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乳製品と死亡リスク減少、牛乳vs.ヨーグルト/慶應大

 日本人における乳製品摂取と死亡リスクとの関連を12年間追跡調査した結果、男女ともにヨーグルトの摂取量が多いほど全死因死亡リスクが低く、女性ではさらに乳製品全般および牛乳摂取と全死因死亡リスク、牛乳摂取とがん死亡リスク、ヨーグルト摂取と心血管疾患死亡リスクの低下が関連していたことを、慶應義塾大学の宮川 尚子氏らが明らかにした。Journal of Atherosclerosis and Thrombosis誌オンライン版2024年11月13日号掲載の報告。 これまでの研究において、日本人集団における乳製品摂取と死亡リスクとの関連は、研究間で、とくに男女間で一貫していない。そこで研究グループは、日本多施設共同コホート研究(J-MICC Study)の追跡データを用いて、乳製品摂取と全死因死亡やがん死亡、心血管疾患死亡との関連を調べた。 解析対象は、がんや循環器疾患の既往歴がなく、乳製品摂取情報がある7万9,715人(女性57.2%、平均年齢54.7歳)であった、乳製品の摂取量は、検証済みの食物摂取頻度調査票を使用して聴取した。潜在的交絡因子および食事因子を調整し、Cox比例ハザードモデルを用いて、乳製品摂取量で三分位に分けて死亡率のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。●乳製品総摂取量の中央値は、男性が34.6g/1,000kcal(66.0g/日)、女性が79.7g/1,000kcal(127.5g/日)であった。●追跡期間中央値12.4年(93万2,738人年)で3,723例が死亡し、そのうちがんによる死亡が2,088例、心血管疾患による死亡が530例であった。●男性では、ヨーグルトの摂取量がもっとも多い群では、もっとも少ない群よりも全死因死亡リスクが低かった(HR:0.90、95%CI:0.82~0.999、傾向のp=0.034)。●女性では、乳製品の総摂取量と全死因死亡リスク、牛乳摂取量と全死因死亡リスクおよびがん死亡リスク、ヨーグルト摂取量と全死因死亡リスクおよび心血管疾患死亡リスクとの間にも逆相関が観察された。 ・乳製品摂取による全死因死亡のHR:0.81、95%CI:0.70~0.92、傾向のp=0.001 ・牛乳摂取による全死因死亡のHR:0.84、95%CI:0.73~0.95、傾向のp=0.007 ・牛乳摂取によるがん死亡のHR:0.82、95%CI:0.69~0.99、傾向のp=0.034 ・ヨーグルト摂取による全死因死亡のHR:0.87、95%CI:0.76~0.997、傾向のp=0.046 ・ヨーグルト摂取による心血管疾患死亡のHR:0.64、95%CI:0.46~0.90、傾向のp=0.007 これらの結果より、研究グループは「女性の乳製品全般と牛乳の摂取量の多さ、および男女のヨーグルト摂取量の多さは、12年間の追跡調査において全死因死亡リスクの低下と関連していた。本研究は、少なくとも日本人が日常的に摂取している程度の乳製品の摂取は、健康的な食生活の品目としての推奨と矛盾しないことを示唆している」とまとめた。

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アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾール長期延長試験

 アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾールの有用性が、12週間のランダム化比較試験において実証された。しかし、長期的な有用性については、これまで十分に検証されていなかった。米国・大塚製薬のSaloni Behl氏らは、ブレクスピプラゾールの長期的な安全性および忍容性を評価するため、長期延長試験の結果を報告した。Journal of Alzheimer's Disease誌2024年11月号の報告。 2018年10月〜2022年9月、欧州および米国の66施設において、12週間積極的治療延長試験を実施した。経口ブレクスピプラゾールの投与量は、2mg/日または3mg /日。ランダム化試験を完了したケア施設およびコミュニティ環境下におけるアルツハイマー型認知症に伴うアジテーションを有する患者259例(88.4%)を安全性分析に含めた。アルツハイマー病治療薬の継続投与は許容された。主要安全性エンドポイントは、治療中に発生した有害事象(TEAE)の発生率および重症度とした。探索的有効性エンドポイントは、Cohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)合計スコアの変化とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は74.3±7.6歳、女性の割合は56.0%(145例)、白人の割合は95.8%(248例)。・TEAEの発生率は25.9%(67例)であり、頭痛(3.5%)、転倒(2.3%)の報告が多かった。・ほとんどのTEAEは軽度または中等度であり、重度のTEAEは5例(1.9%)で報告された。・重度の転倒の3例には、つまずき、座り損ねる、脱水が含まれた。・TEAEにより治療を中止した患者は12例(4.6%)であった。・死亡例は認められなかった。・平均CMAI合計スコアは、12週間で9.1ポイントの改善が認められた。 著者らは「ランダム化比較試験および長期延長試験の結果を考慮すると、アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションを有する高齢患者に対するブレクスピプラゾール2mgまたは3mg/日治療は、24週間まで忍容性が良好であることが確認された」と結論付けている。

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MSI-H/dMMRの進行大腸がん、ニボルマブ+イピリムマブが有効/NEJM

 全身療法による前治療歴のない、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)を示す転移を有する大腸がん患者の治療において、化学療法と比較してニボルマブ+イピリムマブ療法は、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、Grade3以上の治療関連有害事象が少ないことが、フランス・ソルボンヌ大学のThierry Andre氏らCheckMate 8HW Investigatorsが実施した「CheckMate 8HW試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年11月28日号に掲載された。国際的な無作為化第III相試験の中間解析 CheckMate 8HW試験は、日本を含む23ヵ国121施設で実施した非盲検無作為化第III相試験であり、2019年8月~2023年4月に患者の無作為化を行った(Bristol Myers SquibbとOno Pharmaceuticalの助成を受けた)。 年齢18歳以上、切除不能または転移を有する大腸がんで、各施設の検査でMSI-HまたはdMMRを示し、さまざまな治療ライン数の患者を対象とした。これらの患者を、ニボルマブ+イピリムマブ療法、ニボルマブ単独療法、化学療法を受ける群に2対2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は以下の2つとし、中央判定でMSI-HまたはdMMRが確定された患者を対象とした。(1)1次治療としてニボルマブ+イピリムマブ療法または化学療法を受けた群におけるPFS、(2)転移病変に対する全身療法の有無を問わずに、ニボルマブ+イピリムマブ療法またはニボルマブ単独療法を受けた群におけるPFS。 今回の事前に規定された中間解析では、(1)の解析結果が報告された。境界内平均生存期間が10.6ヵ月延長 転移病変に対する全身療法を受けていない303例を、ニボルマブ+イピリムマブ群に202例(年齢中央値62歳、女性53%)、化学療法群に101例(同65歳、55%)割り付けた。255例(ニボルマブ+イピリムマブ群171例[85%]、化学療法群84例[83%])が、中央判定でMSI-HまたはdMMRの腫瘍を有していた。 追跡期間中央値31.5ヵ月(範囲:6.1~48.4)の時点で、中央判定でMSI-HまたはdMMRが確定された患者におけるPFS中央値は、化学療法群が5.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.4~7.8)であったのに対し、ニボルマブ+イピリムマブ群は未到達(38.4~評価不能)と有意に優れた(p<0.001[両側層別log-rank検定を用いて算出したPFSの群間差])。 また、Kaplan-Meier曲線による12ヵ月無増悪生存率は、ニボルマブ+イピリムマブ群が79%(95%CI:72~84)、化学療法群は21%(11~32)であり、24ヵ月無増悪生存率はそれぞれ72%(64~79)および14%(6~25)であった。 24ヵ月時の境界内平均生存期間(RMST)は、化学療法群よりニボルマブ+イピリムマブ群で10.6ヵ月(95%CI:8.4~12.9)延長し、これはPFSの主解析の結果と一致した。新たな安全性に関する懸念はみられない ニボルマブ+イピリムマブ群では、そう痒(22%)、下痢(21%)、甲状腺機能低下症(16%)、無力症(14%)、化学療法群では下痢(51%)、悪心(47%)、無力症(35%)、食欲減退(23%)の頻度が高かった。 Grade3または4の治療関連有害事象は、ニボルマブ+イピリムマブ群で23%、化学療法群で48%に発現した。試験薬の投与中止に至った全Gradeの治療関連有害事象は、それぞれ16%および32%に認めた。また、新たな安全性に関する懸念はみられなかった。 著者は、「本試験で得られたPFSの結果は、非無作為化CheckMate 142試験における1次治療としてのニボルマブ+イピリムマブ療法のデータと一致しており、MSI-HまたはdMMRを示す転移を有する大腸がん患者の治療において、この免疫チェックポイント阻害薬2剤併用療法の使用を支持するものである」としている。

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ビタミンB3はCOPD患者の肺の炎症を軽減する?

