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あの男が帰ってきた!【Dr. 中島の 新・徒然草】(571)

五百七十一の段 あの男が帰ってきた!徐々に日が長くなってきました。気持ちのいい季節が来たと思っていたら鼻がグズグズ……また花粉の季節になってしまったのですね。これまでは寒くて外に出れませんでしたが、これからは花粉のせいで引きこもることになりそうです。ところで。ついにあの男が帰ってきました!そう、ショーンKです。かつて一世を風靡したあの低く落ち着いた声、流暢な英語、そして渋いルックス。ショーンKは、自称ニューヨーク生まれの日米ハーフで、11歳のときに日本に帰国。日本語の習得に苦労しながらも勉強に励み、ついにはハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得したとのこと。その経歴を引っ提げて、ラジオパーソナリティとしてキャリアをスタートさせ、やがてテレビに進出。英語講師、経済評論家、コンサルタントとして、八面六臂の大活躍を見せました。さらには、中央官庁での講演を依頼されるまでに!まさに完璧なキャリアでした。ところが2016年、そんな彼の華やかな経歴は『週刊文春』によって粉々に砕かれたのです。ハーバード・ビジネス・スクールのMBAはおろか、そもそもニューヨーク生まれですらなく、実は熊本県生まれの純日本人でした。それでも、あの落ち着いた低音ボイスと堂々とした態度から、多くの人がショーンKの経歴を信じ込んでいたのです。このスキャンダルが発覚した直後、ショーンKは涙ながらに謝罪し、メディアの前から完全に姿を消しました。それから9年、ショーンKは完全に過去の人となったかに思われていたのですが……再びわれわれの前に登場してくれました。なんと千葉県君津市の商工会議所で講演を行うというニュースが飛び込んできたのです。そのニュースは瞬く間に広まり、講演のチケットは即完売。まさに「みんな大好き、ショーンK!」というわけです。「今度はどんなキャラで登場するのだろう?」と期待しながら、彼の公式サイトを覗いてみました。そこにあったのは、以前のプロフィールから「事実無根」の部分を抜いただけの、相変わらずハッタリの利いたもの。開き直って何か自虐ネタでも披露してくれたら面白かったのに。それにしても、彼の英語力はやはりすごいものがあります。かつて英語講師に扮していただけあって、YouTubeには彼のレッスン動画が公開されています。その内容がまた、日本人の苦手な部分に気を配った「痒いところに手の届く」ものです。とくに興味を引いたのは「こう尋ねられたらこう切り抜けよう」とか「この場面はこうやって突破しよう」といった教え方。まるで彼自身の人生を象徴するような表現です。それにしても、どうやったらあれほど流暢な英語を身に付けられるのでしょうか。彼が「こうすればネイティブを装うことができる」といったノウハウを披露するだけで、十分にビジネスとして成立しそうです。YouTubeで公開されている彼の英語教材は非常に完成度が高く、最後のほうには思わず「上手い!」と笑ってしまうギャグも披露されていました。実際、彼の英語を聴いたアメリカ人がYouTubeのコメントで「細かい修正をいくつか加えれば、ニューヨーク生まれと言っても通用するレベルだ!」と絶賛しています。整形疑惑や学歴詐称はともかく、語学力だけは誤魔化せないわけですから感心せざるを得ません。さて、9年間の沈黙を経て再登場したショーンK。今度はどんなパフォーマンスをわれわれに見せてくれるのか。期待せずにはいられませんね。最後に1句春霞 ショーンKが 復活だ!

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アトピー、乾癬、円形脱毛症、白斑の日本人患者で多い併存疾患

 アトピー性皮膚炎、乾癬、円形脱毛症、白斑の日本人患者において、アレルギー性またはアトピー性疾患(アレルギー性鼻炎、結膜炎、喘息を含む)、皮膚疾患、感染症が最も頻繁にみられる併存疾患であり、とくにアトピー性皮膚炎および乾癬患者では、静脈血栓塞栓症、リンパ腫、帯状疱疹、結核の発生率が高いことが明らかになった。福岡大学の今福 信一氏らは、日本のJMDCレセプトデータを用いた後ろ向きコホート研究を実施、日本人皮膚疾患患者における併存疾患の有病率および発生率を評価した。The Journal of Dermatology誌オンライン版2025年2月7日号への報告より。 本研究では、2013年6月~2020年12月にJMDC請求データベースから収集されたデータが使用された。アトピー性皮膚炎、乾癬、円形脱毛症、または白斑と診断された患者は、年齢、性別、およびインデックス月(診断または治療の最初の記録があった月)によって、それらの疾患の診断による請求記録がない個人と1:1でマッチングされた。 主な結果は以下のとおり。・データには、アトピー性皮膚炎69万1,338例、乾癬5万1,988例、円形脱毛症4万3,692 例、白斑8,912例が含まれ、それぞれに対応するマッチング対照群が設定された。・それぞれの皮膚疾患患者において有病率の高かった併存疾患とマッチング対照群での有病率は、以下のとおりであった。アトピー性皮膚炎:アレルギー性鼻炎(47%vs.37%)、結膜炎(33%vs.23%)、喘息(27%vs.20%)、ウイルス感染症(22%vs.15%)、ざ瘡(11%vs.3%)乾癬:アレルギー性鼻炎(35%vs.28%)、結膜炎(21%vs.17%)、真菌感染症(17%vs.5%)、高血圧(16%vs.13%)、ウイルス感染症(16%vs.7%)円形脱毛症:アレルギー性鼻炎(40%vs.31%)、結膜炎(26%vs.19%)、ウイルス感染症(17%vs.8%)、喘息(14%vs.11%)、アトピー性皮膚炎(12%vs.3%)白斑:アレルギー性鼻炎(45%vs.36%)、結膜炎(30%vs.23%)、ウイルス感染症(21%vs.12%)、喘息(19%vs.16%)、アトピー性皮膚炎(16%vs.4%)・アトピー性皮膚炎コホートにおける併存疾患の発生率(10万人年当たり)は、マッチング対照群と比較して以下のとおりであった:静脈血栓塞栓症:51.4(95%信頼区間[CI]:48.3~54.7)vs.31.7(29.2~34.2)リンパ腫:13.8(12.2~15.6)vs.5.7(4.7~6.8)皮膚T細胞性リンパ腫:1.6(1.1~2.2)vs.0.1(0.0~0.4)帯状疱疹:740.9(728.8~753.1)vs.397.6(388.9~406.6)結核:8.4(7.1~9.7)vs.5.8(4.8~6.9)・乾癬コホートでのマッチング対照群との比較においても、同様の傾向が認められた。円形脱毛症および白斑のコホートでは、対照群と95%CIがほぼ重なっていた。

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抱腹絶倒!? “クセ強め”なお見合い相手たち〜第1弾【アラサー女医の婚活カルテ】第8回

