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タンパク質を含む食材は何

骨粗鬆症】【食事療法】タンパク質の入っている食材を、教えてくださいタンパク質は、骨を作るコラーゲンのもととなります。肉、魚、牛乳・乳製品、大豆・大豆製品など敬遠せず、毎日摂るように心がけましょう!監修:習志野台整形外科内科 院長 宮川一郎 氏Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.

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気を付けたい食事のポイント

【食事療法】食事のポイントについて、教えてください【骨粗鬆症】骨を作る成分、カルシウムとタンパク質を含む食品をバランスよく、規則正しく摂ることが大切です。痩せすぎは、骨粗鬆症の原因ともなりますので、無理なダイエットは止めましょう!監修:習志野台整形外科内科 院長 宮川一郎 氏Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.

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強直性脊椎炎〔AS: ankylosing spondylitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis:AS)は、脊椎関節炎(spondyloarthritis:SpA)といわれる疾患群の代表的疾患である。SpAは、(1)血清のリウマトイド因子陰性、(2)仙腸関節炎・脊椎炎および末梢関節炎があり、(3)患者はHLA-B27遺伝子を高率に保有する、という特徴を持つ。ASのほかに、反応性関節炎(reactive arthritis:ReA)、乾癬性関節炎(psoriatic arthritis: PsA)、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)に伴う関節炎、分類不能(診断未確定)脊椎関節炎(undifferentiated SpA:uSpA)などがある(図1)。SpAの関節外症状にはぶどう膜炎など眼症状、膿漏性角化症や乾癬などの皮膚症状、IBDの腸疾患などが認められる。これらの症状はヒトHLA-B27遺伝子を有するラットにも認められ、「関節‐皮膚‐眼‐腸管」に及ぶ全身性疾患であることが理解できる。画像を拡大する最近、国際脊椎関節炎評価学会(Assessment of SpondyloArthritis international Society:ASAS)の分類基準では、本疾患は体軸性脊椎関節炎(axial spondyloarthritis:ax SpA)に分類される。■ 疫学ドイツでは成人の1%に発病し、関節リウマチと同程度の率とされているが、一般的に白人では0.5%、わが国のASの有病率は約0.02~0.03%と推定される。一般人口でみたHLA-B27の保有率は地域・民族によって異なり、北欧14%、欧米8%、中国・韓国5%、日本0.3%である。このため日本人のASの頻度は少ない。男女比は3~4:1で男性に多く、90%以上が40歳以前に発症する。■ 病因仙腸関節や付着部ではTNF-αなどの炎症性サイトカインが産生される。Th17細胞が関与する。自己免疫は明らかでなく、自然免疫の関与が想定されている。HLA-B27を構成する重鎖の構造異常があり、重合して2量体を形成することによって、NK細胞、B細胞、Th17細胞などの活性を引き起し、IL-23の産生が病因として推定されている。■ 症状1)炎症性腰背部痛(inflammatory back pain:IBP)仙腸関節炎・脊椎炎の症状は、「炎症性腰背部痛」として表現される。これは50歳以下に発症し、3ヵ月以上認められる背部痛であり、(1)30分を超える朝のこわばり、(2)背部痛は運動によって改善され、安静では改善されない、(3)睡眠時間の後半(明け方)に背部痛のため起こされる、(4)右や左に移動する殿部痛の4項目の特徴を持ち、2項目が該当すれば、IBPが存在すると分類される(Berlin criteria:感度70.3%、特異度81.2%)。椎間板ヘルニアなどの機械的な背部痛(mechanical back pain)は安静で良くなり、片側性であることが鑑別になる。線維筋痛症の疼痛と比べ、IBPは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が有効という特徴がある。2)仙腸関節炎・脊椎炎仙腸関節・脊椎は体軸性関節(axial joint)と呼ばれる。仙腸関節炎・脊椎炎の典型的な臨床症状はIBPである。脊柱を中心とした身体のこわばりがあり、腰殿部痛(仙腸関節痛、坐骨関節痛)、項部痛、胸部痛が主症状である。初期には、腰背部痛の激痛発作~寛解を繰り返すことが多い。病状の進行に伴い、脊柱の可動域制限が生じ、進行例では、脊柱の強直に至る。可動域制限により脊柱は後弯傾向になり、特徴的な前傾・前屈姿勢になる。3)付着部炎(enthesitis)関節周囲の靱帯付着部(足底、大腿骨大転子、脊椎棘突起、腸骨稜、鎖骨、肋骨など)に炎症が起こり、疼痛が生じる。滑膜炎(synovitis)とは鑑別する必要がある。4)末梢関節炎全経過中に末梢関節炎は、80%以上の症例に認められる。股、肩、膝、足の順に、片側性に出現する。初発症状が末梢関節炎であることも30%の症例に認められる。5)ぶどう膜炎前部ぶどう膜炎は、約30%に認められ、再発性で、片側性である。診断時にぶどう膜炎の既往を聞くことが必要である。■ 分類これまではSpAの個々の疾患を並列に分けて論じてきたが、実際には共通した病態や症状(axial spondylitis)に着眼して生物学的製剤の治療が行えるために、ASASによって、疾患が表1のように分類される。画像を拡大する■ 予後最近の文献では、罹病後10年の生存率は100%であった。女性では罹病後38年間以内における死亡症例はない。50年後の生存率は男性61%、女性77%であり、女性のほうが生命予後は良好であった。死因は(1)循環器疾患(40.0%)、(2)悪性新生物(26.8%)、(3)感染症(23.2%)などであった。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)これまでの診断では、改訂ニューヨーク診断基準(表2)が用いられてきた。しかし、単純X線所見で仙腸関節の所見が出現する時期は50%以上の症例が発症後5年以上かかる。このためMRIでの脂肪抑制T2強調像またはSTIR法で早期より診断が可能になり、ASASによる分類基準が提唱された。画像を拡大するASASの分類基準では、体軸性(axial)SpAおよび末梢関節(peripheral)のSpAの分類基準(図2、3)がある。体軸性SpA の分類には、(1)炎症性腰背部痛、(2)HLA-B27の存在、(3)仙腸関節の画像所見が、SpAの分類(診断)に重要であることが理解できる。画像を拡大する画像を拡大するしかし、ASAS基準は分類基準である。個々の症例の診断は、1)医師の経験に基づく判断、2)除外・鑑別診断に基づく判断、3)症例検討会など他の医師との確認、4)経時的な臨床所見からの検証、など多方面の視点からの確認作業を重ねて診断が行われる。診断された症例の中から疾患特異性を求めるために、ASASの分類基準の規定に照らし合わせ、満足した症例が疫学調査や臨床治験に組み込まれる(表3)。このため紙面のチェックリストを用いて、簡単にASAS基準に満足すれば ASであると診断することは誤りである。