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「GLP-1受容体作動薬ダイエット」に興味を持った患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第43回

■外来NGワード「あなたには使えません」(保険適用について説明せず)「この薬を使えば、痩せますよ!」(食事と運動療法について説明せず)■解説最近、「GLP-1ダイエット」という言葉が注目を集めています。SNSでは、単品ダイエット、脂肪燃焼スープ、食事時間制限、レモンコーヒーなどとともに、「GLP-1ダイエット」というワードが頻繁に検索されています。GLP-1受容体作動薬は、血糖依存的にインスリン分泌を促進し、グルカゴン抑制や胃内容物排出遅延を介して血糖改善作用を発揮するだけでなく、食欲抑制を通じて減量効果も期待されます。肥満症を対象とした「セマグルチド(商品名:ウゴービ皮下注)」の適応は、高血圧、脂質異常症、または2型糖尿病を有し、かつ食事療法や運動療法が不十分な場合、かつBMIが27以上で2つ以上の肥満に関連する健康障害がある、またはBMIが35以上の患者に限定されています。ところが、「GLP-1ダイエット」では、「初診からオンラインで診察可能、自宅で手軽に実施でき、食事制限や運動不要で、太りにくい体質になる」などといった宣伝文句が並んでいます。一部には自己調整可能な投与量を強調するものも見受けられます。そのうえ、自由診療であるので価格が高額である一方で、副作用については詳細な説明が不足しています。その結果、副作用が発生した場合には、保険診療の医療機関を受診する必要が生じます。そして、自由診療においてGLP-1受容体作動薬が処方されることで、本来必要な糖尿病患者への供給が追いつかないとの指摘もあります。また、自由診療で処方された患者は、適切なライフスタイルの改善方法について充分な説明がなされていないため、薬を中止した際のリバウンドを心配しています。こうした「GLP-1ダイエット」の問題点について適切に理解し、説明することが重要です。■患者さんとの会話でロールプレイ患者この間、SNSを検索していたら、「GLP-1ダイエット」というのがでてきたのですが、どうですか?(糖尿病がない肥満者)医師最近、美容の世界や個人輸入している人もいるそうですね。患者痩せるんですか?医師正しく使えばね。ただし、自己流は禁物です。患者副作用はありますか?医師もちろん。薬ですから、副作用はありますよ。吐き気や嘔吐、胃腸障害など…。あと、専門家の指導のもとで薬の量を調整しないと、低血糖などで救急搬送された例もあるそうですよ。患者えっ、それ怖いですね。医師それに、薬を止めたら、体重がリバウンドするかもしれませんからね。患者確かに、ただ単に薬を飲むだけじゃ、痩せないということですね。医師そうです。こういった肥満症治療薬は食事療法と運動療法の補助として使います。そうすることがリバウンド予防になります。患者食事と運動はどんなことに気を付けたらいいですか?(興味深々)■医師へのお勧めの言葉「ただ、薬を飲むだけでは痩せることはできませんし、止めたらリバウンドは必至です。肥満症治療薬は食事療法と運動療法の補助として使います。その方が、最小限の薬になって副作用も少ないですし、薬を止めた際にもリバウンド予防につながります」 1)Ansari H UI H, et al. Endocr Pract. 2023:23;758-759.Endocr Pract. 2023 Nov 27.[Epub ahead of print]2)日本肥満学会、肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント3)最適使用推進ガイドラインセマグルチド(遺伝子組換え)

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脂質異常症に対する遠隔栄養指導の効果は対面と同等

 脂質異常症の患者に対する管理栄養士によるオンラインでの栄養指導は、対面での指導と同等の効果があるとする研究結果が報告された。米ミシガン大学のShannon Zoulek氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Clinical Lipidology」に11月17日掲載された。 オンラインによる遠隔医療は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックによって急速に普及した。その後、COVID-19は収束したが、引き続き遠隔医療を利用する患者が少なくない。本研究が行われたミシガン大学の心臓病予防のための栄養プログラムでは、2022年時点において受診者の約5人に1人が遠隔での指導を希望している。ただし、これまでのところ、脂質異常症に対する栄養指導の効果が、対面と遠隔で異なるのかどうかは十分検討されておらず、Zoulek氏らはその点を観察研究により検証した。 2019年3月末から2022年9月末に、同大学の心疾患予防プログラムの栄養指導を受けた274人のうち192人が解析対象とされた。このうち151人(78.6%)が対面、41人(21.4%)が遠隔で指導を受けていた。これら両群間で、性別、人種/民族、BMI、処方されているスタチンの強度、エゼチミブの処方率、およびその他の脂質異常症治療薬の使用状況などの群間差は非有意だった。 栄養指導の前と指導の後(間隔は中央値33日)に、血清脂質〔総コレステロール、善玉コレステロール(HDL-C)、中性脂肪〕を測定。それらの測定値からSampson式に基づき悪玉コレステロール(LDL-C)を算出し、また善玉以外のコレステロール(non-HDL-C)も算出した。これらの検査値の改善幅を両群間で比較したところ、総コレステロール、LDL-C、non-HDL-Cは、いずれも両群ともに指導後に有意に低下していて、低下幅に有意差は見られなかった。 この結果について論文の筆頭著者であるZoulek氏は、「われわれの研究は、バーチャルのフォーマットを利用した栄養指導でも、対面での介入と同等の短期的な臨床転帰を達成できるという考えを裏付けるものだ」と総括。その上で、「コレステロール値の改善は心血管イベントリスクの軽減につながると考えられ、治療アクセスの選択肢が増えることは、治療を受けようとしている患者にとってメリットとなるだろう」と付け加えている。 また、共著者の1人である同大学のBeverly Kuznicki氏は、「栄養ケアへのアクセスは非常に重要であり、われわれの研究はコレステロール値の改善に対してバーチャルケアがいかに効果的であるかを示している。バーチャルケアでは、栄養士が患者のキッチンの様子を覗き込み、2人が協力して冷蔵庫の中にある食材を使った献立を考えたりすることも可能だ」と、対面医療にはない遠隔医療の特色を強調している。 また研究グループによると、遠隔医療のそのほかのメリットとして、経済的弱者やマイノリティー、非都市部の居住者の医療アクセスが改善される可能性が、米国全土での調査結果として示されているという。さらに論文の上席著者である同大学のEric Brandt氏は、「バーチャルケアの推進は、COVID-19パンデミックという災禍の中から生まれた希望の光と言えるのではないか。従来型のケアにあった、いくつかの障壁の克服につながる多くのメリットが、バーチャルケアには存在している」と評している。

