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ジャンクフード店の近くに住むと太る【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第262回

ジャンクフード店の近くに住むと太る私はコンビニ飯がわりと好きで、セブンイレブン、ローソン、ファミマをぐるぐる回って新商品が出ていないかチェックすることもあります。「底上げ弁当」がまだまだ多いので不満はありますが、昔と比べて味はとにかく美味しくなりました。しかし、アクセスが良すぎるのも問題かもしれません。Pineda E, et al. Food environment and obesity: a systematic review and meta-analysis.BMJ Nutrition, Prevention & Health. 2024 Apr 22;7(1):204-211.イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンからの研究で、住宅からの食料品店や飲食店の距離と肥満について調べたシステマティックレビューとメタアナリシスです。仮説では、近くにジャンクな店があるほど、肥満度は高くなるというものです。大学時代、マンションに餃子の王将の無料券が投函され、歩いて30秒くらいのところに店舗があったので、当時の血肉の80%以上は餃子の王将でできていました。思えば、あのころから緩やかに体重が増えていったのではないか…ブツブツ。いや、もちろん餃子の王将は悪くないです。1946~2022年1月までに刊行された論文を紐解き、合計103論文を対象として、スーパーマーケット、青果店、ファストフード店、レストラン、コンビニなどの距離と肥満度が調べられました。結果、マルチレベルモデル解析または空間的要因について検討していた35論文のうち26件において、高脂肪、高糖質、高塩分の食品を販売する店舗と肥満度に有意な関連が観察されました。横断的研究89論文のうち59件、縦断的研究14論文のうち7件において、ファストフード店やコンビニなどのような「健康的とはいえない」店舗と肥満の関連性が確認されました。しかし、メタアナリシスによると、ファストフード店はたしかに肥満度の上昇リスクと有意に関連していましたが(オッズ比[OR]:1.15、95%信頼区間[CI]:1.02~1.30、p=0.02)、コンビニについてはとくに関連は観察されませんでした。反面、青果店の密度の高さや、スーパーマーケットとの距離は、肥満度の低下と有意に関連していました(OR:0.93、95%CI:0.90~0.96、p<0.001)(OR:0.90、95%CI:0.82~0.98、p=0.02)。 とりあえず、近くに「健康的」な店舗があることが重要ですね。

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緩和ケアのポリドクター問題【非専門医のための緩和ケアTips】第81回

第81回 緩和ケアのポリドクター問題「ポリドクター」をご存じでしょうか? 「初めて聞いた」という方も多いかもしれません。患者さんが必要以上に多くの医師にかかってしまう状況を指した言葉で、一般的になってきた「ポリファーマシー(多剤併用問題)」とも密接な関係があります。患者さんと家族を支えるため、複数の医師が関わることはしばしばありますが、関係者が増えるが故の難しさもあります。今回の質問基幹病院の通院を続けながら、私のクリニックを外来受診する患者さん。オピオイドなどの薬剤調整や治療方針の確認のたびに、病院の主治医とのやりとりが発生します。主治医との連絡がつきにくいうえ、複数の診療科を受診しており、やりとりが煩雑です。自分の裁量でどこまでしてよいのか、悩むことも多いです。肺がん治療のために大学病院の呼吸器内科に定期通院しながら、併存疾患の糖尿病のために近隣のクリニックにも通院する……。皆さんもよく見る、ありふれた光景ではないでしょうか。1人の患者さんに複数の医師が関わることで、手厚い医療が受けられるメリットがある一方、「誰が主治医機能を提供するか」という問題が生じます。現実には、「どの医師も自分が主治医だと思っていなかった」という笑えないオチもあります。診療所でかかりつけ医として関わる立場であれば、基幹病院との連携でこうしたことは生じやすいでしょう。「連携」と簡単に言っても、その実務はとても手間がかかります。なかなか連絡が取れなかったり、確認事項が出るたびに診療情報提供書を作成したりするのも大変です。私は基幹病院と診療所勤務の両方の立場を経験しましたが、この状況は構造的な問題が生み出しているので、すぐに解決するのは難しいと感じます。とくに運営母体が別の医療機関で共通のシステム基盤がなく、電話やFAXなどで対応せざるを得ない場合、状況を大きく変えることは難しいでしょう。とはいえ、嘆いてばかりいても仕方ないので、実臨床家としてできることをやっていくしかありません。私の工夫は「定期的に診療情報提供書をやり取りする」「退院時共同指導などで直接あいさつする機会をつくる」ことです。基幹病院の医師は数年で入れ替わることが多く、すぐに効果が出るわけでもありませんが、こうした小さな積み重ねが重要だと考えています。医療が高度化し、高齢化する社会にあって、患者さんに必要な医療と生活を支える機能を単一の医療機関で提供することは難しくなっています。病診連携の難しさを述べてきましたが、地域で患者さんを支えるため、複数の医師で連携して診療に当たることは今後さらに重要になるでしょう。今回のTips今回のTips「ポリドクター」のデメリットを理解し、地域の医師と上手に連携しよう!

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適切な糖尿病情報にアクセスする方法(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者医師患者医師患者医師患者医師患者医師患者医師患者最近、血糖値が高くて合併症にならないかと心配で…。まずは治療を中断しないことが大切です。はい、それはわかっています。よろしくお願いしますね。現在、糖尿病の飲み薬は9種類ありますので、患者さんに合わせて薬の選択と調整は私の方でできますが、食事と運動療法がポイントですね。薬を飲んでいるだけではだめということですね。そうです。食事についてはいかがですか?栄養士さんに糖尿病の食事療法については話を聞いたのですが、なかなか…。なるほど。運動についてはいかがですか?運動については自己流でやっています。そうですか。そういった情報はどこから得ていますか?テレビやYou Tubeからですかね。なるほど。糖尿病のリスクを知り、対策を立てることは大切ですね。適切な情報にアクセスできるための、検索のキーワードがあります。そのキーワードを教えて頂けますか。画 いわみせいじポイント適切な糖尿病情報にアクセスし、患者に寄り添ったアドバイスをもらえる専門家を持つようにアドバイスします。Copyright© 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

