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高力価スタチン服用者、急性腎障害による入院リスクが高い/BMJ

 慢性腎障害がみられない患者の場合、高力価スタチン服用者は低力価スタチン服用者に比べ急性腎障害による入院率が有意に高いことが、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学のColin R Dormuth氏らの検討で示された。スタチンの腎臓に対する有害作用の可能性を示唆する研究がいくつかあるが、スタチンによる急性腎障害に関する検討はこれまで行われていなかったという。BMJ誌オンライン版2013年3月20日号掲載の報告。高・低力価スタチンの急性腎障害リスクをコホート内症例対照研究で評価 研究グループは、急性腎障害の発現と、高力価および低力価スタチンとの関連についてレトロスペクティブに検討した。9つの地域住民ベースのコホート試験とメタ解析のデータベースを用い、コホート内症例対照デザインに基づいて解析を行った。 対象は、1997年1月1日~2008年4月30日の間に新規にスタチン治療を開始した40歳以上の患者206万7,639例。急性腎障害で入院した個々の患者と背景因子をマッチさせた対照を無作為に選択した。 ≧10mgのロスバスタチン(商品名:クレストール)、≧20mgのアトルバスタチン(同:リピトールほか)、≧40mgのシンバスタチン(同:リポバスほか)を高力価スタチンとし、これら以外を低力価スタチンと定義した。主要評価項目は急性腎障害による入院率であった。120日以内の入院率の差:34%、121~365日:11%、366~730日:15% 206万7,639例のうち慢性腎障害患者は5万9,636例で、残りの200万8,003例には慢性腎障害を認めなかった。スタチン治療開始から120日以内に急性腎障害で入院したのは、慢性腎障害のみられない患者が4,691例、慢性腎障害患者は1,896例であった。 慢性腎障害がみられない患者では、治療開始から120日以内の急性腎障害による入院率が、高力価スタチン服用者のほうが低力価スタチン服用者に比べ34%高かった[率比:1.34、95%信頼区間(CI):1.25~1.43)]。治療開始から121~365日(同:1.11、1.04~1.19)および366~730日(同:1.15、1.09~1.22)の急性腎障害による入院率も、高力価スタチン服用者で有意に高かったが、120日以内に比べるとその差は小さかった。 慢性腎障害患者では、このような差は認められなかった(治療開始から120日以内の率比:1.10、95%CI:0.99~1.23、121~365日:1.08、0.96~1.22、366~730日:1.04、0.92~1.18)。 著者は、「慢性腎障害がみられない場合、高力価スタチン服用者は低力価スタチン服用者に比べ急性腎障害の診断による入院率が高く、この差は特に治療開始初期(120日以内)に大きかった」と結論し、「日常診療で高力価スタチンの使用を考えており、特に低力価スタチンも選択肢となる場合は、このような腎障害のリスクを考慮すべきである」と指摘している。

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退院時診断に基づくERの軽症患者の受診抑制策は効果的なのか?/JAMA

 米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のMaria C. Raven氏らは、非緊急の救急部門(ER)受診を退院時診断で特定できるのか、主訴と退院時診断を比較する検討を行った。米国では増大する医療費削減策として、ERのいわゆる軽症患者の受診を抑制するため、非緊急ER受診が退院診断と関連しているような場合は医療費支払いを拒否または制限するというメディケア施策が、複数の州で制定・実行または検討されているという。本施策については効果的とする一方、たとえば高齢の糖尿病患者で胸痛を訴えた後の逆流性食道炎が退院時診断であったような場合や、医療費支払いの制限を心配した過度の受診抑制が起きるのではないかという懸念も示されている。JAMA誌2013年3月20日号掲載の報告より。退院時診断と主訴を調べ、非緊急ER受診者の主訴等の一致を検証 研究グループは、ER受診時の主訴および診断が、ER受診抑制策での原則としている退院時診断と緊密に一致しているかを検証した。非緊急ER受診者の特定には、ニューヨーク医科大学のERアルゴリズムを共通の指標として用い、同アルゴリズムを2009 NHAMCS(全米病院外来調査)のデータからER受診者のデータを入手して適用し、“プライマリ・ケアで治療可能”であった人を特定した。また、ER受診者を退院時診断で階層化し、その主訴の特定も行った。それらの主訴と非緊急ER受診者との一致を調べ、各主訴群のER経過コース、最終的な状態の傾向、退室時診断を調べた。 主要評価項目は、各患者の人口動態学的特性と臨床的な特色、および非緊急ER訪問と関連した主訴の傾向とした。事前に非緊急と判定された人のうち、1割強は実際には緊急治療を実施 2009 NHAMCSのER受診記録数は、3万4,942件であった。そのうち、退院時診断(および当検討に用いた修正アルゴリズム)に基づきプライマリ・ケアで治療可能と判定されたのは、6.3%(95%CI:5.8~6.7)であった。 しかしながら、それらのうちER受診時の主訴と退院時診断の主訴が同じであったと報告した人は、88.7%(同:88.1~89.4)であった。 また、11.1%(同:9.3~13.0)の人が、ERでのトリアージで即時または緊急治療が必要と特定され、12.5%(同:11.8~14.3)の人が入院が必要であり、そして3.4%(同:2.5~4.3)の人がERから手術室へ即時搬送された。 著者は、「退院時診断においてプライマリ・ケアで治療可能と判断されていた人のうち主訴がER受診時と同じであった人では、相当数が即時の緊急治療や入院を必要とした。主訴とER退室時診断の不一致は、退院時診断が非緊急ER受診者を正確には特定できないことを示す」と結論している。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(72)〕 腹部大動脈瘤の瘤径に応じた適切なサーベイランス間隔は?

この論文は腹部大動脈瘤のサーベイランス18論文を、1万5,471例の患者データを、瘤径はランダム効果モデル、破裂率は比例ハザード回帰を用いて統合解析したものである。 結果は、男性で瘤径3.0㎝では平均1.28㎜/年、5.0cmでは平均3.61mm /年拡大する。女性は4倍破裂率が高く、喫煙者と非糖尿病患者の拡大速度が大きいという文献より、解剖学的構造、性ホルモン、喫煙歴が関与した結果と推察される。男性4.5㎝の破裂率は女性5.5㎝と同等であり、女性の4.5~5.5㎝の自然経過を調べる必要がある。男性で破裂率を1%以下にするには3.0~3.9㎝で36ヵ月毎、4.0~4.4㎝では24ヵ月毎、4.5~5.4㎝では12ヵ月毎の超音波検査で十分であるという結論である。 各国のサーベイランス間隔は、英国が最短で3.0~3.4㎝は12ヵ月毎、4.5~5.4㎝で3ヵ月毎、米国が最長で3.0~3.4㎝は36ヵ月毎、3.5~4.4㎝は12ヵ月毎、4.5~5.4㎝は6ヵ月毎であり、米国より間隔が長くても良いということになる。日本では、最大横径>5cm、拡張速度5mm/6ヵ月、腹痛背部痛の症状、感染性動脈瘤に対して手術を行うことが多い(2011年大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドラインではエビデンスレベルC)。体格を考慮して欧米より0.5cm径が小さい5cmで手術としているがエビデンスはなく、サーベイランス間隔も前出の英国に類似して頻回であるのが現状である。 この研究の強みは、大規模データを1つの解析にまとめた点であるが、解釈上の問題点は破裂がすべて捉えられているか不明な点、また費用と心配によるQOL低下の評価が抜けている点である。今後、性別やリスクに応じた個別サーベイランス間隔の解明が待たれる。

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リスクマネジメントの視点で診る心房細動診療 ~プライマリ・ケア医になって起こった診療のパラダイムシフト~

