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1.

GLP-1受容体作動薬、自己免疫疾患患者の死亡・血栓リスク低下と関連

 肥満を伴う関節リウマチ、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患などの自己免疫疾患の患者の中で、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)が処方されている人は、死亡リスクや血栓症のリスクが低いという研究結果が報告された。米フロリダ大学のAmy Sheer氏らが、フロリダ州などの3州にある14の医療機関の電子カルテ情報を用いて検討したもので、詳細は6月6日付で「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に掲載された。 GLP-1RAは、2型糖尿病の血糖管理のほかに減量目的でも用いられている。肥満では、全身性の慢性炎症や血管内皮機能の低下により血栓が形成されやすいことが知られていて、また自己免疫疾患も炎症反応を強めるために、肥満を伴う自己免疫疾患患者では、心血管イベントや血栓イベントのリスクが高いと考えられている。Sheer氏らは、2014~2024年の電子カルテデータから、自己免疫疾患と肥満のある18歳以上の成人患者を抽出。背景因子を傾向スコアでマッチングさせ、GLP-1RAが処方されていた患者と処方されていない患者、各群1万3,204人のデータセットを作成し、全死亡や心血管・血栓イベントのリスクを比較した。解析対象者全体の平均年齢は54.7±14.5歳、女性73.4%で、BMIは37だった。 解析の結果、GLP-1RAの処方は、全死亡リスクが44%低いことと関連していた(ハザード比〔HR〕0.56〔95%信頼区間0.47~0.66〕)。また、脳卒中・一過性脳虚血発作(HR0.87〔同0.76~0.99〕)、肺塞栓症(HR0.69〔0.56~0.86〕)、静脈血栓塞栓症(HR0.83〔0.72~0.95〕)、救急外来受診(HR0.79〔0.75~0.83〕)のリスクも有意に低かった。一方、心筋梗塞リスクについては有意な低下は認められなかった。 この結果について、米マサチューセッツ総合病院のFatima Cody Stanford氏は、「肥満と自己免疫疾患を併発している患者において、全死因リスクが44%減少したという結果は注目すべき発見だ」と述べている。米国心臓協会(AHA)ライフスタイル・心血管代謝評議会の一員でもある同氏は、「肥満の専門医・研究者として普段から複雑な炎症性疾患を抱える患者を診察している立場からすると、今回の研究結果はわれわれが抱いていた臨床疑問と期待に答えるものだ。つまり、GLP-1RAのメリットは血糖コントロールや体重減少にとどまらず、最もリスクの高い自己免疫疾患患者の一部において、疾患の経過そのものを変える可能性があるということだ」と話している。 研究者らは、この結果について、「GLP-1RAは免疫系を調節し、血液凝固能を抑制することが知られている。今回の研究結果はそのような作用によって説明できるのではないか」と述べている。またSheer氏は、「既存の自己免疫疾患治療薬とGLP-1RAの併用効果に期待される。過体重や肥満を伴う自己免疫疾患患者にとって本研究は、処方薬が心血管疾患のリスク軽減にもつながっている可能性を示す、希望の兆しとも言えるのではないか」としている。

2.

新型コロナ・インフルワクチンの同時接種で有害事象は増えず

 この秋は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とインフルエンザの対策が一度で済むかもしれない。新たな研究で、新型コロナウイルスワクチン(以下、新型コロナワクチン)とインフルエンザワクチンを同時接種しても、インフルエンザワクチンのみを接種した場合と比べて安全上のリスクは増加しないことが示された。米ワシントン大学医学部および米VA St. Louis Health Care SystemのYan Xie氏らによるこの研究は、「Annals of Internal Medicine」に6月30日掲載された。 この研究では、米国の退役軍人(VA)約250万人の電子医療記録データを用いて、新型コロナワクチン(二価ワクチン、XBB対応ワクチン、およびKP対応ワクチン)とインフルエンザワクチンを同時接種した場合とインフルエンザワクチンを単独接種した場合とで、接種後90日以内の有害事象の発生について比較・評価した。2022年9月1日から2025年8月26日の間に70万5,124人が2種類のワクチンを同時接種し、181万3,205人はインフルエンザワクチンのみを接種していた。 有害事象は46種類を対象とし、重症度に応じて、1)重症で生命を脅かす事象(Tier 1)、2)臨床的に重要な事象(Tier 2)、3)比較的軽度または自己限定性の事象(Tier 3)の3段階に分類した。有害事象の具体的な例は、Tier 1では脳静脈洞血栓症や心筋梗塞、肺塞栓症など、Tier 2では心房細動や心房粗動、深部静脈血栓症など、Tier 3ではベル麻痺、失神、耳鳴りなどである。 解析の結果、重症度のレベルにかかわりなく、有害事象リスクについて同時接種群と単独接種群の間に統計学的な有意差は認められなかった。リスク比は、Tier 1で1.03(95%信頼区間0.99~1.09)、Tier 2で0.99(同0.96~1.03)、Tier 3で0.99(同0.96~1.02)であった。3種類の新型コロナワクチンが使用された期間別に解析しても、同時接種は有害事象のリスク増加と関連していなかった。 著者らは、「今回の結果は、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンを同時接種することの短期的な安全性を支持するものであり、今後のワクチン接種に関する推奨を策定する際にも役立つ可能性がある」と述べている。

3.

がん患者の肺塞栓症診断、YEARSアルゴリズムは有効か?/JAMA

 がん患者における肺塞栓症(PE)の診断戦略について、YEARSアルゴリズムの使用はCT肺動脈造影(CTPA)のみ使用の場合と安全性は同等であることが、オランダ・ライデン大学医療センターのBram Akerboom氏らHydra Study Investigatorsが実施した研究者主導の無作為化非盲検非劣性試験「Hydra試験」の結果で示された。同試験において22%の患者がYEARSアルゴリズムの使用でCTPAの実施を回避できたことも示された。YEARSアルゴリズムは、急性PEを除外する安全かつ効率的な方法とされているが、がん患者における精度に関する確固たるエビデンスは不足しており、現行のガイドラインでは直接CTPAを行うことが推奨されている。JAMA誌オンライン版2026年7月12日号掲載の報告。活動性がんを有する急性PEが疑われる患者を無作為化 Hydra試験はオランダ、イタリア、スイス、ベルギー、フランス、スペインの21施設で実施され、対象は、活動性がん(皮膚の基底細胞がんまたは扁平上皮がんを除く)を有し、臨床的に急性PEが疑われる18歳以上の患者であった。 活動性がんの定義は、研究登録6ヵ月以内の組織学的な確定診断、または臨床医により強く疑われたがんの診断、登録時点でがんの治療中、無作為化前6ヵ月以内にがん治療が行われた、または転移病変の存在とされた。 研究グループは、適格患者を、YEARSアルゴリズム(YEARS項目の評価、D-ダイマーの測定、およびリスクに応じたCTPAの実施で構成される)に基づく診断群(352例)と、CTPAのみによる診断群(346例)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、ベースラインでPEが除外された患者における無作為化後90日以内に発生した、症候性PE、症候性の上肢または下肢の深部静脈血栓症(DVT)(これらは確定されたもののみ)、あるいはPE関連死(関連が疑われたものを含む)で、非劣性マージンはper-protocol解析による絶対リスク群間差の片側99.9%信頼区間(CI)の上限2.6%とした。 主要な副次評価項目は、CTPA陰性割合(実施されたCTPA件数のうちCTPAの結果が陰性であった割合)であった。YEARSアルゴリズムはCTPA単独に非劣性 2019年8月22日~2025年5月23日に、計698例が無作為化され(YEARS群352例、CTPA群346例)、最終追跡調査日は2025年8月21日であった。患者背景は、年齢中央値65歳(四分位範囲:56~72)、女性が422例(60%)で、104例(15%)がベースラインでPEと診断され、1例が追跡不能となった。 per-protocol解析対象集団は555例であった。主要評価項目のイベントは、YEARS群で282例中5例(1.8%)、CTPA群で273例中15例(5.5%)に認められた。絶対リスク群間差は-3.7%(99.9%CI:-8.8~1.4)であり、YEARS群のCTPA群に対する非劣性が示された(非劣性のp=3.4×10-5)。 intention-to-diagnosis解析では、YEARS群とCTPA単独群の絶対リスク群間差は-2.6%であった(99.9%CI:-7.5~2.4、非劣性のp=5.9×10-4)。 YEARS群において352例中77例(22%)は、CTPAを実施せずにPEの診断が行われた。CTPA陰性割合は、両群とも83%であり差はなかった(p=0.93)。

4.

