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TILsを有するTN乳がんへの術前ニボルマブ±イピリムマブ、高い免疫活性示す(BELLINI)/ESMO2022

 術前化学療法への免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の追加による、早期トリプルネガティブ(TN)乳がん患者の転帰改善が報告されているが、どのような患者にICIが有効なのか、そしてどのような患者で術前化学療法のde-escalationが可能なのかは分かっていない。また早期TN乳がんでは、抗PD-1抗体への抗CTLA-4抗体の追加は検討されていない。オランダ・Netherlands Cancer InstituteのMarleen Kok氏らは、ニボルマブ±低用量イピリムマブの投与が、TILsを有するTN乳がんにおいて免疫応答を誘発するという仮説の検証を目的として、第II相非無作為化バスケット試験(BELLINI試験)を実施。その最初の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。・対象:T1c~T3、TILs≧5%のTN乳がん患者 31例・試験群:ニボルマブ群(NIVO群):ニボルマブ(240mg)×2サイクル 16例ニボルマブ+イピリムマブ群(NIVO+IPI群):ニボルマブ(240mg)×2サイクル+イピリムマブ(1mg/kg)×1サイクル 15例※両群ともにTIL5~10%:5例、TIL11~49%:5例、TIL≧50%:5例※両群ともに4週間後患者は術前化学療法あるいは手術を受ける・評価項目:[主要評価項目]4週間後のCD8+T細胞および/またはIFN-γ発現の2倍変化で定義される免疫活性化[副次評価項目]安全性、放射線学的反応(RECIST1.1)、トランスレーショナル解析※Simonの2段階デザインにより、30%の患者で免疫活性が確認された場合、コホートの拡大が可能となる。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時点の年齢中央値はNIVO群48歳、NIVO+IPI群50歳。grade3腫瘍が93.8%、73.3%。BRCA1/2変異有が18.8%、20.0%だった。無作為化されていないため、NIVO群ではN0が81.3%と最も多かったのに対し、NIVO+IPI群ではN1が60.0%と最も多かった。・4週間後の放射線学的部分奏効(PR)は7/31例(23%)で認められ、うちNIVO群3例(19%)、NIVO+IPI群4例(27%)であった。また、7例のうち3例はTIL≧50%、4例はTIL11~49%だった。・主要評価項目である4週間後の免疫活性化はNIVO群8例(53.3%)、NIVO+IPI群9例(60.0%)でみられ、コホート拡大基準(30%)を満たした。・PRを示した患者ではベースライン時点のIFN-γ発現量が多かった(p=0.014)。・ベースライン時点のCD8+T細胞レベルは奏効と相関しなかったが、空間解析により、CD8+T細胞が腫瘍細胞により隣接していることが奏効と強く関連していることが明らかになった(p=0.0014)。・ベースライン時点では全体の83%の患者でctDNA陽性が確認されたが、4週間後のctDNAクリアランスは24%の患者で確認された。・安全性については、Grade3以上の有害事象はNIVO群1例(6%、甲状腺機能亢進症)、NIVO+IPI群1例(7%、糖尿病)のみであった。 Kok氏らは、TILsを有するTN乳がん患者の多くが、わずか4週間のICI投与で免疫活性の上昇を示し、臨床効果が得られたことから、TN乳がん患者に対する術前化学療法なしのICI投与の可能性が示唆されたと結論付けている。そのうえで同氏は今後の展望として、NIVO群vs. NIVO+IPI群のシングルセル解析や、TIL>50%・N0の患者群における6週間のニボルマブ+イピリムマブ投与後手術を行った場合のpCR率の評価が必要とした。

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RAS/BRAF野生型大腸がん、FOLFIRI+セツキシマブ後のセツキシマブ単剤維持療法は継続投与に非劣性を示せず(ERMES)/ESMO2022

 RAS/BRAF野生型大腸がんの1次治療において、FOLFIRIと抗EGFR抗体薬セツキシマブを投与し、その後に毒性軽減のためにセツキシマブを単剤投与する維持療法は、継続投与に対して非劣性を示すことができなかったという。この第III相ERMES試験の結果を、イタリア・Fondazione Policlinico UniversitarioのArmando Orlandi氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で報告した。・対象:未治療のRAS/BRAF遺伝子野生型の進行大腸がんの成人患者 600例・試験群:FOLFIRI+セツキシマブを8サイクル投与後、PDまたは許容できない毒性が出るまでセツキシマブを単剤投与・対照群:PDまたは許容できない毒性が出るまでFOLFIRI+セツキシマブを継続投与・評価項目:[主要評価項目]8サイクルの治療を終えた患者(=mPP集団)における無増悪生存期間(PFS)の非劣性(単剤群の非劣性を示すハザード比[HR]の上限は1.33)、Grade3以上の有害事象の改善[副次評価項目]少なくとも1回投与を受けた患者(=mITT集団)におけるPFS、mPP集団における全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、QOL 主な結果は以下のとおり。・2015年5月~2020年3月に606例が無作為化され、継続群300例と単剤群306例に無作為に割り振られた。・mITT集団は593例(継続群:296、単剤群:297)、mPP集団は337例(継続群:154、単剤群:183)で、OS中央値は22.3(15~33.8)ヵ月、脱落率は約40%であった。・mPP集団では291のイベントが発生し、PFS中央値は継続群12.2ヵ月、単剤群10ヵ月(HR:1.30、95%CI:1.03~1.64、p=0.43)で、非劣性は示されなかった。・mITT集団におけるPFS中央値は、継続群10.72ヵ月、単剤群9.01ヵ月(HR:1.1、95%CI:0.92~1.31、p=0.305)だった。・mITT集団におけるOS中央値は継続群25.3ヵ月、単剤群31.0ヵ月(HR:0.9、95%CI:0.72~1.12、p=0.327)、mPP集団におけるOS中央値は継続群30.7ヵ月、単剤群36.6ヵ月(HR:0.81、95%CI:0.6~1.09、p=0.22)であった。・ORRは継続群67.5%(95%CI:59.5~74.9)、単剤群71.6%(64.5~78.0)であった。・Grade3以上の有害事象の発生率は、継続群よりも単剤群で少なかった(44.2 vs.39.9%)。主なものは皮膚障害(20.1 vs.18.0%)、好中球減少症(14.9 vs.9.8%)、下痢(11.0 vs.8.2%)、発熱性好中球減少症(5.2 vs.2.7%)、口腔粘膜炎(5.2 vs.1.6%)、疲労(4.6 vs.0.6%)だった。・サブグループ解析では、腫瘍発生部によってPFSに差があった(HR:左1.16 vs.右2.07)。 著者らは「本試験では、セツキシマブ単剤投与による維持療法の非劣性は証明されなかった。予想以上に高い脱落率とそれに伴う統計学的検出力の低下によって、単剤維持療法の非劣性が示せなかった可能性がある。現在進行中の新たな解析によって、減薬戦略の恩恵を受ける患者を選択できるかもしれない」としている。

