サイト内検索|page:169

検索結果 合計:4905件 表示位置:3361 - 3380

3361.

抗がん剤で劇症1型糖尿病を発症させない

 日本糖尿病学会(理事長:門脇 孝)は、5月18日、本年1月29日に公表した「免疫チェックポイント阻害薬に関連した1型糖尿病ことに劇症1型糖尿病の発症について」に追記として「免疫チェックポイント阻害薬使用患者における1型糖尿病の発症に関するRecommendation」を加えた。 Recommendationでは、劇症1型糖尿病を「発症後直ちに治療を開始しなければ致死的」と警告を発するとともに、疾患の存在を想定した早期発見と適切な対処を呼びかけている。また、血糖値の検査・確認、専門医へのコンサルテーション、糖尿病治療の早期開始、患者への事前説明、ステロイド薬使用の注意などを5項目にわたり推奨している。 免疫チェックポイント阻害薬であるヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体ニボルマブ(オプジーボ)を使用した推定4,888人中12人(0.25%)に、1型糖尿病(劇症、急性発症ともに)が発症したことが報告された(使用期間:2014年7月4日~2016年3月31日)。 そこで同学会では、免疫チェックポイント阻害薬投与患者における1型糖尿病発症に対応するため、Recommendationを発表したものである。Recommendation1) 投与開始前および投与開始後、来院日ごとに、高血糖症状の有無を確認し、血糖値を測定する。2) 測定値は当日主治医が確認し、高血糖症状を認めるか、検査に異常値(空腹時126mg/dL以上、あるいは随時200mg/dL以上)を認めた場合は、可及的速やかに糖尿病を専門とする医師(不在の場合は担当内科医)にコンサルトし、糖尿病の確定診断、病型診断を行う。3) 1型糖尿病と診断されるか、あるいはそれが強く疑われれば、当日から糖尿病の治療を開始する。4) 患者には、劇症1型糖尿病を含む1型糖尿病発症の可能性や、注意すべき症状についてあらかじめ十分に説明し、高血糖症状(口渇、多飲、多尿)を自覚したら予定来院日でなくても受診または直ちに治療担当医に連絡するよう指導しておく。5) 該当薬の「適正使用ガイド」に、過度の免疫反応による副作用が疑われる場合に投与を検討する薬剤として記載されている副腎皮質ホルモン剤は、免疫チェックポイント阻害薬による1型糖尿病の改善に効果があるというエビデンスはなく、血糖値を著しく上昇させる危険があるため1型糖尿病重症化予防に対しては現時点では推奨されない。また、他の副作用抑制のためにステロイド剤を投与する場合は、血糖値をさらに著しく上昇させる危険性があるため、最大限の注意を払う。「【追記】免疫チェックポイント阻害薬に関連した1型糖尿病ことに劇症1型糖尿病の発症について 」(日本糖尿病学会)の詳細についてはこちら。(ケアネット)関連ニュースがん治療で気付いてほしい1型糖尿病

3362.

SU薬とDPP-4阻害薬の併用、低血糖リスクを50%増加/BMJ

 スルホニル尿素(SU)薬で治療を受けている2型糖尿病患者に対し、DPP-4阻害薬を追加投与すると、低血糖リスクが50%増加し、最初の6ヵ月間で低血糖症例が患者17人に1人増えることになる。フランス・ボルドー大学のFrancess Salvo氏らが、無作為化プラセボ対照比較試験のシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。DPP-4阻害薬とSU薬との併用により低血糖リスクが増加することは知られていたが、そのリスクの定量化はなされていなかった。著者は、「DPP-4阻害薬の投与を開始する場合にはSU薬の減量が推奨されていることを尊重し、低血糖リスクを最小限にするこの治療法の有効性を評価する必要がある」とまとめている。BMJ誌オンライン版2016年5月3日号掲載の報告。SU薬+DPP-4阻害薬とSU薬+プラセボを比較した無作為化試験をメタ解析 研究グループは、Medline、ISI Web of Science、SCOPUS、Cochrane Central Register of Controlled Trials、clinicaltrial.govから、2型糖尿病患者においてDPP-4阻害薬+SU薬併用療法(被験者50例以上)とプラセボを比較した無作為化試験について、言語を問わず検索した。期間はclinicaltrial.govが2014年11月まで、それ以外は2013年10月15日までであった。 解析対象研究の調査とデータ収集は2人の研究者が独立して行い、各試験のバイアスリスクをコクラン共同計画のツールを用いて評価した。メタ解析のエビデンスの質はGRADEシステムを用いて評価。試験ごとに低血糖のリスク比とその95%信頼区間を算出した後、マンテル・ヘンツェル法またはランダム効果モデルを用いて統合解析を行った。併用で低血糖リスク比は1.52、6ヵ月間のNNHは17 解析に組み込まれた試験は10件、計6,546例であった(DPP-4阻害薬+SU薬4,020例、プラセボ+SU薬2,526例)。 低血糖のリスク比(RR)は、全体で1.52(95%CI:1.29~1.80)であった。また、NNH(有害必要数:何人の患者を治療するごとに低血糖1例が発生するかを示す)は治療期間6ヵ月以下で17(95%信頼区間[CI]:11~30)、6.1~12ヵ月で15(95%CI:9~26)、1年以上で8(95%CI:5~15)であった。 サブグループ解析の結果、DPP-4阻害薬の用量の違いによる、低血糖リスクの差はみられなかった。また、半量投与群で低血糖リスクの有意な増加は示されなかった。標準用量(最大投与量含む)群のRRは1.66(95%CI:1.34~2.06)、半量投与群のRRは1.33(95%CI:0.92~1.94)であった。

3363.

飽和脂肪酸をω6-リノール酸で置換する食事療法はコレステロールを低下させるが冠動脈疾患イベントや死亡を改善せず、むしろ悪化させる可能性がある!(解説:島田 俊夫 氏)-532

