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寄せられた疑問に答える、脂質異常症診療ガイド2023発刊/日本動脈硬化学会

 『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』が6月30日に発刊された。動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイドは2018年版から5年ぶりの改訂となり、塚本 和久氏(帝京大学大学院医学研究科長、内科学講座 教授)が改訂点や本書の新たな取り組みについて、日本動脈硬化学会主催のプレスセミナーで解説した。動脈硬化関連の各種ガイドライン・指針に準拠 動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイドは脂質異常症に特化し、非専門医が困ったときに参考となる情報をコンパクトに記載したものである。日本動脈硬化学会では『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022度版』をはじめ、『スタチン不耐に関する診療指針2018』『PCSK9阻害薬の継続使用に関する指針』などのさまざまなガイドラインや指針を発刊しており、『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』はそれらの内容を網羅するかたちで作成されている。そのため、主な改訂点も『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022度版』に準じたものになっている。<脂質異常症診療ガイド2023の主な改訂内容>1.随時(非空腹時)のトリグリセライド(TG、中性脂肪)基準値(175mg/dL以上)を設定。2.脂質管理目標値設定のための動脈硬化性疾患の絶対リスク評価手法として、冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞を合わせた動脈硬化性疾患をエンドポイントとした久山町研究のスコアを採用。3.糖尿病がある場合のLDLコレステロールの管理目標値について、合併症がある場合の1次予防は100mg/dL未満、2次予防は70mg/dL未満に設定。4.2次予防の対象疾患として冠動脈疾患に加えてアテローム血栓性脳梗塞も追加。5.薬物療法において、スタチン不耐と判断する際の注意点を記載。6.原発性脂質異常症の項を拡充。 上記の『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』改訂内容1について、塚本氏は「脂質異常症の診断基準は“動脈硬化発症リスクを判断するためのスクリーニング値であり、治療開始のための基準値ではない”ことは、ぜひ理解しておいていただきたい」と述べ、改訂内容5については「スタチンは費用対効果も高く不必要な中止を避けたい。また、スタチン不耐と判断される患者の半数以上がスタチン不耐ではないとの報告1)もある。それゆえ、ノセボ効果には注意し、患者の筋関連症状とスタチンとの関連性をしっかり確認してほしい」と強調した。脂質異常症診療ガイド改訂でQ&Aを拡充 今回の動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド改訂では本文の内容の充実はもちろんのこと、Q&Aを拡充し、項目数を47から61に増やしている。この中には、予防ガイドラインでは詳述されなかったポイントや比較的よく質問される疑問点、そして日本動脈硬化学会広報啓発委員会が会員ページに掲載している症例(日常臨床で診断・治療に難渋する症例)を参考に作成したケースを取り上げている。たとえば、上述の『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』改訂内容2に関連する質問が寄せられ、それに対する回答が記載されている。―――Q25久山町スコアでは40歳未満の方は対象にはなりませんが、多くの危険因子を持つ若年の脂質異常症患者さんにはどのように対応すればよいでしょうか?A久山町スコアのアプリでは、絶対リスクとともに相対リスクも表示される。久山町スコアは40歳以上を対象としたものなので正確とは言えないが、40歳未満の対象者であっても年齢以外の因子を入力後、年齢の項を40歳と入力すれば、同世代の危険因子のない方と比べての相対リスクがわかるので、患者指導に用いると良い。――― このほかにもよく質問される疑問点として「Q21 吹田スコアで高リスクだった患者さんが久山町スコアでは中リスクとなりました。どのように対応すればよいでしょうか?」「Q22 管理目標値設定のフローチャートに記載されている『その他の脳梗塞』はどのような脳梗塞でしょうか? 心原性脳梗塞やラクナ梗塞も含まれるのでしょうか?」などが寄せられている。また、広報啓発委員会作成の会員マイページに掲載されている症例を参考とした症例としては「Q55 LDL-C 260mg/dLでアキレス腱肥厚もあったので、FHと考えスタチンで治療を始めましたが、LDL-C値はほとんど下がりません。どのように対応すればよいでしょうか?」(シトステロール血症の鑑別が必要)のようなQ&Aが作成されている。ぜひ『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』のQ&Aをご一読いただきたい。遺伝子検査項目の増加、指定難病の診断に 2022年4月に原発性脂質異常症の遺伝子検査項目が5つに増えた(家族性高コレステロール血症、原発性高カイロミクロン血症、無βリポタンパク血症、家族性低βリポタンパク血症1[ホモ接合体]、タンジール病)。これを受けて、『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』では低HDLコレステロール低値の際のフローチャートを追加し、解説疾患を増やすなど、原発性脂質異常症の項を拡充。遺伝子検査項目が増えるメリットには「指定難病の確定診断がつけば、患者の登録が進み、患者のbenefitにつながる」と述べた。脂質異常症診療ガイド2023にICT導入 今回の発刊に際し情報通信技術(ICT)を積極的に導入しており、『動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版』を購入した方はデジタルブックでも閲覧できる。また、掲載されているQRコードを読み込むことで代表的な臨床比較試験、診療指針、専門医リストなどが確認できるため、web検索する手間が省ける仕組みになっている。 最後に同氏は「以上の改訂点を踏まえ、医師や管理栄養士、臨床検査技師などをはじめとする多くの医療者に活用していただきたい」とコメントした。

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腎細胞がん術後補助療法、エベロリムスは無再発生存期間を改善せず(EVEREST)/Lancet

 腎摘除術後の再発リスクが高い腎細胞がん患者において、術後補助療法としての哺乳類ラパマイシン標的タンパク質エベロリムスはプラセボと比較して、無再発生存期間を改善せず、Grade3/4の有害事象の頻度が高かったことが、米国・オレゴン健康科学大学Knightがん研究所のChristopher W. Ryan氏らが実施した「EVEREST試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2023年7月28日号で報告された。米国の無作為化プラセボ対照第III相試験 EVEREST試験は、米国の398の大学および地域の研究センターで実施された二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2011年4月~2016年9月の期間に患者の無作為化が行われた(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成を受けた)。 年齢18歳以上の腎細胞がんで、腎臓の外科的完全切除術を受け、切除断端陰性の患者を、エベロリムス10mgまたはプラセボの1日1回経口投与を54週間施行する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、無再発生存期間(無作為化の日から最初の再発または全死因死亡の日までの期間)であった。 1,499例を登録し、エベロリムス群に755例(年齢中央値58歳、男性69%、白人91%、超高リスク例55%)、プラセボ群に744例(58歳、70%、90%、55%)を割り付けた。全体の90%が根治的腎摘除術を、残りの10%が腎部分切除術を受け、17%が非淡明細胞がんであった。超高リスク群では、無再発生存期間が有意に良好 フォローアップ期間中央値76ヵ月(四分位範囲[IQR]:61~92)の時点で、両群とも無再発生存期間中央値には到達しなかった。5年無再発生存率は、エベロリムス群が67%(95%信頼区間[CI]:63~70)、プラセボ群は63%(60~67)であり、層別log-rank検定でp値は0.050であったが、ハザード比(HR)は0.85(95%CI:0.72~1.00、p=0.051)と、事前に規定された有意差の閾値(p=0.044)を満たさなかった。最も頻度の高い再発部位は肺で、次いでリンパ節だった。 また、超高リスク群では、エベロリムス群で無再発生存期間の有益性が認められた(HR:0.79、95%CI:0.65~0.97、p=0.022)が、中~高リスク群では有益性はなかった(0.99、0.73~1.35、p=0.96)。 両群とも全生存期間中央値には到達せず、有意な差はなかった(層別HR:0.90、95%CI:0.71~1.13、p=0.36)。5年全生存率は、エベロリムス群が87%(95%CI:84~89)、プラセボ群は85%(82~87)だった。 Grade3以上の有害事象は、プラセボ群が11%(79/723例)で発現したのに対し、エベロリムス群は46%(343/740例)と頻度が高かった。エベロリムス群で高頻度の有害事象として、口内炎(64%)、倦怠感(56%)、下痢(33%)、斑状丘疹状皮疹(31%)が、検査値異常として、高トリグリセリド血症(53%)、高コレステロール血症(49%)、貧血(42%)、高血糖(35%)がみられ、同群で高頻度のGrade3以上の有害事象は、口内炎(14%)、高トリグリセリド血症(11%)、高血糖(5%)であり、治療関連死は認めなかった。 著者は、「全生存期間への影響を判断するには、より長期の調査を要する。本試験の結果は、術後補助療法としてのエベロリムスの使用を支持しないが、超高リスク例で示唆された無再発生存期間の有益性は、この患者群においてエベロリムスのさらなる研究を進めるべきかの検討を正当化する」としている。