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TG/HDL-C比は2型糖尿病発症の強力な予測因子

 中性脂肪(TG)と善玉コレステロール(HDL-C)の比が、将来の2型糖尿病の発症リスクの予測に利用できることが、12万人以上の日本人を長期間追跡した結果、明らかになった。京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学の弓削大貴氏、岡田博史氏、福井道明氏、パナソニック健康管理センターの伊藤正人氏らの研究によるもので、詳細は「Cardiovascular Diabetology」に11月8日掲載された。2型糖尿病発症予測のための最適なカットオフ値は、2.1だという。 TGをHDL-Cで除した値「TG/HDL-C比」は、インスリン抵抗性の簡便な指標であることが知られているほか、脂肪性肝疾患や動脈硬化性疾患、および2型糖尿病の発症リスクと相関することが報告されている。ただしそれらの報告の多くは横断的研究またはサンプルサイズが小さい研究であり、大規模な追跡研究からのエビデンスは存在せず、2型糖尿病発症予測のための最適なカットオフ値も明らかになっていない。弓削氏、岡田氏らは、国内の企業グループの従業員を対象とするコホート研究(Panasonic cohort study)のデータを用いた縦断的解析によって、この点を検討した。 2008~2017年に健診を受けた計23万6,603人から、ベースライン時点で既に糖尿病と診断されている患者、脂質異常症治療薬を服用している患者、およびデータ欠落者などを除外し、12万613人を解析対象とした。主な特徴は、平均年齢44.2±8.5歳、男性76.0%、BMI22.9±3.4kg/m2であり、TGは110.0±85.9mg/dL、HDL-Cは60.5±15.4mg/dLで、悪玉コレステロール(LDL-C)は123.4±31.5mg/dLだった。 2018年までの追跡〔期間中央値6.0年(四分位範囲3~10年)〕で、6,080人が新たに2型糖尿病を発症した。2型糖尿病発症リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、空腹時血糖値、喫煙習慣、運動習慣、収縮期血圧)を調整後に、脂質関連検査値と2型糖尿病発症リスクとの間に、以下の有意な関連が認められた。 まず、TGは10mg/dL上昇するごとのハザード比(HR)が1.008(95%信頼区間1.006~1.010)だった。同様の解析でHDL-CはHR0.88(同0.86~0.90)、LDL-CはHR1.02(1.02~1.03)であり、TG/HDL-C比は1上昇するごとにHR1.03(1.02~1.03)となった。 次に、向こう10年間での2型糖尿病発症を予測するための最適なカットオフ値と予測能(AUC)を検討。すると、予測能が低い指標から順に、LDL-Cがカットオフ値124mg/dLでAUCは0.609、HDL-Cは54mg/dLでAUC0.638、TGは106mg/dLで0.672であり、最も高いAUCはTG/HDL-C比の0.679であって、そのカットオフ値は2.1と計算された。TG/HDL-C比の予測能は、他の3指標すべてに対して有意に優れていた(いずれもP<0.001)。 続いて、性別およびBMI別のサブグループ解析を施行。すると、男性では全体解析と同様に、TG/HDL-C比が1上昇することによる2型糖尿病発症のHRは1.03(1.02~1.03)だったが、女性は1.05(1.02~1.08)であり、より強い関連が示された。ただし交互作用は非有意だった。 BMI25kg/m2未満/以上で層別化した解析からは、25未満の群でTG/HDL-C比が1上昇するごとのHRは1.04(1.03~1.05)である一方、25以上の群ではHR1.02(1.02~1.03)であって、有意な交互作用が観察された(交互作用P=0.0001)。最適なカットオフ値は、BMI25未満では1.7、25以上では2.5だった。 著者らは本研究の特徴として、日本人を対象とする縦断的研究でありサンプルサイズも大きいことを挙げる一方、女性が少ないこと、比較的若年者が多いことなどの限界点があるとしている。その上で「TG/HDL-C比は、LDL-C、HDL-C、TGよりも10年以内の2型糖尿病発症の強力な予測因子であることが示された。この結果は、2型糖尿病発症抑制のための今後の医療政策に有用な知見となり得る」と述べている。

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会話の時間が短いと非高齢者でも嚥下機能が低下?

