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感染症学会ほか、コロナワクチン「高齢者の定期接種を強く推奨」

 日本感染症学会、日本呼吸器学会、日本ワクチン学会の3学会は、10月21日に「2024年新型コロナワクチン定期接種に関する見解」を共同で発表した。3学会は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の高齢者における重症化・死亡リスクはインフルエンザより高く、今冬の流行に備えて、10月から始まった新型コロナワクチンの定期接種を強く推奨している。本見解は、接種を検討する際の参考となる科学的根拠を提供している。 学会の見解によると、新型コロナワクチンは、世界では2020年12月からの1年間にCOVID-19による死亡を1,440万例防ぎ1)、日本では、もし新型コロナワクチンが導入されていなかったら、2021年2~11月の期間の感染者数は報告数の13.5倍、死亡者数は36.4倍に及んでいたと推定されている2)。また、2023年秋のXBB.1.5対応ワクチンは、日本の高齢者のCOVID-19による入院を44.7%減少させた3)ことが、過去の研究より判明している。 オミクロン株はXBB.1.5、JN.1、KP.3と数ヵ月ごとに変異し、変異のたびに免疫回避力が強まっている。そのため流行を繰り返しており、今冬には再び大きな流行が予想される。このような中、日本の高齢者は若年層に比べてCOVID-19に罹ったことのない人が多く、引き続きワクチンによる免疫の獲得が重要となる。高齢者のCOVID-19の重症化・死亡リスクはインフルエンザ以上 2024年の流行では、高齢者のCOVID-19による入院が増え、高齢者施設の集団感染も続いている。国の死亡統計では、5類感染症移行後1年間のCOVID-19による死亡者数は2万9,336例で、新型コロナ出現前の60歳以上のインフルエンザ年間死亡者数1万908例より多く4)、COVID-19の疾病負荷は依然として大きい状況だ。 新型コロナワクチンの発症予防効果は、ウイルスの変異の影響もあり、数ヵ月で減衰するため、流行株に対応した新たなワクチンの接種が必要となる。日本では、2024年10月からJN.1対応ワクチンが新たに使用されている。なお、現在流行しているKP.3はJN.1の派生株で、JN.1対応ワクチンはKP.3に対しても一定の効果が期待される。 毎シーズン変異を繰り返すインフルエンザウイルスに対して、毎年新しいインフルエンザワクチンが高齢者に定期接種として使用されているように、新型コロナウイルスに対しても新たな流行株に対応した新型コロナワクチンを少なくとも年に1回は接種することが必要であるという。3学会は、高齢者には新型コロナワクチンの定期接種を強く推奨している。ワクチンの利益とリスクの大きさを科学に基づいて正しく比較し、接種対象者自身が信頼できる医療従事者とよく相談して、接種するかどうかを判断することが望まれるという見解を示している。5種類のJN.1対応ワクチン、有効性・安全性のエビデンスを明記 定期接種として用いられるJN.1対応ワクチンは、ファイザーの「コミナティ筋注シリンジ12歳以上用」、モデルナの「スパイクバックス筋注」、武田薬品工業の「ヌバキソビッド筋注」、第一三共の「ダイチロナ筋注」、Meiji Seika ファルマの「コスタイベ筋注用」の5種類だ。いずれも有効な免疫誘導と安全性が臨床試験で確認されている。これらのワクチンはすべて一過性の副反応があるが、臨床試験ではワクチンと関連した重篤な健康被害は認められなかった。本見解には、各ワクチンの詳細なデータが記載されている。 なお、Meiji Seika ファルマのレプリコンタイプ(自己増幅型)の次世代mRNAワクチンである「コスタイベ筋注用」については、SNSなどで科学的根拠に基づかない情報が流布し、一部の人から強い懸念の声が挙がっている。この状況に対して本見解では、「自己増幅されるのはスパイクタンパク質のmRNAだけであり、感染力のあるウイルスや複製可能なベクターはコスタイベに含まれていません。また、被接種者が周囲の人に感染させるリスク(シェディング)はありません」と、安全性を裏付けるデータとともに提示している。■参考日本感染症学会、日本呼吸器学会、日本ワクチン学会:2024年度の新型コロナワクチン定期接種に関する見解日本感染症学会、日本呼吸器学会、日本ワクチン学会:2024年度の新型コロナワクチン定期接種に関する見解(概要版)1)Watson OJ, et al. Lancet Infect Dis. 2022;22:1293-1302.2)Kayano T, et al. Sci Rep. 2023;13:17762.3)長崎大学熱帯医学研究所. 新型コロナワクチンの有効性に関する研究(VERSUS study)〜国内多施設共同症例対照研究〜. 第11報.4)Noda T, et al. Ann Clin Epidemiol. 2022;4:129-132.

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GLP-1受容体作動薬が消化管の内視鏡検査に影響か

 上部消化管内視鏡検査(以下、胃カメラ)や大腸内視鏡検査では、患者の胃の中に食べ物が残っていたり腸の中に便が残っていたりすると、医師が首尾よく検査を進められなくなる可能性がある。新たな研究で、患者がオゼンピックやウゴービといった人気の新規肥満症治療薬(GLP-1受容体作動薬)を使用している場合、このような事態に陥る可能性の高くなることが明らかになった。米シダーズ・サイナイ病院の内分泌学者で消化器研究者のRuchi Mathur氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に10月1日掲載された。 GLP-1受容体作動薬には胃残留物の排出を遅延させる作用があり、便秘を引き起こすこともある。このため、この薬の使用者では、全身麻酔を必要とする処置を受ける際に食べ物を「誤嚥」するリスクが増加する可能性のあることが指摘されている。Mathur氏らは、GLP-1受容体作動薬使用者では消化管に残留物が見られることがあり、それが内視鏡検査で鮮明な画像を得る上で障害になる可能性があると考えた。 そこでMathur氏らは、2023年1月1日から6月28日の間に胃カメラか大腸内視鏡検査、またはその両方を受けた過体重または肥満の患者209人のデータを後ろ向きに解析した。209人中70人がGLP-1受容体作動薬使用者(GLP-1群、平均年齢62.7歳、女性36人)、残りの139人は非使用者(対照群、平均年齢62.7歳、女性36人)であった。胃カメラのみを受けたのはGLP-1群23人、対照群46人、大腸内視鏡検査のみを受けたのはGLP-1群23人、対照群45人、両方の検査を受けたのはGLP-1群24人、対照群48人だった。 胃カメラのみを受けた対象者のうち胃残留物が認められた者の割合は、GLP-1群で17.4%(4人)であった。これに対し、対照群と、胃カメラと大腸内視鏡検査の両方を受けた患者で、胃残留物が認められた対象者はいなかった。 また、大腸内視鏡検査または胃カメラと大腸内視鏡検査の両方を受けた患者のうち、「腸管の準備が不十分」(便が残存しているなど腸管洗浄が不十分な状態)であった者の割合は、GLP-1群で21.3%(10/47人)に上ったのに対し、対照群では6.5%(6/93人)であった。 ただし、研究グループは良い知らせとして、GLP-1受容体作動薬使用の有無に関係なく、対象患者において誤嚥、呼吸困難、誤嚥性肺炎は発生しなかったことを挙げている。 それでも研究グループは、「胃や腸に食物や便が残留するリスクの上昇は憂慮すべきことだ」と注意を促す。なぜなら、そのような状態での内視鏡検査は、「病変の見逃しや患者の不満、処置のキャンセル、医療資源の浪費といった重大なリスク」をもたらすからだという。 研究グループは、「本研究結果は、内視鏡検査前のGLP-1受容体作動薬の使用に関するガイドラインの更新が必要かどうかを判断するために、さらなる研究が必要であることを示唆するものだ」との見方を示している。

