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発症メカニズムから考える乾癬の治療戦略

 2017年4月10日、メディアセミナー「乾癬治療における生物学的製剤の最新エビデンスと今後の展望~乾癬の発症機序から考える最新治療戦略~」が開催された(主催:アッヴィ合同会社)。本セミナーでは、演者である佐藤 伸一氏(東京大学大学院 医学系研究科 皮膚科学 教授)が、「乾癬治療における生物学的製剤治療の意義」と題した講演を行った。 乾癬は、赤い発疹である「紅斑」、皮膚が盛り上がる「浸潤」、銀白色のカサブタのような「鱗屑」や皮膚がはがれ落ちる「落屑」を特徴とする疾患で、慢性・再発性の炎症性角化症として知られている。乾癬への罹患は、がん、高血圧、心筋梗塞などよりも患者の生活の質(QOL)を低下させるとの報告もあり1)、乾癬の治療法選択においては、疾患の重症度を改善させるだけでなく、患者のQOLを考慮することも重要となる。乾癬は皮膚だけの病気ではない 乾癬は、皮膚症状以外にも何らかの疾患を併発することが多く、発症頻度の高い併存疾患としては、メタボリックシンドローム、高血圧、脂質異常症、糖尿病などが挙げられる。『世界乾癬レポート2016』には、乾癬マネジメントに高血圧などの関連疾患や心筋梗塞などの併存症のスクリーニングも含まれると記載されており2)、その重要性がうかがえる。乾癬と併存疾患との関係について佐藤氏は、重症乾癬患者の死因は心血管病変が最も多いとの報告3)を紹介したうえで、乾癬は「皮膚だけの病気ではなく、全身に影響を与える皮膚疾患」と解説した。乾癬とサイトカインの関係 乾癬の病態は、「腫瘍壊死因子(以下、TNF)-α」、「インターロイキン(以下、IL)-23」、「IL-17」といった炎症性サイトカインが連続的に働くことで生じると考えられている。 TNF-αは乾癬発症メカニズムの上流に位置しており、乾癬以外にもさまざまな炎症性疾患に関与している。本講演では、乾癬患者における心血管系イベント発生率をTNF-α阻害薬が低下させるとの報告4)も紹介された。一方、乾癬発症メカニズムの下流に位置するIL-17を標的とする治療は、乾癬に対してよりピンポイントに効果を発揮すると期待されており、近年、IL-17関連の生物学的製剤が相次いで発売された。佐藤氏は、乾癬とサイトカインの関係性を踏まえて、「乾癬の重症例では併存疾患が多いため、TNF-α阻害薬を用いることが望ましい」と自身の考えを述べた。 乾癬の病態理解が深まり、現在では乾癬に対していくつもの生物学的製剤が承認されている。佐藤氏は、これらの使い分けについて、「皮膚症状の重症度ではなく、併存疾患の有無などを考慮して製剤を使い分けることが合理的」との見解を示した。

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162)ダイエットは家の冷蔵庫から【脂質異常症患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者中性脂肪が気になるんですが、なかなか、ダイエットができなくて…。医師それならいい方法がありますよ。患者それは何ですか? (興味津々)医師冷蔵庫の中を整理することです。患者冷蔵庫の中を整理する?医師そうです。太りやすい人は冷蔵庫の中が満杯で、中を見ないで買い物に出掛けるので余分なものを買う傾向にあるようです。患者それ、私です!医師その結果、賞味期限間近の食品を「もったいないから」といって食べ過ぎて太るみたいです。それと冷蔵庫内の8割以上に食品を詰めると冷えにくくなり、電気代も余計かかるみたいですよ。患者冷蔵庫も腹八分目が大切なんですね。家に帰って、すぐ冷蔵庫の整理をします(うれしそうな顔)。●ポイント冷蔵庫の整理が、減量と中性脂肪を減らすのに役立つことを上手に説明します

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1次予防のスタチン対象、ガイドラインによる差を比較/JAMA

 スタチンによる動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の1次予防が推奨される患者は、米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)ガイドライン2013年版よりも、米国予防医療サービス対策委員会(USPSTF)の2016年版勧告を順守するほうが少なくなることが、米国・デューク大学のNeha J. Pagidipati氏らの検討で示された。ACC/AHAガイドラインで対象だが、USPSTF勧告では対象外となる集団の約半数は、比較的若年で高度の心血管疾患(CVD)リスクが長期に及ぶ者であることもわかった。研究の成果は、JAMA誌2017年4月18日号に掲載された。1次予防におけるスタチンの使用は、ガイドラインによって大きな差があることが知られている。USPSTFによる2016年の新勧告は、1つ以上のCVDリスク因子を有し、10年間CVDリスク≧10%の患者へのスタチンの使用を重視している。年齢40~75歳の3,416例で2つの適格基準を比較 研究グループは、米国の成人におけるASCVDの1次予防でのスタチン治療の適格基準に関して、USPSTFの2016年勧告とACC/AHAの2013年ガイドラインの比較を行った(デューク臨床研究所の助成による)。 2009~14年の米国国民健康栄養調査(NHANES)から、年齢40~75歳、総コレステロール(TC)値、LDL-C値、HDL-C値、収縮期血圧値のデータが入手可能で、トリグリセライド値≦400mg/dL、CVD(症候性の冠動脈疾患または虚血性脳卒中)の既往歴のない3,416例のデータを収集し、解析を行った。USPSTF勧告で15.8%、ACC/AHAガイドラインで24.3%増加 対象の年齢中央値は53歳(IQR:46~61)、53%が女性であった。21.5%(747例)が脂質低下薬の投与を受けていた。 USPSTF勧告を完全に当てはめると、スタチン治療を受ける集団が15.8%(95%信頼区間[CI]:14.0~17.5)増加した。これに対し、ACC/AHAガイドラインを完全に適用すると、スタチン治療の対象者は24.3%(22.3~26.3)増加した。 8.9%(95%CI:7.7~10.2)が、ACC/AHAガイドラインではスタチン治療が推奨されるが、USPSTF勧告では推奨されなかった。このうち55%が年齢40~59歳であった。この集団は、CVDの10年リスクの平均値は7.0%(6.5~7.5)と相対的に低かったが、30年リスクの平均値は34.6%(32.7~36.5)と高く、28%が糖尿病であった。

