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厚生労働省に糖尿病治療薬の安定供給を要望/糖尿病関係三団体

 糖尿病治療薬のGLP-1受容体作動薬の適用外処方が社会問題となり、その供給不足が報道されている。また、後発医薬品メーカーの不祥事や原料の不足などで糖尿病患者への必要な既存の治療薬の供給にも不安が生じている。 こうした現在の状況に鑑み、2023年11月7日に日本糖尿病協会(理事長:清野 裕氏、患者代表理事:中園 徳斗士氏)、日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎氏)、日本くすりと糖尿病学会(理事長:朝倉 俊成氏)の三団体は連名で厚生労働省に対し「糖尿病治療薬の安定供給に関する要望書」を提出した。厚生労働省に患者代表も参加させ、患者視点の対策を要望 要望書の要旨は、以下のとおり。・厚生労働省で「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」を設置し、現状把握と対策を検討していること、また、先発品だけでなく、後発品にも不安定供給が発生しているが、それらの薬価見直しについて検討していることへの謝意を表明。・しかしながら、状況はいまだ改善しているとは言い難く、現在も糖尿病医療の現場では、医療者、患者双方から、不安な思いが寄せられていることを報告。この状況の早期解消への一層の注力を要望。・また、問題解決には、医薬品を用いた治療を受ける患者の視点が重要であるため、今後の検討を進める際は、日本糖尿病協会の患者代表理事を加えて、当事者の意見を聴くことを要望。

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妊婦の過度の体重増加、50年以上先の死亡リスクにも影響/Lancet

 妊娠中の体重増加が2009年の全米医学アカデミー(2009 NAM)の勧告の推奨値を上回った妊婦は、この推奨値の範囲内であった妊婦と比較して、妊娠前の体重が標準体重および過体重の女性では50年後の全死因死亡のリスクが有意に上昇し、妊娠前は低体重の女性でも死亡リスクが上昇したものの統計学的に有意な差はなかったことが、米国・ペンシルベニア大学のStefanie N. Hinkle氏らの調査で明らかとなった。心血管死のリスクは妊娠前に低体重および標準体重の女性で、また糖尿病関連死のリスクは過体重の女性で上昇したという。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年10月19日号に掲載された。米国の前向きコホート研究 研究グループは、妊娠中の過度の体重増加が、50年以上経過した後の死亡率と関連するのかを評価する目的で、Collaborative Perinatal Project(CPP)のデータを用いて前向きコホート研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。 CPPでは、1959~65年に米国の12の臨床センターを受診した妊婦4万8,197人を登録した。CPP Mortality Linkage Studyにおいて、CPPの参加者を国民死亡記録(National Death Index:NDI)およびSocial Security Death Master File(SSDMF)と関連付けることで、2016年12月31日の時点での生死状況を調査した。 2009 NAMの勧告に準拠した妊娠中の体重の増加・減少と、妊娠前のBMI別の死亡率との関連を、補正ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出することで推定した。妊娠前体重はBMIに基づき、低体重(BMI<18.5)、標準体重(18.5~24.9)、過体重(25.0~29.9)、肥満(≧30.0)に分類した。 主要エンドポイントは、全死因死亡とした。副次エンドポイントは、心血管系および糖尿病を基盤とする死亡であった。勧告より低い妊婦では、標準体重者のみ糖尿病関連死が低下 参加者のうち関連情報が得られなかった女性などを除く4万6,042人(黒人45.3%、白人46.2%)を解析に含めた。追跡期間中央値は52年(四分位範囲[IQR]:45~54)で、この間に1万7,901人(38.9%)が死亡した。 妊娠前に低体重であった女性(9.4%)では、2009 NAM勧告より過度の体重増加は、心血管死(HR:1.84、95%CI:1.08~3.12)のリスク上昇と関連したが、全死因死亡(1.14、0.86~1.51)や糖尿病関連死(0.90、0.13~6.35)とは関連がなかった。 妊娠前体重が標準であった女性(68.6%)では、2009 NAM勧告より過度の体重増加は、全死因死亡(HR:1.09、95%CI:1.01~1.18)および心血管死(1.20、1.04~1.37)のリスク上昇をもたらしたが、糖尿病関連死(0.95、0.61~1.47)には影響がなかった。 妊娠前に過体重であった女性(15.4%)では、2009 NAM勧告を超える体重増加により、全死因死亡(HR:1.12、95%CI:1.01~1.24)および糖尿病関連死(1.77、1.23~2.54)のリスクが上昇したが、心血管死(1.12、0.94~1.33)には影響しなかった。 また、妊娠前に肥満であった女性(6.7%)では、妊娠中の体重変化と死亡率との関連は、いずれの評価項目でもHRのCIの範囲が広く、意味のある関連性を認めなかった。 一方、妊娠中の体重の変化が2009 NAM勧告より低かった参加者では、妊娠前体重が標準の女性でのみ、糖尿病関連死(HR:0.62、95%CI:0.48~0.79)のリスクが低下していた。 著者は、「これらのデータは、妊娠中の過度の体重増加が、とくに心代謝性疾患による早期死亡のリスク上昇に寄与する可能性を示唆する」とし、「本研究の新たな知見は、妊娠期間中に2009 NAM勧告の範囲内で健康的な体重増加を達成することの重要性を支持するものであり、その意味するところは、妊娠期間を超えて、心血管系および糖尿病関連の死亡率を含む長期的な健康状態にまで及ぶ可能性があることを示す」と指摘している。

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EDが前糖尿病糖尿病の発症予測因子の可能性

 糖尿病罹患後に発症する合併症の一つに男性の勃起不全(ED)が挙げられることはよく知られているが、EDが前糖尿病糖尿病の発症予測因子の一つであるという、逆の時間的関係も存在することを示すデータが報告された。論文の著者らは、若年のED患者を対象として糖尿病のスクリーニングを行うことを提案している。米セントルイス大学のJane Tucker氏らの研究によるもので、詳細は「Preventive Medicine」に7月25日掲載された。 この研究は、同大学が管理している米国中西部の大規模な医療データシステムを用いて行われた。2008年1月~2022年6月に受療行動があり、前糖尿病糖尿病の既往のない18~40歳の男性23万1,523人(平均年齢28.3±7.0歳)のデータセットを作成。そのうち1.4%に相当する3,131人がEDを新規診断されていた。非ED群に比較しED群は、30歳以上(45.0対77.7%)、低テストステロン血症(0.3対5.5%)の割合が高く(いずれもP<0.0001)、肥満や併存疾患(高血圧、脂質異常症、虚血性心疾患、脳血管疾患、心不全、うつ病、不安症など)が多いといった有意差が認められた。 2年間の追跡で3.2%に当たる7,481人(非ED群7,226人、ED群255人)が前糖尿病/糖尿病を発症。非ED群の累積発症率は3.2%であるのに対して、ED群は8.1%であって、交絡因子未調整の相対リスク(RR)は2.57(95%信頼区間2.28~2.90)だった。 評価した全ての交絡因子を調整後もRR1.34(同1.16~1.55)であり、ED群は前糖尿病/糖尿病の新規発症リスクが有意に高かった。前糖尿病を除外して糖尿病の新規診断のみの累積発症率は、非ED群1.4%、ED群3.4%であり、全ての交絡因子を調整後のRR1.38(同1.10~1.74)であって、前糖尿病を併せた前記の解析結果とほぼ同等のリスク上昇が認められた。 ED発症後に前糖尿病/糖尿病が診断されていた255人について、診断のタイムラグを検討すると、3分の1以上に当たる36.5%はED診断と同日に前糖尿病/糖尿病がタイムラグなく診断されていた。また、255人の半数近くに当たる47.5%はED診断から1カ月以内、55.7%は3カ月以内、62.4%は6カ月以内、67.8%は9カ月以内に前糖尿病/糖尿病が診断され、1年以内には、ほぼ4人に3人に当たる73.7%が前糖尿病/糖尿病を診断されていた。 以上に基づき著者らは、「EDの診断は、未診断の前糖尿病/糖尿病の存在や、それらの発症リスクと関連している。EDは前糖尿病/糖尿病の予測因子と言え、プライマリケアの臨床でEDを有する若年男性を認めた場合、糖尿病のスクリーニングを定期的に施行する必要があるだろう」と述べている。

