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12万例超の手術で使われた心房細動の新アブレーション/ボストン・サイエンティフィック

 ボストン・サイエンティフィック ジャパンは、心房細動(AF)の新たな治療法として期待されるFARAPULSE パルスフィールドアブレーション(PFA)システムを11月1日より全国で発売したのに合わせ、メディアセミナーを開催した。 AFの有病率は2030年には100万例を超えると予想され、わが国の医療現場でも迅速な治療が急務となっている。今回発売されたFARAPULSE PFAシステムは、肺静脈の出口にカテーテルで電場(パルスフィールド)を形成して電気的に隔離することで、心房への異常な電気信号を遮断し、AFを治療するもの。PFA治療は、心筋が他の臓器よりも障害閾値が低いことを応用し、心筋だけを選択的に焼灼する電場を起こすことが期待されている。これにより、現在、標準的治療となっている熱アブレーション治療で課題となっていた食道損傷や肺静脈狭窄、さらには横隔神経の持続的な障害などの合併症リスクを低減することが期待されている。 本システムは、2021年の欧州での発売以来、これまで世界65ヵ国で承認・使用されており、12万5,000例を超える臨床使用実績を持ち、120以上の査読付き論文で有効性、安全性が示されている。また、手技時間の短縮にも貢献し、医療機関での効率改善と患者の負担軽減が期待されている。同システムは2024年9月26日に薬事承認を取得している。手技時間の短縮で医師も患者も負担が軽減できる 「心房細動アブレーションのGame Changer PFAへの期待」をテーマに、里見 和浩氏(東京医科大学病院 主任教授 病院長特別補佐 不整脈センター/心臓リハビリテーションセンターセンター長)が、実臨床での本システムの有用性などについて説明を行った。 はじめにAFの病態や症状について説明。AFは頻度の高い不整脈であり、1分間に300回以上(通常は60~100回)心房が異常に早く、震えるように動く。患者は、男性のほうが少し多く、高齢者に多い。 症状としては、頻脈にともなう症状で「心臓のどきどき」、「息苦しさ」、「階段がきつい」などがあるが、無症候のケースもある。AFの合併症としては、心不全や血栓ができやすく、脳梗塞になりやすいこと(とくに脳梗塞の3割が心房細動の血栓)である。 AFの検査としては、12誘導などの心電図、心臓エコー、心臓へのCT/MRIなどの検査があり、現在は薬物、カテーテルアブレーション、外科手術の3つの治療法がある。 AFの原因となる部位の9割が肺静脈であり、この治療がスタートとなる。とくにカテーテルアブレーションが9万例施行されているが、そのうちの約7万例がAFであり、今後も増加が予想されている。 今、カテーテルアブレーションでは、熱を使わない新しいエネルギーで心筋組織を選択的に焼灼できるFARAPULSE PFAシステムが登場し、使用できるようになった。実臨床では、手技時間が短く、だいたい30~60分で手技が終わり、長期間その治療効果は維持される。循環器内科や心臓血管外科を志望する医師が減少し、人員が満たない中で手技や手術の時間の短縮は、患者にも医師にもメリットがあると期待を寄せた。全世界で約12万例超の有効性、安全性を実現したFARAPULSE PFAシステム 「FARAPULSE パルスフィールドアブレーションシステムの概要」をテーマに同社のEP PFAマーケティングの伊藤 彰彦氏が、システムの内容について説明した。 FARAPULSE PFAシステム(以下「同システム」と略す)は、短時間に電圧をかけパルス電界を形成することで標的部位の細胞に細孔を形成し、細胞に内容物がこの細孔から排出されることで、非熱的に細胞死を引き起こして治療する。従来の熱アブレーションと比較し、心筋組織に選択的に影響を与え、近接組織への影響を避けることができるメリットがある。 パルスフィールド アブレーションは、熱アブレーションと同等の有効性、安全性を保ちながら、従来のアブレーションで懸念される食道関連合併症や肺静脈狭窄、持続的横隔神経障害のリスクを低減し、より効率的な治療を提供することが期待されている。また、同システムは、すでに12万5,000例の実臨床経験において、有効性、安全性、効果の持続性を確認しており、独特な形状(最大花が咲いたような姿)をしたカテーテルはさまざまな患者の解剖に対応する。シンプルかつスムーズな手技ワークフローは、迅速かつ再現性の高い手技を提供する。 同システムの製品構成は3つから成り、カテーテルは手元で先端部が可変でき、360度アブレーションができる。スティーラブルシースは目的部位へ簡単に誘導することができ、ジェネレータはシンプルな構造で操作も単純化されている。 最期に臨床試験で実施された“ADVENT Study”について説明した。本試験は、発作性AFにおける同システムの有効性と安全性を高周波アブレーション(RFA)/クライオバルーンアブレーション(CBA)と直接比較した無作為化臨床試験で、同システム群305例とRFA/CBA群302例(RFA群167例/CBA群135例)を検討した。その結果、安全性、有効性ともにRFA/CBA群と比較し、非劣性だったことが検証され、手技時間、左房滞在時間、アブレーション時間ともに同システム群のほうが短時間だったが、透視時はRFA/CBA群のほうが短かったことを説明し、終了した。

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重症大動脈弁狭窄症に冠動脈疾患を合併した症例の治療方針を決めるのに、たった1年の予後調査でよいのか(解説:山地杏平氏)

 重症の大動脈弁狭窄症に冠動脈疾患を合併する場合、患者が80歳以上や高リスク症例であれば、経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)と経皮的冠動脈形成術(PCI)による経皮的治療が選択されることが多く、一方で、若年者やリスクが低い症例では、長期成績を踏まえ、大動脈弁置換術(SAVR)と冠動脈バイパス術(CABG)による外科手術が推奨されます。 TCW研究では、70歳以上の無症候性重症大動脈弁狭窄症かつ、50%以上の狭窄を有する2枝以上の冠動脈病変、もしくは20mm以上の病変、あるいは分岐部を含む左前下行枝病変を有する症例について、経皮的治療と外科手術を無作為比較しています。 実際に登録された症例の平均年齢は76歳で、STS-PROMスコアやEuroSCORE IIは2~3%と低く、低リスク症例が中心でした。当初の計画では328例の登録を予定していましたが、外科手術群で心臓死や重大な出血イベントが多くみられたため、172例の登録時点で試験が中止されました。カプランマイヤー曲線では両群間で明確な差が示されましたが、登録症例数が少ないため、絶対的なイベント数は多くなく、経皮的治療群では91例中4例(4%)にイベントが発生し、外科手術群では77例中17例(23%)に発生しました。 本試験では低左心機能(左室駆出率30%未満)や腎不全(eGFR 29mL/分/1.73m2未満)の症例が除外されています。それにもかかわらず、とくに、外科手術群での7例の死亡と9例の重大な出血イベントについては、発生率は高く感じられます。一方で、経皮的治療群のイベント数(死亡1例、脳梗塞1例、心筋梗塞2例、重大な出血イベント2例)は、逆に少なすぎるようにも思われます。重大な出血イベントについては、外科手術に関連するものとして理解できますが、外科手術群での死亡の多くは30日以降にみられており、偶然多かった可能性は否定できません。試験が予定登録数の約半分で中止されたため、統計的なパワー不足であることは注意が必要です。 CABGの良さは、左内胸動脈(LITA)を使って左前下行枝(LAD)に吻合することで、長期的なイベントリスクを低減することです。一方で、1年の予後はPCIとCABGであまり差はないように思います。70歳できちんとLITAをLADにつないで、将来のイベントを予防するメリットについては、今回の試験では評価されておらず、TCW研究結果をそのまま実臨床に反映させるには慎重な対応が必要です。

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甘いものの摂取、心臓の健康にとっての「スイートスポット」は?

