サイト内検索|page:51

検索結果 合計:4958件 表示位置:1001 - 1020

1001.

日本人2型糖尿病でのチルゼパチドの効果、GLP-1RAと比較/横浜市立大

 横浜市立大学 循環器・腎臓・高血圧内科学教室の塚本 俊一郎氏らの研究グループは、日本人の2型糖尿病患者を対象に、新規GLP-1RAであるセマグルチドやGLP-1/GIPデュアルアゴニストであるチルゼパチドについて、従来の薬剤との比較や用量毎の治療効果の違いをネットワークメタ解析手法で解析した。その結果、チルゼパチドは比較した薬剤の中で最も体重減少とHbA1cの低下効果が高く、目標HbA1c(7%未満)の達成はチルゼパチドとセマグルチドで同等だった。Diabetes, Obesity and Metabolism誌2023年10月12日号の報告。日本人2型糖尿病患者3,875例を解析 研究方法として2023年7月までのPubMed、MEDLINE、EMBASE、Cochrane Libraryを系統的に検索。日本人の2型糖尿病患者においてGLP-1RAまたはGIP/GLP-1RAを比較した無作為化対照試験(RCT)を選択した。HbA1c値および体重減少における有効性に焦点を当て、間接的に治療法を比較するためにネットワークメタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・合計18のRCT、3,875例の日本人2型糖尿病患者が解析対象となった。・チルゼパチド15mgは、セマグルチド1.0mg皮下投与およびセマグルチド14mg経口投与と比較して、HbA1c値および体重を最も有意に減少させた。 HbA1c:平均差(95%信頼区間[CI])-0.52(-0.96~-0.08)および-1.23(-1.64~-0.81) 体重:平均差(95%CI)-5.07(-8.28~-1.86)および-6.84(-8.97~-4.71)・セマグルチド皮下投与は、経口投与と比較してHbA1cの優れた低下を示した。・皮下セマグルチド、経口セマグルチドともにデュラグルチド、リラグルチド、リキシセナチドなどの従来のGLP-1RAよりも有効だった。

1002.

英語で「理論的には同意、現実には反対」は?【1分★医療英語】第103回

第103回 英語で「理論的には同意、現実には反対」は?《例文1》It is not practical to do both surgeries at the same time.(両方の手術を同時にやることは現実的ではありません)《例文2》Logistically, it is impossible to use both drugs at the same time.(現実的には、両方の薬を併用することは不可能です)《解説》インターネット、SNSで情報が氾濫する昨今では、患者さんの側からさまざまな治療を提案されることも多く、その中には現実的でない案もあります。そんなときには、このフレーズが便利です。「理論的には=“in theory”」と「現実的には=“in reality”」を対比させることで、相手の意見を認めつつ、自分の意見を述べるための導入になります。類似表現として、“practical/practically”、“logistic/logistically”も、「現実的には」という意味合いで頻用します。“logistic”という単語は、英和辞書では「物流的な」という訳語が出てきますが、私の経験上では「(主に時間的・物理的な制限において)現実的な」という意味合いで頻用される単語です。講師紹介

1003.

第168回 インフルエンザ感染者、前週比1.48倍に増加、愛媛県で警報発令/厚労省

<先週の動き>1.インフルエンザ感染者、前週比1.48倍に増加、愛媛県で警報発令/厚労省2.2024年度診療報酬改定、人材確保と働き方改革が重点/中医協3.脳死判定者数、累計1,000例を達成、移植待機患者の課題も/JOT4.GLP-1ダイエットの安全性を懸念「禁止すべき」/日本医師会5.2023年度研修医マッチング率、前年度比で0.3ポイント上昇/厚労省6.2021年度の国民医療費、初の45兆円突破、高齢者医療費が6割以上/厚労省1.インフルエンザ感染者、前週比1.48倍に増加、愛媛県で警報発令/厚労省厚生労働省は10月27日、全国の定点医療機関からの報告に基づき、インフルエンザの感染者数が前週比1.48倍の約54万4,000人に増加したと発表した。とくに愛媛県では1医療機関当たりの感染者数が最も多い39.90人となり、「警報」の基準を超えていた。千葉県と埼玉県も警報の基準に迫る感染者数を記録している。全国の教育施設で、休校や学級閉鎖となった施設は合計3751施設にのぼる。2020年の新型コロナウイルスの流行以降、インフルエンザの流行規模は縮小していたが、免疫の低下などの影響で感染が広がっているとみられている。厚労省は、マスクの着用や手洗いなどの基本的な感染対策の徹底を呼びかけている。参考1)インフルエンザの患者数 前週比1.5倍に 増加傾向続く(NHK)2)インフル感染者数、前週比1.48倍 推計54万人 愛媛で「警報」(毎日新聞)2.2024年度診療報酬改定、人材確保と働き方改革が重点/中医協10月に入り、中央社会保険医療協議会(中医協)では、医療従事者の処遇改善を巡る議論が活発化している。物価高に対して賃上げ対応ができないため、医療・介護分野から人材の流出によって、地域医療の存続が危機にさらされている。看護職員に対しては、昨年10月に3%程度(月額平均1万2,000円相当)給与を引き上げる「看護職員処遇改善評価料」を新設したが、薬剤師などは対象外となっていた。一方、厚生労働省は2024年度の診療報酬改定に向けて、人材確保や働き方改革を重点課題として提案。とくに看護師や准看護師の求人倍率が「全職種」を上回る状況が指摘され、地方における医療の確保が重要な課題となっている。参考1)来年度の診療報酬改定 “処遇改善し人材確保など重点” 厚労省(NHK)2)医療従事者の処遇改善の議論始まる、中医協で 人材流出「地域医療の存続に関わる」と日医委員(CB news)3)改定基本方針の重点課題に「人材確保」、厚労省案「他産業の賃上げに追いつかず、状況悪化」(同)4)医療従事者の給与アップ財源を「診療報酬引き上げ」に求めるか、「医療機関内の財源配分」(高給職種→低い給与職種)に求めるか-中医協総会(Gem Med)3.脳死判定者数、累計1,000例を達成、移植待機患者の課題も/JOT日本臓器移植ネットワーク(JOT)は28日、国内の脳死判定が累計1,000例に、臓器移植法施行から26年で達成したと発表した。当初は脳死判定は伸び悩んでいたが、2010年の法改正によって、本人の意思が不明でも家族の承諾で臓器提供が可能になったことが、増加の大きな要因となっている。また、同法改正で15歳未満の子供からの提供も認められるようになった。累計1,000例目は、中国・四国地方の病院に脳出血で入院していた60代男性が、家族の承諾を得て脳死と判定された例である。今年に入り、脳死提供数は過去最多の100件となっている。しかし、欧米諸国との比較では、国内の提供者数は依然として少なく、移植を希望する患者の待機期間が長引く課題が続いている。JOTの公表資料によれば、都道府県別の脳死下の臓器提供件数にはばらつきがあり、提供の意思を積極的に生かす地域が多いと指摘されている。また、移植を希望してJOTに登録している患者数は、9月末時点で約1万5千人以上おり、昨年は待機中の429人が亡くなっている。参考1)脳死判定、累計1,000例に 臓器移植法施行から26年(共同通信)2)脳死臓器提供1,000例目は60代男性…法施行から26年、欧米と比べドナー少なく(読売新聞)3)脳死下の臓器提供、救急医学の専門家「提供の意思を生かせる体制作りを」(同)4.GLP-1ダイエットの安全性を懸念「禁止すべき」/日本医師会日本医師会は10月25日に開いた記者会見で、急増する「GLP-1ダイエット」に関して懸念を明らかにした。近年、糖尿病の治療にGLP-1受容体作動薬が承認され、臨床で用いられるようになったが、食欲抑制の副作用を用いてダイエット療法を行うため、個人輸入を行ったり、自由診療を行う医療機関を受診する患者が増えている。医師会は、臨床試験で示されている一部の副作用、とくに吐き気や下痢などがある上、GLP-1ダイエットの長期的な効果や安全性に関するデータがまだ不十分であることを指摘し、「GLP-1ダイエットを試みる際には、専門家のアドバイスや監督のもとで行うことが非常に重要である」と強調した。さらに、GLP-1ダイエットが一般の人々の間で流行する前に、適切なガイドラインや教育の提供が必要であるとの考えを示した。医師会の声明には、健康や美容目的で新しいダイエット方法を追求する中で、安全性と効果についての十分な情報を持って選択することが重要であり、不適正な処方によって出荷調整するメーカーが出現するなど、糖尿病治療に影響が出ているため、「禁止すべき」と見解を明らかにした。参考1)糖尿病治療薬等の適応外使用について(日本医師会)2)GLP-1ダイエット「禁止すべき」-日医会見で見解(日本医事新報)3)ダイエットのために糖尿病治療薬、日医が懸念「入手困難」な医療機関も(CB news)4)「糖尿病治療薬でダイエット」が横行か 品薄で薬が必要な人に届かない…専門家が「罪深い」と語る理由(東京新聞)5)日医・宮川常任理事 GLP-1ダイエット「処方ではない」 適応外使用で顕在化しない副作用に警鐘(ミクスオンライン)5.2023年度研修医マッチング率、前年度比で0.3ポイント上昇/厚労省厚生労働省は、10月26日に2023年度の研修医マッチングの結果を公表した。全国の研修医受け入れ能力の拡大に伴い、受験者全体の約98.5%が希望する施設とマッチングした。これは前年度に比べて0.3ポイントの上昇で、マッチング率の向上が続いている。とくに注目されるのは、地方都市や過疎地域でのマッチング率の上昇であり、これまでは地方都市や過疎地では研修医の確保が難しく、医師不足が深刻な問題となっていた。しかし、今年度は都市部と地方都市でのマッチング率の差が縮小。過疎地域では、地域医療の充実を目指す取り組みやインセンティブの提供などが奏功したと分析されている。一方、都市部では引き続き高いマッチング率が維持されているが、一部の大学病院や指定都市での競争率が高まる傾向がみられ、研修の質や研修施設の評価、将来のキャリアパスなどが受験者の選択に影響しているとの声もある。マッチング結果を受け、医学教育の関係者や自治体は、今後の研修医制度のさらなる充実や地域医療への取り組みを強化する方針を示している。参考1)令和5年度の医師臨床研修マッチング結果をお知らせします(厚労省)2)医師臨床研修マッチングの内定者数が減少 厚労省が23年度の結果を公表(CB news)3)市中病院にマッチした医学生は64.2% マッチング最終結果、フルマッチは21校(日経メディカル)6.2021年度の国民医療費、初の45兆円突破、高齢者医療費が6割以上/厚労省厚生労働省は、2021年度の国民医療費が前年度比4.8%増の45兆359億円となり、初めて45兆円を突破したことを発表した。医療費の増大の要因としては、新型コロナウイルス関連の医療費や、医療技術の進展、高齢化の進行が主な要因とみられる。1人当たりの医療費も前年度比で5.3%増の35万8,800円となり、とくに0~14歳の年齢層での増加が顕著だった。年齢別の医療費では、65歳以上が全体の約60.6%を占めるなど、高齢者の医療費が大きなシェアを占めていた。また、傷病別では、循環器系の疾患の医療費が全体の約19%と最も多かった。20年度は新型コロナウイルスの感染拡大による受診控えや、感染症の流行減少などで医療費が減少したが、21年度には再び増加に転じた。医療費の財源については、保険料が全体の半数、国費などの公費が全体の38%を占めていた。参考1)令和3(2021)年度 国民医療費の概況(厚労省)2)令和3年度の国民医療費は45兆359億円で過去最高(社会保険研究所)3)国民医療費は45兆円超 21年度確定値、コロナ対応で増-厚労省(時事通信)4)国民医療費、21年度4.8%増の45兆円 過去最高を更新(日経新聞)5)国民医療費が初の45兆円超え、1人あたり5.3%増の35万8,800円…21年度(読売新聞)

