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セマグルチド製剤の最適使用推進ガイドラインを公表/厚労省

 社会的に痩身目的での糖尿病治療薬の使用が散見され、本来必要な患者に治療薬が届かないといった事態が起こっている。そのような中でセマグルチド製剤のウゴービ皮下注が肥満症治療薬として承認され、2023年11月22日に薬価収載された。これらの事態を懸念し、厚生労働省は医療機関および薬局に対する周知を目的として、本剤に関する「最適使用推進ガイドライン」を11月21日に公表した。 本ガイドラインには、ウゴービ皮下注を肥満症に対して使用する際の留意事項が記載されており、その使用に際し、ガイドライン内容に留意するよう促している。その中で投与対象となる患者については以下のように記載されている。【患者選択について】投与の要否の判断にあたっては、以下のすべてを満たす肥満症患者であることを確認する。 1)最新の診療ガイドラインの診断基準に基づき、高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれか1つ以上の診断がなされ、かつ以下を満たす患者であること。 ・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する ・BMIが35kg/m2以上2)高血圧、脂質異常症または2型糖尿病ならびに肥満症に関する最新の診療ガイドラインを参考に、適切な食事療法・運動療法に係る治療計画を作成し、本剤を投与する施設において当該計画に基づく治療を6ヵ月以上実施しても、十分な効果が得られない患者であること。また、食事療法について、この間に2ヵ月に1回以上の頻度で管理栄養士による栄養指導を受けた患者であること。なお、食事療法・運動療法に関しては、患者自身による記録を確認する等により必要な対応が実施できていることを確認し、必要な内容を管理記録等に記録すること。3)本剤を投与する施設において合併している高血圧、脂質異常症または2型糖尿病に対して薬物療法を含む適切な治療が行われている患者であること。本剤で治療を始める前に高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれか1つ以上に対して適切に薬物療法が行われている患者であること。 このほか、使用する施設や医師の要件、投与に際して留意すべき事項などが記載されている。

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関節リウマチに対するJAK阻害薬、実臨床下で有効性を確認

 関節リウマチ(RA)に対する治療薬の中では比較的新しいJAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬は、その効果を疑問視する声があったものの、実臨床下において全般的に大きな効果を上げていることが、新たな研究で明らかになった。JAK阻害薬は、体内での炎症に関わっているサイトカインの細胞内伝達に必要な酵素であるJAKの働きを阻害することで炎症を制御する内服薬。神戸大学医学部附属病院の林申也氏らによるこの研究結果は、「Rheumatology」に11月1日掲載された。 RAは、免疫系が体内の関節組織を誤って攻撃することにより引き起こされる自己免疫疾患で、関節の痛み、腫れ、こわばりなどを引き起こす。炎症が全身に広がると、時間の経過とともに、心臓、肺、皮膚、目など、体の他の部位にも問題が生じる可能性がある。RA治療薬の多くは、免疫反応の一部を標的とすることで関節障害の進行を遅らせる。JAK阻害薬もそのような治療薬の一つだ。しかし、本研究には関与していない、米Rheumatology AssociatesのStanley Cohen氏は、「JAK阻害薬は、RA治療の第一選択肢とは考えられていない」と言う。 その理由としてCohen氏は、2021年に実施された試験に言及する。高血圧や糖尿病といった心疾患や脳卒中のリスク因子を一つ以上有する50歳以上のRA患者を対象にしたこの試験では、JAK阻害薬のトファシチニブを投与された患者では、TNF(腫瘍壊死因子)阻害薬を投与された患者に比べて心筋梗塞や脳卒中、特定のがんの発症リスクの高いことが示された。この結果を受けて米食品医薬品局(FDA)は、RA治療に使われる全てのJAK阻害薬に枠組み警告を追加するとともに、医師に対して、1種類以上のTNF阻害薬が奏効しなかった患者に対してのみJAK阻害薬の処方を検討するよう求めた。 林氏らは今回、622人の成人RA患者を対象に、JAK阻害薬のトファシチニブ、バリシチニブ、ペフィシチニブ、ウパダシチニブの有効性と安全性を実臨床下で比較した。治療の前後に、clinical disease activity index(CDAI、臨床疾患活動性指標)と修正版Health Assessment Questionnaire(mHAQ)で評価を行い、炎症反応マーカーとされるC反応性蛋白(CRP)レベルを測定し、治療開始から6カ月時点でのCDAIでの寛解または低疾患活動性率(low disease activity;LDA)を比較した。 その結果、治療開始後6カ月間での全体での治療継続率は85.4%であり、それぞれのJAK阻害薬による治療を受けた患者間で継続率に有意な差は認められなかった。また、治療6カ月目までに投薬により生じた有害事象や投薬の効果が得られないことを理由に治療を中止した患者の割合についても、4群間で有意な差はなかった。 治療開始後6カ月時点で、およそ3分の1の患者がRAの寛解を達成し(CDAI寛解率は、トファシチニブ群で35%、バリシチニブ群で30%、ペフィシチニブ群で46%、ウパダシチニブ群で44%)、80%以上がLDAを達成していた(CDAI-LDAは同順で、87%、85%、89%、82%)。治療開始後6カ月時点で、CDAIとmHAQの平均スコア、CRPレベル、CDAI寛解率、CDAI-LDAに、4群間で有意な差は認められなかった。 Cohen氏は、「この研究は、JAK阻害薬による治療の有効性を確証するものだ。また、それぞれのJAK阻害薬の有効性が同等である可能性も示唆された。複数のJAK阻害薬が臨床試験で直接比較されたことはこれまでに一度もないが、それぞれのJAK阻害薬に関する個別の試験では、本研究と同様の有効性が示されている。今回の研究のような『実際の経験』は、そのような試験で報告された結果を確証するものだ」と述べる。 一方、JAK阻害薬の安全性についてCohen氏は、「TNF阻害薬と比べると、有害事象のリスクが若干高まるものの、全体的にリスクはかなり低く、TNF阻害薬や他の生物学的製剤のリスクと同程度だといえる」との見方を示す。同氏によると、JAK阻害薬により帯状疱疹のリスクが高まる可能性があるとのことだが、同氏は、「このリスクは、帯状疱疹のワクチン接種で対処可能だ」と話している。 なお、本研究は外部からの資金援助を受けていないが、共著者の中には、JAK阻害薬の製造会社から資金提供を受けている者も含まれている。

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難治性ネフローゼ症候群を呈する巣状分節性糸球体硬化症の新たな治療薬sparsentanへの期待(解説:浦信行氏)

 エンドセリン受容体・アンジオテンシン受容体デュアル拮抗薬のsparsentanは慢性腎臓病(CKD)治療薬として、すでにIgA腎症などで臨床試験が先行しており、一部には良好な効果が認められている。また、糖尿病性腎症ではエンドセリン受容体拮抗薬が良好な治療効果を示している。 巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は治療抵抗性であり、治療の主体はステロイドであるが臨床的にはステロイド抵抗性で進行性であり、10年で約半数が腎死に至る。そのようなFSGSに対する治療効果をイルベサルタンと対比した成績が公表された。2年間にわたる二重盲検第III相試験で尿蛋白に関しては顕著な減少効果を認め、完全寛解率も倍以上の18.5%であったが、eGFRのスロープに有意差はないとの残念な結果であった。6週から108週までのeGFRのスロープは有意ではないものの、イルベサルタン群で-5.7であったのに対してsparsentan群で-4.8にとどまっていた。対象の詳細は不明だが、原発性FSGSに限っての検討ではどうなのか。また、両群のeGFRが、sparsentan群で63.3±28.6、イルベサルタン群で64.1±31.7であり、両群ともにeGFR60未満の症例が半数以上である。eGFRが保たれている群同士の比較ではどうであったかが今後の課題といえよう。 先にも述べたが、FSGSは治療抵抗性でステロイドによる治療は効果に乏しく、免疫抑制薬との併用が行われるがそれでも満足な結果は得られていない。あくまでもsparsentanの有効性が確認されてからではあるが、いずれの薬剤とも作用機序は異なるので、ステロイドや免疫抑制薬の副作用低減の面からもsparsentanの併用療法も将来的には考慮されるのではないか。

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AIで英語の発音を鍛えよう【学会発表で伝わる!英語スライド&プレゼン術】第27回