 50~60歳代という誤嚥性肺炎が生じるにはまだ早い年齢層であっても、人と会話をする時間が短い人は、嚥下機能が低下している可能性のあることを示すデータが報告された。大分大学医学部呼吸器・感染症内科学の小宮幸作氏らの研究によるもので、詳細は「Cureus」に10月29日掲載された。 日本人の死亡原因の上位の一角は毎年、肺炎が占めている。死因としての肺炎の多くは高齢者の誤嚥性肺炎と推測されるが、その誤嚥性肺炎につながる嚥下機能の低下は高齢者に特有のものではなく、より若い年齢から加齢とともに徐々に進行していくと考えられる。ただし、どのような因子が嚥下機能の低下に関連しているのかは明らかにされていない。これを背景として小宮氏らは、医師を対象とするインターネットアンケートによる横断調査を行い、関連因子の特定を試みた。 調査対象は、アンケート調査パネルに登録している50~60歳代の医師310人。対象を医師に限った理由は、嚥下機能を評価するための反復唾液嚥下テスト(RSST)を、医師であれば正確に行えると考えられるため。RSSTは、30秒間にできるだけ多く唾を飲み込んでもらい、飲み込む回数が多いほど嚥下機能が良好と判定する。なお、嚥下機能の正確な評価にはバリウムを用いる画像検査が行われるが、RSSTの回数はその検査の結果と強く相関することが報告されている。 アンケートではこのRSSTの回数のほかに、年齢、性別、BMI、併存疾患(脳血管疾患、COPD、胃食道逆流症、頭頸部腫瘍、神経筋疾患など)、服用中の薬剤、生活習慣(飲酒・喫煙・運動習慣、睡眠時間、歯みがきの頻度、1日の会話時間)、自覚症状(口呼吸、口渇、鼻閉、飲み込みにくいなど)について質問。なお、RSSTは上限を20回として、0~20の間で回答を得た。また、会話の時間は、自分が話している時間と相手の話を聞いている時間を区別せずに答えてもらった。 回答者の年齢は中央値59歳(四分位範囲54~64)、女性6.1%だった。RSSTスコアは中央値12で、1~12回を低RSST群(52.3%)、13~20回を高RSST群(47.7%)とした。 両群を比較すると、年齢や性別の分布、会話時間以外の生活習慣、自覚症状に有意差は見られず、脂質異常症の割合〔低RSST群19.8%、高RSST群30.4%(P=0.030)〕と会話時間〔1日に3時間未満が同順に66.0%、50.6%(P=0.006)〕のみ有意差が認められた。このほかに、睡眠時無呼吸症候群(P=0.054)や口呼吸(P=0.076)、窒息しかけた体験の有無(P=0.084)が、有意水準未満ながらも比較的大きな群間差が認められた。 次に、有意差または有意に近い群間差が認められた上記の因子を独立変数、低RSSTであることを従属変数とする多変量解析を施行。その結果、低RSSTに独立した関連のある因子として、1日の会話の時間が3時間未満であることのみが抽出された〔オッズ比1.863(95%信頼区間1.167~2.974)〕。 著者らは本研究の対象が医師のみであり、RSSTの中央値も比較的高かったことから(既報研究での中央値は一桁台)、この結果から得られた知見を必ずしも一般化できないと述べている。その上で、「誤嚥性肺炎のリスクが高まる年齢層より若い世代において、会話の時間が少ないことが嚥下機能の低下と有意な関連があることが明らかになった。会話時間は将来の誤嚥性肺炎の予測因子となるのではないか。誤嚥性肺炎のリスク抑制を目的として会話を増やすという介入研究の実施が望まれる」と結論付けている。 なお、論文中には本研究で示された関連のメカニズムとして、会話をすることが口腔の筋力や認知機能を維持するように働き、嚥下機能の低下を抑制するのではないかとの考察が加えられている。また、脂質異常症の該当者が高RSST群で有意に多かった点については、「脂質異常症は脳血管障害のリスク因子であるため、嚥下機能低下と関連すると考えられる。示された結果はそのような理解に反するものだが、嚥下機能が優れている人は食事摂取量が多いことを反映した結果かもしれない」と述べられている。

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原発性胆汁性胆管炎(PBC)に対するelafibranorの有用性と安全性(解説:上村直実氏)

 原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、自己免疫学的機序による肝内小葉間胆管の破壊を特徴とする慢性胆汁うっ滞性肝疾患であり、徐々に肝硬変から肝不全へ移行するとともに肝がんをも引き起こすことのある疾患で、わが国の難病に指定されている。最近の診断技術や治療の進歩により肝硬変まで進展する以前に胆管炎として診断されるケースが多くなり、2016年にそれまで使用されていた原発性胆汁性肝硬変から原発性胆汁性胆管炎と病名が変更されている。進行期の症状としては掻痒感や黄疸が特徴的であるが、その前には無症状であることが多く、日本における患者数は中年の女性を中心として約5~6万人に上ると推定され、稀な疾患というわけではない。 治療法としてはウルソデオキシコール酸(UDCA)が標準治療薬で、肝硬変が進み肝不全になった場合には肝移植が究極の救命法であったが、最近、病気の進行を抑制するために高脂血症の治療薬であるベサフィブラートとUDCA併用療法の有効性が報告され、厚生労働省研究班による『PBC診療ガイドライン2023』にも推奨されている。ただし、わが国でベサフィブラートは高脂血症にのみ保険適応があるため、高脂血症を合併しないPBCに対しては、臨床研究として投与することが適切となっている。 今回は、UDCAに不応性のPBCに対してペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)α、およびδのデュアルアゴニストであるelafibranorの有効性を検証した国際共同RCTの結果が、2023年10月のNEJM誌に報告された。プラセボと比較して投与52週目には、胆道系酵素やビリルビンなどの血清学的異常が有意に改善していた。長期投与により、さらなる改善が期待される結果である。ちなみにelafibranorはインシュリン抵抗性を改善して、糖尿病、高脂血症および非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)に対する有用性が示されて、今後の臨床応用が期待されている薬剤である。 このようにUDCAのみでなく胆管炎から肝硬変への進展を抑制する薬剤が次々と開発され、PBCの予後が大幅に改善されることが切望される。最後に、ベサフィブラートやelafibranorは米国のFDAで承認されており、いまだにPBCに対して保険適用となっていない日本においても、迅速な承認が期待される。

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肥満症へのチルゼパチドの効果、36週で中止vs.投与継続/JAMA

