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コロナ5類化、もう不要だと思う感染対策は?/医師1,000人アンケート

 5月8日より、新型コロナウイルス感染症が「5類感染症」に移行となり、今後の感染対策は個人の判断に委ねられるものが増える。今後も必要、または、もう不要だと思う感染対策、5類移行に伴い懸念していること、新型コロナが収束したと思える状況などについて、会員医師1,000人を対象に『新型コロナ5類移行に伴う感染対策、まだ必要・やめてもよいと思うものアンケート』を4月10日に実施した。なお、本アンケートは、東京iCDC(東京感染症対策センター)リスコミチームによって実施された都民アンケート調査1)を参考に作成した。5類移行に伴いマスク着用は18%減少 「Q. プライベートでの新型コロナの感染対策について」という設問では、4月現在行っているものと、5類移行後も必要だと思う一般的な感染対策11項目についてそれぞれ聞いた。現時点で最も多かったのは「マスクの着用」(83%)、続いて「こまめに手を洗う」(76%)であった。一方、5類移行後については、「マスクの着用」が必要だと考える人の割合が18%減少して65%となり、「こまめに手を洗う」(72%)ことが必要だと考える人の割合と順位が逆転した。 年代別の結果では、ほとんどの項目で50歳未満よりも50代、60代以上と、年代が上がるにつれて一般的な感染対策が必要と考える人の割合が多くなっていた。とくに5類移行後のマスク着用について、50歳未満は60%弱であったが、50代は71%、60代以上は76%と、10%以上の差がみられた。もう不要な感染対策、1位はハンドドライヤーの禁止、2位はアクリル板 「Q. もうやめたほうがよいと思う感染対策は?」という設問では、とくにコロナ禍になって顕著に行われるようになった、飲食店などでのアクリル板やビニールの仕切りの設置、黙食、トイレのハンドドライヤー使用禁止、病院での面会禁止などの15項目の感染対策について聞いた。約半数の人が不要と思う感染対策としては、「トイレのハンドドライヤー使用禁止」(55%)、「飲食店などでのアクリル板などの設置」(51%)、「学校での授業中のマスク着用」(47%)、「黙食」(47%)であった。 この設問での年代別の傾向として、40歳未満よりも40代以上のほうが、項目に挙げた感染対策についてもう不要だと考える人の割合が全体的に多かった。また、病床数別の傾向では、0~19床の診療所では、「黙食」(53%)、「病院の面会の禁止」(47%)となり、20床以上の病院よりも10%ほど高くなっており、医療機関の規模により不要だと思う感染対策の傾向に若干の違いがみられた。 ちなみに、本アンケートの参考とした東京iCDCリスコミチームによる同様の項目についてのアンケート結果では、もうやめたほうがよい感染対策の上位は、多い順に「卒業式、入学式のマスク着用」(38.6%)、「授業中のマスク着用」(36.9%)、「黙食」(35.6%)といった学生に関わるものとなっており、続いて「トイレのハンドドライヤー使用禁止」(29.7%)、「飲食店などでのアクリル板などの設置」(29.1%)となっている。都民の結果と比べると、医師のほうが不要だと思う感染対策をやめることについてより積極的であった。半数が感染の再拡大を不安視、5類化により人々の意識が衝突か 「Q. 新型コロナが収束したと思える状況」については、全体の3分の1が「インフルエンザと同じような感覚で捉えられるようになったら」(33%)と答えている。続いて、「感染しても普通のことと思えるようになったら」(22%)、「治療薬が普及したら」(13%)の順に多かった。 今後の新型コロナについて、全体の半数の医師が「感染が再び拡大する不安がある」(51%)としている。また、新型コロナの5類への移行に伴い懸念していることとして、具体的に以下のような意見が挙げられた。<感染の再拡大>・さまざまな行事もコロナ以前の形式で再開して、ゴールデンウィークで人流が激しくなり、ちょうど5類になったところでコロナ患者がどっと増えると思う。(外科・50代)・基礎疾患のある人や高齢者の感染が増加して重症化しないか心配。(臨床研修医・20代)・後遺症を伴う人の増加や、バランスの取れない疾患対策。(精神科・40代)<病院の体制>・医療施設側がゼロコロナ対応を続ける限り、医療逼迫の問題はなくならない。(救急科・60代)<受診控え>・治療費が自己負担になることで未治療の感染者が増え、感染拡大につながる懸念がある。(精神科・50代)<人々の意識>・コロナに対する考えの違いによりトラブルが生じる可能性がある。(形成外科・30代)<情報の把握>・死亡者数、感染者数のリアルタイムでの報道がされなくなり、感染対策、予防が過小評価されることが懸念される。(総合診療科・30代)アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。コロナ感染対策、もう不要と思うものは?/医師1,000人アンケート

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輸血ドナーの性別、レシピエントの死亡率には影響せず/NEJM

 血液ドナーの特性が輸血レシピエントのアウトカムに影響を及ぼす可能性を示唆する観察研究のエビデンスが増えているという。カナダ・モントリオール大学のMichael Chasse氏らは「iTADS試験」において、女性の赤血球ドナーからの輸血を受けた患者と男性の赤血球ドナーからの輸血を受けた患者で、生存率に有意差はないことを示した。研究の詳細は、NEJM誌2023年4月13日号で報告された。カナダの二重盲検無作為化試験 iTADS試験は、カナダの3施設が参加した二重盲検無作為化試験であり、2018年9月~2020年12月の期間に患者の登録が行われた(カナダ保健研究機構の助成を受けた)。 赤血球輸血を受ける患者が、男性ドナーの赤血球を輸血する群、または女性ドナーの赤血球を輸血する群に無作為に割り付けられた。無作為化は、血液供給業者による過去の配分とマッチさせるため、60対40(男性ドナー群対女性ドナー群)の割合で行われた。 主要アウトカムは生存(無作為化の日から死亡または追跡期間終了の日まで)であり、男性ドナー群が参照群とされた。 8,719例が登録され、輸血前に男性ドナー群に5,190例が、女性ドナー群に3,529例が割り付けられた。ベースラインの全体の平均(±SD)年齢は66.8±16.4歳、女性が50.7%であった。入院患者が79.9%、外来患者が11.3%、救急患者が6.9%であり、入院患者のうち外科治療が42.2%、集中治療が39.7%を占めた。MRSA感染リスクは女性ドナー群で高い ベースラインの輸血前ヘモグロビン値は79.5±19.7g/Lであった。女性ドナー群の患者は平均5.4±10.5単位の赤血球の投与を受け、男性ドナー群の患者は平均5.1±8.9単位の投与を受けた(群間差:0.3単位、95%信頼区間[CI]:-0.1~0.7)。 平均追跡期間11.2ヵ月の時点で、女性ドナー群の1,141例、男性ドナー群の1,712例が死亡した。生存率は女性ドナー群が58.0%、男性ドナー群が56.1%で、死亡の補正後ハザード比(HR)は0.98(95%CI:0.91~1.06)であり、両群間に有意な差は認められなかった(p=0.43[log-rank検定])。 30日、3ヵ月、6ヵ月、1年、2年時の生存率にも、両群間に有意差はみられなかった。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染の発生率は、男性ドナー群よりも女性ドナー群で高かった(HR:2.00、95%CI:1.15~3.46)。入院患者における平均入院日数は、女性ドナー群が21.0±26.6日、男性ドナー群は20.8±27.3日だった(群間差:0.2日、95%CI:-1.1~1.5)。 著者は、「サブグループ解析では、男性ドナー群の男性患者に比べ女性ドナー群の男性患者で死亡リスクが低く(HR:0.90、95%CI:0.81~0.99)、20~29.9歳のドナーから輸血を受けた患者においては男性ドナー群に比べ女性ドナー群の患者で死亡リスクが高かった(HR:2.93、95%CI:1.30~6.64)が、これらの知見は偶然によるものと考えられる」としている。

