217.
<先週の動き>1.2025年、かかりつけ医機能報告制度スタートに向けて検討/厚労省2.新型コロナ治療薬ラゲブリオ、7月から8.2%薬価引き下げ/厚労省3.マイナ保険証利用促進に向けた集中取り組み月間開始/厚労省4.少子高齢化が進行、65歳以上の人口が初めて2,000万人を超える/総務省5.子供の入院時、4割の医療機関が家族付き添いを要請/こども家庭庁6.画像診断の報告書確認が遅れ、患者が死亡/名古屋大学1.2025年、かかりつけ医機能報告制度スタートに向けて検討/厚労省厚生労働省は、4月12日に「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」を開催、2025年4月に施行予定の「かかりつけ医機能報告制度」に向けて、医療機関からの報告要件を議論した。この制度は、医療機関がどのようなかかりつけ医機能を有しているかを患者に対して明らかにし、患者の医療機関選択をサポートする目的で実施される。さらに地域医療の提供体制を強化するため、地域全体で機能を補完する形の協力体制を確立することも求められている。分科会では、医療機関に要求される報告内容として、通常の診療時間外の対応、入退院時の支援、在宅医療の提供、介護との連携などが提案されている。また、地域における医療ニーズに応じたかかりつけ医機能の確保と、それに必要な医師の教育や研修の充実が議論された。報告の具体案は、2024年5月の会合で示される予定であり、病院や診療所がどのように機能しているかの透明性を高めることが期待されている。報告制度は、地域ごとの医療の質の向上に寄与し、患者が自分の症状に最適な医療機関を選べるようにすることを目指している。参考1)第4回 かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会 資料(厚労省)2)「かかりつけ医機能」報告、厚労省が論点示す 報告内容など、5月中に具体案(CB news)3)かかりつけ医機能報告制度、「患者の医療機関選択」支援を重視?「地域での医療提供体制改革」論議を重視?-かかりつけ医機能分科会(Gem Med)2.新型コロナ治療薬ラゲブリオ、7月から8.2%薬価引き下げ/厚労省厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症治療薬ラゲブリオ(一般名:モルヌピラビル)の薬価を7月1日から8.2%引き下げると発表した。この薬価改定は、中央社会保険医療協議会(中医協)において承認された費用対効果評価結果に基づいて行われるもの。モルヌピラビルは現在、1回の治療費が9万4,312円で、7月からの新薬価は8万6,596円となる。この薬はとくに重症化リスクが高い成人患者向けに使用され、治療の有効性とコストのバランスが評価された。分析では、ラゲブリオを使用した患者群と抗ウイルス薬を使用しない患者群との間で入院や死亡リスクに有意な差はみられなかった一方で、治療費の増加が確認されたため薬価の調整が必要と判断された。同様の評価が他の薬にも適用され、一例として慢性腎臓病治療薬ケレンディア(同:フィネレノン)は2.7%の薬価引き下げとなった。これらの薬価調整は、医療機関の在庫への影響を考慮し、新薬価の適用開始日が設定されている。中医協は、この決定を通じて、医療の費用効率の向上と患者への負担軽減を図ることを目指している。参考1)医薬品・医療機器等の費用対効果評価案について(厚労省)2)コロナ飲み薬 7月から薬価引き下げ 厚労省、費用対効果を分析(朝日新聞)3)中医協総会 ケレンディアは2.7%、ラゲブリオは8.2%薬価引下げ了承 費用対効果評価で 7月1日適用(ミクスオンライン)4)ラゲブリオ薬価8.2%引き下げ、7月から ケレンディアはマイナス2.7%(CB news)3.マイナ保険証利用促進に向けた集中取り組み月間開始/厚労省厚生労働省は、4月10日に社会保障審議会医療保険部会を開催した。現行、紙の健康保険証は、2024年12月2日に廃止される一方、利用が伸び悩んでいるマイナ保険証の利用促進強化を進めることを決定した。厚生労働省によれば、2023年3月のマイナ保険証利用率は5.47%と低迷しており、これを改善するために2024年5月~7月までを「マイナ保険証利用促進集中取組月間」と定め、積極的な推進活動を行う。経済団体、医療団体、保険者などが連携する健康寿命延伸と医療費適正化の支援活動を行う「日本健康会議」は、4月25日に東京都で医療DX推進フォーラム「使ってイイナ!マイナ保険証」を開催する。このイベントはオンラインでも中継され、武見 敬三厚生労働省大臣を含む3閣僚が参加し、利用促進宣言を行う予定。具体的な施策として、医療機関や薬局でマイナ保険証の利用者数を増やした場合、最大20万円の一時金が支給されることになった。支給の条件には、患者への声掛けやチラシの配布などが条件となっているさらに、厚労省は広範なメディアを利用した広報活動を展開し、医療機関のデジタル化推進体制整備に対しても支援を行う。また、新たに設けられた一時金は、医療機関が2023年10月以降に利用率向上を達成した場合に支給される。一方、この政策には批判もあり、公的資金を使用してのキャンペーンに対する疑問の声が上がっている。とくに金銭的インセンティブを用いた利用促進策が適切かどうかが議論の的となっている。しかし、厚労省はマイナ保険証が医療の質を向上させる重要なツールであるとし、その普及に向けた努力を続けるとしている。参考1)医療DX推進フォーラム「使ってイイナ!マイナ保険証」開催のお知らせ(日本健康会議)2)マイナ利用増、支援金 厚労省、医療機関に最大20万円(毎日新聞)3)「マイナンバーカードによる受診」実績等もとに、最大で病院20万円、クリニック10万円の一時金を今夏支給-社保審・医療保険部会(Gem Med)4)マイナ促進、6-11月の支援金を「一時金」に見直し 医療DX推進加算の新設に伴い(CB news)5)マイナ保険証利用促進宣言へ、日本健康会議 25日の医療DXフォーラムで、3閣僚出席(同)4.