1005.

患者が油断しがちな健診結果の項目とは

 日本ベーリンガーインゲルハイムと日本イーライリリーは、各領域の専門医と連携し、健康診断で「要精密検査」や「要治療」といった異常所見があった際の二次検査の受診促進の取り組みとして、2023年10月17日に『ニジケンProject』を発足した。また、本プロジェクトの一環として二次検査に関する調査を実施したところ、3人に1人が健康診断の二次検査を「既読スルー」している現状であることが明らかになった。 本プロジェクトは、近年の心不全、腎臓病、糖尿病の患者の増加とそれに伴う医療費への影響を踏まえ、健康診断後に「要精密検査」や「要治療」といった異常所見がみられた人に対し二次検査(ニジケン)の受診を促進することで、とくに慢性的な疾患の早期発見・早期治療への貢献を目指す。今回、その活動の1つとして、日本ベーリンガーインゲルハイム、日本イーライリリーは調査監修者として寺内 康夫氏(横浜市立大学大学院医学研究科 分子内分泌・糖尿病内科学)らを置き、二次検査実態調査の一次調査(スクリーニング)*1ならびに二次調査(本調査)*2を実施した。*1:全国の40~69歳の男女6万857人が対象。設問は居住都道府県別や職業、検診経験の有無や異常所見の有無など。*2:一次調査において、「糖代謝検査(血糖値)」「腎尿路系検査(腎機能、尿検査)」「心電図検査」「呼吸器系検査(胸部X線)」で異常所見があった40〜69歳の男女4,700人を対象とした。心電図検査に緊急性/必要性を感じない!? この二次調査の結果によると、健康診断または人間ドックにおいて、心臓病・腎臓病・糖尿病に関わる検査項目の中で1つでも異常所見*3が指摘された人のうち、約3人に1人(38.2%)は「二次検査」を受診していない項目あり、その理由には「現時点での緊急性/必要性を感じないから(35.8%)」が最も多く、次いで「自覚症状がないから(24.0%)」が挙がった。とくに心電図検査でこれらの回答がやや多かった。ただし、今回の調査対象者の二次検査非受診者(1,348例)のうち約40%は「心腎代謝関連による合併症リスクを知っていれば二次検査を受診する」と回答し、再検査や精密検査を受けたほうがよいと思う検査項目として、心臓病・腎臓病・糖尿病に関わる検査項目を選んでいた。なお、二次検査非受診者は、再検査や精密検査の案内の際、異常所見から考えられる疾病やリスクに対する説明を希望する声が多かった(43.8%)。*3:異常所見とは、各項目で正常所見以外のチェックが入っている、または総合評価で「要再検査」「要精密検査」「要治療」「要医療」などが記載されていること。都道府県別の受診率上位と下位は… 都道府県別の傾向として、二次検査の受診率の上位は宮崎県と岡山県で、3つの検査項目(糖代謝検査、腎尿路系検査[腎機能、尿検査]、心電図検査)においてランクイン。一方、受診率下位は徳島県(糖代謝検査、腎尿路系検査、呼吸器系検査[胸部X線])、福岡県(腎尿路系検査、心電図検査、呼吸器系検査)だった。

1006.