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睡眠時間が乱れている人は糖尿病リスクが高い

 睡眠時間が日によって長かったり短かったりすることが、糖尿病発症リスクの高さと関連があることを示すデータが報告された。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のSina Kianersi氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes Care」に7月17日掲載された。論文の筆頭著者であるKianersi氏は、「われわれの研究結果は、2型糖尿病予防のために、睡眠パターンの一貫性を保つことの重要性を表している」と述べている。 この研究には、英国の一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータが用いられた。UKバイオバンク参加者のうち、2013~2015年に加速度計の計測データがあり睡眠時間を把握可能で、その時点で糖尿病でなかった8万4,421人(平均年齢62歳、男性43%、白人97%)を2022年5月まで追跡して、睡眠時間の乱れと糖尿病発症リスクとの関連を検討した。睡眠時間の乱れは、7晩連続で計測した睡眠時間の標準偏差(SD)で評価した。 7.5年間(62万2,080人年)の追跡で2,058人が糖尿病を発症。年齢、性別、人種を調整後、睡眠時間のSDが30分以下の群と比較して、SDが31~45分の群の糖尿病発症ハザード比(HR)は1.15(95%信頼区間0.99~1.33)と非有意だった。しかし、SDが46~60分の群ではHR1.28(同1.10~1.48)、61~90分ではHR1.54(1.32~1.80)、91分以上ではHR1.59(1.33~1.90)と有意にハイリスクであり、睡眠時間のSDが大きいほど糖尿病発症リスクが高いという関連が認められた(傾向性P<0.0001)。 SDが60分以下/超の2群間での比較では、後者の方が34%ハイリスクだった(HR1.34〔1.22~1.47〕)。調整因子として、生活習慣、併存疾患、肥満などを追加すると関連性は弱まったが、60分以下/超の2群間での比較では引き続き有意な差が観察された(HR1.11〔1.01~1.22〕)。 糖尿病の多遺伝子リスクスコアの高低で層別化した解析では、遺伝的背景が弱い人ほど睡眠時間の乱れの影響が強く現れていた(交互作用P=0.0221)。また、睡眠時間で層別化した解析では、睡眠時間が長い人ほど睡眠時間の乱れの影響が強く現れていた(交互作用P<0.0001)。 なぜ、睡眠時間の乱れが糖尿病発症リスクにつながるのだろうか? 今回の研究からはその答えに迫ることはできないが、研究グループでは、「概日リズム(1日24時間周期の生理活動)の乱れや睡眠障害が関与しているのではないか」と述べている。 なお、本研究の限界点として、生活習慣に関する情報は加速度計で睡眠時間の乱れを把握したのと同じ時期ではなく、それよりも5年ほど前に収集されていたこと、および、7日間という評価期間が睡眠時間の日常的な乱れを把握するには短すぎる可能性のあることなどが、ジャーナル発のリリースに記されている。

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顔の表面温度、脂肪肝や生活習慣病のスクリーニングに有用か

 体温とは、細胞機能と生物の生存に影響を与える、つまり健康状態を知るための重要なパラメータであり、老化と寿命にとっても重要な要素である。そこで今回、中国・北京大学のZhengqing Yu氏らは顔の皮膚温を捉えた熱画像(以下、サーマル画像)を用い、老化と代謝疾患の定量的特徴を明らかにすることで、サーマル画像が老化と代謝状態の迅速スクリーニングに有用な可能性を示唆した。Cell Metabolism誌2024年7月2日号掲載の報告。 研究者らは、2020~22年の期間に21〜88歳の成人2,811人(女性:1,339人、男性:1,472人)の顔のサーマル画像を収集し、赤外線サーモグラフィによる顔のメッシュ認識および領域分割アルゴリズムを用いたThermoFaceを開発、自動処理・分析にて生物学的年齢を測定するなどして、サーマル顔画像年齢による疾患予測モデルを生成し、AgeDiff(予測年齢と実年齢の差)と代謝パラメータや睡眠時間との関連を検証した。 主な結果は以下のとおり・各年代のThermoFaceパターンを調べた結果、男女ともに鼻、頬、眉毛ゾーンの皮膚温が加齢とともに低下していた。ただし、女性は50代から、男性は60代から低下がみられた。・また、皮膚温と代謝疾患との関連について、糖尿病や脂肪肝などの代謝疾患を有する人は健康な人に比べて目の周囲の皮膚温が高く、高血圧の人では頬の皮膚温が高かった。・ThermoFaceは、脂肪肝などの代謝疾患を高い精度(AUC>0.80)で予測し、予測された疾患確率は代謝パラメータと相関していた。・AgeDiffは、BMI、空腹時血糖値、アポリポ蛋白Bなどの代謝性疾患パラメータ、睡眠時間、血液検体のトランスクリプトーム解析によるDNA修復、脂肪分解、ATPaseなどの遺伝子発現経路との関連が高かった。・サーマル画像の皮膚温分布は老化や代謝状態を反映しており、迅速なスクリーニングへの有効性が示された。 研究者らは、「顔のサーマル画像分析が加齢や代謝疾患の迅速な評価に有用であることを示しており、ThermoFaceはデータ取得の速さと利便性、大規模コホートに基づく精度の高さから、健康的な加齢に関するモニタリングや評価ツールとして有用な可能性がある」としている。

