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事例002 尿中アルブミン定量の査定【斬らレセプト シーズン4】

解説II型糖尿病患者に対して早期腎症の治療経過判定のために「D001 8 尿中アルブミン定量」を測定したところ、縦覧点検においてB事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)が適用されて査定となりました。さらに「審査結果の理由等」の欄には、「3月に2回の実施」とコメントがありました。レセプトデータを確認すると、2ヵ月前のレセプトに尿中アルブミン定量が算定されていました。尿中アルブミン定量検査の留意事項には、「糖尿病又は糖尿病性早期腎症患者であって微量アルブミン尿を疑うもの(糖尿病性腎症第1期又は第2期のものに限る)に対して行った場合に、3ヵ月に1回に限り算定できる」とあることを理由に査定となったものでした。縦覧点検ができないレセプトチェックシステムであったために、見落としにつながったものです。査定対策として、尿中アルブミン定量検査には、次回実施可能日を電子カルテに表示させることにして、医事システム上で回数チェックができるように設定を行いました。医師からは、『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』(東京医学社発行)には、「30mg/gCr以上のアルブミン尿の3か月以上の持続で慢性腎臓病と診断する」とあるため、治療経過に応じて連月実施を必要とする患者が存在するとのことでした。その場合は、慢性腎臓病に移行しないようガイドラインに沿った治療管理をしていることを、検査データを含めて補記いただき、審査に委ねることにしています。

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GCG/GLP-1作動薬survodutide、MASHの改善に有望/NEJM

 線維化の進行を伴わないmetabolic dysfunction-associated steatohepatitis(MASH)の改善に、グルカゴン(GCG)受容体+GLP-1受容体の二重作動薬であるsurvodutideはプラセボとの比較において優れることが、米国・バージニア・コモンウェルス大学のArun J. Sanyal氏らが行った第II相無作為化試験の結果で示された。著者は、「第III相試験でさらなる評価を行う必要がある」と述べている。GCG受容体+GLP-1受容体の二重作動薬はGLP-1受容体作動薬単独よりも、MASHの治療において有効であることが示されているが、肝線維化を伴うMASH患者におけるsurvodutideの有効性と安全性は明らかにされていなかった。NEJM誌オンライン版2024年6月7日号掲載の報告。線維化ステージF1~F3のMASH成人を対象に第II相試験 第II相試験は48週間にわたり、生検でMASHが確認された線維化ステージF1~F3の成人を1対1対1対1の4群(survodutide 2.4mg群、同4.8mg群、同6.0mg群、プラセボ群)に無作為に割り付け、週1回皮下投与した。 試験は、24週間の急速用量漸増期、続く24週間の維持期の構成で実施された。 主要エンドポイントは、線維化の進行を伴わない(線維化ステージのあらゆる進展が認められない)MASHの組織学的改善(NAFLD活動性スコアが2ポイント以上減少し、小葉内炎症または肝細胞の風船様変性が1ポイント以上減少)とした。副次エンドポイントは、肝脂肪量が30%以上低下かつ生検評価による1ステージ以上の線維化の改善(軽減)などとした。MASH改善、survodutide 2.4mg群47%、4.8mg群62%、6.0mg群43%、プラセボ群14% 2021年4月27日~2023年12月21日に1,153例が適格性についてスクリーニングを受け、計293例が無作為化されsurvodutideまたはプラセボを少なくとも1回投与された。ベースラインの被験者特性は試験群間(survodutide 2.4mg群73例、4.8mg群72例、6.0mg群74例、プラセボ群74例)で類似しており、全被験者における平均値は、年齢50.8±12.8歳、体重100.84±22.37kg、BMI 35.81±6.41、女性は53%、2型糖尿病罹患者39%、線維化ステージはF2が41%、F3が35%などであった。 線維化の進行を伴わないMASHの組織学的改善は、survodutide 2.4mg群47%、4.8mg群62%、6.0mg群43%で認められたのに対し、プラセボ群では14%であった(最適適合モデルとしての二次線量反応曲線のp<0.001)。 肝脂肪量の30%以上低下が認められたのは、survodutide 2.4mg群63%、4.8mg群67%、6.0mg群57%、プラセボ群14%であった。また1ステージ以上の線維化の改善は、それぞれ34%、36%、34%、22%で認められた。 survodutide群で発現頻度がプラセボ群より高かった有害事象は、悪心(66% vs.23%)、下痢(49% vs.23%)、嘔吐(41% vs.4%)などであった。重篤な有害事象の発現率は、survodutide群8%、プラセボ群7%であった。

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急性膵炎の管理にエビデンスに基づく推奨事項を提起、米ACG

 急性膵炎(AP)患者の管理について、エビデンスに基づく推奨が示された臨床ガイドラインが、米国消化器病学会(ACG)発行の「The American Journal of Gastroenterology」3月号に掲載された。 米ニューヨーク州立大学ブルックリン校のScott Tenner氏らは、膵臓の急性炎症と定義されるAPの管理について論じている。 著者らは、APは不均一な疾患であり、患者によって進行が異なることを指摘している。ほとんどの患者は数日間症状が続くが、約20%の患者は、膵壊死と臓器不全の一方または両方を含む合併症を経験する。AP患者には、胆道原性膵炎を評価するための経腹超音波検査が推奨され、特発性AP患者には、追加の診断的評価が推奨される。患者には、輸液蘇生を中等度の強度で実施することが推奨される。静脈路からの輸液蘇生には、生理食塩水よりも、乳酸リンゲル液が推奨される。胆管炎を伴わない急性胆道原性膵炎では、早期の内視鏡的逆行性胆管膵管造影よりも、薬剤治療が推奨される。重度のAP患者には、予防抗菌薬を使用しないことが推奨される。感染性膵壊死が疑われる患者には、穿刺吸引は推奨されない。軽度のAP患者には、従来の絶食の手法よりも、患者が許容できれば経口摂取の早期開始(24~48時間以内)が推奨される。軽度のAP患者には、流動食から固形食へと段階的に進める手法よりも、初回からの低脂肪固形食の経口摂取が推奨される。 著者らは、「さらなる研究が必要であるが、感染壊死が認められた患者には緊急手術が必要である、という考え方はもはや妥当ではない」と述べている。

