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1981.

第233回 40年前の“駆け込み増床”を彷彿とさせる“駆け込み開業”が起こる?診療所が多い地域で新規開業を許可制にする案を厚労省が提起

「医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージ」に関する議論進むこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。MLBのポストシーズンが盛り上がっています。10月6日(日本時間)のナショナルリーグ地区シリーズ、ドジャースvs.パドレス戦は、NHKはなんと地上波でライブで放送していました。第2戦は大谷 翔平選手と、ダルビッシュ 有投手の対戦が見応えがありました。大谷選手は3打数無安打で、ダルビッシュ投手の多彩な変化球に完全に抑えられていました。ダルビッシュ投手は2017年のポストシーズン、ロサンゼルス・ドジャースの投手としてワールドシリーズ進出に貢献、しかしその本番のワールドシリーズで、ヒューストン・アストロズとの戦いで2敗を喫し、ファンからは“戦犯”とまで非難され、同年にFA(フリーエージェント)で退団しています。ドジャースに対しては複雑な思いもあるであろうダルビッシュ投手のこの日の勝利は、いちファンとして感慨深いものがありました。サンディエゴ・パドレス、このまま上まで行くかもしれませんね。さて、今回は本格化してきた「医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージ」に関する議論について書きます。この問題については、本連載でも幾度か取り上げてきました。「第229回 武見厚労相最後の大仕事か?『医師偏在是正に向けた総合的な対策』の議論本格化」では現在議論されている骨子案の内容を紹介しました。この「対策パッケージ」、厚生労働省(以下、厚労省)のいろんな検討会等で議論が行われていますが、一体どこが主導してまとめていくのか見えづらいです。最終的には厚労省内の官僚チームがエイヤッとまとめ上げ、大して誰も傷まない中途半端なパッケージが出来上がるのではないかと心配です。9月30日にこのテーマが議論されたのは、第9回「新たな地域医療構想等に関する検討会」(座長:遠藤 久夫・学習院大学長)でした。ここでは、診療所が多い「外来医師多数区域」におけるさまざまな規制的手法が厚労省から提起され議論されました。新規開業時に足りない医療機能を要請できる仕組みを法制化規制的手法の案でとくに注目されたのは、診療所が多い「外来医師多数区域」において、開業希望者に地域で足りない医療機能を要請したり、新規開業を許可制にしたりするという案です。現状、診療所は免許を持つ医師が地方自治体に届け出れば、原則自由に開業できます。その点は、医療計画で2次医療圏ごとに病床数が規制されている病院よりもハードルは極めて低いと言えるでしょう。また、開業できる診療科も自由です。都道府県が開業を希望する医師に救急対応など足りない医療機能を設けることを要請できる仕組みが指針(外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン1))ベースでありますが、法律に規定されているわけではありません。つまり、在宅医療など地域に不足している医療機能の提供を開業希望者に強制することはできないのです。そこで今回、厚労省が「外来医師多数区域における新規開業希望者への地域で必要な医療機能の要請等の仕組みの実効性の確保」を目的に提起したのは、『指針』の仕組みの医療法での位置付け(法制化)です。それによって、外来医師多数区域の新規開業希望者に対して、事前に診療所で提供する予定の医療機能を記載した届け出を求め、都道府県はその届け出の内容を踏まえて、不足している医療機能の提供を要請できるようにするわけです。要請に従わない場合は勧告・公表などのペナルティも設けるとしています。また、外来医師多数区域での開業を許可制とし、開業の上限を定める案も提起しました。なお、検討に当たっては、憲法上の職業選択の自由・営業の自由との関係、規制の合理性、既存診療所との公平性および新規参入抑制による医療の質等について留意して検討を進めるとしています。「『営業の自由』に抵触する可能性も高く、規制的手法はまったく馴染まない」と日医常任理事こうした提起に対して、同検討会では賛成論、反対論の両方が出ました。10月1日付けのGemMed(旧メディ・ウォッチ)などの報道によれば、「医師偏在を強力に是正するためには規制を強める必要がある。優先すべき外来医師多数区域での新規開業対策である」(土居 丈朗・慶應義塾大学経済学部教授)、「医師多数区域に医師が集まる背景を分析して過剰集中を規制的に解決しなければ偏在は解消しない」(河本 滋史・健康保険組合連合会専務理事)といった積極的な賛成論が構成員から出ました。しかし一方で、「“日本国憲法第22条第1項から導かれる『営業の自由』”に抵触する可能性も高く、規制的手法はまったく馴染まない」(江澤 和彦・日本医師会常任理事)、「規制的手法を実行したとしても、医師は医師少数区域には行かず、医師多数区域の近隣に動くだけである」(伊藤 伸一・日本医療法人協会会長代行)といった反対論も、日本医師会をはじめとする医療提供側から出ました。ある構成員から、「都道府県が要請する機能を提供しない場合は保険医療機関の指定を取り消すなどの強い対応をすべき」との意見が出ましたが、日本医師会の江澤氏は、開業を希望する勤務医と地域の医師会などによる『協議の場』を作ることを提案、保険医療機関の指定取り消しなどの対応には反対したとのことです。地域の病院で働く医師を増やすために本当に効果があるかどうかは疑問私自身も、何らかの規制的手法の導入はもはや避けられないことだと思います。人口減少が急速に進む地方では、どんどん診療所や中小病院が閉鎖しています。そんなところに新規開業する医師はいませんから、早めに医療機関を集約して、基幹病院を中心とした医療・介護のネットワークを作っておかなければなりません(地方での診療所開業を促す策は、医療機関の集約化が喫緊の課題である現状では無意味でしょう)。しかし、その病院で働く医師がいないことにはネットワークも作れません。地方の病院で働く医師を半ば強制的に生み出す仕組みがまず必要です。現在検討されている医師偏在是正に向けたさまざまな対策には、そうした地域で働く医師を増やすための方策が多数盛り込まれており、それらがどこまで実効性のある仕組みにできるかがポイントと言えます。そのポイントの一つが、ベースとなる医師数の確保策であり、「外来医師多数区域」において足りない医療機能を要請して開業を牽制したり、新規開業を許可制にしたりする案もその一環ということになりますが、果たしてこれらの案が地域の病院で働く医師を増やすために本当に効果があるかどうか疑問です。「駆け込み増床」のように「駆け込み開業」が起きるかもとくに開業を許可制とし、開業の上限を定める案などは、医療計画の法制化で1980年代後半に起こった「駆け込み増床」のように「駆け込み開業」が起きるかもしれず、現実的ではないでしょう。現実的ではない、ということではこんな案はどうでしょう。そもそも医学部教育、医師の養成には、他学部の学生に比べて比較にならないほどの多額の税金が投入されています。ここはもう、“徴兵制”に匹敵するほどの厳しい勤務年限(自治医大や医学部地方枠のような)をすべて(か相当割合)の医学生に課すという案です。併せて医学部の授業料の無償化も進めていいかもしれません。いずれにせよ、「現実的ではない」と批判されるくらいの方策でないと、医師偏在対策の特効薬にはならないでしょう。今後の議論の行方に注目したいと思います。参考1)厚生労働省:外来医療について

1982.