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80歳以上も健康的なライフスタイルでさらなる長寿に

 これまでの研究で、生活習慣因子が寿命や死亡率と関連していることが多数報告されているが、そのほとんどは中高年層(60歳以上)を対象としており、80歳以上を対象とした研究はほとんどない。中国上海市・復旦大学のYaqi Li氏らによる、中国の80歳以上を対象とした、健康的なライフスタイルと100歳以上まで生きる可能性を検討した研究結果がJAMA Network Open誌2024年6月20日号に掲載された。 研究者らは、1998年に設立された80歳以上を対象とした全国的かつ最大規模のデータベース・中国縦断健康長寿調査(Chinese Longitudinal Healthy Longevity Survey:CLHLS)を用いて、地域ベースの前向き対照研究を実施した。データは2022年12月1日~2024年4月15日に解析された。 5つの生活習慣(喫煙、飲酒、運動、食事の多様性、BMI)に基づく総合的な健康的生活習慣スコア100(HLS-100)を作成し、スコア(0~6)と100歳以上となる可能性、健康転帰が良好である可能性との関連をみた。主要アウトカムは2018年(追跡終了時)までに100歳以上となる人の生存率であった。多変量ロジスティック回帰モデルを用いてオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を推定、社会人口統計学的因子(居住地、教育年数、配偶者の有無)および自己報告による慢性疾患の既往(高血圧、糖尿病、心血管疾患、がん)で調整した。 主な結果は以下のとおり。・計5,222例(女性61.7%、平均年齢94.3[SD 3.3]歳)が組み入れられ、その内訳は100歳以上1,454例と、対照群3,768例(年齢・性別・組み入れ年でマッチ、100歳になる前に死亡)であった。・追跡中央値5年(四分位範囲[IQR]:3~7)のあいだに100歳以上になったのは、HLS-100が最も低い群(0~2)では373/1,486例(25%)、最も高い群(5~6)では276/851例(32%)だった。・最高群と最低群を比較した調整オッズ比(aOR)は1.61(95%CI:1.32~1.96、p<0.001)であった。さらに自己報告による慢性疾患、身体的・認知的機能、精神的健康で評価される「比較的健康な状態の100歳以上」をアウトカムとした場合もHLS-100との関連が認められた(aOR:1.54、95%CI:1.05~2.26)。 著者らは「中国の高齢者を対象としたこの症例対照研究では、健康的な生活習慣を守ることは後期高齢者であっても重要であり、すべての高齢者において生活習慣を改善するための戦略的計画を構築することが、健康的な加齢と長寿を促進するうえで重要な役割を果たす可能性が示唆された」としている。

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最適な食物繊維は人それぞれ

 これまで長い間、食物繊維の摂取量を増やすべきとするアドバイスがなされてきているが、食物繊維摂取による健康上のメリットは人それぞれ異なることが報告された。単に多く摂取しても、あまり恩恵を受けられない人もいるという。米コーネル大学のAngela Poole氏らの研究によるもので、詳細は「Gut Microbes」に6月24日掲載された。 食物繊維は消化・吸収されないため、かつては食品中の不要な成分と位置付けられていた。しかし、整腸作用があること、および腸内細菌による発酵・利用の過程で、健康の維持・増進につながる有用菌(善玉菌)や短鎖脂肪酸の増加につながることなどが明らかになり、現在では「第六の栄養素」と呼ばれることもある。また糖尿病との関連では、食物繊維が糖質の吸収速度を抑え、食後の急激な血糖上昇を抑制するように働くと考えられている。そのほかにも、満腹感の維持に役立つことや、血圧・血清脂質に対する有益な作用があることも知られている。 本研究では、食物繊維の一種である難消化性でんぷん(resistant starch;RS)を摂取した場合に、腸内細菌叢の組成や糞便中の短鎖脂肪酸の量などに、どのような変化が現れるかを検討した。59人の被験者に対するクロスオーバーデザインで行われ、試行条件として、バナナなどに含まれている難消化性でんぷん(RS2と呼ばれるタイプ)と化学的に合成された難消化性でんぷん(RS4と呼ばれるタイプ)、および易消化性でんぷんという3条件を設定。5日間のウォッシュアウト期間を挟んで、それぞれ10日間摂取してもらった。 解析の結果、難消化性でんぷんの摂取によって腸内細菌叢や短鎖脂肪酸などに大きな変化が生じた人もいれば、あまり変化がない人、または全く変化がない人もいた。それらの違いは、腸内細菌叢の組成や多様性と関連があることが示唆された。研究者らは、「結局のところ、ある人の健康状態を腸内細菌叢へのアプローチを介して改善しようとする場合、どのような種類の食物繊維の摂取を推奨すべきか個別にアドバイスしなければならない」と述べている。 論文の上席著者であるPoole氏は、「過去何十年もの間、全ての人々に対して一律に食物繊維の摂取を推奨するというメッセージが送られてきた。しかし今日では、個人個人にどのような食物繊維の摂取を推奨すべきかを決定する上で役立つであろう、精密栄養学という新しい学問領域が発展してきている」と述べている。今回の研究でも、食物繊維の摂取によって短鎖脂肪酸の産生が増えるか否かは、その人の腸内細菌叢によって左右される可能性が浮かび上がった。また意外なことに、難消化性でんぷんではなく易消化性でんぷんの摂取によって、短鎖脂肪酸が最も増加していた。短鎖脂肪酸は、血糖値やコレステロールの改善に寄与することが明らかになりつつある。 研究者らは、個人の腸内細菌叢の組成を把握することで、その人がどのようなタイプの食物繊維に反応するのかを事前に予測でき、その結果を栄養指導に生かせるようになるのではないかと考えている。「食物繊維や炭水化物にはさまざまなタイプがある。一人一人のデータに基づき最適なアドバイスを伝えられるようになればよい」とPoole氏は語っている。

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GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬、MASLD併発2型糖尿病のCVイベントを抑制

