サイト内検索|page:31

検索結果 合計:4897件 表示位置:601 - 620

601.

2型DMへのGLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬、併用vs.単剤/BMJ

 2型糖尿病患者では、GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬の併用は、これらの薬剤クラスの単剤投与と比較して、主要有害心血管イベント(MACE)および重篤な腎イベントのリスクを低減することが、英国・バーミンガム大学のNikita Simms-Williams氏らが実施したコホート研究で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年4月25日号に掲載された。英国のコホート研究 本研究では、2013年1月~2020年12月に集積した英国の2型糖尿病患者の2つのコホートのデータを使用した(カナダ保健研究機構[CIHR]の助成を受けた)。 1つは、GLP-1受容体作動薬で治療を開始し、SGLT2阻害薬を追加した6,696例(平均年齢56.7歳、男性54.5%)、もう1つはSGLT2阻害薬で治療を開始し、GLP-1受容体作動薬を追加した8,942例(57.6歳、52.3%)のコホートであった。併用群は、個々の基礎治療薬(GLP-1受容体作動薬またはSGLT2阻害薬の単剤投与)とその投与期間が同じ患者と、傾向スコアでマッチングを行った。 主要アウトカムは、MACE(心筋梗塞、脳梗塞、心血管死)および重篤な腎イベントとし、GLP-1受容体作動薬+SGLT2阻害薬の併用と2つの基礎治療薬単剤をそれぞれ比較した。併用により、単剤に比べMACEリスクが約3割低下 GLP-1受容体作動薬単剤と比較して、GLP-1受容体作動薬+SGLT2阻害薬の併用では、MACEのリスクが30%低下(1,000人年当たりのイベント数:併用群7.0件vs.単剤群10.3件、ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.49~0.99)し、重篤な腎イベントのリスクは57%減少(2.0件vs.4.6件、0.43、0.23~0.80)した。 また、SGLT2阻害薬単剤に比べ、GLP-1受容体作動薬+SGLT2阻害薬の併用では、MACEのリスクが29%低下(1,000人年当たりのイベント数:併用群7.6件vs.単剤群10.7件、HR:0.71、95%CI:0.52~0.98)したのに対し、重篤な腎イベントのリスクのCIは範囲が広かった(1.4件vs.2.0件、0.67、0.32~1.41)。MACEの各項目には大きな差はない MACEの各項目については、GLP-1受容体作動薬単剤との比較では、心筋梗塞(HR:0.73、95%CI:0.45~1.17)、脳梗塞(0.90、0.48~1.67)に併用群との差はなく、心血管死(0.35、0.15~0.80)は併用群で良好であったもののCIの範囲が広かった。心不全(0.57、0.35~0.91)も併用群で良好だったが、CIの範囲は広く、全死因死亡(0.71、0.49~1.02)には差を認めなかった。 また、SGLT2阻害薬単剤との比較では、併用群で心筋梗塞(HR:0.73、95%CI:0.48~1.12)、脳梗塞(0.86、0.46~1.59)、心血管死(0.54、0.29~1.01)に差はなく、心不全(0.70、0.40~1.23)、全死因死亡(0.73、0.52~1.01)にも差を認めなかった。 著者は、「これらの知見は、2型糖尿病の治療における、心血管イベントおよび腎イベントの予防において、これら2つの有効な薬剤クラスの併用の潜在的な有益性を強調するものである」としている。

602.

コーヒーが早食いによるメタボリックシンドロームを予防?

 早食いは肥満につながるとされ、健康のためにゆっくり食べることが推奨される。そんな中、新たに日本人を対象として行われた研究によると、1日1杯のコーヒーを飲むことで、早食いによるメタボリックシンドロームを予防できる可能性があるという。これは京都府立医科大学大学院医学研究科地域保健医療疫学の小山晃英氏らによる研究結果であり、「Healthcare」に3月7日掲載された。 メタボリックシンドロームは死亡やさまざまな疾患のリスクを上昇させる。食事のスピードとメタボリックシンドロームの関連が報告されているが、一度身に付いた習慣を変えるのは簡単なことではない。著者らは今回、カフェインやポリフェノール(クロロゲン酸)を含み、さまざまな健康効果が報告されているコーヒーに着目して、コーヒー摂取量、食事のスピード、メタボリックシンドロームの関連について調べた。 この研究は、「日本多施設共同コホート研究(J-MICC Study)」の京都における追跡調査(2013~2017年)に参加した3,881人(平均年齢57.5±9.9歳、女性2,498人、男性1,383人)を対象に行われた。「ろ過またはインスタントのコーヒー」と「缶、ペットボトル、パック入りのコーヒー」に分けて、コーヒー摂取量、食事のスピード(遅食い、普通、早食い)のほか、生活習慣や既往歴などが質問票により調査された。 対象者のうち、15.3%(595人)がメタボリックシンドロームに該当した。また、早食いに該当した人は女性の33.8%(845人)、男性の39.8%(550人)だった。 年齢や性別、運動・喫煙・飲酒、既往歴による影響を調整して、まずはコーヒー摂取量とメタボリックシンドロームとの関連が検討された。その結果、ろ過またはインスタントのコーヒーでは、摂取量が1日1杯以上の人は1日1杯未満の人と比較して、メタボリックシンドロームのオッズが有意に低く(オッズ比0.695、95%信頼区間0.570~0.847)、男女別に見ても同様だった。一方、缶・ペットボトル・パック入りのコーヒーでは、女性に関して反対の結果が得られ、1日1杯以上の女性はメタボリックシンドロームのオッズが有意に高かった(同2.056、1.110~3.811)。食事のスピードとの関連については、早食いの人は遅食いの人と比べてメタボリックシンドロームのオッズが有意に高く(同1.689、1.227~2.324)、男女とも同様の結果だった。 次に、ろ過またはインスタントのコーヒー摂取量と食事のスピードを組み合わせて、メタボリックシンドロームとの関連が分析された。コーヒー摂取量が1日1杯未満で早食いの人と比べた結果、1日1杯未満で遅食いの人ではメタボリックシンドロームのオッズが有意に低かった(同0.502、0.296~0.851)。一方、コーヒーを1日1杯以上飲む人では、遅食い(同0.448、0.289~0.693)、普通(同0.482、0.353~0.658)、早食い(同0.684、0.499~0.936)のいずれの場合でも、メタボリックシンドロームのオッズが有意に低いことが明らかとなった。 今回の研究について著者らは、コーヒーの詳細(カフェインレスかどうか、砂糖やミルクの有無など)や、飲むタイミングなどは評価していないことを説明。その上で、結論として「ろ過またはインスタントのコーヒーを1日1杯以上飲むことで、早食いによるメタボリックシンドロームの予防に役立つ可能性が示唆された」と述べている。

603.

