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第110回 コロナ感染拡大の影響で、平均寿命が短く/厚労省

<先週の動き>1.コロナ感染拡大の影響で、平均寿命が短く/厚労省2.解熱鎮痛剤「カロナール」出荷調整、厚労相が買い占めの自粛要請3.全国知事会が新型コロナで緊急提言、岸田総理は第7波の収束後に見直しを表明4.新型コロナ感染の「検査証明書」の取得を求めないよう要請/厚労省5.来年度の概算要求、社会保障の自然増を圧縮、デジタル投資/政府6.診療報酬改定、急性期病院の看護必要度に大きな影響/WAM1.コロナ感染拡大の影響で、平均寿命が短く/厚労省厚生労働省は、7月29日に2021年の日本人の平均寿命を発表した。男性、女性ともに前年度よりそれぞれ、0.09歳、0.14歳短くなり、男性81.47歳、女性87.57歳となり、10年ぶりに前年度を下回った。男女とも悪性新生物、肺炎、交通事故などの死亡率減少が平均寿命を延ばしていたが、新型コロナウイルス感染症の死亡者の増加の影響と見られる。(参考)令和3年簡易生命表の概況コロナ影響で10年ぶり平均寿命縮む…男性が0.09歳、女性0.14歳短く(読売新聞)日本人の平均寿命10年ぶりに前年下回る。コロナ要因の1つか(NHK)2.解熱鎮痛剤「カロナール」出荷調整、厚労相が買い占めの自粛要請新型コロナウイルス感染者の急増に伴って、解熱鎮痛剤の「カロナール」の製造メーカの「あゆみ製薬」は医療機関からの発注に対応が困難難となったため。カロナール主錠剤を出荷調整に乗り出し、一部製品の出荷停止を発表した。このため、後藤茂之厚生労働相は7月29日に一部の病院や薬局が品切れを懸念して、過度な買い占めに走ることがないように自粛を要請した。(参考)解熱鎮痛薬「カロナール」出荷調整へ 新型コロナで需要急増(NHK)カロナール 出荷調整 あゆみ製薬、コロナ感染急増で(日経新聞)解熱剤の買い占め自粛要請 医療機関で不足、厚労相(産経新聞)3.全国知事会が新型コロナで緊急提言、岸田総理は第7波の収束後に見直しを表明7月29日に奈良市で開催された全国知事会は、新型コロナウイルスの感染防止策の緊急提言を行い、感染症法での新型コロナウイルス感染症の取り扱いについて、早期に2類から5類へと見直すことを求めている、一方、岸田総理大臣は7月31日の記者のインタビューに対して、新型コロナ感染症法上の扱いについて、感染拡大が続く現時点では季節性インフルエンザと同等に引き下げることはせず、第7波の収束後に見直しをすると発言した。(参考)コロナ分類見直し「工程提示を」 全国知事会が緊急提言(日経新聞)感染急拡大に対する新たな対策について (全国知事会)コロナ「2類相当」運用、「第7波」収束後に見直しへ…岸田首相「時期見極め丁寧に検討」(読売新聞)岸田首相 コロナの感染症法上の扱い“現時点で引き下げない“(NHK)4.新型コロナ感染の「検査証明書」の取得を求めないよう要請/厚労省政府は新型コロナウイルス感染拡大による、発熱外来の検査目的受診が増えたことに対して、事業所側に検査結果の証明を求めないように要請した。発熱外来を設けている医療機関には、仕事を休む際に発熱外来での検査の証明書を求めるために、検査結果を希望する発熱患者が殺到し、救急患者の受け入れに支障が出ており、このため東京都は8月から検査キットの無料配布を行い、発熱外来を経由しない形で、発生届を代わって提出する「陽性者登録センター」を設置するなど対策を進めている。(参考)「発熱外来での検査証明求めないで」厚労省が事業所などに要請(NHK)東京都 有症状者にも検査キット無料配布へ 来月1日から(同)5.来年度の概算要求、社会保障の自然増を圧縮、デジタル投資/政府政府は、7月29日に2023年度の省庁が要求するルールを定めた概算要求水準を閣議了解した。昨年の基準で例外扱いとなっていた社会保障費について、社会保障費の自然増は、合理化・効率化に最大限に取り組み、22年度の6,100億円から5,600億円に圧縮する一方、GDP比2%の防衛費の実現のために増額を認める方針だ。また、マイナンバーの利活用を促進して医療・介護など公的給付のデジタルトランスフォーメーションを進めるとしている。(参考)社保費自然増5,600億円に圧縮、23年度予算 概算要求基準で、薬価改定が焦点(CB news)医療・介護など公的給付のDX化推進へ 23年度予算の全体像、政府(同)第10回経済財政諮問会議(内閣府)6.診療報酬改定、急性期病院の看護必要度に大きな影響/WAM今年の春の診療報酬改定で、急性期病院へのアンケート調査結果で、「心電図モニターの管理」の項目廃止により、約半数の49.2%の急性期病院で「経営に影響あり」と回答したことが明らかとなった。現在は、経過措置期間であるが、9月末でこれらの措置期間が終了するため、10月以降は一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」のうち、経営にもっとも影響が大きいものとして「心電図モニター管理の項目の廃止」を挙げた病院が49.2%に上っており、今後、急性期病院の収益に影響が出るとみられる。(参考)急性期病院半数に影響、看護必要度心電図モニター削除 WAM調査、急性期一般入院料1から転換は3%程度か(CB news)2022年度診療報酬改定の影響等に関するアンケート調査の結果(WAM:福祉医療機構)

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下書き編:上手さより迅速性と内容を重視~腹腔鏡下下行結腸切除術~【誰も教えてくれない手術記録 】第17回

第17回 下書き編:上手さより迅速性と内容を重視~腹腔鏡下下行結腸切除術~こんにちは! 手術を描く外科医おぺなかです。これまでの記事では、主に若手外科医の皆さんに向けて手術記録の描き方やその活用方法、時短テクニックなど、さまざまな話題を提供してきましたが、具体的なコツについてはあまり深く紹介できていなかったと思います。実は過去に手術イラストの作成方法をまとめて紹介したことがありましたが(第3、4回)、内容はデジタルイラストツールの使用方法が中心でした。そこで今回から全4回に分けて、皆さんの手術イラストがより伝わりやすく身になるものになるよう、「下書き」「線画」「着色」「仕上げ」の各工程において、僕が重要と考えており皆さんにぜひ実践していただきたいポイントを詳しく紹介していきたいと思います。さて、早速今回は「下書き」のパートについて解説します。時間がないからと下書きをせず、いきなり線画から描き始めてはいませんか? 慣れた術式であれば下書きも不要かもしれませんが、イラスト作成に不慣れな先生は、下書きを描くことを強くおすすめします。僕は今もほぼすべての手術イラストで下書きを描いています。下書きの段階では、イラストの巧拙はまったく問いません。それよりも重要なのは、描くタイミングと内容だと僕は考えます。描くタイミング:下書きだけでも手術直後に取り組む!複数の手術記録を週末や休日にまとめて描いていませんか? 当然のことですが、手術記録には正確性が求められますので、もっとも大事なのは迅速性です。下書きだけでも手術直後に描くと、後で振り返る手間を大幅に削減できますよ。一方、手術から時間が経てば経つほど手術内容が曖昧になり、描きたかったはずのことが描けなくなってしまうかもしれません。(イラストだけでなくテキストも同様です。できれば当日、遅くても翌日にメモ程度でも書けるといいですね!)画像を拡大する例:手術直後の下書き(腹腔鏡下下行結腸切除術)こちらは僕が普段描く下書きのイメージです。当然手術によってイラストのページ数やカット数はまちまちですが、このくらいの下書きであれば15分ほどで描けます。荒削りでよいので、思い出せるままにざっと描いてしまいましょう。必要に応じて、別レイヤ―にメモを書き加えておいてもいいですね。描く内容:キーポイントとなる術野を意識する!下書きで手術イラストの構成の大半が決まります。僕が日頃より描いている消化器外科手術のイラストには、以下の記載が必須と考えていますが、これらを記載するだけではどの手術イラストも似通ってしまうので工夫が必要です。・体位/皮膚切開 ・術中所見 ・切除/郭清範囲 ・再建完成図 ・閉創図一つとして同じ手術はありません。手術を振り返る中で、その手術から得られた学びが必ずあるはずです。そんな“今回の執刀経験”を象徴するような術野を最低1枚はイラストに描き起こしておけるとよいでしょう。そういうイラストを執刀のたびに積み重ねていくことこそが、「手術手技向上の効果」を最大に引き出すための秘訣だと考えています。上に例示した下書きに、基本事項と押さえておきたい内容を「キーポイント」として描き足してみました。画像を拡大する参考:下書きの内容とキーポイントまとめ繰り返しになりますが、手術記録の正確な記載し、手術記録を自身の糧とするためには、下書きをできるだけ手術直後に描くことが肝要です! 翌日にはまた別の手術を控えていることでしょう。仕事に追われるうちに、手術内容だけでなく貴重な学びや反省点をどんどん忘れてしまいます。とてももったいないことですよ!次回は線画のパートに移ります。自身の手術動画を見直しつつ、手術書を片手にイラストの詳細をじっくり突き詰めていく作業はすごく楽しいですよ。お楽しみに!

