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TTP診療ガイドライン2023改訂のポイント~Minds方式の診療ガイドラインを視野に

「血液凝固異常症等に関する研究班」TTPグループの専門家によるコンセンサスとして2017年に作成され、2020年に部分改訂された、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の診療ガイドライン、『血栓性血小板減少性紫斑病診療ガイド2023』が7月に公開された。2023年版では、Minds方式の診療ガイドラインを視野に、リツキシマブに対してclinical question(CQ)が設定され、エビデンスや推奨が掲載された。TTP診療ガイドライン、主な改訂ポイントは・リツキシマブの推奨内容の追加・変更とCQの掲載・カプラシズマブが後天性TTP治療の第一選択に・抗血小板薬、FFP輸注に関する記述を追加・FrenchスコアとPLASMICスコアに関する記述を追加・増悪因子に関する記述を追加リツキシマブを後天性TTPの急性期、寛解期にも推奨 難治例を中心に広く使用されているリツキシマブであるが、TTP診療ガイドライン2023年版では、後天性TTPの急性期に投与を考慮しても良い(保険適用外、推奨度2B)としている。ただし、とくに初回投与時のインフュージョンリアクションに注意が必要としている。また、難治例、早期再発例(推奨度1B)や寛解期(保険適用外)でのリツキシマブ使用についての記載も追加された。再発・難治例では、治療の効果と安全性が確認されており、国内で保険適用もあることから推奨するとし、後天性TTPの寛解期では、ADAMTS13活性が10%未満に著減した場合、再発予防にリツキシマブの投与を検討しても良いとした。TTP診療ガイドライン、リツキシマブの使用に関する記載が大幅追加 上述のとおり、TTP診療ガイドライン2023年版ではリツキシマブの使用に関する記載が大幅に追加されたが、さらに巻末には、リツキシマブの急性期、難治例・早期再発例、寛解期における使用に関するCQも掲載されている。これらのCQに対するAnswerおよび解説を作成するに当たり、エビデンス収集のため、2022年1月7日時点で過去10年間にPubMedに登録されたTTPに関するリツキシマブの英語論文の精査が行われた。各CQに対する解説では、国際血栓止血学会TTPガイドライン2020などのガイドラインや臨床試験、システマティックレビュー、症例報告の有効性に関する報告を詳細に紹介したうえで、各CQに対し以下のAnswerを記載している。・後天性TTPの急性期に、リツキシマブ投与を考慮しても良い(推奨度2B)(保険適用外)・後天性TTPの再発・難治例にリツキシマブ投与を推奨する(推奨度1B)・後天性TTPの寛解期にADAMTS13活性が10%未満に著減した場合、再発予防にリツキシマブの投与を検討しても良い(推奨度2B)(保険適用外)カプラシズマブが後天性TTP治療の第一選択として記載 TTP診療ガイドライン2023年版では、カプラシズマブが2022年9月に日本でも販売承認されたことが報告された。本ガイドでは、カプラシズマブを推奨度1Aの後天性TTP急性期の治療としている。投与30日以降もADAMTS13活性が10%を超えない場合は、追加で28日間継続可能であること、ADAMTS13活性著減を確認する前に開始可能であるが、活性が10%以上でTTPが否定された場合は速やかに中止すべきであることが述べられている。TTP診療ガイドラインでの治療に関する改訂ポイント 急性期の治療として用いられる抗血小板薬(推奨度2B)については、血小板とvon Willebrand因子(VWF)を中心とした血小板血栓によってTTPが発症することからTTP治療に有効である可能性があるとしたが、急性期での使用により出血症状が認められたとの報告、チクロピジンやクロピドグレルの使用はTTP患者では避けられていること、アスピリンとカプラシズマブの併用は出血症状を助長する可能性があり避けるべきである等の内容がTTP診療ガイドライン2023年版では加えられた。先天性TTPの治療へのFFP輸注の使用(推奨度1B)の記載についても追加がなされた。国際血栓止血学会のTTPガイドラィンで推奨する用量(10~15mL/kg、1~3週ごと)は日本人には量が多く困難な場合があることや、長期的な臓器障害の予防に必要なFFPの量は現状では明らかではない等の内容が加えられた。TTP診療ガイドラインでの診断に関する改訂ポイント ADAMTS13検査やインヒビター検査は結果が得られるまで時間がかかり、TTP治療の早期開始の妨げになっている。そこで、TTP診療ガイドライン2023年版では、ADAMTS13活性著減の予想に用いられる、FrenchスコアとPLASMICスコアに関する記述が追加された。これら2つのスコアリングシステムについて、ADAMTS13活性著減を予測するが、血栓性微小血管症(TMA)が疑われる症例においてのみ用いられるべきことを明示した。増悪因子に関する記述をTTP診療ガイドラインに追加 TTP診療ガイドライン2023年版では、TTP発作を誘発する因子についての項目が加えられた。増悪因子として、出生直後の動脈管の開存、ウイルス/細菌感染症、妊娠およびアルコール多飲などが知られており、妊娠期にはFFP定期輸注を行うことが、妊娠管理に不可欠と考えられるとした。

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サプリメント摂取の最大目的は「健康増進」/アイスタット

 サプリメントは私たちの生活に欠かせないアイテムとなっている。ちょっとした栄養補給や健康の増進、体質改善などに摂取されているが、一般的なサプリメントの摂取について、摂取する目的やその理由、効果や安全面などで何か傾向はあるのであろうか。株式会社アイスタットは6月22日に「サプリメント」に関するアンケートを行った。 アンケート調査は、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の会員20~69歳の300人が対象。調査概要形式:Webアンケート形式調査期間:2023年6月22日回答者:セルフ型アンケートツールFreeasyに登録している300人(20~69歳)アンケート概要・サプリメントを毎日摂取している人は2割。今まで一度も摂取したことがない人は4割。・サプリメントを摂取しない理由の第1位は「お金」。・サプリメントを摂取するきっかけ・理由の第1位は「健康維持・促進のため」。・摂取したサプリメントの効能は「健康維持・促進」が最多、次に「特定の栄養素の補給」。・8割近くの人が症状の改善は「病医院」ではなく、「サプリメント」で。・サプリメントは「効果がある」と回答した人は3割。・サプリメントで健康被害にあったことがある人は約2割。・サプリメントで重視する点の第1位は「効き目・有効性」、第2位は「価格」。・負の生活習慣に該当していない人は、サプリメントを一度も摂取していない。毎日サプリメントを摂取する人は約2割 質問1で「健康食品のサプリメントを摂取しているか」(単回答)を聞いたところ、「今まで一度も摂取したことはない」が41.7%、「毎日」が23.0%、「以前は摂取、今は摂取していない」が21.3%の順で多かった。また、摂取経験の有無の分類では、「あり(58.3%)」が「なし(41.7%)」を上回り、6割近くの人に摂取経験がみられ、年代別では「毎日摂取している」を回答した人は「60代」で最も多かった。 質問2で摂取経験のない189人に「現在、健康食品のサプリメントを摂取しない理由」(複数回答)を聞いたところ、「お金がかかる」が42.9%、「特に理由はない」が38.1%、「効果が期待できない」が32.3%の順で回答が多かった。 質問3でサプリメントの摂取経験がある175人に「健康食品のサプリメントを摂取するきっかけ・理由」(複数回答)を聞いたところ、「健康維持・促進のため」が34.9%、「テレビ番組、CM、広告、新聞・雑誌をみて」が24.6%、「日ごろの栄養不足を補うため」が23.4%の順で多かった。明確な動機なく摂取される人も多い割合だった。 質問4でサプリメントの摂取経験がある175人に「摂取したことがある健康食品のサプリメント」(複数回答)を聞いたところ、「健康維持・促進」が51.4%、「特定の栄養素の補給」が32.6%、「疲労回復」が25.1%の順で多かった。また、1人当たりの摂取種類数を回答した個数から調べてみると「1種類」が44.6%、「2種類」が20.0%、「3種類」が19.4%と続いた。 質問5でサプリメントの摂取経験がある175人に「症状などを改善するために、病医院で診察を受けた経験があるか」(単回答)を聞いたところ、「診察を受けたことは一度もない」が78.9%、「ある」が21.1%の結果だった。回答者の8割近くが「病医院」ではなく、「サプリメント」で症状を改善していることが判明した。 質問6でサプリメントの摂取経験がある175人に「摂取したことがある健康食品のサプリメントの効果について」(単回答)として、最も印象に残るサプリメントの効果の有無について聞いたところ、「どちらでもない」が39.4%、「効果がある」が31.4%、「効果がない」が29.1%の順で多かった。 質問7でサプリメントの摂取経験がある175人に「サプリメントで健康被害にあったことがあるか」(複数回答)を聞いたところ、「なし」が78.3%で、8割近くの回答者が健康被害に遭っていなかった。一方、健康被害に遭った人で最も多かった症状は、「消化器症状(食欲不振や悪心など)」が8.6%、「神経症状(めまい、頭痛など)」が8.0%と多かった。 質問8で「サプリメントを摂取する・しないに関わらず、健康食品のサプリメントについて、重視する点」(複数回答)を聞いたところ、「効き目・有効性」が61.3%、「価格」が55.7%、「安全性」が48.3%、「成分」が23.7%の順で多かった。また、摂取状況別では、「毎日摂取している人」ほど「安全性」「効き目・有効性」「価格」「味の飲みやすさ」「認知度」の回答が多く、「毎日ではないが摂取の人」ほど「成分」「ネームバリューがあり、どこでも購入できる」の回答が多かった。 質問9で「生活習慣について」(複数回答)を聞いたところ、「ストレスがある」「適度な運動はしていない」「体調を崩しやすい」「肥満体型・ぽっちゃり体型である」「身体をゆっくりと休む時間(家でごろごろ)が週1回ない」「更年期障害に悩まされている」「持病がある」「規則正しい生活を送っていない」と回答した人は、サプリメントを「毎日摂取」している人が多かった。一方、マイナスイメージの生活習慣に該当しない人(上記に当てはまるものはない人)は、サプリメントを「一度も摂取したことがない」割合が最も多かった。

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双極性障害女性患者における抗精神病薬使用後の乳がんリスク

 統合失調症女性患者における抗精神病薬使用と乳がんリスクとの関連は、さまざまな疫学データより報告されている。しかし、双極性障害女性患者を対象とした研究は、これまであまり行われていなかった。香港大学のRachel Yui Ki Chu氏らは、双極性障害女性患者における抗精神病薬使用と乳がんリスクとの関連を調査し、統合失調症との比較を行った。その結果、統合失調症女性患者では、第1世代抗精神病薬と乳がんリスクとの関連が認められ、双極性障害女性患者では、第1世代および第2世代抗精神病薬のいずれにおいても、乳がんリスクとの関連が認められた。Psychiatry Research誌8月号の報告。 香港の公的医療データベースを用いて、双極性障害または統合失調症の18歳以上の女性患者を対象に、ネステッドケースコントロール研究を実施した。incidence density samplingを使用して、乳がんと診断された女性を対照群(最大10例)としてマッチした。 主な結果は以下のとおり。・症例群672例(双極性障害:109例)、対照群6,450例(双極性障害:931例)を分析対象に含めた。・第1世代抗精神病薬と乳がんリスクとの関連は、統合失調症(調整オッズ比[aOR]:1.49、95%信頼区間[CI]:1.17~1.90)または双極性障害(aOR:1.80、95%CI:1.11~2.93)の女性患者のいずれにおいても認められた。・第2世代抗精神病薬は、双極性障害女性患者のみで乳がんリスクと関連しており(aOR:2.49、95%CI:1.29~4.79)、統合失調症女性患者では有意な関連が認められなかった(aOR:1.10、95%CI:0.88~1.36)。・抗精神病薬を使用中の双極性障害女性患者の乳がんリスクについては、さらなる研究が必要とされる。

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乳児の遺伝子検査、迅速全ゲノムvs.標的遺伝子/JAMA