少子高齢化が進行、65歳以上の人口が初めて2,000万人を超える/総務省総務省は、4月12日に2023年のわが国の人口が前年比59万5,000人減少し、総人口は1億2,435万2,000人になったと発表した。わが国の人口減少は、13年連続で減少率は1950年以降で2番目に大きい。とくに、65歳以上の高齢者人口は2,007万8,000人増加し、全人口の約16.1%を占める。これは、少子高齢化の進行を示し、生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少が続き、全体の約59.5%となった。厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2033年には世帯の平均人数が初めて2人を割り、1.99人になると予測されている。2050年までに、わが国の5,261万の全世帯のうち44.3%が1人暮らしの独居世帯となり、高齢者が半数近くを占める見込み。さらに未婚率の高い高齢者の割合も急増し、未婚の男性高齢者は約60%、女性は約30%に上るとされている。この人口動態の変化は、社会保障制度、とくに年金制度に大きな影響を与えており、労働力人口の減少と高齢者人口の増加により、年金財政の悪化が進行し、将来的な制度改革が急務となっている。さらに、外国人労働者の増加が新たな労働力として注目されている一方で、わが国の社会保障制度の持続可能性の確保が重要な課題となっている。参考1)人口推計(2023年)ー全国:年齢(各歳)、男女別人口・都道府県:年齢(5歳階級)、男女別人口ー(総務省)2)『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』[2024年推計](国立社会保障・人口問題研究所)3)日本人人口、減少幅最大の83万人 外国人が労働力補う(日経新聞)4)平均世帯人数、初の2人割れへ=22年に、厚労省研究所推計-未婚化で単独高齢者増加(時事通信)5)23年総人口、13年連続減 59万人少ない1億2,435万人(日経新聞)6)2023年の日本の総人口 前年より60万人近く減少と推計 総務省(NHK)5.子供の入院時、4割の医療機関が家族付き添いを要請/こども家庭庁こども家庭庁によると、子供が入院する際、44%の医療機関が家族の付き添いを要請していることが明らかになった。付き添い入院は、原則任意であり、看護師が主にケアを担当することが一般的だが、小児の入院の際は家族が協力を求められるケースが多いとされていた。同庁が実施した調査結果によれば、付き添いが難しいと感じた家族が入院を見送ったり、他院への転院を考えたりする例が36%に上った。多くの医療機関は、とくに小さな子供の場合に付き添いを求める際に、家族の付き添いは子供の不安を和らげる効果もあるためと回答している。しかし、付き添い中の家族が直面する困難も多く、適切な寝具の提供がないためソファで寝るケースや、食事の調達が問題となることもある。実際、寝具の貸与が行われていない病院は15%に上り、食事は主にコンビニでの購入となっている。今回の調査結果を受け、同庁は医療機関に対して、保育士の配置など家族を支援する体制整備を促している。今後、付き添い入院の環境改善に向けた対策が、さらに進むことが期待される。参考1)令和5年度子ども子育て支援推進調査研究事業「入院中のこどもへの家族等の付添いに関する病院実態調査」の報告書及び事例集について(こども庁)2)子供入院時の家族付き添いは「病院が要請」44%、ソファで寝るケースも こども庁調査(産経新聞)3)子どもへの「付き添い入院」医療機関の4割要請…こども家庭庁調査、保育士らの手厚い配置促す(読売新聞)4)こどもの入院で家族の付き添い4割、転院調整も 全国医療機関調査(朝日新聞)6.画像診断の報告書確認が遅れ、患者が死亡/名古屋大学名古屋大学医学部附属病院は、画像診断の報告書の見落としによって肺がん診断が遅れ、患者が死亡する事例が発生したことを4月11日に公表した。報告書によると2016年3月、80代男性患者が腹痛を訴え胸腹部のCT検査を受けた。放射線科医は、肺に異常陰影を認めたため、肺がんの除外目的で追加検査を推奨した。しかし、泌尿器科の主治医はこの報告書を十分に熟読せず、放置したため、患者はその後、無治療で過ごし、2019年7月に肺がんと診断された。肺がんの発見が遅れたために患者の病状は進行し、手術不可能な状態となり、患者は2022年3月に肺がんおよび転移による腫瘍死によって死亡した。名古屋大学の安全推進委員会によって設置された「事例調査委員会」によってこの事例が調査され、2024年3月に調査報告書が取りまとめられた。報告書によると、肺がんの診断が適切に行われていれば、肺がんは初期段階で発見され、根治可能であった可能性が高いとされている。事例調査委員会の報告を踏まえ、病院は遺族に対して説明と謝罪を行い、賠償を行った。さらに、放射線科の報告書に対する対応の見落としを防ぐための再発防止策を強化することを発表した。この事例から、画像診断レポートの確実な読解と対応の重要性が再確認され、放射線科医からの報告に対する適切な臨床的フォローアップの必要性が浮き彫りとなった。また、患者とのコミュニケーションの改善と、医療チーム内の情報共有の徹底が求められている。参考1)画像診断レポートに記載された所見に対応せず、肺癌が進行し死亡した事例について(名大)2)肺がん疑い見落とし治療2年以上遅れるミス、病状悪化し80代男性死亡…名古屋大病院が遺族に謝罪(読売新聞)3)名大病院で医療ミス、医師がCT結果見落とす 肺がん進み男性死亡(朝日新聞)