 甘いものが心臓の健康にもたらす影響は、その種類により大きく異なる可能性のあることが新たな研究で明らかになった。論文の筆頭著者であるルンド大学(スウェーデン)のSuzanne Janzi氏は、「この研究結果で最も印象的だったのは、異なる摂取源の添加糖が心血管疾患(CVD)リスクに、それぞれ異なる影響を与えることを示した点だ」と述べている。例えば、加糖飲料の大量摂取は脳卒中や、心不全、不整脈の発症リスクを大幅に高めることが示された一方で、オートミールに蜂蜜を加えたり、甘いペストリーを時々食べたりしても心臓の健康に大きな害はなく、むしろ改善する可能性もあるという。この研究の詳細は、「Frontiers in Public Health」に12月9日掲載された。 この研究では、2件の長期健康研究に参加した45〜83歳のスウェーデン人6万9,705人(女性47.2%)から収集したデータを用いて、加糖食品・飲料の摂取と7種類のCVD(脳梗塞、出血性脳卒中、心筋梗塞、心不全、大動脈弁狭窄症、心房細動、腹部大動脈瘤)との関連が検討された。試験参加者は、研究の一環として1997年と2009年に食事とライフスタイルに関する質問票に回答し、2019年12月31日まで追跡されていた。追跡期間中に2万5,739人が1種類以上のCVDの診断を受けていた。主な診断は、脳梗塞6,912件、出血性脳卒中1,664件、心筋梗塞6,635件、心不全1万90件、大動脈弁狭窄症1,872件、心房細動1万3,167件、腹部大動脈瘤1,575件であった。 分析の結果、添加糖の摂取量と脳梗塞および腹部大動脈瘤のリスクとの間に正の関連が認められ、特に、摂取量が最も多い群では最も少ない群に比べて両疾患のリスクがそれぞれ11%と31%上昇することが明らかになった。しかし、ほとんどのCVDで、添加糖の摂取量が最も低いカテゴリーの群でのリスクが最も高い傾向が認められ、リスクが最も低かったのは低~中程度の摂取カテゴリーの群であった。 さらに、加糖食品(おやつ)、トッピング、加糖飲料といった添加糖の摂取源別に分析を行った。その結果、心臓の健康に特に大きな悪影響を与えるのは加糖飲料の摂取であり、1週間に8サービング超の加糖飲料の摂取は、脳梗塞リスクで19%、心不全リスクで18%、心房細動リスクで11%、腹部大動脈瘤リスクで31%の増加と関連することが示された。一方、ペストリー、アイスクリームなどの加糖食品では、摂取量が少ない群(週に2回以下)でCVDリスクが最も高くなるという負の関連が認められた。さらに、蜂蜜や砂糖などのトッピングについては、摂取量が少ないと心不全および大動脈弁狭窄症のリスクが増加し、摂取量が多いと腹部大動脈瘤リスクが増加する傾向が認められた。 Janzi氏は、「この驚くべき対比は、添加糖の摂取量だけでなく、その摂取源や摂取状況を考慮することの重要性を浮き彫りにしている」と話している。同氏は、「甘い飲み物に含まれる液糖は、一般的に固形のものよりも満腹感が少ないため、過剰摂取につながる可能性がある。また、甘いものを摂取する状況も重要だ。お菓子は社交の場や特別な機会で楽しまれることが多いが、甘い飲み物はそれ以上の頻度で消費されている可能性がある」と付言する。 一方で、甘いお菓子を時々摂取することは、全く摂取しない場合よりも健康に有益であったという結果について、Janzi氏は、「これは、根本的な食習慣を表している可能性がある。添加糖をほとんど摂取しない人は、非常に制限的な食事をしているか、または、もともと何らかの健康状態を理由にそれを制限している可能性が考えられる」との見方を示している。その上で同氏は、「われわれの観察研究では因果関係を立証することはできないが、得られた結果は、添加糖の摂取量を極端に減らすことが、心血管の健康に必ずしも有益であるとは限らないことを示唆している」と述べている。

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冬季入浴中の事故を防ぐ6つの対策

冬季入浴中の事故を防ぐための6つの対策■入浴事故防止のために1)入浴前に脱衣所や浴室を暖めておく2)湯温は41℃以下、お湯に浸かる時間は10分までを目安にする3)浴槽から急に立ち上がらない4)食後すぐの入浴や、飲酒後、医薬品服用後の入浴は避ける5)お風呂に入る前に、同居する家族にひと声かける6)高齢者の家族は入浴中の高齢者の動向に注意する政府広報オンラインより引用(2024年12月16日閲覧)https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202111/1.htmlCopyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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心房細動の早期発見、早期介入で重症化を防ぐ/日本心臓財団

