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心臓死ドナー心を用いた心臓移植成績(解説:許俊鋭氏)

 本論文で示されたRCT臨床試験は、TransMedics社のポータブル体外循環臓器保存システム(Organ Care System:OCS)を使用して保存した、心臓死ドナー心を用いた心移植(DCD群)の脳死ドナー心移植(DBD群)に対する非劣性を、多施設非盲検ランダム化比較試験で証明することを目的として実施された。DCD群(80例)とDBD群(86例)のリスク調整後の6ヵ月生存率(94% vs.90%)の比較で、DCD群の非劣性が証明された。また、心移植30日の時点での患者1人当たりの心移植グラフトに関連する重篤な有害事象数は2群間で差はなかった。 心臓移植成績の向上により世界的に心臓移植の需要は増加しており、ドナー心の提供拡大は世界共通の喫緊の課題である。日本における2022年1月時点の心移植希望登録者数920名に対して2022年の年間心移植数は79件(8.6%)にすぎず、Status 1の移植待機期間は1,769日(4.8年)と長期間に及ぶ。OCSはDBDドナー心の長時間保存を可能とし、従来の保存限界とされていた4時間を大幅に延長(最長17時間の報告有)させ、ドナー心の長距離移送を可能としたのみならず、マージナルドナー心の使用可能性を拡大した。さらに本試験で報告されたように、OCSを温虚血時間の長いDCD心移植に使用することで、英国・Royal Papworth病院の報告では移植率を48%増加させた(Messer S, et al. J Heart Lung Transplant. 2020;39:1463-1475.)。一方、今日のDCDドナーからのドナー心採取においては、ドナー心の生命維持装置の中止(withdrawal of life support therapy:WLST)が必要で、WLSTが法的に日本で容認されるか否かが、日本におけるDCDドナー心を用いた心移植導入の今後の課題である(小野稔. 移植. 2023;58:1-10)

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真性多血症の治療薬に革新的な新技術/ファーマエッセンシアジャパン

 真性多血症(PV)の治療薬ロペグインターフェロンアルファ-2b(商品名:ベスレミ)の発売に合わせ、ファーマエッセンシアジャパンは「真性多血症の治療における新たな選択肢」と題して、都内でメディアセミナーを開催した。 ロペグインターフェロンアルファ-2bは、真性多血症の治療薬(既存治療が効果不十分または不適当な場合に限る)としては初のインターフェロン製剤であり、2023年年3月27日に製造販売承認を取得、5月24日に薬価収載、6月1日より販売を開始している。 セミナーでは、同社の概要や今後の展開のほか、同社のコアテクノロジーである“部位選択的モノペグ化技術”の概要の説明のほか、専門医による真性多血症のレクチャーが行われた。真性多血症の治療薬に部位選択的モノペグ化技術 真性多血症は、骨髄増殖性腫瘍の1種で、骨髄の造血幹細胞の異常により、赤血球が過剰に産生される希少な血液疾患。真性多血症の治療では、血栓症を予防することが一番の目標とされている。血栓症の予防は、瀉血や抗血小板療法、細胞減少療法、分子標的治療薬などによりヘマトクリット値をコントロールすることで、長足の進歩を遂げてきた。しかしその一方で、真性多血症の症状のコントロールや疾患進行の阻止などで、依然としてアンメット・メディカル・ニーズは存在し、今回の治療薬がその隙間を埋めるものと期待されている。 今回のロペグインターフェロンアルファ-2bに使われている、“部位選択的モノペグ化技術”は、タンパク質分子内の特定のアミノ酸を、ポリエチレングリコール(PEG)という高分子化合物によって、選択的に修飾できるようにした革新的な技術で、このペグ化を行ったタンパク質医薬品は体内における分解が抑制され、半減期の延長と長時間にわたる効果の持続につながりうる、薬物動態/薬力学的特性を示すことができるようになる。 同社代表取締役社長の米津 克也氏は、今後、白血病などの血液疾患治療薬への展開を目指すと期待を寄せている。真性多血症の患者数は年間約800人程度だが推定患者数は倍 基調講演として「真性多血症治療の新たな地平」をテーマに桐戸 敬太氏(山梨大学医学部血液・腫瘍内科 教授)が、真性多血症の診療やロペグインターフェロンアルファ-2bへの期待を説明した。 真性多血症とは、造血幹細胞に生じた異常で骨髄系細胞が過剰増殖する骨髄増殖性腫瘍(MPN)の1種とされている。その症状として、頭痛、めまい、サイトカインに起因する倦怠感、かゆみや微熱が挙げられる。 真性多血症の患者数は、年間約800人程度(血液学会疾患登録データ)が発症する疾患であることがわかっているが、推定患者数はこの倍の約1,500人と予想されている。発症年齢としては60代が一番多いが、若年でも多くの患者がいる。 真性多血症の合併症としては、大きく以下の3つがある。1)短期的には血栓・出血の発生により心筋梗塞や深部静脈血栓などが発生する。その合併率は4~8.5%とされている。2)長期的には骨髄線維症や白血病への移行がある。5~10年で10%が骨髄線維症に進展し、さらに10年で10~20%が急性白血病に移行する。参考までに生存率は、5年生存率で92.4%、10年生存率で83.8%との報告があり、死亡原因では白血病への移行が一番多い。3)全身のかゆみ、倦怠感、食欲低下、脇腹の痛み、寝汗などの全身症候とそれに伴う生活の質(QOL)の低下により日常生活に支障を及ぼす。 そして、現行の真性多血症治療のゴールは血栓・出血の合併を防ぐこととされている。具体的な治療としては、瀉血、アスピリン投与、細胞減少療法などが各病態のステージによって行われ、患者には全身症候を軽減し、QOLを回復し、白血病や骨髄線維症への進行を止める治療が行われている。 また、同氏は、真性多血症患者が望む治療についてアンケート結果を示し、「疾患の進行を遅らせること」「血栓の予防」「病状の改善」の希望が多いことを挙げた。従来は進行抑制の治療薬は存在せず、患者の治療への思いと現実の治療にギャップがあることをうかがわせた。 最後に今回発売されたロペグインターフェロンアルファ-2bの可能性について触れ、本治療薬のIII相試験である“PROUD-PV study”の結果を示し、薬剤の使用により悪性の変異細胞が減少していること、国内試験の29例でも同様の結果がみられたことを報告した。また、安全性についても重篤な副作用はなかったことを報告し、レクチャーを終えた。

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高齢者糖尿病診療ガイドライン2023、薬物療法のエビデンス増え7年ぶりに改訂