第210回 GLP-1製剤の品薄状態、危惧する人と安堵する人

以前、こちらで取り上げたGLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1製剤)のダイエット目的の濫用とそれが原因の1つであると思われる供給不安問題。品薄はダイエット目的で使いやすいであろう週1回製剤のセマグルチド(商品名:オゼンピックなど)、デュラグルチド(商品名:トリルシティ)、チルゼパチド(商品名:マンジャロ)に集中していたが、今年1月15日にセマグルチド、4月22日にデュラグルチドが限定出荷から通常出荷に切り替わり、残すはチルゼパチドのみが品薄状態となっている。そして2023年のメガファーマ各社の決算内容が明らかになっているが、この3製剤の中で最も売上高が高いセマグルチドの2型糖尿病に適応をもつ注射薬「オゼンピック」の2023年売上高は138億ドル(日本円換算で2兆1,126億円、ノボ ノルディスク社の決算はデンマーク・クローネでの発表のため、ドル・円の売上高は現行レートで換算)となった。ちなみに同じセマグルチドを成分とし、同じく2型糖尿病の適応をもつ経口薬「リベルサス」は27億ドル(同4,204億円)、肥満症の適応をもつ注射薬「ウゴービ」は45億ドル(同7,025億円)。セマグルチド成分括りにした2023年総売上高は210億ドル(同3兆2,355億円)である。2023年の医療用医薬品の製品別売上高は、世界第1位が免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の250億ドル(同3兆8,911億円)、世界第2位が新型コロナウイルス感染症のmRNAワクチン「コミナティ」の153億ドル(同2兆3,814億円)で、オゼンピックが世界第4位。だが、セマグルチド括りでの売上高は世界第2位となる。日本の製薬企業で考えると、国内第2位のアステラス製薬と第3位の第一三共の2024年3月期決算で発表された売上高の合算を1成分の売上高で超えてしまっているのだ。なんとも驚くべきことである。オゼンピックは2017年末のアメリカでの発売から1年強で、全世界売上高10億ドル以上のブロックバスター入りを果たし、過去4年ほどで全世界売上高は9倍以上に急伸長している。糖尿病治療薬は患者数の多さゆえにブロックバスター入りしやすいが、オゼンピックは糖尿病治療薬としては、ほぼ史上最高売上高を記録している。糖尿病治療薬の売上高を更新、“注射製剤”のなぜこの背景には、これまでブロックバスター入りした糖尿病治療薬がほぼ経口薬であり、それと比べて注射薬のオゼンピックは薬価が高いという事情はあるだろう。しかし、それだけではないはずだ。余計な一言を言えば、オゼンピックの売上高が2型糖尿病患者への処方のみで形成されていると思うウブな関係者はいないだろう。たぶんここには世界的に見ても、ダイエット・美容目的の適応外処方による売り上げが含まれていると考えられる。さて、供給不安はかなり解消されたとは言え、現場ではまださまざまな不都合が生じている模様だ。たとえば薬局薬剤師に話を聞くと、実際の週1回GLP-1製剤の処方箋は1ヵ月分、すなわち製剤としては注射キット4本の処方が多いという。しかし、市中の保険薬局では今でも入庫がスムーズではなく、処方箋受け取り時には2本のみを患者に渡し、残り2本は後日に再来局をお願いするか、配送するケースも目立つという。この背景には通常出荷になっても供給が綱渡りということもあれば、自由診療クリニックへの横流しを警戒して必要量を医薬品卸が適宜配送しているという事情もあるらしい。このようなケースで薬局側が患者宅に配送をする際は、人が直接届けるかクール便を使うという。ある薬剤師は「(薬局への)納入価に配送の人件費やクール便費用を上乗せしたら赤字になる」とため息をついていた。この現状は患者にとっても薬局にとっても迷惑千万な話だろう。この状況の解消まで考えると、完全な通常流通まではまだ時間がかかりそうだ。しかし、あまのじゃくな私は、危惧すべきは完全な通常流通が実現した後ではないか? と考えてしまう。少なくとも現状はGLP-1製剤を必要とする2型糖尿病や肥満症の患者に薬が届かないという最悪の状況は避けられている。ただ、前述のように受け取りに多少の手間暇がかかっている。その一方で、いわば「メディカルダイエット」と称したダイエット・美容目的の自由診療でのGLP-1製剤の適応外処方が極端に廃れたなどという話は、少なくとも私個人はまったく耳にしていない。ネット広告では今でもこの手の広告がじゃんじゃん表示される。余談になるが、どうやら年齢・性別の属性では中高年男性もGLP-1製剤のターゲットにされているらしく、最近は私に対してもこの種の広告と薄毛治療の広告が頻繁に表示される。そして、ご存じのように自由診療での適応外処方を法令で取り締まることはできない。つまるところGLP-1製剤で完全な通常流通が実現するということは、本当に必要な患者が困らないだけではなく、適応外処方の自由診療も栄えるということだ。通常流通を危惧する理由こんなことを考えてしまったのは、先日ある開業医と話をしていて、ため息が出るような事例を聞いてしまったからだ。この医師は都内の繁華街近くで内科クリニックを開業している。そのクリニックに昨春、強い吐き気で路上にうずくまっていたという若い女性が通行人に付き添われて来院したという。「場所柄もあり『昨夜、かなり飲みましたか?』と尋ねても本人は元々飲めないと答えるし、昼時だったので食中毒を疑って直近の食事状況を聞いたら、朝からお茶を飲んだのみで、とくに何かを食べたわけでもないと言うんですよ。そこでピンと来ました」結局、問診の結果、オンラインの自由診療でGLP-1製剤の処方を受けていたことがわかった。医師は女性にGLP-1製剤では悪心・嘔吐の副作用頻度が高いことなどを伝え、中止を促すとともに、最低限の対症療法の処方箋を発行。女性は「こんなに副作用がひどいとは思わなかった。すぐに止めます」と応じたという。ちなみに問診時に身長、体重を尋ねたところBMIは18にも満たなかったとのこと。その後、女性は来院していないため、本当に彼女がGLP-1製剤を止めたかどうかは定かではない。この医師は私に「自由診療の副作用で苦しんでいる患者でも助けなければならないとは考える。でもね、それを保険診療で対応しなければならないのはねえ…」とぼやいた。至極真っ当な指摘である。この話を聞いて私が反応してしまったのは、「朝から何も食べていない」という話だった。痩身願望のある人が我流の食事制限などを行っていることは少なくない。GLP-1製剤は、その性格上、低血糖になりにくいことがウリの一つである。しかし、それはごく普通の食生活を送っていることが前提で、その場合でもほかの血糖降下薬を併用している場合には低血糖は発生している。ということは、今後、自由診療が野放しのまま完全流通が実現すれば、この医師が経験した副作用の悪心・嘔吐レベルだけではなく、重大な低血糖発作の報告事例が増加してしまうのではないだろうか?そしてオンライン診療でかなりの適応外処方が行われている実態を考えれば、車社会である地方都市在住者でも適応外で使われることが増えるだろう。運転の最中に低血糖発作が起きたらどうなるのだろうと考えてしまった。これは私の妄想だろうか? それとも考え過ぎだろうか?

604.

いくつかの腸内細菌はコレステロールを低下させる

 腸内細菌叢の組成が、肥満や2型糖尿病、炎症性腸疾患を含む、さまざまな疾患のリスクと関連していることが明らかになってきているが、新たにコレステロール値の低下に関連している可能性のある腸内細菌が見つかった。この細菌は、心血管疾患のリスク低減というメリットをもたらす可能性もあるという。米ブロード研究所のRamnik Xavier氏らの研究によるもので、詳細は「Cell」に4月2日掲載された。論文の上席著者である同氏は、「われわれの発見は、腸内細菌叢の組成をわずかに変えることによって、心血管の健康を改善させるというアプローチのスタートラインと言えるのではないか」と述べている。 これまでの研究で、腸内細菌叢の組成が、トリグリセライド(中性脂肪)値や血糖値などの心血管疾患のリスク因子と関連のあることは分かってきている。ただし、どのような細菌がリスクを左右しているのかは明確になっていない。そこでXavier氏らはまず、米国で長年続けられている大規模疫学研究「フラミンガム研究」の参加者1,429人の糞便サンプルを用いて、腸内細菌と心血管リスク因子との関連を検討した。 その結果、Oscillibacter(オシリバクター)という腸内細菌を多く有している人は、そうでない人に比べてコレステロール値が低い傾向があることが明らかになった。また、ヒトの腸内はこのオシリバクターという細菌が驚くほど豊富であり、平均すると細菌100個に1個の割合で存在することも分かった。 続いて、オシリバクターがコレステロール値にどのような影響を与えるかを調べるために、実験室でオシリバクターを増殖させた上で研究を進めた。すると、この細菌はコレステロールを分解すること、その分解によって生じた副産物は、ほかの細菌によってさらに処理された後、体外に排泄されることが明らかになった。 オシリバクターのほかに、Eubacterium coprostanoligenes(ユーバクテリウム コプロスタノリゲネス)という腸内細菌もコレステロール値の低下に関連していることが見いだされた。この細菌は、コレステロールの代謝に関与していることが既に示されている遺伝子を有しており、オシリバクターとは異なる経路でコレステロール値を低下させると考えられた。さらに、これら2種類の細菌が、コレステロール値の低下作用を互いに高めるように働く可能性も示唆されたという。 腸内細菌は、コレステロール以外にもヒトの健康のさまざまな側面に影響を及ぼしていることが知られている。研究者らは、今回の研究でコレステロール低下の機序の一部が解明できたことで、腸内細菌がヒトの健康に及ぼす多彩な影響のメカニズムの全貌解明に結びつくのではないかと考えている。 ブロード研究所の研究者で論文の筆頭著者であるChenhao Li氏も、「腸内の細菌の相互作用がまだあまり理解されていない状況で、糞便の移植などを試みようとする研究が少なくない。できることなら、特定の細菌や遺伝子にターゲットを絞った研究を深め、その上で腸内環境の体系的な理解を試み、結果としてより良い治療戦略の確立につながることを期待している」と話している。

605.

