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2型糖尿病患者、若いほどGERDが多い

 日本人の2型糖尿病患者において、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2受容体拮抗薬(H2RA)の使用に関係なく、若年が独立して胃食道逆流症(GERD)に関連する可能性が示唆された。愛媛県内の関連病院による多施設共同研究である道後Studyにおける解析を愛媛大学の池田 宜央氏らが報告した。Digestive diseases and sciences誌オンライン版2016年9月22日号に掲載。 日本人の2型糖尿病患者における年齢とGERDの関連についてのエビデンスは少ない。今回の多施設横断研究では、被験者を年齢に応じて、19歳以上56歳未満、56歳以上64歳未満、64歳以上71歳未満、71歳以上89歳未満の四分位に分割して比較した。GERDは、Carlsson-Dentの自己記入式質問票(QUEST)でスコア4以上と定義した。 主な結果は以下のとおり。・GERD有病率は31.5%であった。・若年であることは、独立してGERDの高い有病率と関連していた。GERDの調整オッズ比(95%信頼区間)は、56歳未満、56歳以上64歳未満、64歳以上71歳未満、71歳以上でそれぞれ、3.73(2.16~6.53)、1.98(1.21~3.27)、1.66(1.05~2.68)、1.00(基準)であった(傾向のp=0.001)。・PPIまたはH2RAを使用している201例において、56歳未満は独立してGERDと相関していた。調整ORは5.68(1.55~22.18)(傾向のp=0.02)であった。

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乳児期の卵・ピーナッツ摂取でアレルギーのリスク低下/JAMA

 乳児食として、早期に卵およびピーナッツを導入すると、これらのアレルゲン食品によるアレルギー性疾患のリスクが低減することが、英国インペリアル・カレッジ・ロンドンのDespo Ierodiakonou氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2016年9月20日号に掲載された。アレルゲン食品の導入時期が、アレルギー性疾患や自己免疫疾患のリスクに及ぼす影響への関心が高まっている。乳児食のガイドラインは、両親にアレルゲン食品の導入を遅らせることを推奨しなくなっているが、多くの場合、早期の導入を勧めてもおらず、最近の6つのアレルゲン食品の早期導入の無作為化試験(EAT試験)では、いずれの食品でも予防効果は認められていない。導入時期の影響をメタ解析で評価 研究グループは、アレルギー性疾患および自己免疫疾患のリスクに及ぼすアレルゲン食品の導入時期の影響を評価するために、文献を系統的にレビューし、メタ解析を行った(英国食品基準庁の助成による)。 医学データベース(MEDLINE、EMBASE、Web of Science、CENTRAL、LILACS)を用いて、1946年1月~2016年3月までに報告された文献を検索した。 生後1年以内の乳児において、アレルゲン食品(牛乳、卵、魚類、甲殻類、ナッツ類[tree nuts]、小麦、ピーナッツ、大豆)の導入時期を検討し、アレルギー性疾患や自己免疫疾患、アレルギー感作との関連について報告した介入試験および観察試験を対象とした。 主要評価項目は、喘鳴、湿疹、アレルギー性鼻炎、食品アレルギー、アレルギー感作、1型糖尿病、セリアック病、炎症性腸疾患、自己免疫性甲状腺疾患、若年性関節リウマチであった。エビデンスレベルは低いが、魚類の早期導入が鼻炎を抑制 146試験の204編の論文が解析に含まれた。介入試験のうち、24件(39論文、1万3,298例)がアレルギー性疾患、5件(6論文、5,623例)は自己免疫疾患に関するものであった。また、観察試験のうち、69件(90論文、14万2,103例)がアレルギー性疾患、48件(69論文、6万3,576例)は自己免疫疾患に関するものだった。 日本の研究を含む5試験(1,915例)のメタ解析では、乳児食に早期(生後4~6ヵ月時)に卵を導入した乳児は、これより遅い時期に導入した乳児に比べ卵アレルギーのリスクが低いことを示す、確実性が中等度のエビデンス(moderate-certainty evidence)が得られた(率比[RR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.36~0.87、I2=36%、p=0.009)。 卵アレルギーの発生率が5.4%の集団における絶対リスク減少率は、1,000人当たり24例(95%CI:7~35)であった。 また、2試験(1,550例)のメタ解析では、早期(生後4~11ヵ月時)にピーナッツを導入した乳児は、これより遅い時期に導入した場合に比べピーナッツアレルギーのリスクが低いことを示す、確実性が中等度のエビデンスが得られた(RR:0.29、95%CI:0.11~0.74、I2=66%、p=0.009)。 ピーナッツアレルギーの発生率が2.5%の集団における絶対リスク減少率は、1,000人当たり18例(95%CI:6~22)だった。 エビデンスの確実性は、効果の推定値の不正確性および試験の集団や介入の間接性によって、低下した。卵およびピーナッツの導入時期は、他の食品に対するアレルギーのリスクとは関連しなかった。 一方、早期の魚類導入のアレルギー感作および鼻炎の低減との関連を示す、確実性が非常に低い~低いエビデンスが確認された。グルテンの導入時期とセリアック病のリスク、アレルゲン食品の導入時期と他のアウトカムは、いずれも関連がないことを示す、確実性の高いエビデンスが得られた。 著者は、「これらの知見は、各試験の限界との関連を考慮して解釈すべきである」と指摘している。

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週1回の新規GLP-1受容体作動薬、心血管リスクを低下/NEJM

 心血管リスクが高い2型糖尿病患者において、プラセボと比較しsemaglutideの投与により心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中の発生リスクが26%有意に低下し、プラセボに対するsemaglutideの非劣性が確認された。米国・Research Medical CenterのSteven P. Marso氏らが「SUSTAIN-6試験」の結果、報告した。規制ガイダンスの規定によりすべての新規糖尿病治療薬は心血管系への安全性を立証する必要があるが、約1週間という長い半減期を持つGLP-1受容体作動薬semaglutideの心血管への影響はこれまで不明であった。NEJM誌オンライン版2016年9月15日号掲載の報告。心血管リスクの高い2型糖尿病患者3,297例を対象、プラセボと比較 SUSTAIN-6試験は、semaglutideの心血管安全性を評価する二重盲検無作為化比較対照並行群間試験で、20ヵ国230施設にて実施された。 対象は、50歳以上で心血管疾患(CVD)の既往のある慢性心不全または慢性腎疾患(CKD)ステージ3以上、または60歳以上で1つ以上の心血管リスク因子を有する、HbA1c 7.0%以上の2型糖尿病患者3,297例で、2013年2月~12月に、semaglutide(0.5mgまたは1.0mg)週1回皮下投与を標準治療(運動・食事療法、経口血糖降下薬、心血管系治療薬)に追加する群(semaglutide 0.5mg/週群および1.0mg/週群)と、プラセボ群(プラセボ0.5mg/週群および1.0mg/週群)に1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた。治療期間は104週間、追跡期間は5週間であった。 主要評価項目は、心血管複合イベント(心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中)の初回発生で、プラセボに対するsemaglutideの非劣性マージンは、ハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)の上限1.8とした。心血管複合イベントのリスクは26%、非致死的脳卒中リスクは39%、有意に低下 観察期間中央値は2.1年で、ベースライン時の、2型糖尿病平均罹患期間は13.9年、HbA1c平均値は8.7%、2,735例(83.0%)がCVDまたはCKDの既往があった。 心血管複合イベントは、semaglutide群で1,648例中108例(6.6%)、プラセボ群1,649例中146例(8.9%)に発生した(HR:0.74、95%CI:0.58~0.95、非劣性p<0.001)。非致死的心筋梗塞の発症率はそれぞれ2.9%および3.9%(HR:0.74、95%CI:0.51~1.08、p=0.12)、非致死的脳卒中は1.6%および2.7%(HR:0.61、95%CI:0.38~0.99、p=0.04)であった。また、心血管死亡率はsemaglutide群2.7%、プラセボ群2.8%であり、両群で類似していた。 新規腎症発症または悪化率はsemaglutide群で低下したが、網膜症関連合併症(硝子体出血、失明、硝子体内注射または光凝固術などの治療を要する状態)は有意に高値であった(HR:1.76、95%CI:1.11~2.78、p=0.02)。semaglutide群では有害事象による投与中止(多くは胃腸障害)が多かったが、重篤な有害事象はみられなかった。 なお著者は、研究の限界として「他の患者集団や治療期間がより長期的になった場合にも今回の結果が当てはまるかどうかは不明で、semaglutide群で確認された血糖値の低下がどの程度心血管イベントの抑制に寄与しているかも不明である」と述べている。