AIで英語の発音を鍛えよう1)日本人が苦手な発音を知っておく2)AIを利用して発音を矯正する3)YouTubeを有効活用する英語での発表に関して、英語の発音にコンプレックスを持っている方は多いかもしれません。ですが、実際に国際学会に出席したことがある方はわかると思いますが、学会の場では世界中から医師が集まっていて、場合によっては非ネイティブスピーカーの参加者のほうが多いこともあります。そのため、英語になまりやアクセントがあるのは当然のこととして認識されており、日本人特有のなまりやアクセントがあっても大きな問題にはならないことが多いのです。英語はあくまで自分の研究内容を伝えるためのコミュニケーションの手段にすぎず、むしろ発音のことはあまり気にせずに堂々と話せる、「メンタルの強さ」が重要ともいえます。その一方で、英語には日本語にはない独特の発音があり、それらをうまく使いこなせなければ、聴衆に意味をまったく理解してもらえない場合もあります。たとえば、「th」を含む単語や、「rとl」、「bとv」、「sとsh」の違いなどが挙げられます。こういった発音をうまくできず、コミュニケーションが成り立たずに面食らう場面を、私も幾度となく経験してきました。対策として有効なのが、英語発音矯正アプリの「ELSA speak」です。このスマホアプリではAIが自分の発音を聞き分け、どこが合っていてどこが間違っているかを一音ずつ指摘してくれます。〈図1〉のように文章が表示され、マイクに向かって発音すると、AIが発音を評価し、発音が間違っている部分を指摘してくれます。そのフィードバックを受けて自己学習を積み重ねていくという仕組みとなっています。〈図1〉画像を拡大するまた、〈図2〉のように定期的にテストを受けることで自分の発音レベルを確認することができ、結果の分析で苦手な発音がわかれば、そこを集中的にトレーニングすることもできます。〈図2〉画像を拡大するこれまでは英会話教室やオンライン英会話など、対面での発音矯正しか方法がなかったので、隙間時間に自分1人で取り組むことができるこのアプリは重宝します。アプリ内で月額または年額の課金がありますが、ある程度の機能は無料で利用できるため、自分に合いそうであれば有料会員登録をお勧めします。それでも、「そもそもどう発音したらいいかわからない」というときには、YouTubeを活用してみるのがよいでしょう。いわゆる「英語系YouTuber」の人たちが発音の違いを丁寧に説明する動画がたくさんあるので、それらを参考にしながら何度も練習すると上達しやすいです。参考までに、発音に関する動画をアップロードしているYouTubeチャンネルをいくつか紹介します。AK in カナダ | AK Englishサマー先生と英会話!だいじろー Daijiro講師紹介

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30代で糖尿病と診断されると寿命が14年短くなる?

 人生のより早い時点で2型糖尿病と診断されるほど、寿命が短くなることを示唆するデータが報告された。30代で診断された場合、50歳時点の余命が14年短くなる可能性があるという。英ケンブリッジ大学のEmanuele Di Angelantonio氏らの研究によるもので、詳細は「The Lancet Diabetes & Endocrinology」10月号に掲載された。性別で比較した場合、女性でより大きな影響が認められるという。 この研究では、2件の大規模疫学研究を統合したデータが用いられた。そのうち1件は、心血管疾患に関連する潜在的なリスク因子探索のための国際共同研究(Emerging Risk Factors Collaboration)であり、別の1件は英国で行われている「UKバイオバンク」。高所得国を中心に19カ国、151万5,718人(平均年齢55.0±9.2歳、男性45.6%)のデータが解析された。 2310万人年の追跡で24万6,670人が死亡。2型糖尿病と診断されていた人は、その診断時年齢が若いほど全死亡(あらゆる原因による死亡)リスクが高いという、線形の用量反応関係が認められた。全死亡のハザード比(HR)は、診断時年齢が30代の場合は2.69(95%信頼区間2.43~2.97)、40代では2.26(同2.08~2.45)、50代で1.84(1.72~1.97)、60代1.57(1.47~1.67)、70歳以上1.39(1.29~1.51)。 50歳時点の平均余命を米国の非糖尿病者と比較すると、30歳で診断されていた場合は14年、40歳で診断されていた場合は10年、50歳で診断されていた場合は6年、それぞれ短縮すると計算された。同様にEUの非糖尿病者と比較すると、同順に13年、9年、5年短くなると計算された。性別に解析すると、女性は糖尿病と診断された場合の余命が、男性よりも短縮するという結果が示された。例えば米国の非糖尿病者と比較した場合、50歳時点の平均余命は男性では、診断時年齢が30代であれば約14年、40代なら約9年、50代なら約5年短縮するのに対して、女性は同順に約16年、11年、7年の短縮と計算された。 論文の筆頭著者である同大学のStephen Kaptoge氏は、2型糖尿病という疾患について、「この疾患はハイリスク者を特定した上で、行動変容を促すことやリスクを抑制する薬剤の処方などのサポートによって、発症を抑制できる。発症後には生活のさまざまな側面に影響が及ぶことを考慮すると、2型糖尿病の発症予防を社会的な緊急課題とすべきと言える」と解説している。なお、国際糖尿病連合(IDF)は2021年の世界の成人糖尿病患者数を5億3700万人と推定している。 糖尿病発症後に血糖値などの治療が不十分な状態が続いていると、心臓発作や脳卒中、腎臓病、がんなどの合併症の発症、および、それらによる死亡のリスクが増大する。今回の研究で示された糖尿病患者の余命短縮も、多くはそれらの合併症が原因だった。論文の共著者の1人である英グラスゴー大学のNaveed Sattar氏は、「われわれの研究結果は、2型糖尿病を発症する年齢が若ければ若いほど、合併症の負担が大きくなるという従来からの考え方を裏付けている。しかし、スクリーニングによる糖尿病の早期発見とその後の集中的な血糖管理によって、糖尿病による疾病負担を抑制する余地のあることを示すものでもある」と強調している。

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わが国初の脂質異常症siRNA製剤「レクビオ皮下注300mgシリンジ」【最新!DI情報】第4回

わが国初の脂質異常症siRNA製剤「レクビオ皮下注300mgシリンジ」今回は、持続型LDLコレステロール(LDL-C)低下siRNA製剤「インクリシランナトリウム注射剤(商品名:レクビオ皮下注300mgシリンジ、製造販売元:ノバルティス ファーマ)」を紹介します。本剤の投与間隔は初回、3ヵ後、以降6ヵ月に1回であるため、治療アドヒアランスの向上が期待されています。<効能・効果>本剤は、家族性高コレステロール血症および高コレステロール血症の適応で、2023年9月25日に製造販売承認を取得しました。本剤の使用は、心血管イベントの発現リスクが高い場合、HMG-CoA還元酵素阻害薬で効果不十分/不適の場合のいずれも満たす場合に限られます。<用法・用量>通常、成人にはインクリシランナトリウムとして1回300mgを初回、3ヵ月後、以降6ヵ月に1回の間隔で皮下投与します。なお、HMG-CoA還元酵素阻害薬による治療が適さない場合を除き、HMG-CoA還元酵素阻害薬と併用します。<安全性>海外第III相ORION-9、10、11試験における18ヵ月間の治療期間中の副作用の発現割合はそれぞれ24.1%(58/241例)、13.4%(105/781例)、15.2%(123/811例)でした。主な副作用は下記のとおりでした。ORION-9試験:注射部位紅斑3.7%(9/241例)、注射部位疼痛2.5%(6/241例)、注射部位そう痒感2.5%(6/241例)ORION-10試験:注射部位疼痛2.9%(23/781例)、糖尿病2.3%(18/781例)、注射部位反応1.7%(13/781例)ORION-11試験:注射部位反応2.2%(18/811例)、注射部位紅斑1.6%(13/811例)、糖尿病0.5%(4/804例)、注射部位疼痛1.0%(8/811例)<患者さんへの指導例>1.この薬は、これまでの治療で十分な血中LDL-Cの低下効果が得られなかった患者さんに使われます。2.初回、3ヵ月後、その後6ヵ月ごとに医療機関で皮下に投与し、LDL-Cの管理目標値を目指します。3.この薬による治療で医療費が高額になったときは、公的な支援を利用できる場合があります。<ここがポイント!>動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)を予防するためにはLDL-Cを適切に管理することが重要です。LDL-Cを低下させるには、第1選択薬であるスタチンをはじめ、複数の脂質低下療法で治療しますが、管理目標値まで低下させることが困難な患者が一定数存在します。本剤は、PCSK9 mRNAを標的とするsiRNA製剤です。PCSK9はLDL受容体に直接結合し、LDL受容体の分解を促進する働きがあります。本剤は肝臓内でPCSK9の機能を阻害することでLDL受容体の分解を抑制し、LDL-Cを効率よく細胞内に取り込んで血中濃度を低下させます。投与間隔が初回、3ヵ月後、以降6ヵ月に1回の注射薬であるため、治療アドヒアランスの向上が期待されます。日本人患者312例を対象とした国内第II相用量設定試験(ORION-15)において、主要評価項目である投与180日目のLDL-Cのベースラインからの変化率(最小二乗平均)はプラセボ群で9.0%、本剤300mg群で-56.3%であり、変化率の群間差は-65.3%(95%CI:-72.0~-58.6)で、プラセボ群と比較して有意にLDL-Cが低下しました(p<0.0001)。また、海外第III相試験(ORION-9、10、11試験)では、投与510日目のLDL-Cのベースラインからの変化率は、プラセボ群ではそれぞれ8.22%、0.96%、4.04%であった一方、本剤群では-39.67%、-51.28%、-45.82%であり、群間差は-47.89%、-52.24%、-49.85%で、プラセボ群と比較して有意にLDL-Cが低下しました。脂質異常症の治療には、食事療法とともに運動療法、禁煙、ほかの虚血性心疾患のリスクファクター(糖尿病、高血圧症など)の軽減も重要です。患者さんが積極的に取り組めているかどうかを適宜確認しましょう。

