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老後を健康に過ごすには足の健康から始めよう/科研・楽天

 科研製薬は、足に関わる生活習慣の改善を目的に、楽天モバイルとの共同プロジェクト「満足プロジェクト」で業務提携契約を締結した。このプロジェクトは、楽天モバイルの健康寿命延伸サポートサービス「楽天シニア」(現在300万ダウンロード/約7割が50代以上)を通じ、足のお悩みを把握すると同時に、足の健康に関する正しい情報を提供することで、健康満足度の向上に貢献することを目指すものである。両社は、このプロジェクト発足について、3月14日に都内でメディアセミナーを開催し、高齢者の運動器障害の観点からロコモティブシンドローム(以下「ロコモ」と略す)についての概要と足の悩みの観点から巻爪、白癬などの診療と満足プロジェクトの概要が紹介された。また、科研製薬では、2025年3月27日に医療従事者向けのウェブサイト「KAKEN Medical Pro」を開設し、各製品情報に加え、足の健康を守るための「足」の疾患に関連する情報も発信し、医療従事者をサポートする。ロコモサインで早期にロコモを察知 「『満足』はロコモ対策の必要条件だ」をテーマに大江 隆史氏(NTT東日本関東病院 院長/ロコモチャレンジ!推進協議会 委員長)が、高齢者の運動器障害の原因となるロコモとその判定方法、約2万人のロコモに関するアンケート結果の概要について説明した。 「『ロコモ』とは、運動器の障害により、移動機能が低下した状態で、進行すると要介護になる危険が高いもの」と定義されている。ロコモが進展することで、生活活動や移動制限を受け、さらに疼痛や柔軟性の低下、筋力低下を来し、骨粗鬆症や変形性関節症、サルコペニアなどにいたるとされる。 そのために早くロコモに気付くことが重要となるが、ロコモの評価には、「立ち上がりテスト」「2ステップテスト」「ロコモ25」の3つテストの総合でロコモ度1~3で判定する。また、最近の研究からロコモになる前の最初の兆候も明らかになっている。とくに活動性について、「階段の昇降」「急ぎ足で歩く」「休まず歩き続ける」「スポーツや踊り」の1つにでも困難の自覚があれば、「ロコモサイン」として、早期の診療介入が望まれるという。 では、実際「ロコモ」はどの程度認知されているのであろうか。2024年12月~2025年1月にかけて楽天シニアアプリ登録者などで行われたアンケート結果を説明した(回答数1万9,299人)。 主な結果は以下のとおりだった。・「ロコモという言葉の認知度について」は、「はい」が50.2%、「いいえ」が48.9%だった。・「1日の歩数について」は、4,000~6,000歩が33.9%、8,000歩以上が26.3%、6,000~8,000歩が17.7%の順だった。・6,000歩以上歩く人では年齢によるロコモ度の差がなくなっていた。・「筋トレなどのやや強めの運動を1週間に合計どれくらいしているか」では、20分未満が67.2%、20分以上1時間未満が14.5%、2時間以上が7.7%の順で多かった。・やや強めの運動を1週間に1時間20分以上する人では年齢によるロコモ度の差がなくなっていた。爪は小さな運動器 「皮膚(爪)と足の健康との関係」をテーマに高山 かおる氏(川口総合病院 皮膚科 主任部長/足育研究会 代表理事)が、爪や足の皮膚からくる歩行障害や足爪に関するアンケート結果を説明した。 高齢者では、歩行障害、摂食障害、認知障害の順で活動が阻害される。歩行障害では、とくに爪の役割は重要だという。爪には、「指先の感覚を敏感にする」、「指先の保護」、「力のバランスをとる」という3つの働きがある。そして、足のトラブルは、皮膚と爪に表われ、日本臨床皮膚科学会の調査では、6人に1人が足爪に水虫が、7人に1人に足に水虫が、13人の1人に水虫があると報告されている。足爪のトラブルと転倒の関係では、足に何らかの問題があると、過去1年間に転倒しているリスクが高いこと、母趾爪甲の変形や肥厚は下肢機能低下をもたらすなどの報告がある。 つまずいたときに、姿勢制御の機能として、足底の触圧覚と足趾(と爪)による底面把持力により、転倒をしないように制御することから、爪に異常があると踏ん張りができないことから「爪は小さな運動器」とも言うことができる。 続いて「足爪の健康の意識調査」について、2024年9~10月にかけて楽天シニアアプリ登録者などに行われたアンケート結果を説明した(回答数2万984人)。 主な結果は以下のとおりだった。・「現在の爪の状態について」(複数回答)は、「異常なし」が50%、「水虫または過去に既往がある」が15%、「爪の肥厚またはボロボロと欠けた」が14%の順で多かった。・「アプリのコラム読後、医療機関へ受診しようと思ったか」では、「受診しない」が51%、「爪水虫に感染したら受診」が34%、「すぐ受診したい」が9%の順で多かった。・受診者または受診希望者に「なぜ治療したいか」(複数回答)では、「爪をきれいにしたい」が29%、「家族にうつさないため」が26%、「他の部位への感染を防ぐため」が24%の順で多く、「転倒リスク軽減のため」も9%でみられた。・「水虫が治ったら何をしたいか」では、「隠さずに足を出す」が21%、「いろんな人と交流したい」が20%、「履きたい靴を履きたい」が16%の順で多かった。・「健康記事のどの項目に1番興味を持ったか」では、「足爪の健康が健康寿命のカギ」が26%、「足爪、きれいに洗えていますか」が22%、「爪水虫はカビの1種」が14%の順で多かった。 おわりに高山氏は、「足爪を治療し、手入れすることで、きちんと歩く機能を維持し、健康寿命を延伸してもらいたい」と思いを語り、レクチャ-終えた。 この後のパネルディスカッションでは、足の健康啓発にこうしたアプリの利活用、複数の診療科連携による下肢機能維持などの提案がなされた。また、将来的に爪の画像を送ることでできるリモート診断やAI診断の可能性、集積されたビックデータを活用した健康指導なども期待したいと展望が語られた。 今回、科研製薬と楽天モバイルが提供する「満足プロジェクト」では、セミナー開催や「楽天シニア」内でのコラム掲載などを通じ、「歩く健康」をテーマとした足に関するさまざまな疾患の啓発活動のほか、今後、足に関する情報発信を強化するとともに、協働で健康寿命の延伸を目的とした実証事業なども実現するとしている。

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いよいよ本丸!病態把握と鑑別にChatGPTを使う【誰でも使えるChatGPT】第2回

