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重症CKDのRAS阻害薬中止で、腎機能は改善するか/NEJM

 レニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬(ACE阻害薬、ARB)は、軽症~中等症の慢性腎臓病(CKD)の進行を抑制するが、重症CKD患者ではRAS阻害薬を中止すると、推算糸球体濾過量(eGFR)が上昇し、その低下が遅延する可能性が示唆されている。英国・Hull University Teaching Hospitals NHS TrustのSunil Bhandari氏らは、「STOP ACEi試験」において、重症の進行性CKD(ステージ4/5)患者では、RAS阻害薬の投与を中止しても、継続した患者と比較して3年後のeGFR低下に関して臨床的に重要な変化はなく、死亡率も同程度であることを示した。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2022年11月3日号に掲載された。英国の重症CKD患者対象の無作為化試験 STOP ACEi試験は、重症の進行性CKD患者におけるRAS阻害薬の中止が、eGFRを上昇させるか、あるいは安定化させるかの検証を目的とする非盲検無作為化試験であり、英国の37施設で参加者の登録が行われた(英国国立健康研究所[NIHR]と英国医学研究会議[MRC]の助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、ステージ4/5のCKD(体表面積補正eGFR<30mL/分/1.73m2)で、透析および腎移植を受けておらず、過去2年間にeGFRが2mL/分/1.73m2以上低下し、ACE阻害薬またはARBの投与を6ヵ月以上受けている患者であった。被験者は、RAS阻害薬の投与を中止する群または投与を継続する群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは3年後のeGFRで、腎代替療法開始後のeGFRは除外された。副次アウトカムは、末期腎不全(ESKD)および腎代替療法の複合、腎代替療法(ESKD患者を含む)およびeGFRの50%以上低下の複合、死亡などであった。生活の質や運動能にも有意差はない 411例(年齢中央値63歳、男性68%)が登録され、投与中止群に206例、投与継続群に205例が割り付けられた。ベースラインのeGFR中央値は18mL/分/1.73m2、29%がeGFR<15mL/分/1.73m2、尿蛋白中央値は115mg/mmolであった。また、糖尿病(1型、2型)が37%、糖尿病性腎症が21%含まれた。58%が3剤以上の降圧薬、65%がスタチンの投与を受けていた。 3年の時点で、最小二乗平均(±SE)eGFRの値は、中止群が12.6±0.7mL/分/1.73m2、継続群は13.3±0.6mL/分/1.73m2であり、両群間に有意な差は認められなかった(群間差:-0.7、95%信頼区間[CI]:-2.5~1.0、p=0.42)。また、事前に規定されたサブグループで、アウトカムの異質性は観察されなかった。 3年時のESKDおよび腎代替療法の複合(中止群62%[128/206例]vs.継続群56%[115/205例]、ハザード比[HR]:1.28[95%CI:0.99~1.65])、腎代替療法(ESKD患者を含む)およびeGFRの50%以上低下の複合(68%[140/206例]vs.63%[127/202例]、相対リスク[RR]:1.07[95%CI:0.94~1.22])、死亡(10%[20/206例]vs.11%[22/205例]、HR:0.85[95%CI:0.46~1.57])について、両群間に有意差はなかった。また、生活の質(KDQOL-36)や運動能(6分間歩行距離)にも有意差はなかった。 重篤な有害事象(52% vs.49%)および心血管イベント(108件vs.88件)の頻度は、両群で同程度であった。 著者は、「これらの知見は、進行性CKD患者では、RAS阻害薬の投与中止により腎機能、生活の質、運動能が改善するとの仮説を支持しない」とまとめ、「本試験は、RAS阻害薬の中止が心血管イベントや死亡に及ぼす影響の評価に十分な検出力はなかったが、腎機能に関して中止による利益はないことが明らかになった。そのため心血管系の安全性を検討するための、より大規模な無作為化試験を行う理論的根拠はほとんどないと考えられる」としている。

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救急患者の低血糖の原因は副腎不全が意外に多い

 救急部門に収容された患者の低血糖の原因として、血糖降下薬、飲酒に続き、副腎不全が3番目に多いというデータが報告された。新小文字病院内分泌・糖尿病内科の河原哲也氏らの研究結果であり、詳細は「Journal of the Endocrine Society」に8月4日掲載された。同氏は、「副腎不全による低血糖はわれわれが考えているよりもはるかに多い可能性がある。原因不明の低血糖症例では副腎機能を評価すべきと考えられる」と述べている。 低血糖の大半は原因を特定可能なものの、救急患者の低血糖の約1割は原因不明との報告も見られる。一方、低血糖の既知の原因の一つとして副腎不全が挙げられ、適切に治療されない場合、副腎クリーゼなどの重篤な状態につながる可能性がある。ただし、救急患者の低血糖原因としての副腎不全の実態は明らかにされていない。河原氏らは、同院の救急部門で低血糖が認められた患者を対象として、この点の詳細な検討を行った。 2016年4月~2021年3月に同院救急部門に収容された患者のうち、低血糖症状の有無にかかわらず、血糖値70mg/dL未満であることが確認された18歳以上の患者528人を解析対象とした。妊婦や迅速ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)負荷試験施行の同意が得られなかった患者は除外されている。年齢中央値は62歳(範囲19~92)であり、52.1%が男性で、血糖値は平均48.5mg/dL(95%信頼区間31.5~54.7mg/dL)だった。96.0%にあたる507人は、発汗、動悸、振戦、空腹感、めまい、せん妄などの低血糖症状が出現していた。 解析対象528人のうち389人(73.7%)は、血糖降下薬が処方されていた。そのほかの低血糖を来し得る原因として、35人(6.6%)に飲酒、19人(3.6%)に重症感染症または敗血症、18人(3.4%)に低栄養、15人(2.8%)に悪性腫瘍、13人(2.5%)に肝機能障害などが認められた。また、インスリン自己免疫症候群が4人(0.8%)、インスリノーマが3人(0.6%)、非糖尿病の血液透析症例が2人(0.4%)、非膵島細胞腫瘍が1人(0.2%)含まれていた。 迅速ACTH負荷試験は、血糖降下薬が処方されていた糖尿病患者を除く139人に対して施行した。その結果、32人(解析対象全体の6.1%)が血清コルチゾールレベル18μg/dL未満であり、副腎不全と診断された。前記の低血糖を来し得る原因別に見た、副腎不全患者の割合は、飲酒者では35人中2人(5.7%)、重症感染症または敗血症では19人中7人(36.8%)、低栄養では18人中1人(5.6%)、悪性腫瘍では15人中4人(26.7%)だった。 また、副腎不全患者は、副腎機能正常患者に比べて血清ナトリウム値が低く(132対139mEq/L、P<0.01)、好酸球比率が高く(14対8%、P<0.01)、収縮期血圧が低かった(120対128mmHg、P<0.05)。血糖値は有意差がなかった。インスリン負荷試験、CRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)負荷試験、持続的ACTH負荷試験などにより、副腎不全の原因を精査した結果、原発性(アジソン病)が32人中3人、下垂体性が27人、視床下部性が2人だった。 以上より著者らは、「われわれの研究では、救急部門に収容された時点で低血糖を来している患者のその原因として副腎不全が3番目に多く、予想よりもはるかに高頻度に認められた」と結論付けている。また、迅速ACTH負荷試験は比較的簡便に施行でき、安全性も高く、かつ低コストであるとして、「原因不明の低血糖、特に低ナトリウム血症や低血圧、好酸球増多を伴う場合は、積極的に迅速ACTH負荷試験を行い副腎機能を確認すべきではないか」と提案している。

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透析開始2週後の高BMIが死亡リスクの低さと関連―国内単施設での検討

 透析導入時点のBMI低値は死亡リスクの高さと関連する一方、透析開始2週間後のBMI高値は死亡リスクの低さと関連するというデータが報告された。中東遠総合医療センター腎臓内科の稲垣浩司氏らの研究によるもので、結果の詳細は「PLOS ONE」に6月24日掲載された。 肥満は代謝性疾患や心血管疾患、慢性腎臓病(CKD)のリスク因子だが、一方で高齢者や一部の慢性疾患患者ではBMI高値の方が死亡リスクが低いという、「肥満パラドックス」と呼ばれる現象が見られることが知られている。日本人透析患者でも、BMIが低いほど死亡リスクが高いとする報告がある。ただし、BMI高値が死亡リスクの低さと関連することは示されていない。また透析患者のBMIは体液量によって大きく変動するため、どの時点でBMIを評価するかによって、死亡リスクとの関連性が異なる可能性がある。そこで稲垣氏らは、初回透析時のBMI、および、体液過剰が是正されたと考えられる透析開始2週間後のBMIと、全死亡のリスクとの関係を検討した。 同院で2013~2019年に維持血液透析を開始した20歳以上の患者284人のデータを後方視的に解析。エンドポイントは、腎移植の施行、追跡不能、または2022年2月の追跡終了までの全死亡とした。なお、追跡期間が3カ月未満の18人は解析から除外した。解析対象者266人の平均年齢は68.9±12.0歳、男性が66.5%で、54.1%は糖尿病、31.2%は心血管疾患を有していた。 初回透析時の平均BMIは23.3±4.24で、BMI18.5未満の「低値群」が8.3%、18.5~23.9の「正常群」が55.6%、24以上の「高値群」が36.1%を占めていた。透析開始2週間後は、平均BMIが22.0±3.80であり、低値群18.4%、正常群54.9%、高値群26.7%と、全体的にBMIが低下していた。また、足浮腫を認める患者は初回が58.3%、2週間後が12.8%であり、心胸郭比は同順に、54.6±6.98%、52.4±6.57%だった。 平均3.89±2.12年の追跡で30.1%が死亡。3年死亡率を初回透析時のBMIカテゴリー別に見ると、低値群40.4%、正常群16.4%、高値群10.5%であり、低値群は他の2群より有意に死亡率が高かった。透析開始2週間後のBMIカテゴリー別では、低値群28.5%、正常群17.7%、高値群4.5%であり、高値群は他の2群より有意に死亡率が低かった。 次に、単変量解析によって死亡率と有意な関連が認められた因子(年齢、BMIカテゴリー、収縮期血圧、eGFR、心血管疾患の既往など)、および性別、糖尿病の影響を調整したCox回帰分析を施行。その結果、初回透析時のBMI低値群は、正常群に比べて有意に死亡リスクが高いことが示された〔ハザード比(HR)2.39(95%信頼区間1.13~5.03)〕。BMI高値群は正常群と有意差がなかった〔HR0.72(同0.40~1.29)〕。 一方、透析開始2週間後のBMIに関しては、低値群は正常群との差が有意でなくなり〔HR1.43(同0.81~2.53)〕、高値群の死亡率は正常群より有意に低くなっていた〔HR0.38(同0.18~0.81)〕。なお、65歳以上の高齢者のみで検討すると、BMI高値群ではより大きなリスク低下が示された〔HR0.23(同0.09~0.61)〕。 著者らは、「初回透析時のBMI低値は死亡リスクの高さと関連し、透析開始2週間後のBMI高値は死亡リスクの低さと関連しており、高齢者ではこの関連が顕著だった」とまとめている。また、「体液過剰是正後のBMI高値は、高齢者や慢性疾患患者での死亡リスクの低下との関連が示唆されている筋肉量や脂肪量の多さを表していると考えられる。よって本研究の結果は、透析患者においても十分な栄養と身体活動が、予後改善に寄与する可能性を示唆している」と述べている。