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破傷風の予防は?【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q26

破傷風の予防は?Q26症例とくに既往、アレルギー歴のない28歳男性、自宅でリンゴの皮剥きをしていた際に誤って左中指DIP腹側を切ってしまった。左中指DIP腹側に深さ3~4mm程度、長さ20mm程度の切創あり。明らかな神経障害や動脈性出血、腱損傷はなさそう。バイタルは安定しているが、止血をえられず、縫合処置が必要と判断される。最後に破傷風の予防だけして、あとは1週間後に抜糸を依頼すればよいだろう。破傷風の予防は何をしよう。定期予防接種はすべて受けているようだし、汚染のない傷だから、予防は必要なかったかな?

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利尿薬の処方カスケードを発見し、高尿酸血症薬の中止を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第49回

 今回は、処方カスケードを起こしやすい薬剤の代表である利尿薬と高尿酸血症治療薬に関する提案です。処方カスケードを発見するには処方順序や経緯を知ることが重要です。薬歴に処方開始の理由やその後のフォロー内容をまとめておくことで、処方カスケードを食い止めるきっかけになります。患者情報90歳、男性(施設入居)基礎疾患左放線冠脳梗塞、認知症、高血圧服薬管理施設職員処方内容1.オルメサルタンメドキソミル・アゼルニジピン配合錠HD 1錠 朝食後2.クロピドグレル錠50mg 1錠 朝食後3.ラベプラゾール錠10mg 1錠 朝食後4.アトルバスタチン錠10mg 1錠 朝食後5.フェブキソスタット錠10mg 1錠 朝食後本症例のポイントこの患者さんは脳梗塞の既往があるものの、施設内独歩が可能で、排泄や食事も自立していて、ADLは良好でした。血圧の推移は130〜140/70〜80であり、現行の治療薬で安定していました。高尿酸血症治療薬を服用していますが、痛風発作の既往はありません。代理で訪問診療に同行することになったため、担当薬剤師の薬歴を確認したところ、「OP:尿酸値のフォロー、過去にアゾセミド服用」とありました。記録をさかのぼって確認すると、過去に下腿浮腫のためアゾセミド錠30mgを服用していたことがわかりました。その1ヵ月後の血液検査では尿酸値:11.3mg/dLと高値であったことから、フェブキソスタット10mgが追加されていました。その2週間後には下腿浮腫は消失したため、アゾセミドは中止となっていました。<薬歴から考察したこと>(1)アゾセミドによる尿酸値上昇→フェブキソスタット追加アゾセミドなどのループ利尿薬は、尿酸と同じトランスポーターを競合的に阻害するため、尿酸排泄が低下したと考えられる。利尿作用により腎糸球体ろ過量が減少し、尿酸排泄が低下した可能性もある1)。これらの作用により尿酸値が上昇し、フェブキソスタットが追加されたのではないか。(2)アゾセミド中止後の高尿酸血症の治療評価が必要今回の尿酸値上昇は、原発の高尿酸血症の可能性は低く、アゾセミドによる二次性の高尿酸血症と考察した。そのためアゾセミド中止後の尿酸値のフォローは重要であり、純粋なフェブキソスタットの治療評価とはせずに、継続の必要性を検討する必要がある。以上のことから、高尿酸血症の治療評価を医師に直接提案することとしました。処方提案と経過医師に、上記の(1)(2)の考察を共有し、都合のよいタイミングで採血を行って高尿酸血症の治療評価ができないか相談しました。ちょうど定期採血のタイミングであったことから、すぐに尿酸値や腎機能を評価することとなりました。2週間後の診療で共有された血液検査の結果は、尿酸値:3.6mg/dL、Scr:0.89mg/dL、BUN:17.5mg/dLであり、フェブキソスタットは中止となりました。その後の定期採血結果でも、尿酸値:6.7mg/dLと基準値内を推移していて、関節痛の症状や母趾の腫脹などの痛風症状もなく、無症状で経過しています。薬歴には、「OP:高尿酸血症治療管理 ●月●日〜フェブキソスタット中止(中止時の尿酸値:3.6mg/dL→中止後の尿酸値:6.7mg/dL)。再上昇に注意して要モニタリング」と変更の経緯とその後のフォロー内容を残しました。1)ダイアート錠 インタビューフォーム

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BA.4/BA.5に対するコロナ治療薬の効果を比較/NEJM

 国内の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波ではオミクロン株BA.5が主流となり、感染拡大が急速に進んでいる。また海外では、BA.4やBA.2.12.1への置き換わりが進んでいる地域もある。東京大学、国立感染症研究所、国立国際医療研究センターが共同で行った研究において、これらの新系統BA.2.12.1、BA.4、BA.5に対し、4種類の抗体薬と3種類の抗ウイルス薬についてin vitroでの有効性を検証したところ、国内で承認済みの抗ウイルス薬が有効性を維持していることが示唆された。本結果は、NEJM誌オンライン版2022年7月20日号のCORRESPONDENCEに掲載された。 研究対象となったのはFDA(米国食品医薬品局)で承認済み、および国内で一部承認済みの薬剤で、抗体薬は、カシリビマブ・イムデビマブ併用(商品名:ロナプリーブ、中外製薬)、tixagevimab・cilgavimab併用(海外での商品名:Evusheld、AstraZeneca)、ソトロビマブ(商品名:ゼビュディ、GSK)、bebtelovimab(Lilly)、抗ウイルス薬は、レムデシビル(商品名:ベクルリー、ギリアド・サイエンシズ)、モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ、MSD)、ニルマトレルビル(商品名:パキロビッドパック[リトナビルと併用]、ファイザー)となっている。 今回の試験では、対象の各抗体薬の単剤および併用について、新型コロナウイルスの従来株(中国武漢由来の株)と、オミクロン株のBA.2.12.1、BA.4、BA.5を含む各系統の培養細胞における感染を阻害(中和活性)するかどうかを、FRNT50(ライブウイルス焦点減少中和アッセイで50%のウイルスを中和する血清希釈)を用いて評価した。また、各抗ウイルス薬について、IC50(50%阻害濃度)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。【抗体薬】・カシリビマブ・イムデビマブ併用では、BA.2.12.1、BA.4、BA.5のいずれに対しても中和活性は認められるものの、FRNT50の値は、従来株と比べると、BA.2.12.1に対して131.6倍、BA.4に対して133.5倍、BA.5に対して317.8倍高くなっており、効果が著しく低下していた。・tixagevimab・cilgavimab併用では、BA.2.12.1、BA.4、BA.5のいずれに対しても中和活性は認められるものの、FRNT50の値は、従来株と比べると、BA.2.12.1に対して6.1倍、BA.4に対して6.0倍、BA.5に対して30.7倍高くなっており、効果が低下していた。・ソトロビマブの前駆体では、BA.2.12.1、BA.4、BA.5のいずれに対しても中和活性が認められなかった。・bebtelovimabでは、BA.2.12.1、BA.4、BA.5のいずれに対しても中和活性が認められ、その効果についても従来株とほぼ同等のFRNT50の値を示していた。【抗ウイルス薬】・レムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビルのすべての薬剤が、BA.2.12.1、BA.4、BA.5のいずれに対しても、従来株とほぼ同等の感受性を示し、ウイルスの増殖を効果的に抑制していた。 著者は本研究の限界として、これらの薬剤による治療効果の臨床データがないことを挙げている。また、本研究によって、国内でも承認済みの抗ウイルス薬が、オミクロン株新系統のBA.2.12.1、BA.4、BA.5にも有効であることが示唆された。抗体薬については、国内では未承認のbebtelovimabは有効であったが、そのほかの抗体薬は有効性が低く、ソトロビマブについては効果がない可能性があり、BA.2.12.1、BA.4、BA.5の患者に対して、モノクローナル抗体の選択は慎重に検討する必要があると指摘している。