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C型肝炎にDAA治療成功も死亡率高い、その理由は/BMJ

 インターフェロンを使用せず直接作用型抗ウイルス薬(DAA)で治療に成功したC型肝炎患者では、一般集団と比較して死亡率が高く、この過剰な死亡の主な要因は薬物や肝臓関連死であることが、英国・グラスゴー・カレドニアン大学のVictoria Hamill氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年8月2日号に掲載された。カナダと英国の3地域のコホート研究 本研究は、ブリティッシュコロンビア州(カナダ)、スコットランド(英国)、イングランド(英国)の3つの地域のデータを用いた住民ベースのコホート研究である(研究資金は主に、責任著者のHamish Innes氏[グラスゴー・カレドニアン大学]が英国のMedical Research Foundationから受けたウイルス性肝炎フェローシップの報奨金が充てられた)。 対象は、インターフェロンフリーの抗ウイルス薬治療の時期(2014~19年)に、C型肝炎の治療に成功(ウイルス学的著効[SVR]を達成)した2万1,790例であった。 これらの参加者を肝疾患の重症度で、肝硬変なし(肝硬変前)、代償性肝硬変、末期肝疾患(ESLD)の3つの群に分けた(イングランドは肝硬変とESLDのみ)。追跡調査は、抗ウイルス薬治療の終了後12週の時点から開始し、死亡日または2019年12月31日に終了した。 主要アウトカムは、粗死亡率と年齢・性別標準化死亡率、および標準化死亡率比であり、年齢、性別、年度で調整した一般集団と比較した。ポアソン回帰分析で、全死因死亡率と関連する因子を同定した。3地域とも、肝疾患の重症度の上昇と共に死亡率増加 追跡期間中に1,572例(7%)が死亡した。主な死因は、薬物関連死(383例、24%)、肝不全(286例、18%)、肝がん(250例、16%)だった。 粗全死因死亡率(1,000人年当たりの死亡数)は、ブリティッシュコロンビア州が31.4(95%信頼区間[CI]:29.3~33.7)、スコットランドが22.7(20.7~25.0)、イングランドが39.6(35.4~44.3)であった。また、標準化死亡率はそれぞれ31.4(95%CI:29.3~33.7)、28.6(24.7~32.5)、38.5(34.1~42.9)だった。 全死因死亡率は、各コホートおよびすべての重症度の群において、一般集団に比べC型肝炎治療成功者でかなり高かった。たとえば、ブリティッシュコロンビア州の全死因死亡率は、肝硬変のない集団では一般集団の約3倍(標準化死亡率比:2.96、95%CI:2.71~3.23、p<0.001)、肝硬変の集団では約4倍(3.96、3.26~4.82、p<0.001)、ESLDの集団では10倍以上(13.61、11.94~15.49、p<0.001)であった。 また、スコットランドとイングランドでも同様に、疾患の重症度が上がるに従って全死因死亡率の標準化死亡率比が高くなり、いずれも有意な差が認められた(すべてのp<0.001)。 回帰分析では、高齢、最近の薬物乱用による入院、アルコール乱用による入院、併存疾患が死亡率の上昇と関連していた。 著者は、「これらの知見は、直接作用型抗ウイルス薬の効果を最大限に発揮させるためには、C型肝炎の治療が成功した後も、継続的な支援と追跡調査が必要であることを強調するものである」としている。

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2023年12月期第2四半期 決算説明

2023年12月期第2四半期実績発表 :代表取締役社長 COO 藤井勝博現状及び今後の業界動向について:代表取締役会長 CEO 大野元泰※IRページは こちら からお戻りいただけます※タイトルを選ぶとお好きなチャプターからご覧いただけます。※IRページは こちら からお戻りいただけます.banAdGroup{display:none;}.bottomNotice{display:none;}

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第159回 新型コロナ感染拡大時の注意喚起に、4つの指標を作成/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナ感染拡大時の注意喚起に、4つの指標を作成/厚労省2.コロナワクチン接種、定期接種移行の議論に着手/厚労省3.ポストコロナで動き出す病院再編、地域住民が抗議相次ぐ/厚労省4.子宮頸がん検診の指針見直し、5年毎のHPV検査の導入も検討/厚労省5.医療資源を活用する「紹介受診重点医療機関」を初公表/厚労省6.地域に根ざした医師会活動プロジェクトを始動/日医1.新型コロナ感染拡大時の注意喚起に、4つの指標を作成/厚労省厚生労働省は、新型コロナウイルス感染拡大時の都道府県の注意喚起のための指標を示し、全国の自治体などに通知した。これによると、医療機関の外来が逼迫している割合が25%を超えたり、病床使用率が50%を超えたりした場合に注意喚起が行われることとなる。また、感染者数については、最近のオミクロン型感染拡大で外来の逼迫状況がピークとなる2週間前の感染者数を基準としている。さらに、感染拡大の際、医療機関の受診者数などを報告するシステムが外来逼迫割合が25%を超えるなどの指標に達した場合、各都道府県は住民に対して注意喚起や医療提供体制の強化を行うよう求めている。すでに都道府県で独自の基準を設けているところもあり、国の目安を使用するかどうかは、自治体が地域の医療提供体制や特性を踏まえて判断することになる。これらの指標は、新型コロナウイルス感染拡大の進行による医療逼迫に備えるための措置であり、今後、変更される可能性がある。各都道府県はこうした指標を参考にし、適切な注意喚起や対策を実施していくことが求められている。参考1)新型コロナウイルス感染症に関する住民への注意喚起等の目安について(厚労省)2)コロナ感染拡大時の注意喚起に目安 厚労省、医療逼迫で判断(日経新聞)3)コロナ感染拡大時“注意喚起の目安”4指標作成 厚生労働省(NHK)2.コロナワクチン接種、定期接種移行の議論に着手/厚労省厚生労働省は、8月9日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会を開催し、新型コロナウイルスワクチン接種に関する議論を行った。新型コロナウイルスのワクチン接種は、オミクロン株の流行と重症化率の低下から、定期接種化を検討しているが、現在の公費負担による臨時接種であり、今後は自己負担が発生する定期接種への移行を視野に入れ、年内に結論を出す予定。9月20日から行われるオミクロン株の派生型に対応したワクチン接種は、生後6ヵ月以上のすべての人を対象に無料で来年3月まで行うことが承認されたが、積極的な勧奨は高齢者や重症化リスクの高い人に限定して行う。来年度以降の接種について厚労省は、WHOの新指針に基づき、定期的な追加接種を推奨せず、努力義務や接種勧奨は重症化リスクの高い人にのみ適用する。なお、定期接種化は2024年度からの実施を検討しており、今年中に部会で対象者や費用負担について結論を出す予定。参考1)第49回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(厚労省)2)今後の新型コロナワクチン接種について(その7)(同)3)コロナワクチン、来年度以降のあり方議論始まる 定期接種化も視野に(朝日新聞)4)新型コロナワクチン 秋接種、高齢者や重症化リスクのみ勧奨(毎日新聞)3.ポストコロナで動き出す病院再編、地域住民が抗議相次ぐ/厚労省厚生労働省が、新型コロナウイルス感染拡大前から取り組んでいる、「地域医療構想に基づいた病院再編・統合の方針」に対して、地域住民から地域医療の充実を求める意見が相次いでいる。岩手県の県立病院の再編、新潟県では上越市の新潟労災病院の閉院に伴う再編など、人口減少に伴う地域の医療機関の再編はコロナ対策でも必要とする行政側の方針に対して、地域住民からは医療態勢の確保と充実が求める声があげられている。今後、行政では地域のニーズに即した対応が求められている。参考1)県立病院の縮小・統合に反対 署名1万8千筆を県に提出 いわて労連など(デーリー東北)2)上越の病院再編 安心できる将来像確実に(新潟日報)3)三田市民病院の存続求める 市民団体が神戸市長に申し入れ(サンテレビ)4)病院の再編って必要なの? 感染症・高齢化対応で重要に(日経新聞)4.子宮頸がん検診の指針見直し、5年毎のHPV検査の導入も検討/厚労省厚生労働省はがん検診のあり方に関する検討会を開き、子宮頸がんの早期発見を促すため、HPV(ヒトパピローマウイルス)感染を調べる検査を公的検診に導入するため、指針を改正する方針を決定した。厚労省は、30歳以上の女性に対しては2年毎の細胞診と5年おきのHPV検査のどちらかを選ぶことができるように提案。これにより、検診間隔が長くなり、受診者の負担が軽減される一方で、精度管理体制の整備が必要となる。新たな指針は2023年度中に見直され、24年度から導入される見通し。ただし、細胞診とHPV検査は異なるアプローチで、受診者の特定と負担軽減を図るための選択肢として提供される。新たな検診方法では、がんの発症前に高リスクな人を特定し、受診者の負担を軽減する上でのメリットがある。ただし、導入には自治体ごとの準備期間や陽性者のフォローが必要であり、実際の導入は限定的となる可能性がある。HPV検査導入については、自治体が従来の細胞診とHPV検査のどちらかを選択できる形で実施する予定。また、従来通りHPV感染を防ぐワクチンの定期接種も行われる。参考1)HPV検査導入へ指針改正、子宮頸がん早期発見に期待 厚労省検討会(産経新聞)2)指針での子宮頸がん検診、30歳以上にHPV検査も可 各自治体が判断、年度内に指針見直し(CB news)3)子宮頸がん検診、「2年毎の細胞診単独法」のほか、体制整った市町村では「5年毎のHPV検査単独法」も可能に-がん検診あり方検討会(Gem Med)4)第39回がん検診のあり方に関する検討会[資料](厚労省)5.医療資源を活用する「紹介受診重点医療機関」を初公表/厚労省東京都は、医療資源を重点的に活用するための外来施設である「紹介受診重点医療機関」83ヵ所を初めて公表した。この制度は、外来機能報告をもとに地域ごとの「協議の場」で承認されており、病院や診療所の医療実績データを使って医療関係者の協議を通じて決定される。紹介受診重点医療機関は、外来での特定の領域に特化した医療を提供する施設で、病院の外来診療の役割分担と連携を進め、患者の受診をスムーズにし、医療従事者の負担を軽減することを目指している。区中央部では大規模病院が多く、一方、医療資源の少ない地域では施設数は限られている。紹介受診重点医療機関の明示によって、東京都は医療資源の集中と均衡を促進し、地域医療の充実を図りたい考え、また、紹介受診重点医療機関では、病院の外来患者の待ち時間の短縮や勤務医の外来負担の軽減等の効果を見込んでいる。東京都以外の各道府県でも公表を進めており、厚生労働省はこれらをまとめた一覧を掲載している。参考1)紹介受診重点医療機関を都が初公表、計83カ所 1日時点(CB news)2)紹介受診重点医療機関について(厚労省)3)都道府県紹介受診重点医療機関リスト(同)4)紹介受診重点医療機関になると何が変わるのか?(PRRISM)6.地域に根ざした医師会活動プロジェクトを始動/日本医師会日本医師会は「地域に根ざした医師会活動プロジェクト」を発表し、市民への理解を深めることを目指すことを明らかにした。プロジェクトはシンポジウム形式で、実地とWebのハイブリッド開催を予定している。第1回のテーマは「有事の医師会活動」で、大規模災害時の対応や新型コロナウイルス感染症の対策などを取り上げる。シンポジウムはアーカイブ動画や電子パンフレットで提供され、多くの市民が参加できるようにする。プロジェクトを通して、医師会の活動の周知と理解を促進し、地域医療の充実に寄与する目的を持つ。渡辺 弘司常任理事は、地域の時間外や災害時の医療対応など、医師会の多様な活動を通じて地域を支える重要性を語った。また、地域医師会と専門基幹病院の連携事例も紹介され、全国の医師会の活動を通じて地域の医療を支える取り組みを広く知らしめる狙いがある。参考1)日医、市民への新規プロジェクトを開始(時事通信)2)地域に根ざした医師会活動プロジェクトについて(日本医師会)