がん関連VTEのDOACによる出血リスク、新たな予測モデルが有用か

 直接経口抗凝固薬(DOAC)治療を受けるがん関連静脈血栓塞栓症(VTE)患者を対象に開発された出血リスク予測モデル「ONCO-DOAC BLEEDスコア」は、既存の出血リスクスコアと比較して大出血リスクを良好に層別化できることが示された。本結果は京都府立医科大学循環器内科の長井 智之氏や中西 直彦氏ら(COMMAND VTE Registry-2)が報告し、JACC:CardioOncology誌2026年6月号に掲載された。  本研究グループは、国内31施設において2015年1月~2020年8月の期間に、急性の症候性の肺塞栓症および深部静脈血栓症と診断された患者5,197例を登録した多施設共同の観察研究「COMMAND VTE Registry-2」のデータを使用。VTE診断時に活動性がんを有していた1,507例のうち、経口抗凝固療法未実施例、ワルファリン投与例、血栓溶解療法施行例を除外した1,166例を開発コホートとして作成、解析した。主要評価項目は、大出血(国際血栓止血学会[ISTH]基準)の発生とした。 多変量Cox比例ハザード解析より、大出血と独立して関連する予測因子(各1点)として、(1)大出血の既往、(2)慢性腎臓病(CKD)、(3)NSAIDsの使用、(4)遠隔転移のあるがん、(5)末期がん、(6)上部消化管がん、(7)膵臓がん、(8)子宮がんの8項目を特定し、「ONCO-DOAC BLEEDスコア」を構築。合計点に基づき、低リスク(0点)、中リスク(1点)、高リスク(2点以上)の3群に分類した。さらに、国内臨床試験のONCO DVT試験(601例)およびONCO PE試験(178例)の計779例を検証コホートとした。  主な結果は以下のとおり。・開発コホート(1,166例、追跡期間中央値163日)において127例(10.9%)が大出血を経験し、構築されたスコアの1年累積大出血発現率は低リスク群5.7%、中リスク群8.9%、高リスク群21.2%と、有意なリスク層別化が示された(p<0.001[Gray's test])。 ・開発コホートでのONCO-DOAC BLEEDスコアの識別能(C-index)は、Harrell's C-indexで0.68(95%信頼区間[CI]:0.62~0.73)、Uno's C-indexで0.67(95%CI:0.62~0.72)を示し、既存スコア(VTE-BLEED:0.55、RIETE:0.58、CAT-BLEED:0.58、Perform:0.54)と比較して有意に高い識別能を発揮した(p値はそれぞれ<0.001、0.004、0.002、<0.001)。 ・検証コホート(779例、うち53例が大出血を経験)においても、1年累積大出血発現率は低リスク群6.6%、中リスク群8.6%、高リスク群18.2%と段階的な上昇を示した(p=0.003[Gray's test])。 ・検証コホートにおける識別能はHarrell's C-indexで0.62(95%CI:0.54~0.70)、Uno's C-indexで0.63(95%CI:0.54~0.71)で、既存スコア(VTE-BLEED:0.60、RIETE:0.60、CAT-BLEED:0.55、Perform:0.53)と同等以上の予測能を維持し、キャリブレーションにより予測リスクと実際の観察イベント発生率との良好な一致が確認された。  研究者らは「ONCO-DOAC BLEEDスコアは、DOAC治療中のがん関連VTE患者での大出血リスク予測において、臨床的に意義のある層別化を可能にし、日常診療における個別化された治療意思決定をサポートしうる」とし、「本スコアを用いて高リスク患者を特定することは、より綿密な臨床フォローアップや併用薬(とくにNSAIDs)の見直し、病状モニタリングにつながり、安全な長期抗凝固療法の継続と最適ながん治療・VTE管理の両立に貢献することが期待される。ただし、本研究コホートは日本人のみで構成されているため、今後は欧米などほかの民族集団における外部検証を進める必要がある」と結論付けている。

5.

心血管死は暑さより寒さと関連

 高齢者や心臓に病気を抱えている人は、暑さよりも寒さに注意すべきかもしれない。心血管死(心筋梗塞や脳卒中などによる死亡)のリスクは、暑さよりも寒さとの関連が強いとする研究結果が報告された。リスクが最低となるのは約23℃で、心血管死のおよそ8割は、それ以下の気温の時に発生しているという。米マウントサイナイ・アイカーン医科大学のPedro Rafael Vieira de Oliveira Salerno氏らが米国心臓病学会年次学術集会(ACC.26、3月28~30日、ニューオーリンズ)で発表し、また、研究内容が3月24日に「American Journal of Preventive Cardiology」に短報として掲載された。 発表によると、心血管死の16件に1件は寒さと関連付けられたのに対して、暑さと関連付けられた心血管死は300件に1件にすぎなかった。Salerno氏は、「熱波が健康問題の焦点となっている現在、多くの人にとって意外かもしれないが、長期的に見ると気温の低さの方が、はるかに多くの心血管死を引き起こしている」と話している。 Salerno氏らは、米国の25歳超の人口の81.9%が含まれる819郡で2000~2020年の20年間で発生した、25歳以上の心血管死1418万68件を、各郡の月平均気温と関連付けた解析を行った。心血管死は、国際疾病分類(ICD-10)のコードI00~I99に該当する疾患(心筋梗塞、心不全、不整脈、心筋症、弁膜症、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、大動脈解離、肺塞栓症、心膜炎など)による死亡と定義した。 解析の結果、心血管死のリスクが最低となる気温は23.2℃であった。暑さに関連した死亡は1年間で2,242件(10万人年当たり1.3)と推定されるのに対して、寒さに関連した死亡は同4万2,735件(25.6)と推定された。これらのデータを基にした検討の結果、心血管死全体の6.3%は寒さに伴い発生し、0.33%は暑さに伴い発生したものと推定された。 この結果について研究者らは、寒さは血圧を高め、心臓の酸素需要を上昇させる傾向があり、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高める可能性があると述べている。またSalerno氏は、「臨床医は心血管疾患の発症には季節的なパターンがあるものだと片付けてしまいがちだが、われわれの研究結果は、寒さへの曝露が人口レベルでどの程度の影響を及ぼすのか、定量的に把握することを可能にしている」と本研究の意義を述べている。さらに同氏は、「異常気象による極端な寒さだけが問題なのではなく、日常的な寒さへの曝露でさえ、脆弱な患者にとっては心血管死のリスクを高める可能性がある」と強調している。

6.

静脈インターベンションの世界からの新しいエビデンスの登場―詰まった静脈もやはり広げればよいのか?(解説:山下侑吾氏)

