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日本人の高リスクStage I NSCLCへの術前ニボルマブ(POTENTIAL)/ESMO2024

 Stage Iの非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する免疫チェックポイント阻害薬の有用性に関するエビデンスは乏しい。そこで、再発リスクの高いStage IのNSCLC患者を対象として、ニボルマブ単剤による術前補助療法の有用性を検討する国内第II相試験「POTENTIAL試験」が実施された。津谷 康大氏(近畿大学医学部 外科学教室 呼吸器外科部門 主任教授)が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)において本試験の結果を発表した。・試験デザイン:多施設共同国内第II相試験・対象:再発リスクの高いStage I(充実型または充実成分径2~4cm)の日本人NSCLC患者52例(EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子はいずれも陰性)・治療方法:ニボルマブ(240mg、2週ごと3サイクル)→肺葉切除+ND2a-1またはND2a-2郭清を術前補助療法最終投与日から10週以内に施行・評価項目:[主要評価項目]病理学的完全奏効(pCR)[副次評価項目]病理学的奏効(MPR)、画像判定による奏効率(ORR)、安全性など・解析計画:pCR率の90%信頼区間の下限値が10%を上回った場合に、主要評価項目を達成とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は71歳(範囲:53~82)、男性は78.8%(41例)であった。組織型は腺がん55.8%(29例)、扁平上皮がん42.3%(22例)、腺扁平上皮がん1.9%(1例)であり、T因子はT1bが15.4%(8例)、T1cが38.5%(20例)、T2aが46.2%(24例)であった。・52例全例が完全切除を達成した。・pCR率は23.1%(90%信頼区間[CI]:13.9~34.7)であり、主要評価項目を達成した。・MPR率は46.2%であった。・術前ニボルマブの画像判定によるORRは34.6%(CRは2例)であった。・追跡期間中央値33.7ヵ月時点において、3年無再発生存率は85.6%、3年全生存率は89.1%であった。・Grade3/4の治療関連有害事象は、13.5%(7例)に発現した。死亡に至った有害事象は1例に認められたが、治療との関連は否定された。 津谷氏は、本研究結果について「主要評価項目を達成し、新たな安全性に関するシグナルはみられなかった。再発リスクの高いStage IのNSCLC患者に対するニボルマブ単剤による術前補助療法の安全性と有効性が示された」とまとめた。

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Dr.光冨の肺がんキーワード解説「EGFR exon20挿入変異」【肺がんインタビュー】第103回

第103回 Dr.光冨の肺がんキーワード解説「EGFR exon20挿入変異」肺がんではさまざまなドライバー変異が解明されている。それに伴い、種々の標的治療薬が登場する。それら最新の情報の中から、臨床家が知っておくべき基本情報を近畿大学の光冨徹哉氏が解説する。

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オンコマインDx、EGFRエクソン20挿入変異肺がんに対するamivantamab+化学療法のコンパニオン診断として承認/サーモフィッシャ

 サーモフィッシャーサイエンティフィックは2024年9月10日、次世代シーケンシングコンパニオン診断システム「オンコマインDx Target Test マルチCDxシステム(オンコマインDx)」に関して、Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)が申請中の「EGFR遺伝子エクソン20挿入変異を有する手術不能又は再発非小細胞肺がんに対するアミバンタマブと化学療法の併用療法」を対象としたコンパニオン診断システムとして、一部変更承認を取得したことを発表した。 この承認によりオンコマインDxは、非小細胞肺がんに対して8種類、甲状腺がんに対しては2ドライバー遺伝子、甲状腺髄様がんに対しては1ドライバー遺伝子の変異等を網羅するコンパニオン診断となった。非小細胞肺がん ●BRAF遺伝子V600E変異:ダブラフェニブ/トラメチニブ ●EGFR遺伝子変異(エクソン20挿入変異を除く):ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ダコミチニブ ●EGFR遺伝子エクソン20挿入変異:アミバンタマブ ●HER2遺伝子変異:トラスツズマブ デルクステカン ●ALK融合遺伝子:クリゾチニブ、アレクチニブ、ブリグチニブ、ロルラチニブ ●ROS1融合遺伝子:クリゾチニブ、エヌトレクチニブ ●RET融合遺伝子:セルペルカチニブ ●MET遺伝子エクソン14スキッピング変異:カプマチニブ、テポチニブ甲状腺がん ●RET融合遺伝子:セルペルカチニブ ●BRAF遺伝子V600E変異:エンコラフェニブ/ビニメチニブ甲状腺髄様がん ●RET遺伝子変異:セルペルカチニブ

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オシメルチニブ耐性NSCLCへのamivantamab+化学療法、第2回OS中間解析(MARIPOSA-2)/ESMO2024

 オシメルチニブ単剤療法で病勢進行が認められたEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、amivantamab+化学療法±lazertinibの併用療法は、化学療法単独と比べて無増悪生存期間(PFS)を改善したことが、国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA-2試験」で報告されている。また、同時に実施された全生存期間(OS)の第1回中間解析において、amivantamab+化学療法の併用療法はOSも良好な傾向にあったことも報告されている1)。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)において、英国・Royal Marsden HospitalのSanjay Popat氏がOSの第2回中間解析の結果を発表した。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:オシメルチニブ単剤療法で病勢進行が認められたEGFR変異(exon19delまたはL858R)陽性NSCLC患者・試験群1(ALC群):amivantamab+lazertinib+化学療法(カルボプラチン+ペメトレキセド)263例・試験群2(AC群):amivantamab+化学療法(同上)131例・対照群(C群):化学療法(同上)263例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)評価に基づくPFS(ALC群vs.C群、AC群vs.C群)[副次評価項目]全生存期間(OS)、症状進行までの期間(TTSP)、治療開始から後治療までの期間(TTST)、PFS2(後治療後のPFS)、安全性など[探索的評価項目]治療開始から中止までの期間(TTD)など・解析計画:OSの第2回中間解析は、75%のイベント発現時に実施することが事前に規定され、本解析の有意水準は両側α=0.0142であった。 今回は、AC群とC群の比較結果が報告された。報告された主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値18.1ヵ月時点におけるOS中央値は、AC群17.7ヵ月、C群15.3ヵ月であり、AC群が改善する傾向にあったが、今回の解析では統計学的有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.54~0.99、p=0.039)。18ヵ月OS率は、それぞれ50%、40%であった。・TTSP中央値は、AC群16.0ヵ月、C群11.8ヵ月であり、AC群が長かった(HR:0.73、95%CI:0.55~0.96、p=0.026[層別log-rank検定])。・TTD中央値はAC群10.4ヵ月、C群4.5ヵ月であり、AC群が長かった(HR:0.42、95%CI:0.33~0.53、p<0.0001[層別log-rank検定])。18ヵ月時点の試験治療継続率は、それぞれ22%、4%であった。・TTST中央値は、AC群12.2ヵ月、C群6.6ヵ月であり、AC群が長かった(HR:0.51、95%CI:0.39~0.65、p<0.0001[層別log-rank検定])。・PFS2中央値は、AC群16.0ヵ月、C群11.6ヵ月であり、AC群が良好であった(HR:0.64、95%CI:0.48~0.85、p=0.002[層別log-rank検定])。18ヵ月PFS2率は、それぞれ39%、27%であった。 Popat氏は、本結果について「第2回OS中間解析においても、amivantamab+化学療法は化学療法単独と比べてOSが良好な傾向がみられた。病勢進行後の評価項目についても、amivantamab+化学療法は化学療法単独と比べて、持続的な改善が認められた」とまとめた。なお、本試験は継続中であり、OSの最終解析が予定されている。