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自分のお金を使わずにぜいたくするアイデアを探せ!【医師のためのお金の話】第71回

自分のお金を使わずにぜいたくする!?多くの人にとって突拍子もない考えかもしれませんね。ぜいたくするという言葉には、無駄遣いや浪費のイメージがつきものです。しかし、節約だけの人生なんて面白くありません。せっかくですからぜいたくも楽しみたいものです。アリとキリギリスの話ではありませんが、ぜいたくし続けるとロクなことがないのは自明の理でしょう。しかし、それはあくまでも自分のお金で浪費した場合です。もし他人のお金でぜいたくするのならどうでしょうか?そんなことできるわけないだろうと思いがちですが、実は自分のお金を使わずにぜいたくすることは可能なのです。多くの医師にとってイメージしやすいのは、製薬会社主催の研究会でしょう。コロナ禍で途絶えていましたが、情報交換会では豪華な食事やお弁当が出ます。もちろん、そんなことは序の口です。世の中には、多くの資産家が実践している賢い方法やアイデアがたくさんあります。資産形成も! ぜいたくも! という欲張りなあなたのために、自分のお金を使わずにぜいたくする新たな視点を提供しましょう。タワマンや高級車購入はぜいたくの定番タワーマンションや高級車の購入は、医師の憧れの的ではないでしょうか。タワマンの一室から夜景を見てお酒を飲みたい…。高級な住まいや自動車は、ステータスやぜいたくな生活を象徴するものとして魅力的に映るかもしれません。タワマンや高級車は、一見すると豪華な暮らしや優越感を提供してくれるように思えます。しかし、ローン返済やクルマの維持費など、高額な出費が待ち受けていることを忘れてはいけません。何も考えずに購入すると、浪費のわなに陥る可能性が高まります。普通の医師は、自分のライフスタイルや将来的な人生設計をある程度考えながら、タワマンや高級車の購入を検討します。決して衝動買いではありません。しかし、購入を決断した後には、ローン返済や維持費で家計が厳しくなる人が多いのは紛れもない事実です。地方においては、タワマンは新築戸建に置き換えられます。広い庭で子供が遊ぶ姿を眺めたり、バーベキューを楽しんだりするのは人生の至福の時間でしょう。しかし、そのために犠牲にしなければいけないのは、人生の自由度かもしれません。自分のお金を使わずにぜいたくすることは可能なのか?ぜいたくし過ぎると自由を奪われてしまいますが、節約だけの人生なんて面白くありません。私もぜいたくな暮らしが決して嫌いなほうではありません。何とかしてお得にぜいたくしたい。豪華な生活を送っている周囲のお金持ちを観察すると、意外な点に気付きました。自分のお金を使わずにぜいたくな暮らしをしている人が珍しくないのです。たとえば、取引先の不動産会社社長は、文教地区に鎮座するびっくりするぐらい大きな邸宅を購入しました。建物自体は古いですが、とにかくボリューム感があって人目を引きます。広い庭でバーベキューを楽しむ姿を再々見かけました。やはりお金持ちだなと思っていたら、数年するとマンションに建て替わりました。地価がどんどん上がったため巨額の売却益を得たとのことです。結果的には豪邸にタダで住んだうえに大きな利益まで得たのです。かくいう私も、旧自宅は月極駐車場からの収益で住宅ローンを返済していました。文教地区にある80坪ほどある大きな土地ですが、タダで住み続けたことになります。自動車は中古のランドクルーザーですが、減価償却で節税したうえに、売却すると利益が出る予定です。これ以外にも、お中元やお歳暮は所有物件のテナントで購入するので、使ったお金は実質的には交際費になります。さらに、株式投資では食品系の株主優待銘柄を大量に所有しているため、地酒だけで年間百本以上送られてきます。とても1人では飲み切れません。他人の財布で浪費を楽しもう!ここまで見てきたように、浪費しているように見えても実際には自分の財布は使っていないケースが世の中には山のようにあります。自分の稼いだお金で全額賄うか、他人が負担してくれるかでは、天と地の差といえるでしょう。知人の成功している不動産投資家は、都心のタワマンに住んでいるケースが多いです。彼らが好立地のタワマンにこだわるのは、常に売却を見据えているからです。つまり自宅というよりも、商品としてタワマンを捉えているのです。自分が住んでいる間は、所有法人のオフィス兼自宅なので経費化が可能です。そしてタワマンに飽きてきたら、売却して大きな利益を得る。お金をもらいながらタワマンに住んでいる人と、住宅ローンを抱えて自分の給料で支払っている人の差は大きいですね。一見すると両方とも同じ浪費に見えますが、実際には資産形成の手段になっている人も世の中には存在するのです。ポイントは、自分ではなく他人に払ってもらうことを考え抜くことでしょう。ここまで見てきたように、ちょっとした工夫とアイデアを組み合わせることで、浪費が資産形成に変わるケースが少なくありません。ぜいたくしながら資産形成することは可能です。あなたも、自分のお金を使わずにぜいたくする方法を考えてはいかがでしょうか。