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161)卵は食べてないと思っていたのに!【脂質異常症患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者コレステロール値がなかなか下がらなくて…。医師どんなことに気を付けておられますか?患者卵をなるべく食べないようにしています。コレステロールが含まれているので…。医師なるほど。全然、卵は食べないんですか?患者そうなんです。「脂質異常症」と診断されてから、1個も食べていません。それでもなかなかコレステロール値が下がらなくて…。医師ちょっと、減らし過ぎな感じもしますけど。ちょっと、これを見てもらえますか?このチーズ蒸しパン、何でできていて、何が多く含まれていると思いますか?(チーズ蒸しパンを見せる)患者やっぱり、チーズですか? それとも小麦粉?医師正解は食品の裏の原材料名を見るとわかります。多く含まれている順番に書かれています。患者そうすると、一番多いのが砂糖で、次が卵なんですか! 知らなかった。これからは原材料名も見るようにします。●ポイント食品の原材料名の確認を勧めることで、患者さん自身が何をよく食べているか理解する助けとなります文献1)Nakamura Y, et al. Am J Clin Nutr. 2004;80:58-63.2)Kurotani K, et al. Br J Nutr. 2014;112:1636-1643.3)Kojima M, et al. Nutr Cancer. 2004;50:23-32.

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160)つい全部食べてしまう袋菓子への対策【脂質異常症患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者コレステロール値がなかなか下がらなくて…。医師どんなことに気を付けていますか?患者お菓子を控えるようにしているんですが、食べ出すと止まらなくて…。医師どんなものが多いですか?患者スナック菓子ですね。なるべくたくさん買わないように、小袋の菓子を買ってはいるんですが…。医師なるほど。スナック菓子は飽和脂肪酸がいっぱいで、コレステロール値が上がりそうですね。患者やっぱり…。何か、いい方法はありませんか?医師それならいい方法がありますよ。まず、食べる分だけ出します。たとえば、スナック菓子を半分だけ皿に出しておきます。残りをしまってから、食べ始めるんです。患者ハハハ。なるほど! それは、厳重にしまっておかないといけませんね。●ポイント袋菓子を一気に食べてしまう患者さんの心理を理解し、食べる分だけ出して、残りはしまっておくことを提案してみます

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半数は目標値に達していなかったACS患者のLDL-C:EXPLORE-J試験

 2017年4月4日、サノフィ株式会社主催のメディアラウンドテーブルにて東邦大学 医療センター大橋病院 中村正人氏が、急性冠症候群(ACS)患者における脂質リスクとコントロールに関する前向き観察研究「EXPLORE-J試験」のベースラインデータについて紹介した。ACS患者の3割がスタチンを使用 EXPLORE-J試験は、2015年4月~2016年8月まで59施設から2,016例の登録が終了した。患者の平均年齢は66.0歳、男性が80.4%、BMIは24.2であった。ACSの病型はST上昇型心筋梗塞(STEMI)が61.8%、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)が16.1%、不安定狭心症が22.0%であった。危険因子は脂質異常症77.6%、高血圧72.9%、糖尿病34.7%、虚血性心疾患18.0%、現喫煙者37.8%、過去喫煙27.8%であった。26.9%がスタチンを服用(高力価スタチン服用は2.3%)していた。2次予防例の半数がLDL-C目標値100未満を達成できず ACS患者の入院時のLDL-C値(n=1,859)の分布をみると、対象者の平均値は121.7mg/dLであった。そのうち100未満は29.6%、FH診断の基準である180以上は7.9%であった。一方、虚血性心疾患の既往患者(n=333)のLDL-Cは103mg/dLであった。動脈硬化予防疾患ガイドラインの2次予防の管理目標値100未満の患者は52.0%であり、半数は目標値に達していなかった。 アキレス腱肥厚の測定結果(n=1,787)をみると、中央検定の中央値は6.7mm、基準値の9mm以上は6.4%であった。 家族歴を収集できた患者(n=1,412)から早発性冠動脈疾患の家族歴を調べた結果、家族歴はありは10%という結果だった。家族性高コレステロール血症(FH)の基準を満たす患者は3%、実臨床ではそれ以上か 本邦では、ヘテロ型FH が200~500人に1人、ホモ型FHは100万人に1人といわれているが、ASCを対象としたEXPLORE-Jでの結果はどうか、アキレス腱肥厚を利用した1,391例からの中間解析を行った。結果、成人FHの診断基準(1.未治療のLDL-C180以上、2.腱黄色腫、アキレス腱肥厚あるいは皮膚結節性黄色腫、3.FHまたは若年性冠動脈疾患の二親等以内の家族歴、のうち2項目以上該当)を満たす患者は全体で3.0%、55歳未満では5.9%であった。実際には、スタチンの服用で調査時すでにLDL-Cが低下している患者もあり、実臨床ではこれ以上のFH患者がいると推定される。ASC患者のLDL-C管理状況、病態は10年前と変わらず EXPLORE-Jでは、2008~09年に本邦で行ったPACIFIC試験と比較し、ASC患者のLDL-C管理状況、病態の変化を評価した。結果、LDL-C平均値120、6割というSTEMIの割合は、共にPACIFIC試験とほぼ同等で、10年前からほぼ変化していなかった。今後は絶対リスクの高い患者を明確にし、個別のLDL-C管理に LDL-C70でもイベントを起こす人がいる一方、110でもイベントを起こさない人がいる。年齢、喫煙、糖尿病など複合的な要因が関連してリスクは変わる。一律のLDL-C基準値を決めるにとどまらず、今後は絶対リスクが高い患者を明確にしていき、患者に個別化されていくべきだと、中村氏は述べた。