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過去のSARS-CoV-2感染に伴う再感染に対する防御効果:系統的レビューとメタアナリシス(解説:寺田教彦氏)

 本研究は、2022年9月31日まで(原文ママ)に報告されたプレプリントを含む、後ろ向きコホート研究、前向きコホート研究および検査陰性症例対照研究の中で、SARS-CoV-2罹患歴の有無によるCOVID-19感染のリスクを比較した研究を特定し、システマティックレビューおよびメタ解析を行っている。 結果の要約は、「コロナ感染による免疫、変異株ごとの効果は~メタ解析/Lancet」で紹介されているが、簡潔に研究結果をまとめると、「再感染や症候性再感染は、初期株、アルファ株、ベータ株、デルタ株に対しては高い予防効果を示したが、オミクロンBA.1株では再感染や症候性再感染の予防効果が低かった。ただし、重症化予防効果については、既感染1年後までアルファ株、ベータ株、デルタ株、オミクロンBA.1株のいずれも維持していた」と筆者は論じている。 現在、SARS-CoV-2の主流株は世界でも本邦でも、オミクロン株であり、COVID-19患者が増加した際の対策を考える場合は、オミクロン株を対象に想定するべきであろう。 さて、医療現場の感覚としても、本研究結果のとおり、オミクロン株では、COVID-19に罹患してから数ヵ月で再感染するケースが増えたことを実感しているのではないだろうか。また、オミクロン株の1年以内の再感染患者で、高齢者などの余力が乏しい患者やワクチン未接種のリスク患者でなければ、重症化することがほとんどなくなったことも感覚と合致するのではないだろうか。 今後のCOVID-19再流行に備える場合に、本研究を参考にすることができる事項として、(1)新型コロナワクチンの追加接種タイミング、(2)抗ウイルス薬の投与判断、(3)病院や高齢者施設における感染対策があると考える。 1つ目の、新型コロナワクチンの接種タイミングについて考える。 直近の本邦における、COVID-19に対するワクチン接種は、「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の議論を踏まえた方針」を参考にすると、高齢者(65歳以上)、基礎疾患を有する者(5~64歳)、医療従事者・介護従事者等(5~64歳)を対象に5~8月以降の追加接種が議論されている(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001069231.pdf)。WHOの方針では、高優先集団である高齢者や高度な免疫不全のある若年者や医療従事者では4回目以降の追加ブースターは12ヵ月おき、超高齢者や重症化リスクのある高齢者、月齢6ヵ月以上の小児と中等度以上の免疫不全を伴う成人では6ヵ月おきでの定期接種を推奨している(WHO SAGE Roadmap for prioritizing uses of COVID-19 vaccines.https://www.who.int/publications/i/item/WHO-2019-nCoV-Vaccines-SAGE-Roadmap,(参照2023-04-02).)。 新型コロナウイルスワクチンの効果は、感染予防効果や発症予防効果もあるが、オミクロン株流行以降はこれらに対するワクチンの効果も時間経過とともに低下し、重症化予防効果を期待して接種する面も大きいように思われる。本研究の結果を参考にすると、オミクロン株流行下におけるCOVID-19罹患後は、再感染時の重症化リスクは低下していると考えられる。本論文の筆者も指摘しているように、ワクチンのメリットと副反応のデメリットを勘案のうえ、COVID-19に罹患した場合、その患者のリスクの程度によってはワクチン接種をするタイミングを遅らせるという選択肢もでてくるのではないかと考える。 次に2つ目の抗ウイルス薬治療対象の判断について考える。 NIHガイドラインでは、軽症から中等症Iで治療薬の使用を優先させるべきリスク集団として3つの優先度を設けている(Prioritization of Anti-SARS-CoV-2 Therapies for the Treatment and Prevention of COVID-19 When There Are Logistical or Supply Constraints. https://www.covid19treatmentguidelines.nih.gov/overview/prioritization-of-therapeutics/ Last Updated: December 1, 2022, (参照2023-04-02).)。このガイドラインでは、ワクチン接種の有無はリスク評価に用いられているが、COVID-19罹患歴はリスク評価に用いられていない。抗ウイルス薬のニルマトレルビル/リトナビルやモルヌピラビルは、重症化予防効果を期待して投与されているが、本研究を参考にすると、COVID-19罹患後は、1年近く重症化予防効果が低下することを期待できる。抗ウイルス薬の投与目的が、重症化予防効果である場合は、過去の感染歴の有無も抗ウイルス薬投与の判断時に参考としてよいかもしれない。 さて、上記の2つについては重症化リスク軽減の観点のみから議論を展開したが、COVID-19がインフルエンザなどの他のウイルス感染症と異なる点として後遺症や自己免疫疾患のリスク増加(Chang R, et al. EClinicalMedicine. 2023;56:101783.)といった問題がある。後遺症に関しては、オミクロン株になり、デルタ株より頻度は低下したものの(Antonelli M, et al. Lancet. 2022;399:2263-2264.)、生活に影響を与える後遺症のために通院を要する患者もいる。COVID-19後遺症は、ワクチンや(Tsampasian V, et al. JAMA Intern Med. 2023 Mar 23. [Epub ahead of print])、抗ウイルス薬(Suran M. JAMA. 2022;328:2386.)(Xie Y, et al. JAMA Intern Med. 2023 Mar 23. [Epub ahead of print])の効果も報告されている。現時点では、COVID-19罹患後後遺症を主目的にワクチン接種や抗ウイルス薬の投与はされていないと思うが、今後、COVID-19罹患後後遺症や免疫異常のハイリスク患者グループが特定され、ワクチンや抗ウイルス薬に伴う明らかなメリットが判明したり、薬剤の費用が安価になったりする場合は、重症化予防効果以外の目的で投与されることがあるかもしれない。 最後に、病院や高齢者施設における感染対策について考える。 かつては、COVID-19感染後、3ヵ月間は再感染しないと考えられていた時期があった。しかし、プレプリントではあるが、デンマークのグループから、オミクロン株であるBA.1やBA.2では1ヵ月以内でも再感染を起こしうることが報告された(Stegger M, et al. medRxiv. 2022 Feb 22.)。同時期頃から本邦でも、短期間で再燃を来す患者の診療をする機会がみられるようになったように感じている。PCR検査は、COVID-19の診断に有用な検査ではあるが、一度罹患すると、高齢者や幼児、細胞性免疫が低下している患者で、陰性化にしばらく時間がかかることがある。かつてのように、原則90日間は再感染しないと考えることができた場合は、罹患後90日以内の発熱、感冒様症状はCOVID-19以外を考えることができたが、短期間で再感染すると考える場合は、PCR検査だけではなく、患者の症状や行動歴、COVID-19接触歴などを把握し、他の鑑別疾患も考慮しながら総合的に判断する必要がでてくる。 今後、オミクロン株の再流行がみられた際には、2~3ヵ月以内に感染を起こしたからといって、安易にCOVID-19の再感染ではないだろうと考えるのは、病院や高齢者施設の感染管理としては避けたほうがよいだろう。 さて、本邦の第8波も落ち着いてきたが、今後はXBB.1.5を含めたXBB系統などの株が流行する可能性もあるだろう(CLEAR!ジャーナル四天王-1648「2022年11月以降の中国・北京における新型コロナウイルス流行株の特徴」)。米国(Vogel L. CMAJ. 2023;195:E127-E128.)やシンガポール(Ministry of Health,Shingapore. UPDATE ON COVID-19 SITUATION AND MEASURES TO PROTECT HEALTHCARE CAPACITY. 15 OCTOBER 2022.)でXBB.1.5が流行したころのデータからは、重症化リスクに大きな変化はなさそうだが、再感染を起こしやすい株であることが想定される。新型コロナウイルス感染症は、オミクロン株となって、重症化リスクは低下したとはいえ、感染力はインフルエンザなどの呼吸器感染症よりも強く、また高齢者、免疫不全者を含めたハイリスク患者ではいまだに重症化しうる感染症であることも考えると、医療機関では、新型コロナウイルス感染症が院内で流行することがないよう、適切な感染対策を継続する必要がある。

