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便秘からがんを疑うアラームサインを読み取る【Dr.山中の攻める!問診3step】第6回

第6回 便秘からがんを疑うアラームサインを読み取る―Key Point―大腸がんを疑うアラームサインに注意しよう薬剤が便秘の原因となっていることは多い下剤を処方する際、「酸化マグネシウム」は腎機能低下時に高マグネシウム血症を起こすので要注意!症例:76歳男性主訴)排便困難現病歴)12日前から便が突然出なくなった。4日前に近医で浣腸をしてもらったが排便なし。酸化マグネシウムと大腸刺激性下剤の処方を受けたが、やはり排便がないため当院を受診した。嘔吐はあるが腹痛はない。既往歴)老人性難聴薬剤歴)定期内服薬なし生活歴)たばこ:10本/日 x 55年間、酒:1合/日身体所見)意識清明、体温36.7℃、血圧120/50mmHg、心拍数92/分、SpO2:95%[室内気]直腸診を施行したところ、肛門から8cm、12時方向にカリフラワー様の約4×4cmの腫瘤を触知し易出血性であった。結局、直腸癌と診断され人工肛門増設のため緊急手術となった。大腸イレウスは珍しいが、穿孔すれば腹膜炎となるので緊急処置が必要となることも念頭に入れておくべき。◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!大腸がんを疑うアラームサイン1) ―大腸がんの可能性はないのか鉄欠乏性貧血体重減少便潜血陽性血便便の狭小化高齢者の急性便秘大腸がんの家族歴50歳以上で大腸内視鏡検査を受けたことがない【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】二次性の便秘を考える薬剤は二次性便秘の最大の原因である。薬剤歴の正確な聴取が大切である便秘を起こす薬剤2)3)はこちら降圧薬(カルシウム拮抗薬、利尿薬)、麻薬抗コリン薬(ブチルスコポラミン、抗うつ薬、抗精神病薬、抗パーキンソン病薬)抗ヒスタミン薬、NSAIDs、鉄剤高齢者の鉄欠乏性貧血は消化管の悪性腫瘍をまず考える便の狭小化+腹痛+液状便はS状結腸から直腸にかけての高度狭窄が示唆される症状である。大腸内視鏡の前処置で腸閉塞や腸管穿孔をきたす可能性があるため、腹部レントゲン検査と腹部CT検査を検査前にオーダーする甲状腺機能低下症、自律神経障害を起こす糖尿病やパーキンソン症候群、低カリウム血症、高カルシウム血症、うつ病、妊娠は便秘の原因となる【STEP3】治療1)を検討しよう毎日排便がないのは異常であるというイメージが TVコマーシャルなどによって作られているが、週に3回または1日3回の排便は正常である週3回以上排便があれば、病的ではないことを伝える。水分と食物繊維を十分にとる。朝食後15分間はトイレに座り、力まずに排便するよう指導する。改善がなければ、ポリエチレングリコール(商品名:モビコール)または酸化マグネシウムを処方する。酸化マグネシウムは腎機能低下時に高マグネシウム血症(嘔気・嘔吐、血圧低下、徐脈、筋力低下、意識障害)を起こす。効果が不十分ならルビプロストン(商品名:アミティーザ)を少量から検討する。大腸刺激性薬剤(センノシド、ピコスルファート)は習慣性や依存性が強いので頓用で用いる<参考文献・資料>1)山中 克郎企画. 総合診療 ヤブ化を防ぐ!総合診療基本のき. 医学書院.2019. p.1089-1091.(中野弘康 便秘)2)John P, et al. MKSAP18 Gastroenterology and Hepatology. 2018 .p.35-38.3)日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会編. 慢性便秘症診療ガイドライン. 2017.

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在宅療養COVID-19患者の呼吸困難への対応【非専門医のための緩和ケアTips】第10回

第10回 在宅療養COVID-19患者の呼吸困難への対応まだまだ収束の兆しが見えない、COVID-19のパンデミック。流行の状況によっては開業医も外来や在宅医療で感染患者の診療が求められます。今回は緩和ケア分野の経験を通じてCOVID-19感染症の診療に活用できる知見を共有したいと思います。今日の質問私の診療エリアでもCOVID-19感染患者が増えた際には、在宅療養者の対応が求められそうです。原疾患の改善を待つ期間、呼吸困難に対してどのような介入ができますか? 自宅療養を支えるための緩和手段があれば教えてもらいたいです。感染者の急増を受け、病院以外の現場でCOVID-19診療に関わる方も増えているのではないでしょうか。地域によっては有症状であっても、在宅療養で経過を見る必要も出ています。適切かつ可能な範囲の治療を在宅で行いながら、重症化した際に基幹病院と連携することが重要であることは言うまでもありません。加えて、不安を抱えながら在宅療養をする患者さんを支えるためには呼吸困難といった身体症状を和らげることが大切です。日本緩和医療学会では今回のパンデミックを受け、「COVID-19患者の呼吸困難への対応に関する手引き(在宅版)」を公開しています。この手引きでは、COVID-19患者の呼吸困難に関して、STEP1酸素投与・その他の対応STEP2オピオイド経口投与(内服できる患者)STEP3オピオイド非経口投与(内服できない患者)STEP4苦痛緩和のための鎮静の4つのステップに分けて対応を記載しています。薬物療法の中心となるのは、モルヒネなどの医療用麻薬です。ご存じのように、医療用麻薬の多くは保険適用外使用となりますので、処方の際は患者・家族への説明が必要です。また、在宅療養という環境下で安全に使用できる体制構築が重要なのは言うまでもありません。在宅医療下では常時のモニタリングはできません。そのような環境下で急性期医療に近い医療を提供することは非常に困難ですが、この手引きは現状の多くの在宅医療環境で運用可能な内容となっています。COVID-19患者の呼吸困難への対応に関するエビデンスはまだ確立されていない状況であり、この手引きはその他の疾患領域での対応を踏まえたエキスパート・オピニオンに基づいたものです。実際にどこまでの対応を在宅で取り組む必要があるかは、地域の感染者数や基幹病院の状況にもよるので、地域の実情に合わせてご活用ください。日本緩和医療学会はCOVID-19に関連した情報発信をする特設サイトを開設しています。皆さまの診療に役立つ内容が多く掲載されているので、ぜひ御覧ください。早く日常が戻ってくることを祈りつつ、今回のコラムを終えたいと思います。今回のTips今回のTipsCOVID-19患者の療養を支えるためにも、緩和ケアの症状緩和スキルを活用しよう!

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高用量オピオイドの長期投与、用量漸減のリスクは?/JAMA

 高用量オピオイドを長期にわたり安定的に処方されている患者において、用量漸減は、過剰摂取およびメンタルヘルス危機のリスク増加と有意に関連することが、米国・カリフォルニア大学のAlicia Agnoli氏らによる後ろ向き観察研究の結果、示された。オピオイド関連死亡率の増加や処方ガイドラインにより、慢性疼痛に対してオピオイドを長期間処方された患者における用量漸減が行われている。しかし、過剰摂取やメンタルヘルス危機など、用量漸減に伴うリスクに関する情報は限られていた。JAMA誌2021年8月3日号掲載の報告。高用量オピオイドの長期投与患者約11万4千例を後ろ向きに解析 研究グループは2008~19年のOptumLabs Data Warehouseデータベースから、匿名化された医療費・薬剤費および登録者のデータを用いて後ろ向き観察研究を実施した。解析対象は、ベースラインの12ヵ月間に高用量オピオイド(モルヒネ換算平均50mg以上)を処方され、2ヵ月以上追跡された米国の成人患者11万3,618例。 オピオイドの用量漸減については、7ヵ月の追跡期間中の6つの期間(1期間60日、一部期間は重複)のいずれかにおいて、1日平均投与量が少なくとも15%相対的に減量された場合と定義し、同期間中の最大月間用量減量速度を算出した。 主要アウトカムは、最長12ヵ月の追跡期間中の(1)薬剤の過剰摂取または離脱、(2)メンタルヘルス危機(うつ、不安、自殺企図)による救急受診。統計には、離散時間型の負の二項回帰モデルを用い、用量漸減(vs.用量漸減なし)および用量減量速度に応じた2つのアウトカムの補正後発生率比(aIRR)を推算して評価した。用量漸減で過剰摂取やメンタルヘルス危機が約2倍増加 解析対象11万3,618例のうち、用量漸減が行われた患者は2万9,101例(25.6%)、行われなかった患者は8万4,517例(74.4%)で、患者背景は、女性がそれぞれ54.3% vs.53.2%、平均年齢57.7歳 vs.58.3歳、民間保険加入38.8% vs.41.9%であった。 用量漸減後の期間(補正後発生率は9.3件/100人年)は、非漸減期間(5.5件/100人年)と比べて過剰摂取イベントの発生との関連がみられた(補正後発生率の差:3.8/100人年[95%信頼区間[CI]:3.0~4.6]、aIRR:1.68[95%CI:1.53~1.85])。 用量漸減は、メンタルヘルス危機イベントの発生とも関連していた。補正後発生率は同期間7.6件/100人年に対して、非漸減期間3.3件/100人年であった(補正後発生率の差:4.3/100人年[95%CI:3.2~5.3]、aIRR:2.28[95%CI:1.96~2.65])。 また、最大月間用量減量速度が10%増加することで、過剰摂取のaIRRは1.09(95%CI:1.07~1.11)、またメンタルヘルス危機のaIRRは1.18(95%CI:1.14~1.21)増加することが認められた。 これらの結果を踏まえて著者は、「今回の結果は、用量漸減の潜在的な有害性に関する問題を提起するものであるが、観察研究のため解釈は限定的なものである」との見解を述べている。