 過体重または肥満の集団において、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)/グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)共受容体作動薬であるチルゼパチドは、36週間の投与で20%以上の体重減少をもたらし、投与を中止すると体重が大幅に増加したが、投与継続により初期の体重減少を維持あるいはさらに増強することが、米国・Weill Cornell MedicineのLouis J. Aronne氏らが実施した「SURMOUNT-4試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年12月11日号に掲載された。36週の導入期間後に、投与継続とプラセボに無作為化 SURMOUNT-4試験は、4ヵ国(アルゼンチン、ブラジル、台湾、米国)の70施設が参加した第III相投与中止臨床試験であり、2021年3月~2023年5月に実施された(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。 本試験では、非盲検下にチルゼパチド(最大耐用量として10mgまたは15mg、週1回)を36週間皮下投与する導入期間の後、被験者を盲検下にチルゼパチドを継続する群またはプラセボに切り換える群に無作為に割り付け、52週間投与した。 対象は、BMI値が30以上、またはBMI値27以上で糖尿病を除く体重関連合併症(高血圧、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸、心血管疾患)を少なくとも1つ有する、年齢18歳以上の患者であった。 主要エンドポイントは、無作為化(36週目)から88週目までの52週間の体重の平均変化量とした。主な副次エンドポイントは、導入期間中の体重減少分の80%以上を88週目に維持していた患者の割合などであった。投与継続で体重がさらに5.5%減少 670例(平均年齢48歳、女性473例[70.6%]、白人80.1%、平均体重107.3kg、平均BMI値38.4、平均ウエスト周囲長115.2cm)が36週の導入期間を完了し、チルゼパチド継続群335例、プラセボ群335例に割り付けられた。チルゼパチド導入期間中に、体重は平均で20.9%減少した。 36週目から88週目までの体重の平均変化量は、プラセボ群が14.0%増加したのに対し、チルゼパチド継続群は5.5%減少し、有意な差を認めた(群間差:-19.4%、95%信頼区間[CI]:-21.2~-17.7、p<0.001)。 88週目に、導入期間中の体重減少分の少なくとも80%を維持していた患者の割合は、プラセボ群が16.6%(55例)であったのに対し、チルゼパチド継続群は89.5%(300例)と有意に優れた(p<0.001)。また、36週目から88週目までのウエスト周囲長の変化量は、プラセボ群が7.8cm増加したのに対し、チルゼパチド継続群は4.3cm減少し、有意に良好だった(p<0.001)。88週投与で体重25.3%減少、ウエスト22.4cm減少 0週目から88週目までに、体重(チルゼパチド継続群25.3%減少vs.プラセボ群9.9%減少、p<0.001)とウエスト周囲長(22.4cm減少vs.9.0cm減少、p<0.001)は、チルゼパチド継続群で有意に改善した。 36週目から88週目までに最も頻度の高かった有害事象は消化器イベントで、プラセボ群よりもチルゼパチド継続群で高頻度(下痢[10.7% vs.4.8%]、悪心[8.1% vs.2.7%]、嘔吐[5.7% vs.1.2%])であったが、多くが軽度~中等度だった。とくに注目すべき有害事象として、チルゼパチド継続群では悪性腫瘍(3例[0.9%]、プラセボ群も3例[0.9%])、主要有害心血管イベント(3例[0.9%])、重度または重篤な消化器イベント(6例[1.8%])、低血糖症(2例[0.6%])を認めた。 著者は、「これらの結果は、体重の再増加を予防し、体重減少の維持とこれに伴う心代謝系への有益性を保持するためには、チルゼパチドの投与を継続する必要があることを強調するものである」とし、「1年間プラセボに切り換えた後でも、体重が9.9%減少していた点は注目に値するが、心代謝系のリスク因子の最初の改善効果はほぼ消失しており、このような短期治療による長期の有益性とリスクを解明するために、さらなる研究を要する」と指摘している。

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アンドロゲン遮断療法後に狭心症を発症した症例【見落とさない!がんの心毒性】第27回

※本症例は、実臨床のエピソードに基づく架空のモデル症例です。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別70代・男性主訴ECG異常、NT-proBNP高値既往歴高血圧症、糖尿病、脂質異常症、喫煙歴(+)、飲酒歴(-)家族歴父親:大腸がん、母親:狭心症現病歴X-9年の人間ドック受診時にPSA上昇を指摘されたため精査目的で泌尿器科を受診、前立腺生検を施行した。初回ならびに2回目(X-7年)の生検では陰性であったが、X-5年のドック検査でPSAがさらに上昇したことからMRI検査ならびに3回目の生検を施行し、前立腺がんと診断された。がん治療はアンドロゲン遮断療法(androgen deprivation therapy:ADT)と放射線の併用療法が選択された。X-5年3月から同年12月まで第一世代抗アンドロゲン薬が投与され、X-5年4月からX-4年6月までGnRHアゴニストが併用された。さらに、放射線療法(78Gy)をX-5年10~12月まで施行された。その結果、PSAは正常化した。がん治療終了後に心臓CT検査を施行したが、冠動脈に有意な狭窄は認めなかった。その後、泌尿器科の定期的な受診とかかりつけ医で生活習慣病の治療を受けており、引き続き年1回の人間ドックは当院を受診していた。X年に受診した人間ドックで運動負荷試験陽性(図1)、NT-pro BNP高値を指摘された。胸痛などの自覚症状は認めなかったが糖尿病などのリスク因子を有しており、虚血性心疾患の合併を疑い、精査加療目的で循環器内科を紹介し受診された。(図1)X年の人間ドックでの運動負荷心電図試験(マスターダブル負荷)画像を拡大するX年に受診した人間ドック時運動負荷心電図ではV4-V6でST低下を認め、NT-proBNP 152pg/mLの上昇を認めた。本例は、前立腺がん治療終了後に心臓CT検査が施行されるも、冠動脈に有意狭窄は認められず、前年までの運動負荷心電図所見の異常はなかった。心電図変化は比較的軽く、自覚症状も認めなかったが、高齢かつ複数の動脈硬化危険因子を有していたこと、ADTを施行されていたことから心血管疾患の合併を疑い精査を行った。循環器専門病院で施行した冠動脈造影検査では左冠動脈#7に75~90%狭窄を認めたため、同部位に冠動脈形成術(ステント留置術)を施行した。【問題】本症例の治療に際して注意する点として、適切な答えを選択せよ。a.前立腺がん症例の多くは、治療前より高齢、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、喫煙などの心血管リスクを複数有している事が多く、がん治療を施行する際には心血管毒性に対する注意が必要である。b.ADTの施行後は肥満症、糖尿病、脂質異常症を来すことがあり、その後の動脈硬化症や冠動脈疾患の発症に注意が必要である。c.症候性冠動脈疾患の既往を有する症例に対し、ADTを施行する際には、心血管リスクの有無を考慮したがん治療薬の選択が重要である。d.ADTにおける筋肉系合併症としてはサルコペニア・運動耐容能の低下、骨関連合併症としては骨粗鬆症・骨折などを認めることがあるので注意を要する。e.すべて正しい1)Studer UE, et al. J Clin Oncol. 2006;24:1868–1876.2)Calais da Silva FE, et al. Eur Urol. 2009;55:1269–1277.3)Weiner AB, et al. Cancer. 2021;127:2895-2904.4)Klimis H, et al. J Am Coll Cardiol CardioOnc. 2023;5:70-81.5)Narayan V, et al. J Am Coll Cardiol CardioOnc. 2021;3:737-741.6)Chen DY, et al. Prostate. 2021;81:902-912.7)Okwuosa TM, et al. Circulation. 2021;14:e000082.8)Lyon AR, et al. Eur Heart J. 2022;432:4229-4361.講師紹介

