.10~6.70)にも、除外(陰性尤度比:0.16~0.97)にも有効ではなかった。これらの結果を踏まえ、著者は「今回の検討で同定された重症感染症の危険信号はルーチンに用いるべきだが、効果的な予防措置を講じなければ重篤な病態は今後も見逃されるだろう」とし、「リスクのレベルに応じてとるべき臨床行動を同定する必要がある」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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HbA1c値、糖尿病および心血管アウトカムを予測

糖尿病診断の基準として空腹時血糖値が使用されてきたが、近年、食事や運動など生理的影響を受けにくい糖化ヘモグロビン(HbA1c)値の使用が推奨されるようになっている。今年1月の米国糖尿病協会(ADA)の推奨の動きに続き、日本でも診断基準改定の動きが本格化している。そのHbA1c値と従来の空腹時血糖値の予後予測能(糖尿病または心血管疾患リスク同定)について、米国ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ校疫学部門のElizabeth Selvin氏らのグループが、比較試験を行った。NEJM誌2010年3月4日号より。HbA1c値が増すほど、糖尿病、冠動脈疾患、脳卒中のリスクは高まるSelvin氏らは、全米4地区で行われているAtherosclerosis Risk in Communities(ARIC)前向き研究参加者で、1990~1992年の2回目の被験者登録時に、糖尿病または心血管疾患の既往歴がなかった黒人および白人成人11,092例の全血サンプルから測定したHbA1c値をベースラインとした。その後約15年追跡した、両群の各イベント発症を比較した。結果、ベースラインのHbA1c値と、新たに診断された糖尿病並びに心血管アウトカムとの相関が確認された。HbA1c値「5.0%未満」「5.0~5.5%未満」「5.5~6.0%未満」「6.0~6.5%未満」「6.5%以上」の各グループの、糖尿病と診断されるリスクの多変量補正ハザード比は「5.0~5.5%未満」を基準とした場合、「5.0%未満」群0.52(95%信頼区間:0.40~0.69)、「5.5~6.0%未満」群1.86(同:1.67~2.08)、「6.0~6.5%未満」群4.48(同:3.92~5.13)、「6.5%以上」群16.47(同:14.22~19.08)だった。冠動脈疾患のハザード比は、「5.0%未満」群:0.96(同:0.74~1.24)、「5.5~6.0%未満」群:1.23(同:1.07~1.41)、「6.0~6.5%未満」群1.78(同:1.48~2.15)、「6.5%以上」群1.95(同:1.53~2.48)だった。脳卒中のハザード比も同程度だった。空腹時血糖値モデルでは予測できないものもHbA1c値を加えると……一方、全死因死亡率とHbA1c値とは、J字型曲線の相関を示した。 これらHbA1c値モデルにおける、糖尿病、心血管アウトカム、死亡率との関連性はいずれも、ベースラインの空腹時血糖値による補正後も有意だった。対照的に空腹時血糖値モデルでは、心血管疾患および全死因死亡リスクとの関連が、全共変量による補正後モデルにおいても有意性は認められなかった。冠動脈疾患のリスクとの関連については、空腹時血糖モデルにHbA1c値がつけ加えた場合に有意となった。これらからSelvin氏は、「非糖尿病成人の地域ベースの集団において、HbA1c値は空腹時血糖値と比較して、糖尿病リスクについては同程度の相関を、心血管疾患および全死因死亡リスクについてはより強い相関を示した。このことは、糖尿病診断にHbA1c値を活用するべきことを裏づけるエビデンスが得られたことを意味する」と結論している。(医療ライター:朝田哲明)

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モバイル公式サイト『家庭の東洋医学』配信開始

株式会社IMJモバイルは11日、薬日本堂株式会社と共同で、モバイル公式サイト『家庭の東洋医学』サービスを開始した。本サービスは、2010年3月1日から「Yahoo!ケータイ」向けに、8日から「i-mode」向けに、11日から「EZweb」向けに提供開始されている。主なサービス、コンテンツは、192種類の漢方薬、150種類以上の症状から自分に合った処方が検索できる「漢方薬検索」、健康についての疑問に答える「こころの相談室」など。東洋の知恵をわかりやすく教えてくれるコラムは週1回ペースで配信される。他にも、日常の生活に関する質問に回答すると、それぞれの体質に合った養生法がわかる「漢方タイプ診断」や、「人気漢方薬ランキング」、「漢方薬辞典」などもある。料金は月額315円(税込)。URLはhttp://kateino-toyoigaku.jp/詳細はプレスリリースへhttp://www.imjp.co.jp/company/press/release/20100311-001031.html

