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日本人統合失調症患者における口腔機能低下

 統合失調症患者の口腔機能の状態は、あまりわかっていない。新潟大学の渡部 雄一郎氏らは、日本人統合失調症入院患者の口腔機能に関して、横断研究を実施した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2024年4月11日号の報告。 日本人統合失調症入院患者130例を対象に、咬合力、舌口唇運動機能、舌圧、咀嚼機能などの口腔機能を測定した。次に、非高齢患者63例と高齢患者67例の口腔機能低下の臨床症状の頻度を比較した。同様に、これまでの日本における研究より高齢対照者98例のデータを用いて、比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・咬合力低下の頻度は、高齢患者で76.2%であり、非高齢患者(43.9%)および高齢対照者(43.9%)よりも有意に高かった。・舌口唇運動機能低下の頻度は、高齢患者で97.0%、非高齢患者で96.8%であり、高齢対照者(56.1%)よりも有意に高かった。・舌圧低下の頻度は、高齢患者で80.7%、非高齢患者で66.1%であり、高齢対照者(43.9%)よりも有意に高かった。・咀嚼機能低下の頻度は、高齢患者(76.5%)が最も高く、次いで非高齢者(54.8%)、高齢対照者(15.3%)の順であった。 著者らは、「日本人統合失調症入院患者では、高齢者、非高齢者のいずれにおいても、高齢対照者と比較し、口腔機能低下が認められる」としている。

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ASPECTS 0~5の広範囲脳梗塞にも血管内治療は有効か?/NEJM

 ベースラインでの梗塞サイズの上限を設けずに試験登録した急性期広範囲脳梗塞患者において、血栓除去術+内科的治療は内科的治療単独と比べて、良好な機能的アウトカムをもたらし、死亡率も低下したことが示された。ただし症候性脳出血の発生率は高かった。フランス・Hopital Gui de ChauliacのVincent Costalat氏らLASTE Trial Investigatorsが、多施設共同前向き非盲検無作為化試験「LASTE試験」の結果を報告した。梗塞サイズの上限を設けない急性期広範囲脳梗塞患者における血栓除去術の使用については、これまで十分に検証されていなかった。NEJM誌2024年5月9日号掲載の報告。ASPECTS≦5の急性期脳梗塞患者、血栓除去術併用vs.内科的治療単独を評価 研究グループは、発症後6.5時間以内に、MRIまたはCTで前方循環の近位主幹動脈閉塞による広範囲脳梗塞が認められた18歳以上の患者を対象とした。広範囲脳梗塞の定義は、Alberta Stroke Program Early Computed Tomographic Score(ASPECTS、スコア範囲:0~10、低スコアほど梗塞が広範囲であることを示す)5以下とした。 適格患者を1対1の割合で、血栓除去術+内科的治療を受ける群(血栓除去群)または内科的治療のみを受ける群(対照群)に割り付け追跡評価した。 有効性の主要アウトカムは、90日時点の修正Rankinスケールスコアとした(スコア範囲:0~6、高スコアほど障害が大きいことを示す)。安全性の主要アウトカムは、90日時点の全死因死亡とし、安全性の副次アウトカムは、無作為化後24時間以内の症候性脳出血などとした。90日時点の修正Rankinスケールスコア、4 vs.6で有意差あり 2019年4月~2022年3月に、フランスの24病院とスペインの6病院で、計333例が無作為化された(血栓除去群166例、対照群167例)。このうち9例は同意撤回または法的理由により除外され、324例を対象に解析が行われた(血栓除去群159例、対照群165例)。 両群のベースライン特性は類似しており、年齢中央値74歳、女性47.5%、ASPECTS中央値2(四分位範囲[IQR]:1~3)、ベースラインでの梗塞容積中央値135mL(IQR:106~185)であった。 本試験は、同様の試験で血栓除去群が優れているとの結果が示されため、早期に中止された。なお、本試験では患者の34.9%が血栓溶解療法を受けた。 90日時点の修正Rankinスケールスコア中央値は、血栓除去群4、対照群6であった(一般化オッズ比:1.63、95%信頼区間[CI]:1.29~2.06、p<0.001)。 90日時点の全死因死亡率は、血栓除去群36.1%、対照群55.5%であった(補正後相対リスク:0.65、95%CI:0.50~0.84、p<0.001)。一方で症候性脳出血の発生が、それぞれ9.6%、5.7%報告された(補正後相対リスク:1.73、95%CI:0.78~4.68)。血栓除去群において、手術に関連した合併症が11例報告された。

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2型DM、メトホルミンに追加するなら?/BMJ

 日常診療における2型糖尿病患者の2次治療として、メトホルミンに追加する3種の一般的な経口血糖降下薬(SU薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬)の有効性を比較する検討が、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のPatrick Bidulka氏らにより行われた。SGLT2阻害薬は、SU薬およびDPP-4阻害薬と比較してHbA1c、BMI、収縮期血圧を低下させ、心不全による入院(対DPP-4阻害薬)および腎臓病の進行による入院(対SU薬)のリスクを抑制した。なお、その他の臨床エンドポイントでは差があるとのエビデンスは示されなかった。BMJ誌2024年5月8日号掲載の報告。SGLT2阻害薬vs.SU薬vs.DPP-4阻害薬、1年時点のHbA1c変化の絶対値を評価 研究グループは、有効性比較試験を模倣したコホート研究(target trial emulation)で、メトホルミンに追加する3種の一般的な経口血糖降下薬(SU薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬)の有効性を比較した。 2015~21年のイングランドにおけるプライマリケア、病院、死亡のデータを結び付け、メトホルミンにSU薬、DPP-4阻害薬またはSGLT2阻害薬を追加して経口血糖降下薬による2次治療を開始した、2型糖尿病の成人患者7万5,739例を対象とした。 主要アウトカムは、ベースラインからフォローアップ1年時点までのHbA1c変化の絶対値であった。副次アウトカムは、1年時点および2年時点のBMI、収縮期血圧、eGFRの変化、2年時点のHbA1cの変化、eGFRが40%以上低下するまでの期間、主要有害腎イベント、心不全による入院、主要有害心血管イベント(MACE)、全死因死亡などであった。操作変数法を用いて、ベースラインの欠測による交絡リスクを軽減して評価した。SGLT2阻害薬併用が、他の2種併用よりも優れる 7万5,739例が経口血糖降下薬による2次治療を開始した。SU薬追加は2万5,693例(33.9%、SU薬群)、DPP-4阻害薬追加は3万4,464例(45.5%、DPP-4阻害薬群)、SGLT2阻害薬追加は1万5,582例(20.6%、SGLT2阻害薬群)であった。 ベースラインからフォローアップ1年時点までのHbA1c低下の平均値は、SGLT2阻害薬群がDPP-4阻害薬群やSU薬群よりも大きく、SGLT2阻害薬がより有効であることが示された。操作変数解析後、HbA1c変化の平均群間差は、SGLT2阻害薬群vs.SU薬群が-2.5mmol/mol(95%信頼区間[CI]:-3.7~-1.3)、SGLT2阻害薬群vs.DPP-4阻害薬群は-3.2mmol/mol(-4.6~-1.8)であった。 BMIおよび収縮期血圧の低下においても、SGLT2阻害薬がSU薬またはDPP-4阻害薬よりも有効であることが示された。ただし、いくつかの副次エンドポイントで、SGLT2阻害薬がより有効であるとのエビデンスは示されなかった。たとえば、MACEに関するハザード比(HR)は、対SU薬で0.99(95%CI:0.61~1.62)、対DPP-4阻害薬で0.91(0.51~1.63)であった。 SGLT2阻害薬は、DPP-4阻害薬(HR:0.32、95%CI:0.12~0.90)やSU薬(0.46、0.20~1.05)と比較して、心不全による入院のリスクを低下させた。 eGFR 40%以上低下について、SGLT2阻害薬がSU薬よりも保護効果があることが示された(HR:0.42、95%CI:0.22~0.82)。DPP-4阻害薬との比較では、推定HR(0.64、0.29~1.43)に高い不確実性が認められた。