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オピオイドから認知症在宅診療まで、「緩和ケア」の旬のトピックを学ぶ【非専門医のための緩和ケアTips】第8回

第8回 オピオイドから認知症在宅診療まで、「緩和ケア」の旬のトピックを学ぶ今日の質問開業してからは多忙で学術大会から足が遠ざかっています。参加するメリットはありますか?今回は2021年6月に開催された第26回日本緩和医療学会学術大会について、開催レポートを兼ねて紹介したいと思います。新型コロナウイルス流行下ということで、現地とオンライン参加のハイブリッド開催で行われました。緩和ケア学会、というとどんな内容をイメージするでしょうか? 医学系学会といえば、改定ガイドラインの解説や最新の研究分野の発表とシンポジウム、みたいなところがメジャーですよね。緩和ケア学会もそうした内容はあるのですが、他学会では見られないユニークな内容もあります。今回の学術大会のテーマは「初心忘るべからず(初心不可忘)」。私は知らなかったのですが、これは世阿弥が生み出した能の有名な言葉だそうです。大会ポスターも能のシーンを基に作られ、特別講演は能楽師をお招きしての「能楽の時代を超えた役割」。医学の学術大会になぜ能?と思った方も多いでしょう。ですが、緩和ケア系の学会でこうした文化的なトピックと緩和ケアの接点を探るセッションが開催されることは珍しくありません。これまでも音楽や地域づくりなど、文化人類学的な演題が行われてきました。緩和ケアという領域の特性として、文化・教育と医療の融合に関する議論は欠かすことができず、「死生観の醸成」といった議論を大切にされている方も多くいます。とはいえ、私たち臨床医がこうした分野を勉強する機会はあまりありませんから、学術大会だからこその学びでもあります。もちろん、緩和ケアの実践的な演題も多くあります。印象的だったのは「オピオイド」に関する発表です。がん治療の成績向上に伴い、オピオイドの使用が長期化する患者さんが増えてきました。読者の中にも、オピオイドを長期使用しているがん患者を外来でフォローされている方がいるのではないでしょうか。海外ではオピオイド依存症が大きな社会問題になっており、不適切使用を防ぐための指導がこれまで以上に重要になっています。発表でも慢性疼痛のマネジメントや長期使用のアセスメント、留意点の議論が活発に行われました。私が運営を手伝った「認知症BPSDの在宅緩和ケア成功の秘訣」のセッションも興味深いものでした。介護者の負担が大きい状況下にあって、医師は緩和ケアをどのように実践すべきか、薬物療法や各職種への働き掛けについて議論が交わされました。質問も活発で、がん以外の疾患に対する緩和ケアの重要性とその実践の難しさに多くの人が直面していると感じました。私は今回の学術大会の実行委員であり、現地で参加しました。オンラインは自宅でリラックスして参加できるメリットがありますが、各分野の第一人者や懐かしい仲間と直接会うことができる現地参加のメリットも再確認できました。コロナの影響で1年以上会えなかった先生方と言葉を交わすこともできました。こうした機会はバーンアウトを防ぐためにも有効だといわれています。開業されて1人で診療している先生も多いことでしょう。知識のアップデートのほか、ネットワーキングの機会としてもぜひ学術大会を有効活用していただければと思います。次の第27回日本緩和医療学会学術大会は2022年7月1日(金)~2日(土)、神戸で開催予定です!今回のTips今回のTips他分野とは一線を画したユニークなトピックに触れられる、緩和ケアの学術大会にぜひご参加ください!

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第22回 痛み診療のコツ・治療編(2)光線療法(1)【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第22回 痛み診療のコツ・治療編(2)光線療法(1)前回は、知覚神経と交感神経を同時にブロックする代表的な応用範囲の広い硬膜外ブロックについてお話しました。今回は、理学療法の中でもとくに高齢患者さんに好まれている光線療法ついて述べたいと思います。高齢社会を反映して、帯状疱疹後神経痛や脊椎術後疼痛症候群など本来の疾病が治癒した後に、強い痛みだけが取り残されることも稀ではありません。いわゆる難治性慢性疼痛患者さんの数が、高齢者の人口の増加に比例して急激に増加しています。痛みを訴える患者さんにおいては、病態は類似していても、痛みの性質や程度は個々の患者さんによって実に多様です。そのために、疼痛緩和療法も神経ブロック療法、薬物療法、各種理学療法、インターベンショナル治療など患者さんに合った有効な治療法に苦慮する機会も少なくありません。とくに最近では、高齢者を含めて血液抗凝固薬を服用する患者さんが増加しており、神経ブロックを回避しなくてはならない状況も少なくありません。しかも、痛みで悩まされている患者さんにとっては、より痛みの少ない治療法を望む声も多く見られます。このような背景を考慮すると、疼痛を訴えられている患者さんにとって光線療法は非常に有用な治療法であり、痛みの緩和を得られる機会も想像以上に多くみられます。今回はこの光線療法について解説いたします。光線療法機器の分類(1)低出力半導体レーザーGa-Al-As半導体をレーザー光源とした低出力半導体レーザーには、ソフトレーザリーJQ310、マルチレーザー5 MLF-601、メディアレーザーソフトパルス10などが市販されています。(2)ハロゲンランプ治療器自然灯の一種、ハロゲンランプを光源として、フィルターによって近赤外線のみを出力する装置です。アルファビームALB-200H、スーパーライザーHA-2200LEシリーズ、スーパーライザーPXシリーズのほか、家庭用としても使用できるスーパーライザーminiシリーズなどが使用されています。また、最近では、スーパーライザーPXシリーズも市販され、さらに性能を上げています。(3)キセノンライト治療器ストロボライト光源のキセノン励起光を利用したキセノンライトは、可視光よりも近赤外光を多く発光するので、近赤外線光源として利用されています。ベータエクセルXe10は、パルスモードを有する上、低周波通電機能もあり、光線療法と低周波治療を同時に施行できる特徴があります。光線療法の鎮痛作用機序レーザーの生体への影響は熱作用、光作用が基本になっています。その作用により、以下の効果が期待されています。(1)血流改善作用レーザー光による血管への直接作用、交感神経反射の減弱化、軸索反射による血管拡張などが考えられています。(2)神経伝達抑制作用脊髄後根線維の自発放電発射増加の減少作用、C線維の脱分極の抑制作用などが報告されています。(3)抗炎症作用関節リウマチ患者さんの膝関節滑膜炎症所見が、レーザー照射によって軽減されることが報告されています。(4)創傷治癒作用創傷治癒の促進が実験的、臨床的に認められています。(5)下行性疼痛抑制系の賦活ナロキソンによりレーザー鎮痛効果が抑制されることから、内因性オピオイドや、下行性疼痛抑制系の関与が考えられています。(6)その他神経細胞膜の安定化作用、免疫機能の賦活、筋緊張の緩和などが認められており、鎮痛作用の補助になりそうです。レーザー治療の対象疾患レーザー治療の鎮痛作用機序から考えて、以下のような疾患に有効性が認められています。 帯状疱疹痛、帯状疱疹後神経痛、筋・筋膜性疼痛、頭痛、外傷性頸部疼痛症候群、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、腰痛症、術後疼痛症候群、非定形顔面痛、関節リウマチ、肩関節周囲炎、膝関節症などで、実に多岐にわたっています。初期の疼痛緩和療法を怠ると、一生痛みが持続することも稀ではありません。できるだけ早期に鎮痛対策をとることが、その後の痛みの遷延を和らげるという認識が大切です。光線療法が疼痛治療の一環として取り入れられ、多少なりとも痛みに苦しむ患者さんの疼痛緩和療法に役立てられれば幸いです。次回は、痛みとリハビリテーション療法について説明したいと思います。1)花岡一雄他. 日本医師会雑誌.2012:140;2352-23532)花岡一雄他監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S177-178

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新型コロナワクチン後、乳房インプラント施行例でみられた免疫反応