 循環器医や放射線科医を中心とするインターベンション医は、これまで「動脈」を対象とした血管内治療の世界を大きく切り開いてきた。長年にわたる貢献により同領域は高度に発展し、現在では一定の成熟を得た領域となったともいえる。一方で、同じ血管である「静脈」を対象とした血管内治療は、未知な部分も多く、今後の発展が望まれる領域といえる。近年、静脈領域としては、肺塞栓症や深部静脈血栓症に対するさまざまな血栓吸引デバイスが世界中で普及しつつあり、これまで同領域では、ほとんど皆無であったランダム化比較介入試験も報告され、信頼性の高いエビデンスが現在進行形で蓄積しつつある。C-TRACT試験は、このような静脈インターベンションの世界での新しい歴史を切り開く重要なエビデンスと考えられる。筆者自身も、循環器内科のインターベンション医として、普段から冠動脈・末梢動脈・肺動脈などの全身の動脈の血管内治療に携わっているが、時として静脈の血管内治療が必要となることがある。しかしながら、カテーテル室の現場ではその適応や介入方法を含めて悩むことも多く、本試験の結果は、心より待ち望んでいたエビデンスであった。 深部静脈血栓症は、慢性期の後遺症として血栓後症候群(post-thrombotic syndrome:PTS)を呈することがある。大半は、軽度の浮腫や疼痛の残存といった軽症例と考えられるが、時として強い症状を呈することがあり、患者のQOLを著しく下げる可能性もある。これまでの治療法としては圧迫療法などの保存的治療であったが、高度の狭窄および閉塞した静脈がある場合には、当該血管を物理的に再疎通させる治療が有用と考えられ、そのコンセプトは「open vein hypothesis」という形で広く知られている。しかしながら、この意義を、大規模なランダム化比較介入試験で直接的に検証されたことはなかった。C-TRACT試験は、これまで主として保存的治療で対応されていたPTSに対して、病態の根幹である静脈閉塞に直接介入するという「open vein hypothesis」の妥当性を検証した意義深い試験といえる。多くの専門家がおそらく有用であろうと思いつつも意外に立証されていなかった治療介入は、心血管領域ではよくあるが、本試験は静脈インターベンションの世界でのそのような疑問に真正面から取り組んだものともいえる。 本試験の結果自体は、ステントによる血管内治療が、保存的治療と比較してPTS症状やQOLの改善に有用であることが示されたpositiveなものであった。医学的な価値として「open vein hypothesis」を臨床的に支持する結果を、大規模なランダム化比較介入試験にて初めて示した点が挙げられる。一方で、血管内治療は6ヵ月時点での重症度の評価スコアであるVenous Clinical Severity Score(VCSS)を有意に低下させたが、その低減は約2点と比較的控えめであった。この結果は、統計学的には有意であるが、臨床的なインパクトとしては限定的と解釈する余地もある。しかしながら、本病態のQOL指標であるVEINES-QOLおよび包括的健康指標であるSF-36においては、いずれも臨床的に意味のある改善幅であり、患者の日常生活機能や主観的健康状態に対する影響は十分な恩恵があることが示された。すなわち、本治療の本質的価値は単なるスコアの改善ではなく、患者が実際に感じる生活の質の向上にあると考えるべきであろう。この視点は、今後のPTS治療戦略を考えるうえできわめて重要である。 本試験を日常臨床に応用する際にはいくつかの注意点もある。本試験の対象患者は、腸骨静脈に閉塞もしくは高度狭窄を有する中等度から重度のPTS患者に限定されており、比較的選択された集団である。このため、軽症例や腸骨静脈に相応の病変を伴わない症例に対して本結果を一般化することは適切ではない。また、本試験は経験豊富な施設において実施されており、手技の再現性や外的妥当性についても慎重な評価が求められる。また、安全性の観点では、血管内治療群において出血イベントの増加が有意に認められた点は無視できない。多くは非大出血であったものの、抗血栓療法の強化に伴うと予想される出血リスクの増大は、臨床的に無視できないトレードオフである。この点は、適応判断の際には十分に考慮されるべきであり、すべての静脈をもれなくopenさせることが適切であるかは慎重であるべきである。 上記の注意点を有するものの、本試験はPTS患者への静脈インターベンションが有用であることを高いエビデンスとして示し、新しい歴史を切り開く価値あるものと考えられる。まったくの奇遇であるが、筆者自身が本稿を執筆している当日に、下大静脈の完全閉塞により高度の下肢浮腫に大変困っている患者に大静脈ステントを留置する静脈インターベンションを実施した。治療介入直後より下肢静脈圧の著明な改善とともに下肢浮腫の改善も認め、患者はQOLの改善に対して大変なご利益を感じられた。適切な症例への適切な静脈インターベンションによる介入は、患者QOLの視点より重要であることを改めて実感した。本試験は、筆者のそのような主観的な感覚を、ランダム化比較介入試験という客観的な形で示してくれたこの上ない朗報である。今後は、さらなる長期的な予後の検証や最適な抗血栓療法の確立、さらには実臨床でのさまざまな患者への適応を通して、本治療の真の臨床的価値がより明確になることが期待される。

7.

中等度リスク肺塞栓症、超音波補助カテーテル血栓溶解療法が有望/NEJM

 中等度リスクの肺塞栓症において、抗凝固療法への超音波補助カテーテル血栓溶解療法の併用により、抗凝固療法単独と比較して、7日以内の肺塞栓症関連死、心肺の非代償状態または虚脱、肺塞栓症の症候性再発の複合のリスクが有意に低下し、大出血のリスクには差がないことが、米国・マサチューセッツ総合病院のKenneth Rosenfield氏らHI-PEITHO Investigatorsが行った「HI-PEITHO試験」の結果で示された。中等度リスクの急性期肺塞栓症の治療では、静脈内血栓溶解療法は循環虚脱を予防するが、大出血や脳卒中のリスクを増加させることが、大規模無作為化試験で示されている。高周波・低出力の超音波エネルギーは血栓溶解作用を増強する可能性があり、tPA(アルテプラーゼ)によるカテーテル血栓溶解療法の補助として超音波を用いるデバイスは、有効性を保持しつつアルテプラーゼの投与量を減らし、注入時間を短縮する可能性が示されていた。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年3月28日号で報告された。米国と欧州の無作為化試験 HI-PEITHO試験は、米国と欧州の59施設で実施したアダプティブデザインを用いた市販後非盲検(主要アウトカムの評価は盲検下)無作為化試験であり、2021年8月~2025年7月に参加者を登録した(Boston Scientificの助成を受けた)。 対象は、年齢18~80歳、中等度リスク肺塞栓症(右室拡張末期径/左室拡張末期径の比が1.0以上、かつトロポニン値の上昇)と診断され、心肺機能の指標(収縮期血圧110mmHg以下、心拍数100回/分以上、呼吸数20回/分超)のうち2つ以上満たす患者であった。 被験者を、アルテプラーゼを用いた超音波補助カテーテル血栓溶解療法(EkoSonic血管内システム[Boston Scientific製])+抗凝固療法を受ける群(介入群)または抗凝固療法のみの通常治療を受ける群(対照群)に、1対1の比率で無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、7日以内の肺塞栓症関連死、心肺の非代償状態または虚脱、肺塞栓症の症候性再発の複合とした。主に心肺非代償状態/虚脱のリスクが低下 ITT集団として544例(平均[±SD]年齢58.2[±13.5]歳、女性42.6%)を登録し、介入群に273例、対照群に271例を割り付けた。急性期肺塞栓症関連症状の平均持続期間は3.7(±3.4)日だった。 7日の時点での主要アウトカムのイベントは、対照群で28例(10.3%、95%信頼区間[CI]:7.2~14.5)に発現したのに対し、介入群では11例(4.0%、95%CI:2.3~7.1)と有意に少なかった(相対リスク:0.39、95%CI:0.20~0.77、p=0.005)。 主要アウトカムの構成要素別の解析では、主に心肺非代償状態/虚脱(介入群3.7%vs.対照群10.3%、相対リスク:0.4[95%CI:0.2~0.7])のリスクが介入群で大きく低下しており、肺塞栓症関連死(1.1%vs.0.4%、3.0[0.3~28.5])および肺塞栓症の症候性再発(0.4%vs.0.4%、1.0[0.1~15.8])については両群間に差を認めなかった。重篤な有害事象にも差はない 無作為化後7日以内の大出血は、介入群で11例(4.1%)、対照群で6例(2.2%)にみられた(p=0.32)。また、30日以内に大出血を認めたのは、それぞれ11例(4.1%)および8例(3.0%)であった(p=0.64)。 無作為化後30日までの重篤な有害事象(介入群14.8%vs.対照群16.2%、相対リスク:0.9[95%CI:0.6~1.3]、p=0.64)の発生率についても、両群間に有意な差を認めなかった。また、両群とも、頭蓋内出血は発生しなかった。長期アウトカムの追跡調査が進行中 著者は、「参加施設の試験プロトコルの順守状況がきわめて優れていたことを踏まえると、本試験の結果は、この介入法が中等度リスクの患者集団において良好な有効性と安全性プロファイルを有することを示唆する」「肺塞栓症後の長期アウトカムへの超音波補助カテーテル血栓溶解療法の潜在的な影響を評価するために、現在、12ヵ月間にわたる追跡調査が進行中である」としている。 また、「イベントの発生頻度が全体的に低かったため、本試験では、特定の患者サブグループにおいて治療効果を比較したり、2つの治療群間の出血性合併症の差異について確固たる結論を導き出すのに十分な統計学的検出力は得られなかった」と付言している。

8.

テストステロン補充療法は膝関節全置換術後の合併症リスクを高める?