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食物アレルギーに対するオマリズマブ(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 食物アレルギーは食べ物に含まれるタンパク質がアレルゲンとなり、抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象と定義されている。食物アレルギーに関わるアレルゲンは、食べ物以外のこともあり、その侵入経路もさまざまであることが知られている。免疫学的機序によりIgE依存性と、非IgE依存性に分けられるが、IgE依存性食物アレルギーの多くは即時型反応を呈することが多い。IgE依存性食物アレルギーはいくつかの病型に分けられており、食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎、即時型症状、食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis:FDEIA)、口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome:OAS)に分類される(『食物アレルギー診療ガイドライン2021』)。 食物アレルギーによって皮膚、粘膜、呼吸器、消化器、神経、循環器など、さまざまな臓器に症状が現れる。それらの症状は臓器ごとに重症度分類を用いて評価し、重症度に基づいた治療が推奨されている。IgE依存性食物アレルギーのうち、FDEIAは複数臓器・全身性にアレルギー症状が出現し、いわゆるアナフィラキシーショックを引き起こす可能性が比較的高いことが知られている。食物アレルギーの原因食物は鶏卵・牛乳・小麦とされていたが、最新の調査「食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業」の報告書では第3位にナッツ類が含まれる結果であった。一般的にナッツ類は種子が硬い殻で覆われたアーモンド・クルミ・カシューナッツ・マカダミアナッツなどが含まれ、マメ科のピーナッツは含まれない。この報告書では食物アレルギーの85%に皮膚症状、36%に呼吸器症状、31%に消化器症状を認めたとし、ショック症状は11%であった。 食物アレルギーは特定の食べ物を摂取することによりアレルギー症状が誘発され、特異的IgE抗体などの免疫学的機序を介することが確認できれば診断される。とくにアレルゲンの摂取と誘発される症状の関連を細かく問診することが重要であり、採血による特異的IgE抗体や皮膚プリックテストだけで食物除去を安易に指導しないことと『食物アレルギー診療ガイドライン2021』上は指摘している。 今回紹介する「OUtMATCH試験」は、複数の食物アレルギーに対するヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体であるオマリズマブの有効性や安全性を見た報告である。複数の食物アレルギーを持つ1~55歳の180例を対象に、オマリズマブを16週投与してアレルゲンに対する反応閾値の改善効果が示された。本邦でオマリズマブは2024年4月現在、気管支喘息、季節性アレルギー性鼻炎、特発性の慢性蕁麻疹の3つの適応疾患がある。いずれも既存治療によるコントロールが難しい難治例や重症例に限るとされている。オマリズマブは血中遊離IgEのCε3に結合し、マスト細胞などに発現する高親和性IgE受容体とIgEの結合を阻害することにより効果を発揮する生物学的製剤である。IgEとの結合を抑えることにより、一連のI型アレルギー反応を抑制し、気管支喘息では気道粘膜内のIgE陽性細胞や高親和性IgE受容体陽性細胞の減少、末梢血中の好塩基球に存在する高親和性IgE受容体の発現も低下するとされている。気管支喘息に対する効果は8つのプラセボ比較試験のメタアナリシスで、増悪頻度を43%減少させることが報告されている(Rodrigo GJ, et al. Chest. 2011;139:28-35.)。別の報告では、1秒量、QOL、症状スコアやステロイドの減量、入院頻度の減少なども示されている(Alhossan A, et al. J Allergy Clin Immunol Pract. 2017;5:1362-1370.)。オマリズマブは長期使用例ほどQOL改善効果が得られ、5年以上の使用で経口ステロイドの減量や治療ステップダウンを達成できる症例が増えるとされている(Sposato B, et al. Pulm Pharmacol Ther. 2017;44:38-45.)。 本研究でのオマリズマブは体重と被検者のIgE値によって投与量が決められている。ピーナッツタンパクを1回600mg以上の摂取でアレルギー症状がない症例がオマリズマブ群で67%、プラセボ群で7%であった。副次評価項目でもカシューナッツ、牛乳、卵で評価されたが、同様のオマリズマブ群でアレルギー反応が出ない症例が有意に増加した。このピーナッツタンパク600mgはピーナッツ約2.5個分に相当するが、これは誤ってナッツ類を1~2個摂取してもアレルギー反応に耐えうることを示唆している。もちろん本研究が報告された後も、オマリズマブが投与されたとはいえ、自身に害を及ぼすアレルゲンは避ける必要があり、自己注射用アドレナリンは手放せない。また筆者らも指摘しているが、本研究は白人が60%以上含まれており、すべての人種での検討ではない。今回の「OUtMATCH試験」の結果を受け、米国FDAでは2024年2月にIgEに関連する食物アレルギーに対するオマリズマブを承認した。実臨床で幅広く多様な年齢や人種に対してこのオマリズマブを活用し、その結果を検討することが肝要である。

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腰椎穿刺前の頭部CT検査の適応【1分間で学べる感染症】第3回

画像を拡大するTake home message髄膜炎を疑った際には頭部CT検査の適応を速やかに判断し、髄液検査を遅らせないようにしよう。腰椎穿刺前の頭部CT検査の適応は6つの項目「PUNISH」で覚えよう。細菌性髄膜炎の初期対応に関しては、研修医を含め、救急外来や内科外来で働くあらゆる医師にとって必須の項目です。それでは、どのような状況で頭部CT検査を検討すればよいのでしょうか。最も重要なこととしては、頭部CT検査の適応を迅速に判断し、髄液検査を遅らせないことです。ここでは、腰椎穿刺前の頭部CT検査の適応として、6つの項目を「PUNISH」で覚えましょう。PPapilledema 乳頭浮腫UUnconsciousness/abnormal level of consciousness 意識レベル低下NNeurologic deficit (focal) 局所神経障害IImmunocompromised state HIVや免疫抑制剤、移植後などを中心とした免疫不全の患者SSeizure 1週間以内の新規けいれん発症HHistory of CNS disease 頭蓋内占拠性病変や脳卒中、感染などの中枢神経病変の既往がある場合頭蓋内圧が亢進している場合、腰椎穿刺により脳ヘルニアを引き起こす可能性があるため注意が必要です。しかし、頭部CTで異常所見がないからといって安心するのではなく、不規則な呼吸や乳頭浮腫などの脳幹徴候を認めた場合は腰椎穿刺を避けるようにしましょう。1)Hasbun R, et al. N Engl J Med. 2001;345:1727-1733.2)Gopal AK, et al. Arch Intern Med. 1999;159:2681-2685.3)Tunkel AR, et al. Clin Infect Dis. 2004;39:1267-1284.