 ビタミンB3を毎日摂取することで、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の肺の炎症が軽減する可能性のあることが、小規模な臨床試験で明らかになった。コペンハーゲン大学(デンマーク)のMorten Scheibye-Knudsen氏らによるこの研究結果は、「Nature Aging」に11月15日掲載された。Scheibye-Knudsen氏は、「炎症は、COPD患者の肺機能を低下させる可能性があるため、この結果が意味するところは大きい」と述べている。 COPD患者は、肺炎やインフルエンザ、その他の重篤な呼吸器感染症に罹患しやすく、罹患した場合には致命的となることもある。Scheibye-Knudsen氏らは、安定期COPD患者40人(平均年齢71.9歳)と、年齢や性別、BMIが類似した健康な対照20人(平均年齢70.9歳)を対象にランダム化二重盲検プラセボ対照試験を実施し、COPDに対するニコチンアミドリボシド(NR)の効果を評価した。NRはビタミンB3の一種である。COPD患者と対照は、それぞれの群内で、6週間にわたりNR(2g)またはプラセボを摂取する群に1対1の割合でランダムに割り付けられた。対象者は12週間後に追跡調査を受けた。主要評価項目は、炎症マーカーであるインターロイキン8(IL8)のベースラインから6週間目までの変化量とした。 その結果、COPD患者では、IL8の変化量の最小二乗平均値が、NR群で−46.2%、プラセボ群で13.4%であることが明らかになった。両群間の治療効果の差は−52.6%(95%信頼区間−75.7〜−7.6%、P=0.030)であり、NR群ではプラセボ群に比べてIL8の値が有意に低下していた。このようなNRの効果は12週間後も持続しており、治療効果の差は−63.7%(同−85.7〜−7.8%、P=0.034)と推定された。 次に、NR摂取により体内のNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)のレベルがどの程度変化するのかをCOPD患者と対照との間で比較・検討した。NAD+は、免疫機能や炎症などの加齢に関連した複数の経路に関与する中心的な分子として注目されており、ヒトや動物では加齢とともに減少することも知られている。ベースライン時のNAD+の最小二乗平均値は、COPD患者で31.9μM、対照で34.8μMであったが、6週間後には、COPD患者のNR群で71.1μM、対照のNR群で49.4μMに上昇していた。しかし、プラセボ群では、COPD患者でも対照でもNAD+に有意な変化が認められなかった。COPD患者では対照に比べて、NR摂取によるNAD+の増加量が多かったものの、この差は統計学的に有意ではなかった。 Scheibye-Knudsen氏は、「われわれの体内では、加齢に伴いNAD+の代謝も進むようだ。NAD+の減少は、喫煙により生じるようなDNA損傷後にも見られる」と話している。この研究で、ビタミンB3(NR)の摂取によりNAD+レベルが上昇し、細胞の老化の兆候が抑えられたことから、同氏は、「NAD+は、今後の研究と治療の対象となる可能性がある」と述べている。 Scheibye-Knudsen氏は、「この研究結果を確認し、NRのCOPD治療における長期的な効果を判断するには、さらなる研究が必要だ」と述べている。研究グループは、そのために、より大規模な研究を計画しているところだという。Scheibye-Knudsen氏は、「この研究が、COPD患者に新たな治療選択肢への道を切り開くことを期待している」と話している。

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関西医科大学附属病院 臨床腫瘍科(がんセンター)【大学医局紹介~がん診療編】

金井 雅史 氏(診療科長・センター教授)朴 将源 氏(センター診療講師)生駒 龍興 氏(病院助教)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴臨床腫瘍科は2024年7月に新設された診療科で、がん薬物療法とがんゲノム医療を担当しています。2023年の外来化学療法の実績は約2万1,000件で、症例数も多いため、短期間でがん薬物療法の経験値を上げることができます。2024年11月には抗がん剤の早期開発 (Phase I) を実施する新薬開発科が立ち上がり、今後は新薬開発科とも連携してがん薬物療法を実践していきます。地域のがん診療における医局の役割枚方市を含む7市から構成される北河内医療圏(総人口約120万人)のがん診療の基幹病院として、近隣施設からも紹介患者を受け入れています。北河内医療圏は病院間の連携がスムーズで、外来化学療法中の患者さんの体調不良時には近隣施設で対応してもらうことも多いです。今後医局をどのように発展させていきたいか、医師の育成方針私自身も若いときから医療機器や医薬品開発に関わり、現在も継続しています。とくに決まったレールは敷いていないので、海外留学を含めやりたいことがあればできる限りのサポートをします。大学病院で基礎の研究室との垣根も低く、いろんなことにチャレンジできると思います。同医局でのがん診療/研究のやりがい、魅力当科では、消化管がん・乳がん・膵がん・頭頸部がん・婦人科がん・希少がんの診療を行っています。各診療科と連携しつつ、幅広いがん種をカバーしていることが特徴です。また、irAE(免疫関連有害事象)やOnco-cardiology(腫瘍循環器)の院内体制整備など、臓器横断的な活動を任されています。多施設共同研究にも精力的に参加しており、産学連携下の大規模ながんの遺伝子解析プロジェクトであるSCRUM-Japan MONSTAR-SCREENへの登録数は全国でもトップレベルです。臨床研究への参加を通じて、がん研究を行う仲間を全国に作ることができます。さらに、小さな研究のシーズに関しても、KMUコンソーシアムという学内連携の枠組みで基礎・臨床研究を両輪で進めることができます。ふとしたアイデアを形にできる環境です。医学生/初期研修医へのメッセージがん薬物療法への関わりを中心に、皆様の可能性を広げていけるようにサポートしたいと思います。人数が少ないからこそ、個々が尊重されるような診療科を目指していきたいと思います。詳細についてご興味のある方は、ぜひご連絡ください。これまでの経歴初期研修を修了後、腫瘍内科に強い興味を持ち、神戸市立医療センター中央市民病院の内科専門医プログラムに参加しました。2023年に内科専門医の資格を取得し、現在はがん薬物療法専門医の取得を目指して、臨床の現場で研鑽を積んでいます。また、基礎研究には学生時代から興味があり、関西医科大学大学院に進学し、がんの分子メカニズムの解明ができるよう研究に取り組んでいます。臨床と研究の両面で、がん患者の治療の向上を目指して日々努力しています。現在学んでいること低酸素誘導因子とがんに関連する基礎研究を中心に、主にマウスモデルを用いた実験を行っています。研究では、発がんや転移のメカニズムとの関連性に着目し、仮説の検証を進めています。実験結果が仮説通りにいかないことも多く、その原因を特定するのは難しいですが、それが逆に研究を深める手助けとなり、日々興味深く実験に取り組んでいます。関西医科大学附属病院 臨床腫瘍科(がんセンター)住所〒573-1191 大阪府枚方市新町2-3-1問い合わせ先朴 将源(bokush@hirakata.kmu.ac.jp)医局ホームページ関西医科大学附属病院 臨床腫瘍科(がんセンター)*個別ホームページ作成中所属スタッフが取得している専門医資格総合内科専門医がん薬物療法専門医消化器病専門医乳腺専門医臨床薬理専門医研修プログラムの特徴(1)本院(大阪府枚方市)に加えて、連携施設として関西医科大学総合医療センター、関西医科大学香里病院を含めた54病院、合計55の病院により構成される内科専門研修プログラムです。詳細はこちら(2)「阪神5大学サステナブルがん人材養成プラン」に参加しており、大学院(地域がん医療課題克服型腫瘍学コース)では学位取得・専門医取得の指導を行います。詳細はこちら

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手術可能な高齢乳がん患者の予後、即時手術vs.局所再発まで延期/SABCS2024

 70歳以上の手術可能な乳がん患者における、即時手術または局所再発まで手術を延期した場合の長期的リスクを調査したメタ解析によって、即時手術は5年以内の局所再発率を大幅に低下させ、長期的な遠隔再発率と乳がん死亡率も低下させたことを、英国・オックスフォード大学のRobert K. Hills氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で発表した。 これまでの研究により、年齢が上がるほど、とくに80歳以上になると手術の実施率が下がることが報告されている。そのため、手術可能な早期乳がんであっても、高齢患者に対しては内分泌療法のみを実施して手術は局所再発時まで行わないことがあるが、手術を延期することの長期的リスクは不明である。そこで研究グループは、即時手術と手術延期の転帰を比較するために、1980年代に開始された3つの無作為化試験を用いて個々の患者データのメタ解析を実施した。対象は、70歳以上の手術可能な乳がんの女性1,082例(全例がタモキシフェンを少なくとも5年間投与)であった。これらの試験では、放射線療法や化学療法は予定されていなかった。 主要アウトカムは、局所再発までの期間、遠隔再発までの期間、乳がん死亡率であった。局所再発は、手術後の局所再発、または手術を行わない場合は腫瘍径の25%以上の増大と定義した。リンパ節転移の状態により層別化した年齢調整intent-to-treat log-rank解析を用いて初発再発の発生率比(RR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。●無作為化時の年齢中央値は76(73~80)歳、腫瘍径が20mm超だったのは63%(666/1,082例)であった。生存中の平均追跡期間は7.3年であった。●即時手術を受けた518例のうち、45.7%が乳房切除術を受け、47.3%が乳房温存術を受けた。●5年時点の局所再発率は、リンパ節転移の有無にかかわらず即時手術群で大幅に低く、この有益性はフォローアップ初期から認められた。 ・リンパ節転移なし(656例) 即時手術群14.4%、手術延期群45.4%(RR:0.25、95%信頼区間[CI]:0.19~0.34、p<0.00001) ・リンパ節転移あり(262例) 即時手術群6.8%、手術延期群48.1%(RR:0.18、95%CI:0.11~0.29、p<0.00001)●15年時点では、即時手術群のほうが遠隔再発率(RR:0.72、95%CI:0.57~0.90、p=0.003)、乳がん死亡率(RR:0.68、95%CI:0.54~0.86、p=0.002)が低かった。これらの有益性はフォローアップ初期は顕著ではなかった。●全死因死亡率は、即時手術群のほうが低い傾向にあったが、有意差は認められなかった(RR:0.83、95%CI:0.72~0.97、p=0.016)。