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心血管疾患2次予防、ポリピルvs.通常ケア/NEJM

 心筋梗塞後6ヵ月以内の、アスピリン、ramipril、アトルバスタチンを含むポリピル治療は通常ケアと比べて、主要有害心血管イベント(MACE)リスクの有意な低下に結び付いたことが、スペイン・Centro Nacional de Investigaciones Cardiovasculares(CNIC)のJose M. Castellano氏らによる第III相無作為化試験「SECURE試験」で示された。転帰を改善する主要な薬剤(アスピリン、ACE阻害薬およびスタチン)を含むポリピルは、心筋梗塞後の2次予防(心血管死や合併症の予防)のための、簡易な手法として提案されている。結果を踏まえて著者は、「ポリピルは、治療を簡素化し入手可能性を改善するもので、治療のアクセシビリティとアドヒアランスを改善するために広く適用可能な戦略であり、結果として心血管疾患の再発および死亡リスクを低下するものである」とまとめている。NEJM誌2022年9月15日号掲載の報告。アスピリン、ramipril、アトルバスタチンを含むポリピル治療について検討 SECURE試験は、スペイン、イタリア、フランス、ドイツ、ポーランド、チェコ、ハンガリーの113施設で行われ、直近6ヵ月以内に心筋梗塞を有した75歳以上(リスク因子を1つ以上有する65歳以上)の患者を、ポリピルベースの治療戦略群または通常ケア群に無作為に割り付け追跡評価した。 ポリピル治療は、アスピリン(100mg)、ramipril(2.5mg、5mgまたは10mg)、アトルバスタチン(20mgまたは40mg)で構成された。 主要アウトカムは、心血管死、非致死的1型心筋梗塞、非致死的虚血性脳卒中、血行再建術施行の複合。主な副次エンドポイントは、心血管死、非致死的1型心筋梗塞、非致死的虚血性脳卒中の複合であった。追跡期間中央値36ヵ月のMACE発生ハザード比は0.76で有意差 2016年8月~2019年12月に、計4,003例がスクリーニングを受け、適格患者と認められた2,499例が無作為化を受けた。指標となる心筋梗塞から無作為化までの期間中央値は8日(IQR:3~37)であった。ポリピル群21例、通常ケア群12例のフォローアップデータが得られず、intention-to-treat(ITT)集団は2,466例(ポリピル群1,237例、通常ケア群1,229例)で構成された。平均年齢は76.0±6.6歳、女性の割合は31.0%、77.9%が高血圧症を、57.4%が糖尿病を有し、51.3%に喫煙歴があった。平均収縮期血圧は129.1±17.7mmHg、平均LDLコレステロール値は89.2±37.2mg/dLであった。 追跡期間中央値36ヵ月時点で、主要アウトカムのイベント発生は、ポリピル群118/1,237例(9.5%)、通常ケア群156/1,229例(12.7%)が報告された(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.60~0.96、p=0.02)。 主な副次アウトカムの発生は、ポリピル群101例(8.2%)、通常ケア群144例(11.7%)が報告された(HR:0.70、95%CI:0.54~0.90、p=0.005)。 これらの結果は、事前規定のサブグループで一貫していた。 患者の自己報告による服薬アドヒアランスは、通常ケア群よりもポリピル群で高かった。有害事象の発現頻度は両群で同程度であった。

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自閉スペクトラム症から総合失調症への進展

 これまでの研究では、自閉スペクトラム症(ASD)の小児は、その後の人生において統合失調症の発症リスクが高いことが示唆されている。台湾・高雄栄民総医院のTien-Wei Hsu氏らは、ASDにおける診断の安定性および統合失調症への進展に対する潜在的な予測因子について調査を行った。その結果、統合失調症と診断されたASD患者の3分の2以上が、ASD診断から最初の3年間で進展しており、人口統計学的特徴、身体的および精神的な併存疾患、精神疾患の家族歴が、進展の重要な予測因子であることが示唆された。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2022年9月3日号の報告。 対象は、2001~10年にASDと診断された青年(10~19歳)および若年成人(20~29歳)の患者1万1,170例。統合失調症の新規診断患者を特定するため、2011年末までフォローアップ調査を実施した。統合失調症への進展およびその予測因子を推定するため、時間のスケールとして年齢を用いたカプランマイヤー法およびCox回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・10年間のフォローアップ調査におけるASDから統合失調症への進展率は10.26%であった。・統合失調症と診断された860例中580例(67.44%)は、ASDと診断されてから3年以内に統合失調症と診断されていた。・特定された予測因子は以下のとおりであった。 ●年齢(ハザード比[HR]:1.13、95%信頼区間[CI]:1.11~1.15) ●抑うつ症状(HR:1.36、95%CI:1.09~1.69) ●アルコール使用障害(HR:3.05、95%CI:2.14~4.35) ●物質使用障害(HR:1.91、95%CI:1.18~3.09) ●パーソナリティ障害クラスターA群(HR:2.95、95%CI:1.79~4.84) ●パーソナリティ障害クラスターB群(HR:1.86、95%CI:1.05~3.28) ●統合失調症の家族歴(HR:2.12、95%CI:1.65~2.74)

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オミクロン流行も学術集会の現地参加は問題ない?

 国内の学術集会が軒並みオンライン中心で実施されるなか、海外ではマスクなしで大勢の参加者が現地に赴いているというが、大丈夫なのだろうか。米国・Surgical Outcomes and Quality Improvement CenterのCasey M Silver氏らが、新型コロナウイルスのオミクロン株が急増中に開催された大規模な学会において、現地出席者とオンライン出席者の新型コロナウイルス感染症の陽性率を比較した。それによると、ほとんどの登録者は会議に直接出席するも、陽性率は低く、現地出席者とオンライン出席者の間で陽性率が同等であったことが示唆された。JAMA Network Open 2022年9月1日号掲載の報告。 本横断的調査研究には、米国最大の外科学会の1つであるAcademic Surgical Congress (ASC) の参加者が含まれた。ASCは2022年2月1~3日にフロリダ州オーランドで開催(現地またはオンライン参加)。その際の新型コロナ感染予防対策として、自己検査の奨励、ワクチン接種とマスク着用の義務化、屋外での飲食物の提供などが行われた。学会後7日間の新型コロナ検査と症状を評価する調査のために登録者を募集した。また、現地出席者とオンライン出席者の陽性率の違いはχ2検定を使用して評価された。 主な結果は以下のとおり。・1,617人の学会参加者のうち、681人(42.1%)が調査に回答した。内訳は187人が学生(27.4%)、234人が研修医(34.3%)、226人が医師(33.2%)だった。・回答者のうち、135人(19.8%) がオンライン、546人(80.2%) が現地参加だった。会議前の検査で陽性だった6人(4.4%)はオンライン参加となった。・すべての現地参加者はワクチン完全接種を受けており、500人(91.6%)がブースター接種も済ませていた。・会議から7日以内に10人の現地参加者(1.8%)と 2人のオンライン参加者(1.5%) から陽性と報告を受けたが、陽性率の差は統計学的に有意ではなかった(p=0.83)。・彼らに共通した検査理由は、「新型コロナに感染していないことを確認したかった」(86人[69.3%])だった。4人が症状について報告したが検査は行われなかった。・陽性者全員がブースター接種を済ませており、10人中7人は欠勤(平均日数±SD:4.8±2.7日)するも、入院した者はいなかった。 研究者らは「対面を再開している学術集会もあるが、新たな亜種が出現するたびに、コロナ曝露のリスクを評価し続けることが重要。ASCは、オミクロン株の急増がピークに達した直後に開催したが会議の主催者がリスクを考慮して安全対策を迅速に適応させた。本結果は、職業上、曝露リスクが高くワクチン接種率も高い医師に対し、コロナ対策が効果的だった」とするも、「新型コロナ陽性の出席者は旅行中にウイルス感染した可能性があるが、感染は依然として現地出席に関連していたことに注意することが重要」と記している。 なお、日本人医師が希望する学術集会の開催形式の在り方について、今年2月にケアネット会員医師(n=1,031)へ行ったアンケート調査によると、現地・オンラインのハイブリッド希望者は60%、オンラインは27%、現地は13%だった。

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ROSCした患者の血圧管理目標値はどのくらいがよいか?(解説:江口和男氏)