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第212回 新規開業の落とし穴(前編) 診療所の大型化・重装備化、複数医師開業というトレンドの背後にあるもの

コロナ禍が過ぎて、各地で診療所の新規開業が活発化こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、愛知県で一人暮らしをしている父親の様子を見に行ってきました。先月、洗濯物の取り込み中に転倒し、顔面を強打、血だらけになってしまったと電話で話していたので心配しての帰省です。久しぶりに会ってみると、「おまえ、喋り方が下手になった。聞きづらいのでもっときちんと喋れ!」と話す92歳の父親は、自分の耳のせいだとはまったく考えていないようです。顔だけではなく頭も打ったのかな、と思ったのですが、土曜昼間にテレビで放送されていた、広島・中日戦での中日ドラゴンズの戦いぶりを観て、「中田 翔はもう少し打点がほしい」、「マルティネスは時々打たれるが、防御率ゼロは大したもんだ」と意外と的確な評価をしていたので、頭はまだ大丈夫そうだ、とひと安心した次第です。さて今回は、いつもの事件や医療行政の話題から少し離れて、新規開業の最近の動きについて書いてみたいと思います。というのも、医療業界で働く知人から「コロナ禍が過ぎて、各地で新規の開業が活発化しているようだ」と聞いたからです。実際、コロナ禍が過ぎて、新規開業は再び増え始めているようです。各地で活発化している病院の再編統合や、医師の働き方改革を背景に、病院での実際の働き方にやたら制約ができて、“バイト”も気軽にできなくなっていることも、勤務医生活に見切りを付けるきっかけになっているのかもしれません。2022年医療施設調査では、無床診療所は1,101施設増最近の大まかな開業動向は、厚生労働省が発表している「令和4(2022)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」1)で確認できます。それによれば、2022年10月1日現在の一般診療所は10万5,182施設。うち無床診療所は 9万9,224 施設(一般診療所総数の94.3%)で、前年に比べて 1,101 施設増加しました。一方、有床診療所は5,958 施設(同5.7%)で、前年に比べ211 施設減少しました。この無床診療所1,101増という数字は、廃止・休止を差し引いた純増数です。同調査によれば新規開設は7,803施設でした。コロナ禍もあって前年2021年の9,503、2020年の8,250に比べると少ないですが、それでも年間8,000近い診療所の新規開業があり、その数は廃止・休止を上回っているのです。開業当初からMRIなど高額な医療機器を導入するところもこうした新規開業、最近の一つの傾向として言われているのは、「診療所の大型化・重装備化」、「複数医師による開業」です。以上の2点を背景に「開業費の増大」も指摘されています。昨年末、ある開業コンサルタントの話を聞く機会があったのですが、たとえば整形外科診療所では、開業当初からMRIなど高額な医療機器を導入するところが少なくないそうです。複数医師による開業は在宅専門診療所によくみられる傾向ですが、在宅医療ではない診療分野でも、最初から複数医師の共同開業や複数医師による診療体制を整えるところが増えているようです。国のかかりつけ医の議論の中で、かかりつけ医の体制は単独で構築するだけではなく、複数で一人の患者をフォローしていく体制も今後は望ましいと言及されたことも影響しているのかもしれません。一方、開業費は増大の一途です。大型化・重装備化で必然的に必要資金が増えることに加え、建築資材の高騰や、都市部での不動産マーケットの好況を背景に賃料が値上がりしていることなどもその要因です。戸建て開業では億単位の資金が必要になるケースは少なくないですし、大都市のテナント開業でも、そこそこの医療機器を揃えれば、億に近い資金が必要になってきます。そうした多額の開業資金を金融機関から借り入れる場合、相応の返済期間が必要になってきます。50代、60代になってからの新規開業は厳しく、勢い30代、40代という比較的若年での開業が増えていくことになります。開業の成否は二の次に、大規模・重装備、複数医師開業を提案するコンサルタントもただ、これから開業を考える医師が注意しなければならないのは、こうしたトレンドは、先程も書いたように金融機関や開業コンサルタント側の事情も多分に関係している、という点です。とくに地方では、企業や事業者数そのものが限られており、有望かつ融資金額が大きい案件はそんなにありません。というわけで、地方銀行や信用金庫にとって病院や診療所などの医療機関は願ってもない上顧客ということになります。融資金額を最大限に増やしたい金融機関や、コンサルタント料に加え診療所の管理業務を受託したい、関連企業で門前薬局を経営したい、と考える開業コンサルタントの中には、開業の成否は二の次に、大規模・重装備の診療所で、複数医師による病院並みの外来運営を企画・提案するところもあると聞きます。「医療機関が潰れたら、金融機関側も困るのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、債務を負うのは医師です。仮に経営が破綻し診療所を畳むことになったとしても、金融機関側は「僻地の診療所などで10年も働いてもらえば億のお金でも返済してもらえる」と考えます。さらに、複数医師開業で債務者が複数いれば、返済期間も短くなります。そういった意味でも金融機関にとって医師は願ってもない上顧客なのです。最初、患者として勤務医に近づく開業コンサルタントもそうした状況下、開業志望の医師の相談や悩みに親身になって対応してくれる金融機関やコンサルタントがいる一方で、医師を単なる“カモ”としか見ない悪いやつもいます。結果、経営に疎い医師が騙される、という事態も発生します。「第176回 虫垂がんを宣告されたある医師の決断(後編) 田舎の親の病医院を継ぎたくない勤務医にも参考になる『中小病院が生き残るための20箇条』」で紹介した『続“虎”の病院経営日記 コバンザメ医療経営を超えて』(東謙二著、日経メディカル開発)の中には典型的なエピソードが紹介されています。同書の「中小病院が生き残るための20箇条」の章の20箇条目、「医師は世間知らず、開業で騙されないために」の項では、「熊本界隈でも新規開業したばかりの診療所の閉院が増えている」として、40代の公的病院勤務医の開業失敗話が紹介されています。最初、患者として勤務医が働く病院の外来にやってきた男が、親密になると「開業コンサルタントである」と打ち明けます。その後、地方銀行員と組んで言葉巧みかつ強引に勤務医を新規開業に導いていく展開は、モダンホラーさながらです。コンサルタントの“悪魔の囁き”、「先生なら開業すれば患者さんがたくさん集まるでしょうね」この本には、「先生なら開業すれば患者さんがたくさん集まるでしょうね」、「開業資金のことなら心配要りません」、「開業までのことはすべてお任せください」といったコンサルタントの“悪魔の囁き”の例もいくつか紹介されています。この勤務医は結局、「開業後、自腹を切りながら経営を続けたものの、結局は多額の借金を背負い閉院した」とのことです。なお、東氏は「医師をはじめ、医療従事者はほとんどが『性善説』の中で仕事をしているが、世の中には『性悪説』を基本に対処していかないとすぐに騙されてしまう世界もあるのである」と書くとともに、「だから開業するな、と言っているわけではない。自分の所有する土地があり、運転資金も十分にあるならば多くのリスクは回避できる。しかし、土地から購入して、全てが一から開業となれば、自分はかなりギャンブル性の高い勝負に出るのだと理解してほしい。もちろん全ての業者が悪徳ではないし、親身になってくれる経営コンサルタント会社や銀行もあるだろう」と結んでいます。収益が出ないと不正請求すれすれの無理な診療に手を染めるところも少し話が脱線してしまいました。診療所の大型化・重装備化、複数医師開業の話に戻りましょう。大型化・重装備化は開業費がかかり、複数医師開業は医師の人件費が倍になります。収入は増えますが、支出も当然増えます。患者数をこなしてもこなしても収益がなかなか出ないとなると、不正請求すれすれの無理な診療に手を染めるところも出てきます。私が昨年秋にかかった都内の整形外科はまさにそんな診療所でした(この項続く)。参考1)令和4(2022)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況/厚生労働省

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不眠症ガイドラインで初回治療薬として推奨される睡眠薬、日本の臨床で有用なのは?