 遺伝的疾患が疑われる乳幼児の遺伝子検査として、迅速全ゲノムシークエンスと標的乳幼児遺伝子パネルの分子診断率および結果が得られるまでの時間は同等なのか。米国・Women and Infants Hospital of Rhode IslandのJill L. Maron氏らは、400例を対象に多施設共同前向き比較試験「Genomic Medicine for Ill Neonates and Infants(GEMINI)試験」を行い、ゲノムシークエンスの分子診断率は高率だが、臨床に有用な結果が得られるまでの時間は標的乳幼児遺伝子シーケンス検査よりも遅かったことを示した。乳幼児への遺伝子検査は医療上の決定を導き健康アウトカムの改善を可能とするが、分子診断率や結果が得られるまでの時間が同等なのかについて明らかになっていなかった。JAMA誌2023年7月11日号掲載の報告。1歳未満児400例に両検査を行い、分子診断率と結果発表までの時間を評価 研究グループは2019年6月~2021年11月に米国の6病院で、入院中の1歳未満児とその保護者400例を対象に、ゲノムシークエンスと標的乳幼児遺伝子シーケンス検査のアウトカムを比較した。 試験登録された患児に、ゲノムシークエンスと標的乳幼児遺伝子シーケンス検査を同時に実施。それぞれの検査室で、患児の表現型に関する知識に基づく解釈が行われ、臨床ケアチームに結果が伝えられた。家族には、両検査からの遺伝学的所見に基づき、臨床管理と提供する治療の変更、ケアの方向性の転換が伝えられた。 主要エンドポイントは、分子診断率(病的バリアントが1つ以上または臨床的意義が不明[VUS]のバリアントを有する患児数と関連する割合で定義)と結果が返ってくるまでの時間(患児の検体を受け取ってから最初の所見が発表されるまでの時間と定義)、臨床的有用性とした。臨床的有用性は、患者への医学的、外科的および/または栄養学的管理の変化や治療目標の変化と定義し、記録担当医(集中治療担当医または遺伝学者)が5ポイントのリッカート尺度(1[まったく無用]~5[非常に有用])で測定評価した。検査室間のバリアント解釈の違いに留意が必要 分子診断上の変異は、51%の患児(204例)で同定された。297個のバリアントが同定され、そのうち134個は新規バリアントであった。 分子診断率は、ゲノムシークエンス49%(95%信頼区間[CI]:44~54)vs.標的乳幼児遺伝子シーケンス検査27%(23~32)であった。標的乳幼児遺伝子シーケンス検査で検出されたがゲノムシークエンスで報告されなかったバリアントは19個であった。一方で、ゲノムシークエンスで診断されたが標的乳幼児遺伝子シーケンス検査で報告されなかったバリアントは164個であった。標的乳幼児遺伝子シーケンス検査で同定されなかったバリアントには、構造的に1kb超のもの(25.1%)や、検査から除外された遺伝子(24.6%)が含まれていた(McNemarオッズ比[OR]:8.6[95%CI:5.4~14.7])。 検査室間のバリアントの解釈は、43%で違いがみられた。 結果が返ってくるまでの時間中央値は、ゲノムシークエンスは6.1日、標的乳幼児遺伝子シーケンス検査は4.2日であった。なお緊急症例(107例)では、それぞれ3.3日、4.0日だった。 臨床ケア変更への影響は、患児の19%でみられた。 76%の臨床担当医が、診断にかかわらず、臨床上の意思決定に遺伝子検査は有用またはとても有用と見なしていた。 これらの検討結果を踏まえて著者は、「研究室でのバリアント解釈が、分子診断率の違いに寄与し、臨床管理に関する重要なコンセンサスに関係する可能性があるようだ」と指摘。また、「今回の検討では、分子診断率の違いが臨床アウトカムの改善につながるかどうかの正式な評価を行っていないことを含め、いくつかの限界がある。分子診断率の統計学的優越性の検討は行っておらず、将来の研究で良性であることが明らかになる可能性のあるVUSバリアントも含まれたことが分子診断率の上昇に寄与した可能性もある」と述べている。

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プラチナ不適NSCLCの1次治療、アテゾリズマブがOS改善(IPSOS)/Lancet

 StageIIIB/IVの非小細胞肺がん(NSCLC)でプラチナダブレット化学療法を受ける患者の1次治療として、アテゾリズマブは単剤化学療法と比較し、全生存期間(OS)を改善し、2年生存率を倍増させ、QOLの維持および良好な安全性プロファイルと関連したことが示された。英国・University College London Hospitals NHS Foundation TrustのSiow Ming Lee氏らが、第III相国際多施設共同非盲検無作為化対照試験「IPSOS試験」の結果を報告した。進行または転移のあるNSCLC患者に対する免疫療法の進展にもかかわらず、主な1次治療試験では、対象患者がECOS PS 0~1で年齢中央値65歳以下に限定されていた。IPSOS試験ではプラチナ製剤を含むレジメン不適の患者が対象とされ、アテゾリズマブの有効性と安全性が検討された。著者は、「今回示されたデータは、プラチナをベースとした化学療法が不適の進行NSCLC患者に対して、アテゾリズマブ単剤療法が潜在的な1次治療の選択肢であることを支持するものである」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年7月6日号掲載の報告。23ヵ国91施設で試験、単剤化学療法と比較しOSを評価 IPSOS試験は、アジア、欧州、北米および南米の23ヵ国91施設で行われた。StageIIIB/IVのNSCLCでプラチナダブレット化学療法が試験担当医によって不適と判断された患者を、本試験の適格とした。不適の判断理由は、ECOG PSが2または3であること、あるいは、ECOG PSは0~1だが重大な併存疾患を有するかプラチナダブレット化学療法が禁忌で70歳以上であることであった。 被験者は、2対1の割合で置換ブロック法により無作為化され(ブロックサイズ6)、アテゾリズマブ1,200mg 3週ごと静脈内投与または単剤化学療法(ビノレルビン[経口または静脈内投与]またはゲムシタビン[静脈内投与]、試験地の規定用量に準じる)を3週または4週サイクルでそれぞれ受けた。 主要評価項目はOS(intention-to-treat集団で評価)。安全性解析は、アテゾリズマブまたは化学療法のあらゆる任意投与を受けたすべての無作為化された被験者を含む安全性評価集団を対象に行われた。OSは有意に延長、2年生存率は24% vs.12% 2017年9月11日~2019年9月23日に453例が登録・無作為化された(アテゾリズマブ群302例、化学療法群151例)。 アテゾリズマブは化学療法と比べてOSを有意に延長した(OS中央値10.3ヵ月[95%信頼区間[CI]:9.4~11.9]vs.9.2ヵ月[5.9~11.2]、層別ハザード比[HR]:0.78[95%CI:0.63~0.97]、p=0.028)。2年生存率は、アテゾリズマブ群24%(95%CI:19.3~29.4)、化学療法群12%(6.7~18.0)であった。 化学療法と比較してアテゾリズマブは、患者報告の健康関連QOL機能尺度および症状の安定化や改善、Grade3~4の治療関連有害事象(49/300例[16%]vs.49/147例[33%])および治療関連死(3例[1%]vs.4例[3%])の減少と関連していた。

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スタチン、ゾコーバなど、重大な副作用追加で添付文書改訂/厚労省

 厚生労働省は7月20日、HMG-CoA還元酵素阻害薬を含有する医薬品(スタチン)、エンシトレルビルなどの添付文書について、使用上の注意改訂指示を発出した。HMG-CoA還元酵素阻害薬を含有する医薬品 国内副作用症例において、スタチンと重症筋無力症との因果関係が否定できない症例が認められた。また、公表文献において、スタチンの再投与で重症筋無力症の症状が再発した症例、スタチンの中止で重症筋無力症の症状が消失した症例など、スタチンと重症筋無力症との因果関係が否定できない症例が報告されていることを踏まえ、改訂が適切と判断された。<改訂点>1.「特定の背景を有する患者に関する注意」(新記載要領)または「慎重投与」(旧記載要領)の項に「重症筋無力症又はその既往歴のある患者」を追記2.「重大な副作用」の項に「重症筋無力症」を追記<該当医薬品>(1)アトルバスタチンカルシウム水和物(商品名:リピトール錠 ほか)(2)シンバスタチン(リポバス錠 ほか)(3)ピタバスタチンカルシウム水和物(リバロ錠 ほか)(4)プラバスタチンナトリウム(メバロチン錠 ほか)(5)フルバスタチンナトリウム(ローコール錠 ほか)(6)ロスバスタチンカルシウム(クレストール錠 ほか)(7)アムロジピンベシル酸塩・アトルバスタチンカルシウム水和物(カデュエット配合錠1~4番 ほか)(8)エゼチミブ・アトルバスタチンカルシウム水和物(アトーゼット配合錠LD/HD ほか)(9)エゼチミブ・ロスバスタチンカルシウム(ロスーゼット配合錠LD/HD)(10)ピタバスタチンカルシウム水和物・エゼチミブ(リバゼブ配合錠LD/HD)エンシトレルビル フマル酸(ゾコーバ錠) アナフィラキシー関連の国内症例として3例が報告されており、うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例は1例(死亡0例)であった。しかし、異物である本剤に対するアナフィラキシーの発現は潜在的リスクとして自明であり、緊急承認品目として遅滞ない安全対策措置が重要と、さらなる症例集積を待たずに改訂が判断された。<改訂点>「重大な副作用」の項に「アナフィラキシー」を追記 このほか、チルゼパチド(マンジャロ皮下注)の重大な副作用の項に「アナフィラキシー、血管性浮腫」が追加。ミノサイクリン(ミノマイシンカプセル ほか)の重大な副作用の項「全身性紅斑性狼瘡(SLE)様症状の増悪」を「ループス様症候群」へ変更し、長期投与例における当該事象の発現に関する注意喚起が追加された。

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LGBTQ+はもはや日常風景か:米国における医学研究の職場ハラスメント調査を読んで(解説:岡村毅氏)

 この研究は米国の医学研究の職場ハラスメントを包括的に調査したものだ。斬新なところは「これまでの調査はシスジェンダーに偏っていた」として、LGBTQ+を基礎的データとしてとっているところだ。また国立衛生研究所(NIH)のキャリアデヴェロップメントアワードを受けた若手研究者を対象にしており、適切なサンプリングであろう。 生物学的性(男性と女性)と性的志向(シスジェンダー[生物学的性と性自認が一致]兼ヘテロセクシュアル[異性愛]である多数派か、LGBTQか)を聞いている。おそらくこれからの調査はこのような方向になっていくと思われる。 回答者は830人であるが、生物学的には男性422人、女性385人、両方あるいは無回答は23人であった。またシスジェンダー兼ヘテロセクシュアルである多数派は、774人(93%)、LGBTQ+は31人(4%)、その他あるいは無回答が25人(3%)である。 なお、人種はヒスパニック以外の白人、アジア系、その他の3択であった。白人572人(69%)、アジア系169人(20%)、その他66人(8%)である。 アウトカムである職場ハラスメントは、ミシガン大学やテキサスA & M 大学のclimate survey(意識調査、でいいのだろうか)を参考に作られている。多様性が許容されているか、友好的な、協力的か、人種差別的か、性差別的か、といった観点を評価させている。またセクシャルハラスメントや、ソーシャルメディアなどで不快な体験をしたことがあるかも聞いている。さらにメンタルヘルスも評価している。 結果であるが、調査方法は最先端だが、結果は古典的であった。 男性と女性とを比べると、すべての項目で女性のほうが環境は悪いと回答しているのだ。また男性の45%、女性の72%が過去2年間でハラスメントを経験していた(そしてこれは人種差も性的志向の差もない)。同様にメンタルヘルスも女性が男性より悪く、人種差も性的志向の差も関係ないようだ。次に人種で見ると、ほとんど差がないのだが、「人種差別的だ」はその他が白人より優位に多く、アジア系は白人と変わらない。ではLGBTQ+ではどうだろうか? なんとほとんど変わらないのだ。唯一「職場が同性愛嫌悪的だ」だけがLGBTQ+で高い。 この論文の私の学びと考察は以下のようになる。(1)生物学的性のみならず性的志向を聞くことが標準になってゆくだろう。高齢者の研究をしているわれわれのところへの波及は少し遅れるかもしれない。(2)しかしハラスメントを受けているのは、人種や性的志向を問わず、女性であるようだ。これは悲しいが世界の真実かもしれない。(3)LGBTQ+とそれ以外ではあまり有意差が出ないが、おそらくサンプル数の少なさと、前者内にさらに多様な人が含まれているからではないか?(4)米国全体では白人はもうすぐ半分を切るが、医学界ではいまだに多数派である。この調査の内容から見ると、アジア系は白人と同じ結果を出している(白人と似た状況?)。(5)LGBTQ+に対して過剰な恐怖感を持つ人が多いが、米国医学界若手というかなりリベラルな集団でも4%しかいないのだから、この恐怖は合理的ではない。当たり前だが排除ではなく包摂すべきであろう。とくに日本人は伝統的にLGBTQ+には寛容であることは押さえておくべきだろう。最近は知らないが。