 Anitschkowがウサギにコレステロールと飽和脂肪酸を食べさせることで大動脈に脂肪蓄積を誘導して以来、アテローム硬化発生への食事の役割は1世紀余りにわたり研究されてきた。血清コレステロールの増加と冠動脈疾患の関係について詳細に研究されたが、冠動脈疾患予防・治療に関する伝統的食事―心臓仮説(The traditional diet-heart hypothesis)の真偽に関してはいまだ結論に至らず、議論の多いところでもある1)。 食事で飽和脂肪酸をω6-リノール酸に置換することで、血清コレステロール、LDLリポタンパクが低下することは周知の事実であるが、冠動脈疾患イベント、死亡も減少すると短絡的に捉えることには問題がある2)。観察研究レベルのエビデンスはあっても、冠動脈疾患イベント、死亡の減少を肯定した無作為化比較対照試験による強固なエビデンスはない。 最近発表された、NIHのRamsden氏らのBMJ誌オンライン版2016年4月12日号掲載論文は、Minnesota Coronary Experiment(MCE)研究の未発表文書および生データの回復データに基づく再解析と、同種の無作為化比較対照試験を選択吟味し、システマティックレビューとメタ解析を行ったうえで作成された論文である。この論文は、飽和脂肪酸を食事によりリノール酸で置換する治療が、真に冠動脈疾患イベント、死亡を減らすか否かの真偽に一石を投じた意義深い論文である。施設設定 米国ミネソタ州の老人保健施設:1施設、州立精神病院:6施設参加者および関連データ 年齢20~97歳、男女9,423例を無作為に抽出したコホート集団に対して行われた解析からなる未発表文書、1年以上にわたり研究食を食べた2,355例の血清コレステロールに関する時間経過に従ったデータ149例の剖検実施ファイルに基づいて再解析が行われた。研究食 介入食は、飽和脂肪酸をリノール酸で置換する血清コレステロール低下食(コーンオイルとコーンオイル多価不飽和脂肪酸マーガリン由来)であり、コントロール食は動物脂肪、通常マーガリンおよびショートニングによる飽和脂肪酸の高い食事が使われた。主要評価尺度 総死亡、血清コレステロールの変化と死亡の関連および剖検で見つかったアテローム硬化と心筋梗塞とした。結果 介入群はコントロール群と比較して、血清コレステロールが有意に減少した(ベースラインからの平均変化-13.8% vs.-1.0%;p<0.001)。カプラン・マイヤー生存分析結果は、全無作為化抽出コホートでの介入群または事前に指定されたサブグループの死亡改善に無効であった。共変量調整Cox回帰モデル(ハザード比[HR] 1.22、95%信頼区間1.14~1.32;p<0.001)で、血清コレステロール30mg/dL(0.78mmol/L)の低下で、むしろ死亡リスクが22%上昇した。 冠動脈硬化、心筋梗塞に対して介入群にメリットを認めず、システマティックレビューに同種の無作為化比較対照試験(n=10,808)を選択吟味のうえでメタ解析を実施した結果についても、コレステロール低下介入は冠疾患死亡(HR 1.13、95%CI:0.83~1.54)または総死亡(HR 1.07、95%CI:0.90~1.27)の改善につながらなかったと報告した。 本論文は、リノール酸置換食事療法により、総コレステロール、悪玉コレステロールが低下すれば冠動脈疾患死やイベントが低下するとの短絡的な考えに疑念を示し、背景にある機序の多様性重視を示唆している。

3364.

eGFRが30未満は禁忌-メトホルミンの適正使用に関する Recommendation

 日本糖尿病学会「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」は、5月12日に「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation」の改訂版を公表した。 わが国では、諸外国と比較し、頻度は高くないもののメトホルミン使用時に乳酸アシドーシスが報告されていることから2012年2月にRecommendationを発表、2014年3月に改訂を行っている。とくに今回は、米国FDAから“Drug Safety Communication”が出されたことを受け、従来のクレアチニンによる腎機能評価から推定糸球体濾過量eGFRによる評価へ変更することを主にし、内容をアップデートしたものである。メトホルミン使用時の乳酸アシドーシスの症例に多く認められた特徴1)腎機能障害患者(透析患者を含む)2)脱水、シックデイ、過度のアルコール摂取など、患者への注意・指導が必要な状態3)心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者4)高齢者 高齢者だけでなく、比較的若年者でも少量投与でも、上記の特徴を有する患者で、乳酸アシドーシスの発現が報告されていることに注意。メトホルミンの適正使用に関するRecommendation まず、経口摂取が困難な患者や寝たきりなど、全身状態が悪い患者には投与しないことを大前提とし、以下の事項に留意する。1)腎機能障害患者(透析患者を含む) 腎機能を推定糸球体濾過量eGFRで評価し、eGFRが30(mL/分/1.73m2)未満の場合にはメトホルミンは禁忌である。eGFRが30~45の場合にはリスクとベネフィットを勘案して慎重投与とする。脱水、ショック、急性心筋梗塞、重症感染症の場合などやヨード造影剤の併用などではeGFRが急激に低下することがあるので注意を要する。eGFRが30~60の患者では、ヨード造影剤検査の前あるいは造影時にメトホルミンを中止して48時間後にeGFRを再評価して再開する。なお、eGFRが45以上また60以上の場合でも、腎血流量を低下させる薬剤(レニン・アンジオテンシン系の阻害薬、利尿薬、NSAIDsなど)の使用などにより腎機能が急激に悪化する場合があるので注意を要する。2)脱水、シックデイ、過度のアルコール摂取などの患者への注意・指導が必要な状態 すべてのメトホルミンは、脱水、脱水状態が懸念される下痢、嘔吐などの胃腸障害のある患者、過度のアルコール摂取の患者で禁忌である。利尿作用を有する薬剤(利尿剤、SGLT2阻害薬など)との併用時には、とくに脱水に対する注意が必要である。 以下の内容について患者に注意・指導する。また、患者の状況に応じて家族にも指導する。シックデイの際には脱水が懸念されるので、いったん服薬を中止し、主治医に相談する。脱水を予防するために日常生活において適度な水分摂取を心がける。アルコール摂取については、過度の摂取を避け適量にとどめ、肝疾患などのある症例では禁酒する。3)心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者 すべてのメトホルミンは、高度の心血管・肺機能障害(ショック、急性うっ血性心不全、急性心筋梗塞、呼吸不全、肺塞栓など低酸素血症を伴いやすい状態)、外科手術(飲食物の摂取が制限されない小手術を除く)前後の患者には禁忌である。また、メトホルミンでは軽度~中等度の肝機能障害には慎重投与である。4)高齢者 メトホルミンは高齢者では慎重に投与する。高齢者では腎機能、肝機能の予備能が低下していることが多いことから定期的に腎機能(eGFR)、肝機能や患者の状態を慎重に観察し、投与量の調節や投与の継続を検討しなければならない。とくに75歳以上の高齢者ではより慎重な判断が必要である。「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」からのお知らせはこちら。

3365.