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糖尿病スティグマ」に興味を持った患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第42回

■外来NGワード「合併症にならないように、もっと食事に気を付けないと」(患者の気持ちに寄り添わず、食事制限を指示)「職場で回ってきたおやつは食べないように!」(職場環境を無視)■解説最近、「スティグマ」(社会的偏見による差別)という言葉をよく耳にします。「スティグマ」(stigma)の語源は、ギリシャ語の奴隷や犯罪者などに付けていた肉体上の「印」のことです。現在では、差別や偏見などネガティブな意味での烙印の意味で用いられています。社会における糖尿病に対する知識不足や誤ったイメージから、糖尿病を持つ人はさまざまなスティグマにさらされています。たとえば、糖尿病では生命保険の加入や就職の際に社会的スティグマを経験することがあります。糖尿病の人は「甘いものを食べてはいけない」と勘違いされ、人前では食べない人もいます。糖尿病であることを受け止められずに、重荷に感じ、職場や友人に糖尿病であることを打ち明けられずにいることもあります。そうすると、職場で回ってくるおやつを食べたり、逆に、会食や交流を避け、他人から距離をとるようになるという自己スティグマ状態に陥り、自尊心がだんだん低下してくる人もいます。そのまま、スティグマを放置していると、社会生活の中で不利益を被るだけでなく、前向きに治療に向かうことができなくなります。日本では2002年に日本精神神経学会が、差別的な意味合いが包含されているとして「精神分裂病」という病名を「統合失調症」という病名に変更しました 。現在、日本糖尿病学会や日本糖尿病協会では「糖尿病」という名称を変えることが検討されています。■患者さんとの会話でロールプレイ医師血糖値がなかなか落ち着きませんね…。患者はい。実は…自分が糖尿病であることが職場で言えなくて…。医師なるほど。言えないと、いろいろな不便がありますよね…。患者そうなんです。職場でおやつが回ってきて、断ることができなくて、つい食べてしまったり…。医師確かに、断りにくいですよね。(共感)患者そうなんです。会食なんかも億劫で…、何か理由を付けて断ったり…。医師なるほど。それは困りましたね。患者そうなんです。なかなか、自分から言えなくて…。医師確かに。今では糖尿病の人の平均余命は日本人の平均余命とほぼ同じですし、糖尿病治療によって心筋梗塞や脳梗塞などの合併症は減っていますからね。患者えっ、そうなんですか。糖尿病は早死にする病気かと思っていました。医師いえ、そうではありませんよ。ただ、糖尿病であろうがなかろうが、健康的な食事にした方がいいですよね。「一病息災」ではないですが、血糖が高いと言われたことをきっかけに、健康的な食事にされる方も多いですからね。「糖尿病だからではなくて、健康のために…」と言って、食べたくないおやつを断ったりされてはいかがでしょう。それに、我慢だけでなく、たまには羽目を外されるのもいいと思いますよ。患者そう言われると、少し心が軽くなってきました。ありがとうございます。(嬉しそうな顔)■医師へのお勧めの言葉「糖尿病があろうがなかろうが、健康的な食事にした方がいいですよね」 1)Kato A, et al. PEC Innov.2)Hamano S, et al. J Diabetes Investig. 2023;14:479-485.

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植物性食品が豊富な食料支援が若年者の肥満解消・予防に寄与

 植物性食品を豊富に含む家族向けの食料支援サービスは、その家庭の子どもの肥満予防に有用な方策となる可能性が、「Preventing Chronic Disease」に6月22日掲載された研究から示唆された。 米ボストン小児病院のAllison J. Wu氏らは、2021年1月から2022年2月の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下において、米マサチューセッツ総合病院のリビア・フードパントリー(Revere Food Pantry;食料配給所)からの、植物性食品を中心とする家庭向けの食料支援が、その家庭の子どものBMIの変化に与える影響について検討した。対象とされた家庭には、新鮮な野菜と果物、ナッツ類、全粒穀物を含む食料品を、家族全員が1日3回摂取できるように毎週配給した。食料支援を受けた93世帯の子ども107人のうち、2~18歳の若年者計35人を対象に分析した。分析には線形回帰を使用した。 その結果、平均19カ月の追跡期間中に、解析対象とした35人の若年者において、年齢および性別で調整したBMIは平均で0.31kg/m2増加した。しかし、過体重または肥満と判定された者の割合は、ベースライン時には20人(57%)だったのが、追跡時には17人(49%)にまで低下した。また、ベースラインからフォローアップ時まで、食料支援の受け取り1回当たりのBMIの変化を推定したところ、年齢や性別、期間とは関係なく、0.04kg/m2(95%信頼区間-0.08~-0.01kg/m2)の減少と計算された。 著者らは、「今回のケーススタディから、植物性食品を中心とした食料の供給は、その家庭の子どものBMI増加を予防できるだけでなく、減少させることも可能な有効な方策だと考えられる」とし、「若年者の体重を健康的なレベルに維持するためには、他の対策と連携して、植物性食品を豊富に含む食料配給を検討すべきだ」と述べている。

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ピカソ「泣く女」【なんでこれがすごいの?だから子供は絵を描くんだ!(アートセラピー)】Part 3

