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家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)〔FH:familial hypercholesterolaemia〕

1 疾患概要■ 定義家族性高コレステロール血症(Familial Hypercholesterolemia:FH)は、low-density lipoprotein(LDL)受容体経路に関わる遺伝子変異のために、LDL代謝に遅延を来し、高LDL-C血症による動脈硬化が若年齢より進行する遺伝病である。FHは、高low density lipoprotein (LDL)コレステロール血症、皮膚および腱黄色腫、若年性動脈硬化症による冠動脈疾患を三主徴とし、LDL受容体経路に関わる遺伝子の1つのアレルに病的変異を持つものをFHヘテロ接合体、2つのアレルに病的変異を持つものを、FHホモ接合体という1)。■ 疫学FHホモ接合体患者は以前には100万人に1人の頻度とされていたが、現在は30万人に1人以上の頻度であると推定されている。FHホモ接合体は、指定難病とされ、令和元年の受給者証所持者数は320人である。■ 病因FHは、LDL受容体経路に関わる遺伝子の変異、すなわち、LDL受容体の病的遺伝子変異、あるいはPCSK9の機能獲得型変異、アポリポタンパクBの病的遺伝子変異により、LDL受容体蛋白が欠損しあるいはその機能が大きく障害されて、高LDL-C血症が引き起こされる先天的疾患である。通常は血漿LDLの約70%が肝臓で代謝される。FHホモ接合体患者では約10%に低下しており、低下の程度に反比例して血漿LDL濃度は上昇し、血管壁へのコレステロールの沈着のリスクが高まる。■ 症状身体所見としては、皮膚や腱にLDL由来のコレステロールが沈着し、皮膚黄色腫、腱黄色腫と呼ばれる。黄色腫の頻度は、LDL-C値の上昇の度合いと期間の長さに比例する。黄色腫は、皮膚では肘関節、膝関節の伸側、手首、臀部など、機械的刺激が加わる部位に多く発生する(図1)。腱黄色腫はアキレス腱のものが一番良く知られており、診断に用いられるが、手背伸筋腱にも発生する。図1 HoFH患者の皮膚黄色腫所見画像を拡大する■ 分類LDL受容体経路に関わる遺伝子の変異による遺伝病であり、原因遺伝子としてはLDL受容体の病的変異が1番多いが、PCSK9機能獲得型変異、アポリポタンパクBの病的変異も報告されている。同一の遺伝子の同じ変異が2つ存在する真性ホモ接合体、同じ遺伝子に異なった変異を認める複合ヘテロ接合体、別の遺伝子に変異を認めるダブルヘテロ接合体もFHホモ接合体と考えられている(図2)。図2  FHホモ接合体の遺伝子変異の組み合わせ■ 予後FHホモ接合体の動脈硬化症としては、大動脈弁上狭窄、弁狭窄、冠動脈狭窄が乳幼児期に出現し、進行する。未治療では30歳までに狭心症、心筋梗塞、突然死を引き起こすことが知られている。胸部大動脈、腹部大動脈や肺動脈にも強い動脈硬化を引き起こす。そのため、冠動脈狭窄に対するPCI、CABG、大動脈弁上狭窄・弁狭窄に対する大動脈弁置換術が必要になる例も多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)血清LDL-C値は370~1,000mg/dLである。FHの血清中に増加しているコレステロールは主にLDLであり、IIa型の高脂血症病型を示す例が多い。身体症状としては、皮膚黄色腫の存在、家族歴として両親がFHヘテロ接合体であることなどが、診断上の根拠となる。線維芽細胞やリンパ球におけるLDL受容体活性の低下(正常の20%以下)、LDL受容体遺伝子変異により診断を下すことも可能であるが、正確な診断をするには、遺伝子解析を行うことが重要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)FHホモ接合体の治療の基本は、冠動脈疾患など若年齢から起きる動脈硬化症の発症および進展の予防であり、早期診断と適切な治療が最も重要である。FHホモ接合体のLDL-C値の治療目標値は、一次予防で100mg/dL、二次予防で70mg/dLである。これらの目標値に向けて、多くの薬剤やLDLアフェレシス治療を組み合わせ、LDL-C値をできる限り低下させることが重要である。また、動脈硬化の危険因子である、糖尿病、高血圧、高トリグリセリド血症などは、厳格にコントロールする。FHホモ接合体は、薬剤に対する反応性が悪いことが多いが、まずはスタチンを開始、増量、さらにエゼチミブを加えてその反応性を観察する。さらにPCSK9阻害薬エボロクマブ(商品名:レパーサ)140mgを2週間に1回皮下注射で行う。FHホモ接合体の中でもLDL受容体活性がまったくないタイプ(negative type)では効果を認めないが、活性がわずかに残っているタイプ(defective type)であればある程度の効果が期待できる3)。効果が十分でない場合には、エボロクマブ420mgのオートミニドーザーを用いて2週間に1回皮下注射で行う。これらの薬剤の効果が十分でない場合、MTP阻害薬ロミタピド(同:ジャクスタピッド)が適応になる。MTP阻害薬は、開始前に脂肪摂取制限の栄養指導を行い、5mgから徐々に増量する。LDL-Cの低下効果とともに、下痢や肝機能障害などの副作用をチェックしながら、至適用量を決定する。さらに、LDL-C値のコントロールを行うためには、1~2週間に1回のLDL-アフェレシス治療が必要な場合も多い。FHホモ接合体に対する薬物療法は、LDLアフェレシス開始前の乳幼児に対して行い、LDLアフェレシス開始後の患者に対しては、治療施行にて低下したLDLの再上昇を抑制する補助的な目的で行う。4 今後の展望1)Angiopoietin-Like Protein 3(ANGPTL3)抗体医薬(evinacumab)ANGPTL3は、機能低下型変異により、低LDL-C、低TG、低HDL-C血症を示し、冠動脈疾患リスクも低いことが知られていた。ANGPTL3抗体医薬が、FHホモ接合体に効果があることが示され、全世界で治験が進行中である4)。2)PCSK9 siRNA(inclisiran)siRNAを用いてPCSK9の産生を抑制する薬剤の開発が行われている5)。1回の注射で6ヵ月間、LDL-C値の低下を認める薬剤であり、すでに欧州で承認されており、わが国では治験が進行中である。5 主たる診療科小児科、代謝内科、循環器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「原発性脂質異常症に関する調査研究班」(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)原発性脂質異常症の予後調査(PROLIPID)(医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本動脈硬化学会 家族性高コレステロール血症について(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本動脈硬化学会 家族性高コレステロール血症紹介可能施設(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報難治性家族性高コレステロール血症患者会(患者とその家族および支援者の会)1)Defesche JC,et al. Nat Rev Dis Primers. 2017;3:17093.2)Nohara A, et al. J Atherosclr Thromb. 2021;28:665-678.3)Raal FJ, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2017;5:280-290.4)Dewey FE, et a. N Engl J Med. 2017;377:211-221.5)Ray KK, et al. N Engl J Med. 2017;376:1430-1440.公開履歴初回2021年8月30日

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー UpToDateの活用 その2【「実践的」臨床研究入門】第11回

UpToDate®―該当トピックの本文を読み込んでみるCQ:食事療法を遵守すると慢性腎臓病患者の腎予後は改善するのだろうか↓P:慢性腎臓病(CKD)患者E:食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の遵守C:食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の非遵守O:腎予後前回、これまでブラッシュアップしてきた、上記のCQとRQ(PECO)に関連するUpToDate®のトピックを検索したところ、人工透析を受けていない慢性腎臓病患者に推奨する食事療法Dietary recommendations for patients with nondialysis chronic kidney diseaseがヒットしました。このトピックには、”PROTEIN INTAKE(たんぱく質摂取量)”という項があり、われわれのRQに関連する先行研究について概説されていそうです。 該当トピックの解説を読み込む前に、このトピックの更新日付を確認してみましょう。トピックの標題の直下に、担当著者・編集者の氏名が明記されており、“All topics are updated as new evidence becomes available and our peer review process is complete.”「すべてのトピックは新しいエビデンスが入手可能になりわれわれのピア・レビューが完了すると更新されます(筆者による意訳)。」とのコメントとともに、Literature review current through:May 2021. |This topic last updated:Feb 21, 2020.との記載があります。本稿執筆時点(2021年7月)では、このトピックの関連文献レビューは2021年5月まで行っているが、このトピック本文の最終更新日は2020年2月21日である(筆者による意訳)、ということです。UpToDate®では、その分野の信頼できる専門家が年3回は関連研究レビューを行って都度改訂し、まさに”up-to-date”な2次情報を提供してくれているのです。今回は、このトピックの”PROTEIN INTAKE(たんぱく質摂取量)”の項を読み込んで、RQのさらなるブラッシュアップに活かしたいと思います。その概要を以下のようにまとめてみました(筆者による抜粋、意訳)。P(対象)をネフローゼ症候群患者*と非ネフローゼ症候群患者に分けて記述されている。*成人ネフローゼ症候群の診断基準1)1.尿たんぱく3.5g/日以上が持続する2.低アルブミン血症:血清アルブミン値3.0g/dL以下3.浮腫4.脂質異常症(高LDLコレステロール血症)1、2は診断必須条件、3、4は参考所見ネフローゼ症候群患者ではたんぱく質摂取量制限は有効性、安全性、双方の観点から推奨しない、との記述があり、われわれのRQのP(対象)からも除外した方が良さそうです。したがって、下記のまとめは非ネフローゼ症候群患者をP(対象)にしぼった関連研究のレビューに基づいたものです。推定糸球体濾過量(eGFR)<60mL/分/1.73m2未満の保存期CKD患者ではたんぱく質摂取量は0.8g/kg標準体重/日以下に制限することが推奨される。たんぱく質摂取制限はCKDの進行を遅延させる可能性があるが、その有益性は軽度であることが、ランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)の結果から示唆されている2-7)。たんぱく質摂取量は0.6g/kg標準体重/日までは安全性も保たれていることが示されているが8-10)、より厳格な低たんぱく質食事療法は長期的には死亡リスクの増加の懸念を示唆する研究報告3)もある。これらのRCTの結果を統合(メタ解析)した、システマティック・レビュー11)でも、たんぱく質摂取制限が有益である可能性が示唆されている。UpToDate®の記述からも、われわれがE(曝露要因)に設定している「厳格な」たんぱく質制限食(0.5g/kg標準体重/日)の臨床的有用性については、明確なエビデンスはないようです。また、UpToDate® が根拠とするエビデンスもRCTからの知見に基づいたものがほとんどであり、外的妥当性(連載第6回参照)の観点からも、われわれが行う観察研究にある程度の価値はありそうだと考えられます。また、上述したとおり、ネフローゼ症候群はP(対象)から除外するのが適切と判断し、冒頭のCQと RQ(PECO)を下記のように改訂しました。CQ:食事療法を遵守すると非ネフローゼ症候群の慢性腎臓病患者の腎予後は改善するのだろうか↓P:非ネフローゼ症候群の慢性腎臓病(CKD)患者E:食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の遵守C:食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の非遵守O:腎予後次回からは、もうひとつの質の高い2次情報源である、コクラン・ライブラリーの活用方法について解説したいと思います。1)エビデンスに基づくネフローゼ症候群診断ガイドライン2020, 東京医学社.2)Klahr S et al. N Engl J Med. 1994 Mar 31;330:877-884.3)Menon V et al. Am J Kidney Dis. 2009 Feb;53:208-17.4)Ihle BU et al.New Engl J Med. 1989 Dec 28;321:1773-7.5)Cianciaruso B et al.Nephrol Dial Transplant. 2008 Feb;23:636-44.6)Levey AS et al. Am J Kidney Dis.1996 May;27:652-63.7)Locatelli F et al. Lancet. 1991 Jun 1;337:1299-304.8)Kopple JD et al. Kidney Int.1997 Sep;52:778-91.9)Aparicio M et al. J Am Soc Nephrol.2000 Apr;11:708-716.10)Bernhard J et al. J Am Soc Nephrol. 2001 Jun;12:1249-1254.11)Fouque D et al.Cochrane Database Syst Rev. 2020 Oct 29;10(10):CD001892.