アラサー内科医のこん野かつ美です☆前回は、結婚相談所(以下、相談所)でのお見合いに望む際、筆者なりに心掛けていたことについて書きました。今回は、筆者がお見合いで遭遇した、“クセ強め”な男性の皆さんを振り返ってみます。肩の力を抜いて、読み物としてお楽しみいただけると幸いです。(※個人の特定を防ぐため、大筋に影響しない程度の脚色を加えています)“瓶底メガネ”の丸尾さん1人目は、丸尾さん(仮名)です。32歳、会社員。収入、学歴、居住地などが私の希望条件と合っていたことから、お見合いの申し込みをお受けしました。写真を見ると、取り立てて特徴のない、善良そうなお顔立ちでした。プロフィールの中で、とくに私の目を引いたのは丸尾さんの学歴でした。某有名中高一貫校から一流の大学へ進んでおり、私が医師であることに対して、変に身構えることはなさそうな気がしました。話が合うといいな、と期待が膨らみました。しかし……「こん野さんですか?」当日、私より遅く待ち合わせ場所に現れたご本人を目にして、衝撃を受けました。分厚いレンズのメガネを掛け、さらにその上から、花粉症対策なのかゴーグルまで掛けていて、お顔を見通すのが難しいほどだったのです(そういう訳で、瓶底メガネがトレードマークの『ちびまる子ちゃん』のキャラクターにちなんで、丸尾さんと命名しました)。しかも、髪は伸ばしっぱなしのクセ毛で、使い込まれたジャンパーに、毛玉の目立つセーターという服装でした。清潔感という言葉とは対極です。(見た目はちょっとアレだけど、中身はいい人かもしれないし……)早々に回れ右して帰りたくなった気持ちにフタをして、お見合いのためのカフェに入りました。席に着くなり話し始めた丸尾さん。その内容がまたぶっ飛んでいたのです。「3年間同棲していた彼女と先月別れたばかりなんです。別れた理由は……」初対面でいきなり、元交際相手との生々しいエピソードを延々と聞かされた私は、いったいどういう顔をしていれば良かったのでしょうか…。「お見合いは1時間を目安に」というルールがあったので耐えましたが、人生で最も長く感じた1時間だったかもしれません。丸尾さんは、終始メガネもゴーグルも着けたままだったので、素顔はついぞ拝めずじまいでした。ちなみに、相談所のお見合いでは“お茶代は男性負担”というやや前時代的なルールがあるのですが、丸尾さんとのお見合いは10円単位の割り勘でした(「6円、負けときますね!」と言われました)。お別れしてすぐに、相談所にお断りの連絡を入れたのは言うまでもありません。いろいろな意味で“ハジケ過ぎ”なコーさん2人目はコーさん(仮名)です。35歳、年収1,000万超(私の住む地方ではかなり高いほうです)、肩書は「会社経営者」となっていました。プロフィール写真は、ビジネススーツに黒髪をビシッとセットした、硬派な雰囲気でした。しかし、お見合い当日、待ち合わせ場所にコーさんらしき人はなかなか姿を見せません。私のほかにその場にいたのは、DJ KOOさんのような金髪の男性ただ1人。腹回りが少々ぽっちゃり気味なため、茶色いジャケットのボタンが弾け飛ばんばかりになっています。あれ?まさか……「こん野さんですか?」写真とかなり印象の違うその方こそが、コーさんご本人だったのです(DJ KOOの「KOO」からとって、「コー」さんです)!私の職業について、「いやぁ、お姉さん、この地方の女性会員の中で、年収ぶっちぎりトップだったからさぁ。聞く前から、絶対医者だろって思っていたよ」と、なんともまあフランクな感想を頂きました。お見合い相手から「お姉さん」呼ばわりされたのは初めてでした(笑)。「お姉さん、いいね! お姉さんみたいな人と結婚したら、人生もっと楽しめそう!」ご縁はありませんでしたが、刺激的な1時間で、これも人生経験と思えば、なかなか面白かったです。番外編:個性的過ぎるプロフィールの2人番外編として、お見合いはしなかったものの印象に残ったお相手を2人ご紹介して、締めくくりたいと思います。番外編その1は、某県在住の開業医の先生です。おそらく私のプロフィールから、同業者であることを察して申し込んでくださったのだろうと思うのですが……なんと御年60代。実に2倍以上の年齢差があったので、丁重にお断りさせていただきました。近隣の県にお住まいだったので、もしかしたら今後いつか、患者さんを紹介したりされたりすることがあるかもしれません。番外編その2は、30代のイケメンサラリーマン。年収や学歴など申し分のないプロフィールをお持ちでしたが、自己PRの最後の1文が強烈でした。「ワクチンを一度も打っていない、清らかな女性と巡り合いたいです」これを読んで、プロフィールページをそっと閉じたのは言うまでもありません。世の中には、多種多様な価値観をお持ちの方がいらっしゃるものですね。お見合いに真の“ハズレ”なし以上、相談所での活動で出会った、パンチの効いた男性の皆さんをご紹介しました。ただ、こんなふうに一見“ハズレ”にみえるお見合いも、実は決して無駄ではない……と、思うようにしていました。(私は、こういう男性とは合わないんだな)ということが浮き彫りになるので、自分が求める結婚相手像を改めて確認することができたからです。つくづく、面白い経験をさせてもらったなぁと思います。なお、ここに挙げた“クセ強め”男性陣はほんの一握りで、大多数は礼儀正しい方々だったことを付け加えておきます。次回も引き続き、印象深かったお見合い相手を振り返りたいと思います。お楽しみに。

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1日1杯の緑茶が花粉症を抑制か~日本人大規模コホート

 緑茶は、カテキンなどの抗酸化作用による抗炎症効果によって、アレルギー症状に効果があると考えられているが、アレルギー症状との関係を検討した大規模な疫学研究は限られている。今回、順天堂大学の青木 のぞみ氏らは、日本人の大規模疫学コホートにおいて、緑茶、番茶、ウーロン茶、紅茶の摂取頻度とスギ花粉症との関係を検討した。その結果、お茶、とくに緑茶を1日1回以上習慣的に摂取すると、スギ花粉特異的IgE陽性の可能性が低下することがわかった。Journal of Nutritional Science誌に2025年1月10日掲載された。 本研究は、2013~15年に募集した宮城県および岩手県に住む40歳以上の約6万人の大規模コホートにおいて、血液検査によるスギ花粉抗体値を測定され、自記式質問票によるお茶の摂取頻度(週1回未満、週1~2回、週3~4回、週5~6回、1日1杯、1日2~3杯、1日4~6杯、1日7~9杯、1日10杯以上から選択)に回答した1万6,623人のデータを用いた。ロジスティック回帰モデルにより、摂取頻度(週1回未満、週1~6回、1日1杯以上の3群に分類)と血清中のスギ花粉特異的IgE値(ルミカウント0~1.39:陰性、1.40以上:陽性)との関連を解析した。  主な結果は以下のとおり。・緑茶について、1日1杯以上は週1回未満を基準としてスギ花粉特異的IgE陽性の調整オッズ比が0.81(95%信頼区間:0.70~0.94、p<0.01)であった。・緑茶以外では摂取頻度とスギ花粉特異的IgEとの間に統計学的に有意な関連は認められなかった。

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その4)【だから家族のつながりにとらわれてたんだ!だから人権意識が乏しかったんだ!(直系家族病)】Part 4

結局日本人が家族のつながりにとらわれて、人権意識が低いわけは?入院中に明日香は、蕁麻疹が出ただけで看護師から「クワイエット行き」(隔離拘束)にさせられそうになりました。その時とっさに、蕁麻疹の様子をコモノ(明日香を訪ねてきた面会者)に携帯電話で撮らせます。すると、看護師から「閉鎖病棟では写真撮影は禁止ですよ」と言われ、それを取り上げられそうになります。権威主義の常とう手段、証拠隠滅です。しかし、ひるまず、「初耳ですね。ルールを提供する側なら、あらかじめルールを提示しておくのが、フェアなやり方なんじゃないでしょうか」と言い返すのです。当然の権利を主張した瞬間で、私たちもスカッとします。まさにこのフェアであることは、直系家族(権威主義)ではなく、核家族(自由主義)の価値観による人権意識です。しかし、明日香のような人は少ないようです。なぜでしょうか?この原因を、日本の歴史から解き明かしてみましょう。日本は、平安時代までは相続を分ける平等主義核家族でした。争いが増えた鎌倉時代(14世紀)以降に、一人だけ相続する直系家族が農家でも武家でも徐々に広がり、江戸時代に行き渡りました1)。そして明治になり、明治民法(1896年施行)によって家制度として初めて明文化されました。明治民法では、長男が代々家長(家督)となり、単独で相続を継ぐ権利を得ることとされ、その見返りとして家長はその家族(親族)のメンバーを扶養する義務を負うこととされました。これが、扶養義務の法的な起源です。これは、まさに直系家族という日本の家族システムをそのまま明文化したものです。当時の農村では、親族で集まった集落をつくっており、家督相続と扶養義務のセットはとても合理的でした。そもそも当時は、公的扶助(生活保護)が明確には確立していませんでした。すぐ近くに住む親族が一緒に農作業をしており、日常的にも経済的にも助け合うこと(扶養)は、ごく自然でした。そしてこれが、「子供(家長以外の家族)は成人しても親(家長)の言うことを聞くべきであり、困ったら親(家長)を頼るべきである」というその3で説明した現在の日本人の国民性の起源でもあります。以上から、鎌倉時代から現在まで約600年かけて、直系家族という日本の家族システムを確立させ、家族のつながりにとらわれるという日本独特の国民性(文化)を完成させたことになります。同時にこの600年間で、この家族システム(文化)に適応する人(遺伝子)がより生き残り、より子孫を残してきたことにもなります。それでは、そのような人(遺伝子)とはどんな特徴があるでしょうか?それは、権威にひれ伏し(受け身)、不平等でも恐縮して気を遣うこと(不安)です。まさに、先ほどの鉄雄の「だっておれ、言われるがままじゃん」というセリフです。さらに言えば、彼は番組企画で拉致された時も同じスタンスだったわけですが、そこまで彼ができるのも、その後の番組編集で「きっとおいしくしてくれる」というご褒美(権威)を薄々期待していたからです。あとで鉄雄が明かしたように、実は拉致されることはあらかじめ知らされており、パスポートも周到に用意していたのでした。たとえ人権侵害という形になっても「言うことを聞いていれば悪いようにはされない」という暗黙の了解の文化がそこにあります。実際の研究では、日本人は脳内物質の国際比較においても世界で最も受け身(ドパミン不足)で不安(セロトニン不足)になりやすいことがわかっています。この詳細については、関連記事2をご覧ください。なお、その記事では、受け身で不安になりやすい日本人の気質について、他の要因にも触れています。この受け身で不安になりやすい気質は、「自分はだめだ」という自己肯定感の低さにもつながります。その方が、直系家族の文化に適応できて都合が良いからです。むしろそうなる必要があったというわけです。実際の統計でも、日本人は世界で最も自己肯定感が低いことがわかっていますが、これにも納得がいくでしょう。このように、家族システムにおいても、文化進化と遺伝子進化は共進化していることが考えられます。共進化の詳細については、関連記事3をご覧ください。以上より、日本人が家族のつながりにとらわれ人権意識が低いのは、日本の家族システムが長らく直系家族であったために、権威主義と不平等を受け入れる文化進化と遺伝子進化が共進化してきたからであると説明することができます。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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1日1回、新規作用機序の潰瘍性大腸炎治療薬「ゼポジアカプセルスターターパック/カプセル0.92mg」【最新!DI情報】第31回