2024年の医師のコロナワクチン、接種する/しないの二極化進む/医師1,000人アンケート

 新型コロナワクチンの全額公費による接種は2024年3月31日で終了した。令和6年度(2024年度)は、秋冬期に自治体による定期接種が開始される。定期接種の対象となるのは65歳以上、および60~64歳で心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される人、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な人で、対象者の自己負担額は最大で7,000円となっている。なお、定期接種の対象者以外の希望者は、任意接種として全額自費で接種することとなり、2024年3月15日時点の厚生労働省の資料によると、接種費用はワクチン代1万1,600円程度と手技料3,740円で合計1万5,300円程度の見込みとなっている1)。この状況を踏まえ、医師のこれまでのコロナワクチン接種状況と、今後の接種意向を把握するため、主に内科系の会員医師1,011人を対象に『2024年度 医師のコロナワクチン接種に関するアンケート』を4月1日に実施した。 Q1では、コロナの診療に現在携わっているかについて聞いた。「診療している」が79%、「診療していない」が21%だった。年代別で「診療している」と答えた割合は、40代(86%)、60代(83%)、30代(81%)の順に多かった。診療科別では、血液内科(94%)、呼吸器内科(94%)、救急科(92%)、総合診療科(90%)、腎臓内科(88%)、神経内科(88%)、内科(85%)、小児科(83%)、消化器内科(81%)、糖尿病・代謝・内分泌内科(80%)、臨床研修医(80%)の順に多かった。年齢が低い医師ほど、コロナに感染した割合が高い Q2では、これまでの新型コロナの感染歴を聞いた。感染したことがある医師は全体の45%、感染したことがない/感染したかわからない医師は55%であった。感染したことがある医師は年齢が低いほど、感染した割合が高く、20代は60%、30代は55%、40代は51%、50代は44%、60代は35%、70代以上は24%だった。臨床数別では、病床数が多いほうが感染した医師の割合が高く、20床以上で感染したのは49%、0~19床では34%だった。また、コロナ診療状況別では、コロナを診療している医師では47%、診療していない医師では37%に感染歴があった。昨年は20~40代の接種率が50%弱 Q3では、2023年秋冬接種でのXBB.1.5対応ワクチンの接種状況を聞いた。全体では「接種した」が58%、「接種していない」が42%だった。年代別で「接種した」と答えた割合は、多い順に70代以上(77%)、60代(72%)、50代(61%)、20代(50%)となり、30代(45%)と40代(48%)は50%未満であった。コロナ診療状況別の接種率は、診療している医師は62%、診療していない医師は46%であった。前年の傾向を引き継ぎ、接種する人と接種しない人の二極化進む Q4では、2024年度にコロナワクチンを接種する予定かどうかを聞いた。全体では「接種する予定」が33%、「接種する予定はない」が41%、「わからない」が26%となった。年代別では、「接種する予定」と答えた割合が過半数となったのは70代以上(56%)のみで、ほかは多い順に60代(44%)、50代(31%)、40代(28%)、20代(28%)、30代(23%)であった。30代では「接種する予定はない」が54%となり過半数を占めた。2023年コロナワクチン接種状況別で、2023年に接種した人では「2024年度に接種する予定」が53%、「2024年度に接種する予定はない」が16%となった。対して、2023年に接種していない人では、「接種する予定」が6%、「接種する予定はない」が74%となり、今回のアンケートで最も顕著な差が認められ、医師のなかでもコロナワクチンを接種する人と接種しない人の二極化が進んでいることがわかった。 Q5では、自身が受ける2024年度のコロナワクチンの費用は、病院負担か自己負担のどちらになるか、これまでのインフルワクチンなどの対応を踏まえ推測を交えて聞いた。「おそらく全額病院負担」が22%、「おそらく一部自己負担」が22%、「おそらく全額自己負担」が23%、「わからない」が33%となり、全体的に均等な割合となった。2024年度にワクチンを接種する予定の人のうち「全額病院負担」35%、「一部自己負担」29%、「全額自己負担」16%だったのに対し、接種する予定はない人は「全額病院負担」12%、「一部自己負担」20%、「全額自己負担」30%であった。ワクチンの必要性や高額な治療薬について、患者にどう説明するか Q6の自由回答のコメントでは、新型コロナに関して現在困っていることや知りたい情報を聞いた。主な回答は以下のとおり。ワクチンについて・ワクチンで感染予防が成り立たないのは明白。ただし重症予防は十分成り立っていたと思うので、高齢者と持病多い人は無料で受けられるようにしてほしい(40代、循環器内科)・接種の必要性をよく質問されるが、正直な所、自分も勧めてよいのか迷っている(40代、小児科)・今後新たに使用可能となるワクチンの種類とその効果など(60代、内科)・公費負担が終了すると被接種者は減少すると思われるが、今後の流行予測は?(70代以上、内科)・医療従事者のワクチン接種費用について(50代、内科)治療薬について・抗ウイルス薬の値段が高い事の説明をどうするか(60代、内科)・コロナ治療薬の処方が減り、対症療法が増えると思う(70代以上、内科)・抗ウイルス薬の適応と思われる患者さんが、高額のため投薬拒否された時のことを考えると頭が痛い(50代、消化器内科)流行状況、院内対策などについて・現在の感染状況の情報発信が少なくなり、新型コロナ感染症に対する世間の認識が乏しくなり、感染増加を招いていること(40代、呼吸器内科)・感染対策の立場として、職場での接種をどうするか悩んでいる(40代、感染症内科)・発熱外来の体制に悩んでいる(30代、呼吸器内科)・後遺症に関する診断(40代、呼吸器内科)アンケート結果の詳細は以下のページで公開中。2024年度 医師のコロナワクチン接種に関するアンケート

606.

心房細動の再発に歯周病が関与?

 心房細動のアブレーション治療後の再発に、歯周病が関与していることを示唆するデータが報告された。アブレーション治療のみを受けた人に比べて、歯周病の治療も受けた人では、心房細動の再発が61%少なかったという。広島大学保健管理センターの宮内俊介氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に4月10日掲載された。同氏は、「歯周病の適切な管理は心房細動の予後を改善する可能性があり、その恩恵を受ける人が世界中に多数存在しているのではないか」と述べている。 心房細動は不整脈の一種で、自覚症状として動悸やめまいなどを生じることがある。ただしより重要なのは、心臓の中に血液の塊(血栓)が形成されやすくなるために、その血栓が脳の動脈に運ばれて脳梗塞が起きてしまうリスクが高い点にある。このタイプの脳梗塞は梗塞の範囲が広いことが多く、重症になりやすい。人口の高齢化を背景に心房細動が増加しており、米国では2030年までに患者数が1200万人以上に達すると予測されている。心房細動に対する治療としては、不規則な心拍を引き起こす原因となっている箇所を焼灼する、血管カテーテルを用いたアブレーション治療という手法が普及してきている。 一方、口の中の健康状態が全身の健康状態と関連のあることが知られている。しかしこれまでのところ、歯周病が心房細動のリスク因子の一つとは認識されていない。宮内氏らはこの点について、前向き非無作為化試験により検討した。研究参加者は、アブレーション治療を受けた心房細動患者288人。このうち97人が、アブレーション治療後に歯周病の治療も受けることに同意していた。 アブレーション治療から507±256日の追跡で、70人(24%)が心房細動を再発した。交絡因子を調整後、歯周病の治療を受けた患者群はアブレーション治療のみを受けた患者群に比べて、心房細動の再発リスクが約6割低いことが明らかになった〔ハザード比(HR)0.393(95%信頼区間0.215~0.719)〕。また、心房細動を再発した群は再発しなかった群に比べて、歯周病の重症度が高かった〔炎症のある歯周組織の面積(PISA)が456.8±403.5対277.7±259.0mm2(P=0.001)〕。 この結果について宮内氏は、「歯周病治療が心房細動の再発リスクを大きく下げる可能性が示されたことに驚いた」と語っている。米国心臓協会(AHA)によると、「炎症が起きている歯周組織から、細菌が血液中に侵入して全身に慢性的な炎症が生じる。その結果、2型糖尿病リスクが高まるとともに、心臓や脳の血管の炎症を介して動脈硬化が進行し、心臓発作や脳卒中の発症に至る可能性がある」という。ただし、心房細動のリスクに影響が生じるメカニズムは不明であり、宮内氏らはその点の解明のための研究を進めていることを、AHA発のリリースの中で述べている。また研究者らは、「心房細動の患者に対して歯周病の検査と治療を受けることを推奨すべきだ」と提案している。

607.

7つの“ロコモチェック”(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2021 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者医師患者医師患者最近、足腰が弱くなってきて…。それでは、要介護の原因となる「ロコモ」を簡単にチェックしてみましょう。以下の7項目で、いくつ当てはまりますか?①片脚立ちで靴下が履けますか?②家の中でつまずいたり滑ったりしますか?③階段を昇るのに手すりが必要ですか?画 いわみせいじ④家のやや重い家事(掃除機の使用や布団の上げ下ろし)が困難ですか?⑤2kg程度の買い物をして持ち帰ることができますか?⑥15分くらい続けて歩けますか?⑦横断歩道を青信号で渡りきれますか?えーっと…、①と②が難しいと感じます。それ以外は大丈夫ですね。それなら、ロコチェック2点で、運動機能が低下している恐れがあります。0点を目指してロコモーショントレーニングをされるといいですよ!それはどんなトレーニングですか?(興味津々)ポイント要介護予防のために、ロコチェックでロコモに関心をもってもらいます。1つでも当てはまる患者さんには、「ロコモ度テスト」を受けてもらうとよいでしょう。Copyright© 2021 CareNet,Inc. All rights reserved.

608.