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薄味なアメリカンコーヒーと、内容が濃いNEJMのCPCを楽しむ【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第59回

第59回 薄味なアメリカンコーヒーと、内容が濃いNEJMのCPCを楽しむ米国には魅力的な都市がたくさんあり、それぞれ個性を発揮しています。政治の中心がワシントンD.C.、ビジネスの中心がニューヨークです。その中でも、自分が一番好きな都市はボストンです。米国北東部に位置する6つの州をニューイングランド地方と呼び、その中のマサチューセッツ州の州都がボストンです。ボストンと京都市は、歴史的な古都としての位置付けが似ていることから姉妹都市です。両都市には大学の街・学問の街としての共通点があります。ボストン大学のほか、郊外にハーバード大学、マサチュ-セッツ工科大学などの名門大学を擁しています。ボストン大学は1839年に設立されたボストンでも最大規模の私立大学で、留学生が多い大学として知られます。マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology:MIT)は、1865年創立の世界トップクラスの工科大学です。MITの近代的な建築の校舎群の中を散策したことがありますが、有名な芸術家のオブジェも多く配置され、キャンパス歩きが美術館巡りのように楽しめます。何と言っても有名なのがハーバード大学です。1636年に設立されたアイビーリーグ大学です。多くのノーベル賞受賞者や著名人を輩出している、世界大学ランキングの上位が定席の名門校です。ここもキャンパスを散策するとアカデミックな雰囲気に浸ることができます。医学領域でも、ハーバード大学医学部は世界に君臨しています。ハーバード大学附属病院という名称の病院はありません。複数の病院が連携してハーバード大学附属病院群として役割を担っています。その中でも、もっとも有名なのがマサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital: MGH)です。MGHは、世界中の医学生に最も有名な病院です。日本の医学生もMGHという名前を知っていると思います。医学誌の最高峰といわれるThe New England Journal of Medicine(NEJM)に掲載されているCase Records of the Massachusetts General Hospitalの抄読会が、医学生の共通の学習手段となっているからです。NEJM誌は、ハーバード大学医学部の医師たちが中心となり1812年に創刊された、世界で最も権威ある週刊の総合医学雑誌です。Journal Citation Reportsが公開するインパクトファクターにおいて、NEJM誌は176.079(2022年6月28日発表)ときわめて高い水準です。日本では江戸時代後期にあたる時代に米国で創刊された医学雑誌が、200年を超えて発行され、今も世界で最も権威ある医学雑誌であり続けていることに敬意を表します。病院において残念ながら患者さんが亡くなられた場合には病理解剖をお願いします。病理解剖とは、病気のために亡くなられた患者さんのご遺体を解剖し、臓器、組織、細胞を直接観察して詳しい医学的検討を行うことです。病理解剖をさせていただいた場合には、その後に病院の中でCPCと呼ばれる会が開かれます。CPCはclinico-pathological conferenceの略語で、臨床病理検討会とも訳されます。病理解剖で得られた所見から、精度の高い病理診断ができ、死因を正しく解明することができます。患者さんの経過を振り返り医者同士で批判的に検討し合うのです。その患者さんに関わった医者だけでなく、関与しなかった他科の医者も加わります。もっと良い治療法がなかったのか、この患者さんが死に至ることは本当に避けられなかったことなのかを検証するために白熱した議論がなされます。CPCが定期的に開催されていることは、その病院の医療レベルを推し量る一つの材料とされます。NEJM誌の中でも不動の人気コンテンツが、1924年から連載開始になったCase Records of the Massachusetts General Hospitalです。具体的には、MGHで開催されているCPCを提示したもので、一流医師が診断に難渋した症例でどのように診断を進めたのか、その思考過程を学ぶことができます。このコンテンツに触れることで、医学的知識が豊富になるだけでなく、日常臨床における論理的思考法を身に付ける上で役に立ちます。国内外の大学や病院において、医学生の勉強会・論文抄読会の教材として活用されており、多くの医師の支持を得ています。ぜひともNEJM誌を手に取り、このMGHのCPCに眼を通していただくようお願いします。このコンテンツのタイトル部分には、古い建築物のイラストが描かれています。これはMGHの創立時から現存する建物のブルフィンチ棟で、その最上階がエーテル・ドームと呼ばれ、1846年に世界最初のエーテル麻酔を行った場所です。今もこの講堂でCPCが開催されているそうです。NEJM誌の「Case Records of the Massachusetts General Hospital」のタイトル部分に描かれているMGHブルフィンチ棟のイラスト(左)と、現在のブルフィンチ棟(右)英文雑誌の抄読会は、継続して参加することが大切で、そこには大きなエネルギーが必要です。ここで紹介した、NEJM誌やMGHのウンチクを知っていると少しは楽しく感じるようになるかもしれません。さらに追加でウンチクを紹介します。ボストンで起きた大事件が1773年のボストン茶会事件です。東インド会社に紅茶の専売権を与える茶法に反対して、ボストン港で東インド会社の茶葉を海中投棄したことから起こった反英闘争で、アメリカ独立戦争のきっかけです。英国の植民地だったことから、アメリカ人にとって紅茶はとても馴染み深い嗜好品でした。ボストン茶会事件などを契機に不買運動が広がり、紅茶の代わりにコーヒーが普及するようになったのです。その一方で、紅茶への愛着も強いものがありました。コーヒーを薄味にして、ミルクや砂糖を加えるなど、紅茶の味に似せようとした工夫が現在につながるアメリカンコーヒーの誕生秘話だそうです。NEJM誌の内容は非常に濃いのですが、薄味なアメリカンコーヒーの原点がボストンにあるのは不思議です。