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)とSGLT2阻害薬(SGLT2i)は、DPP-4阻害薬(DPP-4i)に比べて、MASLD(代謝異常関連脂肪性肝疾患)併発2型糖尿病患者の心血管(CV)イベントや肝臓イベントのリスクを低下させる可能性を示唆するデータが報告された。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院およびハーバード大学医学大学院のAlexander Kutz氏らが、米国内分泌学会(ENDO2024、6月1~4日、ボストン)で発表した。 Kutz氏らは、2013~2020年のメディケアデータベース、および、2013~2022年の米国内の大規模健康保険データベースを利用して、GLP-1RA、SGLT2i、DPP-4iにより治療が開始されていたMASLD併発2型糖尿病患者のCVイベント(急性心筋梗塞、虚血性脳卒中、心不全入院)、および肝臓イベントなどの発生リスクを調査した。 まず、DPP-4iで治療が開始されていた群(1万7,084人)とGLP-1RAで治療が開始されていた群(1万3,666人)の比較では、後者のCVイベントの発生ハザード比(HR)が0.67であり、1,000人年当たりの発生率差(IRD)は-21.6と計算された。また肝臓イベントについては、HR0.47、IRDは-2.1だった。次に、DPP-4iとSGLT2iの比較では(該当患者数は同順に1万6,979人、1万1,108人)、CVイベントについてはHR0.82、IRD-11.0だった。肝臓イベントには両群のリスクに有意差がなかった。なお、重篤な有害事象の発生率については、GLP-1RA群、SGLT2i群ともにDPP-4i群と有意差がなかった。 Kutz氏は、「この研究以前は、これらの薬剤がMASLD併発2型糖尿病患者にどのような影響を及ぼすのかが明らかにされていなかった。われわれの研究は、GLP-1RAおよびSGLT2iが、DPP-4iなどの他のタイプの血糖降下薬に比べて、CVイベントの抑制という点で優れていること、およびGLP-1RAは肝臓イベントのリスク軽減にもつながることを示している」と話している。なお、MASLDは従来、NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)と呼ばれていた病態を、主に海外の研究者を中心とする専門家パネルにより、代謝異常の関与をより重視して再定義された病態。Kutz氏によると、「2型糖尿病の患者数の増加が続いているが、その患者群のかなりの割合がMASLDも併発している」という。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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TSH高値・FT4正常値の高齢者【日常診療アップグレード】第9回

TSH高値・FT4正常値の高齢者問題73歳女性。高血圧で通院中。最近6ヵ月で5kgの体重増加がある。ほかに症状はない。バイタルサインに異常を認めない。LDLコレステロール140mg/dL、甲状腺刺激ホルモン(TSH)9μIU/mL(基準値:0.61~4.23)、FT4 1.0ng/dL(基準値:0.75~1.45)であった。2ヵ月後にTSHを測定することにした。

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キエジ・ファーマ・ジャパン、希少疾患に注力 脂肪萎縮症治療薬メトレレプチンを承継

 2024年7月19日、キエジ・ファーマ・ジャパン株式会社は塩野義製薬株式会社からメトレレプチン(遺伝子組み換え)皮下注用製剤の製造販売承認承継の詳細と日本における今後の事業戦略などについて記者会見を開催した。 今回のセミナーでは、キエジグループ取締役 希少疾患事業部門長 ジャコモ・キエジ氏、キエジグループ希少疾患事業部 欧州および成長市場責任者 エンリコ・ピッチニーニ氏、キエジ・ファーマ・ジャパン 代表取締役社長 中村 良和氏らがそれぞれグループの歴史や事業戦略、日本法人のビジョンや事業戦略について説明を行った。キエジグループの歴史、研究開発について 初めにジャコモ・キエジ氏がグループの概要について発表した。 キエジグループは1935年にイタリアのパルマで設立された家族経営の企業であり、現在は80ヵ国以上で医薬品を製造・販売している。2023年には収益が30億ユーロを超え、7,000人の従業員、7つの研究開発センターを持つ企業へと成長した。 キエジグループでは研究開発に力を入れており、売り上げの約25%を研究開発に投資しているが、その目的は革新的な医薬品を開発することでよりグローバルな企業に成長することで、より多くの患者さんに新しい治療を届けることができると考えている。 注力している領域はいくつかあるが、とくに希少疾患に関しては4年前に新たに希少疾患部門を立ち上げ、買収、ライセンス契約などで10製品のラインナップがあり、パイプラインも豊富である。日本では今後キエジグループのパイプラインにあるすべての製品の上市が検討されている。 「私たちは患者さん中心の事業展開をしており、日本でもその姿勢を貫きたい」とキエジ氏は述べ、発表を終えた。希少疾患部門の戦略 続いて、エンリコ・ピッチニーニ氏から希少疾患部門の事業戦略についての発表があった。 希少疾患部門は2020年の立ち上げ以降、製品数を増やす、部門の人数は現在700人を超えている。 キエジグループの希少疾患部門が重点的に取り組んでいるのは先天代謝異常、内分泌代謝疾患、希少血液などの領域であり、ファブリー病や全身性脂肪萎縮症など10以上のパイプラインがある。 キエジグループのミッションは「患者さんに貢献すること」であり、世界中のさまざまな患者団体と連携し、協力関係を結ぶことで、患者さんのニーズを迅速に聞くことに注力している。日本でもこのアプローチを踏襲する予定だ。 今後の事業戦略としては、まず中核となる事業を構築し、戦略的に周辺領域へ着実に最大化すること、可能性を最大化することでサイクルを回し、成長していきたいと考えている。具体的には新たな顧客層を拡大するだけでなく、適応症の拡大や新たな地域への参入、診断支援による早期診断支援、新たなモダリティへの支援などさまざまな角度からの施策を考えている。 「私たちの製品を本当に必要としている人がいる場所に参入していきたい」と今後の展望についてピッチニーニ氏は締めくくった。キエジ・ファーマ・ジャパンの開発戦略について 最後にキエジ・ファーマ・ジャパンの代表取締役社長である中村 良和氏が日本でのビジョンなどについて発表した。 キエジ・ファーマ・ジャパンの特徴は“量より質、少数精鋭”である。少なくともメンバー全員が10年以上の希少疾患領域での経験を持っている。規模が小さい分、迅速に動けるため希少疾患に向いている。 また、今回承継するメトレレプチンの適応は脂肪萎縮症であり、発症は100万人に1人程度、国内患者数は約100人、平均寿命は30~40歳程度と極めて稀で重篤な疾患である。非常に発見が難しく、未診断の患者さんが多く存在する可能性があるため、痩せているインスリン抵抗性の糖尿病患者さんを見かけた場合は疑ってほしい、と中村氏は語った。 今後の日本における開発戦略と現状については、市場性などを考慮して戦略を考えている。今後開発を考えている疾患は、鎌状赤血球症(異常ヘモグロビン症)、サラセミア(地中海貧血)、α-マンノシドーシス、レーベル遺伝性視神経症、ファブリー病、表皮水疱症である。このうち、いくつかの疾患は患者数が10人程度の疾患もあるが、患者さんがいるのであれば発売したい、と中村氏は熱弁した。 とくに、表皮水疱症の治療薬については、塗り薬であることと、すでに米国、欧州で承認をされているため、ベースの治療薬になるのではないかと考えて戦略を策定中である、とのことであった。 「開発中の製品についてはすべて自社販売の方針であるが、少数精鋭のため学会などを含めて活動を行っていきたい」、と述べて中村氏は発表を終えた。 なお、メトレレプチンは2024年7月24日にキエジ・ファーマ・ジャパンが製造販売承認を承継し、メトレレプチン皮下注用11.25mg「キエジ」としてキエジ・ファーマ・ジャパンが販売および情報提供活動を行う。薬価収載は8月の予定。