 COVID-19ワクチン接種後、ヒアルロン酸注入歴などを有する症例で、まれに痛みや腫脹などの反応が報告されている。皮膚充填剤のような異物は、免疫系が刺激されることで何らかの反応を引き起こす可能性があるという。ドイツ・Marienhospital StuttgartのLaurenzWeitgasser氏らは、COVID-19ワクチン接種後1~3日の間に乳房インプラント施行歴のある4例で注目すべき反応がみられたとし、その臨床的特徴や経過をThe Breast誌オンライン版2021年6月18日号に報告した。ワクチン接種後、ヒアルロン酸注入部位に腫脹 これまでに、モデルナ製ワクチンの1回目および/または2回目の投与直後に、美容目的でのヒアルロン酸注入の経験がある症例で、軟部組織の腫脹や顔面浮腫が報告されている1)。これらはモデルナ製ワクチンの第III相試験中に観察された。ワクチン接種後1~2日の間に報告され、ヒアルロン酸注入の時期はワクチン接種の2週間前から2年前までの範囲であった。また、過去にはインフルエンザワクチン接種後にも、同様の反応が報告されている2)。乳房インプラントや人工関節などについても、さまざまな種類のワクチン接種後に炎症反応を起こす可能性があるという。 ワクチン接種後にヒアルロン酸注入歴などを有する症例で、注目すべき反応がみられた4例についての詳細は以下のとおり。[症例1(76歳)]手術歴:美容的豊胸手術(64ヵ月前)症状:痛み、腫脹(両側)ワクチンの種類と症状発現時期:Pfizer/Biontec製ワクチン、初回接種2日後診断:被膜線維化治療経過:保存的治療(NSAIDs経口投与、凍結療法)→発症後2日で解消[症例2(52歳)]手術歴:美容的豊胸手術(17ヵ月前)症状:痛み、発赤(両側)ワクチンの種類と症状発現時期:Pfizer/Biontec製、初回接種2日後診断:被膜線維化治療経過:保存的治療(抗菌薬・NSAIDs経口投与、凍結療法)→発症後まもなく解消[症例3(52歳)]手術歴:インプラントベースの再建のためのエキスパンダー挿入(9ヵ月前~、最後の挿入は4週間前)症状:痛み(片側)ワクチンの種類と症状発現時期:Johnson & Johnson製、接種3日後治療経過:保存的治療(オピオイド・メタミゾール経口投与)→数日中に解消[症例4(53歳)]手術歴:インプラントベースの再建(2ヵ月前)症状:痛み、炎症、血清腫(片側)ワクチンの種類と症状発現時期:AstraZeneca製、初回接種1日後治療経過:外科的治療(インプラント除去と自家乳房再建、抗生物質静脈投与)→術後の経過は順調、数日後に退院 著者らは、世界中で数百万回の新型コロナワクチン接種が行われた後、インプラント施行歴のあるごく少数で観察されたものであり、大きな懸念はないだろうとしたうえで、ワクチン接種後のインプラントに関連する免疫反応を注意深く観察するよう患者に助言する必要があるのではないかと指摘。同時に、インプラントに対するワクチン接種後の反応は治療により管理可能で、COVID-19感染に伴うリスクがこれらの非常にまれにしか観察されない反応によってもたらされるリスクをはるかに上回っていると伝えるべきだと結んでいる。

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片頭痛の急性期治療、オピオイドは有効性示されず/JAMA

 片頭痛の急性期治療において、トリプタン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、アセトアミノフェン、ジヒドロエルゴタミン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬、lasmiditan(5-HT1F受容体作動薬)による薬物療法のほか、いくつかの非薬物療法は、痛みや機能の改善をもたらすが、これらを支持するエビデンスの強さ(SOE)にはばらつきがみられ、オピオイドなど他の多くの介入のエビデンスには限界があることが、米国・メイヨークリニックのJuliana H. VanderPluym氏らの調査で示された。著者は、「現行のガイドラインでは、片頭痛の急性期治療にオピオイドやブタルビタール含有配合薬は推奨されていないが、オピオイドはさまざまな病態の急性期患者に頻繁に処方されている。今回の解析では、オピオイドは全般にSOEが低いか不十分であり、他の治療法やプラセボに比べ有害事象の割合が高いことが示された。したがって、現行のガイドラインのオピオイド非推奨に変更はない」と述べている。JAMA誌2021年6月15日号掲載の報告。急性期治療の有益性と有害性をメタ解析で評価 研究グループは、反復性片頭痛の急性期治療の有益性と有害性を評価する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(米国医療研究品質庁[AHRQ]の助成による)。 9つのデータベースを用いて、その設立から2021年2月24日の時点までに登録された文献を検索した。対象は、成人(年齢18歳以上)患者の片頭痛発作の急性期治療について、治療終了後4週以内の短期的な有効性と有害性を評価した無作為化試験および系統的レビューの論文であった。 試験の背景因子を抽出するために、標準化されたデータ抽出用の書式が開発され、これを用いてレビュアーが個別に各試験の詳細なデータを抽出した。別のレビュアーが抽出データをレビューし、矛盾の解決を行った。 メタ解析では、治療法を直接比較した試験を統合するために、解析に含まれる試験数が4件以上の場合は、DerSimonian-Laird法による変量効果モデルとHartung-Knapp-Sidik-Jonkman法による分散補正が使用され、試験数が3件以下の場合はMantel-Haenszel法に基づく固定効果モデルが用いられた。 主要アウトカムは、無痛、痛みの軽減、持続的な無痛、持続的な痛みの軽減、有害事象とされた。SOEは、AHRQ Methods Guide for Effectiveness and Comparative Effectiveness Reviewsで評価し、「高」「中」「低」「不十分」に分類された。オピオイドのSOEは低または不十分 トリプタンとNSAIDのエビデンスは、15の系統的レビューから要約された。これ以外の介入の解析には、115件の無作為化臨床試験(121論文、2万8,803例)が含まれた。 プラセボと比較して、トリプタンとNSAIDは2時間後および1日後の痛みが統計学的に有意に軽減し(SOE:中~高)、軽度または一過性の有害事象のリスクが増加した。 また、プラセボに比べ、CGRP受容体拮抗薬(SOE:低~高)、lasmiditan(高)、ジヒドロエルゴタミン(中~高)、エルゴタミン+カフェイン(中)、アセトアミノフェン(中)、制吐薬(低)、ブトルファノール(低)、トラマドール+アセトアミノフェン(低)は有意に痛みを軽減し、軽度有害事象が増加した。オピオイドに関する知見は、SOEが低または不十分であった。 非薬物療法では、遠隔電気神経調節(REN)(SOE:中)、経頭蓋磁気刺激(TMS)(低)、外部三叉神経刺激(eTNS)(低)、非侵襲的迷走神経刺激(nVNS)(中)が、有意に痛みを改善した。非薬物療法と偽刺激(sham)には、有害事象について有意な差は認められなかった。

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世界初、がん疼痛に使える経皮吸収型NSAIDs「ジクトルテープ75mg」【下平博士のDIノート】第76回

世界初、がん疼痛に使える経皮吸収型NSAIDs「ジクトルテープ75mg」今回は、持続性がん疼痛治療薬「ジクロフェナクナトリウム経皮吸収型製剤(商品名:ジクトルテープ75mg、製造販売元:久光製薬)」を紹介します。本剤は、がん疼痛に適応を有する世界初の経皮吸収型NSAIDs製剤であり、簡便かつ効率的に疼痛をコントロールすることが期待されています。<効能・効果>本剤は、各種がんにおける鎮痛の適応で、2021年3月23日に承認され、5月21日に発売されました。<用法・用量>通常、成人に対し、1日1回2枚(ジクロフェナクナトリウムとして150mg)を胸部、腹部、上腕部、背部、腰部または大腿部に貼付し、1日(約24時間)ごとに貼り替えます。なお、症状や状態により1日3枚(ジクロフェナクナトリウムとして225mg)まで増量可能です。本剤使用時はほかの全身作用を期待する消炎鎮痛薬との併用は可能な限り避け、やむを得ず併用する場合は必要最小限の使用にとどめ、患者の状態に十分注意する必要があります。<安全性>国内臨床試験において、臨床検査値異常を含む主な副作用として、適用部位そう痒感(5%以上)、適用部位紅斑、上腹部痛、AST上昇、ALT上昇、クレアチニン上昇(1~5%未満)などが報告されています。重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー、出血性ショックまたは穿孔を伴う消化管潰瘍、消化管の狭窄・閉塞、再生不良性貧血、溶血性貧血、無顆粒球症、血小板減少症、中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(SJS)、紅皮症(剥脱性皮膚炎)、急性腎障害(間質性腎炎、腎乳頭壊死など)、ネフローゼ症候群、重症喘息発作(アスピリン喘息)、間質性肺炎、うっ血性心不全、心筋梗塞、無菌性髄膜炎、重篤な肝機能障害、急性脳症、横紋筋融解症、脳血管障害が設定されています(いずれも頻度不明)。<患者さんへの指導例>1.1日1回、通常2枚を、胸、おなか、上腕、背中、腰、太もものいずれかの部位に貼って使用します。症状によって枚数が増えることもありますが、医師から指示された枚数を守り、一度に3枚を超えないように使用してください。2.創傷面または湿疹・皮膚炎などが見られる部位および放射線照射部位への貼付は避けてください。皮膚への刺激を減らすために、貼り替える際は、前回とは異なる部位を選択してください。3.この薬は1枚ずつ包装されています。貼る直前まで開封しないでください。途中で薬がはがれ落ちた場合は、ただちに新しいものを貼り、次の貼り替え予定時間には、再度新しいものに貼り替えてください。4.使用中に眠気、めまいが生じたり、かすみがかったように見えたりする場合は、自動車の運転など危険を伴う機械の操作には従事しないでください。貼った部位に赤みや痒みが出るなどつらいことがありましたら、早めにご相談ください。5.自己判断によるほかの消炎鎮痛薬との併用は避けてください。市販の風邪薬などを使用する場合は事前に相談してください。6.過去に風邪薬や消炎鎮痛薬を使用して喘息のような症状が現れたことがある方や、妊婦または妊娠している可能性のある女性は使用できません。<Shimo's eyes>本剤は、世界初のNSAIDsの経皮吸収型持続性がん疼痛治療薬です。同成分を含む局所作用型製剤ジクロフェナクナトリウムテープ(商品名:ボルタレン)とは異なり、全身投与型の製剤です。有効成分が全身の血中に移行するため、禁忌はジクロフェナク経口薬とほぼ同じように設定されています。NSAIDsなどの非オピオイド鎮痛薬は、「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2020年版)」において、軽度のがん疼痛に対する導入薬として推奨されています。中等度~高度のがん疼痛で、オピオイド鎮痛薬では十分な鎮痛効果が得られない、または有害事象のためオピオイド鎮痛薬を増量できない場合などでは、非オピオイド鎮痛薬とオピオイド鎮痛薬の併用が推奨されています。本剤は、1日1回の貼り替えで持続的な効果が期待できるため、患者・介護者の双方にとって利便性が高いと考えられます。3枚貼付時のジクロフェナクの全身曝露量が、同成分の徐放性カプセル剤(商品名:ナボールSRカプセル37.5)と同程度ですが、血中濃度が定常状態に達するまで7日ほどかかるため、効果判定のタイミングに注意が必要です。参考1)PMDA 添付文書 ジクトルテープ75mg

