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女性は男性より有害な心血管代謝プロファイルを示す―日本の糖尿病患者

 日本人の糖尿病患者は、男性よりも女性のほうが有害な心血管代謝プロファイルを示すことが、兵庫医科大学の若林 一郎氏による研究で明らかになった。日本の糖尿病女性は、男性よりも腹部肥満、高脈圧、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、メタボリックシンドロームの有病率が高いという。Journal of women's health誌オンライン版2014年11月14日号の報告。 糖尿病患者の心血管疾患リスクの性差に関する研究は、主に欧米で行われており、日本人を含むアジア人を対象とした報告は限られている。 そのため、本研究では、日本の地域住民の健康診断データベースから糖尿病患者1,707例を抽出して横断研究を行い、心血管代謝リスク因子を男女で比較した。男性1,138例、女性569例で男女比を2:1とし、年齢を一致させて検討を行った(男女とも53.8±7.4歳)。 主な結果は以下のとおり。・女性のウエスト・身長比は男性と比較し、有意に高かった。・BMIは男女で有意な差を認めなかった。・女性の拡張期血圧は、男性と比較し、有意に低かった。・女性の脈圧は、男性と比較し、有意に高かった。・収縮期血圧は、男女で有意な差を認めなかった。・女性のLDLコレステロールは、男性と比較し、有意に高かった。・女性のトリグリセリド(対数変換)は、男性と比較し、有意に低かった。・女性の脂肪蓄積量(対数変換)は、男性と比較し、有意に高かった。・女性の腹部肥満のオッズ比は2.00 であった(vs 男性、95%CI: 1.48~2.69)。・女性の高脈圧のオッズ比は1.48であった(vs 男性、95%CI: 1.15~1.91)。・女性の高LDLコレステロール血症のオッズ比は、1.48であった(vs 男性、95%CI: 1.13~1.92)。・女性の低HDLコレステロール血症のオッズ比は、1.77であった(vs 男性、95% CI: 1.32~2.37)。・女性のメタボリックシンドローム(IDF基準)のオッズ比は、1.68であった(vs 男性、95%CI: 1.28~2.21)。

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RA系阻害薬服用高齢者、ST合剤併用で突然死リスク1.38倍/BMJ

 ACE阻害薬またはARBのRA系阻害薬服用中の高齢患者では、経口ST合剤(トリメトプリム+スルファメトキサゾール)は突然死のリスクを増大することが、カナダ・トロント大学のMichael Fralick氏らによる住民ベースのコホート内症例対照研究の結果、明らかにされた。著者らは、同リスクの増大は、ST合剤により誘発された高カリウム血症によるものと推測され、高カリウム血症リスクの重大性を認識していなかったことに起因する可能性を指摘した。所見を踏まえて著者は「ACE阻害薬やARB服用中の患者が抗菌薬投与を必要とする際、担当医師は、トリメトプリムを含有しない抗菌薬を選択するか、トリメトプリムベースの治療を続けるにしても用量や投与期間を制限するとともに血清カリウム値のモニタリングを密に行うべきである」と提言している。BMJ誌オンライン版2014年10月30日号掲載の報告より。66歳以上のACE阻害薬、ARB服用者の抗菌薬投与後突然死を調査 ACE阻害薬またはARB服用中のST合剤投与は、アモキシシリンが関連した高カリウム血症による入院リスクが7倍と増大することが知られていた。研究グループは、それらの知見を踏まえて突然死との関連を明らかにする検討を行った。 1994年4月1日~2012年1月1日に、カナダ・オンタリオ州の住民でACE阻害薬またはARB治療を受けている66歳以上の高齢者を対象に行われた。外来で、ST合剤、アモキシシリン(商品名:サワシリンほか)、シプロフロキサシン(同:シプロキサンほか)、ノルフロキサシン(同:バクシダールほか)、ニトロフラントイン(国内未発売)のうちいずれか1つの処方を受けており、その直後に死亡していた人を症例群とし、各症例について、年齢、性別、慢性腎臓病、糖尿病に関する適合を行った(最大4項目)。 主要評価項目は、突然死と各抗菌薬曝露との関連についてのオッズ比(OR)で、アモキシシリンを参照値とし、疾患リスク指数別の突然死予測で補正後に算出し評価した。ST合剤服用後の突然死リスク、最大値は14日時点で1.54倍 対象期間中に、3万9,879例の突然死が報告されており、そのうち、抗菌薬曝露後7日以内の突然死の発生は1,027例であった。 適合対照群3,733例との検討において、アモキシシリンと比べて、補正後ORが最大であったのは、ST合剤で1.38(95%信頼区間[CI]:1.09~1.76)であった。同投与によるリスクは14日時点が最も高く、補正後ORは1.54(同:1.29~1.84)。すなわち、ST合剤を1,000例処方するごとに、14日以内の突然死が3例発生することが示唆された。 次いでシプロフロキサシンの7日以内突然死の補正後ORも1.29(同:1.03~1.62)とリスク増大が示されたが、ノルフロキサシン(OR:0.74)、ニトロフラントイン(OR:0.64)ではリスクの増大は認められなかった。

