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<先週の動き>1.都市部での新規開業を制限、医師の偏在是正の対策案を発表/厚労省2.マイナ保険証の利用が低迷、医療機関への働きかけ強化へ/政府3.少子化の深刻化続く、2024年上半期の出生数が最少記録/厚労省4.75歳以上高齢者に2割負担導入で、医療費が3~6%減少/厚労省5.2022年度の体外受精児、過去最多の7.7万人に/日本産科婦人科学会6.独居高齢者の孤独死が2万8000人超に、2024年上半期/警察庁1.都市部での新規開業を制限、医師の偏在是正の対策案を発表/厚労省厚生労働省は、8月30日に地域ごとの医師の偏在を是正するための総合対策を発表した。医師が多い都市部での新規開業を抑制するため、法令改正を含む一連の措置を検討しており、都道府県知事の権限を強化する予定。武見 敬三厚生労働大臣は30日の記者会見で、医師の偏在を是正するため、省内に「医師偏在対策推進本部」を設置、9月には初会合を開くことを発表した。具体的には、新規開業希望者に対して、救急医療や在宅医療などの地域で不足している医療サービスを提供するよう要請する法的枠組みを整え、開業を事実上制限することが柱となっている。さらに、地方の医療機関への財政支援を強化し、医師不足地域への医師派遣を推進するためのマッチング支援を行うことが検討されている。これには、医師が少ない地域での勤務経験を管理者要件とする医療機関の拡大、大学医学部卒業後地元で働くことを条件に医学部入学を認める「地域枠」の再配置も含まれる。厚労省内では、部局横断の推進本部が新設され、年末までに具体的な対策パッケージがまとめられる予定。また、この対策は「近未来健康活躍社会戦略」の一環として、国民皆保険の維持や医療・介護産業の発展を目指している。今後、25年度予算案への反映や通常国会での法改正も視野に入れ、医師の偏在是正に向けた取り組みが本格化する見通し。参考1)武見大臣会見概要[令和6年8月30日](厚労省)2)今後の医師偏在対策について(同)3)近未来健康活躍社会戦略(同)4)医師偏在是正へ開業抑制、都道府県の権限強化 厚労省案(日経新聞)5)医師多い地域で開業抑制、厚労省が偏在是正へ対策骨子案 地方医療機関へ財政支援強化(産経新聞)6)医師偏在是正「多数区域」の知事権限強化など 厚労省が対策具体案、年末までに具体化(CB news)2.マイナ保険証の利用が低迷、医療機関への働きかけ強化へ/政府厚生労働省は、8月30日に社会保障審議会医療保険部会を開き、「マイナ保険証」の利用促進策について検討した。2024年7月時点でのマイナ保険証の利用率は11.13%と低迷し、政府が掲げる現行健康保険証の12月廃止に向けた利用促進には課題が残っていることが明らかになった。とくに利用率が低い医療機関や薬局に対しては、厚労省が地方厚生局を通じて個別に事情を確認し、利用促進を図るための支援を行う方針を明らかにした。厚労省は「消極的な利用は療養担当規則違反の恐れがある」としているが、医療機関側からは威圧的との批判も寄せられている。政府はマイナ保険証の利用率を引き上げるため、医療機関に対して一時金の支給や補助金の期間延長などのインセンティブを提供してきたが、利用率については最高の富山県で18.0%、最下位の沖縄県で4.75%と依然として利用率が伸び悩んでいる状況。今後、政府は利用促進策をさらに強化し、国民の不安を解消するための広報活動にも力を入れる予定。さらに総務省と厚労省は、マイナンバーカードの利用拡大を図るための一連の新対策として、マイナンバーカードの暗証番号をコンビニエンスストアやスーパーで再設定できるサービスを開始し、従来の自治体窓口に出向く必要をなくした。変更にはスマートフォンの専用アプリを使用して事前手続きを行い、イオングループの店舗やセブン-イレブンの一部店舗内のマルチコピー機端末で再設定が可能となり、今後さらに広がる予定。