第213回 まれな低身長症の変異に老化を遅らせる働きがあるらしい

世界での患者数わずか400~500例ほどのまれな低身長症が、老化や代謝疾患を研究する科学者の関心を集めています1)。というのも、ラロン症候群として知られるその低身長症の原因である成長ホルモン受容体欠損(GHRD)とさまざまなメリットの関連が示されているからです。南米・エクアドルのラロン症候群患者の調査結果を記した南カリフォルニア大学のValter Longo氏のチームの2011年の報告では、それら患者に糖尿病やがんが生じ難いことが示されています2)。同じくLongo氏らのその6年後の2017年の報告3)では、ラロン症候群患者の記憶が良いことが示されました。また、ラロン症候群患者はどうやら脳がより若いらしく、MRIで調べた脳領域のいくつかがより大ぶりでした。ラロン症候群を模すマウスはそうでないマウスに比べて1.4倍ほど長生きすることも示されており4)、ラロン症候群の原因であるGHRDは老化を遅らせる働きもあるのかもしれません。さらに研究は進み、Longo氏とエクアドルの内分泌学者Jaime Guevara-Aguirre氏の協力による新たな報告5)によると、GHRDはヒトの死亡理由の多くを占める心血管疾患をも生じ難くするようです。研究ではエクアドルのラロン症候群の24例とラロン症候群ではないそれらの血縁者27例が調べられました。Guevara-Aguirre氏はアンデス山地の村々の回診でラロン症候群患者の集団の気付き、それ以来30年超その集団を調べています。新たな研究では心血管疾患指標が検討され、ラロン症候群患者は血糖、インスリン、血圧などが正常かより良好で、どうやら心血管疾患を生じ難いと示唆されました。ラロン症候群患者は肥満であることが多く6)、「悪玉」としばしば呼ばれて動脈硬化を生じ易くすると考えられているLDLコレステロール値が高めです7)。しかし、動脈硬化を有するラロン症候群患者の割合はわずか7%でした。一方、ラロン症候群でない人は36%が動脈硬化を有していました。ラロン症候群患者の動脈はそうでない人に比べて少なくとも不健康ではないようです。低IGF-1が有益作用の鍵らしいラロン症候群だとGHRの不備のせいで体は成長ホルモン(GH)を持て余してしまいます。ラロン症候群患者はGHの量が正常か多いのとは対照的に、インスリン様成長因子1(IGF-1)の減少を呈します。IGF-1はGHが骨や組織を増やすのを助けます。IGF-1が少ないことと心血管疾患を生じやすいことの関連が先立つ研究で示されていたので、IGF-1減少を示すラロン症候群患者は心臓や心血管の問題が多いに違いないと大方考えられていました。しかし今回の結果はいわばその真逆を示唆しており、歳を重ねてからのIGF-1伝達抑制は老化の進行を遅らせる働きがあるようです7)。ラロン症候群患者は小児期に多い病気での死亡率が高い2)ことが示唆しているように、育ち盛りの若いときにIGF-1は抑制できません。一方、老いてからのIGF-1伝達の手入れは有意義かもしれず、Longo氏はGH受容体狙いでIGF-1を減らす薬が心血管疾患の予防手段となりうると期待しています7)。Longo氏やGuevara-Aguirre氏は研究のみならずラロン症候群患者の実益と直結する活動もしています。両氏はラロン症候群の小児の身長を伸ばすためのIGF-1提供を製薬会社やエクアドル政府に働きかけています1)。また、ラロン症候群小児の身長を伸ばしうる食事の試験が始まっており、Guevara-Aguirre氏はラロン症候群患者を無償で手当てしています。参考1)Could a rare mutation that causes dwarfism also slow ageing? / Nature2)Guevara-Aguirre J, et al. Sci Transl Med. 2011;3:70ra13.3)Nashiro K, et al. J Neurosci. 2017;37:1696-1707.4)Coschigano KT, et al. Endocrinology. 2000;141:2608-2613. 5)Guevara-Aguirre J, et al. Med. 2024 Apr 22. [Epub ahead of print] 6)People with rare longevity mutation may also be protected from cardiovascular disease / Eurekalert7)Rare mutation that causes short stature may shed light on ageing / NewScientist

609.

スタチンで糖尿病発症リスクは本当に増加する?

 スタチン療法により、糖尿病の新規発症リスクが約10%増加すると報告されているが、そのタイミングやどのような患者でリスクが高いかは明らかでない。英国・Cholesterol Treatment Trialists'(CTT)Collaborationの研究者らは、大規模な無作為化比較試験の個々の参加者データを用いたメタ解析を実施し、結果をLancet Diabetes &Endocrinology誌2024年5月号に報告した。 対象となったのは、追跡期間2年以上で1,000人以上が参加するスタチン療法に関する二重盲検無作為化比較試験。メタ解析では、糖尿病の新規発症(糖尿病関連有害事象、新規血糖降下薬の使用、血糖値[空腹時血糖値≧7.0mmol/Lまたは随時血糖値≧11.1mmol/Lが2回以上]、HbA1c値[≧6.5%が1回以上]により定義)、糖尿病患者における血糖値悪化(ケトーシス関連の有害事象または血糖コントロールの悪化、ベースラインから≧0.5%のHbA1c値上昇、血糖降下薬の強化で定義)に対するスタチン療法の影響を評価した。 主な結果は以下のとおり。・CTT Collaborationの研究のうち、スタチンとプラセボを比較した19試験(参加者:12万3,940例、糖尿病患者:2万5,701例[21%]、追跡期間中央値;4.3年)が解析に含まれた。うち2試験(2万1,455例)は高強度スタチン療法と、16試験(9万5,890例)は中強度スタチン療法と、1試験(6,605例)は低強度スタチン療法とプラセボを比較していた。・低または中強度スタチン療法を受けた患者では、プラセボ群と比較して糖尿病の新規発症が発生率比で10%高かった(3万9,179例中2,420例[1.3%/年] vs.3万9,266例中2,214例[1.2%/年]、発生率比[RR]:1.10、95%信頼区間[CI]:1.04~1.16)。・高強度スタチン療法を受けた患者では、プラセボ群と比較して糖尿病の新規発症が発生率比で36%高かった(9,935例中1,221例[4.8%/年]vs.9,859例中905例[3.5%/年]、RR:1.36、95%CI:1.25~1.48)。・ベースラインで糖尿病のなかった参加者において、平均血糖値は低または中強度スタチン療法群で0.04mmol/L(95%CI:0.03~0.05)、高強度スタチン療法群でも0.04mmol/L(0.02~0.06)上昇し、平均HbA1c値は低または中強度スタチン療法群で0.06%(0.00~0.12)、高強度スタチン療法群では0.08%(0.07~0.09)上昇した。・スタチン療法群でプラセボ群と比較して過剰に糖尿病を発症した症例の約62%は、ベースラインの血糖値が最高四分位群に属する参加者であった。・糖尿病新規発症に対するスタチン治療の相対的影響は、さまざまなタイプの参加者および治療期間で同様であった。・ベースラインで糖尿病があった参加者において、血糖値悪化のRRはプラセボ群と比較して、低または中強度スタチン療法群で1.10(1.06~1.14)、高強度スタチン療法群で1.24(1.06~1.44)であった。 著者らは、スタチンは糖尿病の新規発症について用量依存的な増加を引き起こしたが、これは血糖値のわずかな上昇と一致しており、糖尿病の新規発症の多くはベースラインの血糖マーカーが糖尿病の診断基準値に近い人々で起こっていたとし、スタチンの主要な心血管イベントに対するベネフィットはこれらの糖尿病リスクを大幅に上回ると結論付けている。

610.