皆さん、こんにちは。近畿大学皮膚科の大塚です。前回は、Googleレビューの辛辣なコメントに、ChatGPTを用いて感情的にならずに対応するためのプロンプトをご紹介しました。クリニックに寄せられる不条理なクレームに対して、冷静かつ誠実な回答を自動的に生成することで、医療現場の負担を軽減する活用法を提案しましたが、いかがでしたでしょうか。さて、今回はシリーズ第2回として、より直接的な臨床場面での活用例をご紹介したいと思います。前回は「口コミ対応」に焦点を当てましたが、今回は日常の診療行為、つまり「病態把握と鑑別診断」を助けるためのプロンプトです。医療現場では、患者さんの主訴や随伴症状などを総合的に判断し、鑑別診断を考える作業が不可欠です。とりわけ皮膚科では、「似ているものの、まったく異なる疾患」が多く存在し、一般内科や他科領域に及ぶ症候を伴うことも少なくありません。こうしたとき、ChatGPTに相談することで、見落としがちな疾患や、一般的な鑑別疾患を素早くリストアップすることができます。もちろん、最終的な責任は医師である私たち自身にあり、AIが示す情報をうのみにしてはなりません。しかし、情報整理の一助として、あるいは診断プロセスを考える際の「ブレーンストーミング・パートナー」として、ChatGPTを使う手はあると思います。関連サイトChatGPT(臨床症状)から考えられる鑑別診断は?ここで、(臨床症状)の部分には、実際に手元にある患者さんの主訴や身体所見を具体的に入力します。たとえば、「顔面に境界明瞭な紅斑が出現し、そう痒と軽度の落屑を伴う」といった皮膚症状を入力することで、ChatGPTはその記述を基に鑑別診断リストを提案してくれます。20代女性、頬部に2週間続く境界明瞭な紅斑と軽度の落屑があり、そう痒感を訴えています。皮疹は環状を呈し、拡大傾向にあり、中心部はやや色素沈着が生じています。このような臨床所見から考えられる鑑別診断を、一般的な皮膚科疾患を中心に列挙し、それぞれの疾患について特徴的な所見や鑑別のポイントを簡潔に示してください。以下がChatGPTからの想定回答例です。この症例の臨床所見(頬部の境界明瞭な紅斑、軽度の落屑、そう痒感、環状の拡大傾向、中心部の色素沈着)から考えられる主な鑑別診断を以下に列挙し、それぞれの特徴的所見と鑑別ポイントを示します。白癬(体部白癬)環状紅斑、辺縁部の微細落屑が典型的。KOH検査で菌要素の確認が可能。乾癬境界明瞭な紅斑と落屑が特徴だが、環状配列はややまれ。肘・膝伸側や頭皮も要注意。紅斑性狼瘡(頬部紅斑)蝶形紅斑など特有の分布があり、日光過敏症や関節痛など全身所見を確認。類乾癬(pityriasis rosea)クリスマスツリー様配列や母斑を確認。軽度のそう痒が多い。多形滲出性紅斑病変がターゲット状を呈することある。他の全身症状や粘膜病変の有無もチェック。脂漏性皮膚炎頭皮や鼻唇溝など脂漏部位での落屑性紅斑が多いが、環状になることは少ない。こちらの頭の中になかった鑑別診断や、追加で確認すべき検査所見を思い出すきっかけになります。また、これに「鑑別を絞るために必要な追加情報」や「検査のオプション」などを尋ねるプロンプトを続けて入力することで、さらに洗練させることができます。今回のプロンプトは、クリニックや病院で日々行われる「鑑別診断の初期スクリーニング」をサポートするためのものです。ChatGPTを医師の「セカンドオピニオン的な存在」として活用することで、見落としを減らし、より効率的で的確な診療プロセスを追求する手掛かりとなるでしょう。次回からは、さらに一歩進んで、治療戦略やガイドラインに基づくマネジメントプランをChatGPTに助言させる活用法など、より専門的な使い方をご紹介していく予定です。お楽しみに。

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15の診断名・11の内服薬―この薬は本当に必要?【こんなときどうする?高齢者診療】第5回

CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン」で2024年8月に扱ったテーマ「高齢者への使用を避けたい薬」から、高齢者診療に役立つトピックをお届けします。老年医学の型「5つのM」の3つめにあたるのが「薬」です。患者の主訴を聞くときは、必ず薬の影響を念頭に置くのが老年医学のスタンダード。どのように診療・ケアに役立つのか、症例から考えてみましょう。90歳男性。初診外来に15種類の診断名と、内服薬11種類を伴って来院。【診断名】2型糖尿病、心不全、高血圧、冠動脈疾患、高脂血症、心房細動、COPD、白内障、逆流性食道炎、難聴、骨粗鬆症、変形性膝関節症、爪白癬、認知症、抑うつ【服用中の薬剤】処方薬(スタチン、アムロジピン、リシノプリル、ラシックス、グリメピリド、メトホルミン、アルプラゾラム、オメプラゾール)市販薬(抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、便秘薬)病気のデパートのような診断名の多さです。薬の数は、5剤以上で多剤併用とするポリファーマシーの基準1)をはるかに超えています。この症例を「これらの診断名は正しいのか?」、「処方されている薬は必要だったのか?」このふたつの点から整理していきましょう。初診の高齢者には、必ず薬の副作用を疑った診察を!私は高齢者の診療で、コモンな老年症候群と同時に、さまざまな訴えや症状が薬の副作用である可能性を考慮にいれて診察しています。なぜなら、老年症候群と薬の副作用で生じる症状はとても似ているからです。たとえば、認知機能低下、抑うつ、起立性低血圧、転倒、高血圧、排尿障害、便秘、パーキンソン症状など2)があります。症状が多くて覚えられないという方にもおすすめのアセスメント方法は、第2回で解説したDEEP-INを使うことです。これに沿って問診する際、とくにD(認知機能)、P(身体機能)、I(失禁)、N(栄養状態)の機能低下や症状が服用している薬と関連していないか意識的に問診することで診療が効率的になります。処方カスケードを見つけ、不要な薬を特定するさて、はっきりしない既往歴や薬があまりに多いときは処方カスケードの可能性も考えます。薬剤による副作用で出現した症状に新しく診断名がついて、対処するための処方が追加されつづける流れを処方カスケードといいます。この患者では、変形性膝関節症に対する鎮痛薬(NSAIDs)→NSAIDsによる逆流性食道炎→制酸薬といったカスケードや、NSAIDs→血圧上昇→高血圧症の診断→降圧薬(アムロジピン)→下肢のむくみ→心不全疑い→利尿薬→血中尿酸値上昇→痛風発作→痛風薬→急性腎不全という流れが考えられます。このような流れで診断名や処方薬が増えたと想定すると、カスケードが起こる前は以下の診断名で、必要だったのはこれらの処方薬ではと考えることができます。90歳男性。初診外来に15種類の診断名と、内服薬11種類を伴って来院。【診断名】2型糖尿病、心不全、高血圧、冠動脈疾患、高脂血症、心房細動、COPD、白内障、逆流性食道炎、難聴、骨粗鬆症、変形性膝関節症、爪白癬、認知症、抑うつ【服用中の薬剤】処方薬(スタチン、アムロジピン、リシノプリル、ラシックス、グリメピリド、メトホルミン、アルプラゾラム、オメプラゾール)市販薬(抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、便秘薬)減薬の5ステップ減らせそうな薬の検討がついたら以下の5つをもとに減薬するかどうかを考えましょう。(1)中止/減量することを検討できそうな薬に注目する(2)利益と不利益を洗い出す(3)減薬が可能な状況か、できないとするとなぜか、を確認する(4)病状や併存疾患、認知・身体機能本人の大切にしていることや周辺環境をもとに優先順位を決める(第1回・5つのMを参照)(5)減薬後のフォローアップ方法を考え、調整する患者に利益をもたらす介入にするために(2)~(4)のステップはとても重要です。効果が見込めない薬でも本人の思い入れが強く、中止・減量が難しい場合もあります。またフォローアップが行える環境でないと、本当は必要な薬を中断してしまって健康を害する状況を見過ごしてしまうかもしれません。フォローアップのない介入は患者の不利益につながりかねません。どのような薬であっても、これらのプロセスを踏むことを減薬成功の鍵としてぜひ覚えておいてください! 高齢者への処方・減量の原則実際に高齢者へ処方を開始したり、減量・中止したりする際には、「Stand by, Start low, Go slow」3)に沿って進めます。Stand byまず様子をみる。不要な薬を開始しない。効果が見込めない薬を使い始めない。効果はあるが発現まで時間のかかる薬を使い始めない。Start lowより安全性が高い薬を少量、効果が期待できる最小量から使う。副作用が起こる確率が高い場合は、代替薬がないか確認する。Go slow増量する場合は、少しづつ、ゆっくりと。(*例外はあり)複数の薬を同時に開始/中止しない現場での実感として、1度に変更・増量・減量する薬は基本的に2剤以下に留めると介入の効果をモニタリングしやすく、安全に減量・中止または必要な調整が行えます。開始や増量、または中止を数日も待てない状況は意外に多くありませんから、焦らず時間をかけることもまたポイントです。つまり3つの原則は、薬を開始・増量するときにも有用です。ぜひ皆さんの診療に役立ててみてください! よりリアルな減薬のポイントはオンラインサロンでサロンでは、ふらつき・転倒・記憶力低下を主訴に来院した8剤併用中の78歳女性のケースを例に、クイズ形式で介入のポイントをディスカッションしています。高齢者によく処方される薬剤の副作用・副効果の解説に加えて、転倒につながりやすい処方の組み合わせや、アセトアミノフェンが効かないときに何を処方するのか?アメリカでの最先端をお話いただいています。参考1)Danijela Gnjidic,et al. J Clin Epidemiol. 2012;65(9):989-95.2)樋口雅也ほか.あめいろぐ高齢者診療. 33. 2020. 丸善出版3)The 4Ms of Age Friendly Healthcare Delivery: Medications#104/Geriatric Fast Fact.上記サイトはstart low, go slow を含めた老年医学のまとめサイトです。翻訳ソフトなど用いてぜひ参照してみてください。実はオリジナルは「start low, go slow」だけなのですが、どうしても「診断して治療する」=検査・処方に走ってしまいがちな医師としての自分への自戒を込めて、stand by を追加して、反射的に処方しないことを忘れないようにしています。