 日本老年医学会・日本糖尿病学会の合同編集である『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』が5月に発刊された。2017年時にはなかった高齢者糖尿病における認知症、サルコペニア、併存疾患、糖尿病治療薬などのエビデンスが集積したことで7年ぶりの改訂に至った。今回、日本老年医学会の編集委員を務めた荒木 厚氏(東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・内分泌内科)に『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』の改訂点について話を聞いた。 高齢者糖尿病とは、「65歳以上の糖尿病」と定義されるが、医学的な観点や治療、介護上でとくに注意すべき糖尿病高齢者として「75歳以上の高齢者と、身体機能や認知機能の低下がある65~74歳の糖尿病」と、より具体的な定義付けもなされている。高齢者糖尿病診療ガイドライン2023の改訂ポイント6点 日本老年医学会、日本糖尿病学会の両学会は上記のような高齢者糖尿病患者における「低血糖による弊害」「認知症などの併存疾患の影響」などの課題解決のために2015年に合同委員会を設立、その2年後に高齢者糖尿病診療ガイドライン2017年版を発刊した。当時は治療薬のエビデンスなどが乏しかったが、国内外の新しいエビデンスが集積したこと、新薬が登場したこと、そして併存疾患に対する対策や治療目的が明確になったことから、今回6年ぶりの発刊となった。そのような背景のある『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』について、荒木氏は改訂ポイント6点を示した。<注目すべき6つのポイント>1)2017年時点では得られていなかった認知症、フレイル、サルコペニア、悪性腫瘍、心不全などの併存疾患やmultimorbidityに関するエビデンスが記載されている、Question・CQ(Clinical Question)に反映2)血糖コントロール目標を設定するためのカテゴリー分類を行うことができる認知・生活機能質問票(DASC-21)を掲載[p.228付録3]3)運動療法が糖尿病のみならず認知機能やフレイルにも良い影響を与える4)薬物療法ではSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬の心血管疾患や腎イベントに対するリスク低減効果に関するエビデンスも集積5)2型糖尿病患者の注射のアドヒアランス低下の対策として、インスリン治療の単純化を記載6)社会サポート制度の活用 このほか、「高齢者糖尿病患者の背景・特徴については第I章に、治療については第IX章p.151~170に掲載されているので一読してほしい」とし、「治療の基本的な内容は『糖尿病治療ガイド2022-2023』にのっとっているので、両書を併せて読むことが理解につながる」とも話した。インスリン治療の単純化はアドヒアランス向上だけでなく、低血糖を減らす 高齢者の場合、腎・肝機能低下による薬剤の排泄・代謝遅延から有害事象を来しやすい。そのため低血糖をはじめ、これまで注意点が強調されることが多かった。一方で、高齢者糖尿病ではポリファーマシーになりやすく、さらに認知機能障害のため服薬アドヒアランスの低下を来しやすい。そのため減薬だけでなく、複雑な処方をシンプルにする“治療の単純化”を行うことが必要になる。2型糖尿病のインスリン治療においても注射のアドヒアランス低下の対策としてインスリン治療の単純化を行う研究が行われている。 これについて同氏は「たとえば、インスリン注射を1日複数回注射している2型糖尿病患者の場合、メトホルミン、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬などを追加することでインスリン投与回数を1日1回の持効型インスリンのみにすることが治療の単純化となる。このインスリン治療の単純化は、注射回数を1回にしても血糖コントロールは変わらない、もしくは改善し、インスリンの単位数が減ることで低血糖が減ることも報告されてきているため、インスリン治療の単純化は低血糖回避という観点からも有用であると考える。また、複数回のインスリン注射を週1回のGLP-1受容体作動薬やインスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤に変更にすることも治療の単純化となり、低血糖を減らすことが可能となる」とコメント。「これは高齢者のインスリン治療法の大きな進歩」だとも述べ、また、「絶食の不要な経口のGLP-1受容体作動薬において種々の製剤が開発中であり、今後のインスリン治療の単純化にも役立つ可能性がある」ともコメントした。高齢者糖尿病診療ガイドラインにSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬のCQ追加SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は心・腎イベントに関するCQが『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』に新たに盛り込まれた。―――CQ IX-2:高齢者糖尿病でSGLT2阻害薬は心血管イベントを抑制する可能性がある【推奨グレードB】。CQ IX-3:高齢者糖尿病でSGLT2阻害薬は複合腎イベントを抑制する可能性がある【推奨グレードB】。CQ X-1:高齢者糖尿病でGLP-1受容体作動薬は心血管イベントを抑制する【推奨グレードA】。CQ X-2:高齢者糖尿病でGLP-1受容体作動薬は複合腎イベントを抑制する可能性がある【推奨グレードB】。――― これについて「高齢者糖尿病においてもSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬の使用は心・腎イベントのリスクや心不全による再入院リスクを低減させるエビデンスがあり、additional benefitがあることが明らかになった。したがって、この両剤はこれらの心・腎に対するベネフィットと副作用のリスクのバランスを考慮しながら使用する必要がある」と同氏はコメントした。高齢者糖尿病診療ガイドライン2023でマルチコンポーネント運動を推奨 高齢者糖尿病でも若年者同様に運動療法は推奨され、血糖コントロールのみならず脂質異常症、高血圧、生命予後などの改善に有効とされ、『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』でも推奨されている。また、糖尿病のない患者と比べ筋量が減少しやすいため、サルコペニア予防としても重要な位置付けにある。今回、有酸素運動・レジスタンス運動・バランス運動・ストレッチングを組み合わせたマルチコンポーネント運動も推奨されている。ただし、高齢者糖尿病患者が行う際には、年齢や合併症、併存疾患、生活スタイルに合わせることがポイントである。 最後に同氏は、地域社会で高齢者糖尿病患者を支えることが今後より一層求められる時代になることから、『社会サポート制度』(p.217)についても言及し、「認知症然り、糖尿病でも地域で生活を続けていけるように、各自治体で高齢者糖尿病のQOLに寄り添うサービスが設けられている場合がある。たとえば、デイケア、通いの場、訪問看護、訪問栄養指導、訪問薬剤指導がそうであるが、そのようなサービスの存在に踏み込んだことも、本改訂での大きな特徴とも言える」と話した。

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日本人反復性片頭痛に対するフレマネズマブの有用性

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)モノクローナル抗体であるフレマネズマブは、多くの第II相および第III相試験において片頭痛患者に対する有効性および忍容性が確認されている。近畿大学の西郷 和真氏らは、反復性片頭痛(EM)患者を対象とした国際共同第III相試験(HALO EM試験)および日本と韓国で実施された第IIb/III相試験のサブグループ解析を実施し、日本人EM患者におけるフレマネズマブの有効性および安全性を評価した。その結果、フレマネズマブは、日本人EM患者にとって効果的かつ忍容性の高い予防薬であることが確認された。Journal of Pain Research誌2023年5月18日号の報告。 両試験共に、適格基準を満たした患者をベースライン時にフレマネズマブ月1回投与群、フレマネズマブ四半期1回投与群、プラセボ群に1:1:1でランダムに割り付けた。主要エンドポイントは、初回投与12週間後における28日間当たりの平均片頭痛日数のベースラインからの平均変化とした。副次的エンドポイントは、障害や薬物使用などを含むその他の有効性の評価とした。 主な結果は以下のとおり。・日本人EM患者は、HALO EM試験で75例、日韓第IIb/III相試験で301例が含まれた。ベースライン時の治療特性は、両試験で類似していた。・主要エンドポイントのANCOVA分析では、フレマネズマブ月1回投与群および四半期1回投与群のいずれにおいても、プラセボ群と比較し、28日間当たりの平均片頭痛日数の有意な減少が認められた。・最初の4週間における主要エンドポイントのMMRM分析においても、同様の結果が認められ、フレマネズマブの効果発現の早さが示唆された。・副次的エンドポイント分析においても、主要エンドポイントの分析を裏付けていた。・フレマネズマブは、忍容性が高く、日本人EM患者での新たな安全性上の懸念は認められなかった。