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SGLT2iはステージ5のDKDの予後も改善し得る

 腎機能が高度に低下した糖尿病患者であっても、SGLT2阻害薬(SGLT2i)によって予後が改善することを示すデータが報告された。Dr. Yen'sクリニック(台湾)のFu-Shun Yen氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に4月30日掲載された。SGLT2iの処方が、透析導入や心不全、急性心筋梗塞(AMI)、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)、急性腎障害(AKI)による入院リスクの有意な低下と関連しているという。 SGLT2iは血糖降下作用とともに腎保護作用や心保護作用を有することが明らかになっており、ガイドラインでも使用が推奨されている。しかし、そのエビデンスは腎機能が一定程度以上に保たれている患者を対象に行われた研究から得られたものであり、高度腎機能低下例でのエビデンスは数少ない。これを背景としてYen氏らは、台湾の国民健康保険研究データベース(NHIRD)を用いて、ステージ5(eGFR20mL/分/1.73m2未満で定義)の慢性腎臓病(CKD)を有する糖尿病患者でのSGLT2iの有用性を検討した。なお、同国は1995年に皆保険制度が施行され、国民の99%が国民健康保険に加入しており、NHIRDにはその医療行為が記録されている。 解析には、SGLT2iが同国で使用され始めた2016年5月以降、2021年10月までのデータを用いた。この間に2型糖尿病かつステージ5のCKDを有する糖尿病関連腎臓病(DKD)患者のうち、2万3,854人にSGLT2iが処方されていた。SGLT2iが処方されていないDKD患者2万3,892人を無作為に抽出し、透析導入、心血管イベント、全死亡などのアウトカムを、SGLT2i処方の有無で比較した。解析対象者全体の平均年齢は61.0歳で女性が49.8%、HbA1c8.2%、eGFR10.3mL/分/1.73m2、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)82mg/gCrだった。追跡期間は平均3.1±1.5年、最長5.4年。 結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、HbA1c、糖尿病罹病期間、LDL-C、併存疾患、処方薬など)を調整後、SGLT2iが処方されていた患者群ではITT解析による1,000人年当たりの透析導入のハザード比(HR)が0.34(95%信頼区間0.27~0.43)で、66%低リスクだった。年齢層、性別、UACRによるサブグループ解析においても、それらによる有意な差異は認められず、結果は一貫していた。 また、以下のイベントによる入院についても、SGLT2iが処方されていた群で有意なリスク低下が観察された。心不全はHR0.80(同0.73~0.86)、AMIはHR0.61(0.52~0.73)、DKAはHR0.78(0.71~0.85)、AKIはHR0.80(0.70~0.90)。一方、全死亡に関してはHR1.11(0.99~1.24)で、SGLT2i使用の有無による有意差がなかった。 以上の結果を基に著者らは、「ステージ5のDKD患者において、SGLT2iの使用は透析導入や心腎イベントおよびDKAリスクの低さと関連していた。SGLT2iはCKDステージにかかわらず、疾患管理において基礎的な薬剤となり得るのではないか」と述べている。ただし今回の研究は2型糖尿病患者のみを対象としたため、「この知見は2型糖尿病のないCKD患者には当てはまらない可能性がある」としている。

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最初の数分で患者の情報を系統立てて収集する【こんなときどうする?高齢者診療】第2回

外来で1人の患者に割ける診察時間は何分ありますか?今回は限られた時間の中で高齢者の健康問題の情報を効率的に得る方法「DEEP-IN」を紹介します。こんな場面を想定してみてください。90歳男性。独居。既往歴は安定した高血圧と糖尿病。前医の退職に伴い、新しいかかりつけ医を求めて新規患者枠で外来にやってきました。診察に使える時間は5分です。高齢者診療の原則は「老年症候群があるという前提で診療する」ことです。患者の老年症候群を把握すると、疾患の治療だけでなく、同時にQOL/ADLの維持・向上への次の一手を考えることができるようになります。包括的高齢者アセスメント(Comprehensive Geriatric Assessment ; CGA)は優れたツールですが、まとまった時間を十分にとることのできない外来で使うのはあまり現実的ではありません。そこで短時間で高齢者アセスメントができる型、簡易高齢者アセスメントを活用してみてはいかがでしょうか。簡易高齢者アセスメントの型は、高齢者にコモンに生じる項目の頭文字をとり「DEEP-IN」と覚えます。順番にDementia, Depression, Delirium, Drugs(認知機能、抑うつ、せん妄、服薬状況)、Eye(視力)、Ear(聴力)、Physical function・Fall(身体機能、転倒)、Incontinence(失禁)、Nutrition(栄養状態)です。この型は、短時間で高齢者の診療とケアに必要な情報が得られるよう、とくに「身体・認知機能」と日々の自立生活に必要な項目に注目して設計されています。DEEP-INで患者の情報を効率的に収集する各項目でどのようなことを聞くか、例をみてみましょう。D(認知機能)診察当日の曜日や家族・お孫さんの名前や年齢。これらで大まかな認知能力をアセスメントできます。E&E(視力・聴力)眼鏡や補聴器の使用有無だけでなく、テレビや電話が使いにくくなっていないか、と日々の生活からも情報を収集することができます。P(身体機能)毎日の生活で○○するのが難しい、不安、ということはないか。例えば着替えや洗濯、買い物などです。独居であれば入浴について聞くのがおすすめです!衣服の着脱、浴槽をまたぐ、水・お湯の温度を設定するなど、複雑な動作が数多く含まれている入浴という行為。これに問題や不安がなければ、ほかの日常生活動作も大丈夫というアセスメントも可能でしょう。I(失禁)多くの高齢者の方が悩まれている失禁ですが、これまで一度も聞かれたことがない、ということも珍しくありません。血圧が心配で来たのに、「尿失禁」について急に聞かれると驚く方もいます。デリケートな話題なので聞き方には配慮しましょう。「○○さんのお年になると悩む方も多いのですが」といった一言を添えると答えやすくなります。N(栄養状態)衣服やベルトのサイズ変化、1年間の体重変化や食事内容などが聞けるとGoodです!さて、DEEP-INの型を使って問診したところ、次のような情報が得られました。90歳男性。独居。安定した高血圧と糖尿病D:今日の曜日が言える。孫の名前と年齢を覚えている。しかし服薬記憶はあいまい。お薬手帳は所持。服用している薬の中に、副作用リスクが高い薬がある(NSAIDs、ベンゾジアゼピン、抗ヒスタミン薬が配合された総合感冒薬、抗アレルギー薬を常用)、複数の保険薬局を使用している。E&E:眼鏡と補聴器が欠かせない。眼鏡は2焦点レンズ1)。補聴器は耳掛け式。P:ADLはほぼ自立しているものの、入浴時に転倒の不安がある。直近12ヵ月で転倒歴はない。しかし外出時は杖を使用。I:尿便失禁なし。夜間頻尿もなし。N:1年で5kgの体重減少(これまで誰にも相談したことはない)。ベルトサイズ、時計のバンドサイズの変化、食欲低下あり。いかがでしょうか。「高血圧症、糖尿病」と疾患名だけでは焦点が定まっていなかった患者像の解像度がグッと高くなったと思いませんか?これだけの情報が得られれば、高血圧と糖尿病への処方だけでなく、自立した生活・QOLを向上させるような健康増進介入も可能です。今回は転倒リスクに注目してみましょう。赤字の項目すべてが転倒リスクにつながるため、介入策はないか考えてみましょう。介入の方法としては、(1)転倒につながる副作用がある薬剤の減薬・中止を検討する(2)視力検査と単焦点レンズの眼鏡への変更の2点は比較的簡単にできるのでは、と考えます。2焦点レンズの眼鏡の下部は近距離用に焦点があわせてあるため、足元を見たときに視界がぼやけて遠近感がつかみにくいため転倒のリスクが高まります。単焦点眼鏡への変更を提案してもいいでしょう。1回の問診で網羅できなくても、すべての健康問題を解決できないとしても、焦る必要はありません。これらの項目はさまざまな医療職の方でも情報収集が可能で、医師よりも聞きやすい、聞きなれていることも多いのではないでしょうか。例えば看護師の方に失禁に関して聞いていただくなど、ぜひチームで役割分担、情報共有してみてください。患者の日々の生活が鮮明に想像できるようになります。本人から情報を得られないときは?高齢者の診療においては、患者本人から情報が得られない状況によく遭遇します。その際は、身体診察から情報を得る、年齢・性別といった疫学的視点から頻度の高い症状・徴候を推測してみましょう。これは老年症候群を知っておくことにほかなりません! 医師で在宅医療に携わるサロンメンバーは、患者本人から情報が得られないときには「●歳をすぎたら、突然具合が悪くなって救急車に乗ることがあるかもしれません。そうなったときにすぐに対処できるように、子どもさんにお薬や治療のことを知ってもらっているんですよ」と声掛けをして、家族の同席を促すそうです。身内がいない方であれば地域包括支援センターとの連携を促すなど、どんな形であっても第3者の目を入れることがポイントです。この声掛けには老年医学で大切にしている、高齢者へのかかわり方のコツが詰まっています。1つめはノーマライゼーション。「●歳を過ぎたら皆さんそうしていますよ」と患者と同年代の人の多くがそうしていると伝えると心理的ハードルが下がります。2つめは「救急車に乗るかもしれない」という言い方で、予後予測を共有していること。患者と予後予測を共有するのは非常に重要ですが、受け入れがたい方が多い話題でもあります。このケースは今すぐに起こることではないが起こってもおかしくない話なので、患者が恐れを持ちづらいのがポイントです。そして最後に、「子どもさんに知ってもらっているんですよ」という締め方。どうしますか?と患者に選択させるのではなく、医療者としてのお勧めをデフォルトで提示すること。これで患者の意思決定ストレスを減らしています。いずれも患者に恥ずかしさや恐怖を与えない配慮が素晴らしいです。これらは高齢者にかかわるときあらゆる場面で役に立ちます。DEEP-INとともにぜひ診療で使ってみてください!参考1)多焦点レンズの使用は遠近感や周囲視野の視力を低下させ、転倒のリスク上昇と関連するといわれている。Lord SR,et al. J Am Geriatr Soc. 2002 Nov;50(11):1760-1766.

