サイト内検索|page:16

検索結果 合計:4893件 表示位置:301 - 320

301.

2型DM男性へのメトホルミン、子の先天奇形と関連なし/BMJ

 父親の精子形成期におけるメトホルミンの使用は、子の臓器特異的奇形を含む先天奇形とは関連しないことが、ノルウェーおよび台湾の一般住民を対象とした全国規模のコホート研究において示された。国立台湾大学のLin-Chieh Meng氏らが報告した。先行研究では、父親のメトホルミン使用と子の先天奇形のリスクとの関連が示されていた。著者は、「今回の研究の結果、メトホルミンは子供をもうける予定のある2型糖尿病男性において、血糖管理のための最初の経口薬として適切であると考えられる」とまとめている。BMJ誌2024年10月16日号掲載の報告。ノルウェー62万例、台湾256万例の子供と父親のデータを解析 研究グループは、ノルウェーの出生登録、処方箋データベース、患者登録および医療費償還払いデータベース、ならびに台湾の出生証明書申請データベース、国民健康保険データベースおよび母子保健データベースを用いた。ノルウェーのコホートでは2010~21年まで、台湾のコホートでは2004~18年までに単胎妊娠で出生した子供のうち、精子形成期(妊娠の3ヵ月前)の父親のデータがある子供それぞれ61万9,389例および256万3,812例を特定した。 主要アウトカムは、先天奇形、副次アウトカムは臓器特異的奇形で、欧州先天奇形サーベイランス(EUROCAT)のガイドラインに従って分類し、父親のメトホルミン使用と子の先天奇形リスクとの関連について解析した。 相対リスクは、補正前解析、父親が2型糖尿病と診断されている集団に限定した解析、ならびに糖尿病の重症度やその他の交絡因子を補正するため父親が2型糖尿病の集団に限定し、傾向スコアオーバーラップ重み付け法を用いた解析により推定した。また、遺伝的因子とライフスタイル因子を考慮するために、兄弟姉妹のマッチング比較を行った。さらに、ノルウェーと台湾のデータの相対リスク推定値を、ランダム効果メタ解析を用いて統合した。父親が2型糖尿病の交絡因子補正後解析では、メトホルミン服用と先天奇形に関連なし ノルウェーのコホートでは、61万9,389例のうち2,075例(0.3%)、台湾のコホートでは256万3,812例のうち1万5,276例(0.6%)の子供の父親が、精子形成期にメトホルミンを使用していた。 先天奇形は、ノルウェーのコホートでは、父親が精子形成期にメトホルミンを使用していなかった子供で2万4,041例(3.9%)、使用していた子供で104例(5.0%)に認められ、台湾のコホートではそれぞれ7万9,278例(3.1%)および512例(3.4%)であった。 補正前解析では、父親のメトホルミン使用は先天奇形のリスク増加と関連していた(補正前相対リスクはノルウェーで1.29[95%信頼区間[CI]:1.07~1.55]、台湾で1.08[0.99~1.17])。 しかし、この関連は交絡因子の補正に従い減弱した。2型糖尿病の父親に限定した解析での相対リスクは、ノルウェーで1.20(95%CI:0.94~1.53)、台湾で0.93(0.80~1.07)、2型糖尿病の父親限定の傾向スコアオーバーラップ重み付け法による解析ではそれぞれ0.98(0.72~1.33)、0.87(0.74~1.02)で、プール推定値は0.89(0.77~1.03)であった。 臓器特異的奇形は、父親のメトホルミン使用と関連していなかった。これらの所見は、兄弟姉妹をマッチさせた比較や感度分析においても一貫していた。

302.

「永遠の化学物質」PFASが睡眠障害を引き起こす可能性も

 血液中の「永遠の化学物質」とも呼ばれる有機フッ素化合物の「PFAS」が、若年成人の睡眠障害と関連していることが、米南カリフォルニア大学(USC)のグループによる研究で示された。PFASは有機フッ素化合物のペルフルオロアルキル化合物とポリフルオロアルキル化合物の総称で、この研究からはPFASのうち4種類の物質の血中濃度が睡眠障害と関連していることが明らかになった。詳細は、「Environmental Advances」10月号に掲載された。 PFASは、テフロン加工された調理器具やシャンプーなど、さまざまな製品に使用されているが、何十年もの間、環境中に残留する可能性がある。また、食品や水と一緒に体内に摂取される可能性も考えられる。研究グループによると、米国人の大多数において、血中のPFAS濃度は検出可能レベルであるという。 この研究は、USCの別の研究で数年前に血液採取を受けた19~24歳の男女136人(試験開始時の平均年齢19.45歳)を対象に実施された。研究参加者は睡眠時間と睡眠の質に関する情報も提供しており、136人中76人は追跡調査も受けていた。対象者の7種類のPFASの血中濃度を測定し、「低」から「高」までの3つのカテゴリーに分けた。 その結果、7種類のPFASのうち、4種類(PFDA、PFHxS、PFOA、PFOS)が睡眠障害に関連していることが明らかになった。具体的には、ベースラインからPFDA濃度のカテゴリーが1段階上がることは、毎晩の睡眠時間の平均0.39時間の短縮と関連していた。また、追跡調査の結果からは、PFHxSとPFOAの濃度のカテゴリーが1段階上がることは、平均で0.39時間と0.32時間の睡眠時間の短縮と関連していた。一方、PFOS濃度のカテゴリーが1段階上がることは、睡眠障害スコアの2.99点の増加、睡眠関連障害スコアの3.35点の増加と関連していた。 論文の筆頭著者で、USCケック医学校のShiwen Li氏は、「われわれが検出した血液中のPFASは、おそらく出生後の曝露によるものだが、出生前の胎児期の曝露に起因している可能性もある」と述べている。 研究グループは、これら4種類のPFASについて分析するため、化学物質と疾患、遺伝子発現の変化の関連についての研究をまとめたデータベースを使用し、PFASの影響を受ける遺伝子と睡眠障害に関与する遺伝子の重複を調べた。 その結果、600を超える遺伝子候補のうち、PFASによって活性化される7つの遺伝子候補が睡眠に影響を与えると推定された。その一つは、コルチゾールというホルモンの産生を助ける免疫系のタンパク質(HSD11B1)をコードする遺伝子だった。コルチゾールは睡眠覚醒リズムの調節で重要な役割を果たしている。また、カテプシンBをコードする遺伝子もPFASの睡眠への影響に関与していることが示された。カテプシンBは、記憶力や思考能力に関係し、アルツハイマー病患者の脳に存在するアミロイドβの生成に関与することが示唆されている。一方で、アルツハイマー病自体も睡眠障害に関連している。 Li氏は、「睡眠の質はほとんど全ての人に関わる問題だ。そのため、今回の研究で示された睡眠に対するPFASの影響には政策的な対応を考慮する必要がある」と話す。また、同氏は、「長期的に見ると、質の悪い睡眠は神経学的な問題や行動面の問題、2型糖尿病、アルツハイマー病などに関連していることが指摘されている」と同大学のニュースリリースで付け加えている。

303.