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エンホルツマブ ベドチン+ぺムブロリズマブの尿路上皮がん1次治療が良好な結果示す(EV-103)/アステラス

 アステラスは、Seagenと共同で開発を進めている抗体-薬物複合体(ADC)であるエンホルツマブ ベドチン(一般名:パドセブ)について、第Ib/II相EV-103試験(KEYNOTE-869試験)のコホートKで良好なトップライン結果が得られたと発表した。 EV-103試験コホートKは、切除不能な局所進行性または転移のある尿路上皮がんで、シスプラチン不適応の患者における1次治療として、エンホルツマブ ベドチン単剤とペムブロリズマブ併用を評価する無作為化試験。 コホートKの主要評価項目である盲検下独立中央評価(BICR)の客観的奏効率(ORR)は、併用群で64.5%(95%信頼区間[CI]:52.7~75.1)であった。BICR評価の奏効期間中央値は未到達であった。有効性および安全性は、全体としてEV-103試験での既知のものと一致していた。試験結果は今後開催される学会で発表する予定である。

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ファイザー製とAZ製、コロナワクチンの有効性を比較 /BMJ

 イングランドでは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)アルファ変異株の流行期の健康な医療従事者において、BNT162b2(mRNAワクチン、ファイザー製)とChAdOx1(ウイルスベクターワクチン、アストラゼネカ製)という2つのワクチンには、接種後20週以内のSARS-CoV-2感染および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生について実質的な差はなく、これらの発生率は初回接種後3~4週間目には急激に低下して、それ以降はCOVID-19関連の受診や入院が少なくなったことから、両ワクチンはいずれもアルファ変異株によるCOVID-19に対する強力な予防効果を有することが、英国・オックスフォード大学のWilliam J. Hulme氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2022年7月20日号で報告された。イングランドの効果比較試験類似のコホート研究 研究グループは、イングランドの医療従事者およびソーシャルケアワーカーにおいて、SARS-CoV-2感染とCOVID-19発生に対する2つのワクチン(BNT162b2、ChAdOx1)の有効性を比較する目的で、イングランド国民保健サービス(NHS England)の委託として、効果比較試験に類似のコホート研究を行った(英国研究技術革新機構[UKRI]などの助成を受けた)。 SARS-CoV-2アルファ変異株が優勢な時期におけるOpenSAFELY-TPPの研究プラットフォーム内で利用可能なプライマリケア、病院、COVID-19サーベイランスの記録が関連付けられた。 参加者は、2021年1月4日~2月28日の期間に初回ワクチン接種を受けた年齢18~64歳の医療従事者およびソーシャルケアワーカーで、イングランドでTPP SystmOne臨床情報システムを使用して総合診療医(GP)に登録し、臨床的に極端に脆弱ではない集団(31万7,341人)であった。これらの参加者は、COVID-19ワクチンの全国展開の一環として、BNT162b2またはChAdOx1の接種を受けた。 主要アウトカムは、接種後20週以内のSARS-CoV-2検査陽性、COVID-19関連の救急診療部(A&E)受診または入院とされた。3つのアウトカムの発生率はほぼ同等 参加者31万7,341人のうち、BNT162b2の接種を受けたのは25万3,134人(女性79%、SARS-CoV-2感染歴あり10.8%)で、ChAdOx1の接種は6万4,207人(77%、14.1%)が受けた。 初回接種から12週(84日)までに2回目の接種を受けたのは、BNT162b2接種者が95.4%、ChAdOx1接種者は90.8%であった。20週(140日)以内に2回目の接種を受けた参加者のうち413人(0.13%)(BNT162b2接種者288人、ChAdOx1接種者125人)が、1回目とは異なるワクチン(mRNA-1273[モデルナ製]を含む)の接種を受けていた。 11万8,771人年の追跡期間中に、6,962人がSARS-CoV-2検査陽性となり、282人がCOVID-19関連でA&Eを受診し、166人がCOVID-19で入院した。 初回接種から20週の時点(多くが2回目の接種を終了)での個々のアウトカムの累積発生率は、2つのワクチンでほぼ同程度であった。すなわち、初回接種後20週以内のSARS-CoV-2検査陽性率は、1,000人当たりBNT162b2接種者が21.7人(95%信頼区間[CI]:20.9~22.4)、ChAdOx1接種者は23.7人(21.8~25.6)で、両ワクチン群間の絶対リスク差は1,000人当たり2.04人(95%CI:0.04~4.04)だった。 また、両ワクチン群間で、COVID-19関連A&E受診の累積発生率の絶対リスク差は、1,000人当たり0.06人(95%CI:-0.31~0.43)であり、COVID-19関連入院の累積発生率の絶対リスク差は0.11人(-0.22~0.44)であった。 全般に、両ワクチンとも、イベントの発生率は接種後の数週間が最も高く、3~4週目には低下して横ばいとなり、その後はきわめて低値となった。 著者は、「より新しく、より流行している変異株に対する有効性や、より長期の有効性の評価のために、新たな研究を行う必要がある」としている。

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PD-L1陽性TN乳がん、ペムブロリズマブ追加でOS延長(KEYNOTE-355最終解析)/NEJM

 プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)が陽性で、複合発現スコア(combined positive score:CPS)が10点以上の進行トリプルネガティブ乳がん患者の1次治療において、化学療法に抗PD-1モノクローナル抗体製剤ペムブロリズマブを追加すると、化学療法単独と比較して全生存(OS)期間が約7ヵ月有意に延長することが、スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏らが実施した「KEYNOTE-355試験」の最終解析で示された。有効性の複合主要エンドポイントの1つである無増悪生存(PFS)期間は、ペムブロリズマブ+化学療法群で有意に優れることが、2回目の中間解析の結果としてすでに報告されている。研究の成果は、NEJM誌2022年7月21日号に掲載された。国際的な第III試験のOS最終解析 KEYNOTE-355は、PD-L1陽性・CPS 10点以上の進行トリプルネガティブ乳がんの1次治療におけるペムブロリズマブの有用性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2017年1月~2018年6月の期間に、日本を含む29ヵ国209施設で参加者の登録が行われた(MSDの助成を受けた)。 対象は、未治療の切除不能な局所再発または転移を有するトリプルネガティブ(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2がすべて陰性)乳がんで、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group performance-status(ECOG PS)が0または1の成人患者であった。 被験者は、ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+担当医の選択による化学療法(ナノ粒子アルブミン結合[nab]-パクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン+カルボプラチンのうちいずれか1つ)、またはプラセボ+化学療法を受ける群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。試験薬の投与は、病勢進行、許容できない毒性作用の発現、あるいは患者が同意を撤回するか、医師が投与中止と判断するまで継続された。 主要エンドポイントは、PD-L1陽性でCPSが10点以上の患者(CPS-10サブグループ)、PD-L1陽性でCPSが1点以上の患者(CPS-1サブグループ)およびintention-to-treat(ITT)集団という3つの集団におけるPFSとOSとされた。CPSは、腫瘍細胞、リンパ球、マクロファージにおけるPD-L1免疫染色陽性細胞の数を、生存腫瘍細胞の総数で除して100を乗じた値と定義された。CPS-1サブグループでは有意差なし 847例(ITT集団)が無作為化の対象となり、ペムブロリズマブ群に566例、プラセボ群に281例が割り付けられた。CPS-10サブグループは323例(38.1%)(ペムブロリズマブ群220例、プラセボ群103例)、CPS-1サブグループは636例(75.1%)(425例、211例)であった。これら6つの群の年齢中央値は52~55歳の範囲に、閉経後女性の割合は64~68%の範囲にわたっていた。追跡期間中央値は44.1ヵ月(範囲:36.1~53.2)。 CPS-10サブグループでは、ペムブロリズマブ群の155例(70.5%)、プラセボ群の84例(81.6%)が死亡した。OS期間中央値は、ペムブロリズマブ群が23.0ヵ月、プラセボ群は16.1ヵ月(死亡のハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.55~0.95)であり、ペムブロリズマブ群で有意に長かった(両側検定のp=0.0185[有意性の基準を満たす])。18ヵ月時のOS率はそれぞれ58.3%および44.7%だった。 CPS-1サブグループのOS期間中央値は、ペムブロリズマブ群が17.6ヵ月、プラセボ群は16.0ヵ月であった(死亡のHR:0.86、95%CI:0.72~1.04、両側検定のp=0.1125[有意性なし])。また、ITT集団のOS期間中央値は、それぞれ17.2ヵ月および15.5ヵ月だった(0.89、0.76~1.05[有意性は検定されなかった])。 PFS期間中央値は、2回目の中間解析とほぼ同様の結果であった。すなわち、CPS-10サブグループでは、ペムブロリズマブ群9.7ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月(病勢進行または死亡のHR:0.66、95%CI:0.50~0.88)、CPS-1サブグループでは、それぞれ7.6ヵ月および5.6ヵ月(0.75、0.62~0.91)、ITT集団では、7.5ヵ月および5.6ヵ月(0.82、0.70~0.98)だった。 また、奏効率は、CPS-10サブグループでは、ペムブロリズマブ群52.7%、プラセボ群40.8%、CPS-1サブグループでは、それぞれ44.9%および38.9%、ITT集団では、40.8%および37.0%であった。奏効例では、ペムブロリズマブ群で奏効期間中央値が長く、CPS-10サブグループでは、ペムブロリズマブ群12.8ヵ月およびプラセボ群7.3ヵ月だった。 一方、最も頻度の高い有害事象は、貧血(ペムブロリズマブ群49.1%、プラセボ群45.9%)、好中球減少(41.1%、38.1%)、悪心(39.3%、41.3%)であった。試験レジメン関連のGrade3、4、5の有害事象は、それぞれ68.1%および66.9%で認められ、ペムブロリズマブ群の2例(0.4%)(急性腎障害と肺炎が1例ずつ)が死亡した。ペムブロリズマブ群では、免疫介在性の有害事象が26.5%(甲状腺機能低下症15.8%、甲状腺機能亢進症4.3%、肺臓炎2.5%など)で発現し、このうち5.3%がGrade3または4であった。 著者は、「OS期間の探索的解析では、PD-L1陽性でCPSが10~19点、およびPD-L1陽性でCPSが20点以上の患者においても、ペムブロリズマブ追加による一貫した有益性が認められたことから、『CPS 10点以上』は、ペムブロリズマブ+化学療法による利益が期待される進行トリプルネガティブ乳がん患者集団を定義する適切な基準と考えられる」と指摘している。

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1型糖尿病にSGLT2阻害薬を使用する際の注意点/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎)は、2014年に策定された「SGLT2阻害薬の適正使用に関する Recommendation」を改訂し、2022年7月26日に公開した。改訂は7度目となる。 今回の改訂は、2022年4月よりSGLT2阻害薬服用中の1型糖尿病患者の在宅での血中ケトン体自己測定が可能となったことに鑑み、これらの情報をさらに広く共有することにより、副作用や有害事象が可能な限り防止され、適正使用が推進されることを目的としている。 具体的には、【ケトアシドーシス】の項で「SGLT2阻害薬使用中の1型糖尿病患者には、可能な限り血中ケトン体測定紙を処方し、全身倦怠感・悪心嘔吐・腹痛などの症状からケトアシドーシスが疑われる場合は、在宅で血中ケトン体を測定し、専門医の受診など適正な対応を行うよう指導する」という文言が追加された。1型糖尿病患者のSGLT2阻害薬使用はケトアシドーシスが増加していることに留意1)1型糖尿病患者のSGLT2阻害薬使用には一定のリスクが伴うことを十分に認識すべきであり、使用する場合は、十分に臨床経験を積んだ専門医の指導のもと、患者自身が適切かつ積極的にインスリン治療に取り組んでおり、それでも血糖コントロールが不十分な場合にのみ使用を検討すべきである。2)インスリンやSU薬などインスリン分泌促進薬と併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる(方法については下記参照)。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。3)75歳以上の高齢者あるいは65歳から74歳で老年症候群(サルコペニア、認知機能低下、ADL低下など)のある場合には慎重に投与する。4)脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬の併用の場合には特に脱水に注意する。5)発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する。また、手術が予定されている場合には、術前3日前から休薬し、食事が十分摂取できるようになってから再開する。6)全身倦怠・悪心嘔吐・腹痛などを伴う場合には、血糖値が正常に近くてもケトアシドーシス(euglycemic ketoacidosis:正常血糖ケトアシドーシス)の可能性があるので、血中ケトン体(即時にできない場合は尿ケトン体)を確認するとともに専門医にコンサルテーションすること。特に1型糖尿病患者のSGLT2阻害薬使用では、インスリンポンプ使用者やインスリンの中止や過度の減量によりケトアシドーシスが増加していることに留意すべきである。7)本剤投与後、薬疹を疑わせる紅斑などの皮膚症状が認められた場合には速やかに投与を中止し、皮膚科にコンサルテーションすること。また、外陰部と会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)を疑わせる症状にも注意を払うこと。さらに、必ず副作用報告を行うこと。8)尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問診では質問紙の活用も推奨される。発見時には、泌尿器科、婦人科にコンサルテーションすること。

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アルコール依存症リスクに対する喫煙の影響

 喫煙と飲酒には強い相関があるといわれている。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのClaire Garnett氏らは、イングランドにおける飲酒者の喫煙率および喫煙の特性について、アルコール依存症リスクの有無による比較を行った。その結果、アルコール消費量増加と喫煙率上昇との関連が認められたことから、著者らは、アルコール依存症リスクを有する喫煙者では、英国国民保健サービス長期計画(NHS Long Term Plan)の一環として喫煙率を低下させることが重要であると報告した。The Lancet Regional Health. Europe誌2022年6月9日号の報告。 イングランドの成人(weighted n:14万4,583人)を対象に毎月実施された断面調査のデータ(2014~21年)を用いて、分析を行った。喫煙および禁煙チャレンジの特徴は、調査年で調整した後、アルコール依存症(飲酒者のアルコール依存症リスクの有無別)で回帰した。 主な結果は以下のとおり。・過去1年間の喫煙率は、アルコール依存症リスクを有する飲酒者で63.3%(95%CI:59.7~66.8)、アルコール依存症リスクのない飲酒者で18.7%(95%CI:18.4~18.9)、非飲酒者で19.2%(95%CI:18.8~19.7)であった。・過去1年間の喫煙者のうち、アルコール依存症リスクを有する飲酒者は、1日当たりの喫煙本数が多く(vs.リスクのない飲酒者、B=3.0、95%CI:2.3~3.8)、起床後最初の喫煙が5分以内である可能性が高かった(vs. 60分未満内、OR=2.81、95%CI:2.25~3.51)。

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奥が深い“NO benefit”(解説:今中和人氏)