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オンライン特定保健指導、減量効果は対面に劣らない

 2020年度に特定保健指導を受けた人のデータを用いて、オンライン面接と対面面接の効果を比較する研究が行われた。その結果、翌年までのBMI変化量に関して、オンライン面接は対面面接に劣らないことが明らかとなり、特定保健指導にオンライン面接を活用することの有用性が示唆された。帝京大学大学院公衆衛生学研究科の金森悟氏、獨協医科大学研究連携・支援センターの春山康夫氏らによる研究であり、「Journal of Occupational Health」に5月10日掲載された。 特定健康診査(特定健診)・特定保健指導は、40~74歳の人を対象に、メタボリックシンドロームの予防や解消を目的として実施される。新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、オンラインで特定保健指導を行う機会が増えたが、特定保健指導後の体重減量効果について、オンライン面接と対面面接で差があるのかどうかは分かっていなかった。 そこで著者らは、デパート健康保険組合に加入する被保険者の特定健診・特定保健指導データを用いた縦断研究を行った。対象者は、2020年度(2020年4月~2021年3月)にオンライン面接または対面面接による特定保健指導を受け、次年度に特定健診を受けた人1,431人(前年度の初回面接から90日以内の人は除外)とした。特定保健指導は保健師または管理栄養士が行い、動機付け支援の対象者には30分の初回面接、積極的支援の対象者には30分の初回面接後、継続して1、2、3カ月後に20分間の電話面接を行った。 オンライン面接を受けた人は455人(平均年齢49.9歳、男性47.0%)、対面面接を受けた人は976人(同51.1歳、同50.3%)だった。BMIは、オンライン面接群ではベースライン時の27.68から次年度の特定健診時は27.48に低下し、対面面接群では27.61から27.42に低下していた。 BMIの変化を目的変数、面接方法を説明変数とし、傾向スコアを用いた逆確率重み付け推定法で統計学的に解析した結果、オンライン面接は対面面接と比較して劣っていないことが明らかとなった。具体的には、BMIの変化量の差は-0.014(95%信頼区間:-0.136~0.129)で有意差はなく(P=0.847)、この信頼区間の上限は、事前に検討した非劣性マージン(対面面接と比べてBMIの低下量が劣っていないと許容できる上限)の0.175を下回っていた。 以上から著者らは、「特定保健指導において、オンライン面接でも減量効果は変わらないことが示唆されたことから、オンライン面接の活用可能性を広げることができると考えられる」と述べている。また、時間やアクセスの制約を減らすことができるため、オンライン面接を積極的に利用することで、特定保健指導の実施率が高まる可能性があることを付け加えている。

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DPP-4阻害薬と良い関係の食材があります(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者医師なかなか血糖が下がらないんですよね。(DPP-4阻害薬服用者からの相談)それなら、いい方法がありますよ! この薬(DPP-4阻害薬)は、青魚をよく食べている人に効果が高いみたいです。患者 えっ、そうなんですか! 最近、お肉ばかり食べていました。どのくらい食べたらいいですか?医師 そうですね、たとえばサバ缶(約200g)なら、半分の量を週に3回くらいからスタートしてみてはいかがでしょう?患者 なるほど。焼いたり、揚げたりしてもいいですか?画 いわみせいじ医師 焼くと2割、揚げると5割くらい良質な油(EPA[エイコサペンタエン酸]やDHA[ドコサヘキサエン酸]など)が失われるので、お刺身や蒸し料理がお勧めです。患者 なるほど、わかりました。さっそく買って帰ります!(うれしそうな顔)ポイント青魚を勧める際は、1回に食べる量(約90g)、頻度(週3回以上)、調理法(生>蒸す>焼く>揚げる)などについて補足しましょう。Copyright© 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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病気が潜む「尿の泡立ち」を理解

~身体のサインを見逃さないで!~尿の“泡立ち”って実際にどれくらい?正常な尿白い泡が消えにくい状態泡自体が黄色の状態※ほんの少しだけ泡がある場合もある排尿時の白い泡が消えない場合、腎臓にある糸球体の異常により蛋白がもれる「蛋白尿」や糖が排出される「尿糖」の可能性があります。一見、血尿と間違いやすい茶色っぽい尿の場合、黄色い泡があれば肝機能の異常を示す「ビリルビン尿」の可能性が高いでしょう。尿の性状を見る際には、泡立ちのほかに 「色」「にごり」「匂い」「尿量」「トイレ回数」「尿漏れの有無」「排尿時の痛み」「腹部や背中の痛み」なども確認しましょう。また、尿の色や性状の異常が3~4日続いた場合は、泌尿器科を受診しましょう。出典:高橋 悟氏,高野 秀樹(監修). 主婦の友社. 2019. 尿の健康手帖監修:高橋 悟氏(日本大学医学部泌尿器科学系 主任教授)、菅野 希氏(日本大学医学部附属板橋病院 臨床検査部尿検査室)写真:ケアネット撮影Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第101回 桂ざこばさん逝去、喘息とCOPDのオーバーラップの治療は

エイコ呼吸器内科領域で「エイコ」と呼ばれる病態があります。人の名前ではなく、「ACO(asthma and COPD overlap)」のことを指します。桂ざこばさんが、この病態に罹患しておられ、先日逝去されたと報道されました。ACOの患者さんは、呼吸器内科以外では診療されていないかもしれませんが、調べると結構多い病態です。ACOは、喘息になりやすい2型炎症の素因に加えて、喫煙者に多いCOPDが加わることで、1秒量・1秒率がガクンと下がる病態です。典型的には「成人持ち越し喘息・アトピー素因がある喫煙者」という患者像になります。喘息であるにもかかわらず、胸部CTにおいて気腫肺を確認することでも疑うことが可能です。日本と海外の齟齬日本呼吸器学会では、ACOの日本語表記を「喘息とCOPDのオーバーラップ」として、2018年と2023年に診断と治療の手引きを刊行しています1)。しかしながら、単一疾患概念(single disease entity)として、実は議論の余地があります。喘息の国際ガイドラインGINA20242)では、「基本的に喘息は喘息として対応し、COPDはCOPDとして対応する」というsingle disease entityとしての確立には否定的です。同様に、COPDの国際ガイドラインGOLD20243)においても、「もはやACOという表記は行わない」と明記されています。ですので、国際的にもACOという病態は「喘息とCOPDの足し算」と認識されており、この病名自体はもしかして消えゆく運命にあるのかもしれません。とはいえ、軽視してよいかというとそういうわけではなく。あくまで学術的な定義は不要ということであって、2型糖尿病+肥満、高血圧症+慢性腎臓病などのように、合併した場合には警戒度を上げて対応すべきです。吸入薬はどれを選択するか?ACOの治療は、喘息の吸入薬とCOPDの吸入薬で同時に治療することが肝要になります。重症の場合は、吸入ステロイド(ICS)/吸入長時間作用性β2刺激薬(LABA)/吸入長時間作用性抗コリン薬(LAMA)合剤のトリプル吸入療法が適用され、それに満たない場合には喘息主体の場合ICS/LABA合剤、COPD主体の場合ICS+LAMAが選択されます。ただ、ICS/LAMAという合剤が存在しないため、COPD寄りのACOではICS+LAMAで両者を分けて処方することがガイドライン上想定されています。しかしながら、吸入薬とは服薬アドヒアランスが高いこと前提にある世界です。そのため、ICSとLAMAを別々に処方することは実臨床ではほぼなく、ICS/LABAで押すか、ICS/LABA/LAMAのトリプル吸入製剤を処方するかのどちらかになります。どちらの病名も適用して治療に当たるため、トリプル吸入製剤についてはどの製剤も保険適用上使用可能となります(表1)。画像を拡大する表1. トリプル吸入製剤参考文献・参考サイト1)喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と治療の手引き第2版作成委員会. 喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と治療の手引き第2版. 2023年.2)2024 GINA Main Report Global Strategy for Asthma Management and Prevention.3)Global Strategy for Prevention, Diagnosis and Management of COPD: 2024 Report.

