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FGFR-TKIエルダフィチニブ、FGFR3遺伝子異常陽性の尿路上皮がんに承認/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は、2024年12月27 日、FGFRチロシンキナーゼ阻害薬エルダフィチニブ(商品名:バルバーサ)について、「がん化学療法後に増悪したFGFR3遺伝子変異又は融合遺伝子を有する根治切除不能な尿路上皮」を効能又は効果として、製造販売承認を取得した。 今回の承認は、1次または2次治療で病勢進行が認められた標的FGFR遺伝子異常陽性の切除不能尿路上皮がんを対象に、エルダフィチニブの有用性を評価する第III相非盲検無作為化多施設共同試験THOR試験のコホート1の結果に基づくもの。 同試験の中間解析時における全生存期間中央値は、化学療法群7.8ヵ月に対し、エルダフィチニブ群12.1ヵ月と、エルダフィチニブ群で有意に改善した(ハザード比:0.64、95%信頼区間:0.47〜0.88、p=0.005)。 この中間解析の結果に基づき、独立データモニタリング委員会は試験を中止を勧告した。本試験で観察されたエルダフィチニブの安全性プロファイルは、これまでの報告に一貫したものだった。

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ペムブロリズマブ、進行再発子宮体がんの1次治療に承認/MSD

 MSDは、2024年12月27日、ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)が、進行再発子宮体がんに対する化学療法との併用療法において、国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得したことを発表した。 今回の製造販売承認事項一部変更承認は、化学療法歴のない進行再発子宮体がん患者810例(日本人7例を含む)を対象に、ミスマッチ修復正常(pMMR)588例またはMMR欠損(dMMR)222例に分け、ペムブロリズマブ・化学療法(パクリタキセル+カルボプラチン)併用療法およびペムブロリズマブ単独維持療法の有用性を検討した国際共同第III相試験KEYNOTE-868/NRG-GY018試験の結果に基づいている。 同試験において、pMMRおよびdMMR、いずれの集団でもペムブロリズマブ群は、プラセボ群と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した(pMMR集団のPFSのハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.44〜0.74、p<0.0001、dMMR集団のPFSのHR:0.34、95%CI:0.22〜0.53、p<0.0001)。 安全性解析対象例382例中365例(95.5%)(日本人2例中2例を含む)に副作用が認められた。主な副作用(20%以上)は、疲労225例(58.9%)、貧血178例(46.6%)、脱毛症163例(42.7%)、悪心146例(38.2%)、末梢性感覚ニューロパチー117例(30.6%)、便秘112例(29.3%)、下痢110例(28.8%)、末梢性ニューロパチー98例(25.7%)、白血球数減少97例(25.4%)、血小板数減少93例(24.3%)、好中球数減少87例(22.8%)および関節痛80例(20.9%)であった。

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悪性黒色腫、深達度0.8mm以上で関連死リスク上昇

 原発腫瘍深達度(Breslow厚)1mm以下の悪性黒色腫による死亡リスクは、Breslow厚0.8~1.0mmの患者が同0.8mm未満の患者と比較して有意に高かったことが、オーストラリア・シドニー大学のSerigne N. Lo氏らによるレジストリコホート研究で示された。なお、悪性黒色腫以外による死亡リスクは同等であった。原発性皮膚悪性黒色腫を有する多くの患者は、腫瘍の厚さが薄く(1.0mm以下、すなわちpT1aおよびpT1b)、一般的に予後は良好と考えられているものの、1.0mm以下の腫瘍深達度と死亡リスクの関連についての明確な情報は限られていた。著者は、「今回の解析結果から、悪性黒色腫AJCC病期分類の改訂時にT1の閾値を1.0mmから0.8mmに変更することを考慮すべきであることが示唆された」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年12月11日号掲載の報告。 研究グループは、1982~2014年に浸潤性原発性皮膚悪性黒色腫と診断されたすべてのオーストラリア人のレジストリデータを解析し、悪性黒色腫による死亡率と悪性黒色腫以外による死亡率に関して、腫瘍深達度0.8mmを閾値として2群に分類して評価した。 データは、オーストラリアの8つの州および準州の住民ベースがんレジストリから抽出。データおよび死因は国家死亡統計(Australian National Death Index)から入手し、原発腫瘍深達度1.0mm以下の浸潤性原発性皮膚悪性黒色腫の初回診断成人を対象とした。 主要アウトカムは、悪性黒色腫による死亡と悪性黒色腫以外による死亡。競合リスク回帰分析と死因別解析を行い、腫瘍深達度別(0.8mm未満vs.0.8~1.0mm)に主要アウトカムを評価した。 主な結果は以下のとおり。・全体の被験者コホートは14万4,447例であった。年齢中央値56歳(範囲:18~101)、男性が7万8,014例(54.0%)。追跡期間中央値は15.0年(四分位範囲:9.5~23.3)。・診断後20年の悪性黒色腫による粗死亡率は、全コホート6.3%(95%信頼区間[CI]:6.1~6.5)、0.8mm未満群6.0%(5.7~6.2)、0.8~1.0mm群12.0%(11.4~12.6)であった。・診断後20年の悪性黒色腫特異的生存率は、全コホート91.9%(95%CI:91.6~92.1)、0.8mm未満群94.2%(94.0~94.4)、0.8~1.0mm群87.8%(87.3~88.3)であった。・多変量解析で、0.8~1.0mm群は0.8mm未満群と比較して、悪性黒色腫による死亡の絶対リスク(部分分布ハザード比[HR]:2.92、95%CI:2.74~3.12)および悪性黒色腫による死亡率(HR:2.98、95%CI:2.79~3.18)が有意に高かった。・悪性黒色腫以外による死亡リスクに、腫瘍深達度による違いはみられなかった(HR:0.99、95%CI:0.92~1.04)。

