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脳卒中後の治療で最善の血栓溶解薬とは?

 脳梗塞患者に対する血栓溶解薬のテネクテプラーゼ(TNK)の適応外使用は、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)のアルテプラーゼ(以下、TPA)による治療よりもわずかに効果的である可能性があるとするシステマティックレビューとメタアナリシスの結果が発表された。TNKによる治療の方が、TPAによる治療よりも、脳梗塞の発症から3カ月後に患者が修正版ランキンスケール(modified Rankin Scale;mRS)で症状がない(0点)か、症状があっても明らかな障害はない(1点)に分類される可能性の高いことが示されたという。アテネ国立カポディストリィアコ大学(ギリシャ)神経学分野教授のGeorgios Tsivgoulis氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に10月16日掲載された。 TNKは、脳梗塞の治療薬としてヨーロッパでは承認されているが、米国では未承認。現時点での欧州脳卒中機構(ESO)の緊急推奨では、非劣性を示したメタアナリシスの結果に基づき、発症から4.5時間未満の脳梗塞に対する治療では、TPAの代わりにTNK0.25mg/kgを使用しても良いとしている。これらのガイドラインの発表以降、さらに4件のランダム化比較試験(RCT)が実施され、追加の知見が得られている。 今回の研究では、現時点で入手可能な11件のRCTの結果を用いてシステマティックレビューとメタアナリシスを実施し、発症後4.5時間以内の脳梗塞の治療におけるTNK0.25mg/kgの有効性と安全性をTPAとの比較で検討した。これらのRCTには、TNKにより治療を受けた患者3,788人と、TPAによる治療を受けた患者3,757人が含まれていた。主要評価項目は、脳梗塞から3カ月後の「優れた機能的アウトカム」(mRSスコアが0〜1点)、副次評価項目は、脳梗塞から3カ月後の「良好な機能的アウトカム」(mRSスコアが0〜2点;2点=軽度の障害)、障害の軽減(mRSスコアが1点以上減少)、症候性頭蓋内出血、および死亡であった。 その結果、TNKによる治療を受けた群では、TPAによる治療を受けた群と比べて「優れた機能的アウトカム」を達成する可能性が5%高く(リスク比〔RR〕1.05、95%信頼区間〔CI〕1.01〜1.10、P=0.012)、障害が軽減している可能性も高い(共通オッズ比1.10、95%CI 1.01〜1.19、P=0.034)ことが示された。しかし、「良好な機能的アウトカム」を達成する可能性については、両群間で同等であった(RR 1.03、95%CI 0.99〜1.07、P=0.142)。また、症候性頭蓋内出血(同1.12、0.83〜1.53、P=0.456)、および死亡(同0.97、0.82〜1.15、P=0.727)のリスクについても有意差は認められなかった。 Tsivgoulis氏は、「われわれのメタアナリシスからは、TNKとTPAの両薬剤の安全性は同等で、脳卒中後の良好な回復の可能性を高めるが、TNKは、優れた回復をもたらす効果と障害軽減効果においては、TPAよりも優れている可能性の高いことが明らかになった」と述べている。その上で、「この結果は、脳梗塞患者の治療には、TPAよりもTNKを使用するべきだという主張を裏付ける結果だ」と話している。

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携帯電話の頻用で、CVDリスクが高まる

 携帯電話を頻用することで睡眠障害と心理的ストレスが高まり、心血管疾患(CVD)リスク増加につながる可能性があることが、新たな研究で示された。中国・広州の国立腎臓病臨床研究センターのYanjun Zhang氏らによる本研究は、The Canadian Journal of Cardiology誌オンライン版2024年7月22日号に掲載された。 研究者らは50万例以上が参加する大規模コホートである英国バイオバンクのデータを用い、CVDの既往歴のない44万4,027例を対象とした。携帯電話の定期的な使用は、少なくとも週1回の通話・受信と定義した。携帯電話の使用時間は、過去3ヵ月間の週平均(5分未満、5〜29分、30〜59分、1〜3時間、4〜6時間、6時間以上)を自己申告によって得た。主要評価項目は新規CVD(冠動脈性心疾患[CHD]、心房細動[AF]、心不全[HF]の複合)発症、副次評価項目は新規脳卒中、個別のCHD、AF、HF発症、および頸動脈内膜中膜厚(cIMT)発症 だった。 睡眠パターン、心理的ストレス、神経症の役割を調査するために媒介分析を行った。睡眠スコアは睡眠時間、不眠症、いびきなどの情報から過去の研究に基づいて推定、心理的ストレスの評価にはPHQ-4を使用した。ベースライン時の性別、年齢、居住地域、世帯収入、アルコール摂取、喫煙、身体活動、服薬などの共変量の情報を、アンケートまたはインタビューで収集した。 主な結果は以下のとおり。・平均年齢は56.1歳で、男性19万5,623人(44.1%)であった。携帯電話常用群は若年層、現喫煙者、都市在住者の割合が高く、高血圧と糖尿病の既往歴がある人の割合が低かった。・追跡期間中央値12.3年で5万6,181例(12.7%)がCVDを発症した。携帯電話常用群は非常用群と比較して、新規CVDリスクが有意に高く(ハザード比:1.04、95%信頼区間[CI]:1.02~1.06)、cIMTの増加も認められた(オッズ比:1.11、95%CI:1.04~1.18)。・常用群における週当たりの使用時間は、とくに現喫煙者(交互作用のp=0.001)および糖尿病患者(p=0.037)において、新規CVDリスクと正の相関関係を示した。・週当たりの使用時間と新規CVD発症との関係のうち、5.11%は睡眠パターン、11.5%は心理的ストレス、2.25%は神経症が媒介していた。 研究者らは、「携帯電話の週当たりの使用時間は、新規CVDリスクと正の相関関係にあった。これは睡眠不足、心理的ストレス、神経症によって一部を説明できる」としている。

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心筋梗塞の血栓溶解療法の時代を思い出す(解説:後藤信哉氏)

 1988年のLancet誌に掲載されたSecond International Study of Infarct Survival (ISIS-2) trialは、心筋梗塞の診療に劇的インパクトをもたらした。抗血小板薬アスピリン、線溶薬ストレプトキナーゼはともに急性心筋梗塞の院内死亡率を25%程度減少させ、両者の併用により死亡率はほぼ半減した。アスピリンはそのまま世界の標準治療になった。ストレプトキナーゼは重篤な出血合併症を増加させたため、出血リスクの少ない薬剤開発が模索された。ストレプトキナーゼにはフィブリン選択性がなかった。体内のフィブリンに結合し、プラスミン産生効果を発揮するt-PAに期待が集まった。フィブリン選択的、1回静注可能など多くの製剤が開発された。しかし、急性心筋梗塞では、薬剤と並行して進歩したカテーテル治療の普及により血栓溶解療法は廃れた。 脳梗塞領域は、1990年代の循環器内科の歴史をたどっている。t-PAフィブリン選択的に作用する線溶薬と期待されていたが、持続静注が必要であった。本研究では1回静注可能なtenecteplaseの非劣性が示された。脳梗塞急性期の再灌流療法により神経学的予後が改善されるインパクトは大きい。線溶薬としては早期に作用するフィブリン選択的薬剤なども開発されるかもしれない。しかし、心筋梗塞と同様に、カテーテル治療も普及するかもしれない。 脳梗塞治療が心筋梗塞治療を後追いしているように見え、今後の治療法の革新が期待される。