ビタミンC摂取と片頭痛との関係

 これまでの研究で、ビタミンCが片頭痛の発症や重症度の低下と関連している可能性が示唆されているが、サンプル数が少なく、このエビデンスは限られている。中国・Sichuan Mental Health CenterのDehua Zhao氏らは、一般集団における食事中のビタミンC摂取と片頭痛との関連を明らかにするため、横断的研究を実施した。Journal of Human Nutrition and Dietetics誌オンライン版2024年9月10日号の報告。 1999〜2004年の国民健康栄養調査(NHANES)データを用いた。過去3ヵ月以内に重度の頭痛または片頭痛を経験した患者を、片頭痛患者として分類した。食事中のビタミンC摂取量は、24時間食事想起システムを用いて評価した。食事中のビタミンC摂取量と片頭痛との関連を評価するため、ロジスティック回帰モデル、制限付き3次スプライン(RCS)回帰、層別分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・本研究の参加者4,101例中、片頭痛患者は702例(17.12%)であった。・人口統計学的共変量、ライフスタイル共変量、臨床検査値、身体検査、身体活動、食事共変量、合併症で調整した後、食事中のビタミンC摂取と片頭痛との間に逆相関があることが明らかとなった(オッズ比[OR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.83〜0.96、p=0.002)。・ビタミンC摂取量で分類すると、ビタミンC摂取量が最も多い(Q4)場合、最も少ない場合(Q1)と比較し、片頭痛の調整済みORは0.64(95%CI:0.49〜0.84)であった(p=0.001)。・RCS回帰分析では、食事中のビタミンC摂取量と片頭痛との間に、直線的な逆相関が認められた(Pnon-linearity=0.449)。・結果には一貫性が認められ、異なるグループ間で有意な相互作用が認められなかった。 著者らは「食事中のビタミンC摂取量と片頭痛との逆相関が認められ、その関連性は、直線的な負の相関であることが明らかとなった」と結論付けている。

1983.

HR+/HER2-転移乳がんへのSG、アジア人での第III相試験(EVER-132-002)

 転移/再発のHR+/HER2-乳がんへのサシツズマブ ゴビテカン(SG)の有用性を検討したTROPiCS-02試験において、SGが化学療法に比べ無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に改善したことが報告されているが、本試験にはアジア人患者が3%しか登録されていない。今回、アジア人患者を対象とした無作為化第III相試験(EVER-132-002)で、SGが化学療法と比べPFSおよびOSの有意かつ臨床的意義のある改善を示したことを、中国・Chinese Academy of Medical Sciences & Peking Union Medical CollegeのBinghe Xu氏らが報告した。Nature Medicine誌オンライン版2024年10月1日号に掲載。・対象:転移または局所再発した切除不能のHR+/HER2-乳がんで、転移後に内分泌療法またはタキサンによる治療を1ライン以上、化学療法を2~4ライン受けたアジア(中国・台湾・韓国)人の患者・試験群:SG(1、8日目に10mg/kg静注、3週ごと)・対照群:医師選択による化学療法(エリブリン、カペシタビン、ゲムシタビン、ビノレルビンから選択)・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS[副次評価項目]OS、BICRによる奏効率(ORR)・奏効期間(DOR)・臨床的有用率(CBR)、安全性、QOLなど 主な結果は以下のとおり。・2020年12月9日~2022年12月2日にスクリーニングされた485例中、331例がSG群(166例)と化学療法群(165例)に無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値は、患者全体で13.4ヵ月(範囲:0.1~28.7)、SG群で14.5ヵ月(同:1.3~27.8)、化学療法群で12.7ヵ月(同:0.1~28.7)だった。・PFSはSGで改善し(ハザード比[HR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.52~0.87、p=0.0028)、中央値はSG群が4.3ヵ月、化学療法群が4.2ヵ月だった。・OSもSGで改善し(HR:0.64、95%CI:0.47~0.88、p=0.0061)、中央値はSG群が21.0ヵ月、化学療法群が15.3ヵ月だった。・ORRはSG群が20%、化学療法群が15%、DOR中央値はSG群が5.3ヵ月、化学療法群が5.2ヵ月だった。・Grade3以上の治療関連有害事象で多かったのは、好中球減少、白血球減少、貧血であった。 著者らは「本試験におけるSG の有効性と安全性はTROPiCS-02 試験の結果と一致しており、アジア人の内分泌療法抵抗性で既治療の転移/再発のHR+/HER2-乳がん患者における新たな治療選択肢としてSGを投与することを支持している」とまとめている。

1984.

切除可能NSCLC、周術期ペムブロリズマブの追加が有効(KEYNOTE-671)/Lancet

 未治療の切除可能な早期非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、術前化学療法単独と比較し、術前ペムブロリズマブ+化学療法と術後ペムブロリズマブ療法を行う周術期アプローチは、3年全生存率が有意に優れ、無イベント生存期間が延長し、安全性プロファイルも良好であることが、カナダ・マギル大学ヘルスセンターのJonathan D. Spicer氏らが実施した「KEYNOTE-671試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年9月28日号で報告された。国際的な無作為化プラセボ対照第III相試験 KEYNOTE-671試験は、日本を含む世界189施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2018年5月~2021年12月に参加者の無作為化を行った(Merck Sharp & Dohmeの助成を受けた)。 年齢18歳以上、未治療の切除可能なStageII、IIIA、IIIB(N2)のNSCLCで、全身状態はECOG PSが0または1の患者を対象とした。 術前にペムブロリズマブ(200mg、3週ごとに静脈内投与)+シスプラチンベースの化学療法を4サイクル行った後に手術を施行し、術後ペムブロリズマブ(200mg、3週ごとに静脈内投与)療法を13サイクル行う群(ペムブロリズマブ群)、または術前にプラセボ(3週ごとに静脈内投与)+シスプラチンベースの化学療法を4サイクル行った後に手術を施行し、術後にプラセボ(3週ごとに静脈内投与)を13サイクル投与する群(プラセボ群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は2つで、ITT集団における全生存期間(無作為化から全死因による死亡までの期間)および無イベント生存期間(無作為化から、予定された手術を不可能にする局所進行、手術時の切除不能腫瘍の存在、RECIST version 1.1に基づく担当医評価の病勢進行または再発、全死因死亡、いずれかが最初に発生するまでの期間)とした。全生存期間中央値は未到達 797例を登録し、ペムブロリズマブ群に397例(年齢中央値63歳、女性118例[30%]、東アジア人123例[31%])、プラセボ群に400例(64歳、116例[29%]、121例[30%])を割り付けた。2回目の中間解析時の追跡期間中央値は36.6ヵ月だった。 Kaplan-Meier法による36ヵ月全生存率は、プラセボ群が64%であったのに対し、ペムブロリズマブ群は71%と有意に優れた(ハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.56~0.93、p=0.0052[片側])。全生存期間中央値は、ペムブロリズマブ群では未到達であり、プラセボ群では52.4ヵ月であった。 また、無イベント生存期間中央値は、プラセボ群の18.3ヵ月に比べ、ペムブロリズマブ群では47.2ヵ月と延長した(HR:0.59、95%CI:0.48~0.72)。新たな安全性シグナルの出現はない as-treated集団の解析では、治療関連有害事象はペムブロリズマブ群で97%(383/396例)、プラセボ群で95%(381/399例)に認めた。Grade3以上の治療関連有害事象は、ペムブロリズマブ群で45%(179例)、プラセボ群で38%(151例)に、重篤な治療関連有害事象はそれぞれ18%(73例)および15%(58例)に発現した。 ペムブロリズマブ群では、死亡に至った治療関連有害事象が1%(4例)(心房細動、免疫介在性肺疾患、肺炎、心臓突然死、各1例)、すべての治療の中止に至った治療関連有害事象が14%(54例)で発生した。免疫介在性有害事象およびインフュージョンリアクションは、ペムブロリズマブ群で26%(103例)にみられた。 著者は、「周術期ペムブロリズマブの効果に関する有益性は、健康関連QOLの長期的な低下を伴わず、新たな安全性シグナルは出現しなかったことである」とし、「これらの知見は、切除可能なStageII~IIIB(N2)NSCLCに対する術前化学療法への周術期ペムブロリズマブの追加は、標準治療の選択肢となる可能性があることを支持するものである」と述べている。

1985.