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限局型小細胞肺がんへのデュルバルマブ地固め、OS・PFSサブグループ解析(ADRIATIC)/ESMO2024

 限局型小細胞肺がん(LD-SCLC)患者を対象とした国際共同第III相無作為化比較試験「ADRIATIC試験」の第1回中間解析において、同時化学放射線療法(cCRT)後のデュルバルマブ地固め療法が全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことが報告されている1)。本試験では、予防的頭蓋照射(PCI)の有無は問わず、cCRT時の放射線照射の回数も1日1回と1日2回が許容されていた。そこで、それらの違いによるOS・PFSへの影響を検討するサブグループ解析(post hoc解析)が実施された。本結果は、オランダ・アムステルダム大学のSuresh Senan氏によって欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表された。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:I~III期(I/II期は外科手術不能の患者)でPS0/1のLD-SCLC患者のうち、cCRT後に病勢進行が認められなかった患者730例(PCIの有無は問わない)・試験群1(デュルバルマブ群):デュルバルマブ(1,500mg、cCRT後1~42日目に開始して4週ごと)を最長24ヵ月 264例・試験群2(デュルバルマブ+トレメリムマブ群):デュルバルマブ(同上)+トレメリムマブ(75mg、cCRT後1~42日目に開始して4週ごと)を最長24ヵ月 200例・対照群(プラセボ群):プラセボ 266例・評価項目:[主要評価項目]OS、RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS(いずれもデュルバルマブ群vs.プラセボ群)[副次評価項目]OS、RECIST v1.1に基づくBICRによるPFS(いずれもデュルバルマブ+トレメリムマブ群vs.プラセボ群)、安全性など 今回は、デュルバルマブ群とプラセボ群のOS・PFSのサブグループ解析の結果が報告された。報告された主な結果は以下のとおり。・PCIを受けたのはデュルバルマブ群54%、プラセボ群54%であった。cCRT時のプラチナ製剤は、シスプラチンがそれぞれ66%、67%、カルボプラチンがそれぞれ34%、33%であった。放射線照射の回数は、1日1回がそれぞれ73.9%、70.3%、1日2回がそれぞれ26.1%、29.7%であった。・PCIの有無別にみたサブグループ解析において、OSとPFSに関するデュルバルマブ群のベネフィットはいずれのサブグループでも同様であった。各群のOS・PFS中央値(調整ハザード比[aHR]、95%信頼区間[CI])は以下のとおり。 【OS】 PCIあり:未到達vs.42.5ヵ月(aHR:0.72、95%CI:0.50~1.03) PCIなし:37.3ヵ月vs.24.1ヵ月(aHR:0.73、95%CI:0.52~1.02) ITT集団:55.9ヵ月vs.33.4ヵ月(HR:0.73、95%CI:0.57~0.93) 【PFS】 PCIあり:28.2ヵ月vs.13.0ヵ月(aHR:0.72、95%CI:0.52~0.99) PCIなし:9.1ヵ月vs.7.4ヵ月(aHR:0.84、95%CI:0.61~1.15) ITT集団:16.6ヵ月vs.9.2ヵ月(HR:0.76、95%CI:0.61~0.95)・cCRT時のプラチナ製剤別にみたサブグループ解析において、OSとPFSに関するデュルバルマブ群のベネフィットは、シスプラチンを用いた集団で小さい傾向にあったが、用いたプラチナ製剤による有意な交互作用は認められなかった。各群のOS・PFS中央値(aHR、95%CI)は以下のとおり。 【OS】 シスプラチン:41.9ヵ月vs.34.3ヵ月(aHR:0.81、95%CI:0.60~1.08) カルボプラチン:未到達vs.33.4ヵ月(aHR:0.55、95%CI:0.35~0.87) ITT集団:55.9ヵ月vs.33.4ヵ月(HR:0.73、95%CI:0.57~0.93) 【PFS】 シスプラチン:11.4ヵ月vs.9.7ヵ月(aHR:0.89、95%CI:0.67~1.17) カルボプラチン:27.9ヵ月vs.9.2ヵ月(aHR:0.60、95%CI:0.40~0.88) ITT集団:16.6ヵ月vs.9.2ヵ月(HR:0.76、95%CI:0.61~0.95)・放射線照射の回数別にみたサブグループ解析において、OSとPFSに関するデュルバルマブ群のベネフィットはいずれのサブグループでも同様であった。各群のOS・PFS中央値(aHR、95%CI)は以下のとおり。 【OS】 1日1回:41.9ヵ月vs.26.1ヵ月(aHR:0.73、95%CI:0.55~0.96) 1日2回:未到達vs.44.8ヵ月(aHR:0.71、95%CI:0.42~1.18) ITT集団:55.9ヵ月vs.33.4ヵ月(HR:0.73、95%CI:0.57~0.93) 【PFS】 1日1回:11.4ヵ月vs.7.8ヵ月(aHR:0.79、95%CI:0.61~1.03) 1日2回:38.7ヵ月vs.14.3ヵ月(aHR:0.73、95%CI:0.46~1.14) ITT集団:16.6ヵ月vs.9.2ヵ月(HR:0.76、95%CI:0.61~0.95)・Grade3/4の有害事象の発現率は、PCIありのサブグループがPCIなしのサブグループよりも高く、同様にカルボプラチンを用いたサブグループがシスプラチンを用いたサブグループよりも高かった。デュルバルマブの中止に至った有害事象の発現率は、いずれのサブグループでも同様であった。 Senan氏は、本結果について「LD-SCLC患者において、cCRT後のデュルバルマブによる地固め療法は新たな標準治療となることを支持するものである」とまとめた。

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NSCLCへの周術期デュルバルマブ、OS・DFSの改善は?(AEGEAN)/WCLC2024