なんでピカソの絵はすごいの?絵を含むアートの起源は、きれいに石器をつくる、ものにイメージを重ね合わせる、集団で共有することであることがわかりました。つまり、発達(個体発生)と進化(系統発生)の両方の視点からも、絵を描くために必要な能力(機能)は、協調運動、概念化、社会性であると言えます。それでは、最初の質問に戻ります。なぜピカソの絵はすごいのでしょうか? 神経美学の視点から、2つの要素を挙げてみましょう。(1)美しい要素がある「泣く女」の絵は、正面顔と横顔、顔のしわとハンカチのしわなどが連続的に組み合わされているなど、実は配置のバランスが驚異的にうまいと指摘されています5)。また、赤と緑、青とオレンジ、黄色と紫などお互いの色を強烈に引き立てる補色を効果的に使っており、色使いもうまいと指摘されています5)。1つ目は、美しい要素があることです。美しさは、見た目、聴き心地、道徳的行い、数理方程式などさまざまあります。これらの美の体験に共通して反応を見せる唯一の部位は、脳の眼窩前頭皮質であることがわかっています6)。絵画の美と道徳の美が、同じ脳の部位の反応であることからも、やはり絵画にはそもそも社会性があることがわかります。(2)めちゃくちゃな要素がある「泣く女」の絵は、「何これ!?」と思わせるような、普通にはありえない描線や構図です。さらに、描かれたモデルの気持ちについ思いを馳せて「ピカソは常軌を逸している!」などと私たちを思わせます2つ目は、めちゃくちゃな要素があることです。めちゃくちゃさは、間違いや無秩序などです。このように、合理的で理性的な思考に揺さぶりをかけられた時、脳の背外側前頭前皮質が反応することがわかっています6)。先ほどにご紹介した実験で、目のない顔に違和感を待つことも、まさにこの部位の反応です。つまり、ピカソの絵がすごいわけは、美しさとめちゃくちゃさの絶妙なバランスによって私たちの心を動かすからです。これは、特定の決まりごと(コンテキスト)を守りつつ、あえてそれにフィットする新しい何かを生み出しています。まさに、創造性です。当時に誕生した美術館は、このピカソの感性に目を付け、価値づけしたのでした。ちなみに、即興演奏をしている時のジャズミュージシャンの脳活動は、先ほどの背外側前頭前皮質が抑制されていることが確認されています。つまり、創造性を発揮するためには、あえてその脳の部位が抑制される必要があるわけです。そして、その創造性を理解するためには、その脳の部位が逆に刺激される必要があるというわけです。アートセラピーの効果とは?ピカソの絵のすごさの答えから、アートとは、必ずしも美しくなければならないわけではなく、私たちの心を動かす何かがあるということです。それは、一言で言えば、おもしろさであり、そのおもしろさを見出す、見る側の感性でもあるでしょう。この点で、アートセラピーとは、ただ何かを描いたりつくったりする自己満足でなく、そのできた何かに周りの人がおもしろみを見いだし相互作用する社会性が必要であることがわかります。ピカソの絵であろうと、子供の絵であろうと、そして患者さんの絵であろうと、その作品に何らかのメッセージ性を感じ取り意味づけして共有することが、つくった人の自己治癒となり、さらには見た人の自己成長となると言えるのではないでしょうか?1)「ヒトはなぜ絵を描くのか」P17、P28、P34、P59、P67:齋藤亜矢、岩波書店、20142)「チンパンジーの絵から 芸術の起源を考える」:斎藤亜矢、日本心理学会、20183)「病の起源2 読字障害/糖尿病/アレルギー」P26、NHK出版、20094)「脳は美をどう感じるか」P105、P124:川畑英明、ちくま新書、20125)「ピカソは本当に偉いのか?」P55、P162:西岡文彦、新潮新書、20126)「神経美学」P25、P130、P143:石津智大、共立出版、2019<< 前のページへ■関連記事ドラマ「ドラゴン桜」(後編)【そんなんで結婚相手も決めちゃうの? 教育政策としてどうする?(学歴への選り好み)】Part 1NHKドラマ「フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話」(後編)【言葉は噂をするために生まれたの!?(統語機能)】NHKドラマ「フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話」(中編)【そもそもなんで私たちは噂好きなの?じゃあこれから情報にどうする?(メディアリテラシー)】Part 1

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肝臓と腎臓の慢性疾患の併存で心臓病リスクが上昇する

 狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患(IHD)のリスク抑制には、肝臓と腎臓の病気の予防が肝腎であることを示唆する研究結果が報告された。代謝異常関連脂肪性肝疾患(MAFLD)と慢性腎臓病(CKD)が併存している人は、既知のリスク因子の影響を調整してもIHD発症リスクが有意に高いという。札幌医科大学循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座の宮森大輔氏、田中希尚氏、古橋眞人氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に7月8日掲載された。 MAFLDとCKDはどちらも近年、国内で患者数の増加が指摘されている慢性疾患。MAFLDは、脂肪肝とともに過体重/肥満、糖尿病もしくはその他の代謝異常(血糖や血清脂質、血圧の異常など)が生じている状態で、最近では動脈硬化性疾患の新たなリスク因子と位置付けられている。一方、CKDは腎機能の低下を主徴とする疾患だが、腎不全のリスクというだけでなく、動脈硬化性疾患のリスクとしても重視されている。肝臓と腎臓はともに生体の恒常性維持に重要な役割を担っており、動脈硬化性疾患に関しても、MAFLDとCKDが存在した場合にはリスクがより上昇する可能性がある。ただし、そのような視点での研究はこれまで報告されていない。古橋氏らの研究グループは、健診受診者のデータを用いた縦断的解析により、この点を検討した。 解析対象は、2006年に渓仁会円山クリニック(札幌市)で定期健診を受けた人のうち、2016年までに1回以上、再度健診を受けていて追跡が可能であり、ベースライン時(2006年)にIHDの既往がなく、解析データに欠落のない1万4,141人(平均年齢48±9歳、男性65.0%)。このうち、ベースライン時点でMAFLDは4,581人(32.4%)、CKDは990人(7.0%)に認められ、両者併存は448人(3.2%)だった。 平均6.9年(範囲1~10年)の追跡で、479人がIHDを発症。1,000人年当たりの発症率は、男性6.3、女性2.4だった。IHD発症リスクとの関連の解析に際しては、年齢と性別の影響を調整する「モデル1」、モデル1に現喫煙とIHDの家族歴を追加する「モデル2」、モデル2に過体重/肥満(BMI23以上)、糖尿病、脂質異常症、高血圧を追加する「モデル3」という3通りで検討した。なお、モデル3で追加した調整因子は、一般的にIHD発症に対して調整される必要があるが、MAFLDの診断基準と重複していることにより多重共線性の懸念(有意な関連を有意でないと判定してしまうこと)があるため、最後に追加した。 ベースライン時点でMAFLDとCKDがともにない群を基準とすると、MAFLDのみ単独で有していた群のIHD発症リスクは、モデル1〔ハザード比(HR)1.42〕とモデル2(HR1.40)では有意な関連が示された。ただし、モデル3では非有意となった。ベースライン時点でCKDのみを有していた群は、全てのモデルで関連が非有意だった。それに対して、MAFLDとCKDの併発群は、モデル1〔HR2.16(95%信頼区間1.50~3.10)〕、モデル2〔HR2.20(同1.53~3.16)〕、モデル3〔HR1.51(1.02~2.22)〕の全てで、IHD発症リスクが高いことが示された。 なお、性別の違いは上記の結果に影響を及ぼしていなかった(モデル3での交互作用P=0.086)。また、モデル3において、MAFLDの有無、およびCKDの有無で比較した場合は、いずれもIHDリスクに有意差がなかった。 続いて、IHDリスクの予測に最も適したモデルはどれかを、赤池情報量規準(AIC)という指標で検討した。AICは値が小さいほど解析に適合していることを意味するが、モデル1から順に、8585、8200、8171であり、モデル3が最適という結果だった。 次に、IHDの古典的なリスク因子(年齢、性別、現喫煙、IHDの家族歴)にMAFLDとCKDの併存を追加した場合のIHD発症予測能への影響をROC解析で検討。すると、古典的リスク因子によるAUCは0.678であるのに対して、MAFLDとCKDの併存を加えると0.687となり、予測能が有意に上昇することが分かった(P<0.019)。 著者らは本研究の限界点として、食事・運動習慣やがんの既往などが交絡因子に含まれていないこと、脂肪肝の重症度が考慮されていないことなどを挙げている。その上で、「日本人一般集団においてMAFLDとCKDの併存は、それらが単独で存在している場合よりもIHD発症リスクが高いことが示された」と結論付け、「MAFLD、CKD、IHDの相互の関連の理解を進めることが、IHDの新たな予防戦略につながるのではないか」と述べている。