 日本心臓財団メディアワークショップは、都内で「心房細動の診療」をテーマにメディアワークショップを開催した。 心房細動(AF)は心臓内の心房が異常な動きをし、不整脈を引き起こす疾患である。AFでは、自覚症状を伴わないことが多く、気付かずに長期間放置すると心房内に生じた血栓が血流にのり、脳血管障害や心不全などを発症させる恐れがある。早期発見が重要であり、治療ではカテーテルアブレーションや薬物による治療が行われる。そして、早期発見では、日常の検脈や健康診断が重要となるが、近年では、テクノロジーの発達とデジタルデバイスの普及により、これまで見つかりにくかった無症候性や発作性タイプのAFの早期発見が可能になってきている。 セミナーでは、AFの病態やリスク、早期発見のための静岡市清水区でのAI診断の取り組みなどが解説された。AFの患者は100人に1人の時代 最初に「心房細動管理の最新トレンド」をテーマに清水 渉氏(日本医科大学大学院 医学研究科 循環器内科学分野 教授)が、最近のガイドラインからみたAFの病態や治療、カテーテルアブレーションについて解説した。 AFは、高齢の男性に多く、その有病率は増え続けている。患者数は100万人と推定され、100人に1人がAFと考えられる。2018年からは法律に基づき、「国民の健康寿命の延伸等を図るため」に脳卒中とならび国を挙げて対策を要する疾患となっている。 そして、AFを発症すると脳梗塞発症リスクが5倍、心不全で5倍、認知症で2倍という報告もあり、健康寿命、生命予後に大きく影響する。 現在、わが国にはAFに関係するガイドラインが4つある。『2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン』(編集:日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン/後述の3ガイドラインも同様)では、病態生理として「肥満」「高血圧」「糖尿病」「睡眠呼吸障害」などが伝導障害となり、電気的リモデリングを促進させ、AFのトリガーになることが示されている。 『2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療』では、4つの段階に分けてAFと生活習慣管理・包括管理を示している。第1段階では「急性期の管理」、第2段階では「増悪因子の管理」、第3段階では「脳梗塞の予防」、第4段階では「症状の改善」が記載されている。とくに第4段階の症状の改善について、リズムコントロール(洞調律維持)およびレートコントロール(適切な心拍数調節)が症状改善に行われるが、「動悸などの症状が強い」「AFの持続で心不全の発症・増悪が危惧される」「AF発症関連の併存疾患が比較的少ない」などの患者ではリズムコントロールが望ましいとガイドラインでは記されている。 次に症状の発見について触れ“Fukuoka Stroke Registry”から「急性虚血性脳卒中を発症した心房細動患者における、脳卒中発症前の心房細動の診断状況、抗凝固療法の実施状況」について、脳卒中発症前にAFの診断がなかった人が45.9%に上ることを紹介するとともに1)、AF患者において無症候性の割合について37.7%の報告もある2)と紹介し、AFの発見が難しいことを説明した。では、発見が難しいAFをどのように見つけるか? 日常生活で簡単にできる方法として身体診察の「検脈」の方法を紹介するとともに、『2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン』に触れ、ガイドラインの中に記載されているAFのスクリーニングと治療に用いられる各デバイスの特徴について説明を行った。最近では、ウェアラブルの測定機器が進歩しているが、その精度はまだ未知数であり、エビデンスも確立されていないために長時間心電図モニターや携帯心電図などの心電図記録によるデバイスで診断することになっている。進歩するAFの治療 『2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療』からAFの治療では、カテーテルアブレーションと抗凝固治療が行われる。 カテーテルアブレーションは、20221年のデータでわが国では約11万件施行されている。とくに心不全を合併したAFでは、カテーテルアブレーションは、全死亡・心不全入院を有意に減少させる報告があるので、予後を改善できる可能性が高い3)。 また、近年ではLVEF(左室駆出率)の低下した心不全(HFrEF)にも治療の適応が拡大されているほか、新しいカテーテル治療法として熱を伴わず特殊な電気ショックを利用して細胞のアポトーシスを誘導するパルスフィールドアブレーション(PFA)も登場し、安全に外科的治療が施行できるようになってきているという。 抗凝固療法に関しては、『2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン』で直接経口抗凝固薬(DOAC)4薬剤の用法・用量設定基準が明記され、すべてのDOACがCHADS2スコア1点以上で使用が推奨されている。また、腎機能障害、認知症、フレイルなどの高リスク高齢者についても積極的なDOACの使用を記していると説明し、レクチャーを終えた。AI診断で未診断のAFを発見 「『隠れ心房細動』を早期発見するための、AIとリモートテクノロジーを用いた取り組み-静岡市清水区における地域医療プロジェクトについて-」をテーマに笹野 哲郎氏(東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 循環制御内科学分野 教授)が、静岡市清水区で行われている心電図のAI診断とデバイスによるリモートモニタリングによるAFの早期発見の取り組みについて説明した。  静岡市清水地区の高齢化率は約32%とわが国の平均よりやや進んだ高齢化率を示し、すでにAFと診断された人が2,036人、隠れAFの人が2,000人とほぼ同数であることから、この地区が選定されたという。この取り組みでは、地元の市立清水病院と清水医師会が共同事業者となり現地で健診などを実施、連携する東京科学大学がデータのAI解析を行い、解析結果をフィードバックするものである。 同地区で行われているAFの早期発見メソッドとしては、「12誘導心電図のAI診断」、「デバイスによるリモートモニタリング」が行われている。AFは、肺静脈からのトリガー興奮の後、左心房内で異常興奮が持続することで起るが、発作時でなくとも心房リモデリングの評価はできるとして、AIの深層学習により発作性AFの推定をさせている。 そして、AIによるAF発見は実現可能な段階にあり、2022年1月から開始されたプロジェクトでは、2023年7月までに検診を受けた362例のうち11例(3.04%)に未診断のAFを発見したという。 また、デバイスによるリモートモニタリングについて、スマートウォチやスマートリングなどの精度は向上途上であり、やはり現在医療機器で使用されているモニタリング機器での検査が行われる。 今後、早期発見のために装着されるウェアラブル機器による生体モニタリングなどについては、利用者が中途で止めてしまわないようにモニタリングの重要性を教育すること、一切操作不要でモニタリングできるシステムの開発と導入が望まれると展望を語り、講演を終えた4)。

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2024年を終えるに当たって【Dr. 中島の 新・徒然草】(561)

五百六十一の段 2024年を終えるに当たっていよいよ激動の2024年も終わりを迎えようとしています。正月の能登半島地震、翌2日の羽田空港地上衝突事故で始まった2024年ですが、大谷翔平選手のMLBでの大活躍や、日経平均株価のバブル期超えという明るいニュースもありました。考えてみれば、そもそも平穏な1年などというものはなく、毎年のように何か予想外のことが起こっているわけですね。私自身を振り返ってみると、何といっても定年退職したことが一番の出来事です。前々回に述べたように、週2回の外来と医師会活動や看護学校での講義のほかは、自宅で過ごす毎日。やはり時間に余裕ができたのは大きく、外来の患者さんたちにも「先生、前より元気そうね」と言われたりします。外来の患者さんといえば、若い人の中には結婚や出産というめでたいこともあったりします。ある脳梗塞の女性患者さんは、生まれたばかりの赤ん坊を連れてきてくれました。患者「普段は目立たないけど、子供を抱っこしたりするとバランスが悪くて」中島「そういう時に片麻痺が露呈してしまうのか……」患者「もう母や旦那に頼りっぱなしで情けないです」中島「そんなもん、利用できるものはすべて利用したほうがいいですよ」彼女は実家が目の前にあるので、何かと母親に助けてもらいながらの子育てです。一緒に診察室に来ていた母親は孫を抱きながら「そうは言っても育児は終わりがありますからね」と仰っていました。頼もしい!一方、別の頭部外傷の女性患者さんは、つい子供にきつく当たってしまうというのが悩みのようでした。高次脳機能障害のために感情を抑えづらいのがその原因。3歳の女の子を連れての受診ですが、彼女の場合は周囲に助けてくれる人があまりいないようです。中島「ママ、怒ったりする?」女の子「うん」中島「ママは怖い?」女の子「うん」患者「何を言ってるの!」まずい……余計なことを聞いてしまった。中島「でも、優しいママは大好き?」女の子「うん」一体、この先はどうなるのでしょうか。中島「保育所の利用とかで必要な書類があったら、何でも書きますから、遠慮なく言ってください」患者「ありがとうございます」別の患者さんは、小学生から中学生までの3人の子供がいる状態で、脳内出血を発症してしまいました。やはり片麻痺があるので、家事には苦労しています。患者「上の子は本当だったら反抗期なんでしょうけど……」中島「親に反抗している余裕もないんですね」患者「そうなんですよ。もう全員で家事を手伝ってくれています」中島「それは立派。立派過ぎる!」子供たちが診察室に付いてくることがあったら、私なりに労ったり励ましたりしなくてはなりませんね。そういえば、父親としての悩みというのも聞かされました。この患者さんは、交通事故の後に仕事も私生活もうまくいかなくなってしまったのですが、子供の話をする時だけは嬉しそうな表情です。患者「上の子が中学生になりまして」中島「こないだ小学校に入ったと聞いたばっかりなのに!」患者「それで、小学校からの友達と一緒にハンドボール部に入ったんですけど」中島「頑張ってますね」患者「それが同じポジションで、友達のほうばかりが試合に出してもらっているそうなんですよ」中島「そりゃあ辛いなあ」患者「それでハンドボールをやめたいとか言い出して」中島「でも、レギュラーになれない自分とどうやって折り合いを付けて頑張れるか、というのが部活動の本当の意味だと思いますけどね」患者「そうなんですか!」中島「とはいえ、本人は本人でいろいろ考えているでしょうから、あまり親が『ああしろ、こうしろ』と言い過ぎるのも良くないと思いますけど」今にして思えば、部活動というのは社会の縮図でした。よくあれだけ泣いたり笑ったりしたもんだと思います。部活動では、本当にたくさんの失敗をしてしまいましたが、医療現場と違って人が死ぬということがなかったのが救いでした。今になってそんな風に思います。ともあれ。あと数日間の2024年、無事に終わってほしいですね。読者の皆さん。良い年をお迎えください。最後に1句外来で 患者と悩む 年の暮れ