1型DM、週1回insulin icodec vs.1日1回インスリン デグルデク/Lancet

 1型糖尿病の成人患者において、週1回投与のinsulin icodec(icodec)は26週時の糖化ヘモグロビン値(HbA1c)低下に関して、1日1回投与のインスリン デグルデクに対し非劣性であることが認められたが、臨床的に重大な低血糖または重症低血糖の合併が有意に高率であった。英国・Royal Surrey Foundation TrustのDavid Russell-Jones氏らが、12ヵ国の99施設で実施された52週間の無作為化非盲検第IIIa相試験「ONWARDS 6試験」の結果を報告した。著者は、「1型糖尿病の特性を考慮すると、基礎インスリン注射を毎日から週1回に変更することは困難な可能性があるが、持続血糖モニタリングのデータとリアルワールド研究のさらなる解析により、icodec週1回投与の低血糖リスク軽減のための投与量調節に関する洞察が得られる可能性はある」とまとめている。Lancet誌2023年10月17日号掲載の報告。1型糖尿病患者約600例を無作為化 研究グループは、インスリン治療歴が1年以上でHbA1c値が10.0%未満の1型糖尿病成人患者を、icodec週1回皮下投与群(icodec群)またはインスリン デグルデク1日1回皮下投与群(デグルデク群)に、1対1の割合に無作為に割り付けた。両群とも、インスリン アスパルト(1日2回以上、食直前皮下投与)との併用下で、52週間(icodecの最終投与は51週目)投与した。なお、本試験は、スクリーニング期間2週間、治療期間52週間(主要評価期間26週間、安全性延長期間26週間)、追跡期間5週間で構成された。 主要エンドポイントは、26週時におけるベースラインからのHbA1cの変化量で、無作為化されたすべての患者を解析対象とし、非劣性マージンを両群の差の95%信頼区間(CI)の上限が0.3%未満とした。 2021年4月30日~10月15日に655例がスクリーニングされ、このうち582例がicodec群(290例)またはデグルデク群(292例)に割り付けられた。全例が1回以上試験薬の投与を受け、有効性および安全性の解析対象集団となった。26週時点で血糖コントロール改善は同等だが、臨床的に重大な低血糖はicodecで多い icodec群およびデグルデク群のHbA1c値は、ベースラインでそれぞれ7.59%、7.63%から、26週時には推定平均変化量として0.47%、0.51%低下した。推定平均変化量の群間差は0.05%(95%CI:-0.13~0.23)であり、icodec群のデグルデク群に対する非劣性が確認された(p=0.0065)。 ベースラインから26週時までの臨床的に重大な低血糖(54mg/dL未満)または重症低血糖の発生頻度は、icodec群19.9件/人年、デグルデク群10.4件/人年で、icodec群が統計学的に有意に高かった(推定率比:1.9、95%CI:1.5~2.3、p<0.0001)。57週時の評価においても、icodec群ではデグルデク群と比較し臨床的に重大な低血糖または重症低血糖の発生頻度が統計学的に有意に高かった(17.0件/人年vs. 9.2件/人年、推定率比:1.8、95%CI:1.5~2.2、p<0.0001)。 重篤な有害事象は、icodec群で24例(8%)に39件、デグルデク群で20例(7%)に25件報告された。icodec群で頭蓋内出血による死亡が1例認められたが、icodecとの関連性は低いと判断された。

1007.

医療費に大きな影響を与える患者背景は?/慶應大ほか

 多疾患併存(マルチモビディティ)による経済的負担は、世界的な課題となっている。高額医療費患者における多疾患併存の寄与については不明な点が多いことから慶應義塾大学スポーツ医学研究センターの西田 優紀氏らの研究グループは、東京医科歯科大学、川崎医科大学、全国健康保険協会と共同して全国健康保険協会が提供する健康保険請求データを用いて横断研究を行い、日本人の医療費に大きな影響を与える多疾患併存パターンを解析した。その結果、上位10%の患者集団の95.6%で多疾患併存がみられたほか、高血圧症、糖尿病、脂質異常症を同時併発した患者が全集団の31.8%を占めることが判明した。PLoS One誌2023年9月28日の報告。男女で疾患傾向の違いも判明 横断研究として、2015年度に協会けんぽに加入していた18~65歳未満の被保険者1,698万9,029人の内、医療費が上位10%にあたる169万8,902人(高額医療費集団:医療費全体の約6割を占める)を解析対象とした。高額医療費集団に特徴的なマルチモビディティ・パターンの検討には潜在クラス分析の手法を用い、出現頻度の高い疾病コード(68病名)に基づいて30パターンに分類した。 主な結果は以下のとおり。・医療費が上位10%の集団では、95.6%がマルチモビディティに該当していた。・マルチモビディティ・パターン別の年間総医療費と1人当たりの年間医療費を確認したところ、糖尿病、高血圧症、脂質異常症を合併した広義のメタボリックシンドロームを含むパターンは7種類に分類され、それらの合計医療費は全体の約3割を占めていた。・1人当たりの医療費でみると、腎臓病のパターンが最も高額だった。・性別・年代別に30パターンの内訳を確認したところ、男性では30代でメタボリックシンドロームのパターンに分類される者の割合が20%を超え、その割合は50代以降では半数以上になっていた。・女性は40代までは周産期の疾患や月経前症候群などの女性特有のパターンの分類が半数近くを占めていたが、50代以降ではメタボリックシンドロームや運動器疾患のパターンに分類される患者が増えていた。

1008.

CAD患者へのスタチン、種類による長期アウトカムの差は?/BMJ

 冠動脈疾患(CAD)成人患者においてロスバスタチンvs.アトルバスタチンは、3年時点の全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中または冠動脈血行再建術の複合に関して有効性は同等であった。ロスバスタチンはアトルバスタチンと比較し、LDLコレステロール(LDL-C)値の低下に対して有効性が高かったが、糖尿病治療薬を必要とする糖尿病の新規発症および白内障手術のリスクが上昇した。韓国・延世大学校医科大学のYong-Joon Lee氏らが、韓国の病院12施設で実施した多施設共同無作為化非盲検試験「Low-Density Lipoprotein Cholesterol-Targeting Statin Therapy Versus Intensity-Based Statin Therapy in Patients With Coronary Artery Disease trial:LODESTAR試験」の2次解析結果を報告した。LDL-Cの低下作用はスタチンの種類によって異なり、冠動脈疾患患者におけるロスバスタチンとアトルバスタチンの長期的な有効性および安全性を直接比較した無作為化試験はほとんどなかった。BMJ誌2023年10月18日号掲載の報告。CAD患者4,400例をロスバスタチン群とアトルバスタチン群に無作為化 研究グループは2016年9月~2019年11月に、冠動脈疾患を有する19歳以上の患者4,400例を、2×2要因デザイン法を用いて、ロスバスタチン群(2,204例)またはアトルバスタチン群(2,196例)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、3年時点の全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中・冠動脈血行再建術の複合で、副次アウトカムは安全性(糖尿病の新規発症、心不全による入院、深部静脈血栓症または肺塞栓症、末梢動脈疾患に対する血管内血行再建術、大動脈インターベンションまたは手術、末期腎不全、不耐容による試験薬の中止、白内障手術、および臨床検査値異常の複合)とした。3年時点の複合アウトカム、両群で同等 4,400例中4,341例(98.7%)が試験を完遂した。3年時点の試験薬の1日投与量(平均±SD)は、ロスバスタチン群17.1±5.2mg、アトルバスタチン群36.0±12.8mgであった(p<0.001)。 主要アウトカムの複合イベントは、ロスバスタチン群で189例(8.7%)、アトルバスタチン群で178例(8.2%)に確認され、ハザード比(HR)は1.06(95%信頼区間[CI]:0.86~1.30、p=0.58)であった。 投与期間中のLDLコレステロール値(平均±SD)は、ロスバスタチン群1.8±0.5mmol/L、アトルバスタチン群1.9±0.5mmol/Lであった(p<0.001)。 ロスバスタチン群はアトルバスタチン群と比較し、糖尿病治療薬の導入を要する糖尿病の新規発症率(7.2% vs.5.3%、HR:1.39[95%CI:1.03~1.87]、p=0.03)、ならびに白内障手術発生率(2.5% vs.1.5%、1.66[1.07~2.58]、p=0.02)が有意に高かった。その他の安全性エンドポイントは、両群で差は確認されなかった。

1009.

死亡リスクを低下させる睡眠のとり方、睡眠時間よりも〇〇!?