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慢性掻痒でピンッとくるべき疾患は?【Dr.山中の攻める!問診3step】第3回

第3回 慢性掻痒でピンッとくるべき疾患は?―Key Point―皮膚に炎症がある場合は皮膚疾患である可能性が高い82歳男性。2ヵ月前から出現した痒みを訴えて来院されました。薬の副作用を疑い内服薬をすべて中止しましたが、改善がありません。抗ヒスタミン薬を中止すると痒みがひどくなります。一部の皮膚に紅斑を認めますが、皮疹のない部位もひどく痒いようです。手が届かない背中以外の場所には皮膚をかきむしった跡がありました。皮膚生検により菌状息肉腫(皮膚リンパ腫)と診断されました。この連載では、患者の訴える症状が危険性のある疾患を示唆するかどうかを一緒に考えていきます。シャーロックホームズのような鋭い推理ができればカッコいいですよね。◆今回おさえておくべき疾患はコチラ!【慢性掻痒を起こす疾患】(皮膚に炎症あり)アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、乾皮症、虫刺され、乾癬、疥癬、表在性真菌感染(皮膚に炎症なし)胆汁うっ滞、尿毒症、菌状息肉腫、ホジキン病、甲状腺機能亢進症、真性多血症、HIV感染症、薬剤心因性かゆみ(強迫神経症)、神経原性掻痒(背部錯感覚症、brachioradial pruritus)【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】慢性掻痒の原因を見極める、診断へのアプローチ■鑑別診断その1皮膚に目立った炎症があるアトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、乾皮症、虫刺され、乾癬、疥癬、表在性真菌感染家族や施設内に同様の掻痒患者がいる場合には疥癬を疑う。皮疹の部位が非常に重要である。陰部、指の間、腋窩、大腿、前腕は疥癬の好発部位である。皮膚に問題がない場合でも、慢性的にかきむしると苔癬化、結節性そう痒、表皮剥脱、色素沈着が起きることがある。■鑑別診断その2正常に近い皮膚なら全身性疾患によるそう痒を考え、以下を考慮する胆汁うっ滞、尿毒症、菌状息肉腫、ホジキン病、甲状腺機能亢進症、真性多血症、HIV感染症、薬剤薬剤が慢性掻痒の原因となることがあるかゆみを起こす薬剤:降圧薬(カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、サイアザイド)、NSAIDs、抗菌薬、抗凝固薬、SSRI、麻薬上記の鑑別疾患時に必要な検査と問診検査:CBC+白血球分画、クレアチニン、肝機能、甲状腺機能、血沈、HIV抗体、胸部レントゲン写真問診:薬剤歴■鑑別診断その3慢性的なひっかき傷がある時は、以下の疾患を想起すること心因性かゆみ(強迫神経症)、神経原性掻痒(背部錯感覚症、brachioradial pruritus)背部錯感覚症は背中(Th2~Th6領域)に、brachioradial pruritusは前腕部に激烈なかゆみを起こす。原因は不明。【STEP3】治療や対策を検討する薬が原因の可能性であれば中止する。以下3点を日常生活の注意事項として指導する。1)軽くてゆったりした服を身に着ける2)高齢者の乾皮症(皮脂欠乏症)は非常に多い。皮膚を傷つけるので、ナイロンタオルを使ってゴシゴシと体を洗うことを止める3)熱い風呂やシャワーは痒みを引き起こすので避ける入浴後は3分以内に皮膚軟化剤(ワセリン、ヒルドイド、ケラチナミン、亜鉛華軟膏)や保湿剤を塗る。皮膚の防御機能を高め、乾皮症やアトピー性皮膚炎に有効である。アトピー性皮膚炎にはステロイド薬と皮膚軟化剤の併用が有効である。副作用(皮膚萎縮、毛細血管拡張、ステロイドざ瘡、ステロイド紫斑)に注意する。Wet pajama療法はひどい皮膚のかゆみに有効である。皮膚軟化剤または弱ステロイド軟膏を体に塗布した後に、水に浸して絞った濡れたパジャマを着て、その上に乾いたパジャマを着用して寝る。ステロイドが皮膚から過剰に吸収される可能性があるので1週間以上は行わない。夜間のかゆみには、抗ヒスタミン作用があるミルタザピン(商品名:リフレックス、レメロン)が有効ガバペンチン(同:ガバペン)、プレガバリン(同:リリカ)は神経因性のそう痒に有効である。少量のガバペンチンは透析後の痒みに効果がある。<参考文献・資料>1)Yosipovitch G, et al. N Engl J Med. 2013;368:1625-1634.2)Moses S, et al. Am Fam Physician. 2003;68:1135-1142.

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勤務医と開業医の二択じゃない!お金と時間が手に入るキャリアパス【医師のためのお金の話】第45回

こんにちは。自由気ままな整形外科医です。最近、友人の医師がラーメン店を開業しました!ラーメン酔拳「代打は俺」しかも、普段は医師の友人自らが店頭に立ってラーメンを作る、というガチ開業です。私が医師になった平成ひとケタ年台には考えられないキャリアパスですね。彼は決して医療で「詰んでしまった」わけではありません。むしろ、ラーメン店を開業する直前まで、基幹病院に勤務する脊椎外科医として第一線で臨床に従事していました。また、基幹病院の前職は大学のスタッフで、後進指導とアカデミアを極めるべく多忙な日々を送っていました。医師からラーメン屋へ。ここまで極端な例はまだ多くないですが、皆さんも今後のキャリアパスを考えるうえで参考になるのではないでしょうか。自分の人生を生きるため、勤務医を卒業友人が勤務医を卒業したのは決して衝動的なものではなく、5年ほど前から少しずつ計画していたそうです。今から6年前の2015年、彼は日本整形外科学会のトラベリングフェローに選出され、アカデミアのど真ん中にいました。しかし、その実態は大学の業務で多忙を極めており、予定がすべて医局行事で埋め尽くされていたのです。自分のやりたいことができない不自由さと拘束感はハンパではなく、一度限りの自分の人生を生きている実感を持てなかったそうです。そして、多忙は一種の麻薬です。ブラック企業でもそうですが、過度の業務は感覚を麻痺させてしまいます。自分で能動的に考える習慣がなくなってしまい、他人から与えられた仕事やスケジュールをこなすことが自分の幸せであると思い込んでしまうのです。そのような状態が続くと、気付かないうちにダメージが蓄積します。彼はそのような状態に陥ってしまい、自分の人生を自らの意志で生きるため、勤務医を卒業することを決心しました。なぜラーメン店?「4つのクワドラント」のどこを目指すか イメージ『金持ち父さん 貧乏父さん』(筑摩書房)で有名なロバート・キヨサキは、就業者のカテゴリーとして以下の4つを提唱しています。1)従業員(=勤務医)2)自営業者(=開業医)3)ビジネスオーナー4)投資家医師の場合、勤務医は1)従業員に、開業医は2)自営業者に分類されますが、両者とも時間の融通をつけにくい働き方です。一方、3)ビジネスオーナーと4)投資家は、お金と時間の自由を手に入れやすい属性だといえます。医師がキャリアパスを考えるうえでは、勤務医と開業医の二択と思われがちです。しかし、自分の人生を能動的に生きるためには、お金と時間の自由が手に入りやすいキャリアパスを考える必要があります。友人はラーメン店を多店舗展開することに成功すれば、ビジネスオーナーへの道が開ける、と考えたのです。医師免許を生かした「バーベル戦略」もう1つ、参考になる考え方が、ナシーム・ニコラス・タレブが著書『反脆弱性―不確実な世界を生き延びる唯一の考え方』(ダイヤモンド社)の中で提唱した「バーベル戦略」です。医師の収入は安定していますが、青天井の報酬を受け取ることは難しいでしょう。一方で、医師の安定性を担保にして、ハイリスク・ハイリターンな人生を掛け合わせると、青天井の報酬にチャレンジできるというのがバーベル戦略の考え方です。要約すると、人は中庸なリスクを取りたがるが、「安全なものを多く」と「ハイリスク・ハイリターンのものを少し」を組み合わせることが最もリターンを得やすい、という理論です。友人はこのバーベル戦略を実践しており、ラーメン店を経営しながら医師としてのアルバイトを週1回続けています。この組み合わせによって、お店が赤字であっても家賃は医師のアルバイト代で賄える、という命綱を持った状況で開業しました。これは通常のラーメン店の店主とは決定的に異なる点です。勤務医を辞めても高額でアルバイトができる医師が起業するのは、通常よりもリスクが抑えられるのです。他者にチャンスを与え、自分も能動的に生きる友人は福岡県の糸島のラーメン店で自ら修業するなどして周到に開業準備をしただけあって、店は順調な滑り出しです。そんな友人が地味にうれしかったのは、店のアルバイトとして地元に雇用を生んだことだといいます。そして、「人生がなかなかうまくいかない」と悩む20代前半の彼らを見ていると、何か力になれないかと考えるそうです。「彼らが店長になって人生がうまくいくきっかけになれば大泣きしてしまうかもしれない」と言っているのを聞いて素直に感動しました。他人に人生のチャンスを提供して、自分の人生も能動的に生きることができる…。まさに彼の決断は、自分も含めて関わる人たちの人生に大きな影響を与えたことになります。キーワードは「自由な発想」医師免許という強力なツールがあれば、考え方を少し変えてみるだけで驚くほど大きな影響を、自分も含めた周囲に及ぼすことが可能です。日常の臨床に忙殺されて、その日を生きるのに精いっぱいの人も多いでしょう。しかし、人生は一度限りです。せっかく天から与えられた人生を能動的に生きるためにも、周囲にいる「少し変わった」人を観察して参考にするのもよいかもしれません。