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中等~重度の椎骨脳底動脈閉塞、血管内治療vs.内科的治療/Lancet

 中等度~重度の症状を呈する椎骨脳底動脈閉塞患者において、標準的な内科的治療と比較して血管内治療は強固な有益性を示し、良好な機能的アウトカムの達成の可能性が高く、症候性頭蓋内出血のリスクは有意に増加するものの、全体的な機能障害および死亡率の有意な減少と関連することが、米国・ピッツバーグ大学のRaul G. Nogueira氏らが実施した「VERITAS研究」で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年12月11日号で報告された。4つの試験のメタ解析 研究グループは、急性椎骨脳底動脈閉塞患者における血管内治療の安全性と有効性を評価するために、標準的な内科的治療(対照)と比較した無作為化試験の系統的レビューを行い、患者レベルのデータを統合したメタ解析により、事前に規定したサブグループにおける有益性を検討した(特定の研究助成は受けていない)。 2010年1月1日~2023年9月1日に実施された無作為化試験の中から4つの試験(ATTENTION、BAOCHE、BASICS、BEST)を選出した。 主要アウトカムは、90日後の良好な機能状態(修正Rankin尺度[mRS]スコア[0~6点、高点数ほど機能状態が不良、6点は死亡]が0~3点)とした。安全性のアウトカムとして、症候性頭蓋内出血と90日死亡率を評価した。90日mRSスコア0~3点達成率:45% vs.30% 4試験の参加者988例のデータを統合した。血管内治療群は556例(56%)、対照群は432例(44%)であった。全体の年齢中央値は67歳(四分位範囲:58~74)、686例(69%)が男性だった。904例(91%)が脳卒中の推定発症時から12時間以内に無作為化された。3試験は中国人が対象で、988例中690例(70%)を占めた。1試験は欧州人とブラジル人を対象としていた。 良好な機能状態を達成した患者の割合は対照群よりも血管内治療群で高く、90日時にmRSスコア0~3点を達成した患者は、対照群が30%(128例)であったのに対し、血管内治療群は45%(251例)であった(補正後共通オッズ比[OR]:2.41、95%信頼区間[CI]:1.78~3.26、p<0.0001)。 血管内治療群は機能的自立度(mRSスコア0~2点の達成率)が高かった(血管内治療群35%[194例]vs.対照群21%[89例]、補正後共通OR:2.52、95%CI:1.82~3.48、p<0.0001)。また、血管内治療群で症候性頭蓋内出血のリスクが有意に高かった(5%[30例]vs.<1%[2例]、11.98、2.82~50.81、p<0.0001)にもかかわらず、全体的な機能障害の程度(2.09、1.61~2.71、p<0.0001)および90日死亡率(36% vs.45%、0.60、0.45~0.80、p<0.0001)は有意に低かった。心房細動や頭蓋内動脈硬化の有無にかかわらず有益 血管内治療の効果の異質性は、ベースラインの脳卒中重症度(ベースラインのNIHSSスコアが10点未満では効果が不確実)および閉塞部位(閉塞部位が近位であるほど有益性が大きい)については認められたが、年齢、性別、ベースラインの後方循環ASPECTSスコア、心房細動または頭蓋内アテローム性動脈硬化性疾患の有無、発症から画像診断までの時間で定義されたサブグループではみられなかった。 著者は、「アジア人は頭蓋内動脈硬化性疾患の発生率が高いことが知られているため、今回の知見の欧米諸国に対する一般化可能性について考慮する必要がある」「脳卒中重症度が軽度で、神経画像上広範な梗塞を呈する椎骨脳底動脈閉塞症患者に対する血管内治療の有益性はまだ不明であるが、これらの結果により椎骨脳底動脈閉塞症のさまざまな患者において血管内治療の有意な臨床的有益性が示された」としている。

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冬季に高齢者の入浴は要注意

冬季の高齢者の入浴はなぜ危険?■冬季こそ高齢者は入浴時に気を付けよう65歳以上の高齢者で入浴中に意識を失い、そのまま浴槽内で溺れて亡くなるという不慮の事故が増えています。毎年11月~4月にかけて多く発生し、高齢者の浴槽内での不慮の溺死および溺水の死亡者数は4,750人(厚生労働省人口動態統計[令和3年])で、交通事故死の亡者数2,150人のおよそ2倍です。原因の1つは、急な温度差による血圧の急激な変化です。血圧の急激な変化により一時的に脳内に血液が回らない貧血状態になり、一過性の意識障害を起こし、浴槽内で溺れて死亡するものと考えられています。【とくに注意が必要な人】・65歳以上の高齢者・血圧が不安定な人・以前風呂場でめまいや立ちくらみを起こした人政府広報オンラインより引用(2024年12月16日閲覧)https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202111/1.htmlCopyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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更年期のホルモン補充療法、心血管疾患のリスクは?/BMJ