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クレバスに落ちたらどのくらい死亡するのか?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第238回

クレバスに落ちたらどのくらい死亡するのか?Unsplashより使用冬山を歩いていると、クレバスに落ちたら死ぬぞ!みたいなことをよく言われることがあります。いや、私が言われるわけではなくて、そういうシーンを映画などで見かける気がするだけで。実際にクレバスに落ちたらどのくらいの人が致命的になるのでしょうか。Klocker E, et al.Crevasse accidents in the Swiss Alps Epidemiology and mortality of 405 victims of crevasse accidents from 2010 to 2020.Injury. 2022 Jan;53(1):183-189.クレバスの種類にもよりますが、一番つらいのは、真っ逆さまに何十メートルも落ちてしまう事故です。私が愛読していた漫画の『岳』では結構しんどいクレバス事故が多かったイメージです。この研究は、2010~20年にスイスで発生したクレバス事故を含む山岳救助活動を後ろ向きに分析したものです。落下傷害の重症度はNACA(National Advisory Committee for Aeronautics)スコアに従って評価しました。スコアが高いほうが重症です。結果、321人のクレバス転落の犠牲者が研究に含まれました。犠牲者の年齢中央値は41.2歳で、82%(n=260)が男性、59%(n=186)が外国人という結果でした。救助活動が行われた典型的な標高は3,000~3,499m(全症例の44%)というシビアな環境であり、救助は難航を極めました。クレバスの落下深度の中央値は、夏季が8m(IQR 5~10)であったのに対し、冬季は15m(IQR 8~20)でした(p<0.001)。ちょっとこの理由はわかりません。全体の死亡率は6.5%で、死亡した人の9.4%(n=30)のNACAスコアは4以上でした。55%(n=177)のNACAスコアは0または1と軽症でした。クレバスの落下の深さとNACAスコアの重症度の間には有意な正の相関が観察されました(r=0.35、95%信頼区間:0.18~0.51、p<0.001)。以上のことから、クレバスに落下した場合、半数以上は軽症なのですが、落下深度が深いとそれなりに重症になりやすいため、10人に1人くらいはエライコッチャな事態になることを想定しながら冬山を歩く必要がありそうです。

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第169回 調剤業務の外部委託、医師は賛成?反対?

新型コロナウイルス感染症の5類移行をきっかけに各学会も、懇親会も含めたフル開催が復活してきた。私自身は今年度としては初めて7月16~17日に神戸で開催された第16回日本在宅薬学会学術大会に参加してきた。同学会の名称を初めて聞く人のために簡単に説明すると、今回の開催回数からもわかるように設立は2009年12月と比較的新しい。理事長は大阪大学医学部卒で、現在は医療法人嘉健会・思温病院理事長も務める医師の狭間 研至氏である。同学会のホームページでは設立目的を「薬剤師の職能拡大・薬局の機能拡張を通じて、多職種連携・情報共有を基盤とした超高齢社会における新しい地域医療システムを構築し、広く社会に貢献すること」と記述している。「なぜ医師が薬剤師の職能拡大の学会を?」と思う人もいるかもしれない。詳しくは薬局新聞社から出ている狭間氏の著書「『外科医、薬局に帰る』~超高齢社会における新しい医療環境を目指して~」(実は初版ではサブタイトルが「浪花のあきんどクターの“医薬協業”への挑戦」となっている)に譲りたいが、狭間氏の実家は同学会理事で薬剤師でもある母親の狭間 紀代氏が1975年に開局した漢方相談を主業務とする薬局だった。後の医薬分業の進展に伴い実家は店舗を増やして保険調剤業務がメインとなる。狭間氏自身は、こうした薬局の変化について、街角の医療相談とそれに基づく一般用医薬品(OTC)の販売が中心となってきた1990年代半ばまでの薬局形態を「薬局1.0」、1990年代半ば以降の急速な医薬分業の進展によりOTC販売よりも処方箋調剤に中心が置かれるようになった形態を「薬局2.0」と称している。念のため解説すると、こうした「×× 〇.0」的な表現は、アメリカのメディア企業オライリー・メディアの創設者ティム・オライリーが、Webを通じて誰もが情報発信できるようになった時代を「Web 2.0」、それ以前を「Web 1.0」と定義したのが始まりで、今では多方面で使われている。狭間氏が医学部を卒業し、医師として実地臨床に携わるようになった頃がまさに「薬局2.0」時代の到来初期。その際、実家の薬局に勤務する薬剤師の研修に携わるようになり、薬剤師が学んだ知識が現実の薬局現場では十分に発揮されていないと感じたことをきっかけに薬局経営に携わるようになった。現在、実家はファルメディコ株式会社と改組し、大阪府と兵庫県の9店舗の薬局で外来の保険調剤と在宅業務に取り組み、狭間氏は同社の代表取締役社長も務めている。狭間氏が薬局で薬剤師の職能が必ずしも十分に生かされていないと考える点とは、現実の薬局業務では処方箋に基づく調剤を行い、カウンター越しにそれを渡して「お大事に」で終わりがちであることを指している。薬剤師が薬学部で学んだ薬物動態などは服薬が始まってからのことであり、本当の勝負どころは服薬後であるにもかかわらず、そこには十分に手が届いていないということである。私が狭間氏の講演を初めて聞いたのは2014年。日本在宅薬学会とは別の学会である。率直に当時の感想を言ってしまうと、「何を言い出すのか、この先生は」というものだった。この時、狭間氏は自社の薬剤師が便秘薬を処方した在宅患者を訪問した際、「お通じどうですか?」と尋ね、「少し軟らかいかな」と答える映像を流しながら、この場合なら便秘薬を減量するなどの対処が必要と述べ、「薬剤師の本来業務とは患者に薬を渡した後のフォローアップ」と主張した。恥ずかしながら、私はこの時初めて日本在宅薬学会の存在を知り、狭間氏の講演の途中から耳だけは講演に向けながら、スマートフォンで同学会を検索し、薬剤師向けに血圧・呼吸・脈拍・体温・意識レベル・尿量といったバイタルサインチェックの講習会もやっていることを知った。ちなみに狭間氏は前述の「薬局2.0」の一つ先として、保険調剤薬局の数が飽和状態に達する中で、主張する“患者に薬を渡した後のフォローアップを主業務とする薬局の姿”を「薬局3.0」と定義付けていた。もちろんこの主張や取り組みには間違いはなく、むしろ極めて正しい。ただ、医療界の構図を考えた際に火種を生むことは、医療に少し詳しくなればすぐわかることである。薬剤師が処方後の患者への関与を強化することは、一部の医師、はっきり言えば、日本医師会が面白く思わないことは容易に想像がつく。その意味で私の第一印象は「こんなことをはっきりと公言して大丈夫なのだろうか」と言い換えてもいい。ただ、これを機に興味を持った私は同学会に通い始めることになる。そしてその後、あちこちに引っ張りだこの狭間氏とは同学会以外でも遭遇するようになったが、どこでもこのことを主張し続けていた。時には講演冒頭に「AKY(あえて空気を読まず)」と、やや自虐的にも受け取れる表現を付け加える「配慮」もしながらだ。そして最終的にこの主張は、2020年9月から施行された改正薬剤師法と改正薬機法で、薬剤師による薬剤交付後の服薬フォローアップを努力義務から義務化へと明文化したことで実現した。もう1つ狭間氏が先鞭的な旗振り役になって“実現した”と言うべきものがある。それは薬局で薬剤師以外が担ってもよい補助業務の明示化、2019年4月2日付の厚生労働省医薬・生活衛生局総務課長名発出の通知「調剤業務のあり方について」(通称「0402通知」)。これも前述の薬剤師の主業務は服薬後のフォローアップという主張がベースにある。厚生労働省も2015年に公表した「患者のための薬局ビジョン」で「対物業務から対人業務へ」とのキーワードを掲げていたが、現実の薬剤師業務では調剤室内での医薬品のピッキング作業などに日常的に忙殺されることが少なくない。しかし、同学会では0402通知が発出される前年には薬剤師以外が担える業務を担う「薬局パートナー」の検定試験を開始している。こうした一連の動きを横目で眺めてきた自分としては、医師でありながら実家の薬局の経営に携わるという絶妙に「地位」も「現場感覚」も備えた狭間氏の立ち位置と、「AKY」に代表されるような、言葉は悪いが「ヌルヌルと各所に入り込む」、まさに著書の初版サブタイトル、商人とドクターを掛け合わせた「浪花のあきんどクター」としての戦略家の一面が、「一念岩をも通す」を可能にしたのではないかと思っている。もちろんこうした狭間氏の動きを不愉快に思っている勢力は、薬剤師の世界にですら存在することは、私自身百も承知しているし、狭間氏とすべての主張が一致するわけではない。しかし、私見で恐縮だが、医療従事者の中でも真面目でおとなし過ぎ、結果として行政からの「やらされ感」が多い薬剤師の世界では、必要な「デストロイヤー」だと思うのである。さてその狭間氏は肝となる主張を体現すべく、次の手に打って出ている。それは2年前から唱え始めた調剤業務の外部委託というやや奇想天外なものだ。要は一部の薬局で調剤業務(対物業務)を担い、その他の薬局が服薬後のフォローアップという対人業務に必要な時間をさらに捻出しようというもの。さらにその背景には、薬局業界では中小薬局が8割を占め、機械化による対物業務の効率化への投資が経済的に困難という現実を踏まえている。しかも、内閣府の国家戦略特別区域(特区)で行う規制改革アイデアとして、ファルメディコがこの外部業務委託を提案していたことが4月に明るみに出た。5月にはその実証を行うため、ファルメディコをはじめとする22社が参加した「薬局DX推進コンソーシアム」を設立。今回の日本在宅薬学会ではこれに関する緊急シンポジウムも開催された。もっともまだ現実には動き出していないこともあり、シンポジウムの内容はアウトラインだけで、個人的にはやや肩透かしの感もあった。この件に関して、薬剤師業界の総本山ともいえる日本薬剤師会は「責任の所在が曖昧になる」と猛烈な反対姿勢を示している。とはいえ、もしこの特区での実証事業が認められ、現実的にことが動き出せば、薬剤師会は置いてきぼりになりかねない。この特区事業は大阪市のみで行うことを前提に申請されており、日本薬剤師会の地元下部組織である大阪府薬剤師会にとっては横目では眺めていられない事態だ。今回の学会後の理事長会見で狭間氏は「(大阪府薬剤師会の)席は空けている」と語っていたが、大阪府薬剤師会はどう出るか? これまで私が眺めてきたデストロイヤー狭間氏の4の字固め(これがわかる人は相当古い世代だろうが)で最終“勝利”となるのか? すでに私自身はこの行方を大方予想しているが、当面目が離せないことは確かである。

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希望を持ち続けることの意義【非専門医のための緩和ケアTips】第56回