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臨床試験で有意差なし、本当に効果なし?/JAMA

 無作為化臨床試験の多くは統計学的に有意でない結果をもたらすが、このような知見は一般的な統計学的枠組みで解釈することは困難とされる。スイス・ジュネーブ大学のThomas Perneger氏らは、尤度比を適用することで、有意でない主要アウトカムの結果のうち、効果なしとする帰無仮説を支持するエビデンスの強度と、事前に規定された有効であるとする対立仮説を支持するエビデンスの強度を推定した。その結果、対立仮説(尤度比<1)が支持されたのは8.9%に過ぎず、91.1%では帰無仮説(尤度比>1)が支持された。研究の成果は、JAMA誌2023年6月20日発行号に掲載された。2021年の有意でないアウトカム169件の横断研究 研究チームは、2021年に主要医学ジャーナル6誌(JAMA、New England Journal of Medicine[NEJM]、PLoS Medicine、BMJ、Lancet、Annals of Internal Medicine)に掲載された無作為化臨床試験の論文130件の、統計学的に有意でない主要アウトカムの結果169件について横断研究を行った。 これら169件の結果について、効果なしとする帰無仮説と、試験プロトコールに記載された有効性の仮説(対立仮説)の尤度比を算出した。また、ベイズの定理を用いて治療が有効でない事後確率を計算した。 尤度比は、これらの仮説に対する支持を定量化するもので、>1の場合は帰無仮説を、<1の場合は対立仮説を支持し、たとえば尤度比5はそのデータが対立仮説の5倍の強度で帰無仮説を支持することを意味する。尤度比10は「強いエビデンス」、100は「決定的なエビデンス」であり、尤度比100以上の場合は一般的な事前信念(prior belief)のレベルでは特定の対立仮説ではなく、帰無仮説が真である事後確率が高いことを示唆する。約7割で強い、約5割で決定的な帰無仮説のエビデンス 130件の論文のうち掲載数が最も多かったジャーナルはJAMA(41件[31.5%])で、次いでNEJM(26件[20.0%])であった。105件(80.8%)は2群の比較試験で、62件(47.7%)は化学物質(薬剤、栄養補助食品、バイオ医薬品、ワクチン)、52件(40.0%)は薬物以外の介入(デバイス、手術、診断法、行動介入など)に関する試験であり、49件(37.7%)は通常治療との比較、45件(34.6%)はactive controlとの、36件(27.7%)はプラセボ/シャムとの比較だった。 解析の結果、有意でない主要アウトカム169件のうち、15件(8.9%)は有効であるとする対立仮説(尤度比<1)を支持し、154件(91.1%)は効果なしの帰無仮説(尤度比>1)を支持した。117件(69.2%)では尤度比が10(強いエビデンス)を超え、88件(52.1%)では100(決定的なエビデンス)を、50件(29.6%)では1,000を上回った。 一方、尤度比とp値との間には弱い相関しかなかった(Spearman相関係数 r=0.16、p=0.45)。また、信頼区間(CI)内に対立仮説の有効性のパラメータが含まれたのは39件(23.1%)で、残り130件(76.9%)では含まれていなかった。95%CI内に両仮説のパラメータの値が含まれる場合の尤度比は0.2~6.2の範囲であり、含まれない場合の範囲は3.0~10146だった。 著者は、「多くの統計学的に有意でない臨床試験の結果は、新たな治療法は効果がないという決定的なエビデンスを示している」と結論し、「主要アウトカムの差に統計学的有意差がない場合は、尤度比を報告することで、臨床試験の解釈が改善される可能性がある」と指摘している。

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急性脳梗塞の血栓除去術、術前ビタミンK拮抗薬は出血リスク?/JAMA

 急性期脳梗塞で血管内血栓除去術(EVT)を受けた患者では、術前のビタミンK拮抗薬(VKA)の使用と術後の症候性頭蓋内出血(sICH)には関連がないが、国際標準比(INR)が1.7を超えるサブグループではVKAの使用はsICH発生のリスクを高めることが、米国・デューク大学医学大学院のBrian Mac Grory氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年6月20日号で報告された。米国594病院の後ろ向きコホート研究 研究グループは、EVTを受ける脳梗塞患者における術前のVKAの使用とアウトカムとの関連を明らかにする目的で、後ろ向きコホート研究を行った(ARAMIS registry[Daiichi Sankyo、Genentech、Janssenの助成で運営]の支援を受けた)。 解析には、米国心臓協会(AHA)のGet With the Guidelines-Stroke(GWTG-Stroke) Programの2015年10月~2020年3月のデータを用いた。対象は、米国の594の病院に入院し、最終健常確認時刻から6時間以内にEVTの施行が選択された大血管閉塞による急性期脳梗塞患者であった。VKA以外の抗凝固薬や抗凝固薬の併用療法を受けた患者は除外した。 主要エンドポイントはsICHの発生であり、病院到着前7日以内のVKAの使用の有無別に評価した。5つの副次エンドポイントにも有意差なし 3万2,715例(年齢中央値72歳[四分位範囲[IQR]:60~82]、女性50.7%)が登録された。このうち3,087例(9.4%)(INR中央値:1.5[IQR:1.2~1.9])が病院到着前にVKAを使用しており、2万9,628例(90.6%)(1.1[1.0~1.1])は使用していなかった。 sICHの発生率は、VKA使用群6.8%(211/3,087例)、非使用群6.4%(1,904/2万9,628例)であり、両群間に有意な差は認められなかった(補正後オッズ比[OR]:1.12[95%信頼区間[CI]:0.94~1.35]、補正後リスク差:0.69%[95%CI:-0.39~1.77])。 また、次の5つの副次エンドポイントにも有意差はみられなかった。(1)36時間以内の生命を脅かす重篤な全身性出血(VKA使用群1.2% vs.非使用群1.0%)、(2)その他の重篤な合併症(5.1% vs.5.0%)、(3)再灌流療法の合併症(12.8% vs.12.2%)、(4)院内死亡(16.2% vs.13.1%)、(5)院内死亡またはホスピスへの転院(27.1% vs.20.6%)。 入院時INRが記録された2,415例のうち、1,585例はINRが1.7以下(INR中央値:1.3[IQR:1.1~1.5])、830例は1.7以上(2.1[IQR:1.9~2.5])であった。sICHのサブグループ解析では、INR 1.7以上の830例におけるsICHの発生率は、VKA使用群が8.3%と、非使用群の6.4%に比べ有意に高率であった(補正後OR:1.88[95%CI:1.33~2.65]、補正後リスク差:4.03%[95%CI:1.53~6.53])のに対し、1.7以下の1,585例では、それぞれ6.7%、6.4%であり、両群間に有意差はなかった(1.24[0.87~1.76]、1.13%[95%CI:-0.79~3.04])。 著者は、「本研究では、EVTを受けることが決まった患者のみを対象としており(EVTを受ける可能性があり、VKA治療を受けている患者全体ではない)、そのため指標イベントバイアス(index event bias)や合流点バイアス(collider bias)が生じる可能性がある。したがって、試験デザインによるバイアスの影響を受けやすく、解釈には注意を要する」としている。

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よくわかる睡眠時無呼吸の診かた,考えかた

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第166回 「有給休暇を取得、理由は必要か?」健康問題を抱える人に立ちはだかる壁