1日1回、新規作用機序の潰瘍性大腸炎治療薬「ゼポジアカプセルスターターパック/カプセル0.92mg」今回は、スフィンゴシン1-リン酸受容体調節薬「オザニモド(商品名:ゼポジアカプセルスターターパック/カプセル0.92mg、製造販売元:ブリストル・マイヤーズ スクイブ)」を紹介します。本剤は、1日1回服用の新規作用機序の潰瘍性大腸炎治療薬であり、既存薬で効果不十分であった患者や利便性の向上を望む患者の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>中等症~重症の潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)を適応として、2024年12月24日に製造販売承認を取得しました。本剤は、過去の治療において、ほかの薬物療法(5-アミノサリチル酸製剤、ステロイドなど)で適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に投与します。<用法・用量>通常、成人にはオザニモドとして1~4日目は0.23mg、5~7日目は0.46mg、8日目以降は0.92mgを1日1回経口投与します。<安全性>重大な副作用として、感染症(帯状疱疹[2.8%]、口腔ヘルペス[0.6%])など)、進行性多巣性白質脳症(頻度不明)、黄斑浮腫(0.6%)、肝機能障害(4.5%)、徐脈性不整脈(1.7%)、リンパ球減少(10.2%)、可逆性後白質脳症症候群(頻度不明)が報告されています。本剤投与による心拍数の低下は、漸増期間中に生じる可能性が高いので、循環器を専門とする医師と連携するなど適切な処置が行える管理下で投与を開始する必要があります。また、黄斑浮腫に備えて、眼底検査を含む定期的な眼科学的検査を実施する必要があります。その他の副作用は、頭痛、高血圧、γ-GTP増加、ALT増加(いずれも1%以上)、発疹や蕁麻疹を含む過敏症(1%未満)、上咽頭炎、末梢性浮腫、努力呼気量減少、努力肺活量減少(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1.本剤は、中等症~重症の潰瘍性大腸炎に用いられる薬です。結腸に浸潤するリンパ球数が減少することで、潰瘍性大腸炎を改善すると考えられています。2.過去の治療において、ほかの薬物療法(5-アミノサリチル酸製剤、ステロイドなど)で適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に使用されます。3.服用開始から徐々に用量を増やしていきますが、心拍数が低下することがあるので、異常を感じたら直ちに医師に連絡してください。4.服用中に重篤な眼疾患が現れることがあるので、異常を感じたら直ちに医師に連絡してください。<ここがポイント!>潰瘍性大腸炎(UC)は、主として粘膜にびらんや潰瘍が生じる非特異性炎症疾患です。再燃と寛解を繰り返すことが多く、長期間の医学管理が必要となります。薬物療法には、5-アミノサリチル酸製剤や副腎皮質ステロイドが用いられますが、これらの治療薬が無効であった場合には、免疫調整薬やヤヌスキナーゼ阻害薬、抗TNF抗体製剤、抗IL-12/23抗体製剤などが使用されます。しかし、無効例や通院での注射投与が困難な場合のほか、安全性の問題などで治療薬の変更が生じる懸念もあることから、とくに中等症~重症のUC患者に対しては、既存薬と異なる新たな作用機序で、症状や粘膜損傷などの改善効果が高く、難治性に移行させない経口治療薬が求められていました。オザニモドは、1日1回の経口投与で中等症~重症のUCに効果を示します。オザニモドは、スフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体のサブタイプ1(S1P1)と5(S1P5)に対して高親和性で結合し、リンパ球の遊走を抑制します。これにより、循環血中のリンパ球数が減少することで、炎症性細胞のさらなる動員や炎症性サイトカインの局所的な放出を防ぎ、腸粘膜が継続的に損傷する状況を改善します。日本人の中等症~重症の活動性UC患者を対象とした国内第II/III相試験(J-True North試験)において、主要評価項目である投与12週時点の完全Mayoスコアに基づく臨床的改善率は、本剤0.92mg群で61.5%、プラセボ群で32.3%と、本剤群で統計学的に有意に高い改善が認められました(p=0.0006)。同様に、副次評価項目である投与12週時点の臨床的寛解率は、本剤群で24.6%、プラセボ群で1.5%と、本剤群で統計学的に有意に高い改善が認められました(p=0.0002)。

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その2)【家族の同意だけでいいの?その問題点は?(強制入院ビジネス)】Part 3

c.医療保護入院への審査が形骸化明日香は、強制入院中のため、締め切りのある原稿を書くことも送ることもできないなか、面会に来たコモノ(放送作家である鉄雄の弟子)から「代わりに書きました」と聞かされます。しかし、その内容があまりにも突飛であったため、そのショックから持病の蕁麻疹が全身に出てしまい、コモノが叫び声を上げてしまいます。それを聞きつけた担当看護師は、他の看護師たちに「(明日香用の)クワイエット(ルーム)の手配を」と速やかに指示を出すのです。しかし、明日香もひるみません。すぐに上半身裸になり、蕁麻疹の様子をコモノに携帯で撮らせて、「この病院は、患者がこんな体(蕁麻疹)になっているのに、治療もせずに監禁しようとしているってインターネットに写真をアップしますよ」と反論するのです。明日香はこうするしか、「クワイエット行き」(隔離拘束)を免れる方法がなかったのでした。なお、厳密には、隔離拘束の最終的な判断は精神保健指定医が行います。3つ目の「法律の抜け穴」は、医療保護入院への審査が形骸化されていることです。審査とは、都道府県が設置した精神医療審査会のことです。ここに、患者は強制入院中の不当な扱いに対して処遇改善請求や退院請求をする権利があります。しかし、実際にそれが認められるのは数%にすぎません1)。なぜこんなことが起きてしまうのでしょうか?そのわけは、書類審査だけだからです。立ち入り審査や聞き取り審査はありません。その書類も、審査に引っかからないように、たとえ頻度は少なくても症状をきっちり記載する作文対策をすることができます。むしろ、審査請求の認定率が少しでもあるのは、単に精神科医が作文対策をうっかり「怠った」だけの書類上の不備であることが推測できます。ちなみに、先ほど医療保護入院への同意を家族が撤回できないと説明しましたが、その代わりに家族が退院請求をすることができるとの行政からの説明があります。しかし、結局これも認定される可能性は、かなり低いわけです。なお、退院支援相談員は、2014年の精神保健福祉法の改正で導入されましたが、結局この役職も「当該医療機関内に配置」と明記され、その精神科病院に勤務する精神保健福祉士になってしまうため、支援ではあっても、審査の役割はありません。わざわざ明記されているのは、外部の目を入れさせないようにするためではないかと邪推してしまいます。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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乳幼児健診でよくある疑問・相談への対応

限られた時間で判断・助言をするために「小児科」65巻12号(2024年11月臨時増刊号)乳幼児健診の場で保護者から向けられる素朴な、しかし切実な質問に、つい曖昧に答えてしまうことはないでしょうか。限られた時間の中で、見逃してはいけない徴候であれば確実にすくい上げることはもちろん、そうでなくとも医学的な根拠があり、かつ保護者が安心できる答えをその場で伝える――そのために知っておくべき44テーマについて、各領域の専門家にその考え方・答え方を解説いただきました。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する乳幼児健診でよくある疑問・相談への対応定価8,800円(税込)判型B5判頁数240頁発行2024年12月編集「小児科」編集委員会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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自己主導型のCBTはアトピー性皮膚炎の症状軽減に有効

 アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis;AD)は、強いかゆみや皮疹、乾燥肌を特徴とする炎症性皮膚疾患である。AD患者では、皮膚をかく行為が不安や抑うつなどのメンタルヘルス問題と関連していることが示唆されている。こうした中、オンラインで患者自身が行う認知行動療法(cognitive behavioral therapy;CBT)が、医師主導で行うCBTと同程度にADの症状を軽減する可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のDorian Kern氏らによるこの研究結果は、「JAMA Dermatology」に12月18日掲載された。 Kern氏は同研究所のニュースリリースの中で、「オンラインで患者自身が行うCBT(自己主導型CBT)は、医療リソースの消費を抑えながら患者の症状を軽減し、生活の質(QOL)を向上させる効果的な選択肢であることが明らかになった」と述べている。 CBTは、心身の問題に対する考え方や行動のパターンを変えることでストレスを軽減し、QOLを向上させる心理療法の一種であり、ADの症状改善にも有効とされている。過去の研究では、医師主導型CBTがADの症状軽減に有効であることが示されている。 今回の試験では、非劣性試験のデザインに基づき、自己主導型CBTの有効性と、従来の医師主導型CBTの有効性が比較された。対象とされた168人のAD患者(女性84.5%、平均年齢39歳)は、12週間にわたり自己主導型CBTを行う群(86人)と医師主導型CBTを受ける群(82人)にランダムに割り付けられた。自己主導型CBT群は、オンラインプログラムを利用して、マインドフルネスやかゆみへの適切な対処法(保湿剤やローションの使用など)を学び、自分で湿疹関連の治療を行った。主要評価項目は、自己報告によるPatient-Oriented Eczema Measure(POEM)スコアのベースラインから介入後およびその12週後の変化量とし、自己主導型CBT群と医師主導型CBT群のスコアの差が3点以内であれば、効果は同等と見なした。POEMは7つの質問で過去1週間の症状の強さを評価するツールである。 最終的に151人(90.0%)の対象者が介入後の評価を受けた。介入後のPOEMスコアの変化量は、自己主導型CBT群で4.60点、医師主導型CBT群で4.20点であった。両群間の変化量の平均差は0.36点であり、自己主導型CBTと医師主導型CBTの効果は統計学的に同程度であることが示された。深刻な有害事象は報告されなかった。医師主導型のCBTでは、治療ガイダンスに平均36.0分、評価に平均14.0分かかっていたのに対し、自己主導型のCBTでは評価に平均15.8分かかっていた。 こうした結果を受けて研究グループは、「自己主導型CBTは、特にトークセラピーに興味がない人にとって、利用しやすい効果的な湿疹管理法となる可能性がある」と述べている。Kern氏は「これは、AD患者だけでなく、皮膚科や慢性疾患の他の分野にとっても重要な進歩だ」と述べている。

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増える成人食物アレルギーと新規アレルゲン、「食べたい」に応えるために/日本アレルギー学会

 成人の食物アレルギーは、罹患者数が増加の一途をたどっている。しかし、疫学データの不足や病態解明が不十分であることなどから、専門診療の需要が急増している。このような背景から、成人の食物アレルギーは近年注目を集めている。そこで第73回日本アレルギー学会学術大会(10月18~20日)において、「成人の食物アレルギーアップデート」というシンポジウムが開催された。本シンポジウムにおいて、矢上 晶子氏(藤田医科大学ばんたね病院 総合アレルギー科 教授)が「成人領域における食物アレルギーの新たなアレルゲン」というテーマで、新たなアレルゲンの同定方法、注目される新たなアレルゲン、アレルゲン解析後の対応について解説した。小児と異なる成人の食物アレルギー 成人の食物アレルギー診療では、患者に多様な背景が存在する。その例として、矢上氏は「食物アレルギーに困っている、誤食が心配である」「香粧品由来・職業性に発症した」「食物アレルギーの診断はついているが再び食べたい」「自己判断で食べないようにしている」といった患者の声や背景があることを紹介した。 食物アレルギーの原因検索にはプリックテストを用いる。矢上氏の所属する藤田医科大学ばんたね病院では、2021~23年に食物アレルギーの疑いでプリックテストを実施したのは945例であり、そのうち何らかの陽性反応がみられたのは約半数の489例であった。陽性例の年齢は幅広く、4~88歳まで分布していた。 原因食物としては魚介類、果物、穀物、野菜の順に多く、果物の中では桃、キウイ、りんごの順に多かった。野菜ではトマト、きゅうり、アボカドの順に多かった。プリックテストで陽性となった場合の考え方について、たとえば桃が陽性になった場合には花粉抗原を疑い、PR-10、プロフィリン、GRPなどを調べて交差反応性を検討することや、トマトではスギとの交差反応性を疑うことなどを紹介した。 近年の研究において、小児と成人では同じ食物に対するアレルギーでも、原因が異なる可能性も示されている。たとえばエビの場合、小児ではダニ感作でエビ摂取後に症状が生じることが多く、原因となる抗原はトロポミオシンが代表的であるのに対し、成人では単独感作もしくは経皮感作が多く、原因となる抗原はミオシン重鎖が代表的であることなどである。 重症の魚アレルギーのマーカーについても紹介した。魚アレルギーの患者はさまざまな抗原に感作するが、重症例ではコラーゲン感作例が多く、コラーゲン特異的IgE抗体価が高い患者ほどアレルギー症状が強いことが示唆されている。近年増加する食品コオロギとアレルギー 続いて、矢上氏は成人の食品アレルギーにおける新たなアレルゲンについて紹介した。近年、多くの新たなアレルゲンが報告されているが、そのなかでも、近年の食品コオロギの増加に伴って生じたコオロギアレルギーについて解説した。 コオロギとエビには交差反応性がある。交差抗原としては、トロポミオシンやアルギニンキナーゼなどが報告されており、EUでは「貝類、甲殻類、ダニ類にアレルギーを持つ人は摂取を避ける必要がある」と注意喚起されている。しかし、本邦ではこのような交差反応性に関する注意喚起や表示の決まりがないという問題が存在すると矢上氏は指摘した。 では、どのような対策が考えられるのだろうか。矢上氏は、本邦においてコオロギアレルギーのリスクが高い人の特徴が明らかになってきたことを紹介した。矢上氏らの研究では、ダニ感作ありでエビアレルギーを有する人は、コオロギ特異的IgE抗体価がエビトロポミオシン特異的IgE抗体価と強い相関関係にあった。つまり、ダニ感作のあるエビアレルギー(おそらく小児例)を有する人は、コオロギアレルギーのリスクが高いということである。これを踏まえて矢上氏は「すべての方にコオロギ食品を食べないように言ってはいけないが、注意喚起をしていくことは重要である」と述べた。「食べたい」に応えるために 成人では、「アレルギーにより魚類をまったく摂取しなくなったが、また食べたい」「加熱食品は摂取できるが生の食品も摂取してみたい」という声や「食物経口負荷試験や食物経口免疫療法を途中で断念した」という背景などが存在すると矢上氏は述べた。そこで、患者の「食べたい」という希望に応えるための対応を紹介した。 たとえば、香粧品由来や職業性(例:回転寿司店でのアルバイトによる経皮感作)にアレルギーを発症した場合など、経皮感作が疑われる場合には、そのアレルゲンとの接触を断つことで、抗原に対する特異的IgE抗体価が経時的に低下することが多い。そのような場合は、摂取再開が可能になることが報告されており、経験的にもわかってきていると矢上氏は述べた。また、白身魚(パンガシウス)の摂取によりアナフィラキシーが生じ、それ以来魚類をまったく摂取しなくなった1例についても紹介した。「魚をまた食べたい」と切望されたことから、矢上氏らはプリックテストや血清学的解析を実施したという。その結果、マグロとサバには特異的IgEが検出されないことが確認され、入院で経口負荷試験を実施したところ、摂取可能であることが確認できた。 以上のように、経口負荷試験などにより患者の「食べたい」という希望に応えられる可能性があるが、課題も存在すると矢上氏は指摘した。その1つとして、成人のアレルギー領域では経口負荷試験が普及していないことを挙げた。その理由として「成人で初めて食物アレルギーを発症して受診する方は、重篤な症状(アナフィラキシー)などを経験していることが多く、経口負荷試験でも同様の症状が誘発される可能性は低くない。原因の特定やどのような状態であれば食べられるかの確認には、経口負荷試験が有用であるが、現状の成人のアレルギー診療において、医療現場がそのようなリスクを負っても、外来の経口負荷試験には診療報酬がない※ことなどが挙げられる」と矢上氏は述べ、診療体制の整備にも尽力したい考えを示した。※:16歳未満の小児に対する小児食物アレルギー負荷試験(D291-2)は保険適用で、3回/年を上限に実施可能

