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1981.

解熱鎮痛薬による頭痛誘発、その原因成分とは

 日本のテレビコマーシャルでお馴染みの解熱鎮痛薬「イブ」に含有されている成分が、韓国では2025年4月に違法薬物に指定されて持ち込み禁止となった。その成分は、日本人医師や薬剤師にはさほど認知度が高くないものの、近年の頭痛外来患者の増加の原因の1つになっている可能性があるという。今回、頭痛専門外来患者の市販薬(OTC医薬品)の服用状況などを研究する佐野 博美氏(京都大学大学院医学研究科 社会医学系専攻健康情報学)と共同研究者の平 憲二氏(プラメドプラス)が、日本社会薬学会第43年会にて「薬剤の使用過多による頭痛(medication-overuse headache:MOH、薬物乱用頭痛)」に関する報告をしたことから、解熱鎮痛薬に含まれる依存性成分や頭痛患者が増える実態について話を聞いた。解熱鎮痛薬に配合されている依存性成分の正体 海外での規制に至った原因成分とは、鎮静催眠成分のアリルイソプロピルアセチル尿素(ア尿素)である。OTC解熱鎮痛薬は、解熱鎮痛成分(アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェンなど)、制酸成分(乾燥水酸化アルミニウムゲル、酸化マグネシウムなど)、生薬成分、無水カフェイン、その他成分、そして鎮静催眠成分(ア尿素、ブロモバレリル尿素[ブ尿素])などで構成される。今回問題とされたア尿素に焦点を当てた場合、イブシリーズでは5製品中4製品に配合されている。もちろんOTC 解熱鎮痛薬の成分として厚生労働省から認可を受けており、その前提で使用されているので国内の規制上は問題ない。 一方で、『頭痛の診療ガイドライン2021』のCQI-13(OTC医薬品による頭痛治療をどのように指導するか)では、OTC医薬品の不適切使用によるMOHを問題視しているものの、その具体的な要因は明らかにされていない1)。患者支持ダントツ、依存性成分が満足度の底上げか そこで佐野氏らは、「頭痛専門外来患者における市販薬の鎮痛薬服用状況:問診票を用いた記述疫学研究」において、片頭痛や緊張型頭痛のような一次性頭痛患者のOTC医薬品の利用率増加と医療機関受診率低下の原因を“OTC医薬品に含まれる依存性成分”と仮定し、3つの依存性成分(カフェイン、ア尿素、ブ尿素)が含まれている解熱鎮痛薬の使用状況を頭痛専門外来2施設で調査、初診患者の市販薬服用状況を明らかにした。 解析対象者は、普段使用している頭痛治療薬の種類を問診票に記載し、適格基準を満たした15歳以上の6,756例で、そのうち市販薬のみを服用し、商品名を明記していた1,128例をサブ解析した。その結果、約6割強がイブシリーズ(イブA錠EX、イブクイック頭痛薬DX、イブA錠、イブクイック頭痛薬、どのシリーズかは不明)を使用していたことが示された。なお、イブシリーズの場合、依存性成分を含まない『イブ』は2023年に販売中止されているため、「イブを使用=依存性成分を摂取」と判断された。使用されていたOTC医薬品の依存性成分の内訳については、カフェイン&ア尿素が最も多く(8割弱)、続いてカフェイン&ブ尿素、依存性3成分なし、カフェインのみ、依存性3成分すべてであった。医療にアクセスするも適正薬剤届かず 本集団の特徴として、佐野氏は「病院にアクセスしづらい働き世代で、とくに40代以上の女性が多かった。驚いたことに、対象者は重症度が高い患者であるにもかかわらず、その約2割が市販薬のみでコントロールしていた。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)抗体製剤などの新薬にたどりつくべき患者がたどり着けずに市販薬を手にしている可能性がある」と片頭痛治療の実際に危機感を抱いた。これについて平氏は、「依存性成分が処方箋医薬品とは異なる配合(比率)で含まれるOTC医薬品に“効果がある”と考えている患者は一定数存在する。患者自身がいろいろ試した結果、効果を実感してOTC医薬品に依存していくのではないか」と指摘し「通院しているが、“治療は市販薬”という患者も少なくない」と現状を説明した。 本調査の限界として、「ロキソニンやバファリンは処方薬との区別ができなかったため、集計結果の信頼性が低い」と説明し、「依存性成分は処方箋医薬品にも含まれているため、実際には本研究結果より多くの患者が依存性成分を摂取している可能性がある。さらに、鎮静作用のある成分とカフェインを同時摂取することは薬理作用が強化され、依存リスクが高まる可能性があるにもかかわらず、本対象者の使用薬剤の約9割にはそれらが一緒に含有されていた」と述べた。「今後は処方箋医薬品も含めた解析を実施していきたい」としながら、「医師・薬剤師をはじめ、医療者にはこのような実態を理解したうえで、患者に接してほしい」ともコメントした。

1982.

IgA腎症に対するフィネレノン+SGLT2阻害薬が蛋白尿を減少

 IgA腎症患者を対象に、フィネレノン(非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)+SGLT2阻害薬の併用療法とそれぞれの単剤療法による腎保護効果を比較検討した結果、併用療法はそれぞれの単剤療法よりも蛋白尿をより迅速かつ有意に減少させたことを、中国・鄭州大学第一附属病院のYanhong Guo氏らが明らかにした。Nephrology Dialysis Transplantation誌オンライン版2025年11月7日号掲載の報告。 研究グループは、鄭州大学第一附属病院において、2023~24年に生検でIgA腎症と診断された患者76例を後ろ向きに評価した。フィネレノン+SGLT2阻害薬併用群は26例、フィネレノン単剤群は32例、SGLT2阻害薬単剤群は18例であった。 主要評価項目は、3ヵ月および6ヵ月時点における尿蛋白/クレアチニン比および推算糸球体濾過量(eGFR)の変化であった。安全性については、高カリウム血症および治療関連有害事象の発現を評価した。 主な結果は以下のとおり。・フィネレノン+SGLT2阻害薬併用療法は、それぞれの単剤療法と比較して蛋白尿の改善効果が有意に大きかった(いずれもp<0.05)。尿蛋白/クレアチニン比減少率の中央値は下記のとおり。 -併用療法 3ヵ月後:40.89%、6ヵ月後:54.62% -フィネレノン単剤療法 3ヵ月後:23.72%、6ヵ月後:30.88% -SGLT2阻害薬単剤療法 3ヵ月後:24.69%、6ヵ月後:24.69%・フィネレノン+SGLT2阻害薬併用療法では、6ヵ月後に尿蛋白/クレアチニン比が50%以上減少した患者が有意に多かった(p=0.033)。 -併用療法 53.8% -フィネレノン単剤療法 25.0% -SGLT2阻害薬単剤療法 22.2%・ロジスティック回帰分析では、併用療法による50%以上の蛋白尿減少達成の調整オッズ比は3.87~18.90であった。・eGFRを含む腎機能指標は3群間で有意差を認めず、全体として腎機能は維持されていた(いずれもp>0.05)。・高カリウム血症の発現率は3群で同程度であり(p=0.332)、高カリウム血症による重篤な有害事象や治療中止は認められなかった。

1983.