国が少子化対策の一環として打ち出した不妊治療の保険適用が2022年4月にスタートして1年以上が経過した。これまで全額自己負担だった人工授精、体外受精、顕微授精は一部条件付きで保険適用となり、従来は1回あたり人工授精で平均約3万円、体外受精では平均約50万円だった医療費が原則3割負担となった。少なくとも、これまで経済的負担の重さゆえに不妊治療をためらっていた人にとってはかなりの福音のはずだろう。実際、不妊治療を行う医療機関ではかなり通院者が増えたとの話も聞く。不妊・不育で悩む人をサポートするセルフサポートグループ「NPO法人 Fine」が2022年7~10月に不妊治療・不育治療を受けている人、あるいはこれから受ける人を対象に実施した「保険適用後の不妊治療に関するアンケート2022」(回答者1,988人)を読むと、その傾向の一端が見えてくる。アンケートでは保険適用になって『良くなった』と感じた回答者は65%、逆に『悪くなった』と感じた回答者が73%で、前者では経済的な負担軽減、後者では医療機関の混雑を回答の主な理由として挙げている。実際、回答者全体に尋ねた診療の待ち時間に関しては、「少し増えた」が36%、「すごく増えた」が27%、「変化はない」が35%とやはり全体としては受診者が増えていることをうかがわせる。また、同アンケートの結果では今受けたい治療を受けられているかとの設問に対しては、半数以上の56%が「はい」と回答しているのに対し、「わからない」が23%、「いいえ」が21%。ちなみに「はい」との回答は年齢が上昇するにつれて低下する。この理由は今回の保険適用で、体外受精と顕微授精での43歳という年齢制限がおそらく起因すると考えられる。賛否という二項対立では語り切れない結果だが、まだ揺らん期ともいえる時期なのでやむを得ない現状とも理解できる。しかし、少なくとも保険適用により経済的負担が軽減され、一部の人にとってはかなりハードルが下がったことや、これに関する報道で不妊治療に関する認知が広まったことなども考え併せれば、社会全体としては一歩前進したのではないかと個人的には考えている。私はこの問題に接すると常に思い出すエピソードがある。それは過去に一般誌で不妊治療特集の一部を担当した際に取材した男性の話だ。この男性は夫婦で不妊治療に取り組んで無事に子供を授かった人だったが、その際の通院の件について次のようなことを言っていた。今も残るメモにある彼の発言を一部不適切な表現を含むかもしれないが、そのまま以下に記す。「何が大変って、通院の理由を職場に説明する時ですよ。上司に『病院に行くので休みます』と言うと、『お前どうした? 何か具合でも悪いのか』と聞かれるんですよ。上司には悪気がなく、むしろ心配して聞いてくれているのはわかりますよ。でも『不妊治療のためです』とはなかなか言いにくいじゃないですか。ざっくり言えば下(シモ)の話ですしね。でもうちの妻のほうがもっと大変だったろうとは思います。妻にも『会社にどう説明した?』と聞きましたが、『うまい事何とかごまかした』と言ってましたよ」不妊治療の場合、排卵日というやや不確定な要素があるため、慢性疾患のような規則的な通院とはいかない。体外受精や顕微授精となると、女性の場合は数日間連続の通院となることもある。職場への説明に対する心理的ハードルは決して低くないはずであり、上司への説明はことさら厄介だろうと想像する。私自身、7年間という短い期間ながら会社員経験で仕えた直接の上司は3人いるが、それぞれの個性は異なり、今考えても話してもよいと思える話題の範囲はこの3人ではかなり異なる。前述のFineのアンケート結果を見ても、保険適用になって「良くなった」と感じている人のうち「仕事と両立しやすくなった」との回答はわずか4%にとどまることを考えれば、やはり対職場では気苦労はあるのだろう。そんな最中、ウィメンズヘルスを中核とする製薬企業オルガノン(本社:米国・ニュージャージー州)の日本法人が主催したワークショップを見学する機会を得た。これは6月が世界不妊啓発月間であることを受けて、2回に分けて行われたもので、1回目は20~30代の社会人が健康課題と向き合える会社制度・環境などについて、2回目は企業人事、組織運営の担当者が健康課題を持つ社員が働きやすい職場環境を実現するための企業対応を話し合ったものだ。私はこのうち2回目を聴講した。会場で話していたのはオルガノン、日本オラクル、東日本電信電話、ライフネット生命保険のいずれも人事・キャリア担当者だ。この4人の議論の中でも私が注目したのはライフネット生命保険の担当者から紹介された同社の特別休暇制度だった。同社には2016年に創設された特別休暇制度として、家族やパートナーの看病などに使える「ナイチンゲール休暇」(3日間)、不妊治療などの通院を目的とした「エフ休暇」(8日間)、さらに2019年度に創設された特定の疾患に罹患した際のナイチンゲールファンド休暇」(10日間)、がんなどの療養と業務の両立支援を目的とした「ダブルエール休暇」(12日間)など、労働基準法に定められた年次有給休暇以外にも多様な休暇制度があるとのこと。私も今回初めてこのことを知って驚いたが、それ以上に頷いたのがこれらの制度を使う際にはまず上司に相談するのではなく、人事担当者に相談するという点だった。このことはごく当たり前のことと思う人もいるだろう。しかし、働く者の多くはどうしても「休暇申請はまず上司に」との固定観念がある。そして過去の私に限らず多くの企業勤務者にとっては、「上司との相性」という壁も常に存在する。この点から考えれば、ライフネット生命保険のようにこれら特別休暇制度の利用時にまず人事が窓口になるならば、ワンクッションが置けてありがたいと思う人は少なくないはずだ。とりわけ法的に定められた年次有給休暇とは異なるこうした休暇制度はあっても取りにくいことはしばしばある。今回私が参加する前に開かれた第1回のワークショップのまとめを事前に目にしたが、その中には「上司が男性の場合、生理休暇が取りにくく、普通の有休として申請」との発言があり、さもありなんと思ったほどである。ただ、そうした状況もちょっとした人事制度の運用の仕方で様変わりすることもある。ただ、前近代的な慣習はまだまだ健在なのも事実だ。実際、このワークショップで日本オラクルの担当者が「私より上の世代にはまだまだ『理由がなければ有休を取得しちゃいけない』という考えがあって…」と発言した際には会場が爆笑の渦に包まれた。私もこれには内心で「休みたいと思ったから有休を取るんであって、『休みたい』こそが理由だろう」と突っ込んでしまった。余談だが、私は会社員1年目に年次有給休暇の10日間を一気に取得した。この時、上司は許可したものの、人事担当の責任者が上司のところに飛んできて「新人社員が有給休暇をすべて消化して、しかも一気に取るなんて前例がない」と言っていたのを耳にし、「は?」と思ったことがある。さて話を戻すが、この不妊治療に関連して厚生労働省が「仕事と不妊治療の両立支援のために」というパンフレットを発刊している。この中に「『仕事と不妊治療の両立支援について』企業アンケート調査結果」として、「貴社では、不妊治療を行っている従業員がいますか」で「はい」が13%、「貴社では、不妊治療を行っている従業員が受けられる支援制度や取組を行っていますか」で「はい」が9%との数字が紹介されている。後者については現状がそうなのだろうと思うが、前者に関して、理由を告げずに治療に取り組んでいる人がいることは容易に想像でき、私は氷山の一角と解釈している。そしてこのことは今回の不妊治療に限らず、すべての健康問題にも言えることだろう。私自身の周囲ですら勤務先に告げずに慢性疾患、それもいわゆる難病の治療に取り組んでいる人を複数知っている。ワークショップでは一瞬、「休む理由が言いやすい会社が良いのか? それとも理由を言わずに休める会社が良いのか?」という言葉も出てきたが、これは健康問題を抱える人にとっては実は深刻な話だ。しかし、これは2項対立ではなく本来は2項両立のはずである。この点は純利益の追求が最大の目的である企業の経営者からすると悩ましい問題かもしれない。それでもなお私はやや厳しい言い方にはなるが、健康問題を抱える人が休暇を取得することに難色を示す経営者には「危機感に欠けている」と言わざるを得ない。よく言われる「少子高齢化」は、ともすると高齢化のほうばかりに目が行きがちだが、実は少子化もかなり深刻である。国立社会保障・人口問題研究所が公表した最新の日本の将来人口推計では、15~64歳のいわゆる現役人口は、2020年時点からの比較で、2025年には約200万人、2040年には約1,300万人も減少する。これまでなんとなく確保できていた社員を頭数上ですら確保できなくなる日がもう目の前に迫っているのだ。そもそも一見健康そうに見える若年世代にも健康上の問題を抱える人は少なくない。やや古いデータになるが、厚生労働省の2007年労働者健康状況調査によれば、男女とも20~30代では2割前後が何らかの持病を抱えている。その意味では企業が従業員の健康問題への支援策を整備することは、もはや喫緊の課題と言ってよいだろう。今回の不妊治療のワークショップでは、かなり先進的な企業事例を耳にしたが、その分だけ私個人は逆に日本全体に漂うライフワークバランスの欠如ぶりのほうに今改めて意識がいってしまっている。この構造のまま日本社会が突き進めば、その先に待っているのはどのような姿だろうか? どの道を行ってもあまり良い姿は想像できない。強いて浮かぶとするならば、水圧に負けて爆縮した潜水艇タイタン、あるいはタイタンが目指した先にあった深海に錆びついて鎮座する豪華客船タイタニック号のいずれかぐらいだ。