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「はい、はい」と返事だけの患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第40回

■外来NGワード「ちゃんとわかっているんですか!?」(わかっていないと決めつける)「返事だけはいいですね」(皮肉な言い方)「もう一度、最初から説明しますね」(同じことをしつこく説明する)■解説外来で糖尿病患者さんに検査値の説明をしていると、「はい、はい」と返事はいいのですが、ちゃんと理解できているか、不安になることがありませんか? 中には、ちゃんとわかっていないのにもかかわらず、「医師を不快にさせたくない」「頭が悪いと思われたくない」と考えて、わかっているふりをしている場合もあります。もちろん、「はい、はい」を連発することは、早く診察を終えたいというサインでもあります。そういった患者さんに、HbA1cなどの検査値の意味をちゃんとわかっているのか確認するためには、どうしたらいいのでしょうか? 患者さんに「今の説明でわかりましたか?」と尋ねてみても、ほとんどの場合「はい」と答えるので、本当にわかっているのかどうかは不明です。そんな場合には、「ティーチバック」を試してみましょう。ティーチバックとは、医師の説明したことを患者さん自身の言葉で説明してもらうことです。このティーチバックを糖尿病の療養指導に取り入れた研究では、糖尿病合併症リスクが約3割減り、冠動脈疾患で入院するリスクも半減し、医療費も削減できたと報告されています。とはいえ、突然「では、今話したことを私に説明してください」と医師から言われたら、患者さんは極度に緊張してしまうかもしれません。ティーチバックの説明にも、ひと工夫が必要ですね。■患者さんとの会話でロールプレイ医師今の説明でわかりましたか?患者はい、はい…。医師ハハハ。あまり、わかっていなさそうですね。患者アハハ、ばれましたか。医師それでは、ちょっとHbA1cについて説明してもらえますか?患者えっ、先生に説明するんですか? そんな、専門家に説明なんてできませんよ。(少し困った顔)医師いえいえ。専門用語は使わなくていいので、家族や友人に説明するつもりでお願いします。患者そうですか。えっと…、HbA1cというのは2ヵ月間ぐらいの平均血糖値のことで…。医師なるほど。それから?患者7%を超えると合併症になりやすい…30を足すと体温みたいでわかりやすい…ってところでしょうか。医師いいですね。その説明なら、知り合いの人もよく理解できそうですね。患者そうですか。私も、7%未満を目標に、もっと頑張らないといけませんね。(うれしそうな顔)■医師へのお勧めの言葉「家族や友人に○○(HbA1c)を教えるとしたら、どんなふうに説明しますか?」 1)Hong YR, et al. J Am Board Fam Med. 2020;33:903-912.2)Hong YR, et al. J Gen Intern Med. 2019;34:2176-2184.3)Leong A, Wheeler E. Curr Opin Genet Dev. 2018;50:79-85.

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若年発症2型DM、青年期の各合併症の発症率は?/NEJM

 若年発症の2型糖尿病患者では、細小血管合併症などの合併症のリスクが経時的に着実に増加し、多くの患者が若年成人に達するまでに何らかの合併症を発症していることが、米国・コロラド大学のPetter Bjornstad氏らTODAY試験グループが実施した「TODAY2追跡試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2021年7月29日号に掲載された。米国では、若年者における2型糖尿病の有病率は増加を続けているが、青年から成人への移行期における関連合併症の発生状況はほとんど知られていないという。米国の無作為化試験の観察的追跡研究 研究グループは、2004~11年の期間に米国の15施設で、青少年期に2型糖尿病を発症した患者を対象に、3種類の治療(メトホルミン、メトホルミン+rosiglitazone、メトホルミン+強化生活習慣介入)が、血糖コントロールを喪失するまでの期間に及ぼす効果を評価する目的で、多施設共同無作為化臨床試験(TODAY試験、699例、年齢10~17歳)を行った。 この試験の終了後、2011~20年の期間に同試験の参加者を対象として、2つの観察研究(TODAY2追跡試験)が実施された。2011~14年(TODAY2第1期)には、参加者は血糖コントロールのためにメトホルミン単独またはメトホルミン+インスリンによる治療を受けた(572例)。また、2014~20年(TODAY2第2期)には、通常治療のみが行われ、治療や介入は行われなかった(518例)。2つの期間を通じた平均追跡期間は10.2年だった。本論文では、この追跡研究の結果が報告された。 糖尿病性腎臓病、高血圧、脂質異常症、神経障害の評価が年1回行われ、網膜症の評価が試験期間中に2回実施された。HbA1c値<6%が75%から19%に、≧10%は0%から34%に TODAY2第2期の終了時点(2020年1月)で、解析に含まれた500例の平均年齢(±SD)は26.4±2.8歳であり、糖尿病の診断からの平均経過期間は13.3±1.8年であった。 糖化ヘモグロビン(HbA1c)値の中央値は経時的に上昇し、非糖尿病の範囲(HbA1c値<6%)の参加者の割合は、ベースライン(TODAY試験開始時、2004年)の75%から15年後(TODAY2第2期終了時、2020年)には19%に低下した。また、HbA1c値≧10%の割合は、ベースラインの0%から15年後には34%に増加した。 高血圧の発生率は、ベースラインが19.2%で、15年後の累積発生率は67.5%へと増加した。同様に、脂質異常症の発生率は20.8%から51.6%へ、糖尿病性腎臓病は8.0%から54.8%へ、神経障害は1.0%から32.4%へと上昇した。また、網膜症の有病率は、2010~11年の13.7%(すべてきわめて軽度の非増殖性糖尿病性網膜症)から、7年後の2017~18年には51.0%(このうち8.8%が中等度~重度の網膜の変化、3.5%が黄斑浮腫)に増えた。 細小血管合併症は、ベースラインの9.0%から15年間で80.1%へと増加し、累積発生率が50%に達するまでの期間は9年だった。また、細小血管合併症発生のリスク因子は、少数人種/民族、高血糖、高血圧、脂質異常症などであった。患者の60.1%(407/677例)で1つ以上の合併症が発生し、28.4%(192/677例)で2つ以上の合併症が発生した。 著者は、「これらのデータは、若年発症2型糖尿病では、糖尿病に特異的な合併症の負担が大きく、本症の患者は合併症によって早期に深刻な影響を受けており、公衆衛生上も重大な意味を持つことを示している」と指摘している。本研究は、米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所(NIDDK)などの研究助成を受けて行われた。

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乾癬患者の肥満・糖尿病、生物学的製剤治療への影響は?

 乾癬の生物学的製剤による治療に、肥満症や糖尿病既往は、どの程度の影響を与えるのか。米国・Eastern Virginia Medical SchoolのClinton W. Enos氏らによる検討で、肥満は、PASI75およびPASI90の達成率を25~30%減少することなどが示された。乾癬は併存する全身性代謝疾患との関連が指摘されるが、結果を踏まえて著者は、「生物学的製剤の治療反応の達成率を改善するためにも、併存疾患負荷のアセスメントが重要である」と述べている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2021年7月10日号掲載の報告。 研究グループは、米国およびカナダの診療拠点で使われるCorEvitas' Psoriasis Registryに登録された乾癬患者において、併存する肥満症、糖尿病の既往、高血圧、脂質異常症と、生物学的製剤による6ヵ月時点の治療反応との関連性を評価した。 ベースラインで生物学的製剤(TNF阻害薬、IL-17阻害薬、IL-12/23阻害薬、IL-23阻害薬)による治療を受けており、6ヵ月時点の外来受診データが入手できた2,924例を対象に分析を行った。 ロジスティック回帰法にて、肥満症、糖尿病の既往、高血圧、脂質異常症の各併存疾患を有する患者について、それぞれ有さない患者と比較した選択的アウトカムの反応性達成について、補正後オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出し、評価した。 主な結果は以下のとおり。・全体で肥満症は、PASI75(OR:0.75、95%CI:0.64~0.88)とPASI90(0.70、0.59~0.81)の達成オッズ比25~30%の低下と関連した。・糖尿病の既往は、PASI75達成のオッズ比を31%(OR:0.69、95%CI:0.56~0.85)、PASI90を同21%(0.79、0.63~0.98)低下した。・肥満症は、TNF阻害薬やIL-17阻害薬クラスの反応性の低下と関連していた。・肥満症にかかわらず、糖尿病はIL-17阻害薬治療中のアウトカム不良と関連していた。・程度は低いが、高血圧はTNF阻害薬クラス治療中のアウトカム不良と関連していた。・脂質異常症グループでは、有意な関連はみられなかった。 著者らは、本検討は、短期的な効果のみを評価しており、サンプルサイズは小さく差異の検出力が限られており、結果については限定的である、としている。

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初の軽症~中等症COVID-19の抗体カクテル療法「ロナプリーブ点滴静注セット300/1332」【下平博士のDIノート】第79回