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急性呼吸器感染症(ARI)が2025年4月から5類感染症に/厚労省

 厚生労働省は、2025(令和7)年4月7日から感染症法施行規則改正により急性呼吸器感染症(Acute Respiratory Infection:ARI)を感染症法上の5類感染症に位置付け、定点サーベイランスの対象とすることを発表した。急性呼吸器感染症(ARI)の5類位置づけで平時から定点サーベイランス ARIは、急性の上気道炎(鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎、咽頭炎、喉頭炎)または下気道炎(気管支炎、細気管支炎、肺炎)を指す病原体による症候群の総称で、インフルエンザ、新型コロナウイルス、RSウイルス、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、ヘルパンギーナなどが含まれる。 ARIを5類感染症に位置付けた目的として、飛沫感染などにより周囲の人に感染させやすいのが特徴であり、新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえ、次の2点が示されている。(1)流行しやすいARIの流行の動向を把握すること(2)仮に未知の呼吸器感染症が発生し、増加し始めた場合に、迅速に探知することが可能となるよう、平時からサーベイランスの対象とする 厚労省では、今回の5類感染症への位置付けにより、公衆衛生対策の向上につながるとしている。 来年の4月7日以降、ARI定点医療機関および病原体定点医療機関は、多くの5類感染症の定点把握と同様に、1週間当たりの患者数の報告(発生届のように患者ごとに届出を作成・報告する必要はない)が求められ、ARI病原体定点医療機関には、これまでどおり、検体の提出が求められる。また、定点医療機関の指定は都道府県が実施し、指定以外の医療機関に対し、新たに報告を求めることはない。 ARI定点医療機関および病原体定点医療機関が報告する患者または検体を提出する患者は、「咳嗽、咽頭痛、呼吸困難、鼻汁、鼻閉のどれか1つの症状を呈し、発症から10日以内の急性的な症状であり、かつ医師が感染症を疑う外来症例」とされている。提出する検体は、すべての患者から採取するのではなく、一部の患者からのみ採取し、検体の数などは今後公表される予定。 そのほか、今回の位置付けにより特別な患者負担や学業・就業など日常生活での制約はない。 参考までに現在5類感染症に指定されている感染症では、新型コロナウイルス感染症、RSウイルス感染症、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎、水痘、手足口病、伝染性紅斑、突発性発疹、百日咳などがある。

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活動期クローン病の導入・維持療法、ミリキズマブが有効/Lancet

 中等症~重症の活動期クローン病患者の導入療法および維持療法において、プラセボまたはウステキヌマブと比較してヒト化抗ヒトIL-23p19抗体ミリキズマブは、安全性は既知の良好なプロファイルと一致し、かつ有効性に関する2つの複合エンドポイントがいずれも有意に良好であることが、ベルギー・ルーベン大学病院のMarc Ferrante氏らが実施した「VIVID-1試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年11月21日号に掲載された。国際的な第III相無作為化プラセボ/実薬対照比較試験 VIVID-1試験は、中等症~重症の活動期クローン病におけるミリキズマブの有効性と安全性の評価を目的とするtreat-throughデザインを用いた第III相二重盲検ダブルダミー無作為化プラセボ/実薬対照比較試験であり、2019年7月~2023年8月に日本を含む33ヵ国の324施設で患者の無作為化を行った(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。 年齢18~80歳、中等症~重症の活動期クローン病と診断され、過去に1つ以上の従来治療または生物学的製剤による治療で効果不十分、効果消失、不耐容であった患者を対象とした。 これらの患者を、ミリキズマブ900mgを0、4、8週目に静脈内投与し、その後300mgを12~52週目まで4週ごとに皮下投与する群、ウステキヌマブ約6mg/kgを0週目に静脈内投与し、その後90mgを8~52週目まで8週ごとに皮下投与する群、またはプラセボを投与する群に、6対3対2の割合で無作為に割り付けた。 主要複合エンドポイントは以下の2つで、発生率に関してプラセボ群に対するミリキズマブ群の優越性を評価した。(1)12週の時点での患者報告アウトカム(PRO)の臨床的奏効(排便回数または腹痛スコア、あるいはこれら両方の30%以上の減少、かつ両方ともベースラインより悪化しない)と52週時の内視鏡的奏効(SES-CD総スコアのベースラインから50%以上の低下)の複合、(2)12週時のPROの臨床的奏効と52週時のクローン病活動指数(CDAI)に基づく臨床的寛解(CDAIスコア<150点)の複合。副次エンドポイントもすべて満たした 1,150例(安全性評価集団)を登録し、このうち1,065例(平均年齢36.2[SD 13.0]歳、女性44.9%)を有効性評価集団(ミリキズマブ群579例、ウステキヌマブ群287例、プラセボ群199例)とした。 2つの主要複合エンドポイントはいずれも達成された。このうち(1)の発生率は、プラセボ群が9.0%(18/199例)であったのに対し、ミリキズマブ群は38.0%(220/579例)と有意に優れた(補正後群間差:28.7%、99.5%信頼区間[CI]:20.6~36.8、p<0.0001)。また、(2)の発生率は、プラセボ群の19.6%(39/199例)に対し、ミリキズマブ群は45.4%(263/579例)であり、有意に良好だった(補正後群間差:25.8%、99.5%CI:15.9~35.6、p<0.0001)。 12週時のPROの臨床的奏効、12週時の内視鏡的奏効、12週時のCDAIに基づく臨床的寛解など10項目の副次エンドポイントは、すべてプラセボ群に比べミリキズマブ群で有意に優れた。 一方、ウステキヌマブ群との比較では、ミリキズマブ群は52週時の内視鏡的奏効については優越性を示せなかったものの(ミリキズマブ群48.4% vs.ウステキヌマブ群46.3%、p=0.51)、52週時のCDAIに基づく臨床的寛解は非劣性の基準(非劣性マージン10%、多重性を考慮)を満たした(54.1% vs.48.4%、群間差:5.7%[95%CI:-1.4~12.8])。重篤な有害事象は10.3% プラセボ群に比べミリキズマブ群では、全有害事象および投与中止の発生率が低かった。ミリキズマブ群で頻度の高かった有害事象は、COVID-19(16.5%)、貧血(6.7%)、関節痛(6.5%)、頭痛(6.5%)、上気道感染症(6.0%)などであった。 重篤な有害事象は、ミリキズマブ群で10.3%、ウステキヌマブ群で10.7%、プラセボ群で17.1%に発生した。3例が死亡した(ウステキヌマブ群1例、プラセボ群2例[12週後にミリキズマブ群に切り換えた1例を含む])が、試験薬関連死は認めなかった。 著者は、「これらの知見は、クローン病の発症機序におけるIL-23の重要性をより強固なものにし、中等症~重症の活動期クローン病患者において、ミリキズマブは良好なベネフィット・リスクプロファイルを有する治療法であることを示唆する」としている。

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第241回 今だから言える!? 村上氏が明かすコロナ感染の変遷

