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双極症I型に対するアリピプラゾール月1回投与〜52週間ランダム化試験の事後分析

 人種間における双極症の診断・治療の不均衡を改善するためには、その要因に関する認識を高める必要がある。その1つは、早期治療介入である。双極症と診断された患者を早期に治療することで、気分エピソード再発までの期間を延長し、機能障害や病勢進行に伴うその他のアウトカム不良を軽減する可能性がある。米国・Otsuka Pharmaceutical Development & CommercializationのKarimah S. Bell Lynum氏らは、早期段階の双極症I型患者における長時間作用型注射剤アリピプラゾール月1回400mg(AOM400)の有効性および安全性を調査するため、52週間ランダム化試験の事後分析を行った。International Journal of Bipolar Disorders誌2024年10月27日号の報告。 双極症I型患者に対するAOM400とプラセボを比較した52週間の多施設共同二重盲検プラセボ対照ランダム化中止試験のデータを分析した。ベースライン時の年齢(18〜32歳:70例)または罹病期間(0.13〜4.6年:67例)が最低四分位に該当した患者を早期段階の双極症I型に分類した。主要エンドポイントは、ランダム化から気分エピソード再発までの期間とした。その他のエンドポイントには、気分エピソードの再発を有する患者の割合、ヤング躁病評価尺度(YMRS)、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)の合計スコアのベースラインからの変化を含めた。 主な結果は以下のとおり。・AOM400による維持療法は、若年患者または罹病期間の短い患者において、プラセボと比較し、すべての気分エピソードの再発までの期間を有意に延長させた。【年齢最低四分位:18〜32歳】ハザード比(HR):2.46、95%信頼区間(CI):1.09〜5.55、p=0.0251【罹病期間最低四分位:0.13〜4.6年】HR:3.21、95%CI:1.35〜7.65、p=0.005・AOM400による気分エピソードの再発抑制は、主にYMRS合計スコア15以上または臨床的悪化の割合の低さに起因する可能性が示唆された。・年齢または罹病期間が早期段階の双極症I型患者におけるMADRS合計スコアのベースラインからの変化は、AOM400がプラセボと比較し、うつ病を悪化させなかったことを示唆している。・AOM400の安全性プロファイルは、以前の研究と一致していた。・AOM400単独療法で安定していた患者が元の研究には含まれているため、AOM400に治療反応を示した患者集団が多かった可能性があることには、注意が必要である。 著者らは「AOM400は、早期段階の双極症I型において、プラセボと比較し、すべての気分エピソードの再発までの期間を有意に延長することが確認された。これらの結果は、AOM400による維持療法の早期開始を裏付けるものである」と結論付けている。

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HR+HER2-早期乳がんの遠隔転移再発率の低下(解説:下村昭彦氏)

 早期乳がん治療についてはEarly Breast Cancer Trialists' Collaborative Group(EBCTCG)が多くのメタ解析を出版しており、日常臨床に活用されている。今回EBCTCGから早期乳がんの遠隔転移再発に関するプール解析が実施され、Lancet誌2024年10月12日号に掲載された。 本研究では、1990年から2009年までに151の臨床試験に登録された早期乳がん患者15万5,746例のデータが用いられた。遠隔再発については各試験の定義が用いられ、10年遠隔再発リスクについて検討された。年代を1990年から1999年と、2000年から2009年の各10年に分けて検討され、リンパ節転移陰性では、エストロゲン受容体(ER)陽性で10.1% vs.7.3%、ER陰性で18.3% vs.11.9%、リンパ節転移が1~3個では、それぞれ19.9% vs.14.7%、31.9% vs.22.1%、リンパ節転移が4~9個では、それぞれ39.6% vs.28.5%、47.8% vs.36.5%であった。治療について補正後、2000年代は1990年代と比較して、遠隔再発率がER陽性例で25%、ER陰性例で19%減少し、ER陽性例では5年を超えても同様の改善が認められた。 この結果は、約20年の間に遠隔再発リスクが著しく低下したことを示す。原因としては、1)低リスク(すなわちリンパ節転移陰性)の患者が多く臨床試験に登録されたこと、2)治療が大幅に進化していること、が挙げられる。私自身はこの年代に乳がんの治療を主体的に行ったことはないが、1990年代と2000年代では大きく治療が異なっている。この間に、ホルモン療法としては閉経後アロマターゼ阻害薬が標準治療となり、化学療法はCMFが主であった時代からアンスラサイクリン、さらにタキサンが標準治療として用いられるようになった。さらに、HER2陽性乳がんではトラスツズマブの有効性が証明され、標準治療となった。事実、図2では2000~04年と2005~09年を分けて解析しているが、ERステータスを問わず新しい年代のほうが再発リスクが低下している。 一方、臨床試験の世界ではこれ以降、高リスクの患者に対する治療のエスカレーションと、低リスクの患者に対するデエスカレーションがトレンドとなった。リスクを評価してその患者に最適な治療を届けるという日常診療の基本が、臨床試験で検証されるようになったと言ってもよい。10年後に、2010年代の再発リスクに関する研究が発表されるのが非常に楽しみである。

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修理代、たったの300円!【Dr. 中島の 新・徒然草】(557)

五百五十七の段 修理代、たったの300円!寒くなりましたね。ついにコートの必要な季節になってしまいました。外に出かけるときにはマフラーと手袋も欠かせません。さて先日のこと。親戚の叔父から、長年乗り続けている古い車についての話を聞かされました。最近になって「カタカタ」という異音がするようになったとのこと。叔父はすぐにディーラーに持ち込み、「音の感じから、どこかのネジが緩んでいるのではないか」と自分の考えを伝えました。しかし、ディーラーからは「どこも悪くない」と言われただけで、さらに「古い車なので買い替えを検討したほうがいい」と勧められたそうです。納得できなかった叔父は、ネットで調べてみました。すると、自宅から5キロほど離れた修理屋の評判が良いことを知り、そこに車を持ち込んだのです。修理屋のおやじさんに事情を説明した際も「音の感じからネジが緩んでいるのではないか」と自身の考えを伝えたのだとか。おやじさんは「なるほど」と頷くと、さっそく車の下に潜り込んで点検開始。そして、3ヵ所のネジが劣化して緩んでいることを突き止め、それらを新品に交換してくれました。その結果、異音は完全になくなり、叔父はようやく安心できたそうです。修理代として請求されたのはネジ代だけの300円。叔父はそれでは申し訳ないと、無理に3,000円を渡して帰ってきました。修理の合間、おやじさんが漏らした言葉が印象的だったそうです。「最近は何でもマニュアル頼りだよ。ディーラーですら、チェックリストしか見ていないんじゃないかな」とのこと。この話を聞いて、私は医療にも通じるものを感じました。たとえば脳卒中の患者さんを診るときに用いるNIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)は非常に有用な評価スケールです。この評価スケールは頭部外傷やめまいの診療にも活用されています。しかし、それだけでは見逃されることも多々あるのではないでしょうか。たとえば、後頭部を打った場合には、嗅覚障害の有無を確認することが重要だと私は思っています。解剖学的に、嗅神経が断裂しやすい方向に力が加わるためですね。私の体感では、20人に1人くらいは嗅覚障害が出るような印象があります。以前、ある頭部外傷の患者さんに「先生、いつになったら鼻のほうは治るの?」と言われて驚いたことがありました。この人は車の荷台から落ちて頭を打ったのですが、この質問をされたときには、もう事故から1ヵ月ほど経っていたからです。嗅覚障害について、自分がまったく注意を払っていなかったことに肝を冷やしました。また、BPPV(良性発作性頭位めまい症)を疑う患者さんの診療では、NIHSSで中枢性のめまいを否定するだけでは不十分です。やはり末梢性のめまいであることを裏付けるために、ディックス・ホールパイク法を用いて眼振やめまい感の有無を確認するべきではないでしょうか。確かに医療において、マニュアルやガイドラインが重要なのは言うまでもありません。でも、それだけで良しとせず、個々の患者さんの状態に合わせた丁寧な診察を心掛けたいものですね。最後に1句300円 冷えた硬貨が 冬告げる