 睡眠は健康と密接な関係があることが知られているが、研究の多くは睡眠時間に焦点が当てられており、睡眠の規則性と死亡リスクの関係は明らかになっていない。そこで、オーストラリア・Monash UniversityのDaniel P. Windred氏らの研究グループは、英国のUKバイオバンクの6万人超のデータを用いて、睡眠時間および睡眠の規則性と死亡リスクとの関連を検討した。その結果、睡眠時間と睡眠の規則性はいずれも全死亡リスクの予測因子であることが示されたが、睡眠の規則性のほうがより強い予測因子であった。Sleep誌オンライン版2023年9月21日号に掲載の報告。 本研究では、UKバイオバンクに登録された40~69歳のうち、手首に加速度センサーを7日間装着し、データが取得できた6万977人が対象となった。睡眠時間と睡眠の規則性は加速度センサーのデータを基に推定した。対象を睡眠時間と睡眠の規則性でそれぞれ五分位に分類し、第1五分位群(0~20パーセンタイル)に対する第2~5五分位群(20~40、40~60、60~80、80~100パーセンタイル)の全死亡、原因別死亡(がん、心代謝性疾患、その他)のリスクを検討した。Cox比例ハザードモデルを用い、最小限の調整をしたモデル(年齢、性別、民族で調整)と完全調整モデル(最小限の調整をしたモデルに身体活動レベルなどの10因子を追加して調整)の2つのモデルで解析した。 主な結果は以下のとおり。・本研究の対象となった6万977人の平均年齢は62.8歳、平均睡眠時間は6.77時間、平均追跡期間は6.30年であった。・追跡期間中の死亡数は1,859人であった(1,000人年当たり4.3人)。・睡眠の規則性の第2~5五分位群は、最小限の調整をしたモデルおよび完全調整モデルのすべての群で全死亡リスクが有意に低下した(20~48%低下)。・同様に、がん死亡リスク(16~39%低下)、心代謝性疾患による死亡リスク(22~57%低下)もすべての群で有意に低下し、その他の原因による死亡リスクも完全調整モデルの第2五分位群を除くすべての群で有意に低下した。・睡眠時間の第2~5五分位群も、同様にすべての群で全死亡リスクが有意に低下したが(18~31%低下)、がん死亡リスクとの関連はいずれの群でも認められなかった。・赤池情報量基準(AIC)に基づくモデル比較において、睡眠の規則性は睡眠時間よりも全死亡リスクの強い予測因子であった。 本研究結果について、著者らは「死亡リスクの予測において、睡眠時間が重要な役割を果たしていることが確認されたが、睡眠の規則性は睡眠時間よりも強い予測因子であることが明らかになった。睡眠の規則性を向上させるためには、睡眠時間を増やすことよりも、毎日の睡眠時間をそろえることのほうが現実的かもしれない」とまとめた。

1010.

1型DMへのteplizumab、β細胞機能を有意に維持/NEJM

 新規診断の1型糖尿病の小児・青少年患者において、抗CD3モノクローナル抗体のteplizumab(12日間投与の2コース)は、β細胞機能の維持(主要エンドポイント)に関してベネフィットがあることが示された。ただし、インスリン用量、糖化ヘモグロビン値などの副次エンドポイントに関しては、ベネフィットが観察されなかった。英国・カーディフ大学のEleanor L. Ramos氏らが、第III相の無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。teplizumabは、8歳以上のステージ2の1型糖尿病患者に対し、ステージ3への進行を遅らせるための投与が米国FDAに承認されている。新規診断の1型糖尿病患者におけるteplizumabの静脈内投与が疾患進行を抑制するかについては不明であった。NEJM誌オンライン版2023年10月18日号掲載の報告。78週後の負荷C-ペプチド値でβ細胞機能を評価 研究グループは、2019年3月~2023年5月にかけて、米国、カナダ、欧州の医療機関61ヵ所で、6週間以内に診断を受けた8~17歳のステージ3の1型糖尿病患者を対象に試験を行い、teplizumabまたはプラセボの12日間投与・2コースを比較した。 主要エンドポイントは、78週時点の負荷C-ペプチドの測定値でみたβ細胞機能のベースラインからの変化だった。重要な副次エンドポイントは、血糖値目標達成に要したインスリン用量、糖化ヘモグロビン値、血糖値目標範囲内の時間、臨床的に重要な低血糖イベントだった。C-ペプチドのピーク値維持はteplizumab群95%、プラセボ群80% 78週時点で、teplizumab群(217例)は、プラセボ群(111例)に比べ、負荷C-ペプチド値が有意に高かった(最小二乗平均群間差:0.13pmol/mL、95%信頼区間[CI]:0.09~0.17、p<0.001)。0.2pmol/mL以上の臨床的に有意なC-ペプチドのピーク値を維持した患者の割合は、teplizumab群が94.9%(95%CI:89.5~97.6)であったのに対し、プラセボ群では79.2%(67.7~87.4)だった。 重要な副次エンドポイントについて、両群で有意差はなかった。 有害事象は、主にteplizumabまたはプラセボの投与に関するもので、頭痛、消化器症状、発疹、リンパ球減少、軽度のサイトカイン放出症候群などだった。

1011.

効率よく紹介状を作成するには?(最終回)【紹介状の傾向と対策】第8回

<あるある傾向>きちんとした紹介状を書く時間がない<対策>日頃の診療録がそのまま紹介状になるようにしておく多忙な臨床業務の中で紹介状(診療情報提供書)の作成は負担の大きな業務の1つです。しかし、紹介状の不備は、依頼先(紹介先)の医師やスタッフに迷惑をかけるだけではなく、患者さんの不利益やトラブルにつながりかねません。このため、できる限り依頼先が困らない紹介状の作成を心がけたいものです。【紹介状全般に共通する留意点】(1)相手の読みやすさが基本(2)冒頭に紹介する目的を明示する(3)プロブレムと既往歴は漏れなく記載(4)入院経過は過不足なく、かつ簡潔に記載(5)診断根拠・診断経緯は適宜詳述(6)処方薬は継続の要否、中止の可否を明記(7)検査データ、画像データもきちんと引き継ぐ本連載では「より良い患者紹介とは」をテーマに紹介状作成について連載をしてきました。勤務医、開業医を問わず紹介状にまつわる不満やトラブルは多々あり、紹介状を作成するにあたり、注意しているポイントを書いてきました。しかし、多忙極める医療現場で、理想的な紹介状を作成することはとても大変です。とくにDPC制度を導入している医療機関は、患者一人あたりの入院期間がどんどん短縮され、患者の回転が速くなり、現場医師が1年間に対応する入退院の処理業務は確実に増えていると予測されます。筆者自身も日常診療業務の中で書類作成にさく時間の割合は大きく、書類作成に常日頃ストレスを感じています。書類作成の中でも「診療情報提供書」と「退院時サマリー」の作成はとても負担が大きいです。文章を書くこと自体がとても大変な作業ですが、重要事項の記載忘れがないか、確認し忘れていた検査結果がないかなど、患者の退院前の準備にはとても神経を使います。また、紹介先に添付する診断画像をCD-ROMにする依頼、心電図、採血結果、各種レポートなどの出力は地味に手間がかかります。また、筆者は現在DPC病院に勤務し、受け持ち患者は20名を超えます。約2日おきの頻度で誰かが急変し、高次医療機関へ転院を余儀なくされる日々です。大きな急変の場合にはその対応に追われ、ほかの業務がストップしてしまい、病診連携室から頼まれていた転院打診用の紹介状作成も後回しにせざるを得ません。このようなとき、理想的な紹介状の作成ができるかと言えば現実的に難しいです。退院サマリーにも応用できる書き方多くの先生方が多忙な臨床業務の中でご自身の業務スタイルを確立し、業務をこなされていることと思います。決して要領が良いわけではない筆者は、どうすれば効率よく紹介状や退院サマリーの記載業務をこなしていけるのか、日々考えてきました。その中で現在たどり着いた方法は、入院日に入院サマリーをできる限り作成しSOAP記録の下に併記する方法です。そして入院後は、SOAP+入院サマリーで構成される記録を日々コピー&ペーストし、適宜、入院経過や検査結果のみを追記していきます。(表)脳出血の患者のカルテ記載の一例画像を拡大するこれにより急な転院の紹介状作成の際も、この入院サマリーを引用し編集することで、短時間で情報欠落のない紹介状を作成することが可能になりました。また転院打診用の紹介状も基本はこの入院サマリーをペーストして作成できるようになりました。そして退院サマリーも入院サマリーをコピー&ペーストすればほぼ完成です。このスタイルを取り入れて最も良かったのは、自分自身や同僚医師、またその患者に関わるスタッフが筆者のカルテを見たとき「その患者がどういう経緯で入院し、今、どのような状態にあるか」、SOAP部分を見れば瞬時に把握できることです。時折、当直中に呼ばれ、主治医の記録をみても、何の疾患で入院しどんな病歴の患者なのかわからないことが多々あり、当直の際はとても困ります。院内で患者が急変したとき、その患者を診るのが初めての医師でも瞬時にその患者の情報を把握できるカルテ記載をしておくことが、筆者はとても大切だと考えています。紹介状についても同様で、紹介を受ける医師が困らない記載を心掛けたいものです。

1012.