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妊娠中のビタミンD摂取は子どもの骨を強くする

 妊娠中のビタミンDの摂取は、子どもの骨と筋肉の発達に良い影響をもたらすようだ。英サウサンプトン大学MRC Lifecourse Epidemiology CentreのRebecca Moon氏らによる研究で、妊娠中にビタミンDのサプリメントを摂取した女性の子どもは、摂取していなかった女性の子どもに比べて、6〜7歳時の骨密度(BMD)と除脂肪体重が高い傾向にあることが明らかにされた。この研究結果は、「The American Journal of Clinical Nutrition」11月号に掲載された。Moon氏は、「小児期に得られたこのような骨の健康への良い影響は、一生続く可能性がある」と話している。 ビタミンDは、人間の皮膚が日光(紫外線)を浴びると生成されるため「太陽のビタミン」とも呼ばれ、骨の発達と健康に重要な役割を果たすことが知られている。具体的には、ビタミンDは、丈夫な骨、歯、筋肉の健康に必要なミネラルであるカルシウムとリン酸のレベルを調節する働きを持つ。 今回の研究では、妊娠14週未満で単胎妊娠中の英国の妊婦(体内でのビタミンDの過不足の指標である血液中の25-ヒドロキシビタミンD濃度が25~100nmol/L)を対象に、妊娠中のビタミンD摂取と子どもの骨の健康との関連がランダム化比較試験により検討された。対象とされた妊婦は、妊娠14~17週目から出産までの期間、1日1,000IUのコレカルシフェロール(ビタミンDの一種であるビタミンD3)を摂取する群(介入群)とプラセボを摂取する群(対照群)にランダムに割り付けられた。これらの妊婦から生まれた子どもは、4歳および6~7歳のときに追跡調査を受けた。 6〜7歳時の追跡調査を受けた454人のうち447人は、DXA法(二重エネルギーX線吸収法)により頭部を除く全身、および腰椎の骨の検査を受け、骨面積、骨塩量(BMC)、BMD、および骨塩見かけ密度(BMAD)が評価された。解析の結果、介入群の子どもではプラセボ群の子どもと比較して、6〜7歳時の頭部を除く全身のBMCが0.15標準偏差(SD)(95%信頼区間0.04~0.26)、BMDが0.18SD(同0.06~0.31)、BMADが0.18SD(同0.04~0.32)、除脂肪体重が0.09SD(同0.00~0.17)高いことが明らかになった。 こうした結果を受けてMoon氏は、「妊婦に対するビタミンD摂取による早期介入は、子どもの骨を強化し、将来の骨粗鬆症や骨折のリスク低下につながることから、重要な公衆衛生戦略となる」と述べている。 では、妊娠中のビタミンD摂取が、どのようにして子どもの骨の健康に良い影響を与えるのだろうか。Moon氏らはサウサンプトン大学のニュースリリースで、2018年に同氏らが行った研究では、子宮内の余分なビタミンDが、「ビタミンD代謝経路に関わる胎児の遺伝子の活動を変化させる」ことが示唆されたと述べている。さらに、2022年に同氏らが発表した研究では、妊娠中のビタミンD摂取により帝王切開と子どものアトピー性皮膚炎のリスクが低下する可能性が示されるなど、妊娠中のビタミンD摂取にはその他のベネフィットがあることも示唆されているという。

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酒さ〔Rosacea〕・鼻瘤〔Rhinophyma〕

1 疾患概要■ 定義酒さは20歳代以降に好発し、顔面中央部の前額・眉間部、鼻部、頬部(中央寄り)、頤部に、紅斑・潮紅や毛細血管拡張による赤ら顔を来す疾患である。■ 疫学白人(コーカソイド)では5~10%程度までとする報告が欧米の地域からなされている。アジア人(モンゴロイド)では数~20%程度までの報告がある。日本人の酒さの罹患率の正確なデータはないが、自覚していない軽症例を含めると0.5~1%程度の罹患率が見込まれる。■ 病因酒さに一元的な病因は存在しない。酒さの病理組織学的病変の主体は、脂腺性毛包周囲の真皮内にあり、脂腺性毛包を取り囲む炎症と毛細血管拡張を来す。コーカソイドを祖先に持つ集団でのゲノムワイド関連解析(GWAS)調査では酒さ発症に遺伝的背景の示唆がある1)。後天的要因として、環境因子からの自然免疫機構・抗菌ペプチドの過活性化2,3)や肥満細胞の関与する皮膚炎症の遷延化4)、末梢神経応答などの関与する知覚過敏や血管拡張反応などが病態形成に関与することが示されている。■ 症状・分類酒さの皮疹は眉間部、鼻部・鼻周囲、頬部、頤部の顔面中央部に主として分布する。まれに頸部や前胸部、上背部の脂腺性毛包の分布部に皮疹が拡大することもある。酒さは主たる症候・個疹性状に基づいて、紅斑血管拡張型酒さ、丘疹膿疱型酒さ、瘤腫型酒さ・鼻瘤、眼型酒さの4病型・サブタイプに分類される。1)紅斑血管拡張型酒さ脂腺性毛包周囲の紅斑と毛細血管の拡張を主症候とし、酒さの中で最も頻度が高い病型である。寒暖差などの気温変化、紫外線を含む日光曝露、運動や香辛料の効いた食餌などの顔面血流が変化する状況で、火照りや顔の熱感などの自覚症状が悪化する。2)丘疹膿疱型酒さ尋常性ざ瘡と類似の丘疹や膿疱が頬部、眉間部、頤部などに出現する。背景に紅斑血管拡張型酒さにみられる紅斑や毛細血管拡張を併存することも多い。尋常性ざ瘡と異なり、丘疹膿疱型酒さには面皰は存在しないが、酒さと尋常性ざ瘡が合併する患者もあり得る。尋常性ざ瘡との鑑別には面皰の有無に加えて、寒暖差による火照り感や熱感などの外界変化による自覚症状の変動を確認するとよい。3)瘤腫型酒さ・鼻瘤皮下の炎症に伴って肉芽腫形成や線維化を来す病型である。とくに、鼻部に病変を来すことが多く、「鼻瘤」という症候名・病名でも知られている。頬部の丘疹膿疱型酒さを合併することがまれではない。紅斑毛細血管拡張型酒さや丘疹膿疱型酒さは女性患者の受診者が多いが、瘤腫型酒さ・鼻瘤では男女比は1対1である5)。4)眼型酒さ眼瞼縁のマイボーム腺周囲炎症・機能不全を主たる病態とし、初期症状は、眼瞼縁睫毛部周囲の紅斑と毛細血管拡張、そして眼瞼結膜の充血や血管拡張である。自覚症状として眼球や眼瞼の刺激感や流涙を訴えることが多い。眼型酒さのほとんどは、他の酒さ病型に併存しており、酒さの眼合併症という捉え方もされる。■ 予後生命予後は良い。紅斑血管拡張型酒さの毛孔周囲炎症と毛細血管拡張の改善には数年を要する。丘疹膿疱型酒さの丘疹・膿疱症状は、3~6ヵ月程度の治療で改善が期待できる。瘤腫型酒さ・鼻瘤は鼻形態の変形程度に併せて、抗炎症療法から手術療法までが選択されるが、症候の安定には数年を要する。眼型酒さの炎症症状(結膜炎や結膜充血)は3~6ヵ月程度の治療で改善が期待できる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)酒さの診断のための特定の検査方法はなく、皮疹性状や分布、臨床経過から総合的に酒さを診断する。酒さ患者にはアトピー素因やアレルギー素因を有する患者が20~40%ほど含まれており、特異的IgE検査(VIEW39など)を行い、増悪因子の回避に努める5)。アレルギー性接触皮膚炎の併存が疑われる場合にはパッチテスト(貼布試験)を考慮する。酒さ病変部では、毛包虫が増えていることがあり、毛包虫の確認には皮膚擦過試料の検鏡検査を行う。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)酒さの治療では、主たる症候を見極めて治療計画を立てる。一般的には、抗炎症作用を有する治療薬で酒さの脂腺性毛孔周囲の紅斑、丘疹、膿疱の治療を3~6ヵ月程度行う。炎症性皮疹のコントロールの後に、器質的変化による毛細血管拡張や、瘤腫や鼻瘤にみられる線維化と形態変形に対する治療を計画する。酒さ症候は、生活環境や併存症によっても症状の増悪が起こる5,6)。酒さの再燃や増悪の予防には、患者毎の増悪因子や環境要因に沿った生活指導と肌質に合わせたスキンケアが重要である。■ 丘疹膿疱型酒さに対する抗炎症外用薬・内服薬1)メトロニダゾール外用薬欧米では、メトロニダゾール外用薬(商品名:ロゼックスゲル)が酒さの抗炎症薬として1980年代から使用されている7,8)。わが国でも2022年に国際的酒さ標準治療薬の1つであるメトロニダゾール外用薬0.75%が酒さに対して保険適用が拡大された9)。メトロニダゾール外用薬は、その炎症反応抑制効果から丘疹膿疱型酒さにみられる炎症性皮疹の丘疹と膿疱の抑制効果、脂腺性毛包周囲の炎症による紅斑に対して改善効果が期待できる。2)イオウ・カンフルローションイオウ・カンフルローションは、わが国では1970年代から発売されざ瘡と酒さに対して保険適用がある。ただ、イオウ・カンフルローションの保険適用は、わが国での酒さ患者を対象とした臨床試験に基づいた承認経過の記録が見当たらず、現代のガイドライン評価基準に則した本邦での良質なエビデンスはない。イオウ・カンフルローションは、エタノールを含んでおり、皮脂と角層内水分の少ない乾燥肌の患者に用いると、乾燥感や肌荒れ感が強くなる場合がある。イオウ・カンフルローション懸濁液は、淡黄色で塗布により肌色調が黄色調となることがある。肌色調が気になる患者には、上澄み液だけを用いるなどの工夫をする。3)テトラサイクリン系抗菌薬ドキシサイクリンは、丘疹膿疱型酒さの炎症性皮疹(丘疹、膿疱)に有効である。酒さ専用内服薬としてドキシサイクリンの低用量徐放性内服薬が欧米では承認されている。ミノサイクリンは、ドキシサイクリン低用量徐放性内服薬と同等の効果が示されているが、間質性肺炎や皮膚色素沈着などの副作用から、長期服用時に留意が必要である10)。■ 紅斑毛細血管拡張型酒さに対する治療紅斑毛細血管拡張型酒さの主たる症候は、毛細血管の拡張に伴う紅斑や一過性潮紅である。治療には拡張した毛細血管を縮小させる治療を行う。パルス色素レーザー(pulsed dye laser:PDL)[595nm]、Nd:YAGレーザー[1,064nm]、Intense pulsed light (IPL)が、酒さの毛細血管拡張と紅斑を有意に減少させることが報告されている。これらのレーザー・光線治療は酒さに対しては保険適用外である。4 今後の展望2022年にメトロニダゾールが酒さに対して保険適用となり、わが国でも酒さ標準治療薬が入手できるようになった。酒さの診断名登録が増えており、医療関係者と患者ともに酒さ・赤ら顔に対する認知度の増加傾向が感じられる。しかしながら、潮紅や毛細血管拡張を主体とする紅斑毛細血管拡張型酒さに対する保険適用の治療方法は十分ではなく、今後の治験や臨床試験が期待される。5 主たる診療科皮膚科顔面の丘疹・膿疱を主たる皮疹形態とする疾患の多くは皮膚表面の表皮の疾患ではなく、真皮における炎症、肉芽腫性疾患、感染症、腫瘍性疾患である可能性が高い。皮膚炎症性疾患に頻用されるステロイド外用薬は、これらの疾患に効果がないばかりか、悪化させることがしばしば経験される。酒さは、ステロイドで悪化する代表的な皮膚疾患であり、安易なステロイド使用が患者と医療者の双方にとって望ましくない経過につながる。顔面に赤ら顔や丘疹や膿疱をみかける症例は、ステロイドなどの使用の前に鑑別疾患を十分に考慮する必要があるし、判断に迷う場合には外用薬を処方する前に速やかに皮膚科専門医にコンサルタントすることをお勧めする。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報酒さナビ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)National Rosacea Society(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)American Acne and Rosacea Society(医療従事者向けのまとまった情報、米国の本症の診療サイト)1)Aponte JL, et al. Hum Mol Genet. 2018;27:2762-2772.2)Yamasaki K, et al. Nat Med. 2007;13:975-980.3)Yamasaki K, et al. J Invest Dermatol. 2011;131:688-697.4)Muto Y, et al. J Invest Dermatol. 2014;134:2728-2736.5)Wada-Irimada M, et al. J Dermatol. 2022;49:519-524.6)Yamasaki K, et al. J Dermatol. 2022;49:1221-1227.7)Nielsen PG. Br J Dermatol. 1983;109:63-66.8)Nielsen PG. Br J Dermatol. 1983;108:327-332.9)Miyachi Y, et al. J Dermatol. 2022;49:330-340.10)van der Linden MMD, et al. Br J Dermatol. 2017;176:1465-1474.公開履歴初回2024年11月14日