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PCSK9阻害薬bococizumab、抗薬物抗体発現で効果減/NEJM

 抗PCSK9(前駆蛋白変換酵素サブチリシン/ケキシン9型)モノクローナル抗体製剤bococizumabは、多くの患者で抗薬物抗体(ADA)の発現がみられ、そのためLDLコレステロール(LDL-C)の低下効果が経時的に減弱することが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のPaul M Ridker氏らが行ったSPIREプログラムと呼ばれる6件の国際的な臨床試験の統合解析で明らかとなった。ADA陰性例にも、相対的なLDL-C低下効果に大きなばらつきを認めたという。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2017年3月17日号に掲載された。完全ヒト型抗体であるアリロクマブやエボロクマブとは異なり、bococizumabはヒト型抗体であり、抗原と結合する相補性決定領域に約3%のネズミ由来のアミノ酸配列が残存するため、ADAの発現を誘導する可能性が指摘されている。bococizumabとプラセボを比較する6件の無作為化試験に登録された4,300例を対象 本研究は、bococizumab(150mgを2週ごとに皮下投与)とプラセボを比較する6件の無作為化試験に登録された脂質異常症患者4,300例を対象とした(Pfizer社の助成による)。6試験には、プラセボの代わりにアトルバスタチンを用いた試験が1件、bococizumabの用量が75mgの患者を含む試験が1件含まれた。 ベースラインの全体の平均年齢は61歳で、42%が女性であった。糖尿病が53%、喫煙者が18%、家族性高コレステロール血症が12%含まれた。99%がスタチン治療を受けていた。治療期間中に検出されたADAの有無別に、12週および52週時に脂質値の経時的な変化の評価を行った。1年時のbococizumab群はADA陽性率48%、16%を占めた高力価の患者は平均変化率が低かった 12週時に、bococizumab群のLDL-C値はベースラインに比べ54.2%低下、プラセボ群は1.0%増加し、群間の絶対差は-55.2%(95%信頼区間[CI]:-57.9~-52.6)と、bococizumab群が有意に優れた(p<0.001)。 12週時の総コレステロール(TC)値のベースラインからの変化の群間絶対差は-36.0%、非HDL-C値は-50.2%、トリグリセライド(TG)値は-14.2%、アポリポ蛋白B値は-49.5%、リポ蛋白(a)値は-28.9%と有意に低下し、HDL-C値は6.2%と有意に増加しており、いずれもbococizumab群が良好だった(すべてp<0.001)。 52週時のLDL-C値のベースラインからの変化の群間絶対差は-42.5%(95%CI:-47.3~-37.8)であり、bococizumab群が有意に優れた(p<0.001)が、12週時に比べるとLDL-C低下効果が減弱した。また、TC値(群間絶対差:-27.1%)、非HDL-C値(-37.7%)、TG値(-10.9%)、アポリポ蛋白B値(-37.3%)、リポ蛋白(a)値(-20.6%)、HDL-C値(4.6%)も、bococizumab群が有意に良好だった(すべてp<0.001)が、いずれも12週時に比し効果は減弱した。 一方、1年時にbococizumab群の48%にADAが検出され、そのほとんどが12週以降に発現していた。52週時のADAが低~中力価の患者のLDL-C値の平均変化率(-43.1%)は、ADA陰性例(-42.5%)とほぼ同じであった。これに対し、ADA陽性例の16%を占めた高力価の患者のLDL-C値の平均変化率(-30.7%)は低く、力価最高位10%の患者(-12.3%)では著明に低かった。また、ADA陽性例は力価が高い患者ほど、PCSK9値およびbococizumab濃度が経時的に減衰した。 12週時のbococizumab群のLDL-C値の低下効果は全体として大きかったが、まったく低下しなかった患者が4%、低下率50%未満が28%、50%以上は68%とばらつきが認められた。52週時には、ADA陽性例はそれぞれ10%、38%、ADA陽性例はそれぞれ10%、38%、52%であったが、ADA陰性例にも9%、31%、60%と同様のばらつきがみられた。 重大な心血管イベント(非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心血管死、血行再建術)の発生率は、bococizumab群が2.5%(57例)、プラセボ群は2.7%(55例)であった(ハザード比[HR]:0.96、95%CI:0.66~1.39、p=0.83)。bococizumab群の最も頻度の高い有害事象は、注射部位反応(12.7/100人年)であり、次いで関節痛(4.4/100人年)、頭痛(3.0/100人年)であった。 著者は、「bococizumabの有害事象には免疫原性の影響があり、有効性に関する生物学的な反応は一定ではなく個々の患者での予測は困難である」としている。これらの知見に基づき、2016年11月1日、bococizumabの開発は中止となった。