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コロナ後の情報提供、MRの役割はどう変わる?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第109回

今や医療や調剤に関する情報収集は主にインターネットを用いるようになりました。医療用医薬品の添付文書は原則として製品への同梱が廃止されてPMDAのホームページで最新版を確認するようになり、勉強会もオンラインになりました。以前はMRさん主催の勉強会でお弁当を食べながら製品紹介を受ける、というのが薬局全体の底上げに一役買っていましたが、コロナ禍になってMRさんの訪問が規制されてほぼなくなりました。変わり続ける医療業界において、MRさんの役割も激変しそうです。MR認定センターと日本製薬工業協会が、「MRの果たすべき役割」をまとめた同名の冊子の改訂に向けて、月内に検討を開始する。製薬協が内部で検討し、1997年に初めて公表した冊子は、現在は認定センターが継承・発行しており、2017年の現行版を最後に改訂されていない。今回、MRを取り巻く現状などを確認しながらその中身について検討する。まとまった内容は26年度スタートの新たなMR認定試験制度で活用する見通し。関係者は25年2月の公表を視野に、8年ぶりの改訂へ取り組みを進める。(2023年4月17日付 日刊薬業)コロナ禍になり、製薬会社からの情報提供が急速にインターネット中心に移行しました。また、情報提供の内容も良くも悪くも規制が強化されたり、販売促進とは異なる中立的な立場のメディカルアフェアーズ(MA)が活躍したりするなど、MRさんの役割や業務が大きく変わりました。つい最近、「私はWeb担当のMRなんです」という方が現れてビックリしました。私が薬剤師になった約20年前は、4年制卒の薬剤師が大手製薬企業へ就職する場合の職種はMRがほとんどでした。2023年度においては、MR職を最も多く採用した会社でも30人未満で、一時期よりもずいぶん減少しました。新卒のMR採用を一切しないという判断をしている一部の外資系大手製薬企業もあるようです。MR認定試験は製薬会社以外の人にも門戸が開かれていますが普及しておらず、製薬会社がMRを採用しないとMRは減る一方でしょう。製薬会社自体がMRを経由しない情報提供を推進しようとしていると考えられます。冒頭の記事には「MRを取り巻く現状などを確認しながらその中身について検討する」とあり、MR認定センターと製薬団体が協力し合って何か新しい役割を提唱していくのでしょうか。オンラインの勉強会や情報収集だけだと薬局のスタッフの底上げが難しいと感じますので、医療機関や薬局への訪問や情報提供がどのように変わっていくのかとても興味があります。しかし、今からその議論を開始して、そのスタートは2026年とのこと。そのスピード感は大丈夫なのか…と少し不安にもなります。

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がん治療を続けるための悪液質治療 シリーズがん悪液質(10)【Oncologyインタビュー】第44回

出演:北海道大学病院 腫瘍センター化学療法部 CancerBoard部 小松 嘉人氏がん悪液質イコール終末期、不可逆的。このイメージが変わったと北海道大学の小松 嘉人氏は言う。変わった理由は何だったのか。また、がん治療を継続するために、がん悪液質を治療するという、同氏の考え方について解説いただいた。

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英語で「治療方針には影響しません」は?【1分★医療英語】第77回

第77回 英語で「治療方針には影響しません」は?What do you think about sending more tests to rule out Disease A, B, and C?(検査を追加して、疾患A、B、Cなどを除外してはいかがでしょうか?)We could do it, but its results will not change our management. So, I cannot agree with that idea.(そうすることはできるけど、その結果は治療方針には影響しないから、その考えに同意はできません)《例文1》Don't worry, your positive COVID test will not change our management of your cancer.(心配しないで、あなたが新型コロナ陽性であることは、あなたのがんの治療方針には影響しません)《例文2》Let's not consult ID team for now. Screening of that infection will not directly affect our current management.(感染症科へのコンサルトはまだ控えましょう。その感染症をスクリーニングすることは、現在の治療方針に直接的には影響しませんから)《解説》日本でも同様だと思いますが、医療費が高額な米国では、日本以上に患者の経済負担軽減に意識的になることが重要です。また、一つひとつの検査の意義を事前に十分に把握していることは、良医の条件でもあると思います。“it will not change our management”は医師同士、時には医師と患者さんとの会話でも頻用される表現です。医学生や研修医、もしくは患者さんから、必要のない検査を提案されたときに、この返答が有効になることが多くあります。この言葉の後に、検査結果が陽性の場合、陰性の場合で、具体的にどのような状況になるのか、補足説明するのもよいでしょう。逆に、一見関係がなさそうに見える検査でも、“this test result can change our management”(検査結果で、治療方針が変わります)と、自信を持って意見を述べることで、周囲に検査の重要性を認識してもらうことができるでしょう。講師紹介