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小児期の不十分なケアや過保護が成人後の糖尿病に関連

 子どもの頃に両親から十分なケアを受けていなかったり、過保護な環境で育てられたりすることと、成人期の糖尿病リスクとの関連を示唆する研究結果が報告された。九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の柴田舞欧氏らが、久山町研究参加者のデータを横断的に解析した結果であり、詳細は「BMC Endocrine Disorders」に10月12日掲載された。 十分でないケアまたは過保護といった「不適切な養育」が、成人後の肥満などと関連のあることが既に報告されている。ただし、不適切な養育と糖尿病の関連の有無はよく分かっていない。柴田氏らはこの点について、日本を代表する地域住民対象疫学研究である「久山町研究」のデータを用いて検討した。 2011年に健診を受けた40歳以上の住民2,250人のうち研究参加に同意した793人から、データ欠落者を除外した710人(男性38.0%、糖尿病有病率14.9%)を解析対象とした。小児期の子育てスタイルは、自記式アンケート(Parental Bonding Instrument;PBI)を用いて、生後16年間の状況について回答してもらった。PBIは25項目から成り、父親と母親から受けた「不十分なケア」や「過保護」の程度をスコア化して評価する。本研究では各スコアの中央値をカットオフ値として群分けし比較した。 まず、父親の養育スタイルについて、ケアが適切であった場合を基準として、不十分だった場合の糖尿病有病率を、交絡因子〔年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、高血圧・脂質異常症、糖尿病家族歴、婚姻状況、教育歴、主観的経済状況、ストレスホルモン(コルチゾール)レベル〕を調整して比較すると、オッズ比(OR)1.27(95%信頼区間0.79~2.05)であり、有意な関連は見られなかった。しかし、過保護だったか否かの比較では、OR1.71(同1.06~2.77)となり、父親から過保護に育てられた人の糖尿病有病率が有意に高かった。 一方、母親の養育スタイルとの関連について同様の交絡因子で調整して比較すると、ケアが不十分だった場合はOR1.61(1.00~2.60)、過保護であった場合はOR1.73(1.08~2.80)であって、いずれも有意な関連が認められた。 母親の養育スタイルが、適切なケアで過保護でない群〔以下、「最適な養育」〕を基準とすると、ケアが不十分で過保護な群〔以下、「不適切な養育」〕はOR1.94(1.12~3.35)と、成人後に糖尿病を有するオッズ比が2倍近くとなった。なお、ケアが不十分のみ、または過保護のみの場合は、いずれも有意なオッズ比上昇は見られなかった。また、父親の養育スタイルとの関連については、最適な養育と不適切な養育との比較で、有意なオッズ比上昇は見られなかった。 次に、父親と母親双方の養育スタイルが最適であった群を基準とする比較を実施。すると、父親と母親の養育スタイルがともに不適切であった群は交絡因子調整後、OR2.12(1.14~3.95)と2倍を超えるオッズ比が示された。なお、父親または母親いずれか一方のみが不適切な養育であった群はOR1.23(0.58~2.61)で、有意なオッズ比上昇は見られなかった。同様に、父親および母親の養育が不適切でも最適でもない群(ケアが不十分または過保護のいずれかのみに該当)はOR1.03(0.52~2.04)であり、有意なオッズ比上昇は見られなかった。 著者らは本研究が横断研究であり因果関係の解釈は制限されることや、健診受診者の3分の2が本研究への参加に同意せず悉皆性が高いとは言えないこと、残余交絡が存在する可能性のあることなどの限界点があるとしている。その上で、「幼少期の不十分なケアや過保護が成人後に糖尿病を有することと関連しており、特に両親から不適切な養育を受けた場合にはその関連性がより顕著になる」と結論付け、「最適な子育てのための保護者に対する社会的サポートが、糖尿病予防のための公衆衛生対策の手段となり得るのではないか」と付け加えている。 なお、両親の養育スタイルが糖尿病リスクに関連するメカニズムとしては、慢性的なストレスにより甘い物を口にしやすくなることや、自尊心および社会的スキルの低下などが媒介因子として働くのではないかとの考察が述べられている。

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18歳未満の家族性高コレステロール血症への診断アプローチは?/Lancet

 世界では毎年約45万例の子供が家族性高コレステロール血症を患って誕生しているが、家族性高コレステロール血症の成人患者のうち、現行の診断アプローチ(成人で観察される臨床的特徴に基づく)により18歳未満で診断されるのは2.1%にすぎないという。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのKanika Inamdar Dharmayat氏らの研究グループ「European Atherosclerosis Society Familial Hypercholesterolaemia Studies Collaboration」らは、家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体(HeFH)の小児・思春期患者の臨床的特性を明らかにする検討を行い、成人で観察される臨床的特徴が小児・思春期患者ではまれで、検出には低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値測定と遺伝子検査に依存せざるを得ないことを明らかにした。しかし、世界の医療水準は画一ではないことを踏まえて、「遺伝子検査が利用できない場合は、生後数年間のLDL-C値測定の機会とその数値の使用率を高められれば、現在の有病率と検出率のギャップを縮めることができ、脂質低下薬の併用使用を増やして推奨されるLDL-C目標値を早期に達成できるようになるだろう」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年12月12日号掲載の報告。48ヵ国の55レジストリを基に、小児・思春期患者の特性を明らかに 研究グループは2015年10月1日~2021年1月31日に、Familial Hypercholesterolaemia Studies Collaboration(FHSC)レジストリに登録された、HeFHの臨床的または遺伝学的診断を受けた18歳未満の小児・思春期患者を対象に試験を行った。 データは、48ヵ国の55レジストリから収集され、自己申告による家族性高コレステロール血症歴、二次性高コレステロール血症疑いの診断症例は、レジストリから除外した。LDL-C値が13.0mmol/L以上で未治療の症例も除外した。 データは総合的に、またWHO地域、世界銀行による国の所得水準別分類、年齢、診断基準、インデックス・ケース(家族の中で最初に診断された患者)で層別化して評価した。 主要アウトカムは、家族性高コレステロール血症の小児・思春期患者について、現行の患者特性や管理の状況を評価することだった。高所得国と非高所得国で診断格差、脂質低下薬の非服用は72% FHSCレジストリの登録患者数6万3,093例で、そのうち18歳未満のHeFH患者1万1,848例(18.8%)を対象に試験を行った。 性別データが不明だった372例を除く1万1,476例中、女子が5,756例(50.2%)、男子が5,720例(49.8%)だった。登録時の年齢中央値は9.6歳(四分位範囲[IQR]:5.8~13.2)だった。また、遺伝子診断データまたは臨床診断データが得られなかった613例を除く1万1,235例中1万99例(89.9%)が家族性高コレステロール血症と最終的に遺伝子診断で確定診断を受けており、臨床診断による患者は1,136例(10.1%)だった。 遺伝子診断は、高所得国の小児・思春期患者が1万202例中9,427例(92.4%)と、非高所得国の415例中199例(48.0%)に比べ大幅に高率だった。インデックス・ケースは、1万804例のうち3,414例(31.6%)だった。 家族性高コレステロール血症関連の身体的徴候や心血管リスク因子、心血管疾患は全体としてはまれであり、非高所得国でより多く認められた。1万428例の患者のうち7,557例(72.4%)が脂質低下薬を服用しておらず、LDL-C中央値は5.00mmol/L(IQR:4.05~6.08)だった。 遺伝子診断に比べ、家族性高コレステロール血症の臨床基準に基づく診断は、成人向けに設定された基準を用いた場合には、より極端な表現型に依存するため、家族性高コレステロール血症の小児・思春期患者の50~75%が診断されない可能性があった。