 米国でテストステロン補充療法(TRT)の利用者が急増する中、膝関節全置換術(TKA)を受ける患者にとっては、このホルモンがより高いリスクをもたらす可能性があるようだ。新たな研究で、手術前の1年以内にTRTを受けていた患者は、術後に感染症、血栓、腎障害、肺炎、膝関節の不安定性などの合併症の発症リスクが高いことが示された。米Hospital for Special Surgeryの整形外科医であるBrian Chalmers氏らによるこの研究結果は、米国整形外科学会(AAOS)年次総会(AAOS 2026、3月2〜6日、米ニューオーリンズ)で発表された。 研究グループによると、テストステロン補充療法の処方件数は2019年の730万件から2024年には1100万件超へと増加している。男女ともに、健康的な老化の促進、筋肉・骨の増強、性欲の改善を目的としてこのホルモンを使用しているという。一方で、テストステロンは、血栓形成や免疫機能、骨代謝にも影響するため、手術後の回復を複雑にする可能性がある。Chalmers氏は、「テストステロンを使用する人がかつてないほど増えており、また、TKAの件数は2030年までに年間100万件を超えると予測されている。そこでわれわれは、TRTが術後の患者に与える影響についてより深く調べることにした」とニュースリリースでコメントした。 今回の研究では、米国の電子カルテ全国データベース(TriNetX)のデータを用いて、2020年2月以前にTKAを受け、術後5年間の追跡データがそろう成人1万3,250人を対象に、TKA前のTRTと術後合併症との関連を検討した。 その結果、術後90日時点において、TRTを受けた群と受けていない群の合併症の発生率は、肺塞栓症で1.6%と1.2%、肺炎で3.3%と1.9%、急性腎障害で4.2%と2.9%、敗血症で1.9%と1.1%であった。また、術後1年時点では、肺塞栓症で2.6%と2.0%、深部静脈血栓症で4.5%と3.3%、心血管関連イベントで3.0%と2.4%、肺炎で6.0%と4.0%、急性腎障害で7.9%と5.2%、敗血症で2.4%と0.9%であり、TRT群での合併症の発生率は高いままだった。さらに、人工関節そのものに関わる合併症のリスクも高まっており、術後5年にわたって関節感染症、骨折、インプラントの緩み、膝の不安定性、再手術の発生率が高いことが示された。 研究グループは、「テストステロンは血栓リスクの上昇と関連することが知られているが、このホルモンがTKAにどのように影響するかを解明するには、さらなる研究が必要だ」と指摘している。研究グループの一員である米ワイル・コーネル・メディスンのArsen Omurzakov氏は、「本研究から、テストステロンは、骨が時間をかけて自然に再構築される過程にも影響を与えることが示唆された」とプレスリリースで述べている。Arsen Omurzakov氏の双子の兄弟で、同じく研究グループの一員である米ケース・ウェスタン・リザーブ大学のArgen Omurzakov氏は、「テストステロン値は免疫系だけでなく、免疫系・治癒・その他の重要な生体機能に関わるマイクロバイオームにも影響する可能性がある」と付け加えている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

9.

肺塞栓症の鑑別【日常診療アップグレード】第53回

肺塞栓症の鑑別問題45歳男性。2日前から間欠的に胸痛があり救急外来を受診した。痛みの持続は数分間で、発熱や咳、悪寒、下肢の腫脹はない。痛みは深呼吸で悪化する。既往歴はとくになし。薬剤歴はない。バイタルサインは体温36.8℃、血圧136/76mmHg、脈拍数88/分、SpO2 98%(室内気)である。肺塞栓症の可能性が低いため、肺塞栓症に関する追加検査は行わなかった。

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急性静脈血栓塞栓症の出血リスク、アピキサバンvs.リバーロキサバン/NEJM

 急性静脈血栓塞栓症の患者において、3ヵ月の治療期間における臨床的に重要な出血リスクは、アピキサバン投与群がリバーロキサバン投与群よりも有意に低下したことが、カナダ・オタワ大学のLana A. Castellucci氏らCOBRRA Trial Investigatorsによる検討で示された。アピキサバンおよびリバーロキサバンは、急性静脈血栓塞栓症の治療でよく用いられる経口抗凝固薬であるが、両薬の出血リスクの差については不明なままであった。NEJM誌2026年3月12日号掲載の報告。3ヵ月の投与中に発生した臨床的に重要な出血を評価 研究グループは、急性静脈血栓塞栓症の患者におけるアピキサバンとリバーロキサバンを比較するプラグマティックな多国間共同(カナダ、オーストラリア、アイルランドが参加)前向き無作為化非盲検エンドポイント盲検化試験を行った。 急性症候性肺塞栓症または近位深部静脈血栓症を有する患者を適格とし、アピキサバン群(10mgを1日2回7日間投与し、その後は5mgを1日2回投与)またはリバーロキサバン群(15mgを1日2回21日間投与し、その後は20mgを1日1回投与)に1対1の割合で無作為に割り付け、3ヵ月間投与した。 主要アウトカムは、3ヵ月の試験期間中に発生した臨床的に重要な出血で、大出血または臨床的に重要な非大出血の複合とした(出血の定義はInternational Society on Thrombosis and Haemostasisによる)。 副次アウトカムは、全死因死亡などであった。アピキサバン群、相対リスク0.46で有意に低下 2017年12月13日~2025年1月23日に3ヵ国の32施設で2,760例が無作為化された(アピキサバン群1,370例、リバーロキサバン群1,390例)。ITT集団はアピキサバン群1,345例、リバーロキサバン群1,355例であった。ベースラインの両群の特性は均衡が取れており、全体の平均年齢は58.3歳、女性が1,175例(43.5%)。多くの患者(2,087例、77.3%)が誘因のない静脈血栓塞栓症であった。 ITT解析において、主要アウトカムのイベント発生は、アピキサバン群44/1,345例(3.3%)、リバーロキサバン群96/1,355例(7.1%)であった(相対リスク[RR]:0.46、95%信頼区間[CI]:0.33~0.65、p<0.001)。 全死因死亡は、アピキサバン群1/1,345例(0.1%)、リバーロキサバン群4/1,355例(0.3%)で報告された(RR:0.25、95%CI:0.03~2.26)。 出血または静脈血栓塞栓症に関連しない重篤な有害事象は、アピキサバン群36/1,345例(2.7%)、リバーロキサバン群30/1,355例(2.2%)で報告された。

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日本の心房細動患者、1年後の死亡・脳卒中・血栓塞栓症の発生率は?

 日本の心房細動患者は、経口抗凝固薬の使用率が81%と高く、1年後の全死亡率は0.1%と低く、脳卒中/血栓塞栓症の発生率も0.1%と低いことが、APHRS-AFレジストリ(Asia-Pacific Heart Rhythm Society Atrial Fibrillation Registry)の日本人における1年時の解析で示された。日本医科大学の淀川 顕司氏らがJournal of Arrhythmia誌2026年2月8日号で発表した。 APHRS-AFレジストリはアジアの大都市圏における前向き研究で、心房細動患者のベースライン特性、治療、臨床アウトカムについて重要な情報を提供する。今回、本レジストリに登録された日本人患者の1年間の追跡調査データを解析した。 主な結果は以下のとおり。・登録された4,666例のうち、794例が2015~17年に日本の主な循環器センター28施設から登録された。平均年齢は65.7歳、男性が69.0%で、主な併存疾患は高血圧(37.5%)、脂質異常症(29.0%)、心不全(15.9%)、糖尿病(15.0%)であった。平均CHADS2スコアは1.0、CHA2DS2-VAScスコアは2.0、HAS-BLEDスコアは1.1であった。・登録時の経口抗凝固薬の使用率は81%で、そのうち7%がビタミンK拮抗薬、74%が直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)を処方されていた。患者の57.8%がカテーテルアブレーション施行予定であった。・1年間の追跡調査を実施した743例において、1年全死亡率は0.1%(1例、心不全)で、脳卒中/血栓塞栓症発生率も0.1%(1例、肺塞栓症)であった。大出血イベントは0.7%(5例[頭蓋内出血3例、下部消化管出血1例、軟部組織出血1例])に認められた。

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ESR1変異陽性HR+/HER2-乳がんへの経口SERD「イムルリオ錠200mg」【最新!DI情報】第58回