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頸動脈狭窄、内膜摘除か?ステント留置か?:短期・中期アウトカムの比較

米国ミシガン大学のPascal Meier氏らの研究グループは、議論が続いている頸動脈狭窄に対する頸動脈内膜摘除術と頸動脈ステント留置術の、周術期における安全性と中期の有効性を評価するため、過去に行われた無作為化臨床試験のシステマティックレビューとメタ解析を行い、BMJ誌2010年2月27日号(オンライン版2010年2月12日号)に発表した。死亡または脳卒中の複合エンドポイントで比較使用したデータ・ソースは、1990年1月1日から2009年7月25日までのBIOSIS、Embase、Medline、the Cochrane central register of controlled trials、International Pharmaceutical Abstracts database、ISI Web of Science、Google scholar and bibliographies。症状の有無にかかわらない頸動脈狭窄患者を対象とした無作為化対照試験で、頸動脈内膜摘除術群と頸動脈ステント留置術群について比較を行った。主要エンドポイントは「死亡または脳卒中」の複合とした。また2次エンドポイントとして、「死亡」「脳卒中」「心筋梗塞」「顔面神経麻痺」と「死亡または重い障害の残る脳卒中」を評価した。11試験(4,796例)が対象となり、そのうち10試験(4,709例)が短期アウトカム(30日以内の周術期)を、9試験が中期アウトカム(1~4年)を報告していた。中期アウトカムは有意差なし、症状に応じた選択が必要周術期の「死亡または脳卒中」リスクは、ステント術群より内膜摘除術群の方が低かった(オッズ比0.67、95%信頼区間:0.47~0.95、P=0.025)。その主な要因は「脳卒中」リスクの低下(0.65、0.43~1.00、P=0.049)によるもので、「死亡」リスク(1.14、0.56~2.31、P=0.727)ならびに「死亡または重い障害の残る脳卒中」リスクに有意差はなかった(0.74、0.53~1.05、P=0.088)。一方、周術期の「心筋梗塞」(2.69、1.06~6.79、P=0.036)、「脳神経損傷」(10.2、95%CI 4.0~26.1、P

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スタチン治療により糖尿病発症リスクがわずかに増大、診療方針には変更なし

スタチン治療により、糖尿病の発症リスクがわずかながら増大するものの、心血管疾患のリスクを有する患者や心血管疾患患者の診療方針を変更するほどではないことが、イギリスGlasgow大学Glasgow心血管研究センターのNaveed Sattar氏らによるメタ解析で示された。スタチンのプラセボ対照試験における糖尿病の発症率は、JUPITER試験ではロスバスタチン群で高かったのに対し、WOSCOPS試験ではプラバスタチン群で低いなど相反する知見が得られている。これによりスタチンの長期使用の安全性に疑問が生じたため、系統的な検討が求められていた。Lancet誌2010年2月27日号(オンライン版2010年2月17日号)掲載の報告。1,000例以上の大規模な無作為化試験のメタ解析研究グループは、スタチンの使用と糖尿病発症の関連性について、公表されたデータと未発表のデータを用いてメタ解析を行った。データベース(Medline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials)を用いて、1994~2009年までに実施されたスタチンの無作為化対照比較試験を検索した。1,000例以上が登録され、1年以上のフォローアップが両群で等しく行われた試験のみを解析の対象とした。臓器移植患者や血液透析を要する患者の試験は除外した。糖尿病発症リスクが9%増大したが、絶対リスクは低い13のスタチンに関する試験(ASCOT-LLA、HPS、JUPITER、WOSCOPS、LIPID、CORONA、PROSPER、MEGA、AFCAPS TexCAPS、4S、ALLHAT-LLT、GISSI HF、GISSI PREVENZIONE)が同定された(合計91,140例)。平均4年間に4,278例が糖尿病を発症した(スタチン群2,226例、対照群2,052例)。スタチン治療により糖尿病の発症リスクが9%増大した(オッズ比:1.09、95%信頼区間:1.02~1.17)。試験間の不均一性はほとんど認めなかった[I(2)=11%]。メタ回帰分析では、スタチンによる糖尿病の発症リスクはより高齢の患者を対象とした試験で高かったが、ベースライン時のBMIやLDLコレステロール値の変化はリスクに影響を及ぼさなかった。4年間のスタチン治療を255例(95%信頼区間:150~852例)に対して行うと、1例が糖尿病を発症することが示され(スタチン群:12.23/1,000人・年、対照群:11.25/1,000人・年)、絶対リスクは低かった。著者は、「スタチン治療により糖尿病の発症リスクがわずかに増大したが、絶対リスクは低く、冠動脈イベントの低減効果と比べてもリスクは低かった」と結論し、「心血管疾患のリスクが中等度~高度の患者や心血管疾患患者の診療方針を変更する必要はない」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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骨粗鬆症治療薬lasofoxifeneのイベントリスク減少に関する評価:PEARL試験