糖尿病はCVDイベント発生を12年早める/JACC

 新たに診断された2型糖尿病患者における心血管疾患(CVD)の10年間のリスクを一般集団と比較した結果、2型糖尿病患者では年齢や性別にかかわらずCVDリスクが有意に高く、CVDイベントの発生が12年早まっていたことを、デンマーク・オーフス大学病院のChristine Gyldenkerne氏らが明らかにした。Journal of the American College of Cardiology誌2023年10月17日号掲載の報告。 糖尿病とCVDリスクとの関連についてはすでに豊富なエビデンスがあるが、研究グループは新たに2型糖尿病と診断された患者のCVDリスクに関する最新データは適切な予防管理に必要と考え、性別および年齢別の10年CVDリスクを一般集団と比較したコホート研究を実施した。 対象は2006~13年にデンマークで新たに2型糖尿病と診断された全患者14万2,587例と、性別・年齢をマッチさせた一般集団38万8,410例で、10年間のCVD(心筋梗塞、脳卒中、致死的CVD)リスクを推定した。全例がベースライン時にアテローム動脈硬化性心血管疾患を有していなかった。 主な結果は以下のとおり。・10年間の追跡で合計5万2,471件のCVDイベントが記録された。・一般集団と比較して、2型糖尿病群の10年CVDリスクは男女ともにすべての年齢層で高かった。・40~49歳ではイベントリスク差が最も大きかった(2型糖尿病群6.1% vs.一般集団3.3%、リスク差:2.8%、部分分布ハザード比:1.91、95%信頼区間:1.76~2.07)。・一般集団の男性の10年CVDリスクが5%となったのは55歳であったのに対し、2型糖尿病群の男性では12年早い43歳であった。・女性では、一般集団は61歳で5%に達したのに対し、2型糖尿病群では10年早い51歳であった。 これらの結果より、研究グループは「われわれのデータは、新たに2型糖尿病と診断された患者はすべてCVDリスクが高いと考えるべきであることを示している。CVDリスクを低減させるために予防的介入を強化することを考慮すべきである」とまとめた。

1013.

2型DM基礎インスリンへの追加、チルゼパチドvs.インスリン リスプロ/JAMA

 基礎インスリン療法で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者において、インスリン グラルギンへの追加治療として週1回のチルゼパチドは、食前追加インスリンと比べてHbA1c値の低下および体重減をもたらし、低血糖症の発現もより少なかったことが、米国・Velocity Clinical ResearchのJulio Rosenstock氏らによる第IIIb相国際多施設共同非盲検無作為化試験「SURPASS-6試験」で示された。チルゼパチドは、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチドおよびグルカゴン様ペプチド-1(GIP/GLP-1)受容体作動薬であり、2型糖尿病の治療に用いられているが、これまで上記患者の追加インスリン療法として食前追加のインスリンと比較した有効性と安全性については明らかにされていなかった。JAMA誌オンライン版2023年10月3日号掲載の報告。52週時のHbA1c値のベースラインからの変化量を評価 SURPASS-6試験では、インスリン グラルギンへの追加インスリン療法として、チルゼパチドvs.インスリン リスプロの有効性と安全性を評価した。15ヵ国(アルゼンチン、ベルギー、ブラジル、チェコ共和国、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、メキシコ、ルーマニア、ロシア、スロバキア、スペイン、トルコ、米国)の135施設で、2020年10月19日~2022年11月1日に基礎インスリン治療を受ける2型糖尿病患者1,428例を登録して行われた。 研究グループは被験者を、1対1対1対3の割合で次の4群に無作為化した。(1)週1回チルゼパチド5mgを皮下注射(243例)、(2)同10mgを皮下注射(238例)、(3)同15mgを皮下注射(236例)、(4)1日3回食前にインスリン リスプロを皮下注射(708例)。 主要アウトカムは、52週時点のHbA1c値のベースラインからの変化量でみた、インスリン グラルギンに加えたチルゼパチド(統合コホート)の同インスリン リスプロに対する非劣性(非劣性マージン0.3%)であった。重要な副次エンドポイントとして、体重の変化量、HbA1c値7.0%未満達成患者の割合を評価した。HbA1c値の変化量、チルゼパチド-2.1%、インスリン リスプロ群-1.1% 無作為化された1,428例(女性824例[57.7%]、平均年齢58.8歳[SD 9.7]、平均HbA1c値8.8%[SD 1.0%])のうち、1,304例(91.3%)が試験を完了した。 52週時点で、チルゼパチド(統合コホート)群vs.インスリン リスプロ群のHbA1c値のベースラインからの推定平均変化量は、-2.1% vs.-1.1%であり、HbA1c値は6.7% vs.7.7%となった(推定治療差:-0.98%[95%信頼区間[CI]:-1.17~-0.79]、p<0.001)。結果は非劣性基準を満たすもので、統計学的優越性も示された。 体重のベースラインからの推定平均変化量は、チルゼパチド群-9.0kg、インスリン リスプロ群3.2kgであった(推定治療差:-12.2kg[95%CI:-13.4~-10.9])。 HbA1c値7.0%未満達成患者の割合は、チルゼパチド群68%(483/716例)、インスリン リスプロ群36%(256/708例)であった(オッズ比[OR]:4.2[95%CI:3.2~5.5])。 チルゼパチド群で最もよくみられた有害事象は、軽症~中等症の消化器症状(悪心:14~26%、下痢:11~15%、嘔吐:5~13%)であり、低血糖症(血糖値<54mg/dLまたは重症低血糖症)の発現頻度は、チルゼパチド群0.4件/患者年、インスリン リスプロ群4.4件/患者年であった。

1014.

第182回 鎮咳薬・去痰薬不足、医師が知っておきたい“患者対応Q&A”