ESR1変異陽性HR+/HER2-乳がんへの経口SERD「イムルリオ錠200mg」今回は、抗エストロゲン剤/抗悪性腫瘍剤「イムルネストラントトシル酸塩(商品名:イムルリオ錠200mg、製造販売元:日本イーライリリー)」を紹介します。本剤は、経口投与が可能な選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)であり、乳がん患者の通院や投与に伴う身体的・時間的な負担の軽減が期待されています。<効能・効果>内分泌療法後に増悪したESR1遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がんの適応で、2025年12月22日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはイムルネストラントとして1日1回400mgを空腹時に経口投与します。なお、患者の状態により適宜減量します。<安全性>副作用として、下痢、疲労(いずれも10%以上)、悪心、嘔吐、便秘、腹痛、食欲減退、関節および筋骨格痛、頭痛、ほてり、ALT増加、AST増加(いずれも1~10%未満)、背部痛、静脈血栓症に関連する事象(肺塞栓症)(いずれも1%未満)、咳嗽、トリグリセリド増加(いずれも頻度不明)があります。本剤は生殖能力に有害な影響を及ぼす可能性があるため、妊娠する可能性のある女性に対し、本剤投与中および最終投与後1週間において避妊する必要性および適切な避妊法について説明する必要があります。また、男性に対しては、本剤投与中および最終投与後1週間においてバリア法(コンドーム)を用いて避妊する必要性について説明する必要があります。なお、妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与禁忌です。<患者さんへの指導例>1.この薬は、選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)です。内分泌療法後のESR1遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性/HER2陰性の乳がんに用いられます。2.エストロゲン受容体(ER)の分解を促進し、エストロゲンのERへの結合を阻害することにより乳がん細胞の増殖を抑えます。3.この薬は、食事とともに服用すると血中濃度が上昇することがあるので、本剤服用の1時間前から服用後2時間は食事を避けてください。4.妊婦または妊娠している可能性のある人はこの薬を使用することはできません。5.妊娠する可能性のある女性および男性は、この薬の投与期間中および最終投与後1週間は必ず避妊してください。<ここがポイント!>乳がんは、がん細胞内部に発現するホルモン受容体(HR)の発現と、がん細胞表面に発現するHER2タンパクの過剰発現またはHER2遺伝子の増幅の有無により、「HR陽性/HER2陰性」、「HR陽性/HER2陽性」、「HR陰性/HER2陽性」「トリプルネガティブ(HR陰性/HER2陰性)」の4つのサブタイプに分類されます。このうち、「HR陽性/HER2陰性」は、乳がん患者の約70%を占める最も頻度の高いサブタイプです。このタイプに対しては、ホルモン療法が標準治療となります。とくに閉経後の患者においては、術後の再発予防や転移例に対し、アンドロゲンからエストロゲンへの変換を阻害するアロマターゼ阻害薬などを用いた治療が広く行われています。しかし、アロマターゼ阻害薬による治療の経過中などに、エストロゲン受容体(ER)をコードするESR1遺伝子に変異が生じることがあります。この変異により、エストロゲンが存在しない状況でもERが恒常的に活性化し、アロマターゼ阻害薬に対する耐性を獲得します。その結果、がん細胞の増殖が抑制されず、再発や転移のリスクが高まります。イムルネストラントは、経口投与が可能な選択的エストロゲン受容体分解薬(Selective Estrogen Receptor Degrader:SERD)であり、ERの分解を促進することでがん細胞の増殖シグナルを遮断します。従来から使用されてきたSERDであるフルベストラントが筋肉注射製剤であるのに対し、本剤は経口製剤であるため、通院や投与に伴う身体的・時間的な負担の軽減が期待されます。ただし、本剤は食事の影響を受けやすく、食事と同時に服用すると血中濃度が上昇する可能性があるため、服用前1時間から服用後2時間は食事を避ける必要があります。内分泌療法歴のあるHR陽性/HER2陰性の局所進行または遠隔転移を有する乳がん患者を対象とした国際共同第III相臨床試験(EMBER-3試験)において、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の中央値は、本剤単独投与群で5.55ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.32~7.26)、治験担当医師が選択した治療(フルベストラントまたはエキセメスタン)単独投与群で5.52ヵ月(95%CI:4.60~5.62)であり、両群の間に統計学的に有意な差は認められませんでした(p=0.1158)。また、ESR1遺伝子変異陽性集団におけるPFSの中央値は、本剤投与群で5.49ヵ月(95%CI:3.91~7.39)、治験担当医師が選択した治療単独投与群で3.84ヵ月(95%CI:3.68~5.52)であり、本剤群で有意な延長が認められました(p=0.0008)。PFSの中央値には1.65ヵ月の改善が認められ、さらに本剤投与群は治験担当医師が選択した治療単独投与群に対して原疾患の増悪または死亡のリスクを38%減少させました(ハザード比:0.617、95%CI:0.464~0.821)。

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発症2時間以内の脳出血、活性型第VII因子の有用性は?/Lancet

 発症から2時間以内の脳内出血(ICH)患者の治療において、遺伝子組換え活性型第VII因子(rFVIIa)製剤の投与はプラセボと比較して、機能的アウトカムを改善せず、血腫の拡大を有意に抑制したものの、生命を脅かす血栓塞栓性合併症のリスクがわずかに上昇することが、米国・ University of CincinnatiのJoseph P. Broderick氏らFASTEST Investigatorsによる「FASTEST試験」の結果で示された。ICHでは、出血量に比例して重大な障害と死亡のリスクが増加し、出血の拡大は症状発現から2~3時間以内に生じるとされる。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2026年2月4日号に掲載された。6ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 FASTEST試験は、6ヵ国(日本、北米、欧州)の93施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照アダプティブ第III相試験であり、2021年12月~2025年10月に参加者を登録した(米国国立神経疾患・脳卒中研究所[NINDS]などの助成を受けた)。 対象は、年齢18~80歳、ICH(出血量2~60mL)を発症し、片側側脳室の3分の2未満または両側側脳室の3分の1未満の脳室内出血(IVH)を認め、グラスゴー・コーマ・スケールスコア8点以上で、脳卒中発症時または最終健常確認時から2時間以内に試験薬の投与を受けた患者とした。 被験者は、rFVIIa(80μg/kg)を投与する群(介入群)またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられ、2分間で静脈内投与された。 主要アウトカムは、ITT集団における180日時点での機能的アウトカム(修正Rankinスケール[mRS]スコア[0~2点、3点、4~6点])とした。安全性の主要アウトカムは、無作為化集団における4日以内に発生した生命を脅かす血栓塞栓性イベント(急性心筋梗塞、急性脳梗塞、急性肺塞栓症)であった。 本試験は、2回目の中間解析時に、事前に規定された無益性による中止基準を満たしたため、NINDSと独立データ安全監視委員会(DSMB)の勧告を受けて患者登録を中止した。発症から投薬までの平均時間は100分 626例(平均年齢61[SD 12]歳、女性216例[35%])を登録し、介入群に328例、プラセボ群に298例を割り付けた。ベースラインの平均ICH量は16.7(SD 14.6)mL、平均IVH量は1.5(SD 5.1)mL、NIHSSスコア中央値は13点(四分位範囲:8~17)であり、脳卒中発症から試験薬投与までの平均時間は100(SD 22)分だった。 ITT集団における180日時のmRS 0~2点の達成率は、介入群が46%(151/328例)、プラセボ群は45%(134/298例)と、両群間に有意な差を認めなかった(オッズ比[OR]:1.09、95%信頼区間[CI]:0.79~1.51]、p=0.61)。日本人(介入群144例、プラセボ群132例)のORは1.40(95%CI:0.86~2.29)と有意差はないものの介入群で良好な傾向がみられた。 4日以内の生命を脅かす血栓塞栓性合併症の発生率は、プラセボ群が1%(4/298例)であったのに対し、介入群は<5%(15/328例)と有意に高かった(相対リスク:3.41、95%CI:1.14~10.15、p=0.020)。 また、ICH量のベースラインから24時間後までの増加分は、プラセボ群に比べ介入群で有意に少なく(-3.68mL、95%CI:-5.40~-1.94、p=0.0011)、同様にICH+IVH量の増加分も介入群で有意に少なかった(-5.23mL、-7.64~-2.8、p=0.0011)。スポットサイン、90分以内の投与で止血効果が高い傾向 主要アウトカムのサブグループ解析では、ベースラインの造影CT検査でスポットサインを認めた患者(OR:1.86、95%CI:0.94~3.68)および最終健常確認時から90分以内に試験薬の投与を受けた患者(1.82、0.98~3.40)において、プラセボ群に比べ介入群でアウトカムが良好である傾向を認めた。 著者は、「rFVIIaの止血効果は、出血が持続している可能性が高い患者(90分以内に治療を受けた患者、造影CTでスポットサインを確認した患者)に集中していた」「機能的アウトカムの改善に必要となる出血拡大の抑制量は、先行研究で示された3~4mLではなく、少なくとも6~12mLであると示唆される」としている。現在、持続性出血のリスクが最も高い患者におけるrFVIIaの有効性の評価を目的とする臨床試験(FASTEST 2試験)が進行中だという。

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年齢調整Dダイマーカットオフ値、下肢DVTの除外診断に有効/JAMA