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妊娠糖尿病の診断、至適な血糖値とは?/BMJ

 妊婦では、血糖値の上昇に応じて臨床的に重要な周産期の有害なアウトカムのリスクが全般的に増加するが、このリスク増大の明確な閾値はみられないことが、英国・ブラッドフォード健康研究所のDiane Farrar氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2016年9月13日号に掲載された。妊娠糖尿病では、有害な周産期アウトカムが拡大するリスクが増大し、母子の長期的な健康に影響を及ぼす可能性がある。治療により、これらのアウトカムのリスクは軽減するが、妊娠糖尿病を定義する至適な血糖値の閾値は明らかにされていないという。高リスク女性を同定する閾値の確立を目指して 研究グループは、妊婦における血糖値と有害な周産期アウトカムの関連を評価し、有害な周産期アウトカムのリスクが高い女性を同定する明確な閾値の確立を目的に、文献を系統的にレビューし、メタ解析を行った(英国国立健康研究所[NIHR]などの助成による)。 MedlineやEmbaseなどの医学データベースに、2014年10月までに登録された文献を検索した。選出された論文と、2つの出生コホート研究のデータを統合した。 経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)または経口ブドウ糖チャレンジ試験(OGCT)を受け、1つ以上の有害な周産期アウトカムのデータを有する妊婦を含む試験を対象とした。妊娠糖尿病と診断された女性や、既存の糖尿病を有する女性は、治療を受けている可能性があり、血糖値とアウトカムの自然な関連に影響を及ぼす可能性があるため除外した。 各文献から、空腹時および糖負荷後1時間と2時間時のOGTT(75g、100g)、OGCT(50g)のデータを抽出した。また、陣痛の誘発、帝王切開、器械分娩、妊娠高血圧症候群(PIH)、妊娠高血圧腎症、巨大児、不当重量体重、早産、出生時損傷、新生児低血糖に関するデータを収集した。有害なアウトカムとの関連は空腹時血糖値のほうが強力 23件の試験の25報の論文と、2つのコホート研究の参加者のデータが解析に含まれ、最大20万7,172人の妊婦が解析の対象となった(検査やアウトカムによって、妊婦の人数にばらつきがみられた)。ほとんどの試験が、バイアスのリスクは低いと判定された。 帝王切開、陣痛の誘発、不当重量体重、巨大児、肩甲難産は、すべての検査で血糖値の全範囲を通じて正の線形関係が認められ、閾値効果の明確なエビデンスは得られなかった。 全般的に、血糖値と有害なアウトカムの関連は、糖負荷後よりも空腹時のほうが強力であった。たとえば、不当重量体重のリスクについては、空腹時血糖値の1mmol/L上昇ごとのオッズ比(OR)が2.15(95%信頼区間[CI]:1.60~2.91)であったのに対し、75gOGTT 2時間値の1mmol/L上昇ごとのORは1.20(95%CI:1.13~1.28)であった。 これらのパターンは、アジア、南太平洋地域、欧州、北米および国際的な試験を通じて認められたが、サハラ以南のアフリカではこのようなエビデンスはなく、低/中所得国のエビデンスもほとんど認めなかった。 著者は、「リスク増大の明確な血糖値閾値の欠如は、妊娠糖尿病の診断の閾値に関する決定には、ある程度恣意的な要素が含まれることを意味する。今後、妊娠糖尿病診断の血糖値の閾値を周産期および長期的なアウトカムに適用する際の、臨床効果および費用対効果の検討を行う必要がある」としている。

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TAVR後の感染性心内膜炎、リスク因子と転帰は?/JAMA

 経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)において、若年、男性、糖尿病、中等度~重度大動脈弁逆流残存は、感染性心内膜炎(IE)のリスク増加と有意に関連しており、心内膜炎を発症した患者は院内死亡率および2年時死亡率が高いことが明らかとなった。カナダ・ラヴァル大学のAnder Reguerio氏らが、TAVR後にIEと確定診断された患者を対象とした後ろ向き観察研究の結果、報告した。外科的弁置換術はIE発症や死亡率の高さと関連が示唆されているが、TAVRについては症例数の少なさや追跡期間の短さなどにより、術後IE患者の臨床的特徴や転帰に関するデータは限られていた。JAMA誌2016年9月13日号掲載の報告。TAVR施行患者約2万人を後ろ向きに調査、IE発症率は1.1%/人年 研究グループは、TAVR後IEに関連する因子、臨床的特徴および転帰を検討する目的で、2005年6月~2015年10月に欧州・北米・南米47施設においてTAVRが実施された2万6例について調査し、TAVR後IE発症率およびIEによる院内死亡率を評価した。 TAVR後にIEを発症し確定診断がなされた患者は2万6例中250例で、発症率は1.1%/人年(95%信頼区間[CI]:1.1~1.4%)、年齢中央値は80歳、男性が64%であった。また、TAVR施行からIE発症までの期間は、中央値で5.3ヵ月(四分位範囲:1.5~13.4)であった。TAVR後IE患者の院内死亡率は36%、院内死亡の予測因子は心不全 TAVR後IE発症の高リスク患者特性は、年齢が若い(IE有:78.9歳 vs.IE無:81.8歳、ハザード比[HR]:年当たり0.97、95%CI:0.94~0.99)、男性(62.0% vs.49.7%、HR:1.69、95%CI:1.13~2.52)、糖尿病(41.7% vs.30.0%、HR:1.52、95%CI:1.02~2.29)、中等度~重度大動脈弁逆流(22.4% vs.14.7%、HR:2.05、95%CI:1.28~3.28)であった。医療関連IE(入院後48時間以内、または入院前に何らかのケアを受けており入院時の血液培養で陽性反応)は、52.8%(95%CI:46.6~59.0%)で確認された。主な起炎菌は腸球菌(24.6%、95%CI:19.1~30.1%)および黄色ブドウ球菌(23.3%、95%CI:17.9~28.7%)であった。 IE患者250例中、入院中に90例が死亡し、院内死亡率は36%(95%CI:30.0~41.9%)であった。14.8%の患者にはIEに対し外科手術が行われた(95%CI:10.4~19.2%)。院内死亡は、logistic EuroSCORE高値(23.1% vs.18.6%、オッズ比[OR]:1%増加当たり1.03、95%CI:1.00~1.05)、心不全(59.3% vs.23.7%、OR:3.36、95%CI:1.74~6.45)、急性腎不全(67.4% vs.31.6%、OR:2.70、95%CI:1.42~5.11)と関連していた。2年時死亡率は66.7%(95%CI:59.0~74.2%、死亡132例、生存115例)であった。