2度目の改訂版を発表-SGLT2阻害薬の適正使用に関する Recommendation

 日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」は、5月12日に「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」の改訂版を公表した。SGLT2阻害薬は、新しい作用機序を有する2型糖尿病薬で、現在は6成分7製剤が臨床使用されている。 Recommendationでは、75歳以上の高齢者への投与を慎重投与とするほか、65歳以上でも老年症候群の患者には同様としている、また、利尿薬との併用については、「推奨されない」から「脱水に注意する」に変更された。そのほか、全身倦怠・悪心嘔吐・体重減少などを伴う場合には、血糖値が正常に近くともケトアシドーシスの可能性を考慮し、血中ケトン体の確認を推奨している。 今回の改訂は、1年9ヵ月ぶりの改訂となるが、その間に報告された副作用情報や高齢者(65歳以上)に投与する場合の全例特定使用成績調査による、高齢者糖尿病における副作用や有害事象の発生率や注意点について、一定のデータが得られたことから、改訂されたものである。 本委員会では、「これらの情報をさらに広く共有することにより、副作用や有害事象が可能な限り防止され、適正使用が推進されるよう、Recommendationをアップデートする」と表明している。Recommendation1)インスリンやSU薬などインスリン分泌促進薬と併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる(方法については下記参照)。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。2)75歳以上の高齢者あるいは65~74歳で老年症候群(サルコペニア、認知機能低下、ADL低下など)のある場合には慎重に投与する。3)脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬の併用の場合にはとくに脱水に注意する。4)発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する。5)全身倦怠・悪心嘔吐・体重減少などを伴う場合には、血糖値が正常に近くてもケトアシドーシスの可能性があるので、血中ケトン体を確認すること。6)本剤投与後、薬疹を疑わせる紅斑などの皮膚症状が認められた場合には速やかに投与を中止し、皮膚科にコンサルテーションすること。また、必ず副作用報告を行うこと。7)尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問診では質問紙の活用も推奨される。発見時には、泌尿器科、婦人科にコンサルテーションすること。副作用の事例と対策(抜粋)重症低血糖 重症低血糖の発生では、インスリン併用例が多く、SU薬などのインスリン分泌促進薬との併用が次いでいる。DPP-4阻害薬の重症低血糖の場合にSU薬との併用が多かったことに比し、本剤ではインスリンとの併用例が多いという特徴がある。SGLT2阻害薬による糖毒性改善などによりインスリンの効きが急に良くなり低血糖が起こっている可能性がある。このように、インスリン、SU薬または速効型インスリン分泌促進薬を投与中の患者へのSGLT2阻害薬の追加は、重症低血糖を起こす恐れがあり、あらかじめインスリン、SU薬または速効型インスリン分泌促進薬の減量を検討することが必要である。また、これらの低血糖は、比較的若年者にも生じていることに注意すべきである。 インスリン製剤と併用する場合には、低血糖に万全の注意を払い、インスリンをあらかじめ相当量減量して行うべきである。また、SU薬にSGLT2阻害薬を併用する場合には、DPP-4阻害薬の場合に準じて、以下のとおりSU薬の減量を検討することが必要である。 ・グリメピリド2mg/日を超えて使用している患者は2mg/日以下に減じる ・グリベンクラミド1.25mg/日を超えて使用している患者は1.25mg/日以下に減じる ・グリクラジド40mg/日を超えて使用している患者は40mg/日以下に減じるケトアシドーシス インスリンの中止、極端な糖質制限、清涼飲料水多飲などが原因となっている。血糖値が正常に近くてもケトアシドーシスの可能性がある。とくに、全身倦怠・悪心嘔吐・体重減少などを伴う場合には血中ケトン体を確認する。SGLT2阻害薬の投与に際し、インスリン分泌能が低下している症例への投与では、ケトアシドーシスの発現に厳重な注意が必要である。同時に、栄養不良状態、飢餓状態の患者や極端な糖質制限を行っている患者に対するSGLT2阻害薬投与開始やSGLT2阻害薬投与時の口渇に伴う清涼飲料水多飲は、ケトアシドーシスを発症させうることにいっそうの注意が必要である。脱水・脳梗塞など 循環動態の変化に基づく副作用として、引き続き重症の脱水と脳梗塞の発生が報告されている。脳梗塞発症者の年齢は50~80代である。脳梗塞はSGLT2阻害薬投与後数週間以内に起こることが大部分で、調査された例ではヘマトクリットの著明な上昇を認める場合があり、SGLT2阻害薬による脱水との関連が疑われる。また、SGLT2阻害薬投与後に心筋梗塞・狭心症も報告されている。SGLT2阻害薬投与により通常体液量が減少するので、適度な水分補給を行うよう指導すること、脱水が脳梗塞など血栓・塞栓症の発現に至りうることに改めて注意を喚起する。75歳以上の高齢者あるいは65~74歳で老年症候群(サルコペニア、認知機能低下、ADL低下など)のある場合や利尿薬併用患者などの体液量減少を起こしやすい患者に対するSGLT2阻害薬投与は、注意して慎重に行う、とくに投与の初期には体液量減少に対する十分な観察と適切な水分補給を必ず行い、投与中はその注意を継続する。脱水と関連して、高血糖高浸透圧性非ケトン性症候群も報告されている。また、脱水や脳梗塞は高齢者以外でも認められているので、非高齢者であっても十分な注意が必要である。脱水に対する注意は、SGLT2阻害薬投与開始時のみならず、発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には万全の注意が必要であり、SGLT2阻害薬は必ず休薬する。この点を患者にもあらかじめよく教育する。また、脱水がビグアナイド薬による乳酸アシドーシスの重大な危険因子であることに鑑み、ビグアナイド薬使用患者にSGLT2阻害薬を併用する場合には、脱水と乳酸アシドーシスに対する十分な注意を払う必要がある(「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation」)。皮膚症状 皮膚症状は掻痒症、薬疹、発疹、皮疹、紅斑などが副作用として多数例報告されているが、非重篤のものが大半を占める。すべての種類のSGLT2阻害薬で皮膚症状の報告がある。皮膚症状が全身に及んでいるなど症状の重症度やステロイド治療がなされたことなどから重篤と判定されたものも報告されている。皮膚症状はSGLT2阻害薬投与後1日目からおよそ2週間以内に発症している。SGLT2阻害薬投与に際しては、投与日を含め投与後早期より十分な注意が必要である。あるSGLT2阻害薬で皮疹を生じた症例で、別のSGLT2阻害薬に変更しても皮疹が生じる可能性があるため、SGLT2阻害薬以外の薬剤への変更を考慮する。いずれにせよ皮疹を認めた場合には、速やかに皮膚科医にコンサルトすることが重要である。とくに粘膜(眼結膜、口唇、外陰部)に皮疹(発赤、びらん)を認めた場合には、スティーブンス・ジョンソン症候群などの重症薬疹の可能性があり、可及的速やかに皮膚科医にコンサルトするべきである。尿路・性器感染症 治験時よりSGLT2阻害薬使用との関連が認められている。これまで、多数例の尿路感染症、性器感染症が報告されている。尿路感染症は腎盂腎炎、膀胱炎など、性器感染症は外陰部膣カンジダ症などである。全体として、女性に多いが男性でも報告されている。投与開始から2、3日および1週間以内に起こる例もあれば2ヵ月程度経って起こる例もある。腎盂腎炎など重篤な尿路感染症も引き続き報告されている。尿路感染・性器感染については、質問紙の活用を含め適宜問診・検査を行って、発見に努めること、発見時には、泌尿器科、婦人科にコンサルテーションすることが重要である。 本委員会では、SGLT2阻害薬の使用にあたっては、「特定使用成績調査の結果、75歳以上では安全性への一定の留意が必要と思われる結果であった。本薬剤は適応やエビデンスを十分に考慮したうえで、添付文書に示されている安全性情報に十分な注意を払い、また本Recommendationを十分に踏まえて、適正使用されるべきである」と注意を喚起している。「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」からのお知らせはこちら。

3366.

ここが知りたい! 内分泌疾患診療ハンドブック

プライマリ・ケアでの、いち早い気付きが内分泌疾患を治す!肥満や浮腫などのありふれた症候の裏に潜む内分泌疾患。その予後は一般外来を担当する医師がいかにしてこれを疑い、治療への道筋を付け得るかにかかっています。本書では非専門医を念頭に、希少な疾患は大胆に割愛し、重要疾患には最新のガイドラインを踏まえた実践的な解説を加えました。重要なポイントでは「ここが重要!」として冒頭にまとめ、特にしてはいけないこと・注意すべきことを「これはご法度」として該当箇所にまとめてあります。さらに、各項目に「症例呈示」を行い、典型例や教訓的な事例をわかりやすく記載、主要症候からのアプローチや鑑別診断を重視し、ポイントを具体的に学べるようにしました。検査とその数値に関する基本的な知識も、コンパクトに理解しやすく整理して提供するよう工夫しています。大好評『ここが知りたい!糖尿病診療ハンドブック』の姉妹書として、臨床現場に必携の1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。   ここが知りたい! 内分泌疾患診療ハンドブック定価 4,400円 + 税判型 A5判頁数 320頁発行 2016年4月監修 横手幸太郎編著 龍野一郎 / 橋本尚武 / 岩岡秀明Amazonでご購入の場合はこちら

3367.