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肥満は胆道がんの発症・死亡に関連~アジア人90万人のプール解析

 肥満と胆道がんの関連について、愛知県がんセンターの尾瀬 功氏らがアジア人集団のコホート研究における約90万人のデータをプール解析した結果、BMIと胆道がん死亡率の関連が確認された。さらに肥満は胆石症を介して胆道がんリスクに影響を与え、胆石症がなくても胆道がんリスクを高める可能性があることが示唆された。International Journal of Cancer誌オンライン版2023年11月15日号に掲載。 本研究では、アジアコホートコンソーシアムに参加している21のコホート研究の計90万5,530人をプール解析した。BMI値で、低体重(18.5未満)、標準(18.5~22.9)、過体重(23~24.9)、肥満(25以上)の4群に分類した。BMIと胆道がん発症率および死亡率との関連は、脆弱性を共有したCox回帰モデルによるハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・標準BMIと比較して高BMIは胆道がん死亡率と関連し、HRは男性で1.19(95%CI:1.02~1.38)、女性で1.30(同:1.14~1.49)だった。・胆道がんリスクにおいて胆石症はBMIと有意な相互作用を示した。・BMIと胆道がんリスクの関連は、女性では直接および胆石症を介して関連していたが、男性では関連は明らかではなかった。・胆石症がある場合、男女共にBMIは胆道がん死亡とは関連しなかったが、胆石症のない女性で関連していた。

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日常生活の中の短時間の身体活動でも寿命が延びるか

 日常生活における家事などの身体活動であっても、寿命延伸につながる可能性を示唆するデータが報告された。シドニー大学(オーストラリア)のMatthew Ahmadi氏らの研究によるもので、詳細は「The Lancet Public Health」10月号に掲載された。数分程度の身体活動でも有意な影響が認められるという。ただし、身体活動の持続時間がより長くより高強度である場合に、寿命に対してより大きな影響が認められるとのことだ。 この研究では、英国で行われている大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータが解析に用いられた。余暇時間に積極的な運動を行っていない成人2万5,241人(平均年齢61.8±7.6歳、女性56.2%)を7.9±0.9年間追跡。身体活動量はウェアラブルデバイスにより把握した。追跡期間中に主要心血管イベント(MACE)が824件発生し、全死亡(あらゆる原因による死亡)は1,111人だった。なお、これまでの研究で、健康アウトカムとの関連が検討されていた最も短い身体活動持続時間は10分であることから、今回の研究では持続時間10分未満の身体活動の影響が検討された。 解析の結果、中強度以上の身体活動の持続時間が10分以下であっても、その時間の長さによって心臓発作や脳卒中、および全死亡リスクに差が認められることが明らかになった。Ahmadi氏は、「われわれの研究により、従来はスポーツなどの運動によって得られると考えられていた健康上のメリットが、日常生活での身体活動でも得られることが分かった。スポーツウェアやスポーツシューズを身に着けるまでもなく、家事やガーデニング、子どもと遊ぶことも健康にとって有益だ。この結果は運動が苦手な人、または運動をしたくてもできない状況の人にとって素晴らしい知見と言える」と話している。 明らかになった主な結果は以下の通り。いずれも1日の中で観察された、最も持続時間の長い中強度以上の身体活動時間(以下、最長身体活動持続時間)が1分未満であった群(全体の5.6%)と比較した結果であり、年齢や性別、喫煙・飲酒習慣、高血圧・糖尿病・脂質異常症の既往、心血管疾患・がんの家族歴、座位行動時間、睡眠時間、教育歴、フレイル指数などの交絡因子の影響を調整済み。・最長身体活動持続時間が5~10分未満の群(52.6%)は、早期死亡リスクが52%低く、MACEリスクが41%低い。・最長身体活動持続時間が3~5分未満の群(26.7%)は、早期死亡リスクが44%低く、MACEリスクが38%低い。・最長身体活動持続時間が1~3分未満の群(15.1%)は、早期死亡リスクが34%低く、MACEリスクが29%低い。 なお、このような短時間の身体活動のメリットが示唆された一方、身体活動時間が長いと健康上のメリットがより大きいことや、身体活動中の運動強度が重要であることも明らかになった。運動強度については、1機会の身体活動のうち最低15%(1分間の場合は約10秒)は、高強度の負荷のかかる身体活動とすると効果が最大化すると考えられ、その条件を満たしていれば、たとえ最長身体活動持続時間が1分未満であっても、有意な影響が観察されたとのことだ。 これらの結果を総括してAhmadi氏は、「明らかになった結果は、日常生活の中で行われる短時間の身体活動が、心血管系に対して保護的に働く可能性を示している。それらの身体活動は、血圧や血糖値のコントロール、心肺機能の強化、酸化ストレスの抑制などを介して、健康上のメリットを発揮するのではないか」と述べている。

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第171回 医師会長、病院団体とともに診療報酬の大幅引き上げを岸田総理に強く要求/医師会

