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PFO閉鎖術で脳梗塞再発予防効果が得られる患者は?/JAMA

 18~60歳の卵円孔開存(PFO)関連脳梗塞患者において、PFOのデバイス閉鎖による脳梗塞再発リスクの低減効果は、脳梗塞とPFOの因果関係の確率で分類されたグループにより異なることが示された。この分類法は個別の治療意思決定に役立つ可能性があるという。米国・タフツ医療センターのDavid M. Kent氏らが、「Systematic, Collaborative, PFO Closure Evaluation(SCOPE)コンソーシアム」によるメタ解析の結果を報告した。PFOに関連する脳梗塞は、18~60歳の成人における脳梗塞の約10%を占める。PFOのデバイス閉鎖は脳梗塞の再発リスクを減少させるが、どのような治療法が最適かは不明であった。JAMA誌2021年12月14日号掲載の報告。再発例をPFO閉鎖術+内科的治療vs.内科的治療単独で比較 研究グループは、脳梗塞再発に対するPFO閉鎖術の治療効果の異質性を、これまでに開発されたスコアリングシステムに基づいて評価する目的で、2021年9月までに発表された脳梗塞再発予防のためのPFO閉鎖術と内科的治療を比較したすべての無作為化第III相試験について、個人データのメタ解析を行った。 有効性の主要評価項目は脳梗塞の再発で、PFO閉鎖術+内科的治療と内科的治療単独を比較するとともに、RoPE(Risk of Paradoxical Embolism)スコアおよびPASCAL(PFO-Associated Stroke Causal Likelihood)分類システムを用いたサブグループ解析を行った。 RoPEスコア(1~10点)は、原因不明の脳梗塞で発見されたPFOが、偶発的所見ではなく脳梗塞の原因である確率を示すもので、RoPEが高いほど若年でその確率が高いことを反映する。また、PASCAL分類システムは、RoPEスコアと高リスクPFOの特徴(心房中隔瘤またはシャント量増大のいずれか)を組み合わせ、因果関係を「可能性が低い」「可能性あり」「可能性が高い」の3つのカテゴリーに分類するものである。 2000年から2017年にかけて世界的に実施された無作為化臨床試験6件、計3,740例が解析に組み込まれた。脳梗塞の原因がPFOである可能性が高いほど、デバイス閉鎖の効果あり 追跡期間中央値57ヵ月(四分位範囲:24~64)において、3,740例中121件のイベントが認められた。脳梗塞の年間発生率は、内科的治療が1.09%(95%信頼区間[CI]:0.88~1.36)に対して、デバイス閉鎖併用では0.47%(0.35~0.65)であった(補正後ハザード比[HR]:0.41、95%CI:0.28~0.60)。 サブグループ解析では、統計学的に有意な交互作用が認められた。HRは、RoPEスコア低値の患者で0.61(95%CI:0.37~1.00)、高値の患者で0.21(0.11~0.42)であった(交互作用のp=0.02)。また、PASCAL分類システムで「可能性が低い」「可能性あり」「可能性が高い」と分類された患者のHRは、それぞれ1.14(95%CI:0.53~2.46)、0.38(0.22~0.65)、0.10(0.03~0.35)であった(相互作用のp=0.003)。2年間の絶対リスク減少は、PASCAL分類システムの「可能性が低い」「可能性あり」「可能性が高い」でそれぞれ-0.7%(95%CI:-4.0~2.6)、2.1%(0.6~3.6)、2.1%(0.9~3.4)であった。 デバイス関連有害事象は、「可能性が低い」と分類された患者で高く、無作為化後45日目以降の心房細動の絶対リスク増加は、「可能性が低い」「可能性あり」「可能性が高い」でそれぞれ4.41%(95%CI:1.02~7.80)、1.53%(0.33~2.72)、0.65%(-0.41~1.71)であった。

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第83回 診療報酬、人件費増も全体マイナス、医療費は1.35%減

<先週の動き>1.診療報酬、人件費増も全体マイナス、医療費は1.35%減2.ノババックス製ワクチン、WHOが緊急使用許可3.来年度からリフィル処方箋導入へ、具体的ルール策定に進む4.研修医の募集枠、定員上限をさらに縮小へ/厚労省5.後発品医薬品メーカーの相次ぐ不祥事、改善を求める声1.診療報酬、人件費増も全体マイナス、医療費は1.35%減22日、厚生労働大臣と財務相の閣僚折衝が行われた。来年度の診療報酬の改定率は、医師・看護師などの人件費を見込んで本体部分を0.43%増、薬価改定率を医療費ベースで1.35%減とすることで合意した。国費削減額は1,600億円程度。全体では0.94%のマイナスとなった。中川 俊男日本医師会長はこれを受け、「厳しい国家財政の中、必ずしも満足するものではないが、プラス改定となったことについて率直に評価する」と定例記者会見で語った。(参考)令和4年度診療報酬改定率の決定を受けて―中川俊男会長定例記者会見(日医)診療報酬0.94%下げ 医師人件費はプラス―国費1320億円削減・22年度改定(時事通信)資料 診療報酬改定について(厚労省)2.ノババックス製ワクチン、WHOが緊急使用許可世界保健機関(WHO)は21日、米・ノババックス製新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を承認した。緊急使用が認められたワクチンは10例目。なお、同ワクチンで製造パートナーであるインド・セラム インスティチュート オブ インディアが製造するものは先立って17日に承認されている。本剤は「組み換えタンパクワクチン」に分類され、英国や米国などで行われた試験によると、有効性は90%で、WHOは18歳以上を対象に3~4週間あけて2回の接種を勧めている。冷蔵保管可能なこともあり、COVAXを通じた途上国などへの分配加速につながることが期待されている。(参考)ノババックス製のワクチン、WHOが承認…日本では武田薬品が申請中(読売新聞)WHO 米ノババックス社製ワクチンを緊急使用リストに追加(NHK)3.来年度からリフィル処方箋導入へ、具体的ルール策定に進む厚労省は22日に中医協の総会を開催し、2022年度の診療報酬改定で、一定期間内に一回分の処方箋を繰り返し利用できる「リフィル処方箋」の導入を決めた。これは、今年の6月に閣議決定された骨太方針2021で「症状が安定している患者について、医師及び薬剤師の適切な連携により、医療機関に行かずとも、一定期間内に処方箋を反復利用できる方策を検討し、患者の通院負担を軽減する」とされていたもの。厚労省は本方針を踏まえ、「分割調剤の指示、分割調剤に係る処方箋様式の在り方」を論点として提示していた。今後、詳細についてはさらに検討し、来年4月以降の導入に向けて具体的な方針が示される見込み。(参考)処方箋の反復利用可能に 22年度から―診療報酬改定(時事通信)処方箋の反復利用導入へ 政府、医療費の膨張抑制(日経新聞)資料 経済財政運営と改革の基本方針2021(内閣府)4.研修医の募集枠、定員上限をさらに縮小へ/厚労省厚労省は、22日に第2回医道審議会医師分科会医師臨床研修部会を開催した。これまでは国が過去の受け入れ実績などによって研修医の募集枠設定を行っていたが、地域の必要数と募集定員数との乖離が指摘されたため、昨年度に定員の設定権限を都道府県へ移譲している。臨床研修が必修化されて以降、研修医の募集定員が研修希望者の1.3倍を超える規模まで拡大したため、2010年度からは募集定員について上限を設定しているが、近年は縮小の動きがある。2020年度には約1.1倍であり、今後2025年度には約1.05倍まで縮小させる見込み。(参考)資料 都道府県による令和4年度の臨床研修病院の募集定員設定について(厚労省)資料 令和3年度都道府県別募集定員上限について(同)5.後発品医薬品メーカーの相次ぐ不祥事、改善を求める声厚労省は、22日に医薬品等行政評価・監視委員会を開催し、今年はじめに発覚した小林化工の事件をきっかけに相次ぐ後発品メーカーの行政処分について触れた。承認書で規定された内容と異なる方法で製造・出荷するなど薬機法違反により業務停止、業務改善などの処分により、数多くの後発品に欠品が生じている状況を鑑み、無通告立ち入り検査の実施などを行い、適切な品質管理体制を確保し再発防止を図ることを求めた。(参考)資料 後発医薬品等の製造管理及び品質管理について(厚労省)ジェネリック医薬品が相次ぐ欠品 持病の薬が値上げも…背景に何が?(NHK)