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血栓除去術は単純CT上の大梗塞に有効か?(解説:内山真一郎氏)

 発症後24時間以内の、単純CTで認めた大梗塞に血管内血栓除去術(IVT)が有効かどうかは証明されていない。 TESLA試験は、前方循環の大血管閉塞があり、単純CT上大梗塞(Alberta Stroke Program Early CT Score、ASPECT2~5)を認めた、発症後24時間以内の300症例を対象とした米国での多施設共同無作為化比較試験であったが、90日後の機能予後はIVT群と通常の内科的治療のみの対照群との間で有意差がなかったという結果であった。 単純CT上の大梗塞を対象とした試験としては、先にTENSION試験が行われていたが、TENSION試験では発症後11時間以内の症例に限定していたのに対してTESLA試験では半数が発症後12時間以上の症例であり、これらの症例では大梗塞による浮腫の影響がIVTの治療効果を弱めた可能性がある。 また、日本で行われたRESCUE Japan-LIMIT試験の二次解析では、ASPECT3以下の症例ではIVTの効果が示されなかったことから、ASPECTレベル別の治療効果もメタ解析により明らかにする必要がある。

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世界で年間約700万人が脳卒中により死亡、その数は増加傾向に

 気候変動と食生活の悪化によって、世界の脳卒中の発症率と死亡率が劇的に上昇していることが、オークランド工科大学(ニュージーランド)のValery Feigin氏らのグループによる研究で示された。2021年には世界で約1200万人が脳卒中を発症し、1990年から約70%増加していたことが明らかになったという。詳細は、「The Lancet Neurology」10月号に掲載された。 本研究によると、2021年には、脳卒中の既往歴がある人の数は9380万人、脳卒中の新規発症者数は1190万人、脳卒中による死者数は730万人であり、世界の死因としては、心筋梗塞、新型コロナウイルス感染症に次いで第3位であったという。 専門家は、脳卒中のほとんどは予防可能だとの見方を示す。論文の共著者の1人である米ワシントン大学の保健指標評価研究所(IHME)のCatherine Johnson氏は、「脳卒中の84%は23の修正可能なリスク因子に関連しており、次世代の脳卒中リスクの状況を変える大きなチャンスはある」と述べている。脳卒中のリスク因子は、大気汚染(気候変動によって悪化)、過体重、高血圧、喫煙、運動不足などであり、研究グループは、これらのリスク因子は全て、低減またはコントロール可能であると指摘している。 脳卒中に関連する死亡者数は何百万人にも上る一方で、脳卒中を起こした後に重度の障害が残る患者も少なくない。今回の研究からは、脳卒中によって失われた健康寿命の年数(障害調整生存年;DALY)は、1990年から2021年にかけて32.2%増加していたことも明らかになった。 では、なぜ脳卒中がここまで増加したのだろうか。研究グループの分析によると、多くの脳卒中のリスク因子に人々がさらされる頻度が上昇し続けていることが原因である可能性があるという。本研究では、1990年から2021年までの間に、高BMI、気温の上昇、加糖飲料の摂取、運動不足、収縮期血圧高値、ω-6多価不飽和脂肪酸が少ない食事に関連してDALYが大幅に増加したことが示された(増加の幅は同順で、88.2%、72.4%、23.4%、11.3%。6.7%、5.3%)。 Johnson氏らは、気温の上昇は、もう1つの脳卒中のリスク因子である大気汚染の悪化を意味していると説明する。同氏らは、「暑くてスモッグの多い日が脳卒中リスクに与える影響を最も強く受けるのは貧しい国である可能性が高く、その影響は気候変動によってさらに悪化し得る」と指摘する。実際、出血性脳卒中のリスクに関しては、現在、汚染された空気を吸い込むことは、喫煙と同程度のリスクをもたらすと考えられているという。脳卒中全体に占める出血性脳卒中の割合は約15%で、虚血性脳卒中(脳梗塞)と比べると大幅に低いにもかかわらず、世界のあらゆる脳卒中に関連した死亡や障害の5割が出血性脳卒中に起因するという。 「脳卒中に関連した健康被害は、アジアやサハラ以南のアフリカ(サブサハラ・アフリカ)で特に大きい。こうした状況は、管理されていないリスク因子、特にコントロール不良の高血圧や、若年成人における肥満や2型糖尿病の増加といった負担の増大と、これらの地域における脳卒中の予防およびケアサービスの不足によって生まれている」とJohnson氏は指摘する。 しかし、こうした状況を変えることは可能であるとJohnson氏は主張する。例えば、大気汚染は気温上昇に密接に関連するため、「緊急の気候変動対策と大気汚染を減らす取り組みの重要性は極めて高い」と言う。さらに同氏は、「高血糖や加糖飲料の多い食事などのリスク因子にさらされる機会が増えているため、肥満やメタボリックシンドロームに照準を合わせた介入が急務である」と述べている。

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抗凝固薬の服用理由の仮説を立てて中止提案、そのまま続いていたら…【うまくいく!処方提案プラクティス】第62回