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)において、術前補助化学療法に周術期デュルバルマブを上乗せすることで、無イベント生存期間(EFS)と病理学的完全奏効(pCR)を改善したことが、国際共同第III相試験「AEGEAN試験」のEFSの第1回中間解析およびpCRの最終解析において報告されている1)。2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)において、AEGEAN試験の事前に規定されたEFSの第2回中間解析、全生存期間(OS)および無病生存期間(DFS)の第1回中間解析の結果が報告された。EFSの第2回中間解析においても、引き続きEFSの改善傾向がみられ、DFSの臨床的に意義のある改善が認められた。また、OSについても改善傾向がみられた。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJohn V. Heymach氏が、本研究結果を発表した。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:未治療の切除可能なStageIIA〜IIIB(AJCC第8版)のNSCLC患者・試験群(デュルバルマブ群):デュルバルマブ+プラチナ併用化学療法(3週ごと4サイクル)→手術→デュルバルマブ(4週ごと12サイクル) 400例・対照群(プラセボ群):プラセボ+プラチナ併用化学療法(3週ごと4サイクル)→手術→プラセボ(4週ごと12サイクル) 402例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)に基づくEFS、pCR[主要な副次評価項目]病理学的奏効、BICRに基づくDFS、OS 主な結果は以下のとおり。・EFSの第2回中間解析時点において、すべての患者が試験治療を終了していた。・術後補助療法を開始した患者のうち、デュルバルマブ群の68.6%(166/242例)、プラセボ群の63.7%(151/237例)が治療を完遂した。・EFS中央値はデュルバルマブ群未到達、プラセボ群30.0ヵ月であり、デュルバルマブ群で引き続き改善する傾向がみられた(層別ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.55~0.88)。3年EFS率は、それぞれ60.1%、47.9%であった。・術前補助化学療法に用いたプラチナ製剤別にEFSを比較すると、いずれのサブグループでもデュルバルマブ群が良好な傾向にあった。シスプラチンを用いたサブグループにおけるEFS中央値はデュルバルマブ群未到達、プラセボ群45.0ヵ月であり(HR:0.85、95%CI:0.35~0.93)、カルボプラチンを用いたサブグループでは、それぞれ未到達、26.2ヵ月であった(同:0.75、0.57~0.97)。・術後補助療法の有無別にEFSを比較すると、術後補助療法を受けたサブグループでデュルバルマブ群のベネフィットが大きい傾向にあった。術後補助療法を受けたサブグループにおけるEFS中央値は両群で未到達であり(HR:0.62、95%CI:0.44~0.86)、術後補助療法を受けていないサブグループでは、それぞれ5.1ヵ月、5.2ヵ月であった(同:0.83、0.60~1.14)。・pCR達成の有無別にEFSを比較すると、いずれのサブグループでもデュルバルマブ群が良好な傾向にあった。pCR達成のサブグループにおけるEFS中央値は両群で未到達であり(HR:0.73、95%CI:0.22~3.28)、pCR未達成のサブグループでは、それぞれ41.2ヵ月、25.9ヵ月であった(同:0.81、0.64~1.03)。・DFS中央値は両群で未到達であった(層別HR:0.66、95%CI:0.47~0.92、層別log-rank検定のp=0.0137)。デュルバルマブ群でDFSが改善する傾向にあったが、本解析における有意水準は0.0123であり、統計学的有意差は認められなかった。3年DFS率は、それぞれ71.2%、61.4%であった。・OS中央値は両群で未到達であった(層別HR:0.89、95%CI:0.70~1.14)。デュルバルマブ群でOSが改善する傾向にあり、3年OS率は、それぞれ67.1%、63.9%であった。なお、本解析時点におけるOSの成熟度は35.3%であった。・Grade3/4の治療関連有害事象は、試験期間全体ではデュルバルマブ群33.4%(134/401例)、プラセボ群33.4%(133/398例)に認められ、術後補助療法の期間中ではそれぞれ7.5%(20/266例)、3.5%(9/254例)に認められた。 Heymach氏は、本研究結果について「米国食品医薬品局(FDA)が切除可能なNSCLCの周術期の治療薬として承認したデュルバルマブが、切除可能なNSCLC患者の新たな治療選択肢の1つとなることを支持するものである」とまとめた。

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男性のがん罹患状況、2022年データから2050年を予測

 男性は飲酒や喫煙など、がんの修正可能なリスク因子を有する割合が高く、結果としてがんの発症率が高く、生存率が低くなる。年齢層や国による差異を含め、男性におけるがん負担に関する包括的なエビデンスは乏しい。オーストラリア・クイーンズランド大学のHabtamu Mellie Bizuayehu氏らは、がんの罹患や死亡に関する2022年の世界的な統計データ(GLOBOCANデータ)を用いて2050年の予測値を算定、Cancer誌オンライン版2024年8月12日号で報告した。 本研究では、国際がん研究機関(IARC)による日本を含む185の国と地域対象の2022年のGLOBOCAN推定値を用いて、30種類のがんについて死亡率罹患率比(MIR、年齢調整死亡率/罹患率)を算定した。2050年の予測値については、人口動態予測を用いて計算された。労働年齢(15~39歳と40~64歳)および高齢者(≧65歳)に分類され、185の国と地域は人間開発指数(HDI)に基づき4分類された(低、中、高、非常に高)。 主な結果は以下のとおり。・2022年、世界の男性におけるがん罹患数は1,030万例、がんによる死亡数は540万例と推定され、罹患数と死亡数の約3分の2が高齢者(≧65歳以上)であった。・罹患数と死亡数でみると肺がんが最も多かったが、年齢層によって若干のばらつきがみられた(例:15~39歳では、罹患数は精巣がん、死亡数は白血病が最も多い)。・2022年、世界の男性におけるがんのMIRは54.9%と推定された。がん種別にみると甲状腺がんの7.6%から膵臓がんの90.9%までの範囲で、MIRが高かった3つのがん種は、膵臓がん、肝臓がん、食道がんであった。・MIRはHDIと逆相関しており、HDIが低い国で最も推定値が高く(73.5%)、HDIが非常に高い国で最も低かった(41.1%)。世界中の国と地域間でMIRに大きな差(約3倍)があり、ノルウェーの28.0%からガンビアの86.6%までの範囲であった(日本は32.7%)。・2050年までに世界の男性におけるがん罹患数は1,900万例に達すると予測され、2022年の推定値と比較して変化率は84.3%増となる。また、がんによる死亡数は1,050万例に達すると予測され、93.2%増となる。肺がんは引き続き最も一般的ながん種であり、罹患数と死亡数は2022年と比較して87%超の増加と予測された。・2022年から2050年の間に最も大きな増加が見込まれるがん種は、罹患数では中皮腫(105.5%増)、死亡数では前立腺がん(136.4%増)であった。・2022年から2050年の間にHDIの低い国や地域ではがんの罹患数と死亡数が2倍超(140%増)になると予測された一方、HDIの非常に高い国や地域では罹患数が50.2%増、死亡数が63.9%増と予測された。また、HDIが高いおよび非常に高い国・地域の15~39歳においては、罹患数と死亡数が約11%減少すると予測された。 著者らは、2022年に確認された男性におけるがん罹患数と死亡数の格差は、2050年までに拡大すると予測され、健康インフラの確保や国内外の協力、国民皆保険の推進などが極めて重要としている。

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近畿大学医学部 内科学腫瘍内科部門【大学医局紹介~がん診療編】