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094)「外来で感じるメディアの影響」【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第94回 「外来で感じるメディアの影響」ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆ジメジメする夏はカビの季節。皮膚科では、水虫の患者さんがぐっと増えます。だいたいは足の痒み、皮むけ、プツプツ(小水疱)など、皮膚トラブルの患者さんですが、中にはチラホラと爪のお悩みも。爪の水虫の場合、かゆみなどがなく、見た目の変化だけなので、放置されてしまいがち。外来に貼ってある爪水虫のポスターなどをきっかけに、「これ、治りますか?」と受診されるパターンが割とあります。ある日の外来で、朝から爪水虫の相談が続いたことがありました。こちらが説明をするより先に、「飲み薬で治したい」と内服を希望する患者さんたち。「おや?」と思ったところ、どうやら前の日に、テレビ番組で爪水虫の特集があったようです。「爪の水虫は、飲み薬を飲まないと治らないと言っていた」と、患者さん談。「なるほどそれで、立て続けに相談があったのね〜」と腑に落ちました。テレビの影響力、皮膚科の外来をやっていても、時々こうしたところで感じますね。皆様のところでは、いかがでしょうか?それではまた、次の連載で。

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プライベートパーツを診る!

半分アトラス、臨床写真500枚超!「皮膚科の臨床」66巻7号(2024年6月臨時増刊号)“プライベートパーツ”疾患を網羅した豊富なアトラスと、エキスパートによる“プライベートパーツ”診療の注意点、鑑別診断、治療法などの解説からなる本特集。梅毒やエムポックスなど性感染症の最新トピックスも。貴重な臨床写真を眺めて学ぶもよし、興味のあるテーマから読み進めるもよし。皮膚科医のみならず外陰部疾患を診るすべての方へ。永久保存版の1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するプライベートパーツを診る!定価8,800円(税込)判型B5判頁数244頁発行2024年6月編集「皮膚科の臨床」編集委員会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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6月4日 水虫治療の日【今日は何の日?】

【6月4日 水虫治療の日】〔由来〕「水虫」の「む(6)し(4)」の語呂合わせと、水虫を患う人が急増する入梅の時期であることから、水虫の早期治療の大切さや治療啓発を目的に大源製薬株式会社(兵庫・尼崎市)が制定。関連コンテンツ知っておきたい皮膚真菌症の診療とガイドライン【診療よろず相談TV】相互作用が少なく高齢者にも使いやすい経口爪白癬治療薬「ネイリンカプセル100mg」【下平博士のDIノート】水虫の直接鏡検で菌体を見つけるコツ【Dr.デルぽんの診察室観察日記】爪白癬【患者説明用スライド】「爪白癬は外用薬で治す」は誤解?

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「負担は増える一方…」、医局に残るかを悩む中堅医師に大塚氏の答えは?【Dr.大塚の人生相談】

地方都市の大学病院で皮膚科医をしています。専門医取得済み、学位のめども付きましたが、今後の進路に迷っています。現在ベットフリーの大学院4年生で、来年大学での臨床復帰を控えています。働き方改革と言えば聞こえはよいですが、病理も見ず、文献での調べ物もせず、定時に帰る医員が地方と言えど皮膚科人気の後押しもあり、自分の大学院在学中に3人4人と増えていき、中堅学年として復帰する際に明らかに自分への負担が増えることが目に見えています。大学でもっといろいろな症例も含めて勉強したいという気持ちはある反面、関連病院も少なく、退官の近い教授を船頭にしながらこの医局に残るべきなのか、継承開業等新しい道を模索しようかなどと考えてしまいます。大塚先生のような素晴らしい志をお持ちのトップばかりではないこの日本の医局制度、皮膚科界隈の中で、先生が同じような立場であった際に医局、大学に残るとしたらどのようなことをお考えになるかもしよろしければお聞かせください。P.S. 先生の半実話著書第2弾、心より楽しみにしております。学会でもしお時間おありでしたら『白い巨塔が真っ黒だった件』にサイン頂けたら泣いて喜びます。(今回の相談者:あまりりすさん)病院で勤務していると、「なんでこんなになるまで放っておいたの?」と思わず言いたくなるような患者さんが来ますよね。皮膚科であれば、有棘細胞がんや乳房外パジェット病などの悪性腫瘍が多いような印象です。下着を脱いでもらったら、においとともに一部自壊した握りこぶしくらいのがんが現れ、「なんでこんなになるまで放っておいたんですか?」と前述の言葉を投げかけたくなる経験はあるんじゃないでしょうか?がんの場合、放置すれば命に関わりますが、これが爪白癬だったら状況も変わります。長年育て続けた爪白癬も、適切な治療をすれば爪は元通りに治ります。足の爪がガシガシになった患者さんを前に、「なんで放っておいたの?」と思うことはあるかもしれませんが、悪性腫瘍のときのような気持ちにはなりませんよね。治療すれば治るわけですから。前置きが長くなりましたが、ぼくからのアドバイスは「心のしこりになるような我慢はするな」です。程よい我慢は人間の成長につながります。筋トレも苦しくなければ筋肥大は起きません。でも、限度を超えた我慢は怪我につながりますし、心にしこりを残します。我慢には、成長のために必要なポジティブな我慢と、しこりががん化する悪い我慢があるのです。あなたが医局に復帰したとしましょう。ワークライフバランスが充実した研修医と比べて、自分は家族との時間も犠牲にして週末も病棟管理をしている。だんだんと、働かない研修医に腹が立ってくるわけです。小言の一つも言いたいけれども、言えばパワハラになってしまうこの時代、確実にあなたの心にしこりが生まれます。そのうち、あなたが許せないような事件も起きるかもしれません。「なんでこいつらのために自分が働かなきゃいけないのか!」ここまで来ちゃうと、しこりは癌化します。若手を教育しようと思わなくなりますし、困っていても手伝ってあげなくなります。癌化した怨念で、組織そのものがダメになってしまう危険性が出てきます。本来、怒りをぶつけるべき相手は、働き方改革に従って勤務する研修医ではないですよね?彼らは新しく決められた環境での最適解を求めているだけで、上の世代がどうだったかとかは「知らんがな」なんです。あなたが怒るべき相手は、不完全な制度を作った国であり、正しい対策を取れなかった組織です。決して、あなたの後輩ではないと思うんです。働き方改革前と後の世代が断絶したら、日本の医療は成り立ちません。上の世代が下の世代に対して、意地悪しようなんて思う組織は終わりです。衰退しかありません。大学に残って仕事を続けるのであれば、しこりががん化する前に辞めることをおすすめします。あなたは間もなく医局で決定権を持つような人間になるはずです。そこで大事な判断をするとき、怨念が含まれるのだけは避けて欲しいのです。気概を持って、若い世代と頑張ろうと思えるのなら、多少辛くても楽しい医局生活を送れるでしょう。それにね、頑張りたい若手もちゃんといますよ。もしかしたら、頑張ることが言い出しにくい環境なだけかもしれないですし、仕事を続けていくうちに楽しくなって頑張る子も出てくるはずです。そういう小さな芽を見つけて育てることも、やりがいのある仕事だと思います。後輩が成長した姿をみると嬉しいですよ。拙著を読んでいただけたようなのでわかると思いますが、教授選に関してはぼくの心のしこりは癌化しています(笑)。こうなっちゃいけないという、悪い見本だと思ってくださいな。ぼくのサインでよければいつでも喜んで。