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TAVRデバイスの完成度は高く短期成績はTAVR>SAVR、しかし長期成績と2次介入リスクの評価が必要(解説:伊藤敏明氏)

 論文サマリーはすでに過去の解説があるため簡潔にまとめる。 今回のRCT1)はドイツの38施設共同で行われた。生体弁適応となる65歳以上の有症状大動脈弁狭窄症(AS)、STSスコア4%未満のlowまたはintermediateリスク患者1,414例、平均年齢74±4歳がTAVRまたはSAVRに1:1で無作為割り付けされた。二尖弁、有意な冠動脈病変、先行心臓手術歴のある患者は除外され、TAVRの97.3%がtrans femoralで行われた。SAVR群の50.8%が胸骨正中切開で行われ、15.8%にrapid deploy弁が使用され、CABG同時手術率は1.8%であった。 プライマリーエンドポイントとして1年での全死亡およびstrokeの合計が設定され、カプランマイヤー法にてTAVR群5.4%、SAVR群10.0%(HR:0.53、95%信頼区間:0.35~0.79)とTAVRの非劣性が示された。 TAVR vs.SAVRの比較に必要な追跡期間と、再介入治療時のリスクの2点につきコメントしたい。 一般的に外科手術はカテーテル治療、放射線、あるいは薬物療法と比較して侵襲性が高いため、そもそも短期成績が劣る治療法である。意外とこの前提が共有されていない。外科手術が仮に優れるとしても、一定以上の期間後に、他療法との予後が交差して利点が現れてくる治療なのである。その期間は、疾患あるいは比較対象となる治療法により異なる。循環器領域での一例として、多枝病変患者に対するPCI vs.CABG比較2)では生命予後の交差に約1年を要し、2年以降差は開いていった。2021 ACC/AHAガイドラインでは、糖尿病合併多枝病変に対してはCABGがClass I推奨され、手術ハイリスクの場合に限りPCIがIIa推奨となっている。 今回のスタディは二尖弁の除外、再手術の除外、CABG同時手術率が低く、TAVRの97.3%がTFで行われ、SAVRの半分が胸骨部分切開または肋間開胸で行われた。対象患者の均質性が高く手技がアップデートされている点で、より現実的な比較と思われる。1年の短期成績は従来の報告と同じ結果であり、これ自体は手術とカテーテル治療の特性の差を反映しているにすぎず、驚くに値しない。TAVRデバイスの完成度が十分高い今日、おそらく今後どのような患者群を対象にスタディが行われても短期ではTAVR>SAVRとなるに違いない。ではTAVRとSAVRの予後の交差は果たして起きるのか、起きるとすれば何年後であるのか? これには、先行する7つのRCT(PARTNER 1A、PARTNER 2A、PARTNER 3、NOTION、US CoreValve High Risk、SURTAVI、EVOLUT Low-risk trial)のメタ解析3)が参考になり、2年で予後は交差し、以後SAVRが有利となるとされている。主にPARTNERシリーズでの予後の交差が影響していると思われる。本RCT1)は5年までの追跡がデザインされており続報が待たれる。 次に、再介入の必要が生じうる年齢層における生体弁(TAVR、SAVR含め)選択においては、初回弁の中へのカテーテル弁植え込み(Valve in valve)、または再SAVRへの適合性も考慮されるべきである。大阪大学におけるTAVR後造影CTを用いた研究4)では、SAPIEN3後の48%、Evolut PRO留置後の71%がsimulation上Valve in valve不適合と報告されている。 現在、すでにACC/AHAガイドラインでは65~80歳の生体弁適応ASにおいてTAVRもSAVRと同等のClass I推奨されており、米国の都市部では多くがTAVRを選択し、さらにこのガイドラインすら超えて通常機械弁が選択されるべき若年者までTAVRを選択しているという。これらの患者には早晩2次、3次介入が必要となり、通常倫理的に行うことができない「試験」の結果がリアルワールドから報告されるはずである。TAVR後の2次介入はSAVR、TAVRとも容易とはいえない現在、初回治療選択には個別の解剖学的条件など踏まえ、慎重な判断が求められる。

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塩分摂取のタイミングが悪いと熱中症のリスクが上昇

 塩分の摂取は熱中症の予防に重要である。しかし、日本の消防士を対象とした新たな研究の結果、不適切なタイミングで塩分を摂取することにより、熱中症のリスクが高まる可能性のあることが明らかとなった。これは福島県立医科大学衛生学・予防医学講座の各務竹康氏らによる研究の結果であり、「PLOS ONE」に1月2日掲載された。 地球温暖化や気候変動により、熱中症のリスクは高まりつつある。特に労働災害の対策は重要であり、厚生労働省は職場における熱中症予防対策を徹底するために毎年キャンペーンを実施しているが、熱中症による死亡者数は過去10年間、減少していない。塩分摂取は熱中症のリスクを下げることが報告されているが、塩分摂取のタイミングが及ぼす影響についてはこれまで明らかになっていない。 そこで著者らの研究グループは、福島県の消防署で24時間勤務を行う20歳以上の男性消防士28人(平均年齢31.0±7.7歳、平均BMI 25.0±3.1kg/m2)を対象として、塩分摂取のタイミングと熱中症の関連を検討する研究を行った。熱中症のリスクを高める高血圧や糖尿病の既往歴のある人は対象者から除外した。 対象者は2021年7月~9月の間に屋外訓練を行った。訓練中、水および市販の塩分タブレット(塩分量0.108g)を自由に摂取し、摂取量とタイミングを記録した。訓練前後に体重測定を行った。その他、質問紙にて、熱中症の自覚症状(手足の筋肉痛、筋けいれん、強い口渇、尿量減少、頭痛など)、睡眠、飲酒量などを評価した。 延べ訓練日数250日間に、熱中症症状は28件発生した。多く見られた症状の発生数は、1.5%以上の体重減少が10件、強い口喝が9件、めまいが8件、不快感が7件、頭痛が5件、手足の筋肉痛が2件だった。塩分摂取量の中央値(四分位範囲)は12.6(10.2~14.7)g/日だったが、塩分摂取量は熱中症症状の発生とは関連していなかった。 次に、塩分摂取のタイミングとの関連を分析した結果、塩分摂取なしと比較して、訓練前の塩分摂取(オッズ比5.893、95%信頼区間1.407~24.675)および訓練前+訓練中の塩分摂取(同22.889、4.276~122.516)は、熱中症症状の発生と有意に関連していることが明らかとなった。一方、訓練中のみの塩分摂取や、睡眠、飲酒、水分摂取については、熱中症症状との有意な関連は認められなかった。 以上の研究結果について著者らは、特殊な勤務シフトで日常的に重労働を行う消防士を対象としていることから、一般化には注意を要するとした上で、「塩分摂取の不適切なタイミングが熱中症のリスクを上昇させる可能性がある」と結論。塩分摂取の適切なタイミングや摂取量について、さらなる研究が必要だとしている。