第192回 マイナンバーカードはデータヘルス改革のキープレーヤー

社会保障制度改革にマイナンバーカードは必須新型コロナウイルス感染症が落ち着き、いよいよ団塊の世代のすべてが後期高齢者になる2025年がみえてきました。多くの医療機関にとって、今年の診療報酬改定は賃上げを求められるとともに、厚生労働省が打ち出したさまざまな政策により大きく影響を受けることになります。この中で1番注目すべきは、マイナ保険証の利用促進です。日本健康会議が4月25日に開いた、医療DX推進フォーラム「使ってイイナ!マイナ保険証」には武見 敬三厚労大臣、河野 太郎デジタル大臣、斉藤 健経済産業大臣が参加し、マイナ保険証利用促進集中取組月間のキャンペーンのキックオフを行いました。政府だけでなく、保険者団体、医療界、経済界も一丸となって国民にマイナンバーカード(マイナカード)の普及によって医療DXに取り組む宣言を行っています。マイナカードについては、当初からマイナンバーと健康保険証の紐付けミスが発生したことで批判も多く、国民の半数以上が所有しながらも、4割程度しか常時所持していないことが明らかになるなど、政府の取り組みについて実効性を疑問視する声も挙げられている一方、そのメリットは計り知れないことが国民にはまだ理解されていません。〔マイナンバー保険証によるメリット〕オンライン資格確認医療機関で保険証として直接利用でき、受診時の手続きが迅速化できるセキュリティの向上個人情報の保護が強化され、情報の漏洩リスクを低減できるデータ連携の効率化医療・介護情報がデジタル化され、異なる医療機関間での情報共有がスムーズに行えるこれらの実現によって、医療の質を高め効率的な医療介護連携が促進されることは間違いなく、患者さんが急病になって、意識がなくても救急車内で持病や内服などの情報も確認できるなど、救急医療現場でも利便性や信頼が高まっていくと考えられます。持続性可能な社会保障制度を求めた動きを強化わが国は、少子高齢化が急速に進展するため、2050年には高齢化率が36%に達する見込みであり、国民1人ひとりの健康寿命延伸が望まれる一方、医療・介護費の負担増大も見込まれています。毎年のように報道される過去最高を記録し続ける社会保障費の増大に対して、政府も伸び率の抑制を試みてはいるものの、医療アクセスを維持しながらの医療費抑制は困難です。さらに健康保険組合の財政も厳しく、「健保組合の9割が赤字見通し」「全体の赤字幅、過去2番目6,578億円」といったように社会保障制度の根幹である国民皆保険制度の維持にもかかわっています。このため、政府は後発品への置き換えによる薬剤費の抑制などを行ったものの、1人当たりの医療費や介護費が多く必要となる後期高齢者が増加し、そのスピードに追い付けていません。これに対して、厚労省は2017年1月からデータヘルス改革推進本部を設立し、レセプト(医療情報)、健診結果などのデータ分析に基づいて、PDCAサイクルで効果的、効率的に保健事業へ取り組む「データヘルス改革」に着手をしようとしていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大によって実際に動き出せたのが遅れたというのが真相です。データヘルス改革によって、データに基づく質の高い医療を実現させるとしていますが、患者個人の医療情報が、複数の医療機関にまたがって患者の健康情報や治療歴が保管され、医薬品の副作用やワクチンの接種歴などがアナログで参照できない状態では、効率性もさることながら、医療の質が高まらない上に医療安全でも好ましくない状態となっています。「厚生労働省が進めるデータヘルス改革」の今後のデータヘルス改革の進め方によるとゲノム医療・AI活用の推進自身のデータを日常生活改善などにつなげるPHRの推進医療・介護現場の情報利活用の推進データベースの効果的な利活用の推進とあり、この頃からAIの活用も盛り込みながら、医療・介護情報の利活用推進を行っていくことが明らかになっています。具体的には保健医療・介護分野の公的データベースに連結、解析することで、医薬品の安全性のさらなる向上、治療の質の向上や新たなサービスなどの開発など、保健医療介護分野におけるイノベーションを創出地域包括ケアの実現などに向けた保健医療介護分野の効果的な施策の推進などのメリットが得られるとしています。厚労省医政局は、健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループをこれまでに21回開催し、医療・介護情報の利活用についてAction Planをまとめ、実施に向けた準備を取り組んでいます。この中で、来年の4月から本格化する「電子カルテ情報共有サービス」については電子カルテ情報共有サービスの運用開始までのロードマップ(「電子カルテ情報共有サービスにおける運用について」30ページ目)によれば、令和7年度中に稼働が本格的に始まることになります。さらに、政府は介護保険証のマイナカードとの一体運用を2024年度中にデータ基盤が整った自治体から開始し、2026年度に全国規模で運用を目指すことを決定しており、介護保険の介護認定の申請や通知にも利用されるほか、ケアプランの作成や提出だけでなく、主治医意見書などもマイナ保険証を介する可能性があり、医療だけでなく介護現場にもマイナ保険証がますます活用されることになると予想されます。医療・介護情報の連結に必要なのは、実はマイナカードです。来年度には、電子カルテ情報共有サービスが本格的に稼働するなどさらに進むことになります。紙の保険証が、今年12月から発行停止になることで、国民に広がっていく不安を解消するために、医療機関や行政機関はさらに力を入れていく必要があります。医療DXで進む「効率化」と「医療費適正化」医療費適正化については、あまり広くは知られていませんが、厚労省は令和6年度から6年間の第四期医療費適正化計画(2024~2029年度)を開始しています。政府は第4期の計画策定にあたり、2023年7月20日に「医療費適正化に関する施策についての基本的な方針」を定めています。この中には特定健診などの実施率向上実施率目標につき特定健診を70%、特定保健指導を45%後発医薬品の使用促進後発医薬品の数量シェアを80%以上(2023年度末までに全都道府県で)生活習慣病(糖尿病)などの重症化予防重複・多剤投薬の是正のように従来から取り組んできた項目のほか、新たに抗菌薬の適正使用、リフィル処方箋など今年の診療報酬改定につながるような項目が加わっています。政府は、各都道府県に対して医療費適正化計画の策定を求め、PDCAサイクルで医療費の適正化に取り組むように求めていきます。これまでと異なるのは医療・介護データを連結することで解析を行い、目標に近付けるために、各都道府県がよりデータに基づいて、保険者と連携して、医療機関だけでなく国民に働きかけることが増えると思われます。多くの医療機関は、保険償還の範囲の中であれば自由に検査や治療が行っていますが、今後は医薬品の適正使用、医療資源の効果的・効率的な活用のために地域ごとに高額な医療機器の共有なども進められていくほか、新たな地域医療構想に基づいた病床機能の分化・連携の推進が進んでいくように働きかけも強くなっていくと考えられます。今回の診療報酬改定や介護報酬改定では、医療機関や介護サービス事業者に対して補助金を支給するなどマイナカードの普及への協力を求めており、今後のオンライン資格確認や電子処方箋など将来的にも重要な役割を果たすマイナカードに対して、患者さんへの利用の呼びかけなど積極的な協力が求められます。参考1)健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報利活用ワーキンググループ(厚労省)2)第四期医療費適正化計画(2024~2029年度)について(同)3)医療費適正化に関する施策についての基本的な方針(同)4)第四期東京都医療費適正化計画(東京都)5)介護保険証もマイナカード一体化検討 24年度にも運用(日経新聞)6)健保組合の9割が赤字見通し 全体の赤字幅、過去最大6578億円に(朝日新聞)

611.

アクティブなワークステーションが仕事のパフォーマンスを改善

 トレッドミルやステッパー、スタンディングデスクを取り入れたアクティブなワークステーション(仕事場)は、仕事のパフォーマンスを低下させることなく従業員の座位時間を減らし、認知能力を向上させる成功戦略である可能性が、新たな研究で示唆された。論文の上席著者である米メイヨー・クリニックの予防循環器医であるFrancisco Lopez-Jimenez氏は、「われわれの研究結果は、長時間のデスクワークで行ってきたオフィスでの仕事に動きを取り入れることは可能であることを示唆している。アクティブなワークステーションは、仕事中に体を動かすだけで従業員の認知能力や健康全般を改善させ得る新たな方法となる可能性がある」と話している。この研究の詳細は、「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に4月4日掲載された。 この研究では、ボランティアの研究参加者44人(平均年齢35±11歳、女性63.6%)を対象に、4日間連続で4つの異なるワークステーションで構成されたオフィス環境で仕事をしてもらい、そのパフォーマンスの評価を行った。試験参加者は、初日は一般的なデスクで座って仕事を行い、その後の3日間は、スタンディングデスクで立ったまま仕事をする、トレッドミルで歩きながら仕事をする、ステッパーを使いながら仕事をする、のいずれかを、1日ずつランダムな順序で行った。仕事のパフォーマンスは、11種類の認知機能評価バッテリーを用いた神経認知機能(推論、短期記憶、集中力)と微細運動能力(タイピングの速度とその精度)の観点から評価を行った。 その結果、座ったままで仕事をした場合と比べて、立ったまま、あるいはトレッドミルやステッパーを使いながら仕事をした場合では、神経認知機能が改善するか変化しないかのいずれかであることが明らかになった。特に、推論を評価する尺度の一つであるDouble Trouble Testのスコアは、2日目から4日目にかけて改善し続けていた。また、立ったまま、あるいはトレッドミルやステッパーを使いながら仕事をした場合には、タイピングのスピードは多少落ちていたが、タイピングの正確さには影響がないことも示された。 Lopez-Jimenez氏は、「心血管の健康という観点から言えば、座りっぱなしで過ごすことは、新たな喫煙ともいえるリスク因子だ。しかし、オフィスワーカーの中には8時間労働の大部分をコンピューターのスクリーンとキーボードの前に座って過ごす人がいる」とメイヨー・クリニックのニュースリリースの中で語っている。 その上でLopez-Jimenez氏は、「これらの知見は、生産性と頭脳的なシャープさを維持しながら仕事を行うための方法が他にもたくさんあることを示唆するものだ。肥満、心血管疾患、糖尿病などの予防と治療のための処方箋に、アクティブなワークステーションの追加を検討する価値は十分にあるだろう」との見方を示している。

612.