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事例043 クレナフィン爪外用液10% 7.12gの査定【斬らレセプト シーズン3】

解説高血圧症で通院中の患者から「足の爪白癬にかかる薬が欲しい」と相談を受けました。目視で爪白癬を確認し、他院で真菌検査をされたことを患者に確認し、エフィナコナゾール(商品名:クレナフィン爪外用液)を当院で投与したところ、多くの場合に病名不足を示すA事由(医学的に適応と認められないもの)にて査定になりました。査定理由を調べるために添付文書をみました。効能または効果に関連する注意に「直接鏡検又は培養等に基づき爪白癬であると確定診断された患者に使用すること」と記載されていました。レセプトには、「他院で検査済み」とコメントの記入があります。査定理由が見当たらないために、まずは他院の査定状況を調べてみました。複数医療機関において審査支払機関から「2年以内に細菌顕微鏡検査を行っていない場合、(クレナフィン投与は)医学的に必要性を認められない」との指摘があることがわかりました。今回の査定は、いつ検査が行われたのか不明だったために、この規定が適用され、病名不足ではなく、医学的に保険診療上の適用とならないと判断されたものと推測しました。医師には、検査の裏付けがない投与はできないことを伝え、投与が必要な場合には自院で検査を行うか、専門医への紹介をお願いしました。レセプトチェックシステムでは対応が遅れるために、薬剤処方時に検査の施行が必須であることを表示させて査定対策としました。なお、クレナフィン爪外用液7.12gについては、必要とする部位がレセプトに表示されていない場合、最大3本を超えた部分が認められていないことを申し添えます。

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抗真菌薬の過剰処方が薬剤耐性真菌感染症増加の一因に

 米国では、医師が皮膚症状を訴える患者に外用抗真菌薬を処方することが非常に多く、それが薬剤耐性真菌感染症の増加の一因となっている可能性のあることが、米疾病対策センター(CDC)のJeremy Gold氏らによる研究で示唆された。この研究結果は、「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」1月11日号に掲載された。 抗真菌薬に耐性を示す白癬(カビの一種である皮膚糸状菌を原因菌とする感染症)は、新たに現れつつある非常に大きな脅威の一つである。例えば、南アジアでは近年、外用や経口の抗真菌薬が効かない白癬が大流行した。このような薬剤耐性白癬の症例は米国の11の州でも確認されており、患者には広範囲に及ぶ病変が現れ、診断が遅れる事態が報告されているという。 抗菌薬の乱用が薬剤耐性細菌の増加につながるように、真菌も抗真菌薬に曝露すればするほど、薬剤耐性真菌が自然に増えていく。CDCのチームは、世界中で報告されている薬剤耐性真菌感染症の増加は、外用の抗真菌薬の過剰処方が原因ではないかと考え、2021年のメディケアパートDのデータを用いて、外用抗真菌薬の処方状況を調べた。データには、抗真菌薬(ステロイド薬と抗真菌薬の配合薬も含める)の処方箋の数量や処方者などに関する情報が含まれていた。 その結果、2021年にメディケアパートD受益者に処方された外用抗真菌薬の件数は645万5,140件であることが明らかになった。最も多かったのは、ケトコナゾールの236万4,169件(36.6%)、次いでナイスタチンの187万1,368万件(29.0%)、クロトリマゾール・ベタメタゾンの94万5,838件(14.7%)が続いた。101万7,417人の処方者のうち、13万637人(12.8%)が外用抗真菌薬を処方していた。645万5,140件の処方箋の40.0%(257万9,045件)はプライマリケア医の処方によるものだったが、処方者1人当たりの処方件数は皮膚科医で最も多く(87.1件)、次いで、足病医(67.2件)、プライマリケア医(12.3件)の順だった。さらに、645万5,140件の処方箋の44.2%(285万1,394件)は、処方数が上位10%に当たる1万3,106人の処方者により処方されたものだった。 Gold氏らは、抗真菌薬処方にまつわる大きな問題は、ほとんどの医師が皮膚の状態を見ただけで診断しており、「確認診断検査」を行うことがほとんどない点だと指摘する。さらに研究グループは、ほとんどの外用抗真菌薬が市販されていることを指摘した上で、「この研究結果は、おそらくは外用抗真菌薬の過剰処方の一端を示しているに過ぎない」との見方を示している。外用抗真菌薬の中でも、特に、ステロイド薬と抗真菌薬を組み合わせたクロトリマゾール・ベタメタゾンの多用は、薬剤耐性白癬の出現の大きな要因であると考えられている。この薬は、鼡径部、臀部、脇の下など、皮膚が折り重なる部分に塗布すると、皮膚障害を引き起こす可能性がある上に、長期にわたって広範囲に使用すると、ホルモンバランスの異常を引き起こすこともあると、研究グループは説明している。 こうしたことを踏まえて研究グループは、「真菌による皮膚感染症が疑われる場合、医療従事者は慎重に抗真菌薬を処方すべきだ」と結論付けている。さらに、「過剰処方や薬剤耐性真菌感染症の危険性を減らすために、医師は外用抗真菌薬や抗真菌薬・ステロイド薬配合薬の正しい使用法について患者を教育すべきだ」と付言している。

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「爪白癬は外用薬で治す」は誤解?