アジア人集団におけるTAVRの臨床転帰~国際多施設共同研究

 これまで、アジア人集団で経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)の安全性と有効性を十分に評価した無作為化試験や観察研究は報告されていない。アジア人での解剖学的特徴からTAVRの安全性と有効性が懸念されていたが、今回、日本を含むアジアTAVRレジストリで臨床アウトカムを評価したところ、既報の試験や観察研究と比べて良好な結果が得られたことを、韓国・アサン医療センターのSung-Han Yoon氏らが報告した。JACC Cardiovascular interventions誌2016年5月9日号に掲載。 本研究は、アジア5ヵ国でTAVRを受けた大動脈弁狭窄症患者を登録した、アジアTAVRレジストリによる国際多施設共同研究である。 主な結果は以下のとおり。・5ヵ国11施設で2010年3月~2014年9月に計848例が登録され、STSスコアの平均は5.2±3.8%であった。・患者の64.7%にEdwards社のSapien、また35.3%にMedtronic社のCoreValveがそれぞれ移植された。・手技成功率は97.5%であった。・30日および1年死亡率はそれぞれ2.5%と10.8%であった。・デバイス間の1年死亡率に差はなかった(Sapien 9.4%、CoreValve 12.2%、log-rank p=0.40)。・脳卒中、致死的な出血、主要な血管合併症、急性腎障害(ステージ2~3)の発生率は、それぞれ3.8%、6.4%、5.0%、3.3%であった。・中等度または重度の弁周囲漏出はCoreValveがSapienより有意に多かった(14.4% vs.7.3%、p=0.001)。・多変量モデルによる解析では、「より高いSTSスコア」「より低いBMI」「NYHA心機能分類III~IV」「糖尿病」「脳血管障害の既往」「ベースライン時の低い平均圧較差」「中等度または重度の弁周囲漏出」が生存率の低下と有意に関連していた。

3368.

肥満女性のインスリン抵抗性改善に骨格筋が重要

 女性肥満患者がインスリン抵抗性を改善するには、骨格筋量の維持が必要であることを、関西医科大学の福島 八枝子氏らが報告した。Diabetes & metabolism journal誌2016年4月号に掲載。 近年、運動耐容能および脂肪指数に加えて、骨格筋が肥満者におけるインスリン抵抗性に重要な役割を持つことが示唆されている。著者らは、女性肥満患者の減量時において、インスリン抵抗性の改善に寄与する体組成因子を調査した。 著者らは、食事療法、運動療法、認知行動療法を含む介入プログラム後に、体重が5%以上減少した女性肥満患者92例(年齢:40.9±10.4歳、BMI:33.2±4.6)を調査した。骨格筋量の変化を調べるために、介入の前後の体組成を、DEXA(X線二重エネルギー法)で評価した。インスリン抵抗性の指標として、HOMA-IR(ホメオスタシスモデル評価によるインスリン抵抗性指数)を測定した。心肺運動負荷試験もすべての患者で実施した。 主な結果は以下のとおり。・体重(-10.3±4.5%)、運動耐容能(無酸素性代謝閾値:9.1±18.4%、最高酸素摂取量:11.0±14.2%)、HOMA-IR(-20.2±38.3%)が有意に改善した。・体組成については、総体脂肪量(-19.3±9.6%)、総除脂肪量(-2.7±4.3%)、体脂肪率(-10.1±7.5%)が有意に減少し、骨格筋率(8.9±7.2%)は有意に増加した。・従属変数としてのHOMA-IRの変化をみたステップワイズ法による線形重回帰分析では、骨格筋率の変化が独立した予測因子として同定された(β=-0.280、R2=0.068、p<0.01)。

3369.

認定内科医試験完全対策 総合内科専門医ベーシック vol.2

第4回 膠原病 第5回 内分泌 第6回 代謝 (※正誤表) 日本内科学会の認定内科医試験を受験する先生方、必見です。出題基準ランクAの疾患を中心に各領域の予想問題を作成、出題意図と関連知識を解説していく“完全対策”DVDができました(全4巻)。講師は、若手育成に定評があり数々の資格試験を突破してきた、聖マリア病院の長門直先生。総合内科専門医試験を受ける先生方にとっては、基礎固め、総復習に最適。これを見れば、勉強するポイント、頻出のトピックがわかります!第4回 膠原病 膠原病は、病態生理が解明されていない疾患が多いため、系統だった学習が難しい分野です。また新薬や治療法のアップデートが頻繁なので、つねに新しい情報を確認することも必要になります。この番組では、出題頻度が高い疾患を入念に解説しているので、おさえるべきポイントがわかります。とくに血球減少・CRPの増減・スクリーニング検査・特異度の高い検査・活動性の評価に関しては、しっかり確認しておきましょう。第5回 内分泌 内分泌領域では、疾患の症状や検査所見がよく出題されます。診断に関しては、検査をどの順に進めて診断確定を行うかまで細かく問われる傾向があります。とくに甲状腺がんについては毎年1~2題必ず出題されるので、分類の特徴とそれぞれの治療法など、しっかり押さえておきましょう。第6回 代謝 代謝領域では2型糖尿病の問題が数多く出題されるので、この番組でも2型糖尿病の予想問題を多く作成、疫学から最新薬剤治療までしっかりと解説していきます。また、メタボリックシンドロームの診断基準については毎年出題されています。きちんと覚えておきましょう。

3370.

冠動脈バイパス術が長期生命予後改善効果を有することが22年ぶりに報告された(解説:大野 貴之 氏)-524

 虚血性心筋症(EF35%以下の低心機能を伴った安定冠動脈疾患)に対する治療として、薬物治療群(602例)とCABG群(610例)を比較したランダム化試験がSTICH試験である。2011年に追跡期間5年の結果が報告されたが、心臓血管死に関してはぎりぎり有意差を検出したが、全死亡に関して有意差は検出されなかった。今回、追跡10年間の結果が報告された。その結果、全死亡は薬物群66.1%に対してCABG群58.9%(p=0.02)、心臓血管死は49.3%対して40.5%(p=0.006)であった。 CABGの真の治療効果とその大きさを評価することは、薬物治療と比較したランダム化試験により可能であると考えている。現時点では、STICH試験以外で該当するのはYusuf氏らのメタ解析(1994年報告)、MASS II試験(2010年報告)、BARI II試験試験(2010年報告)の3つしかない。全死亡は、最もハードなエンドポイントであり、CABGの治療効果をかなり正確かつ客観的に評価することが可能である。Yusuf氏らは、安定冠動脈疾患患者2,649例を対象として、追跡5年から10年間において薬物治療よりもCABGが優れていることを報告した。このレベルAのエビデンスが、その後長い期間にわたり心臓外科医が自信を持ってCABGを執刀する支えとなってきた。しかし、最近は薬物治療が古い、とくにスタチンがない時代の試験結果であるとの批判が出てきた。また、心臓外科医の立場からみれば90%は内胸動脈を使用しておらず、10年以上にわたる長期の治療効果は期待できない。また、MASS II試験はおそらく対象患者は少ないこと、BARI II試験も対象患者は少なく追跡期間も5年と短期間であることから、全死亡に関しては有意差を認めていない。 今回のSTICH試験の結果は、Yusuf氏ら以来、22年ぶりに「冠動脈バイパス術が長期生命予後改善効果を有する」ことを報告したものである。EF35%以下の低心機能を伴った安定冠動脈疾患を対象としているが、対象患者数は1,212例と比較的多く、追跡期間も内胸動脈を使用したCABGの生命予後改善効果が十分に発揮される10年に達している。また、その治療効果の大きさを治療効果発現必要症例数number needed to treat(NNT)で表すと10年間でNNT=14となる。「この10年間で、NNT=14という数字をどのように解釈するのか?」に関するコメントは難しい。参考になるエビデンスを2つ挙げる。SYNTAX試験結果、3枝病変に対するPCIと比較したCABGの生命予後改善効果の大きさは、5年間でNNT=19、FREEDOM試験では糖尿病・多枝病変に対するPCIと比較したCABGの生命予後改善効果の大きさも5年間でNNT=19となる。この2つの試験結果により、米国・ヨーロッパの新しいガイドラインは、共に3枝病変あるいは多枝病変・糖尿病患者ではCABGが第1選択であるという考え方に基づいて作成されている。