また、すぐにbiologics治療をはじめることも誤りである。線維筋痛症や機械的腰痛などが分類基準であるASAS基準を使用することによって誤診されることが、国内外から指摘されている。乾癬性関節炎に関するCASPAR分類も同様である。ASAS基準はあくまでも診断の参考として使用する。チェックリストを用いた診断では、除外・鑑別診断ができず、また、他医との臨床検討がおろそかになる。また、リウマチ性疾患は多くの場合、2~3回の診察にて診断名が明らかになるが、数ヵ月間の経時的な評価・確認に基づく診断が必要である。画像を拡大する■ 検査1)臨床検査診断に特異的な臨床検査はないが、赤沈促進、CRP上昇、血清IgA値の中程度の上昇、HLAタイピング(HLA-B27陽性)は重要な根拠である。2)画像診断仙腸関節および脊椎のX線所見とMRI所見が重要である。X線画像では、仙腸関節は初期に変化がみられ、通常両側性で対称性である。骨吸収(blurring)、切手の縁の刻みのような骨侵食像と骨硬化像、進行すると関節裂隙の狭小化、偽拡大や線維化、骨化、強直が認められる。仙腸関節の撮影は正面1枚では偽陽性と判定されやすいので、左右斜位での撮影を必ず行う(図4)。画像を拡大する脊椎の椎体は骨化が進むと前方椎骨間の骨性架橋の癒合(syndesmophytes)がみられ、竹様脊椎(bamboo spine)を呈する。MRI検査は骨髄浮腫や骨炎などの炎症部位が検出可能で鋭敏であり、X線所見が認められない“non-radiographic”の時期から病変を検出できる。ほかにSTIR画像、T1強調画像が用いられる。CTは、主に仙腸関節の不整や硬化など形態変化を検出する。慢性進行例では、MRIにて検出できないためCTの所見が重要である。■ 鑑別が必要な疾患1)強直性脊椎骨増殖症(diffuse idiopathic skeletal hyperostosis:DISH または ankylosing spinal hyperostosis:ASH)50歳以上の高齢者に認められる。血液所見で炎症反応は認めず、仙腸関節に不整は認められるが関節裂隙は保たれ、強直化も認めない。ASの靱帯骨棘(syndesmophyte)は縦方向に流れるように形成されるのに対して、DISHの骨棘(osteophyte)は横方向に伸び、かつ非対称性である。多くの靭帯の骨化が認められる。糖尿病を合併することがある。疼痛や可動域制限はあるがASほどではない。2)硬化性腸骨炎分娩後の女性に多くみられ、疼痛は仙腸関節周囲に限定し、血液所見での炎症反応は認めず、仙腸関節の関節面の変化より、腸骨側に三角形の均等な骨硬化像が認められる。3)膿疱性関節骨炎(掌蹠膿胞症性骨関節炎)掌蹠膿疱症(palmoplantar pustulosis)の患者に合併する関節炎で、SAPHO症候群に含まれる仙腸関節炎を10~40%合併する。脊椎の病変が多い。胸肋鎖骨肥厚症が90%出現する。関節炎発現時、皮膚病変がないこともあり、必ず既往歴を聞くことが大切である。4)線維筋痛症多数の疼痛点がASの付着部痛の部位と似ていることから、過剰診断または混同される。女性に多く、多彩でさまざまな症状を強く訴える。ASの症例は、一般的に我慢強い。血液検査や画像診断で異常は認められない。NSAIDsが無効であり、ぶどう膜炎の既往もない。HLA-B27陽性であることは少ない。5)変形性脊椎症、変形性仙腸関節症身体のこわばりや疼痛、可動域の制限などASと共通な臨床症状を呈するが、その程度は軽い。血液検査で炎症所見は認められない。X線所見上、一見AS類似の所見を呈するが、関節面の骨びらん・骨硬化はみられるものの、高齢になっても脊椎関節や仙腸関節の裂隙は保たれ、強直はみられない。脊椎正面像では、横方向に伸びる骨棘が特徴的である。仙腸関節下端にも骨棘が伸びる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)ASの治療の基本は、ASAS/EULARのAS治療に関する勧告(表4、図5)になる。主な治療は薬物療法と運動・理学療法である。画像を拡大する1)運動・理学療法定期的な運動・体操により姿勢や背骨の動きを保ち、痛みを和らげて運動機能を促進する。入浴やシャワーの後にストレッチを行うことにより関節の可動域が保たれる。温水プールでの運動や水泳が理想的である。背骨を伸ばす運動や深呼吸をする運動が勧められる。個人に適した強さの体操や運動を、無理せず継続して行うことが重要である。2)薬物療法基本はNSAIDsである。脊椎関節炎に対してはメトトレキサート(MTX)〔保険適用外〕を含む従来のDMARDsが有効であるというエビデンスはない。末梢関節炎に対してはサラゾスルファピリジン(商品名:アザルフィジンEN)〔保険適用外〕が有効である。ステロイドは主に関節局所への注射が使用される。骨粗鬆症予防にビスホスホネート製剤が併用される。NSAIDsの効果が不十分な脊椎の症状に対しては、TNF-α阻害薬の適応がある(表5、6)。画像を拡大する画像を拡大するわが国では、インフリキシマブ(同:レミケード)とアダリムマブ(同:ヒュミラ)が保険適用となっている。TNF-α阻害薬使用時にMTXを併用する必要はなく、かつ、併用効果のエビデンスはない。TNF-α阻害薬による骨形成抑制作用に関しては現時点では明らかにはなっていない。しかし、TNF-α阻害薬が炎症を抑え、疼痛を軽減することは、身体の活動・運動を促し、可動域減少を予防する。また、就学、就労、家事および育児の継続に有効な治療法と考えられる。3)手術進行した股関節の障害に対しては人工関節置換術が行われる。4 今後の展望ASおよびSpAに関する分類の再構築によって、治療の適応が拡大し、早期よりTNF-α阻害薬の使用ができるようになった。TNF-α阻害薬における骨形成阻害作用は確認されていないが、疼痛の緩和やADLの改善や体操によって、可動域制限の進行が抑制される可能性が期待される。アバタセプトやリツキシマブのASに対する治療効果は否定的である。IL-17阻害薬であるセクキヌマブ(商品名:コセンティクス)が2015年11月欧州で、また、2016年1月米国で承認となった。そのほかの治療薬の出現が待たれる。5 主たる診療科リウマチ科、整形外科、膠原病内科、放射線科、消化器内科、皮膚科、眼科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本リウマチ財団 リウマチ情報センター 対象とする病気:強直性脊椎炎(一般利用者向けのまとまった情報)日本脊椎関節炎学会(医療従事者向けのまとまった情報)日本整形外科学会 症状・病気をしらべる:強直性脊椎炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)長引く腰痛、実は…強直性脊椎炎の情報発信サイト(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公的助成情報東京都福祉保健局:難病患者支援(患者、患者家族向けの情報)患者会情報日本AS友の会 Japan Ankylosing Spondylitis Club(JASC)(ASの患者、患者家族向けの情報)1)井上 久ほか. 強直性脊椎炎の診断と治療の実際. 2012; アボットジャパン株式会社、エーザイ株式会社.2)井上 久ほか.我が国の強直性脊椎炎(AS)患者の実態~第3回患者アンケート調査より~.日本脊椎関節炎学会誌;2011;3:29-34.3)Kobayashi S, et al. Mod Rheumatol.2012;22:589-597.公開履歴初回2013年08月29日更新2016年04月12日