解説者のブログのご紹介『心房細動な日々』心房細動の2つの側面私は、初期研修医の時代から不整脈や電気生理に慣れ親しみ、十数年にわたり、カテーテルアブレーションも含めた不整脈の専門診療に携わってきました。思うところあって9年前にプライマリ・ケアの世界に身を転じてみて、改めて不整脈、とくに心房細動という疾患の他のcommon diseaseにはない特徴を感じるようになりました。その特徴は大きく分けて2つあると思います。まずひとつは、心房細動は多くのリスク因子を背景に発症する疾患であると同時に、それ自身、脳塞栓の最大のリスク因子であるということです。心房細動は高血圧、甲状腺疾患などさまざまな因子を背景に発症し、発症時には患者さんに動悸などの苦痛を強いる一つの立派な「疾患」です。それと同時に脳塞栓、心不全といった他の心血管イベントの主要因、つまりリスク因子としての側面も持っているのです。心房細動は多くのリスク因子を背景に成り立つと同時に、重大イベントのリスク因子でもあるという二面性を持つ病気なのです。もうひとつの特徴は、心房細動は長期的、段階的に進行し、その間の治療オプションが豊富であるため、患者—医療者に数々の治療法選択に関する意思決定を迫る疾患であるということです。心房細動は平均58歳で発症し、どんな薬物療法を行っても年間5~15%の割合で慢性化する疾患です。この間に発作を抑えるため、レートコントロールあるいはリズムコントロールとしての抗不整脈薬やカテーテルアブレーションなど、さまざまな治療オプションを選択する必要があります。そして言うまでもなく、長期予後の改善にあたっては、昨今注目されている抗凝固療法についての意思決定があります。さらに、心房細動それ自体に対するリスク因子である高血圧や糖尿病、心不全などをいかに管理するかも重要な治療アイテムです。「リスクマネジメント」という視点これらの2つの特徴、つまり(1)疾患であると同時にリスク因子である (2)長い経過の間に数多くの意思決定場面がある、ということからひとつのキーワードが浮かび上がってきます。それはずばり「リスクマネジメント」です。心房細動はほかの幾多のcommon diseaseにも増して、このリスクマネジメントの視点が要求される疾患ということができます。われわれは心房細動発作という目の前の疾患(いわば短期リスク)と、将来の脳塞栓などの長期リスクを同時に管理するという視点を持たなければなりません。中でも抗凝固療法は、心房細動治療アイテムの中でもダントツでリスクマネジメント的感覚が必要である治療法だと思われます。実例を挙げてこのことを考えてみましょう。抗凝固療法をめぐる意思決定問題 ~リスクの識別・評価~「77歳女性、2ヵ月前から娘さん家族と同居。10年前から高血圧。数年前から発作性心房細動あり。以前からワルファリン服用を薦めているが、本人は出血が怖いとためらっている。」このような場合、リスクマネジメントはどう考えたら良いのでしょうか? 一般的なリスクマネジメントの手順としては、まず(1)リスクを識別し、(2)そのリスクがどの程度であるかを評価し、(3)そのリスクに対応(=意思決定)し、(4)全体にフィードバックする、という4工程があると言われています。上記(1)(2)の「リスクを識別し評価する」には現在便利なツールが存在します。そう、CHADS2スコアです。近年はCHA2DS2-VAScスコアも有用とされています。これらのスコアは、目の前の患者さんの脳塞栓リスクと抗凝固療法適応の可否を医学的に教えてくれる、きわめて重宝な道具です。この方のCHADS2スコアは2点ですから教科書的には抗凝固療法の適応です。しかし医学的(生物学的というべきか)なリスクと適応がわかったとしても、患者さんの「出血が怖い」心理を払拭するという課題が残っていますどうすれば払拭できるでしょうか?「解釈モデル」から見えてくるもの当院では試行錯誤の末、このような意思決定問題が発生した際に、ある程度の時間をかけて患者さんの「病(やまい)体験」を把握するための「心房細動外来」を開設しました。抗凝固療法導入時に、患者さんの抗凝固療法に対する「解釈モデル」を聴くようにしたのです。解釈モデルとは次の4つの要素からなります1)。なぜ脳梗塞予防薬を飲む必要があると思いますか?(解釈)脳梗塞予防薬を飲むことの何が不安ですか?(感情)心房細動の治療について当クリニックに何を期待しますか?(期待)脳梗塞予防薬を毎日飲むことは日々の生活(食生活も含めて)に、どんな影響がありますか?(機能)なぜ、このような聴き方が必要なのでしょうか?それは、患者さんごとに抗凝固療法について知りたいこと、不安に思うことの順番が異なるからです。ある患者さんは脳出血が怖いと言います。また、薬を飲むことそのものに嫌悪感のある人もいます。あるいは、心房細動から心筋梗塞になると考える人もいます。さらにお話を聴いていくと、脳出血を怖がる原因が「親戚に脳出血の人がいたから」であるとか、「有名野球監督が抗凝固療法のために障害をうけた」といったような、きわめて個別的な事情や誤解によるものだと明らかになることがあります。このように患者さんの病気に関する捉え方はさまざまです。また、医師からの説明の受け止め方もさまざまです。患者さんの個別の事情を、ある程度の時間をかけて聴くことにより、患者さんの期待や不安の優先順位が把握でき、そこに焦点を当てた説明をすることで、合意形成がかなりスムーズになります。このように、まず「何が問題なのか」を、医学的な「疾病」としての側面と患者さんの「病(やまい)」としての側面から把握し、共有することがリスクマネジメントの第一歩となります。意思決定におけるポイントこのような情報共有の次にめざすべきは、「何をゴールとするか」ということを明確にすることです。抗凝固療法のゴールは言うまでもなく「脳塞栓予防」です。そのことをよく患者さんに理解してもらうわけですが、それを治療開始の最初の時点で、お互いに確認しておくことがとても大事なのです。そのときはやはり、抗凝固薬を飲むことによる具体的なベネフィットとリスクを、時に数字を交えて説明する必要が生じると思います。脳塞栓症がノックアウト型であり、予後がきわめて不良であること。抗凝固薬を服用することで、そうしたリスクがどのくらい減り、出血のリスクがどのくらい増えるかということ。これらのベネフィットはリスクを上回るということを、わかりやすい言葉で説明していく努力が必要です。このとき、患者さんは「薬を飲む」という新たな行為に伴うリスク(出血)に目を奪われがちになるので、出血を避けるための手立てがあること、たとえば血圧を十分下げる、INRを適切に管理する、といったリスク予防策について十分説明するようにします。リスクにどう対応するか?さてこのように説明しても、出血リスクを怖がる方はいらっしゃいます。一般に、リスク=インパクトx確率と言われていますが、リスクの「インパクト」に関しての捉え方は人さまざまであり、その方にとってインパクトが非常に大きい場合、いくら医学的・科学的に説明しても患者さんの納得にはつながりません。また反対に、医師の説明など関係なく「とにかくお任せします」と言われる方が多いのも現実です。私はそうした在り方も「あり」だと思います。抗凝固療法、さらには医療の最終的な目標とは「共通の理解基盤の構築」であるからです1)。医師への信頼に基づいて治療について双方が納得することこそ、最終的なゴールであると思います。出血の恐怖のためになかなか抗凝固薬を飲んでくれない方、また、わかってはいても飲み忘れの多い方、そうした方には長い心房細動の旅の道のりの中で、ゆっくりと納得してもらうように、あせらずに共通基盤の構築を図っていけばよいのです。ここにプライマリ・ケアに携わる開業医のだいご味があるともいえます。心房細動診療こそプライマリ・ケア医で私が開業して、最も痛感することがこの患者さんを「ずっと診る」ことの大切さです。もちろん病院勤務の時代でも、外来で長く診せていただく患者さんはたくさんおられました。しかし地域に根ざした医療を心がけるようになってからは、その方の来し方から見えてくる人生、その方を取り巻くご家族、さらに地域を考え、そのうえで「心房細動の人」「心房細動も持つ人」を診るという視点を持つようになりました。心電図に心が奪われがちだった勤務医時代に比べると、180度のパラダイムシフトが自分の中で起こりました。当院では初回に医師が説明したあと、上記の4つの質問用紙を患者さんに渡します。そして、次の外来で看護師が20〜30分程度でお話を伺い、患者さんの優先順位を把握したうえで意思決定をするようにしています。看護師を交えることで、医師には言っていただけないような情報を得ることが少なくありません。また、その場にご家族も参加していただくことが、とくに高齢者においては重要なポイントになります。こうした多職種、家族、地域を巻き込んでの医療ができるというのもプライマリ・ケア医の強みだと思います。一方で、上記のような抗凝固療法をためらう方は、勤務医時代にはあまり経験しなかったように思います。総合病院、大学病院を受診する患者さんは、他医からの紹介が多く、心房細動や抗凝固薬についての知識をあらかじめ持っておられる方が多く、また基本的に発作に悩んでいる、抗凝固療法の必要性が高い、など患者さん自ら治療へのモチベーションの高い方が多いように思います。かたや、プライマリ・ケアの場では、高血圧や糖尿病などで長く診ている長い患者さんが、たまたま脈をとった時に心房細動だった、というように長い旅の途中で心房細動が不意に目の前に立ち現れるということをよく経験します。まったく心構えがないままリスクが降ってくるという状況は、場合によっては理解を得るのに時間がかかるのです。しかし前にも述べたように、こうした場面こそプライマリ・ケア医としての力が発揮されるべき時なのです。そうです。心房細動診療こそ継続性、包括性、協調性が求められるプライマリ・ケア医にうってつけの領域なのです。今後は、このような継続的なリスクマネジメントはプライマリ・ケア医が行い、抗凝固薬や抗不整脈の導入時や発作頻発時、心不全発症時、カテーテルアブレーションなどの専門的医療が必要な場合に専門医に委ねるという役割分担がさらに進み、心房細動の人をまさにオールジャパンで診るというスキーマが構築されることを期待したいと思います。1)Stewart M, et al. Patient-Centered Medicine: Transforming the clinical method. 2nd ed. Oxford: Radcliffe Medical Press; 2003.

