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患者さんの自己流運動へのチェックも大事(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者医師患者医師患者医師患者医師最近、足腰が弱ってきて…。立ち上がるときに「よっこいしょ!」なんてかけ声が必要だったりして…。ハハハ…。それ、私です。何か、対策はされていますか?たまに、スクワットをしているんですが…。どんな風にされていますか?こんな感じです(実演)…回数は50回くらいです。なるほど。…もっと効果的な「7秒スクワット」というのがありますよ。患者 7秒スクワット、どんなスクワットなんですか?(興味津々)画 いわみせいじ医師 ちょっと、やってみましょうか。(実演)5秒かけてゆっくりと腰を落としていきます(伸張性収縮)。そのあと2秒間キープします(等尺性収縮)。そして、反動をつけずに立ち上がります(短縮性収縮)。患者 これ結構、効きますね。今までの私がやっていたスクワットとは全然、違いますね。どのくらいの回数をやったらいいですか?医師 1セット10回を3回。これを週に2回からスタートしてみてください。患者 はい、わかりました。頑張ってやってみます(嬉しそうな顔)ポイント自己流ではなく、筋グリコーゲンを使い切る効果的なスクワットの方法について実演を交えながら説明します。Copyright© 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

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座位行動による健康への悪影響は運動で相殺可能

 毎日8時間以上、座ったまま過ごしている糖尿病の人でも、ガイドラインが推奨する身体活動量を満たしていれば、健康への悪影響を大きく抑制できることが報告された。米コロンビア大学メイルマン公衆衛生大学院のSandra Albrecht氏、Wen Dai氏による研究であり、詳細は「Diabetes Care」に7月19日掲載された。Albrecht氏は、「この研究結果は、オフィスワーカーやタクシードライバーなどの職業柄、長時間座り続ける必要のある人々に対して、習慣的な身体活動を推奨することの重要性を示している」と述べている。 この研究では、成人糖尿病患者の座位行動時間と全死因による死亡リスク、および心臓病による死亡リスクとの関連に対して、身体活動量がどの程度の影響を及ぼし得るかが検討された。2007~2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)の参加者のうち糖尿病を有する成人6,335人を2019年まで追跡。ベースライン時の自己申告に基づく座位行動時間および中~高強度身体活動(MVPA)の時間と死亡リスクとの関連を、Coxハザードモデルで解析した。社会人口統計学的因子、生活習慣、および疾患管理状況の影響は、統計学的に調整した。 解析対象者の主な特徴は、平均年齢が59.6歳、女性48.3%で、非ヒスパニック系白人が61%であり、糖尿病の罹病期間は約半数は5年以下である一方、34%は10年以上だった。身体活動量については、週当たりのMVPAが10分未満の人が38%を占めていた。 中央値5.9年の追跡で、全死因による死亡が1,278件記録されていて、そのうち354件が心臓病による死亡だった。身体活動量が極端に少ない群(MVPAが週10分未満)や不足している群(同10~150分未満)では、座位行動時間が長いほど全死因による死亡および心臓病による死亡リスクが高いという関連が認められた。しかし、身体活動量の多い群(同150分以上)では有意な関連がなく、身体活動量の多寡による有意な交互作用が確認された(全死因による死亡については交互作用P=0.003、心臓病による死亡についてはP=0.008)。 また、1日の座位行動時間が4時間未満の群に比べて8時間以上の群では、MVPAが150分未満の場合に、全死因による死亡と心臓病による死亡の双方のリスクが高かった。しかしMVPAが150分以上の場合は、いずれの死亡についても有意なリスク上昇は認められなかった。このほかに、MVPAが多いことは、特に心臓病による死亡リスクをより大きく抑制する傾向が認められた。 論文の筆頭著者であるDai氏は、「糖尿病が蔓延している現状と、成人糖尿病患者では座位行動時間が長く身体活動量が少ない傾向のあることを考え合わせると、このハイリスク集団に対する死亡リスク抑制のための介入が急務である」と、身体活動をいっそう強く奨励する必要性を強調している。なお、米疾病対策センター(CDC)は、中強度の身体活動にはウォーキングや水中エアロビクス、ダブルスのテニス、庭の手入れなどが含まれ、ランニングや水泳、自転車での高速走行、シングルスのテニス、バスケットボールなどは高強度運動に該当するとしている。

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妊娠糖尿病は乳がんのリスクを高めない

 妊娠糖尿病は乳がんのリスクとは関連がないようだ。平均12年間追跡した結果、妊娠糖尿病を発症しなかった女性と比べ、乳がんの発症率に差は認められなかったという。デンマークのステノ糖尿病センターおよびオーデンセ大学病院のMaria Hornstrup Christensen氏らが、欧州糖尿病学会(EASD 2024、9月9~13日、スペイン・マドリード)で発表する。 妊娠糖尿病は妊娠中に生じる、糖尿病の診断基準を満たさない程度の高血糖であり、難産や巨大児出産などのリスクが上昇する。妊婦の約14%が妊娠糖尿病を発症するとされ、症例数は増加傾向にある。通常、出産後に糖代謝は正常化するが、その後に心血管代謝疾患リスクが上昇することが知られている。また妊娠糖尿病の発症にはインスリン抵抗性が関与していて、そのインスリン抵抗性は心血管代謝疾患のほかに、乳がんを含むいくつかのがんのリスクと関連する可能性が示唆されている。Christensen氏らの今回の研究では、それらの中で乳がんに焦点が当てられた。 解析の対象は、1997~2018年に出産し、妊娠前に糖尿病や乳がんの既往がなかった70万8,121人のデンマーク人女性(平均年齢28歳)。このうち、2万4,140人(3.4%)に妊娠糖尿病の診断の記録が認められた。平均11.9年(範囲0~21.9年)の追跡で、7,609人が乳がんを発症していた。 妊娠糖尿病の記録のある人とない人で、乳がんの発症リスクに有意差は認められなかった(粗ハザード比0.99〔95%信頼区間0.85~1.15〕)。さらに、年齢や民族、妊娠前の体重、喫煙習慣、子どもの人数、収入、職業、教育歴、高血圧の既往などを調整しても、この結果に大きな変化はなかった(調整ハザード比0.96〔同0.93~1.12〕)。また、この結果は、閉経前乳がんと閉経後乳がんに分類した上で行った解析でも同様だった。 Christensen氏は、「妊娠中に妊娠糖尿病の診断を受けた女性にとって、乳がんを発症するリスクが高くないという事実は、安心材料と言えるだろう」と述べている。ただし同氏は、「妊娠糖尿病は乳がんとは関連がないものの、妊娠糖尿病と診断されたことのある女性は、その後の健康に気を配る必要がある」と強調している。研究者らによると、妊娠糖尿病は後年の糖尿病やメタボリックシンドローム、慢性腎臓病、心臓病のほかに、産後うつ病を含むメンタルヘルス疾患のリスク上昇に関連しているという。 なお、学会発表される報告は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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主食・主菜・副菜をとる頻度と栄養素摂取量の関係

 主食・主菜・副菜を組み合わせた食事をとる頻度が、さまざまな栄養素の習慣的な摂取量とどのように関係するかを詳細に調べる研究が行われた。その結果、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度は栄養素摂取量の適切さと関連し、その頻度が低いほど、たんぱく質やビタミンなど、いくつかの栄養素の摂取量が低いこと、習慣的な摂取状況が不足の可能性の高い栄養素の数が多いことが示された。神戸学院大学栄養学部の鳴海愛子氏らによる研究であり、「Nutrients」に5月26日掲載された。 食事バランスを考える料理区分として、「主食」はごはん・パン・麺など、「主菜」は魚・肉・卵・大豆・大豆製品を主材料とする料理、「副菜」は野菜・いも・海藻・きのこを主材料とする料理とされる。健康日本21(第三次)では、「主食・主菜・副菜を組み合わせた食事が1日2回以上の日がほぼ毎日の者の割合」を増やすことが目標とされている。一方、これらと習慣的な栄養素摂取状況の適切度との関連はこれまで検討されてこなかった。加えて、食事習慣は他の生活習慣とも関連し、例えば、定期的に運動している人ほど食事の質は高い。食事の内容や頻度と栄養素摂取量との関係は、生活習慣を含め他の要因の影響も考慮に入れて検討する必要がある。 著者らは今回、無作為に抽出した30~69歳の日本人を対象とする横断研究を行い、調査票を用いて、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度や、直近1カ月間の食事内容などを調査し、栄養素摂取量を算出した。解析に必要なデータの得られた対象者は331人(平均年齢48.8±10.2歳、男性62.8%)だった。 対象者のうち、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事が1日2回以上の日が「ほぼ毎日」だった人は132人(39.9%)、「週に4~5日」は65人(19.6%)「週に2~3日」は74人(22.4%)、「週に1回以下」は60人(18.1%)だった。「ほぼ毎日」の人は、女性、既婚者の割合が高く、年齢も高かった。一方、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度は、BMI、教育歴、世帯年収、喫煙の有無、1日の歩行時間、睡眠時間、飲酒頻度とは関連していなかった。 たんぱく質の摂取量の不足の確率が50%以上である人の割合を比較したところ、「ほぼ毎日」の人では31.8%、「週に4~5日」は33.8%、「週に2~3日」は47.3%、「週に1回以下」は56.7%であり、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度が少ないほど摂取量が不足の可能性が高い者が多い傾向が認められた(傾向性P<0.01)。この傾向は、ビタミンB2、B6、葉酸、ビタミンCについても同様に認められた。また、摂取量が不足の確率50%以上である栄養素の数(平均値)が、「ほぼ毎日」の人では2.0、「週に4~5日」は2.1、「週に2~3日」は2.7、「週に1回以下」は3.1であり、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度が少ないほど習慣的な摂取状況が不足の可能性が高い栄養素の数が多い傾向が認められた(傾向性P<0.01)。一方、頻度にかかわらず、食物繊維の摂取量が生活習慣病予防のための摂取量の下限値未満である人(全体で86.1%)と食塩の摂取量が過剰の人(同98.5%)の割合は高かった。 今回の研究結果について著者らは、「高齢者の低栄養の予防や、若い女性のやせに対する介入など、栄養不足を予防するための介入に役立つ可能性がある」と述べている。また、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度が低い人ほど海藻、魚介類、卵の摂取量が少なかったことや、頻度にかかわらず食物繊維や塩分の摂取量が適正でない人が多かったことを挙げ、適切な食材選択などについて、さらなる研究が必要だとしている。