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砂糖の摂取量とうつ病や不安症リスクとの関連〜メタ解析

 世界中で砂糖の消費量が急激に増加しており、併せてうつ病や不安症などの精神疾患の有病率も増加の一途をたどっている。これまでの研究では、さまざまな食事の要因がメンタルヘルスに及ぼす影響について調査されてきたが、砂糖の摂取量がうつ病や不安症リスクに及ぼす具体的な影響については、不明なままである。中国・成都中医薬大学のJiaHui Xiong氏らは、砂糖の摂取量とうつ病や不安症リスクとの関連を包括的に評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Frontiers in Nutrition誌2024年10月16日号の報告。 食事中の砂糖の総摂取量とうつ病、不安症リスクとの関連を調査した研究をPubMed、Embase、Cochrane Library、Web of Science、China National Knowledge Network (CNKI)、WangFangより、システマティックに検索した。選択基準を満たした研究は、システマティックレビューに含め、品質評価したのち、データ抽出を行った。メタ解析には、Stata 18.0 ソフトウェアを用いた。 主な結果は以下のとおり。・40研究、121万2,107例をメタ解析に含めた。・砂糖の摂取量は、うつ病リスクを21%増加(オッズ比[OR]:1.21、95%信頼区間[CI]:1.14〜1.27)させることが示唆されたが、不安症リスクとの全体的な関連性には、統計学的に有意な結果が得られなかった(OR:1.11、95%CI:0.93〜1.28)。・異質性が高いにも関わらず(I2=99.7%)、結果は統計学的に有意であった(p<0.000)。・サブグループ解析では、砂糖の摂取とうつ病リスクとの関連は、さまざまな研究デザイン(横断研究、コホート研究、ケースコントロール研究)、サンプルサイズ(5,000例未満、5,000〜1万例、1万例超)にわたり、一貫していた。・女性は、男性よりもうつ病リスクが高かった(OR:1.19、95%CI:1.04〜1.35)。・さまざまな測定法の中でも、食物摂取頻度調査(FFQ)は、最も有意な効果を示した(OR:1.32、95%CI:1.08〜1.67、I2=99.7%、p<0.000)。・測定ツールのサブグループ解析では、砂糖の摂取とうつ病リスクとの間に有意な相関が、こころとからだの質問票(PHQ-9)、うつ病自己評価尺度(CES-D)で示唆された。【PHQ-9】OR:1.29、95%CI:1.17〜1.42、I2=86.5%、p<0.000【CES-D】OR:1.28、95%CI:1.14〜1.44、I2=71.3%、p<0.000・高品質の横断研究およびコホート研究では、砂糖の摂取とうつ病リスクとの間に有意な関連が認められ、ほとんどの結果はロバストであった。・砂糖の摂取と不安症リスクの全体的な分析では、有意な影響がみられなかったが、とくにサンプルサイズが5,000例未満の研究(OR:1.14、95%CI:0.89〜1.46)および食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いた研究(OR:1.31、95%CI:0.90〜1.89)といった一部のサブグループにおいて有意に近づいていた。 著者らは「食事中の砂糖の総摂取量は、一般集団におけるうつ病リスク増加と有意に関連していたが、不安症リスクとの関連は有意ではなかった。これらの関連性についての信頼性を確保するためには、さらに質の高い研究が求められる。本研究により、食事中の砂糖摂取量がメンタルヘルスに及ぼす影響、サブグループ分析によって潜在的な高リスク群に対するうつ病や不安症の予防に関する新たな知見が得られた」と結論付けている。

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mavacamtenの長期使用で中隔縮小療法を回避/AHA2024

 症候性閉塞性肥大型心筋症(HCM)患者を対象としたVALOR-HCM試験において、mavacamtenにより中隔縮小療法(septal reduction therapy:SRT)の短期的な必要性を低下させ、左室流出路(LVOT)圧較差などの改善をもたらすことが報告されていた。今回、米国・クリーブランドクリニックのMilind Y Desai氏らが治療終了時128週までのmavacamtenの長期的な効果を検討し、11月16~18日に米国・シカゴで開催されたAmerican Heart Association’s Scientific Sessions(AHA2024、米国心臓学会)のFeatured Scienceで発表、Circulation誌オンライン版2024年11月18日号に同時掲載された。 今回の結果によると、症候性閉塞性HCM患者の約90%において、128週時点でSRTを実施せずにmavacamtenを長期継続していた。 本研究は米国の19施設で行われた多施設共同プラセボ対照ランダム化二重盲検試験で、SRTを紹介された症候性閉塞性HCM患者を対象とした。最初にmavacamtenにランダム化されたグループは128週間にわたってmavacamtenを継続、プラセボを投与されたグループは16週目から128週目までmavacamtenを継続した(112週間の曝露)。用量漸増は、心エコー図によるLVOT勾配と左室駆出率(LVEF)の測定結果を基に行った。主要評価項目は、128週目にSRTに進む患者またはガイドラインの適格性を維持している患者の割合であった。 主な結果は以下のとおり。・128週目に、全対象者108例中17例(15.7%)が複合エンドポイントを達成した(7例がSRTを受け、1例がSRT適格、9例がSRT状態評価不能)。・128週までに87例(80.5%)がNYHAクラスI以上の改善を示し、52例(48.1%)がクラスII以上の改善を示した。また、安静時およびバルサルバ手技によるLVOT圧較差がそれぞれ38.2mmHgおよび59.4mmHgと持続的に低下した。・95例(88%)が上市されているmavacamtenに切り替えられた。・15例(13.8%、100患者年あたり5.41例)はLVEFが50%未満(LVEF≦30%が2例、死亡が1例)で、このうち12例(80%)が治療を継続した。・新たに心房細動を発症した患者は11例(10.2%、100患者年あたり4.55例)であった。