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(68)〕 慢性疾患の遠隔医療におけるテレシステムの優越性を示せず(英国)

慢性疾患に罹患した高齢者が増えているのはわが国ばかりでなく、欧州でも同じである。高齢者をできる限り在宅で自立して生活できるよう支援することが、医療経済の大きなテーマとなっている。欧州は遠隔医療に関して長い歴史を有するが、なかでもドイツや英国は、伝送システムやロボットシステムによる在宅管理に先進的に取り組んでいる。しかし、これらの遠隔医療が本当に患者の生活の質の改善や入院の抑制、医療経済の改善に役立っているのかどうかに関しては、確かな指標に乏しい。 本論文は、英国のWholeSystems Demonstrator (WSD)というプログラムを先行して実施し、慢性呼吸器疾患、糖尿病、心不全などを有している高齢者を、自宅のセンサーによって専門病院がモニタリングすることで、自立支援を促している。今回の研究はそのWSD評価チームによって行われた集団(nested)疫学研究で、伝送システムを用いたことによるQOLや自立などの12ヵ月間における変化を、開業医による通常ケアと比較した成績である。 その結果は、電送システムによる介入は、通常ケアとの間にQOLや精神的自立において有意差を見いだせなかったという結論である。しかし、質問表への回答を拒んだ症例も多く、limitationを含んだ結果であることから、今後電送システム自体の改良も含めて改善することで、その成果は上がると思われる。 英国の通常ケアとは、患者が直接専門病院を受診することはなく、まずかかりつけ医の開業医が診察して、その病態によって病院に紹介するという、根本的にわが国とは違ったシステムである。

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テレヘルス(遠隔医療)、慢性疾患患者のQOLや不安・うつ病への効果は?/BMJ

 英国・シティ大学ロンドンのMartin Cartwright氏らは、テレヘルス(遠隔医療)による慢性疾患患者への介入について、QOLおよび精神的アウトカムへの効果について評価を行った。テレヘルスは、患者の自己モニタリング評価を遠隔的にできる簡便性から、医療コストを削減し健康関連QOLを改善するとして推進されてきたが、その有用性についてのエビデンスは相反する報告がされている。また不安症やうつ病への効果についてはほとんど評価が行われていなかったという。BMJ誌オンライン版2013年2月26日号掲載より。 英国内テレヘルス研究参加者のうち慢性疾患患者1,573例について解析 Cartwright氏らは、2008年5月~2009年12月に被験者を集めて行われたWhole Systems Demonstrator(WSD)テレヘルス研究(3,230例)で慢性疾患(COPD、糖尿病、心不全)を有していると質問票で回答していた1,573例について評価を行った。WSDテレヘルス研究は、英国内の異なる医療サービスシステムの4つのプライマリ・ケアトラストが管轄する3地域(コーンウォール、ケント、ニューハム)から被験者を募り、GP(一般開業医)単位で無作為化し、テレヘルスと通常治療の介入効果を比較した。評価は、ベースライン、4ヵ月時点(短期)、12ヵ月時点(長期)で行われた。 評価はまずintention to treat解析を行い、GP単位および共変量単位による多変量モデルにて、3回すべての評価を受けた759例(評価完遂コホート)と、ベースライン+どちらか1回(評価可能コホート)について解析した。次にper protocol解析による有効性の評価を、評価完遂コホート633例、評価可能コホート1,108例を対象として行った。 主要評価項目は、健康関連QOLの一般的尺度(SF-12、EQ-5Dで身体面・精神面を評価)、不安症(Brief State-Trait Anxiety Inventoryの6項目で評価)、うつ症状(Centre for Epidemiological Studies Depression Scale:CES-Dの10項目で評価)とした。 テレヘルス群と通常治療群の差は小さく、アウトカムについて有意差がない intention to treat解析の結果、テレヘルス群と通常治療群の差は小さく、すべてのアウトカムについて、評価完遂コホート(各アウトカムのp値範囲:0.480~0.904)、評価可能コホート(同:0.181~0.905)のいずれにおいても有意な差はみられなかった。また、事前に定義した、両群最小限の臨床的に意義のある差(MCID、標準差0.3とした)は、いずれのアウトカムも4ヵ月時点、12ヵ月時点ともに達成しなかった。 per protocol解析の結果でも、テレヘルス群と通常治療群は、あらゆるアウトカムについて有意差がないことが示された(評価完遂コホートの各アウトカムのp値範囲:0.273~0.761、評価可能コホートの同値:0.145~0.696)。 解析の結果を踏まえて著者は、「WSDテレヘルス研究参加者を対象とした評価において、テレヘルスは通常治療と比べて効果的ではなかった。テレヘルスの12ヵ月間の介入はCOPD、糖尿病、心不全患者のQOLや精神的アウトカムを改善しなかった」と結論。テレヘルスは、QOLや精神的アウトカム改善を目的とした導入はすべきではないだろうと警鐘を鳴らしている。

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より確実な血糖値管理を目指すなら、インスリンの早期導入を!

 3月2日、サノフィは「インスリン全国講演会2013」と題し、医師向けのセミナーを開催した。このセミナーは、同社の代表製品であるインスリン グラルギン(商品名:ランタス)の発売10年を記念して開催されたもので、糖尿病診療に従事する医師が参集した。 はじめにOpening Remarksとして渥美義仁氏(永寿総合病院)が、インスリンの発見と製薬の歴史を振り返るとともに、「持効型溶解インスリンの登場は、糖尿病治療に新しい選択肢をもたらした」とその役割を評価した。そして、今回のセミナーのテーマであるBOT(basal supported oral therapy)などにも触れ、今日の講演の意義を述べた。 第1部では経口血糖降下薬との併用療法について講演が行われた。はじめに「BOTの有用性」をテーマに鈴木大輔氏(東海大学医学部)が、外来でのBOTについて講演し、経口血糖降下薬とインスリンの併用で確実な血糖降下ができる反面、体重増加への配慮やSU薬併用時の低血糖に注意が必要であると語った。 次に「Basal Plus、B2Bの有用性」をテーマに大工原裕之氏(坂出市立病院)が、基礎インスリン補充の意義を自院のデータで示し、追加インスリンをいかに安全に増やしていくかを説明した。とくにBOTでも効果が弱い患者には、朝夕の追加インスリンの導入などが効果的と自験例を述べた。 続いて「Basal Bolusの有用性」をテーマに横山宏樹氏(自由が丘横山内科クリニック)が、初期診療後のインスリン導入とSU薬減薬への取り組みや自院の取り組みを講演した。とくに教科書的な処方だけではなく、「低血糖 しないさせない 絶対に」を合言葉に、食事と患者の運動量や生活環境も見据えてインスリン量を決定していること、クリニックスタッフが電話で患者フォローをする取り組みを行っていることを述べた。 第2部では主に1型糖尿病について、「1型糖尿病治療 Basal Bolus療法におけるインスリン製剤の使い方-内科の立場から-」をテーマに柳澤克之氏(市立札幌病院)が、講演を行った。「札幌では雪かきによる低血糖が多いこと」がレポートされ、超速効型インスリンで低血糖発生を防止していることや患者満足度調査も良好なことが報告された。 次に「1型糖尿病治療 BasalBolus療法におけるインスリン製剤の使い方-小児科の立場から-」をテーマに浦上達彦氏(駿河台日本大学病院)が、小児糖尿病のインスリン治療について講演した。小児の治療では、成人と異なる生活習慣のために幼児期、学童期、思春期に合わせたインスリン提供のスケジューリングや低血糖予防の指導が必要であると語った。 最後にClosing Remarksとして河盛隆造氏(順天堂大学大学院スポートロジーセンター)が登壇し、「より効果的にインスリンが用いられるようになることが今後の課題であり、2型糖尿病の患者であれば、インスリン分泌ができなくなる前に早期に導入し、分泌の回復につとめることが大きな目標となる。その後インスリンからの離脱を期すのが次の目標である」と述べ、講演会は終了した。サノフィ 医療関係者向け製品情報サイトケアネット特集「糖尿病」のバックナンバーはこちら