従来から本連載で私がワクチンマニアであることは何度も触れている(第107回、第204回など参照)。にもかかわらず、昨年は季節性インフルエンザワクチン接種を逃してしまっていた。ということで、今年はかかりつけ医療機関でしっかり接種してきたが、そろそろ効力も落ちてきただろうということで日本脳炎と腸チフスのワクチンも追加接種。さらにこうした機会に私はいつも新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の抗体検査用の採血も行っている。ご存じのように新型コロナの抗体検査は、感染の有無がわかるヌクレオカプシドタンパク質抗体(N抗体)とワクチン接種により獲得したスパイクタンパク質抗体(S抗体)の2種類を調べるもの。私は新型コロナに限らず、ワクチン接種の際にこの2種類の抗体検査を行っている。検査時期はかなりランダムだが、これまでN抗体は6回、S抗体は5回の検査を行っている(共にロシュ・ダイアグノスティックス社のECLIA法)。回数が違うのは、N抗体は新型コロナのmRNAワクチンが登場し、2021年6月に1回目接種する直前に試しに受けてみたのである。この1回目の検査結果は、私がキャンセル待ちで急遽獲得した1回目のワクチン接種後のアナフィラキシー・チェックの待機時間中にA医師から第1報としてメールで受け取った。本当の私のコロナ感染変遷今だから話すが、このとき、A医師から検査結果用紙の写真とともに「陽性です」とのメッセージが送られてきた。1回目のワクチン接種に辿り着けたと、安堵感に満ち溢れていた中で、過去の感染歴とは言え「陽性」という事実にかなり戸惑った。しかもコロナ禍からまだ約1年半という時期。後にオミクロン系統で爆発的に感染者が増加したような時期ではなく、感染者はまだそう多くない時期なのである。実際、それまでにA医師のクリニックでN抗体検査を受けた人の中で陽性者は初だったという。この時、写真に記載されていた数値「COI(Cut off index)」は陰性が1未満に対し、私の検査結果は194.00。完全な陽性なのだが、私は間抜けにも「偽陽性ってことはないですよね? うー、いつ感染したのだろう? 覚えがないです」と返信し、A医師からは「この抗体価は偽陽性ではないですね」と断言された。この直前に感染を疑う症状はまったくなかった。当時は感染者での味覚・嗅覚障害の割合が高いことが報告されており、感染時にいち早く気付けるよう一日一食は納豆を食べていたのに。納豆は私の好物なのだが、毎日食べるほどではなかった。もっともこの時の習慣が定着し、現在は毎日食べるようになった。ちなみに、この時の感染源は後におおよそ特定できた。この検査から過去7ヵ月間に家族以外でノーマスクでの会話を伴う接触をした人は3人しかおらず、全員に私の感染の事実を伝え、3人とも検査を受けた結果、そのうちの1人が陽性だったからだ。その結果、私の感染時期として濃厚なのは2020年12月。α株が感染主流株だった時期である。その後も検査は続けていたが、N抗体は一貫して右肩下がりとなっていった。一方、S抗体はというと、1回目の検査が新型コロナワクチン2回接種の初回免疫終了から約4ヵ月後で、数値は4,583.0U/mL。A医師から「僕の10倍くらいある」と感心された。自然感染とワクチン接種のハイブリッド免疫であるがゆえだったのだろう。その後の推移は、3回目接種(モデルナ製)直前(初回免疫終了から約7ヵ月後)の2022年2月が2,785.0 U/mL、4回目接種(モデルナ製)直前(3回目接種終了から約11ヵ月後)の2022年12月が4,521.0 U/mL 、5回目接種(第一三共製)直前(4回目接種終了から15ヵ月後)の2024年3月が6,252.0 U/mLだった。ちなみにこの間、N抗体のCOIは194.00から51.60 → 27.60 → 13.10 → 7.73と順調に低下していった。直近のS抗体価にがっかり、N抗体価にビックリ!さて今回の抗体検査の結果は2日後に判明した。5回目接種から約8ヵ月後のS抗体は9,999.9 U/mLと上限値オーバー。子供っぽい言い方をすれば「とにかくたくさん」と言うことだ。この結果の感想を言うならば、「ホッとする反面、正確な数値がわからず、ワクチンマニアとしてはちょっとがっかり」というところ。そろそろ6回目の完全自費の新型コロナワクチン接種をしようと思っていた矢先だけに、接種後どれだけ抗体価が上昇したかが正確にわからないのでは、ややつまらない。どこかより厳格な検査結果を示してくれるところはないだろうかと思案している(臨床研究を実施している先生方がいればいつでも協力します 笑)。だが、問題はN抗体のほうだ。今回のCOIは25.50。3回前の検査結果に近い数値まで再上昇していたのである。すなわちこの約8ヵ月間に再感染していたことになる。「え?」「は?」という感じだ。今回も約8ヵ月間に咽頭痛などの自覚症状は記憶がない。数値を見ると、1回目の無症候感染時ほどCOIは高くないので、好意的に解釈すればワクチン接種の恩恵があったとも言えそうだ。しかし、無症候であっても再感染は嬉しくない。ちなみに2023年7月のnature誌に米・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のグループが、アメリカ骨髄バンク登録ドナーのうちヒト白血球抗原(HLA)遺伝子のデータが利用できる約3万人について、無症候感染者と有症状感染者のHLAを比較した研究1)を行い、HLAのバリアントの1つであるHLA-B*15:01を有する人は無症候者に多いと報告されている。もちろん自分がこれに該当するのかはわからない。そして余談を言えば、前回触れた消費者向け遺伝子検査の結果では、私の新型コロナ感染時の重症化リスクは「大」の判定である。まあ、いずれにせよ今もこの感染症は油断がならないことを、なかば身をもって証明したのかもしれない。参考1)Augusto DG, nature. 2023;620:128-136.

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重度母体合併症、その後の出産減少と関連/JAMA

 最初の出産で重度の母体合併症(SMM)を発症した女性はその後の出産の可能性が低いことが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のEleni Tsamantioti氏らによるコホート研究の結果において示された。SMMを経験した女性は健康問題が長く続く可能性があり、SMMと将来の妊娠の可能性との関連性は不明であった。著者は、「SMMの既往歴がある女性には、適切な生殖カウンセリングと出産前ケアの強化が非常に重要である」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年11月25日号掲載の報告。スウェーデンの初産女性約105万人を対象に解析 研究グループは、スウェーデンの出生登録(Medical Birth Register)および患者登録(National Patient Register)のデータを用い、コホート研究を実施した。 対象は、1999年1月1日~2021年12月31日の間の初産女性104万6,974例で、初産時の妊娠22週から出産後42日以内のSMMを特定するとともに、出産後43日目から2回目の出産に至った妊娠の最終月経初日まで、または死亡、移住あるいは2021年12月31日のいずれか早い時点まで追跡した。 SMMは、次の14種類からなる複合イベントと定義した。(1)重症妊娠高血圧腎症、HELLP(溶血、肝酵素上昇、血小板減少)症候群、子癇、(2)重症出血、(3)手術合併症、(4)子宮全摘、(5)敗血症、(6)肺塞栓症・産科的塞栓症、播種性血管内凝固症候群、ショック、(7)心合併症、(8)急性腎不全、透析、(9)重度の子宮破裂、(10)脳血管障害、(11)妊娠中・分娩時・産褥期の麻酔合併症、(12)重度の精神疾患、(13)人工呼吸、(14)その他(重症鎌状赤血球貧血症、急性および亜急性肝不全、急性呼吸促迫症候群、てんかん重積状態を含む)。 主要アウトカムは、2回目の出産(生児出産または在胎22週以降の胎児死亡と定義される死産)とし、多変量Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、初産時SMMと2回目出産率またはその期間との関連について解析した。初産時SMM発症女性は発症しなかった女性より2回目出産率が低い 解析対象104万6,974例中、初産時にSMMが認められた女性は3万6,790例(3.5%)であった。初産時SMMを発症した女性は発症しなかった女性と比較して、2回目出産率が低かった(1,000人年当たり136.6 vs.182.4)。 母体の特性を補正後も、初産時のSMMは調査期間中の2回目出産率の低下と関連しており(補正後ハザード比:0.88、95%信頼区間:0.87~0.89)、とくに初産時の重度子宮破裂(0.48、0.27~0.85)、心合併症(0.49、0.41~0.58)、脳血管障害(0.60、0.50~0.73)、および重度精神疾患(0.48、0.44~0.53)で顕著であった。 同胞分析の結果、これらの関連性は家族性交絡の影響を受けていないことが示された。

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切除不能肝細胞がん1次治療としてのニボルマブ+イピリムマブvs.レンバチニブまたはソラフェニブ、アジア人解析結果(CheckMate 9DW)/ESMO Asia2024

 切除不能肝細胞がん(HCC)に対する1次治療として、抗PD-1抗体ニボルマブと抗CTLA-4抗体イピリムマブの併用療法は、レンバチニブまたはソラフェニブ単剤療法と比較して全生存期間(OS)を有意に改善したことが、国際共同無作為化非盲検第III相CheckMate-9DW試験の結果示されている。今回、同試験のアジア人サブグループ解析結果を、香港・Queen Mary HospitalのThomas Yau氏が欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia2024)で報告した。 全体集団において、追跡期間中央値35.2ヵ月におけるOS中央値は、ニボルマブ+イピリムマブ群23.7ヵ月vs.対照群20.6ヵ月で、ニボルマブ+イピリムマブ群における統計学的に有意な改善が認められた(ハザード比[HR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.65~0.96、p=0.018)。・対象:全身治療歴のない切除不能HCC患者(RECIST v1.1に基づく測定可能病変1つ以上、Child-Pughスコア5または6、ECOG PS 0または1、Vp4の高度な門脈侵襲なし) ・試験群(ニボルマブ+イピリムマブ群):ニボルマブ(1mg/kg)+イピリムマブ(3mg/kg)3週間隔で4サイクル→ニボルマブ(480mg)4週間隔 133例・対照群(治験責任医師による選択):レンバチニブ(8mg)1日1回またはソラフェニブ(400mg)1日2回 147例・評価項目:[主要評価項目]OS[副次評価項目]RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)による奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)[その他の重要な探索的評価項目]RECIST v1.1に基づくBICRによる無増悪生存期間(PFS)、安全性・層別化因子:病因(HBV vs.HCV vs.非感染)、肉眼的血管浸潤(MVI)/肝外転移(EHS)の有無、α-フェトプロテイン(AFP、<400ng/mL vs.≧400ng/mL) 主な結果は以下のとおり。・対照群では94%がレンバチニブによる治療を受けていた。・ベースライン時点の患者背景は、年齢中央値がニボルマブ+イピリムマブ群64(範囲:37~85)歳vs.対照群66(32~89)歳、男性が79% vs.84%を占め、日本人は19% vs.21%含まれていた。HBVに起因する肝がんが62% vs.59%、HCVに起因する肝がんが18% vs.21%、AFP≧400ng/mLが38% vs.36%、局所治療歴ありが57% vs.60%であった。・追跡期間中央値35.7ヵ月におけるOS中央値は、ニボルマブ+イピリムマブ群34.0ヵ月vs.対照群22.5ヵ月で、全体集団と同様にニボルマブ+イピリムマブ群における臨床的に意味のある改善が認められた(HR:0.75、95%CI:0.54~1.03)。・OSベネフィットはすべてのサブグループでおおむね一貫していた。・ORRはニボルマブ+イピリムマブ群37%(完全奏効[CR]:10%、部分奏効[PR]:27%) vs.対照群14%(CR:<1%、PR:13%)であった。・病因別のORRは、HBVに起因する肝がんでニボルマブ+イピリムマブ群28% vs.対照群16%、HCVに起因する肝がんで63% vs.16%、非感染者で38% vs.3%であった。・PFS中央値はニボルマブ+イピリムマブ群9.8ヵ月vs.対照群9.0ヵ月(HR:0.72、95%CI:0.52~0.99)で、18ヵ月PFS率は44% vs.20%、24ヵ月PFS率は40% vs.11%であった。・何らかの後治療を受けていたのはニボルマブ+イピリムマブ群56%(74例) vs.対照群63%(93例)で、全身療法として多かったのはニボルマブ+イピリムマブ群ではレンバチニブ(36例)、対照群ではアテゾリズマブ+ベバシズマブ(41例)であった。・治療期間中央値はニボルマブ+イピリムマブ群4.6ヵ月vs.対照群7.3ヵ月であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)はニボルマブ+イピリムマブ群43% vs.対照群45%で発現し、ニボルマブ+イピリムマブ群ではALT上昇(6%)、AST上昇(5%)、リパーゼ増加(5%)、対照群では高血圧(16%)、蛋白尿(10%)が多く認められた。・TRAEによる死亡はニボルマブ+イピリムマブ群で2例(自己免疫性肝炎、肝不全が1例ずつ)、対照群で1例(肝腎症候群)確認された。・何らかの免疫介在性有害事象がニボルマブ+イピリムマブ群の55%で発現し、甲状腺機能低下症(20%)、皮疹(17%)、肝炎(16%)が多く認められた。治療中止に至った免疫介在性有害事象は10%であった。 Yau氏はこれらの結果について、アジアにおける切除不能肝細胞がん患者に対するファーストラインの新たな標準治療として、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が有望であることを裏付けるものとコメントしている。

