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教授 尾﨑重之先生の答え

遠隔期について自己心膜による大動脈弁形成の遠隔期成績はいかがでしょうか。大動脈弁逆流等の発生はないのでしょうか。自己心膜を使用した大動脈弁形成術は2007年の4月から開始し、現在、約3年半が経過しております。250名以上の方がこの手術を受けられておりますが、現在までのところⅡ度以上の大動脈弁閉鎖不全症を認める患者様はおらず、再手術例はありません。弁の生着、採取部位の強度についてはじめまして、都内で勤務医をしている整形外科医です。患者さんで弁置換が必要といわれている方がおり調べている間にたどり着きました。人工物に比し生体材料でつくられるものがより良いということはわれわれ整形外科でも常に言われていることですが、自己生体材料を採取するということはその採取部位に欠損が生じるということです。整形外科では骨は骨、硝子軟骨は繊維軟骨で再生されます。ただ強度は正常に比し、しばらくの間採取した大きさにもよりますが弱いです。自己心膜採取部位は採取後に再生される組織の強度、機能は問題ないのでしょうか?また生体弁は術後どれくらいで生着するのでしょうか?不勉強ですみませんがよろしくご教授ください。グルタールアルデハイド処理したヒト心膜の強度は、早稲田大学生命理工学部梅津研究室との共同研究の結果、正常な大動脈弁尖の4倍以上の強度があることを確認しております。従って、グルタールアルデハイド処理したヒト心膜を大動脈弁尖として使用することには、全く問題が無いと考えます。残念ながら、ヒト心膜は再生しないので切除した欠損部にはゴアテックスシートを挿入し、代用しております。縫着された自己心膜は、縫着直後より機能しておりますが、約1ヶ月もすれば完全に生着すると思われます。自己心膜の耐久性について生体弁は耐久性におとり10数年が限界と聞きましたが、自己心膜の場合はいかがでしょうか。基本的には自分の組織を使っているので、耐久性という概念自体がないのでしょうか?再手術が必要になる場合はどんな時なのでしょうか?基本的な質問で申し訳ないですがご教示お願いします。「自己心膜を使用した大動脈弁形成術」、最長で3年半の経過です。遠隔期については5年、10年と経過を見なければなりませんが、3年半経過して再手術がゼロという数字は画期的な数字です。機械弁・生体弁では術後1年で約1%の再手術があります。とても成績がいいことは確かです。われわれの手術方法とは異なりますが、1990年代にアメリカのデュラン先生が、同様にグルタールアルデハイド処理された自己心膜を使用した大動脈弁形成術の耐久性を報告しています。対象疾患が「リウマチ熱による大動脈弁狭窄症」であるため、われわれの対象年齢よりはずっと若く20~30歳代の症例に手術を施行していますが、10年の再手術回避率(再手術を受けなくても良い確率)が86%です。一方、生体弁(ウシ心のう膜弁)を45歳の患者に移植した場合の再手術回避率も同様に86%という報告があります。若年者ほど生体弁の劣化が早いことは周知の事実です。デュラン先生が手術を施行された症例は更に若年であり、この事実を考慮するとグルタールアルデハイド処理後の自己心膜を使用した大動脈弁形成術の耐久性は、生体弁と同等もしくはそれ以上と言うことが出来ると考えます。詳しくは当科ホームページをご参照ください。再手術が必要となるのは移植した心膜が石灰化を起こし、重症な大動脈弁狭窄症を起こすか、心膜の劣化が起こり、重症な大動脈弁閉鎖不全症が発生したときです。経過観察中の患者さんでそのような方はおりません。執刀できる医師について先生の術式は大変素晴らしく、感銘を受けております。新しい術式なだけに執刀できる医師は限られていると思いますが、先生の他に執刀できる医師は何名位いるのでしょうか?また、この出術を受けることができる医療機関は貴院の他にも存在するのでしょうか?教えて頂けると幸いです。これまでに、多くの医師が当院に手術見学に来られ、現在準備を進めている施設がいくつかあります。しかし、手術の質を維持させるため、最初は必ず私が手術に立ち会わせて頂くようにしています。また、弁形成をするための器具であるサイザーやテンプレートなどの準備があり、手術を開始するには少々時間がかかっています。今後はさらに多くの施設で手術が出来るようにウエットラボ、ドライラボを使用したトレーニングシステムの構築等も考えています。現在のところ、苑田第一病院(東京都足立区)、仙台厚生病院(仙台市)、大分大学医学部附属病院(大分市)で自己心膜を使用した大動脈弁形成術が施行されております。入局について初期研修医1年目です。現在市中病院で研修を受けていますが、外科医を目指したいので、後期研修は大学病院に入局しようと考えております。大橋病院心臓血管外科のホームページを拝見しましたが、入局希望者への案内がありません。他の科は案内があるものとないものがありました。基本的に他からの入局は募集していないということなのでしょうか?場違いな質問かもしれませんがご回答宜しくお願いします。ホームページでの入局のご案内が未完成ではありますが、常に入局は大歓迎です。ご迷惑をおかけしました。遠慮なく下記にお問い合わせ下さい。見学、相談希望の方は、お気軽にご連絡ください。お問い合わせ先:医局秘書 古谷 美幸 myurine@oha.toho-u.ac.jp女性の心臓外科医現在医学部に通う学生、女性です。心臓外科に興味を持っています。どんな科でも、出産などで1、2年ブランクが開くと手技が衰えてしまうと思いますが、心臓外科医としてそれは致命傷になるのでしょうか?学生の思い込みかもしれませんが、心臓外科の手技は他の外科と比べ、特に繊細だと考えております。