20年で大きく生存率が向上したがん・変化の少ないがん/国立がん研究センター

 国立がん研究センターがん対策研究所を中心とする厚生労働科学研究費補助金「がん統計を活用した、諸外国とのデータ比較にもとづく日本のがん対策の評価のための研究」班は2025年11月19日、地域がん登録データを活用した2012~15年診断症例の5年生存率を報告書にまとめ、公表した。 なお、今回の集計から生存率の推定方法が変更されている。これまで利用されてきた「相対生存率」は実際より過大推定となる恐れがあり、本集計から国際比較にも利用できる「純生存率」(“がんのみが死因となる状況”を仮定して、実測生存率に重み付けして推定)に変更された。【調査概要】・集計対象地域:44地域(前回22地域)・集計対象症例:254万6,954症例(前回59万1,778症例) 2012年1月1日~2015年12月31日の4年間に、医療機関でがんと診断またはがんの治療が行われた症例、もしくは死亡診断書にがんの診断情報が含まれる症例で、かつ地域がん登録にがん罹患症例として登録された0~99歳の症例(性別不詳の症例、死亡診断書の情報のみの症例、良性/良悪性不詳/上皮内がんを除く)男女別、5年純生存率が高いがん・低いがん 部位別に5年純生存率をみると、男性では前立腺94.3%から膵臓10.7%、女性では甲状腺92.7%から膵臓10.2%まで部位によって大きな差がみられた。<男性>高生存率群(70~100%):前立腺、皮膚、甲状腺、乳房、喉頭中生存率群(30~69%):大腸、腎・尿路(膀胱除く)、膀胱、胃、悪性リンパ腫、口腔・咽頭、多発性骨髄腫、食道、白血病、肝および肝内胆管、肺低生存率群(0~29%):脳・中枢神経系、胆のう・胆管、膵臓<女性>高生存率群:甲状腺、皮膚、乳房、子宮、喉頭中生存率群:悪性リンパ腫、大腸、口腔・咽頭、胃、腎・尿路(膀胱除く)、膀胱、肺、食道、多発性骨髄腫、白血病、脳・中枢神経系、肝および肝内胆管低生存率群:胆のう・胆管、膵臓1993~96年と2012~15年を比較 これまでの全国がん罹患モニタリング集計プロジェクトを7期間に区分し、主要21部位別に純生存率を比較した。第1期(1993~96年)と第7期(2012~15年)を比較した結果、男性では、多発性骨髄腫(21.0ポイント)、前立腺(34.9ポイント)、悪性リンパ腫(18.2ポイント)において大きな生存率の向上がみられ、女性では、悪性リンパ腫(21.6ポイント)、多発性骨髄腫(15.5ポイント)、肺(18.4ポイント)、白血病(19.5ポイント)において、同様の大きな向上がみられた。 一方、両性別ともに、膀胱は生存率が低下(10.6ポイントおよび5.9ポイント)しており、女性では子宮頸部でも低下(1.3ポイント)がみられた。また、甲状腺、皮膚など、もともと生存率が高かった部位は大きな変化がみられなかったほか、胆のう・胆管や、膵臓、女性の口腔・咽頭では大きな向上はみられず、依然として低い水準の生存率にとどまっていることが示された。なおこれらの経年変化については、治療方法や、早期診断割合、医療アクセスの変化など多くの要因に影響されるため、がん生存率の変化を適切に解釈するには、がん登録情報を基盤としてほかの関連データも併せた総合的な分析が必要としている。

1984.

「ゆっくり食べ、よく噛む」習慣と関連する食事・口腔要因を解明

 日本では「食育基本法」の目標の1つとして「ゆっくり食べてよく噛む人の割合を増やす」ことが掲げられている。日本で行われたウェブ調査で、「ゆっくり食べ、よく噛む」食習慣は「味わいながら食べる」ことや「口いっぱいに食べない」ことと強く関連していることが明らかになった。国立保健医療科学院の石川 みどり氏らによるこの研究結果は、Scientific Reports誌2025年11月19日号に掲載された。 研究チームは、オンライン調査会社の全国モニターから40~70代の男女を対象に、性別・年齢層別に調査票を配布し、食生活・健康行動(12項目)、歯科口腔状態(14項目)、社会経済的要因(6項目)の質問への回答を自己評価形式で収集した。最終的に成人1,644例(男女各822例)が解析対象となった。 主な結果は以下のとおり。・男女ともにほぼすべての年齢層において、「ゆっくり食べ、よく噛む」行動と最も強く関連していたのは「味わいながら食べる」という主観的な食体験であり、オッズ比は男性11.20、女性11.48と高値を示した。また、「口いっぱいに食べない」行動も有意に関連しており、食べる姿勢や注意の向け方が咀嚼行動に関与することが示唆された。・口腔状態との関連では、男性では歯槽骨の吸収がみられないこと、女性では歯痛がないことが「ゆっくり食べ、よく噛む」習慣と有意に関連していた。・一方、家族構成や学歴などの社会経済因子は一部の層で関連を示したものの、明確な一貫性はみられなかった。「ゆっくり食べ、よく噛む」行動は、所得や教育よりも日常の食体験の質と口腔状態に強く依存する可能性が示唆された。 研究者らは、「これらの結果から、『ゆっくり食べ、よく噛む』習慣は、食事を味わいながら食べることによって促進される可能性があることが示唆された。また、口腔の健康状態を維持することも、とくに男性では歯周病予防、女性では歯痛予防が、良好な食習慣の維持に寄与する可能性がある。『ゆっくり食べ、よく噛む』習慣は肥満や過体重の予防に役立つ可能性がある。患者指導や保健事業において『噛む回数』を数える指導は継続が難しいことが多いが、『食べものを意識して味わう』という指示は心理的負担が小さく実践しやすい。今後は、これらの知見を活かした食育プログラムの開発や、長期的な介入研究による因果関係の検証が期待される」としている。

1985.

再発・難治性DLBCLに対するチサゲンレクルユーセルの5年追跡結果(JULIET)/JCO

 再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)へのチサゲンレクルユーセルを評価した単群非盲検多施設共同国際第II相JULIET試験における5年の解析結果について、米国・Oregon Health and Science University Knight Cancer InstituteのRichard T. Maziarz氏らが報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年11月18日号に掲載。 本試験の対象は、2ライン以上の治療後に病勢進行した再発・難治性DLBCL(原発性縦隔DLBCLを除く)の成人患者115例で、主要評価項目は奏効率(ORR)、副次評価項目は奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性などであった。 5年追跡調査での主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は74.3ヵ月であった。・DORの中央値は到達せず、奏効例における5年無イベント率は61%であった。とくに、女性、ベースライン時の国際予後指数(IPI)リスク因子が2つ未満、ベースライン時StageI/IIの患者で高かった。・5年推定PFS率は28%であった。・全投与患者における5年OS率は32%で、完全奏効または部分奏効を達成した患者では56%であった。・投与後いずれかの時点で奏効を達成した患者に関連するベースライン特性として、再発(vs.難治性)、ブリッジング療法が1つ(vs.2つ以上)、LDH値が正常上限値以下(vs.正常上限値超)、CRP値が15mg/L未満(vs.15mg/L超)が挙がった。・長期OSに関連するベースライン特性として、LDHが正常上限値以下、CRP値が15mg/L未満が挙がった。・新たな安全性シグナルや2次性悪性腫瘍は報告されなかった。 著者らは「これらの結果は、再発・難治性DLBCL患者におけるチサゲンレクルユーセルによる治癒の可能性の支持を継続している」とした。

1986.

レカネマブ承認後に明らかとなった日本におけるアルツハイマー病診療の課題

 2023年、日本で早期アルツハイマー病の治療薬として抗Aβ抗体薬レカネマブが承認された。本剤は、承認後1年間で約6,000例に処方されている。東京大学の佐藤 謙一郎氏らは、レカネマブ導入後の実際の診療とその課題、そして潜在的な解決策を明らかにするため、認知症専門医を対象にアンケート調査を実施し、その結果を公表した。Alzheimer's & Dementia誌2025年10月号の報告。 レカネマブを処方可能な認知症専門医を対象に、匿名のオンライン調査を実施した。回答した認知症専門医311人が1年間でレカネマブによる治療を行った患者数は3,259例であった。 主な結果は以下のとおり。・初回診察から初回点滴までの待ち時間が3ヵ月以内であると回答した専門医の割合は79%であった。・回答者の4分の1が、外来診療スペースおよび人員が逼迫しており、想定よりも治療能力が大幅に低いと回答した。・安全性に関する懸念は限定的であり、アミロイド関連画像異常(ARIA)による中断は3.5%であった。・回答者の半数以上が、点滴関連サービスへの追加的な診療報酬およびアポリポ蛋白E(APOE)遺伝子検査の保険適用を強く支持した。 著者らは「抗Aβ抗体薬への早期アクセスは実現可能であると考えられるものの、インフラ整備と財政面でのハードルが依然として高いことが明らかとなった」とし「日本において、抗Aβ抗体薬による認知症治療をより安全で、よりアクセスしやすく、持続的に行うためにも、APOE遺伝子検査の保険適用が不可欠である可能性が示唆された」としている。

1987.