 不眠症のガイドラインでは、いくつかの睡眠薬が推奨されているが、臨床現場において最も有用な睡眠薬は明らかとなっていない。秋田大学の竹島 正浩氏らは、不眠症に対する初回治療薬としてガイドラインで推奨される睡眠薬による単剤療法の失敗リスクが低い薬剤、単剤療法後の中止率の高い薬剤を特定するため、本研究を実施した。JAMA Network Open誌2024年4月1日号の報告。不眠症ガイドラインで初回治療薬として推奨される睡眠薬を比較 2005年4月~2021年3月の日本医療データセンターレセプトデータベースのデータを用いて、レトロスペクティブ観察コホート研究を実施した。対象患者は、不眠症に対する初回治療薬としてガイドラインで推奨される睡眠薬(スボレキサント、ラメルテオン、エスゾピクロン、ゾルピデム、トリアゾラム)による単剤療法を行った成人患者。データ分析は、2022年12月24日~2023年9月26日に実施した。主要アウトカムは、単剤療法の失敗とし、ガイドラインで推奨される睡眠薬による単剤療法を開始してから6ヵ月以内に睡眠薬の変更または追加を行った場合と定義した。副次的アウトカムは、単剤療法の中止とし、単剤療法が失敗しなかった後、6ヵ月以内に2ヵ月連続で睡眠薬を処方しなかった場合と定義した。単剤療法の失敗および中止は、それぞれCox比例ハザードモデル、ロジスティック回帰モデルを用いて比較した。 不眠症ガイドラインで推奨される睡眠薬を比較した主な結果は以下のとおり。・不眠症に対する初回治療薬としてガイドラインで推奨される睡眠薬による単剤療法を行なった患者23万9,568例(年齢中央値:45歳、四分位範囲:34~55歳、女性の割合:50.2%)が本研究に含まれた。・6ヵ月間のフォローアップ期間中に単剤療法を失敗した患者は、2万4,778例(10.3%)であった。・エスゾピクロンと比較し、ラメルテオン(調整ハザード比[aHR ]:1.23、95%信頼区間[CI]:1.17~1.30、p<0.001)は単剤療法の失敗例が多く、ゾルピデム(aHR:0.84、95%CI:0.81~0.87、p<0.001)、トリアゾラム(aHR:0.82、95%CI:0.78~0.87、p<0.001)は失敗例が少なかった。スボレキサントとエスゾピクロンでは、有意な差が認められなかった。・単剤療法が失敗しなかった後、睡眠薬を中止した患者の割合は、84.6%であった。・エスゾピクロンと比較し、ラメルテオン(調整オッズ比[aOR ]:1.31、95%CI:1.24~1.40、p<0.001)、スボレキサント(aOR:1.20、95%CI:1.15~1.26、p<0.001)は中止例が多かった。ゾルピデムまたはトリアゾラムとエスゾピクロンでは、有意な差が認められなかった。 著者らは、「本コホート研究では、制御されていない交絡因子があるため、これらの結果に基づきガイドライン推奨の睡眠薬の薬理学的特性に関する結論を導き出すことはできない」とし、「慢性不眠症と急性不眠症の診断、不眠症および精神症状の重症度、睡眠薬処方に対する医師の態度など、交絡因子を検討したさらなる研究が求められる」としている。

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経口ミノキシジルvs.外用ミノキシジルで有効性を比較

 男性型脱毛症(AGA)治療薬ミノキシジルについて、経口ミノキシジル5mg(1日1回)は外用ミノキシジル5%(1日2回)と比較し、24週間の治療において優越性を示さなかったことが、無作為化比較試験で示された。低用量経口ミノキシジルへの関心が高まっているが、これまでその有効性は比較試験で検証されていなかった。本研究結果は、ブラジル・サンパウロ大学のMariana Alvares Penha氏らによってJAMA Dermatology誌オンライン版2024年4月10日号で報告された。経口ミノキシジル群33例と外用ミノキシジル群35例が試験を完了 研究グループは、ブラジルの専門クリニック単施設において、経口ミノキシジル5mg(1日1回)の有効性および安全性を外用ミノキシジル5%(1日2回)との比較で検証する二重盲検無作為化比較試験を行った。 対象は、Norwood-Hamiltonスケールに基づき3V、4V、5Vのいずれかに分類された18~55歳のAGA患者とした。対象患者を経口ミノキシジル群または外用ミノキシジル群に1対1の割合で無作為に割り付け、24週間投与した。主要評価項目は、頭皮の前頭部および頭頂部の硬毛密度の変化、副次評価項目は、総毛髪密度の変化および写真評価とした。 AGA治療薬ミノキシジルの有効性について経口と外用を比較した主な結果は以下のとおり。・AGA患者90例が登録され、68例(経口ミノキシジル群33例、外用ミノキシジル群35例)が試験を完了した。対象患者の平均年齢(標準偏差)は36.6(7.8)歳であり、両ミノキシジル群の人口統計学的特性およびAGA重症度は同様であった。・前頭部について、ベースラインから24週時までの平均変化量の両ミノキシジル群の群間差は、硬毛密度が3.1本/cm2(95%信頼区間[CI]:-18.2~21.5、p=0.27)、総毛髪密度が2.6本/cm2(同:-10.3~15.8、p=0.32)であった。・頭頂部について、ベースラインから24週時までの平均変化量の両ミノキシジル群の群間差は、硬毛密度が23.4本/cm2(95%CI:-0.3~43.0、p=0.09)であり、総毛髪密度が5.5本/cm2(同:-12.5~23.5、p=0.32)であった。・写真評価による解析において、頭頂部では経口ミノキシジル群が外用ミノキシジル群よりも有意に改善したが(24%、95%CI:0~48、p=0.04)、前頭部では有意な群間差はみられなかった(12%、-12~36、p=0.24)。・経口群に多く発現した有害事象は、多毛症(22/45例[49%])、頭痛(6/45例[14%])であった。

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変形性肩関節症の人工肩関節置換、リバース型vs.解剖学的/BMJ