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第160回 アミノ酸服用がコロナ疲労に有効

たかがアミノ酸、されどアミノ酸。6種類のアミノ酸とその誘導体を成分とする経口薬の新型コロナウイルス感染症罹患後症状(以下、コロナ後遺症)改善効果が被験者41例の無作為化試験で示唆されました1)。コロナ後遺症は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染からずいぶん経つにもかかわらず疲労などの不調が続くことを特徴とし、いくつか示唆されている原因にはミトコンドリア機能低下や細胞のエネルギー生成障害が含まれます。SARS-CoV-2は自身の複製のためにミトコンドリアを乗っ取り、そのせいで代謝がより不効率な解糖系に切り替わってしまって慢性の疲労が現れると考えられています。その仮説に一致し、アミノ酸などを原料とするエネルギー生成障害がコロナ後遺症によく似た病態である慢性疲労症候群(CFS)の患者に生じることが知られています。今回紹介する試験で検討されたのは米国のバイオテクノロジー企業であるAxcella Therapeutics社がAXA1125という名称で開発している経口薬で、アミノ酸5つ(ロイシン、イソロイシン、バリン、アルギニン、グルタミン)とアミノ酸誘導体1つ(N-アセチルシステイン)を成分とします。AXA1125はより燃費のよいエネルギー生成反応である酸化的リン酸化の原料を生み出すβ酸化を促し、ミトコンドリア機能を改善します。試験には疲労を主徴とするコロナ後遺症患者41例が参加し、AXA1125を1日2回4週間服用する群とプラセボ群におよそ均等に振り分けられました。試験の一番の目的であったミトコンドリア機能指標の変化はAXA1125とプラセボで差がありませんでしたが、CFQ-11検査に基づく疲労の程度がプラセボに比べてAXA1125投与群のほうがより改善しました。CFQ-11検査は11の質問によって疲労の程度を見積もります。11の質問のうち7つは肉体的疲労、残り4つは精神的疲労を調べるものです。それぞれの質問への回答は0~3の4択で、患者は無症状なら0、最も重症なら3を選びます。すなわちCFQ-11合計点数の幅は0~33点で、点数が大きいほど深刻であり、24点以上は中等症~重症と判定されます。AXA1125投与群のCFQ-11合計点数の平均は投与開始前は中等症~重症域の26.2点でしたが、4週間の投与後にはその水準を脱して21.0点に落ち着きました。一方、プラセボ投与群ではほとんど変化がなく中等症~重症の水準のままでした。AXA1125投与のかいあって肉体的疲労が改善した患者ではミトコンドリア機能や6分間歩行距離(6MWD)の改善も認められました。プラセボ群ではそのような関連はありませんでした。Axcella社はより大人数を募る第IIb/III相試験の準備を進めており、本年2月にはその試験の開始が米国FDAに許可されています2)。となればすぐに始めたいところですが、いかんせん懐具合が寂しく、さらなる開発には救いの手や提携が必要との苦しい胸の内を同社が最近明かしています3)。資金難を乗り越えてAXA1125の開発が前進することは今回の試験を担った英国・オックスフォード大学のチームも望んでおり、コロナ後遺症に広く有効なことがさらなる試験で判明することを期待しています4)。 参考1)Finnigan LEM, et al. eClinicalMedicine. April 14, 2023. [Epub ahead of print] 2)Axcella Announces FDA IND Clearance Supporting Regulatory Path to Registration of AXA1125 for Long COVID Fatigue / BusinessWire3)Axcella seeks 'light speed' swing at long Covid, but needs cash / Endpoints4)Trial investigating potential treatment for fatigue relief in people with long COVID reports results / University of Oxford

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間質性肺疾患の緩和ケア、日本の呼吸器専門医の現状を調査

 間質性肺疾患(ILD)は症状が重く、予後不良の進行性の経過を示すことがある。そのため、ILD患者のQOLを維持するためには、最適な緩和ケアが必要であるが、ILDの緩和ケアに関する全国調査はほとんど行われていない。そこで、びまん性肺疾患に関する調査研究班は、日本呼吸器学会が認定する呼吸器専門医を対象とした調査を実施した。その結果、呼吸器専門医はILD患者に対する緩和ケアの提供に困難を感じていることが明らかになった。本研究結果は、浜松医科大学の藤澤 朋幸氏らによってRespirology誌オンライン版2023年3月22日号で報告された。 日本呼吸器学会が認定する呼吸器専門医のうち、約半数に当たる3,423人を無作為に抽出し、ILDの緩和ケアの現状に関するアンケートを郵送した。アンケートは、「緩和ケアの現状や実施状況(5項目、27問)」「終末期のコミュニケーションの最適なタイミングと実際のタイミング(2問)」「緩和ケアに関するILDと肺がんの比較(6問)」「ILDの緩和ケアにおける障壁(31問)」で構成された。解析はアンケートに回答した医師のうち、過去1年以内にILD患者を診療した医師を対象とした。 主な結果は以下のとおり。・1,332人(回答率38.9%)がアンケートに回答し、そのうち、1,023人が過去1年以内にILD患者を診療していた。・大多数の医師が「ILD患者はしばしば、あるいは常に呼吸困難や咳の症状を訴える」と回答したものの、「緩和ケアチームへ紹介したことがある」と回答した医師は25%にとどまった。・緩和ケアチームへ紹介したことのない医師のうち、48%は「緩和ケアチームを利用できる環境にあるが、紹介したことはない」と回答し、33%は「緩和ケアチームを利用できる環境がなかった」と回答した。・終末期のコミュニケーションについて、実際のタイミングは最適と考えるタイミングよりも遅れる傾向にあった。・ILDの緩和ケアは、症状の緩和や意思決定において肺がんと比較して困難であった。・ILD患者は肺がん患者と比較して、呼吸困難に対してオピオイドが処方される頻度が少なかった。・ILDの緩和ケアに特有の障壁として、「予後を予測できない」「呼吸困難に対する治療法が確立されていない」「心理的・社会的支援が不足している」「患者やその家族がILDの予後の悪さを受け入れるのが難しい」といった意見が挙げられた。