歯科受診で介護コストが抑制される可能性

 歯科を受診することが、その後の要介護リスク低下や累積介護費の抑制につながる可能性を示唆するデータが報告された。特に予防目的での歯科受診による抑制効果が顕著だという。東北大学大学院歯学研究科国際歯科保健学分野の竹内研時氏、木内桜氏らの研究グループによる論文が、「The Journals of Gerontology. Series A, Biological Sciences and Medical Sciences」に8月5日掲載された。 超高齢社会の進展を背景に増大する介護費への対策が、喫緊の社会的課題となっている。介護費増大の要因として脳卒中や心血管疾患、認知機能低下などが挙げられるが、それらのリスク因子として、歯周病や咀嚼機能の低下といった歯科で治療可能な状態の関与を示唆する研究報告が増えている。このことから、適切な歯科治療によって要介護リスクが低下し、介護コストが抑制される可能性が考えられるが、そのような視点での検証作業はまだ行われていない。これを背景として竹内氏らは、全国の自治体が参加して行われている「日本老年学的評価研究(JAGES)」のデータを用いた研究を行った。 JAGESは、2010年に自立して生活している高齢者を対象とする長期コホート研究としてスタート。今回の研究では、調査実施前6カ月間の歯科受診状況、および2018年まで(最大91カ月)の介護保険利用状況を確認し得た、8,429人のデータを解析に用いた。ベースライン時の平均年齢は73.7±6.0歳で、男性が46.1%であり、過去6カ月以内の歯科受診状況は、予防目的での受診ありが35.9%、治療目的での受診ありが52.4%、予防か治療いずれかの目的での受診ありが56.3%だった。 約8年の追跡期間中に1,487人(17.6%)が介護保険の利用を開始し、1,093人(13.0%)が死亡していた。介護保険の利用期間の全体平均は4.5±13.2カ月であり、累積介護費の全体平均は4,877.0米ドルだった。 追跡期間中に介護保険を利用した群と利用しなかった群のベースラインの特徴を比較すると、前者は高齢で女性や配偶者なしの人が多く、BMIが低い、歩行時間が短い、教育歴が短い、低収入などの傾向があり、また、医科の健診を受けていない人が多く、過去6カ月以内に歯科を受診していない人が多い傾向が見られた。 介護保険の平均利用期間は、過去6カ月以内に治療目的で受診していた群はそうでない群より短く、過去6カ月以内に予防か治療いずれかの目的で受診していた群もそうでない群より短かった。過去6カ月以内に予防目的で受診していた群もそうでない群よりも短かった。介護費用に関しては、これら3通りの比較でいずれも、歯科受診をしていた群の方が有意に少なかった。 交絡因子(年齢、性別、BMI、飲酒・喫煙習慣、歩行時間、婚姻状況、収入、教育歴、歯数、地域、基礎疾患〔糖尿病、高血圧、脳卒中、心臓病、がん、うつ状態〕)を調整後、ベースラインから過去6カ月以内に予防か治療いずれかの目的で受診していた群は、そうでない群よりも追跡期間中の介護保険利用が有意に少なかった(オッズ比〔OR〕0.86〔95%信頼区間0.76~0.98〕)。予防目的のみ、または治療目的のみの受診の有無での比較では、介護保険利用率に有意差が見られなかった。 次に、介護保険を利用した人において、ベースラインから過去6カ月以内の歯科受診の有無により累積介護費が異なるのかを、相対コスト比(RCR)を算出して検討。その結果、予防目的で受診していた群はRCR0.82(95%信頼区間0.71~0.95)と、要介護状態になったとしても介護費が有意に少ないことが分かった。治療目的のみ、または予防か治療いずれかの目的での受診の有無での比較では、RCRに有意差は認められなかった。 続いて、歯科受診の有無別に予測される累積介護費を算出。すると、予防目的での受診により累積介護費が-1,089.9米ドル(95%信頼区間-1,888.5~-291.2)と、有意に少なくなることが予測された。また、予防か治療いずれかの目的での受診では、-980.6米ドル(同-1,835.7~-125.5)の有意な減少が見込まれた。治療目的での受診では有意差は認められないものの、-806.7米ドル(同-1,647.4~34.0)の減少が見込まれた。 以上一連の結果を基に著者らは、「歯科受診、特に予防目的での受診は、累積介護費の低下と関連していた。歯科受診を通して口腔の健康を維持することで、介護費を抑制できる可能性がある」と結論付けている。

304.