 本研究は、院外心停止で蘇生され生存した昏睡状態の患者さんについて、平均血圧目標を63mmHgで保つ群と、77mmHgで保つ群にランダム化し予後を比較するという研究であった。主要アウトカムはあらゆる原因による死亡または神経学的予後不良状態での90日以内の退院の複合、2次アウトカムは血清神経特異エノラーゼ(NSE)レベル(高いと予後不良)、あらゆる原因による死亡、Montreal Cognitive Assessmentの点数(0~30の範囲で高いと認知機能良好)、そして、3ヵ月におけるmodified Rankin scaleおよびCerebral Performance Category(CPC)であった。 本研究の対象者の平均年齢は62~3歳であるが、18歳から90歳と広い年齢層にわたっている。対象者の8割が男性、約9割にバイスタンダーCPRが施行され、心停止の原因はほとんどが心原性で、約85%が電気ショックで蘇生可能な不整脈(VfやPulseless VT)であった。本研究のクリニカルクエスチョンは、脳保護を行うのに平均血圧を高め(77mmHg)に保つのがよいか、低め(63mmHg)がよいかというものであった。ちなみに、これらの平均血圧目標値を収縮期、拡張期血圧に直してみると、たとえば、平均血圧77mmHg→110/60mmHg、平均血圧63mmHg→84/52mmHg程度となる。 ガイドライン(Soar J, et al. Resuscitation. 2020;156:A80-A119.)では、ショック患者の血圧目標値として平均血圧65mmHg以上に保つと記載されており、2021年版ではAvoid hypotension (< 65 mmHg). Target mean arterial pressure (MAP) to achieve adequate urine output and normal or decreasing lactate(Nolan JP, et al. Intensive Care Med. 2021;47:369-421.)と記載されている。これまでは、観察研究や小規模のRCTしかなく、高血圧や動脈硬化の進んだ患者では高めにキープすべきという報告や、高めに保つために増量したカテコラミンにより催不整脈作用があった等、実際にどのくらいのレベルに血圧を保つのがよいかcontroversialであった。 本研究は各群400例弱と十分な症例数があり、この議論に決着をつけるのに十分なエビデンスが得られたと言えよう。結果として、急性冠症候群など心原性の心肺停止患者において、高血圧既往者においても高い血圧目標値のほうがよいという結果は得られなかった。一方で高い目標値の群ではカテコラミンの使用量は多かったものの不整脈などの有害事象の頻度を増やすこともなかった。この結果はseptic shock、vasodilatory shockを対象としたメタ解析の結果(Lamontagne F, et al. Intensive Care Med. 2018;44:12-21. )と同様であった。 したがって、ショックで心肺蘇生した昏睡状態の患者においては、ガイドラインどおりの平均血圧<65mmHgさえ避ければ、65mmHgぎりぎりでも77mmHgと高めの血圧値でも生命予後や神経学的予後に差がないということが明らかになった。ICUやCCUに入室中の患者であっても、血圧は刻々と変動するものであり、上記の2つの平均血圧目標に厳密に管理できるものでもなく、ある程度の血圧変動の幅は許容範囲ということになる。高血圧患者のように高くなりすぎて臓器障害が進行するというセッティングでもない。尿量が保てて、乳酸値が低下していく程度の臓器潅流を維持できる程度の血圧が重要であるという2021年版ガイドラインの結果を支持するものであった。もちろん、蘇生後とはいえ個別の治療が重要であるが、蘇生後の血行動態モニタリングと管理目標において、ガイドラインに加えられるであろう重要なエビデンスである。

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ハイリスク患者のPCI後のフォローアップ、定期心機能検査vs.標準ケア/NEJM

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた高リスク患者において、PCI後1年時点で定期心機能検査を行うフォローアップ戦略は、標準ケアのみの場合と比較して、2年時点の臨床アウトカム改善に結び付かなかったことが、韓国・ソウルアサン病院のDuk-Woo Park氏らが1,706例を対象に行った無作為化試験の結果、示された。冠血行再建後のフォローアップ方法を特定するための無作為化試験のデータは限定的であり、今回検討したフォローアップ戦略については、明らかになっていなかった。NEJM誌2022年9月8日号掲載の報告。1,706例を対象に無作為化試験 研究グループは、PCIが成功した19歳以上で、虚血性または血栓性イベントのリスク増大と関連する、高リスクの冠動脈の解剖学的特性または臨床特性を1つ以上有する患者を適格とし試験を行った。 被験者を無作為に2群に割り付け、一方にはPCI後1年時に心機能検査(負荷核医学検査、運動負荷ECG、負荷心エコー)を行い、もう一方には標準ケアのみを行った。 主要アウトカムは、2年時点の全死因死亡、心筋梗塞または不安定狭心症による入院の複合であった。主な副次アウトカムには、侵襲的冠動脈造影および再血行再建術が含まれた。 2017年11月15日~2019年9月11日に、韓国11地点で合計2,153例が適格評価を受け1,706例が無作為化を受けた(定期心機能検査群849例、標準ケア群857例)。2年時点の主要複合アウトカム発生に有意差なし 両群のベースライン患者特性は均衡がとれ類似していた。被験者の平均年齢(±SD)は64.7±10.3歳、男性が79.5%を占め、21.0%が左主幹部病変を、43.5%が分岐部病変を、69.8%が多枝病変を、70.1%が病変長が長いびまん性病変(病変長30mm超またはステント長32mm超となる病変)を有し、38.7%が糖尿病を併存し、96.4%が薬剤溶出ステント治療を受けていた。 2年時点で、主要アウトカムの発生は、定期心機能検査群46/849例(Kaplan-Meier推定値5.5%)、標準ケア群51/857例(同6.0%)であった(ハザード比[HR]:0.90、95%信頼区間[CI]:0.61~1.35、p=0.62)。主要アウトカムを項目別にみても両群間で差は認められなかった。 2年時点で、侵襲的冠動脈造影を受けていた被験者の割合は定期心機能検査群12.3%、標準ケア群9.3%(群間差:2.99ポイント、95%CI:-0.01~5.99)、また再血行再建術を受けていた被験者の割合はそれぞれ8.1%、5.8%だった(2.23ポイント、-0.22~4.68)。

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睡眠の質と片頭痛との関係

 睡眠状態と片頭痛は密接に関連しているといわれている。しかし、睡眠の質と片頭痛発症リスクとの関連をシステマティックに評価した研究はほとんどなく、性差や年齢差についてもよくわかっていない。中国・北京中医薬大学のShaojie Duan氏らは、睡眠の質と片頭痛発症リスクとの関連およびその性差や年齢差について調査を行った。また、睡眠の質と片頭痛患者の苦痛、重症度、身体障害、頭痛への影響、QOL、不安、抑うつ症状との関連も併せて調査した。その結果、睡眠の質の低下は、片頭痛発症リスクや片頭痛関連の苦痛と有意かつ独立して関連していることが明らかとなった。著者らは、睡眠の質の評価をより充実させることで、片頭痛患者の早期予防や治療に役立つであろうとまとめている。Frontiers in Neurology誌2022年8月26日号の報告。 対象は、片頭痛患者134例および年齢・性別がマッチした健康対照者70例。睡眠の質の評価には、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いた。睡眠の質と片頭痛発症リスク、頭痛関連の苦痛との関連を評価するため、ロジスティック回帰分析および線形回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・片頭痛患者における睡眠の質の低下は、健康対照者と比較し有意に多くみられた(p<0.001)。・さまざまな交絡因子で調整した後でも、睡眠の質が低下している場合の片頭痛リスクは、睡眠の質が良好な場合の3.981倍であった。・サブグループ解析では、睡眠の質と片頭痛リスクの間に対し相加的に有意な影響を及ぼす因子として、性別、年齢、教育レベルが特定された(p for interaction<0.05)。また、女性、35歳以上の集団、教育レベルが低い場合において、より強い相関が認められた。・多変量線形回帰分析では、睡眠の質の低下が、片頭痛患者の苦痛、重症度、頭痛への影響、QOL、不安、抑うつ症状に有意かつ独立して関連していることが示唆された(p for trend<0.05)。

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成年後見制度の診断書を依頼されたら【コロナ時代の認知症診療】第19回