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11月12日 皮膚の日【今日は何の日?】

【11月12日 皮膚の日】〔由来〕日本臨床皮膚科医会が、11月12日(いい・ひふ)の語呂合わせから1989年に制定。日本皮膚科学会と協力し、皮膚についての正しい知識の普及や皮膚科専門医療に対する理解を深めるための啓発活動を実施している。毎年この日の前後の時期に一般の方々を対象に、講演会や皮膚検診、相談会行事を全国的に展開している。関連コンテンツ事例008 蕁麻疹にダイアコート軟膏の処方で査定【斬らレセプト シーズン4】軟膏じゃなかった【Dr.デルぽんの診察室観察日記】かゆみが続く慢性掻痒【患者説明用スライド】妊娠中の魚油摂取、出生児のアトピー性皮膚炎リスクは低減する?アトピー性皮膚炎へのデュピルマブ、5年有効性・安全性は?蕁麻疹の診断後1年、がん罹患リスク49%増

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ウパダシチニブ、ADの頭頸部病変における新たな有効性解析結果/アッヴィ

 2024年10月15日、アッヴィはウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)の第III相試験であるMeasure Up 1試験とMeasure Up 2試験について、アトピー性皮膚炎(AD)の頭頸部病変における重症度別の有効性を示す新たな解析結果を発表した1)。 AD患者において、頭部、頸部、顔面、手など、特定の部位に現れるADの症状は、症状の発生頻度や患者の生活の質に重大な影響を及ぼしうることが示されている2,3)。また、リアルワールド観察研究である、UP-TAINED試験で70%、AD-VISE試験で74.5%以上のAD患者においてベースライン時に頭頸部病変が認められており4,5)、この領域に対する有効な治療法の必要性が高まっている。 同解析では、中等症~重症のAD患者をベースラインにおける頭頸部領域の重症度に基づいて層別化し、16週間にわたりウパダシチニブ(15mgまたは30mg)の有効性をプラセボと比較し評価した1)。 具体的には、AD患者の各サブグループを対象に、複数の最適かつ厳格な治療目標(頭頸部領域におけるほぼ完全な皮膚症状の改善[頭頸部のEASIスコアが1未満]、ほぼ完全な皮膚症状の改善[EASI 90]、かゆみがない/ほとんどない状態[WP-NRS 0/1]および生活への影響はない状態[DLQI 0/1])について、ウパダシチニブの投与による達成を評価した1)。また、患者の層別化については、頭頸部病変がない/軽度、中等度または重度であることを層別因子とした1)。 発表された主な結果は以下のとおり。・さまざまな程度の頭頸部病変を有する中等症~重症のAD患者において、16週時に頭頸部領域におけるほぼ完全な皮膚症状の改善※が達成された割合は、ウパダシチニブ(15mgまたは30mg)投与の患者のほうが、プラセボ投与の患者よりも高いことが示された。※高い治療目標:頭頸部領域におけるほぼ完全な皮膚症状の改善(頭頸部のEASIスコアが1未満)、生活への影響はない状態(DLQI 0/1)および最小疾患活動性(ほぼ完全な皮膚症状の改善[EASI 90]とかゆみがない/ほとんどない状態[WP-NRS 0/1])を同時に達成すること。 また同解析結果は、オランダ・アムステルダムで開催される第33回欧州皮膚科・性病科学会議(EADV)において発表された。

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半減期が短く持ち越し効果が少ない不眠症治療薬「クービビック錠25mg/50mg」【最新!DI情報】第25回

半減期が短く持ち越し効果が少ない不眠症治療薬「クービビック錠25mg/50mg」今回は、オレキシン受容体拮抗薬「ダリドレキサント塩酸塩(商品名:クービビック錠25mg/50mg、製造販売元:ネクセラファーマジャパン)」を紹介します。本剤は新規のデュアルオレキシン受容体拮抗薬であり、不眠症患者の過剰な覚醒状態を抑制し、睡眠状態へと移行させることが期待されています。<効能・効果>不眠症の適応で2024年9月24日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはダリドレキサントとして1日1回50mgを就寝直前に経口投与します。患者の状態に応じて1日1回25mgを投与することもできます。入眠効果の発現が遅れる恐れがあるため、本剤の食事と同時または食直後の服用は避けます。<安全性>副作用には、傾眠(3%以上)、頭痛、頭部不快感、倦怠感、疲労、悪夢(いずれも1~3%未満)、浮動性めまい、睡眠時麻痺、悪心(いずれも1%未満)、幻覚、異常な夢、睡眠時随伴症(夢遊症、ねごとなど)、過敏症(発疹、蕁麻疹など)(いずれも頻度不明)があります。本剤は主に薬物代謝酵素CYP3Aによって代謝されるため、CYP3Aを強く阻害するイトラコナゾール、クラリスロマイシン、ボリコナゾール、ポサコナゾール、リトナビル含有製剤、コビシスタット含有製剤、セリチニブ、エンシトレルビルフマル酸を投与中の患者には禁忌です。また、中程度のCYP3A阻害作用を持つジルチアゼム、ベラパミル、エリスロマイシン、フルコナゾールなどは併用注意です。<患者さんへの指導例>1.この薬は、過剰に働いている覚醒システムを抑制して、より自然に近い睡眠を促します。2.必ず寝る直前に服用してください。3.アルコールと一緒に服用しないでください。4.食事と同時または食事の直後には、服用しないでください。5.他の睡眠薬と一緒に服用しないでください。<ここがポイント!>不眠症は罹患頻度の高い睡眠障害の1つです。不眠は、眠気や倦怠感による生産性の低下や、概日リズム障害による不登校やうつ病の発症などを引き起こすため、公衆衛生上の問題となっています。オレキシンは、覚醒と睡眠の調整に深く関わっている神経ペプチドであり、オレキシンがオレキシン受容体に作用すると覚醒が維持されます。オレキシン受容体のサブタイプであるオレキシン受容体タイプ1(OX1R)とオレキシン受容体タイプ2(OX2R)を阻害すると、脳の覚醒促進領域の活動が低下します。ダリドレキサント塩酸塩は、OX1RおよびOX2Rの活性化を阻害する新規のデュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)であり、不眠症患者の過剰な覚醒状態を抑制し、睡眠状態へと移行させることが期待されます。ダリドレキサント塩酸塩は、ベンゾジアゼピン系睡眠薬にみられる依存や耐性、反跳性不眠が少なく、高齢に対してせん妄の発現の心配もありません。なお、日本ではDORAとしてスボレキサントおよびレンボレキサントが発売されていますが、ダリドレキサント塩酸塩は他のDORAと比較して半減期が6.5時間程度(非高齢者)と短く、翌日への眠気の持ち越しが少ないと考えられます。日本人不眠症患者を対象とした国内第III相試験(ID-078A304試験)において、総睡眠時間(sTST)のベースラインからの変化量について、本剤50mg群とプラセボ群との差は、4週時に20.30分(95%信頼区間[CI]:11.39~29.20)であり、プラセボ群と比較して50mg群で有意にsTSTを延長しました(p<0.001、線形混合モデル)。同様に、4週時における睡眠潜時(sLSO)のベースラインからの変化量の本剤50mg群とプラセボ群との差は-10.66分(95%CI:-15.78~-5.54)であり、プラセボ群と比較して50mg群で有意にsLSOを短縮しました(p<0.001、線形混合モデル)。

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妊娠中の魚油摂取、出生児のアトピー性皮膚炎リスクは低減する?