 本邦では保険収載されるほど、一酸化窒素(NO)療法は広く普及している。NOは水溶性が低く、急速に失活する生理活性物質であるため、基本コンセプトは経気道的投与と気道付近にほぼ限局した血管拡張で、もっぱら肺血圧低下と換気血流比不均衡是正に伴う呼吸・循環状態の改善を目的に使用される。本論文は開心術中、人工肺にNOを送気するトライアルで、前述の基本コンセプトと大幅に異なるが、実は2013年には小児で、2019年には成人で、この方法の有用性を示した先行研究がJTCVS誌に掲載されている。ただ、いずれも前向き無作為化試験といっても単施設で患者数がかなり少なく、共通する便益は半日後や翌日の一過性のバイオマーカー値のみだったが、他に2016年に1本、小児で臨床的な有効性を報告した200例規模の論文も存在する。 本論文では、オセアニアとオランダの6施設における2歳以下の小児開心術症例を、人工心肺中の人工肺に20ppmのNOを投与する679例と、投与しない685例に無作為化し、主に臨床的便益を中心に28日成績を比較した。無作為化時点で6週未満児がともに33%台で、単心室系疾患が11%台、再手術が8%台であった。主要アウトカムは28日間のうち人工呼吸器を使用しなかった日数(なぜ素直に人工呼吸器使用日数としなかったかは不明)とし、副次アウトカムは48時間以内の心不全(低心拍出症候群+補助循環)と28日死亡の複合、ICU期間、入院期間、直後と24時間後の血清トロポニン値とした。 結果は、人工呼吸器非使用日数は26.6日と26.4日、心不全+死亡が22.5%と20.9%、ICU滞在はともに3.0日、入院は9.0日と9.1日、トロポニン値も同程度と、主要・副次アウトカムともまったく差がなかった。なお術後、11.8%と13.4%の患児にNOが投与(中央値45時間)されており、16.5%と17.4%で透析を行っている。NOと関係がありうる有害事象も11.1%と10.5%で差がなかった。 基本コンセプトに基づけば、難溶性のNOそのものが投与場所とまったく離れた臓器に作用するとは考えにくいし、全身投与という観点からはNO担体である硝酸薬の心筋保護効果も予後改善効果もおおむね否定的なので、差が出なかった今回の結果は当然にも思える。他方、複数の先行研究で示された有用性は主にNOによる虚血再灌流障害の軽減で、それらの論文では抗炎症作用、アポトーシス、組織修復能など、NOの効能が実験論文を中心に引用してとうとうと述べられているものの、1論文を除き、臨床経過はほぼ差がなかった。 結論として、このNO投与方法は、安全性が担保されている濃度では開心術の早期予後をあまり改善しないと考えてよさそうだが、関連論文を読むほどに、NO benefitの奥の深さと自分の知識・理解の足りなさに身が縮む。

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第119回 参院選勝利の日本医師会もヒヤヒヤ、24年診療報酬改定の未来予想図は?

参議院選が終了して2週間が経過した。すでにご存じのように、結果としては与党で第一党の自民党が改選前から8議席上乗せし、改選議席過半数の63議席を獲得。同じく与党の公明党は改選前より1議席減らして13議席と、与党で合計76議席を獲得して“勝利”した。敢えてダブルクォート(“ ”)で表現したのは、どちらかと言うと今回の結果は与野党中間とも言える日本維新の会を除く野党が、ここ数年駆使してきた「日本共産党を含む野党共闘」を、立憲民主党と国民新党の最大支持団体「日本労働組合総連合会(連合)」の方針で駆使できず、1人区での野党候補の勝利が3年前の前回参議院選挙から半減以下となった影響が大きい。つまり結果は同じでも解釈は、「与党の勝利よりも野党の敗北のファクターのほうが大きい」と言えるからだ。さて、今回の参議院選挙の結果を受けて医療・介護業界の一部では早くもざわつきが始まっている。というのも参議院選挙はある種、支持団体の忠誠心競争でもあるからだ。現在、日本の選挙制度は衆議院も参議院も選挙区選挙と比例代表の並立制という点では同じだが、両選挙ではとくに比例代表の扱いが異なる。衆議院の比例代表は選挙区が全国11の地域ブロックごとに設定され、有権者は政党名で投票。政党別獲得投票割合に応じて各党に議席が割り振られ、比例代表当選者は政党側が予め用意した順位付き候補者名簿上位から決定していく「拘束名簿式」。また、衆議院は選挙区と比例代表の重複立候補が可能であるため、比例代表はどちらかと言うと小選挙区落選者の復活当選という救済措置の意味合いが強い。これに対して参議院の比例代表は、選挙区が全国単位で各都道府県選挙区と重複立候補はできず、有権者は政党名、候補者個人名のいずれでも投票が可能。比例代表当選者は、原則的に個人名得票数の多い順から決まる「非拘束名簿式」。この性格上、参議院の比例代表制は全国的に知名度が高い人や全国組織の関係者が当選しやすく、政党側もその点を意識した候補者を選びがちになる。代表例がタレント候補と全国組織を持つ各政党の主要な支持団体の組織候補・組織推薦候補だ。とくに長らく政権を担当してきている自民党は支持団体も多く、比例代表候補はこれらの組織候補・組織推薦候補がかなり多くを占める。今回の参議院選挙で組織候補を有していた医療介護関係団体は、日本医師会、日本歯科医師会、日本看護協会、日本薬剤師会、日本理学療法士協会、全国老人福祉施設協議会など。最終結果では、自民党の比例代表当選ラインは約12万票で、日本医師会、日本歯科医師会、日本看護協会、日本薬剤師会の候補は当選し、日本理学療法士協会、全国老人福祉施設協議会の候補は落選となった。組織候補を当選に導いた各組織の得票は、日本医師会が約21万票、日本歯科医師会と日本看護協会が約17万票、日本薬剤師会が約13万票。対して組織候補が落選した日本理学療法士会は約12万票、全国老人福祉施設協議会が約9万票だった。冒頭で「ざわついている」と書いたのは、この結果を受けた関係者の中には早くも2024年にある6年に1度の診療報酬、介護報酬、障害者福祉サービス報酬のトリプル改定への影響を口にする人が出始めたことだ。前回の2018年のトリプル改定時の診療報酬本体(薬価分を除く)が0.55%、介護報酬が0.54%のプラスだったことから、当選した(勝った)医療業界側の一部では、“負けた介護業界側との改定率の差は開く”、つまりプラス改定の場合は介護報酬の改定幅が抑えられ、その分が診療報酬本体に回ってくるのではないかとの「期待」が高まっている。とくにトリプル改定の場合、まずは診療報酬本体の改定幅から決まるため、得票数で存在感を示した日本医師会を中心にこの期待は徐々に高まっていく可能性がある。しかし、ことはそう簡単ではない。2018年改定は特殊な「人治」で決まったことは衆目が承知している。あくまでマイナス改定を強硬に主張した財務省に対して、日本医師会側は当時の横倉 義武会長と今回の選挙中に凶弾に倒れた当時の首相の安倍 晋三氏との個人的な親密さでプラス改定を実現。さらに最後まで抵抗した財務省を、横倉氏と同じ福岡県出身で安倍氏以上に横倉氏と親しかった当時の財務相である麻生 太郎氏が抑え込んだ。だが、安倍氏がこの世を去り、横倉氏もすでに日本医師会会長を退任した今、2018年のようなほぼ日本医師会ワンサイドの勝利再現は難しい。そうした中、現時点での2024年トリプル改定を占うファクターは、主に(1)財務省の方針、(2)日本医師会の方針、(3)自民党内の動静の3つである。(1)については、財政均衡を目指す財務省のスタンスは健在で、基本方針は“あわよくば”診療報酬本体もマイナス改定だろう。とくに財務省は前述の2018年トリプル改定時に政治力で抑え込まれた「遺恨」もある。ただ、ここでも“あわよくば”とダブルクォートで表現したのは、2018年と現在ではやや状況に変化があることを考慮しなければならないからだ。状況の変化で最も大きいのが診療報酬本体プラス改定の財源となってきた薬価引き下げが2021年から毎年行われるようになった点である。つまり以前よりも診療報酬本体のプラス改定の財源は確保できるようになっている。その意味で財務省の診療報酬本体改定幅に対する考えは、2023年と2024年の薬価引き下げ幅がどの程度になるか次第とも言える。薬価引き下げ幅はあくまで市場実勢価に左右されるため、財務省は現時点では見通しは立てにくいだろう。(2)については比較的予想しやすい。まず、横倉氏の退任後に日本医師会会長に就任した中川 俊男氏は2期目の会長選に不出馬を決め、先ごろ松本 吉郎常任理事が会長に就任したばかり。過去40年、2期目不出馬で日本医師会会長を退任したのは中川氏のみ。この背景は2022年診療報酬改定が本体0.43%プラスに終わったことが最大の要因だ。前任の横倉氏の在任期間中に行われた4回の診療報酬改定の本体改定率は0.49~0.73%のプラス。横倉氏と比べ政治とのパイプが細いと言われた中川氏が迎えた最初の診療報酬改定のプラス幅は、横倉氏時代を下回った。そればかりか引き上げ分のほとんどが菅 義偉前首相の政策だった「不妊治療の保険適応」と、成長と分配の好循環を掲げた岸田 文雄首相の目玉政策「看護師報酬アップ」に回され、日本医師会にとっては実質的にゼロ改定。このことで日本医師会内では中川氏への不満が爆発し、異例の再選不出馬となった。新会長の松本氏個人はそれほど政治と太いパイプはないと言われているものの、前述の横倉氏に近いため、横倉氏の後ろ盾も得ながら次回改定に臨むと予想される。その際の勝敗ラインは、2022年改定や横倉氏時代の改定を踏まえると0.5%のプラス改定になるだろう。一方、読みが一番難しいのが(3)だ。今回の安倍氏の衝撃的な死去で自民党内のバランスは変化する。岸田首相が率いる岸田派は党内で2番目に所属議員数が少なく、これまでは最大派閥の安倍派を率いていた安倍氏が半ばお目付け役として機能しながら岸田首相は党内と政権を運営してきた。安倍氏死去後の安倍派は当面は会長を置かず、集団指導体制で運営されることが決まった。その結果、すでに政界を引退しながらも安倍派に影響力を持つ森 喜朗元首相の存在感が強まっているとの見方が一部で指摘されている。この場合、岸田首相にとってはやや厄介なことになる。というのも、森氏にとっては首相在任中に起きた自民党内の内紛「加藤の乱(現在の岸田派の源流でもある故・加藤 紘一氏が率いる加藤派を中心に野党提出の内閣不信任案に賛成しようとした事件)」の際、自民党執行部による乱への同調者切り崩し工作に応じず、最後まで加藤氏に付き従ってきた1人が今の岸田首相である。森氏にとっての遺恨の相手である。この時の影響もあり、安倍派には反岸田的色彩を持つ議員もいると言われる。また、日本医師会の組織候補で見ると、前回再選した羽生田 俊氏は安倍派であり、今回再選した自見 英子氏は、岸田氏により最終的に首に鈴をつけられ自民党幹事長を退任した二階 俊博氏率いる二階派の所属である。加えて2018年のトリプル改定時に横倉氏との縁で財務省を抑え込んだ麻生氏は自らの麻生派を率い、なおかつ介護業界の後ろ盾でもある「地域包括ケアシステム・介護推進議員連盟」の会長という絶妙なバランスを有している。前述の2018年の改定率である診療報酬本体が0.55%、介護報酬が0.54%は、この麻生氏の立場と日本医師会のメンツを立てる(見かけの改定率が介護報酬のほうが0.01%低いこと)という財務省の忖度の結果とも言われている。そして当の岸田首相の下では、日本医師会が反対姿勢を鮮明にしている「かかりつけ医の制度化」を『経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針)』に盛り込んで閣議決定。同時に安倍氏が提唱したアベノミクス路線を継承しつつも、「成長と分配の好循環」というキーワードで独自の経済政策を掲げる岸田首相は、介護職の給与アップに好意的だ。その意味で2024年のトリプル改定は参議院選挙の論功行賞というファクターのみでは考えられない不確定要素をいくつも抱えている。変数が多いのに定まった解析方法はない極めて厄介な現状である。