前々回の本連載で取り上げた鎮咳薬・去痰薬の不足について、厚生労働省が対策に乗り出したことで、メディア各社も盛んに報じている。それに伴い私のところにもメディア各社、さらには友人・知人からまでこの問題について問い合わせが増えている。しかし、中には疲れるような質問も。そこで今回は彼らからの問い合わせに対する私の回答を公開する。「本当にこんなこと言っているの?」という部分もあるかもしれないが、多少の文言の違いはあってもほぼ同様のことを言っている。調剤薬局では、咳止め薬や去痰薬など、とくにかぜ薬が不足していると伝えられています。「患者が増えているから」以外に不足する要因はあるものでしょうか?まず大前提として、現在、これまで咳止め薬や去痰薬を製造していた製薬企業の一部で、こうした薬の供給が停止しています。原因は供給を停止した複数の製薬企業の工場で製造不正が発覚し、その改善対策に追われているからです。にもかかわらず、現在はこうした薬が必要になる患者が増えています。主な原因はインフルエンザの季節外れの流行が続いていたからです。一方でコロナ禍の影響もあると思われます。新型コロナの登場以降、皆さんは風邪のような症状があったら、「まさかコロナ? いやインフルエンザ? それともただの風邪?」と不安になりませんか? その結果、近くの医療機関に行ったりしてませんか? この結果、今まで以上に風邪様症状の患者さんの受診が増えています。そして、コロナ、インフル、風邪のいずれかだとしても「今の症状を治す薬が欲しい」と思ったり、医師に言ったりしますよね? もちろん医療機関の医師も患者の症状を少しでも良くしたいと思い、咳止め薬や去痰薬を処方します。その結果、元々足りない薬の需要がさらに増加するという悪循環に入ってしまいました。現在不足している薬、今後不足しそうな薬のなかで、欠品や出荷調整による患者への影響が最も深刻な薬は何でしょうか?どれが最も深刻かは一言では言えません。ですが、皆さんが抗生物質と呼ぶ抗菌薬や高血圧症、コレステロールが高くなる脂質異常症、糖尿病など比較的ありふれた病気の治療薬の一部も現在供給停止となっています。今後はどのような薬の供給が深刻になるかは、とても予想ができません。これを予想するのは星占い以上にあてになりません。とくにジェネリック医薬品(GE)で数千品目もの供給不安定が起き、それが長期化していると聞きます。なぜでしょうか?現在、日本は世界でほぼ最速と言えるほど少子高齢化が進行しています。高齢になれば必然的に身体機能が衰え、公的な医療や介護が必要になります。その結果、社会保障費が増大し、国の財政を圧迫しつつあります。国はその解決策として、新薬の特許失効後に登場する同一成分で安価なGEの使用促進策を次々と打ち出しました。その結果、現在ではGEのある医薬品成分では、流通量の8割がGEに置き換わりました。しかし、このGEを製造する複数の企業で、2020年末以降、相次いで製造にかかわる不正が発覚しました。これらの企業では業務停止などの行政処分を受けた会社も複数存在します。行政処分を受けた会社は現在改善に向けてさまざまな取り組みを行っています。概してこうした取り組み改善があっても、工場が正常化するには2~3年はかかります。そのため供給不安が続いています。一部の工場が停止しているならば、ほかのGE企業などで増産に取り組めば解決するのではないですか?まず新薬を中心とする製薬企業が抱えている品目は、多くとも数十品目です。ただし、工場では1つの製造ラインで特定の1品目を年中製造していることがほとんどです。これに対し、GE企業は1社で数百品目、日本トップクラスのGE企業は800~900品目を全国にある5~6ヵ所の工場で製造しています。結局、GE企業では1つの製造ラインで何十品目も製造しています。あるGE企業の工場では1つの製造ラインを1週間に6回も切り替えて異なる薬を製造しています。この6回の切り替えで、製造する薬が季節によって異なることもあります。ざっくりした表現をすると、GE企業の製造体制はもともとが自転車操業のようなもので、余力が少ないのです。しかも、直近で行政処分などを受けていないGE企業の工場は、少ない余力分もフル稼働させている状態です。この状況で増産しろと言うのは、過重業務で平均睡眠時間3時間の人にさらに睡眠時間を削って働けというようなものです。現代ではこれを「パワハラ」と言います。GE企業が工場を新設し、製造ラインも1ライン1品目にすることは無理ですか?理論的には可能かもしれませんが、現実には不可能です。まず、日本のGE企業はトップクラスですら、毎年の純利益は100億円超です。ところが最新鋭の工場建設には200~300億円はかかります。そうそう簡単に工場建設はできません。しかも、工場建設はそれだけで数年、完成後フル稼働に至るまでには最大5年はかかると言われています。また、800~900品目をすべて1ライン1品目で製造するのはナンセンスです。GE企業各社がその体制にするならば、日本の国土の何%かがGE企業の工場で占められることにもなりかねません。その結果、最悪は地価高騰など国民生活に悪影響が及ぶかもしれません。薬局間、あるいは医薬品卸の間で、“薬の争奪戦”が起きているとの噂を聞きましたこのような状況になってから製薬企業から卸企業、卸企業から薬局・医療機関の各取引では、過去数ヵ月の取引実績に応じて納入量が決まるようになっています。また、製薬企業はすべての医薬品卸と取引しているわけではなく、慣行的に取引卸を絞り込んでいます。このため卸同士ではあまり激しい争奪戦はないと見て良いでしょう。一方、医薬品卸から購入する薬局同士では、それなりに争奪戦があると言えます。ただ、それは一般で考えるような血で血を争うようなものではありません。今お話ししたように、納入量は直近の取引実績が基準になるからです。このため過去約3年の薬不足を経験した薬局側では、医薬品卸に薬を発注する際にいつもよりやや早めに、やや多めの量を発注しがちになっています。そしてこの医薬品卸と薬局との取引では、大手薬局チェーンのほうが中小薬局よりも有利です。皆さんも、もしモノを売っている立場ならば毎回大量に買ってくれるお客さんを優遇しますよね? これと当たり前の原理が働いています。ただし、大手薬局チェーンでは薬があふれかえり、中小薬局では棚が空っぽというイメージを抱くなら、それは違います。現在は全国的に不足している状況です。製薬企業、医薬品卸の現場の方々が、今、最も苦労していることとは何でしょうか?四方八方から「何とかしてくれ」と言われることです。GE企業の人については、前述したとおりで工場のフル稼働が続いています。ある種大変なのは医薬品卸の皆さんです。彼らは自分の会社で薬を製造しているわけではないので、「ない袖は振れぬ」です。ある日の業務が、医療機関や薬局に発注を受けた薬を納入できないことを伝える「未納案内書」のFAX送信だけで終わったということもあるようです。医薬品卸の若い社員の中には、この状況に疲れて退職する人も増えていると聞きます。薬局のほうがより大変とも耳にしますその通りです。たぶんこの問題の初期から最前線に立たされ、患者や医療機関から「何とかしてほしい」と言われ続けてきたのが薬局の薬剤師です。この問題が始まった当初は医師や患者も“なぜいつもの薬がないのか”が理解できず、薬局の薬剤師が説明しても「?」という感じの反応をされたという愚痴をたくさん聞かされました。昨今はこの咳止め薬や去痰薬の問題が報じられているので、理解は進んでいるようです。しかし、それでもまだこの問題に対する温度差はあるようです。たとえば、ある薬剤師は医師から来た処方箋に記載されたある薬の在庫がないため、電話をして同じ効き目の別の薬に代えてもらったそうなのですが、その翌日から1ヵ月もの間、同じ医師から6回もこの薬が記載された処方箋が発行され、その度に電話をしなければならなかったそうです。また、別の薬剤師も同様に処方箋に記載された薬の在庫がないため、処方元の医師に変更をお願いしたところ、「そんなことこっちには関係ない!」と怒鳴られ、電話を切られたそうです。今冬のインフル流行期、薬不足の問題は好転しているでしょうか?より深刻化しているでしょうか?不足する薬が安定的に供給されるようになるのはいつ頃でしょうか?まず、1番目の質問に回答すると、「わかりませんが、より深刻化している可能性は大いにあります」。2番目の質問には「わかりません」としかお答えのしようがありません。これ以外で何かポジティブな回答を明言する人がいたら、ぜひそのご尊顔を拝したいものです。今現在の咳止め薬や去痰薬不足に対して一般人ができる防御策はありますか?何よりも皆さんがなるべく病気にならないよう体調管理に努め、インフルエンザや新型コロナのワクチンはできるだけ接種しておくことが望ましいです。とくに風邪様症状の場合は今まで以上に受診すべきか否かを真剣に考えるべきです。私の周囲の医師は、より具体的に「20~30代で基礎疾患もない人は風邪様症状でも受診は控え、自宅で静養することが望ましいでしょう。そのためには、自宅に新型コロナの抗原検査キットと解熱薬を予め購入して備蓄しておくこと」と言っています。ちなみに新型コロナの抗原検査キットは、感染直後では本当は感染していても陰性となることがしばしばあります。最低でも3回分用意して、3日連続で検査しましょう。ちなみに私事で言うと5日分を常に備蓄し、出張時も持ち歩いています。この結果が陽性・陰性のいずれでも1週間程度、外出は控えてください。この間は友達とお茶をしに行く、飲み会に行くなどもってのほかです。もちろん基礎疾患がある人や高齢者、自宅で静養して4日ほど経過しても症状が改善しない人は受診をお勧めします。ただ、その場合は発熱患者などを診察してくれるかどうか、行こうとしている医療機関に事前に電話で確認しましょう。「確かに自分は若いし、基礎疾患もないけど、咳止め薬や去痰薬は病院でもらうほうが安いし」という人。そう言うあなたは今の薬不足の原因を作っている1人です。このような感じだが、皆さんならどうお答えしますか?