重度の便秘、メタン生成菌の過剰増殖が原因か

 重度の便秘の原因は、メタンを生成する腸内微生物(メタン生成菌)の過剰な増殖である可能性が、新たな研究で明らかになった。腸内細菌叢のバランスが崩れて腸内メタン生成菌異常増殖症(IMO)が引き起こされている人では、IMOがない人に比べて重度の便秘が生じるリスクが約2倍高いことが明らかになったという。米シーダーズ・サイナイ消化管運動プログラムの医療ディレクターを務めるAli Rezaie氏らによるこの研究の詳細は、「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に8月13日掲載された。 人間の腸内には、細菌、ウイルス、真菌、古細菌など、数兆個もの微生物が生息している。このような腸内微生物は、食物の消化の促進や免疫反応の管理など、健康の維持に重要な役割を果たしている。しかし、有害な微生物が有益な微生物を駆逐して健康上の問題を引き起こすこともある。例えば、Clostridioides difficileという細菌が腸内に定着すると、ひどい下痢を引き起こすことがある。 メタン生成菌は、細菌や真菌とは異なる微生物の一種である古細菌に分類され、IMOは便秘などのさまざまな病気の発症機序に関与していることが示唆されている。このことからRezaie氏らは今回、IMOの症状の特徴を明らかにするために、19件の研究(対象は、IMO患者1,293人、IMOのない対照3,208人)を対象にシステマティックレビューとメタアナリシスを行い、IMOのある人とない人の消化器症状の発生率と重症度を比較した。 IMO患者には、膨満感(78%)、便秘(51%)、下痢(33%)、腹痛(65%)、吐き気(30%)、おなら(56%)など、さまざまな消化器症状が認められた。解析の結果、IMO患者は対照に比べて、便秘の発生率が有意に高かったが(47%対38%、オッズ比〔OR〕2.04、95%信頼区間〔CI〕1.48〜2.83、P<0.0001)、下痢の発生率は低いことが明らかになった(37%対52%、OR 0.58、95%CI 0.37〜0.90、P=0.01)。また、IMO患者は対照に比べて、便秘の重症度は有意に高いが(標準化平均差〔SMD〕0.77、95%CI 0.11〜1.43、P=0.02)、下痢の重症度は有意に低いことも示された(SMD −0.71、95%CI −1.39〜−0.03、P=0.04)。 便秘は一般的に、食物繊維の摂取不足や薬の副作用などが原因とされるが、研究グループは、腸内細菌の構成も便秘の一因である可能性を疑っていたという。Rezaie氏は、「われわれの研究により、IMO患者は便秘、特に重度の便秘になりやすい一方で、重度の下痢になる可能性は低いことが明らかになった」と述べている。 研究グループは、IMOを原因とする便秘の治療には、抗菌薬と腸内細菌の健康促進を目的とした特別な食事療法を組み合わせる必要があると話す。最も一般的な方法である下剤による治療は、症状を一時的に緩和するものの、問題の根本的な解決にはならない。そのため研究グループは、まずは呼気検査によりIMOの有無を確認することが重要だと話す。 Rezaie氏によると、IMOは簡単な呼気検査で確認できるという。同氏は、「腸内に古細菌が過剰に存在するとメタンの生成が増え、その一部が血流に入り込んで肺に運ばれ、呼気として排出される。IMOの診断テストは、そのような呼気中のメタンを利用して行われる。基本的に、メタンが過剰に存在する人は、便秘、鼓腸、腹部膨満感、下痢など、多くの消化器症状を呈する」と説明する。 Rezaie氏は、「将来的には、IMOを原因とする便秘に悩む人を対象に、特定の治療法や個別化された治療法の開発を進めたいと考えている。そのための最初のステップは、呼気検査により過剰なメタン生成を特定し、古細菌の過剰増殖を検出することだ。それが、最終的にはより的を絞った治療法の開発につながる可能性がある」と話す。同氏はさらに、「これは、一般的な下剤による治療から脱却するための大きな一歩だ」と付言している。

1986.

レジリエンスの高さは長寿と関連

 困難に対処する能力の高い人ほど長生きする可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。50歳以上の1万人以上を対象にしたこの研究では、レジリエンス(精神的回復力)のレベルが最も高い人は最も低い人に比べて、今後10年以内に死亡するリスクが53%低いことが示されたという。中山大学公共衛生学院(中国)疫学分野のYiqiang Zhan氏らによるこの研究は、「BMJ Mental Health」に9月3日掲載された。 レジリエンスは、性別やホルモン、身体のストレス反応を制御する遺伝子など、さまざまな要因の影響を受ける動的で活発なプロセスであることが示唆されている。また、レジリエンスはライフサイクルのさまざまな時期にわたって進化し、変化すると考えられている。Zhan氏らは、「保護要因の観点からレジリエンスが議論されることが多いように、レジリエンスが備わっている人では、大きな混乱を引き起こす出来事に直面しても、相対的な安定を維持することができる」と説明する。 高齢者では、適切なコーピングスキル(ストレスに対処する能力)が、長期的な健康問題やそれに伴う障害の影響を軽減する助けになることがある。また、病気や外傷から身体的に回復する能力は、老化の遅延や死亡リスクの低下に関連していることが知られている。しかし、レジリエンスにも同様の効果があるのかどうかは明らかになっていない。 そこでZhan氏らは、50歳以上の人を対象とした米国の「健康と退職に関する研究(Health and Retirement Study;HRS)」のデータを用いて、レジリエンスとあらゆる原因による死亡(全死亡)との関連を検討した。HRSは1992年に開始された研究だが、本研究では、調査内容にレジリエンスが含められた2006年以降の2回分(2006〜2008年)の調査データが用いられた。調査参加者は、忍耐力、冷静さ、目的意識、自立心などの資質を測定する尺度により評価されたレジリエンスのスコアに応じて、最も低いQ1群から最も高いQ4群の4群に分類された。解析は、調査データが全てそろった1万569人(平均年齢66.95歳、女性59.84%)を対象に行われた。対象者の死亡については、2021年5月まで追跡された。 追跡期間中に確認された全死亡件数は3,489件だった。解析の結果、レジリエンスと全死亡はほぼ線形関係にあることが明らかになった。10年間の生存率は、Q1群で61.0%、Q2群で71.9%、Q3群で77.7%、Q4群で83.9%であった。到達年齢、性別、人種、BMIを調整した解析からは、Q4群ではQ1群に比べて全死亡リスクが53%有意に低いことが示された(ハザード比0.473、95%信頼区間0.428〜0.524、P<0.0001)。交絡因子に糖尿病や心臓病、がん、高血圧などの基礎疾患を含めて解析すると、この関連は弱まって46%の低下に、さらに喫煙状況や運動習慣、婚姻状況も含めた場合には38%の低下となった。 研究グループは、「この研究は、交絡因子を考慮した後でも、高齢者や退職者のレジリエンスと全死亡リスクとの間に統計学的に有意な関連を認めた点でユニークだ」と述べている。また、「得られた結果は、死亡リスクを軽減するためのレジリエンスの促進を目的とした介入の潜在的な有効性を明示するものだ」との見方を示している。

1987.