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新規センサー式血糖測定器、1型糖尿病の低血糖時間を短縮/Lancet

 コントロール良好な1型糖尿病患者について、新たなセンサー式の速報型血糖モニタリング(flash glucose-monitoring)システム「Freestyle Libre」を用いることによって、使用開始前と比べて1日の低血糖時間が約1.4時間短縮できることが示された。既存のセルフモニタリングシステムと比べて、同時間短縮の差は1.24時間あったという。スウェーデン・カロリンスカ大学病院のJan Bolinder氏らが、多施設共同無作為化対照非盲検試験の結果、明らかにし、Lancet誌オンライン版2016年9月12日号で発表した。6ヵ月後の低血糖時間を比較 研究グループは、2014年9月4日~2015年2月12日にかけて、欧州の23ヵ所の糖尿病センターを通じて、コントロール良好(HbA1c値7.5%[58mmol/mol]以下)の1型糖尿病成人患者328例を対象に試験を行った。 被験者全員に2週間にわたって盲検化センサーを装着してもらい、50%以上読み取りができた被験者(241例)を無作為に2群に分けた。一方の群には、センサー式速報型血糖モニタリングを(介入群、120例)、もう一方の群では、毛細血管ストリップを用いたセルフモニタリングを行った(対照群、121例)。 主要評価項目は、ベースラインから6ヵ月後までの、1日の低血糖症(70mg/dL[3.9mmol/L]未満)を呈した時間の変化だった。低血糖時間、1日3.38時間から2.03時間へ短縮 その結果、1日の低血糖症時間は、対照群ではベースライン3.44時間/日から6ヵ月後は3.27時間/日へと変化し、補正後平均変化時間は-0.14時間/日だった。一方、介入群では、3.38時間/日から2.03時間/日へと変化し、補正後平均変化時間は-1.39時間/日、率にして低血糖症時間は38%減少したことが示された。介入群と対照群の変化時間の差は、-1.24時間/日で有意差が認められた(p<0.0001)。 なお、センサー式血糖測定器に関連する低血糖症や安全面に関連したイベント発生は報告されなかったが、患者10例で13件の有害事象が報告された。センサーに関連したアレルギー4件(重症1例、中等症3例)、かゆみ1件(軽症)、発疹1件(軽症)、装置装着部の症状4件(重症)、紅斑2件(重症1件、軽症1件)、浮腫1件(中等度)。 また重篤有害事象の報告は9例10件(各群5件)が報告されたが、いずれも機器に関連したものではなかった。 結果を踏まえて研究グループは、さらに、コントロール不良な1型糖尿病患者や、若年患者を対象にした試験の実施が必要だとまとめている。

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「つい食べてしまう」という患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第2回

■外来NGワード「その『つい』を止めなさい!」「食べなきゃ痩せる。もっと意志を強く持たないと…」「その一口が豚になる。残す勇気を持ちなさい!」■解説 「つい食べてしまう」という患者さんの心理として「健康のために、食べ過ぎることはよくない」という認識はあるのですが、目の前に自分の好きな物や残り物があると「味見をしておかないと」「捨てるのがもったいないから」などの意識が働いて、「つい食べてしまう」という行動に移ってしまうようです。太っていない人が空腹になると食べる物を探して食べはじめ、満腹になると食べ終わります。ところが、太っている人は、空腹ではないのに眼の前においしそうな外的刺激があると食べはじめることが知られています。これを「外発的摂食」といいます。そして、ある程度、お腹がいっぱいになっても食べ終わりません。お皿の中の食べる物がなくなるまで、食べる傾向があります。機能的MRIなどを用いた脳科学で、肥満者は目の前に自分の好物があると、視覚野で食品を認識した後、前頭前野に信号を伝えているそうです。もしかすると、「早く食べなさい」というシグナルを伝え、その結果、反射的に「つい手が出てしまう」という行動になっているのかもしれません。そういった患者さんには「意志を強く持て!」ではなく、その外的刺激を減らす作戦を立てていくほうがよいのかもしれません。これを「刺激統制法」と呼びます。これらの肥満者の心理を知ったところで、「つい食べてしまう」という患者さんには次のように話してみてはいかがでしょうか? ■患者さんとの会話でロールプレイ医師食事のほうはいかがですか?患者目の前においしそうなものがあると、つい食べちゃうんです。医師ハハハ。確かに、つい食べちゃいますよね。どんなものが多いですか?患者もらい物のお菓子が多いです。健康のためには、食べないほうがいいのはよくわかっているんですけど…。医師なるほど。もし、目の前に食べ物がなければ食べませんか?患者はい。わざわざ、自分では買いにいきません。医師それなら、いい方法がありますよ。患者それは何ですか?(興味津々)医師食べたくなる刺激を減らすことです。目の前にあると気になって食べたくなりますからね。そのお菓子、どうしましょうか?患者いつもテーブルの上に置いてありますので、戸棚に隠しておこうかなぁ。医師それはいいですね。けど、隠した場所は自分が知っているので、すぐに探せるかもわかりませんよ。患者確かに。隠し方も考えないといけませんね(うれしそうな顔)。■医師へのお勧めの言葉「もし、目の前になければ食べませんか?」1)Schlögl H, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2016;4:695-705.2)Kanoski SE. Physiol Behav. 2012;106:337-344.3)Hare ME, et al. Contemp Clin Trials. 2012;33:534-549.