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教育研修プログラムとして高く評価(解説:野間重孝氏)

 現在ヨード造影剤を用いた検査・治療手技は日常診療で欠かすことのできない存在となっている。その際問題になるのが造影剤による急性腎障害(CIN)であり、ヨード造影剤投与後72時間以内に血清クレアチニン値が前値より0.5mg/dL以上、または前値より25%以上上昇した場合と定義される。CINは院内発症の急性腎障害(AKI)の10~13%に及ぶと考えられ、多くのAKIが不可逆的であるのと同様にCINもその多くが不可逆的であり、その後の治療の大きな障壁となる。検査・治療に当たる医師は最大限の注意を払うことが求められ、裏付けとなる十分な知識・経験と技術が求められるところとなる。 本研究は非緊急冠動脈造影や経皮的冠動脈インターベンションを施行する心臓専門医に対して教育、造影剤投与量および血行力学的に誘導された輸液目標に対するコンピュータによる臨床的意志決定支援、監査とフィードバックを行い、介入前後の成績を比較検討したものである。この一連の報告は、研究というより教育・研修プログラムの効果判定とその報告と考えるべきで、その意味から今回の試みは成功だったと評価されると考えられる。 一連のプログラムの実施と評価にStepped Wedge Cluster Randomized Trial方式を用いたことは的を射ているといえる。この方法にはあまりなじみのない方が多いのではないかと思うので解説させていただくと、地域や施設などの1つのまとまり(この場合はある医師の集団)をクラスターとして、介入時期をランダム化し、介入時期をずらして全クラスターで介入を実施する試験デザインをいう。この方法では介入前後の比較はできるが非介入群vs.介入群の無作為比較はできないため、一般的な比較対照試験というより一種のコホート研究と考えるのが適当である。本試験で重要な点は患者を対象とした無作為試験を行うことなく、参加した全医師が指導プログラムを受講し、受講の効果に対する評価を受けたことである。こうした評価方法は私たちも何か重要な研修プログラムを組んで実施する場合、大いに参考にすべき事例だと考えられよう。 繰り返しになることを恐れずに述べると、本研究をCIN発症予防法の検証と捉える読み方は適当ではない。CINに対しては予防が重要であるが、さまざまな臨床研究が行われているものの、現時点での有効な予防法は、造影剤使用量を最小限にすることと、適切な輸液のみだからである。有効な治療薬は見いだされておらず、緊急の透析も効果がないことが知られている。そうした状況の中、検査・治療前の患者のリスクと病態の把握、造影剤使用時に中止すべき薬剤に対する注意などが重要であることは言うまでもない。 このような講習を受けて検査・治療に当たるアンジオグラファーは何を考えるだろうか。輸液量はチームの計画の問題であるが(パスで決められている場合が多い)、造影剤の使用量は一に掛かって施行医の技量と判断能力に掛かっていることに気付くはずである。それが実際の数字として目の前に提示されるのである。必ず新たな向上心が醸成されるはずである。こうしたプログラムに基づいて自覚を新たにした若手医師たちが育ってくれるとするならば、こんなに頼もしいことはない。本研究を教育・研修プログラムとその報告として高く評価するものである。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その4【「実践的」臨床研究入門】第24回

下記は、連載第22回でも提示した、われわれのコクラン・システマティックレビュー(SR:systematic review)論文1)のクリニカル・クエスチョン(CQ)とリサーチ・クエスチョン(RQ)のP(対象)とI(介入)です。CQ:アルドステロン受容体拮抗薬は維持透析患者の予後を改善するかP:維持透析患者I:アルドステロン受容体拮抗薬今回からは、このコクランSR論文1)の検索式の具体例を読み解きながら、実際の検索式の構造について解説します。Pの構成要素をORでつないでまとめる検索式はPとI(もしくはE)で構成すると説明しました(連載第22回参照)。実際の検索式ではPとI(もしくはE)の構成要素に分けて、論理演算子(ANDやOR)でつなぎます。PやI(もしくはE)、それぞれの構成要素は、MeSH(Medical Subject Headings)やテキストワードで表される類似した語句を"OR"でつなげて、できるだけ検索漏れが少なくなるようにするのです。それでは、われわれのコクランSR論文1)の実際の検索式をみてみましょう(参照 Appendix 1. Electronic search strategies)。データベースごと(CENTRAL、MEDLINE、EMBASE)の検索式が公開されています。これらの検索データの違いについては連載第17回をご参照ください。ここでは、実際の文献検索の参考になるように、MEDLINEの検索式をPubMed用に変換した検索式を用いて解説します。以下は、Pの構成要素に該当する部分の検索式です。1.Renal Replacement Therapy[mh:noexp]2.Renal Dialysis[mh:noexp]3.Peritoneal Dialysis[mh]4.CAPD[tiab] OR CCPD[tiab] OR APD[tiab]5.Hemodiafiltration[mh]6.Hemodialysis, home[mh]7.dialysis[tiab]8.hemodialysis[tiab] OR haemodialysis[tiab]9.hemofiltration[tiab] OR haemofiltration[tiab]10.hemodiafiltration[tiab] OR haemodiafiltration[tiab]11.end-stage-kidney[tiab] OR end-stage-renal[tiab] OR endstage-kidney[tiab] OR endstage-renal[tiab]12.ESKD[tiab] OR ESKF[tiab] OR ESRD[tiab] OR ESRF[tiab]13.#1 OR #2 OR #3 OR #4 OR #5 OR #6 OR #7 OR #8 OR #9 OR #10 OR #11 OR #12まず、#1-3ではPの構成要素の概念である「透析」に関連するMeSH term (統制語)がリストアップされ、「タグ」でもMeSHが検索項目として指定されています(連載第23回参照)。#3のタグは[mh]、#1、 2のタグは[mh: noexp]ですが、そのMeSH term に付随する下位のMeSH termも含むか含まないか、という指定の違いになります。たとえば、#1の"Renal Replacement Therapy"というMeSH termの階層構造は下記およびリンクのようになっています。○Renal Replacement Therapy■Continuous Renal Replacement Therapy■Hemofiltration■Hemoperfusion■Hybrid Renal Replacement Therapy■Intermittent Renal Replacement Therapy■Kidney Transplantation■Renal Dialysis●Hemodiafiltration●Hemodialysis, Home●Peritoneal DialysisこのコクランSR論文1)のPの構成要素の概念は「透析」のなかでも慢性期に行う「維持透析」です。したがって、"Renal Replacement Therapy"のひとつ下の階層に位置するMeSH termのうち、急性期に行う"Continuous Renal Replacement Therapy"や、特殊な血液浄化療法である"Hemoperfusion"、”Hybrid Renal Replacement Therapy"、”Intermittent Renal Replacement Therapy”、また"Kidney Transplantation"は、Pの構成要素に該当しません。そのため、Renal Replacement Therapy[mh:noexp]として、これらの下位のMeSH termは含まない検索式にしているのです。"Renal Dialysis”以下の「維持透析」の概念に含まれるMesh Termは#2、 3、 5、 6で個別に指定して補完しています。また、#4、 7、 8-10ではMeSHで拾えない同義語・関連語をテキストワードで記述し、「タグ」でTitle/Abstractを指定して検索式に組み込んでいます(連載第23回参照)。Pである維持透析患者は末期腎不全患者という表現もされます。#11では「フレーズ検索」を使用することにより、これらのテキストワードが「タグ」で指定したTitle/Abstractに含まれる論文を検索しています。「フレーズ検索」とはハイフンでつないだ単語が指定した順序で出現するフレーズを検索する機能です。ハイフンを使わずに、フレーズを””(ダブルクォーテーション)で囲んでも「フレーズ検索」になります。#12は、”ESKD”や”ESKF”などの末期腎不全を示す略語をカバーしています。最後に、#13で#1から#12までをORでつなぐことにより、Pの構成要素の検索式が出来上がります。1)Hasegawa T,et al. Cochrane Database Syst Rev. 2021 Feb 15;2:CD013109.