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開発が中止されても抗PCSK9抗体によるLDL-コレステロール低下効果は有効性を示した!(解説:平山 篤志 氏)-663

 抗PCSK9モノクローナル抗体であるEvolocumabやAlirocumabは完全なヒト型であるが、Bococizumabはヒト型に90%類似した抗体であったために中和抗体が出現し、長期間の投与中に効果が減弱することから開発が中断された。 しかし、開発の中断が決定されるまでにLDL-コレステロール低下効果をみる6つの試験と有効性を検証する2つの臨床試験が進行しており、今回はそのLDL-コレステロール低下効果が発表された。150mgのBococizumabの投与により、12週間で54.2%の低下がみられたが、52週では低下効果は42.5%と減弱が認められた。これは、中和抗体が12週以後から認められるようになり、1年後には48%に認められるようになったためである。ただ、中和抗体の認めなかった患者においても、LDL-コレステロール低下効果に個々の患者でばらつきが認められることが報告された。 論文では触れられていないが、同時に発表された米国心臓病学会の会場では、ハイリスクの患者を対象にしたSPIRE 1とSPIRE 2試験の結果も報告された。スタチン投与下でもLDL-コレステロールが100mg/dL以上を対象としたSPIRE 2試験では、平均観察期間が12ヵ月と短い期間であったが、心血管イベントリスクのLDL-Cの低下が認められた群(おそらく中和抗体の出現の無かった群)で低下が有意に認められたことが報告され、直前の演題であったEvolocumabによるFOURIER試験と同様の結果を示した。LDL-コレステロールについては、この結果から“lower is better for longer”が証明されたことになり、ハイリスクの患者ではより厳格な脂質管理が要求されるであろう。

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PCSK9合成阻害薬、2回投与で半年後にLDL-C半減/NEJM

 前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)遺伝子のメッセンジャーRNAを標的とする低分子干渉RNA(small interfering RNA:siRNA)であり、肝細胞でのPCSK9の合成を阻害するInclisiranの第II相試験(ORION-1)の中間解析の結果が、NEJM誌オンライン版2017年3月17日号に掲載された。LDLコレステロール(LDL-C)高値の心血管リスクが高い患者において、6種の投与法をプラセボと比較したところ、すべての投与法でPCSK9値とLDL-C値(180日時、240日時)がベースラインに比べ有意に低下したという。報告を行った英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのKausik K Ray氏らは、「肝でのPCSK9 mRNA合成の阻害は、PCSK9を標的とするモノクローナル抗体に代わる治療薬となる可能性があり、注射負担はほぼ確実に軽減されるだろう」と指摘している。6つの投与法と2つのプラセボを比較 本研究は、Inclisiranの異なる用量および投与回数による投与法の有効性を比較する二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験(Medicines Company社の助成による)。対象は、最大用量のスタチンの投与によっても、LDL-C値70mg/dL以上のアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)およびLDL-C値100mg/dL以上のASCVD高リスクの患者497例であった。 被験者は、3つのInclisiran単回皮下投与群(200mg[60例]、300mg[61例]、500mg[65例])またはプラセボ群(65例)、および3つのInclisiranの2回(初回、90日後)皮下投与群(100mg[61例]、200mg[62例]、300mg[61例])またはプラセボ群(62例)にランダムに割り付けられた。 主要評価項目は、180日時のLDL-C値のベースラインからの変化であった。安全性の評価は210日時のデータを用いて行った。副次評価項目には180日時のPCSK9値の変化などが含まれた。LDL-C値が27.9~52.6%低下、300mg×2回の効果が最大 ベースラインの8群の平均年齢は62.0~65.2歳、男性が53~74%を占め、平均LDL-C値は117.8~138.8mg/dL、平均PCSK9値は394.2~460.3ng/mLであった。全体の73%がスタチン、31%がエゼチミブの投与を受けていた。 Inclisiranの投与を受けた患者は、LDL-C値とPCSK9値が用量依存性に低下した。180日時のLDL-C値の最小二乗平均値は、単回投与の200mg群が-27.9%、300mg群が-38.4%、500mg群が-41.9%であり、プラセボ群の2.1%に比べ、いずれも有意に低下した(すべてp<0.001)。また、2回投与の100mg群は-35.5%、200mg群は-44.9%、300mg群は-52.6%であり、プラセボ群の1.8%に比し、いずれも有意に低かった(すべてp<0.001)。180日時のLDL-C値が最も低下した300mg×2回投与群(52.6%低下)のLDL-C値50mg/dL未満の達成率は48%だった。 LDL-C値は、第1日の投与から30日後には、投与前に比べ6群で44.5~50.5%低下し、単回投与群はおおよそ60日まで、2回投与群は150日まで最低値が持続した。また、PCSK9値は、14日後には単回投与群で59.6~68.7%、30日後には66.2~74.0%低下し、60日、90日時もこの値がほぼ維持されており、180日には47.9~59.3%低下していた(プラセボ群との比較ですべてp<0.001)。 240日時のLDL-C値は、投与前に比べ単回投与群で28.2~36.6%、2回投与群で26.7~47.2%低下しており、PCSK9値は6群とも40%以上低下していた。また、6つのInclisiran群は、180日時の総コレステロール(TC)、非HDL-C、アポリポ蛋白Bが、プラセボ群に比べ有意に低下した(すべてp<0.001)。 有害事象は、Inclisiran群、プラセボ群とも76%に発現したが、そのうち95%が軽度~中等度(Grade 1/2)であった。重篤な有害事象の発現率は、Inclisiran群が11%、プラセボ群は8%であった。全体で最も頻度の高い有害事象は、筋肉痛、頭痛、疲労、鼻咽頭炎、背部痛、高血圧、下痢、めまいであり、Inclisiran群とプラセボ群に有意な差はなかった。注射部位反応は、単回投与群の4%、2回投与群の7%(6群で5%)にみられたが、プラセボ群には発現しなかった。 著者は、「患者のほとんどが欧州系の人種であり、今後、他の人種で同様の効果が得られるかを検討する必要がある」としている。