 非ステロイド性の選択的エストロゲン受容体調節物質であるlasofoxifeneについて、骨粗鬆症の閉経後女性の、骨折および乳がん、心血管疾患のリスクが減少するかを評価する「PEARL試験」の結果が、米国カリフォルニア大学のSteven R. Cummings氏らによって報告された。高用量投与(0.5mg/日)では、骨折、乳がん、冠動脈疾患、脳卒中のリスクは減少が確認されたが、静脈血栓塞栓のイベントリスクは増加がみられたという。NEJM誌2010年2月25日号掲載より。骨粗鬆症の閉経後女性8,556例、5年時点の評価 PEARL(Postmenopausal Evaluation and Risk-Reduction with Lasofoxifene)試験は、国際的な無作為化プラセボ対照試験(32ヵ国113施設から登録)で、大腿骨頸部または脊椎の骨密度Tスコアが-2.5以下の59~80歳(平均年齢67歳)女性8,556例を対象に行われた。被験者は、lasofoxifene投与群(1日1回0.25mgまたは0.5mg)と、プラセボ投与群に無作為化され、5年時点でアウトカムの評価が行われた。 主要エンドポイントは、脊椎骨折、非脊椎骨折、エストロゲン受容体(ER)陽性乳がんとした。副次エンドポイントは、主な冠動脈疾患イベント、脳卒中とした。0.5mg/日は、骨折、乳がん、冠動脈疾患、脳卒中リスクを減少 結果、lasofoxifene 0.5mg/日群(1,777例)は、プラセボ群(1,820例)と比べて、脊椎骨折リスク減少(ハザード比:0.58、p<0.001)、非脊椎骨折リスク減少(同:0.76、p=0.002)、ER陽性乳がんリスク減少(同:0.19、p<0.001)、冠動脈疾患イベントリスク減少(同:0.68、p=0.02)、脳卒中リスク減少(同:0.64、p=0.04)との関連が認められた。 0.25mg/日群(1,753例)は、プラセボ群と比べて、脊椎骨折リスク減少(ハザード比:0.69、p<0.001)、脳卒中リスク減少(同:0.61、p=0.03)との関連が認められた。 一方、0.25mg/日群、0.5mg/日群ともに、プラセボ群と比べて、静脈血栓塞栓イベント増加(ハザード比はそれぞれ2.67、2.06)との関連が認められた。 子宮体がん発症は、0.25mg/日群に2例、0.5mg/日群に2例、プラセボ群3例。1,000人当たりの死亡率はそれぞれ、7.0、5.7、5.1だった。