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原発性胆汁性胆管炎〔PBC : Primary Biliary Cholangitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、病因・病態に自己免疫学的機序が想定される慢性進行性の胆汁うっ滞性肝疾患である。中高年女性に好発し、皮膚掻痒感で初発することが多い。しかし、多くの症例では無症候性の時期にたまたま発見され、長く無症候性のまま経過する。黄疸はいったん出現すると、消退することなく漸増することが多い。一部の症例では門脈圧亢進症状が高頻度に出現する(表1)。画像を拡大する従来、病名は「原発性胆汁性肝硬変」となっていたが、現在は早期に診断することができるようになり、またウルソデオキシコール酸(ursodeoxycholic acid;UDCA)の効果もみられることから、現在診断されている多くの患者は肝硬変には至っていない。実際は肝硬変ではないにもかかわらず「肝硬変」が病名に入っていることで、患者の精神的負担が大きい、との患者団体の要請に応じ、2016年より世界的に、英文字略語のPBCはそのまま残し、「Primary Biliary Cholangitis(PBC)」と改名された。日本語では、「原発性胆汁性胆管炎」と改名されることになった。■ 疫学男女比は約1:7、診断時平均年齢は50~60歳で、幼小児期での発症はみられない1)。発生数は1980年の調査開始以来増加傾向にあったが、1990年代以降は横ばいで推移している。新たに診断される症例のうち約70~80%は無症候性PBCである。無症候性PBCを含めた総患者数は全国で約5万~6万人と推計される1)。■ 病因本症は種々の免疫異常とともに、自己抗体の1つである抗ミトコンドリア抗体(Anti-mitochondrial antibody:AMA)が特異的(90%)かつ高率(90%)に陽性化し、また、慢性甲状腺炎、シェーグレン症候群などの自己免疫性疾患や膠原病を合併しやすい。さらに、組織学的には障害胆管周囲にT細胞優位の高度の単核球浸潤がみられることなどから、病態形成には自己免疫学機序が強く関与していると考えられる。多くの疾患同様、本疾患も多因子疾患であり、遺伝学的要因を基盤に環境要因が作用することよって発症し、病態形成がなされることが想定されている。家族集積性のあることや一卵性双生児における一致率がきわめて高いことなどから、発症には遺伝的素因の関与が示唆される。HLA-DR8 (DRB1*08)が人種を超えて疾患感受性遺伝子として働いている可能性が想定され、ゲノムワイド関連解析(GWAS)により、HLA-DR以外の新たな疾患関連遺伝子多型の情報が集積されつつある2)。環境因子としては、大腸菌などの細菌からの感染が想定されている。また、工業地帯や汚染廃棄物処理施設の近郊で発症が多いとの疫学研究などより、大気汚染や化学物質、化粧品などによる抗原の修飾がPBC発症のきっかけとなっている可能性が想定されている。■ 症状本疾患にみられる症状は、(1)胆汁うっ滞に基づく症状(2)肝障害・肝硬変および随伴する病態に伴う症状(3)合併した他の自己免疫疾患に伴う症状に分けて考えることができる。病初期は無症状であるが(無症候性PBC)、黄疸を呈する以前から胆汁うっ滞に基づく搔痒感が出現する。身体所見としては、症候性PBCでは黄疸のほか、掻痒のために生じた掻き傷、高脂血症に伴う眼瞼黄色腫が観察され、肝臓は腫大していることが多い。本疾患は他の自己免疫性疾患・膠原病を合併しやすく、なかでもシェーグレン症候群、慢性甲状腺炎、関節リウマチの頻度が高い。門脈圧亢進症状を早期から呈しやすく、高齢者や進行例では肝細胞がんの併発も考慮する必要がある。■ 分類1)臨床病期分類皮膚搔痒感、黄疸、食道静脈瘤、腹水、肝性脳症など肝障害に基づく症候を伴う症候性PBC(sPBC)とこれらの症候を欠く無症候性PBC(aPBC)に分類される。症候性PBCはさらに、皮膚掻痒感のみ認め血清総ビリルビン値が2.0mg/dL未満のs1PBCと、血清総ビリルビン値が2.0mg/dL以上の黄疸を認めるs2PBCに細分される1)。2)組織学的病期分類わが国の診療ガイドラインでは、サンプリングエラーを最小限にするように工夫された中沼らによる新しい分類の使用が推奨されている。1期(no progression)、2期(mild progression)、3期(moderate progression)、4期(advanced progression)の4期に分類される。3)特殊型特殊なタイプとして、以下の病態がある。(1)PBC-AIHオーバーラップ症候群(PBC-AIH overlap syndrome)PBCの特殊な病態として、肝炎の病態を併せ持ちALTが高値を呈する本病態がある。副腎皮質ステロイドの投与によりALTの改善が期待できるため、PBCの亜型ではあるが、PBCの典型例とは区別して診断する必要がある。(2)AMA陰性PBC、自己免疫性胆管炎(AIC)AMAは陰性であるが、PBCに特徴的な臨床像と肝組織像を呈し、PBC症例の約10%を占める。これらのうち抗核抗体陽性を呈する病態に対しautoimmune cholangiopathyあるいはautoimmune cholangitis(AIC)などの名称が提唱された。副腎皮質ステロイドの投与が奏効する症例もあり、UDCAの効果がみられない症例に対して試みられる。■ 予後PBCの進展形式は、緩徐進行型、門脈圧亢進症先行型、黄疸肝不全型の大きく3型に分類される(図)。多くは長期間の無症候期を経て徐々に進行するが(緩徐進行型)、黄疸を呈することなく食道静脈瘤が比較的早期に出現する症例(門脈圧亢進症型)と早期に黄疸を呈し、肝不全に至る症例(黄疸肝不全型)がみられる。肝不全型は比較的若年の症例にみられる傾向がある。黄疸期(s2PBC)になると進行性で予後不良である。5年生存率は、血清総ビリルビン値が5.0mg/dLで55%、8.0mg/dLを超えると35%となる。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断は、厚労省研究班の診断基準(表1)に則って行うが、(1)血液所見で慢性の胆汁うっ滞所見(ALP、γ-GTPの上昇)(2)AMA陽性所見(間接蛍光抗体法またはELISA法)(3)肝組織学像で特徴的所見(CNSDC、肉芽腫、胆管消失)の3項目が重要である1)。〔肝組織像が得られる場合〕(1)組織学的にCNSDCを認め、検査所見がPBCとして矛盾しないもの。