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脳刺激療法で頭部外傷後の手や腕の機能が回復か

 脳卒中や外傷性脳損傷(TBI)で手や腕の機能を失った患者に対し、脳深部刺激療法(DBS)を施行することで一部の機能が回復する可能性のあることが、米ピッツバーグ大学物理療法学助教のElvira Pirondini氏らの研究で示された。この研究結果は、「Nature Communications」に10月1日掲載された。 DBSは、手術で脳に電極を植え込み、特定の活動を制御している脳領域に電気信号を送って刺激を与える治療法で、パーキンソン病による運動障害の治療目的で施行されることが多い。Pirondini氏は、「腕や手の麻痺は、世界の何百万人もの人々の生活の質(QOL)に大きな影響を与えている。現在、脳卒中やTBIを経験した患者に対する効果的な解決策はないが、脳を刺激して上肢の運動機能を改善するニューロテクノロジーへの関心が高まりつつある」と説明する。 脳損傷は、随意運動の制御に不可欠な脳領域である運動皮質と筋肉との間の神経接続を障害する可能性がある。これらの接続が弱まると、筋肉の効果的な活性化が妨げられ、腕や手の部分麻痺や完全麻痺などの運動障害が生じる。研究グループは、弱まった神経の接続を活性化させるためにはDBSが有効ではないかと考えた。DBSは、過去数十年にわたり、パーキンソン病などの神経疾患の治療に革命をもたらしてきた。 Pirondini氏らは、脳卒中患者の腕の機能を回復するために脊髄の電気刺激を使用して成功したピッツバーグ大学の別のプロジェクトからヒントを得て、運動制御の重要な中継ハブとして機能する運動性視床核と呼ばれる部分をDBSで刺激すると、物をつかむなど日常生活に不可欠な動作を回復できるのではないかとの仮説を立てた。 ただ、この脳領域へのDBSが実際に行われたことがなかったため、まずサルにDBSを施行する実験を行った。サルは人間と同様に、運動皮質と筋肉が神経経路を通じて連携しているため、実験対象として適当と考えられたのだという。その結果、刺激を加え始めるとすぐにサルの筋肉の活動性と握力が著しく改善することが確認された。不随意運動は認められなかった。 そこで、両腕に高度の麻痺をもたらした脳損傷に起因する腕の震えを改善する目的で、DBSの植え込み手術を予定していた人間のボランティアを対象に、サルの実験のときと同じ設定でDBSを行った。その結果、研究参加者にDBSの刺激を加えると、コップを取ろうと手を伸ばす、つかむ、持ち上げるといった動作を、刺激を加えなかった場合よりも効率的かつスムーズに行えるようになることが示され、人間でもDBSにより運動の範囲や強度が改善することが確認された。 論文の共著者でピッツバーグ大学てんかん・運動障害プログラムのJorge Gonzalez-Martinez氏は、「DBSは多くの患者にとって人生を変える治療法となってきた。DBSは世界中の数百万人もの人々に新たな希望を与える治療法だ」と同大学のニュースリリースの中で述べている。 Gonzalez-Martinez氏らの研究グループは現在、DBSの長期的な効果を検証し、刺激を継続することでTBIまたは脳卒中の患者の腕や手の機能をさらに改善できるかどうかを確かめるための研究を行っている。

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英語で「異なるケアレベルに移行する」は?【1分★医療英語】第153回

第153回 英語で「異なるケアレベルに移行する」は?《例文1》The patient has stabilized, so we are transitioning him to an alternate level of care.(患者の状態が安定したので、異なるケアレベルに移行します)《例文2》We need to discuss an ALOC option for Mrs. Johnson as she no longer requires acute hospital care.(ジョンソン夫人はもはや急性期の入院治療を必要としないので、ALOCの選択肢について話し合う必要があります)《解説》“We are transitioning him/her to an alternate level of care.”という表現は、患者のケアレベルを変更する際に使用される医療用語です。この文脈での“alternate level of care”とは、「現在の治療レベルとは異なる、より適切なケアレベルへの移行」を意味します。急性期病院でこの言葉を使う場合は、「患者が安定し、急性期治療が必要な状態を脱したために退院を待つフェーズに入った」ことを意味します。“alternate level of care”は略して“ALOC”とも呼ばれます。この概念は、患者の医療ニーズに適したケアを提供し、医療資源を効率的に利用するために、病院システム内で患者のケアレベルを適切に変更することを目的としています。“ALOC”は、急性期病院から亜急性期施設、リハビリテーション施設、長期療養型施設、在宅ケアなど、さまざまなレベルのケアへの変更を意味する可能性がありますが、一般的には急性期病院内で退院待機の間にケアのレベルを下げ、1日おきに診療するようなレベルへの変更を意図する際に用いられます。日本ではあまりなじみがないものかもしれません。医療現場では、患者の状態や利用可能な医療資源に応じて、適切なケアレベルを選択することが重要です。“alternate level of care”や“ALOC”を適切に使用することで、より効果的な患者ケアとリソース管理が可能になります。米国の臨床現場ではよく耳にする言葉として紹介しました。講師紹介

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第237回 血糖値に応じて働くか休む“スマート”インスリンを開発

血糖値に応じて働くか休む“スマート”インスリンを開発血中のブドウ糖濃度(血糖値)に応じて自ずと働くか休む賢いインスリンをNovo Nordiskの研究チームが開発し、低血糖を引き起こすことなく血糖値をほどよく下げうることがブタへの投与実験で確認されました1)。低血糖は糖尿病のイスリン治療の難題の1つです。ひとたび投与したインスリンはたとえ血糖値が正常化しても働き続け、血糖値を危険水準まで下げてしまう恐れがあります。それゆえインスリン投与量は血糖値を正常域にする範囲を超えないように調節する必要があります。しかし絶えず変化する血糖値にインスリン用量を合わせるのは難儀で、必要量よりちょっとばかり多めに投与しただけで低血糖が生じる恐れがあります。低血糖は軽~中等度でも不安、脱力、混乱などを招き、ひどければ意識消失や発作などの重症症状を引き起こし、最悪の場合死に至りさえします。低血糖を避けるために多くの糖尿病患者はインスリン用量を控えめにします。そうすると今度は血糖値が十分に下がらず、高血糖が続くことに起因する合併症が生じ易くなります。“素”のインスリンを使うのではなく、血糖値の変化に応じる仕組みを備えたインスリン治療なら低血糖の心配なく血糖値をよい頃合いに保てそうです。そのような付加価値付きのインスリンを作る試みは結構長い歴史があり、1970年代から続いています1)。血糖値上昇に応じてインスリンを放出する皮下投与ポリマーの開発がそういう取り組みのこれまでの主流でした。しかし糖が皮下に行き着くまでや皮下から血中へのインスリンの到達はより時間を要し、時宜にかなわないという欠点があります。それに、インスリンは皮下から一方的に放出されるのみで、ひとたび放出されたインスリンはもはや糖に応じることはなく働き続けるのみです。そこでNovo Nordiskはインスリンの放出をどうにかするのではなく、ブドウ糖に反応する仕組みを備えた賢いインスリンの開発に取り組み、その有望な成果を先週16日のNature誌の報告で披露しました。Novo Nordiskが開発した賢いインスリンはNNC2215と呼ばれ、血糖値に応じて働くか休むかが切り替わります。その切り替え機能はインスリン本体の両端についた2つの分子が担います。その1つはブドウ糖から生じる分子・グルコシドです。もう1つは大環状分子(macrocycle)で、その名のとおりいわばドーナツに似た環状構造をしています。血糖値が低いとグルコシドが大環状分子に収まってインスリンを不活性な状態に保ちます。一方、血糖値が高いとグルコシドではなくブドウ糖が大環状分子に収まり、インスリンは開放状態となって働けるようになります。ブタやラットで調べたところNNC2215の血糖値を下げる効果が認められました。特筆すべきことにブタへの投与実験では目下のインスリン治療で生じるような低血糖をどうやら生じずに済むらしいことが示されました。ただし、検討されたのは糖尿病患者の典型的な血糖値より広いブドウ糖濃度範囲でのNNC2215の活性です2)。今後の課題としてより狭い濃度範囲でのNNC2215の働きを調べる必要があります。また、安全性の検討も必要ですし、実用化されたとしてどれくらいの値段になるかも気になるところです。NNC2215の想定どおりの働きが示されて一安心とはいえまだ先は長く、Novo NordiskはNNC2215の最適化に取り組んでいます2)。参考1)Hoeg-Jensen T, et al. Nature. 2024 October 16. [Epub ahead of print]2)Smart insulin switches itself off in response to low blood sugar / Nature