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炭水化物制限で糖尿病患者のβ細胞機能が改善

 2型糖尿病患者を対象に、炭水化物制限食と高炭水化物食で介入した結果、前者において膵β細胞機能が改善したとする論文が、「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」に10月22日掲載された。米アラバマ大学バーミンガム校のBarbara A. Gower氏らが行った、12週間にわたるランダム化比較試験の結果として報告された。 この研究は、エネルギー量が等しい炭水化物制限(carbohydrate-restricted;CR〔炭水化物由来のエネルギーが約9%、脂質由来が約65%〕)食と、高炭水化物(higher carbohydrate;HC〔炭水化物由来が約55%、脂質由来が約20%〕)食が、2型糖尿病患者のβ細胞機能に与える影響を比較するために実施された。対象は、糖尿病診断からの経過が10年以内でHbA1cが8%以下のインスリン療法を行っていない、アフリカ系米国人(African American;AA)および欧州系米国人(European American;EA)の成人2型糖尿病患者57人。なお、AAは人種的にβ細胞の脆弱性がEAより高いと考えられている。 介入前後のデータが欠落しておらず解析対象とされたのは51人(CR群25人、HC群26人)だった。ベースライン時において、年齢、性別の分布、BMI、HbA1c、およびβ細胞機能(disposition index;DI)に有意差はなかった。HbA1cは、CR群が6.9±0.72%、HC群が6.7±0.47%であり、糖代謝異常の程度は比較的軽度の患者群だった。 血糖降下薬は介入前に中止され、介入中に3日連続で空腹時血糖が200mg/dLを超えた場合には投薬が再開された。食事は全てを支給し、宅配サービスによって参加者の自宅に届けられた。ベースライン時点と介入12週間後に、75g経口ブドウ糖負荷試験およびアルギニンを用いたグルコースクランプ法にて、糖代謝と膵β細胞機能を評価した。 12週後、急性C-ペプチド反応(アルギニン投与開始30分以内の上昇)は、CR群ではHC群に比べて約2倍に増加し有意な群間差が認められたが、人種別に見た場合、EAでは有意差がなかった。最大C-ペプチド反応はCR群では22%有意に増加し、HC群との間に有意差が認められたが、人種別に見た場合、AAでは有意差がなかった。DIはCR群では32%有意に上昇したが、これを人種別に見た場合、EAでは有意差がなかった。 著者らは、「われわれの研究は、エネルギー量が等しいCR食が、HC食に比べて急性および最大C-ペプチド反応の双方を含む、β細胞機能の指標に有益な影響をもたらすことを示唆しており、臨床的に重要な結果と言える。CRの継続が困難な患者が存在する可能性がある点は否めないが、CR食によって、軽度の2型糖尿病患者は投薬を中止し食事を楽しみながら、β細胞機能を改善できるのではないか」と総括している。なお、AAとEAで反応に差が見られた点について、「この反応の差の一部は人種固有のβ細胞機能の違いに起因するものと考えられる」と説明している。

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2型糖尿病発症予防のためにダークチョコレートを毎日食べますか?(解説:住谷哲氏)

 チョコレートの主成分であるカカオには抗酸化物質の一種であるフラバノール(flavan-3-ol)が豊富に含まれている。抗酸化物質を含む食品を摂取することの健康ベネフィットはこれまでに多く報告されているが、本論文はダークチョコレートの摂取が2型糖尿病発症予防に関連することを大規模前向きコホート研究の結果を用いて明らかにした。 解析に用いたのは米国の医療従事者を対象としたNHS、NHSII、HPFSの3つの大規模前向きコホートであり、これまでにも多くの食品と健康ベネフィットとの関連を研究する目的で使用されてきている。解釈する際の注意点としては、対象がすべて医療従事者であり、さらにNHS、NHSIIは対象が看護師なので、全体として健康意識の高い女性を中心とした対象から得られた結果であることである。 結果は、ダークチョコレートを1 serving週5回以上摂取する群はそうでない群に比べて2型糖尿病の発症が21%減少していた。これは1 serving/週の摂取によって2型糖尿病の発症が3%減少することに相当する。一方でミルクチョコレートには、そのような関連は認められなかった。 筆者もチョコレートは好きなので朗報であるが、そもそもダークチョコレート(dark chocolate、ビターチョコレートbitter chocolateともいわれる)はどのようなチョコレートを指すのだろうか? またservingは日本ではなじみがないが欧米でよく使用される摂取量単位であり、チョコレート1 serving=約30gとされている。日本でのチョコレート販売量トップクラスの「明治」のホームページを見ると、「ダークチョコレートはカカオマス、ココアバター、砂糖、レシチン、香料などで作られたチョコレートです。カカオマスが40〜60%以上あり乳製品が入っていないため、カカオ独特の苦味と渋味、香りがあるのが特徴です。スイートチョコレートやビターチョコレートと呼ばれることもあります。さまざまな健康効果があることで注目されている高カカオチョコレートもダークチョコレートの一つで、一般的にカカオ分が70%以上のものを指します。」とある1)。カカオマスを40%以上含むチョコレート(理想的には70%以上)が一般にダークチョコレートと考えてよいようだ。昔からある明治ブラックチョコレート1枚50g(カカオ分35~40%含有)であれば2日に1枚食べる計算になる。 筆者の外来に通院している2型糖尿病患者さんが、ある時の外来で血糖コントロールが著明に悪化していることがあった。よくよく話を聞いてみるとテレビで脂肪肝の改善にはチョコレートが良い、と言っていたのでそれから毎日食べていたとのことであった。本論文の結果から、ダークチョコレートを毎日摂取することと2型糖尿病発症予防とに関連があることは明らかにされたが、因果関係は不明である。筆者としては、たまにチョコレートを食べるならミルクチョコレートではなく苦みのあるダークチョコレートにするくらいがちょうど良いように思われる。

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渡米7年目でも、Podcastで毎日英語の勉強【臨床留学通信 from Boston】第7回

渡米7年目でも、Podcastで毎日英語の勉強米国に7年もいれば英語は不自由なく話せると思われるかもしれませんが、実際はそうではありません。確かに臨床留学は研究留学に比べて英語を使う機会が格段に多く、話せないと話になりません。渡米してかなり苦労したのは事実ですが、医師になった後に、英語のシャワーを浴びるように英語漬けの環境に身を置けたのは良い経験でした。英語のレベルは、日本にいるだけでは到達はできなかったであろうところまで来たと思います。仕事をするうえでは、あらかじめ会話の内容を予想できることが多いためとくに問題はありません。ただ、日常会話では同僚が何を言っているのかよくわからないと感じることも時折あります。自宅では子供たちの教育上日本語をメインにしており、米国のニュースは一切流しません。病院でも疲れると「英語デトックス」と称して人があまりいないところで休憩することもあり、同僚と会話を楽しむことも少なかったので、正直なところ、自分の英語レベルは周りと比べてそれほど高くないと感じています。以前こちらの連載で、渡米前は英語の勉強を2~3時間を確保していたとお伝えしました。しかし、実践しようとしても、なかなか日常業務が忙しくて難しいかもしれません。私が最近やっていることは、主に車の通勤時間に、Podcastを活用し、循環器の最新知識を英語で学ぶことで、一石二鳥の時間活用を目指しています。私がとくにおすすめするPodcastは以下のとおりです。【循環器誌】JACC:former editor in chiefのValentin Fuster氏が、毎週すべてのoriginal articleやreviewを解説。ただしスペイン語なまりで、話すスピードは遅めです。1.5倍速で聴くのが良いです。AHAなどの学会に合わせて、著者と他のゲストスピーカーが会話するセッションもあります。網羅的に循環器の最近の流れを把握できます。Circulation on the Run:こちらもeditorたちが毎週いくつか簡単に論文内容を説明し、そのうちの1つの著者とディスカッションするもの。ESC TV today:欧州心臓病学会のPodcast。ホストの先生はアイルランドの方なので英語にややなまりあり。最初にいくつか最近掲載された論文を紹介し、トピックに沿ってディスカッションしています。2週間に1度の配信。JAMA Cardiology:こちらも著者との会話です。月に1度かそれ以下の更新なのが難点。【医学誌】NEJM:NEJM this weekという内容の紹介と、NEJM interviewsの2つが毎週あります。同様に、JAMAもclinical reviewとauthor interviewsがあります。【ACC関連】Eagle’s Eye ViewとACCEL LiteというPodcastが、英語がきれいで内容も最新のものがまとまっています。双方、1回分が10分以下で比較的短いので、いくつかまとめて聴きます。Medscape This Week in Cardiology:John Mandrola氏が、歯に衣着せぬ論調で最新の論文を紹介。英語もきれいです。CardioNerds:これは臨床留学を志す人必聴。米国の有名大学病院のcardiology fellowたちがほぼ毎週の頻度で40~50分ほど症例についてディスカッションし、supervisorがその病態の概説もするというもの。症例提示の仕方は参考になります。【一般的なニュース】 大統領選の前後はPBS News Hourを聴いていました。慣れたら1.5倍で聴き、(運転時は十分注意して)可能な限りシャドーイングをしてみてはいかがでしょうか。電車の時は聴くのに集中し、歩いている時は周りに人がいなければそこでシャドーイングするのが良いでしょう。聴くだけよりは口を動かしたほうが効果は高いと思います。なお科学的なテーマでは、Moment of Scienceがロングランでやっていて、transcriptもあるので、一つひとつの細かい単語を聴く癖を付けるのに効果的でした。科学的なテーマはTOEFL受験などでも必要だったため、このMoment of Scienceを聴いていました。1~2分と短いため、細かい単語の聴き取りや、ディクテーションにも良い教材になります。