初の軽症~中等症COVID-19の抗体カクテル療法「ロナプリーブ注射液セット300/1332」今回は、抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体「カシリビマブ(遺伝子組み換え)/イムデビマブ(遺伝子組み換え)(商品名:ロナプリーブ注射液セット300/1332、製造販売元:中外製薬)」を紹介します。本剤は、2種類の中和抗体を組み合わせて投与する抗体カクテル療法であり、SARS-CoV-2の宿主細胞への侵入を阻害し、ウイルスの増殖を抑制すると考えられています。※本剤の販売名は、販売当初は「ロナプリーブ点滴静注セット300/1332」でしたが、2021年11月添付文書改訂による用法の変更に伴い、「ロナプリーブ注射液セット300/1332」と変更されました。<効能・効果>本剤は、SARS-CoV-2による感染症の適応で、2021年7月19日に特例承認され、7月22日に発売されました。また、SARS-CoV-2による感染症の発症抑制の適応が2021年11月5日に追加されました。なお、本剤の適用は、臨床試験における経験を踏まえ、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者が対象となります。<用法・用量>通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、カシリビマブ(遺伝子組み換え)およびイムデビマブ(遺伝子組み換え)としてそれぞれ600mgを併用により単回点滴静注します。また、2021年11月の適応追加と同時に、単回皮下注射の用法が追加されました。臨床試験において、症状発現から8日目以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていないため、SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに投与する必要があります。<安全性>重大な副作用として、アナフィラキシーを含む重篤な過敏症(頻度不明)、infusion reaction(0.2%)が現れることがあります。上記が認められた場合には、投与速度の減速、投与中断または投与中止し、アドレナリン、副腎皮質ステロイド薬、抗ヒスタミン薬を投与するなど適切な処置を行うとともに、症状が回復するまで患者の状態を十分に観察します。<患者さんへの指導例>1.本剤は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬です。1回の点滴で2種類の中和抗体を投与し、ウイルスの増殖を抑えます。2.過去に薬剤などで重篤なアレルギー症状を起こしたことのある方は必ず事前に申し出てください。3.投与中または投与後に、発熱、悪寒、吐き気、不整脈、胸痛、脱力感、頭痛のほか、過敏症やアレルギーのような症状が現れた場合は、すぐに近くにいる医療者または医療機関に連絡してください。<Shimo's eyes>わが国ではこれまで、COVID-19治療薬としてレムデシビル(商品名:ベクルリー)、デキサメタゾン(同:デカドロン)、バリシチニブ(同:オルミエント)の3剤が承認されています。いずれも別の疾患で承認されていた薬剤が転用されたものであり、対象は重症患者に限られています。本剤は、国内で初めて軽症から中等症患者を対象とするCOVID-19治療薬です。2021年11月に「SARS-CoV-2による感染症の発症抑制」の適応が追加され、初の予防的治療薬となりました。患者との濃厚接触者や無症状陽性者に対して、静脈内投与および皮下投与で予防的に投与されます。ただし、COVID-19の予防の基本はワクチン接種であり、本剤はワクチンに置き換わるものではありません。COVID-19の原因となるSARS-CoV-2は、その表面に存在するスパイクタンパク質(Sタンパク質)が宿主細胞表面の酵素に結合することで宿主細胞に侵入し、感染に至ります。本剤は、このSタンパク質と宿主細胞表面の酵素との結合を阻害し、宿主細胞への侵入を阻害することでウイルスの増殖を抑制します。変異を繰り返すウイルスに対しては、抗体が1種類だけでは期待する効果が得られにくいことから、2種の抗体が組み合わされました(抗体カクテル療法)。本剤は、アルファ株(B.1.1.7系統)、ベータ株(B.1.351系統)、ガンマ株(P.1系統)、デルタ株(B.1.617.2系統)などのSタンパク質の主要変異にも中和活性を保持していることが示唆されています。投与対象者は「重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者(軽症~中等症I)」とされています。厚生労働省の事務連絡により、当初は入院治療を要する患者に限られましたが、2021年8月より、対象が宿泊療養中の患者にも拡大されました。なお、臨床試験において、高流量酸素や人工呼吸器管理を要する患者では症状が悪化したという報告があり、重症患者は対象ではありません。《COVID-19の重症化リスク因子》65歳以上の高齢者悪性腫瘍慢性閉塞性肺疾患(COPD)慢性腎臓病2型糖尿病高血圧脂質異常症肥満(BMI30以上)喫煙固形臓器移植後の免疫不全妊娠後期引用:新型コロナウイルス感染症 診療の手引き第5.1版より海外の第III相試験では、重症化リスク因子を有し、酸素飽和度93%(室内気)以上の患者が対象とされました。主要評価項目である入院または死亡に至った割合は、本剤群(736例)では1.0%、プラセボ群(748例)では3.2%であり、リスクが70.4%減少しました。症状消失までの期間短縮も示されています。なお、別の臨床試験では感染予防効果を示す報告もありますが、今回の適用は感染した患者への投与に限られています。薬剤調整時は、希釈前に約20分間室温に放置します。11.1mLバイアルには、2回投与分(1回5mL)の溶液が含まれ、1回分の溶液を抜き取った後のバイアルは、25℃以下の室温で最大16時間、または2~8℃で最大48時間保存可能で、最大保存期間を超えた場合は廃棄することとされています。新しいCOVID-19治療薬の登場により感染患者の重症化を防ぐことができ、ひいては医療機関の負担が軽減されることが期待されます。※2021年8月と11月、厚生労働省の情報などを基に、一部内容の修正を行いました。参考1)PMDA 添付文書 ロナプリーブ注射液セット300/ロナプリーブ注射液セット1332

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不眠症とメタボリックシンドロームリスク~メタ解析

 不眠症と高血圧、高血糖、脂質異常症、肥満などのメタボリックシンドロームリスクとの関連を調査するため、中国・Third Military Medical UniversityのYuanfeng Zhang氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Clinical Neuroscience誌2021年7月号の報告。 PRISMAガイドラインに従ってメタ解析を実施した。PubMedおよびEmbaseより、不眠症とメタボリックシンドロームリスクとの関連を調査した2020年12月1日までに公表された観察研究を検索した。各研究のリスク推定値を集計し、プールされたデータのオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、ランダム効果モデルを用いた。研究の不均一性は、I2統計量を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・高血圧、高血糖、脂質異常症、肥満のメタボリックシンドロームに関連する症状を含む12件の研究を、最終的にメタ解析に含めた。・不眠症患者のメタボリックシンドロームに関連する症状のリスクは、以下のとおりであった。 ●高血圧:OR=1.41(95%CI:1.19~1.67) ●高血糖:OR=1.29(95%CI:1.11~1.50) ●脂質異常症OR=1.12(95%CI:0.92~1.37) ●肥満:OR=1.31(95%CI:1.03~1.67) 著者らは「不眠症患者では、そうでない人と比較し、高血圧、高血糖、肥満のリスクがそれぞれ1.41倍、1.29倍、1.31倍高かった」としている。

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介護負担を考慮しβ遮断薬貼付薬の内服への切り替えを提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第40回

 今回は、貼付薬から内服薬へ切り替えた事例を紹介します。貼付薬は、内服薬の拒否・困難なケースでも治療が継続できて便利ですが、ほかの薬剤を問題なく内服できている場合は、貼付薬が1つ入っていることが返って手間になることもあります。患者情報90歳、女性(施設入居)基礎疾患発作性心房細動、心不全、高血圧症、脂質異常症、骨粗鬆症介護度要介護1服薬管理施設職員が管理処方内容1.エプレレノン錠25mg 1錠 分1 朝食後2.アゾセミド錠30mg 1錠 分1 朝食後3.ジゴキシン錠0.125mg 0.5錠 分1 朝食後4.ワルファリンカリウム錠1mg 3錠 分1 朝食後5.エナラプリル錠5mg 1錠 分1 朝食後6.エルデカルシトールカプセル0.5μg 1カプセル 分1 朝食後7.ピタバスタチン錠1mg 1錠 分1 朝食後8.ニコランジル錠5mg 2錠 分2 朝夕食後9.酸化マグネシウム錠330mg 2錠 分2 朝夕食後10.ビソプロロールテープ剤4mg 1枚 夕に貼付本症例のポイントこの患者さんは、服用薬剤は多いものの、「長生きは薬のおかげ」と服薬負担は感じていませんでした。しかし、貼付薬の交換時に、皮膚の掻痒感を我慢している様子があることを介護職員より聴取しました。そこで患者さんに話を聞いたところ、「かゆみはあるけれど、先生から勝手にやめないように言われているから我慢している」と考えていたことを聞き出すことができました。また、介護職員からは、職員配置の少ない夕方の貼付薬の介助は負担が大きいということも聞きました。そこで、本人と介護職員の負担を軽減するため、貼付薬を内服にまとめる提案をすることにしました。ビソプロロール貼付薬と内服薬の換算目安下記表の頻脈性心房細動を対象とした第III相検証試験(二重盲検並行群間比較試験)において、ビソプロロールフマル酸塩錠2.5mgとビソプロロール貼付薬4mg、ビソプロロールフマル酸塩錠5mgとビソプロロール貼付薬8mgの比較が行われています。この試験結果によると、ビソプロロールフマル酸塩錠2.5mg≒ビソプロロール貼付薬4mgですので、内服薬への切り替えは可能と考えました。画像を拡大する処方提案と経過本人および介護者の負担状況をトレーシングレポートにまとめて医師に提出し、現行のビソプロロール貼付薬4mgからビソプロロールフマル酸塩錠2.5mg内服への切り替えを提案しました。その際、換算の根拠として、上記の試験結果の表を共有しました。訪問診療の開始前に、医師よりトレーシングレポートの内容に処方を変更すると回答を得ました。そこで、翌日より内服薬に変更し、看護師と血圧・心拍数の変動についてモニタリングすることにしました。切り替えてから14日経過しても大きな変動はなく状態は安定しており、現在も内服薬として継続中です。ビソノテープインタビューフォームビソノテープ トーアエイヨー医療関係者向け情報

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中国の肥満成人は推定8,500万人/Lancet

 中国では1980年代初頭以降、成人の平均BMI値と肥満の有病率が着実に上昇しているが、直近10年について平均BMI値上昇は減速していることが示された。中国・疾病管理予防センター(CDC)のLimin Wang氏らが、最近の動向を全国的、地域別または特定人口集団別に知り得るために、2004~18年に行われた6つの全国規模の健康サーベイのデータを分析し発表した。一方で性別、地域別、社会経済的状況別にみると異なる傾向が認められ、著者は、「中国の一般集団の肥満について、さらなる増加を防ぐため、よりターゲットを絞ったアプローチの必要性が浮き彫りになった」とまとめている。Lancet誌2021年7月3日号掲載の報告。2004~18年の平均BMI値、肥満有病率を評価 研究グループは、中国の成人における平均BMI値と肥満の有病率の長期的および最近の傾向を、さまざまな全国的な非感染性疾患予防プログラムが開始された2010年前後の変化に重点を置き評価した。性別、年齢別、都市部と農村部別、社会経済的状況別で傾向は異なるのかどうかを評価し、2004年と比較した2018年の肥満者数を推算した。 評価には、一般集団における主要な慢性疾患の有病率と、行動とメタボリックリスク因子との関連に関する全国データを定期的に提供するため2004年に創設された、China Chronic Disease and Risk Factors Surveillanceのデータを用いた。 2004~18年に6つの連続した全国規模の抽出サーベイが実施されており、77万6,571人が招待され、74万6,020人(96.1%)が参加した。サーベイ各年の参加内訳は、2004年3万3,051人、2007年5万1,050人、2010年9万8,174人、2013年18万9,115人、2015年18万9,754人、2018年18万4,876人。 除外基準を適用後、18~69歳の64万5,223人を解析に包含。平均BMI値と肥満(BMI≧30)有病率を算出し、性別、年齢別、都市部と農村部別、地方別、社会経済的状況別に時間的傾向を比較した。都市部と農村部の有意な格差も明らかに 標準化平均BMI値は、2004年の22.7(95%信頼区間[CI]:22.5~22.9)が2018年には24.4(24.3~24.6)に、肥満有病率は同3.1%(2.5~3.7)が8.1%(7.6~8.7)にそれぞれ上昇していた。 2010年と2018年では、平均BMIは毎年0.09(95%CI:0.06~0.11)ずつ上昇していたが、この値は、2004~10年に報告された同値0.17(0.12~0.22)の半分であった。同様に、肥満有病率の毎年上昇値は、2010年より前の毎年相対上昇値8.7%(4.9~12.8)と比べると2010年より後には同6.0%(4.4~7.6)と、やや減少していた(p=0.13)。 2010年以降、平均BMIと肥満有病率の上昇は、都市部の男女では大幅に鈍化し、農村部では男性は緩やかとなっていたが女性の上昇は堅実なままであった。2018年までに、平均BMIは女性では都市部と比べて農村部で有意に高値となっていた(24.3 vs.23.9、p=0.0045)。一方で男性については都市部と比べて農村部で有意に低値のままであった(24.5 vs.25.1、p=0.0007)。また、6サーベイすべてで、平均BMIは、教育レベルの低い女性と比較して教育レベルの高い女性で一貫して低値であった。男性ではその反対の所見がみられた。 全体として、2018年の中国の18~69歳の肥満者は推定8,500万人(95%CI:7,000万~1億)で、男性は4,800万人(3,900万~5,700万)、女性は3,700万人(3,100万~4,300万)で、2004年の3倍に上るとみられた。