<先週の動き>1.医師会長、病院団体とともに診療報酬の大幅引き上げを岸田総理に強く要求/医師会2.肥満症治療薬セマグルチドが薬価収載、供給不足の懸念も/中医協3.不妊治療の保険適用で医療費895億円、患者の経済負担は?/中医協4.2025年発足のかかりつけ医機能報告制度、分科会で議論開始/厚労省5.日本で緊急避妊薬の試験販売開始、医師の処方箋不要に/厚労省6.解禁前に大麻類似成分含むグミ問題が浮上、販売停止へ/厚労省1.医師会長、病院団体とともに診療報酬の大幅引き上げを岸田総理に強く要求/医師会日本医師会の松本 吉郎会長は、病院団体の代表らとともに11月15日に官邸を訪れ、岸田 文雄首相と面会し、医療現場で働く職員の賃上げを「非常に重要な事項」として診療報酬の改定での増額を求めた。この面会に先立ち、松本会長は日本病院会などからなる四病院団体協議会の幹部と記者会見を開き、2024年度の診療報酬改定に向けて大幅な引き上げを強く求める合同声明を発表した。医療業界は物価高騰や賃金上昇による経営環境の厳しさに直面しており、とくに入院基本料の引き上げを要望している。入院基本料は15年間据え置かれており、病院経営の持続可能性に影響を与えている。財務省側の診療報酬マイナス改定の求めに対して、日本病院会の島副会長は、「赤字病院が8割を超えており、診療報酬の引き下げが入院医療の質の低下につながる」と懸念を表明したほか、全日本病院協会の猪口会長は、賃上げの余裕がない現状を指摘し、財政支援の必要性を訴えた。来年の診療報酬の改定の幅は年末までに決定される見込みで、今後は厚生労働省、財務省とさらに折衝が行われる。参考1)類を見ない物価高騰「大幅な診療報酬引き上げを」日本医師会と四病協が合同で声明(CB News)2)日医・四病協が合同声明 24年度診療報酬改定「大幅引上げ強く求める」 日病「入院基本料引上げは悲願」(ミクスオンライン)3)首相「医療職賃上げ重要」 日医会長らと面会(東京新聞)4)令和6年度診療報酬改定に向けた日本医師会・四病院団体協議会合同声明(日医)2.肥満症治療薬セマグルチドが薬価収載、供給不足の懸念も/中医協厚生労働省は、11月15日に開かれた中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、肥満症治療の新薬セマグルチド(商品名:ウゴービ)の薬価収載について了承した。肥満症の治療薬として約30年ぶりに公的医療保険の対象として承認された。セマグルチドはGLP-1受容体作動薬であり、肥満症の治療に用いる場合は、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法や運動療法で十分な効果が得られない、特定のBMI基準を満たす患者に限定されている。ウゴービと同一成分のオゼンピック注は、すでに糖尿病治療薬として使用されており、ウゴービの薬価償還により美容・ダイエット目的での不適切な使用が増え、供給不足のため必要な患者への薬剤供給が困難となる可能性が懸念されている。厚労省や医療関係者は、GLP-1受容体作動薬の適切な使用を強く呼びかけ、不適切な使用による健康被害や供給不足の問題を防ぐための対策を求めている。また、セマグルチドの供給に関しては、製薬会社が安定供給を確保できると報告しているが、実際の供給状況や使用実態については、引き続き注視が必要。参考1)オゼンピック皮下注2mg供給(限定出荷)に関するお知らせ(ノボ ノルディスクファーマ)2)中医協総会 肥満症治療薬・ウゴービ収載で厚労省に対応求める ダイエット目的の使用で供給不安を懸念(ミクスオンライン)3)肥満症薬ウゴービ22日収載、ピーク時328億円 中医協・総会が了承(CB News)4)肥満症に30年ぶり新薬、ウゴービを保険適用へ…ダイエット目的の使用に懸念も(読売新聞)5)糖尿病治療薬は「やせ薬」? ネットで広まり品薄状態に(産経新聞)3.不妊治療の保険適用で医療費895億円、患者の経済負担は?/中医協厚生労働省は、11月17日に開かれた中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、不妊治療を取り上げた。2022年度の診療報酬改定に合わせて、不妊治療が保険適用され、患者側や医療機関側の反応と金額について議論を行った。保険適用後の不妊治療の実施状況は、医療費895億円、レセプト件数125万件、実患者数37万人。一般不妊治療管理料は31万回、生殖補助医療管理料は合計61万回以上算定されていた。しかし、保険適用にあたって設けられた範囲や年齢・回数制限に関して、見直しを求める意見が出されたほか、凍結保存胚の維持管理期間の延長が検討された。また、不妊治療の全体像を正確に把握するために、今後も日本産婦人科学会のデータ検証が必要とされた。参考1)中央社会保険医療協議会 総会(第565回) 議事次第2)不妊治療の保険適用、昨年度の医療費895億円 対象拡大後 厚労省(朝日新聞)3)「不妊治療の保険適用」は効果をあげているが「年齢・回数制限の見直し」求める声も、凍結胚の維持管理期間を延長してはどうか-中医協総会(Gem Med)4.2025年発足のかかりつけ医機能報告制度、分科会で議論開始/厚労省2025年4月に施行される「かかりつけ医機能報告」制度に向けて、厚生労働省は「第1回 かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」を11月15日に開き、議論を開始した。かかりつけ医機能報告制度は、慢性疾患患者や高齢者など継続的な医療が必要な人々に対して、地域での「かかりつけ医機能」を確保・強化することを目的としている。分科会では、医療機関が都道府県に報告する「かかりつけ医機能」の内容や、報告制度の対象となる医療機関の範囲などを具体化することが議題となっている。分科会では、患者が適切な受診先を選択できるように「かかりつけ医機能」をカバーする医療機関の基準設定の必要性が指摘された。このほか、地域医療機関の連携強化や患者が「かかりつけ医機能を持つ医療機関」を容易に検索できる仕組みの構築が重要であるとの意見も出された。医療提供側からは、幅広い医療機関が参加できるような仕組みへの期待を寄せる声が上がったほか、患者側と医療側で「かかりつけ医機能」に関する意識のズレも明らかとなった。今後は議論を重ね、実効性のある「かかりつけ医機能」の具体化に進め、来年の夏までに取りまとめを行い、法律改正を経て、令和7(2025)年度の発足を目指す見込み。参考1)第1回 かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会 資料(厚労省)2)「かかりつけ医機能」具体化へ分科会が初会合 プレゼン・ヒアリングでまず実態把握(CB News)3)かかりつけ報告、来年夏に取りまとめへ 厚労省分科会が初会合(MEDIFAX)5.日本で緊急避妊薬の試験販売開始、医師の処方箋不要に/厚労省厚生労働省は、緊急避妊薬(アフターピル)の試験販売が11月28日から開始されることを明らかにした。全国約145~150の薬局で、医師の処方箋なしで販売される予定。価格は7,000~9,000円で、16歳以上の女性を対象としているが、18歳未満では保護者の同伴が必要となる。緊急避妊薬は、性交後72時間以内に服用することで妊娠を高確率で回避でき、現在は、医師の処方箋が必要であり、避妊失敗や性暴力による望まない妊娠を防ぐために市販化を求める声が上がっていた。試験販売は来年3月29日までの予定で、厚労省が求める要件を満たす薬局で実施される。要件としては夜間や休日の対応、近隣の産婦人科との連携、プライバシーが確保できる個室の有無などが含まれ、購入者は研究への参加に同意する必要がある。参考1)緊急避妊に係る診療の提供体制整備に関する取組について(厚労省)2)緊急避妊薬、薬局で試験販売 28日から、全国145店舗 厚労省(時事通信)3)緊急避妊薬28日試験販売 全国145薬局、16歳以上(日経新聞)4)医師の処方箋なしで緊急避妊薬、28日から全国150薬局で試験販売…薬剤師の面前で薬を服用(読売新聞)6.解禁前に大麻類似成分含むグミ問題が浮上、販売停止へ/厚労省厚生労働省麻薬取締部は、大麻の類似成分を含むとされるグミによって体調不良を訴える人が相次いでいることを受け、東京と大阪の販売店に対して販売停止命令を出した。これらのグミは「HHCH(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)」という未規制の成分を含んでいるとされ、武見 敬三厚生労働大臣は使用・流通の禁止を検討している。今回の事件は、東京都内や大阪市での祭りや公共の場での配布により、体調不良を訴え、病院に搬送される患者から発覚した。厚労省は、これらのグミが健康被害を引き起こす可能性があるとして、成分分析を行っている。また、CBD(カンナビジオール)を含む合法的な「CBDグミ」との混同を避けるための情報提供も行っている。販売する「ワンインチ」社の社長は、同社のCBDグミは安全であり、大麻グミとは異なると主張している。また、厚労省は、CBD製品は、大麻取締法に該当しないことを明らかにしている。大麻草から抽出した成分を用いて製造した医薬品の国内での使用解禁を含む、大麻取締法の改正案が11月14日に衆議院本会議で可決されたばかりで、武見厚労働大臣は、17日の閣議後の会見で、成分が特定されれば、「速やかに指定薬物として指定し、使用・流通を禁止する」方針を明らかにしている。参考1)大麻グミ騒動 「CBDグミ」販売元が訴え「味覚糖製造、安全」「HHCHとは大きく異なる…大変迷惑」(スポニチ)2)「グミ」店に販売停止命令 麻薬取締部、大麻類似成分(東京新聞)3)「大麻グミ」規制へ 搬送相次ぎ、厚労相「使用・流通禁止を検討」(朝日新聞)4)大麻法改正案、衆院通過 成分含む薬、使用可能に(産経新聞)