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第64回 ロジスティック回帰分析とは?【統計のそこが知りたい!】

第64回 ロジスティック回帰分析とは?医学統計において、多変量解析で用いられる統計手法の1つに「ロジスティック回帰分析(Logistic regression analysis)」があります。ロジスティック回帰分析は、いくつかの要因(説明変数)から、「2値の結果(目的変数)」が起こる確率を予測する解析手法であり、目的変数は2群のカテゴリーデータ、説明変数は数量データで判別分析と類似した解析手法です。ロジスティック回帰分析は図の回帰式を用いて、次の2点を明らかにする解析手法です。(1)サンプルごとに目的変数が起こる確率(予測値)の算出(2)回帰式に用いた説明変数の目的変数に対する影響度図1 ロジスティック回帰分析の回帰式では、実際に表1のデータでBさんが「がん」かどうかの確率を回帰式を用いて求めてみましょう。表1図2ロジスティック回帰分析で求められた回帰式に説明変数のデータを代入し、確率(判別得点という)を算出します。確率は0~100%の間の値をとります。では、Bさんが「がん」である確率を求めてみましょう。Bさんは、嗜好歴として飲酒日数=15日/1ヵ月間、喫煙本数=20本/1日があります。回帰式にその値を代入して計算します。図3結果、Bさんが「がん」である確率は68%となりました。確率が50%以上あれば「がん」であると判定します。ロジスティック回帰分析で求められた回帰式のモデルの適合度を表す指標としては、AIC(赤池情報量基準)、c統計量(AUC)、判別的中率、決定係数、Hosmer-Lemeshowの適合度などがあります。この事例の場合の判別的中率を表2でみてみましょう。表210人中9人が的中(90%的中)しており、判別的中率が目安とする基準75%を上回っているので、予測に使えると判断します。また、先の回帰式で算出された確率と実測値との相関比0.5以上でも予測に使えると判断します。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決!一問一答質問18 ロジスティック回帰分析とは?質問21 ロジスティック回帰分析の説明変数の選び方は?質問22 ロジスティック回帰分析の事例

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外傷の処置(1)鶏眼(うおのめ)【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q79

外傷の処置(1)鶏眼(うおのめ)Q79夜間外来もある当直バイト中、糖尿病性腎症によるCKD既往の80代男性が右母趾先端の鶏眼(うおのめ)の処置希望で受診してきた。鶏眼処置なんて研修医ぶりだと思いながら、鶏眼の大きさに合わせてスピール膏®(サリチル酸)を貼付し、同外用薬を1シート処方した。適宜貼り替えて1週間後に日中外来を受診するよう指示し、鶏眼の処置は雑菌が入るため、自分では処置をしないことを念押しした。上記対応の誤りは?

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事例029 新医薬品エパデールEMの査定【斬らレセプト シーズン3】

解説事例では脂質異常症に対して同月内2回の来院それぞれに処方を行ったイコサペント酸エチル(商品名:エパデールEM、以下同)カプセル2gが査定となりました。査定事由は、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)でした。投与日数も当月内28日であり、病名なども添付文書に沿っています。査定の原因をつかむために調べてみました。カルテには、同月1回目の再診時に7日分処方、同月2回目の再診時に21日分処方の合計28日分が入力されていました。調べている途中で、エパデールEMは発売後1年経っていない新医薬品であり、2023年8月末までは、1回の処方に14日分限度の制限がかかっていることに気付きました。医師に尋ねると14日処方限度の新医薬品であることをご存知でした。1回目再診時に7日分を処方したのち、2回目に次回来院までに薬が不足しないよう、同月内1回処方当たりの投与日数内であれば認められるであろうと処方をされていました。現在のレセプトは、投与薬剤にも日付を紐付けて電子請求されます。そのデータを基にコンピュータ審査が行われます。表面上は算定要件を保っているようでも、日付ごとの審査が行われるために、事例のような査定が発生します。医師にはその仕組みを説明し、処方入力システムに処方制限が表示されるよう改修して査定対策としました。なお、年末年始などの長期休診の場合は、その日数を限度として1回当たりの処方日数を増やすことが可能です。ただし、総投与日数が30日を超えると認められないようですのでご留意ください。

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花粉症患者が豆乳でアレルギー症状、今後避けるべきは豆腐?納豆?【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】第7回

花粉症患者が豆乳でアレルギー症状、今後避けるべきは豆腐?納豆?講師福井赤十字病院 耳鼻咽喉科 主任部長 大澤 陽子 氏【今回の症例】41歳女性。10年ほど前から2月~5月に花粉症を自覚している。かかりつけ医での血液検査では、スギ5+、ヒノキ3+、ハンノキ3+、シラカンバ2+、カモガヤ1+であった。花粉症を自覚したころから、モモやリンゴを食べた時に口の中がかゆくなっていたが、すぐに改善するため放置していた。豆乳を久しぶりに飲んだ時に口唇の腫れと両眼瞼の腫脹が出現し、その後声が出しにくくなったため、救急外来を受診した。後日、外来受診でモモ、リンゴ、大豆の食物アレルギーを疑いプリックテストと血液検査を実施し、モモとリンゴのプリックテストは陽性であったが、大豆のプリックテストは陰性であった。血液検査では、モモ3+、リンゴ1+、大豆0、Gly m 4 2+であった。今後の生活指導として適切なものはどれか?1.納豆や味噌は食べてもよい2.豆腐やモヤシは食べてもよい3.すべての大豆加工製品は避けたほうがよい

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穴あきれんげはラーメンの味や満腹感を損なわずに減塩可能か?

 日本人の1日当たりの食塩摂取量は、令和元年(2019年)に実施された国民健康・栄養調査結果よると平均10.1g(男性10.9g、女性9.3g)と報告されており1)、世界保健機関(WHO)の推奨量(5g/日未満)の約2倍となっている。そこで、熊本県立大学の杉本 真依子氏らは、ラーメンを穴あきれんげを用いて食べた場合と、通常のれんげを用いて食べた場合に、食塩摂取量や味、満腹感が変わるか検討した。その結果、穴あきれんげを用いた場合、食塩摂取量は減少したが、味や満腹感に変化がなかったことが示された。本研究結果は、Nutrients誌2023年6月27日号で報告された。 男子大学生36人を対象に、無作為化クロスオーバー試験を実施した。試験食として、日本人の消費量が多く、食塩を多く含有するラーメンを選択し、箸と穴あきれんげを用いて食べた場合と、箸と通常のれんげを用いて食べた場合のスープの摂取量、おいしさ、食後の満腹感などを比較した。 主な結果は以下のとおり。・食塩摂取量の中央値は、穴あきれんげを用いた場合1.8g、通常のれんげを用いた場合2.4gであり、穴あきれんげを用いた場合に有意な減少が認められた(p=0.019)。・おいしさの評価について、用いるれんげによって差は認められなかった。・同様に、用いるれんげによって、食後の満腹感にも差は認められなかった。・5人(14%)はいずれのれんげを用いた場合でも、スープを飲み干した。 著者らは、「穴あきれんげによる減塩効果について、女性やほかの年齢層における研究が必要である」と述べつつ、「本研究結果から、れんげの形状の変更は、健康に無関心な人などの食塩摂取量を減らすための対策の1つとなる可能性がある」とまとめた。