(2)AMAが陽性で、組織学的にはCNSDCの所見を認めないが、PBCに矛盾しない(compatible)組織像を示すもの。〔肝組織像が得られない場合〕AMAが陽性で、しかも臨床像および経過からPBCと考えられるもの。■ 臨床検査成績慢性の胆道系酵素(ALP、γ-GTP)の上昇、血清IgMの高値、AMAの出現が特徴的である。■ 抗ミトコンドリア抗体(AMA)と抗核抗体AMAの対応抗原として、ピルビン酸脱水素酵素E2コンポーネント(PDC-E2)をはじめとするミトコンドリア内膜に存在するオキソ酸脱水素酵素複合体を構成する蛋白が明らかになっている。PDC-E2反応性CD4陽性T細胞がPBC患者の肝臓、所属リンパ節および末梢血で有意に増加していることが示され、本疾患の成立・維持に重要な役割を果たしていることが想定される。PBCではAMAのほか、抗セントロメア抗体、抗核膜孔抗体(抗gp210抗体)、抗multiple nuclear dot抗体(抗sp100抗体)など数種の抗核抗体も陽性化する。核膜孔の構成成分に対する抗gp210抗体は特異度ほぼ100%と疾患特異性が高く、PBC患者の約20~30%で陽性化する。本抗体は予後不良なPBC症例で陽性になる率が高く、PBCの臨床経過の予測因子として有用であることが示されている1)。■ 肝組織像自己免疫機序を反映する肝内胆管病変(CNSDC)がPBC肝の基本病理所見であり、肉芽腫の形成も特徴的である。肝内小型胆管が選択的に進行性に破壊される。その結果、慢性に持続する肝内胆汁うっ滞が出現し、肝細胞障害、線維化、線維性隔壁が2次的に形成され肝硬変に進行する。■ 鑑別診断・除外診断画像診断(超音波、CT)で閉塞性黄疸を完全に否定したうえで、慢性の胆汁うっ滞性肝疾患および自己抗体を含む免疫異常を伴った疾患という観点から鑑別診断が挙げられる(表2)。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)根治的治療法は確立されていないが、ウルソデオキシコール酸はPBC進展抑制効果を有し、現在第1選択薬である。予後の改善も期待でき、実際UDCAが投与される以前の時期と比較するとPBCの予後はかなり改善している。進行したPBCではUDCAで進展を止めることは難しく、肝硬変・肝不全に進行すれば肝移植が唯一の治療手段となる。血清総ビリルビン値が5.0mg/dL以上になると肝移植を考慮し、肝移植専門医へ紹介することが望まれる。■ 薬物療法1)ウルソデオキシコール酸(UDCA)(商品名:ウルソなど)胆道系酵素の低下作用のみでなく、組織の改善、肝移植・死亡までの期間の延長効果が確認されている1)。通常1日600mgが投与されるが、効果が不十分の場合は900mgに増量される。2)ベザフィブラート(同:ベザトールSR、ベザリップなど)UDCAの効果が乏しい症例でベザフィブラート(400mg/日)が有効な症例もみられる1)。UDCAとは作用機序が異なることから併用投与が望ましいとされる。3)副腎皮質ステロイド通常のPBCに対する投与は病態の改善には至らず、とくに閉経後の中年女性においては骨粗鬆症を増強する副作用が表面に出てくるので、むしろ禁忌とされている。PBC-AIHオーバーラップ症候群で肝炎所見が明瞭である場合は、本剤の投与が推奨される1)。■ 肝移植胆汁うっ滞性肝硬変へと進展した場合は、もはや内科的治療で病気の進展を抑えることができなくなるため、肝移植が唯一の救命法となる1)。肝移植適応時期の決定は、Mayo(updated)モデルや日本肝移植適応研究会のモデルが用いられている。移植後は免疫抑制薬を投与し、術後合併症、拒絶反応、再発、感染に留意し経過を追う。4 今後の展望本疾患を含め、自己免疫疾患の病因および発症原因の早期解明は期待しがたい。したがって、根本治療の開発にはまだ長い期間がかかるものと思われる。しかし、UDCAについては確実に長期効果もみられており、また、ベザフィブラートについては長期効果のレベルの高いデータは得られていないものの、作用機序に関する基礎データを含め、臨床データも集積しつつあり、UDCAとの併用効果が確立するものと思われる。一方、細胞レベルでの解析や、疾患感受性および進行に関与する遺伝子の解析データも出つつあり、病因の解明とともに、個別化医療が可能となる日もそう遠いものではないと思われる。5 主たる診療科内科、肝臓内科、消化器内科、肝臓移植外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)診療ガイドライン厚生労働科掌研究費補助金難治性疾患克服研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班:原発性胆汁性胆管炎(PBC)の診療ガイドライン2012(医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働省難病情報センターホームページ 原発性胆汁性胆管炎(PBC)ガイドブック(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公的助成情報難病情報センター 各相談窓口紹介(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会東京肝臓友の会(患者向けの情報)大阪肝臓友の会(患者向けの情報)1)厚生労働省難治性疾患克服研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班.原発性胆汁性胆管炎(PBC)の診療ガイドライン(2012年). 肝臓. 2012; 53: 633-686.2)厚生労働省「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班. 原発性胆汁性胆管炎(PBC)の診療ガイド. 文光堂. 2010.3)厚生労働省難治性疾患克服研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班. 患者さん・ご家族のための原発性胆汁性胆管炎(PBC)ガイドブック. 研究班2013事務局. 2013.4)The Intractable Hepatobiliary Disease Study Group supported by the Ministry of Health, Labour and Welfare of Japan Guidelines for the management of primary biliary cirrhosis. Hepatol Res. 2014; 44: 71-90.公開履歴初回2014年01月09日更新2016年03月29日