第56回 希望を持ち続けることの意義医療、とくに緩和ケアにおいては、患者さんとのやりとりを通じて、人生の意味や人としての在り方を深く考えさせられる場面に遭遇します。今回のご質問はそんな内容です。今日の質問私の外来に通っている進行がん患者さんで、すでに抗がん剤治療などができない状態の方がいます。化学療法を受けていた基幹病院の先生はもちろん、私からも治療が難しいことを説明しているのですが、それでも、たびたび「がんが治ることはないのでしょうか?」と尋ねられます。こうした患者さんにはどのように対応したらよいのでしょうか?医学的な状況とかけ離れた希望を持つ患者さんやご家族から、「なんとか治りませんか?」と尋ねられる……。医師なら誰しも経験する状況かと思います。背景として医療者の説明が不十分であったり、患者自身の理解力が及ばなかったりすることもあるでしょう。ただ、今回はそうした点ではなく、「現実的には可能性の低い希望を持ち続ける」という点に、着目してみたいと思います。「希望」って皆さんにとって大切ですか?「そんなの当たり前でしょう?」と思う方もいるかもしれません。どんな状況であったとしても、希望を持つこと自体は、誰かから制限されるようなものではないはずです。一方、今回ご質問いただいたような状況において、医療現場ではこんな言葉が飛び交うこともあるでしょう。「あの患者さん、また言っているよ。あれほど治らないって説明したのに、まだわからないのかな……」。私たち医療者も個人としては「希望が大切」と当たり前に思っているはずなのに、なぜ患者さんの抱く実現しない希望に対しては、時にマイナスの感情すら抱くのでしょうか?さまざまな観点から考察するのですが、私が共感するのは、「実現しない希望を持つ患者と向き合わねばならない、われわれ医療者自身のつらさがその要因ではないのか」という見方です。自分の患者さんが実現する可能性の低い希望を持って問い掛けてくるのは、なかなかつらいものです。でも一歩引いてみると、この「治らないのでしょうか?」というのは、本当に医療者に問い掛けているのでしょうか? 「前も言ったように治ることはありません。なぜなら、あなたの病状は……」という説明をしてほしいのでしょうか?おそらく何か説明や答えを求めているというよりも、「どういった状況でも希望を持っていたい」という、人間としての根源的な気持ちから発している問いなのでは、と思います。それに対し、「また説明を求めている」「理解が足りないのでは」と、医療者側が苦しさを感じるとしたら、少し立ち止まって考えてみてもいいかもしれません。私自身が今回の質問のような状況だったらどうするか?もちろん、きちんと状況を共有できているかの確認はしますが、そのうえでお話しをするとしたら、「おそらく、さまざまな気掛かりがあってのことだと感じたのですが、もう少しお気持ちを聞かせてもらえますか?」と返事をするのでは、と思います。そのうえで、気掛かりの本質的な要因を探り、希望が現実的に可能かどうかは置いておいて、「お気持ちを聞かせてくださり、ありがとうございます。少しでも可能性を信じ、治りたいという気持ちは当然のことですね」と、相手の気持ちを受け取ったことを伝えます。現実と懸け離れた希望によって本人や家族に好ましくない影響が生じている場合を除いて、希望を否定する言葉は掛けないことを基本としています。「私は治りますか?」……、に対する返答。答えのない問いですが、皆さんはどのように対応されていますか?今回のTips今回のTips希望を持つことは、誰にとっても、どんな病状であっても大切。

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ASCO2023 レポート 乳がん

レポーター紹介2023年6月2日から6日まで5日間にわたり、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)がハイブリッド形式で開催された。リアルタイムのライブ配信も設けられたものの、多くのセッションは現地開催+オンデマンド配信(以前のvirtual meeting)であり、以前の学会形式にかなり近い形になっているのを実感できた。私も3年の時を経て、ついにシカゴの地に再び降り立つことができた。米国国内からの参加者はほぼコロナ以前に戻っているようであったし、コロナ前ほどではないにしても、日本からも多数参加されていた。各国の旧知の研究者と、すれ違いざまにあいさつするなど、かつてのコミュニケーションが戻ってきたことを強く実感した。今回のASCOのテーマは“Partnering With Patients: The Cornerstone of Cancer Care and Research”であった。乳がんの演題は日本の臨床にインパクトを与えるものは少なく、とくにホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんで日本と諸外国の標準治療の違いが今後大きな問題になる可能性を予見させるものであった。日本からの演題も含め4演題を概説する。NATALEE試験本試験はStageIIAからIIIまでのホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+HER2-)乳がん術後を対象として、非ステロイド性アロマターゼ阻害薬(NSAI、5年以上、閉経前および男性はゴセレリンを併用)にribociclib 400mg/日を3年間内服することの上乗せを検証した試験である。ribociclib群に2,549例、ホルモン療法単独群に2,552例が割り付けられた。主要評価項目は無浸潤疾患生存(invasive disease free survival:iDFS)で、3年時点(観察期間中央値27.7ヵ月)でribociclib群90.4%、ホルモン療法単独群87.1%(ハザード比[HR]:0.748、95%CI:0.618~0.906、p=0.0014)と統計学的有意にribociclib群で良好であった。副次評価項目の3年無遠隔再発生存もribociclib群で90.8%、ホルモン療法単独群で88.6%(HR:0.739、95%CI:0.603~0.905、p=0.0017)とribociclib群で良好であった。全生存期間(overall survival:OS)についてはribociclib群で良さそうな傾向はあったもののイベントも少なく有意差は観察されなかった。有害事象は好中球減少、肝機能障害、QT延長、悪心、頭痛、倦怠感、下痢、血栓症などがホルモン療法単独と比較して増加した。ホルモン療法へのCDK4/6阻害薬(CDK4/6i)追加のメリットを証明した試験としてアベマシクリブのmonarchE試験がある。NATALEE試験とmonarchE試験の違いとしては、NATALEE試験はN0症例を含むなど範囲が広い(リスクの低い症例が含まれている)ことが大きい。ハイリスク症例でどちらの薬剤がより有効かは不明であるが、N0かついくつかのリスク因子を持っている症例はribociclibが治療選択肢になるであろう。一方、400mg/日と転移乳がんに対する用量よりも少ないものの(転移乳がんでは600mg/日)、それなりの毒性のある薬剤を3年間内服することのハードルは高いと思われる。もっと残念なことは、ribociclibの日本の推奨用量は400mgにも及ばず、現在国内での開発は停止していることである。ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんの術後治療においても(タモキシフェンが標準ということも含めて)、日本と海外の標準治療の違いが目立ち始めている。SONIA試験CDK4/6iはHR+HER2-乳がん治療における重要な薬剤の1つである。NATALEE試験でも述べたようにribociclibは日本では使用できないが、パルボシクリブ、アベマシクリブについては標準治療である。ホルモン療法併用での1次治療、2次治療のエビデンスがあるが、いずれのラインでもOSを延ばすというエビデンスがあり、「いつ使うべきか」についてはまだ議論の余地があるところである。SONIA試験は前治療歴のないHR+HER2-進行乳がんを対象に、1次治療としてNSAI+CDK4/6iを、2次治療としてフルベストラントを行う(First-line CDK4/6i)群と、1次治療としてNSAIを行い2次治療としてフルベストラント+CDK4/6iを行う(Second-line CDK4/6i)群を比較するランダム化比較第III相試験である。主要評価項目は2次治療までのPFS(PFS2)とされた。1,050例の症例が、First-line CDK4/6iに524例、second-line CDK4/6iに526例割り付けられた。観察期間中央値37.3ヵ月時点で1次治療におけるPFSはAI+CDK4/6iで24.7ヵ月、AI単独で16.1ヵ月(HR:0.59、95%CI:0.51~0.69、p<0.0001)とAI+CDK4/6i群で良好であったが、主要評価項目のPFS2はfirst-line CDK4/6iで31ヵ月、second-line CDK4/6iで26.8ヵ月(HR:0.87、95%CI:0.74~1.03、p=0.10)と両群間に差を認めなかった。またOSについても両群間の差を認めなかった。また、安全性についてはfirst-line CDK4/6iでGrade3以上の有害事象が多いと報告され、演者らは1次治療における内分泌単剤療法は“excellent”なオプションであると結論付けている。本試験結果はCDK4/6iの適切な使用について一石を投じるものであるが、本試験の解釈には注意を要する。それは、CDK4/6iとして使用された薬剤である。両群ともに、パルボシクリブが91%、ribociclibが8%、アベマシクリブに至っては1%しか含まれておらず、基本的にはパルボシクリブの試験として解釈すべきである。いずれの薬剤も1次治療、2次治療におけるPFSのベネフィットは示されているが、OSについては薬剤によって異なる。1次治療におけるOSベネフィットは、ribociclibでは証明されており、アベマシクリブでは良好であるものの統計学的有意差は証明されていない(最終解析未)。パルボシクリブは1次治療におけるOSベネフィットが否定されており、かつ2次治療では良好な傾向にあるものの統計学的有意差は示されていない。したがって、日本以外の国では広く使われているribociclibや、あるいはアベマシクリブが多く含まれていれば、結果が異なっている可能性がありうる。SONIA試験の結果のみをもって、CDK4/6iは1次治療で使用しなくてよいとは結論付けられないであろう。PATHWAY試験もう一題、CDK4/6iについての発表を取り上げたい。これまでに閉経前の患者を含む1次治療のCDK4/6iのエビデンスはribociclibのMONALEESA-7試験しかなく、日本では使いづらい面があった。そこで実施されたのが国立がん研究センター中央病院を中心にアジア共同で行われたPATHWAY試験である。本試験は、HR+HER2-乳がんの1次もしくは2次治療を対象として、タモキシフェン(TAM)にパルボシクリブを上乗せすることのメリットを検証したプラセボ対象ランダム化比較第III相試験である。184例の症例が登録され、パルボシクリブ群に91例、プラセボ群に93例が割り付けられた。主要評価項目はPFSとされた。PFSは、パルボシクリブ群で24.4ヵ月に対し、プラセボ群で11.1ヵ月(HR:0.602、95%CI:0.428~0.848、p=0.002)とパルボシクリブ群で良好であり、TAM+パルボシクリブ療法の有用性が証明された。サブグループ解析ではいくつか興味深い結果が見られた。1次治療(112例)ではパルボシクリブ群でPFSが良好だったが、2次治療(72例)では両群間の差を認めなかった。また、閉経前(52例)ではパルボシクリブ群のPFSが良好であったが、閉経後では両群間の差を認めなかった。したがって、TAM+パルボシクリブは閉経前の1次治療でより積極的に考慮できると言えよう。ただ、世界的には閉経前の1次治療はAI+ribociclib+LHRHアゴニストである。NATALEE試験と同様、世界で標準となっているにもかかわらず日本では使用できないために標準治療が異なる患者集団が存在することは、今後の日本での治療開発において大きなハードルになりうるだろう。JCOG1017試験最後に外科系の演題、JCOGからのものをご紹介したい。JCOG1017試験は初発IV期乳がんに対する原発巣切除の意義を検証した試験である。これまで、インドやトルコ、あるいはECOG、ABCSGなど、さまざまな国、臨床試験グループから原発巣切除の意義を検証した試験が公表されている。ただ、それぞれの試験ごとに、薬剤感受性を見たうえでランダム化、あるいは診断時点でランダム化し手術を実施など、かなり背景が異なっていた。それに伴い、トルコの研究以外はいずれも原発巣切除の意義を示せていない。JCOG1017では1次登録のうえで初期薬物療法を実施し、病勢進行とならなかった症例を2次登録し、手術群、非手術群にランダム化した第III相試験である。570例が1次登録され、407例が2次登録、非手術群に205例、手術群に202例が割り付けられた。手術群のうち、実際に手術が実施された症例は173例であった。切除は乳房病変のみであり、腋窩郭清は実施されなかった。主要評価項目である生存期間(OS)中央値は非手術群で68.7ヵ月、手術群で74.9ヵ月(HR:0.857、95%CI:0.686~1.072、p=0.3129)と両群間の差は認めなかった。手術群において、断端陽性は断端陰性と比較して有意にOSが不良であった。5年局所制御率は非手術群で18.7%、手術群で53.2%(HR:0.415、95%CI:0.327~0.527、p<0.0001)と手術群で良好であった。OSに対するサブグループ解析では、閉経前症例、転移臓器が1個までの症例で良好な傾向であった。以上から、ECOG2108試験などと同様、原発巣切除はすべての初発IV期乳がんに推奨できるものではないと結論付けられた。しかしながら、一部の症例においては、とくに局所制御において原発巣切除がオプションになりうると考えられ、今後この重要な結果をどのように臨床で活かしていくかについて深い議論が必要であろう。