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アリスミアのツボ Q14

Q14上室頻拍はすべてカテーテルアブレーションすべきでしょうか?循環器内科医としてはすべてアブレーションの適応と答えたいのですが・・・。ほとんどすべての上室頻拍がアブレーションで根治できるいまださまざまな議論のある心房細動に比べて、ほぼすべての上室頻拍がアブレーションで根治可能な時代となっています。それを知っているので、すべての上室頻拍はアブレーションで治してしまったほうがよいと、循環器内科医の私は思います。患者はさまざまとはいっても、上室頻拍の生命予後は良好です。したがって、上室頻拍治療の目的は、患者が将来上室頻拍のため日常生活で困らないようにしてあげることです。そして、患者はさまざまなのです。上室頻拍の頻度もさまざま、上室頻拍の持続時間もさまざま、その際の症状もさまざま、カテーテルアブレーションという治療行為に対する印象もさまざまです。一生に数度しか上室頻拍発作がなくてもそのたび病院を救急受診して薬物で止めてもらうということを経験した患者は、もうなんとかこの発作から解放されたいと願うでしょう。あるいは、救急受診するにしても10年に1、2度だからそれでいいと考える患者もいるでしょう。カテーテルアブレーションという医療行為が怖くて仕方がないという患者もいるでしょう。根治療法があることを伝える私は内心カテーテルアブレーションしたらいいのにと思いながらも、そのような根治療法があり、いつでもそれを受けることができるという説明にまず留めています。すぐに「カテーテルアブレーションを受けたいので、予定を・・・」という患者もいれば、「家に帰って一度考えてみます」という患者もいれば、「今のところはまだ薬の頓服でいいです」という患者もいれば、その対応は本当にさまざまです。私は、「患者の望むように」というスタンスです。最終的にはいずれカテーテルアブレーションを行うことになると感じているのですが、そのタイミングは医師が強制するものではなく、患者に決めてもらってよいのではないでしょうか。

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コーヒーをよく飲む糖尿病者はうつが少ない

 糖尿病患者では、非糖尿病者よりもうつ病の頻度が高いとの報告がある。うつ病と糖尿病には因果関係や双方向の関連性がみられるが、これまで糖尿病患者の食品摂取頻度が抑うつ症状に及ぼす影響について、十分に検討されていなかった。長崎県立大学の大曲 勝久氏らは、糖尿病患者における食品摂取頻度を調査し、コーヒー摂取が非抑うつ状態の独立した予測因子であることを明らかにした。Journal of clinical biochemistry and nutrition誌2014年9月号(オンライン版7月31日号)の掲載報告。 本検討は日本人2型糖尿病患者89例(年齢62.8±7.8歳)を対象とした横断研究。自記式質問票を用いて、食品摂取頻度、糖尿病の変数、身体活動、抑うつ状態(HADSの抑うつ・不安項目)を調査した。抑うつ状態は、HADSの総スコアが10超の場合を うつ病“definite”(確実)例、8~10を“probable”(ほぼ確実)例と定義した。 主な結果は以下のとおり。・うつ病“definite”例(以下、うつ病群)は、16.9%であった。・うつ病群と非うつ病群において、糖尿病罹患期間、HbA1c値、糖尿病性細血管合併症、身体活動レベルは同程度であった。・うつ病群の患者は、非うつ病群と比べて、総脂質量、n-6系多価不飽和脂肪酸、脂質エネルギー比率が有意に低く、炭水化物エネルギー比率は有意に高かった。・コーヒー摂取は抑うつ症状と逆相関の関係にあったが、紅茶や緑茶と抑うつ症状との間に有意な関連は認められなかった。・ロジスティック回帰分析の結果、糖尿病患者において、コーヒー摂取は非抑うつ状態の独立した予測因子であった。これは、コーヒーに含まれるカフェイン以外の生物活性化合物の働きによると考えられる。

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64)患者さんにインスリン分泌能を聞かれた時の回答法【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 患者先生、私頑張っているのに、以前のようになかなか血糖値が下がらなくて・・・。 医師それでは、一度、身体の中から血糖値を下げるインスリンというホルモンが、どのくらい出ているかを計算してみましょう。 患者よろしくお願いします。 医師正常な人の平均を100とすると、半分くらい(50~60%)になった時点で糖尿病と診断され、15%くらいになるとインスリン療法が必要となったという報告があります。 患者なるほど。私は何%くらいですか? 医師最初は50%近くあったんですが、今は25%前後ですね。 患者なるほど。前よりも頑張っているのに、血糖値が上がるわけですね。 医師頑張っておられるので、薬も少なめでコントロールできています。この調子でお願いします。 患者はい。わかりました(嬉しそうな顔)。●ポイントインスリン分泌能と血糖コントロールの関係を、上手に説明できるといいですね●解説2型糖尿病を対象に行われた英国のUKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)によると、糖尿病と診断された時点ですでにインスリン分泌能の50%前後、年間で約4%の割合で減少し、15%前後となった時点でインスリン治療が必要となったという経過が報告されています。これはC-ペプチドからSUITO指数も算出できます。・HOMA-β指数=[(空腹時インスリン(U/mL)/(空腹時血糖(mg/dL)-63)×360]・SUITO指数=[(空腹時C-ペプチド(ng/mL)/(空腹時血糖(mg/dL)-63)×1,500] 1) Tabak AG, et al. Lancet. 2006; 373: 2215-2221. 2) U.K.prospective study 16. Diabetes. 1995; 44: 1249-1258. 3) Matsumoto S, et al. Transplant Proc. 2011; 43: 3246-3249.