3371.

リノール酸はヘルシーとは言えない?/BMJ

 リノール酸を多く含む食事により冠動脈疾患または全死亡のリスクが低下する、という伝統的な仮説に否定的な見解が示された。リノール酸を多く含む食事は飽和脂肪酸を多く含む食事と比較して、血清コレステロール値を低下させるが、その低下が大きすぎるとむしろ死亡リスクは高まり、これまで飽和脂肪酸を植物性脂肪に置き換える効果が過大評価されてきた可能性があるという。米国立衛生研究所(NIH)のChristopher E Ramsden氏らが、Minnesota Coronary Experiment(MCE)研究の未発表文書を発見し、生データを再解析するとともに、類似の無作為化比較試験も含めてシステマティックレビューならびにメタ解析を行った結果、報告した。BMJ誌オンライン版2016年4月12日号掲載の報告。MCE試験の未発表を再解析、類似の無作為化比較試験を含めてメタ解析 MCE研究(1968~73年)は、飽和脂肪酸を、リノール酸が豊富な植物油で置き換えることで、血清コレステロール値が下がり冠動脈疾患や全死亡は減少するとの仮説を検証する目的で、米国ミネソタ州の介護施設1施設および州立精神科病院6施設の患者を対象に行った、無作為化二重盲検比較試験である。介入群には、飽和脂肪酸をリノール酸(コーン油またはコーン油の多価不飽和脂肪酸を多く含むマーガリン)に置き換えた食事を、対照群には動物性脂肪など飽和脂肪酸の多い通常の食事が1年以上提供された。 研究グループは、無作為化された男女9,423例(20~97歳)について、解析が完了した未発表文書、ならびに1年以上の本研究の食事を取った2,355例の血清コレステロール値に関するデータ、剖検が実施された149例のファイルを精査した。さらに、システマティックレビューにより、飽和脂肪酸の代わりにリノール酸が豊富な植物油を提供し血清コレステロール値が低下した無作為化比較試験5件(計1万808例)を確認し、そのデータも包含したメタ解析を実施した。 主要評価項目は、全死因死亡、血清コレステロール値と死亡率との関連性、剖検で検出された冠動脈硬化症および心筋梗塞とした。介入群で血清コレステロール値は有意に減少するも、死亡リスクは上昇 介入群では、対照群と比較して血清コレステロール値が有意に減少した(ベースラインからの平均変化:-13.8% vs. -1.0%、p<0.001)。Kaplan Meier法により死亡率を評価した結果、全体またはサブグループいずれにおいても、介入による死亡への効果はみられなかった。 共変量(ベースラインの血清コレステロール値、年齢、性別、食事順守率、BMI、収縮期血圧)で調整したCox回帰モデル分析において、血清コレステロール値が30mg/dL低下するごとに、死亡リスクは22%上昇することが認められた(ハザード比[HR]:1.22、95%信頼区間[CI]:1.14~1.32、p<0.001)。介入群において、冠動脈硬化症や心筋梗塞に対する有効性は認められなかった。 メタ解析の結果、コレステロールを低下させる介入が冠動脈疾患による死亡(HR:1.13、95%CI:0.83~1.54)、または全死因死亡(1.07、95%CI:0.90~1.27)を低下させるというエビデンスは示されなかった。

3372.

糖尿病網膜症の発症、血清リポ蛋白(a)値と関連

 リポ蛋白(a)(Lp(a))は、主に心血管疾患発症の予測因子と考えられている。先行研究では、Lp(a)と糖尿病性細小血管合併症は関連している可能性が示された。韓国カトリック大学のJae-Seung Yun氏らは、2型糖尿病患者を対象とした前向きコホート研究を行い、糖尿病網膜症は血清Lp(a)値と関連していることを明らかにした。Journal of Clinical Lipidology誌2016年3・4月号(オンライン版2016年1月7日号)の掲載報告。 研究グループは、糖尿病網膜症を合併していない2型糖尿病患者連続787例を登録し、前向きに追跡して糖尿病網膜症の発症率と危険因子を調査した。 網膜症の評価は眼科医が毎年行った。主要評価項目は、糖尿病網膜症の新規発症であった。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は11.1年であった。・糖尿病網膜症を発症した患者群は、糖尿病罹病期間が長く(p<0.001)、ベースラインのHbA1c値が高く(p<0.001)、蛋白尿の程度が高く(p=0.033)、血清Lp(a)値が高かった(p=0.005)。・性別、年齢、糖尿病罹病期間、高血圧の有無、腎機能、LDLコレステロール値、平均HbA1c値、および薬物療法で調整後、糖尿病網膜症の発症は血清Lp(a)値と有意に関連した(Lp(a)の第4四分位値 vs.第1四分位値のハザード比[HR]:1.57、95%信頼区間[CI]:1.11~2.24、p=0.012)。・血清Lp(a)値の四分位範囲が最高かつ平均HbA1c値≧7.0%の患者群は、両者が低い患者と比較して糖尿病網膜症発症のHRが5.09(95%CI:2.63~9.84、p<0.001)であった。

3373.