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チルゼパチド追加の「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」改訂版/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎氏)は、11月2日に同学会のホームページで「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム 改訂版」を公開した。このアルゴリズムは、2022年9月に2型糖尿病治療の適正化を目的に初版が公開された。今回の改訂版では、チルゼパチドが追加された。主な改訂点は次のとおり。・Fig.2のStep1:病態に応じた薬剤選択における肥満[インスリン抵抗性を想定]の最後にチルゼパチドを追記。・「インスリン分泌不全、抵抗性は、糖尿病治療ガイドにある各指標を参考に評価し得る」の文言は改訂前より記載していたが、より病態を正確にとらえるための情報として「インスリン抵抗性はBMI、腹囲での肥満・内臓脂肪蓄積から類推するが、HOMA-IRなどの指標の評価が望ましい」を追記。・Step2:安全性への配慮、における「例2)腎機能障害合併者には、グリニド薬を避ける」と記載されていた箇所に「腎排泄型の」と追記。・Step2:安全性への配慮、における「例3)心不全合併者にはビグアナイド薬、チアゾリジン薬を避ける(禁忌)」と記載されていた順番を、「チアゾリジン薬、ビグアナイド薬」に入れ替え。・Fig.2の最下段に「目標HbA1cを達成できなかった場合は、Step1に立ち返り」と記載されていたのを「冒頭に立ち返り、インスリン適応の再評価も含めて」に改訂。・別表においては、チルゼパチドを追記したのに加え、考慮すべき項目に「特徴的な副作用」と「効果の持続性」の2つを追記。・本文でもチルゼパチドや特徴的な副作用など、図、別表の改訂に関する追記に加えて、アルゴリズムの図には記載されていないが、考慮すべき併存疾患として本改訂から非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を取り上げた。・インスリンの絶対的適応と相対的適応、血糖コントロール目標における熊本宣言2013や高齢者糖尿病の血糖コントロール目標などについても詳細を追記。

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英語で「指先で血糖を測る」は?【1分★医療英語】第104回

第104回 英語で「指先で血糖を測る」は?《例文1》We will check your fingerstick glucose before meals.(食前に血糖を測りますね)《例文2》What was his fingerstick?(彼の簡易血糖測定はいくつでしたか?)《解説》入院中の患者さんには、指先で簡易血糖測定をすることがありますが、英語では指先での血糖測定のことを“fingerstick glucose”といいます。“finger”(指)と“stick”(刺す)という単語を組み合わせた単語で、文字通り「指先を刺して血液検査をする」ことを表します。成人では、指先採血で検査を行うのはほぼ簡易血糖のみであるため、臨床現場では“fingerstick”という単語のみで血糖測定を表し、“What was his fingerstick?”(彼の簡易血糖測定はいくつでしたか?)というように使います。食前は“before meals”、食後は“after meals”と表現することも併せて覚えておきましょう。講師紹介

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認知症入院患者におけるせん妄の発生率とリスク因子

 入院中の認知症高齢者におけるせん妄の発生率および関連するリスク因子を特定するため、中国・中日友好病院のQifan Xiao氏らは本調査を実施した。その結果、入院中の認知症高齢者におけるせん妄の独立したリスク因子として、糖尿病、脳血管疾患、ビジュアルアナログスケール(VAS)スコア4以上、鎮静薬の使用、血中スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)レベル129U/mL未満が特定された。American Journal of Alzheimer's Disease and Other Dementias誌2023年1~12月号の報告。 対象は、2019年10月~2023年2月に総合病棟に入院した65歳以上の認知症患者157例。臨床データをレトロスペクティブに分析した。対象患者を、入院中のせん妄発症の有無により、せん妄群と非せん妄群に割り付けた。患者に関連する一般的な情報、VASスコア、血中CRPレベル、血中SODレベルを収集した。せん妄の潜在的なリスク因子の特定には単変量解析を用い、統計学的に有意な因子には多変量ロジスティック回帰分析を用いた。ソフトウェアR 4.03を用いて認知症高齢者におけるせん妄発症の予測グラフを構築し、モデルの検証を行った。 主な結果は以下のとおり。・認知症高齢者157例中、せん妄を経験した患者は42例であった。・多変量ロジスティック回帰分析では、入院中の認知症高齢者におけるせん妄の独立したリスク因子として、糖尿病、脳血管疾患、VASスコア4以上、鎮静薬の使用、血中SODレベル129U/mL未満が特定された。・5つのリスク因子に基づく予測ノモグラムをプロットしたROC曲線分析では、AUCが0.875(95%信頼区間:0.816~0.934)であった。・予測モデルはブートストラップ法で内部検証し、予測結果と実臨床結果はおおむね一致していることが確認された。・Hosmer-Lemeshow検定により、予測モデルの適合性と予測能力の高さが実証された。 著者らは「本予測モデルは、入院中の認知症高齢者におけるせん妄を高精度で予測可能であり、臨床応用する価値がある」と述べている。

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低体重のままの人や体重が減った人、死亡リスク高い~日本人集団

 成人後の体重変化が、高い死亡リスクと関連することが最近の研究でわかっている。今回、日本の前向きコホート研究であるJPHC前向き研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study)のデータで20歳以降のBMIの変化と死亡リスクとの関連を調べたところ、低体重のままの人と体重が減少した人では、正常体重の範囲内で体重が増加した人よりも死亡リスクが高いことがわかった。International Journal of Epidemiology誌オンライン版2023年10月25日号に掲載。低体重のままの人の死亡リスクが正常範囲内で体重増の人と比べaHR:1.27と高い 本研究では、40~69歳の参加者を20年追跡したJPHC前向き研究から6万5,520人のデータを分析した。BMIの変化により参加者を、低体重のまま(第1群)、正常低BMI→正常高BMI(第2群)、正常高BMI→正常低BMI(第3群)、正常BMI→過体重(第4群)、過体重→正常BMI(第5群)、正常BMI→肥満(第6群)の6つの群に分類した。 Cox比例ハザードモデルによる解析の結果、第2群(正常低BMI→正常高BMI)を基準とすると、BMIが減少した第3群(調整後ハザード比[aHR]:1.10、95%信頼区間[CI]:1.05~1.16)と第5群(aHR:1.16、95%CI:1.08~1.26)、低体重のままの第1群(aHR:1.27、95%CI:1.21~1.33)と正常BMI→肥満の第6群(aHR:1.22、95%CI:1.13~1.33)で死亡率が高かった。 本研究の結果、日本人集団では成人後に低体重のままの人や体重が減少した人では死亡リスクが高いという独特な結果だった。著者らは「死亡リスクの判断には、BMIを長期にわたってモニタリングすることがより重要であるかもしれない」としている。