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統合失調症患者およびその介護者に対するCOVID-19の影響

 チリ・タラパカ大学のAlejandra Caqueo-Urizar氏らは、統合失調症患者とその介護者に対するCOVID-19パンデミックの心理社会的影響について、分析を行った。Frontiers in Psychology誌2021年11月5日号の報告。 対象は、チリ北部の都市アリカに在住する統合失調症患者120例およびその介護者(対照群)。次の3点の仮説について検討を行った。(1)患者と介護者の間でCOVID-19パンデミックの影響に関する自己報告には正の相関が認められる、(2)介護者は、パンデミックが日常生活に及ぼす影響が大きいと感じている、(3)COVID-19に感染した患者は、メンタルヘルスの改善レベルが不良で、心理的苦痛レベルが高い。これらの仮説は、相関、平均差、エフェクトサイズ(Cohen's d)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・約1年間隔離された統合失調症患者は、健康および日常生活について、介護者と同レベルの懸念を抱いていた。・介護者は、統合失調症患者と比較し、収入、懸念、雇用について有意な差が認められた。・COVID-19に感染した患者は、ウェルビーイングレベルが低く、精神的リカバリーの不良が認められた。 著者らは「本検討において、パンデミック時における統合失調症患者の介護者に対するメンタルヘルス介入の必要性が示唆された。また、COVID-19感染は、統合失調症患者のリカバリーやウェルビーイングに大きな影響を及ぼすことが示唆された」としている。

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押さえておきたいリアルタイムCGMの使用要件/日本糖尿病学会

 糖尿病診療で広く活用されてきているリアルタイム持続グルコース測定(リアルタイムCGM)。2018年12月からはリアルタイムCGMが保険適用となり、CGM機は施設基準を満たした医療機関で、適用患者も限定され使用されている。 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎)は、2019年に発表した「『リアルタイムCGM適正使用指針』について」の内容を改訂し、12月16日に公表した。リアルタイムCGM適正使用指針の主な改訂点【2.使用できる施設】・インスリンポンプ一体型リアルタイムCGMと同様にインスリンポンプ治療を行っている施設で、糖尿病治療経験5年以上の糖尿病専門医が1名以上常勤していることに加えて、インスリンポンプ治療の経験を2年以上有する常勤の看護師や薬剤師(糖尿病療養指導士や糖尿病看護認定看護師など)が1名以上配置されている施設に限定される。・糖尿病専門医や糖尿病療養指導士、糖尿病看護認定看護師に対しては、日本糖尿病学会が行うSAPやCGMのe-learningの受講を必須。【3.適応と注意点】 ・本機器は、(1)急性発症1型または劇症1型の糖尿病患者で、低血糖対策と血糖コントロールの両立が強く求められるが就労や生活環境上の理由でインスリンポンプ一体型リアルタイムCGM(SAP)を使用できない者、(2)2型の糖尿病患者でも内因性インスリン分泌が欠乏(空腹時血清Cペプチド 0.5ng/mL未満)しており、インスリン治療を行っていても低血糖発作など重篤な有害事象がおきている血糖コントロール不安定な者が適応となる。具体的にはインスリン頻回注射またはSAP以外のインスリンポンプ治療と1日最低2回以上のSMBGを行っているが、血糖が不安定で予期せぬ低血糖や著明な高血糖を繰り返す者で、上記に示した施設基準を満たす医療機関を受診している者が適応となる。・低血糖リスクが乏しく、血糖コントロールの安定している者または医師の指導に従わず、SMBG を行わない患者等は適応外である。【4.アラートの設定閾値】(1)低グルコースのアラート低グルコースアラートを使用する場合は使い始めてしばらくは60~70mg/dLに設定する。(2)高グルコースのアラート高グルコースアラートを使用する場合は使い始めてしばらくは250~300mg/dLに設定する。(3)その他のアラート機能これらのアラ―ト機能の内容、使い方、対処法については、患者の特性を考慮して個別的に設定、説明、指導を行う。【5.アラート鳴動時の対応】1)患者・原則として、アラート鳴動後にSMBGを行い、その結果をもとに糖尿病専門医、および糖尿病療養指導士や糖尿病看護認定看護師による事前の指導に従った対応を取ることが求められる。・医師は本機器での測定結果を過信せず、SMBGで血糖値を確認することが推奨されることを患者に対して教育する必要がある。また患者によってはアラート鳴動時以外にも本機器の数値に対して過剰に反応し、ブドウ糖の摂取やインスリン追加注射などを自己判断で行ってしまう可能性もあることから、低血糖・高血糖への対応については日常的な継続指導が必要である。2)患者家族等・患者自身が対応を取ることが難しく、かつ患者家族等が患者の傍にいる場合には、患者に代わって事前の医師の指導に従って対応を行うことを指導しておく必要がある。 なお、実際の使用開始に際しては学会が作成するeラーニングの受講が必須とされているので注意を願いたい。

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イサツキシマブ、再発難治多発性骨髄腫に対する3レジメンが追加承認/サノフィ