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早老症の寿命延長に寄与する治療薬ロナファルニブ発売/アンジェス

 アンジェスは、小児早老症であるハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)とプロセシング不全性プロジェロイド・ラミノパチー(PDPL)の治療薬であるロナファルニブ(商品名:ゾキンヴィ)の発売に伴い、都内でプレスセミナーを開催した。 HGPSとPDPLは、致死性の遺伝的早老症の希少疾病であり、若い時点から死亡率が加速度的に上昇する疾患。これらの疾患では、深刻な成長障害、強皮症に似た皮膚症状などを来す。 ロナファルニブは、2023年3月に厚生労働省により希少疾病医薬品に指定され、2024年1月に国内製造販売承認を取得、同年4月に薬価基準に収載され、同年5月27日に発売された。 プレスセミナーでは、これら疾患と治療薬の概要が講演されたほか、ムコ多糖症や脊髄性筋萎縮症などを対象に衛生検査事業を同社が開始することが発表された。全世界で200例程度の患者・患児が存在 はじめに井原 健二氏(大分大学医学部医学科長 小児科学講座 教授)が、「HGPS/PDPL:病態・疫学・歴史と未来」をテーマに、主に疾患の概要について説明を行った。 ヒトは、小児期の発育(成長・発達・成熟)と成人期の老化(衰退・退行・退縮)の各要素により一生を終える。HGPS/PDPLなどの早老症は、老化の3要素が小児期から起こる疾患であり、発症年齢から先天性、乳児型、若年/成人型に分類される。 主な徴候としては、白髪・脱毛、難聴、白内障、強皮症様の皮膚症状、脂肪異栄養症、2型糖尿病、骨粗鬆症、動脈硬化および脳血管疾患などがある。また、100以上の症候群が報告され、乳児で発症すれば乳児早老症(コケイン症候群)、成人で発症すれば成人早老症(ウェルナー症候群)と発症年代の違いにより病名も変わってくる。 中でもHGPSは、出生児400万人に1人の発症とされ、患児は全世界に140例程度と推定されている。発症要因はLMNA遺伝子の病的変異が9割で、生後1年以内に発育不全、生後1~3年で特徴的な顔貌(下顎形成不全など)と早老徴候がみられ、平均余命は14.5歳。HGPSの老化には、Lamin A遺伝子の異常スプライシングによる翻訳時の欠失が知られ、異常ラミンが細胞核の物理的損傷や染色体クロマチン構造の異常を引き起こし、これらが病的変化の原因になることが判明している。また、核ラミナの変異が原因の遺伝性疾患であるラミノパチーはイコールで早老症ではなく、筋ジストロフィーや拡張型心筋症などもあり、これらの1つに早老症があるとされる。その代表疾患がHGPSであり、PDPLであるという。PDPL患者は、全世界で50例程度と推定され、生命予後は少し長く成人期まで生きることができる。 HGPSとPDPLの診断では、診察・問診後に遺伝子検査が必須となり、その結果遺伝子変異などの態様により分類される。 臨床症状としては、HGPSを例にとると「低身長(<3パーセンタイルなど)」、「不均衡な大頭などの顔の特徴」、「乳歯の萌出・脱落遅延などの歯科所見」、「さまざまな色素沈着などの皮膚所見」、「全禿頭や眉毛の喪失などの毛髪所見」、「末節の骨溶解などの骨格筋所見」、「細く甲高い声」などの症状がみられる。これらを大症状、小症状、遺伝学的検査の3つの組み合わせで確定または推定と診断される。医療者でも小児早老症の認知度は75%程度 HGPSとPDPLの疾患啓発については、「GeneReviews日本語版」や「プロジェリアハンドブック(日本語版)」などで医療者へ行っており、今後も医療者向けに2025年の診断基準の改訂情報や検査の高度化(血漿プロジェリン測定)を発信していくという。 また、啓発活動の一環として、「小児遺伝子疾患の診療経験・学習機会について」を医師51人に調査したアンケート結果を報告した。・「医学生時代に小児遺伝子疾患について学んだか」について聞いたところ、「はい」が53%、「いいえ/覚えていない」が47%だった。・「小児遺伝子疾患である早老症を知っているか」について聞いたところ、「はい」が75%、「いいえ」が25%だった。・「早老症のうちHGPS/PDPLなどの疾患群を知っているか」を聞いたところ、「はい」が27%、「いいえ」が73%だった。・「小児遺伝子疾患の診療で困ったこと」(複数回答)では、「治療に困った」が19人、「診断に困った」が18人と回答した医師が多かった。 まだ、医療者の中でも広く知られていないHGPSとPDPLの疾患啓発は、今後も続けられる。寿命の延伸に期待されるロナフェルニブ 「HGPSの治療の実際、および治療薬の登場により何が変わるのか?」をテーマに松尾 宗明氏(佐賀大学医学部小児科学 教授)が、HGPSの治療の概要やロナファルニブ登場の意義などを説明した。 はじめに自験例としてHGPSの患児について、生後3ヵ月で皮膚の硬化を主訴に診療を受けた症例を紹介した。その後、患児はHGPSが疑われ、生後5ヵ月でアメリカでの遺伝子検査により確定診断された。以降は、対症療法が行なわれ、10歳にときに無償提供プログラムでロナファルニブ単剤が投与され、現在も存命という。 ロナファルニブの作用機序は、核膜の構造・機能を損なうファルネシル化された変異タンパク質(核の不安定化と早期老化を惹起)の蓄積を阻害することで死亡率を低下させ、生存期間を延長する。 臨床試験では、HGPSおよびPDPLを対象としたロナファルニブの観察コホート生存試験が行われ、ロナファルニブ投与被験者は未治療対照と比較して、平均生存期間が4.327年延長した(平均9.647年vs.5.320年、名目上のp<0.0001、層別log-rank検定)。また、死亡率はロナファルニブ投与群で38.7%(24/62例)、未治療対照群で59.7%(37/62例)で、ハザード比は0.28(95%信頼区間:0.154~0.521)だった。HGPSおよびPDPLでの死亡原因は、動脈硬化の進行が一番多く、治療薬の効果として血管の硬化を抑えている可能性が示唆された。 用法・用量は、通常、ロナファルニブとして開始用量115mg/m2(体表面積)を1日2回、朝夕の食事中または食直後に経口投与し、4ヵ月後に維持用量150mg/m2(体表面積)を1日2回、朝夕の食事中または食直後に経口投与する(なお、患者の状態に応じて適宜減量する)。 主な副作用では、嘔気・嘔吐、下痢などの消化器症状が多く、とくに最初の4ヵ月に多いが、次第に慣れていくという。また、肝機能障害も初期に出現しやすく、QT延長もみられる場合もある。そのほか、潜在的なリスクとして、骨髄抑制、腎機能障害、眼障害、電解質異常も散見されるので注意しつつ処方する必要がある。 松尾氏はロナファルニブの登場により、「心血管系の合併症(脳血管障害を含む)の発症抑制」、「患者QOLの向上」、「延命効果」、「国内の患者さんへの適切な診断・治療の提供」などが変化すると期待をみせた。その一方で、「外観、体格など骨格系の問題、関節拘縮などに対する効果は乏しいこと」、「心血管系に対する効果もまだ限定的であること」、「心血管系の合併症(脳血管障害を含む)の管理」、「延命に伴う新たな問題(老化進行による予期せぬ合併症)」などが今後解決すべき課題と語り、講演を終えた。