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増加する化学療法患者-機転の利いた専攻医の検査オーダー【見落とさない!がんの心毒性】第26回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別70代・女性(BMI:26.2)既往歴高血圧症、2型糖尿病(HbA1c:8.0%)、脂質異常症服用歴アジルサルタン、メトホルミン塩酸塩、ロスバスタチンカルシウム臨床経過進行食道がん(cT3r,N2,M0:StageIIIA)にて術前補助化学療法を1コース受けた。化学療法のレジメンはドセタキセル・シスプラチン・5-fluorouracil(DCF)である。なお、初診時のDダイマーは2.6μg/mLで、下肢静脈エコー検査と胸腹部骨盤部の造影CTでは静脈血栓症は認めていない。CTにて(誤嚥性)肺炎や食道がんの穿孔による縦隔炎の所見はなかった。2コース目のDCF療法の開始予定日の朝に37.8℃の微熱を認めた。以下が上部消化管内視鏡画像である。胸部進行食道がんを認める。画像を拡大する以下が当日朝の採血結果である(表)。(表)画像を拡大する【問題】この患者への抗がん剤投与の是非に関し、専攻医がオーダーしていたために病態を把握できた項目が存在した。それは何か?a.プロカルシトニンb.SARS-CoV-2のPCR検査c.Dダイマーd.βD-グルカンe.NT-proBNP筆者コメント本邦のガイドラインには1)、「がん薬物療法は、静脈血栓塞栓症の発症再発リスクを高めると考えられ、Wellsスコアなどの検査前臨床的確率の評価システムを起点とするVTE診断のアルゴリズムに除外診断としてDダイマーが組み込まれているものの、がん薬物療法に伴う凝固線溶系に関連するバイオマーカーに特化したものではない。がん薬物療法に伴う静脈血栓症の診療において、凝固線溶系バイオマーカーの有用性に関してはいくつかの報告があるものの、十分なエビデンスの集積はなく今後の検討課題である」と記されている。一方で、「がん患者は、初診時と入院もしくは化学療法開始・変更のたびにリスク因子、バイオマーカー(Dダイマーなど)などでVTEの評価を推奨する」というASCO Clinical Practice Giudeline Updateの推奨も存在する2)。静脈血栓症の症状として「発熱」は報告されており3)、欧米のデータでは、実際に肺塞栓症(PE)発症患者の14~68%で発熱を認め、発熱を伴う深部静脈血栓症(DVT)患者の30日死亡率は、発熱を伴わない患者の2倍になることも報告されている4)。このほか、可溶性フィブリンモノマー複合体定量検査値は、食道がん周術期においても中央値は正常値内を推移することが報告されており、その異常高値はmassiveな血栓症の指標になる可能性もある5)。がん関連血栓症の成因として、(1)患者関連因子、(2)がん関連因子、(3)治療関連因子が2022年のESC Guidelines on cardio-oncologyに記載された6)。今後一層のがん患者の生存率向上とともに、本症例のようなケースが増加すると思われる。1)日本臨床腫瘍学会・日本腫瘍循環器学会編. Onco-cardiologyガイドライン. 南江堂;2023. p.56-58.2)Key NS, et al. J Clin Oncol. 2023;41:3063-30713)Endo M, et al. Int J Surg Case Rep. 2022;92:106836. 4)Barba R, et al. J Thromb Thrombolysis. 2011;32:288–292.5)Tanaka Y, et al. Anticancer Res. 2019;39:2615-2625.6)Lyon AR, et al. Eur Heart J. 2022;43:4229-4361.講師紹介

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ステロイド処方医は知っておきたい、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症のガイドライン改訂

 『グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2023』が8月に発刊。本書は、ステロイド薬処方医が服用患者の骨折前/骨密度低下前の管理を担う際に役立ててもらう目的で作成された。また、ステロイド性骨粗鬆症の表現にはエストロゲン由来の病態も含まれ、海外ではステロイド性骨粗鬆症と表現しなくなったこともあり、“合成グルココルチコイド(GC)服用による骨粗鬆症”を明確にするため、本改訂からグルココルチコイド誘発性骨粗鬆症(GIOP)と表記が変更されたのも重要なポイントだ。9年の時を経て治療薬に関する膨大なエビデンスが蓄積された今回、ガイドライン作成委員会の委員長を務めた田中 良哉氏(産業医科大学第一内科学講座 教授)に、GIOPにおける治療薬の処方タイミングや薬剤選択の方法などについて話を聞いた。ステロイド薬処方時にグルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の予防策 自己免疫疾患や移植拒絶反応をはじめ、多くの疾患治療に用いられるステロイド薬。この薬効成分は合成GCであるため、ホメオスタシスを維持する内在性ホルモンと共通の核内受容体に結合し、糖、脂質、骨などの代謝に異常を来すことは有名な話である。他方で、ステロイド薬の処方医は、GCを処方することで代謝異常を必然的に引き起こしていることも忘れてはいけない話である。 つまり、ステロイド薬を処方する際には、必ずこれらの代謝異常が出現することを念頭に置き、必要に応じた予防対策を講じることが求められる。その1つが“骨粗鬆症治療薬を処方すること”なのだが、実際には「骨粗鬆症の予防的処方に対する理解は進んでいない」と田中氏は話した。この理由について、「GIOPには明確な診断基準がなく、本ガイドラインに記載されていることも、あくまで“治療介入のための基準”である。診断基準がないということは診断されている患者数もわからない。骨粗鬆症患者1,600万人のうち、GCが3ヵ月継続処方されている患者をDPCから推算すると約100~150万人が該当すると言われているが、あくまで推定値に過ぎない。そのような背景から、GIOPに対する管理・治療が世界中で問題になっている」と同氏は警鐘を鳴らした。グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症のガイドラインで治療や予防のための基準このような問題が生じてしまうには、5つの誤解もあると同氏は以下のように示し、それらの解決の糸口になるよう、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2023ではGIOPの予防的管理や治療に該当する患者を見極めるための基準を設けている(p.xiii 図2:診療アルゴリズムを参照)。1)GC骨粗鬆症の管理にはDXA法などの骨密度検査が必要?→スコアリングシステムで計算すれば、薬物療法の必要性が判断できる。2)ステロイド5mg/dayなら安全と考えがち→人体から2.0~2.5mg/dayが分泌されており、GC投与は1mgでも過剰。安全域がないことも周知されていない。3)骨を臓器の一種とみなしていない→「骨粗鬆症は骨代謝異常症であり代謝疾患の一種」という認識が乏しい。4)命に直結しない!?→「骨が脆弱になっても死なない」と思われる傾向にある。実際には、大腿骨や腰椎などの骨折が原因で姿勢が悪くなり、その結果、内臓・血管を圧迫して循環障害を起こし、死亡リスク上昇につながった報告もある1)。5)GIOP治療が難しいと思われている→スコアリングに基づき薬物介入すれば問題ない。GCを3ヵ月以上使用中あるいは使用予定患者で、危険因子(既存骨折あり/なし、年齢[50歳未満、50~65歳未満、65歳以上]、GC投与量[PLS換算 mg/日:5未満、5~7.5未満、7.5以上]、骨密度[%YAM:80以上、70~80未満、70未満])をスコアリングし、3点以上であれば薬物療法が推奨される。ステロイド性骨粗鬆症のガイドラインから第一選択薬の明記をなくす スコアリングシステムは、ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療 ガイドライン2014年改訂版からの変更はないものの、治療薬の選択肢が増えたことからシステマティックレビューなどを行った結果、5つの薬剤(ビスホスホネート[内服、注射剤]、抗RANKL抗体、テリパラチド、エルデカルシトール、またはSERM)が推奨され、抗スクレロスチン抗体はFuture Questionになった。なお、前回まではアレンドロネートとビスホスホネートを第一選択薬として明記していたが、本改訂では第一選択薬の明記がなくなった。これについて同氏は「厳密に各薬剤を直接比較している試験がなかった」と補足した 。 また、新たな薬剤の推奨の位置付けやエビデンスについても「抗RANKL抗体は大腿骨頸部や橈骨の構成要素である皮質骨、椎体の構成要素の半分を占める海綿骨、いずれの骨密度にも好影響を及ぼすが、海外では悪性腫瘍の適応と同一薬価で販売されていることも推奨度に影響した。一方、抗スクレロスチン抗体は現状ではエビデンス不足のため本書での推奨が付かなかった。推奨するにはエビデンスに加えて、医療経済やアドヒアランスの観点も踏まえて決定した」と説明した。グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症のガイドライン準拠は10%未満 最後に同氏は、「GIOPは腰椎と同時に“胸椎”にも高頻度に影響しやすいため、原疾患の治療にてレントゲン撮影をする際にはGIOPの治療効果・経過観察のためにも、ぜひ骨にも目を向けてほしい。そして、本ガイドラインを準拠している内科医は10%にも満たないと言われているので、すべての医師がこれを理解してくれることを期待する。骨代謝異常症に対するビスホスホネートの作用点は、脂質代謝異常薬の作用点であるメバロン酸経由の下流であることからも、骨と脂質異常症の相同性が示唆される。ハートアタックならぬボーンアタックを予防するためにも、3ヵ月以上にわたってステロイドを処方する場合には骨粗鬆症予防の介入を考慮し、GIOPの予防・管理につなげてもらえるように学会としても啓発していきたい」と語った。