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eGFRは心臓突然死のリスク予測因子

 推算糸球体濾過値(eGFR)は、心不全患者の心臓突然死の独立予測因子であり、リスク予測において左室駆出率(LVEF)にeGFRを追加することが有用であるという研究結果が発表された。藤田医科大学ばんたね病院循環器内科の祖父江嘉洋氏らが行った前向き研究の成果であり、「ESC Heart Failure」に6月10日掲載された。 心不全患者の心臓突然死の予防において、LVEFおよびNYHA心機能分類に基づき植込み型除細動器(ICD)の適応が考慮される。ただ、軽度から中等度の慢性腎臓病(CKD)を有する患者に対するICDの有用性に関して、これまでの研究の結果は一貫していない。そこで著者らは今回、心臓突然死における腎機能の役割を検討するため、2008年1月から2015年12月に非代償性心不全で入院したNYHA分類II~III度の患者を対象として、心臓突然死の発生を追跡し、心臓突然死の予測因子を検討する前向き研究を行った。 入院中に死亡した患者や透析患者などを除外した結果、解析対象患者は1,676人だった。対象患者の平均年齢は74±13歳、男性の割合は56%で、平均LVEFは40±15%、ほとんどの患者(87%)は退院時のNYHA分類がII度だった。 追跡期間中央値25カ月(四分位範囲4~70カ月)の間に、198人(11.8%)が心臓突然死により死亡した。退院から心臓突然死までの期間の中央値は17カ月であり、退院後3カ月以内の心臓突然死が23%を占めた。心臓突然死患者は生存患者と比較して、若年、男性、糖尿病、脂質異常症、虚血性心疾患の有病割合が高い、QRS時間が長い、LVEFが低い、抗血小板薬やアミオダロンの使用率が高いといった特徴が認められた。 対象患者のうち、eGFR(mL/分/1.73m2)によるCKDステージ1(eGFR 90以上)の人は122人(7.3%)、ステージ2(eGFR 60~89)は337人(20.1%)、ステージ3(eGFR 30~59)は793人(47.3%)、ステージ4(eGFR 30未満)は424人(25.3%)だった。また、ステージ1の人のうち死因が心臓突然死だった人の割合は6%、ステージ2では33%、ステージ3は24%、ステージ4は23%だった。 患者の臨床背景を調整して多変量Cox比例ハザード回帰分析を行った結果、心臓突然死の独立予測因子として、男性(ハザード比1.61、95%信頼区間1.03~2.53)、eGFR 30未満(同1.73、1.11~2.70)、LVEF 35%以下(同2.31、1.47~3.66)が抽出された。心臓突然死の予測モデルにおいて、LVEFにeGFRを追加することで心臓突然死の予測能は有意に向上した。このeGFRの予測能は、2年間で時間依存的に低下した。 今回の研究の結論として著者らは、「NYHA分類II~III度の心不全患者において、心臓突然死の予測能はeGFR 30未満を加えることで改善した」としている。また、患者の4分の1が退院後3カ月以内に心臓突然死を発症していたことに言及し、退院後3カ月間は着用型自動除細動器(WCD)を用いた介入が有効である可能性があると述べている。

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第221回 「青カビは取ればいい」が招いた人災ー紅麹サプリ事件