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先天異常の疾患別、サブタイプ別の20年生存率が明らかに

イングランド北部で実施された地域住民研究の結果、一つ以上の先天異常を有する患者の20年生存率は85.5%で、各疾患のサブタイプ間には差がみられることがわかった。先天異常は周産期および幼児期の死亡の主要原因とされる。治療法の進歩によって予後の改善がもたらされた疾患やサブタイプもあるが、多くの先天異常の生存率(特に1歳以降)はよく知られていないという。イギリスNewcastle大学保健・社会研究所のPeter W G Tennant氏らが、Lancet誌2010年2月20日号(オンライン版2010年1月20日号)で報告した。NorCASの18年間のデータを解析研究グループは、先天異常およびそのサブタイプの20歳までの生存率について検討する地域住民研究を実施した。イングランド北部地方における先天異常の地域住民ベースのレジスターであるNorCAS(Northern Congenital Abnormality Survey)のデータを用いて、1985~2003年に一つ以上の先天異常がみられた子どもの情報を収集した。EUROCAT(European Surveillance of Congenital Anomalies)のガイドラインに基づいて、疾患群、サブタイプ、症候群に分類した。生児として出生した子どもの生存率の確認には地方病院と国の死亡記録を用いた。20歳までの生存率はKaplan-Meier法で推算し、生存に関与する因子の解析にはCox比例ハザード回帰モデルを用いた。20年生存率85.5%、サブタイプ間にはばらつきが13,758例の先天異常が同定され、生児として出生した10,964例のうち生存状況が確認できたのは10,850例(99.0%)であった。20年生存率は、一つ以上の先天異常を有する全症例では85.5%であった。また、心血管系異常(総動脈幹、大血管転位、単心室など)は89.5%、染色体異常は79.1%、泌尿器系異常(嚢胞性腎疾患)は93.2%、消化器系異常(食道閉鎖、十二指腸閉鎖・狭窄、横隔膜ヘルニア)は83.2%、口唇・口蓋裂は97.6%、神経系異常(神経管欠損、水頭症)は66.2%、呼吸器系異常は64.3%であった。同一の先天異常疾患のサブタイプ別の生存率にはばらつきがみられた。出生前診断での胎児異常による妊娠中絶率は、1985年の12.4%から2003年には18.3%と有意に増加した(p<0.0001)。この妊娠中絶率の増大(補正ハザード比:0.95、p=0.023)および出生年(同:0.94、p<0.0001)が、生存の独立予測因子であった。「先天異常の疾患別、サブタイプ別の予測生存率は、先天異常が見つかった場合に、その家族や医療者にとって有用と考えられ、個々の患者の将来のケアの立案に役立つであろう」と著者は結論している。(菅野守:医学ライター)

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炎症性腸疾患の静脈血栓塞栓症リスク、外来再燃時に最も高い

潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患患者では、静脈血栓塞栓症の発症リスクが増大しており、特に緩解導入後の急性再燃時にそのリスクが高いことが、イギリスNottingham大学疫学・公衆衛生学のMatthew J Grainge氏らによるコホート研究で明らかとなった。下肢の静脈血栓塞栓症による短期的死亡率は6%で、肺循環に塞栓が発生した場合は20%にも達することが示されている。この生命に関わる疾患には感染や炎症が関与しており、特に炎症性腸疾患患者はリスクが高く、血栓塞栓症の発現時には活動性の炎症性腸疾患がみられることが多いという。Lancet誌2010年2月20日号(オンライン版2月9日号)掲載の報告。大規模データベースから約14年間の患者と対照の記録を抽出研究グループは、炎症性腸疾患の活動性の各段階における静脈血栓症の発症リスクをプロスペクティブに検討するコホート研究を行った。800万例以上のプライマリ・ケア記録が集積されたイギリスの大規模な縦断的データベースであるGeneral Practice Research Database(GPRD)を用いて1987年11月~2001年7月までに記録された炎症性腸疾患患者を同定し、個々の患者に対し年齢、性別、一般診療の内容でマッチさせた対照を5人まで選択した。疾患活動性を、緩解、再燃(フレア:初回コルチコステロイド処方から120日間と定義)、慢性活動性に分け、入院後の静脈血栓塞栓症のリスクを評価した。リスクは外来再燃時が最も高い、1次予防の臨床試験の実施を炎症性腸疾患患者13,756例[潰瘍性大腸炎6,765例(49%)、クローン病4,835例(35%)など]および対照群71,672人が解析の対象となった。静脈血栓塞栓症は、炎症性腸疾患患者の139例、対照群の165人でみられた。静脈血栓塞栓症の全体の発症リスクは対照群に比べ患者群で有意に高く、絶対リスクは1,000人・年当たり2.6であった(補正ハザード比:3.4、p<0.0001)。患者の静脈血栓塞栓症リスクの増大は再燃時の方がより顕著であった(補正ハザード比:8.4、p<0.0001、絶対リスク:9.0/1,000人・年)。再燃時の相対リスクは、入院治療期(同:3.2、p=0.0006、同:37.5/1,000人・年)よりも外来治療期(同:15.8、p<0.0001、同:6.4/1,000人・年)の方がより高かった。「静脈血栓塞栓症の予防の可能性を探るために、1次予防に関する臨床試験の実施が正当化される」と著者は結論しており、「炎症性腸疾患患者は静脈血栓塞栓症の発症リスクの評価時にはすでにリスクが増大しており、再燃患者では外来治療によるリスク低減は困難なことを明記すべきである。コルチコステロイド治療には骨粗鬆症の懸念もあるため、入院治療で使用されている低分子量ヘパリンの短期投与などを外来で施行する戦略も検討に値する」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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重度の脳損傷を受けた意識障害患者との会話、機能的MRIの応用で可能?