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血流感染症の抗菌薬治療、7日間vs.14日間/NEJM

 血流感染症の入院患者への抗菌薬治療について、7日間投与は14日間投与に対して非劣性であることが示された。カナダ・トロント大学のNick Daneman氏らBALANCE Investigatorsが、7ヵ国の74施設で実施した医師主導の無作為化非盲検比較試験「BALANCE試験」の結果を報告した。血流感染症は、罹患率と死亡率が高く、早期の適切な抗菌薬治療が重要であるが、治療期間については明確になっていなかった。NEJM誌オンライン版2024年11月20日号掲載の報告。重度の免疫抑制患者等を除く患者を対象、主要アウトカムは90日全死因死亡 研究グループは、血流感染症を発症した入院患者(集中治療室[ICU]の患者を含む)を抗菌薬の短期(7日間)治療群または長期(14日間)治療群に1対1の割合で無作為に割り付け、治療チームの裁量(抗菌薬の選択、投与量、投与経路)により治療を行った。 重度の免疫抑制状態にある(好中球減少症、固形臓器または造血幹細胞移植後の免疫抑制治療を受けている)患者、人工心臓弁または血管内グラフトを有する患者、長期治療を要する感染症(心内膜炎、骨髄炎、化膿性関節炎、未排膿の膿瘍、未除去の人工物関連感染)、血液培養で一般的な汚染菌(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌など)が陽性、黄色ブドウ球菌またはS. lugdunensis菌血症、真菌血症などの患者は除外した。 主要アウトカムは血流感染症診断から90日以内の全死因死亡で、非劣性マージンは4%ポイントとした。診断後90日以内の全死因死亡率は7日群14.5%、14日群16.1% 2014年10月17日~2023年5月5日に、適格基準を満たした1万3,597例のうち3,608例が無作為化された(7日群1,814例、14日群1,794例)。登録時、1,986例(55.0%)はICUの患者であった。 血流感染症の発症は、市中感染75.4%、病棟内感染13.4%、ICU内感染11.2%であり、感染源は尿路42.2%、腹腔内または肝胆道系18.8%、肺13.0%、血管カテーテル6.3%、皮膚または軟部組織5.2%であった。 血流感染症診断後90日以内の全死因死亡は、7日群で261例(14.5%)、14日群で286例(16.1%)が報告された。群間差は-1.6%ポイント(95.7%信頼区間[CI]:-4.0~0.8)であり、7日群の14日群に対する非劣性が検証された。 7日群の23.1%、14日群の10.7%でプロトコール不順守(割り付けられた日数より2日超短縮または延長して抗菌薬が投与された)が認められたが、プロトコール順守患者のみを対象とした解析(per-protocol解析)においても主要アウトカムの非劣性が示された(群間差:-2.0%ポイント、95%CI:-4.5~0.6)。 これらの結果は、副次アウトカムや事前に規定されたサブグループ解析においても一貫していた。

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低温持続灌流はドナー心臓の虚血時間を安全に延長できる(解説:小野稔氏)

 低温浸漬保存(SCS)は脳死ドナーから提供された心臓を保存するゴールドスタンダードであるが、保存時間が4時間を超えると虚血、嫌気性代謝に続く臓器障害を来たし、移植後の合併症や死亡に至る場合がある。肝臓移植においてはXVIVO(XVIVO AB, Sweden)による低温灌流保存(HOPE: hypothermic oxygenated machine perfusion)についての12のメタアナリシスやシステマティックレビューがあり、その安全性と有効性が証明されている。 心臓移植におけるXVIVO装置を用いたHOPEの安全性と有効性を証明するために、欧州8ヵ国の15の心臓移植センターにおいて、多国多施設無作為化オープンラベル試験が実施された。対象は18歳以上の成人心臓移植患者で、いずれかの臓器移植の既往、先天性心疾患、腎不全、脱感作中、LVAD以外の循環補助中の場合には除外された。ドナーについては18~70歳が対象で、心停止後ドナーや再開胸が必要な場合には除外とした。心保存について従来のSCSとHOPEに1:1で割り付けられた。SCS群では各施設のプロトコルで心停止を誘導してアイススラッシュ保存を行った。HOPE群では、300~500mLの血液、抗生剤とインスリンが添加されたXVIVO Heart Solutionで満たされたXVIVO灌流装置を使用した。心臓摘出後に上行大動脈にカニューレを挿入して装置に接続し、大動脈圧20mmHgで8度を維持して灌流(毎分100~200mLに相当)した。 2020年11月から2023年5月までに1,050例がスクリーニングされ、HOPE群には101例、SCS群には103例が割り付けられた。レシピエント(56歳vs.58歳)、ドナー(48歳vs.50歳)共に両群間で背景因子、原疾患、循環補助の状態に差はなかった。ドナー心保存時間はHOPE群のほうが長かった(240分vs.215分)。主要評価項目(心臓関連死、中~高度の左室のグラフト不全、右室のグラフト不全、Grade 2R以上の細胞性拒絶反応を含む複合エンドポイント)はHOPE群19例(19%)、SCS群31例(30%)に見られ、HOPE群のリスク軽減率は44%となったがp値は0.059であった。副次評価項目である移植後グラフト不全単独では、SCS群28%に対してHOPE群11%と有意に少なかった。心臓関連主要有害事象についてはHOPE群18%で、SCS群32%に対して有意に少なかった。心臓関連死については両群間で差は見られなかった。 主要評価項目では有意差はなかったが、HOPE群に見られた44%のリスク軽減は臨床的には意義がある。とくに移植後グラフト不全がHOPE群に有意に少ないことは、遠方からのドナー心の搬送や複雑な手技が必要な心臓移植において、虚血時間等の問題解決につながる可能性がある。

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lymphoma(リンパ腫)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第16回