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添付文書改訂:SGLT2阻害薬にケトアシドーシス注意喚起/レキサルティにアルツハイマー型認知症に伴う焦燥感など追加【最新!DI情報】第30回

SGLT2阻害薬<対象薬剤>選択的SGLT2阻害薬(商品名:スーグラ錠、ジャディアンス錠、カナグル錠/OD錠、フォシーガ錠、デベルザ錠、ルセフィ錠/ODフィルム)<改訂年月>2024年12月<改訂項目>[追加]重要な基本的注意本剤を含むSGLT2阻害薬の投与中止後、血漿中半減期から予想されるより長く尿中グルコース排泄およびケトアシドーシスが持続した症例が報告されているため、必要に応じて尿糖を測定するなど観察を十分に行うこと。<ここがポイント!>SGLT2阻害薬全般において、重要な基本的注意に「投与中止後の尿中グルコース排泄およびケトアシドーシスの遷延に関する注意喚起」が追記されました。国内において、投与中止後の尿中グルコース排泄およびケトアシドーシスの遷延に関連する症例が集積されています※。改訂前にも、SGLT2阻害薬の使用上の注意としてケトアシドーシスに関連する注意喚起がなされていましたが、遷延に関する事象は予測できないことから、今回追記が行われました。※投与中止後3日以上遷延するケトアシドーシスとして承認取得者ごとの基準により抽出された症例レキサルティ錠<対象薬剤>ブレクスピプラゾール(商品名:レキサルティ錠1mg/2mg、OD錠0.5mg/1mg/2mg、製造販売元:大塚製薬)<改訂年月>2024年9月<改訂項目>[追加]効能・効果アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動又は攻撃的言動[追加]用法・用量通常、成人にはブレクスピプラゾールとして1日1回0.5mgから投与を開始した後、1週間以上の間隔をあけて増量し、1日1回1mgを経口投与する。なお、忍容性に問題がなく、十分な効果が認められない場合に限り、1日1回2mgに増量することができるが、増量は1週間以上の間隔をあけて行うこと。[追加]効能・効果に関連する注意高齢認知症患者への抗精神病薬投与により死亡リスクが増加するとの海外報告がある。また、本剤の国内プラセボ対照試験において、治験薬投与との関連性は明らかではないが死亡例が本剤群のみで報告されている。本剤の投与にあたっては上記リスクを十分に考慮し、臨床試験における有効性及び安全性の結果等を熟知した上で、慎重に患者を選択すること。また、本剤投与中は患者の状態を注意深く観察すること。<ここがポイント!>本剤は2018年1月に「総合失調症」の効能で製造販売承認を取得し、2023年12月には「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)」の効能が追加されました。さらに、2024年9月には「アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動または攻撃的言動」の効能も国内において初めて追加されました。アルツハイマー型認知症の約半数の患者に過活動や攻撃的言動が認められ、これにより家族・介護者の負担が増大し、生活の質が低下します。本適応の追加により、アルツハイマー型認知症の患者と介護者の双方にとって、重要な転換点となることが期待されます。ヌーカラ皮下注<対象薬剤>メポリズマブ(遺伝子組換え)製剤(商品名:ヌーカラ皮下注100mgペン/シリンジ、製造販売元:グラクソ・スミスクライン)<改訂年月>2024年8月<改訂項目>[追加]効能・効果鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)[追加]用法・用量通常、成人にはメポリズマブ(遺伝子組換え)として1回100mgを4週間ごとに皮下に注射する。[追加]効能・効果に関連する注意本剤は全身性ステロイド薬、手術等ではコントロールが不十分な患者に用いること。<ここがポイント!>100mgペンおよび100mgシリンジの適応症は、これまで「気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)」および「既存治療で効果不十分な好酸球性多発血管炎性肉芽腫症」でしたが、2024年8月に「鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)」※が追加されました。鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の患者では、鼻閉や嗅覚消失、顔面圧迫、睡眠障害、鼻汁などの症状がみられ、身体的・精神的負担が大きい疾患です。治療はステロイド薬や内視鏡下副鼻腔手術などが行われていますが、再発が多く、長期間のコントロールも困難です。本剤の適応追加によって、手術や全身ステロイドに代わる新たな治療選択肢が増えました。※最適使用推進ガイドライン対象レボレード錠<対象薬剤>エルトロンボパグ オラミン(商品名:レボレード錠12.5mg/25mg、製造販売元:ノバルティスファーマ)<改訂年月>2024年11月<改訂項目>[追加]用法・用量(小児患者に対する追加)<慢性特発性血小板減少性紫斑病>通常、成人及び1歳以上の小児には、エルトロンボパグとして初回投与量12.5mgを1日1回、食事の前後2時間を避けて空腹時に経口投与する。なお、血小板数、症状に応じて適宜増減する。また、1日最大投与量は50mgとする。[追加]効能・効果に関連する注意診療ガイドライン等の最新の情報を参考に、本剤の投与が適切と判断される患者に使用すること。<ここがポイント!>慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の小児患者は多くが自然寛解しますが、重症化すると脳出血などの重篤かつ致死的な出血症状を引き起こすことがあります。本剤は海外では1歳以上の患者に使用が承認されていましたが、国内では成人のみに使用できる状況でした。しかし、国内の診療ガイドラインでは、副腎皮質ステロイド治療などに効果が不十分な小児患者の2次治療として本剤が推奨されています。このため、日本小児血液・がん学会から要望書が提出され、小児患者(1歳以上)に対する用法・用量の追加の公知申請※が行われました。この効能追加によって、ガイドラインで推奨される治療を添付文書上の適応症に沿って実施できるようになりました。※公知申請:医薬品(効能追加など)の承認申請において、その有効性や安全性が医学的に公知であるとして、臨床試験の全部または一部を新たに実施することなく承認申請を行うことができる制度

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診療科別2024年下半期注目論文5選(消化器内科編)