マイナンバーカードの普及と利用促進に向けた政府の取り組みが進んでいるが、現場の課題や地域差が浮き彫りになっており、さらなる対策が求められている。参考1)マイナ保険証の利用促進等について(厚労省)2)マイナ保険証 利用率低い医療機関や薬局に聞き取りへ 厚労省(NHK)3)マイナ保険証利用増へ追加策 厚労省、個別に働きかけ(日経新聞)4)マイナ保険証、利用実績低い施設に働き掛けへ 7月の利用率11.13%、新たな利用促進策(CB news)3.少子化の深刻化続く、2024年上半期の出生数が最少記録/厚労省厚生労働省が発表した2024年1~6月の人口動態統計(速報値)によると、出生数は前年同期比5.7%減の35万74人で、1969年の統計開始以来、上半期として最少を更新した。この減少は、少子化の深刻さを浮き彫りにしている。前年同期比で約2万人の減少がみられ、これで3年連続して40万人を下回る結果となった。また、2014年と比べると出生数は約3割減少しており、長期的な低下傾向が続いている。加えて、2024年の年間出生数が70万人を下回る可能性が高まっており、少子化対策の重要性が一層強調されている。婚姻数は、前年同期比で若干の増加がみられたが、新型コロナウイルス感染症の影響による晩婚化や晩産化が、今後の出生数減少に拍車をかける可能性がある。厚労省は、若い世代の減少や晩婚化により、出生数が今後も中長期的に減少する可能性が高いとし、少子化対策は待ったなしの危機的状況であると強調する。政府は、児童手当の拡充などの対策を進めているが、これまでの施策だけでは減少を食い止められていない状況。参考1)人口動態統計速報(令和6年6月分)(厚労省)2)上半期の出生数速報値で35万人余 統計開始以来最少に(NHK)3)1~6月の出生数は35万74人、上半期で過去最少 厚労省統計(朝日新聞)4)出生数1~6月最少、5.7%減の35万人 年70万人割れの恐れ(日経新聞)4.75歳以上高齢者に2割負担導入で、医療費が3~6%減少/厚労省厚生労働省は、8月30日に社会保障審議会医療保険部会を開き、一定の所得がある75歳以上の高齢者の窓口負担割合を、2022年10月から医療費の窓口負担を1割から2割に引き上げられた影響で、1人当たりの1ヵ月の医療費が3~6%減少したことが明らかにした。この調査は、2割負担の高齢者と1割負担のままの高齢者の診療報酬データを比較して行われ、医療サービスの利用が減少したことが確認された。とくに、糖尿病や脂質異常症などの一部の疾病で外来利用が顕著に減少しており、負担増が受診控えに繋がった可能性が示唆されている。厚労省が行った厚労科学研究の結果、負担増に伴う「駆け込み需要」も一部でみられたことが報告された。調査では、2割負担への移行後に医療サービスの利用日数が約2%減少し、医療サービス全体の利用が約1%減少したことが確認された。これにより、高齢者の医療費総額が減少し、特定の疾病での外来受診が減る傾向がみられた。一方、負担増が高齢者の健康にどのような影響を与えているかについては、さらに詳しい調査が必要とされ、社会保障審議会委員からも健康影響の検証を求める声が上がっている。今後、厚労省は、この調査結果を基に、後期高齢者医療制度の窓口負担割合の見直しを検討する方針。この調査結果は、高齢者の医療費負担増が医療サービスの利用にどのような影響を及ぼしているかを理解する上で重要な資料となり、これからの政策立案に役立てられることが期待されている。参考1)後期高齢者医療の窓口負担割合の見直しの影響について(厚労省)2)受診控えで医療費3~6%減 窓口負担1割→2割に増の75歳以上 厚労省調査(産経新聞)3)75歳以上で窓口負担2割、1ヵ月の医療費3%減少 1割負担者と比べ 厚労科研で検証(CB news)5.2022年度の体外受精児、過去最多の7.7万人に/日本産科婦人科学会日本産科婦人科学会が、2024年8月30日に発表した調査結果によると、2022年に国内で実施された不妊治療の一環である体外受精によって誕生した子供は、過去最多の7万7,206人に達した。