体脂肪だけを減らせる持久力運動

 高強度の持久力運動により、体脂肪だけを効果的に減らせることを示す研究結果が報告された。中年男性が7日間で1,440kmのロードサイクリングを行った結果、全身の体脂肪は9%減少、内臓脂肪は15%減少して、血圧や血清脂質にも良い影響が生じ、一方で体重はわずか1%しか減らなかったという。 この研究は、ラヴァル大学(カナダ)のJean-Pierre Despres氏らによるもので、詳細は「American Journal of Physiology-Endocrinology and Metabolism」9月号に掲載された。論文の責任著者である同氏は、「われわれの研究結果は、肥満予防にはカロリー制限よりも、身体的に活動的なライフスタイルを促進することが重要であるという事実を裏付けている」と述べている。また研究グループは、「人間はできるだけ食べないようにするのではなく、身体的に活動的になるように設計されていることを示す、一つのエビデンスといえる」という別の言い方で研究結果を総括している。 この研究には、50~66歳のレクリエーションレベルの男性サイクリスト11人(平均年齢60.4±4.4歳)が参加した。これらの参加者はベースライン時点において、同年齢の一般男性86人に比べて心肺機能(VO2peak)が有意に高く(+9.2mL/kg/分、P<0.0001)、皮下(-56.2mL)および肝臓(-3.3%)の脂肪量が有意に少なかった(ともにP<0.05)。 これらの参加者に対して、7日間で1,440kmのロードサイクリングを課し、その間、消費したエネルギー量を食事で十分に補充して体重が落ちないようにしてもらった。そのため、朝食と昼食はビュッフェ形式で自由に摂取可能とし、夕食は持ち帰りの弁当や菓子などを無制限に提供した。 7日後、体重は約1%減少し(-0.8±0.9kg)、BMIも低下(-0.3±0.3)したものの(ともにP<0.05)、わずかな変化に抑えられていた。それに対して、全身の脂肪量は約9%減少し(-1.5±1.0kg、P<0.001)、内臓脂肪量は14.6%減少(-14.1±14.2mL、P<0.01)、ウエスト周囲長も有意に低下していた(-3.2±1.7cm、P<0.0001)。さらに、除脂肪体重は1.2%増加し(0.8±1.2kg)、総コレステロールは20%以上低下、トリグリセライド(中性脂肪)に関しては40%近く低下し、また血圧も大幅に低下していた。 研究グループは、「これらの結果は、持久力運動によって引き起こされる影響が体重の変化にとどまらずに、体組成への好ましい影響が少なくないことを改めて強調している」と結論付けている。

305.

高齢者の睡眠時間の目安は?

65歳以上の睡眠時間の目安⚫ 必要な睡眠時間は年齢とともに少なくなり、高齢世代では睡眠時間の長短よりも、長い床上時間(寝床で過ごす時間)が健康リスクとなることが示されています⚫ 床上時間が8時間以上にならないことを目安に※必要な睡眠時間を確保しましょう※さまざまな健康上の理由から、寝床で過ごす時間を減らすことが難しい場合を除きます床上時間と睡眠時間•まずはご自身の睡眠状態を1週間記録してみましょう。ポイントは、床上時間(寝床に入っている時間)と睡眠時間(実際に眠っている時間)を区別することです•床上時間の目安は、1週間の平均睡眠時間+30分程度で、8時間以上にならないことを目安に、必要な睡眠時間※を確保するようにしましょう※必要な睡眠時間には個人差があります。6時間以上を目安に、睡眠休養感(睡眠で休養がとれている感覚)が得られる、ご自身にとって必要な睡眠時間を見つけましょう“休養感”のある睡眠のために・日中は活動的に過ごし、昼と夜(活動と休息)のメリハリをつけましょう・日中の長時間の昼寝は避けるようにしましょう出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

306.

ビタミンB1が便秘リスクを軽減、とくに有効な人は?

 これまでの多くの研究から、食事からの微量栄養素の摂取と便秘発生との相関関係が示されている。中国・蘇州大学付属病院Wenyi Du氏らは、国民健康栄養調査(NHANES)の成人参加者におけるデータを用い、食事におけるビタミンB1摂取と慢性便秘との関連を調べた。BMC Gastroenterology誌2024年5月17日号の報告。 2005~10年に実施されたNHANESのデータを使用した。ビタミンB1摂取に関するデータは24時間の総栄養摂取量インタビューを通じて収集された。参加者はデータ収集前の30日間に記録された糞便の特徴と排便頻度に関する情報を提供し、便秘は排便頻度(週3回未満)または便の硬さ(ブリストル便スケールタイプ1または2)によって判定された。ビタミンB1摂取量に基づいて低量群(0.064~1.20mg)、中量群(1.21~1.75mg)、多量群(1.76~12.61mg)の3群に分け、年齢、性別、人種、BMI、婚姻状況、アルコール摂取、喫煙状況、世帯収入と貧困率の比率(PIR)、既存の併存疾患、食事摂取因子で調整した。 主な結果は以下のとおり。・対象となった成人1万371例のうち1,123例(10.8%)が慢性便秘症だった。多重ロジスティック回帰分析により、ビタミンB1の食事摂取量の増加が便秘のリスク低下と有意に関連していることが示された(オッズ比[OR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0.77~0.99)。・ビタミンB1摂取量が多いほど、便秘の発生率が有意に低下した。便秘の有病率は多量群では7.69%、中量群では10.7%、低量群では14.09%だった。・サブグループ分析により、ビタミンB1摂取量と便秘有病率に有意な逆相関が見られるグループが特定された。男性は20%、高血圧のない人は16%、糖尿病のない人は14%、それぞれ便秘リスクが減少することが判明した。 研究者らは「この研究で、食事中のビタミンB1の摂取と慢性便秘の発生との間に逆相関があることが明らかになった。この関連は、食事によるビタミンB1の摂取量を増やすと便が柔らかくなり、腸の運動が活発になり、便秘症状が緩和される可能性があることを示唆している。医療専門家は、医学的介入に先立つ初期治療アプローチとして、バランスの取れた食事の促進を優先するようアドバイスすべきだ」としている。

307.

2型糖尿病患者の認知症リスクに対するSGLT2iの影響はデュラグルチドと同等

 高齢2型糖尿病患者の認知症リスクに対するSGLT2阻害薬(SGLT2i)の影響は、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)のデュラグルチドと同程度ではないかとする研究結果が報告された。推定リスク差の95%信頼区間は-2.45~0.63パーセントポイントだという。成均館大学(韓国)薬学部のBin Hong氏らの研究の結果であり、詳細は「Annals of Internal Medicine」に8月27日掲載された。 SGLT2iとGLP-1RAはいずれも、2型糖尿病に対して血糖降下以外の多面的な作用のあることが知られており、神経保護作用も有する可能性が報告されている。ただし、認知症予防という点での評価は定まっておらず、これら両剤の有効性を比較し得るデータは限られており、臨床上の疑問点として残されている。これを背景としてHong氏らは、リアルワールドデータを用いてランダム化比較試験を模倣する、ターゲット試験エミュレーション研究を行い、SGLT2iとGLP-1RAであるデュラグルチドの認知症リスクを比較検討した。 この研究では、韓国国民健康保険公団から入手した2010~2022年の同国における医療データを用いて、SGLT2iまたはデュラグルチドで治療が開始された60歳以上の2型糖尿病患者を抽出。主要評価項目を、臨床データに基づき推定される認知症とし、その発症は認知症の診断の記録から1年前と仮定した。交絡因子を調整後に、処方開始から5年間のリスク比とリスク差を求めた。 傾向スコアにより背景因子をマッチさせた結果、SGLT2iで治療が開始されていた1万2,489人(ダパグリフロジン51.9%、エンパグリフロジン48.1%)と、デュラグルチドで治療が開始されていた1,075人が解析対象となった。中央値4.4年の追跡期間中に、主要評価項目イベントはSGLT2i群で69人、デュラグルチド群で43人に発生。推定リスク差は-0.91パーセントポイント(95%信頼区間-2.45~0.63)、推定リスク比は0.81(同0.56~1.16)と計算され、いずれも非有意だった。 この結果に基づき著者らは、「われわれのデータから、SGLT2iとデュラグルチドの2型糖尿病患者の認知症リスクに対する影響はほとんど差がないことが分かった」と結論付けている。ただし、本研究の限界点として、HbA1cや糖尿病の罹病期間が調整されておらず、そのほかにも残余交絡が存在する可能性、および、GLP-1RAについては比較的初期に登場したデュラグルチドのみを評価対象としたことなどを挙げている。また、「われわれの研究結果は既報研究と一致するものではあるが、より新しいGLP-1RAを含めた解釈の一般化が可能か否かは不明であり、さらなる研究が求められる」と付け加えている。