Histological improvements following energy restriction and exercise: The role of insulin resistance in resolution of MASHMucinski JM, et al. J Hepatol. 2024;81:781-793.<MASHにおけるカロリー制限・運動療法の有用性>:肝臓、体組成、心肺フィットネスが大幅に改善代謝機能障害関連脂肪性肝炎(MASH)患者に対しカロリー制限、運動療法を同時に行うことにより肝臓、体組成、心肺フィットネスが大幅に改善することを証明しました。同治療によるMASH肝組織改善が、肝臓ではなく筋肉のインスリン感受性と関連していたことがとても興味深いです。Long-term liver-related outcomes and liver stiffness progression of statin usage in steatotic liver diseaseZhou XD, et al. Gut. 2024;73:1883-1892.<MASLDにおけるスタチンの有用性>:全死因死亡・肝関連有害事象発生を有意に低下国際共同研究で7,988例の代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)患者を平均4.6年観察。スタチンの使用は全死因死亡を76.7%、肝関連有害事象発生を62%低下させました。またスタチン使用は、フィブロスキャンで測定した肝硬度の進行も軽減させました。Alternating gemcitabine plus nab-paclitaxel and gemcitabine alone versus continuous gemcitabine plus nab-paclitaxel after induction treatment of metastatic pancreatic cancer (ALPACA): a multicentre, randomised, open-label, phase 2 trialDorman K, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2024;9:935-943.<ALPACA試験>:転移膵がんにおけるGEM+NabPTX減量療法の有用性と忍容性進行膵がんにおいてGEM+NabPTX療法は有害事象のため忍容性が問題となっていました。今回、 GEM+NabPTX を3サイクル実施後、 GEM+NabPTXとGEM単独投与を交互に行う減量レジメンが、従来の治療と同等の全生存期間と、より良好な忍容性を示すことが報告されました。[177Lu]Lu-DOTA-TATE plus long-acting octreotide versus high-dose long-acting octreotide for the treatment of newly diagnosed, advanced grade 2-3, well-differentiated, gastroenteropancreatic neuroendocrine tumours (NETTER-2): an open-label, randomised, phase 3 studySingh S, et al. Lancet. 2024;403:2807-2817.<NETTER-2試験>:進行NENに対する1次治療としてPRRTが有用これまで神経内分泌腫瘍(NEN)に対するPRRTは2次治療以降のレイトラインでの導入が推奨されてきましたが、本研究によりGrade2、3の高分化型NENにおいて1次治療でのPRRT早期導入の有用性が報告されました。Risk of colorectal neoplasia after removal of conventional adenomas and serrated polyps: a comprehensive evaluation of risk factors and surveillance use Polychronidis G, et al. Gut. 2024;73:1675-1683.<大腸がん・ポリープの再発予防>:高リスクの大腸ポリープは3年以内のサーベイランス大腸内視鏡が有益advanced adenomaのサーベイランスの最適な間隔は明らかではありませんでしたが、今回の報告では高リスクポリープが見つかった患者は、その後の大腸がんおよび高リスクポリープのリスクが高いため、3年以内の早期監視が有用である可能性が示されました。

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診療科別2024年下半期注目論文5選(呼吸器内科編)

Respiratory syncytial virus (RSV) vaccine effectiveness against RSV-associated hospitalisations and emergency department encounters among adults aged 60 years and older in the USA, October, 2023, to March, 2024: a test-negative design analysisPayne AB, et al. Lancet. 2024;404:1547-1559.<リアルワールドにおけるRSウイルスワクチンの有効性>:RSウイルスワクチンはRSウイルス関連の入院および救急外来受診を予防Test Negativeデザインにより、RSウイルスワクチンの60歳以上の成人におけるリアルワールドでの有効性を評価した初めての研究です。本研究により、リアルワールドにおいても、RSウイルス関連の入院や救急外来受診に対するワクチン予防効果が示されました。Cathepsin C (dipeptidyl peptidase 1) inhibition in adults with bronchiectasis: AIRLEAF®, a Phase II randomised, double-blind, placebo-controlled, dose-finding studyChalmers JD, et al. Eur Respir J. 2024:2401551.<AIRLEAF®試験>:気管支拡張症に対するカテプシンC阻害薬投与は最初の増悪までの時間を減少気管支拡張症の成人を対象に、カテプシンC阻害薬BI 1291583の有効性、安全性、および最適用量を評価した第II相無作為化比較試験です。BI 1291583は、最初の増悪までの時間に基づいて用量依存的にプラセボよりも有意な効果を示しました。今後、この薬剤の第III相試験(AIRTIVITY®)も予定されています。Neoadjuvant pembrolizumab plus chemotherapy followed by adjuvant pembrolizumab compared with neoadjuvant chemotherapy alone in patients with early-stage non-small-cell lung cancer (KEYNOTE-671): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trialSpicer JD, et al. Lancet. 2024;404:1240-1252.<KEYNOTE-671試験>:NSCLCへの周術期ペムブロリズマブ上乗せでOS改善:KN-671長期成績切除可能な早期非小細胞肺がん患者において、周術期のペムブロリズマブ+化学療法は、プラセボ+化学療法と比較して36ヵ月全生存率(71% vs.64%)および無イベント生存期間中央値(47.2ヵ月 vs.18.3ヵ月)を有意に改善しました。Durvalumab after Chemoradiotherapy in Limited-Stage Small-Cell Lung CancerCheng Y, et al. N Engl J Med. 2024;391:1313-1327.<ADRIATIC試験>:限局型小細胞肺がん、デュルバルマブ地固め療法でOS・PFS改善Efficacy and safety of tezepelumab versus placebo in adults with moderate to very severe chronic obstructive pulmonary disease (COURSE): a randomised, placebo-controlled, phase 2a trialSingh D, et al. Lancet Respir Med. 2024 Dec 6. [Epub ahead of print]<COURSE試験>:トリプル吸入療法使用中のCOPD患者を対象としたtezepelumab投与は増悪を改善せずトリプル吸入療法使用中の中等症から最重症COPD患者を対象としたtezepelumabの第IIa相試験の結果が報告されました。主要評価項目である年間中等度/重度増悪率において、プラセボ群との有意差は認められませんでしたが、好酸球数150cells/μL以上のサブグループでは増悪抑制効果がある可能性が示唆されました。

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第248回 GLP-1薬とてんかん発作を生じにくくなることが関連