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卵アレルギーが不安…、離乳食開始へのアドバイスは?【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】第4回

卵アレルギーが不安…、離乳食開始へのアドバイスは?講師長野県立病院機構 長野県立こども病院 小児アレルギーセンター長伊藤 靖典 氏【今回の症例】生後4ヵ月の女児。母乳栄養。アトピー性皮膚炎はない。乳幼児健診にて、食物アレルギーが心配なので、鶏卵の摂取をどのように進めたらよいかを相談された。鶏卵摂取の進め方の指導として適切なのはどれか?1.生後4ヵ月でプリックテストや特異的IgE抗体検査を実施し、陽性の場合は除去指導を行う2.生後5~6ヵ月ごろから、卵黄から摂取を開始させる3.リスクが高いので鶏卵は1歳を過ぎてから摂取するように指導する4.食物経口負荷試験にて確認する

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境界性パーソナリティ障害の自殺リスクに対する薬物療法の比較

 境界性パーソナリティ障害(BPD)患者では、自殺行動が臨床上の重大な懸念事項となるが、自殺リスクの低下に有効な薬物療法は依然として明らかになっていない。東フィンランド大学のJohannes Lieslehto氏らは、スウェーデンのBPD患者における自殺企図または自殺既遂の予防に対する、さまざまな薬物療法の有効性について比較検討を行った。その結果、BPD患者の自殺行動のリスク低下と関連が認められた唯一の薬物療法は、注意欠如・多動症(ADHD)治療薬であることが示され、逆に、ベンゾジアゼピンの使用は自殺リスク上昇との関連が示唆された。著者らは、BPD患者において、ベンゾジアゼピンは注意して使用する必要があると報告している。JAMA Network Open誌2023年6月1日号の報告。 対象は、2006~21年にスウェーデンの全国レジストリデータベースに登録された16~65歳のBPD患者。データの分析は2022年9月~12月に行った。選択バイアスを排除するため、個別(within-individual)デザインを用いた。初発症状バイアスを調整するため、薬物治療開始から最初の1ヵ月間または2ヵ月間を分析から除外し、感度分析を行った。主要アウトカムは自殺企図または自殺既遂で、ハザード比(HR)を算出し評価した。 主な結果は以下のとおり。・分析には、BPD患者2万2,601例(男性:3,540例[15.7%]、平均年齢:29.2±9.9歳)が含まれた。・16年のフォローアップ期間(平均:6.9±5.1年)に、自殺企図で入院した患者は8,513例、自殺既遂が確認された患者は316例であった。・ADHD治療薬による薬物療法は、同薬物療法を行わなかった場合と比較し、自殺企図または自殺既遂のリスク低下と有意な関連が認められた(HR:0.83、95%信頼区間[CI]:0.73~0.95、FDR補正p=0.001)。・気分安定薬による薬物療法は、主要アウトカムと有意な関連が認められなかった(HR:0.97、95%CI:0.87~1.08、FDR補正p=0.99)。・自殺企図または自殺既遂のリスク上昇と関連していた薬物療法は、抗うつ薬(HR:1.38、95%CI:1.25~1.53、FDR補正p<0.001)、抗精神病薬(HR:1.18、95%CI:1.07~1.30、FDR補正p<0.001)による治療であった。・調査された薬剤のうち、ベンゾジアゼピンによる治療は、自殺企図または自殺既遂のリスクが最も高かった(HR:1.61、95%CI:1.45~1.78、FDR補正p<0.001)。・これらの結果は、潜在的な初発症状バイアスで調整した場合でも同様であった。

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認知症リスクが高まるHbA1c値は?

 高血糖状態が続くと、アルツハイマー型認知症の原因となる「アミロイドβ」が溜まりやすくなり、認知症発症リスクが高まるとされる。糖尿病患者が認知症リスクを減らすために目標とすべき血糖コントロールはどの程度か。オーストラリア・National Centre for Healthy AgeingのChris Moran氏らの研究がJAMA neurology誌2023年6月1日号に掲載された。 1996年1月1日~2015年9月30日の期間中、50歳以上の2型糖尿病を有するKaiser Permanente Northern California統合医療システムの会員を対象とした。期間中のHbA1c測定が2回未満、ベースライン時の認知症有病者、追跡期間3年未満の者は除外した。データは2020年2月~2023年1月に解析された。 参加者はHbA1c値が6%未満、6~7%未満、7~8%未満、8~9%未満、9~10%未満、10%以上に該当する割合に基づいて分類された。検査回数が増え、新たな測定値が追加されるごとに、血糖値の累積状態を再計算した。主要アウトカムは認知症の発症で、診断は国際疾病分類第9改訂版のコードを用いた。Cox比例ハザード回帰モデルにより、年齢、人種および民族、ベースラインの健康状態、HbA1c測定回数を調整した上で、累積血糖曝露と認知症との関連を推定した。 主な結果は以下のとおり。・計25万3,211例が登録され、参加者の平均年齢は61.5(SD 9.4)歳、53.1%が男性であった。追跡期間の平均は5.9(SD 4.5)年であった。・測定されたHbA1c値の50%超が9~10%未満または10%以上であった参加者は、50%以下であった参加者と比較して認知症リスクが高かった(9~10%未満の調整後ハザード比[aHR]:1.31[95%信頼区間[CI]:1.15~1.51]、10%以上のaHR:1.74[95%CI:1.62~1.86])。・対照的に、6%未満、6~7%未満、7~8%未満が50%超の参加者は認知症リスクが低かった(6%未満のaHR:0.92[95%CI:0.88~0.97]、6~7%未満のaHR:0.79[95%CI:0.77~0.81]、7~8%未満のaHR:0.93[95%CI:0.89~0.97])。 研究者は「HbA1c値が9%以上の期間が長い成人で認知症リスクが最も高かった。これらの結果は、高齢の2型糖尿病患者に対して現在推奨されている緩やかな血糖目標値を支持するものである」としている。