これは、前年よりも7,409人増加し、全出生数の約10人に1人が体外受精で生まれたことを意味している。2022年の総出生数は約77万人であり、体外受精による出生がこれまでで最も多くなったことが確認された。体外受精の治療件数も過去最多の54万3,630件に上り、前年から4万5,000件以上増加した。とくに42歳の女性での治療件数が突出して多く、4万6,095件に達した。これは、2022年4月から体外受精に対する公的医療保険の適用が始まり、費用面でのハードルが下がったことが大きく影響したと考えられている。保険適用の対象は43歳未満の女性であるため、この年齢までに治療を行いたいと考える人が増加したとされている。また、体外受精の治療件数は2021年の約50万件からさらに増加し、前年の45万件台の横ばい傾向から再び上昇に転じた。この増加傾向は、2021年に続く大規模なもので、新型コロナウイルス感染症の影響による一時的な減少を除けば、近年は一貫して増加していることが示されている。その一方で、適齢期の女性の人口が減少していることから、今後もこの増加傾向が続くかどうかは不透明であり、専門家からは、医療保険適用による一時的な増加が影響している可能性が高く、今後の動向については引き続き注視が必要だとしている。参考1)2022年体外受精・胚移植等の臨床実施成績(日本産科婦人科学会)2)22年の体外受精児、10人に1人で過去最多 識者「保険適用でハードル下がった」(産経新聞)3)体外受精児、最多7.7万人 22年、10人に1人の割合(日経新聞)4)2022年に国内で実施の体外受精で生まれた子ども 年間で最多に(NHK)6.独居高齢者の孤独死が2万8,000人超に、2024年上半期/警察庁警察庁は、2024年上半期(1~6月)に全国で自宅死亡した独居高齢者(65歳)が2万8,330人に達したことを初めて発表した。これは、同期間に全国の警察が取り扱った自宅で死亡した1人暮らしの人が、全国で3万7,227人(暫定値)いた中の約76.1%を占めている。この統計は、政府が進める「孤独死・孤立死」の実態把握の一環として行われ、今後の対策の議論に活用される予定。この中で孤独死は、85歳以上の高齢者が7,498人と最も多く、次いで75~79歳の5,920人、70~74歳の5,635人と、高齢者の孤独死が顕著だった。また、男女別では男性が2万5,630人、女性が1万1,578人と、男性の方が圧倒的に多い傾向がみられた。地域別では東京(4,786人)が最も多く、続いて大阪、神奈川といった都市部での高齢者の孤独死が目立っている。さらに、死亡から警察が認知するまでの期間が1日以内のケースが全体の約4割に当たる1万4,775人であった一方で、15日以上経過したケースも19.3%に達し、孤立した生活の中で発見が遅れる事例が少なくないことが浮き彫りとなった。政府は昨年8月から「孤独死・孤立死」の問題に対応するためのワーキンググループを設置し、今年4月には「孤独・孤立対策推進法」が施行された。この統計結果は、今後の政策立案や社会支援の強化に向けた貴重な資料として活用されることが期待されている。参考1)令和6年上半期(1~6月分)(暫定値)における死体取扱状況(警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者)について(警察庁)2)独居高齢者、今年上半期に2万8,000人が死亡 7,000人超が85歳以上 警察庁まとめ(産経新聞)3)高齢者の「孤独死」、今年1~6月で2万8,330人…警察庁が初めて集計(読売新聞)4)高齢者の「孤独死」、半年で2万8千人 死後1ヵ月以上経ち把握も(朝日新聞)