GLP-1薬とてんかん発作を生じにくくなることが関連セマグルチドなどのGLP-1受容体作動薬(GLP-1 RA)とてんかん発作を生じにくくなることの関連が新たなメタ解析で示されました1)。たいてい60~65歳過ぎに発症する晩発性てんかん(late-onset epilepsy)を生じやすいことと糖尿病やその他いくつかのリスク要因との関連が、米国の4地域から募った45~64歳の中高年の長期観察試験で示されています2)。近年になって使われるようになったGLP-1 RA、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬を含む新しい血糖降下薬は多才で、糖尿病の治療効果に加えて神経保護や抗炎症作用も担うようです。たとえば血糖降下薬とパーキンソン病を生じ難くなることの関連が無作為化試験のメタ解析で示されており3)、血糖降下薬には神経変性を食い止める効果があるのかもしれません。米国FDAの有害事象データベースの解析では、血糖降下薬と多発性硬化症が生じ難くなることが関連しており4)、神経炎症を防ぐ作用も示唆されています。晩発性てんかんは神経変性と血管損傷の複合で生じると考えられています。ゆえに、神経変性を食い止めうるらしい血糖降下薬は発作やてんかんの発生に影響を及ぼしそうです。そこでインドのKasturba Medical CollegeのUdeept Sindhu氏らはこれまでの無作為化試験一揃いをメタ解析し、近ごろの血糖降下薬に発作やてんかんを防ぐ効果があるかどうかを調べました。GLP-1 RA、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬の27の無作為化試験に参加した成人20万例弱(19万7,910例)の記録が解析されました。血糖降下薬に割り振られた患者は半数強の10万2,939例で、残り半数弱(9万4,971例)はプラセボ投与群でした。有害事象として報告された発作やてんかんの発生率を比較したところ、血糖降下薬全体はプラセボに比べて24%低くて済んでいました。血糖降下薬の種類別で解析したところ、GLP-1 RAのみ有益で、GLP-1 RAは発作やてんかんの発生率がプラセボに比べて33%低いことが示されました(相対リスク:0.67、95%信頼区間:0.46~0.98、p=0.034)。発作とてんかんを区別して解析したところ、GLP-1 RAと発作の発生率の有意な低下は維持されました。しかし、てんかん発生率の比較では残念ながらGLP-1 RAとプラセボの差は有意ではありませんでした。試験の平均追跡期間は2.5年ほど(29.2ヵ月)であり、てんかんの比較で差がつかなかったことには試験期間が比較的短かったことが関与しているかもしれません。また、試験で報告されたてんかんがInternational League Against Epilepsy(ILAE)の基準に合致するかどうかも不明で、そのことも有意差に至らなかった理由の一端かもしれません。そのような不備はあったもの、新しい血糖降下薬が発作やてんかんを防ぎうることを今回の結果は示唆しており、さまざまな手法やより多様で大人数のデータベースを使ってのさらなる検討を促すだろうと著者は言っています1)。とくに、脳卒中患者などのてんかんが生じる恐れが大きい高齢者集団での検討を後押しするでしょう。参考1)Sindhu U, et al. Epilepsia Open. 2024;9:2528-2536.2)Johnson EL, et al. JAMA Neurol. 2018;75:1375-1382.3)Tang H, et al. Mov Disord Clin Pract. 2023;10:1659-1665.4)Shirani A, et al. Ther Adv Neurol Disord. 2024;17:17562864241276848.

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Ca拮抗薬・NSAID・テオフィリンと逆流性食道炎リスク/国立国際医療研究センター

 逆流性食道炎の有病率と薬剤などの危険因子について調査した結果、カルシウム拮抗薬、テオフィリン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の使用が逆流性食道炎の独立した予測因子であることが示唆された。国立国際医療研究センターの植田 錬氏らが、BMJ Open Gastroenterology誌2024年12月16日号で報告した。 この後ろ向き横断研究は、2015年10月~2021年12月に国立国際医療研究センターで食道・胃・十二指腸内視鏡検査を受けた患者を対象とし、質問票を用いて患者の特徴、病歴、喫煙・飲酒歴、内視鏡検査時に服用していた薬剤に関するデータを収集した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者1万3,993例中、逆流性食道炎の有病率は11.8%であった。・多変量ロジスティック回帰分析により、以下の因子が逆流性食道炎の独立した予測因子であることが示された。それぞれのオッズ比(95%信頼区間)は以下のとおり。- 男性:1.52(1.35〜1.72)、p<0.001- 肥満(BMI≧25):1.57(1.40〜1.77)、p<0.001- 喫煙:1.19(1. 02~1.38)、p=0.026- 飲酒:1.20(1.07~1.35)、p=0.002- 糖尿病:1.19(1.02~1.39)、p=0.029- 食道裂孔ヘルニア:3.10(2.78~3.46)、p<0.001- 重症萎縮性胃炎なし:2.14(1.77~2.58)、p<0.001- カルシウム拮抗薬の使用:1.22(1.06~1.40)、p=0.007- テオフィリンの使用:2.13(1.27~3.56)、p=0.004- NSAIDの使用:1.29(1.03~1.61)、p=0.026

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各向精神薬の投与量は死亡リスクとどのように関連しているか

 抗精神病薬、抗うつ薬、ベンゾジアゼピンの使用は、統合失調症患者の死亡リスクに影響を及ぼす可能性がある。しかし、多くの観察研究では、向精神薬投与患者が必然的に生存している期間(フォローアップ開始から薬物治療開始までの期間)がある場合の不死時間バイアス(immortal time bias:ITB)は考慮されておらず、ITBを考慮しないと、向精神薬と死亡率との関連の解釈を誤認する可能性がある。カナダ・ラバル大学のSebastien Brodeur氏らは、抗精神病薬、抗うつ薬、ベンゾジアゼピンの累積投与量と統合失調症患者の死亡リスクとの関連を調査し、ITBを考慮しない場合の潜在的な影響についても評価した。JAMA Network Open誌2024年11月22日号の報告。 対象は、カナダ・ケベック州の行政データより抽出した2002〜12年に統合失調症と診断された17〜64歳の患者3万2,240例。データ分析は、2022年6月22日〜2024年9月30日に実施した。主要アウトカムは、すべての原因による死亡率とし、2013〜17年または死亡するまでの期間、フォローアップを行った。抗精神病薬、抗うつ薬、ベンゾジアゼピンの投与量で3群(低、中、高)に分類し、死亡リスクを評価した。ITB制御なしの時間固定曝露とITBを制御した時間依存曝露によるCox比例ハザード回帰モデルを行った。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は46.1±11.6歳、男性の割合は61.3%(1万9,776例)。・フォローアップ期間中に死亡した患者は1,941例(6.0%)であった。・時間固定法では、抗精神病薬と死亡率との間に用量反応関係は認められなかった。・しかし、高用量の抗精神病薬使用は、ITB補正後の死亡率上昇と関連が認められた(調整ハザード比[aHR]:1.28、95%信頼区間[CI]:1.07〜1.55、p=0.008)。・抗うつ薬に関しては、時間固定法では死亡リスクの減少が認められたが、ITB補正後では高用量のみで死亡リスクの減少がみられた(aHR:0.86、95%CI:0.74〜1.00、p=0.047)。・ベンゾジアゼピンに関しては、いずれの評価においても死亡リスク増加との関連が認められた。 著者らは「本結果は、統合失調症患者に対する抗精神病薬の有効性に異議を唱えるものではなく、長期的な死亡リスクに対する課題を提起するものである」としている。

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「小児・AYA世代がん患者等の妊孕性温存に関する診療GL」第2版が発刊

 日本治療学会編『小児・AYA世代がん患者等の妊孕性温存に関する診療ガイドライン2024年12月改訂 第2版』が12月20日に発刊された。本書は、「小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン 2017年版」をMinds診療ガイドライン作成マニュアル2020に準拠して、7年ぶりに全面改訂された。 2024年版は、女性生殖器、乳腺、泌尿器、小児、造血器、骨軟部、消化器、脳の8つの領域に、新たに肺、耳鼻咽喉・頭頸部、膠原病が加わり11領域をカバーしている。また、従来の性腺毒性分類は、2003年のASCOの分類表以降の国際的な報告を元に最新のJSCO分類として生まれ変わっている。小児・AYA世代のがんの現状と課題解決に向けて 厚生労働省は、小児・AYA世代がん患者等の経済的な負担軽減を目指して、国と自治体による妊孕性温存療法に係る経済的支援を2021年4月に開始した。また、2023年3月に閣議決定された第4期がん対策推進基本計画の「がん医療(1)がん医療提供体制等」の中に「妊孕性温存療法について」が施策の1つとして加えられたことから、2024年版ガイドラインの役割が一層重要になりそうだ。