 今回は、直接経口抗凝固薬(DOAC)の服薬理由を検討し、医師との連携によって中止した事例を紹介します。心房細動や脳梗塞の2次予防で服薬しているケースでは、出血リスクなどで一時的に中止できることはあるかと思います。皆さんは新患対応時に、服用薬の理由をどのように確認していますか? 現病歴や既往歴など情報収集を丁寧に行うことで、エンドポイントや目標ラインに合わせて治療を最適化することが可能です。患者情報90歳、女性(施設入居)基礎疾患認知症(病型は不明)、右大腿骨近位部骨折介護度要介護2服薬管理施設職員が管理処方内容1.エドキサバン錠30mg 1錠 分1 朝食後2.アセトアミノフェン錠200mg 6錠 分3 毎食後本症例のポイントこの患者さんは右大腿骨頸部骨折の手術後にリハビリ調整なども完了して施設入居となりました。持参薬確認と契約のタイミングが合ったため、訪問時に施設スタッフに情報連携をとりました。施設スタッフからは、施設内は歩行器補助を利用しながら移動していて、さらに夜間にベッドから滑り落ちることが続いていると聴取しました。転倒・転落のリスクがあることから抗凝固薬の出血リスクが懸念されます。入居時の情報連携文書としては、診療情報提供書と看護サマリがありましたが、エドキサバンの服用理由がなく、基礎疾患にある右大腿骨遠位部の骨折後の疼痛コントロールのためにアセトアミノフェンの服用を続けていることだけが記録されていました。服用理由の不明な抗凝固薬が“もやもやポイント”であったことから、仮説として近位部骨折手術時に深部静脈血栓症を予防するためにDOACを服用開始したのではないかと想定しました。大腿骨近位部骨折は、深部静脈血栓症の高リスク群に位置付けられている1)ことから、DOACによる抗凝固療法の予防内服が推奨されています。投与期間は、手術後12時間を経過し、出血がないことを確認して11〜14日間の経口投与が推奨1)されており、15日間以上投与した場合の有効性および安全性は検討されていません。この患者さんは施設入居1ヵ月前に手術をしており、15日を超えて服用している状況であることから、仮説どおりの深部静脈血栓症の予防投与であれば有効性・安全性の観点からも中止してよいのではないかと考えました。医師への相談と経過訪問診療時に医師に同席し、エドキサバン服用理由について前医からの情報提供などがあったかどうか確認しました。前医からのDOAC服用理由についての詳細な情報提供がなく、心房細動の既往もないので疑問に思っていたと医師から返答がありました。そこで医師と協力し、入院していた医療機関に問い合わせを行ったところ、薬剤部担当者から深部静脈血栓症予防が終了せずにそのまま服用を続けていたことが発覚しました。前医からは、術後の血管エコーなどの結果からもDOAC終了で問題ないとの返答があり、エドキサバンは終了することとなりました。患者さんは疼痛も安定していたこともあり(可動時の膝関節周りの疼痛なし:NRS0/10)、医師と相談してアセトアミノフェン200mg 4錠 分2 朝夕食後のみに減量することとなりました。1週間後のモニタリングで疼痛悪化はなく、体動時の疼痛もなかったことから、1週間後の診察で再度医師に相談してアセトアミノフェンは頓用に変更しました。その後、疼痛増悪や頓用の使用もなく経過安定しています。1)日本循環器学会編. 肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2017年改訂版)

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脳卒中の発熱予防は機能回復に有用か?/JAMA

 急性脳血管障害の患者では、発熱の標準治療と比較して、自動体表温度管理装置(Arctic Sun体温管理システム)を用いた予防的正常体温療法による発熱予防は、発熱負荷を効果的に減少させるが、機能回復には改善を認めないことが、米国・Boston University Chobanian and Avedisian School of MedicineのDavid M. Greer氏らが実施した「INTREPID試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2024年9月25日号に掲載された。7ヵ国のICUの無作為化試験 INTREPID試験は、7ヵ国の43の集中治療室(ICU)で実施した非盲検無作為化試験であり、2017年3月~2021年4月に参加者を登録した(Becton, Dickinson and Companyの助成を受けた)。 年齢18~85歳、急性期脳卒中でICUに入室し、脳卒中発症前は機能的に自立していた患者(修正Rankin尺度[mRS]スコアが0~2点、81~85歳の患者については0点)を対象とした。 被験者を、発熱予防を受ける群または標準治療を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。発熱は、体温38.0℃以上と定義した。発熱予防群では、目標体温を37.0℃とし、ICUで14日間またはICU退室まで、自動体表温度管理装置による体温管理療法を行った。標準治療群では、38℃以上の体温の発生時に標準化された段階的な発熱治療を実施した。 主要アウトカムは1日平均発熱負荷とし、37.9℃以上の体温曲線下面積(総発熱負荷)を急性期の総時間数で割り、24時間を乗じた値(℃・時)と定義した。主な副次アウトカムは、mRS(0点[症状なし]から6点[死亡]までの7段階のうち5点[重度障害]と6点を1つに統合した6カテゴリー)のシフト分析による3ヵ月間の機能回復であった。 予定されていた中間解析で、発熱予防群における主な副次アウトカム(機能回復)の無益性が示されたため、患者登録を中止した。3つのサブタイプとも発熱負荷が良好 677例(年齢中央値62歳、女性345例[51%])を登録し、発熱予防群に339例、標準治療群に338例を割り付けた。677例のうち254例が脳梗塞、223例が脳出血、200例がくも膜下出血だった。433例(64%)が12ヵ月間の試験を完了した。 1日平均発熱負荷は、標準治療群が0.73(SD 1.1)℃・時(範囲:0.0~10.3)であったのに対し、発熱予防群は0.37(1.0)℃・時(0.0~8.0)と有意に低かった(群間差:-0.35°C・時、95%信頼区間[CI]:-0.51~-0.20、p<0.001)。 また、脳卒中サブタイプ別の発熱負荷の群間差は、脳梗塞が-0.10°C・時(95%CI:-0.35~0.15)、脳出血が-0.50°C・時(-0.78~-0.22)、くも膜下出血が-0.52°C・時(-0.81~-0.23)といずれも発熱予防群で良好だった(すべてp<0.001[Wilcoxonの順位和検定])。 一方、3ヵ月の時点で、機能回復には両群間に有意な差を認めなかった(mRSスコア中央値:発熱予防群4.0点vs.標準治療群4.0点、機能的アウトカムの良好な転換のオッズ比:1.09、95%CI:0.81~1.46、p=0.54)。主要有害事象の年間発生率は同程度 急性期におけるすべての主要有害事象(死亡、肺炎、敗血症、悪性脳浮腫)の発生率には両群間で顕著な差はなく、試験期間を通じた発生率(発熱予防群:3ヵ月時47.4%、6ヵ月時48.9%、12ヵ月時49.5%、標準治療群:44.9%、47.9%、48.5%)にも差を認めなかった。 感染症の発生率は、発熱予防群(33.8%)と標準治療群(34.5%)で同程度であった。心イベント(14.5% vs.14.0%)、呼吸器障害(24.5% vs.20.5%)についても両群間に顕著な差はなかった。また、悪寒が発熱予防群で85.5%、標準治療群で24.3%にみられ、発熱予防群の26例(7.7%)が悪寒により治療を中止した。 著者は、「本研究は、発熱リスクの高い患者、とくに72時間以上のICUでの治療を要する重症患者を対象としたが、標準治療群の25%は発熱せず、両群は慎重にマッチングされたため発熱予防群のかなりの割合の患者も発熱しにくかった可能性があり、発熱予防はこれらの患者のアウトカムには影響しない可能性がある」と述べ、「発熱予防が、発熱負荷のある患者または発熱の可能性が非常に高い患者においてのみ、アウトカムを改善するかどうかについては、さらなる検討が必要である」としている。