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発作性上室頻拍、etripamil点鼻スプレーが有用/Lancet

 発作性上室頻拍に対する短時間作用型のL型Caチャネル拮抗薬であるetripamilの点鼻投与は、房室結節依存性の発作性上室頻拍の洞調律への迅速な復帰に関してプラセボより優れており、忍容性および安全性は良好であることが、北米および欧州の160施設で実施された多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照イベントドリブン試験「RAPID試験」の結果、示された。米国・Piedmont Heart InstituteのBruce S. Stambler氏らが報告した。RAPID試験は、NODE-301試験のパート2として実施された試験である。Lancet誌オンライン版2023年6月15日号掲載の報告。投与後30分以内の発作性上室頻拍から洞調律への復帰率をプラセボと比較 研究グループは、心電図で確認された持続性(20分以上)のエピソードを伴う発作性上室頻拍既往の18歳以上の患者を登録した。洞調律中にスプレー型のetripamil 70mgを2回、10分間隔で点鼻投与する試験投与で忍容性が認められた患者を、etripamil群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 患者は、日常生活で発作性上室頻拍の症状が発現した場合、心電図を装着し、事前に訓練された迷走神経刺激手技を行い、症状が消失しない場合は試験薬を患者自身が点鼻し、症状が10分以上持続する場合は再投与した。 主要エンドポイントは、投与後30分以内での発作性上室頻拍から洞調律(30秒以上)への復帰率(独立中央評価)であった。洞調律復帰率はetripamil群64% vs.プラセボ群31%で有意な差 2020年10月13日~2022年7月20日に、計692例が無作為化され、このうち有効性解析集団(房室結節依存性であることが確認され、発作性上室頻拍のエピソードに対して試験薬を自己投与した患者)は184例(etripamil群99例、プラセボ群85例)であった。 発作性上室頻拍から洞調律への復帰率(Kaplan-Meier推定値)は、etripamil群64%(63/99例)、プラセボ群31%(26/85例)であった(ハザード比[HR]:2.62、95%信頼区間[CI]:1.66~4.15、p<0.0001)。洞調律復帰までの時間の中央値は、etripamil群17.2分(95%CI:13.4~26.5)、プラセボ群53.5分(38.7~87.3)であった。 事前に規定された主要エンドポイントの頑健性を検証する感度解析においても同様の結果が得られた。 試験薬投与後24時間以内の有害事象発現率は、etripamil群50%、プラセボ群11%であった。そのほとんどが投与部位に生じた軽度または中等度の事象で、いずれも一過性であり介入なしで消失した。etripamil群で5%以上に発現した有害事象は、鼻不快感(23%)、鼻づまり(13%)、鼻漏(9%)などで、重篤な有害事象および死亡は報告されなかった。

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腎不全死亡、オンラインHDFが従来血液透析よりリスク低下/NEJM

 腎不全患者において、大量血液透析濾過(high-dose hemodiafiltration with on-line production:オンラインHDF)は従来のハイフラックス膜を使用した血液透析(HFHD)と比較して、全死因死亡リスクを低下することが示された。オランダ・ユトレヒト大学病院のPeter J. Blankestijn氏らが欧州8ヵ国の61施設で実施した実用的な無作為化比較試験「CONVINCE研究」の結果を報告した。いくつかの研究で、腎不全患者では標準的な血液透析と比較し、オンラインHDFが有用である可能性が示唆されているが、発表されている研究には限界があり追加データが必要とされていた。NEJM誌オンライン版2023年6月16日号掲載の報告。3ヵ月以上HFHDを受けている患者を、継続群またはオンラインHDF群に無作為化 研究グループは、HFHDを3ヵ月以上受けていたオンラインHDF(後希釈HDFで置換液量23L以上)の候補者で、週3回の透析を受ける意思があり、患者報告アウトカム評価を完了することが可能と判断された18歳以上の成人患者を、HFHDの継続(従来透析)群とオンラインHDF群に無作為に割り付け追跡評価した。 主要アウトカムは、全死因死亡。副次アウトカムは、死因別死亡、致死的または非致死的心血管イベントの複合、腎移植、あらゆる原因の再入院または感染症関連の再入院であった。全死因死亡率、オンラインHDF群17.3% vs.継続群21.9% 2018年11月~2021年4月に、合計1,360例が無作為化された(オンラインHDF群683例、継続群677例)。追跡期間中央値は30ヵ月(四分位範囲[IQR]:27~38)。オンラインHDF群において、1セッション当たりの置換液量23±1Lを達成した患者は92%で、平均置換液量は25.3Lであった。 主要アウトカムの全死因死亡は、オンラインHDF群で118例(17.3%)、継続群で148例(21.9%)に発生し、ハザード比(HR)は0.77(95%信頼区間[CI]:0.65~0.93、p=0.005)であった。 心血管イベントによる死亡リスク(HR:0.81、95%CI:0.49~1.33)、致死的または非致死的心血管イベントの複合死亡リスク(1.07、0.86~1.33)は、両群で同等であった。

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理不尽な世界【Dr. 中島の 新・徒然草】(483)