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トルリシティ週1回注射で糖尿病患者の負担軽減

 8月31日、日本イーライリリー株式会社は、同社の持続性GLP-1受容体作動薬デュラグルチド(商品名:トルリシティ皮下注0.75mgアテオス)の投薬制限期間が、9月1日に解除されることから、「新しい治療オプションの登場による2型糖尿病治療強化への影響」をテーマにプレスセミナーを開催した。 セミナーでは、糖尿病治療への新しい選択肢を示すとともに、患者の注射に対する意識アンケート調査結果も公表された。トルリシティは簡単な操作で週1回の注射 じめに岩本 紀之氏(同社研究開発本部 糖尿病領域)が、トルリシティの製品概要について説明した。 GLP-1受容体作動薬は、膵β細胞膜上のGLP-1受容体に結合し、血糖依存的にインスリン分泌を促進する作用があり、グルカゴン分泌抑制作用も併せ持つ。胃内容物排出抑制作用があり、空腹時と食後血糖値の両方を低下させ、食欲抑制作用は体重を低下させる作用がある。また、単独使用では、低血糖を来す可能性は低いとされる。 トルリシティは、ヒトGLP-1由来の製剤で、血中濃度半減期は4.5日。1週間にわたり、安定した血中濃度を示すという。 26週の単独使用の国内第III相試験では、HbA1c推移はプラセボ(n=68)がベースラインから+0.14に対し、デュラグルチド(n=280)は-1.43であった。また、HbA1c 7.0未満の達成率(26週後)は、プラセボが5.9%だったのに対し、デュラグルチドは71.4%であった。また、副作用の発現率は29.7%(272/917例)で便秘、悪心、下痢の順で多く、重篤な副作用は報告されていない。低血糖症(夜間・重症含む)の発現は、プラセボ(n=70)で1例、デュラグルチド(n=280)で6例、リラグルチド(n=137)で2例だった。 なお、トルリシティのデバイスであるアテオスは、1回使い切りのデバイスで、わずか3つのステップで使用することができる。インスリンと異なり、針の付け替え、薬剤の混和、空打ちは不要で、訓練を要せずに簡単に使用できるという。 対象は2型糖尿病患者で、週1回、朝昼晩いつでも0.75mgを注射するだけで、優れた血糖低下を発揮する。DPP-4阻害薬はいい治療薬だけれど… セミナーでは、「新しい治療オプションの登場による2型糖尿病治療強化への影響~最新の研究結果から、注射に対する抵抗感の現状と未来を考える~」と題して、麻生 好正氏(獨協医科大学 内分泌代謝内科 教授)が、望まれる糖尿病治療薬の在り方と患者アンケートの概要について解説を行った。 糖尿病の概要と現状について、生活環境の変化(身体活動の低下)と食生活の変化(動物性脂肪の摂取の増加)などにより、患者数が50年前と比較し約38倍になっていること、そして、わが国では新しい血糖コントロール目標が2013年より導入され、個別化による目標血糖値に向けて治療が行われていることが説明された。 次に糖尿病の治療薬に望まれることとして、「低血糖を起さない」「治療に伴う体重増加がない」「血糖低下作用が十分ある」の3点を示すとともに、長期血糖コントロール維持と効果の持続性、膵β細胞機能低下抑制、障害のある腎・肝臓でも使用可能、心血管系に悪影響を及ぼさない、長期の安全性なども望まれると説明した。 現在、使用できる糖尿病治療薬の中でも、体重増加を避け、低血糖リスクの低い薬としては、「DPP-4阻害薬」「GLP-1受容体作動薬」「SGLT2阻害薬」の3種が挙げられる。とくにインクレチン関連薬の「DPP-4阻害薬」はアジア人に効果が高く、わが国でも広く使用されているが、最近増えている欧米型肥満の患者には効果に限界があり、また、経口血糖降下薬だけでは約6割の患者しかHbA1cを7.0%以下に下げることができず、次の治療オプションの模索がされているという。週1回注射のトルリシティは患者のアドヒアランスを向上 もう1つのインクレチン関連薬の「GLP-1受容体作動薬」は、注射薬のために臨床現場では使用へのハードルが高いものであった。しかし、GLP-1受容体作動薬は、DPP-4阻害薬の効果に加え、食欲低下、胃排出能の低下、体重減少効果もあり、抗動脈硬化作用1)も報告されている。他剤との併用では、基礎インスリンが一番効果を発揮し、基礎インスリンの良好な空腹時血糖コントロール、低血糖リスクが少ない、体重増加が少ない、肝糖新生抑制などの特性とGLP-1受容体作動薬の特性とが相まって効果を発揮することで、優れたHbA1cのコントロールをもたらすと期待されている。 先述のように注射というハードル故に、使用に二の足を踏まれていたGLP-1受容体作動薬について、患者へのアンケート調査(糖尿病治療薬[注射製剤]に関する患者調査2))で、次のようなことが明らかになった。 「患者が重視した薬剤属性」では、投与頻度(44.1%)、投与方法(26.3%)、吐き気の頻度(15.1%)、低血糖の頻度(7.4%)と回答が寄せられた。 「投与の度に注射が必要な糖尿病の治療薬を使用したいと思うか?」については、89.5%の患者が使用したくない/あまり使用したくないと回答し、とても使用してみたい/いくらか使用してみたいと回答した患者はわずか1.7%だった。 「トルリシティをどの程度使用してみたいか?」については、37.9%の患者が依然として使用したくない・あまり使用したくないと回答し、とても使用してみたい・いくらか使用してみたいと回答した患者は42.9%となり、上記の1.7%と比較して急伸した。 週1回の注射という患者のアドヒアランスを考慮したGLP-1受容体作動薬の出現は、アンケートにみられた注射への心理的ハードルを越え、たとえば忙しい社会人や在宅治療中の高齢者には、利便性が高く、経口薬だけではない治療の選択肢の幅が拡がるという。 最後に麻生氏は、「これから注射薬の早期導入がしやすくなることで、糖尿病患者の個別化治療の促進や予後の改善が期待される」とレクチャーを終えた。【訂正のお知らせ】本文内の表記を一部訂正いたしました(2016年9月21日)。■参考日本イーライリリー(糖尿病・内分泌系の病気)■関連記事ケアネットの特集「インクレチン関連薬 徹底比較!」

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言えない! 女性の過活動膀胱をめぐる悩み、その現状と対策