重度の認知症なのに、見逃されてしまいがちなケース認知症者をよくお世話している介護者にとって一番腹立つ台詞だとよく聞くものがある。「認知症だと聞いていたが、話してみたらおかしくない。これなら普通ではないか? どこがおかしいの?」といった発言である。認知症を専門としていない医師や、公証人ですらこのようなことをおっしゃることがある。そんな発言の理由は簡単である。認知症、とくにアルツハイマー型認知症の人では、まず見た目に愛想がよい。会話のうえではもっともらしくその場に合わせた態度をとる。また何か不都合な点が出ても上手に取り繕うことができる。さらに同伴の方などがいれば振り返って「そうでしょう、ねえあなた」という感じで振舞うこともできる。どれも教科書レベルで、アルツハイマー病型認知症者の対応上の特徴と記載されている。ところが多くの人は、認知症になると、暴言・暴力、徘徊・行方不明、便こねなどいわゆるBPSDが現れるものと思っている。だから穏やかな常識的対応に接すれば拍子抜けする。こうしたところから実際には重度の認知症なのに、認知症を知らない人からは、上のように言われてしまっても不思議ではない。成年後見制度の3つのランクとは?さて認知症を専門としていない医師でも、成年後見制度の診断書に記載を求められることが増えてきた。さらに鑑定書の作成が求められるケースもある。そこで前回は任意後見について紹介したが、今回は法定後見への対応の基本を述べてみたい。まず法定後見制度の利用は、認知症として事例性が明らかになってから出てくるのが普通である。たとえば、不必要で高額なものを契約した、通帳を繰り返しなくす、ATMが使えなくなった、明らかに財産管理ができなくなったなどである。前回も述べたように、こうした実態から経済的に判断能力がないため、財産管理や福祉サービスの契約が1人ではできないと考えられる人を裁判所が守ってくれるのが成年後見制度である。これには、補助、保佐、後見と3つのランクがある。まず難しいのは、こうしたランクは、MMSEや改訂長谷川式の点数から決められるのではないことである。つまり認知症の程度と経済的な判断力や意思能力が相関するわけではない。ではどのような区切りでもって3つを分けたらいいのだろうか。これに対する最高裁判所の公式文章1)では、補助支援を受けなければ、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することが難しい場合がある保佐支援を受けなければ、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することができない後見支援を受けても契約等の意味・内容をみずから理解し判断することができないとある。もっともこれでは具体的に見えてこない。よくよく探したら神戸家庭裁判所による具体的な記述2)があった。補助重要な財産行為(不動産・自動車の売り買いや自宅の増改築、金銭の貸し借り等)について、自分でできるかもしれないが、できるかどうか危惧がある保佐日常の買い物程度は単独でできるが、重要な財産行為(不動産・自動車の売り買いや自宅の増改築、金銭の貸し借り等)は自分ではできない後見日常的に必要な買い物も自分ではできず、誰かに代わってやってもらう必要があるとされる。主治医意見書作成のポイントさて診断書作成、ランク(3類型)決定で用いることができる診療録など手持ちの内部的資料と介護保険認定調査の結果など外部資料がある。今回は前者について説明する。手持ち資料の代表は、診療録である。また主治医意見書に加えてMMSEや改定長谷川式の成績、そして画像・血液検査データなどがある。診療録からは、ざっくりと3類型のどのレベルかの印象はつかめるかもしれない。とくに経済行為や契約に関わる出来事、たとえば不要な高額商品の契約や銀行でのトラブルなどにふれた記載には注意すべきだ。一方で、主治医意見書は大切である。とくに3.心身の状態に関する意見(1)日常生活の自立度等について、(2)認知症の中核症状、(3)認知症の行動・心理症状(BPSD)、これらがポイントとなる。MMSEや改訂長谷川式は簡易スクリーニング検査であって認知症の診断や重症度の評価をするものではない。しかしざっくりと重症度を知るのには有用である。それだけに1年に1度はこれらをやっておくと評価の定量的・縦断的な資料になり得る。なお画像検査などのデータは認知症の診断には役立っても3類型決定にはあまり有用でないだろう。本テーマに関連して、認知症の重症度をざっくりと判定するための、ある程度の信頼性を有する根拠について言及しておく。DSM5によれば、軽度 手段的日常生活動作の困難(例:家事、金銭管理)中等度基本的な日常生活動作の困難(例:食事、更衣)重度 完全依存とある。簡単であるだけにかえって評価が難しいと感じられるかもしれないが、質問したり観察したりすることは容易だろう。参考1)裁判所「成年後見制度における鑑定書・診断書作成の手引」2)神戸家庭裁判所「診断書(成年後見用)の作成を依頼された医師の方へ」

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シーリングファン頭部外傷の臨床的検討【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第218回

シーリングファン頭部外傷の臨床的検討pixabayより使用シーリングファンってご存じでしょうか。シャレオツな店などにある、天井に取り付ける扇風機のことです。空気を撹拌することで室内の温度を一定にすることができ、吹き抜けの天井が高い部屋で有効とされています。ゆっくり回っているところが多いと思いますが、海外だと結構ビュンビュン回っていることもあり、これが頭部外傷のリスクになる懸念があります。Alias A, et al.Head injury from fan blades among children.Asian J Surg . 2005 Jul;28(3):168-70.2000年1月~2002年12月に、マレーシアでファンブレードによる頭部外傷を負った小児14例を後ろ向きに登録したものです。平均年齢は7.9歳でした。ブレードによる頭部外傷の原因は、表1のようになります。表1.14例の外傷の原因(文献より引用)二段ベッド絡みの外傷が多いようです。確かに、マレーシアの裕福な邸宅には天井にファンが取り付けられており、二段ベッドと距離が近いと頭をけがしてしまう可能性がありますね。子供を持ち上げたらそこにシーリングファンがあった、というのは親としては避けたいところですね。ブレードが鋭いと、とんでもない外傷になる可能性があります。外傷の程度は表2のような結果となりました。結構骨折が多いですね。表2.14例の外傷の内訳(文献より引用)このうち、頭蓋内出血を合併した1例が死亡に至っています。最近も、マレーシアで重症の穿通性頭部外傷を起こした症例が報告されています1)。オーストラリアではシーリングファンの使用に関して指針があり、二段ベッドや家具はシーリングファンから2m以上離す必要があるとされています2)。マレーシアではこれが徹底されていないという批判もあります。日本でも、シーリングファンをつけている富裕層のお宅ではご注意を!1)Ong Y, et al. A Case of a Penetrating Traumatic Head Injury Due to a Ceiling Fan. Cureus. 2022 Jun 26;14(6):e26350.2)Australian Competition and Consumer Commission: ceiling fan injury hazard

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第126回 これは屁理屈なんじゃ…国産コロナ薬への補足説明を見てビックリ!

