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若者のうつ病に対する孤独感の影響

 COVID-19パンデミックは、孤立の長期化や社会的関係の混乱をもたらし、それに伴って学生の孤独感は増大した。孤独は、うつ病を含むさまざまな精神疾患と関連しており、自傷行為や自殺など、重大な事態を引き起こす可能性がある。中国・広東技術師範大学のM-Q Xiao氏らは、孤独感がうつ病に影響を及ぼす要因について調査を行った。European Review for Medical and Pharmacological Sciences誌2023年9月号の報告。 COVID-19パンデミック中に中国広東省広州市の中等教育および高等教育を受けていた学生879人を対象に、アンケート調査を実施した。収集したデータは、包括的に分析した。 主な結果は以下のとおり。・データの分析により、孤独感がうつ病に対し、有意な正の予測効果を示すことが明らかとなった。・孤独感とうつ病の症状との関係に、目標思考のアプローチとレジリエンスが部分的に関連していることが示唆された。・レジリエンスや目標へのフォーカスは、表現抑制や認知的再評価のレベルとは無関係に、メディエーターとして特定された。・認知的再評価は、孤独感とうつ病とのメディエーターとして、負の緩和効果を示した。・表現抑制は、孤独感とうつ病との関係を明確に媒介しており、この関係ではレジリエンスが役割を果たしていた。 著者らは、「本調査結果により、COVID-19パンデミック中は、社交や対人関係を通じてネガティブな感情を軽減できなかったことが、孤独感の増大や、その後のうつ病発症につながっていたことが示された」とし、以下のようにまとめている。 レジリエンスについては、孤独感による低下が、好ましくない対人関係の経験を人生の他の側面に投影すること、自身は困難を克服する能力に欠けると思い込むことにつながり、それによってうつ状態を悪化させる可能性がある。また、その向上は、パンデミックにより起きた変化により良く適応し、うつ病リスクの軽減に寄与すると考えられるという。目標へのフォーカスについては、高い場合には、自身の経験からの学び、生活リズムの調整、うつ病レベルが低い傾向などが認められた。このことから、うつ病リスク軽減に、目標へのフォーカス向上を目指した介入が有用であることが示唆された。 さらに、自身の不幸の表現を抑制している場合は、うつ病レベルが上昇する可能性があるが、認知的再評価スキルが高い場合には、困難な状況に対する認知的視点を変えることで、うつ病リスクの低下につながる傾向がある、としている。

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手術低リスク重症大動脈弁狭窄症、TAVR vs.手術の5年追跡結果/NEJM

 手術リスクの低い症候性重症大動脈弁狭窄症患者を対象に、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)と外科的大動脈弁置換術を比較した「PARTNER 3試験」の5年追跡解析の結果、全死因死亡、脳卒中および再入院の複合エンドポイントを含む2つの主要エンドポイントについて、いずれも両群に有意差は認められなかったことが示された。米国・Baylor Scott and White HealthのMichael J. Mack氏らが報告した。本試験では、1年時の死亡、脳卒中、再入院の複合エンドポイントの発生率はTAVRのほうが有意に低いことが示されていたが、長期的な予後については不明であった。NEJM誌オンライン版2023年10月24日号掲載の報告。2つの主要複合エンドポイントを評価 研究グループは、症候性大動脈弁狭窄症を有し、米国胸部外科医学会の予測死亡リスク(STS-PROM)スコア(範囲:0~100%、スコアが高いほど術後30日以内の死亡リスクが高い)が4%未満で、臨床的・解剖学的評価に基づき手術リスクが低いと判断された患者1,000例を、経大腿動脈アプローチでバルーン拡張型人工弁(SAPIEN 3)を留置するTAVR群(503例)、または外科的大動脈弁置換術を行う手術群(497例)に、1対1の割合に無作為に割り付け、臨床アウトカムおよび経胸壁心エコーデータを、ベースライン、植込み手技後、退院時、30日後、6ヵ月後、1年後、以降5年後まで毎年評価した。 5年解析時の第1主要エンドポイントは、全死因死亡、脳卒中、手技・弁・心不全に関連した再入院の非階層的複合エンドポイントで、Wald検定を用いてTAVR群の手術群に対する優越性を検討した。また、第2主要エンドポイントとして、全死因死亡、後遺症のある脳卒中、後遺症のない脳卒中、再入院日数の階層的複合エンドポイントを事前に設定し、win比を用いて解析した。TAVRと外科的大動脈弁置換術で、2つの主要エンドポイントに差はなし 無作為化された1,000例のうち、割り付けられた手技が開始されたas-treated集団計950例(TAVR群496例、手術群454例)が解析対象集団となった。 第1主要エンドポイントのイベントは、TAVR群111例、手術群117例に認められ、発生率(Kaplan-Meier推定値)はそれぞれ22.8%、27.2%(群間差:-4.3%、95%信頼区間[CI]:-9.9~1.3、p=0.07)であり、第2主要エンドポイントのwin比は1.17(95%CI:0.90~1.51、p=0.25)であった。第1主要エンドポイントの各構成要素の発生率(Kaplan-Meier推定値)は、全死因死亡がTAVR群10.0%、手術群8.2%、脳卒中がそれぞれ5.8%、6.4%、再入院が13.7%、17.4%であった。 5年時の弁血行動態は両群で類似しており、平均大動脈弁圧較差(平均±SD)はTAVR群12.8±6.5mmHg、手術群11.7±5.6mmHgであった。生体弁機能不全は、TAVR群で3.3%、手術群で3.8%に認められた。

