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BCR–ABL TKIの出現で慢性期のCML(慢性骨髄性白血病)の治療成績は向上した。しかし、再発予防のため、TKIは生涯服用しなければならないと言われてきた。そのような中、慢性期CML 1次治療における第2世代TKIダサチニブの中止試験が行われ、Lancet Haematology誌で発表された。また、どのような患者がTKを中止できるのか、後ろ向き研究がMolecular Cancer Therapeutics誌で発表された。この2つの研究について佐賀大学の嬉野博志氏に聞いた。CML患者に恩恵もたらすTKI…“やめどき”が今後の研究課題―first line DADI試験を実施した背景について教えていただけますか。イマチニブをはじめとするTKIの出現で、慢性期CMLの治療成績は向上しました。一方、再発防止のためTKIは生涯服用し続けなければいけない、というのが通説でした。しかし、臨床現場では服用をやめざるを得ないケースもあります。そのような中、2010年、Lancet Oncology誌に第1世代TKIイマチニブのSTIM(Stop IMatinib)試験が発表されました。結果は、イマチニブで深い分子遺伝学的寛解(以下、DMR:deep molecular response)を2年間維持している患者では、1年後も38%がDMRを維持し続けたというものでした1)。その後も慢性期CMLにおけるTKIの中止を検討する、いわゆる「STOP試験」が行われるようになりました。2015年には、私ども佐賀大学が中心となり、イマチニブ不応・不耐用患者の2次治療にダサチニブを用いた、世界初の第2世代TKIのSTOP試験であるDADI(DAsatinib DIscontinuation) 試験を行いました。この試験ではダサチニブのDMR維持期間は1年間としました。イマチニブでは2年でしたが、抗腫瘍活性が高いことからダサチニブでは1年短縮したのです。DADI試験の結果、12ヵ月時点で48%、36ヵ月で44%の無治療寛解(以下、TFR:treatment free remission)が示されました2)。DADI試験の良好な結果を受け、ダサチニブを初回治療から用いたらイマチニブ以上に中止人数を増やせるのではないか、という仮説のもと、ダサチニブの1次治療のSTOP試験「first line DADI trial」を実施しました。ダサチニブDMRの維持期間はDADI試験と同様1年間です。first line DADI試験の概要日本の23施設による多施設単群第II相試験対象: ダサチニブの治療(24ヵ月以上)により、DMRを1年間維持している慢性期のCML症例。ECOG PS0〜2主要評価項目:上記患者におけるダサチニブ中止後6ヵ月時の分子学的無再発生存(TFR)主な結果2013年9月20日〜2016年7月12日に、ダサチニブの治療を24ヵ月以上行いDMRとなった 68例が登録され、1年間の強化治療相に割り当てられた。10例が除外され58例が評価対象となった。ダサチニブ投与中止後6ヵ月のTFRを達成した患者は55.2%(58例中32例)であった(追跡期間23.3ヵ月)。ダサチニブの投与期間中央値は40.4ヵ月であった。ダサチニブの主な有害事象は貧血(21%)。Grade3の好中球減少は4%、1%でGrade4のリンパ球減少が発現した。第2世代TKIではさらに早い薬剤離脱が可能か―この結果についてどう評価されますか。まず、薬剤中止までのDMRの維持期間を、第1世代TKIの2年から第2世代TKIダサチニブでは1年に短縮できることが示されました。また、6ヵ月のTFR達成患者の割合は55%でしたが、その後3年程度観察しても脱落した患者はいません。この服用期間で起こらなければ、そのあとの再発の可能性はかなり低いことも示唆されます。ダサチニブの3年強の服用で、薬がやめられる患者が一定数いることが明らかになったということは、以前のCMLの予後を考えると、すばらしい成果だと思います。TKI離脱はどのような患者で達成されるのか―TFRはどのような患者でもたらされるか、更なる研究も行っているそうですね。われわれの以前の研究で、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(以下、KIR:Killer Immunoglobrin-like Receptor)およびHLA多型が慢性期CML患者のDMR達成と関係することが示唆されていました。そこでわれわれは、TKIを中止できた慢性期CML患者におけるTFRとKIRおよびHLAの多型との関係を調べるため、佐賀大学での慢性期CML患者を後ろ向きに解析しました。―結果はどのようなものでしたか。佐賀大学を受診した慢性期CML患者76例が登録されました。76例のうち33例がTKIを中止でき、そのうち1年後にTFRを達成した患者は21例(63.6%)でした。多変量解析の結果、男性(HR:0.157、p=0.003)、HLA-02:01、11:01、24:02(HR:6.386、p=0.006)がTFRと関係していることが明らかになりました。DMR達成症例ではNK細胞の高い活性が示されたものの、TFRの達成とKIRの相関はないため、NK細胞の関連は認められませんでした。一方、日本人に頻度の高いHLA多型が相関することから、TFRの達成にはT細胞免疫の関連が示唆されました。これらの結果から、NK細胞はDMRの達成に関与し、T細胞免疫はTFRの達成に関与することも推測することも可能ですが、今後、より大規模な研究が必要だと思います。発表論文Kimura S, el.al. Treatment-free remission after first-line dasatinib discontinuation in patients with chronic myeloid leukemia (first-line DADI trial): a single-arm, multicenter, phase 2 trial. Lancet Haematol. 2020 Mar 7.[Epub ahead of print]Ureshino H,et al. HLA Polymorphisms Are Associated with Treatment-Free Remission Following Discontinuation of Tyrosine Kinase Inhibitors in Chronic Myeloid Leukemia. Mol Cancer Ther. 2021;20;142-149.出典1)Mahon FX, et al. Lancet Oncol. 2010 Nov 11.2)Imagawa J, et al. Lancet Haematol. 2015 Dec 2.