DPP-4阻害薬は2型糖尿病患者における重度腎不全のリスクを増加させる可能性がある(解説:住谷 哲 氏)-520

 DPP-4阻害薬は、わが国で最も多く処方されている血糖降下薬である。しかし、DPP-4阻害薬が2型糖尿病患者の心血管イベントを抑制する可能性は、TECOS試験1)などの3つのランダム化比較試験(RCT)の結果からほぼ否定された。同時に、これら3つのRCTにおいて、DPP-4阻害薬が他の血糖降下薬に比較して心血管イベントを増加させる可能性もほぼ否定された。つまり、少なくとも心血管イベント発症に対する安全性は担保されたことになる。しかし、DPP-4阻害薬が細小血管障害(網膜症、腎症、神経障害)に及ぼす影響については、これまでほとんど報告されていない。そこで著者らは、real worldにおいてDPP-4阻害薬が2型糖尿病患者の細小血管障害のリスクを減少させるか否かを検討した。その結果は、DPP-4阻害薬がメトホルミンと比較して重度腎不全のリスクを約3.5倍に増加させる可能性を示唆しており、DPP-4阻害薬が多用されているわが国の2型糖尿病診療に及ぼす影響は少なくない。 英国プライマリケアのデータベースであるQResearchデータベースを用いて、2007年4月1日から2015年1月31日の間に、2型糖尿病と診断された患者46万9,688例(25~84歳)をオープンコホートに組み込み、DPP-4阻害薬(80%はシタグリプチン)、チアゾリジン薬(90%はピオグリタゾン)、メトホルミン、SU薬、インスリン、その他の血糖降下薬(αGI薬、グリニド薬、SGLT2阻害薬)と5つの臨床アウトカム(失明、高血糖、低血糖、下肢切断、重度腎不全)との関連を検討した(ここで下肢切断は神経障害と考えられている点に注意が必要である)。血糖降下薬は、単剤、2剤併用、3剤併用のすべての組み合わせについてそれぞれ検討した。重度腎不全は、透析導入、腎移植、CKD ステージ5(eGFR<15 mL/min/1.73m2)のいずれかと定義した。それぞれのアウトカムに対するハザード比(HR)を、Cox比例ハザードモデルにより計算した。それぞれの薬剤への暴露(exposure)は、たとえば、ある患者がコホートに組み込まれた最初12ヵ月間はメトホルミンのみ、その後メトホルミンとチアゾリジン薬との併用24ヵ月、その後投薬なし6ヵ月の時点でイベントを発症した場合はメトホルミン単剤12ヵ月、メトホルミン+チアゾリジン薬24ヵ月、無投薬6ヵ月としてモデルに組み込まれた。 観察期間中に、27万4,324例(58.4%)が何らかの血糖降下薬を処方された。そのうちメトホルミンが25万6,024例(投薬群の93.3%)に処方された。一方、DPP-4阻害薬は3万2,533例(投薬群の11.9%)に処方された。その結果は表3に示されているように、メトホルミンのみが失明(HR:0.70、95%信頼区間:0.66~0.75、以下同様)、高血糖(0.65、0.62~0.67)、低血糖(0.58、0.55~0.61)、下肢切断(0.70、0.64~0.77)、重度腎不全(0.41、0.37~0.46)とすべてのアウトカムのリスクを減少させた。 これに基づいて、各薬剤群(単剤、2剤併用、3剤併用)および無投薬群のメトホルミン単剤投与群に対する、それぞれの5つのアウトカムの調整HRが表5にまとめられている。DPP-4阻害薬単剤投与群においては、失明(1.39、0.66~2.93)、高血糖(1.44、0.85~2.43)、低血糖(0.83、0.21~3.33)、下肢切断(1.03、0.33~3.20)、重度腎不全(3.52、2.04~6.07)であり、重度腎不全のリスクのみがメトホルミン単剤投与群に比較して3.52倍増加していた。この重度腎不全のリスク増加は、メトホルミン+DPP-4阻害薬の2剤併用群では消失(0.59、0.28~1.25)していたが、SU薬+DPP-4阻害薬の2剤併用群では残存(3.21、2.08~4.93)していた。さらに、メトホルミン+DPP-4阻害薬+SU薬の3剤併用群においては重度腎不全リスクの増加は認められなかった(0.68、0.39~1.20)。 本論文の結果は、DPP-4阻害薬単剤投与は2型糖尿病患者において重度腎不全のリスクを約3.5倍に増加させる可能性を示唆する。しかし、本論文はRCTではなくコホート研究であるため、因果関係を厳密に証明することは困難である。糖尿病罹病期間、血清クレアチニン値、HbA1c、合併症の有無をはじめとした26の潜在的交絡因子で調整した結果であるが、未知の交絡因子の残存は否定できない。著者らも本論文の限界として、recall bias、indication bias、channelling biasについて論じているが、DPP-4阻害薬を単剤投与された患者(おそらく何らかの理由でメトホルミンが投与できなかった患者)が、重度腎不全発症の高リスク群であった可能性が残るであろう。 単純には、これらの患者は最初から腎機能が悪かったのではないかと考えられるが、表2のbaseline characteristicsを見る限り、血清クレアチニン値はメトホルミン投与群(84.8 μmol/L、0.96 mg/dL)、DPP-4阻害薬投与群(84.9 μmol/L、0.96 mg/dL)であり、両群に差は認められていない。さらに、コホートに組み込まれた時点ですでに腎疾患(kidney diseaseと記載されているが詳細は不明)を有する患者から発症した重度腎不全は解析から除外されている。 DPP-4阻害薬が、尿中アルブミン排泄量を減少させるとの報告は散見されるが2)、病態生理学的および薬理学的にDPP-4阻害薬が重度腎不全を来すメカニズムは説明困難であると思われる。しかし、シタグリプチンの添付文書には重大な副作用に急性腎不全(頻度不明)が記載されている3)4)。したがって、本論文の結果は医薬品安全性監視(pharmacovigilance)の観点から解釈される必要がある。つまり、real worldで発生するDPP-4阻害薬の有害事象シグナルは微小であり、本論文のような膨大なデータの解析によって初めて明らかになったと考えられる。 英国においてはメトホルミンが第1選択薬とされていることから、DPP-4阻害薬の単剤投与はきわめて例外的であるが、わが国においては、メトホルミンではなくDPP-4阻害薬のみを投与されている患者はきわめて多く存在している。メトホルミンとの併用では重度腎不全の発症リスクが増加しないことから、DPP-4阻害薬は第1選択薬ではなく、メトホルミンへの追加薬剤としての位置付けが適切である。

3374.