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心房細動を有する心不全発症患者で死亡や入院のリスクが増加

 新たに心不全を発症し、不整脈の一種である心房細動も有する患者の10人に4人は予後不良となる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。米インターマウンテン・ヘルスの心臓血管疫学者であるHeidi May氏らによるこの研究結果は、米国心臓協会年次学術集会(AHA 2024、11月16〜18日、米シカゴ)で発表されるとともに、要旨が「Circulation」に11月11日掲載された。May氏は、「心房細動は、心不全をさらに厄介で治療が複雑な疾患にする可能性がある」と話している。 心房細動と心不全は、ともに有害事象のリスク増加と関連しているが、両方の診断を受けている患者は少なくない。今回の研究では、心不全の新規診断を受けた患者における心房細動の影響を、駆出率が40%未満に低下した心不全(HFrEF)と駆出率が40%以上に保持されている心不全(HFpEF)に分けて検討し、両群間でリスクに差があるかどうかが調査された。対象は、2000年から2019年の間に心不全を発症し、診断から30日以内に駆出率を測定され、1年間追跡されていた2万1,925人であった。心不全の内訳は、HFrEF患者7,931人(36.2%)、HFpEF患者1万3,994人(63.8%)であった。対象者の40.5%(8,879人)は、心房細動を併発しており、その罹患率はHFpEF患者の方がHFrEF患者よりも高かった(65.2%対34.8%)。心房細動併発患者の中では、HFpEF患者の方がHFrEF患者よりも高齢で(76歳対72歳)、女性が占める割合が高かった(52.7%対30.8%)。 解析の結果、心房細動を有する患者では、心房細動のない患者に比べて、HFpEFのリスクが有意に高いことが明らかになった(オッズ比1.11、P=0.001)。また、心房細動を有する患者では心房細動のない患者に比べて、1年後および3年後の死亡リスクと心不全による入院リスクも有意に高かった。心房細動を有するHFpEF患者とHFrEF患者を比較すると、1年後および3年後の死亡リスクに有意な差は認められなかったが、心不全による入院リスクはHFpEF患者の方がHFrEF患者よりも有意に高かった(1年後:ハザード比0.64、P<0.001、3年後:同0.73、P<0.001)。 このような結果を受けて研究グループは、新たに心不全と診断された患者に対し、心房細動の検査を行うよう医師に促している。May氏は、「心不全と心房細動を併発した患者に対しては、生活の質(QOL)を保つために、より積極的な治療計画が必要になる可能性があるため、医師は特に注意を払う必要がある」と述べている。 研究グループは、心不全と心房細動を併発した患者に対する最善の治療法を見出すために臨床試験の実施を計画していると話している。なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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限局性強皮症〔Localized scleroderma/morphea〕