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糖尿病黄斑浮腫へのSGLT2阻害薬使用で注射回数減

 糖尿病黄斑浮腫患者に対するSGLT2阻害薬の使用は、ステロイド薬のトリアムシノロンアセトニド(TA)注射頻度の減少と関連しており、非侵襲的かつ低コストの補助療法となる可能性があるとの研究結果が発表された。君津中央病院糖尿病・内分泌・代謝内科の石橋亮一氏と千葉大学眼科、糖尿病・代謝・内分泌内科、人工知能(AI)医学による研究チームによる研究であり、「Journal of Diabetes Investigation」に6月14日掲載された。 増殖糖尿病網膜症による失明は、近年減少傾向ではあるが、糖尿病黄斑浮腫は、中高年の社会生活の質を低下させる重要な視力障害の原因となっている。糖尿病黄斑浮腫の第一選択薬は抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬の硝子体内注射だが、眼球への頻回の注射と、高額な医療費が患者の負担となり、また奏功しない患者の存在も次第に明らかとなり、ステロイドテノン嚢下注射(STTA)なども選択される。ただし、TA投与も侵襲的な局所注射療法であり、眼圧上昇などの特有の副作用がある。 一方、2型糖尿病などに広く用いられている経口薬のSGLT2阻害薬は、糖尿病黄斑浮腫への治療効果が報告されている。著者らの過去の研究では、抗VEGF薬投与歴のある糖尿病黄斑浮腫患者において、SGLT2阻害薬の使用が抗VEGF薬の投与頻度の減少と関連することを明らかにした。 著者らは今回の研究では、糖尿病黄斑浮腫へのTA投与に着目し、SGLT2阻害薬の有効性を評価するため、日本の保険請求データベースを用いた後ろ向きコホート研究を行った。糖尿病黄斑浮腫を合併する糖尿病患者を対象とし、他の眼疾患(加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症、脈絡膜新生血管など)への抗VEGF薬投与歴のある患者などは除外した。2014年以降のSGLT2阻害薬または他の糖尿病治療薬の使用開始日を指標日とし、指標日以降のTAのテノン嚢下または硝子体への投与頻度などを解析した。 傾向スコアマッチングを行い、SGLT2阻害薬使用群1,206人(平均年齢54±9歳、男性63%)と非使用群1,206人(同54±10歳、61%)が選択された。平均追跡期間はSGLT2阻害薬使用群が2.3±1.5年(2,727人年)、非使用群が3.4±2.1年(4,141人年)だった。観察開始時点で糖尿病関連眼疾患を合併していた患者は、SGLT2阻害薬使用群で852人(71%)、非使用群で858人(71%)、抗VEGF薬投与歴のある患者は同順に46人(3.8%)、15人(1.2%)、TA投与歴のある患者は55人(4.6%)、56人(4.6%)だった。 TAの投与頻度は、SGLT2阻害薬使用群で1,000人年当たり63.8回、非使用群で同94.9回だった。生存時間解析を行ったところ、SGLT2阻害薬は、初回のTA投与(ハザード比0.66、95%信頼区間0.50~0.87)、2回目のTA投与(同0.53、0.35~0.80)、3回目のTA投与(同0.44、0.25~0.80)が必要となるリスクをそれぞれ有意に低下させることが明らかとなった。さらに、さまざまな臨床背景によりサブグループ解析を行った結果、SGLT2阻害薬によるTAの投与頻度の減少効果は一貫して認められた。また硝子体手術の頻度も初回は2群間で差はなかったものの、2回目で有意に減少していた(同0.51、0.29~0.91)。 以上の結果から著者らは、「SGLT2阻害薬は、糖尿病黄斑浮腫に対する新たな非侵襲的かつ低コストの補助療法となる可能性がある」と結論付けている。SGLT2阻害薬の効果の基礎となるメカニズムとしては、局所代謝の改善、虚血の改善、浮腫の軽減などが考えられると説明した上で、SGLT2阻害薬の併用は糖尿病黄斑浮腫の発症予防などの報告もされていることから、より早期の糖尿病黄斑浮腫でより有効な可能性を指摘し、今後さらなる研究が必要だとしている。

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事例006 「B001-3 生活習慣病管理料」の疑義解釈【斬らレセプト シーズン4】

解説前回は「B001-3 生活習慣病管理料」(以下「管理料」)の算定の流れをお伝えしました。今回は、算定にあたり気を付けなければならない疑義解釈などをお届けします。今後の算定の際にご参照ください。1)「主病」とはの定義が「管理料」に設定されていませんが、B000 特定疾患療養管理料の留意事項(9)を準用すると解釈されました。特定疾患療養管理料算定対象の傷病名(胃炎など)を含む複数の傷病名を主病とした場合は、いずれかの主病1つに該当する管理料などを算定します。その選定根拠と指導内容などの診療録への記載は必須です。2)「管理料(I)」、「管理料(II)」を算定した同月別日に他の疾患の診療を行った場合、他の疾患にかかる指導料や検査料などは算定できます(疑義解釈 1-問136、137)。ただし、同月に重複算定が認められていない指導料などは算定できません。3)診療ガイドラインを参照して治療にあたることが必要ですが、製薬会社など発行の診療ガイドラインを盛り込んだ「患者さん向け資材」の活用ができます(調剤報酬)。4)「管理料(II)注6情報通信機器」を用いて行った場合、電子的な署名が必須とされました(疑義解釈 その1-問140)。遠隔診療を望まれる患者がいる場合、2回目以降の計画書には自書を省略してもよいとされています。初回管理料算定にかかる自書の署名まで対面で行い、その後から情報通信機器を使用した管理に移行することも可能です。5)200床未満の医療機関において「管理料(I)」などを算定できる高血圧症を主病とする場合には、「高血圧治療補助アプリ適正使用指針」を参照して「特定保険医療材料227 高血圧症治療補助アプリ」を使用した管理ができます(疑義解釈 その1 材料 問1)。

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心筋梗塞既往の糖尿病患者へのキレーション療法、有効性は?/JAMA

 50歳以上の心筋梗塞既往の糖尿病患者において、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)キレーション療法はプラセボと比較し、血中鉛濃度が有意に低下したが、心血管イベントは減少しなかった。米国・マウントサイナイ医療センターのGervasio A. Lamas氏らが、米国とカナダの88施設で実施した「Trial to Assess Chelation Therapy 2:TACT2試験」の結果を報告した。2013年には、心筋梗塞既往患者1,708例を対象とした「TACT試験」で、EDTAキレーション療法により心血管イベントが18%有意に減少したことが報告されていた。JAMA誌オンライン版2024年8月14日号掲載の報告。主要エンドポイントは全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術、不安定狭心症による入院の複合 研究グループは、登録の少なくとも6週間前に心筋梗塞の既往がある50歳以上の糖尿病患者を、2×2要因デザイン法を用いて、EDTAキレーション療法群とプラセボ点滴静注群(いずれも週1回3時間の点滴静注を計40回)、または高用量マルチビタミン・ミネラル経口投与群とプラセボ経口投与群(1日2回60ヵ月間経口投与)に無作為に割り付けた。本論文ではキレーション療法群とプラセボ点滴静注群の比較について報告されている。 EDTAキレーション溶液は、推定クレアチニンクリアランスに基づきEDTA-二ナトリウム最大3g、ならびにアスコルビン酸、塩化マグネシウム、プロカイン塩酸塩、未分画ヘパリン、塩化カリウム、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)、パントテン酸、チアミン、ピリドキシンおよび注射用水で構成された。 主要エンドポイントは、全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術、不安定狭心症による入院の複合であった。 2016年10月27日~2021年12月31日に、1,000例がキレーション療法群(499例)またはプラセボ群(501例)に無作為に割り付けられた。最終追跡調査日は2023年6月30日であった。追跡期間4年の主要エンドポイント発生、キレーション療法群35.6% vs.プラセボ群35.7% 解析対象は、少なくとも1回試験薬の投与を受けた959例(キレーション療法群483例、プラセボ群476例)で、年齢中央値67歳(四分位範囲:60~72)、女性27%、白人78%、黒人10%、ヒスパニック20%であった。 追跡期間中央値48ヵ月において、主要エンドポイントはキレーション療法群で172例(35.6%)、プラセボ群で170例(35.7%)に発生した(補正後ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.76~1.16、p=0.53)。Kaplan-Meier法による主要エンドポイントの推定5年累積発生率は、キレーション療法群45.8%(95%CI:39.9~51.5)、プラセボ群46.5%(39.7~53.0)であった。 主要エンドポイントの各イベントの発生率も治療群間で差はなかった。心血管死、心筋梗塞または脳卒中のイベントはキレーション療法群で89例(18.4%)、プラセボ群で94例(19.7%)に認められた(補正後HR:0.89、95%CI:0.66~1.19)。全死因死亡は、キレーション療法群で84例(17.4%)、プラセボ群で84例(17.6%)であった(0.96、0.71~1.30)。 血中鉛濃度中央値は、キレーション療法群ではベースラインの9.0μg/Lから、40回が終了した時点で3.5μg/Lに低下し(p<0.001)、プラセボ群ではそれぞれ9.3μg/L、8.7μg/Lであった。 重篤な有害事象は、キレーション療法群で81例(16.8%)、プラセボ群で79例(16.6%)にみられた。