1015.

1型DM妊婦の血糖コントロール、クローズドループ療法vs.標準療法/NEJM

 1型糖尿病の妊婦において、ハイブリッドクローズドループ(HCL)療法は標準インスリン療法と比較し妊娠中の血糖コントロールを有意に改善することが示された。英国・Norfolk and Norwich University Hospitals NHS Foundation TrustのTara T. M. Lee氏らが、同国9施設で実施した無作為化非盲検比較試験「Automated insulin Delivery Amongst Pregnant women with Type 1 diabetes trial:AiDAPT試験」の結果を報告した。HCL療法は、非妊娠成人および小児において血糖コントロールを改善することが報告されているが、妊娠中の1型糖尿病の管理における有効性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2023年10月5日号掲載の報告。1型糖尿病妊婦124例を、妊娠16週までに無作為化 研究グループは、1型糖尿病の罹病期間が12ヵ月以上の18~45歳の妊婦で、妊娠初期の糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が6.5%以上の妊婦を、妊娠16週までにHCL群または標準インスリン療法(1日複数回の注射またはインスリンポンプによる強化インスリン療法)群に無作為に割り付け、両群とも持続血糖モニタリング(CGM)を行い追跡評価した。 主要アウトカムは、妊娠16週から出産までのCGMによる妊娠期特有目標血糖値範囲(63~140mg/dL)内の時間の割合とし、ITTの原則に従って解析した。 重要な副次アウトカムは、高血糖状態(血糖値>140mg/dL)の時間の割合、夜間における目標血糖値範囲内の時間、HbA1c値および安全性であった。 2019年9月~2022年5月の期間に、334例がスクリーニングされ、このうち124例が無作為化された(HCL群61例、標準療法群63例)。平均(±SD)年齢は31.1±5.3歳で、ベースライン時の平均HbA1c値は7.7±1.2%であった。目標血糖値範囲内の時間の割合は68% vs.56%で、HCL療法群が有意に高率 主要アウトカムである目標血糖値範囲内の時間の平均割合は、HCL群68.2±10.5%、標準インスリン療法55.6±12.5%、平均補正後群間差は10.5%(95%信頼区間[CI]:7.0~14.0、p<0.001)であった。 副次アウトカムの結果は主要アウトカムの結果と一致しており、HCL群が標準療法群より高血糖状態の時間の割合が少なく(群間差:-10.2%、95%CI:-13.8~-6.6)、夜間における目標範囲内の時間の割合が多く(12.3%、8.3~16.2)、HbA1c値が低かった(-0.31%、-0.50~-0.12)。 重度低血糖症イベントはHCL群で6件(被験者4例)、標準療法群で5件(5例)に、糖尿病性ケトアシドーシスは各群1例に認められた。HCL群におけるデバイス関連有害事象の発現頻度は24.3件/100人年で、HCLの使用に関連した事象が7件、CGMに関連した事象が7件であった。

1016.

予測能の高い認知症リスクスコアが英国で開発

 認知症発症を予測するリスクスコアが英国で新たに開発され、既存のリスクスコアより高い予測能を有することが確認された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のMelis Anaturk氏らの研究によるもので、詳細は「BMJ Mental Health」に8月21日掲載された。 認知症患者数が世界的に増加し、その対策が各国の公衆衛生上の喫緊の課題となっている。認知症発症リスクを予測し予防介入を強化することが、疾病負担の抑制につながると考えられることから、種々のリスクスコアが開発されてきている。ただし、いずれも予測能の限界が存在する。これを背景としてAnaturk氏らは、英国の大規模ヘルスケア情報データベース「UKバイオバンク」のデータを用いて新たなリスクスコアを開発し、その予測能を検証した。 UKバイオバンクのデータの8割に当たる17万6,611件をリスクスコア開発用、残り2割に当たる4万4,151件を検証用に用いた。また、英国におけるUKバイオバンクとは別の大規模コホートである「Whitehall II」のデータ2,934件を用いた外部検証も行った。 UKバイオバンクにデータが収載されていて、かつプライマリケアで簡便に評価可能な28項目の認知症発症に関わる因子を抽出した上で、LASSO回帰モデルなどの統計学的手法により構築されたリスクスコアを「UKBDRS(U.K. Biobank Dementia Risk Score)」と命名。UKBDRSで評価する項目は、年齢、性別、家族歴(親の認知症)、教育歴、タウンゼント剥奪指数、糖尿病、脳卒中、うつ病、高血圧、高コレステロール血症、独居であり、遺伝子検査が可能な場合はこれにApoE4を加えた「UKBDRS-APOE」でリスクを評価する。 ROC解析で検討したUKBDRSの認知症発症予測能〔ROC曲線下面積(AUC)〕は、UKバイオバンク開発コホートで0.79(95%信頼区間0.78~0.79)、同検証コホートで0.80(同0.78~0.82)、Whitehall IIでは0.77(0.72~0.81)だった。UKBDRS-APOEでは同順に、0.81(0.81~0.81)、0.83(0.81~0.84)、0.80(0.75~0.85)だった。 これらの値は、現在臨床で使われている3種類のリスクスコアより優れていた。例えば、CAIDE(Cardiovascular Risk Factors, Aging and Dementia)はUKバイオバンク検証コホートでのAUCが0.60(0.58~0.63)、Whitehall IIでは0.69(0.64~0.74)であり、DRS(Dementia Risk Score)は同順に0.77(0.76~0.79)、0.74(0.69~0.78)、ANU-ADRI(Australian National University Alzheimer’s Disease Risk Index)は0.57(0.54~0.59)、0.52(0.45~0.58)だった。 論文共著者の1人である英オックスフォード大学のRaihaan Patel氏は、「異なる2種類の集団で高い予測能が確認されたことから、われわれはUKBDRSの精度に関して自信を深めているが、英国内のより多様な人々での精度検証も必要とされる」と述べている。

1017.

妊娠糖尿病への早期メトホルミンvs.プラセボ/JAMA

 妊娠糖尿病に対する早期のメトホルミン投与は、プラセボ投与との比較において、インスリン投与開始または32/38週時空腹時血糖値5.1mmol/L以上の複合アウトカム発生について、優位性を示さなかった。アイルランド・ゴールウェイ大学のFidelma Dunne氏らが、プラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果を報告した。ただし、副次アウトカムのデータ(母親のインスリン開始までの時間、自己報告の毛細血管血糖コントロール、妊娠中の体重増加の3点)は、大規模試験でさらなるメトホルミンの研究を支持するものであったという。妊娠糖尿病は、妊娠期に多い合併症の1つだが、至適な治療は明らかになっていない。JAMA誌オンライン版2023年10月3日号掲載の報告。妊娠28週までの妊娠糖尿病の妊婦を対象に試験 研究グループは、アイルランドの2ヵ所の医療機関で試験を行った。2017年6月~2022年9月に、世界保健機関(WHO)基準2013で妊娠糖尿病の診断を受けた妊娠28週以前の被験者510人(妊娠535件)を登録し、産後12週間まで追跡した。 被験者は2群に割り付けられ、通常ケアに加え、一方にはメトホルミン(最大用量2,500mg)を、もう一方にはプラセボを投与した。 主要アウトカムは、出産前のインスリン投与開始もしくは妊娠32週または38週時の空腹時血糖値が5.1mmol/L以上だった。メトホルミン群の新生児は小さい傾向 被験者510人(平均年齢34.3歳)における妊娠535件を無作為化した。 主要複合アウトカムの発生率は、メトホルミン群が56.8%(妊娠150件)、プラセボ群が63.7%(妊娠167件)だった(群間差:-6.9%、95%信頼区間[CI]:-15.1~1.4、相対リスク:0.89、95%CI:0.78~1.02、p=0.13)。 事前に規定した母親に関する6つの副次アウトカムのうち、メトホルミン群で優位だったのは、インスリン開始までの時間、自己報告の毛細血管血糖コントロール、妊娠中の体重増加の3つだった。 新生児に関する副次アウトカムは、メトホルミン群で新生児が小さい傾向(平均出生体重が低い、出生体重4kg以上の割合が低い、在胎週数による大きさ分布で90パーセンタイル超の割合が低い、頂踵長が小さい)がみられた。一方で、新生児集中治療を要する割合、呼吸補助を要する呼吸困難、光線療法を要する黄疸、重大な先天奇形、新生児低血糖、5分間Apgarスコア7未満の割合については、両群で有意差はなかった。

1018.