林 秀敏 氏(主任教授)三谷 誠一郎 氏(医学部講師)渡邉 諭美 氏(医学部講師)村岡 未沙子 氏(専攻医)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴われわれの理念は「がん患者さんの健康と幸福のためにすべてを行う」です。腫瘍に関わる内科診療をすべて自科で行います。肺、消化器、乳房、頭頸部、希少がんなど年間900例の新規患者さんを診療します。病棟は50床、化学療法目的は20%程度でほかは腫瘍救急や緩和ケア、ゲノム診療など内科的力量が鍛えられる環境となります。臨床、橋渡し、基礎研究(Mayoなどへの海外留学も!)も積極的に行っており、卒後10年以内でJAMA oncologyなど一流誌への筆頭著者としての論文発表も可能です。さまざまながんに対する治験も100以上行われており、われわれも研究者として名を連ねるNEJMやLancetなどにある新しい治療を先んじて経験可能です。文字通り、「すべてを行う」ことが可能な環境です。医師の育成方針専攻医は当初病棟にて腫瘍に関わる内科的診療や手技(実は手技が多いのも特徴です)を学びます。習熟度に応じて外来を1年目の下半期から開始とし、化学療法の決定、マネジメントをがん薬物療法専門医(国内大学最大数です)のサポートの元で行います。がんセンターはもちろん、大阪や関東など多くの基幹市中病院より当院で育成された腫瘍内科医が欲しい、という要望があり、実際に300~1,000床クラスの病院へ腫瘍内科を輩出してきました。オンオフははっきりしており、業務時間内はハードな勤務となりますが、いち早く「腫瘍内科医として1人で生きていける」ように支援します。医局における取り組み当科は、肺がん・消化器がん・乳がん・頭頚部がん・原発不明がんを中心として、さまざまな固形腫瘍を1つの科で臓器横断的に診療する点においては、日本で唯一無二と言っても過言ではありません。外来から入院まで途切れることなく診療に携わり、緩和医療にも関わる機会が多くあることも、当科の特徴と考えています。また、カンファレンスだけでなく、普段から若手の先生が質問、発言しやすい雰囲気づくりを心掛けています。医学生/初期研修医へのメッセージ実際に、上記のような点を、当科の魅力として捉えてもらって、本学内外を問わず、2024年度は6名の新入局員(専攻医5名)が加わり、来年度も複数名の先生を、新たな専攻医として迎える予定です。がん診療、とくに薬物療法の領域は、まだまだ発展途上の領域です。今後、ますます多くの仲間を加えて、がん診療の発展に貢献できればと考えています。当医局を選んだ理由私は元々臨床医を志していたのですが、この医局から新しいエビデンスが次々に生み出される様子を目の当たりにし、目の前にいる患者さんだけでなくこれからの患者さんによりよい治療を届けていくための研究の重要性を痛感し、自分も臨床だけでなく研究の側面でもがん治療に貢献していきたいと思い入局しました。医局の雰囲気、魅力産休・育休を二度経験しましたが、時短や日当直免除等その時々の状況に合わせて働き方を決めさせてもらっています。またオンラインカンファレンスを導入し、朝、子供の見送りがある医師が道中でも参加できるようになっています。男性医師も育休を取り、小さいお子さんがいる場合には8~16時といったフレキシブルな働き方も可能で、比較的自由度の高い職場であると感じています。カンファレンスは忌憚のない意見を言い合う雰囲気が良く、切磋琢磨しあえる環境があります。ぜひわれわれの医局に新しい風を吹き込みにやってきてください。当医局を選んだ理由私が腫瘍内科を志望したのは、絶えず進歩している抗がん剤治療を幅広く知りたいという気持ちがきっかけです。抗がん剤治療について調べる中で、近畿大学腫瘍内科の存在を知りました。そこでの多種多様ながん種に対する取り組みや豊富な臨床経験を持つ医師の層の厚さを見学の際に実感しました。その経験が決め手となって、入局を決意しました。現在学んでいること現在は、専攻医の1年目として肺がんや消化器がんをはじめとしたさまざまながん種の治療法や副作用マネジメント、緩和医療などを学んでいます。病棟業務から外来対応まで、多くの患者さんと接する機会があり、1人ひとりの異なるニーズに応えるのはとても難しいですが、上級医のサポートに助けられながら日々診療を行っています。この経験はこれから出会う患者さんへより良い医療を提供するための大きな財産になると思い、日々努力を重ねております。医学生/初期研修医へのメッセージ腫瘍内科に興味がある方には、ぜひ一度見学にお越しいただき当科での診療について、より具体的なイメージを持っていただければと思います。近畿大学医学部 内科学腫瘍内科部門住所〒589-8511 大阪府大阪狭山市大野東377-2問い合わせ先seiichiro.mitani@med.kindai.ac.jp医局ホームページ近畿大学医学部 内科学腫瘍内科部門専門医取得実績のある学会日本内科学会日本臨床腫瘍学会日本緩和医療学会日本呼吸器学会日本呼吸器内視鏡学会日本消化器病学会研修プログラムの特徴(1)臓器横断的な診療を、外来から入院まで主体的に担っており、緩和医療を実践する経験も豊富。(2)全国でも有数の治験実施施設であり、臨床研究が盛んであるだけでなく、橋渡し研究や基礎研究にも従事でき、学位取得も可能。希望者には海外留学を支援。(3)ライフワークバランスを考慮した勤務体制で、産休・育休取得も随時相談可能。

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EGFR陽性NSCLC、amivantamab+lazertinibはOS・PFS2も改善か/WCLC2024

 EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療について、EGFRおよびMETを標的とする二重特異性抗体amivantamabと第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬lazertinibの併用療法は、国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA試験」において、オシメルチニブ単剤と比較して無増悪生存期間(PFS)を改善したことが報告されている1)。米国・Henry Ford Cancer InstituteのShirish Gadgeel氏が、2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)でMARIPOSA試験の最新の解析結果を発表した。本発表では、amivantamabとlazertinibの併用療法はPFS2(後治療開始後のPFS)、全生存期間(OS)を改善する傾向がみられた。また、効果は長期にわたって持続することが示唆された。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:未治療のEGFR遺伝子変異(exon19delまたはL858R)陽性の進行・転移NSCLC患者・試験群1(ami+laz群):amivantamab(体重に応じ1,050mgまたは1,400mg、最初の1サイクル目は週1回、2サイクル目以降は隔週)+lazertinib(240mg、1日1回) 429例・試験群2(laz群)lazertinib(240mg、1日1回) 216例・対照群(osi群):オシメルチニブ(80mg、1日1回) 429例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定に基づくPFS(ami+laz群vs.osi群)[副次評価項目]OS、PFS2、頭蓋内PFSなど 今回の報告は事前に規定された中間解析ではないが、保健当局の要求により解析が実施され、ami+laz群とosi群における治療開始から中止までの期間(TTD)、後治療開始までの期間(TTST)、頭蓋内PFS、頭蓋内奏効率(ORR)、頭蓋内奏効期間(DOR)、PFS2、OSの比較結果が報告された。 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時点(2024年5月)における追跡期間中央値は31.1ヵ月であり、ami+laz群の44%(185/421例)、34%(145/428例)が割り付け治療を継続していた。・ami+laz群の155例、osi群の233例が病勢進行により治療を中止した。そのうち、それぞれ72%(111/155例)、74%(173/233例)が後治療を開始した。・TTD中央値は、ami+laz群26.3ヵ月、osi群22.6ヵ月であり、ami+laz群が長い傾向にあった(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.68~0.96、名目上のp=0.014)。・TTST中央値は、ami+laz群30.0ヵ月、osi群24.0ヵ月であり、ami+laz群が長い傾向にあった(HR:0.77、95%CI:0.65~0.93、名目上のp=0.005)。・頭蓋内PFS中央値は、ami+laz群24.9ヵ月、osi群22.2ヵ月であった(HR:0.82、95%CI:0.62~1.09、名目上のp=0.165)。・頭蓋内ORRは、ami+laz群77%、osi群77%であった。頭蓋内DOR中央値は、それぞれ未到達、24.4ヵ月であった。・PFS2中央値は、ami+laz群未到達、osi群32.4ヵ月であり、ami+laz群が良好な傾向にあった(HR:0.73、95%CI:0.59~0.91、名目上のp=0.004)。・OS中央値は、ami+laz群未到達、osi群37.3ヵ月であり、ami+laz群が良好な傾向にあった(HR:0.77、95%CI:0.61~0.96、名目上のp=0.019)。3年OS率は、それぞれ61%、53%であった。

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切除可能NSCLCへのニボルマブ、術前術後vs.術前(CheckMate 77T vs.816)/WCLC2024