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アリスミアのツボ Q13

Q13たまたま見つかった無症候性の発作性心房細動はどう対処するべきでしょうか?脳梗塞予防のみを行い、心房細動はまずその行方を観察するに留めておきます。最近よく見かけるたまたま健診で捕まった発作性心房細動社会の高齢化のためでしょうか、最近よく出会うのが・・・、健康診断の心電図で偶然見つかった心房細動で受診を促されたものの、受診時には洞調律だったという例です。自然に洞調律に復しているので、発作性心房細動です。しかし、本人につぶさに問診しても、まったく症状らしきものがなく(健康診断を受けたぐらいですから、そうでしょう)、定義上「無症候性発作性心房細動」で、私の前にいるときは洞調律という患者です。まずは脳梗塞リスクを考える発作性心房細動でも、持続性・永続性と同じように脳梗塞が生じることが知られています。だから、まず、脳梗塞予防を脳梗塞リスクに応じて行うことが基本となります。なんとなく、一度健康診断だけで偶然見つかった無症候性発作なのに、脳梗塞予防まで必要?と感じてしまうのですが・・・。心臓血管研究所では、無症候性発作性心房細動の行方を追ってみたことがあります。このような無症候性発作性心房細動は、症状のある発作性心房細動よりもむしろ速いスピードで持続性心房細動に移行していたのです。「たまたま見つかった」無症候の発作性心房細動だからといって、症状のある発作性心房細動となんら大きな違いはありません。実際、脳梗塞の発症リスクは、無症候性と有症候性で違いはありませんでした。見つかったときが脳梗塞リスクを患者に伝えるチャンスなのです。その心房細動の行方は・・・無症候ですから、発作の頻度や持続時間はとうてい知ることができません。状況がわからないのに、心房細動の治療を行ったとしても、その治療効果の判定ができません。判定できないからこそ、心房細動自身に対する治療は行わず、経過観察することにしています。やがて、いつの日か持続性心房細動に移行するでしょう。そのときが治療のチャンスです。少し遅れ気味になってしまいますが、治療の効果も判定することが初めてできるようになります。私は、持続性心房細動に移行して1年以内が、カテーテルアブレーションという治療を行う価値のある最初のそして最後の猶予期間だと患者に伝えています。 

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日本男性の勃起硬度はアレと関連していた

 日本人男性7,710人を対象としたWEBベースの断面全国調査において、1日2箱以上の喫煙、メタボリックシンドローム、高血圧、糖尿病の既往は、勃起の硬さスケール(EHS: Erection Hardness Score)※の低さと有意な関連を認めることが、東邦大学の木村 将貴氏らによる研究で明らかになった。EHSは、加齢、性行為、性的自信、勃起不全(ED)関連のリスク因子などさまざまな要素と相関が認められた。また、EHSは、EDのモニタリングや治療において有益であり、男性とそのパートナーの性生活の質を改善するための貴重なツールとなりうると考えられる。Sexual medicine誌2013年12月号の報告。 勃起の硬さは、男性の性生活の質を測る要素の一つであり、EHSによって簡単に測定することができる。しかし、日本においては、EHSに関することや、EHSと老化、男性の性的行動、性的自信、リスク因子との関連についての報告は少ない。 そのため、本研究では、日本人におけるEHSと老化、性行動、性的自信、リスク因子との関連について、2009年3~5月にWEBベースの断面全国調査を行った。主要評価項目は、EHS、ライフスタイル因子、併存疾患、健康状態、性的自信、性行為の頻度、EDの治療に対する姿勢であった。 主な結果は以下のとおり。・男性7,710人(平均39.3±13.0歳)が調査に参加した。・ホスホジエステラーゼ5阻害薬を使用していたのは6,528人であった。・EHS 3以下は3,540人(54.2%)、2以下は1,196人(18.3%)であった。・EHS、性的満足、性行為の頻度の減少は、年齢依存性の有意な関連を認めた。・性的な自信は、EHSの高さと強い関連を認めただけでなく、より高齢のグループ、子孫の存在、健康に対する意識がより高いこと、性行為がより高頻度であることとも関連していた。・多変量ロジスティック回帰分析の結果、年齢で調整後のEHS 2以下のリスク因子は、1日2箱以上の喫煙(オッズ比1.7)、メタボリックシンドローム(オッズ比1.4)、高血圧(オッズ比1.2)、糖尿病(オッズ比 1.4)の既往であった。 ※勃起の硬さスケール(EHS):患者自身がED を簡単にチェックできる評価スケール(EHSの結果だけではEDの診断はできない)グレード0:陰茎は大きくならない。グレード1:陰茎は大きくなるが、硬くはない。グレード2:陰茎は硬いが、挿入に十分なほどではない。グレード3:陰茎は挿入には十分硬いが、完全には硬くはない。グレード4:陰茎は完全に硬く、硬直している。