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多剤併用の高齢者、他の薬剤継続もスタチン中止で心血管リスク増

 高齢者の多剤併用(ポリピル)は主要な健康問題に発展するため、近年問題になっている。処方薬を中止すれば薬の使用を減らすことができる一方、臨床転帰への影響は不確かなままである。そこで、イタリア・University of Milano-BicoccaのFederico Rea氏らがスタチン中止によるリスク増大の影響について調査を行った。その結果、多剤併用療法を受けている高齢者において、ほかの薬物療法を維持しつつもスタチンを中止すると、致命的および非致命的な心血管疾患発生の長期リスクの増加と関連していたことが示唆された。JAMA Network Open誌2021年6月14日号掲載の報告。 研究者らはイタリア・ロンバルディア地域在住で多剤併用を受けている65歳以上を対象に、他の薬剤を維持しながらスタチンを中止することの臨床的意義を評価することを目的として、スタチン中止に関連する致命的および非致命的転帰のハザード比(HR)と95%信頼区間[CI]を推定した。対象者は2013年10月~2015年1月31日の期間(2018年6月30日までフォローアップ)に、スタチン、降圧薬、糖尿病治療薬、および抗血小板薬を継続服用していた患者。データはロンバルディ地域の医療利用データベースから収集し、2020年3~11月に分析した。また、スタチン中止後最初の6ヵ月間にほかの治療法を維持した患者とスタチンも他剤も中止しなかった患者について、傾向スコアによるマッチングを行った。 主な結果は以下のとおり。・全対象者は多剤併用の高齢者2万9,047例だった(平均年齢±SD:76.5±6.5歳、男性:1万8,257例[62.9%])。また、5人に1人が虚血性心疾患(5,735例[19.7%]を、12人に1人が脳血管疾患(2,280例[7.9%])を併存しており、そのほかにも心不全(2,299例[7.9%])や呼吸器疾患(2,354例[8.1%])があった。・全例のうちスタチンを中止するも他剤を継続したのは5,819例(平均年齢±SD:76.5±6.4歳、男性:2,405例[60.0%])で、傾向スコアでマッチングさせ4,010例が評価対象となった。 ・スタチン中止群の患者はすべて維持した群と比較して入院リスクが高く、心不全ではHR:1.24(95%CI:1.07~1.43)、心血管疾患の発生はHR:1.14(同:1.03~1.26)、あらゆる原因による死亡ではHR:1.15(同:1.02~1.30 )だった。・年齢や性別、臨床プロファイルなどの層別分析によると、スタチン中止の効果が各カテゴリー間で有意に不均一であるという証拠は示されなかった。・negative exposure analysisによれば、プロトンポンプ阻害薬の中止が死亡率に影響を及ぼしたという証拠は得られなかった(HR:1.08、同:0.95~1.22)。

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スクリーニング普及前後の2型糖尿病における心血管リスクの予測:リスクモデル作成(derivation study)と検証(validation study)による評価(解説:栗山哲氏)-1404

本論文は何が新しいか? 2型糖尿病の心血管リスクを、予知因子を用いてリスクモデルを作成(derivation study)し、さらにその検証(validation study)を行うことで評価した。ニュージーランド(NZ)からの本研究は、国のデータベースにリンクして大規模であること、データの適切性、対象者の95%がプライマリケアに参加していること、新・旧コホートの2者の検証を比較して後者での過大評価を明らかにしたこと、などの点で世界に先駆けた研究である。本研究のような最新の2型糖尿病スクリーニング普及は、低リスク患者のリスク評価にとっても重要である。リスクモデル作成研究(derivation study)と検証研究(validation study) 実地医家にはあまり聞き慣れない研究手法かもしれない。糖尿病や虚血性心疾患などにおいてリスク予測のためCox回帰モデルからリスク計算をし、それを検証する2段階の統計手法。症状や徴候、あるいは診断的検査を組み合わせてこれらを点数化し、イベント発症の可能性に応じ患者を層別化して予測する。作業プロセスは、モデル作成(derivation)と、モデル検証(validation)の2つから成る。モデル作成のコホートを検証に用いた場合、内的妥当性が高いことは自明である。したがって、作成されたモデルは他のコホート患者群に当てはめて外的妥当性が正しいか否かを客観的に検証する必要がある。心血管疾患リスクの推定は、複数の因子(例:治療法の変遷、危険因子にはリスクが高いもの[肥満]と低いもの[喫煙]があることなど)によって過大評価あるいは過小評価される可能性がある。結果の概要1)リスクモデルの作成(derivation study):2004~16年に行ったPREDICT試験を母体にしたPREDICT-1°糖尿病サブコホート試験(PREDICT-1°)において用いられたリスクの予測モデル因子は、年齢・性・人種・血圧・HbA1c・脂質・心血管疾患家族歴・心房細動の有無・ACR・eGFR・BMI・降圧薬や血糖降下薬使用、などである。これら糖尿病および腎機能関連の18の予測変数を有するCox回帰モデルから、5年心血管疾患リスクを推定した。2)リスクモデルの検証(validation study):2004~16年にかけて施行されたPREDICT-1°におけるリスク方程式を、2000~06年に行われたNZ糖尿病コホート研究(NZDCS)におけるリスク方程式にて外的妥当性を検証した。PREDICT-1°は追跡期間中央値5.2年(IQR:3.3~7.4)で、登録した46,625例の中で4,114件の新規心血管疾患イベントが発生した。心血管疾患リスクの中央値は、女性で4.0%(IQR:2.3~6.8)、男性で7.1%(4.5~11.2)であった。これに対して外的検証で用いたNZDCSにおいては心血管疾患リスクが女性では3倍以上(リスク中央値14.2%、IQR:9.7~20.0)、男性では2倍以上(17.1%、4.5~20.0)と過大評価されていることが示された。このことから、最近行われたPREDICT-1°は、過去に行われたNZDCSよりも優れたリスク識別性を有することが検証された。また、この新しいPREDICT-1°のリスク方程式によってリスク評価を行わない場合、糖尿病の低リスク患者を(新たに開発された)血糖降下薬などで過剰診療する可能性なども示唆された。糖尿病の心血管リスクスクリーニングの世界事情 先進国においては、強化糖尿病のスクリーニングを受ける成人が増加している。このため、これらの先進国では糖尿病患者の疾病リスク予測は、より早期と考えられる患者群(低年齢・軽度の高血圧や脂質異常症)に移行しており、より多くの患者が症候性になるより早期に糖尿病と診断されるようになってきた。ちなみにNZでは、スクリーニング検査の推奨項目として空腹時血糖値を非空腹時HbA1cに置き換えることにより、対象者の糖尿病スクリーニング受診率を向上させる新たな国家戦略を立ち上げ、2001年に15%、2012年に50%、2016年には対象者の90%で糖尿病スクリーニング受診という目標を達成してきた。一方、アフリカ、東南アジア、西太平洋ではスクリーニングによる診断よりは臨床診断が主体となるため、心血管疾患リスクスコアを過大評価している可能性がある。本論文から学ぶこと 最新のPREDICT-1°においては、HbA1cによるスクリーニングが普及し、心血管疾患のリスクが低い無症状の糖尿病患者が多数確認された。これにより2型糖尿病において早期発見・早期治療が可能になる。また、心血管疾患リスク評価式は、時代の変遷に応じて現代の集団に更新する必要がある。私見であるが、糖尿病への早期介入推奨の潮流は、たとえばKDIGO 2020年の糖尿病腎症治療ガイドラインなどにすでに反映されている。このガイドラインでは、腎保護戦略のACE阻害薬、ARB、SGLT2阻害薬などの薬剤介入と平行して、自己血糖モニタリングや自己管理教育プログラムの重要性にも多くの紙面を割き言及している(Navaneethan SD, et al. Ann Intern Med. 2021;174:385-394. )。 翻って、本邦での糖尿病スクリーニングによる心血管リスク予測の課題として、国家レベルでの医療データベースの充実化、健診環境のさらなる改善、そして本研究におけるPREDICT-1°に準じた新たな解析法の導入などが考えられよう。

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非糖尿病肥満症に対するGLP-1受容体作動薬と運動の併用によるリバウンド抑制効果(解説:小川大輔氏)-1398

 肥満によるさまざまな健康障害に内臓脂肪蓄積が関与していることが知られている。また内臓脂肪蓄積があれば糖尿病や脂質異常症などの疾患を発症することが予測されるため、減量治療が推奨されている。そして治療の基本は食事療法、運動療法、行動療法などの生活習慣改善療法である。ただBMI≧35kg/m2の高度肥満症では、生活習慣改善療法で一時的に体重の減少が得られても、リバウンドを繰り返し、長期的にみると減量治療が成功しないことも多いとされている。 今回減量治療後の体重維持に、GLP-1受容体作動薬リラグルチド3mgと運動療法の併用が運動療法単独より有効であることがNEJM誌に報告された1)。この試験は非糖尿病の肥満成人(平均BMI 37.0kg/m2)を対象に、まず8週間の低カロリー食による減量を行い、その後体重がベースラインから5%以上低下した195例を4群(リラグルチド群、運動群、併用群、プラセボ群)に割り付け1年間治療が行われた。その結果、主要エンドポイントである無作為化の時点から治療終了までの体重変化は、併用群で-9.5kgと最も大きく、次いでリラグルチド群-6.8kg、運動群-4.1kgであった。また、副次エンドポイントである体脂肪率の変化は、併用群で3.9%と最も低下し、次いで運動群2.2%、リラグルチド群2.0%であった。 本試験で減量治療後のリバウンド抑制や体脂肪率低下に対し、リラグルチドと運動療法の併用が運動療法単独より有効であることが示された。また、糖化ヘモグロビン値やインスリン感受性、心肺持久力の改善が認められたのは併用群のみであったことは、従来の肥満治療に薬物療法としてGLP-1受容体作動薬を加えることの有用性を示唆していると考えられる。ただし安全性については、リラグルチド群において心拍数上昇と胆石症が併用群より多く認められており注意が必要である。また本試験はデンマークで実施された試験であり、日本人を対象にしていない点についても留意したい。 日本では現在のところ、GLP-1受容体作動薬の保険適用は2型糖尿病に限られており、非糖尿病肥満症に対しては適応外となっている。また自由診療での処方について、日本糖尿病学会は2020年7月9日に『GLP-1受容体作動薬適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解』を発表している2)。一部引用すると、「我が国において2020年7月時点で、一部のGLP-1受容体作動薬については、健康障害リスクの高い肥満症患者に対する臨床試験が実施されていますが、その結果はまだ出ていません。したがって、2型糖尿病治療以外を適応症として承認されたGLP-1受容体作動薬は存在せず、美容・痩身・ダイエット等を目的とする適応外使用に関して、2型糖尿病を有さない日本人における安全性と有効性は確認されていません」と記されている。以前に本連載第1365回のセマグルチドの臨床試験(STEP 3)のコメントでも述べたが、リラグルチドについてもセマグルチドと同様に、日本人の非糖尿病肥満症を対象とした臨床試験で安全性や有効性が確認されれば、肥満症の治療の選択肢となる可能性があると考えられる。