 変形性肩関節症を有する60歳以上の患者において、リバース型人工肩関節全置換術(RTSR)は解剖学的人工肩関節全置換術(TSR)の許容可能な代替術であることが、英国・オックスフォード大学のEpaminondas Markos Valsamis氏らによる住民ベースのコホート研究で示された。経時的な再置換術のリスクプロファイルに有意差は認められたが(最初の3年間はRTSRが良好)、一方で長期的な再置換術、重篤な有害事象、再手術、入院期間の長期化、生涯医療コストについて、統計学的な有意差および臨床的に重要な差は認められなかった。RTSRの施術は、直近20年間で世界的に急増しているが、高い質的エビデンスのないまま、本来の病理学的対象患者にとどまらず、手術適応の症例に幅広く施術されている現状がある。そうした治療の不確実性は英国の研究機関において重要な優先事項と認識されており、完了までに数年がかかる国際的な試験に対して資金提供がされているという。BMJ誌2024年4月30日号掲載の報告。RTSR vs.TSRの再置換術の発生を評価 研究グループは国の研究の優先事項に応えるために、イングランドのNational Joint Registry and Hospital Episode Statisticsのデータを用いた住民ベースコホート研究を行った。変形性肩関節症に対する待機的初回肩関節全置換術を受けた患者における、RTSRとリスクベネフィットおよびコストとの関連を、TSRとのそれと比較した。 2012~20年にイングランドの公立病院と私立病院で公的資金により行われた手術例から、腱板断裂のない変形性肩関節症に対するRTSRまたはTSRを受けた60歳以上の患者を研究対象とした。患者はNational Joint RegistryとNHS Hospital Episode Statisticsおよび住民登録死亡データを結び付け、傾向スコアマッチングと逆確率重み付け(IPTW)を用いて試験コホートを均一化した。 主要アウトカムは、再置換術の発生。副次アウトカムは、術後90日間の重篤な有害事象、術後12ヵ月間の再手術、入院の長期化(3泊超)、Oxford Shoulder Scoreの変化(術前から術後6ヵ月時点)、医療サービスの生涯コストなどであった。RTSRのTSRに対する再置換術の最小ハザード比は0.33 試験コホートは、患者1万1,961例における選択的初回肩関節置換術1万2,986件から構成された。このうち傾向スコアマッチドコホートは7,124件(RTSR例、TSR例それぞれ3,562例)で構成された。同コホートの再置換術例は126件(1.8%、RTSR例41件、TSR例85件])であった。 IPTWコホートは手術例1万2,968件(RTSR例3,576件、TSR例9,410例)で構成された。最長追跡期間8.75年において、再置換術例は294件(2.3%、RTSR例41件、TSR例253件])であった。 RTSRの再置換術リスクは、最初の3年間で大幅に低下した(最小ハザード比:0.33、95%信頼区間[CI]:0.18~0.59)。再手術のない制限付き平均生存期間(RMST)に臨床的に重要な差はみられなかった。 傾向スコアマッチドコホートにおいて、12ヵ月時点でRTSRの再手術の相対リスクは低下し(オッズ比:0.45、95%CI:0.25~0.83)、絶対リスク差は-0.51%(95%CI:-0.89~-0.13)であったが、IPTWコホートでは相対リスクに有意差はなかった(0.58、0.31~1.08)。 重篤な有害事象、長期入院のリスク、Oxford Shoulder Scoreの変化、モデル化した平均生涯コストのアウトカムは、傾向スコアマッチドコホートにおいて類似しており、IPTWコホートでも一貫していた。

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マジックマッシュルーム成分の抗うつ効果は?~メタ解析/BMJ

 数種類のキノコに含まれるセロトニン作動性の幻覚成分であるpsilocybinの抗うつ治療効果を検証するため、英国・オックスフォード大学のAthina-Marina Metaxa氏らは、これまで発表された研究論文についてシステマティック・レビューとメタ解析を行った。うつ症状の測定に自己報告尺度を用いており、以前に幻覚剤を使用したことがある二次性うつ病患者において、psilocybinの治療効果は有意に大きかったという。結果を踏まえて著者は、「さらなる研究を行い、抗うつ薬としてのpsilocybinの治療可能性を最大化する因子を明らかにする必要がある」と述べている。近年、うつ病治療の研究は、古典的な抗うつ薬の欠点がなく強力な抗うつ作用を示す幻覚剤に焦点が当てられており、psilocybinもその1つに含まれる。直近の10年間に、複数の臨床試験、メタ解析、システマティック・レビューが行われ、そのほとんどにおいてpsilocybinに抗うつ効果がある可能性が示されたが、うつ病のタイプ、幻覚剤の使用歴、投与量、アウトカム尺度、出版バイアスなど、psilocybinの効果に作用する可能性がある因子については調査されていなかった。BMJ誌2024年5月1日号掲載の報告。メタ解析で、psilocybinの有効性をプラセボまたは非向精神薬と比較 研究グループは、psilocybinの抗うつ薬としての有効性をプラセボまたは非向精神薬と比較し明らかにするため、システマティック・レビューとメタ解析で検証した。 5つの出版文献データベース(Cochrane Central Register of Controlled Trials、Medline、Embase、Science Citation Index、Conference Proceedings Citation Index、PsycInfo)、4つの非出版・国際的文献データベース(ClinicalTrials.gov、WHO International Clinical Trials Registry Platform、ProQuest Dissertations and Theses Global、PsycEXTRA)、手動検索による参考文献リスト、カンファレンス議事録および要約をデータソースとした。 適格としたのは、臨床的に重大なうつ症状を有する成人に対し単独治療としてpsilocybinが投与され、症状の変化を臨床医による検証済み評価尺度または患者の自己報告尺度を用いて評価した無作為化試験。指示的心理療法を有する試験は、介入条件と対照条件の両方に心理療法の要素が認められた場合に包含した。参加者は、併存疾患(がんなど)に関係なく、うつ病を有する場合に適格とした。 治療効果に作用する可能性のある因子として、うつ病のタイプ(原発性または二次性)、幻覚剤の使用歴、psilocybin投与量、アウトカム尺度のタイプ(臨床医による評価または患者の自己報告)、個人の特性(年齢、性別など)を抽出。データはランダム効果メタ解析モデルを用いて統合し、観察された不均一性および共変量の効果をサブグループ分析とメタ回帰法で調べた。小さなサンプル効果、包含した試験間のサンプルサイズの実質的な差を示すため、Hedges' gを用いて治療効果サイズを評価した。psilocybinに有意な有益性あり、エビデンスの確実性は低い 包含した9試験のうち7試験の被験者436例(女性228例、平均年齢36~60歳)を対象としたメタ解析で、対照治療群と比較したうつ病スコアの変化において、psilocybinの有益性が有意であることが示された(Hedges' g=1.64、95%信頼区間[CI]:0.55~2.73、p<0.001)。 サブグループ解析およびメタ回帰法により、二次性うつ病であること(Hedges' g=3.25、95%CI:0.97~5.53)、Beck depression inventoryのような自己報告うつ病スケールで評価されていること(3.25、0.97~5.53)、高齢で幻覚剤使用歴があること(それぞれのメタ回帰係数:0.16[95%CI:0.08~0.24]、4.2[1.5~6.9])が、症状の大幅な改善と関連していた。 すべての試験は、バイアスリスクが低かったが、ベースライン測定値からの変化は高い不均一性と小規模試験のバイアスリスクと統計学的に有意に関連しており、エビデンスの確実性は低かった。

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患者負担増の長期収載品は1,095品目、注意点は?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第131回

厚生労働省は2024年4月19日付で「長期収載品の処方等又は調剤に係る選定療養の対象医薬品について」という事務連絡を発出しました。この中には、後発医薬品のある先発医薬品(いわゆる長期収載品)を使用した場合に患者負担額を引き上げる品目のリストが掲載されています。今回リストに掲載されたのは全1,095品目で、10月からスタートします。対象や負担の割合などについては昨年から議論されていた内容とほとんど変わりありませんが、改めて確認していきましょう。後発医薬品が上市から5年以上経過したもの、または後発医薬品の置換率が50%以上となった薬剤が対象で、それが4月に事務連絡で発出された1,095品目です。また、患者さんが先発医薬品を選んだ場合、最も価格が高い後発医薬品との差額の25%を保険適用から外し、その分については自己負担になります。その「差額の25%」について、気を付けなればならないポイントが2点あります。1点目は、「最も価格が高い後発医薬品との差額」というのが薬剤によってさまざまなので、一概にどのくらい負担が増えますよと先に伝えるのが難しいという点です。10月以降に来局された患者さんに対してそれぞれ対応する必要があります。2点目は、その「差額の25%」については、1割負担の患者さんも3割負担の患者さんも同額の負担増になります。もっと言うと、0割負担の患者さんでも同額の自己負担が発生します。負担割合が少なく、いつも先発医薬品を好んで使用する患者さんではしっかりと説明する必要がありそうです。また、いくつか除外されるケースもあり、「医療上の必要があると認められる」「後発医薬品の提供が困難」な場合に加えて、「後発医薬品への置き換え率が1%未満」の薬剤も除外されます。「後発医薬品の提供が困難」というのは仕方ないとしても(むしろ設定してくれてよかった…)、「医療上の必要性」がどのような場合に認定されるか、というのは今後の様子見でしょう。10月以降も先発医薬品をローラー的に変更不可とする医師がいたとしたら、この大きな流れに背くことになりちょっと要注意かなと思います。一般向けにはヒルドイドの自己負担増がピンポイントで報じられているようですが、降圧薬や抗認知症薬などのその他の医薬品も対象になってるんだけどな…とちょっと不安になります。10月までに行政から働きかけをしてしっかり周知してほしいなと思います。