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女性では短時間睡眠がNAFLD発症と関連

 女性では、短時間睡眠が非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease;NAFLD)の危険因子であるとの研究結果が発表された。日本人を対象とする縦断研究として、福島県立医科大学医学部消化器内科学講座の高橋敦史氏らが行った研究であり、「Internal Medicine」に4月23日掲載された。 NAFLDの発症や進行には不健康な生活習慣が関連しており、食習慣や運動などの身体活動に関するエビデンスは確立されている。一方で、睡眠時間とNAFLDのリスクとの関連については研究結果が一致せず、明らかになっていない。 そこで著者らは、2013年5月~2018年12月に福島県で2回以上の健診を受けた日本人を対象に縦断研究を実施。対象者は、1回目の健診時に33~86歳で、NAFLDを発症しておらず、B型肝炎抗原検査とC型肝炎抗体検査が陰性だった1,862人。そのうち男性は533人(年齢中央値65歳)、女性は1,329人(同64歳)だった。ピッツバーグ睡眠質問票を用いて睡眠時間を評価し、6時間未満、6~7時間未満、7~8時間未満、8時間以上に分類した。NAFLDは腹部超音波検査で評価した。 追跡期間の中央値は男性が39カ月、女性が47カ月であり、全体で483人(25.9%)がNAFLDを発症した。そのうち男性は159人(29.8%)、女性は324人(24.4%)だった。 NAFLD未発症のベースライン時点の生活習慣要因について、NAFLD発症者と非発症者で比較すると、男女ともに、NAFLD発症者は現在喫煙者の割合が有意に高かった。男性では、NAFLD発症者の方が、睡眠薬を使用している人、間食習慣のある人、朝食抜きの人の割合が有意に高く、運動習慣のある人の割合が有意に低かった。女性では、早食い人の割合がNAFLD発症者で有意に高かった。 同様に睡眠時間を比較したところ、女性では、NAFLD発症者の方が非発症者と比べて、6時間未満の人の割合が有意に高かった(23.8%対17.8%)。一方、男性では有意な差は見られなかった。女性について睡眠時間ごとに検討すると、6時間未満の人は7~8時間未満の人と比べて、NAFLD発症者の割合が有意に高かった(30.1%対21.2%)。 次に、睡眠時間とNAFLD発症との関連について、影響を及ぼし得る要因(年齢、性別、BMI、血圧、睡眠薬の使用、喫煙・運動・食事などの生活習慣、AST、ALT、γ-GTP、トリグリセライド、LDL-C、HDL-C、尿酸、HbA1c)を統計学的に調整した上で、Cox比例ハザードモデルを用いて解析した。その結果、睡眠時間が7~8時間未満の女性と比較して、6時間未満の女性におけるNAFLD発症のハザード比は1.55(95%信頼区間1.09~2.20)だった。すなわち女性では、短時間睡眠がNAFLDの独立した危険因子であることが明らかとなった。 著者らは今回の結果に関連して、女性の方が男性と比べて不眠症の有病率が高いことを挙げ、「将来のNAFLDの発症を予防するためには、十分な睡眠時間が必要だ」と述べている。また、糖尿病や肥満などの代謝異常を持つ脂肪肝として、MASLD(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)の概念が提唱されていることに言及し、さらなる研究の必要性を指摘している。

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病院受診すべき尿の色

あなたの尿はどんな色?今すぐ病院へ!状態特徴疑う病気要注意正常茶~オレンジ色トマトジュース様の赤色やや赤みカフェオレ色やや白色濁った黄色ほぼ無色透明薄黄色~黄色〇―◎◎〇〇ーー色にごり早めに受診を胆汁が出ている状態。泡も黄色ければ「ビリルビン尿」「血尿」*「膿尿」**または「血尿」*感染症により炎症が出ている状態「膿尿」**尿酸が尿中に出ている状態「希釈尿」健康な状態胆汁は便への排泄:〇尿への排泄:×出血部位や出血量で濃淡が変化糖尿病性腎症などで腎臓の細胞が傷付いている可能性抗菌薬治療が必要リン酸塩炭酸塩シュウ酸塩などの結晶が出ることもある血中の尿酸が増えると生じる原因は水分、アルコールの多量摂取摂取水分量食事内容服用薬などで濃淡差脱水状態は「濃縮尿」匂いは弱い尿路感染症結石糖尿病ー痛風尿崩症肝機能障害結石胆道閉塞膀胱がん尿路感染症による出血尿路感染症尿路結石*血尿とは、尿に血液(赤血球)が混ざっている状態の尿のこと。**膿尿とは、尿に白血球が出ている状態の尿のこと。白血球の量で、にごり度合いが変化する。尿の色を見る場合、毎朝一番の早朝尿をチェックしましょう。最も色が濃くなるので変化を見つけやすいです。出典:高橋 悟氏,高野 秀樹(監修). 主婦の友社. 2019. 尿の健康手帖監修:高橋 悟氏(日本大学医学部泌尿器科学系 主任教授)、菅野 希氏(日本大学医学部附属板橋病院 臨床検査部尿検査室)写真:ケアネット撮影Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第217回 迫る日医会長選、「もう日医の力は昔ほどではない」と元自民党医系議員、松本会長は再選後も“茨の道”か?