1、2年のブランクが心臓外科医として致命傷になるのか教えて頂きたくお願い申し上げます。心臓外科のトレーニングは、どの時期にどれくらい集中的に施行することが出来るかが大切であると考えます。私自身も、当初は自衛隊医官として勤務していたため、外来で毎日、風邪と水虫を診る日々でした。心臓なんて夢のまた夢でした。自衛隊退職後、卒後6年目からやっと心臓外科に携わるようになりました。心臓外科を始めた時期としては決して早いわけではありません。時期が来たときに集中してトレーニングを重ねることが出来れば、心臓外科医になることは十分に可能と考えます。自分次第ですよ。また、昨今、女性医師は増加しており、今後、女性心臓外科医も増えると思います。まだまだ環境は整っていないかもしれませんが、確実に女性心臓外科医が誕生する土壌は整いつつあります。諦めないでください。自己心膜では適さないケースについて患者さんの状態によっては、自己心膜を使用した大動脈弁形成術に適さず、人工弁でないと駄目なケースがあるのでしょうか。あるとしたらそれはどんなケースなのでしょうか。初歩的な質問で恐縮ですがご教授ください。すべての大動脈弁疾患(大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、大動脈基部拡大による大動脈弁閉鎖不全症、人工弁置換手術後の再手術、感染性心内膜炎など)に対し「自己心膜を使用した大動脈弁形成術」を施行しています。これまでのところ大動脈弁形成術が適さなかった症例はありません。成長する大動脈弁について先生の記事拝読いたしました。「今後、身体の成長に合わせて「成長する大動脈弁」の開発に力を入れていく」とありましたが、具体的にはどのような研究なのでしょうか?人工弁だけど成長する弁なのでしょうか?もしくはまた違った着想での開発なのでしょうか?差し支えない範囲で結構ですので、その辺りの開発状況をお聞きしたく思います。現在、早稲田大学生命理工学部梅津研究室との共同研究で「無細胞化技術の開発」「無細胞化組織の滅菌技術の確立」に成功しており、当該材料の製造・滅菌において実用化に向けて更なる一歩を踏み出す域に到達しています。無細胞化する事でvirusの除去が完全に可能で有る事と、無細胞化組織を人体に移植すると異物として認識されず、scaffold(枠組み)の中に移植された人体から細胞が入り込み自己組織化していく事を、これまでの研究で実証しています。無細胞化組織を使用する事で、(1)遠隔期の弁尖の石灰化を予防出来き(2)無細胞化組織移植後組織に自己の細胞が入り込み無細胞化組織が自己組織化され組織(弁尖)が成長する可能性も高いと言えます。先生が理想とする心臓外科医ベルギー留学中に、先生が理想とする心臓外科医と出会われたそうですが、どんな方なのでしょうか?日本にはいないタイプなのでしょうか?興味あるので是非教えてください。記事の中でもご紹介しましたが、私がベルギーで出会った医師は、臨床での不明な点を大動物で実験・検証し、その結果を必ず臨床にフィードバックし、少しでも患者さんにプラスになるように努力していました。このように、文武両道な医師が私の理想とする医師です。私の感覚なので、そうではないと言われる方がおられると思いますが、日本の心臓外科医は手術をする人、研究をする人が別れており、両方をともにバランス良く行っている外科医はヨーロッパと比べて少ないと思います。あくまでも個人的な感想です。先生のご経歴を今は田舎で診療所をやっていますが、昔大橋病院にいたことがあります。その時代は外科手術を年間何百例もこなすようなところではなかった記憶があります。先生しかできない手術を行っているからかもしれませんが、それだけではないと思います。宜しければ体制を変えるために先生が取り組まれたことを教えていただけますでしょうか。宜しくお願いします。先生が大橋病院にいらした頃と同様に、私が大橋病院へ赴任した当初も開心術数は多くありませんでした。病院の体制としても現在のように開心術を200以上施行できる環境ではありませんでした。まわりのスタッフの多くが、「心臓の手術は大変だから。」という認識を持っていたと思います。大変なことを行うのはみんな嫌なわけで、その認識を変えない限り、前進できないなと考えました。まず取り組んだことは、慌てないでひとつひとつ実績を重ね、スタッフのみんなに「心臓の手術は大変ではなく、心臓の手術を受けた患者さんみんなが笑顔で元気に退院していくこと。」を実証することでした。心臓外科はチーム医療ですから、これまでの認識が変わるにつれてチームとして対応できるようになり、増えてきた症例数にも対応できるようになったと考えます。でも6年かかりました。「ローマは一日にしてならず。」を実感しています。総括「自己心膜を使用した大動脈弁形成術」、最長で3年半の経過です。遠隔期については5年、10年と経過を見なければなりませんが、3年半経過して再手術がゼロという数字は機械弁・生体弁では不可能な数字です。それくらい成績がいいことは確かです。また、手術中に人工弁置換術に移行した症例もありません。この手術がいかに再現性の高い手術であるかが判ります。今後も遠隔期の向上目指してさらに努力していきたいと考えています。異物を使用しないこと、ワーファリンなどの抗凝固療法を使用しないためQOLが維持できることに患者さんはとても満足されています。「自己心膜を使用した大動脈弁形成術」でも多くの患者さんの笑顔が見られます。学生・研修医の方々へ心臓外科は楽しいですよ。楽な科ではありませんが、患者さんは本当に元気になります。元気になった患者さんの笑顔を見ると疲れが吹っ飛びます。僕と一緒に心臓外科をやりませんか。教授 尾﨑重之先生「弁膜症治療の歴史を変える「自己心膜を使用した大動脈弁形成術」」