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第57回 コロナの影響も? 5年連続で合計特殊出生率が低下

<先週の動き>1.コロナの影響も? 5年連続で合計特殊出生率が低下2.21日から、職場や大学での一般向けワクチン接種開始へ3.75歳以上の自己負担2割の導入へ、医療制度改革関連法案成立4.オンライン診療指針、かかりつけ医は初診から原則解禁へ5.患者の医療情報の共有システム作成へ/データヘルス改革6.外来機能報告でかかりつけ医との連携へ/社会保障審議会1.コロナの影響も? 5年連続で合計特殊出生率が低下厚生労働省は4日に2020年の人口動態統計を発表した。2020年の出生数は84万832人で、前年の86万5,239人より2万4,407人減少し、出生率(人口千対)は6.8(前年7.0)となった。また、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数)は1.34(前年1.36)と、5年連続で低下していることが明らかとなった。一方、死亡数は137万2,648人で、前年の138万1,093人より8,445人減少し、死亡率(人口千対)は11.1(前年11.2)だった。これにより算出される、自然増減数(出生数と死亡数の差)は-3万1,816人(前年比-1万5962人)となり、自然増減率(人口千対)は-4.3で、前年より0.1低下、14年連続で減少している。また2020年の婚姻件数の概数値は前年比12.3%減の52万5,490件と戦後最少となった。政府は、結婚・妊娠・出産・育児の「切れ目ない支援」のため、先駆的な少子化対策を行う地方公共団体を支援しているが、コロナウイルス感染拡大に伴い、より一層のテコ入れが必要になると考えられる。(参考)20年出生率1.34、5年連続低下 13年ぶり低水準(日経新聞)「出生率」去年1.34 5年連続で前年下回る 「出生数」は最少に(NHK)資料 令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況(厚労省)2.21日から、職場や大学での一般向けワクチン接種開始へ職場や大学などでの新型コロナウイルスワクチン接種について、政府が方針を示した。文部科学省は、各国公立大学法人や各地方公共団体に向けて、職域接種の要望確認についての意向を調査しており、先月26日時点で、全国およそ350の大学が、接種会場としてキャンパスなどを提供できると回答している。なお、附属病院を持たない大学などでは打ち手の確保が課題となっている。国は大学が接種を進める際は、医師や看護師の事前確保を求めているが、人材の確保やワクチンの保管など開始までにさまざまな課題があると見られる。(参考)医学部ある大学、接種計画を続々表明…「ない」大学は打ち手確保に悩む(読売新聞)職場でのワクチン接種 6月21日開始に向け 企業の準備本格化(NHK)資料 新型コロナウイルス感染症のワクチン接種に関する職域接種の要望確認について(調査)(文部科学省)3.75歳以上の自己負担2割の導入へ、医療制度改革関連法案成立4日、課税所得が28万円以上かつ年収200万円以上の後期高齢者の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法が、参議院本会議で可決、成立した。当初は現役世代の負担軽減を目指したが、削減効果は720億円で1人当たり年700円と大きくはない。2022年以降、団塊世代が後期高齢者となるにつれて、後期高齢者の医療費はさらなる増大が見込まれるため、健保連は早期の施行を強く要望しているが、医師会などは高齢者の受診抑制を懸念しており、今後も見直しを巡って議論が重ねられるだろう。(参考)75歳以上医療費「自己負担2割」改革法成立 22年度後半から(毎日新聞)わずか30円の改革、通過点(日経新聞)医療保険制度改革関連法案に関する資料(健保連)4.オンライン診療指針、かかりつけ医は初診から原則解禁へ昨年4月から臨時特例的に電話・オンライン診療が大幅に拡大されているが、実施件数は毎月1万7,000件数程度と伸び悩んでいる。この中には、本来ならば処方できない「麻薬」「向精神薬」の処方箋、処方日数の上限(7日間)を守らない処方箋などが含まれており、不適切診療を繰り返す医療機関を問題とする声が上がっている。政府は6月2日に新たな成長戦略実行計画案を公表し、オンライン診療については、「安全性と信頼性をベースに、かかりつけ医の場合は初診から原則解禁する」とした。これに対して、日本医学会連合は「オンライン診療の初診に関する提言」を発表し、不適切に遠隔医療が行われ、患者・家族に不利益が生じてはならないとし、「オンライン診療の初診に適さない症状」および「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」を作成した。今後、安全性や有効性が確認された疾患については、2022年度の診療報酬改定で、オンライン診療料の算定対象に加えることが検討される見込み。(参考)オンライン診療料、対象疾患の追加を検討へ 政府、6月中旬に新成長戦略実行計画(CBnewsマネジメント)資料 オンライン診療の初診に関する提言(日本医学会連合)第15回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会(厚労省)5.患者の医療情報の共有システム作成へ/データヘルス改革厚労省は、4日に持ち回り審議されたデータヘルス改革推進本部がまとめた工程表を発表した。新型コロナウイルス感染症のため自宅で療養している患者が、医師の健康観察を受けられるように、保健所と医療機関の間で情報共有できるツールを開発することが明らかになった。連携を進めることによって、自宅療養患者の急変についても迅速な対応につなげる。また2022年度からは、新型コロナ以外の感染症についても情報共有に着手する。2024年度にはすべての感染症で保健所と医療機関の連携体制の確立を目指す。このほか、マイナポータルなどを通じて、2021年10月からは国民が自身の特定健診の結果や処方・調剤情報についても確認できるようになるとともに、患者本人が閲覧できる情報(健診情報やレセプト・処方箋情報、電子カルテ情報、介護情報等)については、医療機関や介護事業所でも閲覧可能とする仕組みが今後数年で整備される見通し。(参考)自宅療養者の情報、地域の医療機関が共有のシステム作成へ…容体急変に即応(読売新聞)コロナ自宅療養者、医師が健康観察 保健所と情報共有(日経新聞)データヘルス改革に関する工程表について(データヘルス改革推進本部)6.外来機能報告でかかりつけ医との連携へ/社会保障審議会3日に開催された社会保障審議会医療部会で、医療法等の改正を受けて、今後の医療提供体制改革に向けた検討スケジュールが討議された。長時間労働の勤務医の労働時間短縮および健康確保のための措置を2024年度から実施するため、都道府県による特例水準対象医療機関の指定や医療機関勤務環境評価センターによる第三者評価の整備などが行われる。また、医療関係職種の業務範囲の見直しを行い、タスクシフト/シェアの推進を進めていく。外来医療の機能については、医療機関に対し、医療資源を重点的に活用する外来等について報告を求める外来機能報告制度の創設を2022年度から開始することが明らかになった。実際に行われている外来医療の機能に応じて、それぞれの医療機関がどのような機能を発揮すべきかの役割分担を明確化し、『かかりつけ医機能』を担う医療機関から、医療資源を重点的に活用する外来を担う医療機関につないでいくなどの機能分化・連携を推進する。(参考)医療制度を止めたオーバーホールは不可能、制度の原点を常に意識し外来機能改革など進める―社保審・医療部会(GemMed)国が4600万円をかけてかかりつけ医機能の好事例を収集 その狙いの先にあるものとは?(Beyondhealth)第79回社会保障審議会医療部会(令和3年6月3日)

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事例027 トラムセット配合錠の査定【斬らレセプト シーズン2】