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冠動脈造影/PCI時、コンピュータ支援で急性腎障害軽減/JAMA

 非緊急冠動脈造影や経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行する心臓専門医に対し、教育プログラムや造影剤投与量などに関するコンピュータによる監査とフィードバックを伴う臨床意思決定支援の介入を行うことで、これら介入のない場合と比べて施術を受けた患者が急性腎障害(AKI)を発症する可能性は低く、時間調整後絶対リスクは2.3%低下した。また、造影剤の過剰投与について同リスクの低下は12.0%だった。カナダ・カルガリー大学のMatthew T. James氏らが、心臓専門医34人とその患者を対象に行ったクラスター無作為化試験の結果で、JAMA誌2022年9月6日号で発表した。AKIは、冠動脈造影やPCIでは一般的な合併症で、高コストおよび有害長期アウトカムと関連する。今回の結果について著者は、「こうした介入が今回の試験以外の環境下でも有効性を示すかどうか、さらなる検討が必要である」と述べている。患者7,106人を対象にクラスター無作為化試験 研究グループは、カナダ・アルバータ州の心臓カテーテル検査室3ヵ所で侵襲的治療を行う心臓専門医全員を対象に、ステップウェッジ・クラスター無作為化試験を行った。無作為化の開始日は、2018年1月~2019年9月の間。適格患者は、非緊急冠動脈造影またはPCI、もしくはその両方を施行し、透析は行っておらず、AKIリスクが5%超と予測される18歳以上だった。34人の医師が選択基準を満たした患者7,106人に対して7,820件の処置を行った。被験者のフォローアップ終了は2020年11月だった。 介入期間中、心臓専門医は、教育支援プログラム、造影剤投与量や血行力学ガイド下静脈内輸液の目標値に関するコンピュータによる臨床意思決定支援、および監査・フィードバックを受けた。介入期間前(対照期間)は、心臓専門医は通常ケアを提供し、介入は受けなかった。 主要アウトカムはAKIの発生とした。副次アウトカムは12項目で、造影剤投与量、静脈内輸液量、および主要有害心血管・腎イベントなどだった。解析は、時間調整モデルを用いて行われた。AKI発生率、介入群7.2%、対照群8.6% 心臓専門医34人は診療グループや医療センターにより8集団に分けられた。このうち、介入群には医師31人、患者4,032人、4,327件の処置が含まれた(患者の平均年齢:70.3歳[SD 10.7]、女性32.0%)。対照群は医師34人、患者3,251人、3,493件の処置が含まれた(70.2歳[SD 10.8]、33.0%)。 AKI発生率は、介入期間中7.2%(4,327件中310イベント)、対照期間中8.6%(3,493件中299イベント)だった(群間差:-2.3%[95%信頼区間[CI]:-0.6~-4.1、オッズ比[OR]:0.72[95%CI:0.56~0.93]、p=0.01)。 12項目の副次アウトカムのうち、8項目は両群で有意差がみられなかった。造影剤投与量が過剰だった処置の割合は、対照期間中51.7%から介入期間中は38.1%に減少した(群間差:-12.0%[95%CI:-14.4~-9.4]、OR:0.77[95%CI:0.65~0.90]、p=0.002)。静脈内輸液投与が不十分だった処置の割合も、対照期間中の75.1%から介入期間中は60.8%に低下した(群間差:-15.8%[95%CI:-19.7~-12.0]、OR:0.68[95%CI:0.53~0.87]、p=0.002)。 主要有害心血管・腎臓イベントも、両群で有意差はなかった。

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慢性腎臓病+睡眠時無呼吸で死亡リスク上昇―国内医療費請求データの解析

 慢性腎臓病(CKD)に睡眠時無呼吸症候群(SAS)を併発している場合、死亡や心血管疾患などのリスクが有意に高いことを示すデータが報告された。名古屋大学医学部附属病院腎臓内科の田中章仁氏らが、国内医療機関の医療費請求データを解析した結果であり、詳細は「Frontiers in Medicine」に5月31日掲載された。SASに対して持続陽圧呼吸療法(CPAP)を行っているCKD患者では、リスク上昇が見られないことも分かった。 CKD患者はSAS有病率が高いことが知られているが、両者の併発が予後へどの程度の影響を及ぼすかは明らかでなく、またSASに対してCPAP治療を行った場合に予後が改善するのか否かも不明。そこで田中氏らは、国内449病院の医療費請求データベースを用いて、この点の解析を行った。 2008年4月~2021年8月にCKDとして治療が行われたと考えられる92万4,238人から、年齢が20歳以上で血清クレアチニンが2回以上測定され1年以上の追跡が可能であり、ベースライン時に腎代替療法(透析療法、腎移植)を受けていない3万2,320人を解析対象とした。このうち1,026人(3.2%)がSASを併発していた。 傾向スコアを用いて、年齢、性別、eGFR、ヘモグロビン、高血圧・糖尿病・心不全・心房細動・心房粗動の既往などをマッチさせ、SAS併発群と非併発群それぞれ940人からなるデータセットを作成。この両群を比較すると、アルブミン(3.76対3.87mg/dL)や総蛋白(6.83対6.94mg/dL)、およびカリウム(4.40対4.46mEq/L)はSAS併発群で有意に低値だったが、その他の臨床検査値やCKD病期(KDIGOステージ)、併発疾患有病率などは有意差がなかった。 主要評価項目を、死亡、腎代替療法の開始、心不全・虚血性心疾患・脳卒中による入院で構成される複合エンドポイントとして、カプランマイヤー法で経過を比較すると、SAS併発群はイベント非発生率が有意に低値で推移していた。ただし、SAS併発群の35%に当たるCPAP施行群(330人)では、イベント非発生率がSAS非併発群と同レベルで推移していた。 SAS非併発群を基準にイベント発生リスクを比較すると、未調整モデルではハザード比(HR)1.26(95%信頼区間1.10~1.45)であり、交絡因子(年齢、性別、eGFR、アルブミン、カリウム)を調整後にもHR1.25(同1.08~1.45)と、SAS併発群は有意にハイリスクであることが示された。 次に、SAS併発群をCPAP施行の有無で二分して検討すると、CPAPを施行していない群では、未調整モデル〔HR1.42(1.22~1.65)〕、交絡因子調整モデル〔HR1.32(1.12~1.55)〕ともに、有意なリスク上昇が認められた。一方、CPAP施行群では、未調整モデル〔HR1.00(0.84~1.23)〕、交絡因子調整モデル〔HR0.96(0.76~1.22)〕であり、イベント発生リスクはSAS非併発群と同等であることが明らかになった。 このほか、eGFRの低下速度を比較すると、有意差はないながらもSAS併発群で速く、特にCPAPを施行していない群で速いことが分かった(SAS非併発群は-1.7±5.7/分/1.73m2/年、SAS併発CPAP施行群は-2.0±4.7/分/1.73m2/年、SAS併発CPAP非施行群は-2.2±5.1/分/1.73m2/年)。 著者らは、本研究が医療費請求データの解析であるため、SASの重症度を含めて詳細な患者背景が不明であることを限界点として挙げた上で、「SASを併発しているCKD患者は予後不良となりやすく、CPAP治療が予後を改善する可能性がある」と結論付けている。それらのメカニズムとしては、CKDによる体液貯留傾向とSASによる上気道の狭窄がともに心不全などの心血管イベントリスクを押し上げ、それに対してCPAPはSASとともに心不全を改善するように働くのではないかとの考察を加えている。

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第124回 医療DXの要「マイナ保険証」定着に向けて日医を取り込む国・厚労省の狙いとは(前編)未対応は最悪保険医取り消しも