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睡眠中のアロマセラピー、高齢者の記憶を200%超改善

 高齢者が睡眠中にエッセンシャルオイルの香りに曝露することで、記憶力が大幅に改善したという研究結果が報告された。高齢者の認知機能低下は重要な社会問題であり、安価かつ簡便に家庭内で実施可能な対処法が求められていることから、本研究の手法は非常に有用と考えられた。本研究結果は、米国・カリフォルニア大学アーバイン校のCynthia C. Woo氏らによって、Frontiers in Neuroscience誌2023年7月24日号で報告された。 認知機能障害や認知症のない60~85歳の男女43人を対象とした。睡眠時にエッセンシャルオイルの香りに曝露する群(嗅覚刺激群)、微量の匂い物質の香りに曝露する群(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付け、6ヵ月間嗅覚刺激を実施した。嗅覚刺激群は、7種類のエッセンシャルオイルを用いて、毎晩1種類ずつ2時間曝露した。対照群は、同様に微量の匂い物質の香りに曝露した。ベースライン時と6ヵ月後において、神経心理学的評価と機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた脳機能の解析を行った。記憶機能は、Rey Auditory Verbal Learning Test(RAVLT)を用いて評価した。また、Wechsler Adult Intelligence Scale 3rd edition(WAIS-III)を用いた知能検査も実施した。 主な結果は以下のとおり。・6ヵ月後におけるベースライン時からのRAVLTスコア(第5試行)の変化量(標準偏差)は、対照群が-0.73点(1.74)であったのに対し、嗅覚刺激群は0.92点(1.31)であり、嗅覚刺激群は対照群と比較して226%の有意な改善が認められた(p=0.02)。・知能検査については、両群間に有意差は認められなかった。・嗅覚刺激群は対照群と比較して、左鉤状束※の平均拡散能(mean diffusivity)が有意に増加した(p=0.02)。・ベースライン時の14日間の平均睡眠時間と6ヵ月後における14日間の平均睡眠時間を比較した結果、対照群は3分減少したのに対し、嗅覚刺激群は22分増加した。※ 鉤状束はエピソード記憶、言語、社会的感情処理などの機能を担っていることが示唆されており、加齢やアルツハイマー病によって機能が低下するとされている。

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日本人統合失調症患者の洞察力と臨床因子の長期的特徴

 統合失調症は、洞察力の欠如を来す精神疾患である。洞察力は、時間経過とともに変化するが、統合失調症患者の洞察力に関する長期的な研究はほとんどない。さらに、洞察力と知能との関係を調査したこれまでの研究の多くは、full-scale IQを測定しておらず、認知機能の詳細と洞察力との関係を調べることが難しかった。跡見学園女子大学の酒井 佳永氏らは、統合失調症患者の2つの時点での洞察力を評価し、認知機能との関連を調査した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年6月28日号の報告。 対象は、日本人統合失調症患者163例。2つの時点での洞察力を評価し、洞察力の変化パターンおよび洞察力と臨床変数との関連を調査した。さらに、認知機能と洞察力との関係を調査した。 主な結果は以下のとおり。・経時的な洞察力の変化に基づき対象患者を、不良群(洞察力が低レベルで安定)、良好群(洞察力が良好)、不安定群(洞察力が時間経過とともに変化)の3つに分類した。・不良群は、良好群および不安定群と比較し、general intelligenceスコアが低かった。・認知機能に関しては、言語理解は、ベースラインおよびフォローアップ時の洞察力レベルと関連が認められた。・精神症状に関しては、不良群は、良好群および不安定群と比較し、より重度であり、とくに陽性症状が顕著であった。 著者らは、この縦断的研究から「洞察力の変化に基づき患者を分類したところ、洞察力が低い患者では、認知機能、とくに言語理解が低下しており、陽性症状がより重度であることが明らかとなった」と述べている。

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出生前母体ステロイド投与、児の重篤な感染症のリスク大/BMJ

 出生前ステロイド投与1コースが行われた母親から生まれた児は、生後12ヵ月間、重篤な感染症のリスクが有意に高いことが、台湾・長庚記念病院のTsung-Chieh Yao氏らによる全国コホート研究の結果で示された。新生児の死亡率および罹患率の減少における出生前ステロイド投与の有益性が多くの研究で報告されているが、小児の重篤な感染症に対する出生前ステロイド曝露の潜在的な有害性に関するデータは乏しく、とくに地域住民を対象とした大規模なコホートに基づく厳密なエビデンスは不足していた。著者は今回の結果について、「治療を開始する前に、出生前ステロイド投与による周産期の有益性と、まれではあるが重篤な感染症の長期的リスクについて慎重に比較検討する必要がある」とまとめている。BMJ誌2023年8月2日号掲載の報告。生後12ヵ月以内の重篤な感染症の発生率を出生前ステロイド曝露児と非曝露児で比較 研究グループは、台湾のNational Health Insurance Research Database、Birth Reporting DatabaseおよびMaternal and Child Health Databaseを用い、2008年1月1日~2019年12月31日における台湾のすべての妊婦とその出生児を特定し解析した。 主要アウトカムは、出生前に副腎皮質ステロイド曝露があった児と非曝露児における、生後3ヵ月、6ヵ月および12ヵ月時の入院を要する重篤な感染症、とくに敗血症、肺炎、急性胃腸炎、腎盂腎炎、髄膜炎または脳炎、蜂窩織炎または軟部組織感染症、敗血症性関節炎または骨髄炎、心内膜炎の発生率で、Cox比例ハザードモデルを用い補正後ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出して評価した。 台湾において一般的な母体出生前ステロイド投与は、ベタメタゾン12mgを24時間間隔で2回筋肉内投与、またはデキサメタゾン6mgを12時間間隔で4回筋肉内投与である。すべての重篤な感染症、敗血症、肺炎、急性胃腸炎のリスクが有意に増加 解析対象は、196万545組の妊婦(単胎妊娠)とその出生児で、出生前に副腎皮質ステロイド曝露があった児が4万5,232例、非曝露児が191万5,313例であった。 生後6ヵ月において、出生前ステロイド曝露児は非曝露児と比較し、すべての重篤な感染症、敗血症、肺炎および急性胃腸炎の補正後HRが有意に高かった。補正後HRは、すべての重篤な感染症1.32(95%CI:1.18~1.47、p<0.001)、敗血症1.74(1.16~2.61、p=0.01)、肺炎1.39(1.17~1.65、p<0.001)、急性胃腸炎1.35(1.10~1.65、p<0.001)であった。 同様に、生後12ヵ月において、すべての重篤な感染症(p<0.001)、敗血症(p=0.02)、肺炎(p<0.001)、急性胃腸炎(p<0.001)の補正後HRも有意に高かった。 きょうだいをマッチさせたコホートにおいても、コホート全体で観察された結果と同様、生後6ヵ月(p=0.01)および12ヵ月(p=0.04)において敗血症のリスクが有意に高かった。

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選択的Nav1.8阻害薬VX-548、術後急性疼痛を軽減/NEJM

 電位依存性ナトリウム(Na)チャネルNav1.8の選択的阻害薬であるVX-548は、高用量においてプラセボと比較し、腹壁形成術ならびに腱膜瘤切除術後48時間にわたって急性疼痛を軽減し、有害事象は軽度~中等度であった。米国・Vertex PharmaceuticalsのJim Jones氏らが、2件の第II相無作為化二重盲検比較試験の結果を報告した。電位依存性NaチャネルNav1.8は、末梢侵害受容ニューロンに発現し、侵害受容シグナルの伝達に寄与していることから、選択的Nav1.8阻害薬VX-548の急性疼痛抑制効果が研究されていた。NEJM誌2023年8月3日号掲載の報告。腹壁形成術および腱膜瘤切除術後の急性疼痛患者で、VX-548vs.プラセボを評価 研究グループは、(1)腹壁形成術(軟部組織の痛みのモデル)、または(2)腱膜瘤切除術(外反母趾手術)(骨の痛みのモデル)術後の急性疼痛を有する患者を対象とした2件の第II相無作為化二重盲検比較試験を実施した。 (1)の腹壁形成術試験は2021年8月~2021年11月に米国内の7施設において、腹壁形成術終了後4時間以内で、数値的疼痛評価尺度(Numeric Pain Rating Scale[NPRS]、スコア範囲:0~10、数値が高いほど痛みが強いことを示す)のスコアが4以上、および口頭式疼痛評価尺度(Verbal Categorical Rating Scale[VRS]、痛みが「ない」から「重度」まで4段階で評価)で中等度または重度の痛みを有する18~75歳の患者を、高用量群(VX-548を100mg経口負荷投与後12時間ごとに50mgを維持投与)、中用量群(VX-548を60mg経口負荷投与後12時間ごとに30mgを維持投与)、実薬対照群(酒石酸水素ヒドロコドン5mg/アセトアミノフェン325mgを6時間ごとに経口投与)、プラセボ群(プラセボを6時間ごとに経口投与)に1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、48時間投与した。 (2)の腱膜瘤切除術試験は2021年7月~2022年1月に9施設において、術後1日目の膝窩坐骨神経ブロック除去後9時間以内に(1)と同様の痛みを有する18~75歳の患者を、高用量群、中用量群、低用量群(VX-548を20mg経口負荷投与後12時間ごとに10mgを維持投与)、実薬対照群、プラセボ群に2対2対1対2対2の割合で無作為に割り付け、48時間投与した。 主要エンドポイントは、NPRSスコアに基づく疼痛強度差(SPID)の48時間にわたる時間加重合計(SPID48)とした。NPRSスコアは、初回投与後0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、8、12時間後、以降は4時間ごとに合計19回測定した。主解析では、VX-548各投与群とプラセボ群を比較した。VX-548高用量群で術後急性疼痛が軽減 (1)腹壁形成術試験には計303例、(2)腱膜瘤切除術試験には計274例が登録された。 時間加重SPID48のVX-548高用量群とプラセボ群の最小二乗平均群間差は、腹壁形成術後で37.8(95%信頼区間[CI]:9.2~66.4)、腱膜瘤切除術後で36.8(95%CI:4.6~69.0)であった。両試験とも、中用量群または低用量群はプラセボ群と同様の結果であった。 有害事象はほとんどが軽度~中等度であり、主な有害事象は(1)腹壁形成術試験では悪心、頭痛、便秘、(2)腱膜瘤切除術試験では悪心および頭痛であった。