 昨年6月にイムノクロマト法を用いた白癬菌抗原キット「デルマクイック爪白癬」が発売されたことを契機に、以前に比べ、内科医でも爪白癬の診断に対応できるようになったのをご存じだろうか。今回、常深 祐一郎氏(埼玉医科大学医学部皮膚科 教授)が『本邦初の白癬菌抗原検査キットによる爪水虫診断と正しい治療法~爪水虫診療は新たなステージへ~』と題し、今年4月に発表された爪白癬の治療実態調査の結果、新たな抗原キットなどについて説明した(佐藤製薬・マルホ共催メディアセミナー)。爪白癬は外用薬で治せる、という誤解 日本人の10人に1人は爪白癬に罹患しており、その多くが高齢者である。高齢者では足の爪白癬が転倒リスク1)やロコモティブシンドローム、フレイルの原因になるほか、糖尿病などの合併症を有する患者においては白癬病変から細菌感染症を発症し、蜂窩織炎や時には壊死性筋膜炎を発症するなど命を脅かす存在になる場合もあるため、完全治癒=臨床的治癒(爪甲混濁部の消失)+真菌学的治癒(直接鏡検における皮膚糸状菌が陰性)を目指す必要がある。 爪白癬の治療は診断さえついてしまえば、外用薬を処方して継続を促せば…と思われることが多いのだが、その安易な判断が「治療の長期化につながり、結局治癒に至らない」と常深氏は指摘した。外用薬は白癬菌が爪の表面に存在する表在性白色爪真菌症(SWO)には効果が高いが、その他の病型では経口抗真菌薬が優れているという。また、「遠位側縁爪甲下爪真菌症(DLSO)の軽症であれば外用薬でも治せると考えられているが、治癒まで時間を要し、その間に次に述べるように脱落が多くなってしまうことから、軽症の間に経口薬で治癒させることが望ましい。もちろんDLSOの中等症以上では経口薬が必要であるし、近位爪甲下爪真菌症(PSO)、全異栄養性爪真菌症(TDO)では経口薬による治療が推奨される」と、病態ごとの剤型の使い分けが重要であることに触れた。皮膚科専門医でも、経口薬を避ける傾向に そうはいっても、とくに高齢者への経口薬処方は、ポリファーマシーの観点や肝機能への影響から敬遠される傾向にある。これに対し、同氏は治療継続率のデータを引用2)し、「経口薬のほうが外用薬より治療継続率が高く、脱落しにくいことが明らかになっている。外用薬の場合は投与開始から1ヵ月時点ですでに4割強が脱落してしまう。一方で、経口薬は投与開始3ヵ月時点でも6割の人が継続している。爪白癬治療に年齢は関係ない」と説明した。 上述のように、治癒率や患者の治療継続率からも爪白癬への経口薬処方が有効であることは明確だが、診断に自信がないと、外用薬で様子を見てしまうということが多そうだ。また、皮膚科専門医は顕微鏡を用いたKOH直接鏡検法で診断することができるが、他科の医師においては視診で判断していることが多いのが実情である。この点について、「皮膚科医であっても視診のみで診断を行うと30%程度は誤った判断をするため3)、やはり検査は必要。爪甲鉤弯症などが爪白癬と誤診されることもある4)」と述べたうえで、「経口薬は外用薬と比較して検査で確定診断がつかないと処方しづらく、“本当に薬を処方していいのか”という不安が処方医に生じる」と医療者側の問題点を挙げた。<爪白癬と誤診されやすい疾患>・掌蹠膿疱症の爪病変・緑色爪(green nail)・黄色爪症候群(yellow nail syndrome)・爪甲鉤弯症・厚硬爪甲 昨年に上市された検査法『イムノクロマト法』は迅速および簡便で感度が高く、皮膚科専門医が行うKOH直接鏡検法や真菌培養法に比べ、技術や検査時間も不問であることから視診による誤診も防ぐことが可能である。同氏は「鏡検できる医師がいない場合、顕微鏡がない施設や往診先での検査に適しており、また、鏡検での見落としを防ぐために検査を併用するのも有用」と述べ、皮膚科専門医ならびに一般内科医に向けて、「精度の高い検査を患者に提供して確定診断が得られた後に適切な薬剤を処方する、という正しい診断フローに沿った治療にもつながる」とコメントした。 最後に同氏はクリニカル・イナーシャ(clinical inertia)5)という言葉に触れ、「これは直訳すると“臨床的な惰性or慣性”。患者が治療目標に達していないにも関わらず治療が適切に強化されていない状態を意味する」と定義を説明し、「患者側がクリニカル・イナーシャに陥る要因は、治療効果の正しい知識不足や経口薬による副作用への懸念、飲み合わせへの懸念などが漠然とある。一方、医師側の要因には完治が必要であるとの認識不足、治癒への熱意や責任感不足などがあり、両者のクリニカル・イナーシャが相乗的に負の方向に働き、外用薬が漫然と使用されてしまう。しかし、爪白癬の治療意義、新たな検査法や経口薬の有用性を理解していけば解決できる」と締めくくった。

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硬化性萎縮性苔癬〔LSA:lichen sclerosus et atrophicus〕