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ビタミンD不足で認知症リスク上昇~コホート研究

 ビタミンD活性代謝物は、神経免疫調節や神経保護特性を有する。しかし、ヒドロキシビタミンDの血清レベルの低さと認知症リスク上昇の潜在的な関連については、いまだ議論の的である。イスラエル・ヘブライ大学のDavid Kiderman氏らは、25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)の血清レベルの異なるカットオフ値において、ビタミンD欠乏症と認知症との関連を調査した。その結果、不十分なビタミンDレベルは認知症との関連が認められ、ビタミンDが不足または欠乏している患者においては、より若年で認知症と診断される可能性が示唆された。Journal of Geriatric Psychiatry and Neurology誌オンライン版2023年3月8日号の報告。 イスラエル最大の医療保険組織Clalit Health Services(CHS)のデータベースより、患者データを収集した。各被験者について、調査期間中(2002~19年)の利用可能なすべての25(OH)D値を取得した。認知症の発症率は、25(OH)Dレベルの異なるカットオフ値で比較した。 主な結果は以下のとおり。・本コホート研究の対象は、患者4,278例(女性:2,454例[57%])であった。・フォローアップ開始時の平均年齢は、53±17歳であった。・17年間のフォローアップ期間中に認知症と診断された患者は133例(3%)であった。・完全に調整された多変量解析では、血清25(OH)Dの平均値が75nmol/L未満(ビタミンD欠乏)の患者は、同75nmol/L以上(基準値)の患者と比較し、認知症リスクが約2倍高かった(オッズ比:1.8、95%信頼区間:1.0~3.2)。・ビタミンDの欠乏(77 vs.81、p=0.05)および不足(77 vs.81、p=0.05)が認められる患者は、基準値の患者と比較し、より若年で認知症と診断された。

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作り笑いの「笑いヨガ」で糖尿病を改善~日本人でのRCT

 笑いには、ストレス軽減、NK細胞の活性化、アレルギー反応抑制、食後血糖値の上昇抑制などが報告されている。しかし、お笑い番組は人により好みが異なるため、すべての人を笑わせることは難しい。今回、福島県立医科大学の広崎 真弓氏らの無作為化比較研究の結果、作り笑いと深呼吸を組み合わせた「笑いヨガ」で2型糖尿病患者の血糖コントロールが改善されることが示された。Frontiers in Endocrinology誌2023年3月31日号に掲載。 笑いヨガとは、グループで作り笑いや深呼吸、手拍子や掛け声を行うことで、冗談やユーモアに頼らずに体操として行うエクササイズである。本研究では、大阪大学医学部附属病院糖尿病センターに受診している2型糖尿病患者42例を介入群と対照群に無作為に割り付け、介入群には笑いヨガのプログラムを12週間実施した。開始前と12週間後に、HbA1c、体重、ウエスト周囲径、心理的因子、睡眠時間を評価した。 主な結果は以下のとおり。・ITT解析の結果、笑いヨガ群ではHbA1c値(群間差:-0.31%、95%信頼区間[CI]:-0.54~-0.09)、ポジティブ感情スコア(群間差:0.62ポイント、95%CI:0.003~1.23 )が大幅に改善した。・睡眠時間は笑いヨガ群で増加の傾向がみられ、群間差は0.4時間(95%CI:-0.05~0.86、p=0.080)であった。・笑いヨガプログラムへの平均出席率は92.9%と高かった。

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最適な降圧薬は人によって異なるのか/JAMA

 高血圧患者における最適な降圧療法は個人によって異なるか、個別に目標を定めた降圧療法は有益性を最大化できるかという問いには、いまだ明確な解答は得られていないという。スウェーデン・ウプサラ大学のJohan Sundstrom氏らは「PHYSIC試験」において、高血圧に対する4つの異なるクラスの降圧薬による単剤療法の血圧反応にはかなりの異質性があり、これは高血圧治療における個別化治療の進展の可能性を示唆するものであることを示した。研究の成果は、JAMA誌2023年4月11日号に掲載された。スウェーデンの無作為化反復クロスオーバー試験 PHYSIC試験は、いくつかの降圧薬による治療を反復することで、患者内および患者間の血圧反応の差を定量化するようデザインされた二重盲検無作為化反復クロスオーバー試験であり、2017年2月~2020年5月の期間に、ウプサラ大学病院内科の外来研究クリニックで参加者のスクリーニングが行われた(Swedish Research Councilなどの助成を受けた)。 対象は、年齢40~75歳の男女で、試験開始前の5年以内にI度高血圧(収縮期血圧[SBP]140~159mmHg)と診断され、未治療または1剤による降圧治療を受けており、試験期間中に降圧治療の中止が可能な患者であった。混合効果モデルを用いて、1つの治療が他の治療よりも、どの程度効果が高いかを評価し、個別化治療によって達成可能な付加的な血圧の低下量を推定した。 被験者は、4つのクラスの降圧薬(リシノプリル[ACE阻害薬]、カンデサルタン[ARB]、ヒドロクロロチアジド[サイアザイド系利尿薬]、アムロジピン[Caチャネル拮抗薬])の投与を受ける群に無作為に割り付けられ、2つのクラスの薬剤による反復治療が行われた。1剤の投与期間は7~9週で、6期間の治療が実施された。 主要アウトカムは、各治療期間終了時における日中の外来SBPであった。個別化によりSBPがさらに4.4mmHg低下の可能性 280例(平均年齢64歳、男性54.3%)が無作為化の対象となり、合計1,680回の治療が行われた。このうち270例における1,468回の治療(治療期間中央値56日)が主解析に含まれた。高血圧の平均罹患期間は3年、62.1%が降圧薬単剤療法の治療歴があり、平均診察室血圧は154/89mmHgだった。 初回治療期間終了時の平均SBPは、ヒドロクロロチアジド(136.1[SD 10.3]mmHg)が他の薬剤に比べて高く、アムロジピン(130.9[8.6]mmHg)はリシノプリル(129.7[12.7]mmHg)よりも、カンデサルタン(131.8[12.8]mmHg)はリシノプリル(129.7[12.7]mmHg)よりも高かった。 個々の治療に対する血圧反応は、患者間でかなり異なっていた(p<0.001)。血圧反応の差は、とくにリシノプリルとヒドロクロロチアジド(p<0.001)、リシノプリルとアムロジピン(p<0.001)、カンデサルタンとヒドロクロロチアジド(p=0.03)、カンデサルタンとアムロジピン(p<0.001)の間で顕著であった。 一方、リシノプリルとカンデサルタン(p=0.46)、ヒドロクロロチアジドとアムロジピン(p=0.10)には大きな差はなかった。 また、降圧薬を固定した場合と比較して、個別化治療により個々の患者にとって最良の降圧薬を選択すると、SBPをさらに平均4.4mmHg低下させる可能性が示された。 著者は、「これらの知見は、個別化治療の可能性を示唆するものである。今後、複数の降圧薬による治療の個別化の可能性を検証し、日常臨床において降圧療法の個別化を可能にするメカニズムを解明するための研究を進める必要がある」としている。

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第144回 大学病院医師の時間外労働、2024年以降も3割が年間960時間を超える/文科省