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高リスクくすぶり型多発性骨髄腫、ダラツムマブ単剤が有効/NEJM

 くすぶり型多発性骨髄腫は、活動性多発性骨髄腫の無症候性の前駆疾患であり、現在の標準治療は経過観察であるが、活動性多発性骨髄腫への進行リスクが高い患者では早期治療が有益な可能性があるとされる。ギリシャ・アテネ大学のMeletios A. DimopoulosらAQUILA Investigatorsは「AQUILA試験」において、高リスクくすぶり型多発性骨髄腫の治療では注意深い経過観察と比較して抗CD38モノクローナル抗体ダラツムマブ皮下注単剤療法が、活動性多発性骨髄腫への進行または死亡のリスクを有意に改善し、全生存率も良好で、予期せぬ安全性に関する懸念も認めないことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年12月9日号で報告された。23ヵ国の無作為化第III相試験 AQUILA試験は、高リスクくすぶり型多発性骨髄腫の治療におけるダラツムマブの有用性の評価を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、2017年12月~2019年5月に日本を含む23ヵ国124施設で患者を登録した(Janssen Research and Developmentの助成を受けた)。 年齢18歳以上、過去5年以内に国際骨髄腫作業部会(IMWG)の基準でくすぶり型多発性骨髄腫との確定診断を受け、活動性多発性骨髄腫への進行リスクが高く、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group performance-status(ECOG PS、0~5点、点数が高いほど機能障害が重度)のスコアが0または1点の患者を対象とした。 これらの患者を、ダラツムマブの皮下投与を36ヵ月間で39サイクル受けるか、あるいは病勢の進行が確定するまで投与を継続する群、または注意深い経過観察を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。注意深い経過観察群では、疾患特異的治療を受けず、36ヵ月間あるいは病勢が進行するまで観察を継続した。 主要評価項目は無増悪生存(活動性多発性骨髄腫への進行または全死因死亡)とし、IMWG基準に従って独立審査委員会が評価した。完全奏効以上、最良部分奏効以上の割合も良好 390例を登録し、ダラツムマブ群に194例(年齢中央値63.0歳[範囲:31~86]、男性49.0%)、注意深い経過観察群に196例(64.5歳[36~83]、47.4%)を割り付けた。くすぶり型多発性骨髄腫の初回診断から無作為化までの期間中央値は0.72年(範囲:0~5.0)であった。ダラツムマブの投与期間中央値は35.0ヵ月(0~36.1)、サイクル数中央値は38だった。 追跡期間中央値65.2ヵ月の時点で、活動性多発性骨髄腫への進行または全死因死亡に至ったのは、経過観察群が99例(50.5%)であったのに対し、ダラツムマブ群は67例(34.5%)と有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.36~0.67、p<0.001)。5年無増悪生存率は、ダラツムマブ群63.1%、経過観察群40.8%であった。 病勢進行までの期間中央値は、それぞれ44.1ヵ月および17.8ヵ月(HR:0.51、95%CI:0.40~0.66)であり、完全奏効以上(厳格な完全奏効+完全奏効)は、17例(8.8%)および0例(0%)、最良部分奏効以上(厳格な完全奏効+完全奏効+最良部分奏効)は、58例(29.9%)および2例(1.0%)だった。 41例が死亡し、内訳はダラツムマブ群15例(7.7%)、経過観察群26例(13.3%)であった(HR:0.52、95%CI:0.27~0.98)。5年全生存率は、それぞれ93.0%および86.9%だった。重篤な有害事象は29.0%、投与中止は5.7% Grade3または4の有害事象は、ダラツムマブ群40.4%、経過観察群30.1%で発現し、最も頻度が高かったのは高血圧で、それぞれ5.7%および4.6%であった。重篤な有害事象は、29.0%および19.4%で発現し、最も高頻度だったのは肺炎で、3.6%および0.5%だった。ダラツムマブ群では、11例(5.7%)で投与中止に至った有害事象を認めた。 Grade3または4の感染症は、ダラツムマブ群16.1%、経過観察群4.6%で発現した。ダラツムマブ群では、32例(16.6%)で投与に関連した全身反応が報告され(Grade3または4は2例[1.0%])、53例(27.5%)で注射部位の局所反応(Grade3または4はなし)を認めた。ダラツムマブ群の18例(9.3%)および経過観察群の20例(10.2%)で2次原発がんが発生した。ダラツムマブによる新たな安全性に関する懸念は確認されなかった。 著者は、「これらの知見は、ダラツムマブは臓器障害の進行を遅らせるか、あるいは完全に防止し、活動性多発性骨髄腫への進行を抑制する可能性を示唆し、深い寛解を達成しない場合でも臨床的な有益性をもたらす可能性があると考えられる」「ダラツムマブをベースとした併用療法などの治療戦略がより適切かは現時点では不明だが、先行試験と本試験の結果を統合すると、本疾患の治療にダラツムマブ単剤療法を一定期間使用することが支持される」としている。

1875.

ダトポタマブ デルクステカン、HR陽性/HER2陰性乳がんに承認/第一三共

 第一三共は、抗TROP-2抗体薬物複合体ダトポタマブ デルクステカン(商品名:ダトロウェイ)について、2024年12月27日、「化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳」を適応として日本で製造販売承認を取得したと発表。  同剤は上記(HR陽性/HER2陰性)患者を対象とした第III相臨床試験(TROPION-Breast01)の結果に基づき、承認された。同剤の承認は世界で初めてで、日本においてHR陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんを対象とするTROP-2を標的とした薬剤として初めて承認された。・販売名:ダトロウェイ点滴静注用100mg・一般名:ダトポタマブ デルクステカン(遺伝子組換え)・製造販売承認日 :2024年12月27日・効能又は効果:化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳・用法及び用量:通常、成人にはダトポタマブ デルクステカン(遺伝子組換え)として1回6mg/kgを90分かけて3週間間隔で点滴静注する。初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。なお、患者の状態により適宜減量する。

1876.