 2021年11月、サノフィは再発又は難治性の多発性骨髄腫の治療薬である抗CD38モノクローナル抗体イサツキシマブ(商品名:サークリサ)における、カルフィルゾミブ・デキサメタゾン併用療法、単剤療法およびデキサメタゾン併用療法に関する承認事項一部変更を発表した。 12月17日に行われたプレスセミナーでは、日本赤十字社医療センターの鈴木 憲史氏、岡山医療センターの角南 一貴氏がイサツキシマブの各療法の承認に至った試験概要や新たな治療法への期待について講演した。イサツキシマブがIsaPdレジメンに加えて3レジメンに追加承認 多発性骨髄腫は日本における新規罹患者数は約7,700人(2018年)、死亡者数は約4,400人(2019年)、比較的高齢者に多く発症する。治療法は移植と薬物療法が中心で、複数の治療薬が承認されており、ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾンのVRd療法をはじめとした多くの併用レジメンがある。薬剤の発達により予後は改善しているが、細胞遺伝学的高リスクや腎機能障害を合併などでは予後不良となるケースが多く、再発難治には患者背景に合わせた複数の治療オプションが求められていた。 今回の承認によって再発難治の多発性骨髄腫に対するイサツキシマブのレジメンは以下の4つとなった(スラッシュ以下は承認の基となった試験名)。・イサツキシマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン(IsaPd)/ICARIA-MM試験・イサツキシマブ+カルフィルゾミブ+デキサメタゾン(IsaKd)/IKEMA試験・イサツキシマブ+デキサメタゾン(Isa+d)/TED10893試験・イサツキシマブ単剤/ISLANDs試験 「多発性骨髄腫は、再発ごとに治療可能期間が減少するため、早い段階で無増悪生存期間を最大化できる戦略が求められる。また、単剤ではなかなか制御できない疾患であり、薬剤の役割分担も重要。イサツキシマブは直接的な細胞死を誘導する作用機序があり、強力かつ長い効果が期待できる。駅伝でいえば花の2区走者になれるのではないか」(鈴木氏)。 「ISLANDs試験は日本人を対象とした日本発のエビデンスであり、抗体薬単剤のレジメンは国内初で、承認も日本のみとなっている。IsaPdやIsaKdの3剤併用レジメンはそれなりに強力なので、 Isa+dと単剤療法はフレイルの患者やポマリドミド・カルフィルゾミブが使いにくい患者の選択肢になるだろう」(角南氏)。

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COVID-19退院後の血栓イベント予防に、抗凝固療法が有用/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した高リスク患者において、退院後のリバーロキサバン10mg/日投与は抗凝固療法を行わない場合と比較し35日後の臨床アウトカムを改善することが、無作為化非盲検試験「MICHELLE試験」で示された。ブラジル・Science Valley Research InstituteのEduardo Ramacciotti氏らが報告した。COVID-19で入院した患者は、退院後に血栓イベントのリスクがあるが、この集団における血栓予防の効果は不明であった。Lancet誌オンライン版2021年12月15日号掲載の報告。退院時にリバーロキサバン10mg/日投与と抗凝固療法なしに無作為化、35日間追跡 研究グループは、ブラジルの14施設において、COVID-19により入院し、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクが高い患者(VTE予防のための国際登録「IMPROVE」のVTEスコア≧4、または2~3でDダイマー>500ng/mL)を、退院時にリバーロキサバン10mg/日を投与する群(リバーロキサバン群)と抗凝固療法を行わない群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 有効性の主要評価項目は、35日目における症候性または致死性VTE、両側下肢静脈超音波検査およびCT肺血管造影による無症候性VTE、症候性動脈血栓塞栓症、および心血管死の複合とし、盲検下で判定した。安全性の主要評価項目は大出血。いずれもintention-to-treat解析を行った。リバーロキサバン群で血栓イベントリスクが67%低下 2020年10月8日~2021年6月29日の間に997例がスクリーニングされ、このうち適格基準を満たした320例が登録され、リバーロキサバン群(160例、50%)または対照群(160例、50%)に無作為に割り付けられた。 全例、入院中は標準用量のヘパリンによる血栓予防を行った。165例(52%)は入院中に集中治療室に入室しており、197例(62%)はIMPROVEのVTEスコアが2~3のDダイマー高値例、121例(38%)は同スコア≧4であった。2例(各群1例)は、同意を撤回したため追跡調査ができず、解析から除外された。 有効性主要評価項目の複合イベントは、リバーロキサバン群で159例中5例(3%)、対照群で159例中15例(9%)に発生し、相対リスクは0.33(95%信頼区間[CI]:0.12~0.90、p=0.0293)であった。 両群とも大出血は認められなかった。リバーロキサバン群で2例(1%)にアレルギー反応が報告された。

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モデルナワクチン2回接種、変異株ごとの有効性/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンmRNA-1273(Moderna製)の2回接種は、デルタ変異株、ミュー変異株を含む新たに出現した変異株に対して有効性を示し、とくにCOVID-19による入院に対して高い効果が認められることが、米国・カイザーパーマネンテ南カリフォルニア(KPSC、統合型ヘルスケアシスム)のKatia J. Bruxvoort氏らにより報告された。KPSCメンバーの接種者を対象としたtest negativeケースコントロール試験の結果で、これまでmRNA-1273ワクチンの特異的変異株に対する有効性を検討した試験はほとんどなく、今回の試験を行ったという。mRNAベースのCOVID-19ワクチンについてはデルタ変異株への有効性が低く、保護効果の減弱が報告されていた。BMJ誌2021年12月15日号掲載の報告。変異株ごとに感染および入院への有効性を評価 研究グループは、2021年3月1日~7月27日に、全ゲノムシークエンスによるSARS-CoV-2陽性検査または陰性検査を受けた成人KPSCメンバーを対象に、mRNA-1273ワクチンのSARS-CoV-2感染に対する有効性を調べ、また接種後の時間経過によるデルタ変異株への有効性を評価した。対象は、検体採取の14日以上前にmRNA-1273ワクチン2回または1回の接種者と、COVID-19ワクチン非接種者とした。 アウトカムにはSARS-CoV-2感染およびCOVID-19による入院を含み、事前規定の各変異株の解析では、年齢、性別、人種/民族、検体採取日で検査陽性例と検査陰性例を1対5の割合でマッチングし、交絡因子を補正したうえで、条件付きロジスティック回帰を用いて症例vs.対照のワクチン接種のオッズ比を算出。ワクチンの有効性は、(1-オッズ比)×100%として算出した。デルタ変異株感染への2回接種の有効性は86.7% 試験には、検査陽性8,153例(症例)が包含された。7,442例(91.3%)がワクチン非接種者で、112例(1.4%)は1回接種者であり、2回接種者は599例(7.3%)であった。また、全ゲノムシークエンスが有効であった検査陽性者は5,186例(63.6%)だった。 5,186例について変異株別にみると、デルタ変異株陽性は2,042例(39.4%)、アルファ変異株1,436例(27.7%)、イプシロン変異株590例(11.4%)、ガンマ変異株357例(6.9%)、イオタ変異株115例(2.2%)、ミュー変異株71例(1.4%)、その他575例(11.1%)であった。2回接種者では、デルタ変異株の陽性が大部分を占めていた(85.0%)。また、2回接種者では、COVID-19による入院(1.8%)はほとんどみられず、院内での死亡(0.0%)はなかった。 2回接種のワクチン有効性は、デルタ変異株の感染に対しては86.7%(95%信頼区間[CI]:84.3~88.7)、アルファ変異株に対しては98.4%(96.9~99.1)、ミュー変異株に対しては90.4%(73.9~96.5)、その他の識別された変異株に対しては96~98%であった。また、非識別の変異株(つまり、シークエンスに失敗した検体)に対しては79.9%(76.9~82.5)であった。 デルタ変異株による入院へのワクチン有効性は97.5%(95%CI:92.7~99.2)だった。デルタ変異株感染へのワクチンの有効性は、ワクチン接種後14~60日で94.1%(90.5~96.3)だったが、ワクチン接種後151~180日で80.0%(70.2~86.6)に低下していた。なお、デルタ以外の変異株では、有効性の減弱はそれほど顕著ではなかった。 デルタ変異株感染へのワクチン有効性は、65歳以上は75.2%(95%CI:59.6~84.8)で、18~64歳の87.9%(85.5~89.9)と比べて低かった。 また、デルタ変異株感染への1回接種のワクチン有効性は、77.0%(95%CI:60.7~86.5)だった。