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職場巡視のコツ:オフィス編【実践!産業医のしごと】

産業医として働き始めると、職場巡視の役割に戸惑うことがあるかもしれません。職場巡視とは、産業医が事業場を見回り、業務内容や作業環境が労働者に有害な影響を与える恐れがないかを確認することです。労働安全衛生規則では、産業医は月に1回、職場巡視を実施することが義務とされています。私自身も、最初は医師がオフィスを巡回する意義に疑問を持ち、その役割に違和感を覚えていました。しかし、今ではこの活動は産業医の職務の“核”となる、重要な業務の1つだと認識しています。本稿では、オフィス環境における職場巡視の要点を解説します。職場巡視は産業医にとっても意義深い職場巡視は法令により定められた産業医の職務です。適切な職場巡視は、見過ごされがちなリスクを発見し改善することで、職場の生産性向上と従業員の満足度向上に寄与します。一方で、職場を直接観察することは、産業医自身にとっても非常に有意義な経験です。嘱託産業医として、健康管理室での月1回の面談だけで、従業員の働く環境や職務内容を十分に把握することは困難です。職場巡視で従業員の表情や働く環境を目の当たりにすることで職場に関する理解を深め、貴重な情報を得ることができます。また、休職者対応をしているタイミングであれば、職場復帰後の環境をよりリアルに想像でき、精緻な就業判断を下すことができます。職場巡視ではテーマを決める職場巡視は、「テーマ」を設定して行うことをお勧めします。確認すべきことは多く、全項目を毎回チェックすることは非現実的であり、巡視の質を低下させる原因にもなります。「オフィスレイアウトの変更」「直近で発生した労働災害」など、特定のトピックに焦点を当てることで、漫然としがちなオフィスの職場巡視を、目的意識を持って行えるようになります。そうした大きなトピックがないときでも、「避難経路」「転倒防止対策」「腰痛対策」など、都度テーマを決めておくことで職場巡視の焦点が定まります。オフィスの職場巡視で確認すべきポイントオフィスの職場巡視で確認すべきポイントは、大きく分けて「作業環境」と「災害(安全)対策」です。具体的なチェック項目を以下に記載します。画像を拡大する職場巡視結果の指摘の方法にもポイントがある職場巡視の結果を指摘する際にもポイントがあります。たとえば、「たこ足配線が危ない」と伝えるだけでは、何がどう危ないのか、どう改善すればよいのかまでは伝わりません。「1つのコンセントの差込口の消費電力は1,500ワットまでです。それ以上になると火災の危険が高まります。たこ足配線を解消して1,500ワット以下にしてください」と伝えれば、指摘を受けた側も理解しやすいでしょう。リスクと望ましい状態を、具体的に示すようにしましょう。さらに、改善策については、産業医よりも現場に知恵があるため、現場も巻き込んで検討するようにしましょう。産業医はしばしば理想的な提案をしがちですが、ここでは実現可能な対策を提案することが重要です。改善後は安全衛生委員会や職場巡視で結果を確認し、必要に応じて再提言を行います。オンライン職場巡視は認められていない現在、オンラインでの職場巡視は認められていません。私自身の実感でも、オンラインでは職場の雰囲気や従業員の様子を観察し、その空気を感じ取ることは難しいと思います。職場巡視は五感をフルに活用して行うべき活動であり、実際に職場に足を運び、衛生管理者や職場関係者とコミュニケーションを取ることで、見落とされがちな問題を発見しやすくなります。産業医は「職場に足を運ぶ姿勢」を大切にしましょう。職場巡視は、産業医にとって職場の安全と健康を守るうえで不可欠な活動であり、産業医自身にとっても有意義な情報を得られる機会です。この役割を積極的に果たすことを通じて、職場改善におけるリーダーシップを発揮し、従業員がより健康で安全な環境で働けるよう貢献しましょう。

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英語で「アレルギーはありますか」は?【1分★医療英語】第130回

第130回 英語で「アレルギーはありますか」は?《例文1》Are you allergic to any medication?(薬に対するアレルギーはありますか?)《例文2》What kind of reaction did you have?(どのような反応がありましたか?)《解説》医師でも看護師でも、患者さんにアレルギーを確認することが多いでしょう。聞き方はシンプルで、“Do you have any allergies?”というフレーズがよく使われますが、ポイントは発音です。日本語的に「アレルギー」と発音してしまうと、まず伝わりません。“allergy”は、カタカナにすると「アァレジー」というような発音になります。複数形では「アァレジーズ」です。最初の「ア」にアクセントがあることに注意しましょう。また、「○○にアレルギーがある」と言うときには、“allergic”という形容詞を使って、“be allergic to ○○”という表現を使うと便利です。ただし、形容詞になった際は「ア」ではなく「レ」にアクセントが来るのでその点も気を付けます。アレルギーがあると言われた場合には、“What kind of reaction did you have?”(どのような反応がありましたか?)や“When did that happen?”(それはいつ起こりましたか?)というような追加質問をして、詳細な情報を得ましょう。なお、日本で毎年春に問題になる花粉症は、英語で“pollen allergy”もしくは“hay fever”といいます。一緒に覚えておくと便利です。講師紹介