普及進まぬマイナンバーカード保険証こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。夏の甲子園が終わり、脱力していたらロサンゼルス・エンジェルスの身売り話が飛び込んで来ました。来季以降の大谷 翔平選手の去就に注目が集まる中、MLBでは喜ばしい話題もありました。シアトル・マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏が27日(日本時間28日)、球団殿堂入り(MLBの野球殿堂ではなく球団独自の殿堂です)のセレモニーで15分を超える英語のスピーチを行い、超満員のスタンドを沸かせました。決して流暢とは言えない英語ながら、ユーモア溢れるそのスピーチは、英語での学会発表が苦手な皆さんにも参考になるのではないでしょうか1)。さて、世の中、相変わらずDX(デジタル・トランスフォーメーション)流行りです。ということで今回は、8月24日に開催された、医療機関向けの「オンライン資格確認等システムに関するWEB説明会」について書いてみたいと思います。「オンライン資格確認等システム」とは、マイナンバーカードを保険証として使う「マイナ保険証」のことで、これからの日本の医療DXの要とも言われています。ただ、その普及の割合はまだまだ低く、岸田 文雄首相も進捗の遅さにイラついているとも言われています。厚生労働省と三師会による合同説明会厚生労働省と三師会(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)が合同で開催した「オンライン資格確認等システムに関するWEB説明会」は、8月24日夜、18時30分からYouTube上で開催されました。約1万6,000人が参加し、医療関係者の関心の高さがうかがえました2)3)。冒頭、厚生労働省の伊原 和人保険局長が挨拶し、オンライン資格確認は「今後のデータヘルスの甚盤になる仕組み」と語り、「原則義務化されることを踏まえ、速やかに顔認証付きカードリーダーが届けられるよう従来の受注生産を事前生産にすることにしており、導入の準備を進めていただきたい」と要請。続いて日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会の3師会の担当役員も挨拶し、揃って「早く導入しましょう。大変役立ちます」と訴えかけました。説明会の後半には、顔認認証付きカードリーダーのメーカーのプレゼンまで盛り込んだそのプログラムからは、遅々として進まぬマイナ保険証の普及・定着に対する、厚労省(と医療DX推進本部の長となる岸田首相)の焦りが伝わってくるようでもありました。中医協答申でオンライン資格確認導入の原則義務化が決定この説明会は、8月10日に開かれた中央社会保険医療協議会において、オンライン資格確認(いわゆるマイナンバーカードの保険証利用)導入の原則義務化が決定したことを受けて、急遽開催が決まったものです。6月7日に閣議決定されていた「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針2022)で、オンライン資格確認を2023年4月から原則義務化し、現行の保険証の原則廃止の方向性は示されていました。8月10日、中医協が後藤 茂之厚生労働大臣(当時)に答申し、それが正式決定となったのです。保険医療機関運営の“法律”である「保険医療機関及び保険医療養担当規則」にその旨が定められることになったことで、マイナ保険証導入に向けての強制力は一段と強まったと言えるでしょう。「原則義務化」で例外もあるにはあるのですが、その例外は院長が高齢などの理由から紙レセプトでの請求が認められているごくわずかの保険医療機関・薬局に限られ、全体の4%ほどに過ぎません。ほとんどの医療機関はあと7ヵ月の間に「マイナ保険証」に対応しなければならないのです。ちなみに、既に運用開始した医療機関等は2022年8月14日時点で26.8%だそうです。なお、8月10日の中医協ではマイナ保険証対応に向け、医療機関、薬局向けの補助の拡充や、マイナ保険証を使う患者の自己負担の方が高いという現状の問題点を解決するための、10月1日からの診療報酬上の加算の取り扱いの見直しも決定しています。「全国医療情報プラットフォーム」の創設につなげるオンライン資格確認等システム、いわゆるマイナ保険証は、日本の医療DXの基盤になるものと位置づけられています。「骨太方針2022」では、マイナ保険証のシステムを、当初のレセプト・特定健診等情報の共有に加えて、予防接種、電子処方箋情報、電子カルテ等の医療情報についても共有・交換できるようにし、「全国医療情報プラットフォーム」の創設につなげるとしています。なお、今回の説明会の資料では、オンライン資格確認のメリットとして、次の2点が強調されていました。1)医療機関・薬局の窓口で、患者の方の直近の資格情報等(加入している医療保険や自己負担限度額等)が確認できるようになり、期限切れの保険証による受診で発生する過誤請求や手入力による手間等による事務コストが削減。2)マイナンバーカードを用いた本人確認を行うことにより、医療機関や薬局において特定健診等の情報や薬剤情報を閲覧できるようになり、より良い医療を受けられる環境に(マイナポータルでの閲覧も可能)。導入しなければ「保険医療機関等の指定の取り消し事由になりうる」24日の説明会そのものは制度概要の説明から、体制整備に向けての医療機関に対する補助金の仕組みの解説など、事務的に進みましたが、「導入義務対象機関が来年4月導入に間に合わない場合にどうなるか」という質問に対して、厚生労働省保険局医療介護連携政策課の水谷 忠由課長が「保険医療機関等の指定の取り消し事由になりうる。療担規則が順守されないと地方厚生局で丁寧な指導を受けることになり、個別事案ごとに適宜判断される」との回答には、関係者は驚いたのではないでしょうか。救済措置の検討も予定されているようですが、救済措置は「関係者それぞれがしっかり対応を進めることを大前提に、それでもやむを得ない場合について検討する」(水谷課長)とのことです。救済措置の状況を待つことなく医療機関は「オンライン資格確認等システム導入に向けた顔認証付きカードリーダーの申し込み、システムベンダーとの契約を一刻も早く進めて欲しい」と水谷課長は強調していました。受療行動や、医療機関で提供された治療や投薬の情報が丸裸にさて、マイナ保険証の原則義務化で一体何が起るでしょうか。説明会では医療機関側の業務の効率化が盛んに強調されていましたが、国が最も期待するのは、先に示したメリットのうち2)であることは明らかでしょう。「全国医療情報プラットフォーム」が整備されれば、レセプト情報、さらに電子カルテ情報まで情報共有が行われることになります。この日の説明会でも、閲覧可能な情報が現行の薬剤情報、特定健診情報に加えて、9月からは透析、医療機関名の情報が、2023年5月からは手術情報が追加されると報告されています。患者の受療行動や、医療機関で提供された治療や投薬の情報が丸裸にされるということは、それらのデータを基に、究極的に効率化された(ムダを省いた)医療提供の仕組みがデザインされ、それが現場に要求されることを意味します。どこまでの情報が開示されるようになるかわかりませんが、重複受診、重複投与、ムダな薬剤投与、的外れの治療などが、他医にもばれてしまうわけで、「日本医師会をはじめ、医療関係団体がよくこぞって協力するな」というのが私の正直な感想です。「自院の治療は他の医師に見られたくない」というのが、多くの医師の本音でもあるからです。「首相≒財務省」vs.「厚労省≒日本医師会」の対立構造に変化?岸田首相は7月の参院選勝利を受け、8月10日に内閣改造を行いました。新内閣では加藤 勝信氏が3度目となる厚生労働大臣に就きました。親日医と見られる加藤厚労相が再び登用されただけでなく、厚労副大臣には日医推薦の羽生田 俊参議院議員が選ばれています。今年6月、中川 俊男前会長から松本 吉郎新会長に替わってからの政府の日本医師会への寄り添い振りは、やや気持ちが悪いくらいです。7月の参議院選挙直後、本連載の「第117回 医師法違反は手術だけではない!工学技士に手術をさせた病院が研修すべき『もう一つのこと』」で、「これから財務省主導の医療政策が、医療提供体制改革の“本丸”(病院の再編や、かかりつけ医の制度化など)に、どこまで切り込んでいくかが注目されます」と書きましたが、マイナ保険証と医療DXが政策の前面に出てきたことで、「第80回 『首相≒財務省』vs.『厚労省≒日本医師会』の対立構造下で進む岸田政権の医療政策」などで度々書いてきた、この対立構造に少なからぬ変化が出てきたように見えます。(この稿続く)。参考1)イチロー氏のフルスピーチ2)厚生労働省・3師会 医療機関向けライブ配信/厚生労働省 保険局3)厚生労働省・3師会 医療機関向けライブ配信 当日資料/厚生労働省 保険局

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第7波のコロナ重症化リスク因子/COVID-19対策アドバイザリーボード

 8月13日に開催された厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで「第7波における新型コロナウイルス感染症 重症化リスク因子について(速報)」が報告された。 本報告は、蒲川 由郷氏(新潟大学大学院医学総合研究科 十日町いきいきエイジング講座 特任教授)らのグループが、2022年7月1日~31日までに新潟県内で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断・届け出された3万6,937件を対象に調査したもの。 その結果、重症化のリスク因子として70代以上の高齢者、ワクチンの未接種、慢性呼吸器疾患、(非透析の)慢性腎臓病、男性、やせ体形につき、統計学的な有意差があった。第7波3万6,937件の新潟のCOVID-19患者を解析【調査概要】対象など: 2022年7月1日〜31日までに新潟県内でCOVID-19と診断届出された3万6,937件(重症度などの最終確認日は8月10日)。調査方法:陽性判明時点で収集可能な患者背景から、年齢・性別・ワクチン接種の有無などの患者基礎情報と高血圧・糖尿病・慢性腎臓病などの基礎疾患情報の項目を同時に投入し、多重ロジスティック回帰分析を実施。重症化リスク因子のオッズ比を算出。【結果】(1)年代別・3万6,937例中、103例が中等症II以上だった(中等症・重症化率 0.3%)。・中等症II以上103例のうち、施設入所者は41例(約40%)で、80代以上は41例中35例。・年代が高くなるほど、重症化のオッズ比は高い傾向にあり、30代と比較して、70代以上のオッズ比が63〜283と高い値。(2)性別・ワクチン接種・女性よりも男性が重症化リスクが高い(オッズ比2.67)。・ワクチン接種(2回以上)をしていると、重症化リスクが低くなる(オッズ比:2回で0.27、3回で0.2、4回で0.25)。(3)肥満・肥満(BMI 25以上)は有意差があるとはいえなかった(オッズ比:BMI 25~30未満で1.6、30以上で1.55)。・やせ型(BMI 18.5未満)のオッズ比は2.05と高い値だった。これは、やせの高齢者(いわゆるフレイル)が中等症IIとなる割合が大きいためと考えられる。(4)基礎疾患(オッズ比2以上のみ記載)・慢性呼吸器疾患(COPD、間質性肺炎、治療中の喘息などを含む)のオッズ比は2.84・慢性腎臓病の非透析のオッズ比は3.42、透析のオッズ比は2.67・持続陽圧呼吸療法(CPAP)使用のオッズ比は2.47・悪性腫瘍のオッズ比は2.24高齢者では肥満よりもやせ型の感染者に注意【追加解析】 2022年1~6月(第6波:6万4,000件)と2022年7月(第7波:3万6,937件)を追加解析(合計:10万937件)。・第6波と第7波での中等症II以上の割合の比較では、第6波の中等症I以下は99.5%、中等症II以上は0.5%だったのに対し、第7波での中等症I以下は99.7%、中等症II以上は0.3%と減少した。・第7波では少数だが10歳未満でも中等症II以上の患者が発生している(第6波ではみられていない)。【解析のまとめ】・中等症II以上のリスクは第6波と比べて第7波で低下。・80代以上でも、中等症II以上は2.3〜5.8%程度。・第7波の中等症II以上は、年齢中央値は83歳、4割が施設入所者。・ワクチン未接種は重症化リスクを上昇させる。中等症II以上の患者のうち、ワクチン未接種は約20%(ワクチン未接種者割合は5〜11歳67.9%、65歳以上4.4%)。・中等症IIのリスク上昇には、基礎疾患のほとんどは明確な寄与がなく、有意な差があったのは、(1)高齢(70、80代以上で高い)(2)ワクチン未接種(3)慢性呼吸器疾患*(COPD、間質性肺炎、治療中の喘息を含む)(4)非透析の慢性腎臓病(5)男性(6)やせ(BMI<18.5:高齢者のフレイルなど)であった。 また、第7波では小児の中等症II以上もみられており、注視が必要(小児へのワクチン接種が重要)。と同時にワクチン未接種者へのワクチン接種が重要である。*慢性呼吸器疾患ではもともと酸素飽和度が低い状態の方もおり、解釈に留意を要する。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その3【「実践的」臨床研究入門】第23回