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腸内細菌叢から健康状態を測れるか

 健康的な食習慣に関連する腸内細菌群は、良好な心血管代謝および食後マーカーに関連する腸内細菌群と重なることが、イタリア・トレント大学のFrancesco Asnicar氏らによって示された。疾患を持たない個人では、健康レベルごとに腸内細菌叢を階層化できる可能性があるという。Nature Medicine誌2021年2月号の報告。 腸内細菌叢は食事によって形作られ、宿主の代謝に影響を与える。しかし、これらの関連性は複雑で、個人ごとに異なると考えられている。 したがって本研究では、Personalised Responses to Dietary Composition Trial(PREDICT 1)試験に登録された1,098人を対象に1,203の腸内細菌叢のメタゲノム解析を実施し、食習慣および、空腹時と食後の心血管代謝マーカーとの関連性を分析した。 主な結果は以下のとおり。・多くの微生物は、特定の栄養素や食品、食品群、普通食の指標との間に有意な関連性を示した。・微生物とこれらとの関連性は、植物由来の健康的な食品が複数種類含まれると、より強まった。・肥満の微生物バイオマーカーは、他のコホート研究の結果を再現しており、心血管疾患におけるリスク指標の血液循環代謝物と一致していた。・Prevotella copriやBlastocystis spp.などの一部の微生物は、良好な食後糖代謝の指標であることが示された。・腸内細菌叢全体の組成は、空腹時および食後血糖、高脂血症、炎症などの心血管代謝マーカーを包括的に予測していた。

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生活習慣病に対する薬物療法の実効的カバレッジが上昇

 生活習慣病リスク因子に対する、薬物療法の実効的カバレッジ(保健システムを通して、実際に人々に健康増進をもたらすことができる割合)が上昇していることが、医薬基盤・健康・栄養研究所の池田 奈由氏らによって明らかにされた。LDLなどのコレステロール値はスタチン系薬剤によって効果的に抑えられている一方、降圧薬および糖尿病治療薬の有効性を改善するにはさらなる介入が必要だという。Journal of Health Services Research & Policy誌2021年4月号の報告。 保健システム評価指標を用い、日本における高血圧症、糖尿病および脂質異常症治療に対する健康介入の実効的カバレッジについて、その傾向を分析した。 過去15回にわたる国民健康・栄養調査(2003~17年)から、40~74歳の9万6,863人の横断的データを取得した。高血圧症、糖尿病および脂質異常症の治療必要性は、診断基準値と同等以上のバイオマーカーを示すこと、または投薬があるかどうかで規定した。投薬治療を受けた患者において、実際にバイオマーカーが低下する見込みのある割合を治療効果および実効的カバレッジとして定義し、最近傍マッチングにて推定した。 主な結果は以下のとおり。・2003~17年における年齢調整罹患率は、およそ高血圧症40%、糖尿病7%、脂質異常症33%のまま推移した。・2013~17年に治療された患者における平均治療効果は、収縮期血圧14.8mmHg(95%信頼区間:14.2~15.4)低下、HbA1c 1.2%ポイント(0.8~1.6)低下、非高密度リポタンパク質コレステロール57.9mg/dL(56.6~59.2)低下であった。・2003~07年における実効的カバレッジ(高血圧症:48.4%[44.7~52.0]、糖尿病:43.8%[35.7~51.8]、脂質異常症:86.3%[83.1~89.5])に対し、2013~17年(高血圧症:76.2%[74.2~78.2]、糖尿病:74.7%[71.0~78.5]、脂質異常症:94.6%[93.3~95.9])では、有意に上昇していた。

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新型コロナ変異株感染者の特徴は?/国立国際医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の変異株の勢いが止まらない。日々の報道でも変異株の置き換わりについて耳にしない日はなく、早急な対応がなされつつある。そんな状況の中で、臨床の場で疫学的にはどのような動きがあるのだろうか。 国立国際医療研究センターは、国立感染症研究所と共同調査した「新型コロナウイルス感染症(新規変異株)の積極的疫学調査(第1報)」を4月27日開催のメディアセミナーで報告を行った。 セミナーでは、COVID-19の届出がされた24万2,373例のうちゲノム解析で変異株と同定された380例から協力が得られた110例の結果が、大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター 国際感染症センター長)により報告された。置き換わりの変異株の大多数がVOC-202012/01 本調査は、厚生労働省の協力依頼として行われ、2021年4月15日時点の状況を報告している。調査対象は、「COVID-19の患者」「ゲノム検査で変異株確定者」「COVID-19等情報把握・管理支援システムで報告された患者」「国内の医療機関に入院した患者」の4つの条件をすべて満たす患者で、110例について検討が行われた。 その結果、男性は52例、女性は58例だった。年齢の中央値は42(27-63)歳、年齢分布では10歳未満(18.2%)、30代(16.4%)、40代(15.5%)の順で多かった。 確定したウイルス株の内訳としては、VOC-202012/01(いわゆる英国株)が105例、501Y.V2(いわゆる南アフリカ株)で4例、501Y.V3(いわゆるブラジル株)で1例だった。 BMIの中央値は21.5、曝露歴では家族が47例、職場と保育・教育関連施設がともに14例だった。 発症から初診までの期間の中央値は1(0-3)日、発症から診断までの期間も中央値は2(1-4)日、発症から入院までの期間の中央値は3(2-6)日であり、基礎疾患(高血圧、脂質異常症、肥満など)を有した症例は31症例だった。 入院時の有症状者は91例、主な症状では発熱(44例)、咳嗽(42例)、倦怠感(27例)などがみられ、入院時の画像検査では胸部X線検査所見ありが28例、胸部CT検査所見ありが49例だった。変異株重症化割合は5.5% 治療では、COVID-19への直接治療が40例で行われ、内訳としてステロイド24例、レムデシビル21例、ファビピラビル10例の順で多かった。また、抗血栓・抗凝固療法としては予防目的で13例、治療目的で2例が行われた。酸素投与などでは、鼻カニューレまたはマスクが一番多く21例、ネーザルハイフローが8例、人工呼吸器管理が3例、体外式膜型人工肺(ECMO)装着が1例だった。 ICU治療は5例で、滞在期間中央値は12(8-13)日、予後では自宅退院が98例、死亡が1例だった。 以上から調査対象の大多数がVOC-202012/01であり、年齢層の中心が比較的若年層であったこと、ICUでの治療や人工呼吸器などによる治療を行った重症例6例は、全例がVOC-202012/01であり、重症化割合は約5.5%だったことが説明された。 大曲氏は、今回の調査につき「調査対象が限定的であり、重症化割合に与える影響因子の調整を行っていないなどの理由から、重症化割合が従来株の症例より高いかどうかの結論付けは困難」と考察を述べ、説明を終えた。

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アントラサイクリン心筋症 見つかる時代から見つける時代へ【見落とさない!がんの心毒性】第2回