1 疾患概要■ 概念・定義外陰部に好発する難治性炎症性疾患である。男性の陰茎部に生じるbalanitis xerotica obliterans、女性の外陰部にみられるkraurosis vulvaeやhypoplastic dystrophyと呼ばれる疾患も本症と同義である。■ 疫学性差は男女比が1:9と、圧倒的に女性の罹患者が多い。初経前と閉経後の2つの年齢層に発症のピークがある。男性例は30~50歳の壮年層に発症頻度が高い。■ 病因不明であるが、Borrelia burgdorferi感染の関与が示唆されたことはあるが、菌体が同定された報告は無く、現在では否定的と考えられている。■ 症状女性外陰部の病変は、象牙色調の浸潤を触れる硬化性または萎縮性の紅色局面が主体で、びらん、水疱、紫斑、出血を伴うことがある(図1)。図1 女性外陰部の硬化性苔癬大陰唇から膣口にびらん、苔癬化、脱色素斑が混在する。劇痒と形容される強い瘙痒感や、灼熱感を訴えることが多い。約3割で肛門周囲にも病変がみられ、外陰部から肛門周囲にかけて「8の字型」と称される連続病変を呈することがある(図2)。図2 外陰部から肛囲までの8の字病変肛門部では萎縮した白色調の病変が広がり、さまざまな程度で色素脱失や色素沈着が混在することが多い。同部の皮膚粘膜境界部に生じた場合には、尿道口や腟口部の狭窄を来たしうる。経過中に瘢痕を生じやすく、進展すると癒着による小陰唇の消失や陰核包皮の癒着・閉鎖、陰核の埋没などを来す。通常は腟や子宮頸部などの粘膜部位は侵さないが、辺縁の皮膚病変からびらん、亀裂、腟口部の狭窄が進展した場合には、自発痛や排尿痛、性交痛を生じることがある。その一方、高齢者では無症状の場合もあり、健診で初めて指摘されることもある。男性例は、成人では包皮、冠状溝、亀頭部、小児では通常包皮に生じる。女性例に比べて瘙痒が主症状になることは少なく、陰茎や肛囲の病変はまれである。高度の包茎や癒着による尿道口の狭小化のため、排尿異常を生じることがある。■ 分類性差を問わず、ほとんどが外陰部のみに限局する。外陰部以外の病変が併存することや、外陰部外のみの症例もあるが、諸外国と比べてわが国では極めてまれである。■ 予後長期の罹患に伴って上皮系悪性腫瘍(ほとんどが有棘細胞がん)が本症の5~11%で出現し、最も予後に影響する。また、溶血性貧血、白斑、自己免疫性水疱症のような自己免疫疾患や臓器特異的な自己抗体が検出される症例が、おのおの全体の2割と4割に合併することが知られており、予後に関わるものもある。中でも甲状腺疾患が12%、次いで白斑が6%と多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 諸検査1)皮膚生検と病理組織学的所見病理組織学的に不全角化を伴う過角化、毛孔性角栓を伴う様々な厚さの表皮肥厚や液状変性を認め、完成期には萎縮して表皮突起が平坦化する。直下の真皮浅層では、毛細血管拡張やリンパ球を主体とする炎症細胞浸潤に加え、膠原線維が均一化した無構造物「硝子様均質化(ヒアリン化, hyalinization)」が特徴的である(図3)。生検組織の蛍光抗体直接法では、免疫グロブリンや補体の沈着は通常認めない。図3 外陰部硬化性苔癬の病理組織像過角化、表皮突起の不規則化と消失、真皮上層の毛細血管拡張とヒアリン化、リンパ球浸潤を特徴とする。2)血液学的所見一般血液・生化学検査は正常であることが多く、本疾患の診断や病勢把握に有益な保険適応内のバイオマーカーは存在しない。上述のように、10~30%に自己免疫異常(抗甲状腺抗体、抗BP180抗体など)を認めることがある。■ 鑑別疾患外陰部カンジダ症を含む股部白癬、扁平苔癬、乳房外パジェット病、粘膜類天疱瘡、限局性強皮症(モルフェア)、白斑、円板状ループスエリテマトーデスなどを鑑別する必要がある。■ 合併症進行すると尿道狭窄や性交障害など、排尿や外陰部の機能障害を来すことがある。女性外陰部の硬化性苔癬では7~11%、また表皮が肥厚した病変では約30%に有棘細胞がんが出現するとの報告がある(図4)。図4 有棘細胞がんを合併した女性外陰部の硬化性苔癬右大陰唇から小陰唇の病変部内に隆起性の腫瘤を認める。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 治療目標ほとんどの症例が難治であり、各種治療に難渋することが多い。長期にわたって症状のコントロールが不良な症例では局所発癌の頻度が高まるため、通常の治療に抵抗する場合は、まず症状の緩和とその維持を目指す。■ 治療内容1)初期治療局所へのステロイド外用剤が第1選択である。外陰部は他の部位と比べて薬の吸収率が良いものの(42倍 vs. 0.14~13倍:前腕内側の吸収率を1とした場合)、治療効果を優先して、欧米やわが国のガイドラインでは強めのステロイド外用剤の使用が推奨されている。掻爬行為によって症状が悪化するため、抗ヒスタミン薬などを併用して瘙痒のコントロールを行うこともある。2)治療後期症状が軽快したのちも無治療ではなく、保湿剤による外陰部の保護を継続することで、再燃やそのピークが抑えられる場合が多い。3)治療抵抗例保険適応外ではあるが、ステロイド外用に加えてタクロリムス含有軟膏の併用や、局所への光線療法が奏効する場合もある。男性の場合、既存の包茎が症状の遷延化を招くことが多いため、症状に応じて専門科への紹介を考慮する。4)合併症への治療硬化性苔癬における外科的治療は、悪性腫瘍合併例の病変部切除や尿道口狭窄例の尿道拡張術や尿道再建手術などに限って行う。4 今後の展望■ 治療外用療法が基本となるため、ステロイド以外の抗炎症作用ならびに免疫抑制効果をもつ外用剤が期待されている。上述したタクロリムス外用や活性型ビタミンD3外用剤、局所紫外線療法の奏効例が報告されている(本邦保険適用外)。全身療法ではシクロスポリンやバリシチニブ(JAK阻害薬)の内服が奏効した報告がある。■ 診断本症の確定診断には皮膚生検による病理組織所見の確認が必須であるが、女性の罹患者が多く、病変部がプライベートパーツであることから、生検が困難な症例も少なくない。患者血清中の細胞外基質extracellular matrix protein 1(ECM1)に対するIgG抗体を用いた血清診断が、非侵襲的かつ経過中の病勢の把握に有用バイオマーカーになる可能性が指摘されている。いまだ本抗体の病的意義は不明であり、今後の検討が待たれる。5 主たる診療科皮膚科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本皮膚科学会 硬化性萎縮性苔癬 診断基準・重症度分類・診療ガイドライン(医療従事者向けのまとまった情報)1)長谷川 稔ほか. 日皮会誌. 2016;126:2251-2257.2)強皮症・皮膚線維化疾患の診断基準・重症度分類・診療ガイドライン作成委員会.全身性強皮症・限局性強皮症・好酸球性筋膜炎・硬化性萎縮性苔癬の診断基準・重症度分類・診療ガイドライン 2017. 金原出版;2017.3)Lewis FM, et al. Br J Dermatol. 2018;178:839-853.4)Kirtschig G, et al. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2017;31:e81-e83.5)Oyama N, et al. Lancet. 2003;362:118-123.公開履歴初回2022年3月2日

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不眠症の爪白癬患者 薬剤師は何を見逃したか?【スーパー服薬指導(1)】

スーパー服薬指導(1)不眠症の爪白癬患者 薬剤師は何を見逃したか?講師:近藤 剛弘氏 / 元 ファイン総合研究所 専務取締役動画解説悩ましげな表情の女性が睡眠薬の処方箋を持って来局。処方理由を聞き出そうとした薬剤師に意外な返答が…

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事例033 爪白癬治療のエフィナコナゾ-ルで査定【斬らレセプト シーズン2】

解説事例では、爪白癬の患者に対してエフィナコナゾ-ル(商品名:クレナフィン)爪外用液10%を投与したところ、過剰としてB事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)が適用され査定となりました。査定された原因を探るために、エフィナコナゾ-ルの添付文書を確認してみました。効能または効果の項目に、「直接鏡検又は培養等に基づき爪白癬であると確定診断された患者に使用すること」と記載されていました。この記載から、初回投与時には検査で診断が確定していることが要件となります。レセプトには、検査が算定されていません。そのために、過剰として査定となったものでした。念のためにカルテを参照したところ、エフィナコナゾ-ル投与同日に「直接鏡検で確定診断」と記録がありました。直接鏡検査を実施したことが計算担当まで伝わっておらずに算定漏れとなっていました。この検査の算定漏れがエフィナコナゾ-ル査定の直接原因となっていたのです。算定漏れに起因する査定というダブルパンチでした。査定対策として、レセプトチェックシステムへのパターン登録を行い、診察室で行う検査に漏れが無いようにリストを作成して、医師に確実な伝達をお願いしました。