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HER2+進行乳がん2次治療、T-DXdが脳転移例にも良好な結果(DESTINY-Breast03)/SABCS2021

 HER2陽性の切除不能または転移を有する乳がん(mBC)患者に対する2次治療として、脳転移の有無にかかわらずトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)がトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)と比較し高い有効性を示した。米国・カリフォルニア大学のSara A. Hurvitz氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS 2021)で第III相DESTINY-Breast03試験のサブグループ解析結果を発表した。 DESTINY-Breast03試験については、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で中間解析結果が発表され、主要評価項目のPFS中央値は、T-Dxd群NR(95%信頼区間[CI]:18.5~NE) vs.T-DM1群6.8ヵ月(95%CI:5.6~8.2)、ハザード比(HR):0.28(95%CI:0.22~0.37、p=7.8×10-22)でT-Dxd群の有意な延長が報告されている。・対象:トラスツズマブとタキサンによる治療歴のあるHER2+mBC患者・試験群:以下の2群に1対1の割合で無作為に割り付けT-DXd群:3週間間隔で5.4mg/kg投与 261例T-DM1群:3週間間隔で3.6mg/kg投与 263例・層別化因子:ホルモン受容体の状態、ペルツズマブ治療歴、内臓転移の有無、治療ライン数(0~1、≧2)、脳転移の有無・評価項目:[主要評価項目]盲検化独立中央評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]OS、BICRおよび治験実施医師評価による客観的奏効率(ORR)、BICR評価による奏効期間(DOR)、治験実施医師評価によるPFS、安全性 主な結果は以下のとおり。・データカットオフは2021年5月21日、追跡期間中央値は15.9ヵ月。・ベースライン時点で、脳転移を有する患者はT-DXd群43例(16.5%)vs. T-DM1群39例(14.8%)だった。・ホルモン受容体の状態、ペルツズマブ治療歴、内臓転移の有無、治療ライン数、脳転移の有無別のいずれのサブグループにおいても、T-DM1群と比較してT-DXd群ではPFS中央値とORRが大きく改善していた。・ベースライン時点で脳転移を有する症例でのPFS中央値はT-Dxd群15.0ヵ月(95%CI:12.5~22.2) vs.T-DM1群3.0ヵ月(95%CI:2.8~5.8)、HR:0.25(95%CI:0.13~0.45)。脳転移のない症例でのPFS中央値はNE(95%CI:22.2~NE)vs. 7.1ヵ月(95%CI:5.6~9.7)、HR:0.30(95%CI:0.22~0.40)だった。・ベースライン時点で脳転移を有する症例でのORRはT-Dxd群67.4% vs.T-DM1群20.5%。CRは4.7% vs.0%、PRは62.8% vs.20.5%。脳転移のない症例でのORRは82.1% vs. 36.6%。CRは18.3% vs.10.3%、PRは63.8% vs.26.3%だった。・ベースライン時点で脳転移を有する症例での頭蓋内奏効は、CRがT-Dxd群27.8% vs. T-DM1群2.8%、PRは36.1% vs.30.6%だった。・中間解析において治療中止に関連した有害事象としてT-Dxd群で最も多かったのはILD/肺炎であったが、Grade4以上の報告はなく、またアジア人サブグループと非アジア人サブグループの間で差は認められなかった(10.9% vs.10.0%)。

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経口コロナ治療薬モルヌピラビルを特例承認/厚労省

 厚生労働省は12月24日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する経口抗ウイルス薬モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオカプセル200mg)について、国内における販売を特例承認した。日本における申請者はMSD。重症化リスク因子を有し、軽症~中等症の入院していない18歳以上の患者が投与対象となる。ただし、動物実験において胎児毒性が報告されているため、妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与しない旨が、モルヌピラビルの添付文書に「禁忌」として明記されている。モルヌピラビルは11月10日、メルクと日本政府との間で約160万回分を提供することですでに合意しており、今回の承認を受け、速やかに提供が開始される見通しだ。新型コロナに特化した経口治療薬の承認はモルヌピラビルが初めてとなる。モルヌピラビルを巡って各国の対応は分かれる モルヌピラビルは、経口投与が可能な強力なリボヌクレオシドアナログで、SARS-CoV-2を含むさまざまなRNAウイルスの複製を阻害する。SARS-CoV-2の予防投与、治療、感染防止などのいくつかの前臨床モデル、またSARS-CoV-1、MERSに対する活性が認められている。 モルヌピラビルを巡っては、12月23日付で米FDAが緊急使用を許可した一方、フランスでは臨床試験の結果に鑑み、政府が購入見送りを決めるなど、判断が分かれている。<製品概要>販売名:ラゲブリオカプセル200mg一般名:モルヌピラビル効能又は効果: SARS-CoV-2 による感染症用法及び用量: 通常、18歳以上の患者には、モルヌピラビルとして1回800mgを1日2回、5日間経口投与する。