日医松本会長が2期目を目指し、再び会長選に出馬こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思いますこの週末は久しぶりに昔の山仲間と奥秩父に行って来ました。コースは山梨県の広瀬湖から入り雁峠、雁坂峠(日本三大峠の1つです)、テント泊してそのまま下山というマイナーなコース。有名な山が1つもないので、とても静かな山行を楽しめました(夜は鹿の鳴き声と大雨で眠れませんでしたが…)。個人的には雁峠、雁坂峠間を歩いたことで、雲取山から甲武信岳を経て十文字峠に至る奥多摩、奥秩父の長大な縦走路の赤線(既歩行区間)がやっとつながりました。だからなんだ、と言われそうですが、いつの日か一気に奥多摩駅から十文字峠まで大縦走をしてみたいものです。さて、今回は今週末に迫った日本医師会の会長選挙について書いてみたいと思います。1期を務め上げた松本 吉郎会長が2期目を目指し、再び会長選に出馬しました。2024年の診療報酬改定については、どうにか本体プラス改定を勝ち取ったことで、松本会長は「医療界が一体・一丸となって対応した結果と考えている。(中略)まずは素直に評価をさせて頂く」と自画自賛しました。しかし、日医の会員(とくに開業医)たちに大きな恩恵をもたらすものではなかった、との声がもっぱらです。医療制度のさまざまな改革について財務省の声が一層高まる中、再選された後も相当な困難が待ち受けていそうです。「松本氏vs.松原氏」という会長選は前回選挙と同じ構図6月1日、日本医師会は次期役員選挙の立候補届け出を締め切りました。会長選挙は現職の松本氏(69)と元副会長の松原 謙二氏(67)が届け出ました。松本氏は埼玉県医師会所属、山口県出身で浜松医大卒の皮膚科医。一方の松原氏は、大阪府医師会所属、広島県出身で広島大医学部卒の内科医です。思い起こせば、2年前、2022年の日医会長選では、5月に松原副会長(当時)が、長年日医が反対してきたリフィル処方箋導入を診療報酬改定で“飲ん”でしまった中川 俊男会長(当時)を批判する文書を送るなど、内紛が起こり、その後「ポスト中川」の会長候補を擁立する動きが活発化しました。コロナ禍の真っ只中に会長を務めた中川氏は、国民に外出自粛を呼びかける一方で、自身は政治資金パーティーを開催したり、銀座で女性と会食したことがメディアで報じられたりなど、世間の評判は芳しくありませんでした。さらに、日医内でのワンマンぶりも災いして次第に孤立し、最終的に出馬断念を余儀なくされました。「ポスト中川」として多くの都道府県医師会の支持を集めた松本氏が、松原氏と会長選を争い、結果、圧倒的な票数を獲得(代議員375票のうち310票)し、新会長に選ばれました。というわけで、今年の「松本氏vs.松原氏」という会長選は、前回選挙と同じ構図です。今週末、6月22日に開かれる定例代議員会で投開票が行われ、新会長と新キャビネットが決まります。「なかなか日医からの提案が出せない、あるいは出しにくいものもある」と松本会長現職の松本氏ですが、6月2日に都内で選挙対策本部事務所開きを行いました。メディファクスやエムスリーなどの報道によれば、松本氏は「なかなか日医からの提案が出せない、あるいは出しにくいものもある」と本音を述べつつ、「次の2年間は本当に大事な2年間だと思っている」と決意表明。また、松本氏を推薦した東京都医師会の尾崎 治夫会長は、「これからの2年間は勝負の年になる。松本氏の真価が問われる。日医を『攻めの姿勢』に変えていってもらいたい」と激励したとのことです。一方の松原氏ですが、6月3日付のメディファクスによれば、同紙の取材に対し「国家統制による英国式の包括制家庭医制度の入り口になる特定疾患療養管理料の改悪に反対する」と説明、2024年度診療報酬改定で対象外となった3疾患を「元に戻すかどうか」を会長選の争点に挙げています。松原氏の言う「特定疾患療養管理料の改悪」とは、「第201回 2024年診療報酬改定の内容決まる(前編) 武見厚労大臣の言う『メリハリ』ある改定とは?」でも書いた「生活習慣病の管理」に関する診療報酬の見直しです。対象疾患から糖尿病と脂質異常症、高血圧が除外され、脂質異常症や高血圧症、糖尿病を主病とする患者への総合的な治療管理を評価する「生活習慣病管理料」と「外来管理加算」の併算定を認めないなどの厳格化が図られました。松原氏は前回会長選では「リフィル処方箋導入」を批判し、今回は「特定疾患療養管理料見直し」を批判しています。日医執行部にとってはなかなか痛いところを突いていると言えるでしょう。2024年改定、内科系の診療所に大きなダメージ6月3日付の東京新聞は「自民の有力スポンサー日本医師会『地元政治家との関係強化を』会員医師らに『政治』のススメ」の記事の中で、3月末に開かれた日医の代議員会での「みな内科系の診療所は怒り心頭に発しているという感じです」というある代議員の質疑応答での発言や、東京都内の開業医の「プラス改定の大部分は若手医師や医療従事者らの賃上げに充てることになっている。逆に生活習慣病の管理料や処方箋料などの適正化(引き下げ)として盛り込まれたマイナス0.25%(1,222億円)は大部分が診療所向けだ」という不満のコメントを紹介、今改定の開業医へのダメージがいかに大きかったかについて報じています。日医の“力”そのものが確実に低下してきている前回リフィル処方導入を余儀なくされ、今回は特定疾患療養管理料の見直しを受け入れたことや、今回の改定の議論における「診療所経営は儲かっている」という財務省調査データの“暴露”(第190回 財務省調査に続き医療経済実態調査も診療所黒字の結果に、病院・診療所の『分断』をここまで広げてしまった張本人とは?)、そして地域別診療報酬実現に向けた財務省一連のアピールなどを見ていると、日医の“力”(政治的影響力)そのものが確実に低下してきていると感じます。最近、ある元自民党医系議員を取材したばかり知人の記者と飲んだのですが、こんな話をしていました。「その元議員はあるドラスティックな政策に関わっており、『その政策、日医が猛反対しそうですね』と聞いたんだ。すると、元議員は『そうなんだけど、正直言ってもう日医の力は昔ほどではない。反対を表明することはできても、どこまで心底反対し切れるか』と言っていたよ」。2024年改定を見る限り「医政活動の強化」の効果は見えずそうした“力”の低下を自覚している日医は、昨年6月、常任理事を4人増員、医政活動の強化に乗り出しました(「第165回 NP制度化、かかりつけ医機能認定制……、開業医常任理事を4人増員し、とにかく反対し続ける日医に未来はあるのか?」参照)。医師会員を増やし、自民党員を増やし、自民党議員とのつながりを強め、選挙における日医の力(集票力)を復活させるための常任理事増員でした。先の東京新聞の記事でも、今年の代議員会で長島 公之常任理事が代議員らに、「都道府県医師会の先生方には今後の日本の医療のために、医師会の組織力強化、日ごろからの地元選出国会議員との関係強化、何より来年の参議院選挙への協力を、ぜひともよろしくお願い申し上げます」と医政活動を強めるよう呼び掛けたと報じています。2024年改定の内容等を見る限り、「医政活動の強化」の効果は目に見える形では表れていません。長島常任理事の言葉からもその苦戦振りが伝わってきます。尾崎・東京都医師会会長が「これからの2年間は勝負の年」と語ったように、かかりつけ医機能の制度整備、次期地域医療構想、医師偏在是正など、今後10年、20年の日本の医療の方向性を決める政策の検討が今後2年間に目白押しです。そうした重要な政策決定の過程で、日医は果たして今までのような強烈なプレゼンスを発揮し続けられるでしょうか。松本会長の再選は濃厚ですが、その先に待っているのは、政治的影響力が低下する中、財務省が提案してくるさまざまな政策に翻弄され続ける、という“茨の道”かもしれません。

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適正年収、実年収プラス200万円が妥当!?/医師1,000人アンケート

 ケアネットでは、2月20日(火)に会員医師1,004人を対象に、インターネットによる「年収に関するアンケート」を行った。その中で、自身の業務内容や仕事量に見合った適正年収について尋ねたところ、最も回答数が多かったのは2,000~2,500万円(15.2%)、次いで3,000万円以上(12.7%)、1,800~2,000万円(12.6%)、1,400~1,600万円(10.9%)と続いた。また、実際の年収が600~1,800万円の範囲において、各年収層の半数以上が実際の年収より高い金額を希望しており、1,600~1,800円層を除く600~1,600万円の層では実年収に200万円程度上乗せした金額を希望していることが明らかになった。年代別の適正年収 各年代が適正と考える年収は、35歳以下は1,200~1,400万円、それ以降の年代はいずれも2,000~2,500万円との回答数が多かった。これをさらに男女別で見ると男性の場合は上記の全体の回答に合致していた。一方で女性の場合、35歳以下では800~1,000万円と男性より低い金額を回答したのに対し、36~55歳では1,200~1,400万円を境に適正年収が二極化、56歳以上では1,600万円未満の回答者が半数以上を占めていた。20床未満3,000万、20床以上2,000~2,500万円が最多 続いて、適正と考える年収を勤務する病床数が20床未満と20床以上で区分した結果では、20床未満の回答者が3,000万円以上(22%)、2,000~2,500万円(10%)、1,400~1,600万円(10%)と続いた。これに対し20床以上では、2,000~2,500万円(17%)、1,800~2,000万円(15%)、3,000万円以上(10%)、1,600~1,800万円(10%)となった。なお、3,000万円以上を最も希望したのは20床以上に勤務する46~55歳(43%)であった。この年代は医局員の指導的立場でありながら所属施設の管理を任されるなど、責任が重くなる時期でもある。その責任に見合う報酬などを求めているのではないだろうか。診療科別の適正年収 以下には、中央値より高い適正年収(1,800万円以上)を希望した上位3診療科を挙げる。・1,800~2,000万円:血液内科(33%)、産婦人科(21%)、泌尿器科(20%)・2,000~2,500万円:血液内科(33%)、循環器内科(25%)、消化器外科(24%)・2,500~3,000万円:消化器外科(20%)、心臓血管外科(18%)、脳神経外科(16%)、循環器内科(16%)・3,000万円以上:腎臓内科(33%)、耳鼻咽喉科(24%)、消化器外科(20%) そのほか、年代ごとの男女別、病床数別、勤務先別などの詳細な年収分布については、以下のページで結果を発表している。医師の年収に関するアンケート2024【第4回】適正年収