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第172回 “治験後進国ニッポン”、医療のお宝情報にたどり着けない仕組みが原因か

先日、国産の新型コロナワクチン登場を取り上げたが、そもそも国産ワクチンが海外産ワクチンに比べて登場しにくいのは、臨床試験(以下、治験)実施の難しさがあるように思う。たとえばファイザー製のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンのコミナティの治験は、わずか4ヵ月弱で4万人を超える被験者がエントリーしている。日本でこの期間と規模の被験者を集めることができるかを問われれば、多くの人が“否”と答えるだろう。その理由として挙げられるのが、まず医療制度の違いである。国民皆保険による安価な医療費と医療機関へのフリーアクセスという制度に慣れ切った日本人にとって、敢えて治験に参加するほどのメリットを感じない人がむしろ多数派ではないだろうか。にもかかわらず、場合によっては二重盲検試験で比較対照にプラセボ(偽薬)を使うという前提ならば、「なんで治療されるかどうかわからないものに参加しなければならないの?」となってしまう。さらにいえば治験そのものに対する情報が少なく、イメージも決して良いとは言えない。今でも嫌悪感を含んだ「人体実験」「ヒトをモルモットにしている」との表現は、医療にそれほど知識のない人の間では普通に使われている。この背景にあるのは、かつては製薬企業が治験の実施そのものを広い意味で企業秘密と取り扱っていた時代があり、被験者募集情報が広く公開されないまま水面下で実施されていた。こういった現実もある種、一般市民に対して“怪しいこと”というイメージを醸成してしまった可能性がある。実際、私が医療専門紙記者となった1990年代前半はやはり治験の被験者募集情報が具体的に公表されていることはなく、あくまで治験参加医師とそこに受診する患者との間のみでやり取りされていた。しかも、中には治験であることを患者に説明せずに行われていたケースもあったと聞く。実際、私自身そうした医師の告白を直接聞いたこともある。また、それとは別の医師から「やはり保険診療の中で『治療してもらって当たり前』という前提が患者にはあるため、治験参加を打診するにしてもどうしても口幅ったい物言いになってしまう。今振り返って、厳密な意味でのインフォームド・コンセントになっていたかと言われれば、そう言い切れない」と吐露されたことがある。もっとも当時と比べれば、この状況は大きく改善された。2000年前後からは製薬企業が新聞への全面広告で被験者募集を行うようになった。当時、新聞でとある治験の広告を初めて目にした私は、思わず「うわ!」と声が出たほどだった。そして今ではインターネット上で検索すれば、すべてではないものの治験情報へのアクセスが可能になり、診療ガイドライン上に定められたレジメンが尽きてしまった固形がんの薬物療法中の患者が治験に参加し、公のシンポジウムなどで「患者にとっては治験も治療手段の1つ」と語る時代になった。とはいえ、まだ十分とは言えない。そもそも治験情報自体が一部の患者団体や製薬企業、あるいは医療機関、各種団体などのホームページに分散して存在しているのが現状である。これらの中で一元的にまとまった情報源としては、臨床研究法と再生医療等安全性確保法に基づき試験実施者が厚生労働大臣に対して実施計画の提出などの届出手続を行うシステムで国立保健医療科学院が運営する「臨床研究等提出・公開システム(jRCT)」がある。もっとも前述のようなあくまで試験者の届け出システムで、一般人が検索することは“おまけ”程度の位置付けという側面もあるのか、やたらと使い勝手が悪い。検索ページを見ればそのことは一目瞭然である。たとえば検索時の選択項目の1つである「企業治験」「医師主導治験」「製造販売後試験」「使用成績調査」などについて、一般人で違いを簡潔に説明できる人は稀だろう。今回のコロナ禍の最中は各種治験情報の確認のため、高頻度でこのサイトを利用したが、一般人と比べて医療情報を多く持つ自分でも、検索画面ではしばしば迷う。私自身、「何とかならないものか」と思っていた一人である。そのようなこともあってか現在、jRCTはサイトの改修作業に入り始めている。そうした中でこの6月にややトピック的な動きがあった。厚生労働省で記者会見が開かれた「臨床試験にみんながアクセスしやすい社会を創る会」の設立である。同会は全国がん患者団体連合会(全がん連)や日本難病・疾病団体協議会、やはり希少疾患対策に取り組むNPOのASrid(アスリッド)といった患者組織と順天堂大学、国立がん研究センターなどから共同発起人が参加し、厚生労働省医政局研究開発政策課治験推進室、jRCTを運営する国立保健医療科学院、日本製薬工業協会(製薬協)もオブザーバーに参加。jRCTをユーザー(患者)フレンドリーなサイトに改修し、治験情報がワンストップで得られるようにすることを目標に政策提言などを進めるために設置されたという。会見で共同発起人の桜井 なおみ氏(全がん連理事)は「患者だけでなく、研究者でも隣の医療機関や時には自分の所属医療機関でどのような研究が現在実施されているか探せない問題もある。患者としては適切なタイミングで適切な臨床試験に参加するチャンスを失っている。ここを解決するためには患者会の力だけでは困難で、医療従事者、研究者、創薬関係機関の皆さんとともに多様な目線を取り入れて情報発信することが必要ではないかということで、今回の会設立に至った」と説明した。会としては2025年をデッドラインとして、現状の治験情報発信の課題とその解消法の議論に始まり、患者にわかりやすい具体的な情報公開の方法の提言などを行う。また、共同発起人の1人でASrid理事長の西村 由希子氏は希少疾患の特有の悩みとして「患者会がある疾患では、(製薬)企業も患者が治験情報へアクセスしやすくすることも可能だが、希少疾患は患者数が少ないために患者会そのものを作るのが難しい場合もある。一方で医師も大規模な治験実施が困難で、どうしても各医師の周囲の患者を対象とした治験になりがちで、結果として地域格差、機会格差にも繋がると考えている」と語った。がん、希少疾患の場合は治療選択肢が限られる分、治験情報入手は命綱でもある。その意味で今回の動きは自然なことと言えるし、行政や企業、医療機関なども含めてより大きな枠組みが動き出した意義は大きい。もっともこれまでのjRCTも含め、とかく公的機関の情報発信は良いものを出しても、読まれる、アクセスされるという点でリーチが足りないという側面があるのも現実だ。この点を質疑で尋ねた。桜井氏は「宝物のような情報があるのにたどり着けないということを私達も多く経験している。実はjRCT自体も子供向け啓発の資材などを作っていたが、私達もそれを知らなかった。それが現状なので、まだ病気になっていない人たちも含めた啓発のためのシンポジウム、教育のようなものにもしっかり取り組んでいきたい。一見無駄なように見えても発信し続けることが、とにかく必要だと思う」と回答した。最後の一言はまさに報道でも同じである。何かを報じたから明日から世の中がドラスティックに変わることは、ほとんどあり得ない。この医療専門紙記者の世界に生きてきて約四半世紀、何回も何回も似たようなことを書いて、ようやく1割程度の人に腹落ちしてもらえれば“もうけ”くらいが現実と私は思っている。いや、1割程度だったら大成功かもしれない。“治験後進国ニッポン”で、小さいかもしれないが起きた新たな動きが10年後、20年後に芽を吹いてもらえば、それこそが実は将来起こり得るかもしれない新たなパンデミックの際に他国に遅れを取らない国産ワクチン登場のためのシーズと言えるのではないだろうか。