高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫患者、ダラツムマブ vs.積極的経過観察(AQUILA)/ASH2024

 高リスクのくすぶり型骨髄腫(smoldering multiple myeloma:SMM)に対するダラツムマブ(DARA)導入治療の有用性が示された。 SMMでは治療介入せずに積極的経過観察が推奨されてきたが、症候性の多発性骨髄腫(MM)への進行リスクも懸念されることから、高リスクSMMに対する治療介入の可能性が示唆されている。 CD38標的モノクローナル抗体であるDARAは、再発/難治MM(R/R MM)への有用性が示されている。DARAが積極的経過観察と比較してSMMからMMへの進行を遅らせることができるかを検討した。第III相AQUILA試験の中間解析結果が第66回米国血液学会(ASH2024)で発表された。・対象:診断されてから5年以内の高リスクSMM患者・試験群:ダラツムマブ(サイクル1および2は毎週、サイクル3~6は2週ごと、それ以降は4週ごと)4週1サイクルを39サイクル、36ヵ月または疾患進行まで(DARA群、194例)・対照群:積極的経過観察(196例)・評価項目【主要評価項目】独立審査委員会評価(IRC)評価の無増悪生存期間(PFS)※PFSはIMWGのSLiM-CRAB基準による【副次評価項目】全奏効率(ORR)、MMの1次治療までの期間、MM1次治療におけるPFS(PFS2)、全生存期間(OS)など 主な結果は以下のとおり。・追跡中央値65.2ヵ月のPFS中央値はDARA群未到達に対し、積積極的経過観察は41.5ヵ月で、DARAで有意に改善した(HR:0.49、95% CI:0.36〜0.67、p<0.0001)。推定60ヵ月PFS率はDARA群 63.1%、積極的経過観察40.8%であった。・ORRはDARA群63.4%、積極的経過観察2.0% であった(p<0.0001)。・OS中央値は両群とも未到達、60ヵ月OS割合はDARA群93.0%、積極的経過観察86.9%であった(HR:0.52、95%CI:0.27〜0.98)・死亡はDARA群15例(7.7%)、モニタリング群26例(13.3%)であった。・ランダム化からMM1次治療までの期間中央値は、DARA未到達に対し、積極的経過観察は50.2ヵ月であった(HR:0.46、95%CI:0.33〜0.62、名目p<0.0001)。・Grade3/4 の治療関連有害事象 (TEAE) は、DARA群の40.4%、積極的経過観察群の30.1%に発生した。頻度の高い (≧5%) Grade3/4のTEAEは高血圧 (DARA群5.7%、積極的経過観察群4.6%)であった。・DARA群において投与中止に至ったTEAEの発現は5.7%であった。

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無症候性アテローム性動脈硬化症の負担は全死亡と関連

 無症候性アテローム性動脈硬化症では、頸動脈プラークの負荷(carotid plaque burden;cPB)と冠動脈石灰化(coronary artery calcium;CAC)が全死亡と有意に関連していることを明らかにした研究結果が、カルロス3世国立心血管研究センター(スペイン)のValentin Fuster氏らにより、「Journal of the American College of Cardiology」10月8日号に発表された。 アテローム性動脈硬化症は進行性のプロセスであるが、無症候性の段階でも、頸動脈での動脈硬化の程度や進行を定量化することで全死亡リスクを予測できるのかどうかについては、エビデンスがほとんどない。 BioImage研究は、リスクのある無症候性の成人におけるアテローム性動脈硬化症の負荷の評価を目的にした大規模研究で、2008年から2009年に無症候性の米国成人7,687人を登録して開始された。参加者は、頸動脈の超音波検査とCT検査によるCACスコアリングが実施されており、今回は、必要なデータのそろった5,716人(平均年齢68.9歳、女性56.7%)を解析対象とした。このうち732人は、中央値で8.9年後に再び頸動脈の超音波検査を受け、cPBの進行を評価されていた。参加者は、2021年10月まで全死亡について追跡された。 中央値12.4年の追跡期間中に901人(16%)が死亡していた。ベースラインのcPBとCACスコアを三分位数で3群に分類し、全死亡との関連をCox比例ハザード回帰分析により評価した。その結果、cPBとCACスコアはいずれも、年齢、性別、人種、心血管リスク因子、使用している薬剤で調整後も、全死亡と有意な関連を示し、三分位群のカテゴリーが1つ上がるごとのハザード比(HR)は、それぞれcPBで1.23(95%信頼区間〔CI〕1.16〜1.32、P<0.001)、CACスコアで1.15(同1.08〜1.23、P<0.001)であった。cPBとCACスコアをモデルに追加することで、全死亡リスクの予測精度は有意に向上した。向上の程度はcPBを追加する方が高かったことから、リスクの評価においてcPBはCACスコアよりも重要な指標であることが示唆された。 次に、頸動脈の超音波検査の再検査を受けた732人の参加者を対象に、cPBの進行と全死亡との関連をCox比例ハザード回帰分析により評価した。参加者を、ベースラインと追跡調査時のcPBの変化により、「進行なし(いずれの検査でもcPB=0)」「後退(cPBが減少)」「進行(cPBが増加)」に分類したところ、571人(78.0%)が「進行」、63人(8.3%)が「後退」、98人(13.4%)が「進行なし」に該当した。cPBの進行は、上述の因子の調整後も全死亡と有意な関連を示した(cPBが10mm3増加するごとのHR 1.03、95%CI 1.01〜1.04、P=0.01)。 著者らは、「アテローム性動脈硬化症の無症状期間の長さは、現時点では十分に活用されていないが、早期介入や予防策を講じる良い機会となり得る」と述べている。

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紙巻きタバコと電子タバコの併用は禁煙成功率を下げる

 紙巻きタバコを吸っている人が禁煙のため、一時的に電子タバコを併用したとしても禁煙につながらず、むしろ喫煙継続率が高まるとする研究結果が報告された。ゲッティンゲン大学医療センター(ドイツ)のJosef Hamoud氏らが行ったシステマティックレビューとメタ解析の結果であり、詳細は「ERJ Open Research」に12月3日掲載された。 Hamoud氏らは、紙巻きタバコと電子タバコの二重喫煙者が、その後、禁煙したか、電子タバコまたは紙巻きタバコのどちらか一方のみの喫煙としたか、あるいは二重喫煙を継続していたかを検討した過去の研究報告を検索。16件の研究に基づく46報の論文を抽出した。このうち8件の研究データがメタ解析に利用され、研究参加者は二重喫煙者2,432人を含む9,337人だった。 解析の結果、二重喫煙者は禁煙に至ることが少なく、時間の経過とともに紙巻きタバコの喫煙者に戻るケースが多いことが分かった。詳しく見ると、4~8カ月の観察期間中に完全に禁煙できた人の割合は、二重喫煙者では3%、紙巻きタバコのみの喫煙者では6%、電子タバコのみでは8%であり、8~16カ月で禁煙に至った人の割合は同順に5%、7%、19%、16~24カ月では13%、17%、26%、24~48カ月では24%、25%、35%だった。 また、二重喫煙者の30%が4~8カ月の間に紙巻きタバコのみに切り替え、8~16カ月には47%、16~24カ月には58%、24~48カ月には55%が、紙巻きタバコのみを吸っていた。加えて、二重喫煙者の38%は8~16カ月の間、依然として両方のタバコを併用しており、24~48カ月でも8%は二重喫煙者だった。紙巻きタバコに移行した人も含めると、結局63~90%の人は喫煙を継続していた。 この結果からHamoud氏は、「紙巻きタバコと電子タバコの併用は、禁煙に向かう『過渡期』ではなく、むしろ、長期にわたる二重喫煙のリスクを高めるステージと言える。ヘビースモーカーが電子タバコを併用することで、紙巻タバコの喫煙量を減らせるというメリットを期待できるという主張もあるようだが、併用は従来の喫煙スタイルよりもさらに有害である可能性がある」と警告している。 欧州呼吸器学会のタバコ規制委員会委員長を務めるFilippos Filippidis氏も、Hamoud氏の見解に同意を示し、「今回報告された研究は、電子タバコと紙巻きタバコの併用に関するこれまでのエビデンスの全てを対象として行われた大規模な解析であり、結果として、大半の人にとっては電子タバコが禁煙への足がかりにはならないことが示された」と述べている。同氏はまた、「非喫煙者が電子タバコを吸い始めることのないよう、できる限りのことをする必要がある」と付け加えている。なお、Filippidis氏は本研究に関与していない。