四百八十三の段 理不尽な世界この年になるまで大事なことを知りませんでした。今の季節、プンといい匂いがしてきたら、それはクチナシなんですね。春の沈丁花、秋の金木犀とならぶ夏のクチナシといったところでしょうか。では、冬は何になるのか?ちょっと思いつかないので、知っている人がいたら教えて下さい。さて、先日外来にやってきたのはもうすぐ収監されるという患者さん。有罪が確定して、いよいよ刑務所に入るという直前に大病を患いました。治療の後にとりあえず退院はできたのですが、まだまだ病状不安定だとか。「もうちょっと良くなってから来い」と検察だか刑務所だかに言われて私の外来にやってきました。私の目で見れば、もう病状も安定していて何時でも収監OKという感じではあります。でも刑務所の人たちはそう思っていないのでしょう。だから、頭部MRIとか血液検査とか心電図とか、一通りの検査をやりました。それにしても何度も刑務所に行く人というのは、一体どういう人生を歩んでいるのでしょうか?何食わぬ顔で尋ねてみました。中島「今度は何年ですか?」患者「一応、3年くらいなんやけど」中島「何回目になるのでしたか」患者「もう5回目ですわ」何をやって5回も刑務所に行くのか、それは聞き忘れてしまいました。たぶん窃盗とか薬物とか、無難な答えを準備しているんでしょうね。もし傷害とか放火とか言われると、こっちもドン引きです。中島「やっぱり行先は堺ですか」患者「京阪神のどっかになるんやろうけど、どこになるかはわかりまへん」京阪神の刑務所はそれぞれ山科、堺、大久保にあります。患者「自分としては医療刑務所でリハビリを続けたいんですわ」その気持ちは良くわかります。でも、それだと役をもって懲らしめるってことにならないような気が……中島「体が不自由になってしまったから、普通の工場では難しいですね」患者「そうですねん。モタ工(もたこう)の中に入れられるかもしれまへん」中島「どんな作業があるんですか?」患者「たとえばビーズ玉を色ごとに分けるとか、やね」中島「それだったら楽でいいですね」患者「それがね、せっかく分けたビーズ玉を目の前で混ぜられてしまうんですわ」中島「ぎゃあ!」モタ工というのはモタモタしている受刑者ばかりを集めて作業させる工場のことだとか。誰でもできる作業とはいえ、せっかく分けたビーズ玉を混ぜられたら心が折れてしまいます。患者「白い紙を100枚くらい持ってきて、これで折り鶴を作れ、と言われまんねん」中島「それで……」患者「出来上がったら、それも目の前でゴミ箱に捨てられてしまうんですわ」中島「つらいなあ」刑務所の中は理不尽なことばかりなのだそうです。中島「いろいろ検査しましたけど、安定しているんで刑務所でも大丈夫だと思います」患者「そうでっか、わかりました」やはり善人よりは悪人の話のほうが何倍も面白いです。でも、忙しい外来でいつまでも聞いているわけにはいきません。適当に切り上げることにしました。中島「では、体に気を付けて行ってきてください。お大事に」患者「おおきに」ということで最後に1句クチナシの 香りに送られ 堺行き

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先天性胆汁酸代謝異常症〔Inborn Errors of Bile Acid Metabolism〕

1 疾患概要■ 定義胆汁酸とは、肝臓でコレステロールより生合成されるステロイドの1群である。先天性胆汁酸代謝異常症とは、この生合成経路の遺伝性酵素欠損を1次性の病因とするもので、常染色体潜性遺伝形式を示す遺伝性疾患である。■ 疫学非常にまれな疾患でわが国における発症頻度は明らかではない。現在までに確定診断された本邦における患者数は筆者が知る限り、3β-hydroxy-Δ5-C27-steroid dehydrogenase/isomerase(HSD3B7)欠損症が4例、Δ4-3-oxo-steroid 5β-reductase (SRD5B1)欠損症が3例、oxysterol 7α-hydroxylase(CYP7B1)欠損症が1例、bile acid-CoA:amino acid N-acyltransferase(BAAT)欠損症が1例、以上の9例である。■ 病因胆汁酸生合成経路の遺伝性酵素欠損により、異常胆汁酸もしくは胆汁アルコールが蓄積する。異常胆汁酸は細胞毒性が強く、肝臓を中心にさまざまな臓器障害を引き起こす。異常胆汁酸の蓄積により、肝細胞が障害を受け胆汁うっ滞型肝障害を引き起こす。■ 症状一般的には、生下時から続く黄疸、肝腫大、灰白色便(脂肪便)など、乳児胆汁うっ滞症に伴う症状が出現する。進行すれば肝硬変へ移行するため、易疲労感、腹水、脾腫、低蛋白血症や凝固異常など、肝不全による症状が出現する。■ 分類先天性胆汁酸代謝異常症は、3β-hydroxy-Δ5-C27-steroid dehydrogenase/isomerase(HSD3B7)欠損症、Δ4-3-oxo-steroid 5β-reductase(SRD5B1)欠損症、oxysterol 7α-hydroxylase(CYP7B1)欠損症、cholesterol 7α-hydroxylase(CYP7A1)欠損症、sterol 27-hydroxylase(CYP27A1)欠損症、70-kDa peroxisomal membrane protein(ABCD3)欠損症、α-methylacyl-CoA racemase(AMACR)欠損症、D-bifunctional protein(DBP)欠損症、sterol carrier protein X(SCPx)欠損症、bile acid-CoA:amino acid N-acyltransferase(BAAT)欠損症、bile acid-CoA ligase(SLC27A5)欠損症と以上の11疾患が現在までに報告されている。11疾患のうち、乳幼児期に肝障害で発症し、わが国でも報告がある、3β-hydroxy-Δ5-C27-steroid dehydrogenase/isomerase(HSD3B7)欠損症、Δ4-3-oxo-steroid 5β-reductase(SRD5B1)欠損症、oxysterol 7α-hydroxylase(CYP7B1)欠損症、bile acid-CoA:amino acid N-acyltransferase(BAAT)欠損症、以上の4疾患に関して本稿では解説する。■ 予後早期に診断し治療を開始すれば内科的治療で予後良好であるが、診断が遅れると肝硬変へ進展し肝移植が必要となる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)乳児期より胆汁うっ滞(ALTとD-Bilの上昇)を認め、血清・尿中に疾患特異的な異常胆汁酸もしくは胆汁アルコールを検出した場合、先天性胆汁酸代謝異常症を強く疑う。わが国における胆汁酸分析は、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)もしくは液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-EIS-MS/MS)で行われている。胆汁酸分析で各疾患に特異的な異常胆汁酸が検出された場合、疑われる疾患の責任遺伝子を解析し、確定診断へ繋げる。3β-hydroxy-Δ5-C27-steroid dehydrogenase/isomerase(HSD3B7)欠損症、Δ4-3-oxo-steroid 5β-reductase(SRD5B1)欠損症、oxysterol 7α-hydroxylase(CYP7B1)欠損症、以上の3疾患は、血清γ-GTPと血清総胆汁酸が正常を示すことが特徴的である(他の病因による胆汁うっ滞型肝障害は血清γ-GTPと血清総胆汁酸が共に上昇することが多い)。Bile acid-CoA:amino acid N-acyltransferase(BAAT)欠損症は、血清γ-GTPは正常で血清総胆汁酸は上昇する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)3β-hydroxy-Δ5-C27-steroid dehydrogenase/isomerase(HSD3B7)欠損症とΔ4-3-oxo-steroid 5β-reductase(SRD5B1)欠損症に対しては、早期診断すれば1次胆汁酸療法(コール酸もしくはケノデオキシコール酸)と脂溶性ビタミンの補充を行い、診断が遅れ肝硬変となっていれば肝移植となる。Oxysterol 7α-hydroxylase(CYP7B1)欠損症に対しては、早期診断すればケノデオキシコール酸療法と脂溶性ビタミンの補充を行うが、診断が少しでも遅れると肝移植になるケースが多い。Bile acid-CoA:amino acid N-acyltransferase(BAAT)欠損症に対しては、ウルソデオキシコール酸が使用されるが、グリココール酸(日本では医薬品としての製剤はない)の使用報告もある。治療の効果は、一般的な胆汁うっ滞・肝不全に伴う症状(黄疸・灰白色便・肝腫大)の改善、血液肝機能検査の改善(ALTやD-Bilの正常化)、胆汁酸分析で血清・尿中の疾患特異的異常胆汁酸の減少、以上で総合的に判断する。4 今後の展望先天性胆汁酸代謝異常症の治療薬であるコール酸製剤は、わが国では医薬品として存在しなかったが、国内治験を経てコール酸製剤(商品名:オファコル カプセル50mg)が、先天性胆汁酸代謝異常症に対する治療薬として2023年に本邦でも保険適用となった。5 主たる診療科小児科、小児外科、移植外科、消化器内科(肝臓内科)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病情報センター 先天性胆汁酸代謝異常症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)水落建輝ほか. 小児内科. 2022;54:218-221.2)Mizuochi T, et al. Pediatr Int. 2023;65:e15490.公開履歴初回2023年6月29日