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塩分過多は糖尿病のリスクも高める可能性

 糖分の取り過ぎは2型糖尿病リスクを高めることはよく知られている。一方、高血圧リスクとの関連で注意が呼び掛けられることの多い塩分の取り過ぎも、2型糖尿病リスクを高める可能性のあることが報告された。米チューレーン大学公衆衛生熱帯医学大学院のLu Qi氏らの研究によるもので、詳細は「Mayo Clinic Proceedings」11月号に掲載された。 この研究は、英国の一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータを用いて行われた。ベースライン時に糖尿病、慢性腎臓病、がん、心血管疾患の既往がなく、料理に塩を加える頻度を問う質問への回答が記録されていた40万2,982人を解析対象とした。中央値11.9年の追跡で1万3,120人の2型糖尿病発症が記録されていた。 料理に塩を「全く、またはほとんど加えない」と回答していた群(55.5%)を基準として、交絡因子調整後の2型糖尿病発症ハザード比は、「時々加える」群(28.1%)が1.11(95%信頼区間1.06~1.15)で、「だいたい加える」群(11.6%)は1.18(同1.12~1.24)、「常に加える」群(4.8%)は1.28(1.20~1.37)であり、塩を加える頻度が高いほど2型糖尿病リスクが高いことが明らかになった(傾向性P<0.001)。 サブグループ解析から、年齢や性別、人種、BMI、C反応性タンパク、喫煙・飲酒・運動習慣、高血圧・脂質異常症の有無、食習慣(高血圧予防のためのDASH食に近い食習慣か否か)、教育歴、所得、タウンゼント剥奪指数(貧困など社会的不平等の程度を表す指標)などの違いでは、有意な交互作用は観察されなかった。一方、媒介分析からは、塩の添加と2型糖尿病リスクとの有意な関連は、BMIが33.8%、ウエスト/ヒップ比が39.9%、C反応性タンパクが8.6%媒介していることが示された。また、BMIの媒介効果を除脂肪量(主に筋肉や骨の重量)と体脂肪量とに分けて解析すると、前者は2.0%のみであり、体脂肪量の媒介効果が大きいことが明らかになった。 これらの結果からQi氏は、「塩分制限が高血圧や心血管疾患のリスクを抑制することは既に知られているが、われわれの研究は食卓塩をテーブルに置かないことが、2型糖尿病の予防にも役立つことを初めて示した」と語っている。また、塩の添加と2型糖尿病リスクとの関連のメカニズムについては、「明確には分からないが、塩を加えることで過食につながり、肥満やそれに伴う炎症が亢進するためではないか」と考察している。 研究グループは、このトピックに関する次のステップとして、塩分添加量を研究参加者自身が管理することによって、2型糖尿病のリスクが抑制されることを実証するための臨床試験が必要だとしている。ただしQi氏は、そのような前向き研究のエビデンスのない現時点におけるアドバイスとして、「なるべく減塩を心掛けた食生活を、早めにスタートするに越したことはない」と述べている。

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糖尿病の合併症があると大腸がんの予後がより不良に

 糖尿病患者が大腸がんを発症した場合、糖尿病のない人に比べて予後が良くない傾向があり、糖尿病の合併症が起きている場合はその傾向がより強いことを示唆するデータが報告された。国立台湾大学のKuo-Liong Chien氏らの研究によるもので、詳細は「Cancer」に10月23日掲載された。 糖尿病は大腸がん予後不良因子の一つだが、糖尿病の合併症の有無で予後への影響が異なるか否かは明らかになっていない。Chien氏らはこの点について、台湾のがん登録データベースを用いた後方視的コホート研究により検討。2007~2015年にデータ登録されていた症例のうち、ステージ(TNM分類)1~3で根治的切除術を受けた患者5万9,202人を、糖尿病の有無、糖尿病の合併症の有無で分類し、Cox回帰分析にて、全生存期間(OS)、無病生存期間(DFS)、がん特異的生存率(CSS)、再発リスクなどを比較した。なお、全死亡(あらゆる原因による死亡)は2万1,031人、治療後の再発は9,448人だった。 交絡因子(年齢、性別、TNM分類、組織学的悪性度、化学放射線療法の施行、高血圧・脂質異常症の併存など)の影響を調整後、糖尿病で合併症のない群(15.0%)は、OS〔ハザード比(HR)1.05(95%信頼区間1.01~1.09)〕やDFS〔HR1.08(同1.04~1.12)〕が、わずかに非糖尿病群(75.9%)に及ばないことが確認された。CSS〔HR0.98(0.93~1.03)〕は非糖尿病群と有意差がなかった。 一方、糖尿病で合併症のある群(9.1%)では、OS〔HR1.85(1.78~1.92)〕やDFS〔HR1.75(1.69~1.82)〕への影響がより大きく、かつCSS〔HR1.41(1.33~1.49)〕にも有意な影響が認められた。再発リスクに関しては、糖尿病で合併症のない群がHR1.11(1.05~1.17)、糖尿病で合併症のある群はHR1.10(1.02~1.19)であり、いずれも同程度のリスク上昇が観察された。 OSに関連する因子のサブグループ解析の結果、男性では糖尿病で合併症のある群でのみハザード比の有意な上昇が認められたのに対して、女性では合併症のない群でもハザード比が有意に高いという違いが認められた(交互作用P<0.0001)。また、TNM分類で層別化すると、より早期のステージの場合に、合併症の有無によるOSへの影響に大きな差が生じていることが示された(交互作用P<0.0001)。年齢(50歳未満/以上)やがんの部位(結腸/直腸)、組織学的悪性度の層別解析からは、有意な交互作用は示されなかった。 Chien氏はジャーナル発のリリースの中で、糖尿病が大腸がんの予後を悪化させる理由について、「高インスリン血症や高血糖によって引き起こされるさまざまなメカニズムが関与している可能性があり、その中には2型糖尿病の特徴の一つである炎症状態の亢進も含まれるのではないか」との考察を述べている。また、「糖尿病合併症の予防には、多職種の専門家が関与した連携に基づく医療が重要であり、われわれの研究結果は特に女性や早期がん患者において、そのような介入が長期的な腫瘍学的転帰を改善する可能性のあることを示唆している」と付け加えている。