308.

携帯電話の頻用で、CVDリスクが高まる

 携帯電話を頻用することで睡眠障害と心理的ストレスが高まり、心血管疾患(CVD)リスク増加につながる可能性があることが、新たな研究で示された。中国・広州の国立腎臓病臨床研究センターのYanjun Zhang氏らによる本研究は、The Canadian Journal of Cardiology誌オンライン版2024年7月22日号に掲載された。 研究者らは50万例以上が参加する大規模コホートである英国バイオバンクのデータを用い、CVDの既往歴のない44万4,027例を対象とした。携帯電話の定期的な使用は、少なくとも週1回の通話・受信と定義した。携帯電話の使用時間は、過去3ヵ月間の週平均(5分未満、5〜29分、30〜59分、1〜3時間、4〜6時間、6時間以上)を自己申告によって得た。主要評価項目は新規CVD(冠動脈性心疾患[CHD]、心房細動[AF]、心不全[HF]の複合)発症、副次評価項目は新規脳卒中、個別のCHD、AF、HF発症、および頸動脈内膜中膜厚(cIMT)発症 だった。 睡眠パターン、心理的ストレス、神経症の役割を調査するために媒介分析を行った。睡眠スコアは睡眠時間、不眠症、いびきなどの情報から過去の研究に基づいて推定、心理的ストレスの評価にはPHQ-4を使用した。ベースライン時の性別、年齢、居住地域、世帯収入、アルコール摂取、喫煙、身体活動、服薬などの共変量の情報を、アンケートまたはインタビューで収集した。 主な結果は以下のとおり。・平均年齢は56.1歳で、男性19万5,623人(44.1%)であった。携帯電話常用群は若年層、現喫煙者、都市在住者の割合が高く、高血圧と糖尿病の既往歴がある人の割合が低かった。・追跡期間中央値12.3年で5万6,181例(12.7%)がCVDを発症した。携帯電話常用群は非常用群と比較して、新規CVDリスクが有意に高く(ハザード比:1.04、95%信頼区間[CI]:1.02~1.06)、cIMTの増加も認められた(オッズ比:1.11、95%CI:1.04~1.18)。・常用群における週当たりの使用時間は、とくに現喫煙者(交互作用のp=0.001)および糖尿病患者(p=0.037)において、新規CVDリスクと正の相関関係を示した。・週当たりの使用時間と新規CVD発症との関係のうち、5.11%は睡眠パターン、11.5%は心理的ストレス、2.25%は神経症が媒介していた。 研究者らは、「携帯電話の週当たりの使用時間は、新規CVDリスクと正の相関関係にあった。これは睡眠不足、心理的ストレス、神経症によって一部を説明できる」としている。

309.

新規2型DM、短期強化インスリン後リナグリプチン+メトホルミンが有用/BMJ

 新たに2型糖尿病と診断されたHbA1c値8.5%以上の患者において、短期強化インスリン療法(SIIT)後に経口療法(とくにリナグリプチンとメトホルミンの併用)を用いるという強力かつ簡便な戦略は、持続的な血糖コントロールをもたらし、β細胞機能を改善することが示された。中国・中山大学第一付属病院のLiehua Liu氏らが、中国の15施設で実施した無作為化非盲検比較試験の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「この治療戦略は、2型糖尿病の臨床管理における意思決定に有望な方向性を示すものである」とまとめている。BMJ誌2024年10月15日号掲載の報告。SIIT後、リナグリプチン、メトホルミン、両者併用を生活習慣改善指導のみと比較 研究グループは、新たに2型糖尿病と診断され、年齢20~70歳、血糖降下薬の投与歴なし、糖尿病に関する医師の助言や介入を受けたことがない、BMI値22.0~35.0、空腹時血糖値7.0~16.7mmol/L、スクリーニング時のHbA1c値8.5%以上の患者を、リナグリプチン(5mg/日)+メトホルミン(1,000mg/日)併用群、リナグリプチン(5mg/日)群、メトホルミン(1,000mg/日)群、対照群(生活習慣の改善指導のみ)に1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 無作為化された全例が、2~3週間の持続皮下インスリン注入法によるSIITの後、割り付けに従って48週間の治療を受けた。 主要アウトカムは、SIIT後48週時のHbA1c値<7.0%を達成した患者の割合。副次アウトカムは、HbA1c値<6.5%を達成した患者の割合、ベースラインからのHbA1c値、空腹時および食後2時間血糖値、β細胞機能指数、インスリン感受性指数の変化などであった。48週時のHbA1c値<7.0%達成、SIIT+リナグリプチン+メトホルミン併用群80% 2017年12月~2020年12月に464例がスクリーニングを受け、412例が無作為化された。患者背景(平均値±SD)は、年齢46.8±11.2歳、BMI値25.8±2.9、HbA1c値11.0±1.9%であった。SIIT後に来院しなかった39例を除く373例が有効性解析対象集団に組み入れられた。 48週時にHbA1c値<7.0%を達成した患者の割合は、対照群60%(56/93)に対し、リナグリプチン+メトホルミン併用群80%(78/97例)(p=0.003)、リナグリプチン群72%(63/88例)(p=0.12)、メトホルミン群73%(69/95例)(p=0.09)であった(実薬3群全体のp=0.02、いずれもχ2検定による)。 また、48週時にHbA1c値<6.5%を達成した患者の割合は、対照群48%(45/93例)に対して、リナグリプチン+メトホルミン併用群70%(68/97)(p=0.005)、リナグリプチン群68%(60/88)(p=0.01)、メトホルミン群68%(65/95)(p=0.008)であった(実薬3群全体のp=0.005、いずれもχ2検定による)。 ロジスティック解析の結果、対照群との比較において、リナグリプチン+メトホルミン併用群が48週時にHbA1c値<7.0%を達成する可能性が高いことが示された(オッズ比:2.78、95%信頼区間:1.37~5.65、p=0.005)。また、リナグリプチン+メトホルミン併用群では、空腹時血糖値およびβ細胞機能指数が最も顕著に改善した。 忍容性はすべての治療群で良好であった。