連載の第1回では、循環器医ががん医療に参画し始めた背景について向井先生が解説しました。第2回ではアントラサイクリン心筋症・心不全にも新たなアプローチが求められていることについて、大倉が解説します。重篤な心不全で見つかる時代から、そうなる前に見つける時代になったことを感じていただければ幸いです。アントラサイクリンによる心不全は3回予防できるドキソルビシンが1975年にわが国で使われ始めて、もうすぐ半世紀が経とうとしています。よく効くので、今尚がん医療の現場で広く使われています。心毒性があるため心機能異常またはその既往歴のある患者には禁忌です。とはいえ心臓病でもアントラサイクリンを使わざるを得ない状況は患者の高齢化とともに増加傾向にあります。献身的ながん医療の成果が10年生存率の改善(58.3%)という形で表れています。一方、一部のアントラサイクリン使用患者では、心毒性により化学療法を中断したり、QOL(生活の質)が損なわれたりしています。心不全で亡くなることもあります。循環器医は“アントラサイクリンによる心不全は早期発見で3回予防できる”と考えています。(1)心機能の低下予防 (2)心不全の発症予防 (3)慢性心不全の増悪予防の3回です(図)。実際のところ、がん医療の現場でこの考え方はあまり共有されていません。そのため1回も予防されずに重症化した心不全がん患者を診ることもあります。(図)心不全の進展ステージとアントラサイクリン心筋症の予防機会画像を拡大する2021年3月、“脳卒中と循環器病対策基本法”の行動計画の核心である脳卒中と循環器病克服第二次5ヵ年計画が公表されました1)。心不全は重要3疾患の1つに掲げられ、悪性腫瘍に合併する心不全の管理も重点項目として指定されました。“心不全は予防と早期発見”という考えが国民に向けて発信されることで、がん医療にも徐々に馴染んでゆくものと思われます。発生率と危険因子アントラサイクリンによる心機能障害は用量依存性に発生します。ドキソルビシン換算で累積投与量が 400 mg/m2で3~5%、550 mg/m2で7~26%、700 mg/m2で18~48%に起こります2)。累積投与量以外にも、65歳以上の高齢者、小児、胸部・縦隔への放射線照射、トラスツズマブなど心毒性を有する他の薬剤の使用、基礎心疾患の既往や合併、心血管リスク(喫煙、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、肥満)の合併などで、起こりやすくなるため注意が必要です。この段階で併存心疾患や心血管リスクを治療し心機能低下を予防します3)(図:1回目の予防)。近年、ゲノムワイド関連解析(GWAS:genome-wide association study)により、拡張型心筋症の原因となる遺伝子変異の一つで、サルコメア蛋白のタイチンをコードする遺伝子の切断型変異(Titin-truncating variants)があると、アントラサイクリンの心毒性に対して脆弱になることが報告されました4)。5ヵ年計画にはファーマコゲノミクス(PGx)の推進が盛り込まれており、抗がん薬の心毒性に関与する遺伝子を5年間に2個同定しようとしています。Onco-cardiologyの分野でもゲノム医療が始まろうとしています1)。心毒性の機序アントラサイクリンは一部の患者に不可逆的な心筋障害を起こします。失われた心筋細胞が復活することはありません。ミトコンドリアの鉄の蓄積と活性酸素の過剰な産生を惹起し、ミトコンドリアや細胞内小器官が障害されます。DNAの修復に欠かせないトポイソメラーゼIIβを阻害し、DNA二重鎖切断とアポトーシスを誘導します。心筋細胞の恒常性に欠かせない周囲の血管内皮細胞も障害され、後々の心筋細胞の適応性や生存性の低下に繋がります。心筋の線維芽細胞や前駆細胞も複雑に関与しています4)5)。経過・治療古典的には心毒性は急性、慢性早期、慢性晩期に分類されていました(表1)。(表1)アントラサイクリンによる心毒性の古典的な臨床分類画像を拡大する現在では、詳細な経過観察により、心筋細胞レベルの障害が最初に起きて、それが潜在進行性の心機能低下を惹起し、代償機転が破綻して心不全に至るという連続性が確認されています。心不全を起こす患者では、アントラサイクリン投与後に、血清トロポニンが一過性に上昇し、左室駆出率(LVEF)が低下します。心保護薬で治療すると、ほとんどの患者でLVEFは不完全ながら回復傾向を示しますが、一部の患者はLVEFが悪化して、心不全を発症します。Cardinaleらによれば、アントラサイクリン投与後に9%の患者に心毒性(LVEF50%未満への低下)が認められました。心毒性の98%は化学療法終了後1年以内(中央値3.5ヵ月)に現れました。エナラプリルとカルベジロールで治療をすると82%に回復傾向を認めました6)。無症候性心機能低下(図:ステージB)のうちに発見し、心保護薬で予防をすることで悪化を食い止め、心不全(図:ステージC)を予防できます(図:2回目の予防)。そのため、ここでの介入が最も効果的と考えられています。しかし、この予防機会を失えば、心不全を発症します。こうなると、非可逆的な心筋障害であるため、治療に難渋し、ステージDへの進行を防げない可能性があります。潜在患者の早期発見に有用な検査定期的に全員に心エコーをすれば早期発見は可能ですが、医療資源は限られているため、ハイリスク群を優先することが欧米の腫瘍学会でコンセンサスを得ています(表2)。(表2)最新ガイドラインに見るアントラサイクリン使用に関連した強い推奨[A、B]画像を拡大するリスクの層別化には、アントラサイクリン治療後のトロポニン測定に期待が寄せられています。上昇しない患者はその後の心不全が起きにくいことが分かっており、心エコーの頻度を減らすことができます7)。一方、上昇し、その後も上昇が持続する患者では、心不全が起きやすいため、心保護薬を開始したり、心エコーの頻度を増やしたりします。わが国の保険制度ではそのようなトロポニンの使われ方は認められておりません。採血のタイミングやカットオフ値の標準化については今なお研究段階です。アントラサイクリン治療を終えて数ヵ月以上経過している患者の心不全の早期発見は、危険因子による層別化や、BNPやNT-proBNPによる補助診断に頼ることになります。フラミンガムの一般住民を対象にした疫学調査によると、BNP はLVEF40%以下の心機能低下に対する感度は良好でしたが、LVEF50%前後に対してはよくありませんでした8)。ステージBの中でもCに近い患者の検出には使えそうです。BNP検査によるアントラサイクリン心筋症の早期発見については、小児やAYA世代のがんサバイバーでの有用性については否定的な報告があります9)。それでも特性を理解すれば、たいへん便利な検査ですので、BNP検査については正書や学会ホームページをご覧ください10)11)。心エコーでは、無症候性心機能低下(ステージB)の中で、更に早い段階の異常を捉えようとしています。スペックルトラッキング法を用いたGlobal longitudinal strain (GLS)は、薬剤性心筋障害をLVEFよりも早期に感度良く検出できるようです。欧米の腫瘍学会ガイドラインでも測定を推奨していますが、人間の感覚を超えた領域なので慣れるのに時間がかかりそうです12)。心機能低下はがん治療終了後1年以内に始まるので、半年後と1年後の心エコーを推奨していますが、異常を見落としたり、その後に異常が明らかになることもあるため、その後のフォローも欠かせないでしょう。フォローの内容や間隔については、危険因子が多いほど綿密にします。なぜ重症化してから見つかるのか?「患者や医師が、息切れ、むくみ、疲れ易さを、がんのせいと勘違いする」「医師や薬剤師が累積使用量の上限を超えなければ心不全は起きないだろうと油断もしくは勘違いする」「がん治療が済んで患者がフォローアップされなくなる」「フォローされてもクリニックの先生方と心不全への懸念が共有されない」などが原因で、発見が遅れ重症化の引き金になると考えられます。慢性晩期のアントラサイクリン心筋症には、認識不足や連携の脆弱さといった医療システムの問題が少なからず関係しています。心不全全般に言えることですが、脳卒中や心筋梗塞や糖尿病と比べ、心不全についての認知度が低いことは、かなり前から指摘されており世界共通の課題でした13)。アントラサイクリンで治療した患者に、心不全のセルフチェックを促すには、心不全についての知識の普及が肝要です。心不全発症に早めに気づいて治療することで重症化が予防できます(図:3回目の予防)。今、試されるチーム力最新のESMOガイドライン2020では“がんサバイバーから目を離すな”とうたっています。アントラサイクリンで治療した乳がん患者で薬剤性心筋障害を起こすのは、3~6%程度ですが、軽んずることなく解決への道を開けば、将来の患者の利益になります。院内ではがん診療科と多職種の連携が解決への糸口となり14)、晩期障害の早期発見にはクリニックの先生方の協力が不可欠です。地域医療への知識の普及には、大学や医師会の役割りが大きいです。システムの問題が心不全に関与しているのならば、システムを修正すれば良いのです。心不全についての知識は一般の方には伝わりにくいことが世界共通の課題ですが、“脳卒中と循環器病対策基本法”の下、行政による後押しで国民への啓蒙が始まろうとしています。高齢化に伴い、がん患者の心臓病が増加しています15)。がんと心不全の古くからの関係は新しい時代を迎えました。1)日本脳卒中学会・日本循環器学会編. 脳卒中と循環器病克服第二次5ヵ年計画 ストップCVD(脳心血管病)健康長寿を達成するために. 20212)Zamorano JL, et al. Eur Heart J. 2016;37:2768-2801.3)日本腫瘍循環器学会編集委員会編. 腫瘍循環器診療ハンドブック. メジカルビュー社;2020.p10-11.(赤澤 宏 心機能障害/心不全 アントラサイクリン系薬剤)4)Garcia-Pavia P, et al. Circulation. 2019;140:31-41.5)Kadowaki H, et al. Circ J. 2020;84:1446-1453.6)Cardinale D, et al. Circulation. 2015;131:1981-1988.7)Cardinale D, et al. 2004;109:2749-2754.8)Vasan RS, et al. JAMA. 2002; 288:1252-1259.9)Michel L, et al. ESC Heart Fail. 2020;7:423-433.10)猪又孝元ほか The Manual心不全のセット検査. メジカルビュー社;2019.11)日本心不全学会:血中BNPやNT-proBNP値を用いた心不全診療の留意点について12)日本心エコー図学会編.抗がん剤治療関連心筋障害の診療における心エコー図検査の手引13)Okura Y, et al. J Clin Epidemiol. 2004;57:1096-1103.14)日本腫瘍循環器学会編集委員会編. 腫瘍循環器診療ハンドブック. メジカルビュー社;2020.p.176-178.(大倉 裕二、吉野 真樹 腫瘍循環器診療における連携のコツと工夫 多職種連携)15)Okura Y, et al. Int J Clin Oncol. 2019;24:983-994.講師紹介

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ケアネットDVD 2021年6月以降のお取り扱い商品につきまして【2024年3月14日 更新】