 経口エストロゲン・プロゲスチン療法は、虚血性心疾患および静脈血栓塞栓症のリスク増加と関連していた。一方、合成ホルモン剤tiboloneは、虚血性心疾患、脳梗塞、心筋梗塞のリスク増加と関連していたが、静脈血栓塞栓症とは関連していなかった。スウェーデン・ウプサラ大学のTherese Johansson氏らが、スウェーデン統計局、ならびに保健福祉庁の処方薬登録、全国患者登録、がん登録および死因登録のデータを用いて行った、無作為化比較試験(RCT)を模倣するtarget trialの結果を報告した。閉経後10年以上経過後または60歳を超えてからの経口エストロゲン・プロゲスチン療法開始は、心疾患、脳卒中、静脈血栓塞栓症のリスクが増加する可能性が示唆されているが、現行更年期ホルモン補充療法の心血管疾患リスクに関する研究は不足していた。BMJ誌2024年11月27日号掲載の報告。スウェーデンの50~58歳の女性約92万例を解析 研究グループは、2007年7月~2018年12月の間に毎月、対象を登録して追跡を開始し、138のネステッド試験がデザインされた。 対象は、追跡開始前に過去2年間ホルモン補充療法を行っておらず、心血管疾患やがんならびに子宮摘出術または両側卵巣摘出術の既往歴がない50~58歳の女性で、追跡開始時の処方薬の種類により8つの群(持続的経口併用療法、逐次的経口併用療法、経口エストロゲン単独療法、経口エストロゲン+レボノルゲストレル放出子宮内システム併用、tibolone、経皮併用療法、経皮エストロゲン単独療法、ホルモン補充療法を開始せず)のいずれかに分類し、主要エンドポイントの発生、死亡、転居または2年間のいずれか早い時点まで追跡した。 主要エンドポイントは、静脈血栓塞栓症、虚血性心疾患、脳梗塞、心筋梗塞であった。それぞれ個別または複合のアウトカムとして解析し、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推算した。 解析対象は、138試験において少なくとも1試験で適格基準を満たした91万9,614例で、このうちホルモン補充療法を開始した女性が7万7,512例、開始しなかった女性が84万2,102例であった。持続的経口併用療法は、虚血性心疾患および静脈血栓塞栓症のリスクが増加 追跡期間中(2年間)に、主要エンドポイントのイベントは2万4,089例に発生した。1万360例(43.0%)で虚血性心疾患、4,098例(17.0%)で脳梗塞、4,312例(17.9%)で心筋梗塞、9,196例(38.2%)で静脈血栓塞栓症が発生していた。 ITT解析の結果、tiboloneは、ホルモン補充療法を開始しなかった女性と比較して虚血性心疾患のリスク増加と関連していた(HR:1.52、95%CI:1.11~2.08)。また、tibolone(HR:1.46、95%CI:1.00~2.14)、ならびに持続的経口併用療法(1.21、1.00~1.46)は、虚血性心疾患のリスクが高かった。 持続的経口併用療法(HR:1.61、95%CI:1.35~1.92)、逐次的経口併用療法(2.00、1.61~2.49)、および経口エストロゲン単独療法(1.57、1.02~2.44)は、静脈血栓塞栓症のリスクが高かった。 追加のper protocol解析では、tiboloneは脳梗塞(HR:1.97、95%CI:1.02~3.78)および心筋梗塞(1.94、1.01~3.73)のリスク増加と関連していることが示された。

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日本人の主な死因、10年間の変化

日本人の主な死因、10年間の変化350悪性新生物(腫瘍)300死亡率(人口10万対)250心疾患(高血圧性を除く)200老衰150100脳血管疾患肺炎誤嚥性肺炎新型コロナ腎不全不慮の事故5002014201520162017201820192020アルツハイマー病202120222023 [年]厚生労働省「人口動態統計」2023年(確定数)保管統計表 死亡(年次)「第5表-11 死因順位別にみた年次別死亡率(人口10万対)」「第5表-13 死因(死因簡単分類)別にみた性・年次別死亡数及び死亡率(人口10万対)」より集計Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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急性期脳梗塞の血栓除去術、バルーンガイドカテーテルは有用か/Lancet

 前方循環の大血管閉塞による急性期虚血性脳卒中患者に対する血管内血栓除去術において、従来のガイドカテーテルを使用した場合と比較してバルーンガイドカテーテルは、むしろ機能回復が不良であり、死亡率も高い傾向にあることが、中国・海軍軍医大学長海病院のJianmin Liu氏らが実施した「PROTECT-MT試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌2024年11月30日号に掲載された。中国の無作為化対照比較試験 PROTECT-MT試験は、急性期虚血性脳卒中の血管内血栓除去術におけるバルーンガイドカテーテルの有効性と安全性の評価を目的とする非盲検(エンドポイント評価は盲検下)無作為化対照比較試験であり、2023年2~11月に中国の28の病院で患者を登録した(中国国家自然科学基金などの助成を受けた)。 年齢18歳以上の急性期虚血性脳卒中で、修正Rankin尺度(mRS)のスコア(0[症状なし]~6[死亡]点)が0または1点であり、現地のガイドラインで症状発現から24時間以内に血管内血栓除去術を受けることが可能な患者を対象とした。 これらの患者を、バルーンガイドカテーテルまたは従来のガイドカテーテルを使用する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。臨床アウトカムのデータを収集する医師は、割り付け情報を知らされなかった。 主要アウトカムは機能回復とし、ITT集団における90日後のmRSスコアの変化で評価した。死亡率も高い傾向に 329例を登録し、バルーンガイドカテーテル群に164例、従来型ガイドカテーテル群に165例を割り付けた。全体の年齢中央値は69歳(四分位範囲[IQR]:59~76)、128例(39%)が女性であった。ベースラインのNIHSSスコア中央値は15点(IQR:11~20)、ASPECTS中央値は8点(6~9)だった。 90日の時点におけるmRSスコア中央値は、従来型ガイドカテーテル群が3点(IQR:2~5)であったのに対し、バルーンガイドカテーテル群は4点(2~5)と有意に悪化していた(補正後共通オッズ比:0.66、95%信頼区間[CI]:0.45~0.98、p=0.037)。 また、安全性のアウトカムである90日時の全死因死亡率(mRS 6点)は、数値上はバルーンガイドカテーテル群のほうが高かったが有意差はなかった(39例[24%]vs.26例[16%]、リスク比[RR]:1.51、95%CI:0.97~2.36、p=0.068)。 頭蓋内出血(バルーンガイドカテーテル群36% vs.従来型ガイドカテーテル群32%、RR:1.12、95%CI:0.83~1.51、p=0.46)および症候性頭蓋内出血(15% vs.11%、1.34、0.76~2.38、p=0.31)の発生率には両群間に差を認めなかった。内頸動脈の重度血管攣縮の頻度が高い とくに注目すべき手技関連合併症では、内頸動脈の重度の血管攣縮の頻度がバルーンガイドカテーテル群で高かった(4% vs.1%、RR:7.04、95%CI:1.15~43.75、p=0.037)。ガイドカテーテル関連の血管解離、血栓除去術関連の血管解離、造影剤の血管外漏出、大腿動脈アクセス関連の合併症の発生率には両群間に差はなかった。 著者は、「本試験は早期中止となっており、治療器具の異質性(さまざまな種類のバルーンやカテーテルの使用を許容)や頭蓋内血管の動脈硬化の割合が高かったことなどの限界があるため、今後、これらの結果を確認し、他の集団への一般化可能性を評価する研究が求められる」としている。

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日本人の主な死因(2023年)

日本人の主な死因その他食道 2.8%21.0%前立腺 3.5%肺および気管・気管支19.8%大腸(結腸・直腸)13.9%悪性リンパ腫3.8%アルツハイマー病1.6%その他悪性新生物(腫瘍)25.0%24.3%乳房 4.1%膵胃胆のう・胆道 4.5%10.5%10.1%肝・肝内胆管 6.0%n=38万2,504人腎不全 1.9%心疾患新型コロナウイルス感染症 2.4%不慮の事故2.8%誤嚥性肺炎3.8%(高血圧性を除く)心疾患14.7%老衰脳血管疾患 12.1%6.6%肺炎慢性リウマチ性4.8%心筋症 1.5%0.8%慢性非リウマチ性心内膜疾患5.2%くも膜下出血n=157万6,016人10.7%31.3%n=10万4,533人20.6%心不全42.9%急性心筋梗塞13.4% 不整脈および伝導障害15.6%その他 2.9%脳内出血その他n=23万1,148人脳梗塞55.1%厚生労働省「人口動態統計」2023年(確定数)保管統計表 都道府県編 死亡・死因「第4表-00(全国)死亡数,都道府県・保健所・死因(死因簡単分類)・性別」より集計注:死因順位に用いる分類項目(死因簡単分類表から主要な死因を選択したもの)による順位Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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非肥満2型糖尿病患者の心血管障害へのSGLT2阻害薬の効果は/京大