 年齢調整Dダイマーカットオフ値(50歳以上の患者では年齢×10μg/L)は、肺塞栓症(PE)が疑われる患者ではDダイマーの診断的有用性を安全性を損なわずに高めるが、下肢深部静脈血栓症(DVT)が疑われる患者に外挿可能かは確立されていない。カナダ・Ottawa Health Research InstituteのGregoire Le Gal氏らは「ADJUST-DVT試験」において、年齢調整Dダイマーカットオフ値は、安全性を低下することなくDVTを除外して診断効率を向上し、不必要な画像検査を低減する可能性があることを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年1月5日号に掲載された。4ヵ国の前向き診断管理アウトカム研究 ADJUST-DVT試験は、4ヵ国(ベルギー、カナダ、フランス、スイス)の27の病院で実施された前向き診断管理アウトカム研究(Swiss National Research Foundationなどの助成を受けた)。 2015年1月~2022年10月に患者を登録した。参加施設の救急診療部を受診し、臨床的に下肢のDVTが疑われた患者3,205例(年齢中央値59歳、女性1,737例[54%])を対象とした。 これらの患者を、Wellsスコアを用いた検査前の臨床的確率、高感度Dダイマー検査、下肢圧迫超音波検査に基づく段階的診断戦略により評価した。DVTが除外された患者は、3ヵ月間の追跡調査を受けた。 主要アウトカムは、従来のカットオフ値(500μg/L)と年齢調整カットオフ値の間のDダイマー値に基づきDVTを除外された患者における、追跡期間中に判定された症候性静脈血栓塞栓症(VTE:下肢DVTまたはPE、あるいはこれら両方)イベントの発生率(失敗率)とした。DVTを除外できる患者が7.4%増加 DVTの臨床的確率が高くない(non-high)、または可能性が低い(unlikely)と判定された2,169例のうち、531例(24.5%、95%信頼区間[CI]:22.7~26.4)はDダイマー値が500μg/L未満であり、161例(7.4%、95%CI:6.4~8.6)は500μg/Lと年齢調整カットオフ値の間であった。 したがって、従来のカットオフ値から年齢調整カットオフ値への転換により、Dダイマー陰性の割合は7.4%(95%CI:6.4~8.6)の絶対的増加を示し、23.3%(95%CI:20.3~26.6)の相対的増加がもたらされた。 初回受診時の遠位型または近位型DVTの有病率は21.8%であった。追跡期間中のVTEイベント発現例はない Dダイマー値が従来のカットオフ値(500μg/L)以上で、年齢調整カットオフ値未満の161例では、追跡期間中にVTEイベントが発現した失敗例(主要アウトカム)を認めなかった(0%、95%CI:0~2.3)。 年齢別のサブグループ解析では、Dダイマー値が500μg/L未満の患者の割合は、18~49歳では59.6%であったが、加齢とともに低下し、75歳以上ではわずか8.7%であった。これに対し、年齢調整カットオフ値を使用すると、75歳以上のDダイマー陰性の割合は26.1%(95%CI:22.0~30.8)に上昇した。 著者は、「高齢者のDダイマー検査の診断的有用性が一般人口と同等レベルに達した。これは、臨床現場では重要な意味を持つ。より多くの患者が画像検査なしで退院可能となり、救急診療部の滞在時間が短縮され、不必要な経験的抗凝固療法が回避される。重要な点は、これらの利点が診断の安全性を損なわずに達成されたことである」「留意点として、これらの結果は、他の血栓症の部位やタイプ(例:上皮、脳、内臓、生殖器の血栓症)には外挿できないことが挙げられる」としている。

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DVT疑いの患者のDダイマー値はカットオフを年齢によって変えると、余計な下肢エコー検査を減らせるかもしれないという朗報(解説:山下侑吾氏)

オリジナルニュース【JAMA】Age-Adjusted D-Dimer Cutoff Levels to Rule Out Deep Vein Thrombosis 日常臨床でDVT(深部静脈血栓症)を疑った際に、Dダイマー値はよく測定される。しかしながら、Dダイマー値は年齢とともに非特異的に上昇するため、高齢者では多くの人が陽性判定になり、結局下肢エコーを実施することになるという困った問題がある。肺塞栓症では、50歳以上は「年齢×10μg/L」という年齢調整Dダイマーカットオフの有用性がすでに示されていた。一方で、おそらくはDVTでも同じであろうと予想はされつつも、DVTでは前向き臨床試験での検証が不十分という“空白地帯”が残っていた。臨床試験には、エビデンスの大きなピースを埋めるものもあれば、隙間の小さな(しかし重要な)ピースを埋めるものもある。本研究は、治療方針を大きく変化させる新規薬剤や治療法の登場に関するエビデンスではないが、本領域での隙間の空白を埋める意義ある研究と筆者は考える。 本研究により、あまりDVTが疑わしくない患者では、年齢調整Dダイマーカットオフを用いると、年齢を調整せずDダイマー値が500μg/L未満であった症例だけを陰性と判定した場合と比べて、7.4%の患者を新たに陰性と判定することができ、それらの患者では下肢エコー検査にて近位部のDVTが発見されなかった。この結果の意味することは、年齢調整Dダイマーカットオフを用いると、一部の患者では不要な下肢エコー検査をスキップできる可能性があるということである。そして、当然ではあるが、その御利益は75歳以上のより高齢の患者で大きかった。わが国での近年の医療費増大に対する厳しい風向きを考えると、医療経済の観点からも、本研究の結果は意味あることと思われる。 わが国では、素晴らしい国民皆保険制度の下、専門的検査が必要と判断された際には、その実施の敷居は比較的低い医療環境である。これは、患者および医療従事者にとっては専門的検査を念のために行い、検査により当該疾患を否定できれば安心できるというメリットもある。一方で、それは諸刃の剣として、時として不要な検査の増大につながる可能性も否めない。筆者は、所属する病院で、DVTの専門家であるようなふりをしているせいか、DVTと診断された患者に加えて、DVTを疑う患者を外来・病棟に限らず山のようにご相談いただく。これらの患者の中には、あまりDVTが疑わしくない場合も多いが、Dダイマー値を測定すると院内の基準値をちょっとだけ超えて「陽性」と判定されることも多い。陽性と判定されたからには、下肢エコー検査による評価を行わないわけにいかず、エコー検査室に緊急での検査の相談をすることになるが、筆者からの多数の依頼に際してエコー検査部からのひんしゅくを買うことも否めない。本研究は、年齢調整Dダイマーカットオフを用いることにより、下肢エコー検査の必要な依頼数を減らすことができるかもしれないという、筆者にとっては日々の懸念を減らせるこの上ない朗報である。このような既存の検査や治療を最適化させる現場のニーズに応える臨床試験は、高く評価されるべきものと日々思っている。 一方で、本研究は、外来患者に限定したものである。とくに術後を含めた入院患者での最適なDダイマーカットオフは現場でよく問題となる。さらに、本研究は、がん患者は少数しか組み入れられていない。近年はがん患者での血栓症が大きな問題となっているが、がん患者ではDダイマー値が漏れなく高値となるため、がん患者ではどうすべきかという問題もきわめて重要である。筆者を含めて、わが国でも本問題に日々苦悩する臨床医は多く潜んでいると想像するが、われわれに役立つさらなる朗報が聞けることを本当に心から願っている。

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NSAIDsによるVTEリスク上昇は本当?~アセトアミノフェンと比較

 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、静脈血栓塞栓症(VTE)発症リスクを上昇させる可能性が指摘されている。しかし、VTE発症リスクの上昇は、NSAIDsが必要となる患者背景による影響を受けている可能性も考えられている。そこで、松尾 裕一郎氏(東京大学)らの研究グループは、日本のレセプトデータベースを用いた研究において、NSAIDsとアセトアミノフェンのVTE発症リスクを比較した。その結果、新規にNSAIDsを処方された患者は、アセトアミノフェンを処方された患者と比較して、VTE発症リスクが有意に低かった。一方で、NSAIDsを処方された患者は、NSAIDsを処方されていない患者と比較するとVTEリスクが高かった。著者らは、アセトアミノフェンがVTE発症リスクを上昇させないと仮定すると、NSAIDsがVTE発症リスクを上昇させるわけではないことが示唆されたとしている。本研究結果は、Journal of Internal Medicine誌オンライン版2026年1月3日号で報告された。 研究グループは、JMDCのレセプトデータベースを用いて、NSAIDsまたはアセトアミノフェンが2013年4月~2022年2月の期間に新規処方された18~65歳の患者を特定した。処方日前365日以内にいずれかの薬剤の処方歴がある患者、抗凝固薬の処方歴がある患者、VTEの既往がある患者などが除外された。主要評価項目は、処方から60日以内のVTE(肺塞栓症または下肢深部静脈血栓症)の発症とした。傾向スコアオーバーラップ重み付け法により背景因子を調整し、群間比較を行った。また、NSAIDs非処方患者を対照とした解析、COX-2阻害薬と非選択的NSAIDs/COX-1阻害薬の比較も実施した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、NSAIDs処方群428万2,421例、アセトアミノフェン処方群272万8,202例であった。・追跡期間中にVTEを発症したのは全体で1,504例(0.022%)であった。・傾向スコアオーバーラップ重み付け法により背景因子を調整後、NSAIDs処方群はアセトアミノフェン処方群と比較して、VTE発症リスクが有意に低かった(調整ハザード比[aHR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.62~0.80)。・60日以内のVTE発症率の調整群間差は-0.006%(95%CI:-0.010~-0.003、p<0.001)であった。・NSAIDs処方群はNSAIDs非処方群と比較して、VTE発症リスクが有意に高かった(aHR:3.18、95%CI:2.85~3.55)。・COX-2阻害薬と非選択的NSAIDs/COX-1阻害薬の比較では、VTE発症リスクに有意差はみられなかった(aHR:1.01、95%CI:0.85~1.19)。 本研究結果を踏まえて、著者らは「VTE発症リスクへの懸念からNSAIDsを避けてアセトアミノフェンを選択することは、必ずしも合理的ではない可能性がある」と述べている。