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A型肝炎ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第13回

ワクチンで予防できる疾患(疾患について・疫学)A型肝炎は、ウイルス感染によって起こる急性肝炎である。感染しても多くは軽症で自然軽快し、劇症化は1%以下とまれである。急性肝炎のみで慢性化はしない。感染症法においては全数報告対象の4類感染症に指定されており、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出なければならない。主な感染経路は糞口感染で、汚染された食品を喫食することで感染が成立する。環境やヒトからの接触感染も報告があり、近年は糞口感染の変形として肛門性交による感染例が増えている。これらから、途上国など流行地域への渡航、輸入食材の喫食に加え、違法薬物使用や男性同性間性的接触者(MSM)もリスク因子の1つとされる。感染成立から2〜7週後(平均は4週)に、発熱、倦怠感、食思不振、嘔吐といった初期症状に続いて血清トランスアミナーゼ(ALTまたはGPT、ASTまたはGOT)が上昇する。典型例では黄疸、肝腫大、濃色尿、灰白色便などを認める。臨床症状や肝障害の改善は割に早く、既述の通り慢性化もしないので、劇症化しなければ一過性の急性肝炎として収束する。劇症化を含む重症化は、感染初期の高度なウイルス増殖に対する過剰な宿主免疫反応に関連する。主なリスク因子は高齢(50代以上)や高度肝障害(慢性肝炎や肝硬変)とされる。血中IgM-HA抗体、もしくは血液または糞便検体からPCR法によりRNAが陽性となれば診断が確定する。IgM抗体は発症から約1ヵ月後にピークに達し、3〜6ヵ月後に陰性となる。抗体価は重症例ほど高く、長く検出される。糞便中のウイルスは発症から1〜2ヵ月後まで検出される。ワクチンの概要(効果・副反応・生または不活化・定期または任意・接種方法)A型肝炎ワクチンには、わが国で承認を得て流通しているワクチンが乾燥組織培養不活化A型肝炎ワクチン(商品名:エイムゲン)として1種類ある。海外で流通しているワクチンでは数種類(HAVRIX、AVAXIMなど)がある。海外では、A型肝炎とB型肝炎に対する混合ワクチンTwinrix および Twinrix Juniorも普及している。いずれも不活化ワクチンで、日本では任意接種の扱いとなっている。ワクチンの免疫付与効果はほぼ100%とされている。接種のスケジュール(小児/成人)画像を拡大する画像を拡大する日常診療で役立つ接種ポイント説明方法として「衛生的でない食品による急性肝炎であるA型肝炎を予防するワクチンです。効果も安全性も非常に高いため、感染リスクがある方には接種をお勧めします」など申し添える。また、迅速接種の場合は、接種スケジュールの通り、「2週間後に2回目を接種すると1年程度は免疫が得られます。その場合でも3回目接種を推奨します」など申し添える。海外製品の方が接種回数や長期効果の面で優れているため、特に移住などの長期渡航に際しては、現地もしくは国内トラベルクリニックで海外製品を接種することも選択肢として検討する。今後の課題・展望国産ワクチン(エイムゲン)と海外製ワクチンの互換性に関するエビデンスがないため、今後の研究が期待されている。エイムゲンを1〜2回接種した状態で渡航した場合、互換性が保証されないため現地で接種をやり直すことになり、カウントエイムゲンの接種が丸ごとムダになってしまう。また、今後の承認が期待されるワクチンとして、A型肝炎とB型肝炎が混合されたワクチンや、A型肝炎と腸チフスが混合されたワクチンなどがある。これらが承認されれば、海外渡航や移住する成人にとって利便性が高い。参考となるサイト(公的助成情報、主要研究グループ、参考となるサイト)国立感染症研究所 A型肝炎とは厚生労働省検疫所FORTH 海外渡航のためのワクチン厚生労働省 肝炎総合対策の推進疾病対策予防センター(CDC) Viral Hepatitis講師紹介

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緩和ケアに宗教観は“必須”なのか?【非専門医のための緩和ケアTips】第32回