言葉の由来“lymphoma”(リンパ腫)という病名は、“lymph”と状態を表す接尾辞の“-oma”が組み合わさってできたものです。“lymph”はラテン語の“lympha”に由来し、これは「澄んだ水」を意味します。一方、“-oma”は「腫瘍」や「増殖」を示す接尾辞です。リンパ系組織に発生する腫瘍であることから、この名前が付けられました。悪性リンパ腫は1832年に英国の医師トーマス・ホジキンがリンパ節腫脹を特徴とした7例の症例を報告したのが最初とされています。当時は“Hodgkin’s disease”(ホジキン病)と呼ばれましたが、科学の進歩と共にリンパ腫の診断と分類が詳細化され、“Hodgkin’s lymphoma”や“non-Hodgkin’s lymphoma”と分類されるようになりました。併せて覚えよう! 周辺単語非ホジキンリンパ腫non-Hodgkin’s lymphoma悪性リンパ腫malignant lymphomaリンパ節腫脹lymphadenopathy脾腫splenomegaly盗汗night sweatsこの病気、英語で説明できますか?Lymphoma is a type of cancer that originates in the lymphatic system, which is part of the body's immune system. Symptoms may include swollen lymph nodes, fever, fatigue, and weight loss. Treatment often involves chemotherapy and radiation therapy.講師紹介

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免疫療法を受けるがん患者は乾癬に注意

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による治療を受けるがん患者は、ICI以外(化学療法または分子標的薬)による治療を受けているがん患者と比較して、乾癬のリスクが高いことが、台湾・国防医学院のSheng-Yin To氏らによる全国規模のコホート研究で示された。ICIによる免疫療法は画期的ながん治療として認知されているが、自己免疫疾患の発症などの免疫関連有害事象に関する懸念も存在する。著者は、「今回の結果は、最適ながん治療を確実に行えるように、臨床医と患者は免疫療法に伴う乾癬のリスク上昇を認識しておくべきことの重要性を強調するものである」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年11月6日号掲載の報告。 研究グループは、Taiwan National Health InsuranceのデータベースとTaiwan Cancer Registryのデータを用いた。ICIの有無による乾癬リスクはtarget trial emulationのデザインを用いて評価した。 対象は、2019年1月1日~2021年6月30日にStageIII/IVのがんで抗がん治療を受けた患者とし、ICIによる治療を受けた患者(ICI群)と化学療法または分子標的薬による治療を受けた患者(非ICI群)に分類した。2023年5月~2024年7月にデータ解析を行った。 主要アウトカムは、追跡期間中の乾癬の発症とした。逆確率重み付け法(IPTW)を用いて潜在的な交絡因子の影響を軽減し、Cox比例ハザードモデルおよびFine-Grayモデルにより乾癬リスクのハザード比(HR)を算出して評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、抗がん治療を受けた13万5,230例(平均年齢62.94歳[標準偏差:13.01]、女性45.1%)。・ICI群は3,188例、非ICI群は13万2,042例であった。・ICI群では、乾癬の発症率が1,000人年当たり5.76件であり、非ICI群の同1.44件と比べて高かった。・交絡因子の補正後においても、ICI群は乾癬の発症リスクが高かった(IPTW補正後HR:3.31、IPTW補正後部分分布HR:2.43)。・試験開始からの解析と治療中の解析のいずれにおいても、以上の結果は一貫していた。また、すべての追跡期間とすべての感度解析においても結果は一貫して強固なものであった。

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高K血症または高リスクのHFrEF、SZC併用でMRAの長期継続が可能か/AHA2024

 ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は、左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者の予後を改善することが報告されている。しかし、MRAは高カリウム血症のリスクを上げることも報告されており、MRAの減量や中断につながっていると考えられている。そこで、高カリウム血症治療薬ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物(SZC)をMRAのスピロノラクトンと併用することが、高カリウム血症または高カリウム血症高リスクのHFrEF患者において、スピロノラクトンの至適な使用に有効であるかを検討する無作為化比較試験「REALIZE-K試験」が実施された。本試験の結果、SZCは高カリウム血症の発症を減少させ、スピロノラクトンの至適な使用に有効であったが、心不全イベントは増加傾向にあった。本研究結果は、11月16~18日に米国・シカゴで開催されたAmerican Heart Association’s Scientific Sessions(AHA2024、米国心臓学会)のLate-Breaking Scienceで米国・Saint Luke’s Mid America Heart Institute/University of Missouri-Kansas CityのMikhail N. Kosiborod氏によって発表され、Journal of the American College of Cardiology誌オンライン版2024年11月18日号に同時掲載された。 本試験の対象は、高カリウム血症(血清カリウム値5.1~5.9mEq/LかつeGFR≧30mL/min/1.73m2)または高カリウム血症高リスクのHFrEF(左室駆出率40%以下、NYHA分類II~IV度)患者203例であった。本試験は導入期と無作為化期で構成された。導入期では、スピロノラクトンを50mg/日まで漸増し、必要に応じてSZCを用いて血清カリウム値を正常範囲(3.5~5.0mEq/L)に維持した。導入期の終了時において、スピロノラクトンを25mg/日以上の用量で継続、かつ血清カリウム値が正常範囲であった患者をSZC群とプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。無作為化期では、スピロノラクトンとSZCまたはプラセボを6ヵ月投与した。主要評価項目と主要な副次評価項目は以下のとおりで、上から順に階層的に検定した。【主要評価項目】・スピロノラクトンの至適な使用(スピロノラクトンを25mg/日以上の用量で継続し、血清カリウム値が正常範囲を維持し、高カリウム血症に対するレスキュー治療なし)【主要な副次評価項目】・無作為化時のスピロノラクトン用量での血清カリウム値正常範囲の維持・スピロノラクトンを25mg/日以上の用量で継続・高カリウム血症発症までの期間・高カリウム血症によるスピロノラクトンの減量または中止までの期間・カンザスシティ心筋症質問票臨床サマリースコア(KCCQ-CSS)の変化量 主な結果は以下のとおり。・主要評価項目のスピロノラクトンの至適な使用は、SZC群71%、プラセボ群36%に認められ、SZC群が有意に優れた(オッズ比[OR]:4.45、95%信頼区間[CI]:2.89~6.86、p<0.001)。・主要な副次評価項目の上位4項目はSZC群が有意に優れた。詳細は以下のとおり。<無作為化時のスピロノラクトン用量での血清カリウム値正常範囲の維持>SZC群58% vs.プラセボ群23%(OR:4.58、95%CI:2.78~7.55、p<0.001)<スピロノラクトンを25mg/日以上の用量で継続>SZC群81% vs.プラセボ群50%(OR:4.33、95%CI:2.50~7.52、p<0.001)<高カリウム血症発症までの期間>ハザード比[HR]:0.51、95%CI:0.37~0.71、p<0.001<高カリウム血症によるスピロノラクトンの減量または中止までの期間>HR:0.37、95%CI:0.17~0.73、p=0.006・KCCQ-CSSの変化量は、両群に有意差はみられなかった(群間差:-1.01点、95%CI:-6.64~4.63、p=0.72)。・心血管死・心不全増悪の複合は、SZC群11例(心血管死1例、心不全増悪10例)、プラセボ群3例(それぞれ1例、2例)に認められ、SZC群が多い傾向にあった(log-rank検定による名目上のp=0.034)。