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禁煙すると心房細動のリスクは短期間で低下する

 喫煙は心房細動のリスク因子だが、禁煙に成功するとそのリスクは速やかに低下することが明らかになった。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のGregory Marcus氏らの研究によるもので、詳細は「JACC: Clinical Electrophysiology」に9月11日掲載された。研究者らは、「元喫煙者だからといって心房細動になると運命付けられてはいない」と述べている。 心房細動は不整脈の一種で、心臓の上部にある心房と呼ばれる部分が不規則に拍動する病気。このような拍動が現れた時の自覚症状として、動悸やめまいなどを生じることがある。しかしより重要なことは、心臓の中に血液の塊(血栓)が形成されやすくなり、その血栓が脳の動脈に運ばれるという機序での脳梗塞が起こりやすくなる点にある。このようにして起こる脳梗塞は、梗塞の範囲が広く重症になりやすい。 喫煙と心房細動の関連について、本論文の上席著者であるMarcus氏は、「喫煙が心房細動のリスクを高めるという強力なエビデンスがある。しかしその一方で、喫煙者が禁煙した場合の心房細動に関するメリットは明らかでなかった」とし、「われわれは禁煙によって心房細動の発症リスクが下がるのか、それともリスクは変わらないのかを知りたかった」と、研究背景を述べている。 この研究には、英国の大規模疫学研究「UKバイオバンク」に参加している現喫煙者や元喫煙者、14万6,772人(平均年齢57.3±7.9歳、女性48.3%)のデータが用いられた。このうち10万5,429人(71.8%)は元喫煙者、3,966人(2.7%)は研究期間中に禁煙した人で、3万7,377人(25.5%)は喫煙を続けていた。 平均12.7±2.0年の追跡で、1万1,214人(7.6%)が心房細動を発症した。年齢、性別、人種、BMI、教育歴、心血管合併症の既往、飲酒習慣、累積喫煙量(パックイヤー)を調整した上で心房細動の発症リスクを比較。すると、現喫煙者を基準として元喫煙者ではリスクが13%低く(ハザード比〔HR〕0.87〔95%信頼区間0.83~0.91〕)、研究期間中に禁煙した人では18%低かった(HR0.82〔同0.70~0.95〕)。 この結果についてMarcus氏は、「喫煙者に対し、今から禁煙したとしても遅すぎることはなく、また過去の喫煙歴があるからといって心房細動を発症する運命にあるわけではないことを示す、説得力のある新たなエビデンスを得られた。現在喫煙している人や長年喫煙してきた人でも、禁煙によって心房細動のリスクを下げられる」と話している。同氏はまた米国心臓病学会発のリリースの中で、「われわれの研究結果はおそらく、禁煙後には速やかに心房細動のリスクが低下することを示しているのではないか」とも述べている。

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非造影CT評価の広範囲脳梗塞、血栓除去術併用は優越性示せず/JAMA

 発症後24時間以内で非造影CTにより広範囲脳梗塞が認められた患者では、内科的治療のみと比較し血栓除去術の併用は90日時の機能的アウトカム改善に関して優越性は示されなかった。米国・Texas Stroke InstituteのAlbert J. Yoo氏らTESLA Investigatorsが、米国47施設で実施された非盲検評価者盲検、ベイジアン・アダプティブ・デザインの第III相無作為化試験「Thrombectomy for Emergent Salvage of Large Anterior Circulation Ischemic Stroke:TESLA試験」の結果を報告した。最近の広範囲脳梗塞の血栓除去術に関する臨床試験は、患者の選択に関して画像診断法や時間枠が不均一であった。非造影CTは最も一般的な脳卒中画像診断法であるが、発症後24時間以内に非造影CTのみで確認された広範囲脳梗塞に対する血栓除去術の有効性は不明であった。JAMA誌オンライン版2024年9月23日号掲載の報告。90日時の機能的アウトカムを内科的治療のみと比較 研究グループは、症状発現から24時間以内で、NIHSSスコアが6以上、内頸動脈または中大脳動脈M1セグメントの閉塞を認め、修正Rankinスケール(mRS)スコアが0~1、非造影CTでASPECTSスコア2~5の大きな梗塞を呈する18~85歳の患者を、血栓除去術+内科的治療群(介入群)または内科的治療単独群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 有効性の主要エンドポイントは、効用加重修正Rankinスケール(UW-mRS、範囲:0[死亡または重度障害]~10[症状なし]、臨床的に意義のある最小変化量0.3)の平均スコアを用いて測定した90日時の機能的アウトカムの改善で、事前に規定した優越性の事後確率閾値は片側0.975以上とした。 安全性の主要エンドポイントは90日死亡率、副次エンドポイントは症候性頭蓋内出血および画像による頭蓋内出血であった。 2019年7月16日~2022年10月17日に302例が無作為化された(最終追跡調査は2023年1月25日)。UW-mRSスコア平均値は2.93 vs.2.27で有意差なし 無作為化された302例のうち、同意撤回などにより治療前に2例が除外され、解析対象は300例(介入群152例、対照群148例)で、女性が138例(46%)、年齢中央値は67歳であった。297例が90日間の追跡調査を完了した。 90日時のUW-mRSスコア平均値(±SD)は、介入群2.93±3.39、対照群2.27±2.98で、補正後群間差は0.63(95%信用区間[CrI]:-0.09~1.34、優越性の事後確率0.96)であった。 90日死亡率は、介入群35.3%(53/150例)、対照群33.3%(49/147例)であり、両群で同程度であった。24時間以内の症候性頭蓋内出血は、介入群で4.0%(6/151例)、対照群で1.3%(2/149例)に発現した。また、脳実質内出血タイプ1が介入群で9.5%(14/148例)、対照群で2.7%(4/146例)、脳実質内出血タイプ2がそれぞれ9.5%(14例)、3.4%(5例)、くも膜下出血が16.2%(24例)、6.2%(9例)に認められた。

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脳梗塞発症後4.5時間以内、tenecteplase vs.アルテプラーゼ/JAMA