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ASCO2023 レポート 肺がん

レポーター紹介2023年のASCOはCOVID-19の影響をまったく感じさせず、ハイブリッド形式とはいえ現地をベースとした印象を強く打ち出した形で実施された。肺がん領域では、ここ数年肺がんの演題がなかったPlenaryでADAURAのOverall survival(OS)が採択されるなど、久しぶりに話題の多い年であったといえる。引き続き周術期の演題が大きな注目を集めているものの、進行肺がんにおいてもAntibody-drug conjugate(ADC)を用いた治療開発がさらに進展、成熟の段階を迎えており、免疫療法や分子標的薬についても新たな取り組みが報告されている。本稿では、その中から重要な知見について解説したい。ADAURA試験EGFR遺伝子変異陽性、完全切除後のStageIB、II、IIIA非小細胞肺がんを対象として、オシメルチニブを試験治療(36ヵ月)とし、プラセボと比較した第III相試験がADAURA試験である。プラチナ併用療法による標準的な術後療法を受けていない患者の登録も許容されており、両群とも約半数が術後療法を受けている。682例の患者が1:1で両群に割り付けられた。主要評価項目はII期、IIIA期の患者における無病生存割合、副次評価項目として全患者集団での無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)等が設定されている。2020年のASCOで、DFSがハザード比0.17、95%信頼区間0.12~0.23という驚異的な結果と共にPlenaryで発表された。従来、試験治療群のDFSが36ヵ月の投与期間後に明らかに悪化していること、CTONG1104やIMPACT試験等の第1、2世代のEGFR-TKIを用いた術後療法の試験がOS延長を示さなかったことなどから、オシメルチニブを用いたADAURAのOS結果への注目が高まる一方であった。3年を経て今年のASCOで、2度目のPlenaryでOSの最終解析の結果が報告された。II期、IIIA期のOSは、ハザード比0.49、95%信頼区間0.33~0.73で有意な延長を示し、5年時点での生存割合は術後オシメルチニブ群で85%、プラセボ群で73%と、12%の上乗せを示している。最も懸念されていた、DFSのような観察期間の後半、とくに36ヵ月を過ぎた後の試験治療群での悪化は今回の解析では明らかではなかったことも、好印象であった。フォローアップ期間は術後オシメルチニブ群で61.7ヵ月、プラセボ群で60.4ヵ月といずれも5年を超えて一見十分のように見えるが、OSのイベントは、オシメルチニブ群で15%、プラセボ群で27%と両群合わせても21%であり、報告された生存曲線を見ても48ヵ月時点以降は打ち切りの表示が多数存在していた。幸いなことに、今回の「最終解析」以降も、OSについてはフォローアップ結果を報告することが触れられていた。DFSで認められたような解析後半での試験治療群の動向を、OSで確認するためにはおそらく7年や8年のフォローアップが必要になる可能性が高いことから、より成熟した解析結果から得られる情報も重要になってくる。従来と同様のサブセット解析結果も同時に報告されており、IB期を加えた全患者で、プラチナベースの術後療法の有無で分けた解析、いずれにおいてもハザード比はほぼ変わらず、いずれの切り口でも術後オシメルチニブの優越性が示されている。発表後に世界中の肺がん専門家の間で、「思ったよりも良かった」OSの結果についてさまざまな議論が巻き起こっている。その中でも最も強く指摘されている点が、プラセボ群での再発後の治療としてのオシメルチニブの実施割合である。後治療の解析において、プラセボ群で再発し後治療が行われた184例中、オシメルチニブが使用されたのは79例(43%)にとどまり、114例(62%)は他のEGFR-TKIで治療されていることが報告された。この点について、批判的な意見として「OSの違いはオシメルチニブを術後に使用したかしなかったかではなく、タイミングによらずオシメルチニブが使用できたか否かを反映しているだけ」という点が提起されている。一方、擁護的な意見として、「オシメルチニブでないにしても何らかのEGFR-TKIがほとんどの患者の後治療で使用されているため大きな問題ではない」という見解も存在する。議論はあるものの、大局的には、術後にEGFR遺伝子変異をチェックし、術後オシメルチニブにアクセスできない国や地域を減らすことが重要と考えられる。KEYNOTE-671試験病理学的に確認された臨床病期II、IIIA、IIIB(N2)期、切除可能非小細胞肺がんを対象として、術前ペムブロリズマブ+プラチナ併用療法最大4サイクル後の切除、術後ペムブロリズマブ(13サイクル)を試験治療とし、術前プラセボ+プラチナ併用療法最大4サイクル後の切除、術後プラセボ(13サイクル)による標準治療と比較する第III相試験がKEYNOTE-671試験である。割付調整因子として、II期vs.III期、PD-L1 50%未満vs.以上、組織型、東アジアかそれ以外か、が設定されている。786例の患者が1:1で両群に割り付けられた。主要評価項目は無イベント生存(EFS)とOSのCo-primaryであり、副次評価項目としてmPR、pCR、安全性等が設定されている。今回発表されたEFSはハザード比0.58、95%信頼区間0.46~0.72でペムブロリズマブによる術前、術後療法を行ったほうが有意に延長するという結果であった。24ヵ月時点のEFSの点推定値は術前術後ペムブロリズマブ群で62.4%、術前術後プラセボ群で40.6%であり、22%程度の上乗せを認めている。OSはまだ未成熟であるものの、ハザード比0.72と術前術後ペムブロリズマブ群が良好な傾向を示している。病理学的な奏効に応じたサブセット解析において、pCRが達成された患者、達成されなかった患者、いずれにおいてもペムブロリズマブを術前術後に上乗せすることでEFSの延長傾向が示されていた。mPRで行われた同様の解析でも、同じ傾向が示されている。24ヵ月時点のEFSの点推定値は、すでに発表され実地診療にも導入されているニボルマブ+プラチナ併用療法を術前に3サイクルのみ実施したCheckMate 816試験において65%と報告されており、術前術後ともにペムブロリズマブを実施したKEYNOTE-671の62.4%という結果は異なる試験、異なる患者集団の比較ではあるもののほぼ同一であった。病理学的な奏効に基づくサブセット解析において、とくにpCRやmPRを達成した患者でもペムブロリズマブの上乗せ効果が存在する可能性がある点は注目に値するものの、標準治療がプラチナ併用療法であることから、術前だけでなく術後にペムブロリズマブを追加することの意義を示すことは、本試験のこの解析だけでは難しいと考えられる。いずれにせよ、まずは初回解析の結果が得られたところであり、今後のアップデートに注目したい。NEOTORCH試験臨床病期II、III期、切除可能非小細胞肺がんを対象として、術前toripalimab+プラチナ併用療法3サイクル後の切除、術後toripalimab+プラチナ併用療法1サイクル、術後toripalimab(13サイクル)を試験治療とし、術前プラセボ+プラチナ併用療法3サイクル後の切除、術後プラセボ+プラチナ併用療法1サイクル、術後プラセボ(13サイクル)による標準治療と比較する第III相試験がNEOTORCH試験である。術前3サイクルだけでなく、術後にもtoripalimabもしくはプラセボとプラチナ併用療法を1サイクル実施した後に、toripalimabもしくはプラセボによる術後療法を実施するという、少し変わったレジメンが設定されている。主要評価項目であるIII期でのEFS、II~III期でのEFS、III期でのmPR、II~III期でのmPRについて、αをリサイクルしながら順に評価するデザインであり、副次評価項目としてOS、pCR、DFS、安全性等が設定されている。500例が1:1に両群に割り付けられている。中国で開発された薬剤を用いた、中国国内で実施された試験であるが、これだけの大規模試験を単一の国で立案し、このスピード感で実施できることは驚くべきことである。実施の背景を反映して、喫煙率が8割以上と非常に高く、扁平上皮がんが8割を占める点が、結果の解釈にも影響するポイントといえる。また、解析方法も変則的であり、今回の初回解析ではIII期のみが対象となっている。III期のEFSは、ハザード比0.40、95%信頼区間0.277~0.565と、有意に試験治療群が良好な結果であり、24ヵ月時点のEFS点推定値は試験治療群で64.7%、標準治療群で38.7%であった。KEYNOTE-671試験同様に、CheckMate 816試験と24ヵ月時点のEFSの点推定値は同等ともいえるが、今回はIII期のみの解析であること、扁平上皮がんの割合が非常に高いことなどが、結果の解釈を複雑にしている。病理学的奏効に基づくサブセット解析も報告されており、mPRとなった集団においてもtoripalimabの上乗せが示されているが、KEYNOTE-671同様、標準治療がプラチナ併用療法であることから術後ICIの意義を検証できるデザインとはなっていない。toripalimabが日本国内で使用可能になる可能性は高いとはいえないものの、他のGlobal trialとは異なる特徴を持った試験として、今後のアップデートに注目したい。KEYNOTE-789試験EGFR-TKIで治療後のEGFR ex19delもしくはL858R遺伝子変異を有する進行非小細胞肺がんを対象として、ペムブロリズマブ+ペメトレキセド+プラチナ併用療法最大4サイクル後のペムブロリズマブ(最大31サイクル)+ペメトレキセド維持療法を試験治療とし、プラセボ+ペメトレキセド+プラチナ併用療法最大4サイクル後のプラセボ(最大31サイクル)+ペメトレキセド維持療法による標準治療と比較する第III相試験がKEYNOTE-789試験である。割付調整因子として、PD-L1 50%未満vs.50%以上、オシメルチニブ投与歴の有無、東アジアかそれ以外か、が設定されている。492例の患者が1:1で両群に割り付けられた。主要評価項目はPFSとOSのCo-primaryであり、副次評価項目として奏効割合、DOR、安全性、PRO等が設定されている。PFSのハザード比は0.80、95%信頼区間は0.65~0.97で、事前に設定された有効性の判断規準であるp=0.0117に対してp=0.0122と、Negativeであったことが報告されている。PFSの中央値も、試験治療群で5.6ヵ月、標準治療群で5.5ヵ月とほぼ一致しており、12ヵ月時点のPFS割合も試験治療群14.0%、標準治療群10.2%と大きな違いはなかった。OSについても同様の結果であり、昨年のESMO Asiaで報告されたCheckMate 722試験と同様Negativeな結果であった。サブグループ解析において、PD-L1が1%以上の群でPFSが良好な傾向が示されているものの、ハザード比は0.77とそれほど大きな違いではなかった。EGFR遺伝子変異陽性肺がんにおける免疫チェックポイント阻害薬の意義については、IMpower150試験のサブセット解析で良好な結果が示されて以来注目されてきたが、検証的な試験では軒並み結果が出せていない。EGFR-TKI耐性化後の治療については、耐性機序に基づく分子標的薬、ADC等による戦略への期待がさらに高まる状況となっている。TROPION-Lung02試験TROP2を標的としたADCであるdatopotamab deruxtecan(Dato-DXd)の第 Ib相試験の中で、Dato-DXdとペムブロリズマブの併用療法にプラチナ併用療法を追加した群(Triplet群)と、追加しなかった群(Doublet群)を評価した試験がTROPION-Lung02試験である。Dato-DXdは4mg/kgもしくは6mg/kg、ペムブロリズマブは200mg 3週おきで実施されている。初回治療の患者において、Doublet群での奏効割合が44%、Triplet群での奏効割合が55%であった。安全性については、Grade3以上の治療関連の有害事象がDoublet群で31%、Triplet群で58%に発生している。試験治療に関連した死亡はなかったものの、Dato-DXdとペムブロリズマブの併用療法でとくに留意すべき口内炎Grade3以上はDoublet群8%、Triplet群6%、間質性肺炎All gradeはDoublet群17%(Grade3以上3%)、Triplet群22%(Grade3以上3%)と報告されている。TROP2に対するADCは、TROP2がNSCLCにおいて幅広く発現する良い標的蛋白であることから注目されているが、分子標的薬とは異なりADCでは細胞障害性抗がん剤の毒性も加味されることから安全性については留意が必要となることが、本試験の結果でも明らかにされている。現在、TROPION-Lung07試験(PD-L1 50%未満でのKEYNOTE-189レジメンと、Doublet、Tripletの3群比較試験)、TROPION-Lung08試験(PD-L1 50%以上でのペムブロリズマブとDoubletの比較試験)が実施されている。sunvozertinibEGFR exon20 insertionに対して開発が進められているsunvozertinib(DZD9008)を用いた、単群WU-KONG6試験の結果が報告された。EGFR exon20 insertion変異が確認され、3ラインまでの前治療歴を有する97例の患者が登録されている。年齢中央値は58歳、女性が59.8%、非喫煙者が67%、変異のタイプは769_ASVが39.2%、770_SVDが17.5%、プラチナ併用療法のほかにEGFR-TKIが26.8%、免疫チェックポイント阻害薬が35.1%で実施されていることが患者背景として報告された。独立評価委員会による奏効割合はPRが60.8%、SDが26.8%であり、exon20 insertion変異のタイプによらず有効性が示されている。主なGrade3以上の毒性は、下痢7.7%、CK上昇17.3%、貧血5.8%などであり、皮疹や爪囲炎等のEGFR wild typeの阻害に基づく有害事象の頻度は比較的低く抑えられている。EGFR exon20 insertionを標的とする薬剤の開発はこのところ過熱しており、EGFR wild type阻害に基づく有害事象を抑制しつつ、高い奏効割合を示す薬剤に期待が集まっている。SCARLET(WJOG14821L)試験SCARLET(WJOG14821L)試験は、KRAS G12C変異を有する、未治療進行非小細胞肺がん患者を対象として、ソトラシブとカルボプラチン+ペメトレキセドを併用する第II相試験である。期待奏効割合を65%、閾値奏効割合を40%と設定し、α0.1、β0.1として30例を必要症例数として実施された。患者背景からは、年齢中央値は70歳、男性/女性25/5、非喫煙/喫煙1/29であり、KRAS G12Cらしい患者集団であることが報告されている。主要評価項目であるBICRによる奏効割合は88.9%、80%信頼区間は76.9~95.8と統計学的にPositiveな結果であった。PFSの中央値はBICRで5.7ヵ月であり、6ヵ月時点のOS割合は87.3%と報告されている。KRAS G12Cに対する、ソトラシブ単剤の奏効割合は30%から35%と報告されており、必ずしも満足できる水準ではないことから、本試験の高い奏効割合は注目を集めている。一方、同じく今年報告された、KontRASt-01試験における新たなKRAS G12C阻害薬であるJDQ443により、Early phaseの試験ではあるものの57.1%という良好な奏効割合も報告されている。さらに、KRASやRASを対象とした薬剤開発は加速しており、Pan-KRAS阻害薬、Pan-RAS阻害薬などが次々と早期臨床試験に入り、有効性の向上が期待されている。