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カラダワンダーランド、子供たちに医学視点を

医学専門出版社のメディカルレビュー社は、フジテレビジョン主催で4年ぶりの開催となるお台場冒険王2023に「ORGAN ROOMS カラダワンダーランド」を出展した。これは人々の健康維持・予防に取り組む社会を目指す啓発活動・寄付活動「ORGAN ROOMS PROJECT」の一環であり、出展ブースは子供たちが自分の身体の仕組みに興味をもってもらうことを目指したもの。フジテレビ本社屋1階フジテレビモールに8月27日(日)まで出展している。3つの臓器を体感できるORGAN ROOMS カラダワンダーランドには脳・心臓・肺の3つのエリアが設けられ、各臓器をイメージしたゲーム(のぞいてみよう!のうウォッチング、歩いて走って!心臓ゲーム、吸って吐いて!はいゲーム)ができる。このほか、9つの臓器スタンプを集めてカラダを完成させるコーナー、大人も知っておきたい“体のトリビア”が書かれている外壁など、随所に工夫が散りばめられており、子供だけではなく大人も楽しめる。来場時間によっては公式キャラクター「のうポン」とも一緒に記念撮影ができる。また、本ブースではのうポンなどのグッズを販売しており、その売上の一部は、病気と向き合う子供たちの医療、生活環境のサポートのための寄付に役立てる。寄付先は一般社団法人 日本小児総合医療施設協議会(JACHRI)会員施設の38施設をはじめ、小児医療に携わる病院に行う予定だ。プロジェクトは一冊の本との出会いからこのプロジェクトの発端となった「ORGAN ROOMS」はイユダエマ氏(大阪芸術大学デザイン学科グラフィックデザインコース卒)が卒業制作で制作し、学長賞を受賞した作品だ。実際には9つの臓器をデザインしているが、今回の体験ブースには、とくに子供たちに知ってほしい臓器(脳、心臓、肺)をピックアップしている。イユダエマ氏は本インタビューに対し以下のように回答している。-なぜ、身体をテーマにしようと思ったのでしょうか?もともと理科の授業が好きだったこと、コロナの影響で健康や人体というものをみつめ直すことで興味を持ったからです。そして、自分の理科のノートに描いてあった人体図の進化系を作ってみたかったんです。また、人体は一番身近なものにも関わらず、その働きが目に見えないので、それを目に見える形に表現したいと思ったこともきっかけです。-このようなデザインを思いついたきっかけを教えてください大学の講義中に紹介された“内経図”(内丹術の修煉過程を象徴的身体として表現した図)が発想のきっかけです。一見、山のように見えるのですが実は座する身体の側面図にもなっています。おそらく、体内の気の流れを環境に見立てて表現しているのではないでしょうか。この表現方法はおもしろいなと思い、われわれにとって身近でもっとわかりやすい“部屋”で見立てて表現してみたらどうか? と思いました。-今後も医学や身体をテーマにした創作活動を続けられますか?機会があれば、ほかのシリーズを作ってみたいなと思います。高校の生物の授業で苦戦したホルモンのインフォグラフィックスにも挑戦してみたいですね。本書を通じて自分の体に興味を持ち、学びや将来の道を決めるきっかけを与えられたらと思います。いつか、多言語で翻訳されて世界中の人たちに見てもらえれば最高ですね。現在、書籍「臓器がわかる3Dグラフィックス ORGAN ROOMS」が全国の各書店で販売されており、本ブース内での販売も行っている。キャラクターはポケモンのデザイナーが担当本プロジェクトの公式キャラクター「からだっポン」の世界観やキャラクター設定を担当したのは、うたの☆プリンスさまっ♪などの企画・開発経験のある関 彩絵子氏。「からだっポンを通して子供たちに ”自分のからだ” に興味を持ってもらい、予防医療について楽しく知ってほしいと考えた。今回、にしだあつこさんのデザインの魅力がベースにあり、からだっポンたちの設定に、知れば知るほどクスっと笑える魅力を散りばめたので、感じてもらえたらとても嬉しい」と本稿に言葉を寄せた。また、関氏が手掛けた世界観に沿ってキャラクターデザインを担当したのは、にしだ あつこ氏。にしだ氏はこれまでにピカチュウをはじめ、さまざまな人気ポケモンのデザインを担当してきたそう。写真に登場するのうポンこと脳のキャラクター誕生について、「キャラクターを通じて、体のことに興味を持ってもらえるようシンプルでわかりやすく、愛着の湧くようなデザインを目指し作成した。たとえば、のうポンは、真面目でしっかりものの先生タイプだと思う」とし、「からだっポンたちを通じて、医療者と患者さんとのコミュニケーションが取りやすくなると良いなと思っている」とコメントした。子供自身が健康を意識するためにプロジェクト代表の松岡 武志氏(メディカルレビュー社 代表取締役社長)は、「予防医療」「病気と向き合う子供たちへの包括的なサポート」を社会課題に挙げており、これらの啓発・寄付を目的とした「ORGAN ROOMS PROJECT」を立ち上げたが、医療者の賛同も不可欠である。賛同者の一人で国立成育医療研究センター理事長の五十嵐 隆氏は本プロジェクトに対し、「子供が自分の体の仕組みを正しく理解することは“身体”の健康を目指すうえで不可欠なだけではなく、“身体”と“心理”あるいは“社会”との相互作用について理解することにもつながる」とメッセージを寄せている。メディカルレビュー社広報担当者によると「身体の仕組みを知る、たとえば、お腹いっぱいになると体内でどんなことが起こるのかなどを理解することで、自身の身体の変化や違和感などを大人に伝えられるようになることも重要だと考える。今回は本プロジェクトのキックオフに過ぎず、これからの活動が要となるが、将来的にはデジタル絵本を作成し、小児病棟などで身体と病気に関する啓発活動を行っていきたい」と今後の方向性を説明した。参考ORGAN ROOMS PROJECTメディカルレビュー社:臓器がわかる3Dグラフィックス ORGAN ROOMSフジテレビジョン:お台場冒険王

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うつ病と炎症性腸疾患との関連~メタ解析

 うつ病または抑うつ症状の既往歴のある患者は、炎症性腸疾患(IBD)リスクが高いといわれている。イタリア・Humanitas UniversityのDaniele Piovani氏らは、うつ病または抑うつ症状とその後の新規IBD(クローン病、潰瘍性大腸炎)発症との関連を調査するため、縦断的研究を実施した。その結果、うつ病歴を有する患者は、たとえ診断から数年たっていたとしても、軽度から中程度のIBDリスクが上昇する可能性が示唆された。Inflammatory Bowel Diseases誌オンライン版2023年6月10日号の報告。 うつ病または抑うつ症状とその後の新規IBD発症との関連を調査した研究を、MEDLINE/PubMed、Embase、Scopusよりシステマティックに検索した。検証されて評価尺度によりうつ病または抑うつ症状の確定診断に至った研究も対象に含めた。診断バイアスと逆因果関係に関する懸念を制御し、うつ病または抑うつ症状とアウトカムとの関係を評価するため、報告された最長タイムラグに対応した推定値を算出した。独立した2人の研究者が、データを抽出し、各研究のバイアスリスクを評価した。最大限に調整された相対リスク(RR)推定値は、ランダム効果モデルおよび固定効果モデルを用いて、算出した。 主な結果は以下のとおり。・5,307件の研究のうち、13件(900万例、コホート研究:8件、ネステッドケースコントロール研究:5件)が適格基準を満たした。・うつ病は、クローン病(RRランダム:1.17、95%信頼区間[CI]:1.02~1.34、7研究、1万7,676例)および潰瘍性大腸炎(RRランダム:1.21、95%CI:1.10~1.33、6研究、2万8,165例)との有意な関連が確認された。・プライマリ研究では、関連する交絡因子が考慮された。・うつ病または抑うつ症状からIBD発症までの期間は、平均すると数年を要した。・重要な異質性、出版バイアスは見当たらなかった。・サマリ推定値は、バイアスリスクが低く、結果は多重感度分析で確認した。・時間経過による関連性の低下については、明確な結論に至らなかった。・これらの因果関係を明らかにするためには、さらなる疫学やメカニズムの研究が求められる。