GLP-1受容体作動薬の使用で甲状腺がんリスクは増加する?

 ウゴービやオゼンピックなどのGLP-1受容体作動薬(GLP-1アナログ製剤)は、糖尿病治療薬や肥満症治療薬として多くの人に使用されるようになった一方で、長期間の使用が甲状腺がんのリスク増加と関連する可能性が危惧されている。しかし、43万5,000人以上を対象としたスウェーデンの研究で、そのような考えの裏付けとなるエビデンスは見つからなかったことが報告された。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のBjorn Pasternak氏らによるこの研究結果は、「The BMJ」に4月10日掲載された。 Pasternak氏らは、デンマーク、ノルウェー、およびスウェーデンの2007年から2021年のヘルスケアおよび行政の登録データを用いて、GLP-1受容体作動薬の使用と甲状腺がんリスクとの関連を検討した。対象者は、リラグルチド(商品名ビクトーザ)やセマグルチド(商品名オゼンピック)などのGLP-1受容体作動薬を使用している14万5,410人と、別の糖尿病治療薬であるDPP4阻害薬を使用している29万1,667人であった。 GLP-1受容体作動薬使用群で平均3.9年、DPP4阻害薬使用群で平均5.4年の追跡期間中に、前者では76人(1万人年当たり1.33件の発症)、後者では184人(1万人年当たり1.46件の発症)が甲状腺がんを発症していた。DPP4阻害薬群と比べたGLP-1受容体作動薬群の甲状腺がん発症のハザード比は0.93(95%信頼区間0.66〜1.31)だった。この結果は、GLP-1受容体作動薬使用群とSGLT2阻害薬と呼ばれる第3の糖尿病治療薬を使用していた群とを比較した場合でも同様だった。一方で、GLP-1受容体作動薬使用群では、甲状腺がんのサブタイプである甲状腺髄様がんの発症リスクがDPP4阻害薬使用群よりも19%高いことが示された。ただし、この結果は統計学的に有意ではなかった。 Pasternak氏は、「多くの人がこれらの医薬品を使用しているので、使用に伴う潜在的なリスクを研究することは重要だ」と強調する。そして、「われわれの研究結果は、広範な患者群を対象としており、GLP-1受容体作動薬が甲状腺がんのリスク増大とは無関係であることを強く裏付けるものだ」とカロリンスカ研究所のニュースリリースの中で述べている。 一方、論文の上席著者である同研究所のPeter Ueda氏は、「GLP-1受容体作動薬が甲状腺に及ぼす影響についての最終的な結論はまだ出ていない」と強調する。その理由について同氏は、「例えば、生まれつき甲状腺髄様がんのリスクが高く、GLP-1受容体作動薬の使用を控えるように勧められているような、一部の集団における甲状腺がんの特定のサブタイプのリスク増加について、明確に否定することができなかったからだ」と説明している。

613.

2型糖尿病患者の消化器症状は不眠症と関連

 糖尿病患者には、上部消化器症状(胸やけ、胃痛、胃もたれなど)や下部消化器症状(便秘、下痢など)がしばしば見られる。日本人の2型糖尿病患者を対象とした研究で、これらの消化器症状が患者の不眠症と強く関連していることが判明した。これは京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学の南田慈氏、岡田博史氏、福井道明氏らによる研究結果であり、「Journal of Diabetes Investigation」に3月5日掲載された。 消化器症状は、糖尿病患者におけるQOL低下の一因である。一方、夜間頻尿により睡眠が中断されることや、糖尿病神経障害による痛み、夜間の血糖値の急激な変化、抑うつなどを伴うことで、糖尿病患者には不眠症が生じ得ることも報告されている。しかし、糖尿病患者における消化器症状と不眠症の関係についてはこれまでにほとんど検討されていない。 そこで著者らは、「KAMOGAWA-DMコホート研究」に参加している2型糖尿病患者を2014年1月~2022年1月に登録し、横断研究を行った。消化器症状の評価には、胸やけ、胃痛、胃もたれ、便秘、下痢の5つの症状を評価する「出雲スケール」を用いた(各症状とも3つの質問項目から0~15点で評価され、スコアが高いほど症状が悪い)。また、睡眠は「アテネ不眠症尺度」で評価し、合計スコア6点以上または睡眠薬を使用している場合を不眠症と定義した。 解析対象者は175人(男性100人、女性75人)、年齢中央値は66歳(四分位範囲57~73歳)で、そのうち68人が不眠症に該当した。不眠症の人はそうでない人と比べ、収縮期血圧および拡張期血圧が有意に高かった。 出雲スケールの結果を比較すると、総スコアの中央値(四分位範囲)は、不眠症の人の方がそうでない人よりも有意に高く、それぞれ14点(5.25~20.75点)と5点(2~10点)だった。症状ごとの結果も同様で、胸やけは2点(0~4点)と0点(0~1点)、胃痛は0点(0~4点)と0点(0~0点)、胃もたれは2点(0~4点)と0点(0~2点)、便秘は4点(2~6点)と2点(0~4点)、下痢は3点(1~5点)と1点(0~3点)であり、全て不眠症の人の方が有意に高かった。 次に、不眠症と関連する要因がロジスティック回帰分析により検討された。年齢、性別、BMI、収縮期血圧、HbA1c、糖尿病神経障害、インスリン療法、夜間頻尿の影響を調整した解析の結果、出雲スケール総スコアの1点上昇ごとのオッズ比(95%信頼区間)は1.10(1.06~1.16)であり、不眠症と有意に関連することが明らかとなった。同様に、症状ごとのスコアについても有意な関連が認められ、オッズ比は胸やけ1.32(1.13~1.55)、胃痛1.38(1.16~1.63)、胃もたれ1.33(1.13~1.56)、便秘1.21(1.08~1.36)、下痢1.29(1.12~1.47)だった。 以上の結果から著者らは、「消化器症状は2型糖尿病患者の不眠症と強く関連している」と結論。また、糖尿病患者の睡眠障害は血糖コントロールやQOLに影響を及ぼす可能性があることから、「消化器症状の管理に注意を払う必要がある」と指摘している。

614.

緑内障は「幸福と感じていない」ことと関連、特に男性で顕著

 国内7県の地域住民を対象とした研究で、自己申告による緑内障の既往歴がある人は、主観的に「幸福と感じていない」割合が高いという結果が示された。この緑内障で幸福と感じていない割合が高い傾向は、特に40~59歳の男性で顕著だったという。これは慶應義塾大学医学部眼科学教室と国立がん研究センターなどとの共同研究による結果であり、「BMJ Open Ophthalmology」に2月19日掲載された。 これまでの研究で、ドライアイや老眼と幸福度の低さとの関連が報告されている。緑内障は、眼圧(目の硬さ)が高い状態が続くことなどにより視神経が障害され、徐々に視野の障害が広がる病気だ。緑内障患者は、テレビの視聴や読書などの楽しみが減少し、転倒リスクが高まるなど、日常生活に悪影響を及ぼし、視覚関連QOLが大きく損なわれる可能性がある。 そこで著者らは、2011~2016年に開始された次世代多目的コホート研究「JPHC-NEXT」のデータを用いて、自己申告による緑内障の既往歴と幸福度との関連を解析した。対象は、国内7県(岩手、秋田、長野、茨城、高知、愛媛、長崎)の計16市町村の地域住民(40〜74歳)のうち、がん、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、糖尿病、うつ病の既往歴のある人などを除外した、計9万2,397人。質問紙により緑内障の既往歴(医師の診断)を調べた。全体的に幸せな状態かどうかの質問に関する4つの選択肢(幸せでない、どちらとも言えない、幸せ、大変幸せ)のうち、「幸せでない」または「どちらとも言えない」と回答した人を「幸福と感じていない」とした。 その結果、緑内障の既往歴のある人は1,733人(1.9%)であり、男性が635人(1.6%)、女性が1,098人(2.1%)だった。緑内障の既往歴がある人は、緑内障の既往歴がない人と比べて年齢が有意に高かった(平均63.0±8.3対57.5±9.6歳)。 年齢のほか、地域、教育レベル、世帯収入、喫煙、飲酒量、身体活動の差を調整した上で、男性における「幸福と感じていない」のオッズを解析した結果、緑内障の既往歴がある人の方が、緑内障の既往歴がない人よりも有意に高かった(オッズ比1.26、95%信頼区間1.05~1.51)。女性でも、「幸福と感じていない」割合と緑内障の既往歴が関連する傾向にあったが、関連は有意ではなかった(同1.05、0.90~1.23)。 さらに、年齢層を分けて解析すると、「幸福と感じていない」割合と緑内障の既往歴との関連が最も強かったのは40〜59歳の男性であることが明らかとなった(同1.40、1.04~1.88)。一方、60〜74歳の男性(同1.20、0.96~1.51)、40〜59歳の女性(同1.21、0.92~1.59)、60〜74歳の女性(同0.99、0.83~1.20)では、有意な関連は認められなかった。 以上から著者らは、「特に男性において、緑内障の既往歴は幸福と感じていない割合と関連する」と結論。性別や年齢層で差があったことの背景として、社会的に求められる役割や雇用状況、視野の障害による仕事への支障などの可能性を挙げている。また、緑内障は日本の中途失明の原因として最も多い病気だが、「診断と治療を早い段階で行えば、進行速度を遅らせ、機能障害を最小限に抑えることができる」と述べている。

615.