3月以来、紅麹問題で揺れた小林製薬。同社は7月23日に一連の事案に関して外部の弁護士3人に依頼した事実検証委員会の調査報告書を公表するとともに、引責の形で代表取締役会長の小林 一雅氏と代表取締役社長の小林 章浩氏が代表取締役を辞任することを発表した。新たな代表取締役社長には専務取締役の山根 聡氏が昇格する。報道では創業家以外から初の社長という文字が目立つが、章浩氏は代表権こそないものの取締役補償担当として役員には残留し、一雅氏については役員から外れるものの特別顧問という形となる。私自身はこれまでの企業取材の経験から、必ずしも同族経営をネガティブなものとは見ていないが、それでもなお今回の人事には「いかにも同族経営らしい決着」と思ってしまう。一方で公表された調査報告書を読んだ率直な感想は「過度な悪意はない危機感の欠如」の一言に尽きる。紅麹は機能性表示食品?それとも特定保健用食品?まず、今回の件で同社が行政への報告までに約2ヵ月を要した理由について、「因果関係が明確な場合に限ると解釈していた」と報道されている。この点については、とりわけ医療従事者の多くは疑問を感じただろうと思う。生鮮食品による食中毒ならいざ知らず、何らかの物質や食品の摂取を通じて起こる有害事象の因果関係の特定には一定の時間を要することが少なくないからである。それゆえに医薬品には「有害事象」と「副作用・副反応」の2つの用語がある。さて、厚生労働大臣の武見 敬三氏までが「自分勝手な解釈で極めて遺憾」と評したこの解釈はなぜ生まれたのか? それが今回公表された調査報告書に記載されている。まず、機能性表示食品では、消費者庁の届出等ガイドライン1)において「届出者は、評価の結果、届出食品による健康被害の発生及び拡大のおそれがある場合は、消費者庁食品表示企画課へ速やかに報告する」と定めている。小林製薬側はこの規定を「健康被害の発生」と「健康被害の拡大のおそれ」の両方が満たされた場合に報告が必要になると解釈。ただし、どのような場合が「健康被害の発生」に該当するかが明確ではないと考えていたという。その結果、同社安全管理部が「特定保健用食品の審査等取扱い及び指導要領」2)で健康被害が生じ、行政報告が必要な場合として「当該食品に起因する危害のうち、死亡、重大な疾病等が発生するおそれがあることを示す知見を入手した場合」と規定されていることを援用し、さらに同規定の「起因する」の文言を「因果関係が明確である」と解釈。最終的に「因果関係が明確な場合に行政に報告する」との解釈を採用したという。何とも言い訳じみた…と思う人もいるかもしれないが、行政文書のわかりにくさを考えれば、このようなさまざまな文書の援用自体はありえなくはない。ただ、ここでは根本的な“ミス”が含まれている。そもそも援用した規定は特定保健用食品、いわゆるトクホのものであり、これにはヒトでの臨床試験が必要である。もっともその臨床試験の多くは数十例程度で行われ、臨床研究法の対象にもならず、この規模で起こり得る健康被害すべてが検出できるとは思わないが、臨床試験をやってもやらなくともよい機能性表示食品と比べればハードルは高く、審査も厳格である。報告書で気になったことこれ以外に報告書を読んでいて気になったことは、個人的に2点ある。1点目は医師から紅麹製品による健康被害が疑われる事例の報告を受けての初動である。1月15日に医師から紅麹製品を摂取していた患者が急性腎不全で入院し、透析治療中である旨の連絡を受けたのが第1例目。半月後の2月1日には別の病院の医師から同時に3例の報告を受けている。この間の半月については1例目を孤発症例と考えれば、無理もないかもしれない。しかし、同時3例の報告後、同社がこれら医師に面談連絡を取ったのは、第1例目の医師が2月8日、2番目の同時3例報告の医師には2月15日。結局面談が実現したのは、前者が2月29日、後者が2月22日だ。ちなみに両医師との面談日程候補期間は小林製薬側から月末を提示している。そして、これら医師に面談要請の連絡をするまでの間、同社では(1)シトリニン原因説、(2)モナコリンK原因説、(3)コンタミネーション原因説、の 3つの仮説が立てられ、分析を行う方針を決定していた。もちろん早急に原因を究明すべく仮説を立てたことには異論はないが、この仮説の絞り込みなども考えれば、より1日でも早く面談を実現すべきではなかったか? 繰り返しになるが、面談候補日を提示したのは小林製薬側である。青カビ発生は当たり前?そして最後に、これが報告書を読んで一番驚いたことだったが、検証委員会のヒアリングに対する大阪工場の現場担当者の証言だ。それによると、問題となった紅麹製品に用いられた原料ロットの製造時、乾燥工程で乾燥機が壊れて原料ロットの紅麹菌が一定時間乾燥されないまま放置されていたそう。加えて、紅麹培養タンクの蓋の内側に青カビが付着していたことを確認し、品質管理担当者に伝えたところ「青カビはある程度は混じることがある」旨を告げられたというのだ。ちなみに報告書ではこの証言について「本件問題の原因であるか否かは不明であるものの」と慎重な言い回しで記述している。この証言を読んで思い出したのが、個人的な話で恐縮だが、産婦人科医でもあった私の亡き父方の祖父とのエピソードだ。幼少期、正月に祖父宅を訪ねると、祖父はたいそう喜び、傍らの缶から切り餅を取り出し、祖母に私と祖父のために焼くように指示した。この時、5mmほどの青かびが3つほどついているのが目に入った。私が「おじいちゃん、それ…」と指さすと、祖父は座椅子のひじ掛けの下の物入れから小刀を取り出し、目の前でそれを削り取って、そのまま祖母に渡したのだ。明治生まれの極めてパターナリスティック(父権主義)な祖父に歯向かうことができず、結局、私はその餅を食べることになった。こうしたことは個人の範疇ならば、自己責任で済む。死者にムチ打つようで悪いが、この品質管理担当者は亡き祖父と同程度の認識で不特定多数の人が口にする紅麹製品を製造していたのか、とやや呆れてしまった。この問題はまだ原因究明中ではあるが、いずれにせよこの調査報告書は悪意のない危機意識が積み重なると、人の命までも奪いかねないという重大な教訓を伝えてくれていると言える。参考1)消費者庁:機能性表示食品の届出等に関するガイドライン2)消費者庁:特定保健用食品の審査等取扱い及び指導要領

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低血糖時に慌てないための方法(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者 先日、低血糖になって…医師 どんな感じだったんですか?(低血糖エピソードの経過について尋ねる)患者 変な汗が出てきて、スキャンしたら血糖が58でこれはヤバいと思って、近くにある菓子パンやジュースを飲んだんですけど…その後、高血糖になって、インスリンで修正したら、下がり過ぎて…。医師 なるほど。血糖値がジェットコースターみたいだったんですね。患者 そうなんです。また、低血糖になったら、どうしようかと心配で…。医師 それなら、「15-15ルール」を活用してみてください。低血糖になったら15g程度の炭水化物、ロールパン1個ぐらいですね。それをとってから、15分後に血糖を確認してみてください。もし、まだ低いようなら15gの炭水化物を追加してみてください。患者 なるほど。今まで、慌てて、とり過ぎていました。画 いわみせいじポイント低血糖後の高血糖を予防するために、「15-15ルール」について具体例をあげてわかりやすく説明します。Copyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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尿アルブミン/クレアチニン比の基準値、30mg/gCr未満は適切?