1 疾患概要限局した領域の皮膚およびその下床の組織(皮下脂肪、筋、腱、骨など)の免疫学的異常を基盤とした損傷とそれに続発する線維化を特徴とする疾患である。血管障害と内臓病変を欠く点で全身性強皮症とは明確に区別される。■ 疫学わが国における有病率、性差、好発年齢などは現時点では不明だが、2020~2022年にかけて厚生労働省強皮症研究班により小児期発症例を対象とした全国調査が行われた。今後疫学データが明らかとなることが期待される。■ 病因体細胞モザイクによる変異遺伝子を有する細胞が、何らかの誘因で非自己として認識されるようになり、自己免疫による組織傷害が生じると考えられている。事実、外傷やワクチン接種など、免疫の賦活化が誘因となる場合があり、自己抗体は高頻度に陽性となる。病変の分布はブラシュコ線(図1)に沿うなど、体細胞モザイクで生じる皮疹の分布(図2)に合致する。頭頸部の限局性強皮症(剣創状強皮症[後述]を含む)は皮膚、皮下組織、末梢神経(視覚、聴覚を含む)、骨格筋、骨、軟骨、脳実質を系統的に侵す疾患だが、頭頸部ではさまざまな組織形成に神経堤細胞が深く関与しているためと考えられている(図3)。図1 ブラシュコ線1つのブラシュコ線は、外胚葉原基の隆起である原始線条に沿って分布する1つの前駆細胞に由来する。前駆細胞にDNAの軽微な体細胞突然変異が生じた場合、その前駆細胞に由来するブラシュコ線は、他のブラシュコ線と遺伝子レベルで異なることになり、モザイクが生じる。我々の体はブラシュコ線によって区分される体細胞モザイクの状態となっているが、通常はその発現型の差異は非常に軽微であり、免疫担当細胞によって異物とは認識されない。一方、外傷などを契機にその軽微な差異が異物として認識されると、ブラシュコ線を単位として組織傷害が生じ、萎縮や線維化に至る。(Kouzak SS, et al. An Bras Dermatol. 2013;88:507-517.より引用)図2 体細胞モザイクによる皮疹の分布のパターンType 1alines of Blaschko, narrow bandsType 1blines of Blaschko, broad bandsType 2checkerboard patternType 3leaf-like patternType 4patchy pattern without midline separationType 5lateralization pattern.(Kouzak SS, et al. An Bras Dermatol. 2013;88:507-517.より引用)図3 神経堤細胞と剣創状強皮症の病態メカニズム画像を拡大する神経堤は、脊椎動物の発生初期に表皮外胚葉と神経板の間に一時的に形成される構造であり、さまざまな組織に移動して、その形成に重要な役割を果たす。体幹部神経堤は、主に神経細胞と色素細胞に分化するが、頭部神経堤は顔面域や鰓弓に集まり、頭頸部の骨、軟骨、末梢神経、骨格筋、結合組織などに分化する。頭部神経堤が多様な組織の形成に関与している点に鑑みると、神経堤前駆細胞に遺伝子変異が生じた場合、その異常は脳神経細胞やブラシュコ線に沿った多様な組織に分布することになる。この仮説に基づけば、剣創状強皮症は皮膚、皮下組織、末梢神経、骨格筋、骨、軟骨、脳実質に系統的に影響を及ぼし、症例によって多様な症状の組み合わせが出現すると考えられる。たとえば、皮膚病変のみの症例、骨格筋の萎縮や骨の変形を伴う症例、脳実質病変を伴う症例などが存在する。なお、これらの組織に共通する遺伝子変異の存在は現時点では確認されていない。■ 症状個々の皮疹の形状は類円形や線状など多様性があり、広がりや深達度もさまざまである。典型例では「境界明瞭な皮膚硬化」を特徴とするが、色素沈着や色素脱失あるいは萎縮のみで硬化がはっきりしない病変、皮膚の変化はないが脂肪の萎縮のみを認める病変や下床の筋・骨の炎症や破壊のみを認める病変など、極めて多彩な臨床像を呈する。病変が深部に及ぶ場合、患肢の萎縮・拘縮、骨髄炎、顔面の変形、筋痙攣、小児では患肢の発育障害、頭部では永久脱毛斑・脳波異常・てんかん・眼合併症(ぶどう膜炎など)・聴覚障害・歯牙異常などが生じうる。しばしば他の自己免疫疾患を合併し、リウマチ因子陽性の場合や“generalized morphea”[後述]では関節炎・関節痛を伴う頻度が高い。抗リン脂質抗体が約30%で陽性となり、血栓症を合併しうる。■ 分類現在、欧州小児リウマチ学会が提案した“Padua consensus classification”が世界的に最も汎用されている。“circumscribed morphea” (斑状強皮症)、“linear scleroderma” (線状強皮症)、“generalized morphea”(汎発型限局性強皮症)、“pansclerotic morphea”、“mixed morphea”の5病型に分類される。Circumscribed morpheaでは、通常は1~数個の境界明瞭な局面が躯幹・四肢に散在性に生じる。Linear sclerodermaでは、ブラシュコ線に沿った線状あるいは帯状の硬化局面を呈し、しばしば下床の筋肉や骨にも病変が及ぶ。剣傷状強皮症は、前額部から頭部のブラシュコ線に沿って生じた亜型で、瘢痕性脱毛を伴う。Generalized morpheaでは、これらのすべてのタイプの皮疹が全身に多発する。一般に「直径3cm以上の皮疹が4つ以上あり(皮疹のタイプは斑状型でも線状型のどちらでもよい)、かつ体を7つの領域(頭頸部・右上肢・左上肢・右下肢・左下肢・体幹前面・体幹後面)に分類したとき、皮疹が2つ以上の領域に分布している」と定義される。Pansclerotic morpheaでは、躯幹・四肢に皮膚硬化が出現し、進行性に頭頸部も含めた全身の皮膚が侵され、関節の拘縮、変形、潰瘍、石灰化を来す。既述の4病型のうち2つ以上の病型が共存するものがmixed morpheaである。■ 予後内臓病変を伴わないため生命予後は良好である。一方、整容面の問題や機能障害を伴う場合は、QOLやADLが障害される。一般に3~5年で約50%の症例では、疾患活動性がなくなるが、長期間寛解を維持した後に再燃する場合もあり、とくに小児期発症のlinear sclerodermaでは再燃率が高く、長期間にわたり注意深く経過をフォローする必要がある。数十年間にわたり改善・再燃を繰り返しながら、断続的に組織傷害が蓄積し、全経過を俯瞰すると階段状に症状が悪化していく症例もある。疾患活動性がなくなると皮疹の拡大は止まり、皮膚硬化は自然に改善するが、皮膚およびその下床の組織の萎縮や機能障害(関節変形や拘縮)は残存する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診療ガイドライン1)に記載されている診断基準は以下の通りである。(1)境界明瞭な皮膚硬化局面がある(2)病理組織学的に真皮の膠原線維の膨化・増生がある(3)全身性強皮症、好酸球性筋膜炎、硬化性萎縮性苔癬、ケロイド、(肥厚性)瘢痕、硬化性脂肪織炎を除外できる(ただし、合併している場合を除く)の3項目をすべて満たす場合に本症と診断する。なお、この診断基準は典型例を抽出する目的で作成されており、非典型例や早期例の診断では無力である。診断のために皮膚生検を行うが、典型的な病理組織像が得られないからといって本症を否定してはならない。診断の際に最も重要な点は、「体細胞モザイクを標的とした自己免疫」という本症の本質的な病態を臨床像から想定できるかどうか、という点である。抗核抗体は陽性例が多く、抗一本鎖DNA抗体が陽性の場合は、多くの症例で抗体価が疾患活動性および関節拘縮と筋病変の重症度と相関し、治療効果を反映して抗体価が下がる。病変の深達度を評価するため、頭部ではCT、MRI、脳波検査、四肢や関節周囲では造影MRIなどの画像検査を行う。頭頸部に病変がある場合は、眼科的・顎歯科的診察が必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)治療の一般方針は以下の通りである1)。(1)活動性の高い皮疹に対しては、局所療法として副腎皮質ステロイド外用薬・タクロリムス外用薬・光線療法などを行う。(2)皮疹の活動性が関節周囲・小児の四肢・顔面にある場合で、関節拘縮・成長障害・顔面の変形がすでにあるか将来生じる可能性がある場合は、副腎皮質ステロイド薬の内服(成人でプレドニゾロン換算20mg/日、必要に応じてパルス療法や免疫抑制薬を併用)を行う。(3)顔面の変形・四肢の拘縮や変形に対して、皮疹の活動性が消失している場合には形成外科的・整形外科的手術を考慮する。なお、2019年にSHARE(Single Hub and Access point for paediatric Rheumatology in Europe)から小児期発症例のマネージメントに関する16の提言と治療に関する6の提言が発表されている2)。全身療法に関連した重要な4つの提言は以下の通りである。(1)活動性がある炎症期には、ステロイド全身療法が有用である可能性があり、ステロイド開始時にメトトレキサート(MTX)あるいは他の抗リウマチ薬(DMARD)を開始すべきである。(2)活動性があり、変形や機能障害を来す可能性のあるすべての患者はMTX15mg/m2/週(経口あるいは皮下注射)による治療を受けるべきである。(3)許容できる臨床的改善が得られたら、MTXは少なくとも12ヵ月間は減量せずに継続すべきである。(4)重症例、MTX抵抗性、MTXに忍容性のない患者に対して、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)の投与は許容される。わが国の診療ガイドラインにおいても基本的な治療の考え方は同様であり、疾患活動性を抑えるための治療はステロイドおよび免疫抑制薬(外用と内服)が軸となり、活動性のない完成した病変による機能障害や整容的問題に対しては理学療法や美容外科的治療が軸となる。4 今後の展望トシリズマブとアバタセプトについてはpansclerotic morpheaやlinear scleroderma、脳病変やぶどう膜炎を伴う剣創状強皮症など、重症例を中心に症例報告や症例集積研究が蓄積されてきており、有力な新規治療として注目されている3)。ヒドロキシクロロキンについては、メイヨークリニックから1996~2013年に6ヵ月以上投与を受けたLSc患者84例を対象とした後方視的研究の結果が報告されているが、完全寛解が36例(42.9%)、50%以上の部分寛解が32例(38.1%)と良好な結果が得られたとされている(治療効果発現までに要した時間:中央値4.0ヵ月(範囲:1~14ヵ月)、治療効果最大までに要した時間:中央値12.0ヵ月(範囲:3~36ヵ月)、HCQ中止後あるいは減量後の再発率:30.6%)。JAK阻害薬については、トファチニブとバリシチニブが有効であった症例が数例報告されている。いずれも現時点では高いエビデンスはなく、今後質の高いエビデンスが蓄積されることが期待されている。5 主たる診療科皮膚科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病情報センター 限局性強皮症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)浅野 善英、ほか. 限局性強皮症診断基準・重症度分類・診療ガイドライン委員会. 限局性強皮症診断基準・重症度分類・診療ガイドライン. 日皮会誌. 2016;126:2039-2067.2)Zulian F, et al. Ann Rheum Dis. 2019;78:1019-1024.3)Ulc E, et al. J Clin Med. 2021;10:4517.4)Kouzak SS, et al. An Bras Dermatol. 2013;88:507-517.公開履歴初回2024年12月12日

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EGFRエクソン20挿入変異陽性肺がんのアンメットニーズと新たな治療/J&J

 ジョンソン・エンド・ジョンソン(法人名:ヤンセンファーマ)は、「EGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)」の適応で2024年9月に本邦での製造販売承認を取得したアミバンタマブ(商品名:ライブリバント)を、同年11月20日に発売した。これを受け、11月29日にライブリバント発売記者発表会が開催され、後藤 功一氏(国立がん研究センター東病院 副院長・呼吸器内科長)が講演を行った。EGFRエクソン20挿入変異の特徴 アミバンタマブの対象となる「EGFRエクソン20挿入変異」はEGFR遺伝子変異の中で3番目に多いことが知られており1)、LC-SCRUM-Asiaの報告では、登録者のおよそ1.7%(189/11,397例)に検出されていた2)。また、同報告においては、エクソン19欠失変異やL858R変異と比較して、男性や喫煙者にも検出される割合がやや高かった。 EGFR遺伝子の変異は、リガンド非依存的なATP結合と細胞増殖シグナル伝達を引き起こすが、エクソン20挿入変異があると、ATP結合部位が狭くなり、ATPと競合拮抗するチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の結合が妨げられることが報告されている3,4)。従来のTKIへの感受性は乏しく、アンメット・メディカル・ニーズの高い領域とされている。そこに新たに登場したのが、EGFRとMETを標的とする二重特異性抗体のアミバンタマブである。2024年版ガイドラインにおけるアミバンタマブの位置付け アミバンタマブは、未治療のEGFRエクソン20挿入変異陽性のNSCLC患者を対象とした国際共同非盲検無作為化比較第III相試験「PAPILLON試験」の結果に基づいて承認された。本試験では、アミバンタマブと化学療法の併用群が、化学療法群と比較し、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある無増悪生存期間の改善を示したことが報告されている5)。 これを受けて、2024年10月に公開された『肺癌診療ガイドライン2024年版』6)では、EGFRエクソン20挿入変異の一次治療に関するCQが新設され、アミバンタマブと化学療法の併用療法の推奨が明記された。【肺癌診療ガイドライン2024年版 CQ50】CQ50. エクソン20の挿入変異に対して、一次治療で標的療法が勧められるか?a. エクソン20の挿入変異にはカルボプラチン+ペメトレキセド+アミバンタマブ併用療法を行うよう強く推奨する。(推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:B)b. エクソン20の挿入変異にはEGFR-TKI単剤療法を行わないよう強く推奨する。(推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:C)【製品概要】商品名:ライブリバント点滴静注350mg一般名:アミバンタマブ(遺伝子組換え)製造販売承認日:2024年9月24日薬価基準収載日:2024年11月20日発売日:2024年11月20日薬価:350mg 7mL 1瓶 160,014円製造販売元(輸入):ヤンセンファーマ株式会社■参考文献・参考サイト1)Arcila ME, et al. Mol Cancer Ther. 2013;12:220-229.2)Okahisa M, et al. Lung Cancer. 2024;191:107798.3)Yasuda H, et al. Sci Transl Med. 2013;5:216ra177.4)Robichaux JP, et al. Nat Med. 2018;24:638-646.5)Zhou C, et al. N Engl J Med. 2023;389:2039-2051.6)日本肺癌学会 編. 肺癌診療ガイドライン―悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む―2024年版【Web版】