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教授 白井厚治先生の答え

最近のゼロカロリージュースについて0キロカロリーのコーラなどが最近は多く売られてますが、代謝内分泌学的には糖尿病の方に自信を持って勧められているのでしょうか?あくまで噂に過ぎないのですが、ああいうゼロカロリー飲料そのものには確かにカロリーがなくても、一緒に他の食事を摂った時に他の糖質の吸収を促進する作用があると聞きました。。。。PS:そもそも、人工甘味料のアスパルテームが身体に良いかどうかわかりませんし、炭酸飲料は身体に悪いのかもしれませんが。。。実際に、カロリーゼロ表示の飲料物を飲んでもらい、30分から120分まで、採血したところ、血糖の増加はほとんど見られないものもありましたが、なかにはあがるものもあり、原因は、カロリーゼロ表示は、糖質0.5%以下で使っているとのことでした。ですから、成分表示で、糖分ゼロと明記しているものは大丈夫でしょうが、それ以外のものは、大量飲めば、血糖は上がる可能性があります。アスパルテームについては、アミノ酸摂取として評価してよいと思われます。極端に、多用しなければ問題ないと思います。高感度CRPについて高感度CRPは動脈硬化の一つのいい指標でしょうが、上気道炎、歯肉炎などの炎症にても上昇すると理解しています。そうすると、風邪の流行している季節などでは動脈硬化の判定ができずらくなるということはないでしょうか?その通りで、CRPは体内でほかに目立った炎症がない場合にのみ、動脈硬化(炎症性反応としての)の指標として意味がありますが、特異性は、高感度CRPを用いてもありません。大規模スタデイで、ある治療の効果などをみるにはよいでしょう。しかし、日常診療で、個々の例に当てはめ、それのみで、あなたは動脈硬化があります、ありませんとの判定に用いるのは、困難と思います。逆に、動脈硬化のためと決め込んで、ほかの炎症、癌などの初期を見逃す可能性もあります。個人には参考にする程度でよいのではないでしょうか。破壊性甲状腺炎の診断動悸、全身倦怠、微熱、軽い咽頭痛の症状で他院受診。FT3 10.4,FT4 4.6 TSH感度以下、 抗体陰性(TPO、TG、TRAb,TSAb)でCRP 1前後、血沈正常からやや亢進、甲状腺エコーでまだら様low echo部位のある患者さんが当院紹介となりました。ヨードuptake 1%以下で破壊性甲状腺炎と診断しましたが、一貫して頸部痛はありません。頸部痛のない亜急性甲状腺炎と判断するのか、咽頭炎併発の無痛性甲状腺炎と迷いました。これでTPO抗体やTG抗体が陽性であればさらに橋本病の急性増悪とも迷うところです。頸部痛のない亜急性甲状腺炎という病態はあると考えて宜しいのでしょうか。また今回のケースではありませんが橋本病の抗体が陽性の場合、無痛性甲状腺炎と橋本病の急性増悪との鑑別についてもご教授いただければ幸いです。甲状腺機能亢進でTSAb、TRAb陰性、さらにヨードuptakeの低下という所見は破壊性甲状腺炎に矛盾しません。破壊性甲状腺炎には、亜急性甲状腺炎と無痛性甲状腺炎があります。亜急性甲状腺炎は炎症反応があり、low echo部位を認めるととも頸部痛はほぼ必発です。本例では頸部痛なしなので、亜急性甲状腺炎とは言えないでしょう。従って、無痛性甲状腺炎の可能性が強くなります。無痛性甲状腺炎は、多くは橋本病を基盤とした疾患とされており、本例がTPO、TGの抗体が陰性であることから、合致しません。まだ特定されていませんが何らかのウィルスによる甲状腺炎かもしれません。実際、本症例をどうするかですが、私なら経過観察が重要と考えます。ホルモン値を追跡し、下がればそれでよく、もし、炎症反応が強くなったり、頸部痛が出現してきたりすれば、亜急性甲状腺炎と考えて、ステロイド投与も考慮していくべきでしょう (当面はNSAIDでも十分)。甲状腺機能亢進症が長引くようであれば、甲状腺中毒症状に応じて、メルカゾールを適量処方、経過観察します。術前術後の糖尿病コントロール経口糖尿病薬は手術前後は禁忌となっています。手術前後とはどれくらいの期間をいうのでしょうか。その間はインシュリンでコントロールすることになりますが基本的なやりかたをご教示ください。手術の種類、術後の食事摂取の状況からも、ことなり、一律にはいえないと思います。一般に消化管手術は、吸収が不安定なこともあり、最低前1日、後7日間くらいは、血糖測定下でのインスリン治療が望まれます。SU剤を中止してのインスリン量の決定は、個々異なり、試行錯誤ですが、グリペングラマイド(2.5mg)3T/日では、およそ、インスリン必要量は、8-12単位くらいではないでしょうか。当院では、毎食前血糖測定後、血糖(mg/dl)100-120、  120-150、150-200、200-250、250-300 それぞれ、インスリン(レギュラー)2-4、4-6、6-8、8-10、10-12単位打つことを目安にしています。大学病院に足りないもの先生が大学病院の経営のみならず、臨床の現場でもご活躍されている様子、記事で拝見しました。大学病院の上から下までご存知の先生にお聞きしたいことがあります。「今、大学病院に足りないもの」を一つ挙げるとしたら、なんでしょうか?今や大学病院も収入につながる診療に振り回され、臨床研究の機会がどんどん減っているような感があります。周りの若手を見ても、診療に疲れて、「大学病院でバリバリ研究するぞ!」