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インフルワクチンの日本人の心不全に対する影響~PARALLEL-HF試験サブ解析/日本心不全学会

 呼吸器感染症に代表されるインフルエンザ感染は、心筋へウイルスが移行する直接作用、炎症惹起性サイトカイン放出による全身反応などによって心血管障害を及ぼす。また、プラークの不安定化、炎症による心拍数の不安定化への影響なども報告されているが、海外研究であるPARADIGM-HF試験1)が検証したところによると、インフルエンザワクチン接種が心不全患者の死亡リスク低下と関連する可能性を示唆している。 そこで筒井 裕之氏(国際医療福祉大学大学院 副大学院長)らはPARADIGM-HF試験に準じて行われた国内でのPARALLEL-HF試験2)の後付けサブ解析として『国内心不全患者のインフルエンザワクチン接種と心血管イベントの関連性』について検証、10月4~6日に開催された第28回日本心不全学会学術集会のLate breaking sessionで報告した。なお、本研究はCirculation reports誌2024年9月10日号に掲載3)された。 本研究は、日本国内の左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)に対するサクビトリルバルサルタンの臨床試験であるPARALLEL-HF試験に登録された患者について、インフルエンザワクチンの接種率ならびに心血管イベントとの関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者223例のうち97例(43%)がインフルエンザワクチン接種を受けていた。・ワクチン接種群を非接種群と比較した場合の特徴として、高齢、BMI・収縮期血圧・eGFR低値があった。また、NYHA、LVEF、NT-proBNP、薬物治療について有意差はみられなかった。・ワクチン接種群の全死亡(調整ハザード比[HR])は0.83(95%信頼区間[CI]:0.41~1.68)、心肺またはインフルエンザに関連した入院/死亡は調整HRが0.80(95%CI:0.52~1.22)と低い傾向がみられた。・研究限界として、解析対象者が少数、ワクチン接種と予後との関連を解析している、ワクチンの詳細情報(種類、接種回数など)不十分などがあった。 日米欧の各診療ガイドラインでは“肺炎は心不全の増悪因子の1つ”と記されており、「日本国内では感染予防のため(クラスI、エビデンスレベルA)、米国では死亡率低下のためにreasonableである(クラスIIa、エビデンスレベルB)、欧州では心不全死亡低下のために[肺炎球菌ワクチンなども含めて]should be considered(クラスIIa、エビデンスレベルB)と推奨が記されている。接種目的は各国で異なるが欧米諸国の接種率は高い」と説明した。日本における心不全患者のインフルエンザワクチン接種率は国内の全体接種率が55.7%であることを見ても、低い傾向にあることが本研究より明らかになった。これを踏まえ、同氏は「本結果は海外のPARADIGM-HF試験のサブ解析と同様の結果を示した。現在、国内のHFrEF患者のインフルエンザワクチン接種率は不十分であるが、ワクチン接種による臨床的利益が期待できることが示された」と述べ、「ワクチン接種を推奨する医療の役割分担が不明瞭(かかりつけ医/一般内科/循環器専門医、クリニック/病院などの連携の必要性)、副反応による懸念、広報が不十分などの解決が喫緊の課題」と締めくくった。

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子供がコロナで入院すると子供も親も精神衛生に影響/国立成育医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連するスティグマは、抑うつ、不安、孤独感などの心身の苦痛を引き起こすことが世界的な問題となっている。しかし、COVID-19のスティグマと、それに関連する子供や親のメンタルヘルスへの影響を調査した研究はほとんどないのが現状である。 国立成育医療研究センター総合診療部の飯島 弘之氏らの研究グループは、COVID-19に感染した子供とその親に対して、COVID-19に関わるスティグマ(患者に対する「差別」や「偏見」)と、メンタルヘルスへの影響について調査を実施した。その結果、主観的スティグマがある子供と推定スティグマがある親は、1ヵ月後もメンタルヘルスにネガティブな影響がみられた。本研究結果は、Pediatrics International誌2024年1~12月号に掲載された。COVID-19に感染した親子は1ヵ月後も精神衛生に影響 対象は2021年11月~2022年10月までにCOVID-19に感染し、国立成育医療研究センターに入院した4~17歳の子供および0~17歳の子供の親。COVID-19に関わるスティグマとメンタルヘルス(抑うつ、不安、孤独感)に関する質問票調査を実施した。 対象者は47例の子供と111例の親で、そのうち入院中の調査では子供43例(91%)と親109例(98%)が質問票に回答し、1ヵ月後の追跡調査では、それぞれ38例(81%)と105例(95%)が回答した。 スティグマについては、隠ぺいスティグマ(ここでは覆い隠すことによって偏見や差別を回避しようとするスティグマのことを指す)と回避スティグマ(ここでは個人や集団が感染を回避しようとするスティグマのことを指す)についてそれぞれに、主観的スティグマと推定スティグマを確認するアプローチを採用した。メンタルヘルスを評価する質問として、抑うつ、不安、孤独について調査した。 主な結果は以下のとおり。【スティグマの保有】・入院中の調査では、COVID-19に感染した子供の79%、親の68%が高スティグマに該当し、1ヵ月後の調査でも、子供の66%、親の64%が高スティグマに該当していた。・推定スティグマの方が、主観的スティグマよりも、高スティグマグループの割合が高くなっていた。【メンタルヘルスへの影響】・子供の抑うつと孤独感、親の抑うつと不安は、いずれも、入院中と比べ、1ヵ月後の追跡調査で有意に低下していた。しかし、次のとおり、主観的スティグマがある子供と推定スティグマがある親においては、1ヵ月後においても、メンタルヘルスにネガティブな影響がみられた。(1)子供のスティグマと孤独感・抑うつとの関係・子供の主観的スティグマは、入院中の孤独感(平均差[MD]:2.32、95%信頼区間[CI]:0.11~4.52)と1ヵ月後の追跡調査での抑うつ(MD:2.44、95%CI:0.40~4.48)と関連していた。・推定スティグマは、メンタルヘルスとの間に有意な関係はみられなかった。(2)親のスティグマと抑うつ・不安・孤独感との関係・親の推定スティグマは、1ヵ月後の追跡調査で抑うつ、不安、孤独感と関連していた(MD:2.24[95%CI:0.58~3.89]、1.68[0.11~3.25]、1.15[0.08~2.21])。・主観的スティグマとメンタルヘルスとの間に有意な関係はみられなかった。 研究グループは、これらの調査結果から、「COVID-19に関連するスティグマは、退院後1ヵ月以上にわたって精神衛生に影響を及ぼし続けること、スティグマが精神衛生に与える影響は子供と親で異なることが示された」と結論付けている。

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1次予防のICD装着患者に抗頻拍ペーシングは有効/JAMA