解説両手拇指CM関節慢性疼痛にて初診の患者に、トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合剤錠(商品名:トラムセット配合錠)のジェネリック版を投与したところ、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)にて査定となりました。そこで、病名に「慢性疼痛」が入っていたため、適応があるのではないかと考え添付文書を読み返しました。投与量は添付文書通りでした。効能または効果には、「非オピオイド鎮痛剤で治療困難な疾患における鎮痛、非がん性慢性疼痛」とあり、当該患者の慢性疼痛には適応があります。さらによく読むと、「非オピオイド鎮痛剤で治療困難」と前段にあります。当該患者は、初診で来院されています。疼痛に対する第1選択は、非オピオイド鎮痛剤であり、治療困難と判断したのちに、トラムセット配合錠に変更するというストーリーが読み取れます。したがって、初診時からトラムセット配合錠を投与した理由が、このレセプトからは読み取れず、添付文書の要件に沿っていないとD事由が適応されたものと推測できます。診療録を確認したところ、「他院から非オピオイド鎮痛剤に対して効果が薄いとの情報提供を受けていたことを理由にトラムセット配合錠を処方した」ことが記載されていました。同院のレセプト担当は、「病名が合致しているのでコメントは必要ない」と判断したようです。審査支払機関では、このように判断を必要とするところまでコンピュータ審査に対応しているようです。今後の査定対策として、医師には投与条件によってはコメントを必要とする薬剤であることを伝え、レセプトチェックシステムには初診時などの投与要件外であった場合にコメントを要することを登録しました。

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ポロキサマー188、鎌状赤血球症の血管閉塞性疼痛改善せず/JAMA

 鎌状赤血球症の小児/成人患者における血管閉塞性の疼痛エピソードの治療では、ポロキサマー188はプラセボと比較して、非経口オピオイド鎮痛薬の最終投与までの期間を短縮しないことが、米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のJames F. Casella氏らが行った「EPIC試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2021年4月20日号で報告された。12ヵ国66施設のプラセボ対照無作為化第III相試験 研究グループは、鎌状赤血球症患者における血管閉塞性の疼痛エピソードに対するポロキサマー188の有効性を再評価する目的で、国際的な二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験を実施した(米国・Mast Therapeutics, Inc.の助成による)。 2013年5月~2016年2月の期間に、12ヵ国66施設で、年齢4~65歳、鎌状赤血球症(ヘモグロビンSS、鎌状赤血球、S-β0サラセミア、S-β+サラセミア)と診断され、非経口オピオイド鎮痛薬による治療を要する血管閉塞性の急性疼痛エピソード(4時間以上持続する中等度~重度の疼痛)で入院となった患者が登録された。 被験者は、ポロキサマー188(負荷投与量100mg/kg/時を静脈内投与後、30mg/kg/時を12~48時間持続注入)の投与を受ける群またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 388例(平均年齢15.2歳、女性176例[45.4%])が無作為化の対象となり、ポロキサマー188群に194例、プラセボ群に194例が割り付けられた。15日の時点でフォローアップができたのは357例(92.0%)、30日時にフォローアップができたのは368例(94.8%)だった。16歳未満では明らかな有害性 無作為化の時点から非経口オピオイド鎮痛薬の最終投与までの平均時間(主要評価項目)は、ポロキサマー188群が81.8時間、プラセボ群は77.8時間であり、両群間に有意な差は認められなかった(群間差:4.0時間、95%信頼区間[CI]:-7.8~15.7、幾何平均比:1.2、95%CI:1.0~1.5、p=0.09)。 年齢と試験薬の有意な交互作用(p=0.01)に基づき年齢別の解析を行ったところ、16歳未満では、非経口オピオイド鎮痛薬の最終投与までの平均時間は、ポロキサマー188群の88.7時間に比べ、プラセボ群は71.9時間と有意に短かった(群間差:16.8時間、95%CI:1.7~32.0、幾何平均比:1.4、95%CI:1.1~1.8、p=0.008)。 ポロキサマー188群で頻度が高かった有害事象は高ビリルビン血症(12.7% vs.5.2%)などであり、プラセボ群で高頻度の有害事象は低酸素症(5.3% vs.12.0%)などであった。1件以上の重篤な有害事象が発現した患者は、ポロキサマー188群が33.9%、プラセボ群は29.8%だった。 著者は、「ポロキサマー188は、鎌状赤血球症患者における血管閉塞性疼痛の期間を短縮しなかった。既報の他の第III相試験では、16歳未満で明らかな有益性を認めたのに対し、本試験では有害性が示された」とまとめている。

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添付文書改訂:オルミエント錠に新型コロナ肺炎追加/イグザレルトがDOACで初の小児適応追加/オキシコンチンTR錠に慢性疼痛追加【下平博士のDIノート】第73回

オルミエント錠に新型コロナ肺炎の適応追加<対象薬剤>バリシチニブ錠(商品名:オルミエント錠2mg/4mg、製造販売元:日本イーライリリー)<承認年月>2021年4月<改訂項目>[追加]効能または効果SARS-CoV-2による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)<Shimo's eyes>ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬バリシチニブ(商品名:オルミエント錠)の効能または効果に、新型コロナウイルスによる肺炎が追加されました。わが国では、レムデシビル、デキサメタゾンに続いて3剤目の新型コロナウイルス感染症治療薬となります。現在、新型コロナウイルス感染症に係る入院加療は全額公費負担となっており、本剤もその対象となります。投与対象は、入院下で酸素吸入、人工呼吸管理、体外式膜型人工肺(ECMO)の導入が必要な中等症から重症の患者で、レムデシビルとの併用で最長14日間投与することができます。経口投与ができない患者には、同剤を粉砕・懸濁して、胃ろうや経鼻移管などの方法で投与します。使用にあたっては、RMP資材である、「適正使用ガイド SARS-CoV-2による肺炎」を参照してください。バリシチニブの主な排泄経路は腎臓のため、透析患者または末期腎不全の患者は禁忌です。また、リンパ球数が200/mm3未満の患者にも禁忌となっています。治療成績としては、1,033人の患者が登録された国際共同第III相試験で回復までの期間を比較した結果、バリシチニブ+レムデシビルの併用群(バリシチニブ群)は7日、レムデシビル単独群(対照群)は8日と有意差がありました。また、重症患者216人に絞って評価したところ、回復までの期間は、バリシチニブ群で10日、対照群は18日とより大きな差が見られました。なお、本剤は2020年12月にアトピー性皮膚炎の追加適応も得ています。参考日本イーライリリー プレスリリースイグザレルトがDOACで初の小児適応追加<対象薬剤>リバーロキサバン(商品名:イグザレルト錠・OD錠・細粒分包10mg/15mg、製造販売元:バイエル薬品)<改訂年月>2021年1月<改訂項目>[追加]効能または効果小児:静脈血栓塞栓症の治療および再発抑制<Shimo's eyes>抗凝固薬のリバーロキサバン(商品名:イグザレルト錠・OD錠・細粒分包)の効能または効果に、小児に対する「静脈血栓塞栓症の治療および再発抑制」が追加され、小児適応を持つ唯一の直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)となりました。また、新生児や乳幼児の服用にも適した剤型であるドライシロップ(同:イグザレルトドライシロップ小児用51.7mg/103.4mg)も承認されました。本剤は、エドキサバン(同:リクシアナ錠・OD錠)、アピキサバン(同:エリキュース錠)とともに経口活性化凝固第Xa因子阻害薬に分類されます。血液凝固系におけるXa因子の活性化部位を直接的に阻害することで、トロンビンの生成を阻害して抗凝固作用を発揮します。近年の疾患に関する認知や診断技術の向上により、静脈血栓塞栓症(VTE)と診断される小児患者数は増加しています。小児における従来のVTE治療では、ワルファリンのみが適応を持っていたため、採血による定期的な凝固系のモニタリングだけでなく、薬物相互作用や食事など多方面で配慮が必要でしたが、本剤の適応追加により、患児および介助者の負担を軽減できることが期待されています。参考バイエル薬品 プレスリリース同 イグザレルト.jp 小児:静脈血栓塞栓症の治療および再発抑制(小児VTE)オキシコンチンTR錠の適応に慢性疼痛<対象薬剤>オキシコドン塩酸塩水和物徐放錠(商品名:オキシコンチンTR錠5mg/10mg/20mg/40mg、製造販売元:シオノギファーマ)<改訂年月>2020年10月<改訂項目>[追加]警告慢性疼痛に対しては、本剤は、慢性疼痛の診断、治療に精通した医師のみが処方・使用するとともに、本剤のリスクなどについても十分に管理・説明できる医師・医療機関・管理薬剤師のいる薬局のもとでのみ用いること。また、それら薬局においては、調剤前に当該医師・医療機関を確認したうえで調剤を行うこと。[追加]効能・効果非オピオイド鎮痛薬またはほかのオピオイド鎮痛薬で治療困難な中等度から高度の慢性疼痛における鎮痛[追加]用法・用量慢性疼痛に用いる場合:通常、成人にはオキシコドン塩酸塩(無水物)として1日10~60mgを2回に分割経口投与する。なお、症状に応じて適宜増減する。<Shimo's eyes>オピオイド鎮痛薬のオキシコドン塩酸塩水和物徐放錠(商品名:オキシコンチンTR錠)の効能・効果に、慢性疼痛が追加されました。本剤は容易に砕けない硬さと、水分を含むとゲル化するという乱用防止特性を有する徐放性製剤です。本剤は、依存や不適正使用につながる潜在的なリスクがあるため、今回の適応追加に際しては、医薬品リスク管理計画を策定して適切に実施するなどの承認条件が付され、医療機関・医師・薬剤師による厳重な管理が求められています。【オキシコンチンTR錠を慢性疼痛で使用する際の確認事項】<処方する医師>1.製造販売業者が提供するeラーニングを受講し、確認テストに合格し、確認書をダウンロードする。2.処方時に確認書の内容を患者に説明し、医師・患者ともに署名をして確認書を患者に交付する。3.確認書の控えを医療機関で保管する。<調剤する薬剤師>1.患者が持参した麻薬処方箋と確認書について、処方医名、施設名、交付日が一致していることを確認する。なお、患者が確認書を持参しておらず、がん疼痛か慢性疼痛か判断できない場合は、処方医に患者の適応を問い合わせる。2.確認書の患者確認事項を説明し、患者の理解を確認し、確認書にチェックを入れ、調剤する。近年、がん患者だけでなく、非がん患者の痛みに関する身体的症状と精神症状のケアが課題となっています。このような背景から、非がん性疼痛に適応を持つオピオイド鎮痛薬が増えてきました。すでに、トラマドール、コデインリン酸塩、ブプレノルフィン貼付薬、モルヒネ塩酸塩、フェンタニル貼付薬がありますが、今回、オキシコドン製剤として初めて本剤が慢性疼痛への適応を取得しました。参考PMDA「オキシコドン塩酸塩水和物徐放製剤の使用に当たっての留意事項について」同「確認書を用いた管理体制の全体図」シオノギ製薬「オキシコンチンTR錠で慢性疼痛の治療を受けられる患者さまへ」