集中治療技術の進展により、重度の脳損傷を受けても生存する患者が増加しているが、良好な回復を示す患者がいる一方、一部は植物状態のままで、大半の患者はこん睡状態から目覚めても再現性のある意思疎通ができる状態にまでは回復しない。2002年にAspen Neurobehavioral Conference Work Groupが、意識障害患者の枠組みに「最小意識状態」(minimally conscious state;MCS)という「意思表示を行動で示せない患者」の区分を加えた。しかしベッドサイド検査だけでは鑑別診断が難しく誤診率は約40%に及ぶという。そこで英国医学研究審議会(MRC)認知・脳科学ユニットのMartin M. Monti氏らは、機能的MRIを用いた意思疎通を図れるかを試験した。NEJM誌2010年2月18日号(オンライン版2010年2月3日号)掲載より。54例の意識障害患者に機能的MRIを試験Monti氏らは、英国のケンブリッジとベルギーのリエージュにある2つの主要なメディカルセンターで、54例の意識障害患者(植物状態23例、最小意識状態31例)を対象に機能的MRIを用いた試験を実行した。まず、健常者に対する試験で明らかになっている、心象作業の際の脳血流動態が活発になる部位が、運動をイメージする、場所をイメージする各作業の場合で異なることを活用し、被験者に各心象作業(運動しているイメージ、場所をイメージ)をするよう質問をなげかけ、脳血流動態をMRIでスキャンし脳活動の調整が可能かを判定した。次に、その心象作業を利用してコミュニケーションが可能かを検証した。「はい」「いいえ」で答えられる簡単な質問を投げかけ、質問に対し「はい」なら、先と同じ運動心象作業を、「いいえ」なら場所の心象作業をするよう指示をし、脳活動の再現性を評価するという方法である。植物状態と判定されていた患者とのコミュニケーションに成功結果、54例中5例の患者が脳活動を調整することが可能だった。5例とも外傷性脳損傷を受けた患者で4例は植物状態と判定(残り1例はMCS)されていた患者だった。5例のうち3例は、ベッドサイド検査でもいくつかの認知していることを示すサインが確認できた。2例には確認できなかった。また心象作業を利用した「はい」「いいえ」のコミュニケーションの方法は、1例の患者(植物状態と判定されていた)で可能だった。その患者とのコミュニケーションは、それ以外の方法では全くできなかった。Monti氏は「少数ではあったが、植物状態、最小意識状態の患者に、いくつかの認知を反映する脳活動があることが証明された。このことは、臨床検査を入念に行えば意識状態の再分類化がなされる患者もいることを意味する。我々が開発した方法は、反応がないと思われる患者との基本的コミュニケーションの確立に役立つだろう」と結論している。(医療ライター:武藤まき)

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ツタンカーメン、死因は骨壊死とマラリアが重なってか!?

 古代エジプトのツタンカーメン王の死因は、無血管性骨壊死と熱帯熱マラリアによる可能性が高いことが判明した。また、ツタンカーメン王の両親のミイラについても、特定された。エジプト考古最高評議会のZahi Hawass氏らが「King Tutankhamun Family Project」の中で、エジプト新王国時代の16体のミイラについて遺伝子指紋法やCTスキャンなどによる詳細な調査を行った結果、明らかにしたもの。JAMA誌2010年2月17日号で発表した。遺伝子指紋法でツタンカーメン王直系の5世代特定 同研究グループは、2007年9月~2009年10月にかけて、紀元前1410~1324年頃のツタンカーメン王の家系のものと考えられるミイラ11体と、紀元前1550~1479年頃のミイラ5体について、人類学、放射線学、遺伝学のそれぞれの視点から詳しい調査を行った。 遺伝子指紋法によって、ツタンカーメン直系の5世代(娘2人、両親、祖父母、曽祖父母(そうそふぼ)が特定された。その中で、KV55ミイラ(アクエンアテン王;Akhenaten)とKV35YLミイラ(名前は不特定)が、ツタンカーメンの両親であることが判明した。ツタンカーメンに先天性異常の蓄積や第2ケーラー病 また、ツタンカーメン家には、いくつかの先天性異常の蓄積が認められた。ただし、女性化乳房や頭蓋骨融合といったアントレー・ビクスラー症候群の兆候や、マルファン症候群の兆候はみられなかった。 CTスキャンによる調査では、ツタンカーメン王に、第2ケーラー病を含むいくつかの病理学的所見が認められた。ただし、いずれも致死性のものではなかった。 一方で、ツタンカーメン王を含む4体のミイラから、熱帯熱マラリア(plasmodium falciparum)が診断された。こうした結果を総合し、研究グループは、ツタンカーメン王は無血管性骨壊死と熱帯熱マラリアによって死亡したのではないかと推測、「歩行障害やマラリアに罹っていたことは、彼の墓から、杖や死後の世界で使うための薬が発見されていることからも支持される」としている。