MEDLINE(PubMed)のような1次情報源を活用した文献検索においては、できる限り多くの関連研究を収集できるように、網羅的かつ客観的で再現可能な検索式の構築が必要となります。そのために有用なツールであるMeSH(Medical Subject Headings)や(連載第21回参照)、検索式構成のための基本的なポイント(連載第22回参照)について説明しました。今回からは、実践的な検索式構築について解説していきます。MeSHとテキストワードの両方を使い、タグを活用して検索これまで、検索式構築におけるMeSHの有用性について強調してきましたが、MeSHにも弱点があります。MeSHでは、新しい概念や略語、薬剤の製剤名などはカバーされていないことが多いです。また、とくに新しい論文ほど個々の文献へのMeSHの付与(連載第21回参照)が漏れていることもあるようです(近年は自動化が進んでいるようですが)。そのため、実際の検索式では、MeSHだけでなくテキストワードも用いることが一般的です。テキストワードでは、MeSHで拾えない同義語・関連語、(アメリカ英語とイギリス英語で)異なるスペル、略語や(薬剤の)固有名詞など、を指定します。たとえば、前回PICOの例として取り上げた、われわれのコクラン・システマティックレビュー(SR: systematic review)論文1)のP(対象)の構成要素の概念である「透析」"dialysis"のMeSHは"Renal Dialysis"でした(連載第22回参照)。"MeSH Database"で"Renal Dialysis"を調べると、リンク(および下記)のように"Renal Dialysis"の説明がなされています(連載第21回参照)。"Therapy for the insufficient cleansing of the blood by the kidneys based on dialysis and including hemodialysis, peritoneal dialysis, and hemodiafiltration."「(自己の)腎臓による血液浄化が不充分な場合の、血液透析、腹膜透析、血液濾過透析を含む透析(という技術)に基づく治療法(筆者による意訳)。」"hemodialysis"や"hemodiafiltration"はイギリス英語のスペルではそれぞれ、"haemodialysis"、"haemodialysis"となります。"peritoneal dialysis"は"CAPD"などの略語で示されることもあります。また、この論文1)のI(介入)の構成概念である"aldosterone receptor antagonist"のMeSHは"Mineralocorticoid Receptor Antagonists"でしたが、具体的な個別の薬剤の固有名詞はカバーできないおそれがあります。そこで、検索式に"spironolactone"や"eplerenone"などの製剤名をテキストワードで加えて対応します。「タグ」を活用した検索項目の指定方法についても説明します。検索ワードの末尾に「タグ」を付けることにより、検索項目を限定することが出来ます。「タグ」で指定できる検索項目の一覧は、PubMedトップページの左下のリンク、FAQs & User Guideのページを下にスクロールすると"Search Field descriptions and tags"という小見出しの後に列記されていますので、ご参照ください。ここでは、検索式で良く使うタグを紹介します。実践的には、MeSHとテキストワードを併用し、タグを活用して検索式を組み立てるのです。1)Hasegawa T,et al. Cochrane Database Syst Rev. 2021 Feb 15;2:CD013109.

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入院中の不穏の原因はNOMI?致死率50%超の恐るべき疾患【知って得する!?医療略語】第18回

第18回 入院中の不穏の原因はNOMI?致死率50%超の恐るべき疾患血管に閉塞病変がなくても腸管虚血が起きることがあるのですか?腸間膜血管の攣縮が原因と推測されている、非閉塞性腸管虚血(NOMI)があります。NOMIは疑わないと診断できない疾患です。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】NOMI【日本語】非閉塞性腸管虚血【英字】non-occlusive mesenteric ischemia【分野】消化器【診療科】消化器内科・消化器外科【関連】腸管虚血実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。入院患者さんの急変原因は多々ありますが、急変疾患の1つに非閉塞性腸管虚血(NOMI:non-occlusive mesenteric ischemia)があります。今では教科書にもNOMIの記載を見かけるようになりましたが、私が初めてNOMIの患者を経験した当時は、まだNOMIは教科書にも記載されておらず、私が最初の症例を経験した時点では曖昧な知識しかありませんでした。NOMIの致死率は56~79%と非常に高く、私が経験した3例はすべて院内発症で2例は救命困難でしたが、救命成功例を振り返ると、やはり早期診断と迅速な治療方針の決定が重要な疾患だと考えます。しかし、NOMIは疑わないと診断することが難しいとされ、その発症しやすい患者の背景まで知っておく必要があります。NOMIとはNOMIは腸管虚血の1つで、腸間膜血管主幹部に器質的な閉塞を伴わずに非連続性の腸管血流障害を来たす疾患です。本邦の報告では腸管虚血の15~27%がNOMIであると報告されています。病態は腸間膜収縮、腸間膜血管攣縮、それに続発する末梢腸間膜動脈枝の攣縮により、腸管虚血を来し、そして腸管壊死に至る疾患です。NOMIのリスク因子として以下のようなものが挙げられており、血管内の低灌流が交感神経に反応し、血管攣縮を来し腸管虚血を来すとされています。心疾患(心不全)維持透析高齢糖尿病脱水周術期低拍出量症候群長時間の体外循環膵炎ショック不整脈熱傷出血薬剤(カテコラミン、利尿薬、ジギタリス)の使用NOMIの臨床像について、発症早期は特異的な臨床徴候が認められない例が多いと指摘されています。NOMI発症例の20~30%は腹痛の訴えさえないそうで、私の自験例3例も腹痛の訴えはなく、スタッフからの「不穏になっている」との連絡が発見のきっかけでした。ただ、病室にかけつけたときは呼吸が促拍し、苦悶様の表情で腹部をさすっていたのを今でも記憶しています。自験例3例に共通していたのは、脳卒中急性期治療中の高齢者での発症で、経口摂取を開始して間もない、いずれも食後1~3時間後の発症という共通点がありました。このため脳卒中に伴う高カテコラミン状態が、交感神経優位状態を招き、腸管血管の攣縮を招きやすい状態であった可能性は十分に考えられます。NOMIについて特筆したいのは、病態悪化の速さです。それゆえ、診断に戸惑う時間的猶予はなく、NOMIの臨床像や疑うべき画像所見を知っておかなければ、あっという間に腸管壊死からショックに至ります。ただし、NOMIを保存的に治療しようとすれば、塩酸パパベリンのような強力な血管拡張薬を使用することになりますが、持続静注すると全身の血圧低下を招くため、持続動注する必要あります。このため、腹部血管造影が出来る体制が必要となります。さらに腸管壊死を来す際には、外科手術の選択も視野に入りますが、NOMIが高齢者に発症しやすく、仮に手術できたとしても、広範な腸管切除が余儀なくされ、術後に人工肛門管理となる可能性が高く、術後のQOLの課題もあるため、基礎疾患のある高齢者には外科的介入のハードルは高いと考えます。また手術できても縫合不全の確率が高く、手術や麻酔自体で循環動態を悪化させるリスクもあります。一方で、非常に早期に診断できれば、救命できる例もあります。もし、NOMIを未経験の方については、腹部X線、腹部CT所見も含め、症例報告をご覧になると良いかもしれません。1)日本腹部救急医学会プロジェクト委員会NOMIワーキンググループ. 日腹部救急医会誌. 2015;35:177-185.2)日本循環器学会:2022年改訂版 末梢動脈疾患ガイドライン3)新関 浩人ほか. 日本大腸肛門病会誌. 2004;57:71-75.

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奥が深い“NO benefit”(解説:今中和人氏)

 本邦では保険収載されるほど、一酸化窒素(NO)療法は広く普及している。NOは水溶性が低く、急速に失活する生理活性物質であるため、基本コンセプトは経気道的投与と気道付近にほぼ限局した血管拡張で、もっぱら肺血圧低下と換気血流比不均衡是正に伴う呼吸・循環状態の改善を目的に使用される。本論文は開心術中、人工肺にNOを送気するトライアルで、前述の基本コンセプトと大幅に異なるが、実は2013年には小児で、2019年には成人で、この方法の有用性を示した先行研究がJTCVS誌に掲載されている。ただ、いずれも前向き無作為化試験といっても単施設で患者数がかなり少なく、共通する便益は半日後や翌日の一過性のバイオマーカー値のみだったが、他に2016年に1本、小児で臨床的な有効性を報告した200例規模の論文も存在する。 本論文では、オセアニアとオランダの6施設における2歳以下の小児開心術症例を、人工心肺中の人工肺に20ppmのNOを投与する679例と、投与しない685例に無作為化し、主に臨床的便益を中心に28日成績を比較した。無作為化時点で6週未満児がともに33%台で、単心室系疾患が11%台、再手術が8%台であった。主要アウトカムは28日間のうち人工呼吸器を使用しなかった日数(なぜ素直に人工呼吸器使用日数としなかったかは不明)とし、副次アウトカムは48時間以内の心不全(低心拍出症候群+補助循環)と28日死亡の複合、ICU期間、入院期間、直後と24時間後の血清トロポニン値とした。 結果は、人工呼吸器非使用日数は26.6日と26.4日、心不全+死亡が22.5%と20.9%、ICU滞在はともに3.0日、入院は9.0日と9.1日、トロポニン値も同程度と、主要・副次アウトカムともまったく差がなかった。なお術後、11.8%と13.4%の患児にNOが投与(中央値45時間)されており、16.5%と17.4%で透析を行っている。NOと関係がありうる有害事象も11.1%と10.5%で差がなかった。 基本コンセプトに基づけば、難溶性のNOそのものが投与場所とまったく離れた臓器に作用するとは考えにくいし、全身投与という観点からはNO担体である硝酸薬の心筋保護効果も予後改善効果もおおむね否定的なので、差が出なかった今回の結果は当然にも思える。他方、複数の先行研究で示された有用性は主にNOによる虚血再灌流障害の軽減で、それらの論文では抗炎症作用、アポトーシス、組織修復能など、NOの効能が実験論文を中心に引用してとうとうと述べられているものの、1論文を除き、臨床経過はほぼ差がなかった。 結論として、このNO投与方法は、安全性が担保されている濃度では開心術の早期予後をあまり改善しないと考えてよさそうだが、関連論文を読むほどに、NO benefitの奥の深さと自分の知識・理解の足りなさに身が縮む。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その2【「実践的」臨床研究入門】第22回