 発症後4.5時間以内の静脈内血栓溶解療法が適応となる急性虚血性脳卒中患者において、90日後の機能的アウトカムに関してtenecteplaseはアルテプラーゼに対して非劣性であることが認められ、安全性プロファイルも同様であった。中国・National Clinical Research Center for Neurological DiseasesのXia Meng氏らが、同国の55施設で実施した無作為化非盲検(評価者盲検)第III相非劣性試験「ORIGINAL試験」の結果を報告した。tenecteplaseはアルテプラーゼの遺伝子組み換え体で、フィブリン特異性が高く半減期が長いことから、単回ボーラス投与が可能である。tenecteplaseはアルテプラーゼと比較して、90日後の機能的アウトカム、死亡率、症候性頭蓋内出血の発生率が同等であることが報告されているが、中国人の急性虚血性脳卒中患者に対するtenecteplase 0.25mg/kgの有効性に関するエビデンスは限られていた。著者は、「本試験の結果は、脳梗塞発症後4.5時間以内の静脈内血栓溶解療法として、tenecteplaseはアルテプラーゼに代わる適切な治療法であることを支持するものである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年9月12日号掲載の報告。90日後のmRSスコア0または1の割合を比較 研究グループは、脳卒中重症度評価スケール(NIHSS)スコアが1~25で測定可能な神経学的欠損を有し、症状が30分以上持続しており、症状発現後4.5時間以内の18歳以上の急性虚血性脳卒中患者を、tenecteplase(0.25mg/kg静注)群とアルテプラーゼ(0.9mg/kg静注)群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、90日時に修正Rankinスケール(mRS)スコア0または1を達成した患者の割合で、非劣性マージンはリスク比(RR)の95%信頼区間(CI)の下限が0.937とした。安全性アウトカムは、試験薬投与終了後36時間以内の症候性頭蓋内出血、90日以内の全死亡、90日時のmRSスコア5または6であった。 2021年7月14日~2023年7月14日に1,504例がスクリーニングされ、このうち1,489例が無作為化された(tenecteplase群744例、アルテプラーゼ群745例)。tenecteplaseの非劣性を検証、症候性頭蓋内出血および90日全死亡は同等以下 1,489例のうち、治療を受けなかった21例と、無作為化手続き完了前に治療を開始したことが判明した3例を除く、計1,465例が有効性の解析対象集団となった。患者背景は、年齢中央値66.0歳、女性446例(30.4%)であった。 90日時にmRSスコア0または1を達成した患者の割合は、tenecteplase群72.7%(532/732例)、アルテプラーゼ群70.3%(515/733例)で、tenecteplaseのアルテプラーゼに対する非劣性が検証された(RR:1.03、95%CI:0.97~1.09、p=0.003)。 症候性頭蓋内出血は、各群で9例(1.2%)に発生し(RR:1.01、95%CI:0.37~2.70)、そのうち、tenecteplase群の3例、アルテプラーゼ群の5例が死亡した。 90日死亡率は、tenecteplase群4.6%(34/732例)、アルテプラーゼ群5.8%(43/733例)であった(RR:0.80、95%CI:0.51~1.23)。

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頭蓋内動脈高度狭窄、バルーン血管形成術+積極的内科治療は?/JAMA

 症候性の頭蓋内アテローム性動脈硬化性狭窄(sICAS)患者において、積極的内科治療とバルーン血管形成術の併用は積極的内科治療のみと比較し、試験登録後30日以内の脳卒中または死亡、および30日以降12ヵ月後までの狭窄血管領域の虚血性脳卒中または血行再建の複合リスクが統計学的有意に低下した。中国・National Clinical Research Center for Neurological DiseasesのXuan Sun氏らBASIS Investigatorsが、同国の31施設で実施した無作為化非盲検試験「BASIS試験」の結果を報告した。これまでの無作為化試験では、sICAS患者において積極的内科治療より血管内ステント留置術が優れるとの結果は示されていなかったが、バルーン血管形成術については検討されていなかった。著者は今回の結果について、「バルーン血管形成術と積極的内科治療の併用はsICASに対する有効な治療法である可能性が示唆されるものの、実臨床ではバルーン血管形成術後30日以内の脳卒中または死亡のリスクを考慮する必要がある」とまとめている。JAMA誌2024年10月1日号掲載の報告。30日以内の脳卒中/死亡と30日~12ヵ月の虚血性脳卒中/血行再建の複合を評価 研究グループは、35~80歳で、抗血栓薬または血管危険因子の管理を含む治療を1種類以上受けるも、頭蓋内脳主幹動脈の70~99%のアテローム性動脈硬化性狭窄に起因した初発または再発の一過性脳虚血発作(登録前<90日)または虚血性脳卒中(登録前14~90日)を発症した患者を、バルーン血管形成術+積極的内科治療群または積極的内科治療単独群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 積極的内科治療は、アスピリン100mg/日に登録後90日間はクロピドグレル75mg/日を併用し、リスク因子管理として高血圧や糖尿病の管理、禁煙や運動などの生活習慣の改善を行った。 主要アウトカムは、登録後30日以内の脳卒中または死亡、あるいは登録後30日~12ヵ月以内の狭窄血管領域の虚血性脳卒中または血行再建の複合であった。 2018年11月8日~2022年4月2日に、1,409例が適格性を評価され、512例が無作為化された(バルーン血管形成術群256例、積極的内科治療単独群256例)。その後、同意撤回などにより11例が除外され、主要解析対象集団は501例(それぞれ249例、252例)となった。最終追跡調査日は2023年4月3日であった。イベント発生率はバルーン血管形成術群4.4% vs.積極的内科治療単独群13.5% 主要解析対象集団501例の患者背景は、年齢中央値58.0歳、女性が158例(31.5%)であった。 主要アウトカムのイベントは、バルーン血管形成術群で11例(4.4%)、積極的内科治療単独群で34例(13.5%)に発生し、バルーン血管形成術群で発生率が有意に低かった(ハザード比:0.32、95%信頼区間:0.16~0.63、p<0.001)。 副次アウトカムである登録後30日以内のあらゆる脳卒中または死亡は、バルーン血管形成術群で8例(3.2%)、積極的内科治療単独群で4例(1.6%)報告された。登録後30日~12ヵ月の狭窄血管領域の虚血性脳卒中の発生率はそれぞれ0.4%および7.5%、狭窄血管の血行再建はそれぞれ1.2%と8.3%であった。症候性の頭蓋内出血の発生率は、バルーン血管形成術群で1.2%、積極的内科治療単独群で0.4%であった。 バルーン血管形成術群では、手技に伴う合併症が17.4%、動脈解離が14.5%の患者に発生した。

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えっ?NEJM?(解説:後藤信哉氏)

 心房細動を合併する安定期冠動脈疾患では、過去のランダム化比較試験の結果を考えると多数の抗血栓治療の組み合わせが考えられる。多数の組み合わせの中から抗凝固薬エドキサバン単剤とエドキサバン/抗血小板薬併用の有効性、安全性がオープンラベルのランダム化比較試験にて検証された。試験のエンドポイントは12ヵ月以内の死亡、心筋梗塞、脳梗塞、全身塞栓症、予定されなかった緊急冠動脈インターベンション、重篤な出血の複合エンドポイントであった。血栓・出血を含み、さらにソフトな緊急冠動脈インターベンションも含めてイベントリスクが見掛け上増加している。東アジアの韓国で施行された試験であり、一般的に臨床的なイベントリスクが低い。clinically relevant non major bleedingとany bleedingの数が抗血栓薬併用群で増加していた。 循環器領域のランダム化比較試験が以前に比較して少ない、心房細動と慢性期冠動脈疾患を対象とした試験は日本で施行されたAFIREなど少ない、との前提でもNEJMに掲載された論文としてのインパクトは大きくない。

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心房細動を伴う安定冠動脈疾患、エドキサバン単剤が有効/NEJM