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PCSK9活性を長期的に低下させる夢のような薬が現実に!(解説:平山 篤志 氏)-662

 スタチンを服用していても十分なLDL-コレステロール低下効果がみられない一因として、PCSK9活性の亢進が原因であることが明らかにされ、PCSK9阻害薬としてモノクローナル抗体が薬剤として使用されるようになった。 この薬剤の1つであるエボロクマブを用いたFOURIER試験が発表され、心血管イベントを有意に低下させることと、安全性が担保されたことで、一気にLDL-コレステロール値の70mg/dLを超えることが求められるようになった。これらの薬剤は抗体であることで、2週あるいは4週に1回の投与での治療が可能になった。しかし、InclisiranはPCSK9の合成を抑制するRNA製剤で、投与後180日間のPCSK9活性の低下とLDL-コレステロール低下作用が明らかにされた薬剤である。今回は、このInclisiranの投与量と投与法の有効性を検討した試験である。 300mg、500mgのInclisiranの1回投与で、180日後のLDL-コレステロールはそれぞれ平均38.4%、41.9%の低下を認めた。さらに、300mgを初回と90日後に投与することで、LDL-コレステロールが180日後で52.6%の低下(平均LDL-Cレベル64.2mg/dLの低下)、240日後でもその低下効果(平均LDL-Cレベル58.9mg/dLの低下)が維持されることが明らかになった。また、対照群と比較しても重大な副作用は認められなかった。 わずか2回の注射で長期的なLDL-コレステロール低下効果がみられた。今回発表されたFOURIER試験の結果を考えても、Inclisiranによって長期間持続的にLDL-コレステロールを低下させることができれば、心血管イベント低下をリアルワールドでも実現できるようになるであろう。まさしく、夢のような薬剤が現実になった思いがする一方で、核酸医薬品が承認されるのか? 価格は? など、多くのことを考えていかねばならないだろう。

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Cardiologistへの道@Stanford 第26回

第26回:ACC.17、FOURIER試験など話題の LCL-C関連発表キーワードエボロクマブFOURIER試験SPIRE1/2ORION1参考論文1)Sabatine MS, et al. Evolocumab and Clinical Outcomes in Patients with Cardiovascular Disease.N Engl J Med. 2017 Mar 17. [Epub ahead of print]2)Ridker PM, et al.  Lipid-Reduction Variability and Antidrug-Antibody Formation with Bococizumab. N Engl J Med. 2017 Mar 17. [Epub ahead of print]3)Ray KK, et al. Inclisiran in Patients at High Cardiovascular Risk with Elevated LDL Cholesterol. N Engl J Med. 2017 Mar 17.

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キノコ摂取頻度が高いほど認知症リスク低い~大崎コホート研究

 in vivoやin vitroの研究においてキノコの神経保護作用や認知症を予防する可能性が示されているが、キノコと認知機能低下の関連について調べたコホート研究は少なく、関連が明らかになっていなかった。今回、一般住民を対象とした大規模前向きコホートである大崎コホート研究2006において、キノコの摂取頻度が高い高齢者では認知症発症のリスクが低いことが、世界で初めて明らかになった。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2017年3月13日号に掲載。 本研究の対象は、調査開始時点で65歳以上であった宮城県大崎市の住民1万3,230 人。ベースライン時のアンケート調査により、キノコの摂取頻度で「1回未満/週」「1~2回/週」「3回以上/週」の3群に分け、「1回未満/週」群を基準として、認知症発症との関連を検討した。ハザード比は、性別、年齢、BMI、既往歴(脳卒中、高血圧、心筋梗塞、糖尿病、高脂血症)、教育、喫煙、飲酒、歩行時間、心理的ストレス、食物摂取量などの因子を調整し算出した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間は5.7年間で、認知症発症率は8.7%であった。・キノコの摂取頻度が1回未満/週の群と比べた認知症発症の調整ハザード比(95%信頼区間)は、1~2回/週では0.95(0.81~1.10)、3回以上/週は 0.81(0.69~0.95)であった(傾向のp<0.01)。・この逆相関は、最初の2年間で認知症を発症した参加者と、ベースライン時に認知機能が低下していた参加者を除外した場合も同様であった。 なお、本研究の限界として、認知症の臨床診断データがなくアウトカムに誤分類が含まれていた可能性がある点、キノコ摂取頻度をベースライン調査のみで評価しているため頻度の変化が考慮されていない点、キノコの種類が不明である点などがある。