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ウイルス感染時の発熱による重症化抑制、腸内細菌叢が関係か/東大ほか

 これまで、ウイルスに感染した場合に外気温や体温が重症度に及ぼす影響は明らかになっていない。そこで、東京大学医科学研究所の一戸 猛志准教授らの研究グループは、さまざまな温度条件で飼育したマウスに対し、ウイルスを感染させた場合の重症度を解析した。その結果、体温の上昇によりウイルスに対する抵抗性が高まり、血中胆汁酸レベルが上昇した。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の血液についても解析した結果、軽症患者は中等症患者と比較して血中胆汁酸レベルが高かった。これらのことから、発熱により腸内細菌叢が活性化し、2次胆汁酸産生を介してウイルス感染症の重症化が予防されることが示唆された。本研究結果は、Nature Communications誌2023年6月30日号に掲載された。 外気温や体温がウイルス感染後の重症度に及ぼす影響を解析するため、マウスを4℃、22℃、36℃条件下で7日間飼育した。このマウスにインフルエンザウイルスまたは新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を経鼻的に感染させ、体温、体重、生存などへの影響を検討した。また、22℃、36℃で飼育したマウスの血清メタボローム解析を実施した。さらに、COVID-19患者を重症度で分類し(軽症、中等症I/II)、血液を解析した。 主な結果は以下のとおり。・36℃条件下で飼育したマウスの基礎体温は、38℃を超えた。・36℃条件下で飼育したマウスは、4℃、22℃条件下で飼育したマウスと比較して、インフルエンザウイルス、SARS-CoV-2に対して高い抵抗性を示し、感染後の生存率が有意に改善した。・36℃条件下で飼育したマウスは、4℃、22℃条件下で飼育したマウスと比較して、1次胆汁酸のコール酸、2次胆汁酸(腸内細菌によって産生)のデオキシコール酸(DCA)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)の血中濃度が有意に高かった。・22℃条件下で飼育したマウスに、通常の水道水またはDCA、UDCAを添加した水道水を与え、インフルエンザウイルスを経鼻的に感染させたところ、DCAやUDCAを与えた群では、肺のウイルス量や好中球数が減少し、感染後の生存率が有意に改善した。・COVID-19中等症I/II患者は、軽症患者と比較して、血漿中の重症化マーカーであるフィブリノーゲン濃度が有意に高かった。一方、胆汁酸の一種であるグリシン抱合型コール酸(GCA)について、中等症I/II患者は軽症患者と比較して、血漿中濃度が有意に低かった。 著者らは、「発熱による腸内細菌叢の活性化は、血中および腸内の胆汁酸レベルを上昇させ、インフルエンザウイルス、SARS-CoV-2感染後のウイルス複製および有害な炎症反応を抑制することが示された。COVID-19中等症I/II患者の血漿において、特定の胆汁酸が減少するという知見は、症状発現の差異に関する洞察を与え、COVID-19の転帰を緩和するためのアプローチを可能とするかもしれない」とまとめた。また、「これらの知見を活かして、今後は高齢者がインフルエンザやCOVID-19で重症化しやすくなるメカニズムの解明や、宿主とウイルスの共生メカニズムの解明、胆汁酸受容体を標的としたウイルス性肺炎の重症化を抑える治療薬の開発に向けた研究を推進する予定である」としている。

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日本人統合失調症患者の再入院予防に対する長時間作用型注射剤のベネフィット

 統合失調症患者に対する長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬のベネフィットに関するリアルワールドでのエビデンスは、とくに日本の就労人口において限られている。ヤンセンファーマのMami Kasahara-Kiritani氏らは、雇用されている患者を含む統合失調症患者の再入院予防に対するLAI抗精神病薬の影響を評価した。その結果、日本人統合失調症患者の入院予防に対するLAI抗精神病薬のベネフィットが示唆された。LAI抗精神病薬による治療を受けた患者は、フォローアップ期間中の入院期間および再入院リスクが有意に低下することが明らかとなった。Asian Journal of Psychiatry誌2023年8月号の報告。 日本医療データセンター(JMDS)の健康保険レセプトデータベースを用いて、レトロスペクティブ観察的集団ベース研究を実施した。対象は、2012年4月~2019年12月にLAI抗精神病薬を処方された就労者または被扶養者の統合失調症患者。LAI処方日をインデックス日とし、ベースライン時(インデックス日の365日前)の1年間のフォローアップ期間中におけるすべての原因による入院、精神医学的入院、統合失調症関連の入院を評価した。 主な結果は以下のとおり。・期間中にLAI抗精神病薬が処方された患者1,692例のうち、就労者患者55例(37.7%)、被扶養者患者91例(62.3%)を含む146例を分析対象とした。・平均年齢は37歳、女性は74例(50.7%)であった。・ベースライン期間中に入院しなかった患者は61例(41.8%)であった。・フォローアップ期間中に7日間以内の入院を経験した患者は、67例(45.9%)であった。・就労者は、被扶養者と比較し、フォローアップ期間中に入院しなかった患者の割合が高かった。 ●すべての原因による入院がなかった患者の割合:69.1% vs.61.5% ●精神医学的入院がなかった患者の割合:76.4% vs.67.0% ●統合失調症関連の入院がなかった患者の割合:87.3% vs.71.4%

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乳頭型頭蓋咽頭腫、BRAF・MEK阻害薬併用で奏効率94%/NEJM

 乳頭状頭蓋咽頭腫患者を対象とした小規模な第II相単群試験において、ベムラフェニブ+cobimetinibのBRAF・MEK阻害薬併用療法により16例中15例で客観的奏効(部分奏効以上)が得られたことを、米国・ハーバード大学医学大学院のPriscilla K. Brastianos氏らが報告した。下垂体-視床下部軸の原発性脳腫瘍である頭蓋咽頭腫は、手術、放射線療法あるいはそれらの併用による治療によって、失明、神経内分泌機能障害、記憶喪失など臨床的に重大な後遺症が引き起こされることが多い。遺伝子型の解析では、乳頭状頭蓋咽頭腫の90%以上の患者が、BRAF V600E遺伝子変異を保有していることが示されているが、放射線療法歴のない乳頭状頭蓋咽頭腫の患者におけるBRAF・MEK阻害薬併用療法の安全性と有効性に関するデータは不足していた。NEJM誌2023年7月13日号掲載の報告。ベムラフェニブ+cobimetinib併用療法による客観的奏効を評価 研究グループは、2018年2月20日~2020年3月31日に、放射線療法歴または全身療法歴のない測定可能な病変を有する、ECOG-PSスコア0~2、18歳以上のBRAF V600E変異陽性乳頭状頭蓋咽頭腫患者を登録し、28日を1サイクルとしてベムラフェニブ960mgを1日2回28日間、cobimetinib 60mgを1日1回21日間、それぞれ経口投与した。 主要評価項目は、4ヵ月後の造影MRIで評価した客観的奏効で、事前に規定された腫瘍量基準に基づき中央画像判定により評価した。客観的奏効率94%、2年無増悪生存率58% 17例が登録され、併用薬の使用により不適格となった1例を除く16例が解析対象となった。16例は年齢中央値49.5歳(範囲:33~83)、15例のECOG-PSスコア0/1で、ベースライン腫瘍量中央値2.75cm3であった。 16例中15例(94%、95%信頼区間[CI]:70~100)において、持続的な客観的奏効(完全奏効または部分奏効)が認められた。腫瘍量減少率の中央値は、91%(範囲:68~99)であった。 追跡期間中央値は、22ヵ月(95%CI:19~30)で、治療サイクル数中央値は8であった。 無増悪生存率は、12ヵ月時点で87%(95%CI:57~98)、24ヵ月時点で58%(95%CI 10~89)であった。3例は治療中止後の追跡期間中に病勢進行が認められたが、死亡例は確認されなかった。 奏効が得られなかった1例は、有害事象(Grade3のアナフィラキシーおよびGrade2の急性腎障害)のため投与開始8日後に治療を中止した。 治療に関連する可能性のあるGrade3の有害事象は、発疹6例を含む12例に認められた。Grade4の有害事象は2例(高血糖1例、クレアチンキナーゼ上昇1例)報告され、3例は有害事象により投与を中止した。

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植物由来cytisinicline、禁煙効果を第III相試験で検証/JAMA