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糖類控えめの食生活は生物学的年齢の若さと関連

 添加糖類の摂取は老化を早める可能性があると、新たな研究が警告している。この研究では、食生活が健康的でも、添加糖類の摂取が1g増加するごとに生物学的年齢が上昇する可能性がある一方で、ビタミンやミネラル、抗酸化物質、抗炎症作用のある栄養素が豊富な食事は、生物学的年齢の若さと関連することが示されたという。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)精神医学・行動科学分野教授のElissa Epel氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に7月29日掲載された。 この研究では、National Heart, Lung, and Blood Institute Growth and Health Study (NGHS)への参加女性342人(黒人と白人がそれぞれ171人、平均年齢39.2歳)を対象に、食事パターンとエピジェネティック年齢(細胞や組織、臓器などの生物学的年齢)との関連が検討された。NGHSは研究開始時に9〜10歳だった白人または黒人の女児を登録して1987〜1999年にかけて心代謝の健康とその関連因子を調査した研究で、2015〜2019年に追跡調査が行われていた。 Epel氏らは、対象者の食事摂取記録から栄養と食品の平均摂取量を計算し、全体的な食事の質を評価した。この評価には、既存の代替地中海食(Alternate Mediterranean Diet;aMED)スコア、代替健康食指数(Alternate Healthy Eating Index;AHEI)とともに、研究グループが考案したエピジェネティック栄養指数(ENI)が用いられた。さらに、3日間の食事摂取記録から添加糖類の平均摂取量を、唾液のDNAメチル化プロファイルから第二世代のエピジェネティック時計の指標とされるGrimAge2を算出した。 対象者は、1日平均61.5gの添加糖類を摂取していたが、範囲は2.7gから316.5gと個人差が大きかった。解析の結果、aMEDスコア、AHEI、ENIが高いほどGrimAge2が低くなり、特にaMEDスコアとGrimAge2の関連は強いことが明らかになった。地中海食は、一般的に新鮮な野菜と果物、ナッツ類、豆類、全粒穀物、主な脂肪源としてのオリーブオイルを重点的に摂取する一方で、魚介類、赤肉、加工食品、砂糖を多く使った菓子の摂取を制限する。一方、添加糖類の摂取量が増えるほどGrimAge2も高くなり、添加糖類の摂取量が1g増加するごとにGrimAge2は0.02増加する可能性が示唆された。 Epel氏は、「食事因子の中でも添加糖類を大量に摂取すると代謝の健康が損なわれ、疾患の早期発症につながることが明らかにされている。今回の研究により、添加糖類と疾患発症との関連の背景にはエピジェネティック年齢の加速が関係していることが示された。過剰な添加糖類の摂取は、健康的な長寿を妨げる多くの要因の一つである可能性がある」と話している。 論文の上席著者である、米カリフォルニア大学バークレー校食品・栄養・集団健康学教授のBarbara Laraia氏は、「エピジェネティックな変化は可逆的であるように見えることを考えると、長期にわたって継続的に添加糖類を1日10g控えることは、エピジェネティック時計を2.4カ月戻すことに近いのかもしれない」と言う。同氏はさらに、「重要な栄養素を多く含み、添加糖類の少ない食品に焦点を置く食事法は、長生きを目指して体に良い食生活を心がけようとする人の意欲を高める新たな方法になる可能性がある」と付け加えている。 一方、論文の筆頭著者であるUCSF、Osher Center for Integrative HealthのDorothy Chiu氏は、「われわれが調査した食事内容は、疾病予防と健康増進のための既存の推奨内容と一致しており、特に、抗酸化作用と抗炎症作用のある栄養素の効力が強調されている。ライフスタイル医学の立場から言えば、これらの勧告に従うことで、暦年齢に比べて生物学的年齢が若くなる可能性があるということは、心強いことだ」と述べている。

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第225回 令和のカネミ油症事件、小林製薬に創業家を斬る覚悟はあるのか?