心筋梗塞後のβ遮断薬、LVEF保持例の死亡・再発・心不全を抑制せず/NEJM

 左室駆出率(LVEF)が50%以上に保たれ、β遮断薬のほかに適応がない心筋梗塞後の患者において、β遮断薬の投与は非投与の場合と比較して、全死因死亡、心筋梗塞、心不全の複合の発生率を低減しないことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のAnna Meta Dyrvig Kristensen氏らBeta-Blocker Trialists’ Collaboration Study Groupが行ったメタ解析の結果で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2025年11月9日号で発表された。5つの無作為化試験の約1万8,000例を解析 研究グループは、心筋梗塞後のβ遮断薬の有効性の評価を目的とする、5つの研究者主導型非盲検無作為化優越性試験(β遮断薬群と非β遮断薬群を比較)の参加者の個別データを用いたメタ解析を実施した(Centro Nacional de Investigaciones Cardiovasculares Carlos IIIなどの助成を受けた)。 5つの試験から、心筋梗塞を発症し、LVEFが50%以上に保持され、β遮断薬以外に適応がない参加者の個別患者データを収集した。 主要エンドポイントは、全死因死亡、心筋梗塞、心不全の複合とした。1段階固定効果Cox比例ハザードモデルを用いてイベント発生率を解析した。 REBOOT(7,459例)、REDUCE-AMI(4,967例)、BETAMI(2,441例)、DANBLOCK(2,277例)、CAPITAL-RCT(657例、日本の試験)の各試験に参加した合計1万7,801例を解析の対象とした。β遮断薬群が8,831例、非β遮断薬群が8,970例であった。主要エンドポイント個々の発生率にも差はない 全体の年齢中央値は62歳(四分位範囲[IQR]:55~71)、女性が20.7%で、8.1%に心筋梗塞の既往歴があり、2.0%が心房細動を有していた。また、45.7%がST上昇型心筋梗塞で、94.4%が経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けていた。 追跡期間中央値3.6年(IQR:2.3~4.6)の時点で、主要エンドポイントのイベントは、β遮断薬群で717例(8.1%)、非β遮断薬群で748例(8.3%)に発生し、両群間に差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.97、95%信頼区間[CI]:0.87~1.07、p=0.54)。 主な副次エンドポイントである主要エンドポイントの3つの構成要素の発生率にも、両群間で有意な差はなかった(全死因死亡:β遮断薬群3.8%vs.非β遮断薬群3.6%[HR:1.04、95%CI:0.89~1.21]、心筋梗塞:4.1%vs.4.5%[0.89、0.77~1.03]、心不全:0.8%vs.1.0%[0.87、0.64~1.19])。安全性エンドポイントも同程度 安全性のエンドポイントである虚血性脳卒中は、β遮断薬群で115例(1.3%、0.37件/100人年)、非β遮断薬群で94例(1.0%、0.30件/100人年)に発生した(3年追跡時の制限付き平均無イベント生存期間の群間差:2.6日、95%CI:-0.73~4.4)。また、高度房室ブロックが、それぞれ69例(0.8%、0.23件/100人年)および68例(0.8%、0.23件/100人年)にみられた(HR:1.03、95%CI:0.73~1.44)。 著者は、「心筋梗塞患者では、LVEF低下例に比べLVEF保持例は、梗塞範囲が小さく、心筋瘢痕も少ない可能性があり、心室性不整脈や突然死に対する脆弱性が低いと考えられるため、この患者集団では、心筋梗塞後のβ遮断薬の薬理学的効果は、重要性が低い可能性がある」「本研究では、β遮断薬の種類による明らかな差異は認めなかったが、非選択的β遮断薬(カルベジロール、プロプラノロールなど)を処方された患者は少なかった。また、5つの試験のすべてで、全般にβ遮断薬の用量は低く、これは現在の実臨床を反映したものと考えられる」としている。

1988.

エボロクマブは、高リスクでない患者にも有効か/NEJM

 PCSK9阻害薬によるLDLコレステロール(LDL-C)低下療法の研究は、心筋梗塞や脳卒中などの重大なアテローム性心血管イベントの既往歴のある、きわめてリスクの高い患者を中心に進められてきた。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のErin A. Bohula氏らVESALIUS-CV Investigatorsは、国際的な臨床試験「VESALIUS-CV試験」において、心筋梗塞、脳卒中の既往歴のないアテローム性動脈硬化症または糖尿病患者でも、エボロクマブはプラセボとの比較において、初発の心血管イベントリスクを有意に低下させたことを報告した。本研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2025年11月8日号に掲載された。33ヵ国の無作為化プラセボ対照比較試験 VESALIUS-CV試験は、33ヵ国774施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(Amgenの助成を受けた)。2019年6月~2021年11月に参加者の無作為化を行った。本試験は、エボロクマブ療法の長期的な有効性と安全性をより詳細に評価するために、中央値で少なくとも4.5年間の追跡調査を行うようデザインされた。 対象は、年齢が男性50~79歳、女性55~79歳で、冠動脈疾患、アテローム性脳血管疾患、末梢動脈疾患、高リスク糖尿病のうち1つ以上を有し、心筋梗塞または脳卒中の既往歴がなく、LDL-C値≧90mg/dL、非HDL-C値≧120mg/dL、アポリポタンパク質B値≧80mg/dLで、安定した至適な脂質低下療法を2週間以上受けている患者であった。 適格患者を、エボロクマブ(140mg、2週ごと)またはプラセボを皮下投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、(1)3点主要心血管イベント(MACE):冠動脈性心疾患による死亡、心筋梗塞、虚血性脳卒中の複合エンドポイント、(2)4点MACE:3点MACEまたは虚血動脈の血行再建の複合エンドポイントの2つとした。48週時のLDL-C中央値は45mg/dL 1万2,257例(年齢中央値66歳[四分位範囲[IQR]:60~71]、女性43%、白人93%)を登録し、6,129例をエボロクマブ群、6,128例をプラセボ群に割り付けた。ベースラインの全体のLDL-C中央値は122mg/dL(IQR:104~149)で、患者の92%が脂質低下療法を受け、72%が高強度脂質低下療法を、68%が高強度スタチン療法を、20%がエゼチミブの投与を受けていた。追跡期間中央値は4.6年(IQR:4.0~5.2)だった。 2,014例が中央検査室による脂質検査を受けた。プラセボ群との比較におけるエボロクマブ群のベースラインから48週までのLDL-C値の最小二乗平均変化率は-55%(95%信頼区間[CI]:-59~-52)、最小二乗平均絶対群間差は-63mg/dL(95%CI:-67~-59)であった。48週時のLDL-C中央値は、エボロクマブ群が45mg/dL(IQR:26~73)、プラセボ群は109mg/dL(86~144)だった。 また、エボロクマブ群では、48週時の非HDL-C値(最小二乗平均変化率:-47%)、アポリポタンパク質B値(-44%)などの他のアテローム性脂質においてもプラセボ群に比べ大きな減少がもたらされた。3点MACE、4点MACEとも有意に改善 3点MACEのイベントは、プラセボ群で443例(5年Kaplan-Meier推定値:8.0%)に発生したのに対し、エボロクマブ群では336例(6.2%)と有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.75、95%CI:0.65~0.86、p<0.001)。 また、4点MACEのイベントは、プラセボ群の907例(5年Kaplan-Meier推定値:16.2%)に比べ、エボロクマブ群は747例(13.4%)であり有意に良好だった(HR:0.81、95%CI:0.73~0.89、p<0.001)。心血管死、全死因死亡も良好な傾向 副次エンドポイントのうち、次の6項目のイベント発生率(5年Kaplan-Meier推定値)が、プラセボ群に比しエボロクマブ群で有意に優れた(すべてのp<0.001)。・心筋梗塞・虚血性脳卒中・虚血動脈の血行再建の複合(プラセボ群と比較したエボロクマブ群のリスク低下率21%)・冠動脈心疾患死・心筋梗塞・虚血動脈の血行再建の複合(同21%)・心血管死・心筋梗塞・虚血性脳卒中の複合(同27%)・冠動脈心疾患死・心筋梗塞の複合(同27%)・心筋梗塞(同36%)・虚血動脈の血行再建(同21%) 試験薬の投与中止の原因となった有害事象および重篤な有害事象の発生率は、両群間に差を認めなかった。 著者は、「事前に規定された階層的検定計画のため正式な仮説検定は不可能で、結論は導けないものの、心血管死(HR:0.79、95%CI:0.64~0.98)および全死因死亡(0.80、0.70~0.91)の発生率も、エボロクマブ群で低い傾向がみられた」「本試験の知見は、これまでの試験の対象よりもリスクが低い集団における、初回の重大な心血管イベントの予防を目的とするPCSK9阻害薬の使用を支持する」「従来の短期間の試験では、PCSK9阻害薬の長期的な臨床的有益性が過小評価されていた可能性が高く、PCSK9阻害薬によるLDL-Cの長期的な低下は、スタチンと同様に致死的なイベントの予防に寄与し得ると考えられる」としている。

1989.