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lepodisiran、リポ蛋白(a)値を著明に低下/JAMA

 リポ蛋白(a)値の上昇は、主要有害心血管イベントや石灰化大動脈弁狭窄症の発症と関連する。循環血中のリポ蛋白(a)濃度は、ほとんどが遺伝的に決定され、生活習慣の改善やスタチン投与など従来の心血管リスク軽減のアプローチの影響を受けない。米国・Cleveland Clinic Center for Clinical ResearchのSteven E. Nissen氏らは、肝臓でのアポリポ蛋白(a)の合成を抑制することでリポ蛋白(a)の血中濃度を減少させるRNA干渉治療薬lepodisiran(N-アセチルガラクトサミン結合型短鎖干渉RNA)の安全性と有効性について検討を行った。その結果、本薬は忍容性が高く、用量依存性に長期間にわたり血清リポ蛋白(a)濃度を大幅に低下させることが示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年11月12日号に掲載された。米国とシンガポールの無作為化用量増量第I相試験 本研究は、lepodisiran単回投与の安全性と忍容性、薬物動態、および血中リポ蛋白(a)濃度に及ぼす効果の評価を目的とする無作為化用量増量第I相試験であり、2020年11月~2021年12月に米国とシンガポールの5施設で実施された(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。 年齢18(シンガポールは21)~65歳、心血管疾患がなく(脂質異常症とコントロール良好な高血圧は可)、BMI値18.5~40で、血清リポ蛋白(a)濃度が高い(≧75nmol/Lまたは≧30mg/dL)患者を、プラセボまたは6つの用量(4、12、32、96、304、608mg)のlepodisiranを皮下投与する群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、lepodisiran単回投与の用量増量の安全性(試験期間中の有害事象、重篤な有害事象)および忍容性とした。副次アウトカムは、投与後168日のlepodisiranの血漿中濃度および最長336日(48週)の追跡期間における空腹時血清リポ蛋白(a)濃度の変化量などであった。 48例(平均年齢46.8[SD 11.6]歳、女性35%、アジア人48%)を登録し、プラセボ群に12例、lepodisiranの各用量群に6例ずつを割り付けた。ベースラインの全体のリポ蛋白(a)濃度中央値は113nmol/L(四分位範囲[IQR]:82~151)、平均BMI値は28.0(SD 5.6)であった。608mg群で、337日目に94%の低下 重篤な有害事象として、4mg群の1例で投与後141日目に自転車からの転倒による顔面損傷が発生したが、薬剤関連の重篤な有害事象は認められなかった。有害事象はまれで、プラセボ群とlepodisiranの各用量群で全般に同程度の頻度であった。全身性の過敏反応やサイトカイン放出症候群のエピソードは発現しなかった。また、lepodisiranの血漿中濃度は10.5時間以内にピーク値に達し、48時間までには検出不能となった。 ベースラインの各群のリポ蛋白(a)濃度中央値は、次のとおりであった。プラセボ群111nmol/L(IQR:78~134)、lepodisiran 4mg群78nmol/L(50~152)、同12mg群97nmol/L(86~107)、同32mg群120nmol/L(110~188)、同96mg群167nmol/L(124~189)、同304mg群96nmol/L(72~132)、同608mg群130nmol/L(87~151)。 ベースラインから337日目までのリポ蛋白(a)濃度の最大の変化量の割合中央値は、次のとおりであり、lepodisiran群では用量依存性に低下した。プラセボ群-5%(IQR:-16~11)、lepodisiran 4mg群-41%(-47~-20)、同12mg群-59%(-66~-53)、同32mg群-76%(-76~-75)、同96mg群-90%(-94~-85)、同304mg群-96%(-98~-95)、同608mg群-97%(-98~-96)。 リポ蛋白(a)値の変化量の割合が大きい状態は、lepodisiranの高用量群でより長期に持続した。304mg群では、29~225日目までリポ蛋白(a)値が90%以上低下した状態が持続し、608mg群では、29~281日目まで定量化の下限値を下回り、22~337日目まで90%以上低下した状態が持続した。337日目の時点でのlepodisiran 608mg群におけるリポ蛋白(a)濃度の変化量中央値は-94%(-94~-85)だった。 著者は、「これらの知見は、lepodisiranの研究の継続を支持するものである」とし、「本試験では、最大の用量でも48時間後にはlepodisiranが血漿中に存在しなくなったが、リポ蛋白(a)濃度に対する効果ははるかに長く持続しており、年に1~2回の投与で高度なリポ蛋白(a)低下効果を達成する可能性がある」と指摘している。

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「肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント」発表/日本肥満学会