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医薬品企業、医療機器企業が共同で糖尿病啓発

 2014年11月6日、田辺三菱製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:三津家 正之)とジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカルカンパニー(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:日色 保)は、共同で日本の糖尿病患者の良好な血糖コントロールを支援する啓発活動を推進すると発表した。 田辺三菱製薬は2型糖尿病治療剤(選択的DPP-4阻害剤「テネリア錠20mg」、SGLT2阻害剤「カナグル錠100mg」)の製造販売元、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカルカンパニーは自己検査用グルコース測定器 (ワンタッチウルトラビュー他)を販売している。 今回の取り組みは、血糖変動パターンを捉えて血糖コントロールを実現していくことの重要性を普及・啓発するもの。医薬品企業と医療機器企業の双方が連携し、患者向け小冊子の配布、医療従事者向けセミナーや講演会での情報提供などを協力して行う。 従来、患者啓発は医薬品企業、医療機器企業が別途に行っていたが、全国規模で両者が連携しての活動は新たな取り組みといえる。田辺三菱製薬プレスリリースジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカルカンパニープレスリリース

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CareNet座談会 「高齢者の肺炎診療 ~新しい肺炎球菌ワクチンで変わる高齢者肺炎予防~」

<座長><出席者>高齢者肺炎の現状と肺炎球菌ワクチンの重要性賀来(座長) 本日は、感染症の専門の先生方にお集まりいただき、高齢者の肺炎の現状と新しい肺炎球菌ワクチンについて伺います。私どもは東日本大震災後の感染症について解析しており、災害後の集団感染リスクから被災者を守る必要性を感じています。震災後に東北大学病院に入院した感染症患者は、高齢者の誤嚥性肺炎を含めた市中肺炎などの呼吸器感染症が67%を占め、肺炎の原因菌の25.8%が肺炎球菌であり(図1)1)、肺炎球菌ワクチン接種による肺炎発症予防の重要性を感じました。図1 東北大学病院における震災関連感染症の解析画像を拡大するはじめに、高齢者における肺炎球菌感染症対策の重要性について伺います。門田 肺炎はわが国の死因の第3位の疾患であり、死亡者の大半を高齢者が占める現状がありますが、なかでも肺炎球菌による肺炎が多く、65歳以上の市中肺炎入院患者を対象とした検討では肺炎球菌が約30%を占めることが報告されています2)。また、生命を脅かす重篤な疾患である髄膜炎や敗血症などの侵襲性肺炎球菌感染症も高齢者に多く起こりますので、肺炎球菌感染症の予防はきわめて重要です。三鴨 高齢者ではさまざまな基礎疾患を有することが多く、それらが肺炎リスクを高めていると考えられます。例えば、糖尿病患者では白血球の貪食能、殺菌能の低下により、感染症リスクが高まると考えられます。また、脳梗塞や一過性脳虚血発作の後遺症がある場合は、誤嚥が関連する肺炎のリスクが高いと考えられます。さらに、高齢者に対する治療を考えると、腎機能低下例が多いために抗菌薬療法を十分に行えない可能性があります。腎機能や肝機能に留意した治療が求められるのが高齢者の特徴です。賀来(座長) 誤嚥は肺炎の要因になりますが、そこでも原因菌として肺炎球菌は重要でしょうか。門田 誤嚥の疑いのある高齢者の肺炎において肺炎球菌が26%を占めていたという報告もあり3)、意外に多いことが明らかになりつつあります。三鴨 とくに不顕性誤嚥(睡眠中に無意識のうちに唾液などが気道に入る)があると誤嚥性肺炎のリスクが高まり、免疫機能の低下が加わることでさらにリスクが増加します。肺炎球菌が意外に多いことを考えると、やはり肺炎球菌ワクチンによる予防が重要となります。また、高齢者の基礎疾患と肺炎リスクは関連があると考えられますので、高齢者全員にワクチンを接種するユニバーサルワクチネーションの考え方が重要です。高齢者肺炎の診断と病態の特徴賀来(座長) 次に、高齢者肺炎の診断と病態の特徴について伺います。門田 高齢者肺炎において注意していただきたいのは、細菌性肺炎であっても白血球数が上昇しない場合があること、また、症状が潜在性の場合があることです。典型的な症状がなくとも、食欲減退・不活発・会話の欠如などがあり、肺炎が疑われる場合には早めに胸部画像検査をしていただきたいです。三鴨 高齢者の肺炎で、もう1つ臨床上重要な点は、不顕性誤嚥があると肺炎を繰り返す例が多いことです。門田 肺炎を繰り返すと、抗菌薬治療を繰り返すことで耐性菌が出現するリスクも高まります。