という気概を感じることができません。魅力ある大学病院を作るために何が必要なのか?何が足りないのか、日々悩んでいる状況です。ご教授頂けると幸いです。こんな時代の今こそなぜ、大学病院にいるのか、どのような姿勢をとるのか、原点が問われていると思います。それというのも、いろいろ言われていますが、医療の原点である患者さんの満足度(医療レベルもふくめ)を中心に、医師をきちんと配備し、グループ、科の壁を乗り越え、互いに手を出し合ってゆけば、大学病院は採算的にやってゆけるというのが実感でした。ただそこには、多くの若い医師たちがいるということ、即ち、採算的にみると、薄給でがんばってくれている若手医師がいるからこと成り立つことを忘れてはなりません。それに対して、彼らが大学病院にいる存在意義を見出すには、スタッフが魅力的な医療技能を提示でき、全身全霊をかけて患者さんを診ているすばらしい姿をみせること。若手医師は今の医療を学ぶのみでなく、医療を開拓していくメンバーの1人として、テーマを持ち未解決なものを解決する術を身につけることの充実感とそれによる自信が必要と思います。従って、大学スタッフの責任は重大で(それだけやりがいがあるという意味です)、面白い研究テーマを見つけ、その解決を目指してあらゆる手段を用い(基礎、臨床研究)、しかもそれを楽しみながらやっている姿勢を見せ続けることです。そして、病院の業務に追われ疲れているように見えた時こそ、それらを吹き飛ばす面白い研究テーマを突きつけるべきです。マンネリと疲労から脱出させる最良の方法となります。先生のようなやる気のある上級医師は、遠慮せず、怖がらず若手医師に語りかける続けることでしょう。今の医学教育は研究の面白さ楽しさを感じ取るレセプターを育成していませんから、苦労しますが、でも、わかってくれる日が必ず来ると思います。CAVIの開発についてCAVIにはいつもお世話になっています。お恥ずかしい話、先生が開発に携わっていたこと、知りませんでした。このような新しい技術や検査機械の開発はどのように始まり、進行していくものなのでしょうか?また、このように周りを上手く巻き込んでいく時のポイント、秘訣などありましたらご教授頂きたいです。宜しくお願いします。CAVIは、今次々と新しい事実が見出されています。大切なことは、若い先生方に興味を持ってもらえ、いったん途絶えていた血管機能学が代謝学と連携して再度面白くなり始めたことです。CAVIと巡り合ったいきさつですが、たまたま、開発初期に相談をうけたわけで、私が発想し持ち込んだわけではありません。ただ、血管機能については興味をもち30年前から大動脈脈波速度(長谷川法=血圧補正法)を毎年透析患者さんで10数年にわたり測定していました。そこでPWVの限界と可能性を私なりに理解していたつもりです。今回CAVIの初期のデータとりをする中で、計算式決定まで多少紆余曲折がありましたが、バイオメカニクスの科学と臨床成績から現在の式が最終決定され、以後広い臨床評価が始まりました。そこには、長年血管機能解析に興味を持ち続け誠実にデータを蓄積分析してくれていた施設と人がいたこと、会社も、科学性と臨床データ両面を尊重し互いに納得のいくまで検討できたこと、また脈波感知と分析に高度の技術を発揮した優秀なスタッフがいたことが幸運だったと思います。加えて、全国の大御所というよりは若手研究者の方がCAVIに素直に興味をもってくれ、いわゆる大学の研究室よりは、一般病院で、素養のある先生方が先行して出された研究が多く、現場で開拓心旺盛な医師の存在が大きく浮かび上がりました。新しい世界を開くのは情熱ある若手医師とつくづく思いました。無理に誰かを巻き込もうとしたこともなく、CAVIそのものの原理と測定の安定性が最大の牽引力であったと思います。でもまだまだ、これから多くを検証する必要があります。佐倉病院でないとできないこととある病院で研修医やっている者です。先生の記事を興味深く読ませて頂きました。文末にある「佐倉病院でないとできないことに向けて頑張っていく」という言葉が印象的です。記事を読んでいると、佐倉病院さんはとてもチームワークが良く、ドクターもコメディカルも同じ目標に向かって猛進しているような印象を受けました。(先生のところだけかもしれませんが...。)「佐倉病院にしかできないこと」というのは、そのように「チームワークが良い病院でしかできないこと」なのでしょうか?それともまた何か他とは違う特徴が佐倉病院さんにはあるのでしょうか?基礎も臨床もしっかり行い、しかも全て患者さんのためになっている様子に感銘を受けました。ご回答宜しくお願いします。どこの場にいても、そこを、地球上で一番すばらしいところにしてやろうという気持ちが大切です。恵まれてすべてが整っているところほど、これからの人にとってつまらない場所はないと思います。とにかく、その場での問題点を探し、皆が一番困っているところを見つけ出し、その解決に向けて、できるとところを一歩一歩解決してゆく姿勢を評価、支援しあえる環境が佐倉病院にはあるということです。内科も、外科医に負けないような患者さんに感謝される治療学を確立しようと、研究テーマの根幹は、酸化、再生、免疫制御、栄養の4本柱で、おのおの磨いているところです。