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オメガ3・6脂肪酸の摂取はがん予防に有効か

 多価不飽和脂肪酸(PUFA)のオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の血中濃度は、がんの発症リスクと関連していることが、新たな研究で示唆された。オメガ3脂肪酸の血中濃度が高いことは、結腸がん、胃がん、肺がん、肝胆道がんの4種類のがんリスクの低下と関連し、オメガ6脂肪酸の血中濃度が高いことは、結腸がん、脳、メラノーマ、膀胱がんなど13種類のがんリスクの低下と関連することが明らかになったという。米ジョージア大学公衆衛生学部のYuchen Zhang氏らによるこの研究の詳細は、「International Journal of Cancer」に10月17日掲載された。Zhang氏は、「これらの結果は、平均的な人が食事からこれらのPUFAの摂取量を増やすことに重点を置くべきことを示唆している」と述べている。 この研究でZhang氏らは、UKバイオバンク研究の参加者25万3,138人のデータを用いて、オメガ3脂肪酸およびオメガ6脂肪酸の血漿濃度とあらゆるがん(以下、全がん)、および部位特異的がんとの関連を検討した。ベースライン調査時(2007〜2010年)に得られた血漿サンプルを用いて、核磁気共鳴法(NMR)によりこれらのPUFAの絶対濃度と総脂肪酸に占める割合(以下、オメガ3脂肪酸の割合をオメガ3%、オメガ6脂肪酸の割合をオメガ6%とする)を評価した。対象としたがんは、頭頸部がん、食道がん、胃がん、結腸がん、直腸がん、肝胆道がん、膵臓がん、肺がん、メラノーマ、軟部組織がん、乳がん、子宮がん、卵巣がん、前立腺がん、腎臓がん、膀胱がん、脳腫瘍、甲状腺がん、リンパ系および造血組織がんの19種類だった。 平均12.9年の追跡期間中に、2万9,838人ががんの診断を受けていた。喫煙状況、BMI、飲酒状況、身体活動量などのがんのリスク因子も考慮して解析した結果、オメガ3脂肪酸およびオメガ6脂肪酸の血漿濃度が上昇すると全がんリスクが低下するという逆相関の関係が認められた。全がんリスクは、オメガ3%が1標準偏差(SD)上昇するごとに1%、オメガ6%が1SD上昇するごとに2%低下していた。がん種別に検討すると、オメガ6%は13種類のがん(食道がん、結腸がん、直腸がん、肝胆道がん、膵臓がん、肺がん、メラノーマ、軟部組織がん、卵巣がん、腎臓がん、膀胱がん、脳腫瘍、甲状腺がん)と負の相関を示した。一方、オメガ3%は4種類のがん(胃がん、結腸がん、肝胆道がん、肺がん)と負の相関を示す一方で、前立腺がんとは正の相関を示すことが明らかになった。 オメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸は、脂肪分の多い魚やナッツ類、植物由来の食用油に含まれているが、十分な量を摂取するために魚油サプリメントに頼る人も多い。しかし研究グループは、これらのPUFAの効用が全ての人にとって同じように有益になるとは限らないとしている。実際に、本研究では、オメガ3脂肪酸の摂取量が多いと前立腺がんのリスクがわずかに高まる可能性のあることが示された。論文の上席著者であるジョージア大学Franklin College of Arts and SciencesのKaixiong Ye氏は、このことを踏まえ、「女性なら、オメガ3脂肪酸の摂取量を増やすという決断も容易だろう」と同大学のニュースリリースの中で話している。

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更年期にホットフラッシュの多い女性は糖尿病リスクが高い

 更年期にホットフラッシュや寝汗などの症状を頻繁に経験した女性は、その後、2型糖尿病を発症する可能性が高いことが報告された。米カイザー・パーマネンテのMonique Hedderson氏らの研究によるもので、「JAMA Network Open」に10月31日、レターとして掲載された。 更年期には、ホットフラッシュ(突然の体のほてり)や寝汗(睡眠中の発汗)など、血管運動神経症状(vasomotor symptoms;VMS)と呼ばれる症状が現れやすい。このVMSは肥満女性に多いことが知られており、また心血管代謝疾患のリスクと関連のあることが示唆されている。ただし、糖尿病との関連はまだよく分かっていない。Hedderson氏らは、米国の閉経前期または閉経後早期の女性を対象とする前向きコホート研究(Study of Women’s Health Across the Nation;SWAN)のデータを用いて、VMSと糖尿病リスクとの関連を検討した。 SWANの参加者は2,761人で、平均年齢は46±3歳。人種/民族は、白人が49%、黒人が27%を占め、日本人も9.6%含まれている。そのほかは中国人が8.5%、ヒスパニックが6.5%。全体の28%は2週間に1~5日のVMSを報告し、10%は同6日以上のVMSを報告していた。追跡期間中に2型糖尿病を発症したのは338人(12.2%)だった。 VMSの出現パターンに基づき全体を4群に分け、交絡因子(年齢、人種/民族、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、教育歴、閉経ステージ〔閉経前期/閉経後早期〕、研究参加地点など)を調整後に、一貫してVMSが現れなかった群を基準に2型糖尿病発症リスクを解析。すると、一貫してVMSが頻繁に(2週間に6日以上)現れていた群は、50%ハイリスクであることが分かった(ハザード比〔HR〕1.50〔95%信頼区間1.12~2.02〕)。VMSの出現頻度が閉経ステージの前半のみ高かった群や、後半のみ高かった群は、一貫してVMSが現れなかった群とのリスク差が非有意だった。 論文の筆頭著者であるHedderson氏は、「更年期にVMSが頻繁に現れる女性は、ほかの健康リスクも抱えているというエビデンスが増えている」と話す。ただし、その関連のメカニズムはよく分かっていないとのことだ。論文の上席著者である米ピッツバーグ大学のRebecca Thurston氏も、「われわれの研究結果は、女性の心血管代謝の健康に対するVMSの重要性、特にその症状が長期間続く女性での重要性を示しており、さらなる研究が求められる。ホットフラッシュは、単なる不快な症状にとどまるものではないのかもしれない」と述べている。 研究グループによると、VMSが糖尿病のリスクを高める理由はまだ明確に説明できないが、VMSが心臓病のリスク増加につながるというエビデンスはあるという。そして、心臓病と糖尿病は、慢性炎症や睡眠の質の低下、体重増加が併存することが多いなどの共通点があると指摘している。 なお、Hedderson氏は、「女性の70%は更年期のどこかの時点で何らかのVMSを経験するが、われわれの研究で明らかになった糖尿病リスクの上昇が認められるのは、そのような女性のごく一部だ」と付け加えている。