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10年先を見据えた抗精神病薬選択のポイント

 米国・コロンビア大学のT Scott Stroup氏らは、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンからアリピプラゾールへの切り替えについて、フラミンガムリスクスコア(FRS)およびメタボリックシンドローム(MetS)に基づいた心血管疾患(CVD)発症リスクの影響を調査し、その臨床的意義を検討した。Schizophrenia research誌2013年2月21日号の報告。 現在の治療(オランザピン、クエチアピン、リスペリドン)で安定している患者を、現在治療継続群とアリピプラゾール切り替え群(24週間のフォローアップ)に無作為に割り付け、BMI 27以上とnon-HDL-C 130mg/dL以上の患者間でのFRSとMetSの変化を比較した。FRSは心筋梗塞や冠動脈死といった重篤な冠動脈性心疾患(CHD)アウトカムの10年リスクを予測できる。また、MetSは脳卒中、糖尿病などCVDリスクの増加に関連している。すべての対象者には健康的な食事と運動を推進するプログラムを実施していた。 主な結果は以下のとおり。・現在治療継続群98例、アリピプラゾール切り替え群89例を含む患者から、あらかじめ分析に必要なベースライン値の値を測定した。・CHD10年リスクの最小二乗平均推定値は、現在治療継続群(7.4%→6.4%)と比較し、アリピプラゾール切り替え群(7.0%→5.2%)でより多く減少した(p=0.0429)。・最終観察時にメタボリックシンドロームを有するオッズ比は1.748であった(現在治療継続群 vs アリピプラゾール切り替え群、95%Cl:0.919~3.324、p=0.0885)。・メタボリックシンドローム発症に関しては、統計学的に有意な差は認められなかった。・アリピプラゾールに切り替えた上で、健康的な食事と運動を推進するプログラムを実施することで、CHD10年リスクをより軽減させることが期待できる。・切り替え時には治療中止などのリスクを考慮する必要があるが、本研究では症状の増悪や入院の有意な増加は認められなかった。関連医療ニュース ・抗精神病薬の高用量投与で心血管イベントリスク上昇:横浜市立大 ・第二世代抗精神病薬によるインスリン分泌障害の独立した予測因子は・・・ ・抗精神病薬投与前に予後予測は可能か?

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地中海式食事療法、高リスク集団の心血管イベント1次予防に有用/NEJM

 地中海食(エネルギー制限はしない)とオリーブオイルまたはミックスナッツを組み合わせた食事療法が、心血管リスクの高い集団の心血管イベントの1次予防において相対リスクを約30%低減することが、スペイン・バルセロナ大学病院のRamon Estruch氏らの検討で明らかとなった。地中海食は、オリーブオイル、果物、ナッツ、野菜、シリアルの摂取量が多く、魚や鶏肉の摂取量は中等度、乳製品、赤身肉、加工肉、菓子類の摂取量は少ないことが特徴とされる。地中海式食事療法の遵守状況と心血管リスクは逆相関を示すことが、観察コホート試験や2次予防試験で確認されている。NEJM誌オンライン版2013年2月25日号掲載の報告。カロリー制限や運動の併用なしの食事療法の効果を評価 PREDIMED(Prevencion con Dieta Mediterranea)試験は、地中海式食事療法(MD)による心血管イベントの1次予防効果を検証する多施設共同無作為化試験。 対象は、年齢が男性55~80歳、女性60~80歳、登録時に心血管疾患を発症しておらず、2型糖尿病を有するか、あるいは喫煙、高血圧、高LDLコレステロール値、低HDLコレステロール値、過体重または肥満、早期冠動脈心疾患の家族歴のうち3つ以上を有する者とした。参加者は、MD+エキストラヴァージンオリーブオイル(EVOO)、MD+3種のナッツ(Nuts:ウォールナッツ、アーモンド、ヘーゼルナッツ)、対照群(低脂肪食の説明)の3群に無作為に割り付けられた。 総カロリーの制限や身体活動の推奨は行われなかった。2つのMD群は、それぞれEVOO(約1L/週)またはNuts(計30g/日分)を無料で提供され、ベースライン時とその後は3ヵ月ごとに食事指導とMD遵守状況の評価を受けた。 1次エンドポイントは主要な心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、心血管死)の発症率とした。なお、中間解析の結果に基づき、フォローアップ期間中央値4.8年の時点で試験は中止された。1次エンドポイントのハザード比:MD+EVOO群0.70、MD+Nuts群0.72 2003年10月~2009年6月までに7,447人が登録され、MD+EVOO群に2,543人(平均年齢67.0歳、女性58.7%)、MD+Nuts群に2,454人(同:66.7歳、54.0%)、対照群には2,450人(同:67.3歳、59.7%)が割り付けられた。 1次エンドポイントは288人に発生した。そのうちMD+EVOO群が96人(3.8%)、MD+Nuts群が83人(3.4%)、対照群は109人(4.4%)で、1,000人年当たりの発生率はそれぞれ8.1(対照群との比較p=0.009、)、8.0(同p=0.02)、11.2であった。多変量調整済みハザード比(HR)は、対照群を基準とするとMD+EVOO群が0.70(p=0.01)、MD+Nuts群は0.72(p=0.03)だった。 主要心血管イベントのうち調整済みHRがMD群で有意に優れたのは脳卒中のみであった(MD+EVOO群:0.67、p=0.04、MD+Nuts群:0.54、p=0.006)。全死因死亡には有意な差を認めず、食事療法に関連する有害な影響もみられなかった。 著者は、「この結果は、高リスク集団の心血管イベント1次予防における地中海食のベネフィットを支持するもの」と結論している。

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SYNTAXスコアII開発でCABGかPCIかの予測能がより高く/Lancet