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重症三尖弁逆流、T-TEER+薬物療法vs.薬物療法単独/JAMA

 重症三尖弁逆流症患者において、至適薬物療法(OMT)に加えた三尖弁経カテーテルedge-to-edge修復術(T-TEER)の施行はOMT単独と比較して、三尖弁逆流症の重症度、および患者報告に基づく複合アウトカム(NYHA心機能分類クラス、患者全般評価[PGA])の改善が認められたことが、フランス・レンヌ大学のErwan Donal氏らTri-Fr Investigatorsによる無作為化試験「Tri.Fr試験」で示された。JAMA誌オンライン版2024年11月27日号掲載の報告。1年時点の複合臨床アウトカムを評価 Tri.Fr試験は、重症の症候性三尖弁逆流症患者におけるT-TEER+OMTとOMT単独の有効性を評価した研究者主導の前向き無作為化試験で、2021年3月18日~2023年3月13日に、フランスおよびベルギーの24施設で行われた。最終フォローアップは2024年4月。 心不全に対するOMTが30日以上行われているにもかかわらず、重症の症候性三尖弁逆流症を呈し、介入を要する他の心血管症状がないすべての患者が適格と見なされ、T-TEER+OMT群またはOMT単独群に1対1の割合で無作為化された。 主要アウトカムは、1年時点の複合臨床アウトカムで、NYHA心機能分類クラスの変化、PGAの変化、または主要心血管イベントの発生で構成された。副次アウトカムは、閉検定手順を用いて階層的に検定された。1つ目は三尖弁逆流の重症度で、独立した心エコーラボで評価が行われた。その他の副次アウトカムは、カンザスシティ心筋症質問票(KCCQ)スコアで評価したQOL、PGA、無作為化後12ヵ月時点の階層的複合アウトカム(全死因死亡、三尖弁手術、KCCQスコアの改善、または心不全による入院までの時間)などであった。複合臨床アウトカムの改善、T-TEER+OMT群74.1%、OMT単独群40.6% 患者計300例(平均年齢78[SD 6]歳、女性63.7%)が登録され、152例がT-TEER+OMT群に、148例がOMT単独群に無作為化された。 1年時点で複合臨床アウトカムが改善したのは、T-TEER+OMT群109例(74.1%)、OMT単独群58例(40.6%)であった。 三尖弁逆流症の重症度がmassive(4+)またはtorrential(5+)の患者の割合は、T-TEER+OMT群6.8%に対して、OMT単独群は53.5%であった(p<0.001)。 1年後の平均KCCQ臨床サマリースコアは、T-TEER+OMT群69.9(SD 25.5)、OMT単独群55.4(28.8)であった(p<0.001)。無作為化後12ヵ月時点の階層的複合アウトカムのwin ratioは、2.06(95%信頼区間:1.38~3.08)であった(p<0.001)。

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心肺フィットネスの向上は認知症リスクの軽減につながる

 認知症リスクが高い遺伝子を持つ人は、定期的な運動により心肺フィットネス(cardiorespiratory fitness;CRF、心肺持久力とも呼ばれる)を向上させることで、認知症リスクを軽減できる可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。カロリンスカ研究所(スウェーデン)老化研究センターのWeili Xu氏らによるこの研究の詳細は、「British Journal of Sports Medicine」に11月19日掲載された。 CRFとは、運動中の筋肉に酸素を供給する体の循環器系と呼吸器系の能力のことを指す。この能力は、20代から筋肉量の減少に伴い低下し始め、その後、加速度的に低下する。70代になると、CRFは10年当たり20%以上低下する。低CRFは、あらゆる原因による死亡や、脳卒中や心筋梗塞などの心臓関連イベントの強力な予測因子である。 この研究でXu氏らは、UKバイオバンク参加者から抽出した、認知症のない39〜70歳の成人6万1,214人を対象に、最長12年間追跡して、CRFと認知機能および認知症リスクの関連を、認知症の遺伝的なリスクを考慮して検討した。参加者のCRFは、エアロバイクを用いた6分間の最大下負荷での運動テストにより測定し、低・中・高に分類した。また、認知症の遺伝的リスクは、アルツハイマー病の多遺伝子リスクスコア(PRSAD)を用いて評価し、低・中・高に分類した。 追跡期間中に553人の参加者(0.9%)が認知症の診断を受けていた。解析の結果、CRFが高い人ではCRFが低い人に比べて、認知症の発症リスクが40%低く(発症率比0.60、95%信頼区間0.48〜0.76)、認知症の発症が1.48年(95%信頼区間0.58〜2.39)遅れることが示された。また、PRSADが中程度から高い人の間では、CRFが高い人はCRFが低い人に比べて、あらゆる認知症のリスクが35%低いことが明らかになった。 Xu氏らは、「われわれの研究は、CRFが高いほど認知機能が向上し、認知症リスクが低いことを示している」と結論付けている。ただし、研究グループは、「この研究は因果関係を証明するものではなく、両者の間に関連があることを示したに過ぎない」と強調している。また、UKバイオバンク参加者は、人口全体に比べると健康状態が良好であるため、認知症の症例数が過小評価されている可能性があることや、特定の健康状態にある人は運動テストを受けていないことなどの限界点もあるとしている。それでも研究グループは、「CRFを強化することは、アルツハイマー病の遺伝的リスクが高い人にとって、認知症予防の戦略となる可能性がある」と述べている。 研究グループは、「CRFと脳の健康の関係、さらに、それが遺伝的リスクと認知症の関連にどのような影響を与えるかについては、さらなる研究が必要だ」と述べている。

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心不全に対するミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の効果に関するメタアナリシス(解説:石川讓治氏)

 心不全の薬物治療におけるFantastic fourの1つとしてミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の使用が推奨されている。現在、心不全に対して使用可能なMRAは、スピロノラクトンやエプレレノン(ステロイド系)とフィネレノン(非ステロイド系)がある。 本研究は下記の4つの研究の患者個人データを統合して行ったメタ解析である。RALESでは、heart failure and reduced left ventricular ejection fraction(HFrEF)に対するスピロノラクトン、EMPHASIS-HFではHFrEFに対するエプレレノン、TOPCATではheart failure and preserved left ventricular ejection fraction(HFpEF)に対するスピロノラクトン、FINEARTS-HFではHFpEFに対するフィネレノンの効果が検証された。各研究結果において、RALES、EMPHASIS-HF、FINEARTS-HFでは有意差が示されたが、TOPCATでは心不全の再入院の抑制効果に有意差が認められたものの、心血管死亡の抑制効果には有意差が認められなかったことが報告されている。このメタ解析において、MRAは心血管死亡や心不全入院のリスクを22%減少させていた。ステロイド系MRAはHFrEFにおける心血管死亡や心不全の入院を減少させ、非ステロイド系MRAはheart failure and mildly reduced left ventricular ejection fraction(HFmrEF)やHFpEFのリスクを減少させたとの結果であった。 メタ解析の結果を解釈するうえで下記の2つのパターンがあり、注意が必要であると筆者は考えている。(1)各研究結果がほぼ同じで、全体としてどの程度の臨床的インパクトがあるのかを示したメタ解析である。たとえば降圧薬の心血管イベント抑制効果を評価した研究において、降圧薬の種類とは関係なく、降圧度によってどの程度の心血管イベント低下が認められたかを示したメタ解析がそれに当たると思われる。(2)その逆に結果が一貫性のない(不均一な)研究を統合して、症例数や有意差が大きい研究の結果が、大きく反映してしまうメタ解析もある。 本研究は(2)のパターンで、HFrEFに対するMRAのイベント抑制効果の大きさ(RALES、EMPHASIS-HF)が、HFpEFにおけるMRAの心血管死亡の抑制効果に有意差が得られなかったこと(TOPCAT)を帳消しにしたような結果に思える。本来メタ解析は(1)のパターンにおいてなされるべきであり、その場合はエビデンスの最上位となると思われる。しかし、(2)のパターンは各研究における対象者や薬剤間の間で結果に違いがあると判断し、メタ解析ではなく次の研究デザインで疑問を解決すべきものではなかろうか?本論文の結論も、全体としては統計学的有意差が大きい研究が小さい研究を淘汰し、各研究の結果の不均一さをサブグループ解析で再現した報告となっているように思われた。