 尿アルブミン/クレアチニン比(UACR、単位:mg/gCr)の基準値は30未満とされているが、基準値範囲内であっても、全死亡および心血管疾患リスクに影響を及ぼすことが示唆された。イスラエル・ヘブライ大学のDvora R. Sehtman-Shachar氏らの研究グループは、UACR 30未満の範囲で、全死亡および心血管疾患との関連を調査した研究を対象として、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、UACRが基準値範囲内であっても正常高値では、心血管疾患および全死亡のリスクが上昇した。本研究結果は、Diabetes, Obesity and Metabolism誌オンライン版2024年7月17日号に掲載された。 PubMedおよびEmbaseを用いて、2024年4月12日までに登録された研究のうち、UACR 30未満の範囲でUACRと全死亡、心血管疾患との関連を調査した研究を検索した。その結果、22件の文献が抽出され、15件についてメタ解析を実施した。UACRを2つのカテゴリー(10未満vs.10以上30未満)または3つのカテゴリー(5未満vs.5以上10未満vs.10以上30未満)に分けて解析した。 主な結果は以下のとおり。・UACR 10未満と比較して、10以上30未満では全死亡(ハザード比[HR]:1.41、95%信頼区間[CI]:1.15~1.74)および冠動脈疾患発症(同:1.56、1.23~1.98)のリスクが上昇した。・UACR 5未満と比較して、5以上10未満でも全死亡(HR:1.14、95%CI:1.05~1.24)および心血管死(同:1.50、1.14~1.99)のリスクが上昇した。10以上30未満では、心血管死のリスクが2倍以上に上昇した(同:2.12、1.61~2.80)。 本研究結果について、著者らは「UACR正常高値(10以上30未満)を心血管疾患リスクの高い集団として定義することを提案する。この集団に対する腎保護薬の効果を検証する研究が必要である」とまとめた。

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診療科別2024年上半期注目論文5選(糖尿病・代謝・内分泌内科編)

Post-trial monitoring of a randomised controlled trial of intensive glycaemic control in type 2 diabetes extended from 10 years to 24 years (UKPDS 91)Adler AI, et al. Lancet. 2024;404:145-155.<UKPDS 91>:早期からの血糖強化管理による糖尿病合併症低減効果は24年間持続する血糖の早期強化管理により合併症リスクが有意に低減し、その効果が長期にわたり持続する(メタボリックメモリー)ことを実証したUKPDSのさらなる延長報告です。まさに「鉄は熱いうちに打て」です。その効果はメトホルミンでもインスリン・SU薬でも認められました。Dapagliflozin in Myocardial Infarction without Diabetes or Heart FailureJames S, et al. NEJM Evid. 2024;3:EVIDoa2300286.<DAPA-MI>:急性心筋梗塞で入院した心不全・糖尿病のない患者において、ダパグリフロジンはプラセボと比較して総死亡・心不全入院のリスク低減効果に有意差なしSGLT2阻害薬は冠動脈疾患2次予防や心不全入院リスク低減の効果を有することが実証されていますが、それぞれのハイリスク者に限定した効果であることが示唆されました。同時期に、エンパグリフロジンでも同様の結果が報告されています(Butler J, et al. N Engl J Med. 2024;390:1455-1466)。Semaglutide in Patients with Obesity-Related Heart Failure and Type 2 Diabetes.Kosiborod MN, et al. N Engl J Med. 2024;390:1394-1407.<STEP-HFpEF DM>:2型糖尿病を有する肥満関連心不全(HFpEF)患者において、セマグルチドはプラセボと比較して有意に症状スコア(KCCQ-CSS)を改善体重減少が心不全症状改善の主因だと思われますが、 GLP-1受容体作動薬による血行動態改善作用も関与したことが想定されています。本研究では心不全入院や心不全急性増悪といった臨床的アウトカムを評価できるほどの検出力はありませんでした。非糖尿病患者においても同様の結果が報告されています(Kosiborod MN, et al. N Engl J Med. 2023;389:1069-1084)。Effects of Semaglutide on Chronic Kidney Disease in Patients with Type 2 Diabetes Perkovic V, et al. N Engl J Med. 2024;391:109-121.<FLOW>:2型糖尿病を有するCKD患者において、セマグルチドはプラセボと比較して有意にCKD進展を抑制GLP-1受容体作動薬には腎保護作用があることが期待されており、その機序として体重減少の他に、抗炎症・抗酸化ストレス・抗線維化作用が想定されています。本研究はCKD進展抑制を実証した点で臨床的意義が大きいでしょう。ただし、低リスク者での効果やSGLT2阻害薬等との併用効果を実証した質の高いエビデンスはまだありません。Effect of Fenofibrate on Progression of Diabetic RetinopathyPreiss D, et al. NEJM Evid. 2024:EVIDoa2400179.<LENS>:フェノフィブラートはプラセボと比較して早期糖尿病網膜症の進展を有意に抑制フェノフィブラートが中性脂肪低下作用とは独立して網膜保護効果を有することが示されました(本研究での中性脂肪中央値は138mg/dL)。本剤は腎機能低下者では投与禁忌である点や日本では網膜症への保険適用がない点に気をつけましょう。

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生成AI、医師がChatGPTのほかに利用しているのは/医師1,000人アンケート