 複雑な冠動脈疾患の血行再建術の選択について、解剖学的な複雑さを考慮しただけのSYNTAXスコアよりも、同スコアに左室駆出率などの臨床因子を加えたSYNTAXスコアIIが有効であることが報告された。オランダ・エラスムス大学メディカルセンターのVasim Farooq氏らが行った試験で明らかにしたもので、Lancet誌オンライン版2013年2月23日号で発表した。SYNTAXスコアは、欧米のガイドラインで至適な血行再建術選択ツールとして提唱されているが、予測能に限界があることが指摘されていた。そこで同研究グループは、8つの予測因子から成るSYNTAXスコアIIを開発し検証試験を行った。SYNTAXスコアにベースライン時の臨床因子などを追加 研究グループは、1,800人を対象に行った無作為化試験「SYNTAX試験」の結果を基に、4年死亡率との関連が強かったベースライン時の臨床因子などをSYNTAXスコアに加えたSYNTAXスコアIIを開発した。 SYNTAXスコアIIについて、冠動脈バイパス術(CABG)と経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を行った場合の4年死亡率の差の予測能を調べ、従来のSYNTAXスコアと比較した。 外的妥当性の検証は、CABGまたはPCIを行った多国籍の被験者2,891人を対象としたDELTAレジストリにて行った。SYNTAXスコアIIのC統計量、内的・外的妥当性いずれも0.7強 SYNTAXスコアIIに盛り込まれた予測因子は、解剖学的SYNTAXスコア、年齢、クレアチニンクリアランス、左室駆出率(LVEF)、非保護左冠動脈主幹部病変(ULMCA)、末梢血管疾患、女性、慢性閉塞性肺疾患(COPD)だった。 試験の結果、SYNTAXスコアIIは、CABGとPCIを行った患者の4年死亡率の差を有意に予測した(p=0.0037)。CABGまたはPCIを受けた人が同等の4年死亡率を達成するには、年齢が若く、女性であり、LVEFが低い人ではより解剖学的SYNTAXスコアが低いことが必要だった。一方で、高年齢でULMCAとCOPDがある人は、解剖学的SYNTAXスコアは高い必要があった。 糖尿病の有無は、CABGとPCIの選択においては重要ではなかった(p=0.67)。 SYNTAXスコアIIのSYNTAX試験による内的妥当性の結果は、C統計量0.725であり、DELTAレジストリによる外的妥当性では、C統計量0.716であった。これらは従来のSYNTAXスコアの各値0.567、0.612に比べ、いずれも有意に高値だった。 著者は、「複雑な冠動脈疾患患者の4年死亡率は、SYNTAXスコアIIによる予測のほうが良好であり、CABGかPCIかの意思決定に優れている可能性がある」と結論している。

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腰椎椎間板切除術、日帰り手術により短期合併症が減少

 腰椎椎間板切除術は最も頻度の高い脊椎手術で、外来でも実施可能である。同外来手術は、低コストでより大きな患者満足度が得られ安全性に問題はないことがこれまで報告されていたが、今回、米国・アイオワ大学病院のAndrew J. Pugely氏らによる前向きコホート研究において、入院手術に比べ術後短期合併症が少ないことが確認された。腰椎椎間板切除術を行う場合、適切な症例には外来手術を考慮すべきであるとまとめている。Spine誌2月1日号の掲載報告。 本研究の目的は、単一レベル腰椎椎間板切除術後30日以内の合併症発生率を入院手術および外来手術で比較するとともに、合併症の独立した危険因子を同定することであった。 2005~2010年に、米国外科学会の外科手術質改善プログラム(NSQIP)データベースを用い医師診療行為用語(CPT)コードに基づいて初回単一レベル腰椎椎間板切除術を受ける患者4,310例を選出した。 術後30日以内の合併症発生率ならびに術前患者特性について検討した。統計解析は、傾向スコアマッチング法および多変量ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・4,310例中、2,658例(61.7%)が入院手術、1,652例(38.3%)が外来手術であった。・合併症発生率は、未調整時ならびに傾向スコアマッチング後のいずれも入院手術群が外来手術群より高率であった(未調整時6.5% vs 3.5%、p<0.0001/マッチング後5.4% vs 3.5%、p=0.0068)。・多変量ロジスティック回帰分析でも、入院手術で合併症発生率が有意に高率となることが示された(調整済みオッズ比:1.521、95%CI:1.048~2.206)。・年齢、糖尿病、術前創傷感染、輸血、手術時間および入院手術が術後短期合併症の独立した危険因子であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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「岐阜県COPDストップ作戦」一丸となってCOPDに取り組む

大林 浩幸 ( おおばやし ひろゆき )氏岐阜県COPD対策協議会 本部長(東濃中央クリニック 院長)※所属・役職は2013年2月現在のものです。岐阜県におけるCOPDの現状大規模なCOPD疫学調査NICE Study*の結果によれば、COPD患者は40歳以上の8.6%、約530万人と推定されています。COPDによる死亡者数は年々増加しており2011年の死亡者数は16,639人です。このNICEstudyの有病率に岐阜県の人口を当てはめると、岐阜県のCOPD患者数は12万3070人と推定されます。一方、岐阜県の治療中のCOPD患者数を主要なCOPD治療薬の販売量から推定すると5,000人未満となり、推測患者数の1割にも満たないことがわかりました。すべての治療患者さんが対象ではないとしても、これはあまりにも少なすぎます。残りの10万人以上の方は潜在患者として、気づかれないままでいるか、他疾患の治療のみ受けている可能性もあるわけです。また、岐阜県のCOPD死亡者数は1997年から2009年までの12年間、全国平均を常に上回っています。このように岐阜県のCOPD治療は重要な課題を抱えていました。*NICE(Nippon COPD Epidemiology)study:2004年に順天堂大学医学部の福地氏らが報告した40歳以上の男女2,343名のデータによるCOPDの大規模な疫学調査研究COPD死亡率(人口10万人対)2009年画像を拡大するCOPD死亡率(人口10万人対)岐阜VS全国画像を拡大する手をかけなければいけない疾患COPD喘息には吸入ステロイドなどの治療薬があり、適切な治療で症状改善が可能ですが、COPDには進行を遅らせる治療しかありません。具体的には、禁煙、増悪防止のための感染予防(ワクチン)、日常管理といった基本と、その上で行われる気管支拡張薬、呼吸リハビリテーションなどがそれにあたります。この中の一つでも欠けると奏功しません。このように、COPDはさまざまな医療が必要となる“手をかけなければいけない疾患”だといえます。COPDの認知度の低さCOPDの認知度はきわめて低いものです。一般の方の半数以上はCOPDをご存じありませんし、知っていたとしても名前だけで、COPDがどういう疾患かわかる方はとても少ないです。息切れは年齢のせい、喫煙者だから多少の息切れは当たり前と考えているのですから、医療機関を受診をすることはありません。