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統合失調症患者における抗精神病薬誘発性糖尿病性ケトアシドーシスのリスク評価~医薬品副作用データベース解析

 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)は、生命を脅かす重篤な状態であり、抗精神病薬により引き起こされる可能性がある。アジア人糖尿病患者は、白人と比較し、インスリン抵抗性が低いといわれている。これまでに報告されている抗精神病薬に関連したDKAの研究は、すべて欧米人を対象としているため、これらのデータが日本人でも同様なのかは、不明である。獨協医科大学の菅原 典夫氏らは、自発報告システムデータベースである日本の医薬品副作用データベースを用いて、抗精神病薬とDKAとの関連を分析した。その結果から、統合失調症患者のDKA発現にはオランザピン治療が関連していることが明らかとなった。とくに、男性患者において、DKAリスクが高いことも確認された。Journal of Psychosomatic Research誌オンライン版2023年10月19日号の報告。 2004年4月~2021年3月に独立行政法人医薬品医療機器総合機構に提出された有害事象報告書を用いて、レトロスペクティブにファーマコビジランスの不均衡分析を行った。対象集団は統合失調症患者7,435例であり、抗精神病薬に関連したDKAの報告は合計55件であった。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者のDKA症例55例のうち、DKA後の死亡した患者は3例(6%)であった。・DKAの兆候は、オランザピン治療後に報告されており、調整後報告オッズ比は有意であった(aROR:3.26、95%信頼区間[CI]:1.87~5.66)。・準選択法を用いた多変量ロジスティック回帰分析では、オランザピン治療症例1,399例において、DKA発現と関連していた因子は、男性であることだった(aROR:2.72、95%CI:1.07~6.90)。 結果を踏まえ、著者らは「本データは、統合失調症患者の抗精神病薬に関連するDKA発現を減少させるために、リスク管理やモニタリングに役立つであろう」としている。

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地中海食と運動の組み合わせは脂肪の燃焼と筋肉量の増加に有効

 色とりどりの野菜や果物、健康的な脂質、脂肪分の少ないタンパク質が豊富な地中海食と、定期的な運動およびカロリー制限の組み合わせは、高齢者の腹部の脂肪(内臓脂肪)の減少と筋肉量の増加に役立つことが、スペインで実施された研究で明らかにされた。バレアレス諸島保健研究所(スペイン)のDora Romaguera氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に10月18日掲載された。 内臓脂肪は炎症の原因となることが知られており、心疾患や脳卒中、糖尿病、特定のがんと関連することも示されている。一方、筋肉量は加齢とともに減少することが知られており、筋肉量が減少すると、筋力低下や運動能力の低下、転倒の可能性が高くなる。 今回の研究では、過体重または肥満(BMIが27〜40)でメタボリックシンドロームの中高年1,521人(55〜75歳、平均年齢65.3歳、男性52.1%)を対象に、減量のための生活習慣への介入が、全体的な体組成と内臓脂肪にもたらす効果が検討された。対象者は、地中海食を摂取し、カロリーを30%カットし、運動量を増やす介入群(760人)と、地中海食の摂取に関する助言だけを受ける対照群(761人)にランダムに割り付けられた。介入群には、加工食品、肉類、バター、砂糖の摂取を抑えて全粒穀物の摂取量を増やすことと、最終的には週6日、1日45分以上のウォーキングを目標に、段階的に有酸素運動の量を増やすことが勧められた。主要評価項目は、介入から3年間での体組成(体脂肪、筋肉、内臓脂肪)の変化量とされた。 その結果、試験開始から3年後、介入群では対照群に比べて、体脂肪と内臓脂肪が大幅に減少した一方で、筋肉量は増えていることが明らかになった。両群での1年後時点と3年後時点での群間差はそれぞれ、体脂肪で−0.94%(95%信頼区間−1.19〜−0.69)と−0.38%(同−0.64〜−0.12)、内臓脂肪で−126g(同−179〜−73.3)と−70.4g(同−126〜−15.2)、筋肉量で0.88%(同0.63〜1.12)と0.34%(同0.09〜0.60)であった。また、1年後時点と3年後時点で体組成に5%以上の改善が認められた対象者の割合は、対照群と比べて介入群では、体脂肪で13%と6%、筋肉量で11%と6%、内臓脂肪で14%と8%多かった。 米モンテフィオーレヘルスシステムで臨床栄養サービスのディレクターを務めているCewin Chao氏は、この研究を「野心的でエレガントな研究」と評する。同氏は、「質の高い食事を摂取し、運動を行い、摂取カロリーを減らせば、体脂肪、特に臓器を取り囲む腹部の危険な脂肪が減り、筋肉量が維持されるのはある意味当然の結果だろう。こうした努力は、3年という節目で報われるようだ」と述べている。 米ニューヨーク大学の栄養学、食品学、公衆衛生学分野の元教授であるMarion Nestle氏も、「摂取カロリーの削減と運動量の増加に減量効果があることは確実だ」と話す。同氏は、「この研究で地中海食を実践した人は、3年にわたって摂取カロリーを抑え、カロリーバランスを良好に保つことができている。このような食事スタイルは、あらゆる面での健康増進と関連しており、強く推奨される」と述べている。

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妊娠糖尿病に対する早期のメトホルミン投与の効果(解説:小川大輔氏)

 日本においてメトホルミンは「妊婦または妊娠している可能性のある女性」への投与は禁忌となっている。一方、海外ではメトホルミンは妊娠糖尿病に使用可能である。今回、妊娠糖尿病患者を対象に、妊娠早期からメトホルミン治療を開始する試験の結果がJAMA誌に発表された1)。 この試験はアイルランドの2ヵ所の医療機関で、妊娠28週以前に妊娠糖尿病と診断された被験者を登録して実施された二重盲検無作為化試験である。被験者510人(妊娠535件)を対象として、メトホルミンを投与する群(メトホルミン群)と、プラセボを投与する群(プラセボ群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。主要アウトカムは妊娠32週または38週時点での空腹時血糖高値(5.1mmol/L以上)、またはインスリン療法の開始であった。 主要複合アウトカムはメトホルミン群で56.8%、プラセボ群で63.7%と有意差を認めなかった(相対リスク:0.89、95%信頼区間[CI]:0.78~1.02、p=0.13)。母体に関する副次アウトカムのうち、インスリン開始までの時間、自己報告の毛細血管血糖コントロール、妊娠中の体重増加はメトホルミン群で有意に良好であった。新生児に関する副次アウトカムでは、出生時体重がメトホルミン群で有意に低値であった。 妊娠早期からのメトホルミン投与により、主要複合アウトカムは有意差がなかったが、インスリン療法の開始についてはメトホルミン群で38.4%、プラセボ群で51.1%と有意差を認めた(相対リスク:0.75、95%CI:0.62~0.91、p=0.004)。また、副次アウトカムでも妊娠中の血糖コントロールや母体の体重管理は、メトホルミン早期導入により改善することが示された。そのため今回の試験結果だけで、妊娠糖尿病に早期からメトホルミンを導入するべきではないと結論付けることは難しい。著者らが考察しているように、より規模の大きな臨床試験を行う必要があるだろう。 また、すべての妊娠糖尿病患者に早期からメトホルミンを投与する必要はないのかもしれない。インスリン分泌が低下しているのであれば早期からインスリン導入を検討するべきであるし、肥満を伴っていれば早期からメトホルミン投与を考慮してもよいだろう。今後試験デザインを再考し、対象となる症例を増やして妊娠糖尿病に対するメトホルミン早期導入の意義を検討する臨床試験が行われることを期待したい。 メトホルミンは妊娠中の血糖管理だけでなく、妊婦の体重増加や妊娠高血圧腎症などに有効かつ安全であることが報告されている2)。実臨床で血糖コントロールのために大量のインスリンを必要とし、体重管理に苦慮する妊娠糖尿病の症例をしばしば経験するので、日本でも妊娠糖尿病でメトホルミンが投与できるようになることを願う。