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やはりthe lower the betterだった(解説:興梠 貴英 氏)-659

 これまでコレステロール低下療法のエビデンスにおいて、スタチンが数の上で圧倒的に多かった。しかもezetimibeは試験デザイン上の問題から、なかなかthe lower the betterを示すことができなかった。そのため、PCSK9の機能喪失変異に伴う心血管リスク低減という疫学的な知見や、PCSK9阻害薬の第II相試験の予備的な結果で心血管リスクが低減することが示唆されたということはあったものの、PCSK9阻害薬による実際の介入で心血管系エビデンスを減らすのかについては、きちんと実施された臨床試験の結果を待たなくてはならなかった。 さて、本FOURIER試験では動脈硬化性心血管疾患を有しており、LDL-Cが70mg/dL以上ですでにスタチン治療を受けている2万7,564例の患者をエボロクマブ群、プラセボ群の2群にランダム割り付けして中央値2.2年間追跡した。患者背景で興味深いのは、8割以上が陳旧性心筋梗塞の患者であり、またそれにもかかわらず、喫煙者の割合が3割弱もいることである。つまり、心血管疾患の再発のリスクが高い集団であるが、結果は血清LDL-C濃度においてはエボロクマブ群でLDL-C 30mg/dL、プラセボ群で86mg/dLという差がつき、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイント発生をエボロクマブ群で有意に低下させたというものであった(NNT=67例)。また、開発段階で可能性が示唆された認知機能への影響を含む副作用には、両群間で差が認められなかった(注射部位の副反応を除く)。 本試験の結果は、2年余りという比較的短い期間ではあるが、LDL-Cを30mg/dLまで低下させても安全上の問題がないこと、またその範囲でPCSK9阻害薬でLDL-Cを下げても、心血管系イベントについてthe lower the betterであることを示すものであった。本試験には日本人も参加していたので、今後サブ解析で日本人に関する結果が出てくることにも期待したい。

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エボロクマブ追加で心血管イベントリスクを有意に低減/NEJM

 前駆タンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害薬エボロクマブ(商品名:レパーサ)は、スタチン治療でLDLコレステロール(LDL-C)値のコントロールが不良なアテローム動脈硬化性心血管疾患患者のLDL-C値を30mg/dLまで低下させ、心血管イベントのリスクを有意に低減することが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMarc S Sabatine氏らが行ったFOURIER試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2017年3月17日号に掲載された。本薬は単剤でLDL-C値を約60%低下させることが報告されているが、心血管イベントを予防するかは不明であった。2万7,564例を対象とするプラセボ対照無作為化試験 FOURIER試験は、エボロクマブのスタチンへの上乗せによる心血管イベントの予防の改善効果を検証する国際的な二重盲検プラセボ対照無作為化試験(Amgen社の助成による)。 対象は、年齢40~85歳、アテローム動脈硬化性心血管疾患でスタチンの投与を受けているが、LDL-C値が≧70mg/dLの患者であった。被験者は、エボロクマブ(患者の好みで、2週ごとに140mgまたは1ヵ月ごとに420mgから選択)またはプラセボを皮下投与する群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症による入院、冠動脈血行再建術の複合エンドポイントであった。主な副次評価項目は、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントとした。 2013年2月~2015年6月に、49ヵ国1,242施設で2万7,564例が登録され、エボロクマブ群に1万3,784例、プラセボ群には1万3,780例が割り付けられた。追跡期間中央値は2.2年だった。LDL-C値が59%低下、主要評価項目が15%改善 ベースラインの全体の平均年齢は63歳、女性が24.6%含まれた。心筋梗塞の既往が81.1%、非出血性脳卒中の既往が19.4%、症候性末梢動脈疾患が13.2%に認められた。スタチン治療は、ACC/AHAガイドラインのhigh-intensityが69.3%、moderate-intensityが30.4%に行われ、5.2%にはエゼチミブも投与されていた。 ベースラインのLDL-C値中央値は92mg/dL(IQR:80~109)であった。48週時に、エボロクマブ群のLDL-C値中央値は30mg/dL(IQR:19~46)に低下し、プラセボ群との絶対差は56mg/dL(95%信頼区間[CI]:55~57)であった。LDL-C値の減少率の最小二乗平均値は59%(95%CI:58~60、p<0.001)であり、エボロクマブ群が有意に良好であった。 主要評価項目の発生は、エボロクマブ群が9.8%(1,344例)と、プラセボ群の11.3%(1,563例)に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.85、95%CI:0.79~0.92、p<0.001)。主な副次評価項目の発生も、エボロクマブ群が有意に良好だった(5.9%[816例] vs.7.4%[1,013例]、HR:0.80、95%CI:0.73~0.88、p<0.001)。 また、エボロクマブ群はプラセボ群に比し、心筋梗塞(3.4 vs.4.6%、HR:0.73、95%CI:0.65~0.82、p<0.001)、脳卒中(1.5 vs.1.9%、0.79、0.66~0.95、p=0.01)、冠動脈血行再建術(5.5 vs.7.0%、0.78、0.71~0.86、p<0.001)、虚血性脳卒中/一過性脳虚血発作(1.7 vs.2.1%、0.77、0.65~0.92、p=0.003)を有意に改善した。一方、心血管死、全死因死亡、不安定狭心症による入院、心血管死/心不全の増悪による入院には差がなかった。 主要評価項目と主な副次評価項目に関するエボロクマブ群のベネフィットは、年齢、性、アテローム動脈硬化性血管疾患のタイプなどの主要なサブグループのほとんどに一貫して認められた。さらに、ベネフィットは、ベースラインのLDL-C値の最高四分位群(中央値:126mg/dL、IQR:116~143)から最低四分位群(74mg/dL、69~77)まで、一貫してみられた。 有害事象(77.4 vs.77.4%)、重篤な有害事象(24.8 vs.24.7%)、治験薬関連と考えられる有害事象の発現および治験レジメンの中止(1.6 vs.1.5%)は、両群に有意な差はなかった。また、筋関連イベント(5.0 vs.4.8%)、白内障(1.7 vs.1.8%)、新規糖尿病(8.1 vs.7.7%)、神経認知有害事象(1.6 vs.1.5%)にも、両群に差はなかったが、注射部位反応(2.1 vs.1.6%、p<0.001)はエボロクマブ群で有意に多くみられた。 著者は、「これらの知見は、アテローム動脈硬化性心血管疾患患者は、LDL-C値を現在の目標値よりも、さらに下げることでベネフィットが得られることを示すもの」と指摘している。