このように、COPDの認知の低さにより、自分がCOPDである事を知らずに過ごしている方が数多くいることになります。また、受診してもCOPDを理解していないと治療はうまくいきません。COPDの薬剤を吸入しながら喫煙しているケースなどは、その典型例といえます。肺機能検査の普及COPDの早期発見と診断には肺機能検査が必要です。しかし、プライマリ・ケア領域では機器がない、あるいは機器があっても使っていない状況であり、肺機能検査を実施しているのはほとんどが大病院です。つまり、COPD潜在患者のほとんどが医療機関未受診かプライマリ・ケア領域に潜んでいる可能性があります。高血圧などの循環器疾患、脂質異常症や糖尿病、消化器疾患などの疾患治療患者の何割かに隠れCOPDがいると思われます。COPDストップ作戦立ち上げこのような背景の中、岐阜県としては早急にCOPDへの対策を図る必要がありました。COPDは片道切符で、一旦悪化するとなかなか元に戻りません。ブレーキの始動が遅れると終着駅は在宅酸素になります。だからこそ、重症化する前にいかに早期発見・早期診断し、いかに禁煙、薬物治療、リハビリテーションという一連の治療を導入していくのかを考えなければなりません。また、これらの治療はバラバラでは意味をなさず、全県が同じレベルでこれらの治療がカバーできるよう足並み揃えて取り組む必要がありました。そこで平成23年度に岐阜県医師会と岐阜県で協議し、委託事業として県医師会がCOPD対策事業を始めることになりました。まず岐阜県医師会COPD対策協議会を立ち上げ、その下にCOPD対策本部を設置しました。そして岐阜県を5地区に分け、各地区に対策委員会を設置しました。地域医師会との連携がスムーズに行われるように、専門医と共に、地域医師会役員も地区委員に就任していただきました。そして私、大林が岐阜県COPD対策本部長に指名され、平成23年10月に全県一斉に「COPDストップ作戦」を立ち上げ開始しました。岐阜県5ブロック画像を拡大するCOPD対策協議会画像を拡大するCOPDストップ作戦の目的は、COPD死の減少です。活動の軸は、COPDの頭文字をとって、Care COPD(COPDの早期治療)、Omit COPD(COPD発症の最大原因である喫煙習慣の排除) 、Prevent COPD(COPD発症の原因であるタバコの害を啓発し、喫煙開始させない)、Discover COPD(COPDを早期から発見し、早期治療に結びつける)の4本としました。県医師会“COPDストップ作戦”の4つのコンセプト画像を拡大するCOPDストップ作戦 第1弾COPD教育講演会ストップ作戦の第1弾はCare COPDとして、COPD教育講演会を実施しました。COPDの適切な治療法の普及を目的とし、H23年10月〜12月に第1回、翌年のH24年10月〜12月に第2回を県内5地区すべてで行っています。H25年には第3回を実施の予定です。この講演会の特徴は、外部講師を招かず、地元の専門医に座長と講師をお願いしていることです。地域の核となる先生と地域の先生が顔の見える連携を築き、今後の病診連携に役立てることを意図しています。COPDストップ作戦第2弾 スパイロキャラバン第2弾はDiscover COPDとして、スパイロキャラバンを実施しました。COPDの早期発見・早期治療の最大の障壁は肺機能検査(スパイロメトリ―)の普及不足です。肺機能検査を体験していただき、より日常診療的な検査にしていただくことを目的として行っています。まず、岐阜県下の診療所等を対象に、各地区での説明会を行い、ボランティア参加で協力診療所を募りました。肺機能検査装置のない診療所には貸し出し、患者さんに無料で肺機能検査を実施していただくというものです。検査対象者は、COPD以外の疾患で受診中の、喫煙中または禁煙歴があり、労作性呼吸困難の訴えがある40歳以上の患者さんです。この方たちに書面で同意を得て肺機能検査を実施しました。第1回はH23年10月〜12月、第二回はH24年9月〜12月の期間に実施しています。第1回のスパイロキャラバンの結果、COPD疑いありの患者さんは、検査を行った方の30.9%でした。とくに、70歳代では半数、80歳代では6割が疑いありと非常に高い頻度でした。人数でいうと、計530例の潜在患者さんを参加51施設が引き出したことになります。また、肺年齢はII期以上から実年齢に比べ有意に下がっていることもわかりました。このスパイロキャラバンの結果は、県下において積極的にCOPDストップ作戦を展開すべき根拠を明らかにしたといえます。スパイロキャラバン実施結果画像を拡大する年齢別COPD(疑)存在率(%)画像を拡大するCOPDストップ作戦第3弾 禁煙指導セミナー第3弾はOmit COPDとして、プライマリ・ケアの医師、薬剤師を対象に県5地区すべてで禁煙治療法セミナーを開講しました。目的は禁煙治療ができる施設を増やし、禁煙治療をもっと市民に身近なものにすることと、県内の禁煙治療レベルの底上げです。COPDの進行を止める最も有効かつ根本的な治療法は禁煙です。ただし、禁煙指導は標準治療に則り正しく行わないと成果が上がりません。ところが、実際は施設によって禁煙指導のやり方に差があるなど多くの課題がありました。平成24年10月~12月に第1回を行いましたが、反響が大きく、各地域とも非常に多くの先生方に参加いただきました。今年は第2回を開催する予定です。COPDストップ作戦第4弾 吸入指導セミナー第4弾はCare COPDとして、吸入指導セミナーを薬剤師会との連携により実施していきたいと考えています。このセミナーは薬局の吸入指導技術の向上と、すべての薬局で同じ指導ができるようにすることが目的です。COPD治療薬の主軸は吸入薬です。しかし、吸入指導が不十分で、患者さんが誤った吸入方法を行ったり、有効に吸入できていないケースが多くみられます。吸入デバイスもメーカーごとに異なり、すべての薬剤・デバイスを網羅したセミナーが必要とされています。東濃地区では2009年から行っていますが、薬剤師の方は非常に熱心で、成果も上がっています。これから全県下に展開していきたいと思います。COPDストップ作戦の成果と今後スパイロキャラバンで新たに多くの潜在患者から引き出し、プライマリ・ケア領域に多くのCOPD患者さんが埋もれている可能性を示したことは、大きな成果といえます。また、この作戦を通し、医療者の意識の変化も感じられます。COPD患者さんを積極的にみられる先生方も増えるなどCOPDの意識が定着し始めてきたと思います。また、肺機能検査実施の意識が高まってきたと思います。スパイロキャラバンに2回とも参加したり、数多く肺機能検査を実施される熱心な先生も増えてきました。肺機能検査の重要性や簡単さが浸透し、第1回目のスパイロキャラバン開始後、肺機能検査装置の新規購入が増えたようです。禁煙指導セミナーについては非常に反響が強く、禁煙治療の標準化が県下で底上げされたと思います。とはいえ、一般市民へのCOPDの認知率向上は今後も必要ですし、Prevent COPDとして学校での禁煙教室も非常に重要です。さらに、病診連携の実現もありますので、これら4つのコンセプトを軸にCOPD作戦を今後も進めて行きたいと考えています。COPD治療は前述のとおり、しなければならないことが多いのですが、それだけのことを行わないと、患者さんに良い医療を十分に提供できたことにはなりません。しかし、個々の施設ごとで、十分に対応できるとは限りません。そこで、これまでのような局地戦でなく、県全体が力を合わせた総力戦で行うことで、患者さんが救われるのだと思います。