第32回 緩和ケアに宗教観は“必須”なのか?緩和ケアの議論をしていると、宗教的な話題も出てきます。死と向かい合う人をケアするわけですから、ある意味当たり前のことでしょう。では、緩和ケアに宗教観は“必須”なのでしょうか? 一般化した正解があるわけではありませんが、緩和ケアに携わりながら私が感じてきたことをお伝えします。今日の質問緩和ケアでは宗教的なケアにも取り組みますよね? 私は無宗教なので、「死後の世界」などと言われてもピンときません。宗教観がなければ、緩和ケアを実践することは難しいのでしょうか?私自身も「特定の宗教に基づいたケア」は行っていません。日本人らしく、初詣もクリスマスも除夜の鐘もそれぞれ楽しむタイプです。緩和ケアのルーツをたどると、十字軍で傷ついた兵士をケアしたことが起源という説があります。また、中世から近代にかけ、世界中の宗教施設が福祉的な役割を担っており、宗教者が病気や困難を抱えた人に提供したケアもルーツの1つです。そうした意味では、緩和ケアと宗教は最初から接点があったのです。実際、日本でもキリスト教や仏教などを背景とした緩和ケアを提供している病院や施設があります。皆さんは「チャプレン」って聞いたことありますか? チャプレンとは「宗教施設以外で働く宗教家」のことです。病院やホスピスで緩和ケアを提供する多職種チームの一員として、専門性を活かした宗教的なケアを提供しています。日本では一部のキリスト教系病院などで活躍していますが、私が見学に行った米国の病院ではさらに一般的な存在でした。米国では、さまざまな人種や宗教の方が入院します。チャプレンは、患者や家族から宗教的な背景をアセスメントしたうえで、医療者にアドバイスをします。たとえば、「この患者さんが信仰している宗教では、死は輪廻転生の一環として捉えられており、来世についての質問があるかもしれません」といった感じです。では、チャプレンがいない日本の病院では、宗教的な緩和ケアは提供できないのでしょうか。もちろん、できることとできないことはあるでしょう。ただ、宗教的な価値観を大切にしている患者さんがいたら、そのことに気付くこと、気付くために傾聴することが大切です。それは、医療者自身の宗教観と関係なく、取り組めることではないでしょうか?その先として、宗教的な観点を学ぶのもよいでしょう。インターネットで「チャプレン」と検索すると、さまざまなコンテンツがあります。スキマ時間に学んでみてはいかがでしょうか。今回のTips今回のTips宗教的なケアを提供することよりも、まずは宗教的な価値観を大切にしている患者さんに気付くことが大切。

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維持期統合失調症に対するアリピプラゾール月1回製剤と経口剤との比較~メタ解析

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、成人の維持期統合失調症治療においてアリピプラゾールの長時間作用型注射剤(アリピプラゾール月1回製剤、AOM)が経口剤(OARI)より有益であるかを検討するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。その結果、維持期統合失調症患者に対するAOMとOARIによる治療は、どちらも有効であったが、AOMのほうがより受容性が高いことが示唆された。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2022年7月5日号の報告。 AOM、OARI、プラセボのうち2つを含む二重盲検ランダム化比較試験のシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・4研究(1,830例)を解析に含めた。・26週間での再発率は、プラセボ群と比較し、AOM群(オッズ比[OR]:0.240、95%信頼区間[CI]:0.169~0.341)およびOARI群(OR:0.306、95%CI:0.217~0.431)ともに低かったが、AOMとOARIの間に有意な差は認められなかった(OR:0.786、95%CI:0.529~1.168)。・すべての原因による治療中止率も、プラセボ群と比較し、AOM群(OR:0.300、95%CI:0.227~0.396)およびOARI群(OR:0.441、95%CI:0.333~0.582)ともに低かった。・AOM群におけるすべての原因による治療中止率は、OARI群よりも低かった(OR:0.681、95%CI:0.529~0.877)。・その他のアウトカムでは、AOMとOARIの間に有意な差は認められなかった。

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高齢乳がん患者への術前化学療法、治療目標を達成できるか

 手術可能な70歳以上の乳がん患者において、術前化学療法(NAC)によるダウンステージ率と忍容性の研究は少ない。今回、米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのAustin D. Williams氏らが、NAC完遂率とダウンステージ率を50~69歳と70歳以上で比較したところ、70歳以上ではNAC完遂率が低かったが、乳房および腋窩リンパ節のダウンステージ率は50~69歳の患者と同程度に高かった。Annals of Surgical Oncology誌オンライン版2022年7月24日号に掲載。 本研究の対象は、2013年11月~2020年4月にNAC後に手術を受けた50歳以上のcT1-3N0-1の乳がんの女性で、乳房温存手術不適応から適応へのダウンステージ率とcN1患者の腋窩リンパ節郭清回避率について50~69歳と70歳以上で比較した。また、NACレジメンと完遂率も評価した。 主な結果は以下のとおり。・NACを受けたcT1-3N0-1乳がん患者は668例で、50歳以上の651例のうち75例(11.1%)が70歳以上だった。・70歳以上では50~69歳と比べて、小葉がんが少なく(5% vs.10%、p=0.03)、アントラサイクリンベースのレジメンが少なく(69% vs.93%、p<0.001)、レジメン完遂率が低かった(57% vs.78%、p<0.001)。・乳房温存手術不適応から適応へのダウンステージ率は同程度だった(72% vs.74%、p>0.9)。・NAC後に乳房温存手術適応となった患者のうち乳房温存手術を受けた患者の割合は、70歳以上が50~69歳より高かった(93% vs. 74%、p=0.04)。・cN1患者390例のうち、162例(42%)がリンパ節における病理学的完全奏効を達成した。腋窩リンパ節郭清回避率は同等だった(43% vs. 42%、p>0.9)。 著者らはこの結果から、「適切に選択された高齢患者は、NACによって安全で大きな臨床ベネフィットを得られることを示唆する」と結論している。

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コロナワクチン、2回目接種後6ヵ月で陽性率は未接種者と同等?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの有効性の低下は、COVID-19関連入院、COVID-19関連死、SARS-CoV-2検査陽性で一貫しており、年齢および感染リスクで定義したサブグループ間で差はみられないことが、英国・ブリストル大学のElsie M. F. Horne氏らによるOpenSAFELY-TPPデータベースを用いたコホート研究の結果、示された。最近のシステマティック・レビューでは、COVID-19重症化に対するワクチンの有効性が2回目接種後1~6ヵ月間で10%(95%信頼区間[CI]:6.1~15.4)低下すると推定されたが、研究デザインの違いや結果のばらつきにより結論は得られていなかった。著者は、「今回の結果は、オミクロン変異株感染や、ブースターワクチン接種が続くならばブースターワクチン接種のスケジュール決定に役立つと考えられる」とまとめている。BMJ誌2022年7月20日号掲載の報告。OpenSAFELY-TPPを用い2,400万人のデータを解析 研究グループは、OpenSAFELY-TPPデータベースを用いてコホート研究を行った。データベースには、英国の一般診療に登録された2,400万人(英国住民の約44%)について、国民保健サービス(NHS)番号を介し救急外来受診、入院記録、SARS-CoV-2検査記録および死亡登録記録にリンクしたプライマリケアの詳細なデータが含まれている。 解析対象は、SARS-CoV-2感染歴のない18歳以上の成人(介護施設入所者および医療従事者は除外)で、BNT162b2ワクチン(ファイザー製)2回接種群、ChAdOx1ワクチン(アストラゼネカ製)2回接種群、ワクチン未接種群に分け、4週間ずつ連続した6回の比較期間においてワクチンの有効性を比較した。 主要評価項目は、COVID-19関連入院、COVID-19関連死、SARS-CoV-2検査陽性および非COVID-19関連死の、ワクチン未接種者に対する接種者の補正後ハザード比(aHR)とし、ワクチンの有効性の低下を65歳以上、感染リスクの高い18~64歳、40~64歳、18~39歳のサブグループ別に4週間ごとの補正後ハザード比の比(RaHR)として定量化した。2回目接種後26週で入院・死亡75%以上抑制も、陽性率は未接種者と同等 適格基準を満たした解析対象は、BNT162b2ワクチン2回接種群195万1,866例とChAdOx1ワクチン2回接種群321万9,349例、ワクチン未接種群242万2,980例であった。 ワクチンの有効性の低下は、評価項目およびワクチンのブランド間で同程度と推定された。65歳以上のサブグループでは、COVID-19関連入院、COVID-19関連死、SARS-CoV-2検査陽性のRaHRは4週あたり1.19(95%CI:1.14~1.24)~1.34(95%CI:1.09~1.64)であった。 ワクチンの有効性の低下にもかかわらず、ワクチン接種群は未接種群と比較して2回目接種から26週後まではCOVID-19関連入院・死亡率が非常に低く、ワクチンの有効率はBNT162b2で80%以上、ChAdOx1で75%以上と推定された。23~26週目までに、ワクチン接種群のSARS-CoV-2検査陽性率は未接種群と同等もしくは高率となった(aHRはBNT162b2で1.72[95%CI:1.11~2.68]、ChAdOx1で1.86[95%CI:1.79~1.93])。