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身体診察【とことん極める!腎盂腎炎】第2回

CVA叩打痛って役に立ちますか?Teaching point(1)CVA叩打痛があっても腎盂腎炎と決めつけない(2)CVA叩打痛がなくても腎盂腎炎を除外しない(3)他の所見や情報を合わせて総合的に判断する1.腎盂腎炎と身体診察腎盂腎炎の身体診察といえば肋骨脊柱角叩打法(costovertebral angel tenderness:CVA tenderness)が浮かぶ方も多いのではないだろうか。発熱、膿尿にCVA叩打痛があれば腎盂腎炎と診断したくなるが、CVA叩打痛は腎臓の周りの臓器にも振動が伝わり、肝胆道や脊椎の痛みを誘発することがあるため、肝胆道系感染症や化膿性脊椎炎を腎盂腎炎だと間違えてしまう場合がある。身体所見やその他の所見と組み合わせて総合的に判断する必要がある。2.CVA叩打痛と腎双手診CVA叩打痛は腎盂腎炎を示唆する身体所見として広く知られている。図1のように、胸椎と第12肋骨で作られる角に手を置き、上から拳で叩打し、左右差や痛みの誘発があるかどうかを観察する。なお腎臓は左の方がやや頭側に位置しているため、肋骨脊柱角の上部・下部とずらして叩打痛の確認をする。もし左右差や痛みがあれば腎盂腎炎を示唆する所見となるが、第1回で紹介したとおり、所見がないからといって腎盂腎炎を否定することはできず、ほかの所見と合わせて診断を考える必要がある。画像を拡大するその他の身体診察として腎双手診がある。腎臓のある側腹部を両手で挟み込み、痛みを生じるかどうかを確かめる診察であり尿管結石でも陽性となり得るが、腎盂腎炎においてCVA叩打痛陰性であっても腎双手診は陽性となる症例も散見される。CVA叩打痛は脊椎の痛みを反映している場合もある一方で腎双手診(図2)は大腸の病変を触れている可能性もある。CVA叩打痛が圧迫骨折などの脊椎の痛みを誘発していないか確かめるために、棘突起を押して圧痛を生じないか確かめることが有用である。棘突起を押して圧痛を生じるようであれば、椎体の病変の可能性が高くなる。画像を拡大するこのように、腎臓の位置は肉眼では把握しづらく、痛みを生じているのが腎臓なのか、その周囲の臓器なのかわかりにくい。裏技のような方法になるが、エコーで腎臓を描出しながらプローブで圧痛が生じるか確認する、いわばsonographic Murphy’s signの腎臓バージョンもある1)。3.自身が体験した非典型的なプレゼンテーション最後に自身が体験した非典型なプレゼンテーションを述べる。糖尿病の既往がある90歳の女性で、転倒後の腰痛で体動困難となり救急搬送された。身体診察・画像検査からは腰椎の圧迫骨折が疑われ、鎮痛目的に総合診療科に入院となった。その夜に39℃台の発熱を生じfever work upを行ったところ、右の双手診で側腹部に圧痛があり、尿検査では細菌尿・膿尿を認めた。圧迫骨折後の尿路感染症として治療を開始し、後日、尿培養と血液培養より感受性の一致したEscherichia coliが検出された。本人によく話を聞くと、転倒した日は朝から調子が悪く、来院前に悪寒戦慄も生じていたとのことだった。ERでは腰痛の診察で脊椎叩打痛があることを確認していたが、その後脊椎を一つひとつ押しても圧痛は誘発されず、腎双手診のみ再現性があった。腰椎圧迫骨折は陳旧性の物であり、急性単純性腎盂腎炎後の転倒挫傷だったのである。転倒後という病歴にとらわれ筋骨格系の疾患とアンカリングしていたが、そもそも転倒したのが体調不良であったから、という病歴を聞き取れれば初診時に尿路感染症を疑えていたかもしれない。この症例から高齢者の腎盂腎炎は転倒など一見関係なさそうな主訴の裏に隠れていること、腰痛の診察の際に腎双手診は脊椎の痛みと区別する際に有用であることを学んだ。4.腎盂腎炎診断の難しさ腎盂腎炎の診断は難しい。それは、腎盂腎炎の診断が非典型的な症状、細菌尿・膿尿の解釈、側腹部痛の身体所見、他疾患の除外など、さまざまな情報を統合して総合的に判断しなければならないからである。正しい診断にこだわることはもちろん重要だが、腎盂腎炎がさまざまな症状を呈し、また、どの身体所見も腎盂腎炎を確定診断・除外できないことを念頭に置き、柔軟に対応することが必要なのではないだろうか。たとえ典型的な症状や所見が揃っていなくても、できる限り他疾患の可能性について考慮したうえで、患者の余力も検討し腎盂腎炎として抗菌薬を開始することが筆者はリーズナブルであると考える。重要なことは治療を始めた後も、経過を観察し、合わない点があれば再度、腎盂腎炎の正当性について吟味することである。多種多様な鑑別疾患と総合的な判断が求められる腎盂腎炎は臨床医の能力が試される疾患である。1)Faust JS, Tsung JW. Crit Ultrasound J. 2017;9:1.

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第214回 過度の運動はいうほど有害ではなくむしろ寿命を延ばしうる

過度の運動はいうほど有害ではなくむしろ寿命を延ばしうる先週5月6日はヒトの運動能力の限界の1つの突破が樹立された記念日で、とりわけ医師にとっては感慨深い日かもしれません。その記録とは1マイル(約1,600m)を4分未満で初めて走ったことです(1kmを2分30秒未満で走ったことに相当)。その偉業を達成したのは他でもない医学生でした。70年前の1954年5月6日に当時25歳でアスリートでもあったRoger Bannister(ロジャー・バニスター)氏は学び舎のオックスフォード大学の競技場で1マイルを3分59.4秒で走り、1マイルを4分以内で初めて走った人となりました。運動習慣は心臓の健康を保つのに役立ちますが、1マイルを4分以内で走るなどの負荷の大き過ぎる運動は心臓にはかえって毒らしいことも示唆されています。とはいうものの、長距離自転車レース(ツール・ド・フランス)出場者やオリンピックのボート選手などの極度の運動/生理能力を有する持久運動選手の寿命はより長いことを示す報告もあります。Bannister氏を初めとすると1マイル4分以内走者はどうなのでしょうか? それを調べたカナダのアルバータ大学のStephen Foulkes氏らの新たな解析結果がBritish Journal of Sports Medicine誌に先週掲載されました1)。Bannister氏以後1,750人超が1マイル4分未満走者の名簿にいまや名を連ねており、その最初から20人目までを調べた2018年の報告がFoulkes氏らを新たな研究へと駆り立てました。6年ほど前のその先立つ報告によると、それら1マイル4分未満走者20人中18人は80年以上生きており、世間一般の寿命を平均して12年上回っていました2)。かつて不可能とされていたほどの極度の運動に取り組んだところで、命の長さや質は害されないことをその結果は支持しています。Foulkes氏らはその観察結果に触発され、1マイル4分未満走者と世間一般の生存年数をより確かな統計的手法を用いて比較してみました。Foulkes氏らは解析人数も増やし、最初から200人目までの1マイル4分未満走者を調べました。全員が男性で、生まれは1928~55年です。それら200人のうち昨年末までに死亡した60人の平均死亡年齢は73歳、存命の140人の平均年齢は77歳でした。生まれた年や場所を考慮して計算したところ、1マイル4分未満走者は世間一般に比べて平均4.7年長生きでした。1マイル4分未満の初の達成が1950年代だった人はとくに長生きで、世間一般より9.2年長く生きています。1マイル4分未満の初の達成が1960年代と1970年代だった人は世間一般に比べてそれぞれ5.5年と2.9年長生きでした。その違いはおそらく世間一般が時代と共により健康になっていることによるのかもしれません3)。結論として、今回の結果は過度の運動で寿命が損なわれうるという見解に反するものであり、エリート選手レベルさえも含む運動の有益さを支持していると著者は言っています。参考1)Foulkes S, et al. Br J Sports Med. 2024 May 10. [Epub ahead of print]2)Maron BJ, et al. Lancet. 2018;392:913.3)Extreme exercise may help you live longer without stressing your heart / NewScientist

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日本人における果物や野菜の摂取と認知症リスク~JPHC研究

 果物や野菜には、ビタミンC、α-カロテン、β-カロテンなどの抗酸化ビタミンが豊富に含まれている。果物や野菜の摂取が認知症リスクに及ぼす影響を評価したプロスペクティブ観察研究はほとんどなく、結果には一貫性が認められていない。筑波大学の岸田 里恵氏らは、日本人における果物や野菜の摂取と認知症リスクとの関連を調査した。The Journal of Nutrition誌オンライン版2024年4月8日号の報告。 2000~03年(ベースライン時)に50~79歳の4万2,643例を対象としたJPHCプロスペクティブ研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study)においてフォローアップ調査を実施した。食事による果物および野菜の摂取量、関連する抗酸化ビタミン(α-カロテン、β-カロテン、ビタミンC)の摂取量は、食事摂取頻度調査票(FFQ)を用いて収集した。認知障害の診断は、2006~16年の介護保険制度における認知症に係る日常生活障害の状況に基づいて行った。認知障害に関するハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)は、潜在的な交絡因子で調整した後、エリア層別Cox比例ハザードモデルを用いて推定した。摂取量の最低四分位と比較した最高四分位の多変量HRを算出した。 主な結果は以下のとおり。・4,990例で認知障害が認められた。・男女ともに、果物および野菜の総摂取症と認知症リスクとの間に逆相関が認められた。 【男性】多変量HR:0.87(95%CI:0.76~0.99)、p-trend=0.05 【女性】多変量HR:0.85(95%CI:0.76~0.94)、p-trend=0.006・抗酸化ビタミンの中でビタミンCの摂取量は、男女ともに、認知症リスクとの逆相関が認められた。 【男性】多変量HR:0.71(95%CI:0.61~0.84)、p-trend<0.001 【女性】多変量HR:0.76(95%CI:0.67~0.86)、p-trend<0.001 著者らは、「果物や野菜、ビタミンCの食事による摂取は、男女ともに認知障害のリスク低減につながる可能性が示唆された」としている。