先日の本連載(第125回)で取り上げた日本感染症学会と日本化学療法学会による新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の治療薬候補エンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)の緊急承認を求めた合同提言。SNS上などでは非難囂々だったが、これに対し学会側が9月8日、補足説明なる文書を改めて発表した。この文書を読んでみたが、正直な感想を言えば「は?これが補足説明?」と思ってしまった。今回はこの内容について私見ながら批判的吟味を加えてみたい。補足説明は6項目に分かれている。1.本提言の公表までのプロセス2.この時期に提言を出した理由について3.抗ウイルス薬が十分に使われていない現状に関して4.ウイルス量を早期に減らすことの意義に関して5.今回ゾコーバに関して緊急承認の適応を求めたことに関して6.今回の提言と4学会声明の違いについてこの中で個人的に気になったのは、1、2、4、5番目の内容である。まず1番目。これによると、提言のきっかけは、2022年7月20日に行われた薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会・薬事分科会の合同審議の後に「“多くの患者さんが連日亡くなられており医療逼迫・医療崩壊が起こっている状況にもかかわらず、審議会ではその状況を踏まえた検討がなされていないのではないか。また、当日の議論が抗ウイルス薬としての評価ではなく、ほかの内容がほとんどを占めているのは問題ではないのか”とのご意見が寄せられ、“感染症学会・化学療法学会として提言を出すべきではないか”とのご意見がありました」という状況を踏まえてのことだったという。この“意見”なるものの認識がずれているように思う。そもそも今回のエンシトレルビルに関しては、合同審議に先立って開催された薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会単独の審議で、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査結果の説明とそれを基にした議論で抗ウイルス効果については検討済みである。しかも、そのうえで緊急承認制度が必須とする薬事分科会も含めた合同会議で再度検討が行われており、抗ウイルス効果について科学的議論がおろそかにされた形跡はない。補足説明ではこの“意見”を基に「日本感染症学会・日本化学療法学会で今後の方向性について話し合って頂く方を両学会から選出した後、ウェブ会議を8月中に2回行うとともにメールでの意見交換を行いました。意見をふまえて作成した提言案を、さらに両学会の役員(理事・監事)全員にお示ししてご意見を伺いました。頂いたご意見はさまざまでしたが、提言を出すことに対して反対意見はありませんでした。役員の先生方のご指摘をなるべく反映させる形で修正を行い、8月下旬に最終案をまとめました」とある。審議経過に不審な点はないと強調したいのだろう。だが、気になるのは「今後の方向性について話し合って頂く方を両学会から選出」と言う点である。この際の選出基準はどのようなものであったのか、また、中核になって議論したメンバーが誰かも不明である。たとえば、日本感染症学会では過去にもさまざまな提言を発表しているが、その際は検討した委員会名や委員名、その利益相反が開示されていることが多い。少なくとも過去と比べ、今回の提言はこの点で透明性が確保されているとは言いがたい。次に2番目。要約すると、すでにオーストラリアや東アジアでインフルエンザが流行しており、それを踏まえると、今秋以降に日本で同様のことが起こりえること、そこに新型コロナの流行も重なれば、医療逼迫が深刻化する恐れについて言及している。これを踏まえて▽新型コロナウイルス感染症の早期診断、早期治療の必要性▽ニルマトレルビル/リトナビルやモルヌピラビルの高齢者や基礎疾患保有者への投与▽後遺症で苦しむ可能性がある重症化リスクのない患者へのエンシトレルビルの投与を可能にする、ことで医療逼迫を回避すべきと指摘している。ここで突如、エンシトレルビルの話が出てくる。重症化しにくい若年者でも新型コロナの後遺症リスクがあるのは確かだが、ここで後遺症いわゆるLong COVIDに言及したことで、私は7月20日の審議のある光景が浮かんでしまう。それはまさにこの審議に参考人として出席した日本感染症学会理事長の四柳 宏氏が、あるデータを基に意見陳述した光景である。あるデータとは塩野義製薬がエンシトレルビルについて行った第II/III相試験の第IIb相パートのサブ解析結果の1つで、合同審議の際に追加的に提出されたもの。それによると、エンシトレルビルあるいはプラセボ投与開始から3週間後の新型コロナ関連12症状の有無では、プラセボ群に比べ、エンシトレルビル群では有症状者の割合が有意に低率だったというものだ。確かにデータ上はその通りだ。しかし、そもそもエンシトレルビルの緊急承認が保留になった最大の要因は、過去の本連載(第118回)でも触れたようにエンシトレルビル群ではプラセボ群に比べ、ウイルス力価とウイルスRNA量の低下が有意に認められながら、新型コロナ関連12症状の改善では有意差がなかったことに起因している。そして塩野義製薬や参考人だった感染症専門医は、この12症状のうちオミクロン株感染時に特徴的な呼吸器症状などの4症状では改善効果があったとし、オミクロン株感染者の薬効評価では12症状改善を指標にすることの妥当性にもやんわり疑問を呈している。にもかかわらず、Long COVIDになると、エンシトレルビル群で12症状改善の面で有意差を認めた、と言われても「都合の良いサブ解析結果を総動員させているだけでは?」と疑われて仕方がないのではないだろうか。補足説明の4番目では、まず「抗ウイルス薬に期待する薬効は臨床症状の改善であり」とある。これはその通りで、エンシトレルビルではまさにこの点に?が付いたのである。しかし、その後段では「エンシトレルビルの治験では、ウイルス株の変異に伴い、ラゲブリオやパキロビッドの治験のような入院や死亡率の減少を証明できなかったものの、ウイルス量の減少が有意差をもって確認されています。また発熱や呼吸器症状の改善を認めました。こうした結果より、エンシトレルビル投与によるウイルス量の早期の減少は、臨床症状の改善につながると考えられ、その結果は今後の臨床試験で明らかにされることが期待されます」と最初の提言と変わらぬ主張を繰り返している。この点に関して私が言いたいことは、ほぼ前回と変わらない。サブ解析結果はあくまで参考値に過ぎない。そもそも企業治験では、新薬候補の効果が最大限発揮できるように主要評価項目や試験デザインを設定する。もし、サブ解析で新たな知見が示されたならば、あくまでその結果を正しく証明できる試験デザインで再度検証することが求められる。前回も記述したように、サブ解析結果で示されたことが再度の臨床試験で否定されることは決して珍しくない現象だからだ。この現実を日本感染症学会と日本化学療法学会の理事の皆さんは軽視するつもりなのだろうか?かなり酷なことを言うかもしれないが、このエンシトレルビルの結果の速報値が発表されたのは2月である。もし塩野義製薬が科学的な知見を重視して、なお緊急承認を求めるならば、同社が主張するオミクロン株に特徴的な4症状の改善を主要評価項目に設定した小規模のパイロット的な試験などを実施すべきである(治験実施が容易ではないのは百も承知だが、小規模のパイロット試験なら不可能とは言えない)。もっと言えば、今回の緊急承認制度は「探索的な臨床試験(後期第II相試験)で有効性が認められれば承認可能」としているが、少なくともこの文言は探索的な臨床試験の主要評価項目は達成されたうえでと解釈するのが自然である。それができずに製薬企業や学会がゴリ押しするのは、せっかく新設された緊急承認制度に対する冒とくとさえ個人的には思える。そして5番目を読むと、ため息が出てしまう…。そこには以下のような記述がある。「現時点で60歳以下のリスクのない方に対する抗ウイルス薬はありませんから、この群に対する効果が期待され、その結果感染・健康被害の拡大が防止できる薬であれば緊急承認の適応ということになります。今回2学会が提言を出したのは“60歳以下のリスクのない方”に対する効果が期待され、その結果“感染・健康被害の拡大が防止できる薬であるかどうか”の確認が充分行われたように思えなかったことがきっかけです」要は前述の7月20日の審議の際に一部の委員から同一作用機序のニルマトレルビル/リトナビルがあるなかで、エンシトレルビルの承認に緊急性があるとは必ずしも思えないと言われたことへの反論らしい。しかし、あくまで私見に過ぎないかもしれないが、ここまでくると「屁理屈」とさえ映ってしまう。そして7月20日の審議では60歳以下のリスクのない人での投与に関して、薬事分科会の委員で日本医師会常任理事の神村 裕子氏が発言したことを日本感染症学会と日本化学療法学会の役員の皆さまはお忘れなのだろうか? 念のために再掲したい。「私は女性の医師ですので、女性の患者さんがたくさんいます。この中でたとえば妊娠の可能性のある患者さんに禁忌という場合、妊娠しているかどうかわからないとなると、とても怖くて使えない。また、錠剤が大きくて飲み難いことはありますが、すでに同じような作用機序のニルマトレルビル/リトナビルがあるなかで、なぜそちらではダメなのかと考えている。当然ながら私が臨床の外来で、この程度の呼吸器症状の有効性の差が出たと言われても、『とても使いたくはないな』と、申し訳ないですけれども率直にそう感じました」塩野義製薬や参考人が主張するオミクロン株特有の有効性を踏まえたうえでも、その差は小さく、なおかつエンシトレルビルが持つ催奇形性のリスクを考慮すれば臨床では有益性があるとは思われないという発言である。正直、補足説明が出たというので、もう少しマシな主張をするのではないかと期待したが「我田引水、ここに極まれり」と言わざるを得ない。