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太ったシェフのイラストを食事に添えると、認知症の人の食事量が増える

 認知症の高齢者の食事摂取量を増やすユニークな方法が報告された。太ったシェフのイラストをトレイに添えておくと、完食をする人が増えるという。日本大学危機管理学部の木村敦氏、医療法人社団幹人会の玉木一弘氏らの研究結果であり、詳細は「Clinical Interventions in Aging」に9月1日掲載された。 認知症では食事摂取量が少なくなりがちで、そのためにフレイルやサルコペニアのリスクが高まり、転倒・骨折・寝たきりといった転帰の悪化が起こりやすい。認知症の人の食欲を高めて摂取量を増やすため、これまでに多くの試みが行われてきているが、有効性の高い方法は見つかっていない。 一方、肥満者に減量を促す一つの手法として、食卓に健康を想起させる、例えばランニングシューズなどの画像を添えると、摂取量が減るという研究結果が報告されている。その際、研究参加者の大半は、自分の食欲が食卓に添えられている画像の影響を受けたとは気付いていないという。木村氏らは、減量とは反対に摂取量を増やすという目的にも、この手法を応用できるのではないかとの仮説を立て、以下の検討を行った。 研究対象は、都内の特別養護老人ホームに居住する認知症のある高齢者21人(アルツハイマー病6人、レビー小体型認知症2人、混合型認知症13人)。咀嚼・嚥下機能や視機能の低下、研究期間中に提供される食品へのアレルギーや不耐症のある人は除外されている。BMIは平均20.6±2.8で、1人の男性は25.4であり肥満に該当した。提供する食事は、BMIを含む健康指標を医師と管理栄養士が考慮して決定された。 研究期間は4週間で、各週の平日の昼食に調査を行った。最初の1週間はベースライン調査であり、特に画像を添えずに通常どおりに摂取してもらった。2週目は普通体型のシェフのイラストをトレイに添えて提供、3週目は太ったシェフのイラスト、4週目には花のイラストを添えた。イラストの大きさは150×100mm、紙の色は白で統一し、シェフや花のイラストの下に「食事を楽しみましょう」という文字を記した。なお、被験者が不安や混乱を来すリスクを避けるため、試行条件のランダム化は行わなかった。 評価項目は、完食した回数、および簡易栄養食欲調査票(SNAQ-J)で評価した主観的な食欲関連指標の変化。SNAQ-Jは、食欲や満腹感、食べ物の味などを5点満点で評価してもらうというもの。なお、被験者が完食したか否かは、研究目的・仮説を知らされていないケアスタッフが、目視で確認した。 では結果だが、まず完食回数は、1週目が2.8±1.9回、2週目は3.2±1.8回、3週目は3.5±1.8回、4週目は3.0±1.9回であり、分散分析から週ごとの完食回数に有意な差があることが明らかになった(P=0.031)。また、イラストを添えなかった1週目と、太ったシェフのイラストを添えた3週目との間には有意差が存在した。 SNAQ-Jについては、各下位尺度の中で、食欲や満腹感などは試行条件間の有意差がなかった。ただし食べ物の味については、1週目から順に、3.0±0.7、3.5±0.7、3.7±0.5、3.6±0.5であり、何らかのイラストを添えた3条件ではベースラインの1週目より有意に高値だった。 著者らは本研究を、「画像を利用して、認知症高齢者の体重減少と栄養失調を予防できる可能性を示した、初のパイロット研究」とし、「太ったシェフのイラストという、食欲に関連するステレオタイプの視覚情報が、摂食行動を刺激することが示唆された」と結論付けている。ただし、「試行順序をランダム化していないこと、食事摂取量を目視による完食回数のみで評価していて、摂取エネルギー量や摂取栄養素量への影響を評価していないことなど、いくつかの限界点があるため、今後のさらなる研究が求められる」と付け加えている。

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コーヒーの砂糖とミルク、肥満に関連するのは?

 コーヒー摂取と体重増減、疾患リスクとの関連を調査した研究は多いが、新たにカフェイン摂取量に加え、砂糖・ミルクの添加が体重増減と関連するかを調べた研究結果がThe American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2023年10月1日号に掲載された。 研究者らは、米国の3つの大規模前向きコホートNurses' Health Study(1986~2010年)、Nurses' Health Study II(1991~2015年)、Health Professional Follow-up Study(1991~2014年)を用いた。砂糖、クリーム、非乳製品コーヒークリームの添加を考慮したうえで、コーヒー消費量、カフェイン摂取量と体重変化との関連を調べた。また、コーヒー以外の飲料や食品に砂糖を加えることと体重変化との関連、それがカフェインやコーヒー摂取量と関連しているかについても検討した。 主な結果は以下のとおり。・無糖カフェイン入りコーヒーの摂取が1日1杯増加するごとに、4年間の体重は-0.12kg(95%信頼区間[CI]:-0.18~-0.05)、無糖カフェインレスコーヒーでは-0.12kg(95%CI:-0.16~-0.08)となった。・クリームや非乳製品コーヒークリームを加える習慣は、体重変化と有意な関連はなかった。・ティースプーン1杯の砂糖を加えることは、0.09kg(95%CI:0.07~0.12)の体重増加と関連していた。・層別解析では、年齢が若いほど、またベースラインのBMIが高いほど、観察された関連性の大きさがより強くなることが示唆された。・コーヒーおよびカフェイン摂取量は、いずれもほかの飲料または食品の砂糖添加と体重変化との関係に影響しなかった。 研究者らは「無糖のカフェイン入り、カフェインレスコーヒーの摂取量の増加は、体重減少と相関していたが、砂糖を加えることで体重管理に対するコーヒーの有益性を打ち消し、さらなる体重増加を招いた」とした。

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HER2陽性転移のある乳がんの1次治療、pyrotinib併用でPFS改善/BMJ

 未治療のHER2陽性転移のある乳がんの治療において、pyrotinib(不可逆汎HERチロシンキナーゼ阻害薬)+トラスツズマブ+ドセタキセルは、プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセルと比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に改善し、毒性は管理可能であることが、中国医学科学院北京協和医学院癌研究所のFei Ma氏らが実施した「PHILA試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年10月31日号で報告された。中国の無作為化プラセボ対照第III相試験 PHILA試験は、中国の40施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年5月~2022年1月に患者のスクリーニングを行った(中国・Jiangsu Hengrui Pharmaceuticalsなどの助成を受けた)。 年齢18~75歳、HER2陽性の再発または転移のある乳がんで、全身療法を受けていない女性患者を、トラスツズマブ+ドセタキセル(21日を1サイクルとして1日目に静脈内投与)に加え、pyrotinibまたはプラセボを1日1回経口投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、担当医判定によるPFS(無作為化から、画像上での最初の病勢進行または全死因死亡のうち先に発生したイベントまでの期間)とした。 590例を登録し、pyrotinib群に297例(年齢中央値52歳[四分位範囲[IQR]:46~58])、プラセボ群に293例(52歳[46~57])を割り付けた。今回の中間解析のデータカットオフ日(2022年5月25日)の時点で、追跡期間中央値は15.5ヵ月だった。二重のHER2阻害の有効性を示唆 担当医判定によるPFS中央値は、プラセボ群が10.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:9.3~12.3)であったのに対し、pyrotinib群は24.3ヵ月(19.1~33.0)と有意に延長した(ハザード比[HR]:0.41、95%CI:0.32~0.53、片側p<0.001)。 12ヵ月の時点での推定無増悪生存率は、pyrotinib群が74.3%(95%CI:68.1~79.5)、プラセボ群が44.0%(37.5~50.3)、24ヵ月時はそれぞれ50.3%(41.9~58.1)、16.6%(10.7~23.7)であった。 また、独立審査委員会判定によるPFS中央値は、プラセボ群の10.4ヵ月(95%CI:10.2~12.2)に比べ、pyrotinib群は33.0ヵ月(19.4~未到達)と有意に優れた(HR:0.35、95%CI:0.27~0.46、片側p<0.001)。 客観的奏効は、プラセボ群では207例(71%、95%CI:65~76)で得られたのに対し、pyrotinib群では246例(83%、78~87)で達成され、有意差を認めた(群間差:12.2%、95%CI:5.4~18.9、層別片側p<0.001)。完全奏効は、pyrotinib群19例(6%)、プラセボ群8例(3%)であった。 Grade3以上の治療関連有害事象は、pyrotinib群で267例(90%)、プラセボ群で224例(76%)に発現し、好中球数の減少(pyrotinib群63%、プラセボ群65%)、白血球数の減少(53%、51%)、下痢(46%、3%)の頻度が高かった。治療関連死は、pyrotinib群では発生しなかったが、プラセボ群で1例(<1%、糖尿病性高浸透圧性昏睡)に認めた。 著者は、「これらの知見は、モノクローナル抗体と低分子チロシンキナーゼ阻害薬による二重のHER2阻害が、HER2陽性転移のある乳がんの1次治療の選択肢となる可能性を支持するものである」としている。