紅麹サプリでの健康被害が報告された小林製薬が4ヵ月ぶりに開催した記者会見。会見で明らかにされた8月4日時点での健康被害状況は、死亡に関連して詳細調査対象となった事例が107件。その内訳は調査完了21件、調査継続中が32件、詳細調査の同意取得ができないなどで調査困難なケースが54件。そのほかに入院が467件、検査入院を含む通院が1,819件。今回も前回に続き、小林製薬の記者会見での質疑応答から感じたことをお伝えしたい。あの事件を彷彿とさせる健康被害会見の質疑では、調査完了21件について「(サプリ摂取との)関係性があり/なしのどちらとも言えないというレベルのものも含まれる」(同社執行役員/信頼性保証本部本部長・渡邊 純氏)とのことだった。これらがすべて小林製薬の紅麹サプリが原因と仮定した場合、製造過程での過失を原因とした食品健康被害事件としては、1968年に発覚したPCB(ポリ塩化ビフェニル)が混入した米ぬか油による健康被害「カネミ油症事件」(2024年3月末の累計認定患者2,377人)に匹敵する事案となる。会見で同社は健康被害を訴えた消費者に対しては、医師の診断書内容などを総合的に勘案し、相応の因果関係が認められれば、医療費・交通費、慰謝料、休業補償、後遺障害による逸失利益も含めて補償する方針を説明した。摂取により死亡が疑われる事例に関しては別途対応するという。すでに原因究明は厚生労働省と国立医薬品食品衛生研究所に委ねられているため、補償認定をどのように行うかも会見で質問が出たが、「最後の判断は当社でやっていく。社内の薬剤師も含めて会議体を設定し、医師、弁護士など知見に富んだ外部有識者の監修による(判定)基準を策定している。ただ、それでも判断が難しい部分もあり、CROを通じた主治医の詳細調査、その結果に対する(監修)医師の解釈も踏まえ、間違いないかの判断を突き詰めてやっていきたい」(同社執行役員/補償対応本部本部長・佐藤 圭氏)とのことだ。会見は同社側の説明が39分超、そこから会場、オンラインそれぞれからの参加記者との質疑に入った。前回書いたように、開始前に広報・IR部の担当者から「1人2問まで」との情報を得ていたので、私の中で優先順位が高いと考えた2問に絞り込み、質問の挙手を続けた。私が指名されたのは質疑開始から41分過ぎ、最初の質問者から8番目だった。私が用意した質問は、以前、本連載でも触れた同社の事実検証委員会報告書で感じた疑問だった。質疑応答その1:調査の遅さ、所轄官庁への相談の有無【村上】健康被害の公表と製品回収の基準について、社内でいろいろ検討されて特定保健用食品の基準を援用されたようですが、規制の多いヘルスケア業界では、判断が悩ましい場合は所轄官庁に問い合わせるのが一般的だと思います。今回の件で事前の所轄官庁への問い合わせの有無、あった場合はどのような回答を得ていたのか、ない場合はなぜ問い合わせなかったのかを教えていただきたいと思います。【渡辺】監督官庁の方へのご相談はこの時に行っておりません。今思えばですが、われわれの中で自ら考え、こういった方向性で考えられるというか、物事を捉えることができるんじゃないかと少し内向き、自分たちで解決しようとする意識が強すぎたと反省しております。今であれば監督官庁にご相談に行き、前向きにやることが必要であると理解しております。【村上】事実検証委員会の調査報告書を見ると、2月5日に信頼性保証本部で健康被害の原因についてシトリニン説、モナコリンK説、コンタミネーション説の3つを検証する方針を決定していますが、原因特定、3つの仮説の絞り込みのためには症例を報告した医師からのヒアリングが非常に重要だと思われます。しかし、御社では医師に連絡を取ったのは2月5日のかなり後で、わざわざ御社から月末の面談候補日を医師に提示しています。これがなぜだったのかをお伺いしたいんですが。【渡辺】確かにおっしゃる通りで、それぞれの患者様に起こっていることは、その主治医が一番わかっておりますので、速やかにその情報を取ることが必要であったと今は感じております。この時は、その点が十分に速やかにできていなかったことは現在、反省するところでございます。面談候補日をわざわざ月末に設定した件は、準備に一定の時間がかかったためと私は理解していますが、細かな理由は、今、確認が取れておりません。この回答を得ても私が前述の事実検証委員会に関する記事を執筆した時に書いた「過度な悪意はない危機感の欠如」との印象は変わらないどころか、むしろ確信に近いものにすら感じた。質疑応答その2:青カビに対する問題意識について小林製薬が公表した事実検証委員会の調査報告書の中で、多くの人が驚いたであろうと思われるのが、紅麹原料の培養タンクの蓋内側に青カビが付着していたことを確認した同社旧大阪工場の現場担当者が、その事実を品質管理担当者に伝えたところ「青カビはある程度は混じることがある」旨を告げられたという点だ。この点についての直接的な質疑応答は2回あった。【記者】現場が青カビを認識していながら問題視しなかったという証言は、いつ頃のことだったのでしょうか?【山下】大変申し訳ございませんが、本日時点ではいつのことであったかという詳細はまだ判明しておりませんので、お答えできない状況でございます。【記者】青カビの件ですが、健康被害の訴えがあってから事実を公表した3月22日まで製造現場を積極的に調べていれば、もっと早くわかった可能性もあると思いますが。【山下】初期段階の原因究明でシトリニン、モナコリンK、コンタミネーションを疑いましたが、その時点で製造記録や品質管理担当者への確認の結果、過去と大きな変化はなかったという事実だけを受け止め、そこを信じてしまったことが問題だったと考えております。青カビの件の質問がこれだけに留まった背景には会見の時間制限に加え、記者側も呆れを通り越しているのではと思われた。創業家を排除する覚悟があるような、ないようなそして今回、最も質問が多かったのが、今後の経営体制と創業家である小林家との関係だった。今回の記者向け配布資料の中で私が一番驚いたのは「経営体制の抜本的改革」との項目で「同質性の排除」と明記していた点だ。小林製薬が同族企業である以上、同質性の排除とは率直に読めば、創業家中心の雰囲気を打破するということになる。しかし、「排除」という言葉はあまりにも意味、語感ともに強すぎる。このため「同質性の排除」は同族企業特有の社風を排除することと別の意味で使っているのかと思っていたが、そうではなかった。前回、山根氏が会見冒頭で述べた「他者を慮る想像力を見失っていた、弱くしてしまっていた」について「なぜ弱くしてしまっていたのか?」と質疑で問われた際の理由の1つにこの同質性を挙げ次のように語った。「やはり同質性の問題があったと思います。われわれは創業家中心の同族会社で同質性は良い時は一枚岩で強く回りますが、悪い時は負の方向に回ります。これが想像力の弱体化と連動し、今回の事態を招いたのではないかと思います」山根氏自身は1983年入社の生え抜きだが、私の印象では冒頭の謝罪の弁も質疑応答も用意された原稿を読むわけでもなく、本人なりの言葉で話していた印象がある。その中で「同質性の排除」もかなりの覚悟で盛り込んだのだろうと感じたが、同時に創業家に関する質問では、ある意味揺れ動いていると感じられる部分もあった。とりわけ今回代表取締役会長を辞任し、特別顧問に就任した一雅氏について記者から問われた際がそうだ。ちなみに一雅氏の特別顧問報酬が月額200万円であることが明らかになり、世間の批判の的にもなっている。以下、関連質疑応答を紹介する(複数の記者とのやり取りを抜粋)。質疑応答その3:特別顧問の一雅氏、報酬が月額200万円について【記者】先日、経済同友会の新浪 剛史代表幹事が、“これだけ社会に迷惑をかけた会社で前会長が月収200万円の特別顧問に就任し、小林前社長が取締役で残留する甘い体制を是とした理由を説明すべきだ”と公に発言しています。【山根】ご批判は承知しています。新浪さんのコメントを読み、正直自分も恥ずかしかったし、ショックでした。一雅氏が辞任意向を示した際に特別顧問として事業に貢献したいと申し出がありました。新製品開発、マーケティングで当社に貢献されたのは事実で、われわれの気付かない着眼点などもあり、それを与えていただく前提で取締役会は合意しました。【記者】創業家は今もまだ大株主である以上、無視することは困難です。先ほど創業家に忖度しないとの発言がありましたが、そう言い切れる根拠をご説明ください。【山根】大株主の考え方にわれわれが耳を傾けるのは当然ですが、われわれの考え、あるべき姿や方向に基づき主張すべきは主張し、皆さんが納得する良いアイデアが(創業家から)あったら受け入れる。是々非々の姿勢を貫きたいと私は思っています。【記者】一雅氏が特別顧問として関わりたいと申し出たから特別顧問としたとの説明自体が既に忖度しているとの解釈もあると思います。【山根】当然そう思われる方もいるでしょう。一方でわれわれはこれからもメーカーとしてさまざまなアイデア・事業を作っていくわけで、この点で知見があるならば生かすことが会社にとっても意味があることじゃないかと思い、取締役会では決断しました。【記者】再発防止に注力しなければならない中、新製品やマーケティングに対する知見があるから力を貸して欲しいというのは拙速と受け止められかねませんが。【山根】そこはやはり先ほど触れましたが、品質・安全に対する今までの考え方はわれわれがさらに強くしなければならないと思いますので、そのフィルターの上に新しいアイデア・知見をどう構築するかが今後求められます。これはもう新体制で判断するのがわれわれの権利ですから、何でも採用するという判断は一切いたしません。【記者】3月、今回の会見共に小林前会長がいらっしゃらない理由を教えてください。【山根】3月の会見は執行サイドのトップである社長が出るという判断だったと思います。今回、本人はもう辞任済みで同席できなかったのだと思います。【記者】辞任しても特別顧問として残られますし、山根社長がおっしゃった同質性の問題にも深く関わってる方です。何らかの説明責任はあると思いますが。【山根】これも本人にそれをどう決断していただくかも当然あると思います。私は1つの考えとしては説明責任を果たすべきだと思います。【記者】一雅氏の特別顧問の月額報酬が200万円は適切とお考えですか?【山根】捉え方はさまざまあると思います。この額は本人より提示のあったもので、取締役会で議論して、合意しました。先ほど少しも触れましたが、われわれにない視点やアイデアを提供していただく前提でこの金額で合意したものです。何度も申し上げますが、われわれの顧問でありますから助言があったとしても、われわれは是々非々で判断し、すべて言いなりになるわけではありません。同社関係者をして“天皇”とも呼ばれ、山根氏の入社時点で社長の任にあった一雅氏のことについては、どうしても奥歯にものが挟まった言い方になるのだろう。そして会見中、ある関西ローカル局の記者が「この問題について質問のため電話をしても、電話での質問は一切答えられませんと言われ、広報部長さんにも何度も電話しても、1回も折り返しがありません。正しい報道をしたいという私達の考えと相いれない。改善してほしい」との発言まであった。ちなみに私個人は2度電話で問い合わせ、いずれも回答をもらえているので「?」と思ってしまった。答えようのない質問だったのかもしれないが、「1回も折り返しがない」は対応としていかがなものだろう? この時は会見前の控室での出来事が頭に浮かんでしまった。これも強力な創業家によって運営されてきた社風の一端だろうか? 同社の改革とは絶壁を切り崩すかのごとき難易度に思えてしまう。