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神経障害性疼痛の実態をさぐる

神経障害性疼痛が見逃されているたとえば熱いものを触ったり、刃物で切れば痛みを感じる。そういう通常の痛みを「侵害受容性疼痛」といいます。末梢神経の終末にある侵害受容器が刺激されたときに感じる痛みです。侵害受容性疼痛の中には炎症に伴って起こる炎症性疼痛も含まれますが、これらを合わせて生体を守るための生理的な疼痛と呼んでいます。一方、「神経障害性疼痛」は、末梢神経から脊髄、さらに大脳に至るまでの神経系に何かの障害が起こったときに、エラーとして生じる痛みです。生体を守る意義はなく、病的な疼痛と考えられています。このように、神経障害性疼痛と炎症性疼痛は区別して考える事になっています。ただし、臨床的には炎症が遷延し持続的に痛みのシグナルが入力されるような状態では、神経系はエラーとしての過敏性を獲得するため、炎症性疼痛が続いた結果起こる痛みと神経障害性疼痛は明確に区別できないと考えられています。多くの神経障害性疼痛は痛みの重症度が高く、患者さんのQOLは著しく低下します。神経障害性疼痛は、まだまだ医療者に浸透していない痛みの概念です。神経障害性疼痛であることが疑われないで治療されているケースも多くみられ、神経障害性疼痛には特別なスクリーニングが必要だと考えます。神経障害性疼痛のスクリーニング痛みと一口にいっても、ナイフで刺された時の痛みと、炎や熱に手をかざした時の痛みは、おのずと性質が違ってきます。神経障害性疼痛の患者さんの多くは、「ヒリヒリと焼けるような痛み」「電気ショックのような痛み」「痺れたような痛み」「ピリピリする痛み」「針でチクチク刺されるような痛み」といった特徴的な性質の痛みを訴えます。一方、炎症性疼痛の患者さんでは、ズキズキする、ズキンズキンするといった、明らかに痛みの性質が異なった訴えをします。痛みの性質の違いは、痛みの発生メカニズムの違いを表していると考えられています。患者さんの自覚的な訴えから痛みの種類を鑑別するために、痛みの問診票が各国で開発されています。私たちはドイツでつくられた「PainDETECT」の日本語版を許可を得て開発し、その妥当性の検証試験を行っています。痛みの性質、重症度、場所、範囲、時間的変化を1つの質問用紙に記入する形のもので、臨床で使いやすい問診票になっています。侵害受容性疼痛なのか神経障害性疼痛なのか、あるいは両方が混合している疼痛なのかを分類することができます。画像を拡大する痛みの具体性を評価する痛みのスクリーニングにおいて、痛みの性質と共に痛みの具体性を評価することが重要です。たとえば捻挫をした患者さんにどこが痛いか聞くと、「足首のここが痛い、足首を伸ばすと痛い」と明確な答えが得られます。これは痛みの具体性が高いといえます。一方、器質的な異常を伴わない非特異的腰痛や、外傷後の頸部症候群(むち打ち症)では、「腰のあたりが全体的に痛い」とか、「何となく首の周りが痛い」といった部位を特定しにくい漠然とした痛みを訴えることがあります。そのような場合は痛みの具体性が低いと評価します。痛みの具体性が高いときには身体的な問題、器質的な異常があり、痛みの具体性が低い場合は器質的な異常がない(少ない)と判断し、心因性疼痛の要素の有無を考えます。器質的異常の有無は薬物療法の適応を考える際に重要なポイントになりますので、痛みの性質と共に具体性を聞くことは非常に有用です。神経障害性疼痛が合併しやすい疾患神経障害性疼痛が多く見られる疾患は、糖尿病性ニューロパチー、帯状疱疹後神経痛、脊柱管狭窄症です。たとえば帯状疱疹では、神経にウイルスが棲んでいて神経の炎症や障害が起きます。日本での大規模な調査研究で、これまで神経障害性疼痛ではないと考えられていた腰痛や膝関節症を含む多くの慢性疼痛患者さんの中にも、神経障害性疼痛が含まれていることがわかってきました。首から背中、腰の痛みを訴える患者さんの実に約8割が、神経障害性疼痛だろうと推察される報告もあります。手術後の痛みは意外に調べられていない領域です。傷が治れば痛くないと医療者が思っているので、患者さんが痛みを訴えにくい環境があるようです。開胸手術後は6~8割、乳腺の術後には5~6割、鼠径ヘルニアの術後では3~4割の患者さんが傷が治った後にも痛みを持っていることがわかっています。もちろん手術後に遷延する痛みの病態のすべてが神経障害性疼痛ではありません。術後遷延痛には、神経障害性疼痛とも炎症性疼痛ともいえない独特のメカニズムがありそうだ、ということが分子生物学的な病態研究によってわかってきています。薬物療法による神経障害性疼痛の治療神経障害性疼痛の治療は、侵害受容性疼痛とは治療戦略がまったく異なります。基本的に消炎鎮痛薬は効果がありません。神経障害性疼痛の第一選択薬はCa2+チャネルα2δリガンドであるプレガバリン(商品名:リリカ)と三環系抗うつ薬です。第二選択薬としては、抗うつ薬セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)のうちの一つであるデュロキセチン(商品名:サインバルタ)、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤(商品名:ノイロトロピン)、抗不整脈薬メキシレチン(商品名:メキシチールほか)です。第三選択薬は、麻薬性鎮痛薬(オピオイド鎮痛薬)です。まず初めにプレガバリンか三環系抗うつ薬を用います。効果が不十分であれば、いずれかに切り替えるか併用する。プレガバリンは添付文書では、朝と夕方に内服することになっていますが、私たちは就寝前の服用を勧めています。神経障害性疼痛の患者さんは痛みが強く不眠を訴える方が多いのですが、プレガバリンによる眠気の作用を逆に利用した服用方法です。プレガバリンの眠気は鎮静によって生じるものではなく、生理的な睡眠作用であることがわかっています。そのためか、患者さんもぐっすり眠れたという満足感を持つことが多いようです。そして第一選択薬で効果が不十分な場合は、第二選択薬への切り替え、あるいは第二選択薬との併用を行います。ただし三環系抗うつ薬とデュロキセチンの併用では、副作用として興奮・せん妄等のセロトニン症候群を起こす危険性があるので、三環系抗うつ薬とデュロキセチンは基本的に併用はしません。第二選択薬が無効な場合は、第三選択薬として麻薬性鎮痛薬(オピオイド鎮痛薬)を使います。非がん性の慢性疼痛に対して使えるオピオイド鎮痛薬は、トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠(商品名:トラムセット)とフェンタニル貼付剤(商品名:デュロテップMTパッチ)が主なものです。ブプレノルフィン貼付剤(商品名:ノルスパンテープ)は変形性関節症、腰痛症のみが保険適応となっています。オピオイドは最も高い鎮痛効果を期待できますが、長期間使った場合に便秘や吐き気、日中の眠気などの副作用が問題になります。オピオイド鎮痛薬に対して精神依存を起こす患者さんもまれにですがいます。そのため、第一選択薬、第二選択薬が無効な場合にのみ使うことが推奨されています。オピオイド鎮痛薬使用における注意点非がん性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬の使い方は、がん性疼痛とは異なります。がん性疼痛の場合は、上限を設けずに患者さんごとに投与量を設定し、痛みが続いている間は使い続けます。痛みが発作的に強まったときには頓用薬も用います。一方、非がん性の疼痛に対してオピオイド鎮痛薬を使用する場合は、経口のモルヒネ製剤換算で120mgを上限に設定することが推奨されています。オピオイド鎮痛薬の使用期間は極力最少期間にとどめ、痛みが強くなったときの頓用は推奨されていません。これらのオピオイド鎮痛薬の使用に制限を設けている理由は、すべて精神依存の発症リスクを抑えるためです。がん性疼痛と非がん性疼痛では、オピオイド鎮痛薬の使い方の原則が違うことをご理解いただきたいと思います。オピオイド鎮痛薬の精神依存は、器質的な痛みの患者さんでは基本的に発症しないことがわかっています。器質的ではない疼痛、すなわち痛みの具体性の低い患者さんでは精神依存を起こす可能性が高まるので、オピオイド鎮痛薬を積極的に使用すべきではないと考えています。うつ病や不安障害といった精神障害を合併している患者さんも、オピオイド鎮痛薬による精神依存を発症しやすいことがわかっています。最も強い鎮痛効果を求めるときは、われわれはオピオイド鎮痛薬とプレガバリンを併用しています。プレガバリンには抗不安作用があり、それがオピオイド鎮痛薬による吐き気の発生に対する予期不安を抑制し、制吐効果が期待できます。オピオイド鎮痛薬と三環系抗うつ薬の併用も強い鎮痛効果が期待できますが、吐き気、眠気、抗コリン作用による口渇などを相乗的に増強してしまうため推奨していません。

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糖尿病透析予防指導管理料」の実践ワークショップ開催のお知らせ

 日本医療企画は、「糖尿病透析予防指導管理料 ~組織的算定のための実践ワークショップ~」を3月21日に開催する。 2012年度診療報酬改定において、糖尿患者に対するチーム医療として、「糖尿病透析予防指導管理料」が350点というきわめて高い点数で新設された。しかし、臨床現場からは「算定を推進するにはどうしたらよいのか?」という声が多く聴かれている。 このような臨床現場の声に応えるために、組織的算定のポイント解説に加え、多数算定している各地の病院の推進の工夫も紹介する。過去開催の2回のセミナーはいずれも満員で、今回が3回目。算定推進のためのより実践的なワークショップや対象患者抽出のデータベース作成や栄養指導ツールの作成も行う。 講師は、本管理料の1,000件以上の算定実績をもつ平井愛山氏(千葉県立東金病院院長)。 概要は次の通りである。・日時 平成25年3月21日(木) 13:00~・会場 株式会社日本医療企画5Fセミナールーム   (〒110-0033 東京都千代田区神田岩本町4-14 神田平成ビル)・対象 医師、看護師、管理栄養士、療養指導士、事務職等・定員 50名・受講料 21,000円(税込・『「糖尿病透析予防指導管理料」算定ハンドブック』1冊含む)・プログラム 講演 組織的な算定推進のポイント  ワークショップ1 対象患者抽出の為のデータベースを作る  ワークショップ2 透析予防の栄養指導ツールを作る  総合検討■詳しくは日本医療企画まで

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レニン・アンジオテンシン系阻害薬の併用は死亡率の低下をもたらさない/BMJ