310.

呼吸機能低下が認知機能低下に関連―SONIC研究

 スパイロメトリーという機器による簡便な呼吸機能検査の結果が、高齢者の認知機能と関連のあることが報告された。大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻の橘由香氏、神出計氏らの研究結果であり、詳細は「Geriatrics & Gerontology International」に8月20日掲載された。著者らは、高齢者対象の保健指導に呼吸機能を鍛えるプログラムの追加を検討する必要性があるとしている。 認知機能低下の主要な原因は加齢だが、喫煙や大量飲酒、糖尿病や高血圧といった生活習慣病など、介入可能なリスク因子も存在する。また、潜在的なリスク因子の一つとして近年、呼吸機能の低下が該当する可能性が指摘されている。ただし、呼吸機能の簡便な検査法であるスパイロメトリーで評価できる範囲の指標が、高齢者の認知機能と関連しているのかという点は明らかになっていない。これを背景として橘氏らは、兵庫県の地域住民対象に行われている高齢者長期縦断研究(SONIC研究)のデータを用いた検討を行った。 解析対象は、73±1歳の419人(73歳群)と83±1歳の348人(83歳群)という二つの年齢層の集団。各群ともに約半数が女性であり(73歳群は50.1%、83歳群は51.4%)、認知症と診断されている人は除外されている。認知機能は、教育歴の影響が調整される尺度であるモントリオール認知機能尺度の日本語版(MoCA-J)を用いて評価。MoCA-Jは30点満点で、スコアが高いほど認知機能が良好であると判定する。 解析ではまず、スパイロメトリーによる最大呼気流量(PEF)の実測値と、年齢・性別・身長などが一致する人の平均に対する比(%PEF)から、気流制限の重症度を4段階に分類。ステージ1は%PEFが80%以上、ステージ2は50~80%未満、ステージ3は30~50%未満、ステージ4は30%未満としてMoCA-Jスコアを比較した。すると83歳群では、気流制限の程度が強いほどMoCA-Jスコアが低いという有意な関連が認められた(傾向性P=0.002)。73歳群でもその傾向があったが有意ではなかった。 次に、MoCA-Jが25点以下で定義した「軽度認知障害(MCI)」を従属変数とし、性別、喫煙歴、飲酒習慣、握力低値(男性26kg未満、女性18kg未満)、高血圧、糖尿病、脂質異常症、冠動脈心疾患、脳卒中、および気流制限(FEV1/FVCが70%未満)を独立変数としてロジスティック回帰分析を施行。なお、握力低値を独立変数に含めた理由は、呼吸には筋力が必要であり、握力が呼吸機能と独立して関連していることが報告されているためである。 解析の結果、83歳群では気流制限が、唯一の独立した正の関連因子として抽出された(オッズ比〔OR〕3.44〔95%信頼区間1.141~10.340〕)。反対に飲酒習慣は、MCIに対する唯一の保護的因子だった(OR0.37〔同0.189~0.734〕)。73歳群では性別(女性)が唯一の独立した正の関連因子であり(OR2.45〔同1.290~4.643〕)、保護的因子は特定されなかった。 続いて、年齢層と性別とで4群に分けた上で、それぞれの群におけるMCIに独立した関連因子を検討。その際、独立変数として気流制限以外は前記と同様に設定し、呼吸機能に関しては気流制限の有無に変えて、%VC、FEV1/FVC、%PEFという三つの指標を個別に加えて解析した。その結果、4群全てにおいて、%PEFが高いことがMCIのオッズ比低下と関連していた(男性は73歳群と83歳群の両群ともにOR0.98、女性は両群ともに0.99)。%PEF以外では、83歳群の女性において、%VC(年齢・性別・身長などが一致する人の平均に対する肺活量の比)のみ、有意な関連因子だった(OR0.98)。 著者らは、「われわれの研究結果は、%PEFの低下が地域在住高齢者の認知機能低下に関連していることを示唆している。また、喫煙歴はこの関連に影響を及ぼしていなかった。よって喫煙習慣の有無にかかわらず、高齢者の認知機能維持を目的とした保健指導プログラムに、呼吸機能訓練などを組み込むべきではないか」と総括。さらに、本研究ではスパイロメトリーを用いたが、「%PEFのみであれば患者自身が日常生活下で使用可能なピークフローメーターでも測定できる」とし、「%PEFの自己測定を、高齢者の呼吸機能の自己管理に加え、認知機能低下抑止のための行動変容にもつなげられるのではないか」とも付け加えている。

311.