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統合失調症に対して最も良好なシータバースト刺激プロトコールは

 反復経頭蓋外磁気刺激(rTMS)の1つであるシータバースト刺激(theta burst stimulation:TBS)は、頭蓋上のコイルから特異的なパターン刺激を発生することで、短時間で標的脳部位の神経活動を変調させる。TBSには、間欠的な刺激パターンであるintermittent TBS(iTBS)による促通効果と持続的な刺激パターンであるcontinuous TBS(cTBS)による抑制効果がある。現在までに、統合失調症に対するTBSプロトコールがいくつか検討されているが、その有効性に関しては、一貫した結果が得られていない。藤田医科大学の岸 太郎氏らは、成人統合失調症患者に対し、どのTBSプロトコールが最も良好で、許容可能かを明らかにするため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。JAMA Network Open誌2024年10月1日号の報告。 2024年5月22日までに公表された研究を、Cochrane Library、PubMed、Embaseデータベースより検索した。包括基準は、TBS治療に関する公開済み、未公開のランダム化臨床試験(RCT)および統合失調症スペクトラム、その他の精神疾患またはその両方の患者を含むRCTとした。Cochraneの標準基準に従ってデータ抽出および品質評価を行い、報告には、システマティックレビューおよびメタ解析の推奨報告項目ガイドラインを用いた。研究間のバイアスリスクは、Cochrane Risk of Bias Tool ver.2.0で評価し、ネットワークメタ解析の信頼性アプリケーションを用いて、メタ解析結果のエビデンスの確実性を評価した。文献検索、データ転送精度、算出については、2人以上の著者によるダブルチェックを行った。主要アウトカムは、陰性症状に関連するスコアとした。頻度論的ネットワークメタ解析では、ランダム効果モデルを用いた。連続変数または二値変数の標準平均差(SMD)またはオッズ比は、95%信頼区間(CI)を用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・9つのTBSプロトコールを含む30件のRCT(1,424例)が抽出された。・左背外側前頭前野に対するiTBSのみが、シャム対照群と比較し、陰性症状を含む各症状の改善を認めた。【陰性症状スコア】SMD:−0.89、95%CI:−1.24〜−0.55【全体的な症状スコア】SMD:−0.81、95%CI:−1.15〜−0.48【PANSS総合精神病理スコア】SMD:−0.57、95%CI:−0.89〜−0.25【抑うつ症状スコア】SMD:−0.70、95%CI:−1.04〜−0.37【不安症状スコア】SMD:−0.58、95%CI:−0.92〜−0.24【全般的認知機能スコア】SMD:−0.52、95%CI:−0.89〜−0.15・陽性症状スコア、すべての原因による中止率、有害事象による中止率、頭痛の発生率、めまいの発生率は、いずれのTBSプロトコールおよびシャム対照群の間で有意な差は認められなかった。 著者らは「左背外側前頭前野に対するiTBSのみが、統合失調症患者の陰性症状、抑うつ症状、不安症状、認知機能改善と関連しており、忍容性も良好であった。統合失調症治療におけるTBSの潜在的な効果を評価するためには、さらなる研究が求められる」と結論付けている。

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英語で「詳しく説明する」は?【1分★医療英語】第158回

第158回 英語で「詳しく説明する」は?《例文1》Let me walk you through the procedure before we begin.(始める前に、手技の手順を説明させてください)《例文2》I'll walk you through the lab results and what they indicate.(検査結果とそれが何を示すかについて説明します)《解説》“walk through”は、「詳しく説明する」「順を追って説明する」という意味を持つ表現です。医療現場では、検査結果や治療方針などを患者に伝えたり、手技などの手順を他の医療者に詳しく説明したりする際に使用します。“walk”と“through”の間に“me”や“you”などの代名詞を入れて使うことが多く、“walk me through”は「私に説明してください」、“walk you through”は「あなたに説明します」という意味になります。「説明する」という意味の表現には“explain”や“go over”もありますが、“walk through”は直訳すれば「歩き通す」で、そのトーンのように「丁寧に、順を追って説明する」という意味になります。講師紹介

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第242回 脂肪細胞の肥満記憶がリバウンドを引き起こすらしい

脂肪細胞の肥満記憶がリバウンドを引き起こすらしい体重を減らして代謝をよくし、体重絡みの不調をなくすことが肥満治療の主な目標です。しかし減った体重を維持するのは容易ではありません。治療で落ちた体重のおよそ30~35%は1年もすると復活(リバウンド)し、2人に1人は体重減少から5年目までにもとの体重に戻ってしまいます1)。米国疾病管理センター(CDC)の調査で、10%以上の体重減少を少なくとも1年間維持できたことがある太り過ぎや肥満の人の割合は、ほんの6人に1人ほど(約17%)に限られました2)。ヒトの体は体重が減っても持続する肥満時の特徴、いわば肥満記憶を維持していて、それがリバウンドに寄与しているようです。チューリッヒ工科大学(ETH Zurich)のLaura C. Hinte氏らのヒトやマウスの新たな研究3)によると、そのような肥満記憶は脂肪細胞の核内のDNAの取り巻きの変化(後成的変化)によってどうやら支えられているようです。Hinte氏らは肥満の20例の肥満手術直前と手術の甲斐あって体重が少なくとも4分の1減った2年後の脂肪組織を解析しました。また、正常体重の18例の脂肪組織も検討しました。脂肪細胞のRNAの推移を調べたところ、肥満者では正常体重者に比べて100を超えるRNAが増えるか減っており、肥満手術で体重が減った2年時点も同様でした。その変化は体重を増えやすくすることと関連する炎症を促進し、脂肪の貯蔵や燃焼の仕組みを損なわせるらしいと研究を率いたFerdinand von Meyenn氏は言っています4)。そういうRNAの変化が体重のリバウンドに寄与するかどうかがマウスを使って次に検討されました。まず、体重を減らした肥満マウスにヒトに似たRNA変化が持続していることが確かめられました。続いて、体重を減らしたかつて肥満だったマウスと非肥満マウスに高脂肪食を1ヵ月間与えました。すると、非肥満マウスの体重増加は5gほどだったのに対して、かつて肥満だったマウスの体重は14gほども増加しました。かつて肥満だったマウスの脂肪細胞を取り出して調べたところ、脂肪や糖を非肥満マウスに比べてより取り込みました。そして、マウス脂肪細胞の肥満に伴うDNA後成的変化は体重が減ってからも維持されていました。その後成的変化が肥満と関連するRNA変化を生み出し、後の体重増加の火種となるようです。マウスのDNA後成的変化がヒトにも当てはまるのかどうかを今後の研究で調べる必要があります。また、脂肪細胞が肥満の記憶をどれほど長く維持するのかも調べる必要があります。Hinte氏によると脂肪細胞は長生きで、新しい細胞と入れ替わるのに平均10年もかかります5)。肥満の記憶を保持するのは脂肪細胞だけとは限らないかもしれません。脳、血管、その他の臓器の細胞も肥満を覚えていて体重リバウンドに寄与するかもしれません。研究チームは次にその課題を調べるつもりです。細胞の核内の体重関連後成的変化を薬で手入れし、肥満の後成的記憶を消すことは今のところ不可能です5)。しかし、やがてはそういう薬ができて肥満治療に役立つようになるかもしれません。参考1)Sarwer DB, et al. Curr Opin Endocrinol Diabetes Obes. 2009;16:347-352.2)Kraschnewski JL, et al. Int J Obes (Lond). 2010;34:1644-1654.3)Hinte LC, et al. Nature. 2024 Nov 18. [Epub ahead of print] 4)We're starting to understand why some people regain weight they lost / NewScientist5)Cause of the yo-yo effect deciphered / ETH Zurich