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健康な高齢者では高用量ビタミンDで糖尿病リスクは低下しない

 たとえ高用量のビタミンDサプリメントを摂取したとしても、糖代謝異常がない高齢者の場合、2型糖尿病の発症リスク低下にはつながらないとする研究結果が発表された。東フィンランド大学のJyrki K. Virtanen氏らが行ったプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験によるもので、詳細は「Diabetologia」に12月2日掲載された。 過去の観察研究からは、血中ビタミンD濃度が低い場合に2型糖尿病の発症リスクが高いという関連が示されている。しかし、観察研究の結果のみでは、ビタミンDサプリの摂取が糖尿病リスク抑制につながるかどうかは不明。他方、既に血糖値がやや高い前糖尿病の人を対象に行われた研究では、ビタミンDサプリ摂取が糖尿病への移行リスクをわずかに抑制する可能性も示唆されているが、健康な集団での有用性のエビデンスはない。これを背景としてVirtanen氏らは、フィンランドの一般住民を対象にビタミンDサプリ摂取の影響を検討した大規模研究(FIND)のデータを用いた解析を行った。 FINDの参加者は60歳以上の男性と65歳以上の女性で、心血管疾患やがん、腎障害などの既往がなく、摂取している全てのサプリに含まれているビタミンDが合計20μg/日以下などの条件を満たす2,495人。一次評価項目として心血管疾患、二次評価項目としてがん、三次評価項目として2型糖尿病の発症が設定されていた。ビタミンDの中用量(40μg/日)群、高用量(80μg/日)群、およびプラセボ群の3群に、1対1対1でランダムに割り付け、平均4.2年間介入した。 全参加者のうちベースライン時点で血糖降下薬が処方されていた224人を除外した2,271人が、三次評価項目の解析対象とされた。この対象者の平均年齢は68.2±4.5歳、女性が43.9%、BMIは26.8±4.0であり、食事からのビタミンD摂取量は10.7±7.9μg/日で、66.0%はビタミンDサプリを摂取していなかった。解析対象者のうち504人は血中ビタミンD濃度(25〔OH〕D3)が測定されていて、その平均は29.8±7.2ng/mLだった。 追跡期間中に105人が2型糖尿病を発症。各群の発症者数は、ビタミンD中用量群が31人、高用量群36人、プラセボ群38人であり、100人年当たりの罹患率は同順に0.97、1.11、1.19だった。年齢と性別を調整後、プラセボ群を基準とする発症ハザード比は、中用量群が0.81(95%信頼区間0.50~1.30)、高用量群が0.92(同0.58~1.45)であり、ビタミンDの用量にかかわらず有意なリスク低下は観察されなかった。 追跡開始2年目までに2型糖尿病を発症した人を除外した解析や、性別、年齢層別、BMI別に層別化したサブグループ解析でも、ビタミンDサプリ摂取が2型糖尿病リスク低下につながる集団は特定されなかった。また、血糖値、血中インスリン値、インスリン抵抗性(HOMA-IR)、BMI、ウエスト周囲長の変化も検討されたが、いずれもビタミンD摂取による有意な影響は観察されなかった。 これらの結果から著者らは、「健康な高齢者を対象としたわれわれの研究では、中用量または高用量のビタミンDサプリの長期摂取による2型糖尿病の発症抑止効果は示されなかった」と結論付けている。

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GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドは、駆出率の保たれた心不全肥満患者に有効(解説:佐田政隆氏)

 左室駆出率が40%未満の心不全を「左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)」、左室駆出率が50%以上の心不全を「左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)」、左室駆出率が40%以上50%未満の心不全は「左室駆出率が軽度低下した心不全(HFmrEF)」と定義されている。 HFrEFに対する薬物療法では、この30年ほどの間に著明な進歩があった。β遮断薬、ACE阻害薬/ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)もしくはARNI (アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)、MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)、そして最近はSGLT2阻害薬の上乗せが予後をさらに改善することが証明された。現在、β遮断薬、ARNI、MRA、SGLT2阻害薬はfantastic fourと呼ばれ、HFrEF患者の予後改善のために1ヵ月以内に早期に導入することが強く推奨されている。 一方、HFpEFに対しては、β遮断薬、ACE阻害薬、ARB、ARNI、MRAを用いて各種大規模臨床研究が行われてきたが、いずれも予後を改善することは証明できなかった。近年、HFrEFよりHFpEFが増加しているという報告もあり、今後予想される心不全パンデミックに備えて、HFpEFに対する有効な治療法の開発が望まれていた。 この数年、SGLT2阻害薬がHFrEFのみでなくHFpEFに対しても有効性があることが証明され、ダパグリフロジンとエンパグリフロジンは糖尿病がなくても心不全治療薬として承認されている。しかし、HFpEF患者の予後改善のためには、さらなる追加の治療法が求められていた。 2023年、肥満を有するHFpEF患者において、セマグルチド2.4mgによる治療によって、プラセボと比較して、症状と身体的制限が軽減し、運動機能が改善し、体重が減少することがSTEP-HFpEF試験で報告された。 小腸から分泌されて膵臓に作用するインクレチン製剤としては長年GLP-1受容体作動薬が用いられてきたが、昨今、GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドが糖尿病治療薬として開発され、その強力な血糖降下作用と体重減少効果から、本邦でも急速に普及している。 本論文では、BMI 30以上の肥満をもったHFpEF患者(2型糖尿病患者はおよそ48%)に対するチルゼパチドの効果を検討した。主要評価項目である104週間での「心血管死と心不全増悪」を、チルゼパチドでプラセボと比較して有意に減少させた。また、カンザスシティ心筋症質問票臨床サマリースコア(KCCQ-CSS:スコア範囲は0~100で、数値が高いほど症状と身体的制限が少ないことを示す)と6分間歩行距離を改善した。体重減少は、チルゼパチド群で-13.9%、プラセボ群で-2.2%であった。注目すべきことには、高感度CRPがチルゼパチド群でなんと-38.8%低下し、プラセボ群では-5.9%であった。この抗炎症効果は、体重減少だけでは説明がつかないと思われ、膵臓以外の臓器へのチルゼパチドの多面的な作用の関与が大きいと思われる。 米国ではチルゼパチドは肥満症治療薬として2023年11月にすでに承認されているが、日本においてもセマグルチドに続いて2024年12月27日に承認された。肥満を有するHFpEF患者に対するチルゼパチドの効果のメカニズム、GLP-1受容体作動薬とGIP/GLP-1受容体作動薬でHFpEFに対してどちらがより効果的なのか、肥満のないHFpEFにも有効なのかと疑問は尽きないが、今後の臨床研究、基礎研究で解明されていくことが期待される。

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