 心房細動と安定冠動脈疾患を有する患者の治療において、直接第Xa因子阻害薬エドキサバンと抗血小板薬による抗血栓薬2剤併用療法と比較してエドキサバン単剤療法は、12ヵ月後の全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、全身性塞栓症、予期せぬ緊急血行再建術、大出血または臨床的に重要な非大出血の複合リスクを有意に低下させることが、韓国・蔚山大学校のMin Soo Cho氏らが実施した「EPIC-CAD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年9月1日号で報告された。韓国の多施設共同無作為化試験 EPIC-CAD試験は、韓国の18施設で実施した非盲検(判定者盲検)無作為化試験であり、2019年5月~2022年9月に参加者を募集した(韓国・心血管研究財団などの助成を受けた)。 年齢18歳以上、心房細動と安定冠動脈疾患(血行再建術による治療歴のある冠動脈疾患、または内科的に管理されている冠動脈疾患と定義)を有し、CHA2DS2-VAScスコア(範囲:0~9点、点数が高いほど脳卒中のリスクが大きい)が2点以上(血栓塞栓症のリスクが高いと判定)の患者を対象とした。 被験者を、標準用量(60mg、1日1回)のエドキサバンを単剤投与する群、または標準用量のエドキサバン+抗血小板薬(治療医の裁量でアスピリンまたはP2Y12阻害薬から選択)を併用投与する群(抗血栓薬2剤併用療法群)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、12ヵ月の時点における全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、全身性塞栓症、予期せぬ緊急血行再建術、大出血または臨床的に重要な非大出血の複合とした。主要虚血性イベントには差がない 1,040例を登録し、エドキサバン単剤群に524例、抗血栓薬2剤併用療法群に516例を割り付けた。ベースラインの全体の平均(±SD)年齢は72.1(±8.2)歳、22.9%が女性であり、平均CHA2DS2-VAScスコアは4.3(±1.5)点だった。 12ヵ月の時点で、主要アウトカムのイベントは、抗血栓薬2剤併用療法群で79例(Kaplan-Meier推定発生率16.2%)に発生したのに対し、エドキサバン単剤群では34例(6.8%)と有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.44、95%信頼区間[CI]:0.30~0.65、p<0.001)。 また、12ヵ月時に、主要虚血性イベント(全死因死亡、心筋梗塞、脳梗塞、全身性塞栓症の複合)は、エドキサバン単剤群で8例(Kaplan-Meier推定発生率1.6%)、抗血栓薬2剤併用療法群で8例(1.8%)に認めた(HR:1.23、95%CI:0.48~3.10)。出血性イベントが少ない 12ヵ月時までに、大出血または臨床的に重要な非大出血は、抗血栓薬2剤併用療法群で70例(Kaplan-Meier推定発生率14.2%)に発生したのに対し、エドキサバン単剤群では23例(4.7%)であった(HR:0.34、95%CI:0.22~0.53)。 12ヵ月時の大出血の累積発生率は、抗血栓薬2剤併用療法群で4.5%であったのに対し、エドキサバン単剤群では1.3%だった(HR:0.32、95%CI:0.14~0.73)。 著者は、「この結果は、主に出血性イベントの発生率がエドキサバン単剤群で低かったことによると考えられる。虚血性イベントと死亡の発生率は両群で同程度であった」とまとめている。

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血栓溶解療法にアルガトロバンやGPIIb/IIIa阻害薬の併用は有効か(解説:内山真一郎氏)

 このMOST試験は、米国の57施設が参加した単盲検の無作為化比較試験である。発症後3時間以内に血栓溶解療法を施行した虚血性脳卒中患者に血栓溶解療法開始75分以内にアルガトロバン、eptifibatide(GPIIb/IIIa阻害薬)、プラセボのいずれかを投与したところ、1次評価項目であった90日後の効用加重修正Rankinスケール(mRS)はプラセボ群よりアルガトロバン群で有意に高く(高いほど転帰良好)、eptifibatide群もプラセボ群より若干高く、安全性の1次評価項目であった症候性頭蓋内出血は3群間で有意差がなかったが、アルガトロバンやeptifibatideの併用療法により脳卒中後遺症は減らず、死亡が増加したと結論しており、抄録では結果と結論が矛盾している。 本来、臨床試験の結論は原則として1次評価項目の結果に基づいて下されるべきである。確かに従来の転帰判定に用いられてきた90日後のmRSの分布図を見ると、アルガトロバンやeptifibatideがプラセボより優れているようには見えず、死亡例がアルガトロバン群で有意に多かった理由は考察しているものの、1次評価項目の結果については何の考察もなしに結論では無視されていることに疑問を感じる。対象の40%は血栓除去術が施行されており、途中から血栓溶解薬がアルテプラーゼより有効なtenecteplaseが使用されるようになり、抗凝固薬や抗血小板薬の併用効果が証明しにくくなっていたことだけは確かである。

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仕事のストレスで心房細動に?

 職場で強いストレスにさらされていて、仕事の対価が低いと感じている場合、心房細動のリスクがほぼ2倍に上昇することを示す研究結果が報告された。ラヴァル大学(カナダ)のXavier Trudel氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に8月14日掲載された。 心房細動は不整脈の一種で、自覚症状として動悸やめまいなどを生じることがあるが、より重要な点は、心臓の中に血液の塊(血栓)が形成されやすくなることにある。形成された血栓が脳の動脈に運ばれるという機序での脳梗塞が起こりやすく、さらにこのタイプの脳梗塞は梗塞の範囲が広く重症になりやすい。 これまでに、仕事上のストレスや職場の不当な評価の自覚が、冠動脈性心疾患(CHD)のリスクを高めることが報告されている。しかし、心房細動のリスクもそのような理由で高まるのかは明らかでない。この点についてTrudel氏らは、カナダのケベック州の公的機関におけるホワイトカラー労働者対象疫学研究のデータを用いて検討した。 解析対象は、ベースライン時に心血管疾患の既往のない5,926人で、平均年齢45.3±6.7歳、女性が51.0%を占めていた。この人たちの医療記録を平均18年間にわたり追跡したところ、186人が心房細動を発症していた。心房細動を発症した人の19%は、アンケートにより「仕事上のストレスが強い」と回答した人だった。また25%は「自分の仕事が正当に評価されず対価が低すぎる」と感じていた。そして10%の人は、それら両者に該当した。 心房細動のリスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、飲酒・喫煙・運動習慣、BMI、教育歴、高血圧、糖尿病、脂質異常症、降圧薬の処方、心血管疾患の家族歴)を調整後、仕事上のストレスを強く感じている人はそうでない人に比べて、心房細動のリスクが83%高いことが分かった(ハザード比〔HR〕1.83〔95%信頼区間1.14〜2.92〕)。また、仕事の評価や対価が低いと感じている人はそうでない人より、心房細動のリスクが44%高かった(HR1.44〔同1.05〜1.98〕)。そして、それら両者に該当する人の心房細動リスクは97%高かった(HR1.97〔同1.26~3.07〕)。 この結果について著者らは、「仕事上のストレスや職場での不当な評価の自覚は、CHDだけでなく心房細動のリスク増大とも関連している。職場での心理社会的ストレスをターゲットとした疾患予防戦略が必要ではないか」と述べている。そのような予防戦略の具体的な施策としてTrudel氏は、大規模なプロジェクトはその進行ペースを落として労働者の負担を軽減すること、柔軟な勤務体系を導入すること、管理者と労働者が定期的に日常の課題について話し合うことなどを挙げている。 米国心臓協会(AHA)によると、心房細動は心臓関連の死亡リスクを2倍にし、脳卒中のリスクを5倍に高めるという。また、米国内の心房細動の患者数は2030年までに、1200万人以上に拡大することが予想されているとのことだ。