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アルコール摂取が心臓などの異所性脂肪と関連

 2杯目のアルコールに手を出す前に、新たに報告された研究結果について、少し考えてみた方が良いかもしれない。飲酒量が多い人ほど、心臓の周りの脂肪蓄積が多いという。米ウェイクフォレスト大学のRichard Kazibwe氏らによる研究の結果であり、詳細は「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に9月8日掲載された。同氏は、「このような心臓への異所性脂肪は、成人の主な死亡原因である冠動脈性心疾患だけでなく、心不全や心房細動などの心臓病のリスク上昇と関連している」と話している。 エネルギーの貯蔵庫である脂肪は、通常であれば皮下脂肪を中心とする脂肪組織に蓄積される。しかし、食べ過ぎや運動不足が続いていると、内臓周囲や筋肉、肝臓など、本来は脂肪がたまりにくい所にも脂肪が蓄積されるようになる。そのような脂肪は「異所性脂肪」と呼ばれる。アルコールも異所性脂肪の蓄積を増やすリスク因子の一つである可能性があるが、これまでのところ飲酒量と異所性脂肪の関連は十分検討されていない。これを背景としてKazibwe氏らは、「アテローム性動脈硬化症の多民族研究(MESA)」のデータを用いた横断研究を行った。 MESA参加者6,756人(平均年齢62.1±10.2歳、女性47.2%)のうち、6,734人は胸部CT検査、1,934人は腹部CT検査を受けており、その結果から、皮下脂肪や内臓脂肪のほかに、心膜(心臓周囲)や肝臓、筋肉などの脂肪蓄積を評価し得た。参加者全体を1日当たりの飲酒量により、1杯未満を「軽度飲酒」、1~2杯を「中等度飲酒」、2杯超を「大量飲酒」、および「生涯全く飲酒していない」群に分類し、かつ、過去1カ月間に1機会当たり5杯以上飲んだことがある場合を「暴飲」と定義した。 年齢や性別のほかに摂取エネルギー量や身体活動量も含む交絡因子を調整後、「生涯全く飲酒していない」群を基準として、大量飲酒群は心膜の異所性脂肪が15.1%(95%信頼区間7.1~27.7)有意に多く蓄積していて、肝臓の異所性脂肪も3.4%(同0.1~6.8)有意に多かった。全体として、飲酒量と異所性脂肪の蓄積との関係はJ字型のパターンを示した。 このほかに、軽度・中等度飲酒者を基準とする検討で、暴飲に当てはまる飲み方をしていた人は、心膜の異所性脂肪が7.5%(3.0~12.2)、筋肉の異所性脂肪が11.0%(同3.3~19.3)、有意に多く蓄積していた。なお、アルコール飲料の種類別の解析からは、ワインよりビールを好む人で、異所性脂肪がより多く蓄積している傾向が認められた。 Kazibwe氏は、「飲酒は肥満のリスク因子であり、アルコールが代謝に影響を与えることは古くから知られていたが、今回の研究で新たに、アルコールは全身のさまざまな部位に脂肪の蓄積を促すことが示唆された」と述べている。では、飲酒を控えれば、異所性脂肪は解消されるのだろうか? 同氏によると、「肝臓の異所性脂肪についてはその可能性があるが、心臓周囲の異所性脂肪も減少するかどうかは現時点では不明だ」という。ただし、「飲酒自体が心臓病のリスクを高めるため、飲酒量を減らすことは良いことだ」と付け加えている。 この研究には関与していない、米ノースウェル・ヘルス・バス・ハート病院のBenjamin Hirsh氏は、示された結果に驚くことなく、「アルコールは脂肪蓄積を促進する高中性脂肪血症の最大のリスク因子だ。過剰な脂肪は炎症を惹起したり、血管内のプラーク蓄積のリスクを高めたりする」と解説。「飲酒量が多いほど、心臓や肝臓に問題を起こしやすくなる。端的に言えば、飲酒量が少なければ少ないほど健康には良い」と話している。

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脂質低下療法の効果にストロングスタチン間の違いはあるのか?(解説:平山篤志氏)

 動脈硬化性疾患の2次予防にLDL-コレステロール(LCL-C)低下の重要性が明らかにされているが、ガイドラインにより、LDL-Cの管理目標値を達成するアプローチ(Treat to Target)と目標値を設定せず病態に応じたスタチンを投与するアプローチ(Fire and Forget)がある。韓国で行われたLODESTAR試験は、この2種のアプローチでOutcomeが異なるかを検討した試験で、すでに報告されたように管理目標値を達成できれば両者に優劣はなかった。本試験ではさらに、エントリーされた患者はTreat to Target群とFire and Forget群に分けられると同時に、2種のストロングスタチン、すなわちロスバスタチン群とアトルバスタチン群に割り付けられ、今回はスタチンの相違についての検討が報告された。 結果は、ロスバスタチン群でアトルバスタチン群に比し、0.1mmol(3.85mg/dL)の有意なLDL-Cの低下は認められたが、心血管イベントには両者で差がない結果であった。また、数多くの2次エンドポイントが設けられていたが、ロスバスタチン群で新規糖尿病と白内障の発症がアトルバスタチン群に比して有意に多いと報告されていた。スタチン使用と新規糖尿病の発症については2012年にFDAが警告を発して以来、投与に関しては注意が必要とされている。スタチンがグルコーストランスポーターのGULT4のダウンレギュレーションを来すことが一因とされており、これまでスタチンの強度、脂溶性・水溶性などの解析が行われてきたが、相違については結論が出されていない。今回の検討でも、全参加者の解析では新規糖尿病の発症や糖尿病治療薬の使用開始では確かにロスバスタチン群で有意に高いが、糖尿病の既往のない患者群では新規発症には有意差が示されなかった。したがって、この結果だけをもってロスバスタチンのほうが糖尿病を来すリスクが高いとはいえない。 これまでに報告されているように、スタチンによる糖尿病発症や悪化のリスクはあっても、心血管イベント抑制効果が上回ることから、スタチン使用に躊躇すべきではない。この論文のメッセージとしては、いずれのスタチンを用いても有効性と安全性には差がないというものである。論文のメッセージとしてのインパクトは大きくないが、韓国でこれほどの大規模試験が行われ結果を報告しているのに、なぜか日本ではRegistry研究は盛んだがRCT研究が少なくなっているように思われる。今後、わが国でRCTを行いやすくできる環境整備が必要なのであろう。

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11月14日 世界糖尿病デー【今日は何の日?】

【11月14日 世界糖尿病デー】〔由来〕糖尿病の治療に欠かせない「インスリン」を発見したカナダの医師フレデリック・バンティングの誕生日にちなみ、2006年に国際連合は11月14日を「世界糖尿病デー」に認定。世界各地で糖尿病の予防、治療、療養について啓発活動を行っている。わが国でも全国で糖尿病啓発などに関するイベントが開催されるほか、東京タワーや大阪城などの有名建築物が糖尿病のシンボルカラーのブルーでライトアップされている。関連コンテンツ高齢者糖尿病診療のコツDr.坂根の糖尿病外来NGワードDr.坂根のすぐ使える患者指導画集 Part2日本人2型糖尿病でのチルゼパチドの効果、GLP-1RAと比較/横浜市立大チルゼパチド追加の「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」改訂版/日本糖尿病学会

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