週1回注射のインスリンは低血糖の出現に注意を (解説:小川大輔氏)

 1型糖尿病患者を対象とした週1回の基礎インスリン(insulin efsitora alfa)の第III相試験の結果が発表された1)。1日1回の基礎インスリン(インスリン デグルデク)と比較し、有効性と安全性を比較した結果、有効性については非劣性が確認されたが、安全性については重篤な低血糖が多いと報告された。 成人1型糖尿病患者692例を、基礎インスリンとしてinsulin efsitora alfaを投与する群(efsitora群)とインスリン デグルデクを投与する群(デグルデク群)に無作為に割り付け、追加インスリンとしてインスリン リスプロを両群とも併用投与した。その結果、ベースラインから26週目までのHbA1cの変化量は両群に差がなく非劣性が確認された。別の言い方をすればefsitora群に優越性は認められなかったということになる。 一方、有害事象である低血糖のエピソードについてはefsitora群がデグルデク群に比べて有意に多いという結果であった。とくにレベル2(血糖値<54mg/dL)の低血糖と、レベル3(他者の支援を必要とする状態)の重症低血糖を合わせた発生頻度は、efsitora群のほうが有意に高かった。また夜間の低血糖には差がなく、非夜間の低血糖がefsitora群でとくに多く認められた。 別の週1回投与の基礎インスリンであるインスリン イコデクの試験でも、インスリン デグルデクと比較し非劣性が示され、重症低血糖の発生頻度はイコデクのほうが有意に多く認められた2)。試験の対象やプロトコールは異なるが、週1回投与のイコデク、efsitoraの両者とも1日1回投与の基礎インスリンより重症低血糖が多く認められたという事実は重く受け止めなければならない。 週1回注射のインスリンは、インスリン治療を行っている糖尿病患者の注射回数を減らすことができ、さらに負担を軽減することができると期待されている。今回の試験で、efsitoraはデグルデクと比較し有効性については劣らないことが示された。その一方で低血糖、とくに重症低血糖が多く認められた点については留意する必要があるだろう。6ヵ国82の専門施設で行われているので、インスリンの調節が不適切であったとは考えにくい。今後efsitoraの投与方法や用量調節についてはさらに検討する必要がある。また低血糖は主に昼間に多く出現しており、持続血糖モニターをより活用する必要があるだろう。 1日1回から週1回投与のインスリンに切り替えることで、1型糖尿病の血糖コントロールが改善するわけではなく、重症低血糖の頻度はむしろ増えることが示された。私自身は週1回の基礎インスリンが登場することを楽しみにしているが、「注射回数が減り楽になる、便利になる」というだけで、安易に週1回投与のインスリンに切り替えることは慎みたいと考えている。

312.

統合失調症と2型糖尿病リスクとの関連〜最新メタ解析

 統合失調症患者におけるメタボリックシンドロームは、臨床医にとって常に重要な課題の1つとなっている。これまでの研究では、統合失調症患者は2型糖尿病発症リスクが非常に高いと報告されている。近年、新たな観察研究が次々と報告されており、臨床医が統合失調症と2型糖尿病との関係をより正確に理解する必要性が高まっている。中国・済寧医学院のKai Dong氏らは、新たな観察研究を統合し、統合失調症と2型糖尿病リスクとの潜在的な関連性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Frontiers in Endocrinology誌2024年9月11日号の報告。 MeSH(Medical Subject Headings)と関連キーワードを用いて、PubMed、Cochrane Library、Embase、Web of Scienceより包括的に検索した。コホート研究およびケースコントロール研究におけるバイアスリスクの評価にはニューカッスル・オタワ尺度(NOS)、横断研究にはAHRQ(Agency for Healthcare Research and Quality scale)を用い、スコアは元の研究の内容に基づいた。p>0.1かつI2が50%以下の場合、異質性が低いことを示す固定効果モデルを採用した。I2が50%超の場合、異質性が大きいことを示すランダム効果モデルを用いた。出版バイアスは、ファンネルプロットとEgger検定を用いて評価した。統計分析には、Stata統計ソフトウェアバージョン14.0を用いた。 主な結果は以下のとおり。・2004〜23年に公表された32件の観察研究(統合失調症患者:200万7,168例、非統合失調症患者:3,588万3,980例)をメタ解析に含めた。・統合分析では、統合失調症歴と2型糖尿病リスク増加との間に有意な関連が認められた(オッズ比[OR]:2.15、95%信頼区間[CI]:1.83〜2.52、I2=98.9%、p<0.001)。・女性の統合失調症患者(OR:2.12、95%CI:1.70〜2.64、I2=90.7%、p<0.001)は、男性患者(OR:1.68、95%CI:1.39〜2.04、I2=91.3%、p<0.001)と比較し、2型糖尿病リスクが有意に高かった。・WHO地域別では、EURO(欧州)は、WPRO(西太平洋)およびAMRO(米国)と比較し、2型糖尿病リスクが有意に高かった。【EURO】OR:2.73、95%CI:2.23〜3.35、I2=97.5%、p<0.001【WPRO】OR:1.72、95%CI:1.32〜2.23、I2=95.2%、p<0.001【AMRO】OR:1.82、95%CI:1.40〜2.37、I2=99.1%、p<0.001・フォローアップ期間では、20年超の群は、10〜20年の群および10年未満の群と比較し、2型糖尿病リスクが有意に高かった。【20年超】OR:3.17、95%CI:1.24〜8.11、I2=99.4%、p<0.001【10〜20年】OR:2.26、95%CI:1.76〜2.90、I2=98.6%、p<0.001【10年未満】OR:1.68、95%CI:1.30〜2.19、I2=95.4%、p<0.001 著者らは「統合失調症と糖尿病発症リスク増加との間に強い相関が示されており、統合失調症が2型糖尿病の独立したリスク因子である可能性が示唆された」と結論付けている。

313.