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転倒患者の精査義務【医療訴訟の争点】第3回

症例自宅や施設、病院入院中に患者が転倒することを経験している医師は多いと思われる。転倒患者の診療の適否が争われた松江地裁令和4年9月5日判決を紹介する。転倒事故の責任も争点となったが、本コラムでは転倒患者の診療の適否に争点を絞ることとする。<登場人物>患者91歳(転倒時)・女性施設入所前より腰部脊柱管狭窄症、慢性腎不全、心房細動(ワルファリン服用中)、糖尿病、両膝関節症および高血圧症などの既往あり。被告病院に併設する介護老人保健施設に入居していたところ、居室のベッドの近くで転倒しているところを発見された。原告患者の子被告総合病院(地域医療支援病院)事案の概要は以下の通りである。平成30年10月9日   被告病院に併設する介護老人保健施設に入居。11月25日午前1時頃  居室内のベッド付近で転倒しており、床およびシーツに血液が付着していた。被告病院の当直医(呼吸器外科医)が連絡を受け、診察。この時、患者の右側頭部に挫傷と血腫を認めたが、縫合を要するほどの裂傷ではなく、意識レベルの低下および四肢の動きに左右差も見られなかった。当直医は、ガーゼによる保護と患部のクーリング処置を行った上で、施設内での経過観察とした。午前1時30分頃本件患者がベッドに戻る。午前3時30分~午前4時30分頃居室内の本件患者から、30分程度の間隔でナースコールまたはセンサーコールがあった。午前6時20分頃患者が開眼しているものの意識消失し、呼名反応がないことを当直医が確認。被告病院の救急外来に搬送され、外傷性くも膜下出血、硬膜外血腫の疑いと診断。午前7時20分頃二次救急病院に救急搬送。11月26日   急性硬膜下血腫で死亡実際の裁判結果裁判所は、以下の各点を指摘した上で、当直医には「CT検査を行い、仮に直ちに治療すべき所見が見当たらなかったとしても経過観察は病院に入院させて行うべき注意義務があった」として、これを行わなかったことについて注意義務違反があるとした。<判決が指摘したポイント>急性硬膜下血腫は、意識レベルの厳重な観察とCT検査が重要であり、軽症頭部外傷であってもリスクファクターが存在する場合にはCT検査と入院の適応を考慮するとされていること高齢、中高年の転倒外傷、ワルファリンなどの抗血栓薬の内服はいずれもリスクファクターであること抗凝固療法を受けている患者が比較的軽微な外傷を負った際の頭蓋内出血のリスクは、抗凝固療法を受けていない中等度リスク群とみなされる患者(局所神経症状または高リスクの受傷機転など)と同等であり、初期評価で神経脱落所見がなく、外表上に外傷痕を認めなくても頭蓋内血腫を形成することがあることから、最低限、頭部CT検査を行うべきであるとされていること抗凝固療法中の高齢者における硬膜下血腫は、軽微な頭部外傷や症状の少ない頭部外傷でも進行し得ること抗凝固療法に関係した外傷性頭蓋内出血などの死亡率は高率であるとされていることなお、医師側は、本件患者の入居している施設が医師や看護師が配置されている介護老人保健施設であるため、入院した上での経過観察が行われていたことと異ならない旨を主張した。しかし、裁判所は、利用者に診療や入院が必要な場合には、協力医療機関である被告病院に引き継ぐこととされていたこと、夜間は交代で仮眠を取るため医療体制が手薄となることなどを指摘し、「本件施設での経過観察が病院に入院した上で医師や看護職員によって行われる経過観察と異ならないとは到底いえない」と判断した。注意ポイント解説本件では、患者の転倒状況を確認した施設の看護師が患者に状況を確認したところ、電気を消そうと思ってこけた、頭を打ったがどこに頭を打ったかはわからない旨を回答し、意識状態に変化はなかったという事情がある。そして、診察に当たった当直医は「患者の様子にいつもと違う点がない」「意識レベルの低下がない」「四肢の動きに左右差はない」「創部も縫合を要するものではない」ことを確認している。加えて、当直医は呼吸器外科医であったことや、(裁判所は排斥しているものの)本件患者が看護師の配置された介護老人保健施設に入居していたことからすると、当直医に酷な判断である印象は否めない。しかしながら、転倒発見時に床やシーツに血液が付着していることが確認されていたこと(それなりに強く頭を打っている可能性があること)、患者が高齢でワルファリンを服用しており、急性硬膜下血腫のリスクが高かったこと、初期評価で神経脱落所見がなく、外表上に外傷痕を認めなくても頭蓋内血腫を形成する可能性があることから、精査の必要性が否定できるものではなかった。加えて、抗凝固療法中の頭部外傷の致死率は高く、精査の必要性がより一層高いと言えること、頭部CT検査を行うことが困難な事情がないことが考慮され、上記の判決結果となった。転倒で頭部を打撲した患者においては、遅発的に症状・所見が生じてくる可能性があることから、頭部CT検査などの精査の必要性を判断する必要がある。医療者の視点超高齢化が急速に進むに伴い、転倒患者の対応をする機会が増えていると予想されます。医療者がどれだけ患者の転倒予防策を図っても、転倒を100%予防することは不可能ですので、転倒時の対応が重要となります。転倒時の診療体制は施設、病院によって大きく異なります。医師が必ず診察する、頭部受傷時は頭部CT検査まで全例撮影する、という医療機関もあれば、看護師の診察のみで済ませてしまう医療機関もあります。夜間のマンパワーが不足していたり、多忙な勤務体制となっていたりすると、つい転倒時の対応が疎かになってしまいます。転倒時の対応については、医療機関内のどの医療者が対応してもトラブルが起こらないような検査/治療体制の構築が重要です。Take home message転倒で頭部打撲をした患者は、初期診察時に特段の所見が認められなくとも、頭蓋内出血のリスクファクターが複数あれば、速やかに頭部CT検査で精査する必要がある。転倒患者に対する対応の流れを医療機関全体で確認することが重要である。キーワード転倒・転落看護職員の人員配置基準からも明らかなように、一人の看護師が複数名の患者の看護にあたるので、看護師が常に特定の患者に付きっ切りでその状態をチェックし続けることは不可能である。このため、転倒・転落事故に関する裁判では、看護師の人員配置基準や患者の転倒リスクを踏まえ、事故の発生を予見することが困難であったかや、発生を防ぐことが不可能であったかが争点となることが多い。しかしながら、裁判所は、事故が生じたという結果を重視するがあまり、あたかも医療機関側に不可能を強いるがごとく、予見可能性や防止義務を認めて事故の発生についても責任を認める判断をすることが珍しくない。むしろ、よく見舞いに来られる患者の家族のほうが、医療側の対応に限界があることを理解されている印象すらある。転倒・転落事故はどんなに注意をしていても不可避的に生じてしまうが、事故が発生した場合に、患者・家族との紛争化することを防ぐためにも、万一、紛争化したとしても重大な責任問題とならないようにするためにも、患者・家族の納得が得られる処置、重大な結果が生じることを回避するための処置がされることが望まれる。

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高K血症によるRA系阻害薬の中止率が低い糖尿病治療薬は?

 高血圧治療中の2型糖尿病患者が高カリウム血症になった場合、レニン-アンジオテンシン系阻害薬(RA系阻害薬)を降圧薬として服用していたら、その使用を控えざるを得ない。最近の報告によれば、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は尿中カリウム(K)排泄を増加させ、高K血症のリスクを軽減させる可能性があることが示唆されている。今回、中国・北京大学のTao Huang氏らは2型糖尿病患者の治療において、GLP-1RAは高K血症の発生率が低く、DPP-4阻害薬と比較してRA系阻害薬が継続できることを示唆した。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2024年8月12日号掲載の報告。 本研究はGLP-1RAとDPP-4阻害薬の新規処方患者における高K血症の発生率ならびにRA系阻害薬の継続率を比較するため、2008年1月1日~2021年12月31日の期間にGLP-1RAまたはDPP-4阻害薬による治療を開始したスウェーデン・ストックホルム地域の2型糖尿病の成人を対象に行ったコホート研究。解析期間は2023年10月1日~2024年4月29日。主要評価項目は、高K血症全体(K濃度>5.0mEq/L)および中等度~重度の高K血症(K濃度>5.5mEq/L)を発症する時間と、ベースラインでRA系阻害薬を使用している患者でのRA系阻害薬の中止までの時間であった。特定された交絡因子が70を超えたため、治療の逆確率重み付け法を用いた限界構造モデルによりプロトコルごとのハザード比(HR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・ 対象者は3万3,280例で、その内訳はGLP-1RAが1万3,633例、DPP-4阻害薬が 1万9,647例、平均年齢±SDは63.7±12.6歳、男性は1万9,853例(59.7%)だった。・治療期間の中央値と四分位範囲(IQR)は3.9ヵ月(IQR:1.0~10.9)だった。・GLP-1RAはDPP-4阻害薬と比較して高K血症全体(HR:0.61、95%信頼区間[CI]:0.50~0.76)、中等度~重度の高K血症(HR:0.52、95%CI:0.28~0.84)の発生率の低さと関連していた。・RA系阻害薬を使用していた2万1,751例のうち、1,381例がRA系阻害薬を中止した。・GLP-1RAはDPP-4阻害薬と比較して、RA系阻害薬の中止率の低さと関連していた(HR:0.89、95%CI:0.82~0.97)。・本結果は、ITT解析および年齢、性別、心血管合併症、ベースライン時点の腎機能の層に渡って一貫していた。 研究者らは「糖尿病治療としてGLP-1RAを使用すれば、高血圧のガイドラインで推奨されている降圧薬をより広く使用できるかもしれない」としている。

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ビーガン食で若返り?