 肥満症治療薬セマグルチド(商品名:ウゴービ皮下注)が、2023年11月22日に薬価収載された。すでに発売されている同一成分の2型糖尿病治療薬(商品名:オゼンピック皮下注)は、自費診療などによる適応外の使用が行われ、さまざまな問題を引き起こしている。こうした事態に鑑み、日本肥満学会(理事長:横手 幸太郎氏[千葉大学大学院医学研究院内分泌代謝・血液・老年内科学教授])は「肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント」を11月27日に同学会のホームページで公開した(策定は11月25日)。 ステートメントでは、「肥満と肥満症は異なる概念であり、肥満は疾患ではないため、この存在のみでは本剤の適応とはならない」と適応外での使用に対し注意を喚起しており、適応としての「肥満症」、使用時に確認すべき注意点について以下のように整理している。【適応症について】1)肥満症について 肥満とは脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した結果BMI25kg/m2以上を示す状態である。肥満と肥満症は異なる概念であり、肥満は疾患ではないため、この存在のみでは本剤の適応とはならない。 本剤の適応症である肥満症は「肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併が予測され、医学的に減量を必要とする疾患」と定義されている(肥満症診療ガイドライン2022)。具体的には、肥満(BMI25kg/m2以上)に加え、減量によりその予防や病態改善が期待できる「肥満症の診断基準に必須の11の健康障害*(脂質異常症、高血圧など)」のいずれかを伴うものを肥満症と診断し、治療の対象とする。*11の健康障害(1)耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)、(2)脂質異常症、(3)高血圧、(4)高尿酸血症・痛風、(5)冠動脈疾患、(6)脳梗塞・一過性脳虚血発作、(7)非アルコール性脂肪性肝疾患、(8)月経異常・女性不妊、(9)閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群、(10)運動器疾患(変形性関節症:膝関節・股関節・手指関節、変形性脊椎症)、(11)肥満関連腎臓病2)本剤の適応となる肥満症について 本剤は肥満症と診断され、かつ、高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかを有し、以下のいずれかに該当する場合に限り適応となる。 BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する場合か、BMIが35kg/m2以上の場合である。すなわち、肥満症の中でもBMIが35kg/m2以上である場合は高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかを有する場合、27kg/m2以上35kg/m2未満である場合は、高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかに加えて、耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)、脂質異常症、高血圧など11の健康障害のうちのいずれか1つを含め、計2つ以上の健康障害を有する場合、保険適用となる。3)使用時に確認すべき注意点(1)本剤の使用に際しては、患者が肥満症と診断され、かつ2)の適応基準を満たすことを確認した上で適応を考慮すること。(2)肥満症治療の基本である食事療法(肥満症治療食の強化を含む)、運動療法、行動療法をあらかじめ行っても、十分な効果が得られない場合で、薬物治療の対象として適切と判断された場合にのみ考慮すること。(3)内分泌性肥満、遺伝性肥満、視床下部性肥満、薬剤性肥満などの症候性(二次性)肥満の疑いがある患者においては、原因精査と原疾患の治療を優先させること。 このほか、糖尿病治療中の患者における使用の注意点や、メンタルヘルスの変化を含む注意を払うべき副作用などが記載されている。

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ハイリスク患者のLDL-C目標達成に期待、持続型LDL-C低下siRNA製剤とは/ノバルティス

 2023年9月25日に製造販売承認を取得した国内初の持続型LDLコレステロール(LDL-C)低下siRNA製剤インクリシランナトリウム(商品名:レクビオ皮下注)が11月22日に薬価収載および発売された。それに先立ち開催されたメディアセミナーにおいて、山下 静也氏(りんくう総合医療センター 理事長)が薬剤メカニズムや処方対象者について解説した(主催:ノバルティスファーマ)。PCSK9阻害薬と異なる作用機序 PCSK9は、LDLの肝臓への取り込みを促進するLDL受容体を分解して血中LDLの代謝を抑制する効果があり、PCSK9阻害薬として国内ではモノクローナル抗体のエボロクマブ(商品名:レパーサ皮下注)が2016年に上市している※。一方、インクリシランナトリウムはPCSK9蛋白をコードするmRNAを標的としたsiRNA(低分子干渉RNA)製剤で、「GalNAc(N-アセチルガラクトサミン)という構造体を有することで標的組織である肝臓に選択的に取り込まれ、肝細胞内で肝臓のRNAi機構によりPCSK9蛋白の産生を抑制するというまったく異なる作用機序を持つ」と、山下氏はインクリシランナトリウムと既存のPCSK9阻害薬の主な違いについて説明した。※現在、アリロクマブは特許の関係で国内販売が中止されている。2次予防・高リスク患者の低い目標達成率に切り込む 本剤の適応の主な対象患者は、2次予防・高リスク患者(1:急性冠症候群、2:家族性高コレステロール血症、3:糖尿病、4:冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞の合併、のいずれかを有する)。しかし現状では、これらの患者に対するLDL-Cの管理目標値(70mg/dL未満)の達成率はわずか25%に留まっていることが直近の山下氏らによる研究1)から明らかになった。他方で、動脈硬化性疾患または糖尿病がある心血管疾患のリスクが高い患者の33%でスタチン/エゼチミブによる治療が処方後100日未満しか継続されていないことも日本医療データセンターのデータベースで判明した。 そして、LDL-C値の管理におけるもう1つの問題が、家族性高コレステロール血症に対する既存薬による治療効果の低さである。PCSK9阻害薬が上市される前に実施されたFAME Study2)からは、FH患者では1次予防の達成率は12%(528例中65例)、2次予防の達成率はわずか2%(165例中3例)という現状が浮き彫りになったが、これに対し同氏は「インクリシランナトリウムを投与することで、目標値を達成できる。安全性(心血管死、心停止からの蘇生、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の発現割合を含む)においてもプラセボ群と同等だった。なお、心血管イベント抑制効果を検証する臨床試験は現在実施中である」とコメントした。 このほか、インクリシランナトリウムは医療機関で投与する皮下注射薬で、年2回投与(投与間隔:初回、初回から3ヵ月後、以降6ヵ月に1回)であることから治療アドヒアランスの向上が期待できる点、スタチン不耐患者にも有用である点にも触れ、「2次予防において極めて高リスク患者が本薬剤の主な対象者であり、1次予防高リスク患者においては発症予防目的の使用が考えられる。自己注射を敬遠している患者にはインクリシランナトリウムを使うなど、患者のライフスタイルに応じてPCSK9阻害薬と本剤を使い分けられるのではないか」と締めくくった。<製品概要>商品名:レクビオ皮下注300mgシリンジ一般名:インクリシランナトリウム効能・効果又は性能:家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症ただし、以下のいずれも満たす場合に限る。・心血管イベントの発現リスクが高い・HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分、又はHMG-CoA還元酵素阻害剤による治療が適さない用法・用量:通常、成人にはインクリシランナトリウムとして1回300mgを初回、3ヵ月後に皮下投与し、以降6ヵ月に1回の間隔で皮下投与する。製造販売承認取得日:2023年9月25日薬価基準収載日:2023年11月22日発売日:2023年11月22日薬価:44万3,548円(300mg 1.5mL/筒)――― なお、日本動脈硬化学会は2018年にPCSK9阻害薬の適正使用に関する声明文3)を出し、それに続いて、2021年には継続使用に関する指針4)も出している。

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