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認知症、脳・心血管疾患、1型糖尿病などがCOVID-19重症化リスクに追加/CDC

 米国疾病予防管理センター(CDC)は、3月29日、成人において新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスクとなる病状リストにいくつかの新しい項目を追加した。以前から可能性が指摘されていた、「1型糖尿病(2型糖尿病に追加)」「中等度~重度の喘息」「肝疾患」「認知症またはその他の神経学的疾患」「脳卒中・脳血管疾患」「HIV感染症」「嚢胞性線維症」「過体重(肥満に追加)」のほか、新しく「薬物依存症」がリストアップされた。新しいリストでは、特定のカテゴリごとに病状が記載されている。COVID-19重症化リスクとなる成人の病状リスト(アルファベット順)・がん・慢性腎臓病・慢性肺疾患:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息(中等度~重度)、間質性肺疾患、嚢胞性線維症、肺高血圧症など・認知症またはその他の神経学的疾患・糖尿病(1型または2型)・ダウン症・心臓病(心不全、冠状動脈疾患、心筋症、高血圧など)・HIV感染・免疫不全状態(免疫力の低下)・慢性肝疾患:アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患[NAFLD]、とくに肝硬変、肝線維化など・過体重と肥満:BMI>25(過体重)、BMI>30(肥満)、BMI>40(重度の肥満)・妊娠・鎌状赤血球症またはサラセミアなどの異常ヘモグロビン症・喫煙(現在または以前)・臓器または造血幹細胞の移植・脳卒中または脳血管障害・薬物依存症(アルコール、オピオイド、コカインの中毒など) CDCは、これらの病状がある人は、周りの人の協力を得ながら注意深く安全に管理することが重要だとし、「現在の処方・治療計画の継続」「(病状に対応できる)常温保存食品の用意」「病状悪化のトリガーを避ける」「ストレスへの対処」「異変があった場合の迅速な救急要請」などを呼び掛けている。

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終末期、痛みのコントロールだけで良いのか?【スーパー服薬指導(3)】

スーパー服薬指導(3)終末期、痛みのコントロールだけで良いのか?講師:近藤 剛弘氏 / 元 ファイン総合研究所 専務取締役動画解説自宅にて終末期を過ごす患者の夫が代理で来局。薬剤師は前回までの薬歴などを確認し、オピオイド鎮痛薬の処方に問題があることを見つけたが…。

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米国におけるerenumab使用患者の特徴

 片頭痛は、中等度から重度の再発性発作を特徴とする衰弱性疾患であり、多くの患者が罹病している。erenumabは、クラス初のカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬であり、成人の片頭痛予防に適応を有する薬剤である。米国・IQVIAのDionne M. Hines氏らは、米国の成人片頭痛患者において、erenumabが処方されている患者の特徴、アドヒアランス、治療パターンについて調査を行った。Headache誌オンライン版2021年2月16日号の報告。 IQVIAの薬局および医療機関のオープンソースレセプトデータベースを用いて、レトロスペクティブ縦断的コホートを実施した。データベースより、2018年5月~2019年4月にerenumabを初めて処方された成人片頭痛患者を特定した。患者のフォローアップ期間は、180日以上を必要とした。erenumabの処方パターン、継続性、アドヒアランス(薬剤保持率[MPR]、治療日数率[PDC])、急性片頭痛治療薬または他の片頭痛の予防薬の中止について調査を行った。erenumab開始後の急性期治療における用量変化は、erenumabにて適切な試験を行った患者のサブセット(処方開始後80日以内に2回以上のレセプトデータを有する)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした患者は、6万4,174例。・平均年齢は48±13歳で、女性の割合は85.2%(5万4,656例)であった。・erenumabの初回投与量は、過半数の患者(65.1%、4万1,790例)で70mgであった。・erenumab開始時の投与量から用量変更がなかった患者は3万4,019例(81.4%)であった。・PDCが0.80以上の患者は1万9,797例(30.8%)、MPRが0.80以上の患者は2万6,769例(41.7%)であった。・erenumab開始後、急性片頭痛治療薬の中止率は48.7%(2万2,965例/4万7,190例)、他の片頭痛予防薬の中止率は36.1%(1万6,602例/4万6,006例)であった。・トリプタン、エルゴット化合物、オピオイド、バルビツール酸を使用していた患者は、erenumab開始後に用量の減少が観察された。 著者らは「多くの患者は、片頭痛の急性期治療または予防の治療歴を有していた。erenumabのアドヒアランスは、従来の経口片頭痛予防薬よりも高かったが、全体のアドヒアランスはまだ十分とはいえない。erenumab開始後に急性期治療薬および予防薬の使用量が減少していることから、実臨床における有効性が示されている」としている。

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認知症への中枢神経系作用薬巡るポリファーマシーの実態/JAMA

 2018年に、米国の認知症高齢患者の13.9%で、中枢神経系作用薬の不適切な多剤併用(ポリファーマシー)の処方が行われており、曝露日数中央値は193日に及び、最も多い薬剤クラスの組み合わせは抗うつ薬+抗てんかん薬+抗精神病薬であることが、同国・ミシガン大学のDonovan T. Maust氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌2021年3月9日号に掲載された。米国では、地域居住の認知症高齢者は、向精神薬やオピオイドの使用率が高いとされる。また、これらの患者では、中枢神経系作用薬の不適切な多剤併用により、認知機能の低下、転倒関連の傷害、死亡のリスクが増加する可能性があるという。不適切な多剤併用の広まりを評価する米国の横断研究 研究グループは、米国の地域居住の認知症高齢患者における中枢神経系作用薬の不適切な多剤併用の広まりを評価する目的で横断研究を行った(米国国立老化研究所[NIA]の助成による)。 対象は、2015~17年の期間に、認知症を有し、従来のメディケア保険に加入していた地域居住のすべての高齢患者であった。薬剤曝露は、2017年10月1日~2018年12月31日の期間の処方箋の調剤データを用いて推定した。観察期間は2018年で、最終的な調査コホートに含まれるには、2018年1月1日の時点でメディケア・パートD(外来処方薬の保険給付)の保険適用があることが求められた。 主要アウトカムは、2018年における中枢神経系作用薬の不適切な多剤併用の発生とされ、抗うつ薬、抗精神病薬、抗てんかん薬、ベンゾジアゼピン系薬剤、非ベンゾジアゼピン系ベンゾジアゼピン受容体作動性催眠薬、オピオイドのうち3剤以上に、30日以上連続的に曝露した場合と定義された。 また、不適切な多剤併用の基準を満たした患者において、曝露期間、処方された薬剤と薬剤クラスの数、最も多い薬剤クラスの組み合わせ、最も使用頻度の高い中枢神経系作用薬を調べた。6.8%が1年曝露、全曝露日数の92%に抗うつ薬 認知症の高齢患者115万9,968例(年齢中央値83.0歳[IQR:77.0~88.6]、女性65.2%)が解析に含まれた。このうち13.9%(16万1,412例)が中枢神経系作用薬の不適切な多剤併用の基準を満たし、全曝露日数は3,213万9,610人日であった。 中枢神経系作用薬の不適切な多剤併用の基準を満たした患者は、満たさなかった患者に比べて年齢中央値が低く(79.4歳[IQR:74.0~85.5]vs.84.7歳[78.8~89.9])、女性が71.2%を占めた。また、基準を満たした患者の曝露日数中央値は193日(IQR:88~315)で、57.8%が180日以上、6.8%は365日曝露しており、29.4%は5剤以上、5.2%は5クラス以上に曝露していた。 全曝露日数(3,213万9,610人日)の92.0%に抗うつ薬が、62.1%に抗てんかん薬が、47.1%に抗精神病薬が、40.7%にベンゾジアゼピン系薬剤が含まれた。最も多い薬剤クラスの組み合わせは、抗うつ薬+抗てんかん薬+抗精神病薬で、全曝露日数の12.9%に相当した。 また、最も多く処方されていた薬剤はガバペンチンで、全曝露日数の33.0%、すべての抗てんかん薬の曝露日数の53.2%を占めた。次いで、トラゾドン(全曝露日数の26.0%)、クエチアピン(24.4%)、ミルタザピン(19.9%)、セルトラリン(18.7%)の順であった。 著者は、「処方の適応に関する情報がないため、個々の患者における薬剤の組み合わせの臨床的妥当性に関する判断には限界がある」としている。