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カルシトニン製剤の働き

骨粗鬆症】【治療薬】カルシトニン製剤について、教えてください骨粗鬆症の初期に使用します。骨を強くするとともに、痛みを和らげるお薬です。★注意顔が紅くなったり、ほてったら、先生に相談しましょう!監修:習志野台整形外科内科 院長 宮川一郎 氏Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.

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妊娠前後のピル、胎児の先天異常リスクを増大せず/BMJ

 妊娠前3ヵ月~妊娠初期に経口避妊薬を服用していても、重大先天異常のリスク増大は認められなかったことが、米・ハーバード大学公衆衛生院のBrittany M Charlton氏らによるデンマーク各種全国レジストリを用いた前向き観察コホート研究の結果、明らかとなった。経口避妊薬使用者の約9%は服用1年目で妊娠するとされる。その多くは妊娠を計画し経口避妊薬の服用を中止してから数回の月経周期での妊娠であるが、胎児への外因性ホルモンの影響と先天異常との関連については明らかとはなっていない。BMJ誌オンライン版2016年1月6日号掲載の報告。デンマーク出生登録の約88万人で経口避妊薬曝露と先天異常リスクの関連を調査 研究グループは、妊娠前後の経口避妊薬の使用が重大先天異常のリスクと関連しているかどうかを検討する目的で、デンマークで生まれたすべての単胎児を含む医療出生登録を用い、1997年1月1日~2011年3月31日に生まれた、既知の原因(胎児性アルコール症候群など)あるいは染色体異常による先天異常児を除く生産(live-born)児88万694例を対象に、前向き観察コホート研究を行った。 患者登録(Danish National Patient Registry)にて先天異常について追跡調査するとともに、処方登録(Danish National Prescription Register)にて経口避妊薬への曝露について評価。経口避妊薬は最後の処方日まで服用されたものと見なし、使用の有無と時期により、まったく未使用(非使用群)、受胎前3ヵ月以内非使用(直前非使用群)、受胎前0~3ヵ月以内使用(直前使用群)、受胎後使用(妊娠初期使用群)に分類した。 主要評価項目は、出生後1年以内に診断された重大先天異常(European Surveillance of Congenital Anomaliesの分類による)で、ロジスティック回帰分析にて有病オッズ比を算出し評価した。対非使用の重大先天異常の有病オッズ比、直前使用0.98、妊娠初期使用0.95 経口避妊薬の曝露については、非使用群21%(18万3,963例)、直前非使用群69%(61万1,007例)、直前使用群8%(7万4,542例)、妊娠初期使用群1%(1万1,182例)であった。 対象コホート88万694例中、2.5%(2万2,013例)が生後1年以内に重大先天異常と診断された。出生児1,000人当たりの重大先天異常有病率に群間差はみられず(非使用群25.1、直前非使用群25.0、直前使用群24.9、妊娠初期使用群24.8)、直前非使用群と比較して直前使用群(有病オッズ比:0.98、95%信頼区間[CI]:0.93~1.03)および妊娠初期使用群(同:0.95、95%CI:0.84~1.08)で、重大先天異常の増加は認められなかった。先天異常サブグループ別(四肢欠損など)の解析でも、有病率の増大は認められなかった。 処方箋通りに経口避妊薬が服用されていたかどうかは不明で、交絡因子の残存の可能性や葉酸に関する情報不足など研究の限界はあるものの、著者は「今回の結果は、経口避妊薬の使用に関して患者と医療従事者を安心させるものである」とまとめている。