たとえば、呼吸器は抗酸化療法で間質性肺炎に挑戦、代謝は、肥満治療を分子から栄養、こころの問題と多面的に捉える治療、特に肥満外科治療が開始されましたがその術前術後のフォロー、フォーミュラー食(低エネルギー低糖質、高たんぱく食)の応用と基礎、糖尿病腎症に対するプロブコールを用いた抗酸化療法で透析療法移行抑制試験、循環器は、インターベンションに加えて、これから、難治性心不全に対する鹿児島大鄭教授の開発した和温療法実施と評価、睡眠時無呼吸と不安定狭心症の関係をみつけその治療システムの確立、消化器は、炎症性腸疾患のメッカとして、顆粒球除去療法、レミケード療法、神経内科は、排尿障害を中心に、パーキンソン病の深部脳刺激治療のバックアップ、再生医療も狙っています。研究は、各グループ専門を超えて互いに連携しています。原則として、できれば自然の法則性を体感するため、医師は基礎研究もする機会を経験してもらいたいものです。研究開発部の協力のもとに細胞培養、酵素学、遺伝子実験をできる体制を敷いています。要するに、病気を多面的にいくつかの独自の視点をもって診、医療を開拓してゆける人の育成がもっとも大切と考え、それには、チーム医療、他コメヂィカルとも力を合わせ、初めてできることと考えています。理想の地域連携とは先生がお考えになる「理想の地域連携」の姿とはどんなものでしょうか?また、その理想の姿になれない、理想の姿になるのを阻んでいる障害はなんでしょうか?(実現されていたら申し訳ないです。)現在、私も地域連携について勉強はしているものの、なかなか思うような形にできません。障害が多すぎて、「理想的」どころが「現実的」な連携フローにもなっていません。宜しくお願いします。地域となるとさまざまな価値観の人がおり、同じ言葉でも受け取り方が違ったり、利益配分に問題が出たりで、そう簡単に理想的な地域連携ができるわけではありません。しかし、今の医療は、個々の医療人が隔離状態で医療行為を行えるほど甘くなく、互いに、助け合って連携せざるをえないと思います。でも問題は、ただ患者さんを送りあえば医療連携になるかといえばそうでもなく、問題は患者さんも含めて、互いにわかりあい納得できることが大切で、それには情報の整理集約が必須です。私どもは、生活習慣病を中心としたヘルスケアファイルと呼ばれるノートを患者さん全員にお渡ししています。そこには、動脈硬化リスク因子、標準体重、BMI、臓器障害の有無、程度、さらに主要な検査値はグラフで提示するシステムを用いています。これで、関わる医師は無論、クラークさん、看護師さんも経過が一目瞭然。するとアドバイスも適切。また家族もわかり、応援しやすくなります。これを地域に広げたいというのが私どもの夢です。ただこのファイルは、血圧、糖尿、脂質、尿酸、体重、一般検査を含んでおり、全部網羅していると思います。わがままかもしれませんが、これ一冊にしていただきたいのです。一般には、00手帳が3つも5つももっておられる方もいますね。でもなんだかわからないというのが実情です。大人版、母子手帳を作るべきだと思います。チームワーク先生、チームをまとめ上げるために必要なものはなんでしょうか?チームワークというと「みんな仲良く」というイメージがありますが、決してそうではないと思います。きっと先生は、今までのご苦労の中から「これが大事!」というもの発見されていると思います。それを教えてください。宜しくお願いします。リーダーは、今自分らの分野で何が問題で、それを解決するために、どう力を互いに出し解決するかを提言し続けること。 即ち、小さなグループミーチングでも、プロジェクトを提示し、その成果がささやかでも出たら皆で確認し、面白がること。プロジェクトは、参加者全員が順に一つずつ持つように絶えず心がけていると、みんなに参加意識と存在感さらい自信が生まれます。すると、とたんに楽しく動き始めます。低糖質食私も低糖質食でメタボを脱却したものですが、抵糖質食の心血管病変に対してrisk reductionあるのでしょうか?食事の内容によっても大きく変化するのでしょうか?低糖質、高蛋白食が減量に効果があるとともに、血圧、血糖、脂質異常などの冠動脈リスク因子を減らすことは、海外のスタデイでも、ほぼ一致して報告されています。インスリン抵抗性解除作用と思います。ただし長期(1年)になると元に戻るとの報告もあり、それを鵜呑みに意味がないという人もいます。しかしその食事調査結果をみると、実際の摂取成分がもとに戻っており、実はそう長くは自己調整を続けられなかたというのが実態で、低糖質、高蛋白食は長期になると効果がなくなるというものではないわけです。御質問の「では実際、心血管イベントを減らせたか」はもっとも重要な点ですが、上述のごとく、通常食で成分調整を長年にわたり継続すること自体がほとんど不可能なため、年余にわたる低糖質、高蛋白食の冠動脈疾患の発生を抑えるかどうかの研究自体ができないのです。本当は、このような基本となる栄養組成の研究こそ、国が、コンプライアンスを保障できる食事の宅配便制度などを利用し、長期にわたる調査を企画運営すべきです。そこにこそ研究費をつぎ込むべきです。薬物のようにメーカー主導のエビデンスベーストメデイシンは、この分野では行われることはないでしょう。現在、ある程度コンプライアンスをよくして低糖質、高蛋白食の効果を見る方法とすれば、フォーミュラ食を一日一回用いるなどの方法が考えられます。また、長期のイベントの発生調査を、より短期に予測しうる方法があれば、即ち、動脈硬化のよいサロゲートマーカーがあれば早期に結論が出せるかもしれません。それには、新しい動脈硬化指標CAVIが使えるかもしれないとの淡い期待を、持っています。教授 白井厚治先生「「CAVI」千葉県・佐倉から世界へ 抗動脈硬化の治療戦略」