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有害量のアルコール摂取、若年男性で多い:GBD2020/Lancet

 アルコール摂取に関する勧告は年齢および地域によって異なることを支持する強いエビデンスがあり、とくに若年者に向けた強力な介入が、アルコールに起因する世界的な健康損失を減少させるために必要であることが、米国・ワシントン大学のDana Bryazka氏らGBD 2020 Alcohol Collaboratorsの解析で明らかとなった。適度なアルコール摂取に関連する健康リスクについては議論が続いており、少量のアルコール摂取はいくつかの健康アウトカムのリスクを低下させるが他のリスクを増加させ、全体のリスクは地域・年齢・性別・年によって異なる疾患自然発生率に、部分的に依存することが示唆されていた。Lancet誌2022年7月16日号掲載の報告。年齢・男女・年別にTMRELとNDEを推定 解析には、204の国・地域における1990~2020年の死亡率と疾病負担を年齢別、性別に推計した世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)のデータを用いた。22の健康アウトカム(虚血性心疾患、脳梗塞、がん、2型糖尿病、結核、下気道感染症など)に関する疾患重み付け用量反応相対リスク曲線を構築し、21地域の15~95歳の個人について1990~2020年の期間で、5歳ごとの年齢階級別、男女別および年別に、アルコールの理論的最小リスク曝露量(theoretical minimum risk exposure level:TMREL、アルコールによる健康損失を最小化する摂取量)と非飲酒者等価量(non-drinker equivalence:NDE、飲酒者の健康リスクが非飲酒者の健康リスクと同等時点でのアルコール摂取量)を推定するとともに、NDEに基づき有害な量のアルコールを摂取している人口を定量化した。有害量のアルコール摂取は若年男性で多い アルコールに関する疾患重み付け相対リスク曲線は、地域および年齢で異なっていた。2020年の15~39歳では、TMREL(ドリンク/日:1ドリンクは純粋エタノール10g相当)は0(95%不確実性区間[UI]:0~0)から0.603(0.400~1.00)、NDEは0.002(0~0)から1.75(0.698~4.30)とさまざまであった。 40歳以上の疾患重み付け相対リスク曲線はすべての地域でJ字型であり、2020年のTMRELは0.114(95%UI:0~0.403)から1.87(0.500~3.30)、NDEは0.193(0~0.900)から6.94(3.40~8.30)の範囲であった。 2020年における有害量のアルコール摂取は、59.1%(95%UI:54.3~65.4)が15~39歳、76.9%(73.0~81.3)が男性であり、主にオーストララシア、西ヨーロッパ、中央ヨーロッパに集中していた。

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驚きの暑中見舞い【Dr. 中島の 新・徒然草】(436)

四百三十六の段 驚きの暑中見舞い先日、患者さんから頂いた暑中見舞い。思いがけないことが書かれており、読むにつれ数ヵ月前のやりとりを思い出しました。そもそもは小さな未破裂脳動脈瘤で、数年来フォローしていた方です。1年に1回の画像検査、幸いなことに動脈瘤自体は大きくなることもありませんでした。でも、その間に息子さんが大学に受かったり、ご両親が病気になったり。それはもう、いろいろな事が彼女に起こりました。そして今年の3月、遠く南の島に引っ越すということで、私のフォローも終わりになりました。患者「脳とは関係ないのですが、ちょっと健診結果をみてもらっていいですか?」中島「ええ」患者「便潜血で引っ掛かって要精密検査になったのですが、本当に必要でしょうか?」たいした事はありませんよ、と言ってもらいたかったのでしょう。中島「すぐに消化器内科受診の手配をしましょう」患者「でも、もう引っ越しが迫っているので無理です」中島「じゃあ、引っ越しした先で必ず内視鏡検査をやってください」「いつになく強い口調で言われた」と葉書にはありました。自分では覚えていないのですが。患者「あの、何があるのでしょうか?」中島「大腸がんがあります」患者「ええっ」中島「今なら間に合いますが、放置したら手遅れになります」患者「そんな!」中島「だから引っ越し先で大変ですが、とにかく精密検査をお願いします」患者「……」あまり「ああかもしれない、こうかもしれない」という話をしても仕方がありません。また、この状況で悪性疾患が潜んでいる率についても、私自身の知識はゼロです。中島「今回のアドバイスが、この何年間かで最も大切なものです。お願いですから検査を受けてください」患者「わかりました」もし引っ越しがなかったら、そのまま院内で消化器内科に紹介して終わりだったのですが。そうできなかったのが歯がゆかったです。で、その事はすっかり忘れていました。今回頂いた暑中見舞いによれば……慣れない土地で医療機関を探して嫌々受診した引っ越し疲れと下剤でヘロヘロになりながら、内視鏡検査を受けたなんと、本当に大腸がんが見つかって治療した!「きれいに取れたので、術後の抗がん剤治療は不要」という説明を受けた実際に治療をした先生と同じくらい、私のほうも感謝されていそうな文面でした。ところで私は「がんがあります」と断言してしまいましたが、実際はどんな確率なのでしょうか?ちょっと調べてみると、便潜血陽性者のうちの2~3%に大腸がんが見つかるのだとか。これを多いと感じるか少ないと感じるかは、人それぞれでしょう。ともあれ、この方の場合は断言して良かったということになります。患者さんの背中を押すのも、我々医師の務めなのかもしれません。最後に1句驚きの 暑中見舞いは 南から

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第4回 濃厚接触者の待機期間短縮で医療現場が負うリスクとは

濃厚接触者の自宅待機期間の緩和濃厚接触者の自宅待機期間が緩和されました。医療従事者は、これまで毎日検査して5日目に出勤していたのが、毎日検査して3日目に出勤できることになりました。これまでの通達を合わせると、以下の図1のようになります。病院ごとにある程度柔軟に対応すればよいと思いますが、はたして3日目に復職しても本当に大丈夫なのか懸念は残ります。画像を拡大する図1. 濃厚接触者の検査による自宅待機期間短縮(筆者作成)現場が追うリスクたとえば、オミクロン株は3日間休んだとしても、曝露日から4日目の時点では、まだ約30%が発症していないというデータがあります(表)。となると、その30%程度のリスクを飲み込んだ状態で勤務をしなければならないというわけになり、医療機関として、これが容認できるかどうかといったところです。職場は免疫不全の患者さんもいる病院です。一律3日目に勤務してよいとするのかどうかは、議論の余地があるでしょう。表. HER-SYSデータを用いた曝露から経過日数ごとの発症する確率(%)国立感染症研究所(2022年1月13日発表)より濃厚接触者の待機期間が緩和されても、最前線に立っている医療従事者が直面しているのは、陽性です。現時点では陽性とわかれば、無症状でない限り、10日間の隔離療養が必要となります。そのため、濃厚接触者の基準をどれだけ緩和しても、最前線が直面している欠勤リスクは、そこまで軽減できていないのが現状です。たとえば、沖縄県では欠勤者に占める新型コロナ陽性者がかなり多いです(図2)。そのため、部門ごと閉鎖したり、救急外来受診を極端に制限したり、かなり厳しい状況に追いやられています。画像を拡大する図2. 重点医療機関における医師、看護師の休職数(沖縄県)第91回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(2022年7月21日)資料3-7 高山先生提出資料より緩和されるべきは何か?社会経済的な側面で濃厚接触者の待機期間を緩和することには賛成ですが、たとえば陽性例の全数報告をやめる、政府として受診抑制を強くアナウンスするなどの対応があってもよいのではと考えています。とくに全数報告は物理的に不可能で、定点報告にしないと保健所の業務がもう持たないと思っています。世間の言うウィズコロナは、「感染を許容して経済を回す」ことを意味しているのだと思いますが、感染を低い水準で許容しつつ経済だけをうまく回すということは、絵に描いた餅なのかもしれません。

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