10933.
第32回:充実した教育プログラムを謳歌、循環器フェローのリアルな1日今回は、Montefiore Medical Center/Albert Einstein Medical Collegeでの循環器フェローのプログラムについて、1日のルーティンなどを説明します。病院での業務としては、2週間ごとにCCU、カテーテル、心エコー、コンサルト、不整脈などをローテーションで担当します。朝が早いのが米国の特徴で、多くは朝7時半に始業です。当直がなければ夕方5時までの勤務となり、そのあと当直のフェローに申し送り(英語でSign outと言います)をしたら帰宅です。日本と違って、しっかりと時間が決まっているのが良いところですが、逆に5時近くになると、仕事が若干適当になってる人がいるのも事実です。プログラムはフェローに対して教育する義務があり、教育環境がいいかどうかがプログラムの人気を左右します。私が在籍しているプログラムは大学病院であることから、市中病院に比べると、レクチャーの内容がバラエティに富んでいます。レクチャーは平日の毎朝7時半から8時半まで、現在は主にZoomで行われており、その時間帯は多くの業務が免除される仕組みになっています。レクチャーの内容は、心電図、エコー、カテーテル、不整脈の講義、Journal Clubと呼ばれる抄読会、症例検討といった基本的なものだけでなく、心臓移植、心臓CT/MRI、Cardio-Oncology、Cardio-Obstetricsと呼ばれるさまざまな分野の専門家による講義も聴くことができます。教育環境に恵まれた大学病院のプログラムですが、さらに、このプログラム出身のレジデントやフェローは、市中病院のプログラム出身者に比べて一般的に優秀であると考えられることから、その先のアドバンスドフェローや就職活動なども有利になります。そのため、プログラムの競争率が非常に高くなっています。これは日本の大学病院で実施される研修とは少し異なる現象かと思われます。日本でこのような充実したプログラムの実施が難しいのは、アテンディングと呼ばれる指導医について日米で比較すると、そもそも日本の指導医のほうが忙しいこと、そして数が圧倒的に米国のほうが多いことによります。たとえば私が所属する800床と400床の大学病院双方を合わせると、循環器だけでも、合計でおよそ60~70人の指導医がいて、エコーや心臓CT/MRIなどのイメージング、核医学、心臓血管カテーテル、不整脈、心不全といった各分野にそれぞれ担当が分かれています。日本の大学病院のように臨床はせず基礎研究と外来だけ、というような人はほとんどおらず、それぞれが前線で働きます。臨床もローテーションになっており、日本的な言い方をすると、1~2週間ごとに病棟に出るときと出ないときがあり、出ない週は外来のみ、もしくは研究費がある人は研究、となります。研究費が取れるとそれが自身の給与となって時間が確保できます。臨床と研究のバランスがよく、比較的時間にも余裕があるため、やはり米国で指導医として働くのは魅力があると考えます。Column最近共著者で臨んだ心臓移植関連の論文が米国心臓病学会誌に掲載されました1)。このような心臓移植関連の研究ができるのも米国ならではのデータベースの整備ともいえますし、ニューヨークで臨床をする優秀な後輩の活躍を少しだけでも手伝えたのは貴重な経験でした。1)Mikami T, Itagaki S, Fujisaki T, Kuno T, et al. J Am Coll Cardiol. 2022;79:1063-1072.