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STEMI-PCIへの長期的有効性、BP-SES vs. DP-EES/Lancet

 初回経皮的冠動脈インターベンション(プライマリPCI)を受けるST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において、生分解性ポリマー・シロリムス溶出ステント(BP-SES)は耐久性ポリマー・エベロリムス溶出ステント(DP-EES)と比較して、5年の時点での標的病変不全の発生が少なく、この差の要因は虚血による標的病変の再血行再建のリスクがBP-SESで数値上は低いためであったことが、スイス・ジュネーブ大学病院のJuan F. Iglesias氏らが実施した「BIOSTEMI ES試験」で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2023年10月25日号で報告された。スイスの無作為化試験の延長試験 BIOSTEMI ES試験は、STEMI患者に対するプライマリPCIにおけるBP-SES(Orsiro、Biotronik製)とDP-EES(Xience Prime/Xpedition、Abbott Vascular製)の有用性を比較した前向き単盲検無作為化優越性試験「BIOSTEMI試験」の、医師主導型延長試験である(Biotronikの助成を受けた)。BIOSTEMI試験では、2016年4月~2018年3月にスイスの10施設で患者の無作為化を行った。 BIOSTEMI試験の参加者のうちBIOSTEMI ES試験への参加の同意を得た患者を対象とした。 主要エンドポイントは、5年時点での標的病変不全(心臓死、標的血管の心筋梗塞再発、臨床所見に基づく標的病変の再血行再建の複合)であった。率比(RR)が1未満となるベイズ事後確率(BPP)が0.975より大きい場合に、DP-EES(対照)に対してBP-SESは優越性があると判定した。解析はITT集団で行った。全死因死亡やステント血栓症には差がない 1,300例(1,622病変)を登録し、BP-SES群に649例(816病変)、対照群に651例(806病変)を割り付けた。平均年齢は、BP-SES群が62.2(SD 11.8)歳、対照群が63.2(SD 11.8)歳で、それぞれ136例(21%)および174例(27%)が女性であり、73例(11%)および82例(13%)が糖尿病を有していた。 5年時点で、標的病変不全の発生は対照群が72例(11%)であったのに対し、BP-SES群は50例(8%)と少なく、優越性を認めた(群間差:-3%、RR:0.70、95%ベイズ信用区間[BCI]:0.51~0.95、BPP:0.988)。 5年時の標的病変不全の3つの項目の発生については、心臓死がBP-SES群5%、対照群6%(RR:0.81、95%BCI:0.54~1.23、BPP:0.839)、標的血管の心筋梗塞再発がそれぞれ2%および3%(0.76、0.41~1.34、0.833)、臨床所見に基づく標的病変の再血行再建が3%および5%(0.68、0.40~1.06、0.956)であり、5年時の主要エンドポイントの差は標的病変の再血行再建のリスクがBP-SES群で数値上低かったためであった。 また、5年時の標的血管不全(心臓死、標的血管の心筋梗塞再発、臨床所見に基づく標的血管の再血行再建)の発生は、対照群に比べBP-SES群で有意に低く(10% vs.13%、RR:0.74、95%BCI:0.55~0.97、BPP:0.984)、この差は臨床所見に基づく標的血管の再血行再建(4% vs.6%、0.59、0.34~0.98、0.979)のリスクがBP-SES群で有意に低かったことによるものであった。 5年時の全死因死亡(BPP:0.456)、ステント血栓症(definite)(0.933)、ステント血栓症(definiteまたはprobable)(0.887)、出血イベント(BARC type3~5)(0.477)の発生は、いずれも両群で同程度だった。 著者は、「新世代の生分解性ポリマー薬剤溶出ステントは、STEMI患者へのプライマリPCIにおいて、早期だけでなく長期的な臨床アウトカムの改善をもたらすことが明らかとなった」とまとめ、「本試験の結果は、BP-SESにはSTEMI患者におけるlate catch-up現象がないことを示している」としている。

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2型糖尿病の罹病期間と大脳皮質の厚さとの間に負の関連

 2型糖尿病患者の罹病期間と大脳皮質の厚さとの間に、負の関連が見られるとする報告が発表された。米ミシガン大学アナーバー校のEvan L. Reynolds氏らが米国先住民を対象に行った研究の結果であり、詳細は「Annals of Clinical and Translational Neurology」に7月30日掲載された。大脳皮質の厚さ以外にも、灰白質体積の減少や白質高信号領域の体積の増加という関連が認められたという。 認知症の有病率が世界的に上昇しており、その理由の一部は肥満や2型糖尿病の増加に起因するものと考えられている。また、糖尿病合併症と認知機能低下との関連も報告されている。一方、米国先住民であるピマインディアンは肥満や2型糖尿病の有病率が高く、糖代謝以外の代謝異常や慢性腎臓病の有病率も高い。しかしこれまでのところ、この集団を対象とする認知症リスクの詳細な検討は行われていない。これを背景としてReynolds氏らは、2型糖尿病罹病歴の長いピマインディアン51人を対象として、認知機能検査および脳画像検査による認知症リスクの評価結果と、糖代謝マーカーを含めた代謝関連臨床検査データとの関連を検討した。 解析対象者の主な特徴は、平均年齢が48.4±11.3歳、女性74.5%、BMI34.9±7.7で74.5%が肥満であり、糖尿病罹病期間は20.1±9.1年、HbA1c9.6±2.3%、降圧薬服用者58.8%など。認知機能に関しては、米国立衛生研究所(NIH)が公開している一般人口の標準値(Toolbox認知バッテリー)と有意差がなかった(45.3±9.8、P=0.64)。 脳画像検査が施行されたのは45人だった。代謝関連指標の中で、BMIやメタボリックシンドローム構成因子の該当項目数、血圧、HbA1c、トリグリセライド、HDL-Cなどは、脳画像検査データとの有意な関連が認められなかった。それに対して糖尿病罹病期間は、大脳皮質厚の菲薄化〔点推定値(PE)=-0.0061(95%信頼区間-0.0113~-0.0009)〕、灰白質体積の減少〔PE=-830.39(同-1503.14~-157.64)〕、白質高信号領域の体積の増加〔対数変換後のPE=0.0389(同0.0049~0.0729)〕という有意な関連が認められた。 論文の上席著者である同大学のEva Feldman氏は、「われわれの研究結果は、糖尿病が脳の健康に与える影響を理解する上で極めて重要と言える。今後、糖尿病患者の脳の健康を維持するための治療戦略を探る、大規模な長期介入研究が必要とされるが、今回の研究データはそのような将来の研究の基礎となり得る」と語っている。また同氏は、「糖尿病がなぜ認知機能を低下させるのかというメカニズムの解明と並行して、糖尿病患者の認知症発症予防につながる啓発活動を推し進めることも欠かせない。糖尿病が脳の健康の維持にとってリスクとなることを一般の人々に教育することも、われわれの使命の一部である」と付け加えている。 なお、2人の著者が、医薬品関連企業などとの利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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糖尿病の名前の由来」に興味を持った患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第41回