高齢男性の筋肉量、食事摂取量に左右されず?

 地域在住高齢者の筋肉量の多寡と食事・栄養素摂取量の関係を、性別に検討した結果が報告された。女性で筋肉量の少ない人は食事摂取量が少ないが、男性はそのような差がないという。順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学の加賀英義氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Geriatrics」に7月18日掲載された。著者らは、性差に配慮したサルコペニア予防戦略の必要性を指摘している。 高齢社会の進展とともにサルコペニア(筋肉量や筋力低下)対策が公衆衛生上の喫緊の課題となっている。筋肉量や筋力を高めるために、タンパク質を中心とする十分な栄養素摂取が推奨されているが、高齢者の筋肉量と栄養素摂取量の関連については不明点も残されている。そこで加賀氏らは、都市在住高齢者コホート研究である「文京ヘルススタディ」のベースラインデータを横断的に解析し、詳細な検討を行った。 解析対象は東京都文京区に住む65~84歳の高齢者1,618人(平均年齢73.1±5.4歳、男性42.0%)。生体インピーダンス法で測定した四肢骨格筋量を基に骨格筋量指数(SMI)を算出し、アジアのサルコペニア診断基準(男性は7.0kg/m2未満、女性は5.7kg/m2未満)に基づいて二分すると、男性の31.1%、女性の43.3%が低SMIと判定された。男性・女性ともに低SMI群は、年齢が高く、BMIが低値だった。ただし体脂肪率については、女性は低SMI群で低値だったが(29.6対32.7%、P<0.001)、男性は有意差がないという(24.3対24.6%、P=0.544)、性別による違いが認められた。 食事・栄養素摂取量は、簡易型自記式食事歴質問票で調査した。年齢、身長、体重、身体活動量で調整後、女性は低SMI群の方が、摂取エネルギー量と主要栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質)の摂取量が有意に少なく、また微量栄養素(ビタミン、ミネラル)についてもその多くで、低SMI群の摂取量が有意に少なかった。その一方、男性では、低SMI群と高SMI群とで摂取エネルギー量や主要栄養素の摂取量に有意差がなく、また大半の微量栄養素の摂取量も有意差がなかった(マンガンと銅のみ低SMI群で低値)。 食品の摂取量を比べた場合、男性は全ての食品群で差が観察されなかった。女性では、脂肪分の多い魚や豆腐、油揚げは低SMI群の摂取量が少なく、反対に小麦製品の摂取量は高SMI群の方が少なかった。 著者らは本研究が横断研究であるという限界点を挙げた上で、「都市在住高齢者の筋肉量の多寡と食事・栄養素摂取量の関係には性差が存在しており、サルコペニア予防のための栄養介入では性別を考慮する必要があるのではないか。女性に対しては摂取エネルギー量を全体的に増やすようにアドバイスすることが重要と考えられる」と結論付けている。他方、男性については低SMI群と高SMI群とで摂取エネルギー量および、ほぼ全ての栄養素・食品の摂取量に有意差が認められなかったため、「サルコペニアの予防法を探るさらなる研究が必要」としている。 なお、論文の考察では、男性において食事や栄養素の摂取量に差がないにもかかわらずSMIに差が生じるメカニズムとして、消化・吸収や体タンパク質の同化・異化の違いなどが関与している可能性が述べられている。また、有意水準未満ながら、低SMI群では米の摂取量が少ない一方でパンの摂取量が多く、さらに動物性タンパク質の摂取量も非有意ながら低SMI群で少なかったことなどが記されている。

1988.

長期間のSU薬使用が低血糖の認識力の低下と関連

 SU薬が長期間処方されている2型糖尿病患者は、低血糖の認識力が低下した状態(impaired awareness of hypoglycemia;IAH)の頻度が高いとする研究結果が報告された。国立成功大学(台湾)のHsiang-Ju Cheng氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Family Medicine」の7・8月号に掲載された。 IAHに関する研究は一般的にインスリン使用者、特に1型糖尿病患者を対象に行われることが多いため、インスリン分泌促進薬(主としてSU薬)を使用中の2型糖尿病患者におけるIAHの実態は不明点が少なくない。これを背景としてCheng氏らは、台湾でインスリンまたはSU薬による治療を受けている2型糖尿病患者を対象として、薬剤の使用期間とIAHの有病率との関係を調査した。 薬局や診療所などを利用している2型糖尿病患者898人が研究登録された。このうちインスリン使用者が41.0%、SU薬使用者が65.1%であり、平均年齢は59.9±12.3歳、女性が50.7%、罹病期間14.0±9.8年だった。IAHの有無は、Goldらにより開発された質問票(Gold-TW基準)、およびClarkeらにより開発された質問票(Clarke-TW基準)の中国語版を用いて判定。そのほかに、社会人口統計学因子、治療歴、健康状態などの情報を収集し、多重ロジスティック回帰モデルにて、薬剤使用期間とIAHとの関係を検討した。 インスリン使用者におけるIAHの有病率は、Gold-TW基準では41.0%(95%信頼区間37.0~45.0)、Clarke-TW基準では28.2%(同24.6~31.8)であった。一方、SU薬使用者では同順に65.3%(60.4~70.2)、51.3%(46.2~56.4)であった。SU薬使用者では、使用期間が長いほど有病率が上昇していたが、インスリン使用者では反対に、使用期間が長いほど有病率が低下していた。 潜在的な交絡因子を調整後、5年以上のSU薬の使用は、IAHのオッズ比(OR)の有意な上昇と関連していた(Gold-TW基準でOR3.50〔2.39~5.13〕、Clarke-TW基準でOR3.06〔同2.11~4.44〕)。なお、定期的な血糖検査や眼底検査の施行は、インスリン使用者およびSU薬使用者の双方において、オッズ比の低下と関連していた。 著者らは、「2型糖尿病患者においてSU薬の使用期間の長さはIAHのリスク上昇と関連していた。一方で定期的な検査を受けている患者ではIAHのリスクが低いことが示され、医療モニタリングの遵守が有益な影響を及ぼす可能性のあることが示唆された」と総括。また、「インスリンとSU薬とでなぜIAHリスクが異なるのかという点を明らかにするとともに、2型糖尿病患者の低血糖認識力を改善するための介入法を確立するため、医師の治療方針とIAHリスクとの間にある因果関係を証明し得るデザインでの研究が必要とされる」と述べている。

1989.

家庭用血圧計のカフのサイズは上腕囲に合っている?