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mTOR阻害剤が腎細胞がんにもたらす可能性

2010年1月、mTOR阻害による抗悪性腫瘍剤としては日本初となる「エベロリムス(商品名:アフィニトール)」が承認を得た。ここでは、2月22日、アーバンネット大手町ビルにて開催された「mTOR阻害剤『アフィニトール』が腎細胞がん治療にもたらす可能性」と題するプレスセミナーをお届けする。帝京大学医学部泌尿器科学教室 主任教授 堀江重郎氏は、mTOR阻害剤の基礎から臨床治験まで広範にわたり講演した。<ノバルティス ファーマ株式会社主催> がん治療における新しい戦略無秩序な細胞増殖を繰り返すがんにおいて、その制御を失った細胞周期を停止させるのが従来の抗がん剤の作用機序であるが、さらに近年、がんそのものが自らを養う血管を新生させることから、そこをターゲットとする分子標的薬による治療が進んできている。そして新たにmTOR阻害剤など、無制限な細胞内の代謝もがん進行の要因となっている点に着目した治療戦略が、難治性がんへの福音となる可能性が強まってきた。mTORとは堀江氏はまず、mTORとその阻害剤について概説した。mTORとはマクロライド系抗生物質ラパマイシンの標的分子として同定されたセリン・スレオニンキナーゼであり、細胞の分裂や成長、生存における調節因子である。その重要性を示唆する事実として、酵母からヒトにいたるまで95%以上相同な蛋白であるため、mammalian Target Of Rapamycin(=mTOR)と総称される。正常細胞においては、栄養素や成長因子、エネルギーといった「エサ」があると活性化し、エサのない状況ではいわば冬眠状態となっている。栄養素やその他増殖促進経路からのシグナル伝達を制御する役割から、糖尿病や生活習慣病への関与も報告されている。一方、mTOR阻害剤のアフィニトールやラパマイシンは、タクロリムスと同様の機序で免疫抑制効果を持つ。分子生物学的には、細胞周期をG1期で停止させることや、低酸素誘導因子(HIF※)の安定化および転写活性を抑制することが示されている。多くのがんでmTORシグナル伝達経路が調節不全を起こして常に活性化しており、mTOR阻害剤の抗腫瘍効果が臨床レベルでも検討されている。(※HIF:mTOR活性化や低酸素によって細胞内に蓄積し、血管新生や解糖系代謝を亢進させる。)昨年Natureで発表され話題となった、興味深い知見がある。ラパマイシン適量をマウスに投与したところ、加齢期であっても寿命延長効果が見られた。これはカロリー制限したサルの方が長寿命であったデータと同等と考えられる、と堀江氏は語った。また、がん患者を高カロリー摂取群とカロリー制限群に分けたところ、制限群の方が長生きしたという結果が複数出ており、これまでは切り離して考えられていた「がん」と「体内環境」の密接な関連に関心が寄せられている。がん細胞の代謝にも影響するmTOR阻害剤は、この流れに合致する薬剤といえる。 腎細胞がんわが国における腎がんの9割は腎細胞がんであり、好発年齢は50歳以降、男女比は約2:1である。年間で発症数は1万人を超えて増加傾向にあるとされ、約7千人が死亡する。寒冷地方に多く発症し、ビタミンD欠乏との関連が指摘されている。遺伝性にフォン・ヒッペル・リンダウ(VHL)遺伝子が変異または欠失しているVHL症候群は120家系あり、遺伝性腎細胞がんを発症する割合は50%程度。根治的治療は手術で、StageⅣであってもなるべく切除した方が予後良好である。分子標的薬登場以前はサイトカイン療法しか薬物治療がなく、治療抵抗性のがんの一つである。 腎細胞がんとmTOR阻害剤堀江氏によると、腎細胞がん患者においてはmTORの上流蛋白Aktの過剰な活性化や、血中血管内皮増殖因子(VEGF)濃度の上昇が認められ、増殖シグナルが亢進している。加えて、mTORに至るシグナル経路を抑制する因子の変異・機能低下や、VHL遺伝子変異によるHIFの過剰産生が見られ、抑制シグナルの低下もある。正常ではVHLはがん抑制因子であってHIFを抑制しているが、腎がんの多くでは変異による不活化が起こっている。もともと腎臓は血管に富み、VHL変異で異常な血管が作られやすい。mTOR阻害剤は、このようにVHLが機能しない状況でもHIF合成を阻止する。また、VEGF-Aの産生も阻害し、結果として腫瘍細胞での血管新生を抑制する。このように、がん細胞の増殖抑制と血管新生阻害の抗腫瘍効果を併せ持つmTOR阻害剤のアフィニトールの、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤(スニチニブまたはソラフェニブ)が無効となった進行性腎細胞がんを対象として有効性および安全性について検討した臨床試験がRECORD-1である。患者をBSC+アフィニトール群とBSC群に無作為割付した結果、アフィニトール群で無増悪生存期間が有意に延長し、抗腫瘍効果も示された。副作用発現は、対象患者が比較的PSが良好というバイアスはあるが、高グレードがあまり多くない印象があるとのことである。注意すべきものとして、アジア人に多い間質性肺疾患、免疫抑制による感染症、インシュリン抵抗性となるための高血糖、糖尿病の発症・増悪などが挙げられた。mTOR阻害剤の間質性肺疾患については、副腎皮質ホルモン剤への反応性が高いことが報告されている。堀江氏は、がんへの本質的なアプローチといえるmTOR阻害剤、アフィニトールが承認され、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤投与後の進行性腎細胞がんの治療における期待が寄せられるとした。なおわが国では現在、乳がん、胃がん、悪性リンパ腫、膵内分泌腫瘍を対象とした、第Ⅲ相の国際共同治験に参加している。(ケアネット 板坂倫子)