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)の薬物療法について、術前および術後にニボルマブを用いた治療を受けた患者は、術前のみニボルマブを用いた治療を受けた患者と比較して、無イベント生存期間(EFS)が良好であることが示唆された。術前および術後にニボルマブを用いたCheckMate 77T試験、術前のみニボルマブを用いたCheckMate 816試験の個別被験者データ(IPD:Individual Patient-level Data)の解析により示された。米国・ジョンズ・ホプキンス大学Bloomberg-Kimmel Institute for Cancer ImmunotherapyのPatrick M. Forde氏が、2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)で本研究結果を発表した。 本研究は、CheckMate 77T試験(ニボルマブ+化学療法[3週ごと4サイクル]→手術→ニボルマブ[4週ごと1年間])またはCheckMate 816試験(ニボルマブ+化学療法[3週ごと3サイクル]→手術)に参加した患者のIPDを用いて実施した。評価項目は根治手術後のEFSとした。解析には傾向スコアマッチングの手法を用い、平均処置効果(ATE:Average Treatment Effect)の重み付け、治療群における平均処置効果(ATT:Average Treatment effect on the Treated)の重み付けを行った。 主な結果は以下のとおり。・CheckMate 77T試験に参加した139例(術前術後群)、CheckMate 816試験に参加した147例(術前群)が、今回の解析の対象となった。・根治手術後のEFSは、術前術後群が術前群と比較して良好であった。解析方法別のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 ATEの重み付け:0.61、0.39~0.97 ATTの重み付け:0.56、0.35~0.90 重み付けなし:0.59、0.38~0.92・根治手術後のEFSを病理学的完全奏効(pCR)の有無別にみると、いずれのサブグループでも術前術後群が良好な傾向にあったが、pCR未達成のサブグループでベネフィットが大きいことが示唆された。HRおよび95%CIは以下のとおり。 pCR達成:0.58、0.14~2.40 pCR未達成:0.65、0.40~1.06・根治手術後のEFSをPD-L1発現レベル別にみると、いずれのサブグループでも術前術後群が良好な傾向にあったが、PD-L1<1%のサブグループでベネフィットが大きいことが示唆された。HRおよび95%CIは以下のとおり。 PD-L1<1%:0.51、0.28~0.93 PD-L1≧1%:0.86、0.44~1.70・根治手術後のEFSをベースライン時のStage別にみると、全体集団と同様に術前術後群が良好な傾向がみられた。HRおよび95%CIは以下のとおり。 StageIB~II:0.53、0.25~1.11 StageIII:0.63、0.37~1.07・安全性は両群間で同様であった。Grade3~4の治療関連有害事象は術前術後群27%(38例)、術前群35%(52例)に発現し、中止に至った治療関連有害事象はそれぞれ6%(9例)、5%(8例)に発現した。

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75歳以上=高齢者は正しい?高齢者総合機能評価に基づく診療・ケアガイドライン

 2017年より日本老年学会・日本老年医学会の合同ワーキンググループが再検討・提言していた「高齢者」の定義が7年の時を経て、現行の65歳以上から“75歳以上を高齢者”とする動きにシフトしていく1)。しかし、患者を一概に年齢だけで判断し、治療時の判断基準にしてはいけない。その理由はこれと同時に発刊された『高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024』が明らかにしている。今回、ガイドライン(GL)作成代表者である秋下 雅弘氏(東京都健康長寿医療センター センター長)に本書の利用タイミングや活用方法について話を聞いた。いつ、どこで、誰がCGAする? 本GLの使い方(p.X)にも「明確な年齢上の区分は設けない。高齢者総合機能評価(CGA:comprehensive geriatric assessment)の最もよい対象は老年疾患や老年症候群を抱えて日常生活機能が低下した方であるが、必ずしも65歳以上とは限らない」と記載がある。同氏は「75歳以上が高齢者という定義を念頭に置きつつも、個々の生物学的年齢で判断することが重要。そのためにも機能低下がみられる成人の場合、75歳未満であっても本GLに掲載されている機能評価を使ってもらいたい」と個別化医療の観点から説明した。 CGAとは、疾患の評価に加えて日常生活活動度(ADL、基本的ADL・手段的ADL)、認知機能、気分・意欲・QOL、療養環境や社会的背景などを構成要素とし、評価/スクリーニングツールを使って系統的に評価する手法のことである。医療者であれば患者と接する際におのずと頭の中で意識していた内容が、構成要素として整理されたものだ。これを作成した目的について、同氏は「高齢者の状態に適した個別化医療やケアの提供のために利用するのはもちろん、高齢者の医療・ケアに関わる医師、医療者や介護福祉関係者が、多職種協働する際の共通言語となるように」と述べ、医療と介護福祉に携わる全職域が本GLの利用対象者であることを説明した。<CGAの構成要素とその主なツール>(1)スクリーニング(p.8~11)  CGA7、基本チェックリストなど(2)日常生活活動度(p.13~18)  ・基本的ADL:Barthel Index  ・手段的ADL:Lawton’s IADL、老研式活動能力指標(3)認知機能(p.19~26)  ・MMSE(Mini-Mental State Examination)、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)、DASC-21、ABC認知症スケールなど(4)気分・意欲・QOL(p.27~35)  ・GDS(Geriatric Depression Scale)、意欲の指標(Vitality Index)  ・QOL:Short From(SF)-8など(5)社会的背景(p.36~47)  ・要介護認定、家族関係、自宅環境、財産、地域医療福祉資源など 患者へCGAの介入をするタイミングは、職種によって異なる。同氏は「医師であれば、初診時、入院時、退院前、病状の変化時など日常的に実施してほしい。看護師は入院、退院支援、訪問看護の導入、高齢者施設の入所・入居に際して、その他の専門職は療養環境の変化時に、薬剤師は処方見直しに際して実施してほしい」とし、「現場で利用する→多職種共通の言語になる→高齢者に最適な医療提供ができる→それぞれの診療科でも利用価値が高まるというように、臨床でのCGAのメリットを実感してもらいたい」と強調した。 その一方で、今回の改訂までに21年もの年月を要した経緯について、「実際のところ、高齢者一人ひとりを評価するには手間がかかり、マンパワーが必要なゆえ、現場に広がらなかった。CGAを行う場所も確保できなかった」と説明。現時点でも外来での診療報酬加算がなく、CGAを実践してもそれに対する評価がされないことから、CGA実践のハードルの高さは否めないという。疾患ごとの有用性 とはいえ、昨今ではさまざまなガイドラインがMinds診療ガイドライン作成マニュアルに則り作成されているが、それらを高齢者に対して有効活用するためには、目の前の患者の身体・精神機能が高齢者あるいは高齢者に準ずるのかどうかをCGAできちんと判断したうえで、治療にあたることが求められるようになるだろう。p.50 からは高齢者が罹患しやすい疾患や症候群の管理について、各論が記載されている(1.フレイル/低栄養 2.認知症 3.ポリファーマシー 4.Multimorbidity 5.糖尿病 6.高血圧、心疾患 7.[誤嚥性]肺炎 8.骨折 9.外科手術[周術期] 10.悪性腫瘍)が、たとえば糖尿病の場合、研究報告の結果のみならず、本邦の『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』との整合性も考慮し、高齢糖尿病患者の管理にCGAを用いることを提案する(エビデンスの強さ:D、推奨度:2)となっている。悪性腫瘍については、疾患管理において唯一、エビデンスの強さA、推奨度1で合意されている。この領域ではCGAをgeriatric assessment(GA)と称し、診断と並行して行うアセスメントツールとして用いているため、他の疾患領域と比較し、生存効果、有害事象、QOL、入院に関する結果が見いだされている。 方や、(誤嚥性)肺炎に至っては、“CGAの有用性はFRQ(future research question)とし今後の研究に期待する”と記されており、以前より老年疾患として注目のある領域でも有用性の違いが生じていた。 このような課題を残しての次回改訂について、同氏は「エビデンスがないRCTを中心にシステマティックレビューを行ったこともあるが、LIFE(介護保険データ)が集積されるとFRQという次のステップにいけるのではないか」とコメント。さらに、同氏の専門領域であるポリファーマシーについても、「薬剤師は当然ながら、ほとんどの医師にもポリファーマシーが認識されるようになった。しかし、患者さんにポリファーマシーの重要性が届いているかは疑問が残るため、医療費適正化も踏まえて医療従事者へのCGAの啓発を行っていきたい」と締めくくった。

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がん疼痛に対するNSAIDsとアセトアミノフェン【非専門医のための緩和ケアTips】第83回