 行動支援との併用によるcytisiniclineの6週間および12週間投与は、いずれも禁煙効果と優れた忍容性を示し、ニコチン依存症治療の新たな選択肢となる。米国・ハーバード大学医学大学院のNancy A. Rigotti氏らが米国内17施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「ORCA-2試験」の結果を報告した。cytisinicline(cytisine)は植物由来のアルカロイドで、バレニクリンと同様、ニコチン依存を媒介するα4β2ニコチン性アセチルコリン受容体に選択的に結合する。米国では未承認だが、欧州の一部の国では禁煙補助薬として使用されている。しかし、従来の投与レジメンと治療期間は最適ではない可能性があった。JAMA誌2023年7月11日号掲載の報告。cytisinicline 6週間投与と12週間投与の有効性をプラセボと比較検証 研究グループは2020年10月~2021年6月に、現在1日10本以上タバコを吸っており、呼気一酸化炭素(CO)濃度が10ppm以上で、禁煙を希望する18歳以上の成人810例を、cytisinicline 3mgを1日3回12週間投与(12週間投与群、270例)、cytisinicline 3mgを1日3回6週間投与後プラセボ1日3回6週間投与(6週間投与群、269例)、プラセボ1日3回12週間投与(プラセボ群、271例)の3群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。全例が無作為化から12週目までにカウンセラーによる10分間の禁煙行動支援を受け(最大15回)、16週、20週および24週時には短いセッションが行われた。 主要アウトカムは、投与期間の最終4週間における生化学的に確認された禁煙継続(すなわち、6週間投与では3~6週目、12週間投与では9~12週目)。副次アウトカムは、投与期間の最終4週間から24週目まで(すなわち、6週間投与では3~24週目、12週間投与では9~24週目)の禁煙継続とした。 2週目から12週目までの禁煙継続は、毎週評価した前回受診時からの禁煙の自己申告と呼気CO濃度10ppm未満で確認し、16週、20週および24週目の禁煙は、判定基準のRussell Standard(前回の受診時から5本以上喫煙していない)を用いて自己申告で確認した。禁煙継続率はcytisinicline群でプラセボ群の約3~6倍 無作為化された810例(平均年齢52.5歳、女性54.6%、1日平均喫煙数19.4本)のうち、618例(76.3%)が試験を完遂した。 禁煙継続率は、cytisinicline 6週間投与群とプラセボ群との比較では、3~6週目で25.3% vs.4.4%(オッズ比[OR]:8.0、95%信頼区間[CI]:3.9~16.3、p<0.001)、3~24週目で8.9% vs.2.6%(3.7、1.5~10.2、p=0.002)であった。また、cytisinicline 12週間投与群とプラセボ群との比較では、9~12週目で32.6% vs.7.0%(OR:6.3、95%CI:3.7~11.6、p<0.001)、9~24週目で21.1% vs.4.8%(5.3、2.8~11.1、p<0.001)であった。 主な有害事象は悪心、頭痛、異常な夢、不眠症であったが(各群10%未満)、そのうち異常な夢と不眠症のみプラセボ群よりcytisinicline群で発現率が高かった。 有害事象による投与中止は、cytisinicline群で539例中16例(2.9%)(6週間投与群:2.2%、12週間投与群:3.7%)、プラセボ群で270例中4例(1.5%)であった。試験薬に関連する重篤な有害事象は認められなかった。 なお、著者は研究の限界として、参加者が主に白人であったこと、有害事象の検証が短期間であったこと、本試験における行動支援の強度等は一般的な医療現場で提供できるものを超えている可能性があることなどを挙げている。

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留置場から来た青年【Dr. 中島の 新・徒然草】(486)

四百八十六の段 留置場から来た青年暑いですね。イタリアのシチリア島では48度、米国カリフォルニア州のデスバレーでは56度を記録したというニュースが報じられています。日本でも40度近い気温が愛知県豊田市で記録されました。空と気温はすっかり夏ですが、梅雨明け宣言は出されていません。梅雨前線がまだ日本列島の上空を行ったり来たりしているからだそうです。さて、大阪医療センターは大阪府警に近いせいか、留置場に収容されている人の診療を頼まれることがよくあります。その日、私がERに呼ばれて診察したのは警察に勾留されている青年。実は、青年はすでに深夜の当院ERを受診していたのです。留置場内での揉め事による頭部外傷でした。その時の頭部CTにはとくに異常所見なし。しかし、当直医が「再度CTを撮影するのでもう一度連れて来てください」と言ったのだとか。「そんなもん、有事再診でいいがな」と思いつつERに向かいました。有事再診とは、頭が痛くなるとか嘔吐するとか意識レベルが低下するとか、有事の時に再診してください、という意味です。ERに到着すると、どこにいるのかな、と探すまでもありませんでした。いかつい警官2名に付き添われた青年が、ストレッチャーに横たわっていたからです。中島「〇〇さんですね」警官「あっ先生、よろしくお願いします」こうしてわざわざ連れて来てくれたわけですから、彼らの律義さを踏みにじるわけにはいきません。中島「どれどれ」そう言って青年の頭をペンライトで観察してみました。左耳が赤くなって腫れています。中島「こっち側を殴られたんですか?」青年「ええ、ヘルメットでやられたんですよ」どうやら留置場の収容者同士でのトラブルのようでした。中島「なるほどねえ」青年「触られると痛いです」中島「2回目のCTでもとくに異常はないので大丈夫ですよ」青年「よかった!」中島「それにしてもヘルメットなんかで叩かれたら災難ですね」青年「こっちが先に手を出したんで、仕方ないんですけど」アカンがな、先に手を出したら。とはいえ、こういう時は労っておくのが無難です。中島「来てもらってよかったです。やはりキチンとしておいたほうがいいですからね」有事再診で十分だったのに、などとは口が裂けても言えません。中島「では、お大事にしてください」青年&警官「ありがとうございました!」青年と2人の警官は見事にハモっていました。この青年が何をやって留置場にいるのかは、よくは知りません。しばらく勾留されているくらいだから、余程のことをやらかしたんでしょうね。青年の口ぶりからすると、警察や喧嘩も彼にとっては日常風景みたいです。そういったアウトロー的な人に対しても、診察の時にキチンと向き合うに越したことはありません。思いがけず感謝されました。ということで最後に1句梅雨明けぬ 灼熱地獄で 殴り合い

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フェローには教育を受ける権利がある、教育しない指導医には厳しい批判も!?【臨床留学通信 from NY】第50回

第50回:フェローには教育を受ける権利がある、教育しない指導医には厳しい批判も!?私が米国に来て最初に驚いたのは、おびただしいレジデント、フェローの数です。米国では患者の在院日数がかなり短いこともあり、病床数が同じでも、米国のほうが2、3倍忙しくなるイメージです。それを差し引いても、レジデントとフェローの数が多いのは、主に夜間も含めて彼らが24時間患者さんをケアすることが求められているからです。私がいたMount Sinai Beth Israelには200床に対してレジデントが総計100人、Montefiore Medical Centerは3つの病院を含めて病床数約1,600床に対してフェローが33~36人います。日本では考えられない数です。ローテーションについては、日本と同様に選択ローテーションはできるので、研究に2週間だったり、緩めの専門外来ローテーションを入れたり、フェローであればカテーテルだけに特化したローテーションができたりもします。ただし、多くはコンサルテーション、CCUなど、それなりにハードな日程が多く、昼夜問わず雑用を余儀なくされます。次の段階であるアテンディング(指導医)になると、もちろんそういったことがないため、ライフスタイルもお給料も全然違います。私の場合はある程度日本での経験があるので、日米の違いを学ぶ程度で、あまり教育を受けることについて気にしていませんでした。しかしながら先日、フェローたちを統括するプログラムディレクターと呼ばれる人たちと話し合う機会があり、そこで同僚は「フェローは教育を受ける権利があるし、アテンディングは教育しなければならない」と主張をしていたのです。どうやらこれは、米国ではまったくもって普通のことのようです。教育を受けられるからフェローをするのだと。確かに私はレジデントが終わると、内科専門医の資格を持っているためアテンディングとして働く資格があるにもかかわらず、循環器フェローを選択しました。私にとっては、循環器が面白いから、もしくはやらないと米国での専門医が取れないからフェローをしています。しかし、米国の同僚たちは、どちらかというと教育を受けたいからフェローをするという感覚なのです。日本では、初期研修医を教育する「医師臨床研修制度」が2004年にできて20年弱とはいえ、後期研修医を教育する仕組みが確固としてあるわけではありません。米国のフェローは日米レジデント同様、マッチングの仕組みで正式なプログラムに応募します。循環器フェローは競争率が高いため、ある程度勝ち抜いて入るのに比べて、日本の後期研修医はそういった競争がありません。責任の所在についても、日本では上司とのディスカッションはあるにせよ、自己責任の部分もあり、実際には自分でリソースを探して、かなり勉強しなければならないのが通例かと思います。ただしそれだけ初期研修医よりも給料が良かったり、場合によってはほぼスタッフと同じだったりします。しかし、米国のフェローは責任を取らされない代わりに、給料はほぼレジデントと同じです。かなり非教育的な雑用もあります。このようにアテンディングと差別化されているため、フェローは教育を受ける権利があると主張しているのです。相互評価もネット上で行うことが可能で、あまり教育熱心でないアテンディングがいると、それを匿名で批判したりするのも面白い仕組みだと思います。アテンディングも、そこには気をつけて教育しているようです。