三鴨 おっしゃるとおりです。そのため、私たちは高齢者の肺炎患者に対しては退院時に積極的に肺炎球菌ワクチンを接種するようにしています。新しい肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)のエビデンス賀来(座長) これまで高齢者に対しては肺炎球菌多糖体ワクチン(PPV)が用いられてきましたが、先頃、小児において使用実績の高い肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)が成人(65歳以上)に対しても適応が認められ、選択肢が広がりました。この新しいワクチンの特徴と期待されるメリットについて伺います。門田 PPVは肺炎球菌の莢膜多糖体を抗原とするワクチンですが、PCV13は莢膜多糖体にキャリアタンパクを結合させたワクチンであり、免疫原性が高いことが特徴です(図2)。図2 多糖体ワクチンと結合型ワクチンにより誘導される免疫応答の概略画像を拡大するキャリアタンパクを結合することでB細胞のみならずT細胞を活性化することが可能であり、免疫応答の惹起に加え、メモリーB細胞を介した免疫記憶の確立が期待できます。賀来(座長) これらの特徴は臨床試験からも確認されているのでしょうか。三鴨 国内における第III相試験4)では、肺炎球菌ワクチン未接種の65歳以上の日本人高齢者764例を対象として、従来のPPVを対照群とする非劣性試験が実施されました。接種1ヵ月後のオプソニン化貪食活性(OPA)を比較した結果、両ワクチンに共通する12種類の血清型のいずれについてもPCV13はPPVに対して非劣性を示しました。このうち9血清型についてはPCV13におけるOPAの有意な上昇が認められ、PCV13の免疫原性が示されました(図3)。図3 ワクチン血清型別OPA*幾何平均力価比画像を拡大する一方、海外における第III相試験5)では、1回目にPCV13またはPPVを接種し、その3~4年後にPPVを再接種した場合のOPAの上がり方を検討しており、PCV13を接種した群における再接種時の免疫応答からPCV13による免疫記憶の確立が示されています(図4)。この結果から、1回目にPCV13を接種すると、PCV13に続いて2回目に接種されるワクチンの免疫応答も増大すると考えられ、今後、両ワクチンの特性を活かして接種スケジュールを検討する際の参考にできると思います。図4 肺炎球菌ワクチンの2回目接種前後のワクチン血清型別OPA画像を拡大する高齢者に対する肺炎球菌ワクチン接種の今後の展望賀来(座長) PCV13が高齢者にも使用可能になったことにより肺炎球菌感染症の予防にさらなる期待がもたれます。今後、高齢者へのワクチン接種をさらに普及させるうえでどのような方策が必要でしょうか。門田 日本呼吸器学会では「ストップ肺炎キャンペーン」を展開しており、一般向け・医療従事者向けの冊子をWebでも公開しています6)。今後、呼吸器科のみならず他科の先生方にも肺炎予防の重要性を周知し、他疾患領域の学会とも連携して取り組む必要があると思います。三鴨 糖尿病やリウマチでは、新薬の登場により治療成績が向上していますが、その一方で感染症リスクが高まる場合もあるため、高齢者の感染症予防に対する関心が高まっています。こうした面からも肺炎球菌ワクチン接種の意義を訴求していけると思います。また、ワクチンの普及には行政の役割も重要です。2014年10月から、65歳以上を対象に成人用肺炎球菌ワクチンが定期接種化されました(表1)。国の制度では5年間で順次接種することになっていますが、私はすべての高齢者に接種することが望ましいと考えています。そのため、居住地である岐阜市の市長がワクチン接種の公費助成に力を入れる方針を示していることを知り、この地域に居を構えるアカデミアの一人として肺炎球菌ワクチンについて提言を行いました(表2)。その結果、岐阜市では本年度に65歳以上全員を接種対象として予算を組んでくれました。高齢者医療はこうした比較的小規模な枠組みからも改善でき、非常に重要な動向であると思っています。賀来(座長) 本日は、高齢者に対する肺炎球菌ワクチンの現状と今後の展望について詳細にお話を伺うことができました。皆さま、ありがとうございました。表1 65歳以上の成人用肺炎球菌ワクチン定期接種(B型)の経過措置を含めた接種対象年齢画像を拡大する表2 肺炎球菌ワクチンについての提言画像を拡大する参考文献1)賀来 満夫. 日本内科学会雑誌. 2014; 103: 572-580.2)石田 直. Infection Control. 2005; 14: 645-649.3)Ishida T, et al. Intern Med. 2012; 51: 2537-2544. 4)ファイザー(株) 社内資料 国内第Ⅲ相試験(非劣性試験、未接種者、B1851088試験).5)Jackson LA, et al. Vaccine. 31; 2013: 3594-3602.6)日本呼吸器学会ホームページ PCV13についての詳細は製品添付文書をご覧ください。