シェーグレン病への疾患修飾薬の可能性:中等度から重度のシェーグレン病患者に対するニポカリマブの有効性と安全性(DAHLIAS試験)(解説:萩野昇氏)

 シェーグレン“病”は、唾液腺・涙腺を中心とする自己免疫疾患ですが、近年「症候群」から「病(disease)」へ呼称が改められ、疾患としての実体がより明確に位置付けられました。21世紀以降、多くの膠原病・リウマチ性疾患の治療が飛躍的に進歩したのに対し、シェーグレン病は対症療法を行うしかない、いわば“取り残された疾患”でした。本論文(DAHLIAS試験)の新生児Fc受容体阻害薬(anti-FcRn monoclonal antibody)は、その停滞を打ち破る可能性を示しています。試験の対象患者 本試験には163例の中等度〜重症のシェーグレン病患者が参加し、平均年齢は約48歳、罹病期間は平均約6年でした。抗SS-A(Ro)抗体が陽性で、全身の病勢を示すスコア(ClinESSDAI)が6点以上の“臨床的活動性の高い”患者が対象です1)。結果 24週での改善は以下のとおり: ・偽薬:-3.74点 ・ニポカリマブ15mg/kg:-6.40点(偽薬との差-2.65点、p=0.0018) ClinESSDAIは、3点以上の改善が最小臨床的改善値(MCII:minimal clinically important improvement)とされるため、2.65点の差は「やや微妙」であるものの、他のシェーグレン病治療薬の試験ではなかなか得られなかった有効性と評価できます。さらに、全身症状・関節症状・外分泌腺症状など複数領域で改善が見られています。シェーグレン病治療薬としての意義 乾燥症状に対しては、従来のステロイド・免疫抑制剤はほとんど効果がなく、これは乾燥を自覚する時点ではすでに唾液腺の破壊が高度に進んでいるためと考えられます。ACR/EULAR分類基準では、分類スコアを構成する5項目はいずれも客観的検査所見であり、主観的な乾燥症状は含まれません。抗SS-A抗体陽性と小唾液腺生検(特徴的病理像)だけでスコアは4点以上に達し、シェーグレン病と分類しうる一方、原著の運用上は『少なくとも眼または口の乾燥症状を1つ以上有すること』が前提条件とされています2)。 この試験は、IgG自己抗体を大幅に減らすニポカリマブが、病気の根本メカニズムに作用しうることを初めて明確に示しました。シェーグレン病では抗SS-A抗体などの自己抗体価が高いだけでなく、IgG依存的な免疫機序が多段階で関与することが知られています。FcRn阻害によりIgGのリサイクルが抑制されると、病因性IgG抗体の負荷が直接的に下がり、それが全身炎症の緩和につながるという“機序の一貫性”が明確に示された点が重要です。  総じて、長年停滞してきたシェーグレン病の治療に、ようやく新しい選択肢が生まれる可能性を孕んだ重要な研究といえます。他の製剤(抗BAFF受容体抗体ianalumab、抗CD40リガンド阻害剤dazodalibepなど)と共に今後の第III相試験が期待されます3-4)。

1990.

第290回 OTC類似薬見直しの着地点、形骸化した対策に留まるか

INDEXOTC類似薬見直しの行き着くところ議論が求められる11項目風の便りによると…OTC類似薬見直しの行き着くところ結局、「大山鳴動して鼠一匹」かと思う。何のことかと言えば、OTC類似薬の保険給付問題である。ご存じのように自維連立の高市政権では、社会保険料引き下げを主要政策に掲げる日本維新の会が各種の“刺激的”ともいえる社会保障政策改革を掲げ、10月2日に自民党と締結した連立政権合意書にも、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しに関して令和7年度中に制度設計することが盛り込まれた。そして11月21日に閣議決定されたばかりの「『強い経済』を実現する総合経済対策」でも「OTC類似薬を含む薬剤自己負担については、現役世代の保険料負担の一定規模の抑制につながる具体的な制度設計を令和7年度中に実現した上で、令和8年度中に実施する」と明記された。しかし、ここにきて共同通信が11月25日付で「OTC類似薬見直し、保険適用維持で検討」との速報を打ってきた。個人的にはまあそうだろうなという感想である。過去の本連載(第251回)でも触れたが、そもそもOTC類似薬の保険給付の是非については1990年代前半から浮かんでは消えを繰り返してきたテーマであり、政治、行政、医療界が半ば議論を避けてきたものと言ってもよい。それを令和7年度中、しかも予算措置を考えればあと2ヵ月程度で制度設計することは、困難であることは明らかだったからだ。議論が求められる11項目まず、保険給付の是非を議論するためには、ざっと私個人が思いつくだけでも以下のような項目の検討が必要になる。(1)「OTC類似薬」の定義と境界設定成分・効能・用量が同じか、スイッチOTC化済みか、処方頻度/適応の軽重などの明確化(2)患者負担(家計・所得階層別影響)自己負担額の増加(疾病別・年齢別・所得別)を試算し、低所得者・高頻度使用者(慢性症状、要介護世帯、子ども)への影響評価(3)公衆衛生上のリスク過剰服薬、重複投薬、薬の相互作用、自己診断の誤りなどのリスク評価と、薬剤師・登録販売者による管理体制の強化策の検討(4)国際比較諸外国でのOTC類似薬を巡る政策の動向とそのメリット・デメリットの比較(5)医療アクセスと受診行動への影響早期受診の遅延や医療機関流入の増減などの受診率の変化予測や地方・へき地での薬局・診療アクセスの良否(6)医療費全体への影響(マクロ評価・財政効果)短期的な給付削減効果と受診抑制に伴う重症化・救急搬送増など長期的な医療費増の両面試算に基づくコスト・ベネフィット分析(7)医療現場(医療機関・薬局)への影響医療機関・薬局の売上や経営への影響評価(8)製薬企業への影響保険給付対象外とするOTC類似薬の現行の流通量、給付対象外となった場合の該当OTC医薬品の流通量予測とそれに対応した製造・流通量の確保の見通し。さらにOTC類似薬が給付対象外となった場合に保険給付内で予想される代替薬の現行の流通量、将来的流通量変化とその確保の見通し(9)例外規定の要否(2)の検討に基づく低所得者や難病・複数疾患保持者などでの例外規定の検討(10)情報提供・セルフメディケーション支援体制薬局での相談窓口強化、対象となるOTC類似薬におけるパッケージでのリスク表示方法や販売方法の検討(11)財政的緩和措置(負担軽減策)の是非と設計例外規定に含まれない対象者への激変緩和の必要性と必要な場合の救済措置とりあえず思いつくままに並べてみたが、OTC類似薬に関して新たな制度をスタートさせるならば、ミニマムでも(5)~(7)を除く項目を踏まえた制度設計が必要ではないだろうか? より厳密さを求めるならば、これらすべてに加え、この政策の効果測定となる指標の設定も必要だ。自維両党内でこの問題に熱心な政治家をしても、これだけのファクターに精通していると思われる御仁はおよそ見当たらない。百歩譲って政治家が厚生労働省の官僚の尻を叩いて今すぐこれらの項目を調べて、制度設計案まで提出しろと指示を与えても、時間的な制約を考えれば無理と言っても過言ではない。もちろん局レベルの人員を使って、厚生労働省ならぬ“強制労働省”化でもすれば、不可能ではないだろうが…。結局のところ共同通信の速報でさらりと触れられた「1~3割の窓口支払いに一定の追加負担を求める案が軸」くらいが関の山だ。風の便りによると…そして今漏れ伝わっている話によると、この案とはどうやら1997年9月に導入され2003年に廃止された処方薬剤の種類や数に応じて追加の定額自己負担を求めた制度を参考にしたものらしい。すでに忘れたか、元々当時のことを知らない人もいるだろうが、当時の医療費負担は本人・家族の区分に応じて1〜2割負担が中心。薬剤費もこの負担割合となっていたが、これに加え内服薬処方数が2~3種類では1日当たり30円、4~5種類では60円、6種類以上では100円などの追加負担を求めた制度である。医師のポリファーマシー傾向に好影響を与えることが期待されたものの、結局、制度が複雑化し、患者負担が目立つだけになった結果、2001年の70歳以上の定率負担と2003年の70歳未満での原則7割給付の導入に伴い廃止された。この話が事実ならば、蔵の奥にしまい込んで埃をかぶった“骨董品”が20年ぶりに持ち出されてきたことになる。結局のところ、中身もなく声高にアジテーションを繰り返した政治家に官僚と国民が付き合わされ、粗製濫造の制度を適用されることになるのかと思うとため息しか出てこない。

1991.