■外来NGワード「そんなことは自分で調べなさい」(患者さんの質問に真摯に答えない)「尿に糖がでる病気だから、『糖尿病』なんです!」(誤解を招く説明)■解説国立国語研究所の「病院の言葉」をわかりやすくする提案の中で、「『糖尿病』という病名の認知率は高いが、その字面から「糖が尿にでる病気」として誤解されることが多い」と指摘しています。また、「糖」を「砂糖」のことだと単純に考え、「甘いものの摂り過ぎで起こる病気」と勘違いしている人も半数近くいたそうです。さて、この「糖尿病」という名前の病気、いつ頃から名付けられたのでしょう。紀元前1500年のエジプトのパピルスに「尿があまりにもたくさんでる病気」との記載があります。2世紀頃のカッパドキアのアイタイウスが「肉や手足が尿中に溶けてしまう病気で患者は一時も尿を作ることを止めず、尿は水道の蛇口が開いたように絶え間なく流れ出す」と記載しており、ギリシャ語のサイフォン(高い所から低い所へと水が流れる)を意味する“Diabetes”がこの病気の名前として用いられるようになってきました。その後、17世紀に入ると英国人医師のトーマス・ウイルスが糖尿病患者の尿が蜂蜜のように甘いことに気付き、“Mellitus”(ラテン語の「蜂蜜」)と名付け、“Diabetes Mellitus”となりました。これらの用語が日本に伝わり、「蜜尿とう」、「蜜尿病」、「糖尿病」(のちに蜜が糖であることが判明したため)などさまざまな病名で呼ばれていましたが、1907年の第4回 日本内科学会で「糖尿病」という病名に統一され、今日に至っています。ちなみに、下垂体後葉の病気で多尿を呈する「尿崩症」は“Diabetes Insipidus”と言い、病名の“Insipidus”とは「無味」の意味で尿が甘くないことを意味しています。■患者さんとの会話でロールプレイ患者コロナのワクチン接種の際に病名を記載するのに、私の病名は「糖尿病」「高血圧」「高脂血症」でいいですか?医師はい。「糖尿病」、「高血圧」、「高脂血症」あるいは「脂質異常症」でいいですよ。患者ありがとうございます。けど、糖尿病ってあまり印象の良くない名前ですね。医師確かに。「糖が尿にでる病気」と誤解している人も多いですよね。患者そうじゃないんですか?医師正しくは、血液中の糖、血糖値が高くなる病気です。その結果、尿に糖がでるわけで、高くなくても尿に糖がでる人もいます。患者へぇ~、そうなんですか。じゃあ、どうして「糖尿病」って名前になったんですか?「高血糖症」でもよさそうなのに。医師確かに。けれど、糖尿病という名前にしようとした頃、つまり100年以上も前は血糖を測定するのは今ほど簡単じゃなかったからですね。患者なるほど。それで「尿」の名前が付いているんですね。医師そうですね。参考となる症状も多尿でしたし、トイレが水洗でなく汲み取り式だった時代には汲み取り業者が甘い臭いから「この家には糖尿病の人がいる」と言っていたという話もありましたからね。患者へぇ~。尿でそんなことがわかるんですね。医師そうなんです。他にも尿でわかることがありますよ!患者それは何ですか? 是非、教えてください(興味深々)■医師へのお勧めの言葉「昔は尿に糖がでるということで『糖尿病』という名前が使われていましたが、正しくは血液中の糖分、血糖値が上がる病気ですね」 1)Lakhtakia R. Sultan Qaboos Univ Med J. 2013;13:368-370.

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善玉コレステロール値は高くても低くても認知症リスクと関連

 HDLコレステロール(HDL-C)は、心臓や脳の健康に良い「善玉コレステロール」と考えられているが、その値は高過ぎても低過ぎても認知症の発症リスクを高める可能性のあることが、新たな研究で示唆された。この研究論文の上席著者である米ボストン大学公衆衛生大学院のMaria Glymour氏は、「この研究は、非常に多くの参加者を長期間追跡したものであるため、得られた結果は極めて有益だ。われわれは、コレステロール値の非常に高い場合から非常に低い場合まで、あらゆる値と認知症の発症リスクとの関連を推定することができた」と話している。研究の詳細は、「Neurology」に10月4日掲載された。 この研究では、カイザー・パーマネンテ北カリフォルニアのヘルスプラン加入者を対象に、HDL-Cおよび「悪玉コレステロール」とされるLDLコレステロール(LDL-C)の値と認知症との関連が検討された。対象者は、2002年から2007年の間に健康行動に関する調査に回答し、調査時点では認知症のなかった55歳以上の18万4,367人(調査時の平均年齢69.5歳、平均HDL-C値53.7mg/dL、平均LDL-C値108mg/dL)で、2020年12月まで追跡された。対象者のコレステロール値は、調査後2年以内に検査室で平均2.5回測定されていた。なお、HDL-Cの基準値は、男性では40mg/dL以上、女性では50mg/dL以上とされている。 追跡期間中に2万5,214人が認知症を発症した。HDL-Cの値に基づき、対象者を5群に分類して認知症発症との関連を検討したところ、HDL-C値が最も高い(65mg/dL以上)群と最も低い(11〜41mg/dL)群では、中間値の群に比べて認知症の発症リスクがそれぞれ15%と7%高いことが明らかになった。これに対して、LDL-C値と認知症の発症との間に関連は認められなかった。ただし、コレステロール低下薬であるスタチン使用の有無で分けて検討すると、LDL-C高値の場合、スタチン使用者では認知症発症リスクがわずかに上昇していたが、スタチン非使用者では同リスクがわずかに低下していたという違いが認められた。 Glymour氏は、「HDL-C値が高い場合も低い場合も認知症の発症リスクと関連するというのは、予想外の結果だった。ただし、リスク上昇の程度はわずかであり、臨床的に意味があるかどうかは不明だ」と述べている。さらに同氏は、「これに対して、LDL-C値と認知症発症リスクとの間に関連は認められなかった。これらの結果は、HDL-Cが心疾患やがんと同様に認知症とも複雑に関連していることを示す、新たなエビデンスとなるものだ」と話す。 一方、米国神経学会(AAN)はこの研究に関するニュースリリースの中で、「HDL-C値の高低が実際に認知症の原因であることが証明されたわけではない」と述べ、慎重な解釈を求めている。