 生命に直結する疾患とまではいかないものの、日常生活の中で著しくQOLを低下させる症状、それが過活動膀胱(Overactive Bladder:OAB)である。男女ともに中高年層から年齢に正比例して増えているが、解剖学的性差により、女性のほうが悩ましさを抱えているという。 先月、このOABをテーマにしたプレスセミナーをファイザー株式会社が開催し、専門医2氏が講演した。このうち、日本排尿機能学会理事長の横山 修氏(福井大学医学部 泌尿器科学 教授)は、「患者さんに恥ずかしがらずに相談してもらえるよう、医療者側からの働きかけが必要」と述べた。過活動膀胱の尿意切迫感、イメージは「いきなり赤信号」 OABは尿意切迫感を必須とした症状症候群であり、診断のポイントとしては、頻尿(睡眠時の夜間頻尿も含む)を伴う一方、切迫性尿失禁は多くのケースで併発しているものの、必須ではない。横山氏によると、主症状である尿意切迫感は、抑えられない尿意が急に起こることを意味し(病的膀胱知覚)、一般的に明確な尿意を感じる膀胱の蓄尿量が300mL程度に満たなくても、トイレまで我慢できないほどの差し迫った尿意を感じるという。 OABをめぐっては、2002年に全国の40歳以上の男女約1万人を対象に行った大規模疫学調査をベースに2012年時点の人口構成から推計すると、患者数は約1,040万人に上り、有症状率は全体の14.1%、つまり7人に1人の割合でOABの自覚症状があるとみられている。ところが、潜在的にこれほど多数の患者が見込まれるにもかかわらず、積極的な治療を行っていない人が多いのがこの疾患の特徴である。 OAB自体が生命に直結する疾患ではないものの、外出時や長時間かかる会議や移動などの際、常にトイレの心配が付きまとうため、日常生活への影響は大きい。ファイザーが今年3月、OABで医療機関を受診経験のある50歳以上の女性265人を対象に行ったインターネット調査によると、回答者の実に92.5%が切迫性尿失禁を経験していることがわかった。 また、「外出時で、常にトイレの場所を気にしないといけない」(78.1%)、「症状に対して、気分的に落ち込む・滅入ってしまう」(50.9%)といった日常生活への精神的な負担感の訴えや、「旅行や外出を控えてしまう」(60.0%)、「友人・知人との付き合いを控える」(40.0%)など、日常生活や社会活動を制限されている実情も浮き彫りになった。 横山氏によると、OABによるQOL低下の度合いは、糖尿病患者のそれに匹敵するとしたうえで、「症状の特異性により、うまく相談できない患者さんが多い可能性がある。視診や台上診なども不要なので、恥ずかしがらずに相談してもらえるよう医療者側からの働きかけが必要」と述べた。「トイレが近い」という何気ない訴えにもヒントが 続いて、「女性における過活動膀胱相談の実際」と題して、巴 ひかる氏(東京女子医科大学 東医療センター 骨盤底機能再建診療部泌尿器科 教授)が講演した。 それによると、OABをめぐる治療事情には性差があり、男性の受診率が30%超であるのに対し、女性はわずか7.7%に留まっているという。この理由として巴氏は、男性は高年齢層になるに従い前立腺肥大を理由に受診する人が多く、その際にOABの症状についても診断されるケースが多い一方、女性の場合は、症状への恥ずかしさや年齢的に仕方がないという思い込みから、かかりつけ医にも打ち明けるのをためらう人が多いためではないか、という見解を示した。  しかしOABは治療が見込める疾患であり、診断がつけば、抗コリン薬やβ3アドレナリン受容体作動薬などによる薬物療法をはじめ、膀胱訓練や骨盤底筋訓練などの行動療法、電気刺激療法などの神経変調療法により症状の改善が期待できる。巴氏は、「OABは自覚症状症候群なので、問診や調査票でも診断が可能である。患者さんの『最近トイレが近い』という何気ない訴えの中にもOAB診断のヒントがあるので、注意深く問診をして、患者さんのQOL向上につなげてほしい」と述べた。

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専門家のプライドか、普遍的なお金か?(解説:後藤 信哉 氏)-592

 BMJ誌は面白い論文を掲載する。英国の医療システムは、国民皆保険の日本と類似している。車産業、ファッション産業と異なり、医薬品産業は公共的費用の配分である。 税金の配分において、役人が「私は、この工事を請け負う特定の業者から教育講演を依頼されて謝金を受け取ったり、その業者が業界内の教育に用いるパンフレットの作成を依頼されて謝金を受け取っても税金の使途をその特定業者に振り向けることはありません」と言っても、多くの人は癒着と受け止めるであろう。 医師はきわめて専門的な職種であり、個々の医師のプライドはきわめて高いので、「特定の業者から教育講演を依頼されて謝金を受け取ったり、その業者が業界内の教育に用いるパンフレットの作成を依頼されて謝金を受け取ってもその特定業者の薬を処方することはありません」との信頼感が日本の社会には残っている(いた?)。しかし、プライドの高い医師といっても普遍的価値である「お金」の前では弱い。「お金」の普遍性から考えれば、医師のみに高いプライドに基づいた独立性を期待すること自体に無理があるともいえる。 役人の汚職は犯罪であり、社会から嫌悪される。公的性格の高い医療コストを特定業者に振り向けるリスクのある「お金」については、真剣に考える時期が来た。医師と企業の関係は、専門家としての医師のアドバイスによる薬剤の開発など産学連携としての価値もある。普遍性のある「お金」故に、相手企業のために働いたら、その対価を受け取ることは正当な場合も多い。しかし、本論文は、講演料、教育コストとされても「汚職」に近い結果をもたらす場合を示した。 医師が企業から受け取る謝金を公開する透明性ガイドラインは制定された。企業から個別の医師への講演料、大学の教室への奨学寄付金なども公開されている。しかし、製薬企業などが営業活動に費やす費用公開の議論は進んでいない。NEJM誌の編集者であったマーシャ エンジェル博士は、製薬企業の開発コストは総支出の20%程度で、営業、マーケット、管理費用をかけすぎていると「ビックファーマ」に記載している。医療費は巨額である。製薬企業といえど、自動車、ファッション業界同様マーケット活動をする自由があっても、公共性の高い医療費を使う製薬、医療デバイス産業には、一般の企業以上の支出の透明化が必須であると筆者は考える。

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ピオグリタゾンと膀胱がんの関連はいかに…(解説:吉岡 成人 氏)-589

BMJ誌に2つの相反する解析データが掲載 2016年3月末、英国のプライマリケアのデータベースを利用して、14万5,806例の新たに治療を開始した2型糖尿病患者を解析したデータにおいて、ピオグリタゾン投与群ではそれ以外の薬剤治療群と比較してハザード比で1.63(95%信頼区間:1.22~2.19)倍、膀胱がんの発症が多いことがBritish Medical Journal誌に報告された1)。ピオグリタゾンの使用期間が2年以上、累積使用量が2万8,000mgを超えるとリスクが高まるとされている。そして、5ヵ月後の同誌には、ピオグリタゾンと膀胱がんのリスクは関連がないという報告が掲載されている2)。欧州4ヵ国の37万人の解析 フィンランド、オランダ、スウェーデン、英国の欧州4ヵ国の医療データベースを用いた後ろ向きコホート研究で、ピオグリタゾンが投与された5万6,337例とピオグリタゾン以外の薬剤を投与された同一国の2型糖尿病患者31万7,109例を対象として、1対1(nearest match cohort)および1対10(multiple match cohort)でマッチングした2つのコホートを設定し、Cox比例ハザードモデルを用いて解析を行っている。 平均追跡期間2.9年において、ピオグリタゾン群では130例の膀胱がんが認められ、対照群では1対1コホートで153例、1対10コホートで970例であった。膀胱がん発症のリスクについて、ピオグリタゾンの対照群に対するハザード比は1対1コホートで0.99(95%信頼区間:0.75~1.30)、1対10コホートで1.00(95%信頼区間:0.83~1.21)であった。また、ピオグリタゾンの投与期間や累積使用量と膀胱がんのリスクは関連せず、1対1コホートでピオグリタゾンの使用期間が48ヵ月を超えている群の補正後ハザード比は0.86(95%信頼区間:0.44~1.66)、累積使用量が4万mgを超えている群では0.65(95%信頼区間:0.33~1.26)であったと報告されている。いくつもの報告があるが… ピオグリタゾンは承認前の動物実験において、雄ラットにおける膀胱腫瘍の増加が確認されており、米国の医療保険組織であるKNPC(Kaiser Permanente North California)の医療保険加入者データベースを用いた前向きの観察研究が2004年から行われ、2011年に公表された5年時の中間報告で、ピオグリタゾンを2年間以上使用した患者において膀胱がんのリスクが1.40倍(95%信頼区間:1.03~2.00)と有意に上昇することが報告された。さらに、フランスでの保険データベースによる糖尿病患者約150万例を対象とした後ろ向きコホート研究でも膀胱がんのリスクが1.22倍(95%信頼区間:1.05~1.43)であることが報告され、フランスとドイツではピオグリタゾンが販売停止となっている。 その後、欧州と北米の6つのコホート研究を対象に、100万例以上の糖尿病患者を対象として、割り付けバイアス(allocation bias)を最小化したモデルを用いた検討が2015年3月に報告され、年齢、糖尿病の罹患期間、喫煙、ピオグリタゾンの使用歴で調整した後の100日間の累積使用当たりの発症率比は、男性で1.01(95%信頼区間:0.97~1.06)、女性で1.04(95%信頼区間:0.97~1.11)であり、ピオグリタゾンと膀胱がんのリスクは関連が認められないと結論付けられた3)。 KNPCの10年時における最終解析でも、ピオグリタゾンは、膀胱がんのリスクの増加とは関連しない(調整後ハザード比1.06:95%信頼区間:0.89~1.26)と報告されている4)。薬の安全性が確立されるには… 日本においては、ピオグリタゾンは1999年9月に製造が承認され、同年の12月に発売された。心血管イベントの発生抑制、冠動脈疾患におけるインターベンション後の再狭窄抑制などに対する有効性が喧伝され、一時期、多くの患者に使用された。しかし、副作用としての膀胱がん発症リスク、骨折のリスクなどに対する懸念が広まり、DPP-4阻害薬の発売とあいまってその使用量は減少している。ピオグリタゾンと膀胱がんの関連が示唆されてから5年以上経ってもこの問題には決着がついていない。 優れた臨床研究には長い期間と研究に対する情熱、膨大な基金が必要になるが、薬剤の安全性を担保するのに20年という期間が十分ではないということを私たちに教えてくれるのが、ピオグリタゾンという薬剤である。