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術後VTEの予防、REGN7508Catがエノキサパリンを上回る/Lancet

 カナダ・Thrombosis and Atherosclerosis Research InstituteのJeffrey I. Weitz氏らは、2つの第II相試験(ROXI-VTE-I、ROXI-VTE-II)において、人工膝関節全置換術後の静脈血栓塞栓症(VTE)の予防効果に関して、エノキサパリンと比較してREGN7508Catは優越性を有するが、REGN9933A2は優越性を持たないと報告した。REGN9933A2は、凝固XI因子(FXI)のアップル2ドメインに結合してFXIIaによるFXI活性化のみを阻害し、REGN7508Catは、FXIの触媒ドメインに結合してFXIaの活性を阻害するとともに、FXIIaおよびトロンビンによるFXI活性化をも阻害する完全ヒト型モノクローナル抗体である。研究の成果は、Lancet誌2025年11月29日号で発表された。2つの国際的な無作為化試験 ROXI-VTE-I試験とROXI-VTE-II試験は、それぞれ術後VTEの予防におけるREGN9933A2およびREGN7508Catの有効性と安全性の評価を目的とする非盲検無作為化試験であり、前者は2023年5月~2024年5月に7ヵ国15施設で、後者は2024年6月~2025年1月に5ヵ国12施設で参加者を登録した(Regeneron Pharmaceuticalsの助成を受けた)。 両試験とも、年齢50歳以上で、片側の膝関節に対する初回の待機的人工膝関節全置換術を受けた患者を対象とした。 ROXI-VTE-I試験では、REGN9933A2(300mg、単回、静脈内)、エノキサパリン(40mg、1日1回、皮下)、探索的比較としてアピキサバン(2.5mg、1日2回、経口)の投与を受ける群に1対1対1で、ROXI-VTE-II試験では、REGN7508Cat(250mg、単回、静脈内)またはエノキサパリン(40mg、1日1回、皮下)の投与を受ける群に2対1で、それぞれ参加者を無作為に割り付けた。 両試験の主要エンドポイントは、修正ITT集団における、試験薬の初回投与(術後12~24時間)から12日目までに発現し、客観的に確定されたVTE(術側下肢の無症候性深部静脈血栓症、いずれかの下肢の客観的に確定された症候性深部静脈血栓症、確定された非致死性または致死性肺塞栓症の複合)とした。REGN9933A2とREGN7508Catは、対数オッズ比(log OR)の事後確率が95%を超える場合に、エノキサパリンより優越性があると判定した。 主な安全性アウトカムは、大出血および臨床的に重要な非大出血の複合であった。事後確率、I試験78.5%、II試験99.8% ROXI-VTE-I試験は373例(REGN9933A2群123例[年齢中央値66歳、女性77%]、エノキサパリン群125例[66歳、83%]、アピキサバン群125例[66歳、71%])、ROXI-VTE-II試験は179例(REGN7508Cat群120例[67歳、77%]、エノキサパリン群59例[66歳、75%])を登録した。追跡期間中央値は両試験とも74日(四分位範囲:72~76)であった。 ROXI-VTE-I試験では、12日目までにVTEがREGN9933A2群で116例中20例(17%)、エノキサパリン群で117例中26例(22%)、アピキサバン群で113例中14例(12%)に発生した。平均補正後オッズ比(aOR)は0.78(90%信用区間[CrI]:0.47~1.32)、事後確率は78.5%であり、エノキサパリンに対するREGN9933A2の優越性は示されなかった。 一方、ROXI-VTE-II試験では、12日目までにVTEがREGN7508Cat群で113例中8例(7%)、エノキサパリン群で58例中10例(17%)に発生した。ROXI-VTE-I試験のエノキサパリン群と統合したデータに基づく平均aORは0.37(90%CrI:0.20~0.68)、事後確率は99.8%と、エノキサパリンに対するREGN7508Catの優越性を確認した(名目上のp=0.04)。主な安全性アウトカムのイベントは発生せず 大出血および臨床的に重要な非大出血の発現は認めなかった。最も頻度の高い試験治療下での有害事象は、術後の貧血(ROXI-VTE-I試験:REGN9933A2群123例中9例[7%]、エノキサパリン群125例中11例[9%]、アピキサバン群125例中16例[13%]、ROXI-VTE-II試験:REGN7508Cat群120例中6例[5%]、エノキサパリン群0例)であった。 また、重篤な有害事象は、ROXI-VTE-I試験ではREGN9933A2群で4例(3%)、エノキサパリン群で1例(1%)、アピキサバン群で2例(2%)に発現し、ROXI-VTE-II試験ではREGN7508Cat群で2例(2%)にみられ、エノキサパリン群では認めなかった。両試験ともに試験薬の投与中止の原因となった有害事象の報告はなく、試験薬関連の有害事象や重篤な有害事象も発生せず、試験期間中の死亡例もなかった。 著者は、「これら2つの試験は、FXIの阻害は出血リスクを増加させずに血栓症を軽減するという考え方への支持をより強固なものにする」「今後、REGN9933A2とREGN7508Catの安全性を確定し、これらの異なる作用機序が、FXI活性化の駆動因子に応じた個別化治療を可能にするかを明らかにするための試験が求められる」としている。

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経口orforglipron、肥満成人の減量に有効~日本を含む第III相試験/NEJM

 非糖尿病の成人肥満者において、プラセボと比較して経口低分子GLP-1受容体作動薬orforglipronは有意な体重減少をもたらすとともに、ウエスト周囲長や収縮期血圧、非HDLコレステロール値を改善し、有害事象プロファイルは他のGLP-1受容体作動薬と一致する。カナダ・McMaster UniversityのSean Wharton氏らATTAIN-1 Trial Investigatorsが、第III相二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験「ATTAIN-1試験」の結果を報告した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年9月16日号で発表された。日本を含む9ヵ国137施設で実施 ATTAIN-1試験は、日本を含む9ヵ国137施設で行われた(Eli Lillyの助成を受けた)。2023年6月~2025年7月に、年齢18歳以上で、BMI値30以上、または同27~30で少なくとも1つの肥満関連合併症(高血圧、脂質異常症、心血管疾患、閉塞性睡眠時無呼吸症候群)に罹患し、減量を目的とする食事療法に失敗した経験が1回以上あると自己報告した患者3,127例を登録した。糖尿病の診断を受けた患者と、スクリーニング前の90日以内に±5kg以上の体重の変動を認めた患者は除外した。 被験者を、健康的な食事と身体活動に加えて、orforglipron 6mgを1日1回経口投与する群(723例)、同12mg群(725例)、同36mg群(730例)、プラセボ群(949例)に無作為に割り付け、72週間投与した。 主要エンドポイントは、ベースラインから72週目までの体重の平均変化量とした。 ベースラインの全体の平均(±SD)年齢は45.1(±12.1)歳、女性が2,009例(64.2%)で、平均体重は103.2kg、平均BMI値は37.0であり、参加者の36.0%が前糖尿病であった。減少率別の達成率も有意に改善 ベースラインから72週目までの体重の平均変化量は、プラセボ群が-2.1%(95%信頼区間[CI]:-2.8~-1.4)であったのに対し、orforglipron 6mg群は-7.5%(-8.2~-6.8)、同12mg群は-8.4%(-9.1~-7.7)、同36mg群は-11.2%(-12.0~-10.4)であり、用量依存性の体重減少を認めた。 体重の平均変化量のプラセボ群との群間差は、orforglipron 6mg群が-5.5%ポイント(95%CI:-6.5~-4.5)、同12mg群が-6.3%ポイント(-7.3~-5.4)、同36mg群は-9.1%ポイント(-10.1~-8.1)と、いずれの用量とも有意に優れた体重減少効果を示した(すべてのp<0.001)。 また、72週時に、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上の体重減少率を達成した患者の割合は、いずれもプラセボ群に比べorforglipronのすべての用量群で有意に高かった(多重性の調整を行っていないためp値を表記しない6mg群の減少率20%以上を除き、すべてのp<0.001)。たとえば、10%以上の体重減少を達成した患者の割合は、プラセボ群が12.9%であったのに対し、orforglipron 6mg群は33.3%、同12mg群は40.0%、同36mg群は54.6%であった。 さらに、orforglipron群では、ウエスト周囲長(72週目までの平均変化量:orforglipron 6mg群-7.1cm、同12mg群-8.2cm、同36mg群-10.0cm、プラセボ群-3.1cm、プラセボ群との比較で3つの用量群のすべてのp<0.001)、収縮期血圧(3つの用量群の統合解析とプラセボ群の変化量の群間差:-4.2mmHg、95%CI:-5.3~-3.2、p<0.001)、非HDLコレステロール値(変化率の群間差:-4.9%、95%CI:-6.7~-3.1、p<0.001)、トリグリセライド値(変化率の群間差:-11.5%、95%CI:-14.5~-8.3、p<0.001)などの心代謝系リスク因子の有意な改善を認めた。また、無作為化の時点で前糖尿病であった患者のうち72週目に正常血糖値に達した割合は、プラセボ群の44.6%に対し、3つの用量のorforglipron群では74.6~83.7%の範囲であった。軽度~中等度の消化器系有害事象が多い orforglipron群で頻度の高い有害事象は悪心、便秘、下痢、嘔吐などの消化器症状で、ほとんどは軽度~中等度であった。消化器系の有害事象による投与中止は、orforglipron群の3.5~7.0%、プラセボ群の0.4%で発生した。 重篤な有害事象は、orforglipron群の3.8~5.5%、プラセボ群の4.9%に発現し、72週目までに3例が死亡した(6mg群1例[死因不明]、12mg群1例[転移のある卵巣がん]、プラセボ群1例[肺塞栓症])。orforglipron群の5例で軽度の膵炎がみられ、orforglipron群の7例とプラセボ群の1例で正常上限値の10倍以上に達するアミノトランスフェラーゼ値の上昇が報告された。また、平均脈拍数は、orforglipron群で4.3~5.3拍/分の増加を認めたが、プラセボ群では0.8拍/分の増加だった。 著者は、「GLP-1受容体作動薬は、体重減少を誘導する作用と、体重に依存しない直接的な作用の両方によって心血管アウトカムを改善する可能性があるが、orforglipronによる体重減少とバイオマーカーの変化が心血管リスクの低減につながるかを知るには、それ専用のアウトカム試験が必要である」「低分子化合物は標的でない受容体に結合する可能性があるため、付加的な有害作用の可能性が高まるが、本薬剤の開発計画ではそのような作用は検出されておらず、安全性プロファイルはペプチド性GLP-1受容体作動薬の第III相試験の結果と一致する」としている。