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英国プライマリケアでの処方の安全性、施設間で差/BMJ

 英国一般診療所の代表サンプル526施設を対象に処方の安全性について調べた結果、患者の約5%に不適切処方がみられ、また約12%でモニタリングの記録が欠如していることが、英国・マンチェスター大学のS Jill Stocks氏らによる断面調査の結果、明らかになった。不適切処方のリスクは、高齢者、多剤反復処方されている患者で高く、著者は、「プライマリケアにおいて、とくに高齢者と多剤反復投与患者について処方のリスクがあり適切性について考慮すべきであることが浮かび上がった」と述べている。英国では、プライマリケア向けに処方安全指標(prescribing safety indicator)が開発されているが、これまで試験セットでの検討にとどまり、大規模なプライマリケアデータベースでの評価は行われていなかった。BMJ誌オンライン版2015年11月3日号掲載の報告。英国一般診療所526施設のデータを分析 研究グループは、英国一般診療所における複数タイプの潜在的有害処方の有病率を調べ、また診療所間にばらつきがあるかどうかについて調べた。2013年4月1日時点でClinical Practice Research Datalink(CPRD)に登録された526施設において、診断と処方の組み合わせで特定した潜在的処方リスクやモニタリングエラーの可能性がある全成人患者を包含した。 主要アウトカムは、抗凝固薬、抗血小板薬、NSAIDs、β遮断薬、glitazone(チアゾリジン系糖尿病薬:TZD)、メトホルミン、ジゴキシン、抗精神病薬、経口避妊薬(CHC)、エストロゲンの潜在的に有害な処方率。また、ACE阻害薬およびループ利尿薬、アミオダロン、メトトレキサート、リチウム、ワルファリンの反復処方患者の、血液検査モニタリングの頻度が推奨値よりも低いこととした。不適切処方、モニタリング欠如は指標によりばらつき、診療所間のばらつきも高い 全体で94万9,552例のうち4万9,927例(5.26%、95%信頼区間[CI]:5.21~5.30%)の患者が、少なくとも1つの処方安全指標に抵触した。また、18万2,721例のうち2万1,501例(11.8%、11.6~11.9%)が、少なくとも1つのモニタリング指標に抵触した。 同処方率は、潜在的処方リスクタイプの違いでばらつきがみられ、ほぼゼロ(静脈または動脈血栓症歴ありでCHC処方:0.28%、心不全歴ありでTZD処方:0.37%)のものから、10.21%(消化器系潰瘍または消化管出血歴ありで消化管保護薬処方なし、アスピリンやクロピドグレル処方あり)にわたっていた。 不十分なモニタリングは、10.4%(75歳以上、ACE阻害薬やループ利尿薬処方、尿素および電解質モニタリングなし)から41.9%(アミオダロン反復処方、甲状腺機能検査なし)にわたっていた。 また、高齢者、多剤反復処方患者で、処方安全指標の抵触リスクが有意に高かった一方、若年で反復処方が少ない患者で、モニタリング指標の抵触リスクが有意に高かった。 さらに、いくつかの指標について診療所間での高いばらつきもみられた。 なお研究グループは、処方安全性指標について、「患者への有害リスクを増大する回避すべき処方パターンを明らかにするもので、臨床的に正当なものだが例外も常に存在するものである」と述べている。さらに、検討結果について「いくつかの診療について、CPRDで捕捉できていない情報がある可能性もあった(ワルファリンを投与されている患者のINRなど)」と補足している。

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ロコモと骨粗鬆症と痛みの関係

 ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは運動機能が低下し、要介護につながる可能性がある高齢者の危険状態のことを指す。運動機能障害と骨粗鬆症や筋骨格系慢性疼痛などの疾患がどう関連するのかはいまだ十分に研究されていない。そこで、群馬大学の飯塚 陽一氏らは、それらの関連性について調査を行った。その結果、運動機能障害と骨粗鬆症・筋骨格系慢性疼痛の間には有意な関連性があることがわかった。Journal of Orthopaedic Science誌オンライン版2015年9月7日号の掲載報告。 調査は、25-question geriatric locomotive function scale(GLFS-25)により運動機能障害と評価された287例の日本人被験者を対象に、定量的超音波(QUS)法により骨の状態を測定し、さらに、3ヵ月以上に渡って筋骨格系慢性疼痛に関するアンケート調査を実施した。 主な結果は以下のとおり。・運動機能障害がある43例では、運動機能障害がない244例と比較して、若年成人平均値(YAM値)が有意に低かった(p<0.001)。・運動機能障害がある群では、腰痛(p<0.01)肩痛(p<0.05)膝痛(p<0.001)が有意に高頻度でみられた。・YAM値はGLFS-25スコアと相関していた(β=-0.212、p=0.001)。・年齢・性別・BMIを調整した分析結果から、腰痛(オッズ比2.60、95%CI:1.29~5.24)、肩痛(2.16、95%CI:1.00~4.66)、膝痛(2.97、95%CI:1.41~6.28)は運動器障害と関連があることが示された。