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准教授 平山陽示先生「全人的医療への入り口」

平山先生は循環器内科医を20年経験後、総合診療科の道に入る。医師が自分の専門領域しか診察しない今の医療体制を変化させるべく、総合的に診察して患者さんのメンタル面を含む治療アプローチを実践。東京医科大学病院における「総合診療科」の設立に尽力し現在活躍中である。プライマリ・ケアの重要性から総合診療へ大学病院での初期研修は、通常各診療科目をラウンドしますが、それだけではプライマリ・ケアの習得は困難です。専門診療科のラウンドでは入院患者ばかりを診察、外来患者を診察することがほとんどありません。大部分の患者さんは既に診断がついています。しかし、多くの患者さんは「疾患名」ではなく「主訴」で病院の外来を訪れます。そこでは患者さんの訴えから病気を診断していく重要なプロセスがあります。「症候論」といってもいいし、「診断学」「診断推論」と言っても構いませんが、この初期の段階では幅広い知識と技術が必要です。そして、この研修にはプライマリ・ケアを扱う部門が必要となります。例えば、循環器内科をラウンドすれば心筋梗塞の入院患者さんを診察。しかし、この患者さんが病院を訪れたのは「胸が痛かった」からであり、実際にはこの「胸痛」という症候から正しく診断しなければならないわけです。「胸痛」を主訴とする患者は心臓が原因であれば循環器科、肺が原因でならば呼吸器科、肋骨骨折ならば整形外科、帯状疱疹ならば皮膚科、心因性の胸痛ならば精神科に紹介することもあるわけです。循環器医は心臓由来の胸痛ではないと診断するだけではなく、その患者の胸痛の原因がなんであるのかを推論、院内でたらい回しをせずに適切な診療科に橋渡しするべきです。だからこそ専門治療のスぺシャリストを目指ししている医師にもプライマリ・ケアの知識が必要なのです。幅広いジェネラリストの上にスペシャリストが立つのです。ジェネラリストとしての地固めをしないと良いスペシャリストにはなれません。以前は、プライマリ・ケアを学ぶ場はあまりありませんでした。アクセスのよい都心にある東京医科大学は市民病院的な役割も果たしており、紹介状の有無に限らず、単なる風邪や下痢で来院する患者さんも比較的多く、プライマリ・ケアを学ぶ環境が揃っていました。それも総合診療科が育った要因です。また、この領域では全国的に有名な大滝純司教授をお迎えすることが出来たのも幸運でした。なぜ総合診療なのか東京医科大学病院総合診療科設立のきっかけは新医師臨床研修制度の始まりでした。新制度の目的がプライマリ・ケアの習得であるので、当院では初期研修医に総合診療科のラウンドが義務付けられています。最近では後期研修で総合診療科を希望する人が増えてきており、総合診療科が役に立つ診療科目であることを研修医たちが認知し始めているのを実感しています。総合診療科は、文字どおり総合的に患者さんを診る診療科であり、患者さんが訴えている症状を読み取り、身体所見や検査所見を加味して推論した診断で次なる専門診療科への道筋をつけるチーム医療と同時に、専門医の手を煩わせることもない一般的な疾患(Common disease)は総合診療科で治療をしています。また、総合診療では専門診療科との連携を図りながら、プライマリ・ケアを通して診療のの基礎を固めることができます。ですから、総合診療科の役割のひとつは、研修医に病気を診るのではなく患者さんを診るという態度を身に付けさせることでもあるのです。例えば、MUS(Medically unexplained symptom:医学的に説明できない症状)を訴えてくる患者さんにはメンタルな要因も多いわけですが、そのときに身体疾患がみつからなくとも"症状"まで否定することなく、その症状を現す意味について、患者さんの社会的環境要因も考えるぐらいのことが医師の頭の中にないといけません。いわゆる「全人的医療」、つまり病気を診るのではなく患者さんを診ることの教育が必要なのです。診療科目が細分化されすぎて専門的な知識のみで症状を追うのではなく、幅広いプライマリ・ケアの知識を持った上での診察が求められています。東京医科大学病院の研修医にこの意識を持たせることも総合診療科の重要な役割です。総合診療科という立場への理解不足総合診療科として専門診療科の医師と連携がうまくとれているかと言えば、必ずしもそうではありません。それは臓器専門医にプライマリ・ケアが十分に理解されてないからだと思います。総合診療科は初期診療の担い手ですが、決してスーパーマンではないので、専門診療科で診ないと言った患者さんを何でも引き受けることが出来るわけではありません。極端な例を挙げれば、原発不明がんの患者さんは、いくつかの臓器にがんが見つかっても原発巣が同定されないと、どの診療科も主治医になろうとはせず院内でたらい回しにされてしまう危険があります。だからといってプライマリ・ケアの総合診療科がこのような患者を受け持つことは適切ではありません。現に専門診療科からの患者さんの押し付けで疲弊している総合診療科も多々あるように聞いています。また、総合診療の場合、各診療科目との連携が重要となるのでコミュニケーション能力は極めて重要です。しかし、連携を図るのが容易でない時があります。その場合相手の診療科に患者さんを押し付けるのではなく「一緒に診てほしい」「相談に乗ってほしい」とお願いする心がけを指導しています。連携をとる苦労はどこにでもあると思いますが、難しいですね。総合医の果たす役割今の医療体制では、患者さんが自ら診療科を探すことが多いため、自ら選んだ診療科では病気が分からず帰宅するケースがあります。その意味では総合診療科は医療の玄関口として、その先に専門性の高い医師に依頼して先端治療へ導くなど役割は大きいです。また、プライマリ・ケアを通して診療の基本を研修医に教えるのも総合医であり総合診療科の役割です。現在では、総合的に診療ができるジェネラリストが求められています。総合診療科を目指すドクターがもう少し多くならなくては、今の医療体制の変革には限界があると思います。英国では家庭医制度が確立されており、患者がいきなり総合病院や大学病院に行くことはまずありません。家庭医に診てもらってから専門医へ紹介され診療を受けます。そのため家庭医になるためのプログラムが確立しています。我々の総合診療科でも家庭医養成プログラムを用意しており、何人かの後期研修医がそのプログラムに則って研修しています。家庭医はメンタル面を含めた総合的な診察をします。家族全員を診るため、大人は内科、子どもは小児科などの振り分けを行わず、家族に同じ症状があれば家庭内での原因も探ります。家族全体を診ていくという姿は医療の理想のひとつの型でもあります。もし、そういう家庭医を大学病院でも育てていくとしたら総合診療科がなくてはできないと思います。総合医認定制度がスタート総合診療科がしっかりとプライマリ・ケアを実践するには、専門医に委ねるべき患者を臓器別専門科がしっかり請け負ってくれることが大切です。総合診療と専門診療がうまく連携できていれば、より少ない専門医でも病院は機能するはずですし、それが本来の病院の姿だと私は思っています。厚生労働省も総合医を推進、「総合医認定制度」を視野に入れて検討しているようです。日本プライマリ・ケア学会、日本総合診療医学会、日本家庭医療学会の3学会は、今春にひとつにまとまって総合医(家庭や総合診療医)の育成プログラムと認定に向けてすでに準備が進んでいます。この認定制度により、首都圏はもとより地域医療も大きく変化、そして患者さん側の医療に対する意識も変化していくでしょうね。多くの総合医(ジェネラリスト)が活躍すれば患者さんは単なる風邪や下痢などの一般的な疾患で大病院を受診することも少なくなり、医療費削減にもつながります。私は東京医科大学病院において、総合診療科の第一線で活動してきました。現在取材も多く、注目を浴びている診療科目です。ぜひ、総合医(ジェネラリスト)を目指す人が多くなることを期待します。質問と回答を公開中!