 2022年11月の対話型AI「ChatGPT」の公開を皮切りに、さまざまな生成AIサービスがリリース&アップデートされ、活用が進んでいる。論文検索や翻訳、スライド作成など、医師の仕事にも活用の可能性が広がる中、CareNet.comでは会員医師1,026人を対象に、生成AIの現在の使用状況についてアンケートを実施した(2024年6月25日実施)。「現在使用している」と回答した医師は約2割、年代による差も 生成AIの現在の使用状況について聞いた結果、「現在使用している」と回答したのは21%。「使用経験はあるが、現在は使用していない」が22%、「過去、現在ともに使用していない」が57%であった。年代別にみると、「現在使用している」と回答した割合は20代・30代では28~29%だったのに対し、40代では19.8%、50代では15.2%と年代が高くなるごとに減少した。 診療科別にみると、「現在使用している」と回答した割合は救急科(50.0%)、総合診療科(36.4%)、神経内科・血液内科・リハビリテーション科(いずれも33.3%)で高かったのに対し、腎臓内科(3.2%)、耳鼻咽喉科(7.1%)、産婦人科(11.1%)などでは低い傾向がみられた。使用していない理由で最も多かったのは「使いこなすのが難しそう/難しいと感じた」 「現在使用していない」と回答した医師に対し、その理由を聞いたところ、「使いこなすのが難しそう/難しいと感じた」が44.5%と最も多く、「習得に時間がかかりそう/かかると感じた」が28.0%、「必要性を感じない」が25.2%と続いた。 「現在使用している」と回答した医師に対し、生成AIを実際どんな作業に活用しているかについて聞いたところ、「論文検索・データベース化」が45.8%と約半数を占め、「論文要約」(44.4%)、「翻訳」(36.0%)、「文章校正」(31.3%)、「抄録・論文の文案作成」(22.9%)と続き、その他の自由記述欄では「アイデア出し」や「シフト表作成」なども挙がった。 一方で「現在使用していない」と回答した医師に生成AIをどんな作業に活用したいかについて聞いた結果、「論文検索・データベース化」(11.9%)、「論文要約」(11.6%)、「翻訳」(10.8%)、「文章校正」(7.1%)と現在使用している医師と同様の傾向がみられたが、その次に多かったのは「スライド作成」(5.9%)であった。実際使用している生成AIサービスは? 「現在使用している」と回答した医師に対し、実際使用しているサービスを聞いたところ、「ChatGPT」は87.4%とほとんどの医師が使用しており、「Microsoft Copilot」(18.2%)、「Claude」(12.1%)、「Gemini」(11.7%)、「Perplexity」(8.4%)と続いた。「LUMIERE」、「Runway」、「Midjourney」、「Stable diffusion」などの動画・画像生成系は使用者が少なかった。 「現在使用していない」と回答した医師に使用したいサービスを聞いた結果、同じく「ChatGPT」が56.0%と最も多く、「Microsoft Copilot」(6.5%)、「Gemini」(5.0%)、「Claude」(4.6%)とおおよその傾向は現在使っている医師と同様であったが、「使ってみたいサービスはとくにない」との回答も37.8%みられた。有料版は使用していないとの回答が6割、一方で月額1万円以上との回答も 「現在使用している」と回答した医師に対し有料版使用の有無を聞いたところ、64.2%が「有料版は使用していない」と回答した一方、月額3,000円未満を支払っていると回答したのは15.1%、3,000円以上5,000円未満が14.2%、5,000円以上1万円未満が4.7%、1万円以上が1.9%だった。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。「生成AI、いま実際どのくらい使っていますか?」 医師1,000人に聞きました

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超加工食品の食べ過ぎは早死につながる

 超加工食品の摂取量が多いと死亡リスクが高くなることを示すデータが報告された。特に、心臓病や糖尿病に関連した死亡のリスクが顕著に上昇する可能性があるという。米国立がん研究所(NCI)のErikka Loftfield氏らの研究によるもので、結果の詳細は米国栄養学会年次総会(NUTRITION 2024、6月29日~7月2日、シカゴ)で発表された。 この研究では、高齢者を平均23年間追跡し、超加工食品の摂取量の多寡で死亡リスクを比較した。その結果、摂取量により最大約10%のリスク差が観察された。Loftfield氏は、「ホットドッグやソフトドリンク、あるいはソーセージやコールドカット(薄切りにされた肉で通常は成型肉)などの高度に加工された肉類は、死亡リスクと強く関連している。それらの超加工食品を控えることは既に、健康の維持・増進のための推奨事項の一つとなっている」と話す。 超加工食品は、自然食品から抽出した素材を利用し、それに添加糖、着色料、乳化剤、香料、安定剤などのさまざまな添加物を加えることで、味を変えたり保存性を高めたりした食品のこと。例として、砂糖入りのシリアルや、ほとんど手を加えずそのまま食べられるよう高度に加工された食品などが挙げられる。 Loftfield氏らの研究には、50~71歳の54万人以上の人々の食習慣と健康関連データが用いられた。これらのデータは1990年代半ばに収集されたものであり、現在、研究参加者の半数以上は既に死亡している。解析の結果、死亡リスクに影響を及ぼし得る因子を調整後にも、超加工食品の摂取量が最も多い群は、最も少ない群よりも早期に死亡するリスクが高いという関係が見いだされた。特に、心臓病や糖尿病に伴う死亡リスクが超加工食品の摂取量の多いことと強固に関連しており、一方、がんのリスクは超加工食品の摂取量との関連が見られなかった。 Loftfield氏は、「われわれの研究結果は、これまでに報告されてきた、超加工食品の摂取が健康と寿命に悪影響を与えることを示す疫学研究のエビデンスを、より強固にするものと言えるだろう」と述べている。過去の研究の一例としては、昨年「Advances in Nutrition」に掲載された、システマティックレビューとメタ解析の報告があり、その研究では超加工食品の摂取量の多さが、糖尿病や高血圧、脂質異常症、肥満のリスクと関連していることが明らかにされていた。ただ、Loftfield氏は、「超加工食品がどのような経路で健康リスクをもたらすのかなど、まだ未解明の点が多く残されている」と付け加えている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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チルゼパチドの体重減少作用は東アジア人においても認められた(解説:住谷哲氏)

 2型糖尿病を合併していない肥満患者におけるチルゼパチドの体重減少作用については、すでにSURMOUNT-1研究で報告されている1)。しかしその対象患者のほとんどは欧米人で、平均BMIも38.0kg/m2であり、そこまで肥満の強くない日本人を含む東アジア人でのチルゼパチドの有効性は明らかではなかった。一方、中国では2030年には人口の約70%、8億人が肥満または過体重になると予測されており、肥満患者の増加が重大な健康問題となっている(中国ではBMI 28kg/m2以上が肥満、24kg/m2以上が過体重と定義されている2))。そこで本研究では、東アジア人である中国人におけるチルゼパチドの体重減少作用が検討された。 本研究ではBMI 28kg/m2以上または24kg/m2以上で体重に関連する疾患(高血圧症、脂質異常症、心血管病など)を有する患者を対象として、チルゼパチド10mgまたは15mgの体重減少作用が検討された。平均BMIは32.3kg/m2であった。その結果は、15mg投与群において試験終了時の体重減少率は17.5%であり、85.8%の患者に5%以上の体重減少が認められた。有害事象についてもこれまでの報告と同じく、ほとんどが消化器症状であった。 予想どおりの結果ではあるが、東アジア人でも欧米人と同様の結果が得られたことには意義がある。現在わが国でチルゼパチドの適応は2型糖尿病患者のみであるが、米国では抗肥満薬「Zepbound」としてすでに使用されている。体重減少にはカロリー制限が王道であるが、現実にはそれだけでは5%の体重減少を達成できないことが多い。チルゼパチドが抗肥満薬としてわが国でも承認されることが期待される。

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