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認知機能低下が懸念されるスタチン、運動併用が有効か

 スタチン使用と認知機能低下との関連が懸念されている。熊本大学循環器内科の研究グループでは、既に軽度の認知機能低下のある冠動脈疾患(CAD)患者におけるパイロット研究から、スタチンと定期的な運動の併用が認知機能障害の改善に役立つ可能性を報告した。Internal medicine誌オンライン版2017年3月17日号に掲載。 軽度の認知機能低下を伴うCAD患者43例を連続して登録し、スタチン治療と共に院内で週1回の有酸素運動を5ヵ月間実施した。血清脂質および運動能力を測定し、また、mini-mental state examination(MMSE)を用いて認知機能を評価した。 主な結果は以下のとおり。・軽度の認知機能低下を伴うCAD患者において、治療後、LDLコレステロール値が有意に減少し、最大運動能力(負荷)が有意に増加した。・スタチンと運動の併用療法により、コホート全体でMMSEスコア中央値(範囲)が24(22~25)から25(23~27)に有意に増加した(p<0.01)。・BMIの変化とMMSEスコアの変化との間に有意な負の相関がみられた。・治療後、BMIが減少した群ではMMSEスコアが有意に改善したが、BMIが増加した群では改善しなかった。・試験開始時にすでにスタチンを投与されていた患者は、スタチンを投与されていなかった患者よりも有意にMMSEスコアが改善した。・65歳以上・性別・糖尿病の有無で調整された多変量ロジスティック回帰分析において、 スタチンと運動の併用療法期間におけるBMI減少はMMSEスコア上昇と有意に相関していた(オッズ比:4.57、95%信頼区間:1.05~20.0、p<0.05)。

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159)肥満サイクルからの脱出に向けて【脂質異常症患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者中性脂肪が、なかなか減らないんです。医師中性脂肪はエネルギー源ですから、まずは体を動かすことが大切ですね。患者動かすこと?医師そうです。家でゴロゴロしていると、何かをつまみたくなります。患者確かに。医師そうすると、体脂肪が増えて、動きたくなくなります。患者それ、私です!医師それが「肥満サイクル」です!ここから抜け出すためには、ゴロゴロしないことが大切です。患者はい。わかりました。なるべく外へ出かけるようにします。●ポイントフレイルサイクル(加齢による食欲・食事量低下→低栄養→サルコペニア→動かない→食欲低下)と比較しての説明もできます

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冠動脈疾患に、ヘテロ接合体LPL遺伝子変異が関与/JAMA