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逆ハローサイン(Reversed halo sign)【1分間で学べる感染症】第33回

画像を拡大するTake home message免疫不全患者に逆ハローサインが見られた場合は、ムーコル症(Mucormycosis)の頻度が高い一方で、感染性・非感染性ともに多岐にわたる鑑別疾患が存在する。はじめに逆ハローサイン(Reversed halo sign)とは、限局性のすりガラス陰影(GGO:ground-glass opacity)の円形領域が、三日月状または完全な輪状の浸潤影に囲まれている画像所見を指します。画像を拡大するCTで認められるこの特徴的な陰影は、特定の病原体による肺感染症や、さまざまな非感染性疾患の一徴候として現れることがあり、画像を基に適切な鑑別と初期対応ができるかが診療の成否を左右します。感染性疾患逆ハローサインを示す感染症の中で最も重要なのは、ムーコル症(Mucormycosis)です。とくに血液悪性腫瘍や造血幹細胞移植後などの免疫不全状態にある患者では典型的な所見の1つとされ、迅速な抗真菌治療および外科的デブリードマンが必要となる場合があります。そのほかの感染症としては、侵襲性アスペルギルス症、肺炎球菌性肺炎(改善期に一過性に出現することがある)、オウム病(Chlamydia psittaciを病原体とする)、レジオネラ肺炎、結核、ニューモシスチス肺炎(Pneumocystis jiroveciiを病原体とする)、およびヒストプラズマ症などの二相性感染症が含まれます。これらの病原体は、患者の基礎疾患や曝露歴、免疫状態によって鑑別順位が変動するため、全身状態やリスク評価に基づいたアプローチが必要です。非感染性疾患逆ハローサインを示す非感染性の疾患としては、多発血管炎性肉芽腫症(GPA、旧ウェゲナー肉芽腫症)や好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)などの壊死性血管炎が重要です。これらは肺病変をきっかけに診断に至ることも多く、逆ハローサインが初発の手掛かりとなることがあります。そのほかにもサルコイドーシス、皮膚筋炎に伴う肺病変、肺線維症や肺腺がん、リンパ腫様肉芽腫症、特発性器質化肺炎(COP)、肺塞栓症など、炎症性や腫瘍性、血行障害に基づく病変も含まれます。これらは感染症とは異なる治療戦略が必要となるため、鑑別の誤りが予後に直結する可能性もあります。逆ハローサインを見た際には、「感染性か非感染性か」「免疫状態はどうか」「急性か慢性か」「全身に病変があるか」といった観点から診断アプローチを組み立てることが重要です。このように、逆ハローサインは、幅広い鑑別疾患が原因となって生じる重要なサインです。免疫不全者ではムーコル症を念頭に置きつつ、ほかの感染症や血管炎性疾患も見逃さぬよう、全体像を評価しながら診断を進めることが求められます。1)Georgiadou SP, et al. Clin Infect Dis. 2011;52:1144-1155.2)Godoy MC, et al. Br J Radiol. 2012;85:1226-1235.3)Maturu VN, et al. Respir Care. 2014;59:1440-1449.

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日本人妊婦の静脈血栓塞栓症の臨床的特徴と転帰が明らかに

 妊娠中の女性は静脈血栓塞栓症(VTE)リスクが高く、これは妊産婦死亡の重要な原因の 1 つである。妊婦ではVTEの発症リスク因子として有名なVirchowの3徴(血流うっ滞、血管内皮障害、血液凝固能の亢進)を来たしやすく、妊婦でのVTE発生率は同年齢の非妊娠女性の6〜7倍に相当するとも報告されている1)。そこで今回、京都大学の馬場 大輔氏らが日本人の妊婦のVTEの実態を調査し、妊娠関連VTEの重要な臨床的特徴と結果を明らかにした。妊婦の静脈血栓塞栓症発症は妊娠初期と後期の二峰性分布 馬場氏らは、メディカル・データ・ビジョンのデータベースを用いて、2008年4月~2023年9月までにVTEで入院した可能性のある妊婦1万5,470例を特定。さらに、抗凝固療法が実施されていない患者や画像診断検査が施行されていない患者などを除外し、最終的に妊婦でVTEと確定診断され抗凝固療法を含めた介入が行われた410例の臨床転帰(6ヵ月時のVTE再発、6ヵ月時の出血イベント、院内全死因死亡)などを評価した。 妊婦の静脈血栓塞栓症リスクの実態を調査した主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は33歳、平均BMIは23.8kg/m2であった。・対象患者の既往歴は、糖尿病19例(4.6%)、出血の既往17例(4.1%)、先天性凝固異常17例(4.1%)、消化性潰瘍13例(3.2%)、高血圧症10例(2.4%)、脂質異常症7例(1.7%)などであった。・410例中110例(26.8%)は、肺塞栓症(PE)であり、300例(73.2%)は深部静脈血栓症(DVT)のみであった。・VTE発症時の妊娠週数の中央値は31週であった。・VTEの発生率は二峰性分布を示し、126例(30.7%)が妊娠初期(0~妊娠13週)にVTEを発症し、236例(57.6%)が妊娠後期(妊娠28週以降)にVTEを発症し、PEは妊娠後期に多くみられた。・抗凝固療法に関しては、374例(91.2%)には未分画ヘパリンが、18例(4.4%)には低分子量ヘパリン(LMWH、ダルテパリン:2例、エノキサパリン:16例)が投与された。・急性期治療について、血栓溶解療法は2例(0.5%)、下大静脈フィルター留置は17例(4.1%)が受けた。人工呼吸器管理は8例(2.0%)、ECMOは5例(1.2%)に使用された。・ 6ヵ月の追跡期間中、17例(4.1%)でVTEの再発が認められ、3例(0.7%)で頭蓋内出血および消化管出血を含む出血が発生した。・入院中に4例(1.0%)が死亡し、そのうち3例には帝王切開などの外科手術の既往があった。 本研究の限界として、データベースが急性期病院のデータに限定されているため、他の医療機関で治療された患者データが含まれていないこと、詳細な臨床データ(バイタルサイン、PE重症度、検査結果など)が不足していること、PEの過小診断の可能性、入院中のVTE再発を除外したことにより急性期の再発が過小評価されている可能性が挙げられている。 最後に、研究者らは「今回の検討にて、循環器系および産科の医師にとって参考となる妊娠関連のVTEの実態が明らかになった。また、その治療において、LMWHが欧米のガイドラインで推奨されているにもかかわらず、国内ではVTEに対するLMWHの使用が保険適用外であるため、未分画ヘパリンが大半に選択されている実情も明らかになった。この問題は今後対処されるべき」と結んでいる。

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