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052)水虫の直接鏡検で菌体を見つけるコツ【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第52回 水虫の直接鏡検で菌体を見つけるコツゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆皮膚科外来は繁忙期の夏に入り、水虫の患者さんが増えてきました。汗で蒸れやすく、素足で過ごす人が増えるこの季節、白癬菌にとっては絶好のパラダイス。足白癬を疑った場合、診察室でまずすべきは、直接鏡検で菌体を見つけることです。検査の前に抗真菌薬を使ってしまうと、正しい判断ができなくなってしまうので注意しましょう。それでは、鏡検でばっちり菌体を見つけるために必要な、検体採取のコツをご紹介します!(1)二次的病変や抗真菌薬の外用など、検査の阻害要因がある場合は時間を空ける足白癬では、細菌感染や接触性皮膚炎(かぶれ)などを併発している場合、菌体を見つけにくくなることがあります。前述のように、抗真菌薬を外用している場合も同様です。二次的病変がある場合はまずそちらを治療してから、抗真菌薬を使用している場合は外用を中止し、1~2週間空けてから再検査しましょう。(2)病変部と健常部の境目にある新鮮な鱗屑を狙って、複数箇所から多めに採取水虫の病変部は、外側へどんどん広がるため、輪を描くように丸くなっていると思います。菌体が一番多く存在するのは、まさにその辺縁部分。中心部の古い鱗屑には菌体があまり居ないので、できたての病変部から検体を採取しましょう!慣れてくると、少量の検体採取でも菌体を探り当てることができるようになりますが、顕微鏡をのぞいても菌体が見つけられなかったとき、「これだけ調べて居なかったのだから、陰性!」と胸を張って(?)言えるよう、検体はいつも複数箇所から多めに採取しています。(3)爪白癬の場合、病変部の場所(付け根or先端)で検体の採取方法が変わる表在性または近位部(爪の付け根)を侵すタイプの爪白癬では、爪の表層に菌体が存在するので、白濁部をメスなどで削り取るように採取します。一方、爪全体や遠位部(爪の先端)が白濁・肥厚して真っ白になるタイプの爪白癬は、伸びた爪先をニッパーなどで切り取ってから、爪下の角質を奥のほうからかき出すようにして採取します。爪白癬がまさに進行している爪の下の奥に菌体が多く存在するのです。(4)水疱があれば迷わず水疱蓋を採取する一番確実なのが水疱蓋の採取です。菌体を大量に観察できます! 無鉤セッシなどでちぎり取ってしまうと、周囲の健常な角質までむけてしまうため、眼科剪刀を押し当てるようにして、水疱蓋を刃先でつまんで挟むようにしながら切り取るとよいです。直接鏡検は検体採取が命! 上手に採取し、素早く確実に菌体を見つけましょう☆彡それでは、また~!

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エビデンスに基づく皮膚科新薬の治療指針

すぐに臨床に役立ち、新薬の動向と今後の展望も得られる皮膚科領域でこの数年間に上市された新薬あるいは今後上市が確実な新薬などの上手な使い方、情報を伝授。疾患別に「どんな薬か」「どこが新しいのか」「対象はどんな患者さんか」をはっきり示し、薬の臨床データのエビデンスや問題点もきっちり記載している。 臨床に役立つのはもちろん、皮膚科疾患における新薬の動向と今後の展望も情報として得られる。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    エビデンスに基づく皮膚科新薬の治療指針定価9,680円(税込)判型B5判頁数352頁発行2021年6月編集宮地 良樹(岡社会健康医学大学院大学学長/京都大学名誉教授)椛島 健治(京都大学皮膚科教授)電子版でご購入の場合はこちら

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浮腫による蜂窩織炎の再発予防、圧迫療法は有効か/NEJM

 下肢の慢性浮腫による蜂窩織炎がみられる患者の予防治療において、圧迫療法は保存的治療に比べ、蜂窩織炎の再発率が低く、蜂窩織炎による入院も抑制される傾向がみられることが、オーストラリア・Calvary Public Hospital BruceのElizabeth Webb氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年8月13日号に掲載された。下肢慢性浮腫は、蜂窩織炎のリスク因子とされる。蜂窩織炎の再発予防には、下肢の着圧衣類(弾性ストッキングなど)の日常的な使用が推奨されているが、その効果に関する臨床試験のエビデンスは乏しいという。予防効果を評価する単一施設非盲検無作為化試験 研究グループは、下肢の蜂窩織炎の予防における圧迫療法の有用性を評価する目的で、単一施設での非盲検無作為化試験を実施した(Calvary Public Hospital Bruceの助成による)。 対象は、試験前の2年間に、同一下肢の蜂窩織炎エピソードが2回以上あり、一方または両下肢の浮腫が3ヵ月以上持続し、蜂窩織炎の再発が認められる患者であった。 被験者は、下肢圧迫療法に加え蜂窩織炎の予防に関する研修を受ける群(圧迫群)、または研修のみを受ける群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。フォローアップは、6ヵ月ごとに、最長3年間または試験期間中に蜂窩織炎エピソードが45件発生するまで行われた。 主要アウトカムは、蜂窩織炎の再発とした。蜂窩織炎を発症した対照群の参加者は、圧迫群にクロスオーバーされた。副次的アウトカムには、蜂窩織炎に関連する入院や下肢容積、QOL評価が含まれた。蜂窩織炎エピソード:15% vs.40%、試験は有効中止に 2017年6月~2019年2月の期間に、84例が登録され、41例が圧迫群、43例は対照群に割り付けられた。全体の平均年齢は64.0±13.9歳、女性が49%で、平均BMIは41.0±9.9、浮腫罹患期間が5年以上の患者は63%であった。 ベースラインの慢性浮腫の寄与因子は、肥満が両群とも63%で最も多く、次いで手術/外傷が圧迫群34%、対照群30%、静脈圧上昇がそれぞれ37%および26%であった。併存疾患は、足白癬が圧迫群32%、対照群40%、糖尿病がそれぞれ24%および33%、慢性静脈不全が29%および26%、うっ血性心不全が24%および16%に認められた。 予定されていた中間解析の時点で、フォローアップ期間の範囲は0~511日で、中央値186日(圧迫群209日、対照群77日)だった。 この中間解析時に、蜂窩織炎エピソードは23件発生していた。このうち圧迫群が6例(15%)、対照群は17例(40%)であり(ハザード比[HR]:0.23、95%信頼区間[CI]:0.09~0.59、p=0.002、相対リスク[事後解析]0.37、95%CI:0.16~0.84、p=0.02)、主要アウトカムは圧迫群で有意に良好であった。 この知見に基づき、データ監視委員会の勧告により、本試験は有効中止となり、患者登録を終了して対照群の患者は圧迫群にクロスオーバーされた。 蜂窩織炎による入院は、圧迫群が3例(7%)、対照群は6例(14%)で認められた(HR:0.38、95%CI:0.09~1.59)。また、12ヵ月時の平均下肢容積は、圧迫群ではベースラインから181mL減少したが、対照群は60mL増加した(変化の群間差:-241mL、95%CI:-365~-117)。 12ヵ月時の四肢リンパ浮腫QOL(LYMQOL)の総合スコアの平均変化は圧迫群で良好であった(変化の群間差:-0.3点、95%CI:-0.6~-0.1)が、LYMQOLのQOLスコア(0.8点、-0.1~1.7)には差はなかった。また、EQ-5D-3Lの視覚アナログ尺度(8点、-5~16)およびEQ-5D-3Lの記述システムのスコア(0.8点、-0.4~2.1)の平均変化には、両群間に差はなかった。試験期間中に有害事象の発現はみられなかった。 著者は、「とくに、専門的なリンパ浮腫サービスへのアクセスがない環境で、蜂窩織炎の再発に対する圧迫療法の効果を明らかにするためには、より大規模で長期的な試験が必要である」としている。