前回、網羅的なPubMed検索を行うために役立つツールであるMeSH(Medical Subject Headings)の概要を説明しました。今回からは、MeSHも活用したPubMed検索式の具体的な作成方法について解説します。まずは、あなたの「漠然とした臨床上の疑問」であるクリニカル・クエスチョン(CQ)を「具体的で明確な研究課題」であるリサーチ・クエスチョン(RQ)に変換しましょう(連載第1回参照)。言い換えると、CQをRQの典型的な「鋳型」であるPE(I)COのP(対象)とE(曝露要因)もしくはI(介入)、C(比較対照)、O(アウトカム)に流し込むのです。ここでは、われわれが最近出版したコクラン・システマティックレビュー (SR: systematic review)論文1)のPICOを例に挙げて、説明します。検索式はPとI(もしくはE)で構成する降圧薬の1種であるアルドステロン受容体拮抗薬は、心血管疾患(CVD: cardiovascular disease)発症リスクを低下させることが知られています。しかし、腎機能が廃絶した透析患者では、アルドステロン受容体拮抗薬の作用機序から重篤な高カリウム血症を生じる懸念もあり、その有効性と安全性については確かなエビデンスは確立されていませんでした。このような背景のもと、われわれは下記のCQとRQ(PICO)を立案しました。CQ:アルドステロン受容体拮抗薬は透析患者の予後を改善するかP:透析患者I:アルドステロン受容体拮抗薬C:プラセボもしくは通常治療(アルドステロン受容体拮抗薬なし)O:全死亡、CVD死亡、CVD発症、高カリウム血症、などこのように、RQ(PICO)を立てた後、はじめに押さえておくべき検索式作成のポイントは、下記のとおりです。まず、PとI(またはE)というRQの2つの構成要素の概念を英語検索ワードに変換して、検索式の構築を考えます。適切な英語検索ワードの選択については連載第3回で解説しました。その手順を踏んで、Pの構成要素の概念である「透析」をライフサイエンス辞書で検索してみると、まず"dialysis"という英語キーワードがヒットします。続いて、前回解説したMeSHも調べてみましょう。MeSHデータベースで"dialysis"を検索すると、リンクのように"Renal Dialysis"や”Dialysis”、"Peritoneal Dialysis"などのMeSH term(統制語)がヒットします。Iのアルドステロン受容体拮抗薬もライフサイエンス辞書で調べると、"aldosterone receptor antagonist"という英語キーワードが検索されます。同様に、MeSHデータベースで"aldosterone receptor antagonist"をキーワードに検索すると、リンクのように”Mineralocorticoid Receptor Antagonists”がMeSH termでした。検索式作成におけるもう一つのポイントは、CとOは検索式に一般的には含めない、ということです。なぜなら、CやOはひとつの構成概念では決まらないことが多いからです。実際、今回提示したわれわれのコクランSR1)論文のRQ(PICO)でも、Cはプラセボもしくは通常治療と2つの概念で構成されています。Oも、ここで記載した4つのアウトカムだけでなく、Summary of findings tableに記載した主要なものだけでも、女性化乳房(アルドステロン受容体拮抗薬の頻度の多い副作用)、左心室重量(心エコーにて評価)と計6つ挙げています1)。また、PubMedでの検索の対象になるのは論文タイトルと抄録ですので、CやOの構成概念は必ずしも記載されていないことが多い、ということもCとOを検索式に含めない理由とされています。1)Hasegawa T,et al. Cochrane Database Syst Rev. 2021 Feb 15;2:CD013109.

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国内初、2型DM合併CKDの進行を防ぐMR拮抗薬「ケレンディア錠10mg/20mg」【下平博士のDIノート】第101回

国内初、2型DM合併CKDの進行を防ぐMR拮抗薬「ケレンディア錠10mg/20mg」今回は、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬「フィネレノン(商品名:ケレンディア錠10mg/20mg、製造販売元:バイエル薬品)」を紹介します。本剤は、わが国初の2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)の進行を防ぐMR拮抗薬として期待されています。<効能・効果>本剤は、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(ただし、末期腎不全または透析施行中の患者を除く)の適応で、2022年3月28日に承認され、同年6月2日に発売されています。なお、原則としてACE阻害薬またはARBが投与されている患者に使用します。<用法・用量>通常、成人にはフィネレノンとして20mgを1日1回経口投与します。ただし、eGFRが60mL/min/1.73m2未満の場合は10mgから投与を開始し、血清カリウム値・eGFRに応じて、投与開始から4週間後を目安に20mgへ増量します。なお、血清カリウム値が4.8mEq/L以下の場合は、投与量が10mgでもeGFRが前回の測定から30%を超えて低下していない限り20mgに増量します。一方、血清カリウム値が5.5mEq/L超える場合は投与を中止し、中止後に5.0mEq/Lを下回った場合には、10mgから投与を再開することができます。<安全性>2つの国際共同第III相試験(FIGARO-DKDおよびFIDELIO-DKD)では、安全性解析対象6,510例中1,206例(18.5%)において、臨床検査値異常を含む副作用が報告されました。主な副作用は、高カリウム血症496例(7.6%)、低血圧92例(1.4%)、血中カリウム増加85例(1.3%)、血中クレアチニン増加69例(1.1%)、糸球体ろ過率減少67例(1.0%)などでした。また、重大な副作用として、高カリウム血症(8.8%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬と呼ばれ、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者における心臓や腎臓の機能低下を防ぎます。2.血圧が下がることにより、めまいやふらつきが現れることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作には注意してください。3.飲み合わせに注意が必要な薬剤が多数あります。服用している薬剤や健康食品、サプリメントがあれば報告してください。4.グレープフルーツやグレープフルーツジュースは、薬の効果を強めてしまう恐れがあるため、摂取を避けてください。5.この薬の服用により、血中のカリウム値が上昇することがあります。手や唇がしびれる、手足に力が入らない、吐き気などの症状が現れた場合はすぐに相談してください。また、カリウムの摂り過ぎや脱水、便秘には注意してください。6.(授乳中の方に対して)薬剤が乳汁中へ移行する可能性があるため、本剤を服用中は授乳しないでください。<Shimo's eyes>近年、ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬が心腎保護作用の点から注目されています。既存のMR拮抗薬としては、スピロノラクトン(商品名:アルダクトンA)、エプレレノン(同:セララ錠)、エサキセレノン(同:ミネブロ)が発売されています。スピロノラクトンは女性化乳房などの副作用の課題があり、比較的それらの副作用が少ないエプレレノンも、中等度以上の腎機能障害患者(Ccr:50mL/min未満)や、微量アルブミン尿または蛋白尿を伴う糖尿病患者への投与は禁忌となっています。一方で、エサキセレノンは本剤と同様にステロイド骨格を持たないという特徴がありますが、適応は高血圧症のみとなっています。2つの臨床試験では、CKDステージが軽度~比較的進行した糖尿病性腎症の患者さんに、ACE阻害薬・ARBによる既存の治療を行った上で本剤を投与した結果、主要評価項目である心血管複合エンドポイントの発現リスクは13%、腎複合エンドポイントの発現リスクは18%、プラセボ群に比べ有意に低下させました。こういった結果をもたらした国内で初めてのMR拮抗薬であり、2型糖尿病合併CKDの適応を持つ唯一のMR拮抗薬です。相互作用で注意すべき点として、本剤は主にCYP3A4により代謝されるため、強力なCYP3A4阻害作用を持つ薬剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)を投与中の患者さんには禁忌となっています。また、併用注意の薬剤も多数あるので、併用薬はサプリメント等を含め、細やかに聞き取りましょう。MR拮抗薬といえば血清カリウム値上昇に注意が必要ですが、本剤はACE阻害薬あるいはARBとの併用が原則となっていることから、血清カリウム値のモニタリングが必須となります。対象患者の腎機能について、eGFRが60mL/min/1.73m2未満では投与量に制限があります。また、eGFRが25mL/min/1.73m2未満の場合は、本剤投与によりeGFRが低下することがあるため、リスクとベネフィットを考慮し投与の適否を慎重に判断することとされています。なお、SGLT2阻害薬であるダパグリフロジン(同:フォシーガ)が2021年8月にCKDの適応を取得し、カナグリフロジン(同:カナグル)も、2022年6月に本剤と同じ2型糖尿病を合併するCKDに対する適応を取得しています。参考1)PMDA 添付文書 ケレンディア錠10mg/ケレンディア錠20mg

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その1【「実践的」臨床研究入門】第21回

これまで、関連研究レビューのための情報ソースとして、1次情報ではなく、まずは、2次情報(診療ガイドラインやUpToDate®、コクラン・ライブラリー、など)の活用をお勧めし(連載第3回参照)、それらの実践的な使用方法について解説してきました。今回からは、医学研究における1次情報の最も代表的な検索インターフェースである、PubMedの活用方法について解説します。PubMedは米国国立医学図書館(United States National Library of Medicine:NLM)が作成している、生物医学系論文の書誌情報と抄録の電子データベースであるMEDLINEの検索プラットフォームです。PubMedの運営もNLMが行っており、無料で提供されています。その他の検索プラットフォームとデータベースについても、連載第17回で解説しましたので、ご参照ください。ここでは、まず、PubMed検索の際に有用なツールであるMeSH(Medical Subject Headings)について紹介します。PubMedの統制語辞書MeSHはじめに、統制語について説明します。統制語とは、いろいろな類語で表現されるひとつの概念を表す、代表的な単語です。MeSHは、NLMが作成した、さまざまな医学用語を統一し、上位語・下位語や同義語・類義語を整理した統制語辞書です。PubMedではMeSHを利用することで、より網羅的な検索ができるようになります。それでは、実際にMeSHを使ってみましょう。下記は、これまでブラッシュアップしてきた、われわれのClinical Question (CQ)とResearch Question(RQ)、 PECOです(連載第14回参照)。CQ:食事療法を遵守すると非ネフローゼ症候群の慢性腎臓病患者の腎予後は改善するのだろうかP:非ネフローゼ症候群の慢性腎臓病(CKD)患者E:食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の遵守C:食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の非遵守O:1)末期腎不全(透析導入)、 2)eGFR低下速度の変化このCQのキーワードである、「低たんぱく食(low protein diet)」(連載第3回参照)で、MeSHを調べてみます。まず、PubMedのトップページを開きます。トップページの右下にMeSH Databaseというリンクがありますので、クリックします。MeSH Databaseの検索窓が出てきますので、"low protein diet"と入力してみましょう。すると、PubMedのリンクのように"Diet, Protein-restricted"が低たんぱく食のMeSH term(統制語)であることがわかります。下にスクロールしていくと、"Entry Terms"という小見出しの後に、下記のような類語が列記(一部略)されており、これらは上記のMeSH Term, "Diet, Protein-restricted"ひとつで統制されます。Low Protein DietProtein Restricted DietProtein-Restricted Diets…一方、個々の文献にはMeSH Termが10語程度付与されています。その論文のMajor TopicとなるMeSH Termにはアスタリスク(*)がついています。実際に、これまで何度か取り上げた、われわれのCQの「Key論文」1)で見てみましょう。この論文のPubMedのリンクを下にスクロールすると、"MeSH terms"の小見出しがあり、この論文に下記の通り(一部略)のMeSH Termが登録されていることがわかります。Diet, Protein-restricted*Disease Progression*Glomerular Filtration Rate…PubMedではMeSH Termを利用することで、より網羅的な検索ができるようになります。今回、お示ししたように、自身のRQの「Key論文」(連載第8回参照)で登録されているMeSH Termを「逆引き」してみるのも良いと思います。1)Hahn D, et al. Cochrane Database Syst Rev 2020:CD001892.doi:10.1002/14651858.CD001892.pub4.