非小細胞肺がんにおける新たな治療「TTフィールド:腫瘍治療電場療法」とは?【肺がんインタビュー】第117回

第117回 非小細胞肺がんにおける新たな治療「TTフィールド:腫瘍治療電場療法」とは?非小細胞肺がん(NSCLC)の治療は目覚ましい進歩を遂げているが、まだ多くの課題が残る。このような背景の中、2025年に承認された腫瘍治療電場(TTフィールド)療法「オプチューンルア」が、新たな治療モダリティとして注目されている。オプチューンルアの作用機序、臨床試験結果、使用方法についてノボキュア株式会社代表取締役の小谷 秀仁氏に聞いた。TTフィールドの主な2つの作用――TTフィールドの作用メカニズムについて教えてくださいTTフィールドは、tumor -treating field、腫瘍治療電場を指すものです。電場とは何か?と疑問をいただく先生方も多くおられると思います。私たちは地球の重力や磁場に引っ張られて生活しています。電場もこれと同様のもので、プラスとマイナスの電荷の間に起きる力です。私たちは痛みも痒みも感じないまま電場と共に生活しています。ヒトの細胞のタンパク質は、プラス・マイナスの電荷を帯びています。通常、細胞は電場の中で安定しているのですが、プラスとマイナスが絶えず入れ替わる交流電場が両脇に存在すると不安定になります。TTフィールドは、この交流電場をがん治療に応用したものです。TTフィールド抗がん作用は主に2つと考えられます。1つは直接作用としての有糸分裂阻害です。細胞分裂にはチューブリンの重合が必要ですが、この重合はプラスとマイナス電荷の作用で起こります。そこに交流電場があると重合が阻害されることで細胞分裂が阻害され、細胞のアポトーシスが誘導されます。画像を拡大する株式会社ノボキュア提供もう1つは間接作用としての免疫原性細胞死による全身的な抗腫瘍効果です。直接作用によってアポトーシスを起こします。いわゆるdamps(damage-associated molecular patterns、ダメージ関連分子パターン)状態になるため異物とみなされ、活性化した全身的な抗腫瘍免疫により免疫原性細胞死に至らされます。つまり、電場が作用している部位(インフィールド)だけでなく、離れた部位(アウトフィールド)においても抗腫瘍効果を示すことで、原発巣のみならず転移巣への効果も期待されています。この2つ以外にもさまざまなメカニズムが考えられますが、現在研究中です。――正常細胞には影響しないとお聞きしていますが。これには2つの理由があります。1つは腫瘍細胞と正常細胞で電場に対する最適な周波数が異なることです。今回の肺がん細胞では150kHz、脳腫瘍細胞では200kHzで、治療もそれの周波数で設定されています。一方、正常細胞が最も影響を受ける周波数は、それよりかなり低く、この違いによって腫瘍細胞への選択性が生じます。もう1つは細胞分裂の強さによる選択性です。TTフィールドは有糸分裂阻害によって細胞分裂を阻害するため、急速に分裂する腫瘍細胞に選択性がより高くなります。正常細胞への影響が少ないこともあり、膠芽腫、膵臓がん、NSCLCの臨床試験における機器関連の有害事象としてはアレイ(電極)貼付による接触皮膚炎が主なもので、そのほとんどがGrade 1、2でした1,2,3)。――肺がんにおけるTTフィールド開発の背景について教えてください。ノボキュア社には、難治性がん患者さんのために最善を尽くすというミッションがあります。TTフィールドでは、肺がん以外にも、膠芽腫、膵がん、中皮腫という予後不良ながんの治療応用に取り組んでいます。肺がん治療においては、2000年以降に多くの抗がん剤が上市され、多くの患者さんを助けたと思います。とくに免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は非常に画期的で、肺がん治療を大きく変えました。ただし、ICI後の2次治療については新たな選択肢が出てきていないという実態があります。そこで非小細胞肺がん(NSCLC)のプラチナ含有化学療法後の2次治療に対して、TTフィールド「オプチューンルア」の開発を行いました。ICIの有効性をさらに向上させた肺がん試験の結果――NSCLCの2次治療ではLUNAR試験3)が行われています。主要結果はどのようなものでしたか?LUNAR試験は国際多施設共同非盲検第III相試験です。プラチナ含有化学療法またはICIで進行したステージIVのNSCLCを対象に、オプチューンルアとICIまたはドセタキセルとの併用療法と、ICIまたはドセタキセルの単独療法を比較しました。組み入れ患者数は291例です。当初は倍の症例数を計画していたのですが、中間解析の時点で独立データモニタリング委員会の勧告で、組み入れ数を約半数に、観察期間も短縮して試験を終了しています。本試験の結果、全体集団(ITT集団)における全生存期間(OS)中央値は、標準治療群(単独群)が9.9ヵ月であったのに対し、オプチューンルア併用群は13.2ヵ月と、3.3ヵ月の有意な延長が認められました(p=0.035)。とくにICI併用においては、オプチューンルア併用群で19.0ヵ月、ICI単独群では10.8ヵ月と、併用群でさらに大きなOS延長効果が示されています(p=0.02)。ドセタキセル併用においては、オプチューンルア併用群で11.1ヵ月、ドセタキセル単独群では8.7ヵ月で、統計的な有意差は証明されませんでしたが(p=0.28)、併用群で良好な傾向が示されています。※※オプチューンルアの日本国内での適応はICI併用のみ――オプチューンルアの有効性はICIとの併用群でとくに良好ですが、この結果は抗腫瘍免疫の活性化によるものでしょうか?膠芽腫に対するペムブロリズマブとの併用における研究でもLUNAR試験と同様の結果が出ています4)※。ICIは非常に有効性の高い薬であるにもかかわらず、LUNAR試験においてはオプチューンルアの併用でOSを10.8ヵ月から19.0ヵ月と倍近く延長しています。このことからも、腫瘍免疫を活性化する作用が強い可能性はあると思っております。※新規膠芽腫患者におけるTTフィールド(TTF)+テモゾロミド(TMZ)+ペムブロリズマブ(PEM)の第II相2-THE-TOP試験において、TTF+TMZ群(ヒストリカルコントロール)に比べ、TTF+TMZ+PEM群でPFS(p=0.00261)及びOS(p=0.0477)が有意に改善した。悪性度の高い病態に希望をもたらす新たな治療選択肢――オプチューンルアの使用方法について教えていただけますか。同キットの使用に際しては、トランスデューサーアレイ(電極)とTTフィールドジェネレーター(TTフィールド発生器)を用います。アレイをコードでTTフィールドジェネレーターに接続します。肺がん患者さんの場合、右胸、左背中、左胸、右背中の4枚のアレイを90度交差した2つのペアとして貼付し、胸部全体に電場を形成します。なぜ2つのペアが必要なのかと聞かれるのですが、がん細胞には向き(極性)があるため、なるべく多くの細胞を腫瘍電場の中で捉えていくために、90°に交差した2つのペアを使っています。治療は1日18時間以上を推奨しております。――18時間以上装着とのことですが、連続していなくてもよいのでしょうか?治療効果を最大限に引き出すための推奨ですので、連続していなくても問題ありません。オプチューンルアの効果発現のカットオフ値は1日平均12時間(使用時間率月間平均50%)以上ですが、膠芽腫では長く使うほど抗腫瘍効果が強くなることが確認されています。アレイの電源はコンセントからも携帯用のバッテリーからもとれますので、家でも外出先でも使用できます。お風呂に入る時には剥がして、お風呂から出たら新しいアレイを貼っていただいたり、自宅にいる時に使って外出する時は外したり、患者さんの生活に合わせて適用していただければと思います。画像を拡大する株式会社ノボキュア提供――先生方にメッセージをお願いします。和泉市立総合医療センターの光冨 徹哉先生から、LUNAR試験の結果について、コメントいただいております。「オプチューンルアが進行NSCLCの患者さんに対し、重大な副作用を伴うことなく全生存期間を改善し、大きな恩恵をもたらすことが示されました。同機器が厚生労働省に承認されたことにより、この悪性度の高い疾患に新たな治療選択肢を提供し、希望をもたらすことができました」というものです。先生方へのメッセージとしては、この言葉が最も適していると思っています。患者さんの受け取り方もユニークで「自分が治療に積極的に関与しているという感覚を得られる」という感想をいただきます。先生方におかれましては、適正使用のもと、この新しい治療選択肢を患者さんのためにご活用いただければ幸いです。※TTフィールド療法としては2015年3月15日に再発膠芽腫、2016年12月20日に初発膠芽腫にNovoTTF-100Aシステム(ブランド名:オプチューンジオ)が承認され、本年(2025年)9月12日に「白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法で増悪が認められた切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんと診断された成人患者」に対しPD-1/PD-L1阻害剤との併用でオプチューンルアが承認された。参考1)Stupp R, et al.JAMA.2017;318:2306-2316.2)Babiker HM, et al. J Clin Oncol.2025;43:2350-2360.3)Leal T, at al. Lancet Oncol.2023;24:1002-1017.4)Chen D, et al. Med.2025;6:100708.5)オプチューンルア承認プレスリリース(株式会社ノボキュア)

1992.