DVDインデックスページへ戻る日頃よりケアネットDVDをご愛顧いただきありがとうございます。このたび弊社では、ケアネットDVDの個人向けの販売方法を変更する運びとなりました。2021年6月以降につきましては、Amazon.co.jpにて販売させていただきます。なお、一部商品につきましてはDVD販売が終了となるものもございますので、詳細は下記をご参照ください。DVD販売が終了した商品も、臨床医学チャンネル『CareNeTV』にて引き続きオンデマンド配信(有料)を行っておりますので、こちらをぜひご利用ください。今後ともCareNeTV、ケアネットDVDをご愛顧のほどお願い申し上げます。本件に関する問い合わせは、お問い合わせフォーム までお願いいたします。※下記の一覧は、2024年3月14日時点のものです。※販売を継続するタイトル一覧にある商品でも、弊社の在庫がなくなりしだい販売終了となる場合がございます。何卒ご了承ください。販売を継続するタイトル  販売を終了するタイトル販売を継続するタイトルCND0002 平本式 皮膚科虎の巻<上巻>CND0003 平本式 皮膚科虎の巻<下巻>CND0008 Dr.東田の今さら聞けない病態生理<上巻>CND0009 Dr.東田の今さら聞けない病態生理<下巻>CND0010 明解!Dr.浅岡の楽しく漢方 <第1巻>CND0011 明解!Dr.浅岡の楽しく漢方 <第2巻>CND0012 明解!Dr.浅岡の楽しく漢方 <第3巻>CND0013 明解!Dr.浅岡の楽しく漢方 <第4巻>CND0014 明解!Dr.浅岡の楽しく漢方 <第5巻>CND0015 明解!Dr.浅岡の楽しく漢方 <第6巻>CND0019 チャレンジ!超音波走査<上巻>CND0020 チャレンジ!超音波走査<下巻>CND0028 マッシー池田の神経内科快刀乱麻!<上巻>CND0030 マッシー池田の神経内科快刀乱麻!<下巻>CND0033 骨太!Dr.仲田のダイナミック整形外科<下巻>CND0039 Dr.林の笑劇的救急問答 1 <上巻>CND0044 もう迷わない!好きになる心電図<下巻>CND0045 Dr.岩田の感染症アップグレード<第1巻>CND0046 Dr.岩田の感染症アップグレード<第2巻>CND0047 Dr.岩田の感染症アップグレード<第3巻>CND0048 Dr.岩田の感染症アップグレード<第4巻>CND0049 Dr.さわやまの心音道場<上巻>CND0052 Step By Step!初期診療アプローチ<第1巻>/疼痛(前編)CND0053 Step By Step!初期診療アプローチ<第2巻>/疼痛(後編)CND0054 Dr.古谷の実践!ザ・診察教室<上巻>CND0055 Dr.古谷の実践!ザ・診察教室<下巻>CND0056 Dr.林の笑劇的救急問答 2 <上巻>CND0057 Dr.林の笑劇的救急問答 2 <下巻>CND0058 Dr.林の笑劇的救急問答 3 <上巻>CND0059 Dr.林の笑劇的救急問答 3 <下巻>CND0060 "の"の字2回走査法で出来る!超音波手技大原則<第1巻>CND0061 "の"の字2回走査法で出来る!超音波手技大原則<第2巻>CND0063 mの字走査法で出来る!乳腺超音波手技大原則CND0064 Dr.浅岡のもっと楽しく漢方!<第1巻>CND0065 Dr.浅岡のもっと楽しく漢方!<第2巻>CND0066 Dr.浅岡のもっと楽しく漢方!<第3巻>CND0067 Dr.浅岡のもっと楽しく漢方!<第4巻>CND0068 Dr.浅岡のもっと楽しく漢方!<第5巻>CND0071 Step By Step!初期診療アプローチ<第3巻>/神経(前編)CND0072 Step By Step!初期診療アプローチ<第4巻>/神経(後編)CND0082 Dr.夏井の創傷治療大革命CND0088 Dr.岸本の関節ワザ大全<第1巻>CND0089 Dr.岸本の関節ワザ大全<第2巻>CND0090 Dr.岸本の関節ワザ大全<第3巻>CND0101 Dr.須藤のやりなおし輸液塾<上巻>CND0102 Dr.須藤のやりなおし輸液塾<下巻>CND0103 Step By Step!初期診療アプローチ<第5巻>/呼吸器CND0104 Step By Step!初期診療アプローチ<第6巻>/消化器CND0105 Dr.林の笑劇的救急問答 4 <上巻>CND0106 Dr.林の笑劇的救急問答 4 <下巻>CND0107 Dr.鈴木の眼底検査完全マスターCND0114 内科医のための精神科的対応“自由自在”<上巻>CND0115 内科医のための精神科的対応“自由自在”<下巻>CND0123 Step By Step!初期診療アプローチ<第7巻>/マイナー症候CND0129 Dr.林の笑劇的救急問答 5 <上巻>CND0130 Dr.林の笑劇的救急問答 5 <下巻>CND0134 出直し看護塾<第1巻>CND0135 出直し看護塾<第2巻>CND0140 Dr.坂根のなるほど!納得!ダイエット!CND0143 ワクワク ! 臨床英会話<上巻>CND0144 ワクワク ! 臨床英会話<下巻>CND0150 Dr.林の笑劇的救急問答 6 <上巻>CND0151 Dr.林の笑劇的救急問答 6 <下巻>CND0154 聖路加GENERAL 【心療内科】CND0155 聖路加GENERAL 【神経内科】CND0156 聖路加GENERAL 【がん検診】CND0157 聖路加GENERAL 【一般診療に役立つ腫瘍内科学】CND0158 聖路加GENERAL 【内分泌疾患】<上巻>CND0159 聖路加GENERAL 【内分泌疾患】<下巻>CND0161 人のハいで読める! 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CND0262 Dr.大山のがんレク!すべての医療者に捧ぐがん種別薬物療法講義(上巻)CND0263 Dr.大山のがんレク!すべての医療者に捧ぐがん種別薬物療法講義(下巻)CND0265 Dr.林の笑劇的救急問答 13<上巻>CND0266 Dr.林の笑劇的救急問答 13<下巻>CND0267 Dr.徳田のすぐできるフィジカル超実技CND0268 プライマリ・ケアの疑問 Dr.前野のスペシャリストにQ!【整形外科編】CND0269 Dr.志賀のパーフェクト!基本手技 CND0270 志水太郎の診断戦略エッセンス CND0271 民谷式 内科系試験対策ウルトラCUE Vol.1CND0272 民谷式 内科系試験対策ウルトラCUE Vol.2CND0273 民谷式 内科系試験対策ウルトラCUE Vol.3CND0274 Dr.長尾の胸部X線クイズ 初級編 CND0275 Dr.長尾の胸部X線クイズ 中級編 CND0276 長門流 総合内科専門医試験MUST!2018 Vol.1CND0277 長門流 総合内科専門医試験MUST!2018 Vol.2CND0278 長門流 総合内科専門医試験MUST!2018 Vol.3CND0279 Dr.小松のとことん病歴ゼミCND0282 Dr.岡の感染症プラチナレクチャー 市中感染症編(上下巻2枚組)CND0283 肩腰膝の痛みをとる Dr.究のあなたもできるトリガーポイント注射 CND0284 Dr.須藤のやり直し酸塩基平衡 CND0285 Dr.長尾の胸部X線クイズ 上級編 CND0286 志水太郎の診断戦略ケーススタディCND0287 Dr.林の笑劇的救急問答 14<上巻>CND0288 Dr.たけしの本当にスゴい高齢者身体診察CND0289 プライマリ・ケアの疑問 Dr.前野のスペシャリストにQ!【精神科編】CND0290 Dr.安部の皮膚科クイズ 初級編CND0291 Dr.林の笑劇的救急問答14<下巻>CND0292 毎日使える 街場の血液学CND0293 Dr.白石のLet's エコー 運動器編CND0294 一発診断CND0295 Dr.林の笑劇的救急問答15<上巻>CND0296 Dr.岡の感染症プラチナレクチャー 医療関連感染症編CND0297 Dr.飯島の在宅整形CND0298 岡田正人のアレルギーLIVECND0299 Dr.皿谷の肺音聴取道場CND0300 Dr.林の笑劇的救急問答15<下巻>CND0301 Dr.増井の心電図ハンティングCND0302 Dr.長門の5分間ワクチン学CND0303 Dr.安部の皮膚科クイズ 中級編CND0304 プライマリ・ケアの疑問 Dr.前野のスペシャリストにQ!【糖尿病・内分泌疾患編】CND0305 Dr.水谷の妊娠・授乳中の処方コンサルトCND0306 Dr.飯村の英語の発音が劇的に変わるトレーニングCND0307 Dr.田中和豊の血液検査指南 総論・血算編CND0308 脳血管内治療STANDARDCND0309 Dr.林の笑劇的救急問答16<上巻> 肺炎編CND0310 Dr.安部の皮膚科クイズ 上級編CND0311 Dr.須藤の輸液大盤解説CND0312 総合内科専門医試験オールスターレクチャー アレルギーCND0313 総合内科専門医試験オールスターレクチャー 血液CND0314 総合内科専門医試験オールスターレクチャー 呼吸器CND0315 総合内科専門医試験オールスターレクチャー 神経CND0316 総合内科専門医試験オールスターレクチャー 内分泌・代謝CND0318 Dr.林の笑劇的救急問答16<下巻> 皮膚科救急編CNPA003 Dr.東田の病態生理学 自由自在!【糖尿病編】CNPA004 Dr.東田の病態生理学 自由自在!【循環器編】1CNPA005 Dr.東田の病態生理学 自由自在!【循環器編】2ページTOPへ販売を終了するタイトルCND0006 Dr.名郷のコモンディジーズ常識のウソ/高脂血症篇 <上巻>CND0007 Dr.名郷のコモンディジーズ常識のウソ/高脂血症篇 <下巻>CND0026 Dr.箕輪の実戦救急指南CND0027 実践!Dr.鳥谷部の How to ラップ療法-注目の新しい褥創治療-CND0029 Dr.名郷のコモンディジーズ常識のウソ <ルーチンの落とし穴>CND0032 骨太!Dr.仲田のダイナミック整形外科<上巻>CND0035 激辛!伊賀流心臓塾<第2巻>CND0036 激辛!伊賀流心臓塾<第3巻>CND0037 小三J読影法でわかる!Dr.佐藤の胸部写真の楽しみ方<上巻>CND0038 小三J読影法でわかる!Dr.佐藤の胸部写真の楽しみ方<下巻>CND0041 みんなの症候診断<上巻>CND0042 みんなの症候診断<下巻>CND0043 もう迷わない!好きになる心電図<上巻>CND0050 Dr.さわやまの心音道場<下巻>CND0051 Dr.名郷のコモンディジーズ常識のウソ <必ず遭遇する壁>CND0062 "の"の字2回走査法で出来る!超音波手技大原則<第3巻>CND0069 亀井道場スーパーライブ 臨床呼吸器ブラッシュアップ<上巻>CND0070 亀井道場スーパーライブ 臨床呼吸器ブラッシュアップ<下巻>CND0073 Dr.岩田のスーパー大回診<上巻>CND0074 Dr.岩田のスーパー大回診<下巻>CND0077 褥創治療最前線!Dr.鳥谷部の超ラップ療法CND0078 激辛!伊賀流心臓塾<第4巻>CND0079 ケイコ先生の肺ガン読影講座CND0081 ジェネラリストのための他科診療エッセンスQ&A II―整形外科、心療内科CND0083 Dr.岡田のアレルギー疾患大原則<第1巻>CND0084 Dr.岡田のアレルギー疾患大原則<第2巻>CND0085 Dr.岡田のアレルギー疾患大原則<第3巻>CND0086 Dr.齋藤のハワイ大学式スーパートレーニング<上巻>CND0087 Dr.齋藤のハワイ大学式スーパートレーニング<下巻>CND0091 ジェネラリストのための内科外来Q&A -不整脈-CND0092 ジェネラリストのための内科外来Q&A -脳梗塞-CND0093 ジェネラリストのための内科外来Q&A -腎疾患-CND0094 ジェネラリストのための内科外来Q&A -消化性潰瘍-CND0095 カスガ先生の精神科入門[負けるが勝ち!]<上巻>CND0096 カスガ先生の精神科入門[負けるが勝ち!]<下巻>CND0097 Dr.須藤のビジュアル診断学<第1巻>CND0098 Dr.須藤のビジュアル診断学<第2巻>CND0099 Dr.須藤のビジュアル診断学<第3巻>CND0108 USA発!関節X線ASBCD<上巻>CND0109 USA発!関節X線ASBCD<下巻>CND0110 Dr.岡田の膠原病大原則<第1巻>CND0111 Dr.岡田の膠原病大原則<第2巻>CND0112 Dr.岡田の膠原病大原則<第3巻>CND0113 一般医療機関における暴言・暴力の予防と対策CND0116 チーム医療レベルアップ 糖尿病セミナー<第1巻>CND0117 チーム医療レベルアップ 糖尿病セミナー<第2巻>CND0118 チーム医療レベルアップ 糖尿病セミナー<第3巻>CND0119 T&A 動きながら考える救急初療<上巻>CND0120 T&A 動きながら考える救急初療<下巻>CND0124 Dr.岩田のFUO不明熱大捜査線<第1巻>CND0125 Dr.岩田のFUO不明熱大捜査線<第2巻>CND0126 Dr.岩田のFUO不明熱大捜査線<第3巻>CND0127 Dr.岩田のFUO不明熱大捜査線<第4巻>CND0128 Dr.岡田のみんなの関節リウマチ診療CND0131 リウマチ膠原病セミナー<第1巻>CND0132 リウマチ膠原病セミナー<第2巻>CND0133 リウマチ膠原病セミナー<第3巻>CND0138 チーム医療レベルアップ 糖尿病セミナー<第4巻>CND0139 チーム医療レベルアップ 糖尿病セミナー<第5巻>CND0141 Dr.能登のもう迷わない!臨床統計ここが知りたい!!<上巻>CND0142 Dr.能登のもう迷わない!臨床統計ここが知りたい!!<下巻>CND0145 外傷治療ベーシックCND0146 Dr.安田のクリアカット腎臓学<上巻>CND0147 Dr.安田のクリアカット腎臓学<下巻>CND0152 北米式☆プレゼンテーション上達ライブCND0153 北米式臨床力強化プログラム Vol.1CND0160 プライマリケアでよく見る精神症状の診方と対応のコツCND0163 Dr.中野のこどものみかたNEOCND0166 リウマチ膠原病セミナー<第4巻>CND0172 チーム医療レベルアップ 糖尿病セミナー<第6巻>CND0182 激辛!伊賀流心臓塾<第1巻> 増補改訂版CND0194 さわやま流 音楽的聴診術<上巻>CND0195 さわやま流 音楽的聴診術<下巻>CND0199 Dr.山中の攻める問診<上巻>CND0200 Dr.山中の攻める問診<下巻>CND0201 CliPS -Clinical Presentation Stadium- @TOKYO2013CND0204 Dr.ゴン流ポケットエコー簡単活用術CND0209 Dr.ハギーの関節リウマチ手とり足とり<早期介入編>CND0210 Dr.ハギーの関節リウマチ手とり足とり<長期罹患編>CND0215 ひと・身体をみる認知症医療CND0219 Dr.山田のゆるい糖質制限 -医学的根拠と実践方法-CND0234 Dr.松崎のここまで!これだけ!うつ病診療CND0241 総合内科専門医試験対策 【アップデート問題はココが出る!】 2016CND0242 総合内科専門医試験対策 【“苦手”科目をクイック復習】 2016CND0254 無敵の研修医ストレスマネジメントCND0255 長門流 認定内科医試験BINGO!総合内科専門医試験エッセンシャル Vol.1CND0256 長門流 認定内科医試験BINGO!総合内科専門医試験エッセンシャル Vol.2CND0257 長門流 認定内科医試験BINGO!総合内科専門医試験エッセンシャル Vol.3CND0264 国立国際医療研究センター総合診療科presents 内科インテンシブレビュー2017(2枚組)CND0280 Dr.岡の感染症プラチナレクチャー 市中感染症編(上巻) CND0281 Dr.岡の感染症プラチナレクチャー 市中感染症編(下巻)ページTOPへ