 近年、植込み型除細動器(ICD)の新たなプログラミング・ガイドラインが策定され、ICDの新技術の開発が進んでいるため、1次予防のICD装着患者における心室頻拍(VT)を停止させる方法としての抗頻拍ペーシング(ATP)の再評価が求められている。米国・ロチェスター大学のClaudio Schuger氏らAPPRAISE ATP Investigatorsは「APPRAISE ATP試験」において、1次予防として最新の不整脈検出プログラムを使用したICDを装着した患者では、電気ショックによる治療のみを行う方法と比較してショック作動の前にATPを1回行うアプローチは、全原因による初回ショック作動までの時間の相対リスクを有意に減少させ、適切なショック作動や不適切なショック作動が発生するまでの時間を改善することを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年10月3日号に掲載された。VT停止におけるATPの役割を評価する国際的な無作為化試験 APPRAISE ATP試験は、1次予防のICD装着患者において、最新のプログラムを用いてfast VTを停止させる際のATPの役割の評価を目的とする二重盲検無作為化臨床試験であり、2016年9月~2021年4月に北米、欧州、アジアの8ヵ国(日本を含む)の134施設で参加者を登録した(Boston Scientific Corporationの助成を受けた)。 対象は、年齢21歳以上、左室駆出率が35%以下であるため1次予防としてのICDが適応となる患者であった。被験者を、ATP+ショックを受ける群またはショックのみを受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、全原因によるショックが最初に作動するまでの時間とした。副次エンドポイントは、適切なショック(VTまたはVF[心室細動]に対して行われたショック)が最初に作動するまでの時間、不適切なショック(VT、VF以外のリズムに対して行われたショック)が最初に作動するまでの時間、全死因死亡、全原因によるショックが最初に作動するまでの時間と全死因死亡の複合であった。 本試験は、相対的マージンを35%とした同等性デザインで行われ、中間解析および同等性が証明されなかった場合の最終解析で優越性を評価した。ATP+ショック群の優越性を確認 2,595例(平均年齢63.9歳、女性22.4%)を登録し、1,302例をATP+ショック群に、1,293例をショック単独群に割り付けた。追跡期間中央値は、ATP+ショック群が38ヵ月、ショック単独群は41ヵ月だった。全体で644例が試験を完了せずに脱落した。 全原因によるショック作動は、ATP+ショック群で129例、ショック単独群で178例に発生し、Kaplan-Meier法による60ヵ月時の累積発生率の推定値は、それぞれ14.6%および19.4%であった。主要エンドポイントのハザード比(HR)は0.72(95.9%信頼区間[CI]:0.57~0.92)であり、同等性は確認されなかった。優越性解析では、ATP+ショック群のショック単独群に対する優越性が示された(p=0.005)。総ショック負荷には有意差がない 適切なショック(HR:0.73、95%CI:0.56~0.95)および不適切なショック(0.65、0.44~0.97)が最初に作動するまでの時間は、いずれもショック単独群に比べATP+ショック群でリスクが低かった。また、全死因死亡(1.15、0.94~1.41)および全原因によるショックが最初に作動するまでの時間と全死因死亡の複合(0.92、0.78~1.07)は、両群間に差を認めなかった。 ITT解析では、追跡期間中の100人年当たりの総ショック負荷は、ATP+ショック群が12.3、ショック単独群は14.9であり、両群間に統計学的な有意差はなかった(p=0.70)。 著者は、「ショック作動前に1回のATPを追加することにより、追跡期間中のショック負荷は改善しないものの、全原因によるICDのショック作動までの時間が有意に延長したため、1次予防のICD装着患者における第1選択の治療法として有効と考えられる」「これらのデータは、ATPは全原因によるショック作動の年間1%の絶対的減少をもたらすことを示しており、1次予防コホートにおいてICD器機を選択するための共同意思決定の際に考慮すべきである」としている。

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心血管疾患リスクの予測にはBMIよりも体丸み指数が有用

 過体重が人の心臓の健康に与える影響を予測する上では、「体丸み指数(body roundness index;BRI)」の方がBMIよりも優れた指標である可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。6年にわたって継続的にBRIが高かった人では低かった人に比べて、心血管疾患(CVD)リスクが163%高いことが示されたという。南京医科大学(中国)Wuxi Center for Disease Control and PreventionのYun Qian氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American Heart Association」に9月25日掲載された。 2013年に提唱されたBRIは、ウエスト周囲径と身長を基に算出する腹部肥満の指標で、BMIやウエスト周囲径などよりも体脂肪や内臓脂肪の割合を正確に反映すると考えられている。一方、従来から使われているBMIは体重と身長のみから算出する。そのため、筋肉量が非常に多い人では値が高くなることもあり、肥満度の指標としては不正確だとして批判されることもある。 この研究では、CHARLS(中国の健康と退職に関する長期研究)の参加者9,935人を対象に、2011年から2016年の間のBRIの推移と2017年から2020年の間のCVD発症(脳卒中、心臓イベント)との関連を調査した。参加者の平均年齢は58.85±9.09歳で、男性5,263人、女性4,672人だった。2011年から2016年の間のBRIの推移に基づき、参加者を、低いBRIを維持していた群(低BRI群)、中程度の高さのBRIを維持していた群(中BRI群)、高いBRIを維持していた群(高BRI群)の3群に分類した。 その結果、低BRI群に比べて中BRI群と高BRI群ではCVDリスクがそれぞれ61%(ハザード比1.61、95%信頼区間1.47〜1.76)と163%(同2.63、2.25〜3.07)有意に上昇することが示された。このような有意なリスク上昇は、参加者の人口統計学的属性や病歴、血圧などの健康指標等を調整した後も認められた(ハザード比は同順で、1.22〔95%信頼区間1.09〜1.37〕、1.55〔同1.26〜1.90〕)。 こうした結果を受けてQian氏は、「われわれの研究により、BRIが6年間、中程度以上のレベルであった場合、CVDリスクが上昇する可能性のあることが示された。これは、BRIの値をCVD発症の予測因子として使用できる可能性があることを示唆している」と話す。同氏はさらに、「この結果は、肥満と高血圧、高コレステロール、2型糖尿病の相関関係によって説明できる。これらは全て、CVDのリスク因子だ。肥満は、心臓や心機能に影響を及ぼす可能性のある炎症やその他のメカニズムを引き起こすことも分かっている。本研究結果がCVDの予防にどのように応用できるかを確認し、完全に理解するには、さらなる研究が必要だ」と述べている。

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医師向けマーケティングサービス

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患者と家族の要望が対立―どのように治療方針を決める?【こんなときどうする?高齢者診療】第6回

CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン」で2024年9月に扱ったテーマ「意思決定に関わる”もやもや“とどう付き合う?」から、高齢者診療に役立つトピックをお届けします。高齢者診療では、積極的治療の差し控えや中止といった選択を迫られる場面が必ず訪れます。そのような厳しい決断に直面する中で、「これでよかったのだろうか?」と、言葉にできない感情を抱えた経験は誰しもが持つものだと思います。こうした状況で、患者や家族と共に最良の選択を見つけるために、老年医学の型「5つのM」の4つめ「Matters Most大切なこと」を扱います。75歳女性。進行性の大腸がんで在宅療養中。訪問診療と在宅看護で定期的なケアを行っている。疼痛や呼吸苦などの症状が悪化してきているが、本人は可能な限り自宅での生活を希望している。しかし夫を含めた家族は、ケア負担が増加していることや、夫自身の体調に不安が出始めていることを理由に、患者の施設入所を検討したいと考えている。このケースのように、患者の病状と家族のケアキャパシティ(ケア・介護能力や体力・精神的余裕)が同時に変化している状況で、患者と家族の希望が異なることは珍しくありません。どのように落としどころを見つけるのか見ていきましょう。事前指示では不十分!ACPの本当の意味―たとえば「何かあったときに挿管はしないでください」といった事前指示だけでは、いざその場に立ち合ったときに「これでよかったのか?」と悩むことになるかもしれません。なぜなら、事前指示をした時点と実際に決断をする時点では、患者や家族の状況が変わっていることが多いからです。医療・ケアの現場で本当に求められるのは、予後を予想し、情報を共有しながら患者・家族の価値観を掘り下げ、ケアプランを患者と医療者が協力して紡いでいくACP(アドバンスドケアプランニング)です。このACPの目的は、患者が希望することの背景にある価値観を知ること。価値観を知ることが、状況が変わった場合でも患者の意図に沿った支援を提供するための基盤となります。事前指示そのものが「ダメ」なのではなく、それだけでは不十分であるという点を押さえておきましょう。ACPが勧められる3つのシチュエーションACPの時間を持つことを勧めるタイミングはおもに3つあります。まずは患者が健康なとき、次に重大な病にかかった際、そして予後が短いと感じたときです。まず、患者が健康なときを考えてみましょう。この時期は、患者と家族が時間に追われることなく価値観を共有し始めるよいタイミングです。また、患者自身が判断できなくなった場合に誰に代わりに判断してほしいかをあらかじめ考えておくと、後の話し合いも円滑に進められます。次に、命にかかわる疾患に罹患し、それが進行している段階です。この段階では、将来の選択肢について具体的に話し合い、患者の価値観を再確認することが重要です。最後に余命1年以内と予想される場合。この時期は、患者がこれからどのようなケアや治療を望むのか、再度価値観を明確にするのに適したタイミングです。こうしたタイミングで役立つコミュニケーションの型はいくつかありますが、今回のケースのように状況が変化したときにおすすめのものをひとつご紹介します。協働意思決定の型―REMAPたとえば、ステージIのがんに転移が見つかりステージIVと診断し直されたとします。つまり完治の可能性がなくなるという事実です。完治する見込みだったものが完治しないとわかったとき、病状を「完治する」から「完治しない」という新しい枠組みで捉え直すことが必要です。この変化を関係者全員が共有できていないと、患者が大切にしたいことや治療に求めることを正確に理解することができないからです。REMAPは前提条件が変わったときに、新しい枠組みで捉えなおすことを助けるフレーム。これを使うと、状況の変化によって新しく生じた患者・家族の「大切なこと」を理解し、それに沿った治療やケアの提案することができるようになります。具体的な手順をみていきましょう。(1)Reframe状況の変化を伝える(2)Expect emotion感情に対応する(3)Map重要な価値観を掘り下げる(4)Align価値観に基づいた治療ゴールの確認(5)Plan具体的な治療計画を立てるまず、Reframeで状況の変化を伝えます。これには、ニュースのヘッドラインのようにシンプルで的確な一文を使うと効果的です。状況が変われば、患者に必ず感情が伴います。この感情に対応するために、NURSE1)などの手法を使って感情に寄り添い、サポートします。医療者は正しい医学的情報を伝えれば患者に十分伝わると誤解しがちですが、感情に寄り添わないと、どんなに正確な情報でも患者には届きません。感情に対応するExpect emotionは、とても大切なプロセスです。次にMapの段階で患者の価値観を探ります。たとえば予後が3年から3ヵ月になった場合、やりたいこと、会いたい人、時間の使い方などが変わることがあります。新しい状況で新たに気付いた価値観を丁寧に引き出します。そして、その価値観をもとに治療の提案をするAlignを行い、最後にPlanで具体的な治療計画を立てます。今回のケースでは、もともと「可能な限り痛みを管理しながら自宅で過ごす」という当初の計画から、家族の負担が増し「自宅での生活が難しくなるかもしれない」という状況に変わりました。この状況の変更を伝えた後、患者にはさまざまな感情が生じるでしょう。その際、感情に寄り添うことで、患者が感じている不安や葛藤に共感しやすくなり、価値観を丁寧に引き出すことができるようになるでしょう。それに基づいた治療やケアの提案をすることが重要です。事前にExpect EmotionやMapのプロセスを想像しておくことで、患者や家族との話し合いによりよい準備をもって臨むことで、さらによい支援が可能となります。ぜひ皆さんの現場でも役立ててみてください! オンラインサロンではもやもや症例検討会を実施オンラインセッションでは、メンバーが体験した意思決定に関するもやもや症例を取り上げています。人工透析を拒否していた患者が専門病院入院を機に透析を導入して帰ってきたケース、認知症が進行して本人の希望とは異なる施設入所に至ったケース。それぞれでもやもやしたポイント、専門医とジェネラリストの思考パターンの違いなど、意思決定に関するさまざまなトピックをお話いただいています。参考1)樋口雅也ほか.あめいろぐ高齢者診療. 181-182.2020. 丸善出版