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HER2+胃がん1次治療、ペムブロリズマブ上乗せでPFS改善(KEYNOTE-811)/Lancet

 未治療の転移のあるHER2陽性胃・食道胃接合部腺がん患者において、1次治療であるトラスツズマブおよび化学療法へのペムブロリズマブ上乗せ併用は、プラセボと比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、とくにPD-L1陽性(CPS 1以上)患者で顕著であった。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのYelena Y. Janjigian氏らが、20ヵ国168施設で実施された第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「KEYNOTE-811試験」の第2回および第3回の中間解析結果を報告した。KEYNOTE-811試験の第1回中間解析では、奏効率に関してペムブロリズマブ群のプラセボ群に対する優越性が示されていた。Lancet誌オンライン版2023年10月20日号掲載の報告。主要評価項目はPFSとOS 研究グループは、未治療の局所進行または転移のあるHER2陽性胃・食道胃接合部腺がんで、RECIST v1.1による測定可能病変を有しECOG PSが0または1の18歳以上の患者を、ペムブロリズマブ群またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。層別因子は、地域、PD-L1 CPSおよび医師が選択した化学療法であった。 両群とも、トラスツズマブおよび、フルオロウラシル+シスプラチンまたはカペシタビン+オキサリプラチンとの併用下で、3週ごとに最大35サイクル、または病勢進行、許容できない毒性発現、治験責任医師の判断または患者の同意撤回による中止まで投与した。 主要評価項目は、PFSおよび全生存期間(OS)で、ITT解析を行った。安全性は、無作為化され1回以上投与を受けたすべての患者を対象に評価した。ペムブロリズマブ群でPFSは有意に延長、OSは延長するも有意水準を満たさず 2018年10月5日~2021年8月6日の期間に計698例がペムブロリズマブ群(350例)またはプラセボ群(348例)に割り付けられた。564例(81%)が男性、134例(19%)が女性であった。第3回中間解析時は、投与を受けたペムブロリズマブ群350例中286例(82%)、プラセボ群346例中304例(88%)が投与を中止しており、そのほとんどは病勢進行によるものであった。 第2回中間解析(追跡期間中央値:ペムブロリズマブ群28.3ヵ月[四分位範囲[IQR]:19.4~34.3]、プラセボ群28.5ヵ月[20.1~34.3])において、PFS中央値はそれぞれ10.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:8.6~11.7)、8.1ヵ月(7.0~8.5)であり(ハザード比[HR]:0.72、95%CI:0.60~0.87、p=0.0002[優越性の有意水準:p=0.0013])、OS中央値は20.0ヵ月(95%CI:17.8~23.2)、16.9ヵ月(15.0~19.8)であった(HR:0.87、95%CI:0.72~1.06、p=0.084)。PD-L1発現がCPS 1以上の患者では、PFS中央値はペムブロリズマブ群10.8ヵ月、プラセボ群7.2ヵ月であった(HR:0.70、95%CI:0.58~0.85)。 第3回中間解析(追跡期間中央値:ペムブロリズマブ群38.4ヵ月[IQR:29.5~44.4]、プラセボ群38.6ヵ月[30.2~44.4])では、PFS中央値はそれぞれ10.0ヵ月(95%CI:8.6~12.2)、8.1ヵ月(7.1~8.6)であり(HR:0.73、95%CI:0.61~0.87)、OS中央値は20.0ヵ月(95%CI:17.8~22.1)、16.8ヵ月(15.0~18.7)であった(HR:0.84、95%CI:0.70~1.01)。OSは有意性の水準を満たさなかったが、その後の治療がOSの評価に影響を与える可能性があることから、事前に規定された最終解析計画は変更せず試験は継続されている。 Grade3以上の治療関連有害事象は、ペムブロリズマブ群で350例中204例(58%)、プラセボ群で346例中176例(51%)に発現した。死亡に至った治療関連有害事象は、ペムブロリズマブ群で4例(1%)(肝炎、敗血症、脳梗塞、肺炎が各1例)、プラセボ群で3例(1%)(心筋炎、胆管炎、肺塞栓症が各1例)に認められた。すべての治療関連有害事象で最も多く見られたのは、下痢(ペムブロリズマブ群165例[47%]、プラセボ群145例[42%])、悪心(それぞれ154例[44%]、152例[44%])、貧血(109例[31%]、113例[33%])であった。