 リポ蛋白リパーゼ(LPL)遺伝子の稀有な機能障害性変異(ヘテロ接合体)は、トリグリセライド高値および冠動脈疾患(CAD)と有意に関連していることが、米国・マサチューセッツ総合病院のAmit V Khera氏らによる横断的研究の結果、明らかとなった。LPLの活性は、トリグリセライドが豊富なリポ蛋白が血中で代謝される際の律速段階に寄与する。そのためLPL遺伝子の機能障害性変異は、終生にわたり酵素活性不足をもたらし、ヒトの疾患に関与する可能性が推察されるが、両者の関連はこれまで確認されていなかった。著者は、「今後、ヘテロ接合体によるLPL欠損症がCADの原因となる機序があるかどうかをさらに検証する必要がある」とまとめている。JAMA誌オンライン版2017年3月7日号掲載の報告。CAD患者約1万4,000例、対照約3万3,000例でLPL遺伝子を解析 研究グループは、ヘテロ接合体のLPL欠損症をもたらすまれな機能障害性変異、ならびにLPLの高頻度変異が、血中脂質値や早発性CADの発症と関連しているかを検証した。2010~15年の間に、Myocardial Infarction Genetics Consortiumにおける10のCAD症例対照コホート(CAD患者1万138例、対照1万2,395例)、およびGeisinger Health SystemのDiscovEHRコホートにおけるコホート内CAD症例対照コホート(CAD患者4,107例、対照2万251例)について、LPLの遺伝子配列を解析した。 LPL遺伝子の機能障害性変異(マイナー対立遺伝子頻度<1%)には、機能喪失型変異やヒト遺伝子データベース(ClinVar)で病原性があるとアノテーション(注釈付け)されたもの、コンピュータ予測アルゴリズムによって障害性があると予測されたものなどが含まれた。LPL遺伝子の高頻度変異(マイナー対立遺伝子頻度>1%)は、2012~14年にGlobal Lipids Genetics Consortiumの最大30万5,699例、およびCARDIoGRAM Exome Consortiumの最大12万600例で解析され、独立して血中トリグリセライド値と関連していると同定された遺伝子型とした。 主要評価項目は、血中脂質値とCADで、メタ解析により併合した。変異遺伝子保有者でトリグリセライド値が高く、CADリスクは1.8倍 LPL遺伝子配列を解析した合計4万6,891例の患者背景は、平均(±SD)年齢50±12.6歳、女性が51%であった。 LPL機能障害性変異(ヘテロ接合体)保有者は、対照3万2,646例中105例(0.32%)、早発性CAD発症者1万4,245例中83例(0.58%)、合計188例(0.40%、95%信頼区間[CI]:0.35~0.46%)であった。 非保有者4万6,703例と比較し保有者188例は、血漿トリグリセライド値が高値(19.6mg/dL、95%CI:4.6~34.6mg/dL)、CADのオッズ比(OR)が有意に高かった(OR:1.84、95%CI:1.35~2.51、p<0.001)。LPL高頻度変異6種(マイナー対立遺伝子変異頻度1~29%)については、CADのオッズ比はトリグリセライド1 SD増加当たり1.51(95%CI:1.39~1.64、p=1.1×10-22)であった。

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158)「あぶら」の違いを漢字から解説【脂質異常症患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者先生、あぶらって2種類あるじゃないですか?医師2種類?患者「油」と「脂」です。これはどう違うんですか?医師まず、字が違いますね。「油」はさんずい偏だから、液体。オリーブ油や魚油は、室温では液体なので「油」です。それに対して。患者それに対して?医師バターやラードなど常温で固体となるものが「脂」です。患者なるほど。医師「月」(にくづき)のつく脂なので、魚の油と肉の脂と覚えておくとわかりやすいですよ。患者わかりました。頑張って体から脂を取るようにします!●ポイント「油」と「脂」の違いを融点(溶け出す温度)の差であることをわかりやすく説明します

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認知症リスクへの糖尿病・高血圧・脂質異常症の影響

 インスリン抵抗性に起因する高血圧症や脂質異常症の患者と、糖尿病ではない高血圧症や脂質異常症の患者では、認知症リスクが異なる可能性がある。今回、台北医学大学のYen-Chun Fan氏らによる全国的な集団コホート研究から、糖尿病の有無により高血圧症や脂質異常症による認知症リスクの増加に差があることがわかった。著者らは、「糖尿病発症に続く高血圧症や脂質異常症の発症は糖尿病発症の2次的なものでインスリン抵抗性を介在する可能性があり、認知症リスクをさらに高めることはない」と考察し、「糖尿病自体(高血糖の全身的な影響)が認知症リスク増加の主な原因かもしれない」としている。Alzheimer's research & therapy誌2017年2月6日号に掲載。 著者らは、台湾の国民健康保険研究データベースから、後ろ向きコホート研究を実施した。糖尿病コホートは、2000~02年に新たに糖尿病の診断を受けた1万316人を登録し、非糖尿病コホートは、同時期に糖尿病ではなかった4万1,264人を無作為に選択した(年齢および性別が一致した人を1:4の比率で登録)。両コホートをそれぞれ、高血圧症または脂質異常症の有無により4群に分けた。 主な結果は以下のとおり。・20~99歳の5万1,580人が登録された。・糖尿病コホートは非糖尿病コホートに比べて認知症リスクが高かった(調整ハザード比[HR]:1.47、95%CI:1.30~1.67、p<0.001)。・糖尿病コホートでは、高血圧症と脂質異常症の両方を有する群は、どちらもない群と比較して、認知症リスクの増加は有意ではなかった(p=0.529)。高血圧症のみ(p=0.341)または脂質異常症のみ(p=0.189)の群でも同様の結果がみられた。・非糖尿病コホートでは、高血圧症と脂質異常症の両方を有する群は、どちらもない群と比べて認知症リスクが高く(調整HR:1.33、95%CI:1.09~1.63、p=0.006)、高血圧症のみの群でも結果はほぼ変わらなかった(調整HR:1.22、95%CI:1.05~1.40、p=0.008)。脂質異常症のみの群では認知症リスクの増加は有意ではなかった(p=0.187)。

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