<先週の動き>1.大学病院医師の時間外労働、2024年以降も3割が年間960時間を超える/文科省2.国内初の経口中絶薬メフィーゴパック承認へ/厚労省3.健保財政が急速に悪化、今年度は5,600億円超の大幅赤字/健保連4.内閣法改正で危機管理庁を設置、今年の秋発足/国会5.75歳以上も保険料引き上げの健康保険法改正案が参議院で審議入り/国会6.マイナンバーカード、受給者証の機能も追加へ/河野デジタル相1.大学病院医師の時間外労働、2024年以降も3割が年間960時間を超える/文科省2024年4月から労働基準法に基づく時間外労働時間の上限が適応されるのを前に、大学病院の勤務医の働き方に関する調査結果が公表された。この調査は、文部科学省の委託事業として、全国の81の国公私立の大学病院や医師を対象にアンケート形式で2022(令和4)年7月~8月に実施された。その結果、大学病院で働く医師の4万9,791人のうちおよそ3割の1万5,070人が、来年度、時間外労働の上限となる年間960時間を超える見込み。また、研究時間では、助教の約65%が週5時間以下で、まったく行っていない者も15%に上るなど、深刻な状況であることが判明している。ヒアリングでは、臨床業務のタスクシフトが働き方改革につながるとして、事務や看護師、コメディカルスタッフへのタスクシフトを行うことが必要というコメントも寄せられている。(参考)大学病院、研究13%どまり 週当たり平均労働時間 文科省調査(時事通信)大学病院の医師3割、残業960時間超の見込み 研究の時間不足(朝日新聞)大学病院における医師の働き方に関する調査研究報告書(全国医学部長病院長会議)2.国内初の経口中絶薬メフィーゴパック承認へ/厚労省イギリスの製薬企業ラインファーマが薬事申請していた経口中絶薬「メフィーゴパック」(一般名:ミフェプリストン/ミソプロストール)について、4月21日に開催された厚生労働省の薬事・食品衛生審議会において、製造販売の承認を了承した。国内初の経口中絶薬については、先月の審議会の開催前のパブリックコメントに、通常の100倍もの意見が集まったため、3月24日の審議が延期された経緯がある。日本国内で中絶手術で行われている掻爬術などと比べて、母体への負担が少なく母体保護の観点からも早期の承認が求められてきた。海外ではすでに70ヵ国以上で承認されており、世界保健機関(WHO)は、安全で効果的だとして「必須医薬品」に指定している。(参考)「経口中絶薬」 厚労省の分科会が了承 国内初の承認へ(NHK)国内初、経口妊娠中絶薬を承認へ 薬食審・分科会が了承(CB news)飲む中絶薬製造販売の承認を了承 国内初の経口中絶薬 厚労省分科会(毎日新聞)3.健保財政が急速に悪化、今年度は5,600億円超の大幅赤字/健保連健康保険組合連合会(健保連)は4月20日に、大企業の従業員と家族が加入する健保組合の2023年度の予算の集計結果を発表した。約1,400組合の健康保険組合の経常収支は5,623億円の赤字となり、過去最大で前年度の2倍が見込まれている。赤字が予想されている健保組合は2022年度から130組合増えて1,093組合と、全体の8割近くになる。赤字の原因は、医療費の伸びに加え、高齢者医療への拠出金が増大しており、現役世代にとって負担が増している。政府は、少子化対策の財源を社会保険料からの拠出を検討しており、今後、現役世代にとって負担増となる可能性がある。また、社会保障制度の持続可能性のため、政府は全世代型社会保障構築会議などを通して、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を急いでいる。(参考)大企業健保、赤字最大に 今年度見通し 5600億円超へ倍増(日経新聞)健保組合、8割が赤字見通し 実質保険料は10%超えに 23年度(朝日新聞)健保組合 今年度収支 5600億円余の赤字の見通し 前年度の2倍に(NHK)健保組合、過去最大の赤字5,600億円超に 23年度見込み、約8割が赤字(CB news)健康保険組合 予算編成状況-早期集計結果(概要)について-(健保連)4.内閣法改正で危機管理庁を設置、今年の秋発足/国会新たな感染症危機に備える目的で、感染症対応の司令塔として新たに「内閣感染症危機管理統括庁」を内閣官房に新設する改正内閣法と新型コロナウイルス対策特別措置法が4月21日に参議院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。感染症危機管理統括庁は、内閣府に設置され、トップの内閣感染症危機管理監には官房副長官が就く。早ければ9月1日にも発足する。新たな感染症が発生した際に、省庁横断して初動対応を担う。平時は専従職員38人、救急時は101人体制で対応する。(参考)感染症で首相権限強化=危機管理庁設置、改正法成立(時事通信)危機管理庁、今秋めどに 改正法成立 感染症対策の司令塔(日経新聞)感染症対応の司令塔、内閣官房に秋ごろ設置へ 改正インフル特措法・内閣法が成立(CB news)5.75歳以上も保険料引き上げの健康保険法改正案が参議院で審議入り/国会75歳以上が加入する「後期高齢者医療制度」の保険料引き上げと、「出産育児一時金」の増額などを盛り込んだ健康保険法などの改正案が4月19日から参議院で審議が開始された。岸田総理は「すべての世代が能力に応じて社会保障制度を支え合う仕組みの構築は重要だ」と述べ、早期成立に理解を求めた。一方、野党からは高齢者の保険料から出産費用を捻出する案に対して批判する声が上がり、これに対して岸田総理は、高齢者も含めた全世代で支え合う仕組みに転換を図りたいと答弁した。(参考)医療保険料の75歳以上負担増、参院審議入り 首相出席(産経新聞)健康保険法などの改正案 参院で審議始まる(NHK)全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案[概要](厚労省)6.マイナンバーカード、受給者証の機能も追加へ/河野デジタル相河野太郎デジタル相は記者会見で、マイナンバーカードと健康保険証との一体化を進めるに当たり、従来は紙で行われていた子供の医療費の医療費助成の「受給者証」を、マイナンバーカードを活用して機能を追加できるように取り組むことを発表した。また、マイナンバーカードを予防接種の接種券や妊婦健診の受診券として活用することも目指す。これらの取り組みを全国展開する前に、今年度中に希望する自治体を募り、試行する予定。(参考)「受給者証」もマイナカードに 医療分野の活用促進 河野デジタル相(時事通信)医療費助成にマイナカード 一部自治体で先行へ(産経新聞)河野大臣記者会見(デジタル庁)

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患者集団を対象とした医療からの脱却法は?(解説:後藤信哉氏)