慢性腰痛治療のゴールは「何ができるようになりたいか」

 慢性腰痛症に伴う疼痛に対し、2016年3月、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)のデュロキセチン塩酸塩(商品名:サインバルタ)の適応追加が承認された。これを受けて、4月19日、本剤を販売する塩野義製薬株式会社と日本イーライリリー株式会社が、痛みのメカニズムと治療薬の適正使用をテーマにメディアセミナーを開催した。 このなかで、講師を務めた福島県立医科大学 整形外科教授の紺野 愼一氏は、「慢性腰痛における治療は、それによって何ができるようになりたいかを目標にするのが重要だ」と述べた。 慢性疼痛は、中枢神経系の異常などによって、3ヵ月以上痛みが持続することが一般的な定義である。急性疼痛と異なり、痛みの原因となる外傷疾患が治癒した後も長期間持続するため、ADLやQOLへの影響が問題となる。全国20歳以上の男女を対象に行ったインターネット調査によると、2010年度時点で、有病率から推計される慢性疼痛保有者は2,315万人に上り、そのうち約56%が「腰痛」を訴えたという。調査ではさらに、痛みによって仕事などに支障を来したり、休職したりした人が約55%に上ることもわかった。  こうした慢性腰痛に対して治療を進めていくうえで、何に留意すべきなのだろうか。紺野氏は、大きく2つのポイントを挙げる。 1つ目は治療開始時にある。疼痛治療において、何より痛みを和らげることが重要ではあるが、完全に痛みを取ることを最終目標とすると、患者も医療者もなかなかゴールにたどり着けない。紺野氏は、「慢性腰痛によってどんなことができなくなったのか」を患者にヒアリングしたうえで、「治療によってどんなことができるようになりたいのか」を考え、それを両者の共通目標として治療を進めていくことが重要だという。目標はできるだけ具体的な内容で、「夫婦で30分程度の散歩ができるようになりたい」とか、「腰痛のためにやめていた大好きなゴルフが再びできるようになりたい」など、患者一人ひとりの思いに添うことが大事だ。 2つ目は治療体制にある。組織の炎症など、痛みの原因がはっきりしている急性腰痛と異なり、慢性腰痛は必ずしも“腰が悪い”わけではない。紺野氏によると、慢性腰痛保有者の3分の1は心理社会的要因が少なからず関わっており、「多面的、集学的なアプローチが必要」という。紺野氏が臨床で実践しているのは月1回のリエゾンカンファレンスで、メンバーは整形外科に関連した医療スタッフのほか、精神科医や臨床心理士、精神科ソーシャルワーカーで構成する。カンファレンスでは、患者の成育歴に虐待がないかや、最近の仕事や家族に関する悩みなど、幅広くかつ詳細な情報が共有される。一見、症状とは関連がないように思われるが、こうした情報から患者の置かれている状況をひも解くことで、腰痛の真の原因が明らかになることがあるという。 これらの治療アプローチに共通するのは、医師と患者のコミュニケーションだ。紺野氏は、腰痛を訴える患者に対し、単純ではない痛みのメカニズムがあることを医師がきちんと説明し理解を得たうえで、患者の望むゴールを共に目指すには、綿密なコミュニケーションに裏付けられた互いの信頼感が何をおいても基本だと強調した。 講演後の質疑応答では、サインバルタの適正使用についての質問が挙がった。サインバルタは、国内では2010年に「うつ病・うつ状態」、2012年に「糖尿病性神経障害に伴う疼痛」、2015年に「線維筋痛症に伴う疼痛」に対して承認を取得してきたが、今回SNRIとして初めて「慢性腰痛症に伴う疼痛」の治療薬として承認された。紺野氏は、慢性腰痛の新たな治療選択肢となる期待感を示したうえで、「整形外科医にはなじみのない薬剤なので、処方にあたっては医師自身がまず副作用や安全性をきちんと理解しなればならない」と述べた。

3375.

慢性心不全、エナラプリルへのアリスキレン追加は有用か/NEJM

 慢性心不全患者に対し、エナラプリルに加えてアリスキレン(商品名:ラジレス)を投与しても、有害事象が増大するだけでベネフィットは増大しないことが、英国・グラスゴー大学のJohn J.V. McMurray氏らによる無作為化試験の結果、示された。アリスキレンのエナラプリルに対する非劣性は示されなかった。慢性心不全患者に対し、ACE阻害薬は死亡および入院の発生を減少することが知られている。しかし、それら患者に対するレニン阻害薬がどのような役割を果たすのかは不明であった。NEJM誌2016年4月21日号(オンライン版2016年4月4日号)掲載の報告。各単独、併用の3群に無作為化し心血管死・心不全入院の発生を比較 試験は2009年3月13日~13年12月26日に、43ヵ国789センターで8,835例を登録して行われた。単盲検の導入期間後、二重盲検法にて、3群(エナラプリル1日2回5または10mg投与群、アリスキレン1日1回300mg投与群、両薬併用群)のうちの1つに被験者を無作為に割り付けた(エナラプリル単独群2,336例、アリスキレン単独群2,340例、併用群2,340例)。 被験者の適格条件は、NYHA心機能分類II~IV、LVEF35%以下、12ヵ月以内に心不全入院歴のある場合BNP100pg/mL以上、登録時に一定用量でのACE阻害薬投与を受けている(エナラプリル1日10mg投与に相当)またはβ阻害薬投与を受けている患者とした。 主要アウトカムは、心血管死・心不全入院の複合とした。 3群の被験者バランスはとれており、ベースラインで糖尿病を有している患者はより高齢で、糖尿病を有していない患者よりも虚血性心疾患歴を有する割合が高かった。併用群のベネフィット認められず、複数の有害事象のリスクが上昇 追跡期間中央値36.6ヵ月後、主要複合アウトカムの発生は、併用群770例(32.9%)、エナラプリル単独群808例(34.6%)であった(ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.85~1.03)。また、アリスキレン単独群では791例(33.8%)で(対エナラプリル単独のHR:0.99、95%CI:0.90~1.10)、事前規定の非劣性検定の基準を満たさなかった。 併用群では、エナラプリル群よりも低血圧症のリスク上昇がみられた(13.8% vs.11.0%、p=0.005)。同様に、血清クレアチニン値上昇のリスク(4.1% vs.2.7%、p=0.009)、高カリウム血症のリスク上昇もみられた(17.1% vs.12.5%、p<0.001)。

3376.

日本での2型糖尿病に関連するがんを2030年まで予測

 2010~30年の間、わが国の2型糖尿病によるがんの人口寄与割合は着実に増加すると予測され、その増加は肝がん、膵がん、結腸がんで著明であることが、東京大学の齋藤 英子氏らの研究で示唆された。Cancer Science誌2016年4月号に掲載。 糖尿病は世界的に主要な疾病負荷であり、その有病率は増加し続けている。著者らは、日本における2010~30年の2型糖尿病に関連するがんの負荷を推定した。本研究では、1990~2030年の2型糖尿病の有病率の推定値、国内の8つの大規模コホート研究のプール解析での糖尿病およびがんリスクの要約ハザード比、2010年のがん罹患率/死亡率、age-period-cohort(APC)モデルで予測した2030年の罹患率/死亡率を用いて、2010年と2030年における2型糖尿病に関連するがんリスクの人口寄与割合を推定した。 主な結果は以下のとおり。・20歳以上の成人において、2010年から2030年の間にがん罹患率と死亡率はそれぞれ38.9%と10.5%増加することが予測された。・2型糖尿病により過剰に発症するがん症例は、2010年から2030年の間に、男性で26.5%、女性で53.2%それぞれ増加することが予測された。・肝がん、膵がん、結腸がんで著明な増加が予測された。・2型糖尿病によるがんの人口寄与割合は、60歳以上ではこの期間にわたり増加するが、20~59歳では変化しないことが、年齢別の分析で示唆された。

3377.

日本人の妊娠糖尿病リスク、血液型と関連していた

 ABO式血液型は妊娠糖尿病と関連し、AB型は妊娠糖尿病リスク因子の1つであることが、長野県・飯田市立病院の下平 雅規氏らの日本人を対象とした研究で明らかになった。Diabetes & metabolic syndrome誌オンライン版2016年3月14日号の報告。 著者らは、ABO式血液型と妊娠糖尿病との関連を調査する目的で、日本人の妊婦5,424人のデータを用いて、後ろ向き症例対照研究を行った。 妊娠糖尿病のスクリーニングは、妊娠第1期に簡易的なブドウ糖試験、妊娠第2期に50g経口ブドウ糖負荷試験を実施した。スクリーニングで陽性であった場合は、75g経口ブドウ糖負荷試験を行い、国際糖尿病・妊娠研究会(IADPSG)の基準に従って妊娠糖尿病と診断した。交絡因子を調整後、ロジスティック回帰分析を用いて、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・A型(調整後のOR:0.34、95%CI:0.19~0.63)、B型(調整後のOR:0.35、95%CI:0.18~0.68)、O型(調整OR:0.39、95%CI:0.21~0.74)の妊婦は、AB型の妊婦と比較して、妊娠糖尿病発症リスクが低かった。・AB型の妊婦は、A型・B型・O型の妊婦と比較して、妊娠糖尿病発症リスクが有意に高かった(調整後のOR:2.73、95%CI:1.64~4.57)。

3379.