肺炎の抗菌薬治療を拒否する患者、どう対応する?【こんなときどうする?高齢者診療】第16回

CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロンアーカイブズ」から、高齢者診療に役立つトピックをお届けします。今回は救急や日常診療で頻繁に遭遇する意思決定能力評価について、実践的なツール「CURVES」を使って学んでいきます。ではケースを見てみましょう。70歳女性。軽度認知症の既往あり。発熱・呼吸困難で救急搬送された。「うーうー」とうなっており、若干傾眠傾向。肺炎と診断し、抗菌薬を点滴投与すると本人に説明したところ、抗菌薬を拒否。「点滴はいやだ、抗菌薬はいやだ」と繰り返すのみ。その理由を聞いてもうなるだけで答えが返ってこないこの患者の言葉を鵜呑みにするべきでないことは、直感的におわかりかと思います。高齢者は認知症や抑うつ、せん妄といった認知機能の障害による意思決定能力の低下や喪失リスクが高く、救急だけでなくさまざまな場面で意思決定能力の評価が必要です。まず、意思決定能力をあらためて定義するところから始めましょう。意思決定能力(キャパシティ)とは?意思決定能力(キャパシティ)とは、「自分の医療について理解し、選択できる能力」です。そして「何」についての理解、選択なのかを明確にする必要があります。現場では、これらを覚えやすく実践的にした「CURVES」というツールを使います。CURVESは本人の意思決定能力を評価する4項目と、本人の意思決定能力がないと判断した場合に評価すべき2項目に分かれています。具体的な質問とともに見てみましょう。意思決定能力を評価するCURVESC-U-R-V:患者本人の意思決定能力を評価する4項目画像を拡大するE-S:能力がない場合の対応を決める2項目画像を拡大する必ず確認すべき「V(Value)」CURVESの中で最も見落とされやすいのが、この「価値観との一致」です。病状の進行や、生活環境の変化、重大な出来事があって本人の価値観が変わったなど、価値観の非連続性を裏付ける理由があれば問題はありません。合理的理由なく価値観が変わっている場合 は 認知症進行や隠れた抑うつを疑うことが重要です。ここまで意思決定能力の定義と評価すべき項目を整理してきました。もうひとつ重要な視点が、「何について」の意思決定なのかを明確にすることです。すべての医療行為に厳格なキャパシティ評価が必要?「日々生じるすべての意思決定について、厳格な意思決定能力の評価が必要なのか?」という疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。この質問の答えはNOです。理由は、それが「何について」の意思決定なのかによって、必要なキャパシティは異なるからです。たとえば、肺炎の治療選択肢を決めるというタスクと、代理意思決定人を決めるというタスクでは、必要な認知機能や意思決定能力は異なります。意思決定能力評価の要否を判断するスライディング・スケール・アプローチ意思決定能力評価の要否を判断するポイントは、「利益とリスクのバランス」×「患者の反応」です。2つの例を挙げてみてみましょう。例1:脱水への点滴(利益 > リスク)脱水症に点滴補液をするというタスクは利益がリスクを上回りますから、対応はこのようになります。同意する患者「わかりました、お願いします」→ 通常の会話で確認のみ拒否する患者「点滴はいやだ」→ CURVESで評価例2:終末期がんへの化学療法(リスク > 利益)寝たきりの末期がん患者への化学療法はリスクが利益を上回るタスクですから、以下の対応になります。拒否する患者「もう治療は結構です」→ 意思を尊重(簡易評価)希望する患者「何でもやってほしい」→ CURVESで評価(理解しているか?)余談ですが、こうした治療を家族が希望する場合は、患者と家族の価値観のすり合わせなどの意思決定能力の評価とは別のACPが必要かもしれません。今回のケースに戻りましょう。肺炎と診断し、抗菌薬点滴による治療で回復見込みが高いという判断のもと、治療を提案していました。利益がリスクを上回るタスクを患者が拒否しているので、厳格なキャパシティが必要と考えます。患者の様子から考えると、理解・認識・論理の3つについて、すくなくともこの時点で判断能力がないと判断して妥当です。過去のカルテがあれば、CURVESのうち過去の価値観と一致しているか確認するとこの患者の選択に整合性があるかもしれません。過去の価値観との整合性について確認できない場合でも、代理意思決定者が確認できれば、その人とのコミュニケーションで治療方針を決めるといったステップが見えてきます。Step 1:スライディング・スケールで判断治療内容抗菌薬点滴(利益 > リスク)患者の反応拒否判断厳格な評価が必要 → CURVESを使うStep 2:CURVESで評価| CURVESの項目 | 評価 | 根拠 || C (選択表明) | × | 「いやだ」と繰り返すのみ || U (理解) | × | 説明を自分の言葉で言えない || R (論理) | × | 理由を説明できない || V (価値観) | ? | 過去の情報が必要 || E (緊急性) | ○ | 肺炎は治療遅延で悪化 || S (代理人) | ? | 家族の確認が必要 |評価結果:現時点で意思決定能力なしこのように、スライディング・スケールを用いると、キャパシティ評価を行うべきケースを絞り、すばやく次のステップに進めるとおわかりいただけたのではないかと思います。認知症なら意思決定能力はない?最後に、高齢者の意思決定能力について、必ず心にとめていただきたい項目があります。それは、認知症がある=意思決定能力がないではないということです。「認知症があると意思決定能力がない」あるいは「認知症がないなら意思決定能力がある」と捉えている人が少なからずおられますが、それはどちらも間違いです。認知症があっても、あるタスクについて意思決定能力を保有しているというケースはありますし、逆に認知症がなくても、特定の医療行為やタスクについて選択・決定する能力がない場合もあります。認知症は意思決定能力に関連はしますが、必ずしも意思決定能力の有無を決定するわけではないということを頭の片隅において、日常の診療・ケアにキャパシティ評価を取り入れてください。 ※今回のトピックは、2022年9月度、2024年度11月度の講義・ディスカッションをまとめたものです。CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロンアーカイブズ」でより詳しい解説やディスカッションをご覧ください。

1993.

宴席で急性アルコール中毒に遭遇、どう対処する?【中毒診療の初期対応】第2回

<今回の症例>年齢・性別21歳・男性患者情報サッカー部の合宿の打ち上げで、仲間と大広間で一気飲みを繰り返していた。畳の上で横たわり、呼びかけにもまったく反応がない。呼吸はいびき様で、顔色不良であるため、救急センターに搬送された。初診時はいびき様呼吸、呼吸数12/分、SpO2 94%(フェイスマスクにて酸素3 L/分)、血圧84/56mmHg、心拍数118bpm、意識レベルJCS 200、瞳孔左右2.5 mm同大、対光反射 緩慢、体温35.8℃であった。また、呼気にアルコール臭を認めた。検査値・画像所見末梢血では、WBC 8.20×103/mm3、Hb 14.6g/dL、Ht 44.2%、Plt 118×103/mm3、生化学検査では、TP 7.3g/dL、AST 14IU/L、ALT 16IU/L、LDH 310IU/L、CPK 116IU/L、AMY 226IU/L、Glu 90mg/dL、BUN 14mg/dL、Cr 0.6mg/dL、Na 140mEq/L、K 3.8mEq/L、Cl 104mEq/L、血漿浸透圧は370mOsm/Lであった。動脈血ガス(フェイスマスクにて酸素3L/分)では、pH 7.338、PaCO2 48.6Torr、PaO2 92.5Torr、HCO3- 17.6mmol/L、BE -2.4mmol/L、乳酸 2.8mmol/Lであった。<問題1><解答はこちら>4. 80mOsm/kg<問題2><解答はこちら>2.370 mg/dL<問題3><解答はこちら>2.No1)上條 吉人編. 臨床中毒学 第2版. 医学書院. 2023.