がん疼痛に対するNSAIDsとアセトアミノフェンがん疼痛の薬剤といえばオピオイドが真っ先に浮かびますが、NSAIDsとアセトアミノフェンも重要な鎮痛薬です。ではこの2つの鎮痛薬、どのように使い分けると良いのでしょうか? 似ているようで異なる2剤の使い分けについて考えてみます。今回の質問がん疼痛に対する非オピオイド薬鎮痛薬として重宝するNSAIDsとアセトアミノフェンですが、どのように使い分ければいいのでしょうか? 鎮痛効果はNSAIDsのほうが強いイメージがありますが、消化管出血などの副作用が心配です…。軽度~中等度のがん疼痛に対して推奨されるこの2剤ですが、根拠に基づいた使い分けをしていない方も多いようです。まずは、それぞれの薬理作用を復習してみましょう。NSAIDsは、炎症や疼痛に関与するプロスタグランジンの合成酵素であるCOXを阻害する薬剤です。鎮痛作用だけでなく、抗炎症作用も期待できます。一方で、腎障害、心血管、胃粘膜障害などの副作用があります。COXにはいくつかの種類があり、その選択性によって副作用の頻度が異なります。緩和ケア領域では症状緩和のために処方した薬剤で副作用が出ることは避けたいので、胃腸障害などの副作用がNSAIDsに比べて少ないCOX-2阻害薬を使用することが多い印象です。アセトアミノフェンは抗炎症効果がほとんど期待できない一方で、中枢性のCOX阻害により鎮痛効果を発揮します。また、下行性疼痛抑制系の活性化作用もあるとする報告も見られるようになりました1)。解熱薬としてもよく処方されるアセトアミノフェンですが、鎮痛薬として使用する際は投与量を注意しましょう。1日600〜800mg程度で解熱作用が期待されるのですが、鎮痛作用を期待する際はさらに投与量を増やす必要があります。1回500〜1,000mg、1日最大で4,000mgまで増量が認められています。主だった副作用に肝障害があり、肝機能に合わせた投与量調整が必要です。アセトアミノフェンで鎮痛を試みる際は、安全な範囲で十分量を使用することが大切です。さて、この2剤の使い分けですが、私自身は高齢のがん患者さんを診療することが多いため、アセトアミノフェンを優先して処方するケースが多いです。元々腎機能が悪い場合や心不全を懸念する患者に対しては、NSAIDsは避けることが多いです。一方、がん性腹膜炎や骨転移の痛みに対してはNSAIDsの有効性が知られているため、副作用が許容できる場合は積極的に使います。また、NSAIDsが使用しにくい状況であれば、ステロイドも選択肢となります。というわけで、アセトアミノフェンを処方することの多い私ですが、ここで注意すべき「落とし穴」があります。それは患者さんが知らないあいだにアセトアミノフェンが含まれる総合感冒薬などを服用し、過量投与になることがある点です。広く使いやすい薬剤だからこそ、知らないうちに過剰に内服していないかを確認する必要があるのです。今回のTips今回のTipsNSAIDsとアセトアミノフェンのそれぞれの特徴を理解し使い分けよう。1)Ayoub SS. Temperature(Austin). 2021;8:351-371.

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がん罹患の40%・死亡の44%が予防できる可能性

 米国におけるがん罹患の約40%とがん死亡の44%が、修正可能なリスク因子に起因していることが新たな研究で明らかになった。とくに喫煙、過体重、飲酒が主要なリスク因子であり、肺がんをはじめとする多くのがんに大きな影響を与えているという。A Cancer Journal for Clinicians誌オンライン版2024年7月11日号の報告。 米国がん協会(ジョージア州・アトランタ)のFarhad Islami氏らは、2019年(COVID-19流行の影響を避けるため、この年に設定)に米国でがんと診断された30歳以上の成人を対象に、30のがん種について全体および潜在的に修正可能なリスク因子に起因する割合と死亡数を推定した。評価されたリスク因子には、喫煙(現在および過去)、受動喫煙、過体重、飲酒、赤肉および加工肉の摂取、果物や野菜の摂取不足、食物繊維およびカルシウムの摂取不足、運動不足、紫外線、そして7つの発がん性感染症が含まれた。がん罹患数と死亡数は全国をカバーするデータソース、全国調査によるリスク因子の有病率推定値、および公表された大規模なプールまたはメタアナリシスによるがんの関連相対リスクから得た。 主な結果は以下のとおり。・2019年における米国の30歳以上の成人における全がん罹患数(非メラノーマを除く)の40.0%(71万3,340/178万1,649例)、全がん死亡数の44.0%(26万2,120/59万5,737例)が評価されたリスク因子に起因すると推定された。・全がんの罹患/死亡に関連するリスク因子の1位は喫煙(19.3%/28.5%)であり、2位は過体重(7.6%/7.3%)、3位は飲酒(5.4%/4.1%)であった。・評価対象となった30種のがんのうち、19種類のがんは罹患数および死亡数の2分の1以上が検討された評価されたリスク因子に起因していた。・リスク因子に起因するがんのうち、肺がんが罹患数(20万1,660例)および死亡数(12万2,740例)とも最多であり、罹患数は女性の乳がん(8万3,840例)、メラノーマ(8万2,710例)、大腸がん(7万8,440例)が続き、死亡数では大腸がん(2万5,800例)、肝がん(1万4,720例)、食道がん(1万3,600例)が続いた。 著者らは「米国における多数のがん罹患および死亡は、潜在的に修正可能なリスク因子に起因しており、予防策を幅広く公平に実施することにより、がんの負担を大幅に軽減できる可能性がある。喫煙対策としての課税強化、禁煙支援プログラムの拡充、そして健康的な体重維持の推進などが有効だろう。さらに適切な飲酒制限、バランスの取れた食事、定期的な運動もがん予防に有効だ」としている。

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ICI関連心筋炎の発見・治療・管理に腫瘍循環器医の協力を/腫瘍循環器学会

 頻度は低いが、発現すれば重篤な状態になりえる免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による免疫関連有害事象としての心筋炎(irAE心筋炎)。大阪大学の吉波 哲大氏が第7回日本腫瘍循環器学会学術集会でirAE心筋炎における問題点を挙げ、腫瘍循環器医の協力を呼びかけた。致死率20%を超えるirAE心筋炎 ICIは今や固形がんの治療に必須の薬剤となった。一方、ICIの適用拡大と共に免疫関連有害事象(irAE)の発症リスクも増加する。心臓に関連するirAEは心筋炎、非炎症性左室機能不全、心外膜炎、伝導障害など多岐にわたる。その中でもirAE心筋炎は、発現すると一両日中に、心不全、コントロール困難な不整脈を併発し、致死的な状況に追い込まれることもある1)。 irAE心筋炎はICIにより活性化したT細胞が心筋に浸潤し、心筋を傷害するために起こるとされる。irAE心筋炎の発現は1%前後であるが2)、死亡率は20%を超え、通常の心筋炎をはるかに上回る3)。とくに女性(調整オッズ比[aOR]:0.44、95%信頼区間[CI]:0.38〜0.51、p<0.01)、75歳以上(aOR:0.19、95%CI:0.14〜0.28、p<0.01)、ICI同士の併用(aOR:1.93、95%CI:1.19〜3.12、p=0.08)ではリスクが高い2)。irAE心筋炎の頻度は低いものの、ICIの適応拡大とともに遭遇機会は増えていると考えられる。irAE心筋炎発現時期はICI開始後30日程度(日本のデータでは18〜28日、米国のデータでは中央値34日)と報告されている4、5)。定期モニタリングとステロイドによる治療が原則 わが国のOnco-CardiologyガイドラインではirAE心筋炎スクリーニングに、心電図、トロポニンT、NT-pro BNP、NLR(好中球・リンパ球比)、CRPのモニタリングが有効な可能性を挙げている(FRQ6-1)。吉波氏も、月1回程度行うICIの定期モニタリング時にトロポニンT、NT-pro BNPなどの検査(リスクがあれば心電図)をすべきと提案する。また、irAE心筋炎に対するステロイド治療については、使用すべき種類・投与経路・用量は定まっていないものの、有用な可能性があるとしている(BQ6-2)。irAE心筋炎を管理してICI治療を実施するために腫瘍循環器医の協力を ICIのがん治療に対する影響は大きく、もはや固形がんでは必須の薬剤だ。ペムブロリズマブは周術期化学療法に併用することでトリプルネガティブ乳がんの再発リスクを37%低下させ6)、アテゾリズマブは化学療法に併用することでStageIVもしくは再発非小細胞肺がんの12ヵ月無増悪生存割合を約2倍にする7)。 「治りたい、長生きしたい」という患者の希望を実現するために、腫瘍診療医はirAE心筋炎を危惧しながらもICIを使っている。「irAE心筋炎の発見・治療・管理にぜひとも腫瘍循環器医の協力をお願いしたい」と吉波氏は訴える。■参考1)三浦理. 新潟がんセンター病院医誌. 2024;62:45-48.2)Zamami Y, et al. JAMA Oncol. 2019;5:1635-1637.3)Wang DY, et al. JAMA Oncol. 2018;4:1721-1728.4)Mahmood SS, et al. J Am Coll Cardiol. 2018;71:1755-1764.5)Hasegawa S, et al. Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2020;29:1279-1294.6)Schmid P, et al. N Engl J Med. 2022;386:556-567.7)Socinski MA, et al. N Engl J Med. 2018;378:2288-2301.