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乳がんの術後補助療法、アスピリンは予後を改善するか/JAMA

 高リスクの転移のない乳がんの術後補助療法において、アスピリンの連日投与はプラセボと比較して、乳がんの再発リスクや生存率を改善しないことが、米国・ダナファーバーがん研究所のWendy Y. Chen氏らが実施した「Alliance A011502試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2024年4月29日号で報告された。北米534施設の無作為化プラセボ対照第III相試験 Alliance A011502試験は、アスピリンが乳がん生存者における浸潤がんのリスクを低減するかの検証を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2017年1月~2020年12月に米国とカナダの534施設で参加者を登録した(米国国防総省乳がん研究プログラムなどの助成を受けた)。 対象は、年齢18~69歳、標準治療を受けたERBB2陰性乳がんで、局所療法と化学療法を終了しており、内分泌療法を継続している可能性のある患者であった。被験者を、アスピリン300mgを5年間、1日1回連日投与する群、またはプラセボ群に無作為化に割り付けた。 主要評価項目は無浸潤疾患生存期間(iDFS)とし、無作為化の時点から遠隔再発、局所領域再発、同側または対側の乳がんの発生、2次がん(乳房以外の浸潤がん)、全死因死亡のいずれかが発生するまでの期間と定義した。iDFSイベントに有意差はないもののアスピリン群で多い 3,020例を登録した時点で、初回の中間解析においてプラセボ群と比較したアスピリン群のiDFSのハザード比(HR)は1.27(zスコア=-1.64)と、事前に規定された無効の境界値(HR:1.03[zスコア<-0.192])を超えていたため、データ・安全性監視委 員会により試験の無効中止が勧告された。 アスピリン群が1,510例、プラセボ群も1,510例で、全体の年齢中央値は53歳、男性が16例(0.5%)含まれた。 追跡期間中央値33.8ヵ月(範囲:0.1~72.6)の時点で、iDFSイベントはアスピリン群が141件、プラセボ群は112件で発生した(HR:1.27、95%信頼区間[CI]:0.99~1.63、p=0.06)。iDFSイベントのうち、対側乳がんを除き、死亡、浸潤性疾患(遠隔、局所領域)、新規の原発性イベントはアスピリン群で多かったが有意差は認めなかった。乳がんアウトカムの改善を目的に常用を推奨すべきではない 死亡は、プラセボ群の52例に比べアスピリン群は63例と多かったが、全生存率には有意な差はなかった(HR:1.19、95%CI:0.82~1.72、p=0.36)。81例(70.4%)は乳がんによる死亡だった(アスピリン群46例、プラセボ群35例)。 Grade3以上の有害事象は275件発生し、アスピリン群が130件(9.3%)、プラセボ群は145件(10.2%)であった。このうちGrade4以上は35件で、それぞれ15件(1.1%)および20件(1.4%)だった。アスピリン群では、Grade4の血液毒性を1件(血小板減少)、Grade5の心イベントを2件(心筋梗塞、心停止)、Grade4の血管の有害事象を1件(血栓塞栓イベント)で認めたが、Grade4以上の消化器毒性は発現しなかった。 著者は、「米国では、推定2,900万人がアスピリンを毎日服用しており、その半数は心血管疾患を有していない可能性がある。早期乳がんの病歴がある患者には、乳がんのアウトカムの改善を目的にアスピリンの常用を推奨すべきではない」としている。

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2型DMへのGLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬、併用vs.単剤/BMJ

 2型糖尿病患者では、GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬の併用は、これらの薬剤クラスの単剤投与と比較して、主要有害心血管イベント(MACE)および重篤な腎イベントのリスクを低減することが、英国・バーミンガム大学のNikita Simms-Williams氏らが実施したコホート研究で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年4月25日号に掲載された。英国のコホート研究 本研究では、2013年1月~2020年12月に集積した英国の2型糖尿病患者の2つのコホートのデータを使用した(カナダ保健研究機構[CIHR]の助成を受けた)。 1つは、GLP-1受容体作動薬で治療を開始し、SGLT2阻害薬を追加した6,696例(平均年齢56.7歳、男性54.5%)、もう1つはSGLT2阻害薬で治療を開始し、GLP-1受容体作動薬を追加した8,942例(57.6歳、52.3%)のコホートであった。併用群は、個々の基礎治療薬(GLP-1受容体作動薬またはSGLT2阻害薬の単剤投与)とその投与期間が同じ患者と、傾向スコアでマッチングを行った。 主要アウトカムは、MACE(心筋梗塞、脳梗塞、心血管死)および重篤な腎イベントとし、GLP-1受容体作動薬+SGLT2阻害薬の併用と2つの基礎治療薬単剤をそれぞれ比較した。併用により、単剤に比べMACEリスクが約3割低下 GLP-1受容体作動薬単剤と比較して、GLP-1受容体作動薬+SGLT2阻害薬の併用では、MACEのリスクが30%低下(1,000人年当たりのイベント数:併用群7.0件vs.単剤群10.3件、ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.49~0.99)し、重篤な腎イベントのリスクは57%減少(2.0件vs.4.6件、0.43、0.23~0.80)した。 また、SGLT2阻害薬単剤に比べ、GLP-1受容体作動薬+SGLT2阻害薬の併用では、MACEのリスクが29%低下(1,000人年当たりのイベント数:併用群7.6件vs.単剤群10.7件、HR:0.71、95%CI:0.52~0.98)したのに対し、重篤な腎イベントのリスクのCIは範囲が広かった(1.4件vs.2.0件、0.67、0.32~1.41)。MACEの各項目には大きな差はない MACEの各項目については、GLP-1受容体作動薬単剤との比較では、心筋梗塞(HR:0.73、95%CI:0.45~1.17)、脳梗塞(0.90、0.48~1.67)に併用群との差はなく、心血管死(0.35、0.15~0.80)は併用群で良好であったもののCIの範囲が広かった。心不全(0.57、0.35~0.91)も併用群で良好だったが、CIの範囲は広く、全死因死亡(0.71、0.49~1.02)には差を認めなかった。 また、SGLT2阻害薬単剤との比較では、併用群で心筋梗塞(HR:0.73、95%CI:0.48~1.12)、脳梗塞(0.86、0.46~1.59)、心血管死(0.54、0.29~1.01)に差はなく、心不全(0.70、0.40~1.23)、全死因死亡(0.73、0.52~1.01)にも差を認めなかった。 著者は、「これらの知見は、2型糖尿病の治療における、心血管イベントおよび腎イベントの予防において、これら2つの有効な薬剤クラスの併用の潜在的な有益性を強調するものである」としている。

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