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セマグルチドの減量効果を遺伝子検査で予測

 GLP-1受容体作動薬のセマグルチドを使い始めて数週間で減量に成功した人を見て、同薬による治療を開始したあなた。ところが体重計の針は期待したほど下がらない。なぜ? 米国消化器病週間(DDW2024、5月18~21日、ワシントン)で発表された新たな研究によると、その違いには遺伝子が関与しているようだ。 過去にも、セマグルチドによって体重が20%以上減る人がいる一方で、約7人に1人は1年以上使用しても5%以上は減らないという研究結果が報告されており、セマグルチドの減量効果には個人差があることが知られている。その個人差を、遺伝子検査によって事前に知ることができるようになるかもしれない。 この検査は、米メイヨー・クリニックの研究者らによって開発され、昨年その研究者らが設立したPhenomix Sciences社が、「MyPhenome」という名称でライセンスを取得した。CNNの報道によると、価格は350ドルで医家向けに提供される。 主任研究者のMaria Daniela Hurtado Andrade氏は、同社発のリリースの中で、「われわれのデータは、肥満者は個々に異なる遺伝的・生物学的背景を持っていて、肥満の改善には個別化された治療が重要である可能性を示している」と述べている。また、研究グループの一員である同クリニックのAndres Acosta氏は、「この遺伝子検査によって、体重を5%以上減らせられるか否かを95%の精度で予測可能だ」と、CNNの取材に対して語っている。同氏は、「セマグルチドの使用前に治療効果を知ることができれば、時間とコストを節約できる可能性がある。同薬は安価とは言えず、必ずしも保険でカバーされるとは限らないため、自己負担額が高額になる場合もある」とも述べている。 開発された新たな検査は、GLP-1のシグナル伝達経路に関連する遺伝子の変異を調べて、セマグルチドによる空腹感への影響を予測する。この検査の結果が陽性の人は、セマグルチドにシグナルが反応するのに対して、陰性の人は反応が弱く、空腹感が抑制されにくいという。 同クリニックで減量治療を受けた84人の血液または唾液検体を用いた小規模な研究から、この検査が陽性だった人はセマグルチド使用開始1年後に、平均19.5%の減量を達成していたことが分かった。これは、陰性だった人の減量幅である10%のほぼ2倍に相当する。 なお、重要なこととして、この新しい研究の結果は査読システムのある医学誌に未発表であるため、予備的なものと見なす必要がある。Acosta氏は、「薬剤と同じように、有用性を検討するためのゴールドスタンダードである、プラセボ対照無作為化二重盲検試験で検証する必要がある。ただ、われわれが既に行った研究も、減量治療が行われた時点では陽性か陰性か分かっていなかったため、実質的に盲検化はなされていた」としている。

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「高血圧の基準が変わった」と誤解している患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第46回

■外来NGワード「ずっと変わっていません」(頭から行動を否定)「そんなことより、ちゃんと薬を飲んでおきなさい」(話題が違う方向に)「もっと食事に気を付けなさい」(あいまいな食事指導)■解説現代は情報社会で、健康に関する情報が氾濫しています。YouTubeやFacebookやX(旧Twitter)などのSNS(Social networking service)などから健康に関する情報を得ている人も増えてきました。ところが、正しい情報源にたどりつき(検索力)、情報を分析し(分析力)、正しいかどうかを見極めて(批判的吟味力)、自分の目的に活用できる(活用力)という「情報リテラシー」が高い人は必ずしも多くはありません。情報リテラシーが低い人は、間違った情報をあまり吟味せずに、そのまま信じてしまいます。2024年4月から「高血圧の基準が変わった」とする情報を発信している人の元の情報源は高血圧学会のガイドラインではなく、2024年4月から第4期を迎える特定健診の受診勧奨値の記載のようです。受診勧奨判定値への対応が2つに分かれ、血圧が160/100 mmHg以上なら「この健診結果を持って、至急かかりつけの医療機関を受診してください」、140~159/90~99 mmHgなら「生活習慣を改善する努力をした上で、数値が改善しないなら医療機関の受診を」となっています。どうも前者だけを取り上げて「高血圧の基準が変わった」と誤った発信をしているようです。それに対して、日本高血圧学会は「特定健診における受診勧奨判定値についての正しいご理解を」とした声明を出しています。情報を収集する際は、できるだけ信頼できる媒体(学会や公共放送など)、複数の情報を利用するように患者さんに伝えておくとよいでしょう。そして、検索する際には「学会」「公式」などの検索用語を付け加えておくと良いことを説明しておきます。■患者さんとの会話でロールプレイ患者高血圧の基準が4月より変わったそうですね。医師えっ、そんな話は初めてですが…どこで聞かれましたか?(情報源を探る)患者YouTubeでそう言っていました。上が160を超えたら、病院で治療が必要とか…それなら、私は上の血圧が160を超えていないのでもう薬を飲まなくても良いのでは?医師なるほど。…それは、高血圧学会のガイドラインではなくて、健診を受けた人への説明文の変更ですね。誤解されている人が多いんですよ。(誤解している人が多いことを指摘し話す)患者えっ、そうなんですか。誤解って、どういうことですか?(興味津々)医師確かに4月から健診で上の血圧が160を超えていたら、「すぐに医療機関の受診を」という説明文になりました。患者「すぐに医療機関の受診を」ですか…。医師そうなんです。それに対して、上の血圧が140~159mmHgなら「生活習慣を改善する努力をした上で、数値が改善しないなら医療機関の受診を」ということになっています。患者なるほど。生活習慣を改善して、血圧の値が良くならなかったら、医療機関を受診する必要があるということですね。医師その通りです。今、血圧の薬を飲んでいる人が止める基準が決まったわけではありません。ただし、生活習慣を改善すれば、血圧の薬を減らすことはできますよ。患者どんなことに気を付けたらいいですか?医師基本は減塩ですが、身体を動かすこと(運動)、体重を減らすこと(減量)、お酒を減らすこと(節酒)、そして野菜をたっぷり食べて、果物はこぶし1個分くらいを食べるなどがポイントになります。患者なるほど。もう1度、初心に戻って減塩と運動に取り組んでみます。医師それはいいですね。応援しています。患者頑張って、やってみます。(嬉しそうな顔)■医師へのお勧めの言葉「その情報源はどこですか?」「検索する際には「学会」とか「公式」とかの用語を入れておくといいですよ!」 1)標準的な健診・保健指導プログラム[令和6年度版](厚生労働省)2)特定健診における受診勧奨判定値についての正しいご理解を(日本高血圧学会)3)Mancia G, et al. J Hypertens. 2023;41:1874-2071.