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ないがしろにできない高齢者の関節痛、その注意点は?【Dr.山中の攻める!問診3step】第15回

第15回 ないがしろにできない高齢者の関節痛、その注意点は?―Key Point―急性の単関節炎では、化膿性関節炎、結晶性関節炎(痛風/偽痛風)、関節内出血(外傷、血友病)を考える結晶性関節炎と化膿性関節炎は合併することがある関節液の白血球が5万/μL以上なら化膿性を示唆するが、それ以下でも否定はできない症例:81歳 男性主訴)左膝関節痛現病歴)2週間前に左肘関節痛あり。整形外科でシャント感染を疑われたが、治療ですぐに軽快。昨日深夜の転倒後から左膝関節腫脹を伴う関節痛あり。夕方からは発熱もあった。本日近医の検査でCRP 22だったため、救急室に紹介受診となった。既往歴)アルツハイマー型認知症、糖尿病腎症:3年前に血液透析を開始身体所見)意識清明、体温38.6℃、血圧149/61mmHg、脈拍108回/分、呼吸回数20回/分、SpO2 100%(室内気)眼瞼結膜は軽度の蒼白あり、胸腹部に異常所見なし、左膝関節に腫脹/熱感/圧痛あり経過)血液検査でWBC 12,000/μL、Hb 10.8 g/dL、Cr 6.15 mg/dL、CRP 23.9 mg/dLであった左膝関節のレントゲン写真では半月板に線状の石灰化を認めた関節穿刺を施行し、やや混濁した黄色の関節液を採取した(図1)。関節液のWBCは 9,000/μL(好中球86%)であった。白血球に貪食された菱形および長方形の結晶を認めた(図2)グラム染色および関節液培養では細菌を検出しなかった偽痛風と診断しNSAIDsにて軽快した画像を拡大する◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!高齢者における関節痛の訴えは多い化膿性関節炎を見逃すと関節の機能障害が起こる急性vs.慢性、単関節vs.多関節、炎症性vs.非炎症性を区別することで、鑑別診断を絞り込むことができる【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2-1】症状を確認する急性発症か慢性発症か。急性は2週間以内、慢性は6週間以上の症状持続である単関節炎か多関節炎か。単関節炎は1つの関節、多関節炎は5関節以上の関節に炎症がある【STEP2-2】炎症性か非炎症性か炎症性では30分以上続く朝のこわばり(多くは1時間以上)、安静後に増悪、体を動かしていると次第に改善する関節に熱感、発赤、腫脹があれば炎症性である炎症性は血沈やCRP上昇を認める【STEP3】鑑別診断を絞り込む2)3)脊椎関節炎には反応性関節炎、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患関連関節炎、強直性脊椎炎、分類不能脊椎関節炎が含まれる(表1)画像を拡大する<参考文献・資料>1)MKSAP19. Rheumatology. 2022. p1-17.2)Harrison’s Principles of Internal Medicine. 21th edition. 2022 p2844-2880.3)山中 克郎ほか. UCSFに学ぶできる内科医への近道. 南山堂. 2012. p211-221.

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カナグル、「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病」の適応追加承認を取得/田辺三菱

 田辺三菱製薬は、6月21日、同社のSGLT2阻害薬カナグル(一般名:カナグリフロジン)が、「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く)」の適応追加承認を取得したことを発表した。カナグルは、2型糖尿病治療薬として2014年に製造販売承認を取得し、販売を開始している。カナグルの適応追加で慢性腎臓病患者QOL向上に寄与 2型糖尿病は、慢性腎臓病の発症や進展のリスク因子であり、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者は多く存在する。病態の進行に伴い腎機能が低下し、腎不全に至った場合には透析療法への移行が必要となるが、透析療法は患者のQOLを低下させるだけでなく、医療経済的な観点からも重要な課題となっている。 同社は、「今回のカナグル錠の適応追加承認の取得は、これらの課題を解決する選択肢の1つとなり、2020年に発売した腎性貧血治療剤バフセオ錠と共に、腎臓疾患に苦しんでいる患者さんのQOL向上に寄与するものと考えている」としている。

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添付文書改訂:カナグルに2型糖尿病CKD追加/ツートラムにがん疼痛追加/コミナティ、スパイクバックスに4回目接種追加/エムガルティで在宅自己注射が可能に/不妊治療の保険適用に伴う追記【下平博士のDIノート】第100回

カナグル:2型糖尿病患者のCKD追加<対象薬剤>カナグリフロジン水和物(商品名:カナグル錠100mg、製造販売元:田辺三菱製薬)<承認年月>2022年6月<改訂項目>[追加]効能・効果2型糖尿病を合併する慢性腎臓病。ただし、末期腎不全または透析施行中の患者を除く<Shimo's eyes>SGLT2阻害薬については近年、心血管予後・腎予後の改善効果を示した大規模臨床研究が次々と発表されています。本剤は2型糖尿病患者の慢性腎臓病(CKD)に対する適応追加で、用法・用量は既承認の「2型糖尿病」と同じとなっています。2022年6月現在、類薬で「CKD」に適応があるのはダパグリフロジン(同:フォシーガ)、「心不全」に適応があるのはダパグリフロジンおよびエンパグリフロジン(同:ジャディアンス)となっています。ツートラム:がん疼痛が追加<対象薬剤>トラマドール塩酸塩徐放錠(商品名:ツートラム錠50mg/100mg/150mg、製造販売元:日本臓器製薬)<承認年月>2022年5月<改訂項目>[追加]効能・効果疼痛を伴う各種がん<Shimo's eyes>本剤は、速やかに有効成分が放出される速放部と、徐々に有効成分が放出される徐放部の2層錠にすることで、安定した血中濃度推移が得られるように設計された国内初の1日2回投与のトラマドール製剤です。今回の改訂で、がん患者の疼痛管理に本剤が使えるようになりました。本剤を定時服用していても疼痛が増強した場合や突出痛が発現した場合は、即放性のトラマドール製剤(商品名:トラマールOD錠など)をレスキュー薬として使用します。なお、レスキュー投与の1回投与量は、定時投与に用いている1日量の8~4分の1とし、総投与量は1日400mgを超えない範囲で調節します。鎮痛効果が不十分などを理由に本剤から強オピオイドへの変更を考慮する場合、オピオイドスイッチの換算比として本剤の5分の1量の経口モルヒネを初回投与量の目安として、投与量を計算することが望ましいとされています。なお、ほかのトラマドール製剤(商品名:トラマール注、トラマールOD錠、ワントラム錠)は、すでにがん疼痛に対する適応を持っています。参考日本臓器製薬 ツートラム錠 添付文書改訂のお知らせコミナティ、スパイクバックス:4回目接種が追加<対象薬剤>コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)(商品名:コミナティ筋注、製造販売元:ファイザー/商品名:スパイクバックス筋注、製造販売元:武田薬品工業)<承認年月>2022年4月<改訂項目>[追記]接種時期4回目接種については、ベネフィットとリスクを考慮したうえで、高齢者等において、本剤3回目の接種から少なくとも5ヵ月経過した後に接種を判断することができる。<Shimo's eyes>オミクロン株流行期において、ワクチン4回目接種による「感染予防」効果は短期間とはいえ、「重症化予防」効果は比較的保たれると報告されています。それを踏まえ、4回目の追加接種の対象は、60歳以上の者、18歳以上60歳未満で基礎疾患を有する者など、重症化リスクが高い方に限定されました。また、3回目以降の追加免疫の間隔はこれまで「少なくとも6ヵ月」となっていましたが、今回の改訂で「少なくとも5ヵ月」と短縮されました。追加免疫の投与量については、コミナティ筋注は初回免疫(1、2回目接種)と同じく1回0.3mL、スパイクバックス筋注の場合は、初回免疫は1回0.5mLですが、追加免疫では半量の1回0.25mLとなっています。参考ファイザー 新型コロナウイルスワクチン 医療従事者専用サイト武田薬品COVID-19ワクチン関連特設サイト<mRNAワクチン-モデルナ>エムガルティ:在宅自己注射が可能に<対象薬剤>ガルカネズマブ(遺伝子組み換え)注射液(商品名:エムガルティ皮下注120mgオートインジェクター/シリンジ、製造販売元:日本イーライリリー)<承認年月>2022年5月<改訂項目>[追記]重要な基本的注意、副作用自己投与に関する注意<Shimo's eyes>薬価収載から1年が経過し、本剤の在宅自己注射が可能となりました。承認された経緯としては、日本頭痛学会および日本神経学会から要望書が出されていました。自己注射が可能になることで、毎月の通院が難しかったケースでも抗体医薬を用いた片頭痛予防療法を実施しやすくなることが期待されます。本剤の投与開始に当たっては、医療施設において必ず医師または医師の直接の監督の下で投与を行い、自己投与の適用についてはその妥当性を慎重に検討します。自己注射に切り替える場合は十分な教育訓練を実施した後、本剤投与によるリスクと対処法について患者が理解し、患者自らの手で確実に投与できることを確認したうえでの実施となります。参考日本イーライリリー 医療関係者向け情報サイト エムガルティフェマーラほか:不妊治療で使用される場合の保険適用<対象薬剤>レトロゾール錠(商品名:フェマーラ錠2.5mg、製造販売元:ノバルティス ファーマ)<承認年月>2022年2月<改訂項目>[追加]効能・効果生殖補助医療における調節卵巣刺激[追加]用法・用量通常、成人にはレトロゾールとして1日1回2.5mgを月経周期3日目から5日間経口投与する。十分な効果が得られない場合は、次周期以降の1回投与量を5mgに増量できる。<Shimo's eyes>2022年4月から、不妊治療の経済的負担を軽減するために生殖医療ガイドライン等を踏まえて、人工授精等の「一般不妊治療」、体外受精・顕微授精等の「生殖補助医療」について、保険適用されることになりました。アロマターゼ阻害薬である本剤は、従前の適応は閉経後乳がんでしたが、不妊治療に用いる場合、閉経前女性のエストロゲン生合成を阻害する結果、卵胞刺激ホルモン(FSH)分泌が誘導され、卵巣内にアンドロゲンが蓄積し、卵巣が刺激されて卵胞発育が促進されます。ほかにも、プロゲステロン製剤(商品名:ルティナス腟錠等)は「生殖補助医療における黄体補充」、エストラジオール製剤(同:ジュリナ錠等)は「生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整」「凍結融解胚移植におけるホルモン補充周期」、さらに卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合製剤(同:ヤーズフレックス配合錠、ルナベル配合錠等)は「生殖補助医療における調節卵巣刺激の開始時期の調整」の適応がそれぞれ追加されています。バイアグラほか:男性不妊治療に保険適用<対象薬剤>シルデナフィルクエン酸塩錠(商品名:バイアグラ錠25mg/50mg、同ODフィルム25mg/50mg、製造販売元:ヴィアトリス製薬)タダラフィル錠(商品名:シアリス錠5mg/10mg/20mg、製造販売元:日本新薬)<承認年月>2022年4月<改訂項目>[追加]効能・効果勃起不全(満足な性行為を行うに十分な勃起とその維持ができない患者)[追加]保険給付上の注意本製剤が「勃起不全による男性不妊」の治療目的で処方された場合にのみ、保険給付の対象とする。<Shimo's eyes>こちらも少子化社会対策として、従前の勃起不全(ED)の適応は変わりませんが、保険適用となりました。本製剤について、保険適用の対象となるのは、勃起不全による男性不妊の治療を目的として一般不妊治療におけるタイミング法で用いる場合です。参考資料 不妊治療に必要な医薬品への対応(厚労省)