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コロナに感染してもワクチン接種していると、コロナ入院リスクも重症化リスクも死亡リスクも低い(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による第5波の後、日本では感染者は激減して、多くの医療機関では今後押し寄せるだろう第6波に向けて、粛々と感染対策の見直しやコロナワクチンのブースター接種の業務を進めていることだろう。日本では水際対策が功を奏しているからかどうかはわからないが、世界で話題になっているSARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統、通称オミクロン株の大きな流行は12月中旬現在では認められていない。ただし米国の一部の地域や英国などでは冬になりオミクロン株が猛威を振るっている状況であり、日本でも感染対策の手を緩め過ぎることのないようにされたい。 ファイザー製コロナワクチンBNT162b2の効果としては、最初に95%の発症予防効果(Polack FP, et al. N Engl J Med. 2020;383:2603-2615.)が示された。その後もリアルワールドデータが数多く報告され、感染予防効果率:92%、重症化予防効果率:92%、入院予防効果率:87%(Dagan N, et al. N Engl J Med. 2021;384:1412-1423.)と多くの臨床的有用性がすでに判明している。さらに12~15歳の若年者での報告においては、BNT162b2コロナワクチンを2回接種後にCOVID-19を発症した症例は1例も認めないという高い有効性や安全性も示されている(Frenck RW Jr, et al. N Engl J Med. 2021;385:239-250.)。このような高い有効性を示す新型コロナワクチンであるが、本邦では12月中旬に1回目のワクチン接種完了者が1億人を超え、2回目接種完了者も約9,800万人と、国民の78%がワクチンで守られていることも、現在日本でコロナの状況が落ち着いている1つの要因であろうと考えられる。 ワクチン接種完了者における新規感染を、ワクチン接種を突破して発生した感染であることから「ブレークスルー感染」と一般的に呼称している。ブレークスルー感染を惹起したウイルスの種類は、その国や地域のその時点で流行している背景ウイルスに規定される(山口,田中. CareNet論評-1422)。2020年12月から2021年4月に米国でワクチン接種群と非接種群を比較した研究(Thompson MG, et al. N Engl J Med. 2021;385:320-329.)では、(1)ワクチン2回接種群の感染予防効果は91%(ファイザー製コロナワクチンBNT162b2:93%、モデルナ製コロナワクチンmRNA-1273:82%)、(2)ワクチン接種後のブレークスルー感染におけるウイルスRNA量はワクチン非接種群の感染と比較して40%低く、ウイルス検出期間はワクチン非接種群より66%低下したことが示され、以前の論評で取り上げた。これらの結果からワクチン接種群では、ブレークスルー感染を起こした場合においてもウイルスの病原性はワクチン非接種群よりも低く抑えられ、ワクチン接種の重要な効果の1つと考えている。 また、最近まで世界を席巻していたデルタ株によるブレークスルー感染については、米国CDCが詳細に報告(MMWR 2021;70:1170-1176., MMWR 2021;70:1059-1062.)している。デルタ株に起因するブレークスルー感染の発生率は10万人当たり63.8人(0.06%)、入院率は10万人当たり1人(0.001%)と報告されており、ワクチン未接種者でのそれぞれ0.32%、0.03%と比較して有意に少ないことが示された。 2021年11月に南アフリカでオミクロン株(B.1.1.529系統)が検出され、WHOでも日本でも新しい懸念すべき変異株VOC(variant of concern)として位置付けている。オミクロン株に対するデータはまだ限られているが、ファイザー製コロナワクチンBNT162b2のオミクロン株におけるコロナ発症予防効果が英国から報告(UKHSA publications gateway number GOV-10645.)されている。コロナワクチン接種後24週間後にはワクチンによるコロナ発症予防効果がデルタ株においては約60%程度まで低下してしまうが、オミクロン株では約40%程度にまでさらに低下してしまうことが示されている。ただし、ワクチンのブースター接種によりオミクロン株であったとしても約80%にまで回復していることや、まだ少数例での報告のため今後の大規模な報告や実臨床での検討が待たれるところである。 今回取り上げたTenfordeらが報告した論文は、2021年3月11日~8月15日までに米国21施設で入院した4,513例を解析の対象とした症例コントロール研究である。4,513例中新型コロナ感染で入院した1,983例と他の診断で入院した2,530例が比較検討されているが、コロナ入院症例中84.2%に当たる1,669例が新型コロナワクチン未接種者であった。コロナによる入院はワクチン未接種と有意な関連(補正後オッズ比:0.15)があり、アルファ株であろうがデルタ株であろうが同様の結果であった。また3月14日~7月14日に登録された1,197例においては、28日までの死亡や人工呼吸器管理は、ワクチン接種者の12.0%に比べワクチン未接種者が24.7%と有意な関連(補正後オッズ比:0.33)があり、死亡に限ってもワクチン接種者は6.3%であるのに比べ、未接種者は8.6%と有意に関連(補正後オッズ比:0.41)があった。また本研究では退院までの日数もカプランマイヤー曲線で示されており、免疫抑制状態の症例であろうがなかろうが、高齢者であろうがなかろうが、ワクチン接種群が非接種群に比べて有意に早く回復し退院できていることも重要な結果であろうと考える。 本研究の解析は、ワクチン接種率が37.7%にとどまっている時点での報告である。コロナ感染群におけるワクチン接種済みの症例のブレークスルー感染に該当する症例は、65歳以上の高齢者、心疾患や肺疾患、免疫抑制状態の症例が多く含まれており、逆にコロナ感染者でワクチン未接種者は若年者や基礎疾患のない症例が多く含まれ、ワクチン接種群と未接種群のコロナ感染の比較をしても大きく患者背景が異なっていることを考えて解釈すべきだろう。解析では入院日の違い、年齢や性別、人種差などに関してはロジスティック回帰モデルの要素として取り上げられているが、心臓や肺の基礎疾患を併存する症例に関しては考慮されていない。ワクチン接種したコロナ感染群では心疾患を併存している症例が75.2%含まれているのに対し、ワクチン未接種のコロナ感染群では心疾患を持つ症例が48.8%にとどまっている。一般的なコロナ重症化因子として考えられている心疾患や肺疾患が多く含まれている集団なのにもかかわらず、コロナワクチンを接種していると、重症化リスクの少ない集団でのコロナ感染よりもコロナによる入院・重症化・死亡リスクが少ないということは特筆すべき結果と捉えることができる。 今回の解析はすべて入院症例のデータであり、入院を必要としない軽症者には当てはめることができない。またサンプルサイズの関係で、ワクチンの種類ごとの解析や変異ウイルス別での層別化は困難であることはTenfordeらも懸念しているところである。 現在、日本にも押し寄せるだろうオミクロン株を迎え撃つために、粛々と世の中のワクチン未接種者に対してワクチンの正しい理解を深めるような啓発活動を続けつつ、医療者のブースター接種も進めている状況である。今回ワクチンで守られていない症例群が重症化や死亡リスクに深く関わっていることを勉強したが、今後、オミクロン株に対してもワクチン未接種の危険性やブレークスルー感染での重症度や死亡リスクなどが明らかになると、さらに有効なコロナ対策ができうるものと想像している。