 妊娠中のオメガ3長鎖多価不飽和脂肪酸(n-3 LCPUFA、魚油)サプリメント摂取と出生児のアトピー性皮膚炎リスクとの関連は、母体が有するシクロオキシゲナーゼ-1(COX1)遺伝子型によって異なることが示された。デンマーク・コペンハーゲン大学のLiang Chen氏らが実施した無作為化比較試験「Danish Copenhagen Prospective Studies on Asthma in Childhood 2010」の事前に規定された2次解析において、TT遺伝子型を有する母親がn-3 LCPUFAサプリメントを摂取した場合、出生児はアトピー性皮膚炎のリスクが有意に低いことが示された。著者は、「TT遺伝子型を有する妊婦にのみサプリメントを摂取させるという個別化された予防戦略の参考になるだろう」と述べている。エイコサノイドは、アトピー性皮膚炎の病態生理に関与しているが、出生前のn-3 LCPUFAサプリメント摂取や母体のCOX1遺伝子型の影響を受けるかどうかは明らかになっていなかった。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年8月28日号掲載の報告。 「Danish Copenhagen Prospective Studies on Asthma in Childhood 2010」の事前に規定された2次解析では、出生コホートの母子ペアを対象とし、出生児が10歳になるまで前向きに追跡した。妊娠中のn-3 LCPUFAサプリメント摂取と小児アトピー性皮膚炎の関連について、全体および母親のCOX1遺伝子型別に検討した。本試験では、母親と出生児のCOX1遺伝子型を確認し、出生児が1歳になった時点で尿中エイコサノイドを測定した。本試験は2019年1月~2021年12月の期間に実施し、データ解析は2023年1~9月に行った。 合計736例の妊娠24週の妊婦を、1日2.4gのn-3 LCPUFA(魚油)サプリメントを摂取する群(介入群)またはプラセボ(オリーブオイル)を摂取する群(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付け、出産1週後まで摂取を継続させた。 主要アウトカムは、全体および母親のCOX1遺伝子型別にみた10歳時までの小児アトピー性皮膚炎リスクであった。 主な結果は以下のとおり。・10歳時のフォローアップを完了した出生児は635例(91%、女子363例[57%])であり、母親と共に、介入群321組(51%)、対照群314組(49%)が解析に含まれた。・妊娠中のn-3 LCPUFAサプリメントの摂取は、出生児の1歳時点における尿中トロンボキサンA2代謝物量と有意な負の関連があった(β:-0.46、95%信頼区間[CI]:-0.80~-0.13、p=0.006)。また、尿中トロンボキサンA2代謝物量はCOX1 rs1330344遺伝子型との有意な正の関連も認められた(Cアレル当たりのβ:0.47、95%CI:0.20~0.73、p=0.001)。・10歳時点までの小児アトピー性皮膚炎発症とn-3 LCPUFAサプリメント摂取(ハザード比[HR]:1.00、95%CI:0.76~1.33、p=0.97)、母親のCOX1遺伝子型(同:0.94、0.74~1.19、p=0.60)との間には、いずれも関連が認められなかったが、n-3 LCPUFAサプリメント摂取と母親のCOX1遺伝子型には有意な交互作用がみられた(交互作用のp<0.001)。・TT遺伝子型を有する母親の出生児のアトピー性皮膚炎のリスクは、対照群よりも介入群で有意に低かった(390組[61%]のHR:0.70、95%CI:0.50~0.98、p=0.04)。一方で、CT遺伝子型を有する母親の出生児において、介入群のアトピー性皮膚炎のリスク低下はみられず(209組[33%]のHR:1.29、95%CI:0.79~2.10、p=0.31)、CC遺伝子型を有する母親の出生児では有意なリスク上昇が認められた(37組[6%]のHR:5.77、95%CI:1.63~20.47、p=0.007)。・アトピー性皮膚炎発症について、n-3 LCPUFAサプリメント摂取と出生児のCOX1遺伝子型には、有意な交互作用がみられた(交互作用のp=0.002)。

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わが国初の経鼻弱毒生インフルワクチン「フルミスト点鼻液」【最新!DI情報】第24回

わが国初の経鼻弱毒生インフルワクチン「フルミスト点鼻液」今回は、経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(商品名:フルミスト点鼻液、製造販売元:第一三共)を紹介します。本剤は、国内初の経鼻インフルエンザワクチンであり、針穿刺の必要がなく注射部位反応もないことから、患者負担の軽減が期待されています。<効能・効果>本剤は、インフルエンザの予防の適応で、2023年3月27日に製造販売承認を取得し、2024年8月13日に製造販売承認事項一部変更承認を取得しました。<用法・用量>2歳以上19歳未満の人に、0.2mLを1回(各鼻腔内に0.1mLを1噴霧)、鼻腔内に噴霧すします。医師が必要と認めた場合には、他のワクチンと同時に接種することができます。<安全性>重大な副反応として、ショックおよびアナフィラキシー(いずれも頻度不明)があります。その他の副反応として、鼻閉・鼻漏(59.2%)、咳嗽、口腔、頭痛(いずれも10%以上)、鼻咽頭炎、食欲減退、下痢、腹痛、発熱、活動性低下・疲労・無力症、筋肉痛、インフルエンザ(いずれも1~10%未満)、発疹、鼻出血、胃腸炎、中耳炎(いずれも1%未満)などがあります。本剤は安定剤として精製ゼラチンを含有していますので、ゼラチンに対してショックやアナフィラキシー(蕁麻疹、呼吸困難、血管性浮腫ほか)などの過敏症の既往のある人には注意が必要です。また、製造工程由来不純物として、卵由来の尿膜腔液成分(卵白アルブミン、タンパク質および鶏由来DNA)が混入する可能性があるため、鶏卵、鶏肉、その他鶏由来のものに対してアレルギーを呈する恐れのある人に対しても注意が必要です。本剤は弱毒化したウイルスを使った「生ワクチン」なので、妊婦や免疫抑制状態の人には使用できません。<患者さんへの指導例>1.この薬は、鼻へ噴霧するタイプのインフルエンザワクチンです。鼻へ噴霧するため、針を刺す必要がありません。2.接種の対象は、2~18歳の人です。3.この薬は、噴霧後に積極的に吸入(鼻ですする)する必要はありません。4.まれにショック、アナフィラキシーが現れることがあるので、いつもと違う体調変化や異常を認めた場合は、速やかに医師に連絡してください。<ここがポイント!>インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする急性呼吸器感染症であり、日本ではインフルエンザに関連した超過死亡数が年間1万例を超えると推定されています。インフルエンザワクチンの接種は、インフルエンザの発症予防やインフルエンザに関連した重度合併症を防ぐ主要な手段です。フルミスト点鼻液は、日本で初めて承認された経鼻投与型の3価の弱毒生インフルエンザワクチンであり、A型株(A/H1N1およびA/H3N2)とB型株(B/Victoria系統)のリアソータントウイルス株を含有しています。本剤の特徴は、「低温馴化」、「温度感受性」および「弱毒化」であり、噴霧された弱毒生ウイルスが鼻咽頭部で増殖し、自然感染(野生株の感染)後に誘導される免疫と類似した、局所および全身における液性免疫、細胞性の防御免疫を獲得できます。また、本剤は、針穿刺の必要がなく、注射部位反応もないことから、被接種者の心理的・身体的負担の軽減も期待されています。日本では、2024~25シーズンから使用が認められました。日本人健康小児(2歳以上19歳未満)を対象とした国内第III相試験(J301試験)において、抗原性を問わないすべての分離株によるインフルエンザ発症割合は、本剤群で25.5%(152/595例)、プラセボ群で35.9%(104/290例)であり、本剤群のプラセボ群に対する相対リスク減少率は28.8%(95%信頼区間:12.5~42.0)でした。95%信頼区間の下限は事前に設定した有効性基準(0%)を上回っており、プラセボに対する本剤の優越性が検証されました。日本小児科学会より「経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方」が出され、使い分けが示されました。2〜19歳未満に対しては、不活化インフルエンザHAワクチンと経鼻弱毒生インフルエンザワクチンを同等に推奨していますが、喘息患者、授乳婦、周囲に免疫不全患者がいる場合は不活化インフルエンザHAワクチンを推奨しています。また、生後6ヵ月〜2歳未満、19歳以上、免疫不全患者、無脾症患者、妊婦、ミトコンドリア脳筋症患者、ゼラチンアレルギーを有する患者、中枢神経系の解剖学的バリアー破綻がある患者に対しては、不活化インフルエンザHAワクチンのみが推奨されています。参考日本小児科学会:経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方