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起立性低血圧の有無で、積極的な降圧治療における心血管疾患発症や総死亡の抑制効果に違いはあるのか?(解説:石川讓治氏)

 積極的な降圧が心血管疾患発症抑制に有用であることが、いくつかの大規模無作為割り付け介入試験で報告されている。しかし、これらの研究では起立性低血圧や起立時血圧が低値である患者が除外されていることが多く、これらを有する患者における心血管疾患発症に対する抑制効果に関しては不明であった。本研究は9つの臨床試験の結果の個別参加者データを統合して、起立性低血圧(座位→起立での血圧低下)と起立時低血圧の有無によって、積極的降圧群における心血管疾患発症または総死亡の抑制効果に違いがあるかどうかを検討したメタ解析である。その結果、起立性低血圧や起立時低血圧の有無では、積極的な降圧治療による心血管疾患の発症または総死亡の抑制効果に統計学的有意差は認められなかった。しかし、起立性低血圧を認める患者における積極的な降圧治療は、有意に心血管疾患発症を抑制していたが、総死亡抑制に関しては統計学的有意差が認められなかった。同様に、起立時低血圧を有する患者における積極的降圧治療においても、心血管疾患発症や総死亡低下効果に統計学的有意差は認められなかった。 本研究の解釈には注意が必要である。起立性血圧低下(変動)と起立時に血圧(レベル)が低いことは臨床的には少し異なるものである。起立時に血圧が低いこと自体は、座位においても血圧レベルが低いことの影響を大きく強く受けており、血圧の変動性よりはレベルの問題が大きいと思われる。さらに、起立性低血圧(変動)は、座位→立位の血圧変化では十分に評価をすることは困難である。起立性低血圧は、頭部と心臓の位置関係が変化する仰臥位から立位への変化で診断されるべきであり、座位から立位での血圧変化は下肢運動機能低下やフレイルによる影響を受けやすい。大規模臨床試験では、ヘッドアップティルト試験を全員に行うことが困難なため簡易的に座位→起立での血圧で測定しているが、臨床的に問題となる血圧調整機能障害や自律神経機能低下を反映した起立性低血圧は、座位→立位への変換や起立時の血圧では評価することは困難である。 起立性血圧低下や起立時低血圧の有無にかかわらず、積極的な降圧は平均血圧レベルを低下させ、心血管疾患の発生を抑制するが、起立性低血圧患者においては、生活の質が低下し、転倒骨折リスクが増加することのほうが、イベント抑制よりも問題となることも多い。しかし、このことに関しては本研究においてはまったく評価されていない。起立性低血圧の原因となる自律神経機能低下は、臨床前段階の認知症やパーキンソン病などを併存していることが多く、感染症、老衰、低栄養などによる死亡も多い。こういった患者の多くは大規模な無作為割り付け研究には参加困難であり、積極的降圧治療によっても総死亡の減少効果は少ない。 実臨床においては、起立性低血圧を有する患者の降圧治療は、積極的降圧による心血管疾患発症抑制と、生活の質を維持することのバランスを考えながら行う必要がある。降圧治療をする意義や目的を明確にしながら、降圧目標値を設定していく必要がある。

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サヴァン症候群の「天才的能力」はギフテッドなのか?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第244回