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Guardant360CDx、EGFR exon20挿入変異肺がんに対するamivantamab+化学療法のコンパニオン診断として承認/ガーダントヘルス

 ガーダントヘルスジャパンは2024年8月26日、リキッドバイオプシー検査Guardant360 CDx がん遺伝子パネル(Guardant360 CDx)について、Johnson&Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)が申請中の「EGFR遺伝子エクソン20挿入変異を有する手術不能又は再発非小細胞肺癌(NSCLC)」に対するamivantamabと化学療法の併用療法に関するコンパニオン診断として承認を取得したと発表。 肺がんは世界において罹患率や死亡率が高いがんの1つであり、NSCLCは全肺がんの約80〜85%を占めている。日本を含む東アジアにおける実臨床データのレトロスペクティブ解析では、NSCLC患者から約2.4%のEGFR遺伝子エクソン20挿入変異がGuardant360 CDxによって検出されている。 Guardant360 CDxは、2022年3月に承認された進行固形がん患者を対象とする包括的がん遺伝子パネル検査である。74のがん関連遺伝子を一度に調べると同時に、国内で承認された複数のがん治療薬に対するコンパニオン診断機能を併せ持つ。 Guardant360 CDx は下記のコンパニオン診断として承認されている。・KRAS G12C:(非小細胞肺がん)ソトラシブ・HER2 変異:(非小細胞肺がん)トラスツズマブ デルクステカン・EGFRエクソン20挿入変異:(非小細胞肺がん)amivantamab・BRAF V600E変異:(結腸・直腸がん)エンコラフェニブ、ビニメチニブおよびセツキシマブ・BRAF V600E変異:(結腸・直腸がん)エンコラフェニブおよびセツキシマブ・HER2コピー数異常:(結腸・直腸がん)トラスツズマブおよびペルツズマブ・KRAS/NRAS野生型:(結腸・直腸がん)セツキシマブ、パニツムマブ・MSI-High:(結腸・直腸がん)ニボルマブ・MSI-High:(固形がん)ペムブロリズマブ■関連記事フェスゴ配合皮下注発売でHER2陽性乳がん・大腸がんへの投与時間短縮に期待/中外

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非喫煙者の42%に肺がんと関連する肺結節所見

 45歳以上の非喫煙者(喫煙未経験者と元喫煙者)1万人以上を対象にした研究で、42.0%もの人に肺がんと関連する可能性のある肺結節が1つ以上認められたことが報告された。非喫煙者の肺がんリスクは、通常は低いと考えられている。この論文の上席著者を務めたフローニンゲン大学医療センター(オランダ)心胸部画像診断科教授のRozemarijn Vliegenthart氏は、「この数字は予想以上に高く、喫煙者のハイリスク集団で報告されている肺結節の発生率に近いものだった」と述べている。この研究の詳細は、「Radiology」に8月13日掲載された。 研究グループの説明によると、胸部CT検査で肺結節が見つかるのは珍しいことではなく、肺がんの高リスク集団においては初期肺がんの兆候である可能性が高い。また、肺結節の発生率とサイズに関する過去の研究の大半は、ヘビースモーカーの肺がん検診データに基づくものであり、現在の肺結節の管理に関する推奨のほとんどもこの集団をベースにしている。そのため、低リスク集団において肺結節が見つかった場合に現在のガイドラインに準拠すると、不必要な追加検査の実施につながる恐れもあるという。 Vliegenthart氏らは今回の研究で、45歳以上の非喫煙者1万431人(平均年齢60.4歳、女性56.6%、喫煙未経験者46.1%、元喫煙者53.9%)を対象に、肺結節の発生率とサイズの分布を年齢と性別ごとに調査した。 その結果、対象者の42.0%(4,377人、男性47.5%、女性37.7%)に1つ以上の肺結節が確認され、この割合は年齢とともに上昇することが明らかになった。また、臨床的に意味のある肺結節(結節サイズが6〜8mm以上)が認められた対象者の割合は11.1%で、この割合も年齢とともに上昇していた。さらに、男性の方が女性よりも肺結節が見つかる確率と複数の結節を持っている確率が高いことも示された。 ただしVliegenthart氏は、「これらの肺結節のほとんどは、がんではなかった。これらの非喫煙者での肺がん発症率は0.3%と極めて低く、発見された臨床的に意味のある結節や対応が必要とされる結節のほとんどが良性であることを示唆している」とフローニンゲン大学のニュースリリースで述べている。それでも、これらの結節が見つかった場合には、現行のがん検診ガイドラインに従った追加検査と診察が必要となる。 研究グループは、欧米諸国では喫煙者が減少傾向にあることに言及した上で、「肺がん検診のガイドラインを更新することが重要だ」との考えを示している。またVliegenthart氏は、「このような喫煙者の減少傾向に鑑みると、非喫煙者の肺結節に関する基礎的かつ包括的なデータを提供した今回の研究結果の重要性が増す」とニュースリリースの中で述べている。 なお、米国肺協会(ALA)によれば、肺結節はがん以外にも、大気汚染、関節リウマチのような慢性炎症性疾患、結核のような感染症によっても引き起こされるという。また、非喫煙者の肺結節は、交通事故や健康問題でX線検査やCT検査を受けたときに偶然、発見されることが多いという。

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ペムブロリズマブ、非小細胞肺がん術前・術後補助療法に承認/MSD

 MSDは2024年8月28日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)について、非小細胞肺がん(NSCLC)における術前・術後補助療法の国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得したと発表。 今回の承認は、臨床病期II、IIIAまたはIIIB(T3-4N2、UICC/AJCC 第8版)の周術期NSCLC患者797例(日本人82例を含む)を対象とした、国際共同第III相試験であるKEYNOTE-671試験の結果に基づいている。同試験において、ペムブロリズマブ・化学療法併用による術前療法とペムブロリズマブ術後療法の組み合わせは、化学療法による術前補助療法とプラセボの術後療法の組み合わせと比較して、全生存期間(OS)および無イベント生存期間(EFS)を有意に延長した(OS HR:0.72、95%信頼区間[CI]:0.56~0.93、p=0.00517、EFS HR:0.58、95%CI:0.46~0.72、p<0.001)1)。 安全性解析対象例396例中383例(96.7%)(日本人39例含む)に副作用が認められた。主な副作用(20%以上)は、悪心216例(54.5%)、好中球数減少169例(42.7%)、貧血143例(36.1%)、白血球数減少111例(28.0%)、疲労108例(27.3%)、便秘107例(27.0%)および食欲減退92例(23.2%)であった。