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venlafaxineは、うつ病患者の心臓突然死リスクを増大させない

 venlafaxineは他の一般的な抗うつ薬に比べ、うつ病や不安障害患者の心臓突然死のリスクを増大させないことが、カナダMcGill大学疫学・生物統計学科のCarlos Martinez氏らの調査で明らかとなった。イギリスでは、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)であるvenlafaxineは、他の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)に比べ致死的な過剰摂取率が高いことが報告され、患者の背景因子(自殺リスクが高い患者など)、venlafaxine固有の毒性、催不整脈作用などの原因が指摘されている。治療量のvenlafaxineが心臓突然死や致死的な不整脈のリスクを増大させる可能性については、これまで検討されていなかったという。BMJ誌2010年2月13日号(オンライン版2010年2月5日号)掲載の報告。Venlafaxineと他の一般的な抗うつ薬の心臓突然死リスクを評価 研究グループは、venlafaxineが他の一般的な抗うつ薬に比べ心臓突然死あるいは重症左室不整脈のリスクを増大させる可能性について評価する、地域住民ベースのコホート内症例対照研究を実施した。 イギリスの一般医の診療情報が記録されたGeneral Practice Research Databaseを用い、1995年1月以降に新規にvenlafaxine、fluoxetine、citalopram、ドスレピン(商品名:プロチアデン)の使用を開始した18~89歳のうつ病あるいは不安障害の患者を対象とした。 フォローアップは2005年2月あるいは心臓突然死や瀕死の病態(診療記録で非致死的な急性左室頻脈や突然死が心臓に起因することを確認)、急性の虚血性心イベントによる院外死を発現するまで行った。個々の患者に対し、年齢、性別、暦時間、適応で調整した対照を30人ずつ選択した。venlafaxine群の心臓突然死リスクは他の抗うつ薬と同等 20万7,384人が登録され、平均3.3年のフォローアップが行われた。心臓突然死あるいは瀕死の病態は568人(急性左室頻脈27人、心臓突然死236人、虚血性心イベントによる院外死305人)に認め、背景因子をマッチさせた対照は1万4,812人であった。 心臓突然死、瀕死の病態の内訳は、venlafaxine群18人(3.2%)、fluoxetine群63人(11.1%)、citalopram群39人(6.9%)、ドスレピン群35人(6.2%)であった。venlafaxineに関連した心臓突然死、瀕死の病態の補正オッズ比は、fluoxetineとの比較では0.66(95%信頼区間:0.38~1.14)、citalopramとの比較では0.89(同:0.50~1.60)、ドスレピンに対しては0.83(同:0.46~1.52)であった。 このように、venlafaxineによる心臓突然死、瀕死の病態の頻度は他の抗うつ薬3剤と有意な差はなく、むしろ低い傾向がみられたことから、著者は「venlafaxineは、うつ病や不安障害患者の心臓突然死リスクを過度に増大させることはない」と結論している。なお、venlafaxineは一般的なSSRIに比べ好ましくない有害事象の頻度が高く治療中止例が多いことを示唆するデータがあるため注意を要するという。