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日本COPDサミット~健康寿命延長に向けて変わるCOPD予防・治療の最前線~

 11月5日都内(文京区)にて、2015年度日本COPDサミットが開催された(主催:一般社団法人GOLD日本委員会/一般社団法人日本呼吸器学会/公益財団法人日本呼吸器財団)。 本年の世界COPDデーは11月18日であり、この日に向け、世界各国でさまざまな啓発イベントが実施されている。本サミットもその一環として企画された。 冒頭、三嶋 理晃氏(日本呼吸器学会 理事長)は、「各団体がタッグを組むことにより、インパクトある啓発活動につなげ、各メディア・自治体・医療関係者・一般市民への情報発信を高める後押しをする」と本サミットの目的を述べた。 以下、当日の講演内容を記載する。COPDはもはや肺だけの疾患ではない COPDはタバコの煙を主因とする閉塞性の肺疾患であるが、近年COPDは全身性の炎症疾患と考えられるようになってきた。実際、COPDは肺がん・肺炎・肺線維症などの肺疾患だけでなく、糖尿病、動脈硬化、骨粗鬆症、消化器病、うつ・記銘力低下などへの影響が報告されている。 この点について、長瀬 隆英氏(GOLD日本委員会 理事)は、なかでも糖尿病には注意が必要だと述べた。糖尿病患者がCOPDを併存すると生命予後が悪くなること1)、反対に、血糖コントロールが不良であると肺機能が有意に低下することが報告されているからである2)。しかしながら、COPDがさまざまな疾患に影響を及ぼす理由については、いまだ不明な点もあるため、今後さらなる研究が必要といえそうだ。受動喫煙は他人をむしばむ深刻な問題 受動喫煙のリスクについては、これまでも問題となってきた。加藤 徹氏(日本循環器学会禁煙推進委員会 幹事)は、「さらなる受動喫煙の問題は、分煙では防ぐことができない点である」と強調した。その理由は、「受動喫煙」の10%はPM2.5粒子成分(径<2.5μm)と同じくらいの非常に小さな粒子であるため、分煙してもドアなどの隙間から漏れ出るからである。さらに、この小さな粒子は、一度肺内に侵入すると肺胞の奥深くにまで到達し、一部は呼出されるが、大部分が湿った空気で膨張して居座り、悪さをする。仮に煙を直接吸わなかったとしても、喫煙後3~5分間は喫煙者からこれらの粒子が呼出されることがわかっているため、注意が必要である。 加藤氏は「喫煙をしなくても受動喫煙に曝露することで、心筋梗塞や脳卒中、喘息、COPDになりやすくなる」と述べ、屋内全面禁煙の重要性を強調した。すでに禁煙推進学術ネットワーク(2015年10月現在、27学会が参加)から2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて「受動喫煙防止条例」制定の要望書が東京都に提出されている。今後、受動喫煙を防止するための積極的な対策が望まれる。COPDで注意すべき3つの合併症 COPDではさまざまな合併症が存在するが、石井 芳樹氏(日本呼吸器財団 理事)は「肺がん、気腫合併肺線維症、喘息にはとくに注意が必要」と述べた。【肺がん】 COPDは喫煙とは独立した肺がん発症のリスク因子であり、10年間の肺がん発生率は約5倍にもなるという3)。さらに、COPD患者では、喫煙量が同等であっても肺がんによる死亡率が7倍も増加すると報告されている4)。これに対し加藤氏は、「早期にCOPDを発見し、禁煙をすることが死亡率を低下させるうえで何より重要」と述べた。【気腫合併肺線維症】 気腫合併肺線維症の特徴は、肺気腫による閉塞性障害と肺線維症による拘束性障害が合併すると、呼吸機能の異常が相殺されマスクされる点にあるという。2つの病態が重複することで一酸化炭素拡散能の低下がさらに増強され、低酸素血症や肺高血圧が悪化する。COPDは肺がんとの合併率が高いが、肺線維症が合併すると肺がん発症率がさらに高くなるため5)、慎重な経過観察が重要である。【喘息】 近年、COPDと喘息を合併する、オーバーラップ症候群が問題となっている。COPDと喘息は異なる病態の疾患であるが、咳、痰、息切れ、喘鳴など症状の鑑別が、とくに喫煙者と高齢者においては難しい。このオーバーラップ症候群は、年齢とともに合併率が増加するといわれている6)。喘息を合併することで、COPD単独の場合よりも増悪頻度は高くなり、重症な増悪も多くなるという7)。加藤氏は、それにもかかわらず喘息患者が喫煙をしているケースが散見される、として「とくに喘息患者では禁煙指導を徹底して、オーバーラップ症候群への進展を防ぐことが重要である」と述べた。COPDにおける地域医療連携のあり方 COPDの診断には呼吸機能検査が必須であるが、一般の開業医では難しいのが現状である。このことに関して、中野 恭幸氏(滋賀医科大学内科学講座 呼吸器内科 病院教授)は、「手間がかかる」、「検査時に大きな声を出さないといけない」、「数値が多すぎて理解が難しい」などを理由として挙げた。こうしたことも相まって、COPD患者の多くが未診断・未治療であることが問題となっているが、呼吸器専門医だけでは、多くのCOPD患者を管理することは難しい。 このような事態を受けて、滋賀県では数年前から地域医療連携への取り組みを始めた。専門医が病院で呼吸機能検査やCTを行い、その結果を基に標準的治療方針を決定し、その後は、一般開業医が担当する。さらに、急性増悪で入院が必要な際には専門医が引き受ける、などの体制を整えている。 しかしながら、専門医に紹介するときには、COPDがかなり進行している場合も多く、いかに早い段階で専門医に紹介するかが焦点となりそうだ。中野氏は「この取り組みは現在、大津市医師会で実施しているが、今後は滋賀県全体のパスになることが望まれる」と述べ、そのためには医師会主導で進めることも重要だとした。 その他、滋賀県では、医薬連携にも力を入れている。近年、COPDには、さまざまな吸入デバイスが登場し、デバイス指導がより一層重要な意味を持つようになった。そのため滋賀県では、地域の関係者が連携し、吸入療法の普及と質的向上を図ることを目的として、滋賀吸入療法連携フォーラム(SKR)が結成された。本フォーラムは年7~8回開催され、会場ではさまざまなデバイスに触れることができる。その他の医療従事者に対しても講習会を開くなどして、多職種でチームとなってCOPDに向き合う体制づくりを行っている。COPDにおける運動療法の役割 「重度のCOPD患者では、呼吸機能だけでなく、精神的な悪循環にも焦点を当て、QOLを重視することが大切」と黒澤 一氏(日本呼吸器学会 閉塞性肺疾患学術部会 部会長)は述べた。そのうえで、日本での普及が十分とはいえない呼吸リハビリテーション(運動療法)の有用性について触れた。 黒澤氏は「強化リハビリテーションにより筋肉がついたり、関節が柔らかくなることにより、体を動かすときの負荷が減り、呼吸機能的にも精神的にも余裕ができる」と述べた。しかしながら、問題は、強化リハビリテーションにより一時的に改善がみられても、飽きてしまい続かないケースが多いことだという。これらのことから、「負荷の大きいリハビリテーションではなく、活動的な生活習慣を送ることを意識すべき」と黒澤氏は述べた。そのうえで、自分のペースで動作をすることができるスポーツが有効として、例として「フライングディスク」を挙げた。フライングディスクを行うことによって、身体活動性が向上し身体機能の強化にもつながるという。さらに生きがいや仲間ができることによって前向きになり、呼吸機能にも良い影響が及ぶようだ。だが、この競技へのサポート体制はまだ十分ではなく、今後の課題と言えそうだ。 最後に、福地 義之助氏(GOLD日本委員会 代表理事)は、「今後COPDの一般国民への認知率向上を推し進めていくとともに、臨床医師の疾患に対する理解や診断・治療力の向上が必要である。さらに、COPDは全身に及ぶ疾患であることから、他の診療科との連携強化にも力を入れていく」と締めくくった。(ケアネット 鎌滝 真次)参考文献1)Gudmundsson, et al. Respir Res. 2006;7:109.2)Yeh HC, et al. Diabetes Care. 2008;31:741-746. 3)Skillrud DM, et al. Ann Intern Med. 1986;105:503-507. 4)Kuller LH, et al. Am J Epidemiol. 1990;132:265-274.5)Kitaguchi Y, et al. Respirology. 2010;15:265-271.6)Soriano JB, et al. Chest. 2003;124:474-481.7)Hardin M, et al. Respir Res. 2011;12:127.