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事例27 注入器用注射針の査定【斬らレセプト】

解説事例では、支払基金からD事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)を理由に、万年筆型注入用注射針は算定できないと「突合点検結果連絡書」が届いた。突合点検結果連絡書とは、「院外処方せんに基づき調剤薬局が処方した調剤レセプトと医療機関のレセプトを電子的に突き合わせ、査定が発生した場合に医療機関の診療報酬から相殺することを予告する文書」である。毎月18日までに不一致の申し出として異議申し立てができる。請求レセプトを確認するとカルテ内容に応じてC101 在宅自己注射指導管理料、C150 血糖自己測定器加算、C153 注入用注射針加算が算定されていた。院外処方せんでは、注入用注射針が処方されていた。診療報酬点数表で注入用注射針加算の算定要件を確認すると、その留意事項には「注入器用注射針を処方した場合に算定できる」とある。処方した場合とは自院で処方・投与された場合を指すものであり、注入用注射針加算が算定されている場合は、院内で投与済みと判断される。したがって、注入用注射針加算算定時の院外処方せんにおける注入用注射針の処方は、重複として算定ができないのである。

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63)お酒が好きな患者さんに検査値を説明するコツ【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者夏になると缶ビールがおいしくて、つい飲みすぎちゃうんです。医師確かにそうですね。1缶だけじゃなくて、2缶とか・・・患者調子にのって、3缶目にいくこともあります。医師そうですか。ちょっと、この検査を見てもらえますか。ここです。患者A1cですか。医師そうです。これ缶ビールにも書いてありませんか?患者そりぁ、アルコール(Alc)のことですね。ハハハ。 医師缶ビールのアルコールは5%ですが、血糖コントロールの指標であるHbA1cも正常な人は5%台です。患者私は7.6%とかなり高いですね。調子にのって、2缶、3缶と飲み過ぎていてはいけませんね(気づきの言葉)。●ポイント身近な話題を取り上げて、検査値について復習できるといいですね

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LDL-C上昇と大動脈弁疾患の遺伝学的関連/JAMA

 LDLコレステロール(LDL-C)上昇の遺伝学的素因は、大動脈弁石灰化や大動脈弁狭窄症の発症と関連することが、スウェーデン・ルンド大学のJ Gustav Smith氏らCHARGEコンソーシアムの研究グループの検討で明らかとなった。この知見は、LDL-Cと大動脈弁疾患の因果関係を示すエビデンスだという。これまでに血漿LDL-C値と大動脈弁狭窄症の関連が観察研究で示されているが、弁疾患患者に対する脂質低下療法の無作為化試験では、疾患進行の抑制効果は確認されていない。JAMA誌2014年11月5日号(オンライン版2014年10月26日号)掲載の報告。4つのコホート試験で遺伝学的素因の関与を評価 CHARGEコンソーシアムは、欧米で進行中の長期的な大規模前向きコホート試験で、メンデル無作為化試験デザインが採用されている。今回の検討では、LDL-C、HDL-C、トリグリセライド(TG)と大動脈弁疾患の関連への遺伝学的素因の関与について解析が行われた。 対象は、CHARGEコンソーシアムに含まれる3つの地域住民ベースのコホート試験[フラミンガム心臓研究(FHS、米国、1971~2013年、1,295例)、Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis試験(MESA、米国、2000~2012年、2,527例)、Age Gene/Environment Study–Reykjavik試験(AGES-RS、アイスランド、2000~2012年、3,120例)]に参加した6,942例と、Malmo Diet and Cancer 試験(MDCS、スウェーデン、1991~2010年)の2万8,461例であった。 解析には、遺伝学的リスクスコア(GRS)が用いられた。GRSは血漿脂質値上昇の遺伝学的素因の指標で、ゲノムワイド関連解析で同定された一塩基多型(SNP)に基づく。CHARGEコホートのCT所見から大動脈弁石灰化を定量化し、MDCSコホートの追跡データから大動脈狭窄の評価を行った。HDL-C、TGのGRSとの関連はない ベースライン時の4つのコホートの平均年齢は58~76歳、女性が47~60%で、全員が白人であった。 3つのCHARGEコホートにおける大動脈弁石灰化の発症率は32%(2,245例)であった。また、MDCSコホート(フォローアップ期間中央値16.1年)の473例が大動脈狭窄症を発症し(発症率:17/1,000人)、205例に大動脈弁置換術が行われた(施行率:7/1,000例)。 血漿LDL-C値は大動脈弁狭窄症と有意に関連した(ハザード比[HR]:1.28、95%信頼区間[CI]:1.04~1.57、p=0.02)。四分位解析では、LDL-C値が最も低い群の大動脈弁狭窄症の発症率は1.3%、最も高い群は2.4%であった。HDL-CおよびTGには、大動脈弁狭窄症との間に関連はみられなかった。 LDL-CのGRSは、CHARGEコホートにおける大動脈弁石灰化の発症(GRSの増分のオッズ比[OR]:1.38、95%CI:1.09~1.74、p=0.007)およびMDCSコホートにおける大動脈狭窄症の発症(2.78、1.22~6.37、p=0.02)と有意な関連が認められた。HDL-CおよびTGのGRSには、石灰化、狭窄症との関連はなかった。 感度分析を行ったところ、LDL-CのGRSは大動脈弁石灰化(p=0.03)および大動脈弁狭窄症(p=0.009)との相関が維持されており、操作変数(instrumental variable)解析でもLDL-Cの上昇は大動脈弁狭窄症のリスクと有意な関連を示した(HR:1.51、95%CI:1.07~2.14、p=0.02)。 著者は、「約7,000例の症状発症前の大動脈弁石灰化のデータと、2万8,000例以上を15年以上追跡した大動脈弁狭窄症のデータにより、GRSに基づく遺伝学的なLDL-Cの上昇が石灰化および狭窄症と関連することが示された」とまとめ、「早期のLDL-C低下療法による介入の、大動脈弁疾患の予防効果を検討する試験の実施が望まれる」と指摘している。

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キーワードで記憶する糖尿病合併症

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者 どんな合併症が起こるんですか?医師 糖尿病は別名、血管の病気といわれていますから、全身のあらゆる場所に、ありとあらゆる合併症が起こる可能性があります。患者医師血管の病気ってなんですか?特に、糖尿病の人に起こりやすいのが、糖尿病の3大合併症ともいわれています。患者医師それは何ですか?手足のしびれやこむら返りなどの神経障害、失明の原因となる眼の合併症、透析の原因となる腎臓の合併症です。患者医師なるほど。神経障害、眼、腎臓の頭文字をとって「し・め・じ」と覚えておくといいですね。画 いわみせいじ患者 キノコのしめじですね。しめじは大好きです。それなら覚えられそうです。●糖尿病の3大合併症1.し しんけい(神経)障害2.め め(眼)の合併症(網膜症)3.じ じん(腎)症ポイント語呂合わせで教えることで、記憶に残りますCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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健康に良いは、体重に悪い