GLP-1受容体作動薬が消化管の内視鏡検査に影響か

 上部消化管内視鏡検査(以下、胃カメラ)や大腸内視鏡検査では、患者の胃の中に食べ物が残っていたり腸の中に便が残っていたりすると、医師が首尾よく検査を進められなくなる可能性がある。新たな研究で、患者がオゼンピックやウゴービといった人気の新規肥満症治療薬(GLP-1受容体作動薬)を使用している場合、このような事態に陥る可能性の高くなることが明らかになった。米シダーズ・サイナイ病院の内分泌学者で消化器研究者のRuchi Mathur氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に10月1日掲載された。 GLP-1受容体作動薬には胃残留物の排出を遅延させる作用があり、便秘を引き起こすこともある。このため、この薬の使用者では、全身麻酔を必要とする処置を受ける際に食べ物を「誤嚥」するリスクが増加する可能性のあることが指摘されている。Mathur氏らは、GLP-1受容体作動薬使用者では消化管に残留物が見られることがあり、それが内視鏡検査で鮮明な画像を得る上で障害になる可能性があると考えた。 そこでMathur氏らは、2023年1月1日から6月28日の間に胃カメラか大腸内視鏡検査、またはその両方を受けた過体重または肥満の患者209人のデータを後ろ向きに解析した。209人中70人がGLP-1受容体作動薬使用者(GLP-1群、平均年齢62.7歳、女性36人)、残りの139人は非使用者(対照群、平均年齢62.7歳、女性36人)であった。胃カメラのみを受けたのはGLP-1群23人、対照群46人、大腸内視鏡検査のみを受けたのはGLP-1群23人、対照群45人、両方の検査を受けたのはGLP-1群24人、対照群48人だった。 胃カメラのみを受けた対象者のうち胃残留物が認められた者の割合は、GLP-1群で17.4%(4人)であった。これに対し、対照群と、胃カメラと大腸内視鏡検査の両方を受けた患者で、胃残留物が認められた対象者はいなかった。 また、大腸内視鏡検査または胃カメラと大腸内視鏡検査の両方を受けた患者のうち、「腸管の準備が不十分」(便が残存しているなど腸管洗浄が不十分な状態)であった者の割合は、GLP-1群で21.3%(10/47人)に上ったのに対し、対照群では6.5%(6/93人)であった。 ただし、研究グループは良い知らせとして、GLP-1受容体作動薬使用の有無に関係なく、対象患者において誤嚥、呼吸困難、誤嚥性肺炎は発生しなかったことを挙げている。 それでも研究グループは、「胃や腸に食物や便が残留するリスクの上昇は憂慮すべきことだ」と注意を促す。なぜなら、そのような状態での内視鏡検査は、「病変の見逃しや患者の不満、処置のキャンセル、医療資源の浪費といった重大なリスク」をもたらすからだという。 研究グループは、「本研究結果は、内視鏡検査前のGLP-1受容体作動薬の使用に関するガイドラインの更新が必要かどうかを判断するために、さらなる研究が必要であることを示唆するものだ」との見方を示している。

314.

スタチンが必要、でも継続できない患者の対処法【脂質異常症診療Q&A】第22回

スタチンが必要、でも継続できない患者の対処法Q22LDL-C 220mg/dLなのでスタチンでの治療を試みていますが、どのスタチンを投与してもLDL-Cはあまり下がりませんし、さらにどのスタチンでもCKが800~1,200U/Lに上昇するので、スタチンを継続できません。どのように対応すればよいでしょうか?

315.

第237回 血糖値に応じて働くか休む“スマート”インスリンを開発

血糖値に応じて働くか休む“スマート”インスリンを開発血中のブドウ糖濃度(血糖値)に応じて自ずと働くか休む賢いインスリンをNovo Nordiskの研究チームが開発し、低血糖を引き起こすことなく血糖値をほどよく下げうることがブタへの投与実験で確認されました1)。低血糖は糖尿病のイスリン治療の難題の1つです。ひとたび投与したインスリンはたとえ血糖値が正常化しても働き続け、血糖値を危険水準まで下げてしまう恐れがあります。それゆえインスリン投与量は血糖値を正常域にする範囲を超えないように調節する必要があります。しかし絶えず変化する血糖値にインスリン用量を合わせるのは難儀で、必要量よりちょっとばかり多めに投与しただけで低血糖が生じる恐れがあります。低血糖は軽~中等度でも不安、脱力、混乱などを招き、ひどければ意識消失や発作などの重症症状を引き起こし、最悪の場合死に至りさえします。低血糖を避けるために多くの糖尿病患者はインスリン用量を控えめにします。そうすると今度は血糖値が十分に下がらず、高血糖が続くことに起因する合併症が生じ易くなります。“素”のインスリンを使うのではなく、血糖値の変化に応じる仕組みを備えたインスリン治療なら低血糖の心配なく血糖値をよい頃合いに保てそうです。そのような付加価値付きのインスリンを作る試みは結構長い歴史があり、1970年代から続いています1)。血糖値上昇に応じてインスリンを放出する皮下投与ポリマーの開発がそういう取り組みのこれまでの主流でした。しかし糖が皮下に行き着くまでや皮下から血中へのインスリンの到達はより時間を要し、時宜にかなわないという欠点があります。それに、インスリンは皮下から一方的に放出されるのみで、ひとたび放出されたインスリンはもはや糖に応じることはなく働き続けるのみです。そこでNovo Nordiskはインスリンの放出をどうにかするのではなく、ブドウ糖に反応する仕組みを備えた賢いインスリンの開発に取り組み、その有望な成果を先週16日のNature誌の報告で披露しました。Novo Nordiskが開発した賢いインスリンはNNC2215と呼ばれ、血糖値に応じて働くか休むかが切り替わります。その切り替え機能はインスリン本体の両端についた2つの分子が担います。その1つはブドウ糖から生じる分子・グルコシドです。もう1つは大環状分子(macrocycle)で、その名のとおりいわばドーナツに似た環状構造をしています。血糖値が低いとグルコシドが大環状分子に収まってインスリンを不活性な状態に保ちます。一方、血糖値が高いとグルコシドではなくブドウ糖が大環状分子に収まり、インスリンは開放状態となって働けるようになります。ブタやラットで調べたところNNC2215の血糖値を下げる効果が認められました。特筆すべきことにブタへの投与実験では目下のインスリン治療で生じるような低血糖をどうやら生じずに済むらしいことが示されました。ただし、検討されたのは糖尿病患者の典型的な血糖値より広いブドウ糖濃度範囲でのNNC2215の活性です2)。今後の課題としてより狭い濃度範囲でのNNC2215の働きを調べる必要があります。また、安全性の検討も必要ですし、実用化されたとしてどれくらいの値段になるかも気になるところです。NNC2215の想定どおりの働きが示されて一安心とはいえまだ先は長く、Novo NordiskはNNC2215の最適化に取り組んでいます2)。参考1)Hoeg-Jensen T, et al. Nature. 2024 October 16. [Epub ahead of print]2)Smart insulin switches itself off in response to low blood sugar / Nature

316.