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マウンテンバイクはそんなに危険でない

 一見けがのリスクが高そうに思えるマウンテンバイクは、実はそれほど危険な乗り物ではないとする研究結果が報告された。カーティン大学(オーストラリア)のPaul Braybrook氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に8月30日掲載された。マウンテンバイク利用に伴うけがの大半は軽度の切り傷や打撲などにとどまることから、健康のためのスポーツの良い選択肢の一つと言えるという。 近年、自然環境でのサイクリングやジョギング、ハイキングなどの「トレイル」と呼ばれるアウトドアスポーツの人気が、世界的に高まっている。Braybrook氏は、「それらのスポーツ中に発生する傷害に対する医療体制を整えるために、傷害のリスクやタイプを把握する必要があった」と、この研究の背景を述べている。そこで同氏らは、既報研究を対象とするシステマティックレビューにより、その実態の把握を試みた。 CINAHL、Cochrane、ProQuest、PubMed、Scopusという文献データベースを用いて、このトピックに関する文献を検索。1万95件がヒットし、ハンドサーチで3件を追加して重複削除後に2人の研究者がタイトルと要約に基づきスクリーニングを実施。採否の意見の不一致は、3人目の研究者の判断により解決した。134件を全文精査の対象とし、最終的に24件を適格と判断した。 24件中、マウンテンバイクに関する報告が17件、ハイキングに関する報告が7件であり、受傷者数の合計は、マウンテンバイク関連が22万935人、ハイキング関連が1万7,757人だった。解析の結果、マウンテンバイクを運転中に一般的に見られるけがは、打撲、すり傷、切り傷など軽度なものであることが分かった。受傷部位は、上肢が最も多く報告されていた。一方、ハイキング中のけがで多いのは、足首の捻挫や水疱であり、部位としては下肢が多かった。なお、けがの定義の不均一性などのため、メタ解析は行われなかった。 Braybrook氏は、「マウンテンバイクは一般的に『エクストリームスポーツ』(過激なスポーツ競技)の一種と見なされているが、報告されたけがの大半は軽度であることが判明した」と総括している。ただし、「マウンテンバイクでは腕の骨折が一定程度見られた。また、ある研究では頭部外傷のリスクが高いことも示され、これはヘルメット着用の重要性を浮き彫りにするものと言える」と述べている。 なお、マウンテンバイク関連の17件の報告のうち3件で、各1人の死亡例が報告されており、そのうち2人は頭部外傷であり、うち1人はヘルメットを着用していなかったことが確認されていた。Braybrook氏によると、マウンテンバイクやハイキングの人気の高まりを背景に、身体保護具の性能も向上してきており、それとともに重症のけがを負うリスクがより低下してきているという。 同氏はまた、「マウンテンバイクはエクストリームスポーツとして発展してきたという歴史があるが、現在ではかなり変化してきている」とし、具体的には、「肥満、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のリスク軽減だけでなく、心臓や血管の状態の改善も期待できる」と、健康上のメリットを述べている。その上で、「サイクリングやハイキングなどのトレイルに出かける機会をなるべく増やした方が良い。まれにすり傷や切り傷、打撲を負うことがあるかもしれないが、トレイルは楽しいアクティビティーであり、健康の維持・増進に最適だ」と付け加えている。

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幹細胞治療で1型糖尿病が寛解する可能性

 1型糖尿病患者に対して、幹細胞由来のインスリン産生細胞を移植するという新たな治療法の可能性を示した、トロント大学アジメラ移植センター(カナダ)のTrevor Reichman氏らの研究結果が、第59回欧州糖尿病学会(EASD2023、10月2~6日、ドイツ・ハンブルク)で発表された。 1型糖尿病は、膵臓内のランゲルハンス島にあるインスリン産生細胞(膵島細胞)の機能が失われることで発症し、発症後には1日数回のインスリン注射、またはインスリンポンプによる治療が必須とされる。しかし、今回報告された新たな研究が実を結べば、1型糖尿病患者の一部はそのようなインスリン療法が不要になるかもしれない。 この研究は、同種幹細胞由来の細胞療法として開発中の「VX-880」を用いて行われた。幹細胞とは、さまざまな種類の細胞に変化して、指数関数的に増殖する能力を備えた細胞のこと。VX-880の場合、幹細胞由来の膵島細胞を研究室内で数週間かけて増殖させた後、点滴によって患者へ移植する。投与後には完全に分化した機能的膵島細胞として、インスリンの分泌を開始する。「この手法は1型糖尿病の完治につながる可能性があり、今回の研究成果はその目標への大きな前進だと信じている」とReichman氏は語っている。 発表によると、この研究は1型糖尿病患者6人に対して行われ、全員がインスリンの必要量が減り、かつ重度の低血糖を起こさなくなる一方、HbA1cは低下して推奨される範囲内のコントロールが達成された。さらに、一部の患者はインスリン注射が不要になった。Reichman氏は、「研究に参加した患者は全員、血糖コントロールの困難な状態が長年続いており、重度の低血糖を来すリスクや生命にかかわる合併症を抱えていた。示された結果は、患者の人生を変える衝撃的なものと言える」と強調している。 これらの有効性が、投与後どれくらいの期間続くのかはまだ不明だ。ただし、Reichman氏によると、「追跡期間が最も長い患者は現在約2年経過したが、いまだインスリン非依存状態(生存のためのインスリン療法は不要な状態)を維持している」という。研究は現在も引き続き進行中だ。 VX-880の安全性に関しては、これまでのところ重篤な副作用は報告されていない。しかし拒絶反応を防ぐために、免疫抑制薬の服用が必要とされる。Reichman氏はその点について「潜在的なリスクが存在する」とし、「免疫抑制薬を必要としない治療法を開発することも、今後の目標だ」と述べている。なお、これまでにこの研究の対象とされたのは18~65歳の成人だが、将来的には子どもを対象とする研究も行う可能性があるという。 米ノースカロライナ大学チャペルヒル校の糖尿病ケアセンター長であるJohn Buse氏は、報告されたこの治療法について「かなりうまくいくようだ」と論評。また、「この治療法の重要なポイントは、移植に用いるインスリン産生細胞の供給源を得るための臓器提供者を必要としないという点にある」と解説する。そして、「治療後の患者は免疫抑制療法を継続しなければならないが、重度の低血糖のリスクを抱えながらインスリン療法を続けなければならない状態の患者にとって、それは合理的なトレードオフと言えよう」と付け加えている。 なお、本研究は、VX-880の開発企業であるVertex Pharmaceuticals社の援助を受けて行われた。また、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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破傷風の予防【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第8回