 高血圧患者に対しては自宅での血圧モニタリングが推奨されているが、米国成人の約7%に当たる1700万人以上で、家庭用血圧計に付属のカフのサイズが上腕囲に合っていないため、血圧を正確に測定できていない可能性のあることが明らかになった。米ジョンズ・ホプキンス大学疫学分野の松下邦洋氏らによるこの研究結果は、米国心臓協会(AHA)のHypertension Scientific Sessions 2024(9月5〜8日、米シカゴ)で発表されるとともに、「Hypertension」に9月5日掲載された。 AHAによると、米国の成人のほぼ半数が高血圧と診断されている。コントロールされていない高血圧は、心筋梗塞、脳卒中、心不全などの発生リスクを高める。AHAは、高血圧患者に対して、家庭用血圧計による血圧の測定・記録を推奨しており、その際に使う血圧計は、手首で測るタイプよりも上腕で測るタイプの方が望ましいとの見解を示している。 今回の研究では、大手オンライン小売業者を通じて販売されている最も一般的な10種類の血圧計のカフの評価が行われた。それぞれの血圧計に付属のカフは、10種類中9種類が22〜42cmの上腕囲に、残る1種類は22〜40cmの上腕囲に対応するものだった。次いで、2015年から2020年の間の1万3,826人(平均年齢47歳)を対象とした米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを用いて、対象者の上腕囲を調べた。 その結果、米国成人の約7%に相当する1730万人において、カフのサイズが上腕囲と合っていないことが明らかになった。そのような人の大半(米国成人の6.4%に相当する1650万人)は上腕囲が42cmを超えていた。また、カフのサイズが上腕囲と合っていなかった人は、黒人で特に多かった(黒人12%、白人7%、ヒスパニック系5%)。松下氏は、「黒人の成人での高血圧罹患率はもともと高めな上に、今も上昇傾向にあることを考えると、このカフサイズにおける不公平は特に懸念すべきことだ」とAHAのニュースリリースの中で述べている。 研究グループは、一部のメーカーは追加のカフサイズを提供しているものの、それを手に入れるためには余分な費用がかかると指摘する。松下氏は、「公平性を高めるために、家庭用血圧計のメーカーは、上腕囲が42cmを超える人でも測定できる血圧計の開発と手頃な価格での販売を優先すべきだ。また医療従事者も、家庭用血圧計を購入する際に患者が適切なカフサイズを選択できるよう、患者の上腕囲を測定するべきだ。機器設計におけるサイズの不公平に対処することは、高血圧の診断・管理の質と公平性にとって非常に重要だ」と主張する。 本研究には関与していない、米チューレーン大学公衆衛生・熱帯医学分野のPaul Whelton氏は、「この研究は、高血圧患者にとって実用的な情報を提供している」と話す。同氏は、「サイズの合わないカフの使用は、血圧測定中に予測可能な誤差が生じる重要な原因の一つだ」と指摘する。 Whelton氏は本研究で、カフのサイズが小さ過ぎた例(1650万例)の方が大き過ぎた例(80万例)よりも圧倒的に多かったことに言及し、「これは、標準的なサイズのカフを使用すると、高血圧を過小評価するよりも過大評価する可能性の方がはるかに高いことを意味する。最善の解決策は、さまざまなサイズのカフを用意して、患者が自分に適したサイズのカフを選択できるようにすることだ」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

1990.

後発品使用(調剤)加算の特例措置、7回目の延長へ【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第139回

まだまだ後発医薬品の流通が適正化されません。2024年9月24日付事務連絡「後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱いについて」が出され、いわゆる後発医薬品使用(調剤)体制加算などにおける臨時的な取り扱いが半年間延長されました。後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱いについて(抜粋)一部の供給停止品目と同一成分・同一投与形態の医薬品について、後発医薬品の使用(調剤)割合を算出する際に除外しても差し支えないものとする。2025年3月31日を終期とする。除外対象となる医薬品は102成分825品目。この通知は半年ごとに出されており、もう7回目になります。もうそんなになるのか…と遠い目をしている人も少なくないでしょう。後発医薬品製造会社である小林化工(現在は業を廃止)のGMP違反が発覚したのが2020年末で、後発医薬品の欠品や出荷調整などの供給不安が薬局運営に影を落とし始めたのが2021年春ごろでした。そのような状況を受け、2021年9月21日に最初の通知が出され、一部の供給停止品目と同一成分・同一投与形態の医薬品は、後発医薬品の使用(調剤)割合を算出する際に除外してもよいとされました。新たな通知を出すことでこの臨時的な取り扱いを半年間延ばし続けています。もう3年以上もこの通知が出続けているということは、後発医薬品の在庫が足りず、薬局において在庫を確保する負担がゆうに3年以上かかり続けているということです。そろそろいい加減にしてくれよと言いたくなります。一番大変だったときと比べると少しは改善している気もしますが、来年の3月末までに解消している気はしないので、また半年延長になるんでしょ…という半ばあきらめの予測をせざるを得ません。一方で、10月から選定療養が始まりました。後発医薬品のある先発医薬品(いわゆる長期収載品)を希望した場合、その後発医薬品の差額の4分の1相当を患者さんが自己負担する仕組みです。長期収載品を希望する理由は人それぞれですが、患者さんの中には「なんとなく安全そうだから」というざっくりとしたイメージから希望している人も少なくなく、「では、差額を頂戴します」と言われると「じゃあ後発医薬品で」となることは安易に想像できます。結果として後発医薬品の使用割合がさらに上がり、後発医薬品の在庫調達問題はより厳しくなることは間違いないでしょう。また半年後にしれっと延長の通知が出るのか、何か根本的に改善されるような一手が打たれるのか。後者を期待しながら、日々の在庫調達に励むしかないのかな…と思うところです。

1991.

10月8日 骨と関節の日【今日は何の日?】

【10月8日 骨と関節の日】〔由来〕ホネの「ホ」の文字が「十と八」に分かれ、10月8日が「体育の日」に近いことから、骨の健康にふさわしい季節として1999(平成11)年に日本整形外科学会が制定。「骨と関節の日」制定の目的は、整形外科の医療内容の理解の啓発、骨と関節を中心とした運動器官の健康がどれだけ健康維持に大切かを社会に認知してもらうこと。この日を中心にさまざまな行事が全国で行われている。関連コンテンツ関節痛への対応【日常診療アップグレード】骨折多発地帯はどこ?【患者説明用スライド】植物ベースの食事、内容で骨折リスクは変わるか?20代より身長4cm以上低下、椎体骨折を疑う/日本整形外科学会過去1年に転倒、骨折リスクがより高いのは男性?女性?

1992.

英語で「触知可能です」は?【1分★医療英語】第151回

第151回 英語で「触知可能です」は?《例文1》Palpable cervical lymph nodes were found on physical exam.(身体診察で触知可能な頸部リンパ節が見付かりました)《例文2》Left supraclavicular lymph node was palpable, and we should discuss this case further.(触知可能な左鎖骨上リンパ節があり、この症例についてさらに検討する必要があります)《解説》今回は身体診察の所見の表現方法を解説します。「触知可能である」は形容詞の“palpable”という単語で表現します。動詞に“-able”と語尾に付けることで「~が可能である」という意味の形容詞になります。今回の場合、“palpate”(触診する)という動詞に“-able”を付けることで“palpable”、「触知可能である」という意味になるわけです。このように“-able”を語尾に付けることで動詞から変化した形容詞はほかにも多くあります。たとえば、“movable”は「可動性がある」という形容詞ですが、こちらも動詞の“move”(動く)に“-able”を付けた形です。文章にすると、“The lymph node is movable.”(このリンパ節は可動性があります)といった表現になります。実際の医療の場面でも使えますね。“lymph node(s)”という単語は「リンパ節」という意味です。せっかくですので、主要なリンパ節の英語表現も挙げておきましょう。cervical lymph nodes頸部リンパ節axillary lymph nodes腋窩リンパ節inguinal lymph nodes鼠径リンパ節mediastinal lymph nodes縦隔リンパ節supraclavicular lymph nodes鎖骨上リンパ節ぜひ、リンパ節とそれに付随する所見の表現方法を覚えてください。講師紹介

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肺がん診療のリアル

肺がん診療の現在(リアル)がわかる! 肺がん診療が面白くなる!!呼吸器専門医・がん治療認定医である経験豊富な著者が実際に肺がん患者さんに対して行っている診療を1冊の書籍にまとめました。本書は著者が発信している肺がん患者さん向けのYouTube『呼吸器ドクターNの肺がんチャンネル』とも連動しており、QRコードで関連動画に簡単にアクセスできます。本書とあわせて動画をご視聴いただくと、肺がん診療についてさらに理解を深めていただくことができるはずです。本書を通じて肺がん診療のリアルを感じてください。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する肺がん診療のリアル定価4,950円(税込)判型A5判頁数250頁発行2024年10月著者野口 哲男(市立長浜病院呼吸器内科/呼吸器ドクターN)ご購入はこちらご購入はこちら

1995.