 完全菜食主義(ビーガン)の食事スタイルが、老化現象を遅延させる可能性のあることが報告された。一卵性双生児を対象とした研究の結果であり、詳細は「BMC Medicine」に7月29日掲載された。双子のきょうだいのうち8週間にわたりビーガン食を摂取した群は、肉や卵、乳製品を含む雑食(普通食)を摂取した群よりも、生物学的な老化現象が抑制される傾向が認められたという。 この研究は、米国の加齢関連検査サービス企業であるTruDiagnostic社のVarun Dwaraka氏らが行った。老化の程度を表す生物学的年齢の推定には、DNAのメチル化やテロメア長などの指標が用いられた。Dwaraka氏は、「ビーガン食を摂取した研究参加者では、“エピジェネティック老化時計”とも呼ばれることのある、生物学的年齢の推測値の低下が観察された。しかし普通食を摂取した研究参加者では、このような現象が観察されなかった」と話している。 研究に参加したのは一卵性双生児の成人21組(平均年齢39.9±13歳、男性23.8%、BMIはビーガン食群が26.3±5、普通食群が26.2±5)。介入期間は8週間で、前半の4週間は調理済みの食事を支給するとともに栄養教育を実施。後半の4週間は、研究参加者が栄養教育に基づき自身の判断で食品を摂取し、その間、予告なしに24時間思い出し法による食事調査を実施して、各条件の食事スタイルが遵守されていることを確認した。 介入終了時点で、ビーガン食群では普通食群よりも細胞レベルの老化が少なく、また、心臓や肝臓、内分泌代謝、炎症などの検査値を基に算出した生物学的年齢の若返りが観察された。ビーガン食群の介入中の摂取エネルギー量は普通食群に比べて1日当たり平均約200kcal少なく、介入期間中の体重減少幅が平均2kg大きかった。この差は主として、介入前半の調理済みの食事を支給している期間に生じていた。 著者らは、「われわれの研究結果は、短期間のビーガン食がエピジェネティックな加齢による変化の抑制と摂取エネルギーの抑制につながることを示唆している」と総括している。ただし、「ビーガン食による加齢変化の抑制が、減量によってもたらされたものであるかどうかは不明」とのことだ。また、ビーガン食には微量栄養素が不足するリスクもあることから、「サプリメントを併用しないビーガン食の長期的な影響の検証が必要」としている。そのほかにも、「普通食をビーガン食に変更して、適切な栄養素摂取を維持した場合のエピジェネティックな変化、および全身的な健康状態に及ぼす長期的影響の検討も重要」と、今後の研究の方向性を述べている。

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こんな歩き方も運動療法の一方法(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者医師患者医師患者医師患者医師患者医師患者医師患者最近、体力の低下を感じてきて…年ですかね。いえいえ、年のせいなんかではありませんよ。最近、運動はどうされていますか?頑張って…歩いているつもりなんですが…だんだん歩くのが遅くなって…。なるほど。確かに、頑張って歩いていても、ダラダラ歩いているだけでは年とともに体力は低下しますからね。やっぱり。どんな運動をしたらいいですかね?お勧めは「インターバル速歩」です。インターバル速歩?そうです。ダラダラ歩くのではなくて、「はや歩き」と「ゆっくり歩き」を交互に繰り返すことです。確かに、さっさと歩くのは長く続かないので…ダラダラと長く歩いていました。どのくらいの速さで歩いたらいいですか?画 いわみせいじそうですね。全速力の6~7割程度、「ややきつい」ぐらいですかね。3分くらい少し早めに歩くと脈が上がってくると思いますよ。なるほど。どのくらいの頻度でやればいいですか。まずは、「はや歩き」を3分間、「ゆっくり歩き」を3分間、合計6分間を1セットとして、1日5セット以上、これを週4日以上行うと効果的ですよ。わかりました。頑張ってやってみます(嬉しそうな顔)ポイントインターバル速歩のやり方や到達目標(週に4日、20セット以上)を具体的に説明します。Copyright© 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

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母親の1型糖尿病は子どもの1型糖尿病罹患に対して保護的に働く

 母親が妊娠以前から1型糖尿病(T1DM)である場合にその子どもがT1DMを発症する確率は、父親がT1DMである場合に比べて相対的に低い可能性のあることが分かった。これは遺伝的な理由によるものではなく、胎児が子宮内で母親のT1DMの環境に曝露されることにより生じる違いと考えられるという。英カーディフ大学のLowri Allen氏らが、欧州糖尿病学会(EASD 2024、9月9~13日、スペイン・マドリード)で発表する。 T1DMは、免疫系が膵臓のインスリン産生細胞を標的として攻撃する自己免疫疾患で、それらの細胞が破壊されてしまうと、生存のためのインスリン療法が必須となる。Allen氏によると、「T1DMの家族歴がある人は、自己免疫疾患を発症する確率が8~15倍高い」という。また同氏は、「これまでの研究では、T1DMの場合、母親ではなく父親が罹患しているケースで、子どもの罹患リスクが高くなることが示されている。われわれはこのような関係をより詳しく理解したかった」と研究背景を述べている。 この研究は、T1DM患者を対象として実施された5件のコホート研究を統合したメタ解析として実施された。解析対象者数は合計1万1,475人で、診断時年齢は0~88歳だった。主な検討項目は、患者の父親および母親がT1DMである割合の比較であり、その結果に対する子どもの診断時年齢や、出生時点で親が既にT1DMを罹患していたか否かの影響も検討した。また、60種類以上の遺伝子情報に基づくT1DMの遺伝的リスクスコアとの関連も評価した。 解析の結果、父親がT1DMであるT1DM患者は母親がT1DMである患者のほぼ2倍多かった(オッズ比〔OR〕1.79〔95%信頼区間1.59~2.03〕)。子どもの年齢で層別化した解析から、この関係は子どもの年齢によって変化しないことが示された(18歳以下ではOR1.80〔同1.58~2.05〕、18歳超ではOR1.64〔1.14~2.37〕)。また、父親のT1DMの診断のタイミングとの関係については、子どもの出生前に既に診断されていた場合のみ、有意なオッズ比上昇が認められた(出生前の診断ではOR1.92〔1.30~2.83〕、出生後の診断ではOR1.28〔0.94~1.75〕)。子どものT1DMの診断時年齢は、父親がT1DMである場合と母親がT1DMである場合で同等だった。父親と母親の遺伝的リスクスコアに有意差はなかった。 これらの結果からAllen氏は、「総合的に解釈すると、母親がT1DMであることによる子どものT1DM罹患に対する相対的な保護効果は、成人期まで続く長期的なものだと示唆される」と述べている。ただし、父親と母親の遺伝的リスクスコアには差がないことと、母親がT1DMであることの相対的保護効果はその診断が子どもの出生前でのみ有意であることから、「母親の子宮内でT1DMの環境に曝露されることが、子どものT1DM罹患リスク低下に重要と考えられる」とし、「T1DM予防策の模索のために、T1DMの母親の子宮内で何が起こっているのかを詳細に研究する必要があるだろう」と付け加えている。 なお、学会発表される報告は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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高齢者への低用量アスピリン、中止すると…?

 心血管疾患(CVD)を有さない高齢者において、低用量アスピリンはCVDリスクを低下させず、全死亡や大出血のリスクを上昇させたことが報告されているが1,2)、すでに多くの高齢者に低用量アスピリンが投与されている。そこで、オーストラリア・モナシュ大学のZhen Zhou氏らは、アスピリン中止の安全性を明らかにすることを目的として、CVDを有さない高齢者において、低用量アスピリン中止がCVDリスクに与える影響を検討した。その結果、低用量アスピリン中止はCVDリスクを上昇させず、大出血リスクを低下させることが示された。本研究結果は、BMC Medicine誌2024年7月29日号に掲載された。 本研究は、CVDを有さない70歳以上(一部65歳以上を含む)の高齢者を対象として低用量アスピリンの有用性を検討した「ASPREE試験」1,2)の参加者のデータについて、target trial emulationの手法を用いて後ろ向きに解析した。ASPREE試験でアスピリンが投与された参加者について、アスピリンを中止した群(中止群:5,427例)、継続した群(継続群:676例)に分類して比較した。主要評価項目はCVD、主要心血管イベント(MACE)、全死亡、大出血とし、Cox比例ハザードモデルを用いて、3、6、12、48ヵ月のフォローアップ期間におけるハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。HRおよび95%CIの推定の際には、傾向スコアによる調整を行った。 本研究において、中止群では、短期(3ヵ月後)および長期(48ヵ月後)におけるCVD、MACE、全死亡のリスクの有意な上昇はみられなかった。一方、12ヵ月後の全死亡および3、12、48ヵ月後の大出血のリスクは有意に低下した。傾向スコアによる調整後の中止群の継続群に対するHR、95%CI、p値は以下のとおり。【CVD】・3ヵ月後:1.23、0.27~5.58、p=0.79・6ヵ月後:1.49、0.44~5.03、p=0.52・12ヵ月後:0.69、0.33~1.44、p=0.32・48ヵ月後:0.73、0.53~1.01、p=0.06【MACE】・3ヵ月後:1.11、0.24~5.13、p=0.89・6ヵ月後:1.39、0.41~4.73、p=0.60・12ヵ月後:0.73、0.34~1.58、p=0.42・48ヵ月後:0.84、0.57~1.24、p=0.38【全死亡】・3ヵ月後:0.23、0.04~1.32、p=0.10・6ヵ月後:0.76、0.15~3.75、p=0.73・12ヵ月後:0.39、0.20~0.77、p=0.01・48ヵ月後:0.79、0.61~1.03、p=0.08【大出血】・3ヵ月後:0.16、0.03~0.77、p=0.02・6ヵ月後:0.37、0.09~1.47、p=0.16・12ヵ月後:0.37、0.14~0.96、p=0.04・48ヵ月後:0.63、0.41~0.98、p=0.04 本研究結果について著者らは、3~12ヵ月後におけるイベント数が少なかったことや、継続群は研究開始時点のCVDリスクが高かった可能性があることなどの限界を指摘しつつも「高齢者において、低用量アスピリンを中止してもCVDや全死亡のリスクの上昇はみられなかった。また、低用量アスピリンの中止によって、大出血リスクが低下するため、とくにCVDを有さない70歳以上の高齢者において、アスピリンの処方中止が安全である可能性があると考えられる」とまとめた。