CKDの腎と心血管疾患への悪影響はさらに広い範囲(解説:浦信行氏)

 JAMA誌において、2,750万人余りを対象としたメタ解析の結果、CKDの悪影響は従来報告されている全死因死亡、心血管死、腎代替療法を要する腎不全、脳卒中、心筋梗塞、心不全、急性腎障害にとどまらず、あらゆる入院、心房細動、末梢動脈疾患にまで及ぶことが報告された。結果の詳細はジャーナル四天王のニュース記事をご覧いただきたいが、本研究はそれ以外にもいくつかの重要な成績が示されている。 尿アルブミン/クレアチニン比(UACR)とeGFRをクレアチニンのみで評価したものと、クレアチニンとシスタチンCで評価したものの各々の有害事象のリスクを対比すると、全体の傾向はヒートマップ上では同様であるが、クレアチニンのみで評価したeGFRでの結果は少し感度が悪い印象を受ける。eGFR各階層での有害事象のハザード比を表した図3においても、確かにクレアチニンのみで評価したeGFRでのハザード比の変化の傾きは緩徐であり、各有害事象に対する感度が対比上は低いと考えられる。かつ、各有害事象のハザード比は、クレアチニンでのeGFRは90~105を底値としてU字型を描いている。シスタチンCを加えたものではこのような結果を示していない。これはおそらく高齢者主体のサルコペニア・フレイル症例のリスク上昇を表すものと考えられる。したがって、症例によってはシスタチンCによるeGFRの評価を加えることが必須である。 UACRは30未満が正常範囲であるが、10未満の正常と10~29の正常高値で比較すると、正常高値ですでにリスクが高くなっている。すなわち、正常と考えられる範囲でもすでに有害事象に対する認識を持つ必要があるのかもしれない。わが国では保険診療上、尿アルブミンの評価は糖尿病症例に限られ、それ以外は尿蛋白で評価しなければならない。尿蛋白は尿細管由来のものも含むので同様の評価が可能かは不明であるが、注目すべき結果と考える。

1020.

筋肉量の多寡にかかわらずタンパク質摂取量が高齢者の全死亡リスクに関連

 日本人高齢者を対象とする研究から、タンパク質の摂取量が多いほど全死亡(あらゆる原因による死亡)のリスクが低いという関連が示された。この関連は、筋肉量や血清アルブミンなどの影響を統計学的に調整してもなお有意であり、独立したものだという。東京都済生会中央病院糖尿病・内分泌内科の倉田英明氏(研究時点の所属は慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科)らの研究によるもので、詳細は「BMC geriatrics」に8月9日掲載された。 タンパク質摂取量と健康リスクとの関連については、動脈硬化や腎機能、またはサルコペニア(筋肉量・筋力の低下)、フレイル(要介護予備群)などの観点から研究されてきている。しかし、食文化の違いによるタンパク源の相違などの影響のため、それらの研究結果は一貫性が見られない。また、国内発の知見はいまだ少なく、かつサルコペニアやフレイルリスクを有する高齢者の筋肉量とタンパク質摂取量との関連を検討した研究が主体であって、地域在住一般高齢者の死亡リスクとの関連は明らかになっていない。 以上を背景として倉田氏らは、慶應義塾大学と川崎市が共同で行っている「川崎元気高齢者研究(Kawasaki Aging and Wellbeing Project;KAWP)」のデータを用いて、この関連を縦断的に解析した。KAWPは、日常生活動作(ADL)が自立した身体障害のない85~89歳の地域住民対象前向きコホート研究として2017年にスタート。今回の研究ではKAWP参加者のうち、簡易型自記式食事歴質問票(BDHQ)を正しく回答でき、認知機能の低下(MMSE24点未満)がなく、解析に必要なデータに欠落のない833人を対象とした。主な特徴は、平均年齢86.5±1.36歳、女性50.6%、BMI23.1±3.16で、骨格筋量指数(SMI)は7.33kg/m2、血清アルブミンは4.16±0.28mg/dL。BDHQにより把握された摂取エネルギー量は2,038±606kcal/日であり、その17.0±3.18%をタンパク質から摂取していた。 摂取エネルギー量に占めるタンパク質の割合の四分位で全体を4群に分類して比較すると、その割合が高い群ほど高齢(傾向性P=0.042)で女性が多い(同0.002)という有意な関連が認められた。一方、BMI、腎機能(eGFR)やそのマーカー(BUN、尿アルブミン)、心血管疾患(CVD)既往者の割合には有意差がなかった。血清アルブミンは傾向性P値が0.056と非有意ながら、タンパク質エネルギー比が高い群で高値となる傾向にあった。SMIについては全体解析では、タンパク質エネルギー比が高い群ほどSMIが低いという負の有意な関連があったが(傾向性P=0.018)、性別に解析すると、男性、女性ともに非有意となった。 タンパク質の摂取源に着目すると、タンパク質エネルギー比が最も低い(平均13.1%)第1四分位群は、魚の摂取量が20.3g/1,000kcalであるのに対して第4四分位群(同21.2%)は68.6g/1,000kcalと、約3.5倍であった。タンパク質以外の主要栄養素については、タンパク質エネルギー比が高い群ほど炭水化物摂取量が少なく、脂質の摂取量が多かった(いずれも傾向性P<0.001)。 平均1,218日(約3.5年)の観察で、89人の死亡が記録されていた。タンパク質エネルギー比の第1四分位群を基準として、共変量(年齢、性別、SMI、血清アルブミン、教育歴、がん・CVDの既往)を調整したCox回帰モデルにより、タンパク質摂取量が多いほど全死亡リスクが低いという有意な関連が明らかになった。具体的には第4四分位群ではハザード比(HR)0.44(95%信頼区間0.22~0.90)と56%低リスクであり、全体の傾向性P値が0.010だった。共変量のSMIをBMIに置き換えた場合も結果は同様だった。 魚の摂取量の多寡の影響に着目して、その四分位数で4群に群分けして検討すると、第4四分位群で有意なリスク低下が認められたが〔HR0.48(95%信頼区間0.23~0.97)〕、全体の傾向性は非有意だった(傾向性P=0.13)。その他、肉類、卵、乳製品に分けて行った解析からは、全死亡リスクとの有意な関連は示されなかった。 著者らは、本研究が観察研究であるために解釈に限界があるとした上で、「ADLが自立している85歳以上の高齢者では、タンパク質摂取量が多いことが全死亡リスクの低下と関連しており、この関連は筋肉量にかかわらず認められた」と結論付けている。また、タンパク質エネルギー比が高い群ほど魚の摂取量が多かったことから、「魚には抗炎症作用や発がん抑制作用が報告されているn-3系多価不飽和脂肪酸が豊富に含まれており、健康に対して多面的なプラス効果を期待できる。高齢アジア人の健康アウトカム改善には、魚を中心とするタンパク質の摂取量を増やすことも重要なポイントではないか」と述べている。

検索結果 合計:4958件 表示位置:1001 - 1020