3人のレンガ職人、あなたはどのタイプ?(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画いわみせいじ左:命令なので仕方なく仕事をする職人 ⇒ 人から言われたダイエットをやらされている人真ん中:お金のためと割り切って頑張る職人 ⇒ 検査値を改善するためにダイエットしている人右:天職だとやりがいを持っている職人 ⇒ 自分の夢の実現のためにダイエットしている人Copyright© 2021 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者 痩せなければいけないとは思っているんですが、なかなか…。医師 そうですよね。イソップ寓話の「3人のレンガ職人」の話をご存知ですか?患者 えっと、昔に読んだ記憶はあります。医師(簡単に「3人のレンガ職人」のストーリーを説明する)画 いわみせいじ患者 …あっ、思い出しました!医師 ダイエットも同じで、目的が大切です。誰かから言われて仕方なく減量に取り組んでいるようでは、長続きしません。検査値を改善するためだけに努力している人も同様です。患者 なるほど…。医師 自分の夢の実現のために、ダイエットに取り組むといいですよ!〇〇さんが痩せた後にやりたいことは何ですか?患者 そうですね、私の場合は…(ダイエット成功後のイメージを語り始める)ポイント医師や家族から言われて取り組むダイエットではなく、ダイエットの目的を自分なりに言語化してもらうことが大切です。Copyright© 2021 CareNet,Inc. All rights reserved.

616.

洗脳事件の謎解き【Dr. 中島の 新・徒然草】(527)

五百二十七の段 洗脳事件の謎解き今年はいつもより暑いですね。そろそろ熱中症の患者さんが運ばれてくる時期になりました。何と言っても、自分自身が熱中症にならないよう気を付けなくてはなりません。さて、先日は私が卒業した兵庫県立神戸高等学校の同窓会がありました。われわれの学年は29回生なので、大抵が4月29日の昭和の日にあります。6年前の前回が「まさかの還暦同窓会」というタイトルでしたが、今回は「前期高齢者突入記念同窓会」と名付けられていました。久しぶりに集まった200人だか300人だか。高校時代と変わらぬ顔の人もいれば、言われてもわからないほど変化している人もいます。前期高齢者が揃ったら盛り上がるのは病気談義。心筋梗塞、脳梗塞、労作性狭心症、直腸がん、転移性脳腫瘍と病気のオンパレードです。もはや高血圧や糖尿病などはデフォ扱い。皆にコメントを求められる立場なので、適当に答えておきました。逆に私に対して医学的アドバイスをしてくる人もいましたが、上手に相槌を打つことができたのは日頃の外来修業のおかげかもしれません。さて、面白かったのは小学校、中学校、高等学校と12年間同じ学校に通いながら、初対面としか思えない人がいたことです。普通はどこかに接点がありそうなのですが。本当に知らない顔だったので、仮に彼女の名前を白内 佳織(しらない・かおり)さんとでもしておきましょう。果たして1回もクラスが一緒にならなかったのでしょうか?中島「じゃあちょっと確認してみよう。小学校1年生の時の担任は春山先生」白内「私は夏川先生だから別のクラスね」中島「2年生の時は秋原先生という女の先生だったけど、途中から産休になってピンチヒッターで来たのが誰だったかな」白内「冬谷先生よ。だったら一緒の担任じゃない!」なんと彼女とは私と同じクラスだったことがあるみたいです。それでも思い出せません。中島「3年生は東山先生だけど」白内「私も東山先生よ!」中島「あれえ、同じクラスだったかな?」この調子で12年間を振り返ると、なんと小学校で3回、中学校で1回、同じクラスになっていたことがわかりました。それでも何も思い出さないのです。で、ここからが本番!中島「じゃあ、小学校3年生の時のあの洗脳事件を覚えているか?」白内「もちろんよ、放課後にクラス全員が学級委員長に言われて、教室に残されたやつでしょ!」中島「あれは衝撃やったなあ」白内「人にしゃべってはいけないと思ったから、今まで黙っていたけど……」中島「僕もや。人に言っても信じてもらえなさそうやし」事件といっても、誰かが死んだとか誘拐されたとかいうようなシリアスな話ではありません。席に立たされて学級委員長に言われるがままクラスメートを罵倒したり、それができなくて泣き出したり……今になってみれば「あれは何だったんだ?」としか思えないのですが、当時の小学校3年生にとっては十分に大事件でした。ようやくあの事件を語り合うことのできる相手に出会うことができたわけです。実際に事件の内容を話してみると、彼女と私の記憶はピタリと一致しました。中島「やっぱり同じ時に同じ教室にいたのか。ようやく確信できたぞ!」白内「私は習い事があったから、委員長を突き飛ばして先に帰ったのよ。あの後、どうなったの?」中島「僕はなかなか洗脳が解けなくて、ずっといたけどな」ここに至ってようやく親しみを感じた次第です。もちろん同窓会のことなので、他にも大勢の人と世間話をしました。でも、高校時代の記憶がいろいろとよみがえってきたのは翌日になってから。「あの時あんなことがあったけど覚えているか?」みたいな話をもっとできたら良かったのですが。次の同窓会は、おそらく古希になってから。できれば元気に出席したいものです。ということで最後に1句昭和の日 答え合わせの 同窓会

617.

5月2日 カルシウムの日【今日は何の日?】

【5月2日 カルシウムの日】〔由来〕丈夫な骨を作るために欠かせない「カルシウム」を摂ることの大切さを多くの人に知ってもらうことを目的に、骨(コ[5]ツ[2])の語呂合わせからワダカルシウム製薬が制定。関連コンテンツ第23回 高齢糖尿病患者の骨折リスク、骨粗鬆症にどう対応する?【高齢者糖尿病診療のコツ】緩和ケアでもよく経験する高カルシウム血症【非専門医のための緩和ケアTips】カルシウムってなあに?【患者説明用スライド】カルシウムを含む食材は何【患者説明用スライド】糖尿病患者、カルシウムサプリ常用でCVDリスク増

618.

小児~成人期のnon-HDL-C高値、中年期の心血管イベントと関連/JAMA

 小児期から成人期まで、持続的な非HDLコレステロール(non-HDL-C)高値の脂質異常症を有する人は心血管イベントのリスクが高かったが、成人期までにnon-HDL-C値が改善した人は脂質異常症ではなかった人と心血管リスクは同程度であることが、オーストラリア・メルボルン大学のFeitong Wu氏らによる、International Childhood Cardiovascular Cohort(i3C)コンソーシアムの前向きコホート研究で示された。non-HDL-C上昇は小児によくみられ、成人期の心血管リスクを増大することが知られる。しかし、小児期のnon-HDL-C上昇が成人期までに改善することが臨床的な心血管リスクの低下と関連するかどうかは不明であった。著者は今回の結果から、「小児期のnon-HDL-C上昇を予防・軽減するための介入が、早発性心血管疾患の予防に役立つ可能性が示唆された」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年4月12日号掲載の報告。登録時3~19歳の約5千例、小児期と成人期のnon-HDL-C高値と40歳以降の心血管イベントの関連を解析 研究グループは、1970~96年にi3Cコンソーシアムの7件の前向きコホート(米国5件、フィンランド1件、オーストラリア1件)に登録された3~19歳の参加者4万2,324例のうち、小児期(3~19歳)および成人期(20~40歳)のnon-HDL-C値のデータがあり、所在または死因が確認でき、追跡終了時40歳以上であった5,121例を主解析の対象とした。除外基準にのっとり、オーストラリアのコホートは主解析から除外された。最終追跡調査は2019年に実施された。 主要アウトカムは、40歳以降の致死的および非致死的心血管イベント(2015~19年に調査)で、小児期および成人期のnon-HDL-C値の年齢・性特異的zスコア、および臨床ガイドライン推奨の脂質異常症カットオフ値によるカテゴリー別に関連を評価した。 解析対象5,121例は、non-HDL-C値測定のための初回受診時(ベースライン)の年齢中央値が10.7歳、女性60%、黒人15%であった。小児期のnon-HDL-C値zスコア1単位増加当たり心血管リスク1.4倍 40歳以降の平均追跡期間8.9年において、5,121例中147例に心血管イベントが発生した。小児期および成人期のnon-HDL-C値はいずれも心血管イベントのリスク上昇と関連しており、ハザード比(HR)はnon-HDL-C値zスコア1単位増加当たりそれぞれ1.42(95%信頼区間[CI]:1.18~1.70)、1.50(1.26~1.78)であった。 小児期non-HDL-C値の影響は、成人期non-HDL-C値で調整すると減弱したが(HR:1.12、95%CI:0.89~1.41)、成人期non-HDL-C値の影響は小児期non-HDL-C値で調整しても大きなままであった(HR:1.41、95%CI:1.14~1.74)。しかし、小児期から成人期のzスコアの変化で調整した場合、小児期non-HDL-C値の影響は大きなままであり(HR:1.58、95%CI:1.30~1.92)、zスコアの変化(増加)は独立した予測因子であった(HR:1.41、95%CI:1.14~1.74)。 小児期non-HDL-C値と小児期から成人期にかけての変化の両方がアウトカムと独立して関連していたことから、予防の観点からは小児期non-HDL-C値と成人期にかけての変化の両方が有益であることが示唆された。 小児期および成人期に持続的に正常なnon-HDL-C値(ガイドラインで推奨される範囲内)であった人と比較し、小児期から成人期にかけてnon-HDL-C高値の脂質異常症を発症した人は心血管リスクが有意に高く(HR:2.17、95%CI:1.00~4.69)、小児期から成人期まで持続的にnon-HDL-C高値の脂質異常症であった人はそのリスクがさらに倍増した(HR:5.17、95%CI:2.80~9.56)。小児期にnon-HDL-C高値の脂質異常症であったが成人期にはガイドラインで推奨される範囲内であった人では、有意なリスク上昇は認められなかった(HR:1.13、95%CI:0.50~2.56)。