サヴァン症候群の「天才的能力」はギフテッドなのか?photoACより使用サヴァン症候群については医師であればご存じの人が多いと思いますが、ある能力が異常に亢進する症候群です。一瞬見ただけで景色を写真記憶してそれを絵画にして描き出す能力、年月日から曜日を即座に言える能力、耳にした音楽をすべて再現できる能力…。見方によっては、才能を授けられた「ギフテッド」のように思われるかもしれません。Kawamura M, et al.Savant Syndrome and an "Oshikuramanju Hypothesis".Brain Nerve. 2020 Mar;72(3):193-201.この論文はサヴァン症候群の「おしくらまんじゅう仮説」を記したもので、なるほどと考えさせられた総説です。サヴァン症候群の根底にあるのは、特定の脳の機能低下ですが、別の機能が亢進するという状態になります。これが天才的な能力として目の当たりにされるわけです。脳の中では、それらの機能があたかも「おしくらまんじゅう」のようにひしめき合っていて、ある機能が失なわれたときにほかの機能がせり出してくるのではないか、ということです。この機序は獲得性サヴァン症候群においての見解です。反面、生まれながらにしてサヴァン症候群の場合、自閉スペクトラム症のように、器質的な原因があるケースが多いです。私もサヴァン症候群と思われる人とその家族にインタビューをした経験がありますが、コミュニケーションに少し苦労されている人が多かった印象です。国内の特別支援学校での調査によれば、ほとんどのサヴァン症候群児童は男性であり、これは自閉症児が男性に多いことに関係していると推察されています1)。サヴァン症候群の名が知られるようになったのは、映画「レインマン」(1988年)によるところが大きいです。自閉スペクトラム症の兄をダスティン・ホフマンが、その弟をトム・クルーズが演じています。また、「グッド・ドクター」という韓国ドラマの主人公の医師もサヴァン症候群として描かれていますね。日本でも山崎 賢人さんが主演でリメイクされました。1)有路 憲一, 他. サヴァン症候群の実態調査とその実践的価値. 信州大学総合人間科学研究. 2017;11:195-217.

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第184回 治療効果で医師や患者を裏切った!?沢井製薬のカプセル不正問題