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医師国家試験、不合格となる学生の特徴は?

 岐阜大学医学部医学科の学生を対象として、医師国家試験に不合格となる学生の特徴を検討する研究が実施された。本研究の結果が、塩入 俊樹氏(岐阜大学大学院医学系研究科 脳神経科学講座 精神医学分野)らによって、BMC Medical Education誌2024年8月27日号で報告された。 本研究では、2012~18年に岐阜大学医学部医学科に入学した学生637人を対象として、入学時と1、2、4、6年次の5つの時点のデータを収集した。データには、大学入学前の情報(性別、年齢、出身高等学校の所在地、成績など)および大学在学中の成績(基礎医学、臨床医学、CBT-IRT、卒業試験の成績など)が含まれた。これらのデータを用いて、ロジスティック回帰分析を実施し、医師国家試験の予測合格率を算出した。 主な結果は以下のとおり。・不合格となる学生が多かった因子は以下のとおりであった。【大学入学前の因子】 男性、入学時の年齢が高い、高等学校の所在地が岐阜県・愛知県以外、高等学校のGPAが低い、センター試験(現:共通テスト)の点数が低い【大学入学後の因子】 基礎医学の成績が低い、臨床医学の成績が低い、CBT-IRTの成績が低い、Pre-CC OSCEの成績が低い、クリニカルクラークシップの成績が低い、留年経験あり・ロジスティック回帰分析において、合格者と不合格者の間で有意差が認められた因子は以下のとおりであった。【入学時】 入学時の年齢、高等学校の所在地【1年次終了時】 入学時の年齢、高等学校の所在地、基礎科学の成績【2年次終了時】 入学時の年齢、高等学校の所在地、基礎医学の成績【4年次終了時】 入学時の年齢、高等学校の所在地、CBT-IRTの成績、Pre-CC OSCEの成績【6年次終了時】 入学時の年齢、高等学校の所在地、CBT-IRTの成績、Pre-CC OSCEの成績、卒業試験の成績、クリニカルクラークシップの成績・ロジスティック回帰分析により予測合格率を推定し、学生を高リスク群(予測合格率95%未満)と低リスク群(予測合格率95%以上)に分類した。その結果、医師国家試験合格率は、6年次終了時に低リスク群に分類された学生が99.2%であったのに対し、高リスク群では64.4%であった。 本研究結果について、著者らは「多変量解析に基づくリスク分析は、模擬試験の成績などの単変量解析に基づくリスク分析よりも、より効果的な対策を行うための情報を提供することが可能である。不合格となることを防ぐため、早急に具体的な対策(再履修など)を講じる必要がある」とまとめた。

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膀胱がんの拡大リンパ郭清、周術期の合併症・死亡増(SWOG S1011)/NEJM

 膀胱全摘除術を受ける限局性筋層浸潤性膀胱がん患者において、拡大リンパ節郭清は標準的リンパ節郭清と比較して、無病生存期間(DFS)および全生存期間(OS)を延長しないばかりか、高率の周術期合併症および死亡の発生が認められた。米国・ベイラー医科大学医療センターのSeth P. Lerner氏らSWOG S1011 Trial Investigatorsが第III相多施設共同無作為化試験「SWOG S1011試験」の結果を報告した。NEJM誌2024年10月2日号掲載の報告。主要評価項目はDFS 研究グループは、臨床病期T2(筋層に限局)~T4a(隣接臓器に浸潤)、リンパ節転移は2個以下(N0、N1、N2)の限局性筋層浸潤性膀胱がん患者を、両側標準リンパ節郭清術(両側骨盤内のリンパ節郭清)または拡大リンパ節郭清術(総腸骨リンパ節、坐骨前リンパ節、仙骨前リンパ節の切除を含む)を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 無作為化は手術中に行われ、術前補助化学療法の内容、臨床病期(T2 vs.T3またはT4a)、Zubrod’s パフォーマンスステータススコア(0または1 vs.2[5ポイントスケールで評価、高スコアほど障害が重度であることを示す])で層別化した。 主要評価項目はDFSとし、OSおよび安全性も評価した。推定5年DFS率は56% vs.60% 2011年8月~2017年2月に658例が登録され、適格患者592例が拡大リンパ節郭清群(292例)または標準的リンパ節郭清群(300例)に無作為化された。被験者の大多数の病期がT2であり(各群71%)、組織学的サブタイプの混在が認められたのは13%。各群の被験者57%が術前補助化学療法既往であり、大多数(拡大リンパ節郭清群89%、標準的リンパ節郭清群86%)がシスプラチンベースの治療を受けていた。 手術は、米国とカナダの計27施設36人の外科医により行われた。 追跡期間中央値6.1年の時点で、再発または死亡は、拡大リンパ節郭清群で130例(45%)、標準的リンパ節郭清群で127例(42%)報告された。推定5年DFS率はそれぞれ56%、60%であった(再発または死亡のハザード比[HR]:1.10[95%信頼区間[CI]:0.86~1.40]、p=0.45)。 5年OS率は、拡大リンパ節郭清群59%、標準的リンパ節郭清群63%であった(死亡のHR:1.13[95%CI:0.88~1.45])。 Grade3~5の有害事象は、拡大リンパ節郭清群で157例(54%)、標準的リンパ節郭清群で132例(44%)発現した。術後90日以内の死亡は、それぞれ19例(7%)、7例(2%)であった。