 糖尿病の薬物治療で頻用されているSGLT2阻害薬。しかし、SGLT2阻害薬の有効性を示した過去の大規模臨床研究の参加者は、平均BMIが30を超える肥満体型の糖尿病患者が多数を占めていた。 わが国の実臨床現場ではBMIが25を下回る糖尿病患者が多く、肥満のない患者でも糖分を尿から排泄するSGLT2阻害薬が本当に有効なのかどうかは、検証が不十分だった。そこで、森 雄一郎氏(京都大学大学院医学系研究科)らの研究グループは、協会けんぽのデータベースを活用し、わが国のSGLT2阻害薬の効果検証を行った。その結果、肥満傾向~肥満の患者ではSGLT2阻害薬の有効性が確認できたが、BMI25未満の患者では明らかではなかったことがわかった。本研究の結果はCardiovascular Diabetology誌2024年10月22日号に掲載された。肥満者にSGLT2阻害薬の主要アウトカムの効果はみられた一方で非肥満者ではみられず この研究は、2型糖尿病でBMIが低~正常の患者におけるSGLT2阻害薬の心血管アウトカムに対する有効性を、従来の試験よりも細かい層別化を用いて検討することを目的に行われた。 研究グループは、2015年4月1日~2022年3月31日の協会けんぽのデータベースを活用し、3,000万例以上の現役世代の保険請求記録および健診記録を用い、標的試験エミュレーションの枠組みを用いたコホート研究を行った。 SGLT2阻害薬の新規使用者13万9,783例とDPP-4阻害薬の使用者13万9,783例をBMI区分(20.0未満、20.0~22.4、22.5~24.9、25.0~29.9、30.0~34.9、35.0以上)で層別化し、マッチングした。主要アウトカムは全死亡、心筋梗塞、脳卒中、心不全。 主な結果は以下のとおり。・参加者の17.3%(4万8,377例)が女性で、31.0%(8万6,536例)のBMIが低~正常だった(20.0未満:1.9%[5,350例]、20.0~22.4:8.5%[2万3,818例]、22.5~24.9:20.5%[5万7,368例])。・追跡期間中央値24ヵ月で、主要なアウトカムは参加者の2.9%(8,165例)に発現した。・SGLT2阻害薬は全集団において主要アウトカムの発生率低下と関連していた(ハザード比[HR]:0.92[95%信頼区間[CI]:0.89~0.96])。・BMIが低~正常の集団では、SGLT2阻害薬は主要アウトカム発生率の低下と関連しなかった(20.0未満のHR:1.08[95%CI:0.80~1.46]、20.0~22.4のHR:1.04[95%CI:0.90~1.20]、22.5~24.9のHR:0.92[95%CI:0.84~1.01])。 この結果から研究グループは、「2型糖尿病患者の心血管イベントに対するSGLT2阻害薬の効果は、BMIが低いほど低減するようであり、BMIが低~正常(25.0未満)の患者では有意ではなかった。これらの結果はSGLT2阻害薬の投与開始時にBMIを考慮することの重要性を示唆している」と述べている。

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便秘は心臓病のリスクを高める?

 便秘は心筋梗塞や脳卒中のリスクを高める可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。この研究では、便秘のある人における主要心血管イベント(MACE)の発生リスクは、正常な排便習慣を持つ人より2倍以上高いことが示されたという。セント・ヴィンセント病院(オーストラリア)の臨床データアナリストであるTenghao Zheng氏らによるこの研究の詳細は、「American Journal of Physiology-Heart and Circulatory Physiology」に9月24日掲載された。研究グループは、「便秘はMACEのリスク上昇と独立して関連する潜在的なリスク因子であることが明らかになった」と同誌のニュースリリースの中で述べている。 この研究でZheng氏らは、便秘は、高血圧などの従来の心血管疾患のリスク因子とともにMACEリスクに関連しているとの仮説を立て、UKバイオバンク参加者40万8,354人の健康データの分析を通じてその仮説を検証した。データには、電子健康記録、ライフスタイル調査の結果、自己申告による健康状態や薬の使用状況などが含まれていた。参加者のうち、2万3,814人に便秘があることが確認された。MACEは、急性冠症候群、虚血性脳卒中(脳梗塞)、心不全のいずれかの発生と定義された。 解析の結果、便秘のある人は、正常な排便習慣を持つ人と比べてMACEリスクが2倍以上有意に高いことが明らかになった(オッズ比〔OR〕2.15、P<1.00×10-300)。便秘はMACEのサブグループとも有意に関連しており、リスクは、心不全(OR 2.72)、脳梗塞(同2.36)、急性冠症候群(同1.62)の順で高かった。 また、15万7,414人に高血圧の診断歴があり、このうちの8.6%(1万3,469人)には便秘もあった。便秘のない高血圧患者と比べて、便秘のある高血圧患者でもMACEのオッズは有意に高く(OR 1.68)、MACEの発生リスクは34%高いことが示された(ハザード比1.34、P=2.3×10-50)。 さらに、便秘と心血管疾患に関連すると考えられる900万以上の遺伝的変異の解析から、便秘は心血管疾患と約21%から27%の遺伝的変異を共有しており、両者の間に遺伝的相関のあることが明らかになった。さらに、ゲノム解析により、便秘が遺伝的な特性である可能性は約4%と推定された。 研究グループは、このように便秘とMACEの関連が特定されたことで、「プレシジョンメディシン(精密医療)の原則に沿った、個々の患者のリスク評価に基づいた新たな治療介入を見出し、より効果的な管理戦略を実施できるようになる」との見方を示している。 その一方でZheng氏らは、「便秘とMACEの関連をより深く理解するために、さらなる研究が必要である」と述べている。

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心房細動を伴う脳梗塞後のDOAC開始、早期vs.晩期/Lancet