10月23日、国内ジェネリック医薬品(GE)企業最大手の沢井製薬(以下、沢井)が突如、記者会見を開いた。記者会見の内容は9月に経済誌「ZAITEN」が報じていた同社の品質検査不正に関するもの。この日、私は自分の事務所で仕事をしていたが、14時46分、ある大手メディアの記者から「沢井が15時から大阪本社で会見する」との一報を受け取った。後に調べると、記者クラブ加盟各社には13時過ぎに会見案内が届いていたらしい。この辺は記者クラブに所属していない私の最大の弱点である。大手メディア記者に「オンライン対応ある?」と尋ねると、「ある」との返答。間もなくこの記者からオンライン参加のZoom URLが送られてきた。この時すでに14時55分。何とか間に合った。さてその後の会見は約2時間にも及んだが、私個人はすっきりしなかったというのが率直な印象だ。沢井側の検査不正概要は以下のとおりである。沢井の検査不正の全容まず、問題となったのは消化器疾患治療薬のテプレノン(有効期間3年)の有効期間中に、製剤として物理的・化学的性質が適正に保持されているかを評価するための長期安定性試験である。不正の中身は1~4年経過したカプセル入りテプレノンが規格通りに溶出するかを確認する試験(溶出試験)を、わざわざ新しいカプセルに詰め替えて行い、合格としていたのである。経年変化の確認試験では、理由の如何を問わず悪質と言わざるを得ない。同社が社内で不正を認識後に設置した弁護士などで構成された特別調査委員会の調査報告書が会見に合わせて公表されたが、それによると2010年秋には、有効期限延長の是非を探るため4年を経過したテプレノンで試験を行い、溶出不十分なサンプルを確認。原因究明のため新規カプセルに詰め替えた試験では規格に適合することがわかった。最終的にこの原因は成分と接触したカプセルの内側に膜が形成される経年変化と突き止められた。この結果は翌2011年1月に本社に報告され、有効期限の3年以内でも同様のことが起こりうる危険性を指摘する内容のメールも送信されたが、本社側の何らかの対応、九州工場側によるGMP省令(医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理の基準に関する省令)に基づく逸脱管理などを行った形跡はないという。そして遡ること2013年には、3年を経過したテプレノンの試験でも同様の溶出規格外が発生。その結果報告に対し、当時の工場長はカプセルの影響を確認するよう指示。2010年と同様に新規カプセルに詰め替えて試験を行うと規格適合になった。この時も特段逸脱管理が行われず、原因究明のための試験方法を、試験責任者とその上司は「詰め替えで適合するならば逸脱として扱わない」と“誤認”。そのまま、この試験方法が口頭伝承され、2014年、2017年にも同様の試験で規格外の結果が続き、口頭伝承の試験方法による合格結果で良しとしていたという。結局、2023年4月、(たまたま?)口頭伝承が行われていなかった着任半年の試験担当者が3年次、4年次の長期安定性試験を行った結果、溶出率0%となるサンプルも複数存在することが確認されて上部に報告。ここでようやく別の試験担当者の供述から不正が行われていたことが発覚した。ちなみに報告書を見ると、2013年の3年次安定性試験については、実際には37ヵ月、すなわち厳密な意味での有効期限を1ヵ月過ぎた製剤だったため、「カプセルを詰め替えて試験を行い、逸脱としては取り扱わないことが正当化されるものと理解していたこともうかがえる」と記載されている。ちなみに2017年の3 年次の溶出試験での不適合もその時点で44 ヵ月経過した使用期限外のロットであったことから、重大な事態とは思わなかったらしい。現場の“誤認”で上層部の関与なし?正直、会見の進行中、パラパラ報告書をめくって拾い読みしていた段階でも「あり得ない」と思っていたが、会見終了後に熟読すればするほど余計意味がわからない。そもそも試験担当者やその上司はGMP省令をなんと心得ているのだろうか?ちなみにこの長期安定性試験は九州工場品質管理課で行われていたが、報告書によると、本社側、九州工場の責任役員、工場長、品質管理課の管理職であるマネージャー・アシスタントマネージャーからは不正な試験実施を認識していた、あるいは指示していた事実や供述は確認できず、品質管理課の非管理職であるリーダー・チーフは不正試験を認識、指示していたこと、またその下の試験担当者4人も不正を認識していたことが認められたという。また、実際の試験担当者は「上司からの指示に反してまで実施を止める必要はないとの認識を有しており、遵法意識よりも上司からの指示を優先していたものと考えられる」と記述されている。結果、管理職層は誰もこの不正の認識・指示の証拠がなく、あくまでリーダー・チーフによる誤認に基づく不正な試験が続いてきたとの判断で、報告書は「上層部が関与して組織的に行われた行為であったとまでは認められない」と記述している。これを読んで沢井の外部の人はどう思うだろうか? 何人かの人間に聞いてみたが、得られた感想はほぼ以下の1点に集約されてしまう。「現場の“誤認”という点から組織的な関与はない、は無理筋なストーリー過ぎないか」まあ、事実がどうであれ、そう思われても仕方がない。実際、報告書には以下のような記述もある。「通常であれば、カプセル剤の内容物を新しいカプセルに詰め替えた上で溶出試験を実施するという試験の意義自体を無に帰する作業が、明確な指示がない中で工場長以下の複数の上司らの総意による指示であると認識することは考えにくい。しかし、九州工場では、試験担当者にとっても、チーフやリーダーにとっても、上司らが本件不適切試験を指示することが不自然であるとは捉えられなかった。