 ランダム化比較試験は、患者集団の標準治療の確立に役立った。しかし、新型コロナウイルス感染症などの病名にて患者集団を規定しても、集団を構成している個別症例の病態、予後には不均一性がある。たとえば、新型コロナウイルス感染症の入院例においてヘパリン治療がECMOなどを避けるために有効であることはランダム化比較試験にて示されたが、標準治療が集団を構成する全例に対して有効・安全なわけではない。 本研究はヘパリン治療の不均一性を検証するために3つの方法を利用した。(1)は通常のサブグループ解析である。新薬開発の臨床試験では事前に設定した年齢、性別、腎機能などにより分けたサブグループにて不均一性がないことを示している。本研究ではサブグループ解析にて結果の不均一性に注目した。(2)はrisk based model法である。集団からリスクに寄与する因子を抽出して、その因子により個別症例のリスクを事前に予測してグループ分けした。(3)はEffect-Based Approachである。いわゆるrandom forest plotにて効果を予測してグループ分けする方法である。 集団の不均一性を定量化する(1)~(3)の方法とも、新型コロナウイルス感染症による入院例に対するヘパリンの効果の不均一性を示した。 ランダム化比較試験は患者集団に対する標準治療の確立には効果があった。今後は、集団の不均一性に注目して、未来の個別最適化医療を目指すことになる。

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あめいろぐ移植

移植医療は究極のパラダイムシフト!在米日本人医療従事者による情報発信サイト「あめいろぐ」シリーズの第7弾は「移植」編。米国では「移植医療の存在しない世界はもはや想像すらできない」といわれています。実際、米国の全臓器の年間移植件数は約4万1,000件、うち心臓移植は米国3,818件であるのに比べて日本は59件(2021年)です。なぜ、移植医療は日本で普及せず、米国ではこれほど普及したのでしょうか? その答えと移植医療を打開する鍵が本書にあります。脳死移植、心停止後移植、渡航移植、移植医療の完全分業制、公平な臓器分配に関する議論やシステムなど、米国で活躍する日本人医師が移植医療の現場を解説し、その未来を語ります。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    あめいろぐ移植定価3,850円(税込)判型A5判頁数160頁発行2023年3月監修浅井 章博著者浅井 章博、川名 正隆、武田 浩二

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事例022 SARS-CoV-2検査過剰による返戻【斬らレセプト シーズン3】

解説事例では、発熱患者にSARS-CoV-2抗原検出定性とSARS-CoV-2核酸検出を同時に行っていたところ、複数件が返戻となりました。支払機関からの返戻理由には、「検査前の確率が低いときには感度・特異度の高い検査方法での実施が望ましいとされております。状況に応じた適切な検査の実施をご検討ください。上記の場合であって、どうしても同一日に施行しなければならない必要性がある場合などでは、患者ごとにその医学的根拠を記載してください。記載のない場合や画一的・傾向的なコメントの場合は査定の対象となりますのでご注意ください」とありました。「新型コロナウィルス感染症病原体検査の指針」(第6版)には、「抗原定性検査は、発症から9日目以内の症例では確定診断に用いることができる」とあり、核酸検出、抗原定量、抗原定性の実施が推奨されています。核酸検出と抗原定性の同一検体同時測定は問題ないと考えていました。実際は抗原定性または核酸検出いずれかの実施のみでことが足りると判断されているようです。数件のレセプトのコメントには「抗原検出定性結果の確定のため核酸検出を行った」と記載されていましたが、同じコメントがついていて返戻となっていました。患者ごとに医学的な詳しい状況の記載が必要になるものと考えられますので、この点はご留意ください。医師にはこのことを伝え、検査オーダー時に検査重複のアラートが表示されるように改修して査定対策としました。

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術前AC抵抗性TN乳がん、アテゾリズマブ+nab-PTXが有望/第II相試験

 トリプルネガティブ乳がん(TNBC)では、抗PD-(L)1抗体による術前療法で病理学的完全奏効(pCR)率が改善されるが、免疫関連有害事象(irAE)の長期持続リスクのためリスク・ベネフィット比の最適化が重要である。最初の術前療法で臨床効果が不十分な場合はpCR率が低い(2~5%)ことから、免疫チェックポイント阻害薬が選択可能かもしれない。今回、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのClinton Yam氏らは、術前ドキソルビシン+シクロホスファミド(AC)抵抗性のTNBC患者に対して、第2の術前療法としてアテゾリズマブ+nab-パクリタキセルを投与する単群第II相試験を実施し、有望な結果が得られた。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年4月15日号に掲載。 本試験の対象は、StageI~IIIのAC抵抗性(AC 4サイクル後に病勢進行もしくは腫瘍体積の80%未満の減少)のTNBCで、第2の術前療法としてアテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと4回)+nab-パクリタキセル(100mg/m2、1週ごと12回)を投与後、アテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと4回)を投与した。 主な結果は以下のとおり。・2016年2月15日~2021年1月29日にAC抵抗性TNBCを37例登録した。・pCR/residual cancer burden(RCB)-I率は46%だった(ヒストリカルコントロール群:5%)。・新たな安全性シグナルは観察されなかった。・7例(19%)がirAEによりアテゾリズマブを中止した。

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統合失調症患者が地域社会で生活し続けるためには

 地域在住の統合失調症患者における身体的、精神的、社会的な併存症は、日常生活を妨げ、再入院リスクを上昇させる可能性がある。しかし、日本において、統合失調症患者の併存症に関する調査は、包括的に行われていない。藤田医科大学の松永 眞章氏らは、日本人統合失調症患者のさまざまな併存症の有病率を調査するため、有病率ケースコントロール研究を実施した。その結果、統合失調症患者が地域社会で生活し続けるためには、身体的、精神的、社会的な併存症を管理する効果的な介入が必要であることが示唆された。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2023年2月28日号の報告。 2022年2月に、有病率ケースコントロール研究として、統合失調症の有無にかかわらず20~75歳の日本人を対象とした自己申告によるインターネット調査を実施した。統合失調症患者と統合失調症でない対照群の身体的(過体重、高血圧、糖尿病など)、精神的(抑うつ症状、睡眠障害など)、社会的(雇用状態、世帯収入、社会的支援など)併存症の有病率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者223例および対照群1,776例が特定された。・統合失調症患者は対照群よりも、過体重である可能性が高く、高血圧症、糖尿病、脂質異常症の有病率が高かった。・統合失調症患者は対照群と比較し、抑うつ症状、失業状態、非正規雇用の割合が高かった。・本結果は、地域在住の日本人統合失調症患者の身体的、精神的、社会的な併存症に対処する包括的な支援や介入の必要性を強調するものである。・統合失調症患者が地域社会で生活し続けるためには、併存症を管理する効果的な介入が必要である。

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