日本人の牛乳・乳製品の摂取と不眠症との関連

 労働安全衛生総合研究所の佐藤 ゆき氏らは、日本人における牛乳や乳製品の習慣的な摂取と不眠症との関連を調査した。Nutrition and Health誌オンライン版2024年9月25日号の報告。 東日本で20〜74歳の6万633人(男性:2万2,721人、女性:3万7,912人)を対象に、コホート研究データを用いた横断的研究を実施した。牛乳、乳製品の摂取、睡眠状況、その他の生活習慣に関するデータは、自己記入式質問票を用いて収集した。牛乳、乳製品に関する質問は、全乳、低脂肪牛乳、チーズ、ヨーグルト、乳酸菌飲料を含め、摂取頻度(週1回未満、週1〜2回、週3〜6回、1日1回以上)を評価した。睡眠状況の評価には、アテネ不眠症尺度を用いた。 主な結果は以下のとおり。・ロジスティック回帰分析では、不眠症の調整オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)は、全乳摂取が1日1回以上の場合、週1回未満と比較し、統計学的に有意に低いことが示唆された(OR:0.91、95%CI:0.86〜0.96、p=0.001)。・女性では、同様の結果が認められたが(OR:0.90、95%CI:0.85〜0.97、p=0.002)、男性では認められなかった。・対照的に、乳酸菌飲料が週3〜6回の場合、週1回未満と比較し、不眠症のORが高かった。【全体】OR:1.20、95%CI:1.11〜1.29、p<0.001【男性】OR:1.36、95%CI:1.19〜1.55、p<0.001【女性】OR:1.13、95%CI:1.03〜1.24、p=0.009 著者らは「日本人を対象としたこの横断研究では、不眠症でない人ほど全乳を頻繁に摂取する傾向が見られた」と結論付けている。

317.

心血管疾患リスクの予測にはBMIよりも体丸み指数が有用

 過体重が人の心臓の健康に与える影響を予測する上では、「体丸み指数(body roundness index;BRI)」の方がBMIよりも優れた指標である可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。6年にわたって継続的にBRIが高かった人では低かった人に比べて、心血管疾患(CVD)リスクが163%高いことが示されたという。南京医科大学(中国)Wuxi Center for Disease Control and PreventionのYun Qian氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American Heart Association」に9月25日掲載された。 2013年に提唱されたBRIは、ウエスト周囲径と身長を基に算出する腹部肥満の指標で、BMIやウエスト周囲径などよりも体脂肪や内臓脂肪の割合を正確に反映すると考えられている。一方、従来から使われているBMIは体重と身長のみから算出する。そのため、筋肉量が非常に多い人では値が高くなることもあり、肥満度の指標としては不正確だとして批判されることもある。 この研究では、CHARLS(中国の健康と退職に関する長期研究)の参加者9,935人を対象に、2011年から2016年の間のBRIの推移と2017年から2020年の間のCVD発症(脳卒中、心臓イベント)との関連を調査した。参加者の平均年齢は58.85±9.09歳で、男性5,263人、女性4,672人だった。2011年から2016年の間のBRIの推移に基づき、参加者を、低いBRIを維持していた群(低BRI群)、中程度の高さのBRIを維持していた群(中BRI群)、高いBRIを維持していた群(高BRI群)の3群に分類した。 その結果、低BRI群に比べて中BRI群と高BRI群ではCVDリスクがそれぞれ61%(ハザード比1.61、95%信頼区間1.47〜1.76)と163%(同2.63、2.25〜3.07)有意に上昇することが示された。このような有意なリスク上昇は、参加者の人口統計学的属性や病歴、血圧などの健康指標等を調整した後も認められた(ハザード比は同順で、1.22〔95%信頼区間1.09〜1.37〕、1.55〔同1.26〜1.90〕)。 こうした結果を受けてQian氏は、「われわれの研究により、BRIが6年間、中程度以上のレベルであった場合、CVDリスクが上昇する可能性のあることが示された。これは、BRIの値をCVD発症の予測因子として使用できる可能性があることを示唆している」と話す。同氏はさらに、「この結果は、肥満と高血圧、高コレステロール、2型糖尿病の相関関係によって説明できる。これらは全て、CVDのリスク因子だ。肥満は、心臓や心機能に影響を及ぼす可能性のある炎症やその他のメカニズムを引き起こすことも分かっている。本研究結果がCVDの予防にどのように応用できるかを確認し、完全に理解するには、さらなる研究が必要だ」と述べている。

320.

メトホルミンがlong COVIDのリスクを軽減する可能性

 2型糖尿病の治療に広く使用されている経口血糖降下薬のメトホルミンが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後の症状の遷延、いわゆるlong COVIDのリスクを軽減することを裏付ける、新たなデータが報告された。米ミネソタ大学のCarolyn Bramante氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes Care」に9月17日掲載された。 Long COVIDは、慢性疲労、息切れ、ブレインフォグ(頭がぼんやりして記憶力などが低下した状態)などの症状を呈し、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染後、数週から数カ月続くこともある。現在、米国内で数百万人がこの状態に苦しめられていると考えられている。 一方、昨年発表された研究から、SARS-CoV-2感染後すぐにメトホルミンが処方された過体重または肥満のCOVID-19患者は、long COVIDのリスクが41%低いことが示されていた。今回報告された論文の上席著者であるBramante氏は、「メトホルミンは世界中で入手可能であり、低コストで安全性が確立しているため、long COVIDの予防に有効だとしたら、COVID-19の外来治療に臨床的メリットをもたらす」と述べている。 今回の研究は、2型糖尿病治療のためにメトホルミンが処方されている人でも、昨年報告された研究結果と同様の効果が得られるのかを調べることを目的として、米国立衛生研究所(NIH)の資金提供により実施された。同大学のSteven G. Johnson氏らにより、血糖管理目的でメトホルミンが処方されている約7万6,000人の米国人糖尿病患者のデータが収集され、同薬が処方されていない1万3,000人以上の糖尿病患者のデータと、long COVIDのリスクが比較された。 Johnson氏らは解析の結果、メトホルミンが処方されていた糖尿病患者は、COVID-19罹患後6カ月以内のlong COVID発症または死亡のリスクが最大21%低いことを見いだした(ハザード比0.79〔95%信頼区間0.71〜0.88〕)。研究グループは、「これらのデータは、メトホルミンの処方がSARS-CoV-2感染後の良好な転帰と関連していることを示す、他の観察研究の結果と一致している」と述べている。 では、メトホルミンは、どのようにしてCOVID-19症状の遷延を防ぐのだろうか? NIHによると、「研究者らは現時点で、メトホルミンがCOVID-19の長期化をどのように防ぐのかを明らかにしていない。しかし、炎症を軽減したり、ウイルスレベルを下げたり、疾患関連タンパク質の形成を抑制するといった、いくつかのメカニズムが存在する可能性を推測している」という。

検索結果 合計:4893件 表示位置:301 - 320