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皮膚科医デルぽんのデルマな日常

連載でおなじみのデルぽん先生が放つ、笑いありタメになる話ありのコミックエッセイ!!皮膚科といえば、医療界いちのジミ(?)な存在。いまだテレビドラマの主役になったことはなく、命のやり取りをすることもほぼなし。そんな脇役に甘んじていた皮膚科ですが、ここに笑撃の一冊が誕生しました。著者のデルぽん先生は CareNet.comの連載でもおなじみの現役の女医さん。大の漫画好きが高じて、「医療あるある」をテーマにブログを始めたところ、大人気になりました。そんな4年にわたるブログ漫画を「皮膚科医vs.患者さん」「皮膚科のお仕事」「華麗なる(!?)医者の世界」「皮膚科医からのアドバイス」の章に分けて再構成し、新たにエッセイや漫画を書き下ろしたのが本書。皮膚科のみならず、他科のお医者さんや看護師さんにもぜひ読んでいただきたい一冊!著者・デルぽんより発刊のご挨拶皮膚科外来のオモシロ事件簿や、医療業界あるある話、皮膚科女医の日常と妄想など、患者さんに馴染みの深い皮膚科の世界を赤裸々に綴る、業界初(?)4コマコミックエッセイ本。日常診療に役立つ皮膚科豆知識や、患者さんによく訊かれる話題もとりあげています! エッセイあり、実用あり、笑いながらためになる(?) 外来の片隅に一冊、いかがでしょうか?画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。 皮膚科医デルぽんのデルマな日常定価1,300円 + 税判型A5判頁数128頁 発行2020年7月著者デルぽんAmazonでご購入の場合はこちら

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抗菌薬が十分量処方されていなかったため上乗せを提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第14回

 今回は、動物咬傷による皮膚軟部組織感染に対する抗菌薬の処方提案です。病状の改善や耐性菌を生み出さないためには抗菌薬を十分量投与する必要があります。医師の選択した抗菌薬の種類だけでなく、投与量も適切かどうか確認するクセをつけましょう。患者情報50歳、男性(外来)体  重:60kg基礎疾患:高血圧症、糖尿病、足白癬既 往 歴:とくになし主  訴:ペットの犬に噛まれた右手の疼痛、発熱直近の検査値:血清クレアチニン(Scr)0.9mg/dL推算CCr:83.3mL/min処方内容1.アムロジピン錠5mg 1錠 分1 朝食後2.シタグリプチン錠50mg 1錠 分1 朝食後3.テルビナフィンクリーム 10g 1日1回 足全体4.エフィナコナゾール液10% 3.56g 1日1回 爪全体5.アモキシシリン・クラブラン酸配合錠250RS 3錠 分3 毎食後本症例のポイント糖尿病患者さんは、感染症に罹患しやすく、重篤化しやすいため、十分量の抗菌薬が処方されているか慎重に確認する必要があります。今回の患者さんは、糖尿病の基礎疾患があり、動物咬傷による皮膚軟部組織感染と推察できますので、アモキシシリン・クラブラン酸配合錠250RS 3錠/日(アモキシシリンとして750mg/日)では治療効果が十分ではなく、1,500mg/日程度が必要と考ました。しかし、アモキシシリンが治療に有効な力価になるまで配合錠を増量すると、クラブラン酸が高用量になり過ぎてしまいます。高用量のクラブラン酸は下痢や嘔気などの消化器症状が増加する懸念がある一方で、抗菌効果の増強にはならないと指摘されていますので良いところなしです。そのため、アモキシシリンの用量を上げたい場合は、アモキシシリン・クラブラン酸配合錠を増量するのではなく、アモキシシリン単剤を追加してアモキシシリンの力価だけを増やすことがあります。アモキシシリン・クラブラン酸配合錠とアモキシシリン錠の先発品名から「オグサワ」と呼ばれる有名な治療方法です。海外製品のアモキシシリン・クラブラン酸配合錠の標準比は、アモキシシリン:クラブラン酸=4:1だが、日本製品(成人用)は2:1でアモキシシリンの配合比が低い。アモキシシリン・クラブラン酸配合錠250RS 3錠/日にアモキシシリン単剤250mg 3錠/日を追加することでアモキシシリン:クラブラン酸=4:1となり、クラブラン酸を増量せずに十分量のアモキシシリンを投与することができる。処方提案と経過処方医に想定される起炎菌と重症度を確認したところ、傷の深さや発熱などの症状から重症度は高めで、ブドウ球菌や嫌気性菌を考えているとのことでした。核心の用量については、逆に抗菌薬の十分量について質問を受けたので、上記のアモキシシリン250mg/回を追加することで十分な治療効果が見込め、腎機能も推算CCrから問題ない旨をお伝えしました。その結果、処方はアモキシシリン錠250mg 3錠 分3 毎食後をアモキシシリン・クラブラン酸配合錠に同日数分上乗せするよう指示を受けました。数日後、医師より患者さんの体調が回復したというご報告と、オグサワの使用経験がなく不安があったが今後の診療でも活用していきたいというコメントを頂きました。1)Gilbert DNほか編. 菊池賢ほか日本語版監修. <日本語版>サンフォード 感染症治療ガイド2019(第49版). ライフサイエンス出版;2019.2)オーグメンチン配合錠インタビューフォーム

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治療方針が明確に、「皮膚真菌症診療ガイドライン2019」

 2019年12月、日本皮膚科学会は「皮膚真菌症診療ガイドライン」を10年ぶりに改訂した。日本において、真菌感染症のなかでも、足白癬の有病率は人口の約21.6%、爪白癬では10.0%と推計される。この10年間に外用剤(クリーム、液剤、スプレー)や新たな内服薬が発売され、治療状況も変化しつつあるため、改訂した皮膚真菌症診療ガイドラインのポイントを紹介する。「皮膚真菌症診療ガイドライン2019」改訂のポイント 皮膚真菌症診療ガイドライン2019によれば、“保険診療上認められていない治療法や治療薬であっても、すでに本邦や海外において医学的根拠のある場合には取り上げ、推奨度も書き加えた。保険適用外使用についても記載した”と記され、各疾患の治療についてはClinical question(CQ)が設定されている。 CQは1~21まで作成され、足白癬や爪白癬をはじめとする真菌症治療に対して、外用・内用療法、各薬剤の有用性について推奨度が示されている。この推奨度は、GRADE分類を参考にしつつも日本皮膚科学会編「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版」で採用されたエビデンスレベル分類と推奨度の分類基準に準拠している。併用注意や投与時の注意事項を簡潔に記載 第1章の「疾患概念と診断・治療の原則」には、手・足白癬治療の中心は外用の抗真菌薬(CQ1)を、角化型や接触皮膚炎を合併しているような難治例に対しては内服の抗真菌薬で治療を行うのも良い(CQ2)旨が記されている。また、手・足白癬の爪白癬合併例や爪白癬単独症例では、経口抗真菌薬を第1選択とすべき(CQ5、6、7)とも記載されている。 皮膚真菌症診療ガイドライン2019中盤では各CQの解説がなされており、CQ1では足白癬に対する外用抗真菌薬の有用性が各薬剤の研究報告とともに書かれているほか、皮膚真菌症診療ガイドライン2019発刊時点で発売されている外用薬の一覧表が公開されている。爪白癬治療については、外用薬だけによる完全治癒率は低いものの、経口抗真菌薬が服用できない患者や希望しない患者に使用される、などの注意点が盛り込まれている。<主なCQを抜粋>*CQ8~21については、ガイドラインを参照。CQ1: 足白癬に抗真菌薬による外用療法は有用か(推奨度:A)CQ2: 足白癬に抗真菌薬による内服療法は有用か(推奨度:A)CQ3: 爪白癬にエフィナコナゾール爪外用液は有用か(推奨度:B)CQ4: 爪白癬にルリコナゾール爪外用液は有用か(推奨度:B)CQ5: 爪白癬にテルビナフィンの内服は有用か(推奨度:A)CQ6: 爪白癬にイトラコナゾールの内服は有用か(推奨度:A)CQ7: 爪白癬にホスラブコナゾールの内服は有用か(推奨度:A) なお、皮膚真菌症診療ガイドライン2019は日本皮膚科学会のホームページ上でも公開されている。

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