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者医師患者医師患者医師患者医師患者医師患者医師患者医師患者医師患者医師患者朝食は気をつけて食べています。朝食はどんなものを食べておられますか?朝食は主にパンです。パンですね。どんなものをよく塗られていますか?えっと、目にいいというので、ブルーベリージャムを塗っています。パンにはブルーベリージャムですね。飲み物は?牛乳です。牛乳にきなこを混ぜています。きなこは健康にいいというので・・・そうですか。野菜とかは?ドレッシングにはオリーブオイルを使っています。他には?画 いわみせいじ腸にいいというのでヨーグルトを摂ることにしています。砂糖の代わりにはちみつを使っています。なるほど。この朝食メニューをみてもらっていいですか。どちらがヘルシーな朝食メニューだと思いますか?(イラストを示して)どちらもよさそうですけど、しいていえば、Aですか?残念ながらBです。Bのメニューが400kcalに対し、Aのメニューは900kcalと倍以上のカロリーです。えっ、そんなに違うんですか!?どうしてですか?(驚きの声)実は、健康にいいといわれている食品はカロリーの高いものが多くて、それを摂り過ぎるとカロリーオーバーになってしまうのです。つまり、健康にいいと思って摂っていたのが逆効果だったんですね。そうですね。Aさんにとって一番簡単な食事療法は、健康にいいと思って勘違いしてとり過ぎている食品を止めることかもしれませんね。はい。わかりました。(嬉しそうな顔)ポイントメニューを比較してもらうことで、患者さん自身に食事療法の勘違いに気づいてもらえますCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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分かりやすい糖尿病の段階の説明法

患者さん用脳卒中・心筋梗塞脳や心臓の大血管の動脈硬化1正常駅空腹時血糖値食後血糖HbA1c23予備群駅1005.61101406.0456糖尿病駅1262006.57.07合併症駅細い血管障害3大合併症(神経・眼・腎症)Copyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者医師先生、私の糖尿病はどのくらい進んでいるんですか?かなり悪くなっているんですか?(やや不安な顔)それでは、糖尿病の状態について説明しましょう。糖尿病を駅に例えると、正常駅(1)、予備軍駅(2、3)、糖尿病駅(4、5)、合併症駅(6、7)になります。あなたは今、どの辺りだと思いますか?患者医師(少し考えてから)6番ですか?まだ、合併症は出ていませんから、合併症駅の手前5番になりますね。患者医師そうですか。合併症駅に進まないためにはどんなことに気をつけたら、いいですか?3つのポイントがあります。患者それは何ですか?(興味津々)ポイントわかりやすい例えを利用することで、理解が深まりますCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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低血糖の症候は「ハ」行で指導

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話医師患者この薬を飲むと、低血糖が起こる可能性があります。低血糖ってどんな症状が出るのですか?医師患者代表的な5つの症状を覚えておいてください。5つの症状?医師 強い空腹感、冷や汗やふるえ、動悸、何も処置せずに放っておくと、意識がなくなる人もいます。患者 なるほど。医師 低血糖は「ハ行」で覚えておくといいですね。患者 ハ行!?医師患者画 いわみせいじ腹が減り(ハ)、冷や汗(ヒ)、震え(フ)、変にドキドキ(へ)、放置しておくと意識がなくなる(ホ)です。なるほど。それなら、私にも覚えられそうです。●低血糖は、ハ行「ハヒフヘホ」ハ ハラ(腹)が減り(空腹感)ヒ ヒヤ(冷)汗フ フル(震)えヘ ヘン(変)にドキドキ(動悸)ホ ホウ(放)置しておくと意識がなくなる(昏睡)ポイント語呂合わせで説明することで、記憶に残りますCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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動かない時は食べないの原則

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者 休みになると、体重が増えてしまいます。医師 働かざる者・・・という言葉がありますね。患者 働かざる者 食うべからずですね。医師 そうです。働かざる者食うべからずです。これからにんべんをとると・・・。患者 にんべんをとる?医師 「動かざる者食うべからず」ということになります。画 いわみせいじ患者 なるほど!医師 「動いた時は食べる、動かない時は食べない」これが大切です。患者 私、逆になっていますね。平日はよく動いているのか、食べないのに、休みの日はゴロゴロして、何かつまんでばかりです。これから気をつけます。ポイント慣用句を用いて説明すれば、患者さんの理解度が深まりますCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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「覚醒」から「睡眠」へ 新機序の不眠症治療薬