 レニン・アンジオテンシン系(RAS)の二重遮断は、心不全を主とする入院を減らし一見ベネフィットがあるように見えるが、死亡率の低下には結びついておらず、有害事象の超過リスクとの関連が認められることが、米国・コロンビア大学付属St Luke's Roosevelt HospitalのHarikrishna Makani氏らによるメタ解析の結果、報告された。RAS二重遮断は、治療抵抗性の心不全、高血圧症、糖尿病性腎症、蛋白尿症と幅広く用いられているが、有効性と安全性については議論が続いていた。今回の解析で示されたリスク・ベネフィットの結果を踏まえて著者は、「RAS二重遮断のルーチンな使用の反証が示された」と結論している。BMJ誌オンライン版2013年1月28日号掲載より。RAS二重遮断療法と単独療法を比較した無作為化対照試験をメタ解析 Makani氏らは、RAS二重遮断の長期の有効性と安全性について、単独療法とを比較するシステマティックレビューとメタ解析を行った。文献の検索は、1990年1月~2012年8月に発表されたPubMed、Embase、Cochrane central register of controlled trialsにて行い、RAS二重遮断療法と単独療法を比較した無作為化対照試験で、長期の有効性(1年以上)と安全性(4週以上)を報告しており、被験者数が50例以上であったものを適格とした。 解析は、試験コホートを心不全の有無別で階層化して比較が行われた。全死因死亡について有意な有効性みられず、一方で有害事象の有意な増大 解析には、33の無作為化対照試験、6万8,405例(平均年齢61歳、男性71%)が組み込まれた。試験期間は平均52週であった。 RAS二重遮断は単独療法と比較して、全死因死亡について有意な有効性を示す関連が認められなかった[相対リスク:0.97、95%信頼区間(CI):0.89~1.06、p=0.50]。また、心血管死とも有意な有効性を示す関連は認められなかった(同:0.96、0.88~1.05、p=0.38)。 単独療法と比較してRAS二重遮断は、心不全による入院を有意に18%減少した(同:0.82、0.74~0.92、p=0.0003)。しかし一方で、高カリウム血症リスクを有意に55%増大し(p<0.001)、低血圧症リスクを有意に66%増大し(p<0.001)、腎不全リスクを有意に41%増大した(p=0.01)。有害事象による治療中止リスクも有意に27%増大した(p<0.001)。 有効性と安全性の結果は、患者の心不全の有無別にかかわらず、全死因死亡に関する結果を除きRAS二重遮断と単独療法の比較での結果は一貫していた。全死因死亡については、心不全コホートの検討では有効性は示されず(p=0.15)、非心不全コホートの検討ではむしろ増大が示された(p=0.04)。腎不全のリスクについては、コホート間を比較すると心不全コホートでの有意な増大が示された(p<0.001)。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(57)〕 重ね着にメリットなし、かえって風邪をひくかも-ACE阻害薬とARB併用に効果増強みられず-

 Renin-angiotensine(RA)系抑制薬として、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)そして直接的レニン阻害薬 アリスキレン(商品名:ラジレス)が実用に供されているが、これらのうち2種類の併用を“dual blockade”と称する。最近このdual blockade 治療を検証したONTARGET試験やALTITUDE試験などで、その有用性が相次いで否定されている。 本試験はこれまで発表されたDual Blockade Therapy(DBT)に関する33のランダム化試験約6万8,000人のメタ解析である。その結果は、DBTは単独治療に比べて全死亡を減らすことはなく、高カリウム血症や低血圧、腎不全などの有害事象を増加させたというものである。本試験は、各トライアルの患者の臨床背景が不一致であるというメタ解析一般にみられるlimitationを差し引いても妥当な結果といえよう。 過剰なRA系の抑制は、かえって生体の代償機転を損ねる可能性が示唆されるが、今後保険上の縛りをいれることで、RA系同士の併用が処方されることのないようにわが国の臨床医に啓蒙していく必要があろう。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(53)〕 HOPE試験の再来か?ACE阻害薬が間歇性跛行に”降圧を超えた”有効性

ASOによる間歇性跛行を有する症例に対して、ACE阻害薬ラミプリルの6ヵ月投与は、歩行距離、歩行時間、歩行スピードのいずれも改善し、疼痛の軽減させることでQOL改善をもたらしたという論文である。 しかも、これらの改善に対する血圧低下は収縮期/拡張期血圧各々3.1/4.3mmHgと比較的少なく、また高血圧の有無にかかわらずその改善度は同様であった。このことから著者らは、HOPE試験と同じようにACE阻害薬の「降圧を超えた」血管保護効果があったとしている。この程度の血圧低下を、“降圧”とみなすか“降圧以外”とみなすかは判定が難しいが、HOPE試験では診察室血圧の差は軽微であっても24時間血圧、とくに夜間血圧に大きな差がみとめられていた。 本研究では、921例リクルートされた症例から212例のみが登録されており、大多数が登録基準を満たさず脱落している。患者背景では、高血圧患者は50%前後にすぎず、糖尿病患者も25%しか含まれていない。すなわち、冠動脈疾患、腎疾患など他の心血管合併症を有する例やプラセボ治療に耐えることのできない症例はすべて除外されていることになる。 実臨床の世界では、ASO症例は他の心血管合併症を有していることが多く、本試験の結果が実臨床の世界で通用するか否かは不明である。もう一つ、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)でも同様な結果が得られるか否かについて著者らは言及していないが、ACE阻害薬のブラジキニンによる血管拡張効果をWIQスコアの改善と関連づけていることから、ARBでは同様の改善効果は期待できないであろう。 いずれにしても比較的軽症なASO症例では高血圧の有無にかかわらずACE阻害薬の処方が有用であることを示す一つのエビデンスではあろう。

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ACE阻害薬、末梢動脈疾患患者の間欠性跛行とQOLを改善/JAMA

 ACE阻害薬ラミプリル(本邦未承認)は、間欠性跛行のみられる末梢動脈疾患(PAD)患者の歩行能を有意に改善し、その結果として健康関連QOLの改善をもたらすことが、オーストラリア・Baker IDI心臓・糖尿病研究所のAnna A. Ahimastos氏らの検討で示された。PAD患者は欧州と北米で約2,700万人に上る。その約3分の2が歩行時疼痛(安静時には消失)による間欠性跛行を来し、身体の機能的障害やライフスタイルの制約を受けることになる。これまでに行われた薬物療法の臨床試験では、歩行距離の延長効果は12~60%だが、同氏らはパイロット試験でラミプリル の有効性を示唆するデータを得ているという。JAMA誌2013年2月6日号掲載の報告。歩行能、QOLをプラセボ対照無作為化試験で評価 研究グループは、間欠性跛行がみられるPAD患者の客観的な歩行能、歩行能に関する患者の印象、健康QOLに及ぼすラミプリルの効果を検討する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。 対象は、2008年5月~2011年8月までにオーストラリアの3施設から登録されたPAD患者212例。これらの患者が、ラミプリル10mg/日を24週投与する群(106例、平均年齢65.5歳、男性82.1%、平均BMI 25.4kg/m2、糖尿病22.6%、高血圧48.1%、喫煙者36.8%)またはプラセボ群(106例、65.5歳、84.9%、25.7kg/m2、25.5%、51.9%、30.2%)に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、標準的なトレッドミル運動負荷検査で測定した最長歩行時間および無痛歩行時間(跛行痛が発症するまでの時間)とした。歩行能については歩行障害調査票(Walking Impairment Questionnaire:WIQ)で、健康関連QOLはShort-Form 36 Health Survey(SF-36)で評価した。無痛歩行時間が77%改善、最長歩行時間は123%改善、精神面QOLへの影響なし 治療終了時(6ヵ月後)の平均無痛歩行時間は、ラミプリル群がプラセボ群よりも有意に75秒延長し(延長時間:ラミプリル 群88秒、プラセボ群14秒、p<0.001)、最長歩行時間は255秒長かった(同:277秒、23秒、p<0.001)。 WIQの距離スコア中央値はラミプリル群がプラセボ群よりも13.8点改善し[Hodges-Lehmann 95%信頼区間(CI):12.2~15.5]、WIQ速度スコアは13.3点(同:11.9~15.2)、WIQ階段上がりスコアは25.2点(同:25.1~29.4)有意に改善した(いずれもp<0.001)。 SF-36の身体面の総合スコア中央値は、ラミプリル群がプラセボ群に比べ8.2点有意に改善した(Hodges-Lehmann 95%CI:3.6~11.4、p=0.02)。ラミプリル群では、SF-36の精神面の総合スコア中央値への影響は認めなかった(同:-0.7~1.1、p=0.74)。 著者は、「間欠性跛行を呈するPAD患者において、ラミプリル24週投与により無痛歩行時間および最長歩行時間がプラセボに比べ有意に改善し、その結果としてSF-36スコアの身体機能の有意な改善が得られた」と結論している。なお、トレッドミルでの最長歩行時間の255秒の延長は実際の坂道歩行で184mの延長に相当する。また、無痛歩行時間の75秒の延長は77%の改善、最長歩行時間の255秒の延長は123%の改善であり、これは、これまでに同様の試験が行われた薬剤の効果を上回るものだという。

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