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第51回 「5類」後の新型コロナ押し付け合い

依頼先の医療機関は「5類」前と一緒Unsplashより使用COVID-19が「5類感染症」に移行してから、全国の主要中核病院でコロナ病床は削減されています。私の住んでいる地域の周辺の中核病院も、10床→2床などのようにコロナ病床を減らして対応しているところがほとんどです。大学病院のような高度医療を提供する責務がある医療機関では、コロナ病床を極端に減らしています。確かに、高齢者施設クラスターで寝たきりの誤嚥性肺炎を合併するCOVID-19例を、大学病院が診療する理由はありません。それでも、政府は先月、「5類感染症」移行後の医療提供体制について、これまで入院受け入れの実績がない医療機関にも受け皿になってもらうことで、入院可能な医療機関を現在の約3,000から約8,200と2倍以上に拡充する方針を示しています。これまでCOVID-19を積極的に受け入れてこなかった医療機関では、確かに機能的に「COVID-19を診療できる」かもしれませんが、そもそも行政が関与しない現状で、そのような医療機関にクリニック等から入院を依頼することはないのです。ADL不良の高齢者がCOVID-19になって入院が必要なら、基本的に急性期病院に依頼するのが一般的でしょう。―――ゆえに、結局のところ、これまでCOVID-19を積極的に診療していた急性期病院へ優先的に入院しているのが現状なのです。急性期病院にとってアンフェアそのため、全国で散発的に観測されているのが「当院のコロナ病床は満床なので貴院でお願いします」という入院依頼です。この構図は、完全にCOVID-19の症例を押し付け合っている状況なのですが、急性期病院に非常に分が悪い。アンフェアです。とくに国公立の市中病院では、「みなし確保病床」のような運用をしており、断らずに受け入れている病院が多いと思います。そもそも、すべての医療機関で入院依頼を断らない仕組みを構築するというのが幻想に近い。補助金も半減され、それで新規COVID-19例を是非ともボランティア精神で診てくださいというのは、無理難題です。補助金にも限りがあるので、この決断は財政的にもやむを得ないと思いますが、コロナ禍3年以上が経過して、医療従事者の滅私奉公で支え続けろというのは酷な話です。

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認知症患者に処方される抗精神病薬と併用薬の分析

 さまざまな問題が指摘されているにもかかわらず、抗精神病薬が認知症患者に対し、依然として一般的に処方されている。北里大学の斉藤 善貴氏らは、認知症患者に対する抗精神病薬の処方状況および併用薬の種類を明らかにするため、本検討を行った。その結果、認知症患者への抗精神病薬の処方と関連していた因子は、精神科病院からの紹介、レビー小体型認知症、NMDA受容体拮抗薬の使用、多剤併用、ベンゾジアゼピンの使用であった。著者らは、抗精神病薬の処方の最適化には、正確な診断のための地域の医療機関と専門医療機関の連携強化、併用薬の効果の評価、処方カスケードの解決が必要であるとしている。Dementia and Geriatric Cognitive Disorders誌オンライン版2023年5月26日号の報告。 対象は、2013年4月~2021年3月に受診した認知症外来患者1,512例。初回外来受診時に、人口統計学的データ、認知症のサブタイプ、定期処方薬の調査を行った。抗精神病薬の処方と、紹介元、認知症のサブタイプ、抗認知症薬の使用、多剤併用、潜在的に不適切な薬物(PIM)の使用との関連性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬が処方されていた認知症患者は11.5%であった。・認知症のサブタイプで比較すると、レビー小体型認知症患者は、他のすべての認知症サブタイプの患者よりも、抗精神病薬の処方率が有意に高かった。・併用薬については、抗認知症薬使用、多剤併用、PIM使用の患者において、これらの薬物を使用していない患者と比較し、抗精神病薬処方の可能性が高かった。・多変量ロジスティック回帰分析では、精神科病院からの紹介、レビー小体型認知症、NMDA受容体拮抗薬の使用、多剤併用、ベンゾジアゼピンの使用が、抗精神病薬の処方と関連していることが示された。

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ペムブロリズマブ+ラムシルマブの非小細胞肺がん術前補助療法(EAST ENERGY)/ASCO2023

 切除可能なPD-L1陽性StageIB~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術前補助療法として、ペムブロリズマブとラムシルマブの併用療法が有効であることが、多施設共同の単群第II相試験であるEAST ENERGY試験の結果から示唆された。国立がん研究センター東病院の青景 圭樹氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)+化学療法は、切除可能NSCLC患者に対する標準的な術前補助療法の1つとして認識されている。しかし、プラチナ製剤不適格患者に対する、この薬剤の組み合わせは十分に検証されていない。一方、ICIと血管新生阻害薬の併用は、進行期NSCLCにおいて有効性と安全性が報告されている。 ICI+血管新生阻害薬を術前補助療法に適用できないか。EAST ENERGY試験では、PD-L1陽性NSCLCに対し、ICIであるペムブロリズマブと血管新生阻害薬(VEGFR2阻害薬)であるラムシルマブの併用術前補助療法の有効性と安全性が検討された。・対象:PD-L1≧1%の切除可能なStageIB〜IIIA(AJCC8版)NSCLC患者24例・介入:ペムブロリズマブ(200mg)+ラムシルマブ(10mg/kg) 3週ごと2サイクル→手術・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央病理学審査(BIPR)評価による主要な病理学的奏効(MPR)率[副次評価項目]病理学的完全奏効(pCR)率、R0切除率、奏効率(ORR)、無再発生存期間(RFS)、PD-L1発現別の全生存期間(OS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・BIPR評価のMPR率は50.0%(24例中12例)で、事前に設定したMPR率の基準(MPR 9例以上[37.5%以上])を超え、主要評価項目を達成した。・pCR率は25%(24例中6例)であった。・観察期間中央値23.6ヵ月時点でのRFS中央値は未到達、12ヵ月RFS率は91.1%、24ヵ月RFS率は75.6%であった。・同期間でのOS中央値は未到達、12ヵ月OS率は100%、24ヵ月OS率は94.4%であった。・Grade3の治療関連有害事象(TRAE)は23例中7例に発現、そのうち5例が重篤だった(Grade4以上はなし)。・Grade3の免疫関連有害事象は、23例中3例(急性腎障害2例、リウマチ性多発筋痛症1例)に発現した(Grade4以上はなし)。・Grade3の術中・術後合併症は22例中3例(肺ろう、術中肺動脈出血、術後胸腔内血腫)に発現した。 青景氏は、この新しいレジメンはPD-L1陽性NSCLCの術前補助療法として、プラチナ不適格患者や高齢患者に適用できるだろうと述べた。

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