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奈良公園のシカ外傷49例の検討【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第200回

奈良公園のシカ外傷49例の検討ぱくたそより使用奈良公園の近くにある会場で学会があったとき、ついでに奈良公園に立ち寄ることがあります。シカせんべいを買ったらシカが突進してくるので、私は買わないようにしています。川口竜助, 他.奈良公園の鹿が関係した外傷症例49例の検討:記述疫学研究.日救急医会誌2021; 32: 543-548.奈良公園には約1,200頭の野生のニホンジカがいるそうです。そんなにいたんだ……。一応、街中にいるんですけど、あれは野生なんですね。この論文の考察にも餌付けされているが「野生」と断言されていました。文明慣れしているのか、横断歩道の赤信号を待っているシカもいますよね。2014年1月1日~2018年12月31日の5年間に、奈良公園とその周辺に生息するシカが関連した外傷の救急搬送例を49例(男性18例、女性31例)集めて、まとめたのがこの報告です。驚くべきことに、5年間で搬送例が3.6倍と急増していることがわかりました。全体の86%が旅行者で、奈良市の居住者は少なかったそうです。やはりこれは、生活の慣れというやつでしょうか。角による外傷が多かったですが、シカを避けようとしたりして接触せずに倒れて搬送された症例が、全体の3分の1を占めました。シカせんべいによる外傷なら咬傷が多いのではと思いましたが、咬傷例は4%とマイノリティでした。シカせんべいを与える際、じらす行為をスマホで撮影するなどの行為が増えており、それによってシカ外傷のリスクは高くなると思います。症例が集まれば、独立リスク因子かどうか検討していただきたいところですね。小児の非接触外傷が多くを占めていたため、シカが近付いても慌てず動かないでね、と教えることが重要だそうです。でも、シカがノッシノッシ近付いてきたら、子どもはやっぱり逃げちゃいますよね!

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コロナ最前線のナースの記録【Dr.倉原の“俺の本棚”】第49回

【第49回】コロナ最前線のナースの記録Dr.倉原の“俺の本棚”と書いておきながら、自分の書籍を宣伝するしたたかさ!これじゃあ「俺の本棚」ではなく「俺の本だぜ」になってしまいますね。ケアネット編集長、すいません!『新型コロナ病棟ナース戦記 最前線の現場で起きていたこと』倉原 優/著. メディカ出版. 2021年12月発売いや、これにはワケがあってですね。この本、そもそも私が主人公ではないんですよ。コロナ病棟の最前線にいたのって、私たち医師よりも看護師のほうが多かったんですが、彼ら・彼女らに光が当たらないのをコロナ禍でずーっと見てきたので、どうにか看護職のすばらしさを世に伝える本を出したくて、この本を執筆したわけです。これほどコロナ禍が長く続くなんて、2020年1月には予想すらしていませんでした。長くても1年くらいじゃないかと思っていました。2021年夏頃から、SNSも含め全国津々浦々120人の看護師からヒアリングを行いました。ほとんどがメールかZoomでしたが、15分程度の短いヒアリングでよいですとお伝えしても、やめられない止まらない、1時間話し続けた看護師もいました。抱腹絶倒エピソードから、号泣感動秘話までてんこ盛りに詰め込んだ53コラム、約200ページの力作です。歌舞伎町周辺の夜の街関連の新型コロナでは、「ちょマジかよ」というエピソードもあったのですが、出版規制がかかるレベルで、ボツネタになった話もありました。コロナ病棟では個人防護具(PPE)を着けているから誰が誰だかわからず、先輩に「こっちきてよ」とタメ口で話し掛けてしまった看護師。病棟から棺桶を出すときに、荷物から家族の写真が出てきて「ああ、こんな家族がいたんだな」と涙がこぼれる看護師。笑いと涙がたくさん詰まった1冊になっています。この先、変異ウイルスがどのくらい世界を苦しめるのかはわかりませんが、コロナ禍で汗を流しながら頑張ったすべての看護師に、この本を送りたいと思います。『新型コロナ病棟ナース戦記 最前線の現場で起きていたこと』倉原 優 /著.出版社名メディカ出版定価本体1,800円+税サイズA5判刊行年2021年

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譲れない条件は? 案件探しは「婚活」だ!【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第32回

第32回 譲れない条件は? 案件探しは「婚活」だ!漫画・イラスト:かたぎりもとこ私たちが医業承継での開業を希望される方に必ずする質問があります。それは「何年後に開業する予定ですか?」というものです。結果論ですが、返答が「1年以内」など具体的な年数で回答する方は承継開業に成功し、「良い案件が見つかり次第」と回答する方は結局、承継開業をしない傾向があります。「良い案件が見つかり次第」と回答する方に「良い案件」の定義を確認していくと、めったに出てこない、理想が高過ぎる条件になっているケースがほとんどです。たとえば、こんな感じです。人気の開業エリアに位置しており売上が高い(年間1億円以上)利益が出ている(役員報酬4,000万円が見込める)売り主が長期間引き継ぎを支援してくれる1年後に引き継げる(自分の退職可能時期を前提に)割安(1,500万円で買いたい)このような条件は、弊社でも過去に1件も目にしたことがありません。つまり、現実には存在しない案件なのです。話し合い可能な方であれば、上記のような事実をお伝えしたうえで「妥協できる点」をディスカッションします。一方で事実を認めようとせず、条件を変えることなく案件を探し続ける方もいるのです。冒頭で紹介した「具体的な年数」で回答する方は、ほとんどがこの「妥協できる点」をすでにクリアにされています。言い換えるならば、「これだけは譲れない」という条件を数個に絞っており、目標よりも開業時期を延ばすことは機会損失となる(今開業しなければ、今後はどんどんできなくなる)という事実をよく理解されているのです。「承継は結婚ととてもよく似ている」とこのコラムでは繰り返しお伝えしてきましたが、案件探しは「婚活」によく似ています。自分の譲れない条件を絞り込み、あとは妥協して目標の時期までに成立させる…。基本は同じなのです。

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第89回 忘年会シーズンに拡大狙うオミクロン株vs.エビデンス重視の日本人?