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タモキシフェン治療中の高齢乳がん患者、パロキセチン併用で乳がん死が増大

タモキシフェン(TAM)治療中の乳がん女性にパロキセチン(商品名:パキシル)を併用投与すると、乳がん死のリスクが増大することが、カナダSunnybrook医療センターのCatherine M Kelly氏らが実施したコホート研究で示された。乳がんの内分泌療法の標準治療薬であるTAMは、チトクロームp450 2D6(CYP2D6)によって活性代謝産物であるエンドキシフェンに変換されるプロドラッグである。TAM投与を受けている乳がん女性にはパロキセチンなどの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が広く用いられているが、SSRIはCYP2D6を阻害するためエンドキシフェンの産生が低下してTAMの効果が減弱する可能性が指摘されていた。BMJ誌2010年2月13日号(オンライン版2010年2月8日号)掲載の報告。TAM+SSRI併用乳がん患者の治療終了後の乳がん死を、併用期間の長さ別に解析研究グループは、SSRIがCYP2D6を介する生物活性を阻害することでTAMの効果を減弱する可能性について検討するために、地域住民ベースのコホート研究を行った。対象は、1993~2005年までにオンタリオ州に居住した66歳以上のTAM治療を受けている乳がん女性で、SSRI[パロキセチン、fluoxetine、sertaline、フルボキサミン(商品名:デプロメール、ルボックス)、citalopram、venlafaxine)]を1剤併用投与された患者であった。TAM治療完遂後の乳がんによる死亡リスクを、TAM治療期間中のSSRI併用期間の長さで分類して解析を行った。 パロキセチン併用期間が長くなるにしたがって乳がん死亡率が有意に増大TAMとSSRIを併用投与された乳がん患者2,430例のうち、平均フォローアップ期間2.38年の時点で374例(15.4%)が乳がんが原因で死亡した。年齢、TAM投与期間、他の交絡因子で補正後のTAM+パロキセチン(不可逆的なCYP2D6阻害薬)群の乳がん死亡率は、パロキセチン併用期間が長くなるにしたがって有意に増大した(TAM治療期間におけるパロキセチン併用期間の割合が25%の患者の乳がん死亡率:24%、併用期間割合50%の患者:54%、併用期間割合75%の患者:91%、p<0.05)。これに対し、他のSSRIではこのような乳がん死リスクの増大は認めなかった。パロキセチン群の併用期間の割合の中央値は41%であった。この場合、TAM投与終了後5年以内に、19.7例に1例がパロキセチンの影響によって乳がんで死亡すると推算された。併用期間がさらに長くなれば、乳がん死リスクも増大すると予測される。著者は、「TAM治療中の乳がん患者にパロキセチンを使用すると乳がん死リスクが増大する。この知見は、パロキセチンは乳がん患者におけるTAMのベネフィットを損なうという仮説を支持するものである」と結論し、「TAMの代謝活性におけるCYP2D6の重要性が改めて示された。TAMは年齢を問わずホルモン受容体陽性乳がん女性の重要な治療薬であり、TAM治療中の乳がん患者に抗うつ薬を併用する場合は、CYP2D6への作用の少ない薬剤を選択すべきである」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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