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高リスクIgA腎症への経口ステロイドで転帰改善、用量は?/JAMA

 高リスクIgA腎症患者において、経口メチルプレドニゾロンによる6~9ヵ月の治療は、プラセボと比較して、腎機能低下・腎不全・腎疾患死亡の複合アウトカムのリスクを有意に低下させた。ただし、経口メチルプレドニゾロンの高用量投与では、重篤な有害事象の発現率が増加した。中国・北京大学第一医院のJicheng Lv氏らが、オーストラリア、カナダ、中国、インド、マレーシアの67施設で実施された多施設共同無作為化二重盲検比較試験「Therapeutic Effects of Steroids in IgA Nephropathy Global study:TESTING試験」の結果を報告した。本試験は、重篤な感染症が多発したため中止となったが、その後、プロトコルが修正され再開されていた。JAMA誌2022年5月17日号掲載の報告。メチルプレドニゾロンの用量を0.6~0.8mg/kg/日から0.4mg/kg/日に減量し、試験を再開 研究グループは、2012年5月~2019年11月の期間に、適切な基礎治療を3ヵ月以上行っても蛋白尿1g/日以上、推定糸球体濾過量(eGFR)20~120mL/分/1.73m2のIgA腎症患者503例を、メチルプレドニゾロン群またはプラセボ群に1対1の割合に無作為に割り付けた。 メチルプレドニゾロン群は、当初、0.6~0.8mg/kg/日(最大48mg/日)を2ヵ月間投与、その後4~6ヵ月で減量・離脱(8mg/日/月で減量)するレジメンであったが、メチルプレドニゾロン群に136例、プラセボ群に126例、計262例が無作為化された時点で重篤な感染症の過剰発生が認められたため、2015年11月13日に中止となった。その後、プロトコルを修正し、メチルプレドニゾロン群は、0.4mg/kg/日(最大32mg/日)を2ヵ月間投与、その後4~7ヵ月で減量・離脱(4mg/日/月で減量)するレジメンに変更するとともに、ニューモシスチス肺炎に対する抗菌薬の予防的投与を治療期間の最初の12週間に追加した。 2017年3月21日に修正プロトコルで試験が再開され、2019年11月までに241例(メチルプレドニゾロン群121例、プラセボ群120例)が登録された。 主要評価項目はeGFR40%低下・腎不全(透析、腎移植)・腎疾患死亡の複合で、副次評価項目は腎不全などの11項目とし、2021年6月まで追跡調査した。メチルプレドニゾロン群で複合アウトカムが有意に減少、高用量では有害事象が増加 無作為化された503例(平均年齢:38歳、女性:198例[39%]、平均eGFR:61.5mL/分/1.73m2、平均蛋白尿:2.46g/日)のうち、493例(98%)が試験を完遂した。 平均追跡期間4.2年において、主要評価項目のイベントはメチルプレドニゾロン群で74例(28.8%)、プラセボ群で106例(43.1%)に認められた。ハザード比(HR)は0.53(95%信頼区間[CI]:0.39~0.72、p<0.001)、年間イベント率絶対群間差は-4.8%/年(95%CI:-8.0~-1.6)であった。 メチルプレドニゾロン群の各用量について、それぞれのプラセボ群と比較して主要評価項目に対する有効性が確認された(異質性のp=0.11、HRは高用量群0.58[95%CI:0.41~0.81]、減量群0.27[95%CI:0.11~0.65])。 事前に規定された11項目の副次評価項目のうち、腎不全(メチルプレドニゾロン群50例[19.5%]vs.プラセボ群67例[27.2%]、HR:0.59[95%CI:0.40~0.87]、p=0.008、年間イベント率群間差:-2.9%/年[95%CI:-5.4~-0.3])などを含む9項目で、メチルプレドニゾロン群が有意に好ましい結果であった。 重篤な有害事象の発現は、メチルプレドニゾロン群がプラセボ群より多く(28例[10.9%]vs.7例[2.8%])、とくに高用量群で高頻度であった(22例[16.2%]vs.4例[3.2%])。

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新機序の難治性慢性咳嗽治療薬「リフヌア錠45mg」【下平博士のDIノート】第96回

新機序の難治性慢性咳嗽治療薬「リフヌア錠45mg」今回は、選択的P2X3受容体拮抗薬「ゲーファピキサントクエン酸塩錠(商品名:リフヌア錠45mg、製造販売元:MSD)」を紹介します。本剤は、P2X3受容体を標的とした非麻薬性の咳嗽治療薬で、難治性の慢性咳嗽への効果が期待されています。<効能・効果>本剤は、難治性の慢性咳嗽の適応で、2022年1月20日に承認されました。なお、効能または効果に関連する注意として「最新のガイドライン等を参考に、慢性咳嗽の原因となる病歴、職業、環境要因、臨床検査結果等を含めた包括的な診断に基づく十分な治療を行っても咳嗽が継続する場合に使用を考慮すること」、重要な基本的注意として「本剤による咳嗽の治療は原因療法ではなく対症療法であることから、漫然と投与しないこと」が記載されています。<用法・用量>通常、成人にはゲーファピキサントとして1回45mgを1日2回経口投与します。なお、重度腎機能障害(eGFR 30mL/min/1.73m2未満)で透析を必要としない患者には、本剤45mgを1日1回投与すること。<安全性>難治性の慢性咳嗽患者を対象とした国際共同第III相試験および海外第III相試験の併合データにおいて認められた主な副作用は、味覚不全(40.4%)、味覚消失、味覚減退、味覚障害、悪心、口内乾燥などでした。味覚に関連する副作用の大多数は軽度または中等度であったものの、投与を中止している症例も認められたことから、医薬品リスク管理計画書(RMP)において「味覚異常」が重要な特定されたリスクとされています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、気道の神経の伝達を遮断して感覚神経の活性化や咳嗽反射を鎮めることで、慢性の咳を緩和します。2.苦味、金属味、塩味などを感じて食事がおいしく感じられなくなることがあります。不快感が強く、食事が取れないなど日常生活に支障を来す場合はご相談ください。 <Shimo's eyes>咳嗽は、医療機関を受診する患者さんの主訴として最も頻度が高い症候で、持続期間が3週間未満の場合は「急性咳嗽」、3週間以上8週間未満は「遷延性咳嗽」、8週間以上は「慢性咳嗽」と分類されています。これまで使用されてきた咳嗽治療薬としては、コデイン類のような麻薬性鎮咳薬や、デキストロメトルファンのような非麻薬性の中枢性鎮咳薬などがありますが、慢性咳嗽患者の中には治療抵抗性を示す例や、原因がわからず改善が不十分な例があります。本剤は世界で初めて承認された選択的P2X3受容体拮抗薬であり、非麻薬性かつ末梢に作用する経口の慢性咳嗽治療薬です。咳嗽が1年以上継続している治療抵抗性または原因不明の慢性咳嗽患者を対象としたプラセボ対照国際共同第III相試験(027試験)および海外第III相試験(030試験)において、52週投与の結果、本剤45mg投与群はプラセボ群と比較して、4週時から24時間の咳嗽頻度の有意な減少がみられ、12週時もしくは24週時まで持続しました。副作用については、上記試験の併合データにおいて、味覚不全、味覚消失、味覚減退、味覚障害等の味覚関連の副作用が63.1%に発現しました。多数は投与開始後9日以内に発現し、軽度または中等度でしたが、味覚関連の有害事象により服用中止に至った症例も13.9%ありました。なお、味覚関連の副作用は曝露量依存的に増加する傾向が認められており、その多くは本剤の投与中または投与中止後に改善するとされています。相互作用については設定されていませんが、本剤の有効成分であるゲーファピキサントはスルホンアミド基を有するため、スルホンアミド系薬剤に過敏症の既往歴のある患者では交叉過敏症が現れる可能性があり、注意が必要です。本剤は腎排泄型であり、腎機能の低下が疑われる患者さんに投与する場合は定期的に腎機能検査値を確認しましょう。参考1)PMDA 添付文書 リフヌア錠45mg

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