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脳梗塞入院時の口腔状態が3カ月後の生活自立度と有意に関連

 脳梗塞で入院した時点の歯や歯肉、舌などの口腔状態が良くないほど、入院中に肺炎を発症したり、退院後に自立した生活が妨げられたりしやすいことを示すデータが報告された。広島大学大学院医系科学研究科脳神経内科学の江藤太氏、祢津智久氏らが、同大学病院の患者を対象に行った研究の結果であり、詳細は「Clinical Oral Investigations」に7月19日掲載された。 全身性疾患の予防や治療における口腔衛生の重要性に関するエビデンスが蓄積され、急性期病院の多くで入院中に口腔ケアが行われるようになってきた。ただし、脳梗塞発症時点の口腔状態と機能的転帰や院内肺炎リスクとの関連については不明点が残されていることから、祢津氏らはこれらの点について詳細な検討を行った。 2017年7月~2023年8月に脳梗塞急性期治療のため同院へ入院し、データ欠落がなく発症前の生活が自立していた(修正ランキンスケール〔mRS〕2点以下)連続247人を解析対象とした。口腔状態は、歯や歯肉だけでなく、舌や口唇、口内粘膜の状態、および含漱(うがい)ができるか否かなどの8項目を評価する指標(modified oral assessment grade;mOAG)で判定した。mOAGは同院の西裕美氏らが独自に開発した口腔衛生状態を表す指標で、0~24点の範囲にスコア化され、スコアが高いことは口腔状態の不良を意味する。 入院3カ月後のmRSの評価で、137人(55.5%)が転帰良好(スコア上限が2点〔仕事や活動に制限はあるが日常生活は自立している〕)、110人(44.5%)が転帰不良(スコア下限が3点〔食事やトイレなどは介助不要だが外出時には介助を要する〕)と判定された。入院時の口腔状態は、転帰良好群がmOAGスコアの中央値6点(四分位範囲5~7)、転帰不良群が11点(同10~14)で、後者が有意に高値(不良)だった(P<0.001)。 交絡因子(年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒習慣、脳卒中の既往、併存疾患、入院前mRSスコア、神経学的重症度〔NIHSSスコア〕、発症から入院までの期間など)を調整した多変量解析の結果、入院時のmOAGスコアが予後不良に独立した関連のあることが明らかになった(1点高いごとにオッズ比〔OR〕1.31〔95%信頼区間1.17~1.48〕)。mOAGスコアで予後不良を予測する最適なカットオフ値は7であり、感度83.9%、特異度65.5%、予測能(AUC)0.821と計算された。またmOAGスコアが7点以上の場合、予後不良のオッズ比は4.26(2.14~8.66)だった。 入院中に肺炎を発症したのは13人(5.3%)だった。入院時の口腔状態は、肺炎非発症群がmOAGスコアの中央値6点(四分位範囲4~9)、肺炎発症群が10点(同8~12)で、後者が有意に高値(不良)だった(P<0.001)。 交絡因子を調整した多変量解析の結果、入院時のmOAGスコアが院内肺炎発症に独立した関連のあることが明らかになった(1点高いごとにOR1.21〔95%信頼区間1.07~1.38〕)。mOAGスコアで院内肺炎発症を予測する最適なカットオフ値は8であり、感度84.6%、特異度64.5%、AUC0.783と計算された。またmOAGスコアが8点以上の場合、院内肺炎発症のオッズ比は7.89(1.96~52.8)だった。 なお、同院では全入院患者に対して標準化されたプロトコルに基づく口腔ケアが実施されている。その結果、入院中にmOAGが2回評価されていた患者(159人)のうち91人は、mOAGスコアの改善を認めた。しかしこの改善と、3カ月後のmRSや院内肺炎発症率との関連は有意でなかった。その理由として、「mOAGが2回評価されていた患者は重症例が多かったためではないか」との考察が加えられている。 以上一連の結果を基に著者らは、「脳梗塞急性期のmOAGスコアは、院内肺炎リスクや3カ月後の機能的予後と独立して関連していた。脳梗塞患者の入院に際して、口腔状態の評価結果を医療従事者間で共有し、積極的な口腔衛生介入をすべきではないか」と述べている。

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急性期脳梗塞、抗凝固薬または抗血小板薬の補助療法は有益か/NEJM

 発症後3時間以内に静脈内血栓溶解療法を受けた急性期脳梗塞患者において、アルガトロバン(抗凝固薬)またはeptifibatide(抗血小板薬)の静脈内投与による補助療法は、脳梗塞後の障害を減少させず、死亡の増加と関連することが、米国・セントルイス・ワシントン大学のOpeolu Adeoye氏らが行った第III相無作為化試験の結果で示された。静脈内血栓溶解療法は急性期脳梗塞の標準治療であるが、アルガトロバンまたはeptifibatideと併用した場合の有効性と安全性は不明であった。NEJM誌2024年9月5日号掲載の報告。アルガトロバン、eptifibatideまたはプラセボを投与し有効性と安全性を評価 米国57施設で3群アダプティブ単盲検無作為化試験を実施した。発症後3時間以内に静脈内血栓溶解療法を受けた急性期脳梗塞患者を、血栓溶解療法開始後75分以内に、アルガトロバンを静脈内投与する群(アルガトロバン群)、eptifibatideを静脈内投与する群(eptifibatide群)またはプラセボを静脈内投与する群(プラセボ群)に割り付けた。 主要有効性アウトカムは、90日時点の効用値で重み付けした修正Rankinスケール(UW-mRS)スコア(範囲:0~10、高スコアほど良好なアウトカムを示す)で、中央判定により評価した。 主要安全性アウトカムは、無作為化後36時間以内の症候性頭蓋内出血とした。アウトカム改善は認められず、死亡率が高い 合計514例が無作為化された(アルガトロバン群59例、eptifibatide群227例、プラセボ群228例)。すべての患者が静脈内血栓溶解療法を受け(アルテプラーゼ投与70%、tenecteplase投与30%)、225例(44%)が血管内血栓除去術を受けた。 90日時点のUW-mRSスコア(平均値±SD)は、アルガトロバン群5.2±3.7、eptifibatide群6.3±3.2、プラセボ群6.8±3.0であった。 アルガトロバンがプラセボよりも良好である事後確率は0.002(UW-mRSスコアの事後平均群間差:-1.51±0.51)であり、eptifibatideがプラセボよりも良好である事後確率は0.041(-0.50±0.29)であった。 症候性頭蓋内出血の発生率は、3群で同程度であった(アルガトロバン群4%、eptifibatide群3%、プラセボ群2%)。90日時点の死亡率は、プラセボ群(8%)と比較しアルガトロバン群(24%)およびeptifibatide群(12%)で高率であった。