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緊急インタビュー:非小細胞肺がんの術後補助療法のパラダイムはシフトするか(2)【肺がんインタビュー】 第85回

第85回 緊急インタビュー:非小細胞肺がんの術後補助療法のパラダイムはシフトするか(2)早期非小細胞肺がんの術後補助療法の選択肢にPD-L1阻害薬であるアテゾリズマブとEGFR-TKIであるオシメルチニブが加わった。この2つのバイオマーカーに対する治療薬は非小細胞肺がんの術後補助療法にパラダイムシフトを起こすか。

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緊急インタビュー:非小細胞肺がんの術後補助療法のパラダイムはシフトするか(3)【肺がんインタビュー】 第85回

第85回 緊急インタビュー:非小細胞肺がんの術後補助療法のパラダイムはシフトするか(3)早期非小細胞肺がんの術後補助療法の選択肢にPD-L1阻害薬であるアテゾリズマブとEGFR-TKIであるオシメルチニブが加わった。この2つのバイオマーカーに対する治療薬は非小細胞肺がんの術後補助療法にパラダイムシフトを起こすか。

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ドラマ「ドラゴン桜」(中編)【実は幻だったの!? じゃあ何が問題?(教育格差)】Part 1

今回のキーワード教育格差収入格差行動遺伝学ゼロサムゲーム教育効果「遺伝格差」前編では、ドラマ「ドラゴン桜」を通して、学歴ブランド化の問題点を明らかにして、教育のビジネス化という不都合な真実に迫りました。今回は、引き続きこのドラマを通して、昨今問題視されている教育格差が、実は問題にならないという衝撃の根拠をご説明します。そして、問題になる別のある「格差」を解き明かします。教育格差が問題にならない根拠とは?第1シリーズに登場する矢島は、父親が抱えた借金のせいで、高校を中退して、日雇いの建設作業員になろうとしていました。しかし、桜木先生に借金を肩代わりしてもらうことで、一念発起して東大特進クラスに入り、最後は東大に合格するのです。当初の矢島のように、生まれ育った環境によって、受けることのできる教育に格差があることは、教育格差と呼ばれています。この一番の問題は、「教育格差という機会の不平等よってその後に収入格差が生まれてしまう」こととされています。簡単に言えば、親にお金がある人がより良い教育を受け、より良い学歴を手に入れ、より良い収入を得ているというロジックです。しかし、果たしてそうでしょうか?実は、この主張には、3つの見落しがあります。ここから、その3つの見落としを通して、実は教育格差によって収入格差が生まれる訳ではないことを明らかにします。(1)収入への遺伝の影響度の大きさ1つ目の見落としは、収入への遺伝の影響度の大きさです。教育格差を問題視する学者のなかには、遺伝について触れる人もいます。しかし、それはもっぱら知能に限ったもので、収入への直接的な影響や、その影響度の経時的な変化にまで踏み込んでいません。そのために、遺伝の影響は限定的であるとされてしまい、教育格差はやはり問題であると結論づけています。ここで、行動遺伝学の研究の結果をご紹介します。なお、行動遺伝学の詳細については、この記事の3ページ目に【参照】として詳しく解説しました。男性の収入への遺伝、家庭環境、家庭外環境のそれぞれの影響度の経時的な変化をグラフ化すると、グラフ1のようになります2)。このグラフから、20歳を境に、年齢が上がっていくにつれて遺伝と家庭外環境の影響がどんどん増えていく一方、家庭環境の影響がどんどん減っていき、ほとんどなくなっていることがわかります。つまり、親が教育にかけるお金や親のコネの程度(家庭環境)の違いによって生まれる収入格差は、最初はあるのですが、最後はなくなっていくということです。そして、結局、本人の実力(遺伝)といろいろな人との出会い(家庭外環境)による相互作用が大きくなっていくということです。ちょうど矢島が分かりやすい例です。彼は東大に合格しましたが、結局、入学しませんでした。しかし、第2シリーズでは、独学で司法試験に合格して、弁護士になっているのです。そして、桜木先生の窮地を救う立て役者の1人として活躍するのです。彼の収入への影響は、最終的に彼の実力(遺伝)が大きいことを描いています。もちろん、桜木先生をはじめとする人生でのいろいろな出会い(家庭外環境)も大きいでしょう。逆に、矢島に元々実力(遺伝的な資質)がなかったとしたら、いくら桜木先生の受験勉強のテクニックを教わっても、東大には合格していなかったでしょう。実際に、知能(認知能力)への遺伝、家庭環境、家庭外環境のそれぞれの影響度の経時的な変化をグラフ化すると、グラフ2のようになります3)。やはり、遺伝の影響は元々かなりあり、それがさらにどんどん大きくなっていくことが分かります。この点で、前編でご紹介した学歴による収入の割り増し(シープスキン効果)は、あくまで全体として見た場合の話であり、個人として見た場合は、家庭環境の違いによってのばらつきや経時的な変化が出てくることが推定できます。現実的には、大部分で順当に、知能の高い人が大学に進学して、知能の高くない人が高卒で就職していることが考えられます。そして、一部分で不当にも、知能の高い人が高卒で就職したとしてもその後に挽回し、その一方で知能の高くない人が何とか大学に進学したとしてもその後に伸び悩んでいることが考えられます。なお、グラフ1のような逆転現象は、欧米と比べてとくに日本で際立って見られることが分かっています。その訳は、欧米では、家庭環境の影響が元々小さいからです。このことからも、日本では子どもの人生に学歴をはじめとする親の影響力が、大人になるまでかなりあることが伺えます。また、女性の収入についての結果は、遺伝の影響がほぼ0のままであることがわかっています。この結果の違いの原因は、男性と比べて女性の就労状況は正社員が少なく、パートや無職が多いからであるといわれています。もしも女性が男性と同じくらい就労していれば、男性と同じように遺伝の影響が出てくると考えられています。以上より、結局、遺伝の影響力が大きいため、生まれ育った環境によって受けることのできる教育に格差があったとしても、それだけで最終的な収入に格差が生まれる訳ではないと結論付けることができます。教育格差を問題視する関係者は、当初の矢島のような不遇な人が多いと思い込んでいます。しかし、もしそうだとしたら、先ほどのグラフで家庭環境の影響が残り続けるはずです。家庭環境の影響が最終的に残らないということは、教育格差はあったとしても最終的な結果には影響を与えておらず、問題にならないということです。次のページへ >>

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ドラマ「ドラゴン桜」(中編)【実は幻だったの!? じゃあ何が問題?(教育格差)】Part 2