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事例008 蕁麻疹にダイアコート軟膏の処方で査定【斬らレセプト シーズン4】

解説急性蕁麻疹の患者に、外用合成副腎皮質ホルモン剤に分類される「ジフロラゾン酢酸エステル(商品名:ダイアコート軟膏)」を処方したところ、A事由(医学的に適応と認められないもの)にて査定となりました。突合点検結果連絡票にての査定連絡でした。当院による責の有無を調べてみました。この連絡票を見落として毎月18日までに不一致申し出を行わないと、当院に責がない場合であっても、当院の診療報酬から相殺されてしまうからです。添付文書をみてみました。適応症には「固定蕁麻疹」はありますが、「蕁麻疹」はありません。薬効薬理では、外用合成副腎皮質ホルモン剤の抗炎症効果があります。医師に問い合わせたところ「膨疹」に有効なため使用したとのことでした。不一致申し出の準備を進めていたところ、『蕁麻疹診療ガイドライン2018』(日本皮膚科学会編)に、「外用合成副腎皮質ホルモン剤は、膨疹出現が抑制されることを期待し得るが、副作用の可能性を考慮すると一般的な蕁麻疹の治療用としては推奨されない」との記述をみつけました。過去の査定状況を見直したところ、同様の理由にて査定となった事例が複数あり、当院の責による査定であることが判明しました。医師には、効能または効果に「蕁麻疹」が記載されていないこと、蕁麻疹ガイドラインでは一般的に推奨されていないことが記載されていることをお示ししました。レセプトチェックシステムには、「蕁麻疹」に使用する場合は、「医学的必要性の記入が必須である」と注意コメントを追加登録して査定対策としました。

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アトピー性皮膚炎へのデュピルマブ、5年有効性・安全性は?

 デュピルマブで治療を受けたアトピー性皮膚炎患者を最長5年追跡調査したコホート研究において、デュピルマブの臨床的有効性は維持された。一方で3分の2の患者は3週ごとまたは4週ごとの投与量に漸減し、23.8%の患者が治療を中止した。治療中止の主な理由は有害事象、無効であった。これまで日常診療でのアドピー性皮膚炎に対するデュピルマブの、長期の有効性と安全性に関するデータは限られていた。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのCeleste M. Boesjes氏らが、JAMA Dermatology誌オンライン版2024年8月7日号で報告した。 研究グループは、日常診療で最長5年間治療を受けたアトピー性皮膚炎の小児、成人および高齢者における、デュピルマブ治療の臨床的有効性と治療中止の理由を評価する前向き多施設コホート研究を行った。 BioDayレジストリ(オランダの大学病院4施設とその他10施設で登録)を用いて、2017年10月~2022年12月にデュピルマブによる治療を受けたすべての年齢のアトピー性皮膚炎患者を特定し、研究対象とした。 臨床的有効性は、小児(18歳未満)、成人(18~64歳)、高齢者(65歳以上)で層別化を行い、Eczema Area and Severity Index(EASI)、Investigator Global Assessment(IGA)、そう痒Numeric Rating Scale(NRS)で評価した。さらに、TARC値、好酸球数などを評価。デュピルマブを中止した患者について、中止の理由を評価した。 主な結果は以下のとおり。・計1,286例のアトピー性皮膚炎患者(年齢中央値38歳[四分位範囲[IQR]:26~54]、男性726例[56.6%])がデュピルマブによる治療を受けた(小児130例、成人1,025例、高齢者131例)。・追跡期間中央値は87.5ヵ月(IQR:32.0~157.0)。・ほとんどの患者が最長5年の治療期間にわたりアトピー性皮膚炎のコントロールを維持しており、EASIが7以下の患者は78.6~92.3%、そう痒NRSが4以下の患者は72.2~88.2%であった。・全患者の最大70.5%の投与間隔が延長し、ほとんどが300mgの3週ごとまたは4週ごと投与となっていた。・治療開始5年後、EASIスコア平均値は2.7(95%信頼区間[CI]:1.2~4.2)、そう痒NRS平均値は3.5(2.7~4.3)であった。・EASI、IGAについて、観察期間を通じて年齢群間に統計学的有意差がみられたが、その差(52週時点でEASIは0.3~1.6、IGAは0.12~0.26)は非常に小さかった。そう痒NRSについては、統計学的有意差はみられなかった。・TARC中央値は、1,751pg/mL(95%CI:1,614~1,900)から治療開始6ヵ月で390pg/mL(368~413)へ大幅に低下し、低値を維持した。・好酸球数中央値は16週まで一時的に上昇したが、その後は経時的に統計学的有意な低下がみられた。・合計306例(23.8%)がデュピルマブを中止し、中止までの期間中央値は54.0週(IQR:29.0~110.0)であった。多く報告された中止の理由は、有害事象98例(7.6%)、無効85例(6.6%)であった。41例(3.2%)がデュピルマブ投与を再開し、これらの患者の大半で奏効が認められた。

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最近増加している好酸球性食道炎に生物学的製剤は有効か?(解説:上村直実氏)

 好酸球性消化管疾患は、食道・胃・十二指腸・小腸・大腸の消化管のいずれかに好酸球が浸潤して炎症を引き起こすアレルギー性疾患の総称であるが、確定診断が難しいことから比較的まれな疾患で厚生労働省の指定難病として告示されている。胸焼け、腹痛、下痢といったさまざまな消化器症状を引き起こすが、一般的には好酸球性食道炎と胃から大腸までのいずれかもしくは複数の部位に炎症の主座を有する好酸球性胃腸炎に大別されているが、最近の診療現場では好酸球性食道炎が増加している。つかえ感や胸焼けを慢性的に自覚する患者に対して行われる上部消化管内視鏡検査で、本疾患に特徴的な内視鏡所見である縦走溝や輪状溝および白苔を認めた際に行う生検組織を用いた組織学的検査により確定診断されるケースが多いが、健康診断や人間ドックなどで受けた内視鏡検査の際に偶然発見される無症状の症例も増加している。本疾患が気管支喘息などのアレルギー性疾患の合併率が高いことも、留意しておくべきである。 わが国における好酸球性食道炎に対する治療は、保険適用になっていないプロトンポンプ阻害薬やステロイド吸入薬の内服が使用される場合が多いが、それでも症状が改善しない場合は、全身性ステロイドの内服や原因として疑われる食材を除去する食事療法が行われている。以上の一般的治療でも症状が難治性の場合、海外では生物学的製剤の開発が進みつつある。難治性のアトピー性皮膚炎や気管支喘息および鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の治療薬であるインターロイキンIL-4/IL-13のシグナル伝達を阻害する完全ヒト型モノクローナル抗体であるデュピルマブが、好酸球性食道炎に対しても承認されている。すなわち、2022年12月22日号のNEJM誌に掲載された国際共同試験の結果において、12歳以上の好酸球性食道炎患者を対象としたデュピルマブ週1回皮下投与は、組織学的寛解率を改善すると共に嚥下障害症状を軽減することが明らかとなり、さらに11歳以下の小児を対象とした第III相無作為化試験において組織学的所見の改善を認めた結果が、2024年6月27日号のNEJM誌に掲載されると同時に米国などで承認されている。 今回、好酸球を減少させる抗IL-5受容体αモノクローナル抗体であるベンラリズマブの有用性と安全性を検証した第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「MESSINA試験」の結果も、2024年6月27日号のNEJM誌で報告された。試験の結果、好酸球性食道炎に対し、ベンラリズマブはプラセボと比較して組織学的寛解率が有意に高かったものの、嚥下障害の症状に関しては有意な改善は認められなかった。以前の報告から、ベンラリズマブは血液、骨髄、肺、胃、食道組織における好酸球のほぼ完全な減少をもたらす薬剤であり、好酸球性食道炎の治療薬としても期待されたが、浸潤好酸球の減少が症状の改善につながらなかった結果から、今後、好酸球浸潤と症状発現の機序が残された課題と思われる。 現在、国内においてPPIや生物学的製剤も含めて好酸球性食道炎に対して保険適用となっている薬剤は皆無であるが、今後、増加傾向のあるアレルギー疾患である好酸球性食道炎の新たな知見に注目しておく必要があると思われた。

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