「水を飲んでも太る」と言う患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第1回

■外来NGワード「水にはカロリーはない。水を飲んで太るはずはない!」「水を飲んで体重が増えるのは、むくんでいるだけだ!」「水を飲んで大きくなるのは植物だけだ!」■解説 「水を飲んでも太る」と言う患者さんに「水にはカロリーはない。水を飲んで太るはずはない」と言いたいところなのですが、少し我慢して患者さんの気持ちを考えてみましょう。患者さんも「水にはカロリーがない」ことはわかっているはず。「水を飲んでも太る(気がする)」「食べ過ぎていないのに痩せない」という気持ちがそこには潜んでいるのです。ちなみに欧米の肥満者に対する減量指導では、「食前に水を飲む」ことが推奨されています1)。それも500ccとかなり量が多いのです。食前に水を飲むことを勧める理由の1つは、食前に水を飲むことで、胃が膨らみ、食事量が減ることが考えられています2)。もう1つの理由として、水誘発性熱産生があります3)。飲んだ水を体温まで温めるために、身体からエネルギーが奪われます。加糖飲料が減る効果も期待できるため、学校での肥満対策としても用いられています4)。ただし、すべてがうまくいくわけではありません5)。筋肉量が少ない人では、冷たい水を飲むことで身体全体が冷えて、代謝が鈍ることも考えられます。やはり、必ず運動療法と併用することが大切なようです。これらのエビデンスを知ったところで、患者さんには次のように話してみてはいかがでしょうか? ■患者さんとの会話でロールプレイ医師減量を助ける水の飲み方がありますよ!患者えっ、そんな方法があるんですか?(興味津々)医師はい。あります。患者普段から水分は摂るようにしているんですけど…。医師水を飲むタイミングが重要なんです。患者水を飲むタイミング!?医師そうです。タイミング。食前に水を飲むんです。そうすると胃が膨らむので食べる量が少なくなります。患者えっ、そうなんですか。早速、やってみます!医師ただし、水やお茶で食べ物を流し込んではいけませんよ。早食いになるので…。患者はい。わかりました。(うれしそうな顔)■医師へのお勧めの言葉「減量を助ける水の飲み方がありますよ!」1)Dennis EA, et al. Obesity. 2010;18:300-307.2)Davy BM, et al. J Am Diet Assoc. 2008;108:1236-1239.3)Davy BM, et al. J Am Diet Assoc. 2008;108:1236-1239.4)Muckelbauer R, et al. Pediatrics. 2009;123:e661-667.5)Charrière N, et al. Nutr Diabetes. 2015;5:e190.

3380.

deferredステント留置はSTEMIの予後を改善するか/Lancet

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者の治療において、ステント留置を即座には行わないdeferredステント留置と呼ばれるアプローチは、従来の即時的な経皮的冠動脈インターベンション(PCI)に比べて、死亡や心不全、再発心筋梗塞、再血行再建術を抑制しないことが、デンマーク・ロスキレ病院のHenning Kelbaek氏らが行ったDANAMI 3-DEFER試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年4月3日号に掲載された。STEMI患者では、ステント留置を用いたPCIによって責任動脈病変の治療に成功しても、遺残血栓に起因する血栓塞栓症で予後が損なわれる可能性がある。これに対し、梗塞関連動脈の血流が安定した後に行われるdeferredまたはdelayedステント留置は、冠動脈の血流を保持し、血栓塞栓症のリスクを低減することで、臨床転帰の改善をもたらす可能性が示唆され、種々の臨床試験が行われている。deferredステント留置の有用性を無作為試験で評価 DANAMI 3-DEFER試験は、デンマークの4つのPCIセンターが参加する3つのDANAMI 3プログラムの1つで、STEMI患者においてdeferredステント留置と標準的PCIの臨床転帰を比較する非盲検無作為化対照比較試験(デンマーク科学技術革新庁などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、胸痛発症から12時間以内で、心電図の2つ以上の隣接する誘導で0.1mV以上のST上昇または新規の左脚ブロックの発現がみられる患者であった。 被験者は、deferredステント留置または即時的に標準的なプライマリPCIを施行する群に無作為に割り付けられた。プライマリPCIは薬剤溶出ステント留置が望ましいとされた。 deferred群では、病院到着時の冠動脈造影で梗塞関連動脈の血流が安定化する可能性がある場合は約48時間(最短でも24時間以上、この間にGP IIb/IIIa受容体拮抗薬などを4時間以上静脈内投与)後に再造影を行い、血流の安定化が確認されればステント留置を行わないこととした。 主要評価項目は、2年以内の全死因死亡、心不全による入院、心筋梗塞の再発、予定外の標的血管の血行再建術の複合エンドポイントとした。 2011年3月1日~14年2月28日までに1,215例が登録され、deferred群に603例、標準的PCI群には612例が割り付けられた。予定外の標的血管血行再建術はdeferred群で高頻度 年齢中央値はdeferred群が61歳、標準的PCI群は62歳、男性がそれぞれ76%、74%であった。糖尿病がそれぞれ9%、9%、高血圧が41%、41%、喫煙者が54%、51%、心筋梗塞の既往歴ありが6%、7%含まれた。多枝病変は41%、39%であった。 発症から施術までの期間中央値は両群とも168分であり、フォローアップ期間中央値は42ヵ月(四分位範囲:33~49)だった。 主要エンドポイントの発生率は、deferred群が17%(105/603例)、標準的PCI群は18%(109/612例)であり、両群間に有意な差は認めなかった(ハザード比[HR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.75~1.29、p=0.92)。 主要エンドポイントの個々の項目のうち、全死因死亡(p=0.37)、心不全による入院(p=0.49)、非致死的心筋梗塞の再発(p=0.49)には差がなかったが、予定外の標的血管の血行再建術はdeferred群のほうが有意に多かった(HR:1.70、95%CI:1.04~2.92、p=0.0342)。 また、心臓死(p=0.58)、PCIによる標的血管の血行再建術(p=0.11)、冠動脈バイパス・グラフト術(CABG)による標的血管の血行再建術(p=0.15)にも差はみられなかった。18ヵ月時の左室駆出率は、deferred群がわずかに良好だった(54.8 vs.53.5%、p=0.0431) 手技関連の心筋梗塞、輸血または手術を要する出血、造影剤誘発性腎症、脳卒中を合わせた発生率は、deferred群が4%(27/603例)、標準的PCI群は5%(28/612例)であり、両群間に差を認めず、個々の項目にも差はなかった。 著者は、「現在、類似の3つの臨床試験(MIMI試験、INNOVATION試験、PRIMACY試験)が進行中であり、これらの試験の結果がSTEMIにおけるdeferredステント留置の概念にさらなる光を投げかける可能性がある」としている。

検索結果 合計:4905件 表示位置:3361 - 3380