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スタチン、上咽頭がんCCRT中の投与で死亡リスク減

 スタチンによる、さまざまな悪性腫瘍に対する潜在的な抗がん作用が注目されている。頭頸部がんにおいては、診断前後のスタチンの使用が化学療法の有効性を高め、がん幹細胞の活性を抑制し、放射線療法に伴う心血管および脳血管の合併症を減少させる可能性があることが示唆されている。 進行上咽頭がん(nasopharyngeal cancer)患者における同時化学放射線療法(CCRT)中のスタチン使用が、全生存率およびがん特異的生存率に与える影響を評価する研究が報告された。台湾・台中慈済病院のJung-Min Yu氏らによって行われた本研究は、Journal of the National Comprehensive Cancer Network誌2024年11月号に掲載された。 台湾の全国健康保険研究データベースを用い、2012~18年にCCRTを受けた進行上咽頭がん患者を抽出した。対象は、転移のないIII~IVA期、PS 0~1、標準CCRT(プラチナベース化学療法と強度変調放射線療法併用)を受けた成人の上咽頭がん患者だった。スタチン使用は、根治的CCRT期間中にスタチンの累積定義1日投与量を最低28回以上受けていることと定義した。スタチン使用者と非使用者の生存率を比較するため、傾向スコアマッチングで年齢、性別、併存疾患などの交絡因子を調整した。さらに、異なる種類のスタチン、累積用量、およびスタチン使用の1日当たりの強度の影響も調査した。 主な結果は以下のとおり。・1,251例が対象となり、1,049例が非スタチン群、202例がスタチン群であった。ベースライン特性では、スタチン群は非スタチン群と比較して年齢中央値が高く、女性が多く、高所得者・都市部の住民・併存症を持つ割合が高かった。マッチングを行った結果、スタチン群と非スタチン群各174例、計348例が解析対象となった。追跡期間中央値は6.43年であった。・全死因死亡率は、非スタチン群では50.57%であったのに対し、スタチン群では33.33%、調整ハザード比(aHR)は0.48(95%信頼区間[CI]:0.34~0.68)であった。同様に上咽頭がん特異的死亡率は、非スタチン群では40.80%、スタチン群では22.99%、aHRは0.43(95%CI:0.29~0.65)であった。・全死因死亡率において、親水性スタチンのロスバスタチンは非スタチン使用と比較してaHR:0.21(95%CI:0.19~0.50)、親油性スタチンのアトルバスタチンはaHR:0.39(95%CI:0.23~0.66)と、とくに良好な結果を示した。全死因死亡、上咽頭がん特異的死亡ともにスタチンの累積定義1日投与量が増加するごとにリスクが減少し、用量反応関係があることが示された。 研究者らは「スタチンは抗炎症作用や免疫調節作用も有することが報告されており、CCRT中の腫瘍微小環境に影響し、治療効果を高めた可能性がある。また、スタチン使用が放射線感受性を高め、腫瘍細胞のアポトーシスを促進する可能性も示唆されている。とくに心血管疾患のリスクが高い患者においては、スタチンの使用が二重の利益をもたらす可能性がある。スタチンの種類、投与量、投与期間など、最適な使用方法に関するさらなる研究が必要だ」とした。

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COVID-19罹患で自己免疫・炎症性疾患の長期リスクが上昇

 COVID-19罹患は、さまざまな自己免疫疾患および自己炎症性疾患の長期リスクの上昇と関連していることが、韓国・延世大学校のYeon-Woo Heo氏らによる同国住民を対象とした後ろ向き研究において示された。これまでCOVID-19罹患と自己免疫疾患および自己炎症性疾患との関連を調べた研究はわずかで、これらのほとんどは観察期間が短いものであった。著者は「COVID-19罹患後のリスクを軽減するために、人口統計学的特性、重症度、ワクチン接種状況を考慮しながら、長期的なモニタリングと管理が重要であることが示された」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年11月6日号掲載の報告。 研究グループは、Korea Disease Control and Prevention Agency-COVID-19-National Health Insurance Service(K-COV-N)コホートを対象に、COVID-19罹患後の長期における自己免疫疾患および自己炎症性疾患のリスクを調べた。対象は、2020年10月8日~2022年12月31日にCOVID-19罹患が確認された住民(COVID-19罹患群)、2018年に一般健康診断を受けた住民(対照群)とした。 主要アウトカムは、COVID-19罹患後の自己免疫疾患および自己炎症性疾患の発症率とリスクとした。逆確率重み付け法を用いて、人口統計学的特性、一般的な健康データ、社会経済的状況、併存疾患などの共変量を調整して解析した。 主な結果は以下のとおり。・観察期間180日超のCOVID-19罹患者314万5,388例、対照376万7,039例の計691万2,427例(男性53.6%、平均年齢53.39[SD 20.13]歳)が解析に含まれた。・COVID-19罹患群でリスクが高かった疾患(調整ハザード比、95%信頼区間)は以下のとおりであった。 円形脱毛症(1.11、1.07~1.15) 全頭脱毛症(1.24、1.09~1.42) 尋常性白斑(1.11、1.04~1.19) ベーチェット病(1.45、1.20~1.74) クローン病(1.35、1.14~1.60) 潰瘍性大腸炎(1.15、1.04~1.28) 関節リウマチ(1.09、1.06~1.12) 全身性エリテマトーデス(1.14、1.01~1.28) シェーグレン症候群(1.13、1.03~1.25) 強直性脊椎炎(1.11、1.02~1.20) 水疱性類天疱瘡(1.62、1.07~2.45)・人口統計学的特性(男性/女性、40歳未満/以上)別のサブグループ解析では、COVID-19罹患による自己免疫疾患および自己炎症性疾患のリスクは、性別や年齢によって異なることが示された。・とくに、ICU入室を要する重症COVID-19罹患、デルタ株優勢期の感染、ワクチン未接種はCOVID-19罹患後の自己免疫疾患および自己炎症性疾患のリスクが高かった。

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喘息やCOPDの増悪に対する新たな治療法とは?

 英国、バンベリー在住のGeoffrey Pointingさん(77歳)は、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪がもたらす苦痛を表現するのは難しいと話す。「正直なところ、増悪が起きているときは息をすることさえ困難で、どのように感じるのかを他人に伝えるのはかなり難しい」とPointingさんはニュースリリースの中で述べている。しかし、既存の注射薬により、こうした喘息やCOPDの増悪の恐ろしさを緩和できる可能性のあることが、新たな臨床試験で示された。「The Lancet Respiratory Medicine」に11月27日掲載された同試験では、咳や喘鳴、息苦しさ、痰などの呼吸器症状の軽減という点において、モノクローナル抗体のベンラリズマブがステロイド薬のプレドニゾロンよりも優れていることが明らかになった。論文の上席著者である英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)呼吸器科のMona Bafadhel氏は、「この薬は、喘息やCOPDの患者にとってゲームチェンジャーになる可能性がある」と期待を示している。 ベンラリズマブは、肺の炎症を促す好酸球と呼ばれる特定の白血球を標的としている。米食品医薬品局(FDA)は2017年、同薬を重症喘息の管理を目的とした薬として承認している。研究グループによると、好酸球性増悪は、COPDの急性増悪の最大30%、喘息発作の約50%を占めているという。このようなエピソードでは、肺内で好酸球を含む白血球が急増し、喘鳴、咳、胸部の圧迫感を引き起こす。このことを踏まえてBafadhel氏らは今回の臨床試験で、喘息とCOPDの発作に対するベンラリズマブの有効性を評価した。 対象とされた158人の喘息またはCOPD患者(平均年齢57歳、男性46%)は、急性増悪時(好酸球数が300cells/μL以上)に、以下の3群にランダムに割り付けられた。1)プレドニゾロン30mgを1日1回、5日間経口投与し、ベンラリズマブ100mgを1回皮下注射する群(ベンラリズマブ+プレドニゾロン群、52人)、2)プラセボを1日1回、5日間経口投与し、ベンラリズマブ100mgを1回皮下注射する群(ベンラリズマブ群、53人)、3)プレドニゾロン30mgを1日1回、5日間経口投与し、プラセボを1回皮下注射する群(プレドニゾロン群、53人)。 その結果、90日後の治療失敗率は、プレドニゾロン群で74%(39/53人)、ベンラリズマブ群とベンラリズマブ+プレドニゾロン群を合わせた群(統合ベンラリズマブ群)で45%(47/105人)であり、統計学的に統合ベンラリズマブ群はプレドニゾロン群よりも治療失敗率が有意に低いことが示された(オッズ比0.26、95%信頼区間0.13〜0.56、P=0.0005)。また、28日目に症状をVAS(視覚的アナログスケール)で評価したところ、統合ベンラリズマブ群がプレドニゾロン群よりも49mm(95%信頼区間14〜84mm、P=0.0065)高い改善を示し、ベンラリズマブの方が症状の改善に効果的であることが示された。いずれの群でも致死的な有害事象は発生せず、ベンラリズマブの忍容性は良好であることも確認された。 これらの結果を受けて研究グループは、「すでに喘息の治療薬として承認されている薬が、喘息やCOPDの増悪を抑える手段としてステロイド薬に代わるものとなる可能性がある」との見方を示している。 この臨床試験に参加したPointingさんは、ベンラリズマブは「素晴らしい薬」であると言う。「ステロイド薬の錠剤を使用していたときには副作用があり、初日の夜はよく眠れなかったが、今回の臨床試験では初日の夜から眠ることができ、何の問題もなく自分の生活を続けることができた」とPointingさんは振り返っている。 今回の臨床試験では、医療従事者がベンラリズマブの皮下注射を行ったが、家庭や診療所でも安全に投与できる可能性があるとBafadhel氏らは話している。なお、本試験はベンラリズマブを製造するAstraZeneca社の助成を受けて行われた。

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