「今後、感染拡大というものが急速に進んでいくということも想定すべき状況にある」大阪府で市中感染の可能性が強く疑われる新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)のオミクロン株感染者の報告があった12月22日夜、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード開催後の記者会見で、同座長の国立感染症研究所長・脇田 隆字氏はこう発言した。正直、私は何とも微妙な言い回しだと感じている。今回の市中感染が強く疑われる事例は海外渡航歴のない大阪府寝屋川市で働く教員とその妻子と分かっている。たぶんこの中の誰かが感染し、その後家庭内感染につながったのだろうとみられる。さて、私が微妙な言い回しだと敢えて触れたのは脇田氏の発言は「市中感染の発生」は認めているが、「市中感染が広がっている」とは認めていないからである。だが、これまで分かっているオミクロン株の性質から考えれば、もはや市中感染が広がっていると明言しなければならない状況である。まず、オミクロン株の感染力が強いであろうことはほぼ確実である。前述のアドバイザリーボードで、京都大学医学部教授の西浦 博氏が報告している最新のオミクロン株の対デルタ株の実行再生産数倍率は3.19倍。これはデンマークでの11月1日~12月9日の流行実態から算出したものだが、デンマークのこの時期の実効再生産数が1.03~1.58であることから、オミクロン株の実効再生産数はざっくりと言って3~4と考えて良い。そのうえで大阪府の感染状況を考えてみよう。大阪府での最初のオミクロン株感染者が報告されたのは以下の報道によれば12月5日の関西国際空港からの入国事例である。「新型コロナ オミクロン株8人 国内新規感染、関空で初」(毎日新聞)きわめて単純化して、この事例を起点に大阪府に流入したオミクロン株により感染が広がり、そのうちの1人が今回判明した教員だったと仮定しよう。オミクロン株の潜伏期間を5日間、実効再生産数を3~4人として計算すると、大阪府内ではこれまでにオミクロン株感染者が40~85人いることになる。これに加えて22日現在、日本国内で確認されているオミクロン株感染者が160人であることを併せて考えると、大阪府だけでなく日本全体でまだ捕捉できていないオミクロン株感染者がいる、それもかなりの数に上るのはほぼ確実だろう。つまり現下の情勢はどこをどう推定しても、もはや「市中感染が広がっている」とみて間違いないはずだ。むしろ専門家であればあるほど、そう思うのではないだろうか。にもかかわらず、脇田氏がかなり抑制的に発言しているとするならば、それはなぜだろうか?私個人は、脇田氏個人やアドバイザリーボードメンバーの意志と言うよりは「事務方(厚生労働省)が表現を抑えさせている」と推定してしまう。もし、市中感染が広がっていると公言するならば、行政は相当程度の対策を求められるコトになるからだ。ちなみにこれは厚生労働省が実態を「隠ぺい」していると言いたいのではない。公言する以上、それなりの対策を都道府県などにも呼びかけなければならず、そのための根拠、エビデンスが強固なものでなくてはならないからだ。これは時に「石橋を叩いても渡らない」中央官庁の思考様式でもある。もし、これが10月や11月のことならば、私個人はそれほどうるさく言うつもりはない。しかし、今は12月。語源を辿れば僧侶でも走り回る「師走」の皆が忙しい季節だ。そして過去2年の行動制限で人々は鬱屈し、見かけの感染状況は小康状態であるから、忘年会でもパーっとやって羽を伸ばしたい気持ちを持つ人も少なくないはず。つまり人々の気持ちが緩みがちな時期にもかかわらず、オミクロン株による潜行した感染拡大が理論上強く疑われるという極めて危険な状況がまさに今なのである。そう考えれば、本来、政治も行政も専門家もむしろ国民に対して強めのメッセージを発するべき時期ではないだろうか。今こそ目に見えるエビデンスの有無に拘泥すべきではないと思う私は、神経質過ぎるのだろうか? どうしても避けようのない外出で師走の人波を目にしながら、そのようなことを考えている。

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コロナ禍を乗り越え、臨床留学3年目のいま思うこと(内科レジデント編・最終回)【臨床留学通信 from NY】第30回

第30回:コロナ禍を乗り越え、臨床留学3年目のいま思うこと(内科レジデント編・最終回)臨床医で留学するメリット・デメリットはさまざまです。メリットとしては、研究留学よりも英語ができないと仕事ができず致命的なので、最初はかなり苦労しますが、日々十分過ぎるほどの英語の曝露の中で格段に英語力が身に付きます。学会発表はもとより、英語を通じてさまざまな人と繋がることができます (逆に、英語ができないと相手にしてもらえないことも……)。私の場合、卒後10年を超えてからの留学でしたので、学ぶことが何もかも新鮮とはなりませんでしたが、さまざまな人種や疾患に触れることが、確実に医者としての幅を広げていると実感します。何よりも、内科レジデントしての3年間を通して得られた人脈が大きな財産です。米国で出会った人に限らず、日本においてもさまざまな面で人との交流が広がり、それを糧にして次なるステップに進めると思います。また臨床研究も、人脈しかり、データベースしかり、今回のコロナの際にも在籍したマウントサイナイでデータを即座に共有できたのも米国ならではだったと思います。得意なメタ解析を通じて、人と繋がりやすくなったのもあるかもしれませんし、年数がある程度いってから渡米したため、今までの経験を生かしやすくなったとも言えます。臨床留学に限らず、研究留学含め、海外での生活経験は自身の視野を確実に広げ、日本の良いところ(悪いところ)を客観的に見つめ直す良い機会になることでしょう。デメリットは、やはり一番は収入です。最初は6万ドル強、2年目からは多少上がって7万ドル強という状況で、研修医が終われば一定額がもらえる日本に比べると収入が格段に落ちます。家賃や物価も高いニューヨークでマイナス財政を余儀なくされるのは、やはりきついです。当初から2~3年の研究留学、という見通しならばお金の使い方にそこまでシビアになる必要はないかもしれませんが、最大8年のトレーニング期間を見据えると、金銭的な引き締めはきつくせざるを得ません。ただ家族帯同で渡米した場合、子供の教育に関しては節約ばかり言ってはいられません。また、私の場合、日本では循環器のカテーテル治療を主にやっていましたが、渡米してレジデントの期間は一切やらなかったため、手技を高めるという点に関しては、日本にいる方々に比べると劣ってしまい、ここはデメリットと言わざるを得ないでしょう。コロナ時代でこれまでの留学像とずいぶん異なる面もあるかもしれませんが、臨床なり研究なり、留学したいという思いがある方は是が非でも行くべきでしょうし、大変な経験でも人生の幅が広がり貴重な経験となることは間違いないので、ためらわずチャレンジしてほしいです。そして、とにもかくにも英語がモノを言います。これまでの連載で、さまざまな試行錯誤の成功と失敗を率直にお伝えしました。米国で臨床医として働きたい方に、今ここにいる私の経験と情報が少しでも後押しになれば幸いです。<編集部より>次回から本連載は循環器フェロー編として、現在の所属先Montefiore Medical Center/Albert Einstein Medical Collegeでの日々をレポートします。どうぞお楽しみに!