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ご存じですか? 10月20日は「世界骨粗鬆症デー」

 10月20日は世界骨粗鬆症デーである。それに合わせて、2015年10月16日にプレスセミナー(主催:日本イーライリリー株式会社)が開催され、日本イーライリリー株式会社 メディカルアドバイザーの榎本宏之氏と、河北総合病院 整形外科臨床部長の田中瑞栄氏が講演を行った。 わが国における骨粗鬆症の推計患者数は1,280万人であるが、治療を受けている患者数は約200万人に過ぎず、1,000万人以上の患者が未受診の状態にある。また、罹患率は女性で高く、とくに50歳代から増加傾向にある。しかし、日本の50歳以上女性の骨粗鬆症に対する意識を調査したところ、将来の骨粗鬆症リスクを認識していたのは全体の約15%と実際の罹患率よりも低く、患者教育の必要性を示唆する結果が得られている。 骨折の中で最も起きやすい骨折は椎体骨折であり、「身長の縮み」「背中の曲がり」「腰・背中の痛み」などは骨粗鬆症に伴う脊椎圧迫骨折の代表的な症状であるが、自覚症状がない場合も多い。しかし、椎体骨折は「骨折の連鎖」のきっかけとなることが知られており、最も重篤な骨折である大腿骨骨折が起こると寝たきりになり、最悪の場合死に至ることもある。要支援・要介護の原因の約25%が運動器の障害であることからも、早期に適切な診断・治療を受けることが重要であるといえる。 また、骨粗鬆症の予防を考えた際に重要な栄養素として挙げられるのが「カルシウム」「ビタミンD」「ビタミンK」である。「カルシウム」は骨の構成に必要であり、「ビタミンD」はカルシウムの吸収を促進、「ビタミンK」は骨にカルシウムが吸着するのを助ける働きを有する。とくにビタミンDはカルシウム代謝だけでなく、骨・筋肉、がん・免疫系、自己免疫疾患などその役割は多岐にわたるが、日本人は元々血中ビタミンDが少なく、それに加えて、近年美白意識が向上したことにより、日照時間が減り、さらにビタミンDが不足するという弊害が出ている。骨粗鬆症の適切な診断・治療と合わせて、予防も意識することを心がけたい。

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