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牛乳たんぱく質由来の新規ペプチド素材「オリゴミル」を開発

ロート製薬株式会社は12日、機能性素材の探索を重点研究テーマに掲げる研究拠点「ロートリサーチビレッジ京都」において、牛乳のたんぱく質から、新規ペプチド素材「オリゴミル」を開発したと報告した。研究の結果、「オリゴミル」は「免疫力」の指標となる‘IL-12’の産生を高める働きが他の素材よりも強いことを確認したという。牛乳由来で水に溶けやすいという特長もあり、「オリゴミル」は風邪をひきやすい時期などの健康維持に有用な機能性素材であると考えているとのこと。なお、同成果は日本フードファクター学会第14回学術大会(11月15~17日、神戸市)にて発表される。詳細はプレスリリースへhttp://www.rohto.co.jp/comp/news/?n=r091112

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新型インフルで医療現場は患者6割増 受診控えの悪影響も

病院検索サイトQLife(http://www.qlife.jp/)を運営する株式会社QLifeが行った、新型インフルエンザ流行が、医療機関の現場にどのような影響を及ぼしているかの緊急アンケート調査によると国民は混乱して医療機関に殺到し、患者数は6割増え、医師への必要以上の要求が増し、発症数以上に診療現場の仕事が増えていることが報告された。また3割の医療機関では、他疾患の患者が「受診控え」する悪影響も出ているという。同調査は10月20日~23日の3日間、インターネット調査にて全国の内科医師300人(病院56%、診療所 44%)を対象に行われた。風邪様・インフルエンザ様症状の患者数について、昨年同時期との比較おいては、68%が「昨年より多い」と答え、「昨年より少ない」は8%にとどまった。特に「病院」の方が増加傾向が激しい(2倍程度:病院33% vs 診療所21%、3倍程度:病院8% vs 診療所2%)。平均すると、病院での患者数は昨年比77%増、診療所では48%増となっていて、全体では64%増の患者数が発生していた。昨年までの季節性インフルの患者と比べて、新型インフルの患者の特徴を挙げてもらったところ、「過剰に心配・恐怖している」が最も多く、20%の医師が感じていた。「軽症でも受診」「検査の希望多い」も上位に入り、実際の発症数以上に医療機関の現場が混雑している様子がうかがえる。なお「例年と変わらない」は28%だった。糖尿病・高血圧など他の疾患の患者への影響については、30%の医療機関で「受診控え」がみられた。他疾患患者は、院内でのインフルエンザ・ウイルス感染の恐れやインフルエンザ患者の殺到で、医療機関から遠ざけている可能性があるという。また、新型ワクチンの優先接種対象になっている「基礎疾患がある人」の定義がどの程度、明瞭な形で医師に届いているかの確認では、病院の61%、診療所の52%、全体では57%の医師が、「明瞭な定義が届いていない」とした。ワクチン接種に関して国に望むことについては、「供給量を増加/充分に」が4人に1人が答え、圧倒的に望んでいた。情報面の要望も多く、「迅速さ」「正確さ」「伝達経路」「順位マスコミよりも先に医師に)」「詳細さ(曖昧なのは困る)」など多岐にわたっていた。「情報不全のせいで医療現場は混乱をきたしており、その対処負荷を末端医師は背負わされて疲弊している」とストレスを訴えている内容が多かった。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.qlife.jp/square/pdf/091026qlife_news.pdf

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新型インフルエンザの地域感染発生の突き止め方:イギリス

イギリス、バーミンガムのHealth Protection Agency Realtime Syndromic Surveillance TeamのAlex J Elliot氏らは、今般の新型インフルエンザ(いわゆる豚インフル、A/H1N1)の、イギリスにおける最初の地域感染を突き止めるため、2つのモニタリング方法について評価を行った。1つは、風邪症状あるいはインフルエンザ症状もしくは両方の症状を有し、NHSの健康電話サービスを利用した患者から同意提供を受けた自己検体からの感染結果。もう1つは、Health Protection Agency(HPA)地方マイクロバイオロジー研究室で、インフルエンザ疑い症例に対する臨床アルゴリズムに従い検査が行われた患者検体からの感染結果である。結果報告は、BMJ誌2009年9月12日号(オンライン版2009年8月27日号)にて掲載されている。5月末~6月末のイギリス6地域の新型インフル発現動向を調査評価調査は、2009年5月24日~6月30日に、6つの地域を対象に行われた。主要転帰尺度は、新型インフルエンザと確認されたラボ検体の割合とされた。結果、新型インフルエンザ(A/H1N1)の感染は、自己検体1,385例からは91例(7%)が見つかった。加えて、インフルエンザA/H3感染が8例、インフルエンザB型感染が2例も見つかった。NHS健康電話サービス利用増加とラボでの検出増加はぴったりマッチ自己検体からの感染症例の割合の週ごとの変化は、HPA地方マイクロバイオロジー研究室から報告された感染事例の割合増加とぴったり適合していた。そして両モニタリング結果の比較から、6月23日~30日の週に地域感染がロンドンとウェスト・ミッドランズで起きていたことが判明した。1ヵ所のHPA地方マイクロバイオロジー研究室からだけで100例以上の新型インフルエンザが見つかり始め、毎週、検体のうち20%以上で陽性が見つかり始めていた。Elliot氏は、「地域感染の傾向は臨床マネジメントを通じて検知された。その傾向は、NHS電話サービスの利用率とHPAラボで感染が確認された割合を反映していた」と述べ、「HPAラボからの報告だけでは限りがある。それは、渡航歴および既感染者との接触に関する情報が不明だからである。HPAラボからの報告は、地域感染が起きていることを確認するのに用いるべきだろう」とまとめている。