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2型糖尿病患者のフレイルリスクに地域差

 高齢2型糖尿病患者のフレイルリスクが、居住地域によって異なるという実態が報告された。農村部では都市部よりリスクが高く、また農村部居住患者は手段的日常生活活動(IADL)と社会的日常生活活動(SADL)の低下も認められるという。香川大学医学部看護学科慢性期成人看護学の西村亜希子氏、京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻の原島伸一氏らによる論文が、「BMC Geriatrics」に8月17日掲載された。 糖尿病は、ストレス耐性が低下した状態であるフレイルのリスク因子であり、両者が併存する場合、身体障害や死亡のリスクがより上昇する可能性があるため、早期介入が特に重要と考えられる。また、フレイルリスクを高める因子として居住地域も該当し、都市部よりも農村部でリスクが高いことが示唆されている。ただし、糖尿病とフレイルの併発に居住地域の影響があるのかという点は未だ検討されていない。西村氏らは、糖尿病患者のフレイル予防に関する多機関共同研究(f-PPOD研究)のデータを用いた横断的解析により、この点を検討した。 f-PPOD研究は国内の糖尿病専門外来のある医療機関8施設が参加。分布の偏りを避けるために各施設の外来患者数の10%を上限として、2017年3月~2020年2月に患者登録が行われた。適格基準は、基本的な日常生活活動(ADL)に支障がなく、重度の糖尿病合併症や併存疾患、身体障害、精神疾患のない、60~80歳の2型糖尿病患者。フレイルの判定には介護予防・日常生活支援総合事業で使用されている「基本チェックリスト」を用い、スコア8点以上をフレイル、4~7点をプレフレイルとした。 解析対象は417人で、このうち64.5%が都市部(人口100万人以上の都市とそれに隣接する通勤圏内)、35.5%が農村部(前記以外の地域)に居住していた。両群を比較すると、都市部の患者の方が、高齢(70.6±5.5対69.0±5.2歳、P=0.003)でHbA1c高値(7.33±1.00対7.04±0.91%、P=0.003)であり、罹病期間が長かった(16.6±10.9対12.0±10.3年、P<0.001)。握力は農村部の患者の方が高かった(26.8±8.0対29.6±8.2kg、P=0.001)。性別の分布には有意差がなかった(女性の割合が48.0対43.2%、P=0.356)。 フレイルの該当者率は、都市部では18.6%、農村部では23.0%、プレフレイルは同順に37.5%、47.3%であり、農村部で高かった(P=0.018)。居住地域、年齢、性別、HbA1c、糖尿病罹病期間を説明変数とするロジスティック回帰分析の結果、農村部への居住(オッズ比〔OR〕2.554〔95%信頼区間1.384~4.711〕)とHbA1c値(OR1.453〔同1.095~1.926〕)の二つが、フレイルに独立して関連のある因子として抽出された。また、プレフレイルに独立した関連のある因子は、農村部への居住(OR2.102〔同1.296~3.408〕)のみが抽出された。 次に、基本チェックリストのサブスケールのスコアと、前記の解析で独立変数とした各因子との関連を多重線形回帰分析で検討。すると、農村部に居住している糖尿病患者は、IADL(B=0.279、P<0.001)およびSADL(B=0.265、P=0.006)のスコアが有意に低いという関連が示された。なお、その他のサブスケール(運動器機能、栄養状態、口腔機能、認知機能、抑うつ)については、居住地域との有意な関連は見られなかった。 基本チェックリストの各質問の回答を比較すると、「バスや電車で1人で外出しているか」、「友人の家を訪ねているか」、「家族や友人の相談にのっているか」、「15分くらい続けて歩いているか」という4項目に有意差があり、いずれも都市部居住者の方が「はい」の割合が高かった。 以上を基に著者らは、「農村部の高齢2型糖尿病患者は、都市部の患者に比べてフレイルリスクが高く、IADLやSADLの低下が認められる」と結論。その理由として、「公共交通機関を利用しての外出が少なく歩行時間が短いこと、他者との交流が少なく孤立しやすいことなどの影響が想定される」とし、また既報研究を基に「ヘルスリテラシーの差異も関与しているのではないか」と考察を述べた上で、「フレイル予防のためには個人のリスク評価とともに、社会参加とコミュニケーションを促すような介入戦略が必要と考えられる」と総括している。

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「少量のアルコールは体に良い」は誤り?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第267回

「少量のアルコールは体に良い」は誤り?「赤ワインをちょっとたしなむくらいが、体にもいいんだ」という話を聞いたことがあり、週に何度かアルコールを摂取している医師は多いかもしれません。確かに、一部の研究によると「適度な飲酒は心血管系に有益な効果がある」と報告されています1)。要はアルコール摂取量と動脈硬化のリスクはJカーブであって、線形のリスク増加にならないという見解です。しかし、これには方法論的な問題があると指摘されています。Schutte R, et al. Alcohol and arterial stiffness in middle-aged and older adults: Cross-sectional evidence from the UK Biobank study. Alcohol Clin Exp Res (Hoboken) . 2024 Aug 20. [Epub ahead of print]この研究は、アルコール摂取と動脈硬化の関係について調査した横断研究です。英国のバイオバンクデータを使って、40~69歳の中高年を対象に分析しています。これらのバイアスを避けるため、飲酒者のみを対象とし、連続的な分析を行うことで、アルコール摂取と動脈硬化の関係を明らかにしました。英国では、男性はビールを、女性はワインを好む傾向があるため、ビールを常用飲酒している男性9,029人と、赤ワインを常用飲酒する女性6,989人を解析対象としました。男性は週平均17.8単位(1単位=10mLエタノール相当)のアルコールを摂取し、女性は週平均8.1単位のアルコールを摂取していました。どちらのグループでも、アルコール摂取量が増えるにつれて動脈硬化指数(ASI)が直線的に増加する傾向が観察されました。すなわち、低〜中程度のアルコール摂取で動脈硬化に利益をもたらすという根拠はなかったのです。50歳未満と50歳以上で層別化しても、アルコール摂取量とASIには正の相関が観察されました。研究者によってまだ異論のあるところですが、少なくともこの研究では、「少量の飲酒は動脈硬化に有益」という従来の見解は支持されないことになります。よく、赤ワインに含まれるポリフェノールに血管保護作用があるとされていますが、線形のリスク増加があることから、リアルワールドではほぼ無視されるという見解です。少なくとも、「ちょっと飲むくらいがちょうどいい」といった誤った啓発は行うべきでない、というのが筆者らの見解です。1)Del Giorno R, et al. Association between Alcohol Intake and Arterial Stiffness in Healthy Adults: A Systematic Review. Nutrients. 2022 Mar 12;14(6):1207.

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食事の質や睡眠時間が抑うつ症状に及ぼす影響

 不健康な食生活や不健康な睡眠時間を含むライフスタイルは、うつ病の修正可能なリスク因子として広く知られている。中国・四川大学のYue Du氏らは、食事の質、睡眠時間、抑うつ症状との関連およびこれらの複合的な影響を調査するため、本研究を実施した。BMC Public Health誌2024年9月27日号の報告。 対象は、2007〜14年のNHANESデータから抽出された20歳以上の成人1万9,134人。不健康な食生活は、Healthy Eating Index-2015の平均スコア60パーセンタイル未満、不健康な睡眠時間は、夜間の睡眠時間が7時間未満または9時間以上とした。対象者をライフスタイル別に4群に分類した。分析には、関連変数をコントロールする重み付け多変量ロジスティック回帰を用いた。さらに、ロバスト性を評価し、潜在的な高リスク群を特定するため、層別化分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・全体のうつ病有病率は8.44%。・健康的な睡眠時間の基準を満たした人は56.58%、健康的な食生活の基準を満たした人は24.83%であった。・不健康な食生活および不健康な睡眠時間は、抑うつ症状と正の相関が認められた。【不健康な食生活】オッズ比(OR):1.40、95%信頼区間(CI):1.18〜1.67、p<0.001【不健康な睡眠時間】OR:1.94、95%CI:1.63〜2.31、p<0.001・健康的な食生活と睡眠時間の基準を満たした人と比較し、いずれかまたは両方が不健康な人は、抑うつ症状と有意な関連が認められた。【不健康な食生活+健康的な睡眠時間】OR:1.60、95%CI:1.20〜2.13、p=0.002【健康的な食生活+不健康な睡眠時間】OR:2.50、95%CI:1.64〜3.80、p<0.001【不健康な食生活+不健康な睡眠時間】OR:2.91、95%CI:2.16〜3.92、p<0.001・層別分析では、女性、中年、大学卒業以上の学歴、推奨される身体活動レベルを満たしていない人は、不健康な食生活+不健康な睡眠時間により、抑うつ症状に対する感受性が上昇することが示唆された。 著者らは「不健康な食生活と不健康な睡眠時間の人、とくに女性、中年、大学卒業以上の学歴、推奨される身体活動レベルを満たしていない人は、抑うつ症状を呈しやすいことが示唆された」と結論付けている。