 心房細動を伴う虚血性脳卒中後の直接経口抗凝固薬(DOAC)の投与開始時期について、早期開始(4日以内)は晩期開始(7~14日)に対して、90日時点での複合アウトカム(虚血性脳卒中の再発、症候性頭蓋内出血、分類不能の脳卒中、全身性塞栓症)発生に関して非劣性であることが示された。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのDavid J. Werring氏らOPTIMAS investigatorsが、第IV相の多施設共同非盲検無作為化エンドポイント盲検化並行群間比較試験「OPTIMAS試験」の結果を報告した。著者は、「われわれの検討結果は、心房細動を伴う虚血性脳卒中後のDOAC開始を晩期とする、現行のAHA/ASA脳卒中ガイドラインの推奨を支持するものではなかった」と述べている。Lancet誌オンライン版2024年10月24日号掲載の報告。90日時点の複合アウトカム発生を評価 OPTIMAS試験は、心房細動を伴う急性虚血性脳卒中患者におけるDOACの早期開始と晩期開始の有効性と安全性を比較した試験で、英国の100病院で行われた。対象者は、心房細動を伴う急性虚血性脳卒中の臨床診断を受けており、医師が最適なDOAC開始時期を確信していなかった成人患者とした。 研究グループは被験者を、あらゆるDOACによる抗凝固療法の早期開始(脳卒中発症から4日以内)群または晩期開始(7~14日)群に1対1の割合で無作為に割り付けた。被験者および治療担当医は治療割り付けをマスクされなかったが、マスクされた独立外部判定委員会によって、すべての入手できた臨床記録、脳画像レポート、ソース画像を用いてすべてのアウトカムの評価が行われた。 主要アウトカムは、修正ITT集団における90日時点の、虚血性脳卒中の再発、症候性頭蓋内出血、分類不能の脳卒中、または全身性塞栓症の複合であった。解析にはゲートキーピング法による階層的アプローチを用い、2%ポイントの非劣性マージンについて検定を行い、次いで優越性の検定を行うこととした。早期開始群の晩期開始群に対する非劣性を確認、優越性は認められず 2019年7月5日~2024年1月31日に、3,648例が早期開始群または晩期開始群に無作為化された。適格基準を満たしていなかった、またはデータを包含することの同意を得られなかった27例を除く、3,621例(早期開始群1,814例、晩期開始群1,807例)が修正ITT集団に組み入れられた。 主要アウトカムは、早期開始群59/1,814例(3.3%)、晩期開始群59/1,807例(3.3%)で発生した(補正後リスク群間差[RD]:0.000、95%信頼区間[CI]:-0.011~0.012)。補正後RDの95%CI上限値は、2%ポイントの非劣性マージンを下回っていた(非劣性のp=0.0003)。優越性は認められなかった(優越性のp=0.96)。 症候性頭蓋内出血の発生は、早期開始群11例(0.6%)に対して晩期開始群12例(0.7%)であった(補正度RD:0.001、95%CI:-0.004~0.006、p=0.78)。

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脳卒中後の治療で最善の血栓溶解薬とは?

 脳梗塞患者に対する血栓溶解薬のテネクテプラーゼ(TNK)の適応外使用は、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)のアルテプラーゼ(以下、TPA)による治療よりもわずかに効果的である可能性があるとするシステマティックレビューとメタアナリシスの結果が発表された。TNKによる治療の方が、TPAによる治療よりも、脳梗塞の発症から3カ月後に患者が修正版ランキンスケール(modified Rankin Scale;mRS)で症状がない(0点)か、症状があっても明らかな障害はない(1点)に分類される可能性の高いことが示されたという。アテネ国立カポディストリィアコ大学(ギリシャ)神経学分野教授のGeorgios Tsivgoulis氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に10月16日掲載された。 TNKは、脳梗塞の治療薬としてヨーロッパでは承認されているが、米国では未承認。現時点での欧州脳卒中機構(ESO)の緊急推奨では、非劣性を示したメタアナリシスの結果に基づき、発症から4.5時間未満の脳梗塞に対する治療では、TPAの代わりにTNK0.25mg/kgを使用しても良いとしている。これらのガイドラインの発表以降、さらに4件のランダム化比較試験(RCT)が実施され、追加の知見が得られている。 今回の研究では、現時点で入手可能な11件のRCTの結果を用いてシステマティックレビューとメタアナリシスを実施し、発症後4.5時間以内の脳梗塞の治療におけるTNK0.25mg/kgの有効性と安全性をTPAとの比較で検討した。これらのRCTには、TNKにより治療を受けた患者3,788人と、TPAによる治療を受けた患者3,757人が含まれていた。主要評価項目は、脳梗塞から3カ月後の「優れた機能的アウトカム」(mRSスコアが0〜1点)、副次評価項目は、脳梗塞から3カ月後の「良好な機能的アウトカム」(mRSスコアが0〜2点;2点=軽度の障害)、障害の軽減(mRSスコアが1点以上減少)、症候性頭蓋内出血、および死亡であった。 その結果、TNKによる治療を受けた群では、TPAによる治療を受けた群と比べて「優れた機能的アウトカム」を達成する可能性が5%高く(リスク比〔RR〕1.05、95%信頼区間〔CI〕1.01〜1.10、P=0.012)、障害が軽減している可能性も高い(共通オッズ比1.10、95%CI 1.01〜1.19、P=0.034)ことが示された。しかし、「良好な機能的アウトカム」を達成する可能性については、両群間で同等であった(RR 1.03、95%CI 0.99〜1.07、P=0.142)。また、症候性頭蓋内出血(同1.12、0.83〜1.53、P=0.456)、および死亡(同0.97、0.82〜1.15、P=0.727)のリスクについても有意差は認められなかった。 Tsivgoulis氏は、「われわれのメタアナリシスからは、TNKとTPAの両薬剤の安全性は同等で、脳卒中後の良好な回復の可能性を高めるが、TNKは、優れた回復をもたらす効果と障害軽減効果においては、TPAよりも優れている可能性の高いことが明らかになった」と述べている。その上で、「この結果は、脳梗塞患者の治療には、TPAよりもTNKを使用するべきだという主張を裏付ける結果だ」と話している。

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携帯電話の頻用で、CVDリスクが高まる

 携帯電話を頻用することで睡眠障害と心理的ストレスが高まり、心血管疾患(CVD)リスク増加につながる可能性があることが、新たな研究で示された。中国・広州の国立腎臓病臨床研究センターのYanjun Zhang氏らによる本研究は、The Canadian Journal of Cardiology誌オンライン版2024年7月22日号に掲載された。 研究者らは50万例以上が参加する大規模コホートである英国バイオバンクのデータを用い、CVDの既往歴のない44万4,027例を対象とした。携帯電話の定期的な使用は、少なくとも週1回の通話・受信と定義した。携帯電話の使用時間は、過去3ヵ月間の週平均(5分未満、5〜29分、30〜59分、1〜3時間、4〜6時間、6時間以上)を自己申告によって得た。主要評価項目は新規CVD(冠動脈性心疾患[CHD]、心房細動[AF]、心不全[HF]の複合)発症、副次評価項目は新規脳卒中、個別のCHD、AF、HF発症、および頸動脈内膜中膜厚(cIMT)発症 だった。 睡眠パターン、心理的ストレス、神経症の役割を調査するために媒介分析を行った。睡眠スコアは睡眠時間、不眠症、いびきなどの情報から過去の研究に基づいて推定、心理的ストレスの評価にはPHQ-4を使用した。ベースライン時の性別、年齢、居住地域、世帯収入、アルコール摂取、喫煙、身体活動、服薬などの共変量の情報を、アンケートまたはインタビューで収集した。 主な結果は以下のとおり。・平均年齢は56.1歳で、男性19万5,623人(44.1%)であった。携帯電話常用群は若年層、現喫煙者、都市在住者の割合が高く、高血圧と糖尿病の既往歴がある人の割合が低かった。・追跡期間中央値12.3年で5万6,181例(12.7%)がCVDを発症した。携帯電話常用群は非常用群と比較して、新規CVDリスクが有意に高く(ハザード比:1.04、95%信頼区間[CI]:1.02~1.06)、cIMTの増加も認められた(オッズ比:1.11、95%CI:1.04~1.18)。・常用群における週当たりの使用時間は、とくに現喫煙者(交互作用のp=0.001)および糖尿病患者(p=0.037)において、新規CVDリスクと正の相関関係を示した。・週当たりの使用時間と新規CVD発症との関係のうち、5.11%は睡眠パターン、11.5%は心理的ストレス、2.25%は神経症が媒介していた。 研究者らは、「携帯電話の週当たりの使用時間は、新規CVDリスクと正の相関関係にあった。これは睡眠不足、心理的ストレス、神経症によって一部を説明できる」としている。