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肝細胞診療ガイドライン 2025年版 第6版

新たな名称にて堂々改訂! 待望の第6版!今回から書名を「肝細胞診療ガイドライン」と改め、従来のCQに加えて「Future Research Question」を新設。一部推奨については「Good Practice Statement」として提示することとなった。また、薬物療法では新たなレジメンが加わり、放射線治療でも粒子線治療が保険適用になるなど、治療選択肢の拡充に伴い、解説もさらに充実した。肝細胞診療に携わる医療者の必携書、待望の改訂版!画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する肝細胞診療ガイドライン 2025年版 第6版定価4,950円(税込)判型B5判頁数400頁発行2025年10月編集日本肝臓学会ご購入はこちらご購入はこちら

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1~2個のSLN転移陽性早期乳がん、ALND省略で生存アウトカムは?メタ解析

 センチネルリンパ節(SLN)転移陽性の乳がん患者に対しては、これまで腋窩リンパ節郭清(ALND)が推奨されてきたが、乳房温存術(BCS)を受ける患者でSLN転移が限局的な患者に対しては、Z0011試験などの結果を踏まえALND省略が考慮されるようになっている。しかし、乳房全切除術(TM)を受ける患者に関しては、エビデンスが限られ、結果も一貫していない。中国・Qilu Hospital of Shandong UniversityのJinyi Xie氏らは、1〜2個のSLN転移陽性早期乳がん患者において、ALND群とセンチネルリンパ節生検(SLNB)単独群の生存アウトカムを比較することを目的としてメタ解析を実施。BCSを受ける患者とTMを受ける患者におけるサブグループ解析も行い、結果をOncologist誌オンライン版11月14日号で報告した。 PubMed、Embase、Cochrane Library、Web of Scienceを対象に2024年12月までに発表された文献を系統的に検索し、計29件の研究(うち6件は無作為化比較試験、23件は観察研究)を特定した。これらの研究には計14万6,407例の患者が含まれる。全生存期間(OS)、無病生存期間(DFS)、無再発生存期間(RFS)などの生存アウトカムをランダム効果モデルまたは固定効果モデルを用いて統合解析し、異質性と出版バイアスはI2統計量、Begg検定およびEgger検定を用いて評価した。さらに、研究デザイン、手術の種類(TM vs.BCS)、T分類に基づくサブグループ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・ALND群とSLNB単独群の間でOS(オッズ比[OR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.83~1.04)、DFS(OR:1.02、95%CI:0.87~1.20)、RFS(OR:1.08、95%CI:0.89~1.30)に有意な差は認められなかった。・しかしTMサブグループにおいては、ALND群でOSの改善と関連していた(OR:0.75、95%CI:0.62~0.90)。同様に、T3~T4の患者ではALND群でOSアウトカムが良好な傾向がみられた。・DFSとRFSについては、サブグループ間で有意な差は認められなかった。 著者らは、今回の結果は1~2個のSLN転移陽性早期乳がん患者において、SLNB単独はALNDと同等の生存成績を示し、BCSを受ける患者における安全性を支持するものとした。一方、TMを受ける患者やT3~T4の患者においてALNDが生存利益と関連する可能性が示唆された。しかし、選択バイアスや交絡による影響を受けている可能性があるため、現時点でこれらのサブグループ解析結果が治療方針を変更する根拠とはならないとし、質の高い前向き研究による検討が求められると結んでいる。

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日本人不眠症におけるBZDからDORAへの切り替え方法

 デュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)は、不眠症に対する効果的な薬物療法であるにもかかわらず、臨床現場では依然として多くの患者にベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZD)が不眠症治療薬として使用されている。不眠症治療において、BZDからDORAへの適切な切り替え方法を確立することは重要である。千葉大学の金原 信久氏らは、不眠症治療におけるBZDからDORAへの切り替えに関する成功事例について報告した。Clinical Psychopharmacology and Neuroscience誌2025年11月30日号の報告。 長期にわたりBZDを服用している210例の不眠症患者を対象とした、DORA(スボレキサントまたはレンボレキサント)導入後3ヵ月時点でのDORA継続率に関する先行研究の2次解析を実施した。半減期に基づき分類したBZDの種類がDORA継続率およびBZD減量率に及ぼす影響も検討した。 主な結果は以下のとおり。・超短時間作用型/短時間作用型BZDを服用していた患者では、DORAへの切り替え失敗率が有意に低いことが明らかとなった。・DORAへの切り替え成功に関する2つのロジスティック回帰分析では、DORAの3ヵ月継続を予測する因子として、次の3つが特定された。●ベースライン時のBZD高用量(Exp[B]:1.570、95%信頼区間[CI]:1.090〜2.262)●BZD服用期間の短さ(Exp[B]:0.991、95%CI:0.985〜0.997)●超短時間作用型/短時間作用型BZDの使用(Exp[B]:7.335、95%CI:2.054〜26.188)・また、ベースライン時のBZD高用量は、DORA継続とBZD減量の両方を予測する因子であることが示唆された(Exp[B]:1.801、95%CI:1.008〜3.216)。 著者らは「BZD高用量を服用している患者においては、不眠症治療薬をDORAに切り替える際に、超短時間作用型/短時間作用型BZDの減量を行うことで、DORAへの切り替えが成功する可能性が高いことが示唆された。一方、長期にわたりBZDを服用している患者においては、慎重な切り替えが必要となる」と結論付けている。

1997.

SGLT2阻害薬、eGFRやアルブミン尿を問わずCKD進行を抑制/JAMA

 SGLT2阻害薬は、ベースラインの推定糸球体濾過量(eGFR)やアルブミン尿の程度によらず、ステージ4の慢性腎臓病(CKD)患者や微量アルブミン尿患者を含むCKD進行のリスクを低下させたことが、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のBrendon L. Neuen氏らSGLT2 Inhibitor Meta-Analysis Cardio-Renal Trialists' Consortium(SMART-C)が行ったメタ解析の結果で報告された。著者は、「2型糖尿病、CKD、または心不全患者において、腎機能のすべての段階で腎アウトカム改善のためにSGLT2阻害薬を日常的に使用することを支持する結果である」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年11月7日号掲載の報告。無作為化二重盲検プラセボ対照試験10件についてメタ解析 SMART-Cは、各治療群に少なくとも500例の患者が含まれ、少なくとも6ヵ月の追跡調査が行われて完了している無作為化二重盲検プラセボ対照試験を対象とし、各試験の代表者で構成される学術運営委員会が主導している。 研究グループは、SMART-Cのうち、CKD進行に対する適応を有するSGLT2阻害薬(カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン)を評価した試験に限定し、メタ解析を行った。解析対象は10試験(EMPA-REG OUTCOME、CANVAS Program、DECLARE-TIMI 58、EMPEROR-Reduced、EMPEROR-Preserved、DAPA-HF、DELIVER、CREDENCE、DAPA-CKD、EMPA-KIDNEY)。 主要アウトカムはCKD進行とし、腎不全、eGFRが50%以上低下、または腎不全による死亡と定義した。その他のアウトカムには、eGFRの年間低下率および腎不全などが含まれた。個々の試験における治療効果を、逆分散加重メタ解析を用いて統合した。腎不全単独を含む研究対象となったすべての腎アウトカムのリスクを軽減 解析対象は計7万361例(平均[SD]年齢64.8[8.7]歳、女性2万4,595例[35.0%])で、このうちCKD進行が2,314例(3.3%)、腎不全が988例(1.4%)に認められた。 SGLT2阻害薬は、CKD進行リスクを低下させた(1,000患者年当たりのイベント件数:SGLT2阻害薬群25.4 vs.プラセボ群40.3、ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.57~0.68)。 この効果は、ベースラインのeGFRに関係なく認められた(eGFR≧60mL/分/1.73m2のHR:0.61[95%CI:0.52~0.71]、eGFR45~<60mL/分/1.73m2のHR:0.57[0.47~0.70]、eGFR30~<45mL/分/1.73m2のHR:0.64[0.54~0.75]、eGFR<30mL/分/1.73m2のHR:0.71[0.60~0.83]、傾向のp=0.16)。 また、ベースラインのアルブミン尿の程度にかかわらず効果が認められた(UACR≦30mg/gのHR:0.58、>30~300mg/gのHR:0.74、>300mg/gのHR:0.57、傾向のp=0.49)。 SGLT2阻害薬は、保護効果の程度にはばらつきがあるものの、糖尿病の有無別に解析した場合も含め、すべてのeGFRおよびUACRサブグループにおいて、eGFR年間低下率を改善し、また、腎不全単独のリスクも減少させた(HR:0.66、95%CI:0.58~0.75)。

1998.