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1日も早く自宅に帰りたい-入院中に生じる廃用症候群/転倒を防ぐには?【こんなときどうする?高齢者診療】第4回

CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン」で2024年7月に扱ったテーマ「転倒予防+α」から、高齢者診療に役立つトピックをお届けします。転倒・廃用症候群の予防は、入院・外来を問わず高齢者診療に欠かせません。その背景と介入方法を症例から考えてみましょう。90歳女性。 既往症は高血圧、膝関節症。認知機能は保たれている。バルサルタンとアセトアミノフェンを服用。独居でADL/IADLはほぼ自立。買い物で重いものを運ぶのは難しいと感じている。3日前からの排尿痛と発熱で救急受診。急性腎盂腎炎の診断。入院して抗菌薬による治療を開始。本人は1日も早く帰宅し、自宅での自立生活を再開したいと希望している。原疾患の治療に加えて、自立生活を再開できる状態を作ることが入院中の治療・ケアのゴールになりますが、入院中に著しい身体機能低下を来す患者は少なくないのが実情ではないでしょうか。入院が高齢者に及ぼす影響まず、その背景を確認しましょう。入院中の高齢者は87~100%の時間をベッド上で過ごすといわれています1)。入院期間のほとんどがベッド上での生活となれば、当然、身体活動量は低下します。その他に、慣れ親しんだ自宅と異なる環境により、睡眠障害や口に合わない食事などで食欲不振、栄養不良に陥ることも珍しくありません。これらが引き金になり、筋肉量や有酸素能力が低下したり、歩行に必要な体のバランス機能や認知機能などが低下したりします。ちなみに、20~30代をピークに筋肉量の減少が始まることが多く、有酸素運動能力は25歳を過ぎると10年ごとに約10%減少していくともいわれています2-5)。加齢に伴う変化としての身体機能低下に、入院による負の変化が加わることで、廃用症候群のリスクが極めて高くなるのです。さらに悪いことに、こうした機能低下によって転倒をきっかけに入院した高齢患者が退院後6カ月以内に転倒する割合は約40%。そのうち15%は転倒により再入院に至るという研究もあります1)。そのほかに施設入所の増加、フレイルの悪化、ひいては死亡率の上昇などが生じます。急性疾患の治療を目的とした入院自体が機能低下の悪循環に入る原因になってしまうのです。入院中に生じる廃用症候群・転倒の悪循環を止めるには?このことから、身体機能低下を予防することは原疾患の治療と並ぶ重要な介入であることがわかると思います。ここからは、入院中の機能低下を最小限に抑えて、可能な限り身体機能を維持または強化し、患者の「家に帰りたい」という願いを叶える方法を探りましょう。まずアセスメントです。ここでは、簡単にできる機能評価・簡易転倒リスクのスクリーニング方法を2つ紹介します。1つめは、以下に挙げる4つの質問を使う方法です。(1)ベッドや椅子から自分で起き上がれますか?(2)自分で着替えや入浴ができますか?(3)自分で食事の準備ができますか?(4)自分で買い物ができますか?1つでも「いいえ」がある場合は、より詳しい問診やリハビリテーションチームに機能評価を依頼するなど、詳細な評価を検討します。また同時に、視力や聴力の程度、過去1年の転倒歴、歩行や転倒に関しての本人の不安なども、転倒リスクを見積もるために有用な質問です。2つめは、TUG(Timed up and Go)テストです。椅子から立ち上がって普通の速度で3m歩いてもらい、方向を変えて戻ってくるまでにかかる時間を計ります。10秒未満で正常、20秒未満でなんとか移動能力が保たれた状態、30秒未満では歩行とバランスに障害があり補助具が必要な状態と判断します。入院患者のアセスメントでは、15秒以上かかる場合は理学療法士に詳しいアセスメントや助言を求めるとよいでしょう。医師が押さえておくべき運動処方の原則さて、患者の状態を把握できたら次はどのような運動介入を行うかです。ここでは、「歩行のみ」のトレーニングはかえって転倒のリスクを高めるということを覚えておきましょう。転倒予防やADLの維持をサポートするには、筋力トレーニング、有酸素運動、バランストレーニング、歩行/移動トレーニングなどの複数の運動療法を組み合わせて、バランスよく総合的に鍛えることが重要です。そのほかにも関節可動域訓練などさまざまな訓練がありますから、患者の状態に合わせてリハビリテーションチームと共に計画を立ててみましょう。 外来での転倒予防のポイントはオンラインサロンでサロンでは外来患者のケースで、転倒リスクになる薬剤や外来でのチェックポイントや介入のコツを解説しています。また、サロンメンバーからの質問「高齢患者に運動を続けてもらうコツ」について、樋口先生はもちろん、職種も働くセッティングも異なるサロンメンバーが経験を持ち寄り、よりよい介入方法をディスカッションしています。参考1)Faizo S, et al. Appl Nurs Res. 2020:51:151189.2)Janssen I, et al.J Appl Physiol (1985). 2000;89:81-88.3)Mitchell WK, et al. Front Physiol. 2012 Jul 11:3:260.4)Hawkins S, et al. Sports Med. 2003;33:877-888.5)Kim CH, et al. PLoS One. 2016;11:e0160275.

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ビタミンDが2型糖尿病患者の心不全リスクを抑制

 2型糖尿病患者における血清25-ヒドロキシビタミンD(25[OH]D)と心不全リスクとの関連性を調査した結果、血清25(OH)D値が高いほど心不全リスクが低くなるという関連があり、メンデルランダム化(MR)解析では潜在的な因果関係が示唆されたことを、中国・Huazhong University of Science and TechnologyのXue Chen氏らが明らかにした。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2024年7月23日号掲載の報告。 2型糖尿病患者は心不全の発症リスクが高く、またビタミンDの不足/欠乏を呈しやすいことが報告されているが、2型糖尿病患者における25(OH)Dと心不全リスクとの関連性に関するエビデンスはほとんどない。そこで研究グループは、2型糖尿病患者における血清25(OH)Dと心不全リスクとの関連性を前向きに評価し、さらに潜在的な因果関係を検討するためにMR解析を実施した。 観察研究は、英国バイオバンクに登録された40~72歳の2型糖尿病患者1万5,226例を対象に実施された。心不全の発症は電子健康記録で確認した。Cox比例ハザードモデルを用いて、2型糖尿病患者の血清25(OH)D値と心不全リスクの関連性についてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。MR解析は、血縁関係のない2型糖尿病患者1万1,260例を対象に実施された。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の血清25(OH)Dの平均値は43.4(SD 20.4)nmol/Lであった。・追跡期間中央値11.3年において、836件の心不全イベントが発生した。・血清25(OH)D値が高いほど心不全リスクが低くなるという非線形の相関関係があり、リスクの減少は50nmol/L付近で横ばいになる傾向があった。・25(OH)D値が25nmol/L未満の群と比較すると、50.0~74.9nmol/L群の多変量調整HRは0.67(95%CI:0.54~0.83)、75nmol/L以上群の多変量調整HRは0.71(95%CI:0.52~0.98)であった。・MR解析では、遺伝的に予測される25(OH)D値が7%増加するごとに、2型糖尿病患者の心不全リスクが36%低下することが示された(HR:0.64[95%CI:0.41~0.99])。 これらの結果より、研究グループは「これらの所見は、2型糖尿病患者の心不全予防において、適切なビタミンD状態の維持が重要な役割を果たすことを示している」とまとめた。

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