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膵がん末期患者の下痢をコデインリン酸塩でコントロール【うまくいく!処方提案プラクティス】第34回

 今回は、末期がんの患者さんの下痢に対して、コデインリン酸塩錠で対処した症例を紹介します。代表的な副作用である便秘を活用することで、最終的には疼痛・排便の両方がコントロールできましたが、もっと早くから介入できていたら…という後悔が残った事例です。患者情報87歳、女性基礎疾患膵体部がん(c Stage4b、本人へは未告知)、左加齢性黄斑変性症既往歴子宮筋腫手術、腰椎圧迫骨折、左大腿部頸部骨折診察間隔毎週訪問処方内容1.トラセミド錠4mg 1錠 分1 朝食後2.スピロノラクトン錠25mg 1錠 分1 朝食後3.ナイキサン錠100mg 2錠 分2 朝食後・就寝前4.酪酸菌配合錠 4錠 分2 朝食後・就寝前5.パンクレリパーゼカプセル150mg 2カプセル 分2 朝食後・就寝前6.乾燥硫酸鉄徐放錠 2錠 分2 朝食後・就寝前7.ポラプレジンク錠75mg 2錠 分2 朝食後・就寝前8.ロペラミドカプセル1mg 2カプセル 分2 朝食後・就寝前9.スボレキサント錠15mg 1錠 分1 就寝前10.ロフラゼプ酸エチル錠1mg 1錠 分1 就寝前本症例のポイントこの患者さんは、膵体部がんの進行による疼痛と頻回の下痢で体力消耗が激しく、その便処理のために同居する長女の介護負担が非常に大きい状態でした。内服薬の管理も本人では難しく、出勤前と帰宅後に内服支援をする長女のために朝食後と就寝前で統一していました。下痢に関しては以前から悩みの種で、過去の治療において半夏瀉心湯やタンニン酸アルブミンで治療をするも抑えることはできず、現在の治療でも整腸薬のみではまったく効果はありませんでした。ロペラミドも追加しましたがコントロールには至らず、本人と長女の精神的・身体的な疲弊が限界に達していました。そのような中、医師より、どうにか今の服薬管理環境で下痢をコントロールできる内服薬はないかという電話相談がありました。この患者さんは、過去に子宮筋腫の手術歴があり、イレウスのリスクもあることから止瀉作用の過剰発現には注意を払う必要があります。しかし、今も疼痛があり、今後も病勢が進行する可能性から、オピオイド導入のタイミングと考えて、腸管内のオピオイド受容体を刺激して腸管蠕動を抑制するコデインリン酸塩錠の投与について検討しました。処方提案と経過医師に、疼痛と排便コントロールの両方を兼ねて、現行のロペラミドに加えて、弱オピオイドのコデインリン酸塩錠の追加を提案しました。用法については、長女より夜間から明け方の便失禁で困っているという話があったため、20mg錠を朝・夕食後(長女帰宅時に服用)・就寝前の分3で服用する方法を伝えました。医師からは、強オピオイドの導入も考えていたが段階を踏んで治療をしよう、と承認を得ることができ、早速当日の夜より服用開始となりました。投与開始3日目にフォローアップのため訪問したところ、夜間の便失禁が減り、本人と長女の心身の負担が軽減できていました。しかしその後、これまでの度重なる便失禁や病状悪化が影響してか、食事がほとんど摂れずに水分摂取がやっとの状態になっていきました。そして、病状悪化から内服も困難な状態となり、フェンタニルクエン酸塩貼付薬とモルヒネ塩酸塩水和物液での緩和医療へ切り替えることになりました。複数の止瀉薬を検討していた段階で提案することができず、医師から相談を受けるまでなかなか知恵を絞りきれなかったことを反省する事例となりました。

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肺血栓塞栓症はCOPD増悪の原因と考えてよいか?(解説:山口佳寿博氏)-1355

 まず言葉の定義から考えていく。COPDの分野にあって、“急性増悪”という言葉が使用されなくなって久しい。現在では、単に“増悪(Exacerbation)”という言葉を使用する。さらに、増悪は“気道病変(炎症)の悪化を原因とする呼吸器症状の急性変化”と定義される(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease (GOLD) 2006以降)。GOLD 2003では、増悪は狭義のもの(一次性原因)と広義のもの(二次性原因)の2種類に分類されたが、GOLD 2006以降では、気道病変(炎症)の悪化を原因とする“狭義の増悪”を“増悪”と定義し、それ以外の原因に起因する“広義の増悪”は増悪ではなく“増悪の鑑別診断/修飾因子”として考慮することになった(肺炎、肺血栓塞栓症、気胸、胸部外傷、胸水、心不全/不整脈、麻薬/鎮静剤、β blocker。GOLD 2011以降では、麻薬/鎮静剤、β blockerが鑑別から除外)。増悪の定義が厳密化されたのは、増悪様症状を示した症例のうち80%以上が感染性(気道感染)、非感染性(環境汚染など)による気道炎症の悪化に起因し、それに対してSteroid、抗菌薬を中心とした基本的治療法が確立されたためである。その意味で、肺血栓塞栓症(PTE:Pulmonary thromboembolism)は増悪を惹起する原因ではなく、増悪の鑑別診断となる病態であることをまず理解していただきたい。 COPDとPTEの合併に関しては古くから多くの検討がなされ、COPD患者におけるPTEの合併率は、19%(Lesser BA, et al. Chest. 1992;102:17-22.)から23%(Shetty R, et al. J Thromb Thrombolysis. 2008;26:35-40.)と報告されている。これらのPTE合併頻度は本邦の一般人口におけるPTEの発症頻度(剖検例での検討:無症候性の軽症を含め18~24%)とほぼ同等であり、COPD自体がPTE発症を助長しているわけではない。しかしながら、原因不明のCOPD増悪(一次性原因と二次性原因を含む)症例を解析した論文では、その3.3%(Rutschmann OT, et al. Thorax. 2007;62:121-125.)から25%(Tillie-Leblond I, et al. Ann Intern Med. 2006;144:390-396.)にPTEの合併を認めたと報告された。本論評で取り上げたCouturaudらの論文では、COPD増悪様症状を呈した症例の5.9%にPTEの合併を認めたと報告されている(Couturaud, et al. JAMA. 2021;325:59-68.)。これら3論文を合わせて考えると、増悪様症状を呈したCOPD患者のうち少なくとも10%前後に、二次性原因としてのPTEが合併しているものと考えなければならない。以上の解析結果は、安定期COPDはPTEの発生要因にはならないが、COPDの増悪様症状を呈した患者にあってはPTEに起因するものが少なからず含まれ、COPDの真の増悪(一次性増悪)の鑑別診断としてPTEは重要であることを示唆する。PTEの合併はCOPD患者のその後の生命予後を悪化させ、1年後の死亡率はPTE合併がなかったCOPD患者の1.94倍に達する(Carson JL, et al. Chest. 1996;110:1212-1219.)。 Couturaudらのものを含め現在までに報告された論文からは、COPDの真の増悪とPTEとの関連を明確には把握できない。COPDの増悪がPTEの危険因子となる、あるいは、逆にPTEの合併がCOPDの真の増悪をさらに悪化させるかどうかを判定するためには、増悪様症状を呈したCOPD患者を真の増悪(一次性原因)とそうでないもの(二次性原因)に分類し、各群でPTEの発症頻度を評価する必要がある。COPDの真の増悪は、一秒量(FEV1)関連の閉塞性換気指標の悪化、喀痰での好中球、好酸球の増加、喀痰中の微生物の変化などから簡単に判定できる。これらの変化は、PTEなどの二次性原因では認められないはずである。以上のような解析がなされれば、COPDの真の増悪とPTE発症の関係が正確に把握でき、COPDの真の増悪がPTE発症の危険因子として作用するか否かの問題に決着をつけることができる。今後、このような解析が世界的になされることを念願するものである。本邦のPTEガイドライン(cf. 10学会合同の『肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症[静脈血栓塞栓症]予防ガイドライン』[2004])では、COPDの増悪がPTEの危険因子の1つとして記載されているが、この場合の増悪がいかなる意味で使用されているのか、再度議論される必要がある。

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