急性心筋梗塞のPCI、完全血行再建vs.責任病変のみ/Lancet

 多枝病変を有する急性心筋梗塞患者において、完全血行再建を行う戦略は責任病変のみを対象としたPCI戦略と比較し、心血管死または新規心筋梗塞の複合アウトカム、および心血管死単独のリスクを減少させ、全死因死亡率も低いことが、カナダ・McMaster UniversityのShamir R. Mehta氏らComplete Revascularisation Trialists' Collaborationによるメタ解析の結果で示された。著者は、「今回のデータは、完全血行再建が心血管疾患の重要な臨床アウトカムを改善するという、これまでで最強かつ頑健なエビデンスである」と述べている。Lancet誌オンライン版2025年11月9日号掲載の報告。完全血行再建vs.責任病変のみPCIの無作為化試験をメタ解析 研究グループは、急性ST上昇型心筋梗塞(STEMI)または非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)の患者を対象としており、250例以上の患者が登録され、完全血行再建戦略(PCIを含む)と責任病変のみのPCI戦略を比較した無作為化試験を適格として、個々の患者データのメタ解析を行った。 試験の見落としがないように、Ovid MEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)を用いて、1996~2025年9月15日に発表された無作為化比較試験を検索した。 主要アウトカムは、心血管死または新規心筋梗塞の複合、ならびに心血管死単独の2つであった。これらは階層的検定手順を用い、心血管死または新規心筋梗塞の複合について有意水準0.04で検定し、有意であることが認められた場合に心血管死単独について有意水準0.05で検定を行うことが事前に規定された。 メタ解析は、個別患者データをプールし、試験をランダム効果としたCoxフレイルティモデル(1段階解析)を用いた。 全死因死亡を副次アウトカム、非心血管疾患死および新規心筋梗塞を追加のアウトカムとした。完全血行再建は「心血管死または新規心筋梗塞の複合」「心血管死単独」のリスクをいずれも24%減少 計6件の無作為化比較試験(合計8,836例)が解析対象となった。年齢中央値は65.8歳(四分位範囲[IQR]:57.0~76.0)、女性2,088例(23.6%)、男性6,748例(76.4%)であった。また、7,768例(87.9%)がSTEMI、1,068例(12.1%)がNSTEMIであった。 追跡期間中央値36.0ヵ月(IQR:30.6~48.0)において、心血管死または新規心筋梗塞は、完全血行再建群で4,259例中382例(9.0%)に発生したのに対し、責任病変のみ群では4,577例中528例(11.5%)に発生した(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.67~0.87、p<0.0001)。 心血管死単独は、完全血行再建群で155例(3.6%)、責任病変のみ群で209例(4.6%)にみられた(HR:0.76、95%CI:0.62~0.93、p=0.0091)。 全死因死亡は、完全血行再建群では308例(7.2%)、責任病変のみ群では370例(8.1%)であった(HR:0.85、95%CI:0.73~0.99、p=0.039)。非心血管疾患死は両群で同程度であった(完全血行再建群153例[3.6%]vs.責任病変のみ群161例[3.5%]、HR:0.98、95%CI:0.78~1.22、p=0.85)。 完全血行再建群では、責任病変のみ群と比較して新規心筋梗塞が減少した(255例[6.0%]vs.357例[7.8%]、HR:0.76、95%CI:0.65~0.90、p=0.0011)。

1999.

経口抗凝固薬の重大な副作用、脾破裂に至る脾臓出血が追加/厚労省

 2025年11月26日、厚生労働省より添付文書の改訂指示が発出され、経口抗凝固薬5成分の「重大な副作用」の項に「脾破裂に至る脾臓出血」が追加された。 対象製品は以下のとおり。アピキサバン(商品名:エリキュース錠)エドキサバントシル酸塩水和物(同:リクシアナ錠)ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩(同:プラザキサカプセル)リバーロキサバン(同:イグザレルト錠)ワルファリンカリウム(同:ワーファリン錠ほか) 今回の改訂は、経口抗凝固薬の脾破裂リスクについて、国内外症例、WHO個別症例安全性報告グローバルデータベース(VigiBase)を用いた不均衡分析結果を評価し、専門委員の意見も聴取した上で判断されたものである。抗凝固薬の中和剤や免疫チェックポイント阻害薬などにも改訂指示 また、直接作用型第Xa因子阻害薬の中和薬アンデキサネット アルファ(同:オンデキサ静注用)にも改訂指示が発出され、「重要な基本的注意」の項に「シミュレーション結果に基づき、本剤投与終了4時間後の時点で、直接作用型第Xa因子阻害剤又は低分子ヘパリンによる本来の抗凝固作用が期待できる」の一文が追加された。これは、承認取得者より提出された薬物動態/薬力学モデルを用いたシミュレーションの結果を評価し、専門委員の意見も聴取した結果、本シミュレーション結果に基づく情報提供は臨床上有用と判断されたためである。 このほか、抗PD-L1ヒト化モノクローナル抗体のアテゾリズマブ(同:テセントリク点滴静注)では「重大な副作用」が新設され、「溶血性貧血」が追加。ニューキノロン系抗菌薬のトスフロキサシン(同:オゼックス錠ほか)では、本剤を成分とする結晶尿が現れ、とくに小児で急性腎障害や尿路結石を来すことが多く報告されていることから、「重大な副作用」に「尿路結石」が追加された。また、エンドセリン受容体拮抗薬ボセンタン水和物(同:トラクリアほか)では、「警告」と「用法及び用量に関連する注意」の項において、「自己免疫性肝炎」が追加。ゴーシェ病治療薬イミグルセラーゼ(同:セレザイム静注用)には、「重要な基本的注意」の項に「Infusion reaction」が、「重大な副作用」の項に「Infusion reaction」と「高血圧」が追加された。

2000.

家族の録音メッセージがICU入室患者のせん妄を防ぐ

 人工呼吸器を装着している集中治療室(ICU)入室患者では、5人中4人にせん妄が生じる。せん妄とは、治療による体への負担が原因で生じる異常な精神状態のことをいい、パニック、動揺、怒りなどの症状が現れる。新たな研究で、ICU入室患者に家族からの録音メッセージを聞かせることで、患者の意識を安定させ、せん妄を予防できる可能性のあることが明らかになった。米マイアミ大学看護健康学部のCindy Munro氏らによるこの研究結果は、「American Journal of Critical Care」に11月1日掲載された。 この研究でMunro氏らは、2018年4月から2020年11月にかけて(ただし、新型コロナウイルス感染症パンデミック中の3カ月間は中断)、南フロリダの2カ所の大規模病院の9つのICUで、人工呼吸器を装着している178人の患者を対象に、せん妄予防のための非薬理学的介入の有効性を検討した。 対象者は、家族からの録音メッセージを聞く群(89人)と通常のケアを受ける群(89人)にランダムに割り付けられた。計10種類の録音メッセージはいずれも2分間の長さで、午前9時から午後4時までの時間帯に、1時間ごとに再生された。内容は、医療従事者と家族が定期的に患者の様子を見に来ていることを思い出させることを意図したもので、患者の名前を呼び、今いる場所を思い出させ、人工呼吸器を装着していることや、回復を助けるためにワイヤーやチューブ類が設置されている可能性があることが伝えられた。 Munro氏は、「家族の関与がせん妄の予防と介入において重要な要素であることは、以前よりエビデンスによって示されている。しかし、家族がケアに全面的に関わるには、しばしば困難を伴うのが現状だ。そこでわれわれは、家族がそばにいなくても患者が家族の声を聞けるようにし、家族の存在感を補うための介入を考案した」と話している。 介入の結果、録音メッセージを聞いた群では通常のケアを受けた群と比べて、せん妄のない日数が有意に多いことが明らかになった。また、患者がメッセージを聞く頻度が高ければ高いほど、せん妄のない日数が有意に増えた(P<0.001)。 こうした結果を受けて研究グループは、「台本を使って家族が録音した音声メッセージは、人工呼吸器を装着しているICU入室患者のせん妄予防に役立つ、潜在的に効果が高く低コストの非薬理学的介入であることが明らかになった」と結論付けている。

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