(2)高収入の就職先の数の限度2つ目の見落としは、高収入の就職先の数の限度です。教育格差を問題視する学者は、教育格差が縮まれば、大卒者が増えるので、その分、高収入の人が増えると主張しています。確かに、前編でご紹介したシープスキン効果により、大卒であることによる収入の割り増しはあります。しかし、これは、大学進学率が50%強の現時点での話です。もしも少子化なのに大学を増やし続けて大学進学率が100%に近づいていったら、どうなるでしょうか?前編でも触れた学歴インフレが激化するだけです。大卒であるだけでなく、東大をはじめとする有名大卒かどうかが新たに価値付けされるようになります。なぜなら、東大の合格者の定員と同じように、高収入の就職先の数は最初から決まっているゼロサムゲームだからです。つまり、大学全入になってしまったら、大卒であるだけではシープスキン効果が働かなくなることが予測できます。これを象徴するのが、最近の「Fランク大学」「学歴フィルター」という言葉でしょう。以上より、教育(正確には学歴)の格差を是正しようとしたとしても、限られた就職先(階級)を取り合う仕組み自体は変わらないため、結局、収入の格差は変わらないと結論付けることができます。むしろ、受験生たちは、より偏差値の高い大学に入ろうと、「受験戦争」が激化します。これは、「学歴の軍拡競争」とも例えることができます。もはや教育は、それ自体が目的ではなくなり、ますます学歴を手に入れるための手段になってしまうでしょう。(3)教育効果の妥当性3つ目の見落としは、教育効果の妥当性です。教育格差を問題視する学者は、教育自体がそのまま職業的に役に立つと主張しています。確かに、専門職や研究職は当てはまるでしょう。しかし、これらは世の中の仕事のごく一部であり、その就職先の数に限りがあります。よくよく考えると、それ以外のほとんどの一般職は、実は中学校までの教育の効果で十分ではないでしょうか? 高校教育は、学力とは別に、社会性(社会適応能力)を高める場所として必要があるとしても、少なくとも大学教育の効果そのものが一般職にあえて必要な理由を証明することは逆に難しいのではないでしょうか?もちろん、それぞれの職場において個別に求められるスキルを学ぶ必要はあります。しかし、それは職場教育で十分です。語学力や論理的思考能力が必要ならば、働きながら語学学校やビジネススクールに通うこともできます。大学教育である必要がないのです。むしろ、大学教育で実践的なスキルを教えるほうが難しいです。以上より、教育(学歴)の格差を是正しようとしたとしても、その教育(大学教育)の効果がそもそも一般職に必要とされていないため、是正する意味がないと結論付けることができます。もっと言えば、多くの人がその教育を積極的に受けたいとも思っていないため、言い換えれば大卒という学歴を手に入れるためにしょうがなく学んでいるため、ますます意味がないことが分かります。もちろん、教育は単なる効果だけでなく、人生を豊かにするという教育哲学も別にあるでしょう。しかし、繰り返しになりますが、教育の中身そのものを考えれば、この情報化が進んだ現代社会において、それがあえて大学である必要がなくなっているということです。この点で、もはや教育格差(学歴差)が、そのまま教育における機会の不平等を生んでいるとも言えないでしょう。じゃあ何が収入格差を引き起こしているの?これまでをまとめると、収入への遺伝の影響度の大きさ、高収入の就職先の数の限度、教育効果の妥当性を直視することによって、教育格差が収入格差を引き起こすというロジックが成り立たないことが分かりました。つまり、実は教育格差は幻だったと言えます。それでは、何が収入格差を引き起こしているのでしょうか? 教育格差ではないとしたら、多くの人は、努力と運だと答えるでしょう。しかし、行動遺伝学の視点に立てば、それだけでは不十分です。収入に影響を与えているのは、努力や運だけでなく、元々の素質、つまり遺伝も挙げられます。これは、先ほどのグラフ1と2が証明しています。運は、いろいろな人との偶発的な出会い(家庭外環境)が当てはまります。努力については、努力を好むと言う点で、性格として捉えることができます。そして、この性格に影響を与えるのは、グラフ3のように、遺伝と家庭外環境です4)。なお、この詳細については、関連記事1をご覧ください。以上より、収入格差を引き起こしている本質として目を背けてはならないのは、遺伝の違い、つまり「遺伝格差」であるということです。なお、この遺伝をはじめとする行動遺伝学の詳細に興味のある方は、次の3ページ目をご覧ください。2)日本人の9割が知らない遺伝の真実」P106-P107:安藤寿康、SB新書、20163)「遺伝マインド」P58-59:安藤寿康、有斐閣、20114)「『心は遺伝する』とどうして言えるのか」P182:安藤寿康、創元社、2017<< 前のページへ | 次のページへ >>■関連記事ちびまる子ちゃん(続編)【その教室は社会の縮図? エリート教育の危うさとは?(社会適応能力)】Part 2ドラマ「ドラゴン桜」(前編)【なんでそんなに東大に入りたいの? 学歴ブランド化の不都合な真実とは?(教育ビジネス)】

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ドラマ「ドラゴン桜」(中編)【実は幻だったの!? じゃあ何が問題?(教育格差)】Part 3

【参照】行動遺伝学とは?(1)原理一卵性双生児(遺伝子一致率100%)と二卵性双生児(遺伝子一致率50%)の行動(心理的・行動的形質)が、それぞれにどのくらい一致するかを比較する双生児法を主に用います。簡単に言うと、一卵性双生児の行動の一致率が100%にならない場合、その差し引かれた分(それだけ似させまいとする要素)が家庭外環境(非共有環境)の影響となります。また、一卵性双生児の行動の一致率に二卵性双生児の一致率が50%を超えて迫ってきている場合、その迫ってきている分(それだけ似させようとする要素)が家庭環境(共有環境)の影響となります。ここから、ある行動における遺伝、家庭環境、家庭外環境のそれぞれの影響度を算出することができます。たとえば、日本語と英語を両方話すという行動(語学力)について、日本語と英語が同じように飛び交っている家庭では、一卵性双生児も二卵性双生児も同じように日本語も英語も話す可能性は高まります(一卵性に二卵性の一致率が迫ってくる)。そのため、語学力は、家庭環境の影響があると言えます。実際に、語学力における双生児の一致率は、一卵性で75%、二卵性で50%であることが分かっています(単純にするために端数を調整)。遺伝子の影響だけで考えれば、一卵性が75%なら、二卵性はその半分の37.5%であるはずです。つまり、37.5%から50%にまで増えて75%に迫ってきている分、それだけ似させようとする要素、つまり家庭環境の影響があると考えられる訳です。(2)影響度の算出方法ここで、語学力における遺伝、家庭環境、家庭外環境のそれぞれの影響度を、実際に算出します。まず、家庭外環境は、一卵性双生児の行動を似させまいとする要素であるため、その影響度は一致しないように差し引かれた分、つまり100%から75%を引いた25%になります。単純な引き算です。一方、遺伝と家庭環境の影響度については、次のような連立方程式で求められます。遺伝の影響度をX、家庭環境をYとすると、これらが行動を似させようとする要素であるため、一卵性双生児の一致率の式は、X+Y=75・・・〔1〕二卵性双生児の遺伝の影響度は、遺伝子一致率が50%であることから0.5X。家庭環境は同じくY。すると、二卵性双生児の一致率の式は、0.5X+Y=50・・・〔2〕〔1〕〔2〕から、X=50、Y=25が導き出されます。つまり、語学力は、遺伝、家庭環境、家庭外環境の影響度がそれぞれ50%:25%:25%であると算出することができます。(3)注意点なお、この家庭(親)が子どもを通わせるインターナショナルスクールは、家庭外環境と考えて良いでしょうか? よくよく考えると違います。なぜなら、親の経済力や教育方針が反映されている点で、家庭環境の影響もあります。家庭環境とは、必然的に一緒にいる親(共有環境)からの影響があるという意味です。一方で、家庭外環境とは、偶然的に出会う親以外(非共有環境)からの影響があるという意味です。物理的な家庭の内か外かという意味ではありません。つまり、行動遺伝学において、家庭環境と家庭外環境がそれぞれ影響している割合は算出できるのですが、その中身が具体的に何かについては個別の解釈が必要になります。<< 前のページへ