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ASCO2023 レポート 老年腫瘍

レポーター紹介ここ数年、ASCO annual conferenceにおいて高齢がん患者に関するpivotal trialが次々と発表され、老年腫瘍の領域を大いに盛り上げている。これに伴い、高齢者機能評価(Geriatric Assessment)という用語が市民権を得てきたように感じる。今年のASCOでは、高齢者機能評価を単に実施するのではなく、その結果をどのように使うべきかを問うような試験が多かったように思う。その中から、興味深い研究を抜粋して紹介する。『高齢者機能評価+脆弱な部分をサポートする診療』の費用対効果分析(THE 5C STUDYの副次的解析: #120121))THE 5C STUDYは、ASCO 2021 annual conferenceで発表されたランダム化比較試験である2)。70歳以上の高齢がん患者を対象として、標準診療である「通常の診療(Standard of Care:SOC)」と比較して、試験診療である「高齢者機能評価を実施し、通常の腫瘍学的な治療に加えて老年医学の訓練を受けたチームによるサポートを行う診療(Geriatric Assessment and Management:GAM)」が、健康関連の生活の質(EORTC QLQ-C30のGlobal health status)において、優越性を示すか否かを検証したランダム化比較試験である。残念ながら、QOLスコアの変化は両群で差がなくnegative trialであった。今回、事前に設定されていた費用対効果分析の結果が公表された。カナダの8つの病院から350例の参加者が登録され、SOC群に177例、GAM群に173例が割り付けられた。EQ-5D-5Lは、登録時、登録6ヵ月後、9ヵ月後、12ヵ月後に評価され、医療費(入院費、救急外来受診費、検査や手技の費用、化学療法や放射線治療の費用、在宅診療の費用、保険外医療費)は患者の医療費用ノートなるものから抽出された。Primary endpointは増分純金銭便益(incremental monetary benefit:INMB)とした(INMB=(λ*ΔQALY)−ΔCosts、閾値は5万ドル)。結果として、患者当たりの総医療費は、SOC群で4万5,342ドル、GAM群で4万8,396ドルであった。全適格患者におけるINMBはマイナス(-3,962ドル、95%CI:-7,117ドル~-794ドル)であり、SOCと比較してGAMの費用対効果は不良という結果であった。サブグループ解析では、根治目的の治療をする集団におけるINMBはプラス(+4,639ドル、95%CI:61ドル~8,607ドル)、緩和目的の治療をする集団におけるINMBはマイナス(−13,307ドル、95%CI:-18,063ドル~-8,264ドル)であった。以上から、根治目的の治療をする集団においては、SOCと比較してGAMの費用対効果は良好であったと結論付けている。「高齢者機能評価+脆弱な部分をサポートする診療」の費用対効果分析を行った初めての試験である。個人的な意見だが、とても勇気のある研究だと思う。これまで、高齢者機能評価+脆弱な部分をサポートする診療の有用性を評価するランダム化比較試験の結果が複数公表されており、NCCNガイドラインなどの老年腫瘍ガイドラインでもこれが推奨されている。つまり、老年腫瘍の領域において、高齢者機能評価を実施すること、また高齢者機能評価+脆弱な部分をサポートする診療を浸透させることは、暗黙の了解であった。しかし、このタイミングでGAMの費用対効果分析を実施するあたり、THE 5C STUDYの研究代表者であるM. Putsは物事を客観的に見ることができる研究者であることがわかる(高齢者機能評価を浸透することに尽力している研究者でもある)。本研究では、根治目的の治療を実施する場合はGAMの費用対効果が悪いこと、緩和目的の治療を実施する場合はGAMの費用対効果が良いことが示された。もちろん費用対効果分析の研究にはlimitationが付き物であり、またサブグループ解析の結果をそのまま受け入れるべきではないが、この結果はある程度は臨床的にも理解可能である。すなわち、根治を目的とする治療ができるような高齢者は早期がんかつ元気であることが想定され、この集団はGAMに鋭敏に反応するかもしれない。たとえば、手術や根治的(化学)放射線治療などの根治を目的とする治療を実施する場合、早期のリハビリ(術前リハビリを含む)や栄養管理などはADLの自立に役立つだろうし、有害事象の予防・早期発見に役立つだろう。一方、緩和を目的とする治療を実施するような高齢者は進行がんかつフレイルな高齢者あることが想定され、この集団はGAMをしても反応が鈍いのかもしれない。GAMには人材や時間という医療資源もかかるため、GAMを導入する場合、優先順位は手術などを受ける患者から、という議論をする際の参考資料になりうる結果である。老年科医によるコーチングの有用性を評価した多施設ランダム化比較試験(G-oncoCOACH study: #120003))明鏡国語辞典によると、「コーチング」とは、「(1)教えること。指導・助言すること。(2)コーチが対話などのコミュニケーションによって対象者から目的達成のために必要となる能力を引き出す指導法。」とある。G-oncoCOACH studyは、「G(Geriatrician、老年科医)」が「oncoCOACH(腫瘍学も含めたコーチング)」することの有用性を検証したランダム化比較試験である。本試験はベルギーの2施設で実施された。主な適格規準は、70歳以上、固形腫瘍の診断を受け、がん薬物治療が予定されており(術前補助化学療法、術後補助化学療法は問わず、また分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬も対象)、余命6ヵ月以上と予測されている集団であった。登録後は、高齢者機能評価によるベースライン評価ができた患者のみが、標準診療群(腫瘍科医が主導して患者指導[コーチング]する診療)と試験診療群(老年科医が主導して患者指導[コーチング]する診療)にランダム化された。具体的には、標準診療群では、登録時に実施された高齢者機能評価の結果と非常に簡素なケアプランが提示されるのみで、それを実践するか否かは腫瘍科医に委ねられていた。一方、試験診療群では、登録時に実施された高齢者機能評価の結果と非常に詳細なケアプランが提示され、また老年科医チームによる集中的な患者指導、綿密なフォローアップにより、ケアプランを診療に実装し、再評価および継続できるようなサポートが徹底された。primary endpointはEORTC QLQ-C30のGlobal health status(GHS)。登録時から登録6ヵ月時点での臨床的に意味のある差を10ポイントと定義し、α5%(両側)、検出力80%とした場合の必要登録患者数は195例。ベースラインからの差として、3ヵ月、6ヵ月のデータを基に、6ヵ月時点の両群の最小二乗平均値を推定し、その群間差をベースラインの因子を含めて調整したうえでprimary endpointが解析された。結果として、背景因子で調整した登録時から登録6ヵ月後のGHSの変化は、標準診療群で-8.2ポイント、試験診療群で+4.5ポイントであり、その差は12.8ポイントであった(95%CI:6.7~18.8、p<0.0001)。この結果から、高齢がん患者の診療において、老年科医が患者指導(コーチング)をする診療を推奨すると結論付けている。いくら高齢者機能評価を実施して、それに対するケアプランを提示しても、それが実践されていなかったり継続的なサポートがなされていなかったりすれば意味がないだろう、という考えの下に行われた研究である。つまり、「腫瘍科医による患者指導(コーチング)」 vs.「老年科医による患者指導(コーチング)」を比較した試験ではあるが、その実、「ケアプランの実践と、その後のサポートを徹底するか否か」を評価している試験である。実際、本試験が実施されたベルギーでは、ケアプランを策定しても、それを日常診療に使用する腫瘍科医は46%程度と低いものだったようである。腫瘍科医に任せると完全にはケアプランが実践されないが、老年科医に任せればケアプランが実践され、継続性もサポートされるだろうということである(筆者が研究代表者から個人的に聞いた内容も含まれる)。結果、高齢者機能評価は単に実施するだけでは十分ではなく、その使い方に精通した医療者(本試験の場合は老年科医)がリーディングするのが良いというものであった。本邦には、がん治療に精通した老年科医が少ないため、現時点では「老年科医による患者指導(コーチング)」を取り入れるのは難しいだろう。しかし、腫瘍科医では想像できないような老年科医の「コツ」なるものがあるのは容易に想像できる。老年腫瘍を発展するために老年科医の存在は必須であり、老年科医らとの協働は引き続き進めてゆくべきであろう。日本発の高齢者機能評価+介入のクラスターランダム化比較試験(ENSURE-GA study: #4094))非小細胞肺がん患者を対象とした、高齢者機能評価+介入の有用性を患者満足度で評価した日本発のクラスターランダム化比較試験*である。*地域や施設を1つのまとまり(クラスター)としてランダム化する研究デザイン主な適格規準は、75歳以上、非小細胞肺がんの診断を受けている、根治的治療ができない、PS 0〜3、初回化学療法未実施、登録時の高齢者機能評価で脆弱性を有するとされた患者であった。本試験は、病床数とがん診療連携拠点病院の指定の有無および施設の所在地域で層別化し、同層の中で「施設」のランダム化が行われた。標準診療群は「通常の診療(高齢者機能評価の結果は医療者に伝えない)」、試験診療群は「高齢者機能評価の結果に基づき脆弱な部分をサポートする診療」である。primary endpointは、治療開始「前」の患者満足度(HCCQ質問指標で評価:35点満点[点数が高いほど満足度が高い])。必要患者登録数は1,020例であった。結果、治療開始「前」の患者満足度は、標準診療群で29.1ポイント、試験診療群で29.9ポイントであった(p<0.003)。米国の老年腫瘍学の大家にS. Mohileがいる。本試験は、彼女が2020年にJAMA oncologyに公表した試験の日本版である(がん種のみ異なる)5)。Mohileらの試験と同じとはいえ、「患者」ではなく「施設」をランダム化(クラスターランダム化)したところが本試験の特徴である。通常のランダム化、すなわち「患者」をランダム化する場合、同じ施設、同じ主治医が、異なる群に割り付けられた患者を診療する可能性がある。薬物療法の試験であれば、またprimary endpointが全生存期間などの客観的な指標であれば、この設定でも問題ないだろう。しかし、本試験のように、高齢者機能評価を実施するか否かを評価するような試験、また、primary endpointが主観的な指標である場合は、この設定だと問題が生じる可能性がある。すなわち、通常の「患者」をランダム化するデザインにすると、ある登録患者で高齢者機能評価の有用性を実感した医療者がいた場合、次の登録患者が標準診療群だとしても臨床的に高齢者機能評価を実施してしまうことはありうる(その逆もありうる)。そうなると、両群で同じことをしていることになり、その群間差は薄まってしまうのである。これを解決するのが「施設」のランダム化、すなわちクラスターランダム化であるが、その方法が煩雑であること、サンプルサイズが増えてしまうことなどから、それほど日本では一般的ではない6)。しかし、本試験では、クラスターランダム化デザインを選択したことにより、その科学性が高まったといえる。一方、primary endpointを治療開始「前」の患者満足度(HCCQ質問指標)としたことについては疑問が残る。Mohileらの試験でもprimary endpointを治療開始「前」の患者満足度にすることの是非は問われたが、老年腫瘍の黎明期でもあり、高齢者機能評価のエビデンスを蓄積するためにやむを得ないと考えていた。しかし、時代は変わり、高齢者機能評価のエビデンスが蓄積されつつある現在で、primary endpointを治療開始「前」の患者満足度にすることの意義は変わってくる。登録から治療開始前までに高齢者機能評価を実施し、それについてサポートを受けられるのであれば、患者の満足度が高いことは自明であろう。また、本試験では、HCCQの群間差は0.8ポイントであるが、この差が臨床的に意味のある差か否かは不明である。さらに、ポスターに掲載されているFigureを見る限り、登録3ヵ月後のHCCQは両群で差がないように見える。しかし、本邦から1,000例を超す老年腫瘍のクラスターランダム化比較試験が発表されたことは称賛に値する。参考1)Cost-utility of geriatric assessment in older adults with cancer: Results from the 5C trial2)Impact of Geriatric Assessment and Management on Quality of Life, Unplanned Hospitalizations, Toxicity, and Survival for Older Adults With Cancer: The Randomized 5C Trial3)A multicenter randomized controlled trial (RCT) for the effectiveness of Comprehensive Geriatric Assessment (CGA) with extensive patient coaching on quality of life (QoL) in older patients with solid tumors receiving systemic therapy: G-oncoCOACH study4)Satisfaction in older patients by geriatric assessment using a novel tablet-based questionnaire system: A cluster-randomized, phase III trial of patients with non-small-cell lung cancer (ENSURE-GA study; NEJ041/CS-Lung001)5)Communication With Older Patients With Cancer Using Geriatric Assessment: A Cluster-Randomized Clinical Trial From the National Cancer Institute Community Oncology Research Program6)小山田 隼佑. “クラスター RCT”. 医学界新聞. 2019-07-01. (参照2023-07-03)

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第54回 新しいSNS「Threads」やっていますか?

「Threads」illust ACより使用わずか5日間でユーザーが1億人を突破したとされる、新しいSNS「Threads(スレッズ)」を皆さんご存じでしょうか。これは、Meta Instagramチームが開発したテキスト共有アプリです。インスタグラムのアカウントを持っている人はそのまま使用できます。機能的にはTwitterと非常に類似しています。なので、要はちょっとお上品なTwitterみたいな位置付けになっているわけですが、Twitterを運営するX Corp.は黙っていられません。彼らはマーク・ザッカーバーグ率いるMetaに対し、ThreadsがTwitterの知的財産権を侵害していることから、訴訟を起こすと警告しています。何の目的でSNSをするのか?私は、キラキラした写真を上げてイイネ!が欲しいわけではありませんので、目の前の料理や景色が「映える」かどうかは、さほど気になりません。私は主に、情報収集目的で現在SNSを使っております。とくにTwitterは、各種国際学会や団体が公式アカウントを持っているだけでなく、学会会場で医師たちがこぞって医学ニュースを速報してくれます。そのため、学会名や疾患名をワード検索して、SNSで医学情報を手に入れることは、令和時代ならではの勉強法なのです。医学書を読むことや論文を読むことも好きですが、この1年は、ChatGPTなどのAIやTwitterなどのSNSを利用する頻度が増えました。Threadsのメリット・デメリットThreadsのメリットは、投稿文字数が多いことです。Twitterは通常のユーザーであれば140字までに投稿は制限されますが、Threadsは500字まで可能です。また、Threadsでは、1回につき画像を10枚まで投稿することができます。Twitterは4枚しか投稿できませんから、Threadsでは情報量が多い投稿が可能となります。さらに、Twitterと異なり、Threadsには広告機能が実装されていません。そのため、ストレスなく使用することができる点に優位性があります。しかし、Threadsにもデメリットがあります。アカウント名の検索機能はあるのですが、現時点ではキーワードによるスレッドの検索ができません。そのため「この医学情報をタイムリーに調べたい」という目的での検索が厳しいのです。またTwitterと違ってパソコンのブラウザから閲覧することはできません。そして、ユーザー同士がお互いにダイレクトメッセージを送り合うことができません。それぞれ一長一短があるTwitterとThreads。今後どちらも生き残るのか、あるいはどちらかが自然淘汰されて消えるのか、これからの「SNS戦国時代」に目が離せません。

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