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英語で「代診をしています」は?【1分★医療英語】第135回

第135回 英語で「代診をしています」は?《例文1》Good morning, I'm Dr. Smith, filling in for Dr. Yamada while he's away at a conference.(おはようございます、スミスと申します。山田医師が会議で不在の間、代診をしています)《例文2》Your usual doctor is on vacation, so Dr. Jones will be filling in today.(いつもの先生は休暇中ですので、今日はジョーンズ医師が代診を務めます)《解説》“I'm filling in for XXX.”は、別の医師が予定されていた担当医師に代わって診察を行うときに使うフレーズです。この“fill in”という表現は、“Please fill in the blank.”といったように、(空欄を)埋めるという意味合いで用いられます。それに“for”という前置詞と人の名前を続ければ、「空欄」ではなく「担当医師が休みで空いてしまった枠」を埋める、すなわち「代診する」という意味になり、臨床現場のコミュニケーションで頻繁に用いられています。このほかにも、“I’m covering for Dr. Yamada.”や“I’m seeing you on behalf of Dr. Yamada.”という表現も(少しニュアンスの違いはあるものの)同様の場面で「代診する」という意味合いで用いることが可能です。担当医師の突然の休養などで、代診を伝えなければいけない場面もあることでしょう。そんなとき、このフレーズを覚えておくとスムーズに伝えられます。講師紹介

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CKD-MBD治療の新たな方向性が議論/日本透析医学会

 日本透析医学会による『慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の診療ガイドライン』の改訂に向けたポイントについて、2024年6月9日、同学会学術集会・総会のシンポジウム「CKD-MBDガイドライン 新時代」にて発表があった。 講演冒頭に濱野 高行氏(名古屋市立大学病院 腎臓内科・人工透析部)が改訂方針について、「CKD-MBDの個別化医療を目指して、さまざまなデータを解析して検討を積み重ねてきた。新しいガイドラインでは、患者の背景に合わせた診療の実現へつなげるためのユーザーフレンドリーな内容になるよう努めていきたい」とコメント。続いて、6人の医師が今後の改訂のポイントに関して解説した。保存期CKD-MBDにおけるプラクティスポイントとは 保存期CKD-MBDについて、藤崎 毅一郎氏(飯塚病院 腎臓内科)から低カルシウム血症・高リン血症のプラクティスポイントに関する提案があった。低カルシウム血症では、「まずは補正カルシウム値を確認。その後、低カルシウム血症を誘発する薬剤の確認やintact PTH(iPTH)、リン、マグネシウムを測定し、二次性副甲状腺機能亢進症の確認を行ったうえで、カルシウム製剤または活性型ビタミンD製剤の投与を検討すること」とし、高リン血症に関しても補正カルシウム値の確認を行ったうえで、「低い場合にはカルシウム含有リン吸着薬、正常であれば鉄欠乏の有無を考慮したうえで鉄含有、非含有リン吸着薬の投与を検討すること」とコメントした。最後にガイドラインの改訂に向けて、「実臨床に則したプラクティスポイントの作成を目指して検討を続けていく」と述べた。血清カルシウム、リンの管理目標値の上限は、より厳格な管理へ 血液透析患者における血清カルシウム、リンの管理目標値について、後藤 俊介氏(神戸大学医学部附属病院 腎臓内科 腎・血液浄化センター)から提案があった。理事会へ提出された素案によると、血清カルシウムの下限は8.4mg/dL以上のまま、上限に関しては9.5mg/dL未満、血清リンに関しても下限は3.5mg/dL以上のまま、上限は5.5mg/dL未満が管理目標値として検討されている。同氏は、血清カルシウム、リンの管理について、「カルシミメティクスや骨粗鬆症治療薬によってカルシウムが下がりやすい環境にもあるため、低カルシウム血症には注意すること。血清リンに関しては年齢や栄養状態をよく考慮して検討すること。原疾患が糖尿病、動脈硬化性疾患の既往がある場合には目標値の上限を下げて管理することも検討する必要がある」とコメント。また、「CKD-MBDにそれほど関心がない先生方にとっても、フローチャートなどを使って診療の手助けになるものを示していくことが大切である」と述べた。患者の背景に応じたリン低下薬の選択を 前回のガイドライン以降、多くのリン低下薬が登場し、患者に合わせた薬剤選択の重要性が注目されている。山田 俊輔氏(九州大学病院 腎・高血圧・脳血管内科)からは、患者特性に基づくリン低下薬の選択について提案があった。リン低下薬を選択する際の切り口として、「リン低下だけでなく薬剤による多面的な効果、便秘などの消化器症状、PPIやH2ブロッカーなど胃酸分泌抑制薬による影響、服薬錠数や医療経済など、リン低下薬の特性だけでなく患者背景に合わせて使い分けることが大切である」と改訂に向けたポイントを述べた。プラクティスポイントとして、リン低下薬選択に関するアプローチの仕方を示した「一覧表」の紹介もあった。同氏は一覧表に関して、「基本的には患者と相談してリン低下薬を選択していくことになるが、どうやって患者に合わせて使い分けていくべきか、視覚的にわかりやすいツールがあれば判断しやすいのではないか」とコメントした。PTHの管理・治療の個別化へ向けて 血液透析患者における副甲状腺機能の評価と管理について、駒場 大峰氏(東海大学医学部 腎内分泌代謝内科学)からPTHの管理を中心に提案があった。同氏は、「PTH管理においても治療の個別化が必要である」とし、管理目標値としてiPTH 240pg/mL以下の範囲で症例ごとに個別化すること、とコメントした。具体的には、骨折リスクの高い症例(高齢・女性・低BMI・骨代謝マーカー上昇)では管理目標値を低く設定する、カルシミメティクスを使用する場合にはiPTHの下限値を設けない、活性型ビタミンD製剤を単独で使用する場合は高カルシウム血症を避けるため下限値を60pg/mLとすることなどであった。内科的治療に関しては、PTHが管理目標値より高い場合には、血清カルシウム値や患者背景に基づいて活性型ビタミンD製剤、カルシミメティクスによって管理を検討すること、血清カルシウム値が管理目標値内にあって腫大腺や65歳以上、心血管石灰化、心不全リスク、骨折リスク、高リン血症を有するなど、1つでも該当する場合にはカルシミメティクスの使用や併用をより積極的に考慮することなどを挙げた。また、内科的治療に抵抗する重度の二次性副甲状腺機能亢進症の場合には副甲状腺摘出術の適応となるが、こちらも症例ごとに検討していく必要があると述べた。透析患者における骨折リスクの評価・管理のポイントとは CKD-MBDにおける骨折リスクへの介入について、谷口 正智氏(福岡腎臓内科クリニック)からプラクティスポイントに関する解説があった。評価・管理のポイントとして、「脆弱性骨折の有無や骨密度検査および血清ALP値による骨代謝の評価を行い、骨折リスクが高い場合には、運動、転倒防止、栄養状態の改善、禁煙指導を実施したうえで、カルシミメティクスの投与を優先してPTHを低く管理することが重要である」とコメント。同氏は、それでも骨密度の改善が得られない、または骨代謝マーカーの亢進が認められる場合には、骨粗鬆症治療薬の投与を検討するよう提案した。また、透析・保存期CKD患者に対する骨粗鬆症治療薬の選択に関しては、使用制限や投与における注意点が薬剤別にまとめられた表を作成し、CKD患者においてリスクの高い骨粗鬆症治療薬もあるため、ヒートマップを活用する形で警鐘を鳴らしていくことなども必要であると述べた。腹膜透析におけるCKD-MBDの管理目標値とは 腹膜透析患者におけるMBDについて、長谷川 毅氏(昭和大学 統括研究推進センター研究推進部門/医学部内科学講座腎臓内科学部門)からガイドライン改訂に向けたポイントに関する解説があった。同氏は「リン低下薬に関しては十分なシステマティック・レビュー、メタ解析による報告がないため、血液透析患者での推奨に準拠すること。CKD-MBDの管理目標値に関しては、生命予後の観点から、リン、カルシウムを目標値内でも低めの値、残腎機能保護、血液透析への移行防止のために、リン、PTHを目標値内でも低めの値を目標とすること」と提案。また、プラクティスポイントとして、残腎機能のある症例でカルシミメティクスを使用することでリンの管理が難しくなる可能性があること、腹膜透析液のカルシウム濃度は血清カルシウム値、PTH値をみて選択することを挙げた。

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