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米国における流行性耳下腺炎の再燃で予防接種改善の必要性

米国では1990年以降、学童に対する流行性耳下腺炎(おたふく風邪)ワクチンの2回接種が広範に行われるようになってから、その流行発生は歴史的な低さが続いていたが、2006年に米国内としては過去20年間で最大の流行が発生した。そこで米国疾病管理予防センター(CDC)が全国調査を実施した。NEJM誌2008年4月10日号より。2006年に発症した6,584例と予防接種率データを調査米国は2010年までに流行性耳下腺炎を根絶するという目標を掲げたが、2006年に計6,584例の発生が報告されたことから、同年の耳下腺炎症例に関する全国データに加えて、最も患者が多かった州からの詳細な症例データ、および3つの全国調査に基づく予防接種率データを検証した。最多発の中西部8州で予防接種による免疫付与に失敗か全症例の76%が3~5月に発症し、85例が入院したが、死亡は報告されなかった。また全体の85%は、中西部の隣接する8州に居住していた。耳下腺炎の全国的発病率は、人口10万人当たり2.2人で、18~24歳の年齢層が最も発症率が高く、他の全年齢層を合計した発症率の3.7倍に達していた。これらの患者の83%は当時、大学に在籍していた。最も流行した8州の予防接種状況では、住民全体の63%と、18~24歳の84%が、流行性耳下腺炎ワクチンの2回接種を受けたことが確認された。大流行に先立つ12年間、未就学児童に対する耳下腺炎の第1回予防接種率は、全国で89%以上、最も流行した8州では86%以上だった。2006年における、若年者に対する第2回接種は、米国史上最高の87%だった。しかし、流行性耳下腺炎を含むワクチン2回接種が高率であるにもかかわらず、耳下腺炎の大流行が起こったのは、おそらく学童期に予防接種を受けた中西部の大学生と同年代の若者たちに、ワクチン2回接種でも免疫が成立しなかったことを意味する。このためCDCは「将来の流行性耳下腺炎発生を回避し、耳下腺炎の根絶を成し遂げるには、より効果的なワクチンか、予防接種方針の変更が必要になるだろう」と報告をまとめ警告を発している。(武藤まき:医療ライター)

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早期・持続的・重層的な非薬物的介入は有効なインフルエンザ対策となる

インフルエンザ・パンデミック(世界的大流行)への重要な対策の1つに、非薬物的介入がある。流行時期を遅らせ、全体の発病率やピークを低下させ、死亡者数を減らす可能性のほか、ワクチンや抗ウイルス剤の生産と供給に時間的余裕をもたらす可能性があるからだ。最適かつ適切な非薬物的介入は、医療サービスと発症地域の負担を減少させることになる。ミシガン大学医学部医学史センターのHoward Markel氏らは、最適かつ適切な非薬物的介入を明らかにするため、20世紀最悪と言われたいわゆる「スペイン風邪」流行時の、全米43都市における非薬物的介入の状況を調べた。JAMA誌8月8日号の報告から。非薬物的介入を3つのカテゴリーに分類し比較検証本研究は、1918年9月8日から1919年2月22日の間に全米43都市で流行を緩和するために実行された非薬物的介入を、史実研究や統計学的解析、疫学的分析をもとに検証された。調査対象は、非薬物的介入のタイミング、期間、組み合わせによる都市ごとの死亡率の差異、先行流行波による集団感染率の変化、年齢および性分布、人口規模・密度など。非薬物的介入は主に「学校閉鎖」「集会の禁止」「隔離、封鎖」の3つにカテゴリー化された。主要評価項目は、週間超過死亡率(EDR)、非薬物的介入開始からファーストピークEDRまでの時間、ファーストピークの週間EDR、そして対象期間24週の累積EDR。「学校閉鎖」+「集会の禁止」を34都市で実施24週にわたる43都市の肺炎・インフルエンザの超過死亡は115,340人(EDR、人口500/100,000)だった。各都市は非薬物的介入の3つのカテゴリーのうち、少なくとも1つを採用しており、組み合わせでは「学校閉鎖」+「集会の禁止」が最も多く34都市(79%)で実行していた。この組み合わせの実行期間中央値は4週(範囲1-10週)で、週間EDR低下と強い相関を示した。また、非薬物的介入を早期に実行した都市ほどピーク死亡率を遅らせ(Spearman r=-0.74、P<0.001)、ピーク死亡率は低く(同 r =0.31、P=0.02)、総死亡率が低かった(同 r=0.37、P=0.008)。介入期間の長さと総死亡率の減少には統計学的に有意差が認められた(同 r=-0.39、P=0.005)。Markel 氏らは、「これらの所見は、非薬物的介入を早期から持続的かつ重層的に行うこととインフルエンザによる死亡率の減少との強い関連性を示すもの。インフルエンザ大流行への対策として、ワクチン開発や薬物療法と並んで非薬物的介入を考慮に入れるべきだ」と結論付けている(武藤まき:医療ライター)

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