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観察研究の限界超えられず:CLARIFY登録観察研究(解説:桑島 巖 氏)-588

 冠動脈疾患合併の高血圧症例では、過度な降圧によってかえって心血管予後が悪くなるという、いわゆるJカーブ論争というのが古くからあるが、本研究はそれをぶり返す論文である。すなわち、登録時および観察中の血圧が120mmHg以上では心血管死、心血管合併症は増えるものの、120mmHg未満であっても予後は悪化するという結論である。 “ぶり返す”というのは、昨年発表された米国からのランダム化試験SPRINTで、中等度以上のリスクを有する高血圧症例では、収縮期血圧120mmHg未満への降圧が140mmHg未満よりも心疾患予後の点で優れているという、J-曲線仮説を否定する結論が出ているからである。 CLARIFY登録研究は観察研究であり、エビデンスの信頼性ではランダム化試験SPRINTには及ばないことを認識しておくべきである。 本試験は、登録観察研究の大きな欠点である交絡因子を除外しきれていない点は難点である。具体的には、収縮期血圧120mmHg未満の群では、登録時すでに心筋梗塞症例が66%であり、他の血圧群(120~129:60%、130~139:57%、140~149:56%、>150mmHg:53%)よりも明らかに多い。また、登録時の左室駆出率も<120mmHgの群では52.7%と他の群の56~57%よりも明らかに低い。 これらのことは何を意味するか?登録時および観察時収縮期血圧が低い群は、すでに冠動脈疾患が重症でありかつ心機能が低下していることを意味し、登録時点で予後不良であったことを意味する。このことは、登録時の心不全合併率が高いことからも明らかである。つまり、血圧が下がったから心血管予後を悪くしたのではなく、最初から冠動脈疾患が重症だったから血圧が低かったのである。心血管死が多いのは血圧が下がった結果ではなく、心血管が重症だったから血圧が低かったという因果の逆転である。 しかも、血圧測定はたった5分間安静にしただけの診察室血圧であり、さらに年に1回の測定である。医師のいないところで自動血圧計での3回測定で、3ヵ月に1回測定したSPRINT試験とは大きな違いがある。 ちなみに、Jカーブ論争はそろそろ打ち止めとすべきであると私は考える。元々、この仮説はCruickshank氏という人物が、冠動脈疾患合併症を有する高血圧では拡張期血圧を85mmHg以下に下げると冠動脈死が増えるといって一時話題になった仮説であるが、拡張期85mmHgなどというレベル以下での予後悪化は、今では完全に否定されている。高齢化社会となった現在では、むしろ収縮期血圧が重視されており、拡張期血圧はかなり低いレベルでも問題にならない。血圧と死亡の関係では必ずJ曲線は存在するのである。致死的疾患では死に近づくほど、血圧は0になることは明白で、死と血圧の関係はJカーブとなるからである。Jカーブ論争には終止符を打つべきである。

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レビー小体型とアルツハイマー型認知症、脳血管病変の違いは

 MRI上の脳血管病変は、アルツハイマー型認知症(AD)では一般的であるが、レビー小体型認知症(DLB)における頻度や影響はあまり知られていない。米国・メイヨークリニックのLidia Sarro氏らは、DLB患者の脳血管病変に関して検討を行った。Alzheimer's & dementia誌オンライン版2016年8月10日号の報告。 連続したDLB患者81例、AD患者240例のMRIによる白質病変(WMHs)と梗塞を評価し、年齢、性別をマッチさせた認知機能正常者(CN)との比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・DLBは、CNと比較し、高いWMH容積を有していた。DLBのWMH容積は、ADと比較し、後頭部および後脳室周辺で高かった。・高いWMH容積は、心血管疾患や糖尿病の既往歴と関連していたが、DLBの臨床的重症度との関連はみられなかった。・DLBにおける梗塞の頻度に、マッチさせたCNやADとの違いはみられなかった。関連医療ニュース レビー小体型とアルツハイマー型を見分ける、PETイメージング レビー小体型認知症、認知機能と脳萎縮の関連:大阪市立大学 認知症、アルツハイマー型とレビー小体型の見分け方:金沢大学