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事例040 四肢・躯幹軟部腫瘍摘出術の査定【斬らレセプト シーズン2】

解説事例では、上腕の脂肪腫の摘出に、「K030 1 四肢・躯幹軟部腫瘍摘出術(上腕)」を算定したところ、 B事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)が適用され、「K006 1 皮膚・皮下腫瘍摘出術(露出部以外 長径3cm未満)」に査定となりました。査定理由を調べるためにカルテを確認したところ、鎖骨上ブロックによる伝達麻酔下において、筋膜に癒着の脂肪腫を上腕から摘出したことが記載されていました。両点数の境目は、筋膜に腫瘍が達しているか否かで判断されます。事例ではカルテ記載から筋膜に達していることが確認できるため、四肢・躯幹軟部腫瘍摘出術の適用となります。レセプトの請求に誤りはないものの、腫瘍の大きさが小さく、病名に「皮下」とあり、かつ筋膜へ達していることがコメントされていませんでした。そのため、筋膜まで達していない単なる皮下腫瘍と判断されたものと推測ができます。事例は、カルテの写しを添えて再審査請求を行っています。査定対策としてレセプトチェックシステムに「コメント必要」の注意が表示されるよう登録しています。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー  CONNECTED PAPERSの活用 その1【「実践的」臨床研究入門】第15回

関連研究のネットワークを可視化するこれまで、関連研究レビューのための質の高い2次情報源(連載第3回参照)として、診療ガイドライン、UpToDate®、コクラン・ライブラリーの活用法を解説してきました。今回はその他の有用な情報源として”CONNECTED PAPERS”を紹介します。”CONNECTED PAPERS”は「Key論文」(連載第8回参照)と内容の「類似性」の高い論文をネットワーク化して図示する無料のオンラインツールです。”CONNECTED PAPERS”のホームページのヘッダーにある”About”をクリックすると”How does it work?”とあり、このツールの「からくり」についての説明があります。それによると、ここで言う論文の「類似性」とは、互いに引用している関係に限らないようです。それぞれの論文の引用文献の多くが重複していると関連したトピックを扱っている可能性が高い、と推定するなどして関連研究のネットワークを可視化しているそうです。それでは、実際の論文を用いて“CONNECTED PAPERS”を使ってみたいと思います。前回読み込んだコクラン・フル・レビュー論文1)ですが、出版年は2007年と10年以上前です。コクラン・ライブラリーで”Version history”を確認すると(連載第13回参照)、このトピックに関する初版のフル・レビュー論文2)は1997年に出版され、現行の2007年版1)はその「アップデート論文」でした。この2つのフル・レビュー論文のコクラン・ライブラリーでの固有IDは”CD002181”と同じですが、筆頭著者が違います1, 2)。一方、Digital Object Identifier(DOI)は個別のコンテンツ(ここでは論文)の電子データに与えられる恒久的な識別子です。コクラン・ライブラリーでもPubMedでも論文タイトルの直下にDOIが示されています。1997年版2)と2007年版1)のフル・レビュー論文のDOIを比較してみます。DOI: 10.1002/14651858.CD002181.pub2(2007年版)1)DOI: 10.1002/14651858.CD002181.(1997年版)2)「アップデート論文」1)のDOIの末尾には”.pub2”が追記されており、個別の論文ごとの識別子であることがわかります。コクラン・ライブラリーを見る限り、2007年版のフル・レビュー論文1)以降はアップデートされていないようです。そこで、このトピックに関して2007年以降に新たなエビデンスが出版されているかを”CONNECTED PAPERS”で調べてみましょう。”CONNECTED PAPERS”の使い方は簡単です。そのホームページを開くと”To start, enter a paper identifier”と注釈のついた検索窓が出てきます。そこに、「Key論文」のタイトルもしくはDOIをコピー&ペーストするだけです。実際に2007年版のコクラン・フル・レビュー論文1)を「Key論文」として、そのDOIを検索窓にコピー&ペーストしてみます。すると、「Key論文」を中心とした関連研究との関係性がリンクのように可視化されます。 類似の論文は矢印で結ばれ、個々の論文は円型の節点(ノード)で示されます。ノードの大きさは被引用回数の多さを、色は出版年を表しています(色が濃いほど新しい論文)。”CONNECTED PAPERS”を使えば、関連研究の見逃しが減るかもしれません。1)Robertson L et al. Protein restriction for diabetic renal disease. The Cochrane database of systematic reviews. 2007 Oct. 17:CD002181.DOI: 10.1002/14651858.CD002181.pub22)Waugh N et al. Protein restriction for diabetic renal disease. The Cochrane database of systematic reviews. 2000:CD002181.DOI: 10.1002/14651858.CD002181

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英語で「手術は成功です」は?【1分★医療英語】第8回

第8回 英語で「手術は成功です」は?So...Dr. Kawano, how did my surgery go?(河野先生、私の手術はうまくいきましたか?)Your surgery went well. There was no issues.(うまくいきましたよ。問題はありません)《例文1》医師AHey, how did the surgery go yesterday? It was your first case, right?(昨日の手術はどうだった? 最初の症例だったんでしょう?)医師BWell, it went well. I guess I was really lucky.(うまくいったよ。運が良かったんだと思う)《例文2》I know you have been through a lot, but your surgery went well.There is nothing to worry about.(大変な経験をされましたよね。でも、手術は成功しました。何も心配することはないですよ)《解説》“Your surgery went well.”は、外科系の現場で手術が成功したときに使われる表現です。手術が終わって患者が目覚めたときに、こう話しかけると安心してもらえます。「手術は成功しましたよ」という、ドラマでよく見る日本語表現の英語版だと思えばイメージがつかみやすいでしょう。非常にシンプルな表現ですが、知ってないと使えないフレーズの1つです。手術に限らず、物事がうまくいったときにそれを主語にして使えるので、どんどん使ってみましょう。この表現を過去形で使うときには、“went well”の部分でWの音が2連続しますので、はっきりと発音することを心掛けてくださいね。ちなみに、あいさつの表現として“How is it going?”というものがありますが、これに対しても今回の表現と同じように、“go”と“well”を使って“(It is) going well.”と返すのが定番です。“I am good.”でも間違いではありませんが、あいさつの表現も使い分けることで英語の幅を広げて楽しみましょう!講師紹介

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