第235回 第III相試験の壁高し~スタチンの多発性硬化症治療効果示せず

第III相試験の壁高し~スタチンの多発性硬化症治療効果示せず第III相試験の壁は高く、第II相試験結果から期待されたスタチンの多発性硬化症(MS)治療効果が認められませんでした1,2)。スタチンは脂質異常症を治療し、心血管や脳の虚血疾患を予防するのに広く使われています。それらの効果にはコレステロール低下に加えて、コレステロールとは独立した働きもどうやら寄与しているようです。免疫調節作用がその1つで、スタチンは炎症性細胞が血液脳関門(BBB)を通れるようにするタンパク質ICAMのリガンドであるLFA-1を阻害します。また、自己攻撃性T細胞が作るサイトカインを炎症促進から抗炎症のものに変えることも示されています。スタチンは細胞保護作用や脳血管の血行改善作用などもあり、MSの初期の炎症のみならず脳実質細胞や血管を障害するより進行した段階の患者にも有効と目されました。そのような期待を背景にして、スタチンの1つであるシンバスタチンの二次性進行型MS(secondary progressive MS)治療効果を調べた第II相MS-STAT試験は2008年に始まりました。試験には二次性進行型MS患者140例が参加し、半数(70例)ずつ高用量(80mg)のシンバスタチンかプラセボを投与する群に割り振られました。結果は遡ること10年前の2014年にLancet誌に掲載され、本サイトの同年の記事でも紹介されているとおり、脳萎縮を遅らせるシンバスタチンの有望な効果が認められました3)。また、体の不自由さの進行を抑制する効果も示唆されました。検査2つ(EDSSとMSIS-29)の2年時点での比較でシンバスタチン投与群がプラセボに有意に勝りました。ただし、別の身体機能検査MSFCはプラセボと有意差がつきませんでした。また、新規/拡大脳病変の発生率や再発率もプラセボと有意差がありませんでした。とにかく主な目的であった脳萎縮の抑制効果が認められたことを受け、著者のロンドン大学のJeremy Chataway氏らは第III相試験での検討が必要と結論しています。Chataway氏らが引き続き率いた第III相MS-STAT2試験は第II相試験結果のLancet誌掲載から4年後の2018年3月末に英国の患者団体MS Societyなどの協力の下で始まりました4)。その翌々月5月から2021年9月までの2年半弱に英国の31の病院から被験者が集められ、二次性進行型MS患者964例がシンバスタチンかプラセボ投与群に1対1の割合で割り振られました5)。主要アウトカムは第II相試験でも使われたEDSSに基づく身体障害の進行率でした。ベースラインのEDSSが6点未満だった患者はEDSSの1点以上の上昇、ベースラインのEDSSが6点以上だった患者はEDSSの0.5点以上の上昇が身体障害の進行と判定されました。その結果は上述したとおりで、シンバスタチンは二次性進行型MS患者の身体障害の悪化を遅らせることはできませんでした1)。残念な結果ではありますが、英国のMSコミュニティーが大規模で高品質の臨床試験を担えることをMS-STAT2試験は知らしめました。30年前は皆無だったMS治療は今や幸い増えているもののまだ不十分です。進行性MSに効きそうな薬一揃いを検討しているOctopus6)のような高品質の臨床試験に引き続き投資する、とMS Societyの臨床試験部門リーダーEmma Gray氏は言っています7)。参考1)Cholesterol drug found to be ineffective for treatment of multiple sclerosis / UCL 2)Simvastatin Fails to Reduce Disease Progression in Phase 3 MS-STAT2 Trial of Secondary Progressive Multiple Sclerosis / NeurologyLive3)Chataway J, et al. Lancet. 2014;383:2213-2221.4)Multiple Sclerosis-Simvastatin Trial 2(MS-STAT2)5)Evaluating the effectiveness of simvastatin in slowing the progression of disability in secondary progressive multiple sclerosis(MS-STAT2 trial):a multicentre, randomised, placebo-controlled, double-blind phase 3 clinical trial / ECTRIMS 2024 6)Octopus: Optimal Clinical Trials Platform for Multiple Sclerosis7)MS-STAT2 trial shows that simvastatin is not an effective treatment for secondary progressive MS / Multiple Sclerosis Society.

1996.

出産数・初産年齢とマンモグラフィ濃度の関連~22ヵ国1万1千人のデータ

 年齢やBMIはマンモグラフィ濃度(MD)に強く影響すると同時に乳がん発症リスクとも関連することが確立されているが、出産数、初産年齢、授乳歴とMDとの関連は明らかになっていない。今回、アイルランド・RCSI University of Medicine and Health SciencesのJessica O’Driscoll氏らが、International Consortium of Mammographic Density(ICMD)で検討した結果、出産数とMDは逆相関、初産年齢とMDは正相関し、乳がんリスクとの関連性と一致することが示された。Breast Cancer Research誌2024年9月30日号に掲載。 ICMDは、乳がんではない35~85歳の1万1,755人の女性の疫学・MDデータをプールした22ヵ国27研究の共同研究であり、40の国・民族の集団を網羅している。著者らは、集団群間のメタ解析およびプール解析を用いて、高濃度乳房面積/全乳房面積(PMD)、高濃度乳房面積(DA)、非高濃度乳房面積(NDA)の平方根(√)と出産数、初産年齢、授乳歴の有無、生涯授乳期間との線形回帰の関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・これらの解析対象となった1万988人の女性のうち、90.1%(9,895人)で出産経験があり、うち13%(1,286人)が5回以上経験していた。初産時の平均年齢は24.3歳であった。・出産数(1回増加当たり)は、√PMD(β:-0.05、95%信頼区間[CI]:-0.07~-0.03)および√DA(β:-0.08、95%CI:-0.12~-0.05)と逆相関し、この傾向は少なくとも出産が9回まで明らかであった。・初産年齢(5歳増加当たり)は、√PMD(β:0.06、95%CI:0.03~0.10)および√DA(β:0.06、95%CI:0.02~0.10)と正相関し、√NDA(β:-0.06、95%CI:-0.11~-0.01)と逆相関した。・出産経験のある女性において、授乳歴の有無・生涯授乳期間はMDとの関連は認められなかった。

1997.