2014年9月26日、MSD株式会社は新規作用機序の不眠症治療薬スボレキサント(商品名:ベルソムラ錠15mg、同20mg)の製造販売承認を取得した。本剤は、世界初のオレキシン受容体拮抗薬で、過剰な覚醒状態を抑制することにより、生理的なプロセスで眠りに導く。本剤の登場によって、新たなアプローチからの不眠症治療が可能となる。本稿では、不眠症治療の現状および課題、新薬への期待について紹介する。不眠症とは不眠症は、入眠障害、中途覚醒などの夜間不眠の訴えがあり、その結果として日中の精神・身体機能に影響が生じる疾患である。不眠症の原因は多岐にわたるが、「睡眠」と「覚醒」のバランスが乱れて、体を「覚醒」させるという機能が「睡眠」を誘う機能よりも上回った場合に生じると考えられている。このバランスを乱す要因としては、ストレスなどの心理的要因、うつ病などの精神疾患、不適切な睡眠環境や生活習慣などの生理学的要因、アルコールなどの薬理学的要因、痛みなどの身体的要因などが挙げられる。近年、不眠症の患者ではうつ病の発症リスク、高血圧や糖尿病などの生活習慣病発症リスクが高まることも報告されており、睡眠習慣の改善や薬物による治療の必要性が高まっている。不眠症の治療診断基準(睡眠障害国際分類第2版[ICSD-2]など)により、不眠症を疑った場合には、まず身体・精神的疾患や薬物の影響が不眠症状の原因となっていないか確認を行う。  そのうえで睡眠環境や生活習慣の改善や薬物治療を行う。現在、不眠症治療薬としては、ベンゾジアゼピン系睡眠薬や非ベンゾジアゼピン系睡眠薬などのGABA受容体作動薬、メラトニン受容体作動薬などが一般的に用いられている。それぞれの薬剤の特徴や作用時間などを考慮して治療薬が選択されるが、翌日への持ち越し効果や耐性・依存・離脱症状などの懸念、それらに対する患者側の心理的抵抗感が課題であった。世界初の作用機序の不眠症治療薬起きている状態を保つオレキシンオレキシンは視床下部のニューロンから産生される神経ペプチドで、睡眠-覚醒システムのバランスを調整する脳内物質である。オレキシンが分泌されると、覚醒システムが活性化されて覚醒の維持に働いて、眠りにくくなる。逆に、眠りに誘われるときはオレキシンの分泌が減り、睡眠システムが優位になっている。なお、睡眠システムにはGABAが深く関わっている。スボレキサントの特徴不眠症の患者では、夜になっても脳の覚醒が亢進することによって不眠が生じると考えられるが、スボレキサントはオレキシンが受容体へ結合することをブロックし、過剰に働いている覚醒システムを抑制する。つまり、脳を覚醒状態から睡眠状態へ移行させるという、体が本来持っている生理的なプロセスによって、本来の眠りをもたらす。用法・用量1日1回20mg(高齢者は15mg)を就寝前に服用する。入眠効果の発現が遅れるおそれがあるため、食事と同時または食直後の服用は避ける(食後投与では、投与直後の血漿中濃度が低下することがある)。なお、臨床試験では単剤で処方されていたため、他の不眠症治療薬と併用したときの有効性および安全性は確立されていないので注意が必要となる。※CYP3Aを強く阻害する薬剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン、リトナビル、サキナビル、ネルフィナビル、インジナビル、テラプレビル、ボリコナゾール)を服用中の患者では、本剤の作用が増強されるおそれがあるため禁忌である。臨床成績・試験:日本人を含む国際共同プラセボ対照試験・対象:原発性不眠症患者638例(成人370例、高齢者268例)・方法:スボレキサント通常用量(成人:20mg、高齢者:15mg)またはプラセボを3ヵ月間、1日1回就寝前に投与・結果:主観的睡眠潜時(患者申告による入眠までの時間)および主観的総睡眠時間(患者申告による睡眠時間の合計)は、スボレキサント群において、1週時からプラセボ群に比べて有意な改善がみられた。安全性上記試験において、6ヵ月間の副作用は53例(20.9%)に認められた。主な副作用は傾眠(4.7%)、頭痛(3.9%)、疲労(2.4%)であった。スボレキサント投与による翌朝の認知機能テストへの影響や、投与中止による反跳性不眠はみられなかった。なお、オレキシンの受容体への結合を阻害して、オレキシンの作用を抑制するという作用機序からナルコレプシーが生じること懸念されるが、臨床試験では認められなかった。ナルコレプシーではオレキシン神経が脱落することが報告されている。一方で、スボレキサントはオレキシン受容体を阻害するものの一過性であるため、機序が異なると考えられる。日本が世界をリードするようなエビデンス構築をスボレキサントについて、MSD株式会社の製品担当者に話を聞いた。「本剤は、世界に先駆けて日本で発売される新規作用機序の薬剤なので、できるだけ慎重に使用していただきたい。まずは臨床試験で有効性・安全性が確認された、未治療またはウォッシュアウト期間のある原発性不眠症患者に使用していただき、スボレキサント本来の有効性・安全性を確認していただきたい」としたうえで、「スボレキサントは不眠症治療の標準薬の1つとなりうる薬剤だと考えている。日本が世界をリードするようなエビデンスや使い方を構築し、現在の不眠症治療の課題克服に貢献したい」と語った。本剤の登場によって、覚醒状態を抑制することで睡眠を導くという、新たなアプローチからの不眠症治療が可能となる。これにより、症状に合わせた薬剤選択、体本来の生理的な睡眠を導く治療が可能になると期待される。

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