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心筋梗塞の血栓溶解療法の時代を思い出す(解説:後藤信哉氏)

 1988年のLancet誌に掲載されたSecond International Study of Infarct Survival (ISIS-2) trialは、心筋梗塞の診療に劇的インパクトをもたらした。抗血小板薬アスピリン、線溶薬ストレプトキナーゼはともに急性心筋梗塞の院内死亡率を25%程度減少させ、両者の併用により死亡率はほぼ半減した。アスピリンはそのまま世界の標準治療になった。ストレプトキナーゼは重篤な出血合併症を増加させたため、出血リスクの少ない薬剤開発が模索された。ストレプトキナーゼにはフィブリン選択性がなかった。体内のフィブリンに結合し、プラスミン産生効果を発揮するt-PAに期待が集まった。フィブリン選択的、1回静注可能など多くの製剤が開発された。しかし、急性心筋梗塞では、薬剤と並行して進歩したカテーテル治療の普及により血栓溶解療法は廃れた。 脳梗塞領域は、1990年代の循環器内科の歴史をたどっている。t-PAフィブリン選択的に作用する線溶薬と期待されていたが、持続静注が必要であった。本研究では1回静注可能なtenecteplaseの非劣性が示された。脳梗塞急性期の再灌流療法により神経学的予後が改善されるインパクトは大きい。線溶薬としては早期に作用するフィブリン選択的薬剤なども開発されるかもしれない。しかし、心筋梗塞と同様に、カテーテル治療も普及するかもしれない。 脳梗塞治療が心筋梗塞治療を後追いしているように見え、今後の治療法の革新が期待される。

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血栓除去術は単純CT上の大梗塞に有効か?(解説:内山真一郎氏)

 発症後24時間以内の、単純CTで認めた大梗塞に血管内血栓除去術(IVT)が有効かどうかは証明されていない。 TESLA試験は、前方循環の大血管閉塞があり、単純CT上大梗塞(Alberta Stroke Program Early CT Score、ASPECT2~5)を認めた、発症後24時間以内の300症例を対象とした米国での多施設共同無作為化比較試験であったが、90日後の機能予後はIVT群と通常の内科的治療のみの対照群との間で有意差がなかったという結果であった。 単純CT上の大梗塞を対象とした試験としては、先にTENSION試験が行われていたが、TENSION試験では発症後11時間以内の症例に限定していたのに対してTESLA試験では半数が発症後12時間以上の症例であり、これらの症例では大梗塞による浮腫の影響がIVTの治療効果を弱めた可能性がある。 また、日本で行われたRESCUE Japan-LIMIT試験の二次解析では、ASPECT3以下の症例ではIVTの効果が示されなかったことから、ASPECTレベル別の治療効果もメタ解析により明らかにする必要がある。

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世界で年間約700万人が脳卒中により死亡、その数は増加傾向に

 気候変動と食生活の悪化によって、世界の脳卒中の発症率と死亡率が劇的に上昇していることが、オークランド工科大学(ニュージーランド)のValery Feigin氏らのグループによる研究で示された。2021年には世界で約1200万人が脳卒中を発症し、1990年から約70%増加していたことが明らかになったという。詳細は、「The Lancet Neurology」10月号に掲載された。 本研究によると、2021年には、脳卒中の既往歴がある人の数は9380万人、脳卒中の新規発症者数は1190万人、脳卒中による死者数は730万人であり、世界の死因としては、心筋梗塞、新型コロナウイルス感染症に次いで第3位であったという。 専門家は、脳卒中のほとんどは予防可能だとの見方を示す。論文の共著者の1人である米ワシントン大学の保健指標評価研究所(IHME)のCatherine Johnson氏は、「脳卒中の84%は23の修正可能なリスク因子に関連しており、次世代の脳卒中リスクの状況を変える大きなチャンスはある」と述べている。脳卒中のリスク因子は、大気汚染(気候変動によって悪化)、過体重、高血圧、喫煙、運動不足などであり、研究グループは、これらのリスク因子は全て、低減またはコントロール可能であると指摘している。 脳卒中に関連する死亡者数は何百万人にも上る一方で、脳卒中を起こした後に重度の障害が残る患者も少なくない。今回の研究からは、脳卒中によって失われた健康寿命の年数(障害調整生存年;DALY)は、1990年から2021年にかけて32.2%増加していたことも明らかになった。 では、なぜ脳卒中がここまで増加したのだろうか。研究グループの分析によると、多くの脳卒中のリスク因子に人々がさらされる頻度が上昇し続けていることが原因である可能性があるという。本研究では、1990年から2021年までの間に、高BMI、気温の上昇、加糖飲料の摂取、運動不足、収縮期血圧高値、ω-6多価不飽和脂肪酸が少ない食事に関連してDALYが大幅に増加したことが示された(増加の幅は同順で、88.2%、72.4%、23.4%、11.3%。6.7%、5.3%)。 Johnson氏らは、気温の上昇は、もう1つの脳卒中のリスク因子である大気汚染の悪化を意味していると説明する。同氏らは、「暑くてスモッグの多い日が脳卒中リスクに与える影響を最も強く受けるのは貧しい国である可能性が高く、その影響は気候変動によってさらに悪化し得る」と指摘する。実際、出血性脳卒中のリスクに関しては、現在、汚染された空気を吸い込むことは、喫煙と同程度のリスクをもたらすと考えられているという。脳卒中全体に占める出血性脳卒中の割合は約15%で、虚血性脳卒中(脳梗塞)と比べると大幅に低いにもかかわらず、世界のあらゆる脳卒中に関連した死亡や障害の5割が出血性脳卒中に起因するという。 「脳卒中に関連した健康被害は、アジアやサハラ以南のアフリカ(サブサハラ・アフリカ)で特に大きい。こうした状況は、管理されていないリスク因子、特にコントロール不良の高血圧や、若年成人における肥満や2型糖尿病の増加といった負担の増大と、これらの地域における脳卒中の予防およびケアサービスの不足によって生まれている」とJohnson氏は指摘する。 しかし、こうした状況を変えることは可能であるとJohnson氏は主張する。例えば、大気汚染は気温上昇に密接に関連するため、「緊急の気候変動対策と大気汚染を減らす取り組みの重要性は極めて高い」と言う。さらに同氏は、「高血糖や加糖飲料の多い食事などのリスク因子にさらされる機会が増えているため、肥満やメタボリックシンドロームに照準を合わせた介入が急務である」と述べている。

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