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9月9日 救急の日【今日は何の日?】

【9月9日 救急の日】〔由来〕暦の語呂合わせから救急業務および救急医療に対する国民の正しい理解と認識を深め、救急医療関係者の意識高揚を図ることを目的に1982(昭和57)年に厚生省(現厚生労働省)が制定。この日を含む1週間を「救急医療週間」として消防庁、厚生労働省、都道府県・市町村などの協力のもと、全国各地で各種行事を開催している。関連コンテンツいざというとき役立つ!救急処置おさらい帳困ったときに慌てない! 救急診療の基礎知識患者が訴えるこの「めまい」症状は危険なサインか!? 【Dr.山中の攻める!問診3step】創部の洗浄【一目でわかる診療ビフォーアフター】脳卒中の症状はFASTでチェック【患者説明用スライド】

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危険なめまいを患者に伝える

患者さん、その症状はめまい ですよ!めまい(目眩)とは、以下のような症状を伴います。□自分やまわりがぐるぐる回る□物が二重に見える□ふわふわしている□不安感□気が遠くなりそうな感じ□動悸□眼前暗黒感□吐き気◆とくに注意‼ 脳梗塞が疑われる「めまい」• まわりの景色がぐるぐる回る(回転性めまい)症状が続き、まったく歩けなければ、病院の救急科への受診が必要です• 動脈硬化のリスク(高齢、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、喫煙)や血栓症のリスク(心房細動…)がある• 物が二重に見える(複視)、話しにくい(構音障害)、飲み込みにくい(嚥下障害)、意識が悪い(意識障害)などの症状がある出典:日本神経学会:脳神経内科の主な病気(症状編)めまい監修:福島県立医科大学 会津医療センター 総合内科 山中 克郎氏Copyright © 2021 CareNet,Inc. All rights reserved.

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めまい(BPPV以外)【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第18回

前回は良性発作性頭位めまい症(BPPV)の患者さんの対応を紹介しました。今回は、続きとしてBPPV以外のめまいの対応を紹介します。再度STANDINGアルゴリズムを見てください(図1)。図1 STANDINGアルゴリズム画像を拡大する頭位変換でめまいが誘発されず、継続して眼振がある(Spontaneous)症例を提示します。私は自発性眼振は在宅や施設では経験がないので、救急外来に運ばれてきた症例を提示します。<症例>68歳、女性主訴めまい現病歴朝起床時から、ふわふわする感じがあった。その後、次第に回転性めまいとなり増悪。めまいのため体動困難となり救急要請。既往歴高血圧、高脂血症BP:132/80、HR:84、SPO2:99%(室内気)身体所見めまいが強くて開眼や診察が困難ではステップを追って診察してみましょう。(1)まずは治療を行うこの患者さんのようにめまい症状が強いと、独歩で受診したり、施設内で診察したりすることが難しいため救急搬送となります。こういった場合、私は治療と検査を優先します。まず「目を開けたらめまいがする」という病歴の時点でBPPVの可能性は否定的で、中枢性めまいと末梢性めまいを鑑別することが重要です。めまいや悪心が強い場合は満足に診察できません。まず治療を行いましょう。末梢性めまいに対する治療は多数あります。その中で比較的エビデンスがあるのが、抗ヒスタミン薬とメトクロプラミドであり、点滴静注を実施します1)。頭部CTはどうするか悩みますが、私は基本的に撮影しています。まともに診察ができない状況ですので脳出血が否定できないためです。この患者さんはCT撮影で出血は否定され、薬が効いてきたのか開眼できるようになりました。(2)眼振の方向(Nystagmus direction)を確認眼振ですが、基本的に1.方向交代性、2.垂直成分の有無、を評価します。私は、前庭神経障害による眼振の発生機序を説明する際に、林 寛之先生のSTEP beyond resident2)を基にした図を用いています(図2)。図2 眼振の発生機序画像を拡大する図に示すように前庭神経は左右から眼球を押しています。左が障害されると、正中を保てなくなり左に寄ります。しかし、正中を見るために右へ素早く戻る、それが右水平方向性の眼振となります。前庭神経が障害された場合、垂直成分はありません。また、両側同時に障害されることはないため、振り子のように左右均等に出たり、時間によって眼振の向きが変わったりすることもありません。この患者さんの眼振は右水平方向性の眼振で垂直成分はなく、方向交代もありませんでした。よって、左の前庭神経障害が疑われます。(3)Head impulse testよく勘違いされるのですが、Head impulse testを問題なく実施できた場合、「中枢性の可能性がある」となります。図3をみてください。図3 Head impulse test(Aはスムーズに行えており、Bは遅れている)画像を拡大する指を示して正中を注視してもらいながら、頭部を右に回旋します。すると眼球が左に動きます。もし右の前庭神経障害があれば、眼球を左へ動かす動きが障害されてしまい眼球の運動がやや遅れます。Head impulse testの問題なく行えれば前庭神経の障害ではないため「中枢性の可能性が高い」(図3のA)となり、少し遅れる場合は前庭神経の障害がありそうで「末梢性の可能性が高い」(図3のB)となります。この遅れは非常に微細で、Slowカメラなどを用いて撮影する必要があります。一度YouTubeなどでHead impulse testを見てみてださい。(4)立って歩けるか確認最後が問題なく歩けるかどうか? です。これは体感失調の有無を評価しています。「最後の最後に歩けるかどうかかよ~」と思うかもしれませんがかなり重要です。小脳梗塞を生じている患者さんはまともに歩けません。これを評価するためには「めまいで歩けない状態から改善する」必要がありますので、早期のめまい治療を実施しています。本症例はHead impulse testをするときには症状が大分改善していて、問題なく歩けました。何らかの末梢性めまいとして帰宅とし、症状が続くようであれば耳鼻科受診を勧めました。2回にわたってめまいの対処法を紹介しました。めまいは苦手意識が高い人が多く、MRIがないと不安になります。これらの内容が少しでも役に立てばと思います。 1)Muncie HL, et al. Am Fam Physician. 2017;95:154-162.2)林 寛之. Step Beyond Resident 3. 羊土社;2006.

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