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高齢者の心不全救急搬送、気温低下の1~2日後に注意/日本心不全学会

 今冬はラニーニャ現象発生の影響で昨年よりも厳しい寒さとなり、心不全による入院の増加に一層の注意が必要かもしれない。では、どのような対策が必要なのだろうか―。これまで、寒冷曝露や気温の日内変動(寒暖差)が心筋梗塞や心不全入院を増加させる要因であることが示唆されてきたが、外気温低下の時間的影響までは明らかにされていない1,2)。10月4~6日に開催された第28回日本心不全学会学術集会のLate breaking sessionでは、これまでに雨季後の暑熱環境下における気温上昇と高齢者の心血管救急搬送リスクとの関連3)や脳卒中救急搬送リスク増加を示唆する疫学研究4)などを報告している藤本 竜平氏(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 疫学・衛生学分野/津山中央病院 心臓血管センター・循環器内科)が『時間層別による外気温低下と心不全救急搬送の関連』と題し、新たな知見を報告した。 同氏らは、気温低下が短期間に心不全へ及ぼす影響を検討するため、外気温が1℃ごと低下すると心不全の救急搬送にどのような影響を与えるかについて、時間層別の解析を行った。2009~19年に岡山市内に救急搬送された18歳以上の心不全患者を対象に自己対照研究デザインであるケースクロスオーバー研究を実施し、時間ごとの気温、気圧、相対湿度、PM2.5濃度を取得。条件付きロジスティック回帰分析により、気温1℃低下時の搬送前時間ごと(先行間隔:lag)に気圧や湿度などの交絡因子を調整したオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出し、年齢ごとに層別化した。主要評価項目は心不全救急搬送で、副次評価項目は性別、併存疾患、季節、曜日の影響を考慮した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は5,406例(男性49.4%、平均年齢81.9±11.2歳)で、65歳以上は4,985例(平均年齢84.1±8.1歳)であり、圧倒的に高齢者が多かった。・対象者の併存疾患には高血圧症、虚血性心疾患が多かった。・季節は冬季、曜日は月曜日に心不全による救急搬送が多かった。・年齢別で外気温低下の影響をみたところ、18~65歳未満ではリスク上昇を認めなかったものの、65歳以上の高齢者では低温にさらされてから24~47時間(1〜2日)のlagでOR:1.02(95%CI:1.00~1.03)とリスクが高くなり、その影響はさらに数日間持続していたことから、時間単位ではなく日単位で強く現れる遅延効果の存在が示唆された(24時間までのlagではリスク上昇を認めなかった)。・このリスク増強は、女性、併存心疾患(多くは心不全と推察)、現在のように段々と寒くなる秋期にみられた。・研究限界として、119番通報を発症時間としているので正確な発症時間が不明であること、自家用車や独歩での受診者が含まれていないこと、屋外の測定局データを利用したことなどが挙げられた。 寒冷による病態生理学的考察として、「交感神経緊張の亢進によりレニン-アンジオテンシン系の活性化をはじめ、心拍数や左室拡張末期圧および容積の増大、末梢血管抵抗や心筋酸素需要の増加、虚血閾値の低下、フィブリノゲン増加による血液凝固障害などを生じた結果、動脈圧が上昇し、左室後負荷不適合や心筋虚血による心不全増悪が考えられる」と説明した。また、気温が肺動脈圧に及ぼす影響などの報告5)も踏まえ、「気温低下に伴う交感神経系の緊張により急速な血圧上昇が時間単位で先行し、肺動脈圧上昇と合わさり、日単位で急性心不全を発症する遅延効果を説明するかもしれない」と推察した。このほか、併存疾患と寒冷関連新規発症心不全について、「ある観察研究6)によると60~69歳では併存疾患を2~3つ、70歳以上では1~2つ有する人でリスクが高まる」とも述べた。 同氏は本研究を踏まえ、「高齢者には、気温低下を観測した翌日から数日以降も、暖かい室内などで適温を維持し、とくに段々と寒くなる今の季節(秋)、心不全の既往がある女性(病型別ではHFpEF7))に対し多職種で予防策を講ずる必要性がある」と締めくくった。■参考1)Qiu H, et al. Circ Heart Fail. 2013;6:930-935.2)Ni W, et al. J Am Coll Cardiol. 2024;84:1149-1159. 3)Fujimoto R, et al. J Am Heart Assoc. 2023;12:e027046.4)岡山大学:梅雨明け後の暑さに注意!~梅雨明け後1か月間の暑さは高齢者の脳卒中救急搬送リスクを増やす~5)Carrete A, et al. Eur J Heart Fail. 2024;20:1830-1831.6)Chen DY, et al. Eur J Prev Cardiol. 2024 Aug 23. [Epub ahead of print]7)Jimba T, et al. ESC Heart Fail. 2022;9:2899-2908.

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転移を有する去勢抵抗性前立腺がん、ルテチウム-177の最終解析結果(PSMAfore)/Lancet

 ルテチウム-177 (Lu-PSMA-617)は、タキサン未治療でアンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)既治療の前立腺特異的膜抗原(PSMA)陽性で転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者において、ARPI変更群と比較して画像上の無増悪生存期間(rPFS)を有意に延長し、安全性プロファイルも良好であることが認められた。米国・メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのMichael J. Morris氏らPSMAfore Investigatorsが、北米および欧州の74施設で実施された第III相無作為化非盲検比較試験「PSMAfore試験」の主要解析(第1回中間解析)と最新解析(第3回中間解析)の結果を報告した。Lu-PSMA-617は、ARPIおよびタキサン既治療のmCRPC患者のrPFSおよび全生存期間(OS)を延長することが示されていた。Lancet誌2024年9月28日号掲載の報告。1種類のARPIで進行したタキサン未治療のPSMA陽性mCRPC患者が対象 研究グループは、18歳以上でタキサン系薬剤による治療歴がなく、1種類のARPI(アビラテロン、エンザルタミド、ダロルタミドまたはアパルタミド)による治療後に進行したPSMA陽性mCRPC患者(ECOG PSは0~1)を、Lu-PSMA-617群(7.4GBq[200mCi]±10%を6週ごとに6サイクル静脈内投与)、またはARPI変更群(アビラテロンまたはエンザルタミドに変更)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 ARPI変更群では、盲検下独立中央判定(BICR)により画像診断に基づく進行が確認された時点でLu-PSMA-617へのクロスオーバーを可とした。 主要評価項目は、BICRによるPCWG3-modified38 RECIST v1.1に基づくrPFSで、ITT解析集団において評価された。主な副次評価項目は、OS、安全性などであった。ARPI変更と比較してLu-PSMA-617でrPFSが有意に延長 2021年6月15日~2022年10月7日に、585例がスクリーニングを受け、このうち適格基準を満たした468例が、Lu-PSMA-617群(234例)またはARPI変更群(234例)に無作為に割り付けられた。ベースラインの患者背景は両群でほぼ同様であった。ARPI変更群のうち、134例(57%)がクロスオーバーされLu-PSMA-617の投与を受けた。 主要解析(第1回データカットオフ、追跡期間中央値7.26ヵ月[四分位範囲[IQR]:3.38~10.55])において、rPFS中央値はLu-PSMA-617群9.30ヵ月(95%信頼区間[CI]:6.77~推定不能)、ARPI変更群5.55ヵ月(4.04~5.95)、ハザード比(HR)は0.41(95%CI:0.29~0.56、p<0.0001)であった。 第3回中間解析(第3回データカットオフ、追跡期間中央値24.11ヵ月[IQR:20.24~27.40])では、rPFS中央値はLu-PSMA-617群11.60ヵ月(95%CI:9.30~14.19)、ARPI変更群5.59ヵ月(4.21~5.95)、HRは0.49(95%CI:0.39~0.61)であった。 安全性については、Grade3以上の有害事象の発現率はLu-PSMA-617群36%(81/227例)、ARPI変更群48%(112/232例)であり、Lu-PSMA-617群で低かった。Grade5(死亡に至った有害事象)はLu-PSMA-617群4例(2%、いずれも治療に関連なしと判定)、ARPI変更群5例(2%、うち1例が治療に関連ありと判定)に認められた。