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急性期脳出血、中医薬FYTF-919は有効性示せず/Lancet

 FYTF-919は、中国で脳出血の治療に用いられている主に4種の生薬から成る経口薬で、血腫の除去を促進し、死亡率を低下させ、脳出血後の回復を改善する可能性が示唆されているが、エビデンスは十分でないとされる。中国・広州中医薬大学のJianwen Guo氏らCHAIN investigatorsは、「CHAIN試験」において、本薬には中等症から重症の脳出血患者の機能回復、生存、健康関連QOLを改善する効果はないことを示した。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2024年11月12日号に掲載された。中国の無作為化プラセボ対照比較試験 CHAIN試験は、中国の26の病院で実施した実践的な二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2021年11月~2023年12月に参加者の無作為化を行った(Key-Area Research and Development Program of Guangdong Provinceの助成を受けた)。 年齢18歳以上、症状発現(または最終健常確認)から48時間以内の症候性の非外傷性脳出血(脳画像で確認)と診断され、中等度~重度の神経障害(NIHSSスコアが8点以上、またはGCSスコアが7~14点)を有する患者を対象とした。 被験者を、FYTF-919の経口液剤33mL(嚥下障害のある場合は経鼻胃管で25mL)またはプラセボのいずれかを、24時間かけて投与(8時間ごと[経鼻胃管の場合は6時間ごと]に食後30分以上経過してから投与)し、これを28日間継続する群に無作為に割り付けた。 有効性の主要アウトカムは、90日時点での効用加重修正Rankin尺度(mRS)のスコアとした。mRSは7段階の順序尺度で、0~1点は症状の有無を問わず機能障害がなく良好なアウトカムを示し、2~5点は機能障害と他者への依存度が増加し、6点は死亡と定義した。副次アウトカムにも差はない 1,641例を修正ITT解析に含め、FYTF-919群に815例、プラセボ群に826例を割り付けた。全体の平均年齢は67.1(SD 12.0)歳で、34.2%が女性であった。出血部位は1,346例(83.7%)が大脳基底核または視床であり、ベースラインのNIHSSスコア中央値は15点(四分位範囲:10~20)、30.3%が早期減圧術を受け、発症から無作為化までの時間中央値は15.3時間(7.4~25.8)、平均収縮期血圧は172(SD 29)mmHgだった。 1,242例(75.7%)が試験薬の80%以上を服用し、994例(60.6%)が28日までに試験薬をすべて服用した。90日の時点での効用加重mRSスコアの平均値は、FYTF-919群が0.44点、プラセボ群も0.44点であり、両群間に有意な差を認めなかった(群間差:0.01点、95%信頼区間:-0.02~0.04、p=0.63)。調整分析、感度分析、per-protocol解析でも結果は変わらなかった。 副次アウトカム(死亡または機能障害[mRS:4~6]、死亡、機能障害[mRS:4~5]、Barthel指数、EQ-5D-5L効用値、肺炎、28日までの退院など)にも両群間に差はなかった。重篤な有害事象の頻度も同程度 全体として、有害事象(FYTF-919群79.8% vs.プラセボ群80.5%)および重篤な有害事象(41.5% vs.43.3%[90日間の追跡期間中])の頻度に有意差はなかった。とくに注目すべき有害事象(13.6% vs.9.4%、p=0.01)はFYTF-919群で多く、このうち下痢がそれぞれ10.6%および6.5%に発現した。 著者は、「両群間で重篤な有害事象の頻度に有意差がなかったことから、FYTF-919は安全と考えられる」「これらの結果は、FYTF-919に効果がないという決定的なエビデンスを提供するものである」とし、「この研究は、中国ですでに広く使用されている伝統的な中医薬の有用性の評価において、大規模で方法論的に厳格な無作為化比較試験が実行可能であることを示している」と指摘している。

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全身性免疫炎症指数はCKDの死亡率に関連

 慢性腎臓病(CKD)患者における全身性免疫炎症指数(SII)のレベルと全死亡率の間にはJ字型の関連があることが、「Immunity, Inflammation and Disease」に9月10日掲載された。 上海中医薬大学(中国)のMeng Jia氏らは、CKD患者におけるSIIと全死亡率の関連性を検討した。分析には、1999~2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)の対象者であったCKD患者9,303人が含まれた。 解析の結果、中央値86カ月の追跡期間において、SIIレベルと全死亡率との間に明確なJ字型の関連が示された。最低値は、第2四分位数内のSIIレベル478.93で確認された。SIIが478.93を超えると、SIIレベルの標準偏差が1増加するごとに全死亡率のリスクが上昇した(ハザード比1.13)。CKD患者では、SIIの上昇と全死亡率のリスク上昇との間に関連性が見られた(第4四分位数対第2四分位数のハザード比1.23)。SIIとCKDによる死亡率の相関は、60歳以上の対象者および糖尿病患者において特に顕著であった。SIIの極端な5%の外れ値を除外すると、SIIと全死亡率との間には線形の正の関連が見られた。 著者らは、「SII指数は、血小板、好中球、リンパ球の数を網羅しており、炎症状態と宿主免疫応答の間のバランスをより包括的に表す」と述べている。

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高リスクIgA腎症へのエンドセリンA受容体拮抗薬の重度蛋白尿改善効果は確定(解説:浦信行氏)