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EGFR陽性NSCLCへのオシメルチニブ、RECIST PDで中止すべき?(REIWA)

 EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)治療では、オシメルチニブが広く用いられているが、RECISTに基づく病勢進行(RECIST PD)後の臨床経過や治療実態は明らかになっていない。そこで、1次治療としてオシメルチニブを用いたEGFR遺伝子変異陽性患者を前向きに追跡する多施設共同観察研究(REIWA)が実施された。本研究において、オシメルチニブは実臨床においても既報の臨床試験と同様の有効性がみられたが、臨床的に安定した患者ではRECIST PD後にオシメルチニブを継続した場合、中止した場合と比べてRECIST PD後の全生存期間(OS)が短かった。本研究結果は、渡邊 景明氏(都立駒込病院)らによって、JTO Clinical and Research Reports誌2024年8月23日号で報告された。 本研究は、2018年9月~2020年8月の期間に1次治療として、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬による治療を受けたEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者660例のうち、オシメルチニブによる治療を受けた583例を対象とした。対象患者をRECIST PD時の病勢進行の部位(中枢神経のみ、オリゴ転移、複数臓器)、症状・全身状態(無症状、有症状かつ臨床的増悪なし、臨床的増悪あり)で分類し、臨床経過および治療実態を検討した。また、RECIST PD後にオシメルチニブを継続した患者(継続群)と中止した患者(中止群)を比較した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者583例におけるOS中央値は41.0ヵ月、無増悪生存期間(PFS)中央値は20.0ヵ月であった。・EGFR遺伝子変異別にみたOS中央値は、exon19欠失変異群が44.2ヵ月、exon21 L858R変異群が36.1ヵ月であり、exon19欠失変異群が有意に長かった(ハザード比[HR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.48~0.81、p=0.0004)。PFS中央値は、それぞれ23.5ヵ月、16.9ヵ月であり、exon19欠失変異群が有意に長かった(同:0.68、0.56~0.84、p=0.0002)。・RECICT PDは344例に認められ、部位別にみると中枢神経のみが37例(10.8%)、オリゴ転移が156例(45.4%)、複数臓器が151例(43.9%)であった。症状・全身状態別にみると無症状が195例(56.7%)、有症状かつ臨床的増悪なしが73例(21.2%)、臨床的増悪ありが76例(22.1%)であった。・RECIST PD後もオシメルチニブを継続したのは163例(47.4%)であった。・臨床的増悪のない集団(247例)を対象として、RECIST PD後のオシメルチニブ継続の有無別にみた場合のRECIST PD後のOS中央値は、継続群が13.2ヵ月、中止群が24.0ヵ月であり、継続群は中止群と比べて有意にRECIST PD後のOSが短かった(HR:2.01、95%CI:1.38〜2.91、p=0.0002)。・2次治療として化学療法による治療を実施した患者は、継続群が63例(38.7%)、中止群が114例(63.3%)であった。

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NCCNガイドライン推奨の分子標的薬、臨床的有用性は?/BMJ

 精密医療に基づく腫瘍学(precision oncology)は、とくに進行性の治療抵抗性症例に対するがん治療を変革しつつあるが、多くの遺伝子変異の臨床的重要性は依然として不明とされる。米国・ハーバード大学医学大学院のAriadna Tibau氏らは、National Comprehensive Cancer Network(NCCN)が推奨する分子標的とゲノム標的がん治療薬を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)の2つの枠組みを用いて評価し、固形がんに対するゲノムに基づく治療薬のうち、患者に高い臨床的有益性をもたらす可能性があるのは約8分の1で、約3分の1は有望ではあるが実質的な有益性は証明されていないことを示した。研究の詳細は、BMJ誌2024年8月20日号で報告された。標的の有効性と治療薬の臨床的有益性を横断研究で評価 研究グループは、NCCNが実臨床で推奨しているゲノム標的がん治療薬とその分子標的について、臨床的有益性と有効性を評価する目的で横断研究を行った(Kaiser Permanent Institute for Health Policy and Arnold Venturesなどの助成を受けた)。 NCCNガイドラインが進行がんに対して推奨しているゲノム標的がん治療薬を対象とした。分子標的の有効性は、ESMO-Scale for Clinical Actionability of Molecular Targets(ESCAT、レベルI~Xの10段階、レベルが低いほど有効性のエビデンスが高度)を用いて評価し、ゲノム標的がん治療薬の臨床的有益性(効果、有害事象、生活の質のデータに基づく)の評価には、ESMO-Magnitude of Clinical Benefit Scale(ESMO-MCBS)を使用した。 実質的な臨床的有益性(ESMO-MCBSのグレード4または5)を示し、ESCATカテゴリーのレベルIに該当する分子標的を有する薬剤を有益性の高いゲノムに基づくがん治療と判定した。また、ESMO-MCBSのグレードが3で、ESCATカテゴリーのレベルIに該当する分子標的を有する薬剤は、有望ではあるが有益性は証明されていないがん治療と判定した。FDA承認は60%、第I/II相78%、単群試験76% 50のドライバー変異を標的とする74のゲノム標的薬に関する411件の推奨について調査した。411件の推奨のうち、米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ていたのは246件(60%)で、165件(40%)は適応外使用であった。 薬剤クラスは、低分子の阻害薬が286件(70%)、免疫療法薬が66件(16%)、抗体製剤が37件(9%)、抗体薬物複合体が14件(3%)だった。がん種は、肺がんが83件(20%)、乳がんが49件(12%)、大腸がんが17件(4%)、前立腺がんが5件(1%)であった。 ほとんどの推奨(346/411件[84%])は、さまざまな相の臨床試験に基づいていたが、16%(65/411件)は症例報告または前臨床研究のみに依存していた。多くの臨床試験は、第I相または第II相(271/346件[78%])であり、単群試験(262/346件[76%])が多かった。また、主要評価項目は、多くが全奏効率(271/346件[78%])であり、生存率は3%(12/346件)だった。NCCNガイドラインは実臨床で重要な役割 ESCATのレベルIは60%(246/411件)であり、レベルIIまたはIIIは35%(142/411件)、レベルIV~Xは6%(23/411件)であった。また、ESMO-MCBSのスコア化が可能であった267試験では、実質的な臨床的有益性(グレード4/5)を示したのはわずか12%(32/267試験)で、グレード3は45%(121/267試験)だった。 これら2つの枠組みを組み合わせると、約8分の1(12%[32/267試験])の試験が高い有益性を、約3分の1(33%[88/267試験])は有望ではあるが証明されていない有益性を示した。また、NCCNガイドラインが、好ましいとして支持する118個の介入のうち、62個(53%)が高い有益性または有望ではあるが証明されていない有益性を有する治療に分類され、これらの治療はFDAの承認を得る可能性が高かった(61% vs.16%、p<0.001)。 著者は、「このようにNCCNの推奨と期待される臨床的有益性との一致を確認することは、エビデンスベースのゲノムに基づく治療決定を促進するためにきわめて重要である」とし、「ESMO-MCBSやESCATのような有益性の評価の枠組みは、どのゲノム標的治療が最も質の高いエビデンスに裏付けられているかを見極めるのに役立つ」と述べ、「NCCNガイドラインは実臨床において重要な役割を果たしており、今後ともNCCNの推奨の改善に注力する必要がある」としている。

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