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ウイルスを寄せ付けない鼻スプレーを開発

 薬剤を含まない鼻スプレーが、理論的には、マスク着用よりもインフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどの呼吸器系病原体の拡散を防ぐのに効果的である可能性を示唆する研究が報告された。このスプレーに含まれている医学的に不活性な成分が、人に感染する前に鼻の中の病原体を捕らえるのだという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院麻酔科のNitin Joshi氏らによるこの研究結果は、「Advanced Materials」に9月24日掲載された。 論文の責任著者の一人である、ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJeffrey Karp氏は、「新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、呼吸器系病原体が非常に短期間で、人類に極めて大きな影響を与えることをわれわれに示した。その脅威は、今も続いている」と話す。 ほとんどの病原体は、鼻から人体に入り込む。インフルエンザウイルスや新型コロナウイルス感染者が吐き出す病原体を含んだ小さな飛沫を健康な人が吸い込むと、病原体が鼻腔内に付着して細胞に感染するのだ。こうした病原体に対する対抗手段の一つはワクチン接種だが、完璧ではなく、接種した人でも感染して病原体を伝播させ得る。また、マスク着用も有効な手段ではあるが、やはり完璧ではない。 今回、研究グループが開発した鼻スプレーは、Pathogen Capture and Neutralizing Spray(PCANS、病原体補足・中和スプレー)と名付けられたもの。スプレーに使用されている成分は、米食品医薬品局(FDA)の不活性成分データベース(IID)に登録されている、承認済みの点鼻薬用の化合物か、FDAによりGRAS(食品添加物に対してFDAが与える安全基準合格証)確認物質に分類されている化合物(ゲランガム、ペクチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース〔HPMC〕、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩〔CMC〕、カーボポール、キサンタンガム)であるという。Joshi氏は、「われわれは、これらの化合物を使って、3つの方法で病原体をブロックする、有効成分に薬剤を含まない製剤を開発した。PCANSは、呼吸器からの飛沫を捕らえて病原体を固定し、効果的に中和して感染を防ぐゲル状のマトリックスを形成する」と語る。 研究グループは、3Dプリントされた人間の鼻のレプリカを用いた実験を行い、このスプレーの効果をテストした。その結果、このスプレーにより、鼻腔内粘液と比べて2倍の量の飛沫を捕らえることができることが示された。論文の筆頭著者で同大学麻酔科のJohn Joseph氏は、「PCANSは鼻腔内で粘液と混ざることでゲル化し、機械的強度を100倍まで高めて強固なバリアを形成する。インフルエンザウイルス、新型コロナウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、肺炎桿菌など、われわれがテストした全ての病原体の100%近くをブロックし、中和した」と成果について語っている。 また、マウスを使った実験では、このスプレーを1回投与するだけで、致死量の25倍のインフルエンザウイルスの感染を効果的に阻止できることも示された。ウイルスがマウスの肺に侵入することはなく、炎症などの免疫反応も認められなかったという。 論文の共著者である、ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のYohannes Tesfaigzi氏は、「マウスモデルを用いた厳密に計画された研究で、PCANSによる予防的治療は非常に優れた有効性を示し、治療を受けたマウスは完全に保護されたが、未治療のマウスではそのような効果は認められなかった」と述べている。 研究グループは、「今後は、人間を対象にした臨床試験でこのスプレーの効果をテストする必要がある」との考えを示している。また、このスプレーによりアレルゲンを効果的にブロックできるのかどうかについても調査中であるという。

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手術なしで白内障の治療が可能に?

 ラットと冬眠するタイプのリスを用いた研究で、白内障を改善する可能性のあるタンパク質を見つけたと、米国立眼研究所(NEI)網膜神経生理学部門のWei Li氏らが報告した。動物実験の結果が人間でも再現されるとは限らないが、「RNF114」と呼ばれるこのタンパク質が同定されたことで、手術なしで白内障を治療できる可能性が出てきたとLi氏らは話している。研究結果は、「The Journal of Clinical Investigation」9月17日号に掲載された。Li氏は、「この白内障の可逆的な現象の分子ドライバーについての理解は、われわれに治療戦略の方向性を指し示すことになるかもしれない」と言う。 白内障は目の水晶体(光を屈折させて焦点を網膜に合わせる役割を持つ)に濁りが生じる状態を指す。NEIのニュースリリースでは、白内障は加齢とともに、「水晶体中で、変性により折り畳みに異常が生じたタンパク質が凝集してクラスターを形成し、それが水晶体を通過する光を遮って散乱させ、歪ませるようになる」ことで形成されると説明している。つまり、健康な視機能を保つためには、このようなタンパク質の折り畳みや分解を正確に制御するタンパク質の恒常性(プロテオスタシス)を維持する必要があるということだ。白内障は高齢になるほど発生頻度が高まる。その理由は明確にはなっていないが、加齢によって眼球内のプロテオスタシスが低下するためと考えられている。 一方、米国の中央部に住んでいる人なら、おそらくジュウサンセンジリスを見たことがあるはずだ。研究グループによると、ジュウサンセンジリスは、網膜に存在する光を受容する視細胞のほとんどが、色覚との関わりが強い錐体で構成されていることから、色覚に関する研究に適したモデルとされているという。また、このリスは、長く厳しい冬眠にも耐えることができる頑丈な体を持つことから、眼疾患の研究モデルとしてもよく使われているという。 Li氏らは、ジュウサンセンジリスの目の水晶体が華氏39度(摂氏3.9度)前後になると、白内障のサインである白濁状態になり、暖かくなると、この状態が逆転して再び透明になることを見出した。一方、別の生物である実験用ラットも、同じ低温環境で白内障を発症したが、気温が上がっても白内障が治ることはなかった。 そこでLi氏らは、ジュウサンセンジリスの細胞から作成した幹細胞を用いて人工水晶体モデルを作成し、水晶体のタンパク質凝集を防ぐ仕組みを探った。その結果、タンパク質の分解を制御するE3ユビキチンリガーゼであるRNF114が同定され、再加温中に眼内のRNF114が、冬眠をしないラットと比べて有意に増加することが確認された。さらに、冬眠をしないラットを用いた白内障の水晶体モデルを4℃で培養し、再加温しても白内障が消失しないことを確認した上で、RNF114で前処理した水晶体を再加温すると、白内障が消失することも確認された。 以上の結果は、RNF114がタンパク質凝集回避に深く関与していることを示すとともに、ジュウサンセンジリス以外の哺乳類でも、白内障の発症後にRNF114を増量投与することが有益である可能性を強く示している。そのような哺乳類には人間も含まれていると、Li氏らは考えている。 現時点で白内障の唯一の治療選択肢は手術であり、米国では年間に約400万件もの白内障手術が行われている。そのため、眼科研究の領域では長い間、手術以外のアプローチが究極の目標となってきた。 論文の上席著者である、浙江大学(中国)のXingchao Shentu氏は、「白内障手術は有効だが、リスクがないわけではない。科学者たちは白内障手術に代わる治療法を長年にわたって探してきた。世界の一部の地域では白内障手術へのアクセスが不十分であることが治療の障壁となっており、世界的に未治療の白内障が失明の主な要因となっている」と指摘している。

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