619.

olezarsen月1回投与、トリグリセライドを50%減/NEJM

 olezarsenは、開発中のアポリポ蛋白C-III(APOC3)mRNAを標的とするN-アセチルガラクトサミン結合型アンチセンス・オリゴヌクレオチド。米国・ハーバード大学医学大学院のBrian A. Bergmark氏らBridge-TIMI 73a Investigatorsは、「Bridge-TIMI 73a試験」において、主に中等度の高トリグリセライド(TG)血症を有し心血管リスクが高い患者集団では、本薬の月1回投与によりプラセボと比較して、TG値を有意に低下させ、安全性に関する重大な懸念は生じないことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年4月7日号に掲載された。北米24施設の第IIb相無作為化プラセボ対照比較試験 Bridge-TIMI 73a試験は米国とカナダの24施設で実施した第IIb相二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2022年6~9月に患者を募集した(Ionis Pharmaceuticalsの助成を受けた)。 年齢18歳以上、中等度の高TG血症(TG値150~499mg/dL)で心血管リスクが高い患者、および重度の高TG血症(同500mg/dL以上)の患者を、olezarsen50mgまたは同80mgを投与する群に1対1の割合で無作為に割り付け、次いでそれぞれの用量のコホート内でolezarsenまたはプラセボを1ヵ月に1回皮下投与する群に、3対1の割合で無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、ベースラインから6ヵ月後までのTG値の変化率とし、2つの用量のolezarsen群とプラセボ群の差を算出した。副次アウトカムは、APOC3、アポリポ蛋白B(APOB)、non-HDLコレステロール、LDLコレステロールの値の変化などであった。APOB、non-HDL-Cも改善、LDL-Cには有意な変化なし 154例を登録し、olezarsen 50mg群に58例、同80mg群に57例、プラセボ群に39例を割り付けた。全体のベースラインの年齢中央値は62歳(四分位範囲[IQR]:55~70)、女性が42%で、中等度の高TG血症患者が90%を占めた。TG中央値は241.5 mg/dL(IQR:192~324)だった。 TG値は、ベースラインから6ヵ月後までにプラセボ群で7.8%低下したのに対し、olezarsen 50mg群では57.1%、同80mg群では60.9%低下した。TG値の低下率のプラセボ群との絶対差は、olezarsen 50mg群が-49.3ポイント、同80mg群は-53.1ポイントと、いずれも有意差を認めた(双方ともp<0.001)。 また、ベースラインから6ヵ月後までに、プラセボ群と比較して、2つのolezarsen群ともAPOC3(50mg群:-64.2ポイント[p<0.001]、80mg群:-73.2ポイント[p<0.001])、APOB(-18.2[p<0.001]、-18.5[p<0.001])、non-HDLコレステロール(-25.4[p<0.001]、-23.1[p<0.001])の値が有意に低下したが、LDLコレステロール値(-9.9[p=0.24]、-7.7[p=0.36])には有意な変化はみられなかった。TG値正常化の割合も良好 ベースライン時に中等度の高TG血症で、6ヵ月後のTG値を測定できた128例の解析では、TGが正常値(150mg/dL未満)であった患者は、プラセボ群の34例中4例(12%)に対し、olezarsen 50mg群は49例中42例(86%)、同80mg群は45例中42例(93%)と、いずれの用量も有意に良好であった(双方ともp<0.001)。 有害事象(プラセボ群74%、olezarsen 50mg群72%、同80mg群67%)および重篤な有害事象(5%、7%、12%)のリスクは3つの群で同程度であった。また、肝臓(5%、12%、9%)、腎臓(13%、3%、2%)、血小板減少(3%、0%、4%)に関する臨床的に重要な異常はまれで、3群でリスクに差はなかった。 著者は、「olezarsenは、現在利用可能な治療薬よりも高い水準までTG値を有意に低下させ、他剤とは異なり、アテローム性動脈硬化発生のリスクのマーカーであるAPOBおよびnon-HDLコレステロール値の有意な低下をももたらした」とまとめ、「6ヵ月の時点では、2つの用量でTG値に対する効果は同等であったが、12ヵ月時には80mg群でより大きな減少を示した。さらなる試験により、とくに重度の高TG血症患者において、高用量がTG値の低下およびその他の脂質値にどの程度の付加的な効果をもたらすかが明らかになるだろう」としている。

620.

左室駆出率が保たれた急性心筋梗塞、β遮断薬の長期投与は有効か/NEJM

 左室駆出率(LVEF)が保たれている(≧50%)急性心筋梗塞患者では、長期のβ遮断薬投与は投与しなかった場合と比較して、全死因死亡と新たな心筋梗塞の発生の複合主要エンドポイントを改善せず、安全性のエンドポイントには差がないことが、スウェーデン・ルンド大学のTroels Yndigegn氏らが実施した「REDUCE-AMI試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2024年4月7日号で報告された。3ヵ国の無作為化試験 REDUCE-AMI試験は、3ヵ国(スウェーデン、エストニア、ニュージーランド)の45施設で実施したレジストリーベースの前向き非盲検無作為化並行群間比較試験であり、2017年9月~2023年5月に患者を登録した(Swedish Research Councilなどの助成を受けた)。 冠動脈造影と心エコー図検査を受けたLVEF 50%以上の急性心筋梗塞の成人患者5,020例(スウェーデン人95.4%)を登録し、β遮断薬(メトプロロールまたはビソプロロール)の長期経口投与を受ける群に2,508例、β遮断薬の投与を受けない群に2,512例を割り付けた。 主要エンドポイントは、全死因死亡と新規の心筋梗塞の複合とした。全死因死亡、心筋梗塞の個別の発生にも差がない 全体のベースラインの年齢中央値は65歳、女性が22.5%で、ST上昇型心筋梗塞が35.2%であった。リスク因子としては、46.2%で高血圧、14.0%で糖尿病、7.1%で心筋梗塞の既往歴、0.7%で心不全の既往歴を認めた。入院時に11.6%がβ遮断薬の投与を受けていた。 追跡期間中央値3.5年(四分位範囲[IQR]:2.2~4.7)の時点で、主要エンドポイントは投与群の2,508例中199例(7.9%、年間イベント発生率2.4%)、非投与群の2,512例中208例(8.3%、2.5%)で発生し、両群間に有意な差はなかった(ハザード比[HR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.79~1.16、p=0.64)。 また、投与群では副次エンドポイントの改善も得られなかった(全死因死亡[投与群3.9%、非投与群4.1%]、心血管死[1.5%、1.3%]、心筋梗塞[4.5%、4.7%]、心房細動による入院[1.1%、1.4%]、心不全による入院[0.8%、0.9%])。喘息/COPDによる入院、脳卒中による入院も同程度 安全性のエンドポイント(徐脈性不整脈による入院、第2度または第3度房室ブロック、低血圧、失神、ペースメーカー植込み)は、投与群で3.4%、非投与群で3.2%に発生した。また、喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)による入院はそれぞれ0.6%、0.6%、脳卒中による入院は1.4%、1.8%にみられた。 著者は、「これらの知見は、いくつかの大規模な観察研究やそれらの研究のメタ解析の結果とも一致する」と述べ、「本試験で使用したβ遮断薬は先行研究に比べ低用量であったが、現在のβ遮断薬治療の実情を反映するものである」とまとめている。

検索結果 合計:4897件 表示位置:601 - 620