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摂食障害患者における境界性パーソナリティ障害症状

 オーストラリア・St Vincent's HospitalのPrudence Vivarini氏らは、摂食障害(ED)外来患者における境界性パーソナリティ障害(BPD)症状の有症率を調査し、BPD症状とその重症度、苦痛、機能との関連を評価した。その結果、ED外来患者はBPD症状の有症率が高いことが示唆され、著者らはED患者に対するBPDスクリーニングの必要性を報告した。Personality and Mental Health誌オンライン版2022年8月29日号の報告。 対象は、ED外来患者119例。境界性パーソナリティ障害のMcLeanスクリーニング尺度(MSI-BPD)を用い(カットオフ値:7)、BPD症状が高い群(高BPD群)と低い群(低BPD群)に分類した。ED診断、ED発症年齢、評価時の年齢、罹病期間、BMI、ED症状、心理的苦痛、心理社会的機能について両群間で比較した。BPD症状とこれら変数との関係を評価するため、相関分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・MSI-BPDスコアが7以上の患者は54例(45.4%)であり、BPDと診断された(高BPD群)。・高BPD群と低BPD群(65例)との間に、ED発症年齢、評価時の年齢、罹病期間、BMI、ED診断率の差は認められなかった。・高BPD群は、ED症状、心理的苦痛が有意に大きく、心理社会的機能の有意な低下が認められた。・MSI-BPDスコアとこれら変数との間に正の相関が認められた。

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HER2低発現のHR+転移乳がんに対するSGの有効性(TROPiCS-02)/ESMO2022

 複数の治療歴があるHR+/HER2-転移乳がん患者に対する抗体薬物複合体sacituzumab govitecan(SG)の有用性を評価する第III相TROPiCS-02試験で、SGが医師選択治療(TPC)より無増悪生存期間(PFS)を改善したことがASCO2022で報告されている。今回、本試験の事後解析として、HER2低発現(IHC1+、またはIHC2+かつISH陰性)患者とHER2 IHC0患者に分けて評価した結果について、ドイツ・Heidelberg UniversityのFrederik Marme氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。・対象:転移または局所再発した切除不能のHR+/HER2-乳がんで、転移後に内分泌療法またはタキサンまたはCDK4/6阻害薬による治療歴が1ライン以上、化学療法による治療歴が2~4ラインの成人患者・試験群:SG(1、8日目に10mg/kg、21日ごと)を病勢進行または許容できない毒性が認められるまで静注・対照群:TPC(カペシタビン、エリブリン、ビノレルビン、ゲムシタビンから選択)・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央評価委員会によるPFS[副次評価項目]全生存期間、客観的奏効率(ORR)、奏効持続期間、クリニカルベネフィット率、患者報告アウトカム、安全性 今回の解析において、ITT集団(543例)におけるHER2発現状況をIHCおよびISHで後ろ向きに評価したところ、HER2 IHC0患者が217例(SG群101例、TPC群116例)とHER2低発現患者が283例(SG群149例、TPC群134例)であった。なお、HER2陽性と判明した患者(SG群22例、TPC群21例)は本解析から除外した。 主な結果は以下のとおり。・HER2 IHC0患者とHER2低発現患者におけるベースライン特性はITT集団と類似していた。・PFS中央値は、HER2低発現患者ではSG群6.4ヵ月、TPS群4.2ヵ月(HR:0.58、95%CI:0.42~0.79、p<0.001)、HER2 IHC0患者ではSG群5.0ヵ月、TPC群3.4ヵ月(HR:0.72、95%CI:0.51~1.00、p=0.05)だった。・ORRは、HER2低発現患者ではSG群26%、TPS群12%(オッズ比:2.52、95%CI:1.33~4.78)、HER2 IHC0患者ではSG群16%、TPC群15%(オッズ比:1.10、95%CI:0.52~2.30)だった。・HER2低発現患者、HER2 IHC0患者におけるSGの安全性プロファイルは、試験全体や他の試験と同様で、管理可能だった。 Marme氏は、「ITT集団と同様、HER2低発現およびHER2 IHC0のHR+/HER2-転移乳がんにおいて、SGはTPCに比べてアウトカムを改善した。IHCスコアにかかわらず、SGはHR+/HER2-転移乳がんに対する有効な治療選択肢と考えるべき」と結論した。

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5~11歳への3回目接種を追加、新型コロナ予防接種の手引き9版/厚労省

 厚生労働省は、9月6日に全国の市町村に「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き(9版)」を発出するとともに、同省のホームページでも公開した。本手引きは2020年12月17日の初版以来、十数回の更新を行い、その時どきの臨床知見、行政施策を反映した内容に改訂されている。今回の主な改訂点【第4章 3(13)(接種を受ける努力義務等の取扱い)】 接種を受ける努力義務などの取扱いについて更新(本文抜粋) 新型コロナウイルス感染症に係る予防接種については、予防接種法附則第7条第2項の規定により同法第6条第1項の臨時接種とみなして実施するものであり、市町村長は対象者に対して接種勧奨をすることとされていること。 また、対象者については原則として接種を受ける努力義務の規定が適用されるが、第2期追加接種(4回目接種)に関しては60歳未満の者について、努力義務の規定の適用が除外されていること。【第5章 1(3)対象者、(4)、接種間隔、(5)ワクチンの種類】5歳以上11歳以下の者への3回目接種について追記(本文抜粋)(3)対象者ア 第1期追加接種(3回目接種) 第1期追加接種(3回目接種)については、初回接種(1、2回目接種)の完了から一定期間経過した者を対象に、1回行うこととする。現時点で3回目接種において使用するワクチンとしているものは、ファイザー社ワクチン(5~11歳用のものを含む)、モデルナ社ワクチンおよび武田社ワクチン(商品名:ノババックス)であり、各ワクチンの対象年齢は、5~11歳用ファイザー社ワクチンについては5~11歳、12歳以上用ファイザー社ワクチンについては12歳以上、モデルナ社ワクチンおよび武田社ワクチン(ノババックス)については18歳以上となっていることに留意すること。(4)接種間隔 3回目接種は、1、2回目接種の完了から、ファイザー社ワクチン(5~11歳用のものを含む)またはモデルナ社ワクチンについては5ヵ月以上、武田社ワクチン(ノババックス)については6ヵ月以上の接種間隔をおいて行うこと。 また、4回目接種は、3回目接種の完了から5ヵ月以上の接種間隔をおいて行うこと。(5)ワクチンの種類 3回目接種に用いる新型コロナワクチンは、1、2回目接種で使用したワクチンの種類にかかわらず、現時点ではファイザー社、モデルナ社および武田社(ノババックス)のものである。なお、5~11歳用ファイザー社ワクチンについては5~11歳、12歳以上用ファイザー社ワクチンについては12歳以上、モデルナ社ワクチンおよび武田社ワクチン(ノババックス)については18歳以上の者に対する3回目接種に使用することに留意すること。【第5章 3(4)イ(ウ)(接種券の発行申請の方法)】 接種券発行申請書(4回目接種用)の様式(図参照)について更新【第7章 2(2)(5歳以上11歳以下の者への接種)】 5~11歳用ファイザー社ワクチンの3回目接種について追記(本文抜粋)ア 5~11歳用ファイザー社コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)(ア)対象者 市町村長は、5~11歳用ファイザー社コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)を用いて、接種を受ける日に当該市町村に居住する5歳以上11歳以下の者に対して新型コロナウイルス感染症にかかわる第1期追加接種(3回目接種)を実施する。 なお、戸籍および住民票に記載のない5歳以上11歳以下の者のうち、当該市町村に居住していることが明らかなものおよびこれに準ずるものについても対象者に含まれる。(イ)接種方法 1.3ミリリットルの生理食塩液で希釈した5~11歳用ファイザー社コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)を1回筋肉内に注射するものとし、接種量は、0.2ミリリットルとすること。(ウ)接種間隔 初回接種の完了から5ヵ月以上の接種間隔をおいて行うこと。 前後に他の予防接種(インフルエンザの予防接種を除く)を行う場合においては、原則として13日以上の間隔をおくこととし、他の予防接種(インフルエンザの予防接種を除く)を同時に同一の接種対象者に対して行わないこと。(エ)その他 対象者、接種方法および接種間隔以外の事項については、1(1)ア(イ)[予防接種要注意者]および(キ)[接種後の経過観察]ならびに1(2)ア(エ)[接種の用法]~(カ)[配送資材]の記載事項に従うこと。

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