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拡張型心筋症、アフリカ系とヨーロッパ系患者での遺伝的構造/JAMA

 拡張型心筋症(DCM)の遺伝子変異について、非ヒスパニック系黒人、非ヒスパニック系白人、ヒスパニック系の患者を対象に調べたところ、アフリカ系のゲノム祖先を持つDCM患者は、欧州系のゲノム祖先を持つDCM患者と比較し、病原性/病原性の可能性と判定できる臨床的に対処可能な変異遺伝子を有する割合が低いことが、米国・オハイオ州立大学のElizabeth Jordan氏らによる検討で明らかにされた。原因として、遺伝子構造が異なる点と、アフリカ系のゲノム祖先を持つDCM患者の臨床データが不足している点が示唆されたという。黒人のDCM患者は白人のDCM患者よりも、家族歴によるリスクが高くアウトカムが不良である一方、DCMのゲノムデータの大半は白人患者のものである。研究グループは、多様なDCM患者集団において、ゲノム祖先ごとにDCMのまれな変異遺伝子構造を比較した。JAMA誌2023年8月1日号掲載の報告。36のDCM変異遺伝子について病原性/病原性の可能性/意義不明を判定 研究グループは2016年6月7日~2020年3月15日にかけて、米国の25のAdvanced Heart Failure Programsを通じ、人種の自己申告による非ヒスパニック系黒人、非ヒスパニック系白人、ヒスパニック系のDCM患者を対象に横断研究を行った。 主要アウトカムは、36のDCM変異遺伝子の、病原性/病原性の可能性/意義不明の判定と、臨床的に対処が可能(病原性/病原性の可能性と判定)か否かであった。臨床的に対処可能な変異遺伝子、欧州系26%に対しアフリカ系8% 解析対象は、主にアフリカ系のゲノム祖先を持つDCM患者が505例、欧州系が667例、ネイティブ・アメリカンが26例だった。 アフリカ系患者は欧州系患者と比べ、臨床的に対処可能な変異遺伝子を有する割合が低かった(8.2%[95%信頼区間[CI]:5.2~11.1]vs.25.5%[21.3~29.6])。このことは、病原性/病原性の可能性/意義不明の変異遺伝子のいずれかを有する患者では、臨床的に対処可能な変異遺伝子のオッズが、欧州系患者と比べアフリカ系患者は低いことを示唆するものであった(オッズ比[OR]:0.25、95%CI:0.17~0.37)。 平均してアフリカ系患者は、TTN遺伝子や、病気を引き起こすメカニズムとして機能欠失が予測されるその他の遺伝子について、欧州系患者に比べ臨床的対処可能な変異遺伝子の割合が低かった(それぞれの群間差:-0.09[95%CI:-0.14~-0.05]、-0.06[-0.11~-0.02])。 一方で、病原性/病原性の可能性/意義不明のいずれかに判定された変異遺伝子数は、アフリカ系患者と欧州系患者で同程度だった(群間差:-0.07、95%CI:-0.22~0.09)。これは、アフリカ系患者では、主にミスセンス変異による非TTN遺伝子・非予測機能欠失型株の意義不明変異株が、より多く認められたためであった(群間差:0.15、95%CI:0.00~0.30)。また、アフリカ系患者のみに検出される変異遺伝子が病原性であることを支持する、臨床症例に基づく公表済みのエビデンスは少なかった(p<0.001)。

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医療者が小学生に「がん教育」を行ううえでの“Tips”

 小学生向けの「がん教育」では、到達目標を“がんについて考える「きっかけづくり」”に置くことが大事だという。また「新聞作り」のようなアウトプット機会の提供も有用であるようだ。 今回は、がん教育のワークショップを例に、医療者が小学生にがん教育を行ううえでの、ヒントとなる内容を紹介する。 2023年8月5日、小学生親子向けの夏休み自由研究応援プログラム『がんと「未来」新聞づくり』ワークショップが、都内にて開催された(主催:武田薬品工業)。【クイズ形式や新聞作成で、対話を大切に】 本プログラムでは、クイズ形式や講演内容からの新聞作り、といったいくつかの工夫が見られた。 冒頭の「医師から学ぼう!がんのこと」と題した、渡邊 清高氏(帝京大学医学部内科学講座 腫瘍内科 病院教授)の講演も小学生向けに構成された平易なスライドに加え、クイズを交えた構成が印象的であった。「日本人の何人にひとりが一生のうち、がんになるでしょう?」「がん検診を受けるタイミングは?」「この中でがんの原因にならないものは?」などのクイズに回答しながら、子供たちは「がん」の知識を自然に得られる。 講演後の取材で渡邊氏は、医療者が小学生向けにがん教育を行う際は、つい正しい知識の伝達ばかりに重きを置きがちだが、一方通行の講義ではなく、子供にがんを知ってもらう「きっかけ」を提供する意識が大事だ、と述べた。子供たちの意見を聞きながら、対話形式で取り組むことが望ましく、可能であれば医師だけでなく、患者さん側の体験を共有する機会を設けると、より身近にがんを意識させることができるという。 なお、必ずしも患者さん側からの講演である必要はなく、医師が患者さんと接した際のエピソードの紹介、といった医師の経験談の共有も有用だという。【軍手を使った、化学療法による副作用体験】 今回は実際に、「がん体験者のお話を聞こう」という形で、桜井 なおみ氏(一般社団法人CSRプロジェクト代表理事)の体験が語られた。演台での講義スタイルではなく、会場を歩きながら子供に語りかけるように話す姿が印象的であった。 講演内では、抗がん剤服用で生じる末梢神経障害などの身体変化を体感してもらう目的で、参加者に軍手をはめてもらい、「ペットボトルを開ける」、「お箸を使って物を運ぶ」、「紙をめくる」、などの作業に挑戦してもらい、その感想を聞いた。 「紙がめくれないとイライラする」と述べる子供に、桜井氏は「もし自分のまわりの人が困っていたら、どんなサポートをしてあげたいかな?」と問いかけた。会場からは「ゆっくりでいいよ、と声をかける」「ドアを開けておいてあげる」 といった意見が挙がったのち、桜井氏は「がん患者はいろいろなつまずきがある。そんなときに手を差し伸べてあげてほしい」と伝え、がん患者の困り事がまとまった参考ウェブサイト「生活の工夫カード」(国立がん研究センター 中央病院)を紹介した。 また、「がんだから仕方ない」と患者さんは思ってしまいがち、との桜井氏のコメントに対し、渡邊氏からは医療者として「何か困っていることはないですか?」とアプローチすることも大事だ、との意見も述べられた。 講演後に行われた新聞作りでは、時間を超過しても残って作業を継続する親子が多く、参加者が主体的にワークに取り組む様子が伺えた。【“新聞作り”というアウトプットで学びを深める】 本プログラムを主催した武田薬品工業の馬目氏(日本オンコロジー事業部 ペイシェントアドボカシー&コミュニケーション部 課長代理)にも企画趣旨を取材した。 今回は、小学生にもわかりやすくがんをより身近に感じてもらう目的で、医師および患者さんの両者の視点から講演をしてもらい、子供たちに楽しみながら意見をアウトプットしてもらえる「新聞作り」という形式を考えたという。 学校がん教育の普及には、現在も都道府県での取り組みに差があることや、外部講師の成り手が少ないといった課題がある。武田薬品工業は、今年度初めて募集をかけ、がん教育プログラムを企画した。 本プログラム参加者は40人(家族16組)。事後アンケートでは「がん」に対する理解力の向上とともに「がん患者さんの気持ちを理解できて良かった、学んだことを身近な人に話したい、将来医師になりたい」という子供からのコメントや、保護者からも「親子で一緒に学び、考える時間を持つことができて良かった、患者さん目線で自分事として感じることができた」など多くの温かい感想が寄せられたようだ。 今回のような取り組みは、親子でのヘルスリテラシー向上にもつながると、期待される。

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