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顔面移植術後の長期アウトカムは?/Lancet

 顔面移植では術前の十分な手術可否の検討と、術後の長期的なサポートプログラムが必要であることを、フランス・パリ第5大学のLaurent Lantieri氏らが単施設において前向きに追跡した結果、報告した。顔面移植は2005年以降に30件以上が実施されているが、これまでに長期追跡の報告論文はなかった。Lancet誌オンライン版2016年8月24日号掲載の報告。顔面外傷20例のうち移植手術を行った7例を追跡 研究グループは、顔面移植の長期的なリスク(合併症、免疫抑制薬治療の副作用、急性/慢性拒絶反応)とベネフィット(QOLの改善)を明らかにするため、2000年1月~2009年12月に受診した顔面外傷(腫瘍、熱傷、銃創)の患者20例を前向きに追跡評価した。顔面移植は、第1除外基準(直近のがん既往、精神状態が不安定など)の判定により10例が選択され、その後、第2除外基準によって3例が除外され(強度の抗HLA感作を呈した熱傷2例、予後不良の黒色腫を併発した色素性乾皮症1例)、7例に実施された(神経線維腫症I型2例、熱傷1例、自傷銃創4例)。実施時期は2007年1月21日~2011年4月16日。 予定されたリビジョン手術、免疫抑制薬のフォローアップ治療を除くすべての入院を有害事象とみなし(安全性エンドポイント)、事前規定の免疫学的・代謝的・手術関連・社会的統合に関するエンドポイントを前向きに収集して評価した。また、SF-36健康調査票を用いて健康関連QOLの定量的評価を行った。早期死亡1例を除く6例について、平均6年追跡 7例のうち、2例が術後に死亡した。1例は、顔面移植に伴う緑膿菌感染症により術後65日で死亡、もう1例は術後3.4年時点で自殺によるものであった。 長期アウトカムの評価には、6例(顔面同種移植後平均6年[範囲:3.4~9年])のデータを包含した。 6例全員が、機能的移植を受けた。またリビジョン手術は平均3回(範囲:1~6)受けていた。 安全性エンドポイントとして、術後1ヵ月以内では感染症が、1日目~7年時点までは急性拒絶反応が、または免疫抑制薬治療の副作用が報告された。拒絶反応の再発事例には維持療法として高用量のステロイドの投与が、追跡期間最後までハイレベルに行われた。しかし、ステロイド使用の副作用としての糖尿病を発症した患者はいなかった。 3例の患者において、高血圧症が認められ治療を必要とした。また全患者において糸球体濾過量の顕著な低下がみられた。 レシピエントおよび家族とも全員が、移植を受け入れていた。一方で、社会的統合およびQOLの改善は、患者間でばらつきが大きく、またベースライン値および精神科合併障害によっても異なっていた。 これらを踏まえて著者は、「所見は、顔面移植のリスクベネフィットにおいて、社会的支援と患者の既存の精神状態が重大な影響を及ぼすことを示すものであった」と指摘し、「検討したようなタイプの顔面移植では、厳格な施設内倫理委員会の下、術前の患者選択を慎重に行い、また術後の長期にわたるフォローアップが求められる」とまとめている。

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医師や病院への金銭提供は薬剤の処方へ強く影響していた(解説:折笠 秀樹 氏)-587

 米国の医療保険制度は民間医療保険が主ではあるが、公的医療保険としてMedicare(65歳以上の高齢者および65歳未満の身体障害者向け)とMedicaid(低所得者向け)とがある。MedicareにはPart A~Dがあり、今回の研究対象であるPart Dは薬剤費に関する医療保険のことである。 米国内でMedicareの対象者は約5,400万人おり、約70%の3,700万人がPart Dを享受しているとされる。製薬企業は医師や病院への金銭提供があった場合、Medicare & Medicaidサービスセンター(CMS)へ報告する法的義務がある。日本でも数年前に日本製薬工業協会は透明性ガイドラインを策定し、製薬企業別に医師や病院への金銭提供データを公開している。しかしながら、米国のような法律ではないし、一元化していないのでデータ収集は労を要する。 金銭提供データはPart D受益者数当たりの年間金額、薬剤の処方は処方日数から市場シェア(%)を算出した。扱った医薬品は抗凝固薬と糖尿病薬であった。306の医療地域ごとに分析しており、金銭提供が多い地域では市場シェアも高い傾向がマップ上で示された。 市場シェアに強く影響していたのは専門医(非専門医に比べ)への金銭提供、講演料・コンサルタント料・謝金・委任経理金など(会議での弁当の提供などに比べ)であった。 講演料は講演への対価なので薬剤の処方へは影響しないという主張もあったが、今回の調査でそうではないことが明らかになった。講演料などの金銭提供については利益相反(COI)として報告する義務が現在でもあるが、弁当やグッズなどの提供は報告を求めていない。学会ランチョンで弁当が提供されることがあるが、そろそろ止めたほうがよいかもしれない。

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第4回 チアゾリジン薬による治療のキホン【糖尿病治療のキホンとギモン】

【第4回】チアゾリジン薬による治療のキホン―チアゾリジン薬はどのような患者に適しているのでしょうか。 チアゾリジン薬は、脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化を促進させ、アディポネクチン※を分泌する小型脂肪細胞の増加や大型脂肪細胞のアポトーシス(細胞死)を惹起したり、脂肪細胞への脂肪酸の取り込み増加により、骨格筋や肝に取り込まれる脂肪酸の量を減少させることなどにより、末梢組織でのインスリン感受性を高め、インスリン抵抗性を改善して、血糖を低下させます。そのため、インスリン抵抗性のある肥満患者が適しています(BMI≧24、あるいは空腹時血中インスリン値≧5μU/mL)1)。 チアゾリジン薬では、循環血液量の増加による浮腫や心不全に注意する必要があります。浮腫は女性で多いことが報告されているため、女性では最小用量の15mg(1日1回)から開始します1)。副作用は効果の裏返しともいえます。チアゾリジン薬の市販後調査でも、女性のほうが本剤の感受性が強いことが報告されています。2),3)。女性のほうが効果が出やすいので、15mgでも浮腫が出るようであれば、減量しながらみていきます。 また、海外で、女性でチアゾリジン薬による骨折リスクが報告されていますので4)、骨粗鬆症や、閉経後の女性では注意が必要です。 私のこれまでの臨床経験から、チアゾリジン薬では明らかに効果が出る患者さん(レスポンダー)がいると感じています。そのため、そういった患者さんでは、効果と安全性のバランスをみながら、適宜増減を考慮し、治療を進めていくとよいと思います。 ※脂肪細胞から分泌される生理活性物質(アディポサイトカイン)で、骨格筋や肝における脂肪酸の燃焼と糖の取り込みを促進し、インスリン感受性を増強させる5)。また、マウスにおける動脈硬化の抑制や、アディポネクチン欠損マウスにおける血管の炎症性内膜肥厚の亢進が示されていることから、動脈硬化抑制作用を持つと考えられている6,7)。―どの程度の心疾患既往者であれば使用してよいのでしょうか。 チアゾリジン薬は心不全および心不全既往例では禁忌で、心不全発症の恐れのある心筋梗塞、狭心症、心筋症、高血圧性心疾患などの心疾患患者さんには慎重投与です1)。つまり、心不全以外の既往症であれば投与できますが、心疾患既往例では、心不全のリスクが高いことを念頭に置き、投与中は、浮腫や急激な体重増加、息切れや動悸といった心不全の症状がないかどうか、十分注意します。患者さんにも、あらかじめ、これら異常がみられた場合には、すぐに受診するよう伝えます。 また、定期的に血中BNP値や心電図、胸部X線検査などでモニタリングするとよいでしょう。とくに、心室で合成され、血中を循環する心臓ホルモンであるBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド;Brain Natriuretic Peptide)は、心室への負荷の程度を反映する生化学的マーカーで、広く臨床現場で使用されています。「慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版)」では、心不全の所見に加え、BNP>100pg/mLであれば、心不全を想定して検査を進めるとされています8)。心不全のリスクが高い患者さんでは、BNP値を測定し、上昇してくるようであれば、診察時には毎回検査するなど、注意が必要です。―膀胱がんの危険性について教えてください。 海外の研究で、ピオグリタゾンを投与した患者さんで膀胱がん発生リスクが増加する恐れがあり、投与期間が長くなるとリスクの増加傾向があることが示されています9)。そのため、膀胱がん治療中の患者さんには投与を避けることとされています1)。また、「膀胱がん既往例には、薬剤の有効性および危険性を十分に勘案したうえで、投与の可否を慎重に判断する」となっていますが1)、私は膀胱がん既往例に対しては、ピオグリタゾン以外の選択肢がない場合にしか用いていません。 ピオグリタゾンの膀胱がんのリスクについては、海外でリスクが増加する恐れがあるという報告があることを患者さんに伝え、投与期間が長くなってきたら、定期的な尿検査を行うなど、注意する必要があります。また、投与終了後も継続して、十分観察します。―浮腫・体重増加がみられる女性患者への対応を教えてください。 前述したように、女性は効果がある反面、浮腫が出現しやすいため、“むくみが出る可能性がある”こと、“塩分摂取量にはとくに注意する必要がある”ことを事前に伝えます。体重増加がみられれば、それが浮腫によるものなのか(急激な体重増加、手足のむくみ、息苦しさ、動機など)、あるいは生活習慣の乱れによる体重増加なのかを見極め、浮腫の場合には、心不全でないことを確認したうえで、浮腫に対する対応として、塩分制限や利尿剤投与などの対応を検討します。 チアゾリジン薬では、小型脂肪細胞が増加し、大型脂肪細胞のアポトーシスが惹起されることでインスリン抵抗性を改善する働きがあるとお話ししましたが、小型脂肪細胞が治療前より増加するため、過食などによる体重増加にも注意する必要があります。実際に、チアゾリジン薬を投与された2型糖尿病患者さんでは、内臓脂肪は減少するものの、皮下脂肪が増加することがわかっています10)。1)アクトス製品添付文書(2015年3月改訂)2)医薬品インタビューフォーム アクトス錠15・30,アクトスOD錠15・30(2015年11月改訂).p533)Kawamori R, et al. Diab.Res.Clin.Pract. 76(2007)229-235.4)Habib ZA, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2010;95:592-600.5)Shindo T, et al. Nat Med. 2002;8:856-863.6)Kubota N, et al. 2002;277:25863-25866.7)Yamauchi T, et al. J Biol Chem. 2003;278:2461-2468.8)日本循環器学会ほか.慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版).In:循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009年度合同研究班報告).9)Lewis JD, et al. Diabetes Care. 2011;34:916-922.10)Miyazaki Y, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2002;87:2784-2791.