高齢者の便秘症放置は予後不良のリスクに/ヴィアトリス

 ヴィアトリス製薬は、「『便通異常症診療ガイドライン』改訂1年を踏まえた慢性便秘症治療の新しい当たり前」をテーマに都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、とくに高齢者に多い慢性便秘症についてガイドラインの作成に携わった専門医が便秘症の概要と高齢者に多い便秘症とその介護についてレクチャーを行った。便秘は循環器疾患や脳血管疾患のリスク 「慢性便秘症」をテーマに伊原 栄吉氏(九州大学大学院医学研究院病態制御内科学 准教授)が、便秘症の疾患概要、排便の仕組み、診療ガイドラインの内容、最新の慢性便秘症の治療について説明した。 最新の研究では、便秘は循環器や脳血管疾患などの重篤な疾患とも関連があり、排便回数が4日に1回以下の場合、そのリスクが上昇することが報告されている1)。便秘の有訴率は、60歳以下の女性に多いが、高齢者ではその性差はなくなり、高齢者の25%は便秘に悩んでいる。 排便は、消化管の蠕動運動と腸の水分調節が大きな因子となり、この両方に胆汁酸が関連することが知られている。そして、結腸からの通過時間と直腸の排便機能のどちらかに問題があると便秘となる。便の形状も重要であり、ブリストル便形状スケールの4(表面なめらか、やわらかいソーセージ様)が理想的な形状であり、これ以外の形状では排便で弊害をもたらす。こうした仕組みで、高齢者では先述の水の調整機能の低下や結腸蠕動の低下、直腸・肛門排便機能の低下により便秘になりやすいことが知られている2)。新しい診療ガイドラインのポイント 次に診療ガイドラインの改訂ポイントについて触れ、「便秘症と慢性便秘症の定義の改訂」、「新しい慢性便秘症治療薬を含めた診療フローチャートの作成」、「オピオイド誘発性便秘症の治療方針の提示」の3項目が大きく改訂、追加されたことを述べた。 とくに慢性便秘症では「長期生命予後に関連する」ことが追加記載されたほか、慢性便秘症診療のフローチャートが作成され、機能性便秘症とオピオイド誘発性便秘などの診療が区別された。 慢性便秘症の治療目的は、排便回数や症状改善、QOLの向上から「残便感のないスッキリ便」と「便形状の正常化」へシフトしている。また、診療では、まず大腸がんが隠れていないか鑑別診断を行い、「便が出ないか、出せないのか」の診断へと進んでいく。 通常の原因は結腸の運動が弱くなることで排便に問題があるケースが多く、治療では食事療法(3食摂取/適度な水分/食物繊維を多く、脂肪分を少なくなど)と生活習慣改善(生活のリズム/十分な睡眠/便意を我慢しない/適度な運動と休息など)がまず指導される。 これらで改善しない場合に内服薬治療として、酸化マグネシウム薬(腎臓機能低下者には使用しない)などの腸に水を引く治療薬が第1選択薬として使用される。  さらに改善しない場合には、新しい便秘薬として、上皮機能変容薬と胆汁酸トランスポーター阻害薬の使用が考慮され、ケースによっては短期間頓用として刺激性下剤の追加も考慮される。とくに刺激性下剤は、「頻用することで大腸などの蠕動運動を低下させ、さらなる便秘を誘発するリスクがあるため短期間で止めるべき」と伊原氏は注意を促す。 最後に伊原氏は「生活習慣改善・食事療法に非刺激性下剤で改善せず、刺激性下剤を使用しないと排便できないケースでは、医療機関を受診することを勧める。消化管を中心に体のバランスは維持されるので、便秘治療は重要」と述べ、講演を終えた。高齢者の便秘は、時に死亡のリスクへつながる 「たかが便秘? 高齢者便秘とその介護者の“便秘介護”」をテーマに、中島 淳氏(横浜市立大学大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学教室 主任教授)が高齢者の便秘診療について講演を行った。 高齢者は加齢による排便機能の低下などにより70歳以上で男女ともに便秘症の患者が増加する。とくに高齢者では、基礎疾患の治療に伴う「薬剤性の便秘」が問題となっており、糖尿病や消化器疾患の治療薬での便秘症状が多いという。また、高齢者では便の形状も重要で、ブリストル便形状スケール(4の正常便が理想)の1~3の硬い便だと排便時のいきみなどで血圧上昇が起こり心血管系疾患を誘発するリスクとなる。一方、便スケール5~6の軟便だと本人も不快であるばかりでなく、介護状態では介護者にも負担をかけると指摘する3)。そのほか、高齢者はトイレで心停止などを起こすリスクがあり、その際家人などに発見される確率も低いという4)。また、排便頻度と循環器系疾患の死亡リスクも相関するとされ、排便のいきみが血圧の変動に影響することも指摘されているほか、近年の研究から便秘がパーキンソン病の発症前駆期にみられる症状であることや、慢性腎臓病の累積発症では便秘がリスクの1つになっている可能性が示唆されていることから、高齢者の便秘(慢性便秘症)はきちんと治療する必要があると指摘する。在宅患者の便秘ケアでは介護者のQOLも視野に 2017年時点で在宅医療を受けている患者は約18万人に上り、年々増加しており、在宅医療を受診している56.9%に便秘がみられるというレポートがある5)。在宅患者が慢性便秘症になる要因としては、先述の加齢に伴う身体変化に加え、四肢機能障害や自室からトイレまでの距離、自力での排便の困難さなど複合的な要因で起こることが知られている。 そして、緩和ケア領域でのマネジメント目標として「快適かつ満足のいく排便習慣の確保」、「排便習慣の自立維持」、「腹痛などの便秘関連症状の予防」の3項目が掲げられている。また、便秘の予防として「プライバシーが保たれ排便が行えるように配慮すること」、「水分や食物繊維を無理のない範囲で摂取すること」、「運動を無理のない範囲で行うこと」、「(禁忌などでない場合)腹部マッサージを行うこと」の4つが提案されている6)。 そのほか、排便管理は、患者家族などの介護する側にも身体的、心理的、社会・経済的負担をかけることにもつながるので、介護者のQOLも視野に入れた排便管理が望まれるという。 慢性便秘症の治療薬としては、浸透圧性下剤が推奨されているが、マグネシウムを含む塩類下剤の使用では定期的なマグネシウム測定が推奨されている。2020年に厚生労働省からもマグネシウム血症へのリスクを考慮した適正使用の文書も発出され、注意喚起がされている。また、中島氏は「刺激性下剤については、有効ではあるものの、日常的に使うと依存性になり、効果減弱となるため、できるだけ必要最小限の使用に止め、頓用か短期間の使用が望ましい」と提唱した。 最後に中島氏は「高齢者の便秘対策は生活指導・食事療法が基本であり、薬物療法では、用量調節が可能な薬剤の考慮が必要。患者の特性に応じた薬剤選択を行い、患者だけでなく、介護者のQOLも視野に便秘治療を行うことが重要」と語り、レクチャーを終えた。■参考文献1)Chang JY, et al. Am J Gastroenterol. 2010;105:822-832.2)伊原栄吉. 日本臨床. 2023;81:242-249.3)Ohkubo H, et al. Digestion. 2021;102:147-154. 4)Inamasu J, et al. Environ Health Prev Med. 2013;18:130-135. 5)Komiya H, et al. Geriatr Gerontol Int. 2019;19:277-281. 6)馬見塚勝郎. 診断と治療. 2018;106:833-838.

1998.