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統合失調症患者の抗精神病薬誘発性脂質異常症に対する薬理学的介入~メタ解析

 抗精神病薬誘発性脂質異常症は、統合失調症患者で一般的にみられる副作用であり、代謝性合併症や心血管疾患の発症リスクを高める可能性がある。このような問題があるにもかかわらず、抗精神病薬誘発性脂質異常症に対する治療は十分でなく、脂質異常症を軽減するための薬理学的介入の有効性は、十分に評価されていない。カナダ・ウォータールー大学のPruntha Kanagasundaram氏らは、統合失調症患者の脂質異常症を軽減するための薬理学的介入の有用性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2021年3月17日号の報告。 Medline、PsychInfo、EMBASEより、1950~2020年11月に英語で公表されたランダム化プラセボ対照試験を検索した。主要アウトカムは、治療群とプラセボ群におけるトリグリセライド、HDLコレステロール、LDLコレステロール、VLDLコレステロールの変化とした。 主な結果は以下のとおり。・ランダム化比較試験48件(3,128例)を特定し、29件の薬理学的介入について調査した。・全体として、薬理学的介入により、HDLコレステロールレベルは上昇し、LDLコレステロール、トリグリセライド、総コレステロールレベルは低下した。・治療群のサブグループでは、承認されている脂質異常症治療薬では、総コレステロール以外の脂質パラメータを低下させなかった。一方、抗精神病薬の切り替えや追加投与により、トリグリセライド、LDLコレステロール、HDLコレステロール、総コレステロールを含む複数の脂質パラメータの改善が認められた。・適応外の脂質異常症治療薬では、トリグリセライド、総コレステロールレベルの改善が認められ、メトホルミンにおいて、統計学的に有意な変化が認められた。 著者らは「現在利用可能な脂質異常症治療薬は、抗精神病薬で治療されている統合失調症患者では、効果が不十分な可能性がある。また、抗精神病薬の切り替えや追加投与および特定の適応外の脂質異常症治療薬による介入は、一部の脂質パラメータに対する改善効果が期待できる。今後の研究により、抗精神病薬誘発性脂質異常症を効果的にマネジメントするための新たな介入の発見が望まれる」としている。

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総合内科専門医試験オールスターレクチャー 内分泌・代謝

第1回 糖尿病(1)第2回 糖尿病(2)第3回 下垂体疾患 副甲状腺疾患 骨粗鬆症第4回 甲状腺疾患第5回 代謝性疾患第6回 副腎疾患 二次性高血圧 総合内科専門医試験対策レクチャーの決定版登場!総合内科専門医試験の受験者が一番苦労するのは、自分の専門外の最新トピックス。そこでこのシリーズでは、CareNeTV等で評価の高い内科各領域のトップクラスの専門医を招聘。各科専門医の視点で“出そうなトピック”を抽出し、1講義約20分で丁寧に解説します。キャッチアップが大変な近年のガイドラインの改訂や新規薬剤をしっかりカバー。Up to date問題対策も万全です。内分泌・代謝については、聖路加国際病院内分泌代謝科の能登洋先生がレクチャーします。糖尿病、脂質異常症、高尿酸症といった代謝性疾患は、それぞれの診断基準となる数値をきちんと把握し、適切な治療でコントロールすることが大切です。内分泌疾患は、内分泌系の仕組みを総合的に捉え、各ホルモンの作用と、多岐にわたる疾患の特徴を押さえます。※「アップデート2022追加収録」はCareNeTVにてご視聴ください。第1回 糖尿病(1)内分泌・代謝の第1回は、糖尿病の病態と診断について解説します。糖尿病には、1型、2型、その他、妊娠糖尿病の4つの病型があり、血糖値とHbA1cの数値、既往歴から鑑別します。急激な高血糖によって引き起こされる糖尿病性ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖状態、あるいは過度の治療による低血糖。命にかかわることもあるため、試験でよく問われるテーマです。第2回 糖尿病(2)内分泌・代謝の第2回は、糖尿病の治療について解説します。治療のポイントは、多様な薬剤の使い分け。各治療薬の作用機序、効果と副作用、禁忌事項を確認します。インスリン療法で重要なのが、用量調節の際の責任インスリンという概念。妊娠糖尿病は、胎児への影響を考慮して、通常の糖尿病よりも診断基準が厳しく、血糖コントロール目標値を厳格に管理することが推奨されています。第3回 下垂体疾患 副甲状腺疾患 骨粗鬆症さまざまなホルモンを分泌する下垂体。初めにホルモンの種類と全身の標的器官を押さえます。下垂体ホルモンの過剰分泌や分泌低下によって引き起こされる各疾患も要チェック。副甲状腺ホルモン疾患の鑑別には、カルシウムとリンの値に注目します。骨粗鬆症は、一般的に加齢により発症しますが、内分泌疾患、薬物、糖尿病など、特定の誘因によって発症する場合もあります。骨粗鬆症の各治療薬について、機序と使用法を確認します。第4回 甲状腺疾患内分泌・代謝の第4回は、甲状腺疾患について解説します。バセドウ病、亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎、プランマー病など、複数の疾患に起因する甲状腺中毒症。この甲状腺中毒症が重症化した甲状腺クリーゼは、致死率が高いので要注意。甲状腺機能低下症の代表的な疾患は、橋本病、粘液水腫性昏睡です。甲状腺腫瘍について、最新のガイドラインにおける治療方針を確認します。第5回 代謝性疾患脂質異常症の診断基準は、LDL-C、HDL-C、中性脂肪を数値別にチェック。総コレステロールから善玉コレステロールを除いた”non-HDL-C”という新たな指標が注目されています。幼少期から動脈硬化性疾患を起こす原発性高コレステロール血症の治療には、PCSK-9阻害薬が近年効果を発揮しています。高齢者の場合は、過度な減量は禁物。軽い肥満の方が死亡リスクを下げます。高尿酸血症は、原因疾患と合併症の有無によって治療薬の使い分けがポイントです。第6回 副腎疾患 二次性高血圧副腎から産出分泌されるホルモンには、アルドステロン、コルチゾール、カテコルアミンがありますが、副腎に腫瘍ができてホルモンが過剰分泌されると、原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫、パラガングリオーマといった疾患が引き起こされます。内分泌疾患により発症する二次性高血圧は、原因疾患を治療することで改善できます。各疾患に関わるホルモン、注目すべき検査所見、鑑別診断、治療の流れを確認します。

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抗肥満薬としてのGLP-1受容体作動薬セマグルチドの有効性(解説:住谷哲氏)-1375

 高血圧、高脂血症および2型糖尿病などの生活習慣病の多くは肥満と関連している。さらに肥満を改善すれば高血圧、高脂血症および2型糖尿病の改善がみられることも少なくない。高血圧には降圧薬、高脂血症にはスタチンやフィブラート製剤、2型糖尿病には血糖降下薬が使用可能であるが、肥満に対する治療薬としてわが国で認可されているのは食欲抑制剤としてのマジンドール(商品名:サノレックス)のみである。肥満大国の米国ではこれに加えて、腸管からの脂肪吸収を抑制するリパーゼ阻害薬であるorlistat(商品名:Xenical)、中枢神経系に作用するphentermine/topiramate(商品名:Qsymia)、naltrexone/bupropion(商品名:Contrave)も販売されているがいずれも副作用が問題で長期使用できる薬剤ではない。 インクレチン関連薬であるGLP-1受容体作動薬は血糖降下薬として開発されたが、体重減少作用を有することから抗肥満薬として以前から注目されてきた。リラグルチドは抗肥満薬(商品名:Saxenda)としてすでにわが国以外の多くの国で認可されている。本論文はセマグルチドの抗肥満薬としての有効性と安全性を検討した国際第III相試験プログラムSemaglutide Treatment Effect in People with Obesity(STEP)の一つであるSTEP 1についての報告である。その結果は、セマグルチド2.4mgの週1回投与は68週後にプラセボと比較して約15%の体重減少をもたらした。head to head試験の結果を待つ必要があるが、SCALE試験1)で報告されたリラグルチド3.0mg投与による体重減少率はプラセボ群と比較して-4.5%であったのに対し、本試験ではプラセボ群と比較して-12.4%でありセマグルチド2.4mg投与による体重減少率がリラグルチド3.0mg投与より大きいと思われる。 Googleで「GLP-1ダイエット」と入力して検索すると249,000件がヒットした(2021年4月11日現在)。その多くは楽に痩せる注射としてGLP-1受容体作動薬を紹介している。この問題については2020年日本糖尿病学会が「GLP-1 受容体作動薬適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解」として警告を発している2)。現時点で2型糖尿病患者以外への投与は論外であるが、本剤を使用することが有益である肥満患者のためにも、わが国でも抗肥満薬としてのGLP-1受容体作動薬が認可されることを期待したい。

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