今回は、破傷風の予防についてです。外傷患者さんを診たとき、「傷が汚いから破傷風トキソイドを打とう」という発言をよく聞くことがありますが、「“汚い”とは何をもって“汚い”と言うのか?」と聞かれるとすぐに答えるのは難しいのではないでしょうか。前回紹介した毎日犬にかまれているおじいさんの症例をベースに、破傷風予防の必要性を考えていきましょう。<症例>72歳男性主訴飼い犬にかまれた高血圧、糖尿病で定期通院中。受診2時間前に飼い犬のマルチーズに手をかまれた。自宅にあった消毒液で消毒し、包帯を巻いた状態で定期受診。診察が終わったときに自分から「今日手をかまれて血が出て大変だったんだよ」と言い、犬咬傷が判明。既往歴糖尿病、高血圧アレルギー歴なしバイタル特記事項なし右前腕2ヵ所に1cm程度の創あり。発赤なし。破傷風の予防接種の有無を聞くと、「そのようなものは知らない」と答える。さて、この患者さんは破傷風トキソイドを打つ必要があると考えますか? 私は迷うことなく「Yes」だと思います。しかし、もし犬にかまれたのではなく、「自宅内で転倒して額に1cmの挫創を負った」「屋外で転倒して肘に擦過創ができた」であればYes/Noが分かれるかもしれません。もしくはこの患者さんが14歳だったとしたらどうでしょうか? 今回は日本の国立感染症研究所とアメリカのCenters for disease Control and Preventionの情報を基に解説します1,2)。治療に入る前に破傷風に関して復習しましょう。破傷風は、Clostridium tetani(破傷風菌)が産生する神経毒素による神経疾患です。破傷風菌は偏性嫌気性グラム陽性有芽胞桿菌で土壌などの環境に広く分布しており、ある程度どのような場所でも傷を負えば感染のリスクがあります。日本では年間100例程度が発症しており、そのうち9例程度が死亡する非常に重篤な疾患です2)。私も数例診ましたが、痙攣のコントロールに難渋するなど非常に治療が難しく、たとえ助かったとしても重篤な合併症を残してしまう危険な疾患と考えています。しかし、ワクチン接種により基礎免疫を獲得することで、ほぼゼロに近い確率まで破傷風の発症を防ぐことできます。ガイドラインでは「基本的には破傷風に対する基礎免疫を持っている状態」が望ましいとされ、「傷がきれいであったとしても、基礎免疫がないもしくはブースターが必要な場合は破傷風トキソイドの投与が推奨」されています。では症例に戻って系統立ててみていきましょう。(1)基礎免疫はあるかまず破傷風に対する基礎免疫があるかを確認しましょう。初回投与から決められた期間に2回破傷風トキソイドを投与することにより基礎免疫を獲得し、最終接種から10年ごとに再投与することで基礎免疫が維持されます。日本では1968年から百日せき・ジフテリア・破傷風の3種混合ワクチン(DPT)の定期接種が始まりましたが、全国一律で開始されたわけではないようです。国立感染症研究所の情報によると、1973年以前の出生の人では抗体保有率が低いものの、1973年より後の出生の人では基礎免疫を獲得していると考えられます。今回の患者さんは定期接種がなかった時代に出生しているため、基礎免疫がないと判断します。次いで患者さんが、破傷風トキソイドを打ったことがあるかどうかを確認しましょう。外傷を契機に破傷風トキソイドを打ったことがある人がいますが、「受傷したときに1回しか打っていない」「記憶があやふや」という人も多く、その場合も基礎免疫がないと考えます。この患者さんにトキソイドについて尋ねたところ「何それ?」と回答されたので基礎免疫はないと判断しました。(2)傷の「きれい」「汚い」破傷風を起こす可能性が高い創=汚い、破傷風を起こす可能性が低い創=きれい、と表現されることが多く、これをもって破傷風トキソイドを打つかどうか判断している医師もいると思います。しかしながら、表1のとおりガイドライン上は「汚い」「きれい」で変わるのは基礎免疫がない患者で抗破傷風免疫グロブリンを打つかどうかです。ここを注意してください。表1 破傷風トキソイド・抗破傷風免疫グロブリン(TIG)の投与基準画像を拡大するでは、きれい/汚いはどう区別するのでしょうか? これは私もかなり探してみたのですが、書籍や文献によってまちまちです。CDCでは「汚い」に関しては「土壌、汚物、糞便、または唾液(動物や人間のかみ傷など)で汚染された傷を“汚い”と判断する必要がある。また、刺し傷または貫通傷を汚染されたものとみなし、破傷風のリスクが高い傷と判断する。壊死組織(壊死性、壊疽性の傷)、凍傷、挫傷、脱臼骨折、火傷を含む傷は、破傷風菌の増殖に適しておりリスクが高い」とされています。Colombet氏らは自身の論文で「明確に破傷風リスクが低い/高い傷を定義するのは困難」と述べていて、傷の状態や性状だけで判断は難しいと思います3)。よって基礎免疫がない外傷患者に対して破傷風トキソイドの投与は必須として、抗破傷風免疫グロブリンを投与するかどうかは医師の判断になります。症例に戻りましょう。破傷風トキソイドは投与して、抗破傷風免疫グロブリンを投与するかどうかの判断が必要になります。この傷はガイドラインに沿えば、きれいな傷とはならないので抗破傷風免疫グロブリンの適応となります。私はこの傷であれば、手元に抗破傷風免疫グロブリンがあれば投与を検討しますが、すぐ投与するためにあえて高次機能病院に受診させることはありません。私が必ず抗破傷風免疫グロブリンを投与するのは、開放骨折やデグロービング損傷など重症度が高い傷で破傷風のリスクが高いと判断したときです。この患者さんは、破傷風トキソイドを投与し、基礎免疫を獲得するために1ヵ月後と半年後に予防接種を受けてもらうことにしました。今回は、破傷風の予防に関してお話ししました。救急外来では破傷風トキソイドが適切に投与されていないとの報告もあり、実際に私も「傷がきれい」という理由で破傷風トキソイドを打たれなかった症例を経験することがあります4)。そのようなこともあり破傷風の予防には思い入れがありますので、参考になれば幸いです。破傷風の豆知識(1)破傷風トキソイドと抗破傷風免疫グロブリンは受傷後いつまでに打てばよい?UpToDateの「Wound management and tetanus prophylaxis」を参考にすると5)、「なるべく早く」が答えです。ただし、その場で投与できなかったとしても破傷風の発症は受傷から3~21日後ですので、可能であれば3日以内、最長で21日まで破傷風トキソイドと抗破傷風免疫グロブリンを破傷風感染予防目的に投与することは推奨されると記載されています。ただし、破傷風トキソイドに関しては基礎免疫を獲得していることが望ましいので、21日を過ぎて、もともと基礎免疫がない患者、もしくは基礎免疫があっても最終接種からの年数と傷の状態からブースト接種が必要な場合は破傷風トキソイドの投与を勧めるべきと考えます。つまり気が付いたときにはいつでも破傷風トキソイド投与を勧める必要があります。何らかの傷を負ったときの破傷風トキソイドは傷からの破傷風予防として保険適用です。(2)基礎免疫があれば破傷風のリスクが高い傷に抗破傷風免疫グロブリンを打たなくてもよい?表1を見てもらいたいのですが、基礎免疫がある人は抗破傷風免疫グロブリンの適応になりません。では1973年より後に生まれた人はたとえ破傷風のリスクが高い傷でも抗破傷風免疫グロブリンを打たなくてよいのでしょうか? 私は必要と考えています。なぜなら本当に基礎免疫があるかどうか確認できないことが多いからです。赤ちゃんのときのワクチン接種に関しては母子手帳に記載がありますが、患者は持ち歩いておらず、本人に聞いてもわからないことがほとんどです。そのため、私は基礎免疫があると確証が持てない場合で破傷風のリスクが高い傷の場合は抗破傷風免疫グロブリンを投与しています。将来的に、ワクチン接種歴がマイナンバーで管理されてすぐに接種歴がわかるようになれば、ほとんどの症例で抗破傷風免疫グロブリンの投与はしなくなるのかなと思います。1)CDC:Tetanus2)国立感染症研究所:破傷風とは3)Colombet I, et al. Clin Diagn Lab Immunol. 2005;12:1057-1062. 4)Liu Y, et al. Hum Vaccin Immunother. 2020;16:349-357.5)UpToDate:Wound management and tetanus prophylaxis

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