患者の望む抗精神病薬の特性とは

 統合失調症や双極症I型に対し抗精神病薬は有効な治療薬であるが、異なる治療オプションの中で、症状改善と副作用とのバランスをみながら、選択する必要がある。新たな治療オプションが利用可能になると、評価される抗精神病薬の特性と治療選択時の患者の希望を考慮することは重要である。米国・AlkermesのMichael J. Doane氏らは、統合失調症または双極症I型患者における経口抗精神病薬の好みを明らかにするため、本研究を実施した。BMC Psychiatry誌2024年9月10日号の報告。 経口抗精神病薬の5つの特性(症状重症度改善度などの治療効果、6ヵ月間の体重増加、性機能障害、過鎮静、アカシジア)に関する、患者の好みを明らかにするため、離散選択実験をオンラインで実施した。対象は、統合失調症または双極症I型と診断された18〜64歳の患者。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は、統合失調症患者144例、双極症I型患者152例。・統合失調症患者は、女性の割合50%、白人の割合69.4%、平均年齢41.0±10.1歳であった。・双極症I型患者は、女性の割合69.7%、白人の割合77.6%、平均年齢40.0±10.7歳であった。・いずれのコホートにおいても、患者は、より有効性が高く、体重増加が少なく、性機能障害やアカシジアがなく、過鎮静リスクの低い経口抗精神病薬を好んだ。・治療の有効性は、最も重要であり、conditional relative importance(CRI)は、統合失調症患者で31.4%、双極症I型で31.0%であった。・患者の最も避けたい副作用は、体重増加(統合失調症患者CRI:21.3%、双極症I型CRI:23.1%)と性機能障害(統合失調症患者CRI:23.4%、双極症I型CRI:19.2%)であった。・統合失調症患者では、症状改善のためであれば、9.8ポンドの体重増加または過鎮静リスク25%超を受け入れると回答し、双極症I型患者では、8.5ポンドの体重増加または過鎮静リスク25%超を受け入れると回答した。 著者らは「統合失調症患者および双極症I型患者は、抗精神病薬の最も重要な特性として、治療効果を挙げた。体重増加および性機能障害は、最も避けたい副作用であったが、より良い効果のためであれば、ある程度の体重増加や過鎮静を受け入れ可能であった」とし、「これらの結果は、患者が抗精神病薬に求める特徴と治療選択を行う際のリスクとベネフィットのバランスを考えるうえで、役立つであろう」と結論付けている。

1999.

日本初、経鼻弱毒生インフルエンザワクチン「フルミスト点鼻液」発売/第一三共

 第一三共は、経鼻弱毒生インフルエンザワクチンのフルミスト点鼻液を発売したと2024年10月4日付のリリースで発表した。本剤は2023年3月に製造販売承認を取得し、2024年8月に3価(A型2種、B型1種)ワクチンとして製造販売承認事項一部変更承認を取得した。日本で初の経鼻投与による季節性インフルエンザワクチンとして、今シーズンより供給開始の予定。 本剤により、自然感染後に誘導される免疫と類似した局所抗体応答および全身における液性免疫、細胞性免疫の誘導が期待されている。また、鼻腔内に噴霧するタイプのワクチンのため、針穿刺の必要がなく、注射部位反応もないことから、被接種者の心理的・身体的負担の軽減も期待される。 本剤に関して、医療機関へ向けて、9月2日に日本小児科学会が「経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方」1)を発表している。2〜19歳未満に対しては、不活化インフルエンザHAワクチンと経鼻弱毒生インフルエンザワクチンを同等に推奨しているが、喘息患者には不活化インフルエンザHAワクチンの使用を推奨している。また、授乳婦、周囲に免疫不全患者がいる場合にも不活化インフルエンザHAワクチンが推奨されている。 生後6ヵ月〜2歳未満、19歳以上、免疫不全患者、無脾症患者、妊婦、ミトコンドリア脳筋症患者、ゼラチンアレルギーを有する患者、中枢神経系の解剖学的バリアー破綻がある患者に対しては、本剤の使用は認められていないため、不活化インフルエンザHAワクチンのみ推奨されている。<概要>商品名:フルミスト点鼻液一般名:経鼻弱毒生インフルエンザワクチン製造株:・A型株 A/ノルウェー/31694/2022(H1N1) A/タイ/8/2022(H3N2)・B型株 B/オーストリア/1359417/2021(ビクトリア系統)効能または効果:インフルエンザの予防用法および用量:2歳以上19歳未満の者に、0.2mLを1回(各鼻腔内に0.1mLを1噴霧)、鼻腔内に噴霧する。製造販売承認日:2023年3月27日製造販売元:第一三共株式会社

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肥満小児へのリラグルチド、BMIが改善/NEJM

 肥満の小児(年齢6~<12歳)において、生活様式への介入単独と比較してリラグルチドによる56週間の治療+生活様式介入は、BMIの低下が有意に大きく、体重の変化も良好であることが、米国・ミネソタ大学のClaudia K. Fox氏らSCALE Kids Trial Groupが実施した「SCALE Kids試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年9月10日号に掲載された。9ヵ国の無作為化プラセボ対照第IIIa相試験 SCALE Kids試験は、9ヵ国23施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第IIIa相試験(スクリーニング期間[2週間]、導入期間[12週間]、治療期間[56週間]、追跡期間[26週間]で構成)であり、2021年3月に開始し2024年1月に終了した(Novo Nordiskの助成を受けた)。 年齢6~<12歳の肥満小児(年齢と性別で補正したBMIパーセンタイル値が95パーセンタイル以上を肥満と定義)82例を登録した。リラグルチド(3.0mgまたは最大耐用量)を1日1回皮下投与する群に56例、プラセボ群に26例を無作為に割り付けた。全例が導入期間から試験終了まで生活様式への介入を受けた。 主要エンドポイントは、BMIの変化量とした。確認的副次エンドポイントは、体重の変化量およびBMIの5%以上の低下であった。56週時にBMIが5.8%低下 全体の平均(±SD)年齢は10(±2)歳で、男児が44例(54%)とわずかに多かった。72%が白人だった。 56週の時点で、BMIのベースラインからの変化量は、プラセボ群が1.6%の増加であったのに対し、リラグルチド群は5.8%低下し有意に改善された(推定群間差:-7.4%ポイント、95%信頼区間[CI]:-11.6~-3.2、p<0.001)。 副次エンドポイントの優越性を検証する検出力はなかったが、56週時までの体重の平均変化量はプラセボ群が10.0%増加したのに比べ、リラグルチド群は1.6%の増加にとどまり良好であった(推定群間差:-8.4%ポイント、95%CI:-13.4~-3.3、p=0.001)。また、5%以上のBMI低下を達成した小児の割合は、プラセボ群の9%(2/23例)と比較して、リラグルチド群は46%(24/52例)と優れていた(補正後オッズ比:6.3、95%CI:1.4~28.8、p=0.02)。最も多い有害事象は胃腸障害 有害事象は、リラグルチド群が89%(50/56例)、プラセボ群は88%(23/26例)で発現した。これらのほとんどが軽度または中等度で、明らかな後遺症を残すことなく消失した。最も多かった有害事象は胃腸障害で、リラグルチド群が80%(45/56例)、プラセボ群は54%(14/26例)で発生した。 治療期間中に、重篤な有害事象はリラグルチド群で7例(12%)、プラセボ群で2例(8%)に発現した。担当医がリラグルチド投与に関連する可能性(possiblyまたはprobably)があると判断した重篤な有害事象は、嘔吐が2例、大腸炎が1例であった。有害事象によりリラグルチドの投与を中止した患者は6例(11%)で、このうち3例は胃腸障害が原因だった。 著者は、「3歳の時点で肥満のある小児のほぼ90%が青年期に過体重または肥満であることが示されており、肥満の青年では2~6歳の間に最も急激な体重増加が起きているとされることから、肥満の管理では治療開始の最も適切な時期を考慮し、生涯にわたり継続すべきと考えられる」としたうえで、「小児におけるリラグルチドの有効性と安全性、成長パターンへの潜在的影響を評価する長期的な研究が必要である」と述べている。

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