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運動での消費カロリーの情報は体重管理に逆効果?

 運動での消費カロリーを実際より高く伝えられると、その後の食事の摂取カロリーが高くなる可能性があることを、英国・ブリストル大学Duncan C McCaig氏らが報告した。モバイルアプリなどによる消費カロリーの情報提供は、健康的な体重管理に逆効果となるかもしれないと考察している。Appetite誌オンライン版2016年8月20日号に掲載。 一過性の運動は、運動をしない場合と比べて、運動後のエネルギー摂取量(EI)への影響はほとんどなく、短期的にエネルギーバランスが負になると考えられるが、実際はどうなのだろうか。また、食品ラベルに表示されたカロリーがEIに影響することは証明されているが、一過性の運動をフレーミングすることでEIがどう影響されるかを検討した研究はほとんどない。 著者らは、健康でやせている男女70人の参加者に、推定エネルギー消費量(EE)が120kcalの運動を実施させ、その後のEIを評価するために、10分間の休憩後にオレンジジュース、トルティーヤチップス、チョコチップクッキーなどの試験食を自由に摂取させた。参加者には、運動前・運動直後・試験食後のいずれかに、運動による消費カロリーを50kcalまたは265kcalと伝えた。また、空腹度と食事制限状況についても調査した。 主な結果は以下のとおり。・EIは、EEを265kcalと伝えた群でより多かった(p=0.015、主にチョコチップクッキーの摂取による)。・空腹度については、試験食後にEEを50kcalと伝えた群に比べ、265kcalと伝えた群で有意に空腹感が強かった(p=0.035)が、運動直後ではそうではなかった。 これらの結果は、おいしい食べ物が入手可能な状況では、より高いEE情報(265kcal)がより大きな“食べる自由”を参加者に与える、という解釈を支持すると著者らは記している。他にも、食事制限の緩和について、食事制限が弱い人ではEE情報による影響が大きいことが示唆された。

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製薬企業から医師への報酬、処方に有意に影響/BMJ

 製薬企業から医師に支払われる、講演料やコンサルティング料などは、その地域で営業活動が展開されている経口抗凝固薬と非インスリン糖尿病治療薬の、処方日数の増加と結び付いていることが明らかにされた。同処方増は、報酬対象が非専門医よりも専門医の場合であったほうが、有意に大きかったという。米国・エール大学のWilliam Fleischman氏らが、米国306地域の病院医療圏(hospital referral region:HRR)を対象に断面調査を行った結果で、BMJ誌オンライン版2016年8月18日号で発表した。製薬企業から医師への報酬は処方に影響しないと考える医師が多いが、これまでその影響を調べた検討はほとんど行われていなかった。病院医療圏306ヵ所を対象に調査 研究グループは、2013~14年の米国高齢者向け公的医療保険メディケアパートDの処方記録(政府サイトで検索・入手可能)を基に、処方頻度の高い経口抗凝固薬と非インスリン糖尿病治療薬の2種について、製薬企業から医師への報酬と、各地域における処方との関連を分析した。対象地域は306の病院医療圏で、製薬企業から医師への報酬としては、講演料、コンサルティング料、謝礼金、贈答品、飲食費、旅費などを含んだ。調査対象は、対象期間中に地域における医師への報酬が100件以上報告されていた薬剤(marketed drugs)とした。 主要評価項目は、医師が処方した経口抗凝固薬や非インスリン糖尿病治療薬の割合または市場占有率だった。 306病院医療圏において、対象とした2種の処方薬は、医師62万3,886人により患者1,051万3,173人に4,594万9,454例処方されていた。報酬が1回増ごとに、糖尿病治療薬の処方日数107日増加 306病院医療圏において、経口抗凝固薬に関連して97万7,407件、総額6,102万6,140ドルの医師への報酬があった。非インスリン糖尿病治療薬では、178万7,884件、総額1億841万7,616ドルの報酬があった。 病院医療圏における調査対象薬の市場占有率は、経口抗凝固薬が21.6%、非インスリン糖尿病治療薬12.6%だった。 病院医療圏において、医師への報酬が1回(中央値13ドル、四分位範囲:10~18ドル)増えるごとに、経口抗凝固薬の処方日数は94日(95%信頼区間[CI]:76~112)、非インスリン糖尿病治療薬の処方日数は107日(同:89~125)、それぞれ増加が示された(いずれもp<0.001)。こうした増加は、報酬対象が非専門医よりも専門医の場合で有意に大きく、経口抗凝固薬の専門医 vs.非専門医の処方日数増は212 vs.100日、非インスリン糖尿病治療薬でも331 vs.114日だった(いずれもp<0.001)。 また、非インスリン糖尿病治療薬の処方日数の増加について、報酬が飲食費であった場合は110日増であったのに対し、講演料・コンサルティング料の場合は484日増と有意な差が認められた(p<0.001)。 なお、今回の検討について著者は、「医師への報酬と処方増との因果関係を示すものではなく、所見は一部の限られたものであると解釈するにとどめるべきであろう」としている。

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