 エンドセリンA受容体拮抗薬の蛋白尿改善効果はIgA腎症をはじめとして、慢性腎臓病(CKD)や巣状糸球体硬化症等で次々に報告されるようになった。本研究(ALIGN研究)は高リスクIgA腎症を対象とし、エンドセリンA受容体拮抗薬atrasentanの36週での尿蛋白減少効果を偽薬投与群と比較した成績であるが、36.1%有意に減少させたと報告された。 同様の成績は昨年エンドセリンA受容体・アンジオテンシンII受容体デユアル拮抗薬のsparsentanの報告(PROTECT研究)があるので、結果を対比する(CLEAR!ジャーナル四天王-1666「IgA腎症の病態に根差した治療」と同1755「IgA腎症の新たな治療薬sparsentanの長期臨床効果」で解説)。まず、対象はeGFR30 mL/min以上で、尿蛋白1g/day以上であり、両者に差はない。使用薬剤はエンドセリンA受容体・アンジオテンシンII受容体デユアル拮抗薬とエンドセリンA受容体拮抗薬の違いはあるが、対照群が各々イルベサルタンと偽薬であり、本質的な差はないと考える。また、第III相、二重盲検、多国間試験であり、この点に関しても本質的な差はない。また有害事象の発生は2群間に有意差はなく、同様の成績である。ALIGN研究はエンドセリンA受容体拮抗薬と偽薬との対比であるため、より直接的にエンドセリンA受容体拮抗薬の尿蛋白減少効果を評価できたことが両者の違いである。ただし、PROTECT研究はより詳細に尿蛋白減少効果を評価しており、110週に至るまでの長期効果を0.3g/day未満の完全緩解率と1.0g/day未満の部分寛解率も良好な成績で報告されている。尿蛋白の多寡が腎機能障害の進行の程度に関連することを考慮すると、この点に関しても提示してほしかった。 本研究は132週まで継続し、eGFRの推移を2群間で対比する予定である。PROTECT研究は110週までのeGFRのスロープを対比しており、6週から110週までのそれに有意差があったが、1日目から110週までの全スロープでは、残念ながらp=0.058と傾向に留まった。ALIGN研究の今後の期待はこの点にある。

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境界性パーソナリティ障害に非定型抗精神病薬は有効なのか〜メタ解析

 境界性パーソナリティ障害(BPD)患者は、心理社会的機能に問題を抱えていることが多く、その結果、患者自身の社会的関与能力の低下が認められる。英国・サセックス大学のKatie Griffiths氏らは、成人BPD患者の心理社会的機能の改善に対する非定型抗精神病薬の有効性を検討した。Psychiatry Research Communications誌2024年9月号の報告。 1994〜2024年に実施されたプラセボ対照ランダム化比較試験6件をメタ解析に含めた。対象は、オランザピン、クエチアピン、ziprasidone、アリピプラゾールのいずれかで治療されたBPD患者1,012例。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析では、BPD患者の心理社会的機能の治療において、非定型抗精神病薬の小さな改善を示す証拠が明らかとなった。・とくに、非定型抗精神病薬は、プラセボと比較し、機能の全般的評価(GAF)スコアの改善が認められた。・複数の研究より、GAFのp値を組み合わせたところ、統計学的に有意であることが示唆された。・非定型抗精神病薬は、対人関係、職業機能、家族生活の質の改善においても、プラセボより優れていた。・社会生活、余暇活動においても、ポジティブな改善傾向が認められた。・非定型抗精神病薬治療では、体重増加や過鎮静など、既知の副作用発現がみられた。 著者らは「BPD患者に対する非定型抗精神病薬治療は、心理社会的機能やその他の症状改善に有用であるが、その効果は、プラセボをわずかに上回る程度であり、臨床的意義については議論の余地が残る。そのため、より多くのランダム化比較試験が必要とされる」としている。

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重症βサラセミアへのbeti-cel、89%が輸血非依存性を達成/Lancet

 重症βサラセミアを引き起こす遺伝子型(β0/β0、β0/β+IVS-I-110、またはβ+IVS-I-110/β+IVS-I-110)を有する輸血依存性βサラセミア(TDT)患者において、betibeglogene autotemcel(beti-cel)の投与により約90%の患者が輸血非依存状態になったことが示された。米国・ペンシルベニア大学のJanet L. Kwiatkowski氏らが、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、英国、米国の8つの医療施設で実施した第III相非無作為化非盲検単群試験「HGB-212試験」の結果を報告した。TDTは、生涯にわたる輸血、鉄過剰症および関連合併症を伴う重篤な疾患である。beti-celによる遺伝子治療は、BB305レンチウイルスベクターで形質導入した自己造血幹細胞および前駆細胞を使用するもので、輸血非依存性を可能にする。著者は、「beti-celは、重症TDT患者においてほぼ正常なヘモグロビン値を達成する可能性があり、同種造血幹細胞移植のリスクや限界がなく、治癒を目指す治療選択肢になると考えられる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年11月8日号掲載の報告。主要アウトカムは輸血非依存状態 HGB-212試験の対象は、β0/β0、β0/β+IVS-I-110、またはβ+IVS-I-110/β+IVS-I-110遺伝子型を有し、登録前2年間に100mL/kg/年以上の濃厚赤血球(pRBC)輸血歴または年間8回以上のpRBC輸血歴がある臨床的に安定した50歳以下のTDT患者であった。 HSPC動員ならびに用量調整ブスルファンを用いた骨髄破壊的前処置を行った後、beti-celを静脈内投与し、24ヵ月間追跡した。 主要アウトカムは、輸血非依存状態(pRBC輸血なしでHb濃度加重平均9g/dL以上が12ヵ月以上持続)の患者の割合で、beti-celの投与を受けたすべての患者(移植対象集団)を解析対象集団とした。安全性は、試験の治療を開始したすべての患者(ITT集団)を対象に評価した。89%が主要アウトカムを達成 2017年6月8日~2020年3月12日に、20例がスクリーニングされた。1例は進行性肝疾患を有しており適格基準を満たさず、1例はHSPC動員およびアフェレーシス後に試験同意を撤回したため、beti-cel投与患者は18例であった。 男性が10例(56%)、女性が8例(44%)で、同意取得時に18歳未満が13例(72%)、18歳以上が5例(28%)であった。また、β0/β0遺伝子型が12例(67%)、β0/β+IVS-I-110遺伝子型が3例(17%)、β+IVS-I-110/β+IVS-I-110遺伝子型が3例(17%)であった。 beti-celを投与された18例全例が、主要アウトカムの評価対象となった。2023年1月30日時点(追跡期間中央値47.9ヵ月[範囲:23.8~59.0])において、18例中16例(89%)が輸血非依存状態を達成した(推定効果量:89.9%[95%信頼区間:65.3~98.6])。 有害事象は、18例全例に認められたが、beti-celとの関連が疑われる重篤な有害事象は認められず、死亡例も報告されなかった。 全例が第III相試験を完了し、現在進行中の13年間の長期追跡試験「LTF-303試験」に登録された。

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