そのため、上司らが本件不適切試験を指示するなど何かの間違いではないかといった疑問が生じることもなく、指示の有無や経緯を上司らに確認しようという発想にも至っていなかった」うーん、と唸るほかない。ちなみにやや細かいことだが、報告書を読んでいて私が気になったことがある。2017年に行われた3年次溶出試験に関するものだ。これは前述のように当初試験では溶出不適合になり、口頭伝承に沿ってカプセルの詰め替えが行われて溶出適合となり、後者の結果が織り込まれた長期安定性試験報告書が上部に提出されている。しかし、今回の調査の結果、試験担当者らが使用する共有PCに、報告書には添付されていなかった規格不適合の溶出試験結果の計算シートが残されており、しかもそれを見ると試行錯誤しながら試験を繰り返していた形跡が認められた。しかし、この未報告計算シートの存在について、試験担当者は「用途や試験を行った理由については記憶がない」のだという。確かに6年前のことを詳細に記憶している人は少ないだろう。とはいえ、この方には申し訳ないが、まるで戦後最大の疑獄事件であるロッキード事件の証人喚問で連発された「記憶にございません」を想起してしまう。また、これまで繰り返し書いてきたようにGE企業の不正は、2020年の小林化工事件を発端に複数の企業で発覚している。これは業界団体の日本ジェネリック製薬協会から発出された2021 年3 月25 日付「ジェネリック医薬品の信頼性確保に関する対応について」を受けた各社の一斉点検で一部が発覚している。当然ながら沢井の九州工場でも同年5 月に点検が行われたが、(1)承認書の記載(2)製品標準書の記載(3)指図書・記録書の記載の確認による齟齬の有無チェックに留まり、試験担当者への聞き取りは実施していなかったため当時は発覚しなかったという。さてこの会見、当然ながら参加した身として質問をしないわけにはいかない。一応、1回につき2問までと広報担当者からの説明はあったが、同時に2回以降の挙手も可能ということだったので、オンラインから質問をさせていただいた。結果、2回指名を受けた。どうやら指名NGリスト入りしていないらしい(笑)。以下、その内容の一問一答を要約してお伝えしたい。回答者はいずれも現社長の木村 元彦氏である(カッコ内は私による補足)。2021年の全社点検時に品質管理課のリーダーは、報告すべき不正とは認識しなかったのか?チーフ・リーダー層は過去の試験結果で規格外が出る原因分析のためにカプセル詰め替えを実施したが、その結果の処理に不手際があり、誤った認識でその後も(不正な)試験をし続けてよいという認識で続けていた。試験担当者からこれでよいのかと質問されても、そういう(誤った)認識に立った説明をしていた。長期安定性試験の性格を考えた際、経年したカプセルで行うのが常識で、それを変えて試験を行うこと自体がGMPなどに対する著しい理解不足に思える。まさしくおっしゃる通り。私もこの話を聞いたときはGMP教育の徹底がまだなされていないと強く感じた。生産本部(木村社長の前任は同本部長)を中心にもう一度社内資料だけではなくて社外の良質なeラーニングのシステムも導入してGMP教育の再徹底をしていきたい。2017年の未報告計算シートの存在がありながら、試験担当者は記憶がないと証言している。常識的に考えて、記憶がないとの口実で隠蔽していると受け止められても仕方ない。その辺りの記憶がないとの証言で、今おっしゃった不適切なことをやっていた確証はなく、その点の判断はなかなか難しいのではないかと考えている。管理職は認識していなかったとの判断は、事実上、管理監督をしていなかったと言っているようなもの。その点は、まさしくそのように私も理解しており、再発防止策の中にも書いた、現場・現物・現実の三現主義の徹底をしっかり管理職が行うことが大事だと認識している。溶出不十分はいわゆる有害事象・副作用にはつながらない反面、報告書内で溶出率0%のサンプルもあった。結果的に処方した医師や処方された患者が期待した治療効果を得られなかった可能性もある。私も非常に気にしているが、残っている参考品(通常の室温管理品。長期安定性試験品はこれより高温・多湿で管理されている)をできる限り多く調べ、それらは規格適合を確認している。国内では場所により室温が違うところもあるので、安全性を重視し、自主回収をした。私見だが、これ以外の記者の質疑応答も腑に落ちないと感じることは多かった。もっともこの記者会見はどこぞの芸能事務所とは違い、質問の挙手が尽きるまで行われたことは、評価したい。

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「糖尿病の名前の由来」に興味を持った患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第41回

■外来NGワード「そんなことは自分で調べなさい」(患者さんの質問に真摯に答えない)「尿に糖がでる病気だから、『糖尿病』なんです!」(誤解を招く説明)■解説国立国語研究所の「病院の言葉」をわかりやすくする提案の中で、「『糖尿病』という病名の認知率は高いが、その字面から「糖が尿にでる病気」として誤解されることが多い」と指摘しています。また、「糖」を「砂糖」のことだと単純に考え、「甘いものの摂り過ぎで起こる病気」と勘違いしている人も半数近くいたそうです。さて、この「糖尿病」という名前の病気、いつ頃から名付けられたのでしょう。紀元前1500年のエジプトのパピルスに「尿があまりにもたくさんでる病気」との記載があります。2世紀頃のカッパドキアのアイタイウスが「肉や手足が尿中に溶けてしまう病気で患者は一時も尿を作ることを止めず、尿は水道の蛇口が開いたように絶え間なく流れ出す」と記載しており、ギリシャ語のサイフォン(高い所から低い所へと水が流れる)を意味する“Diabetes”がこの病気の名前として用いられるようになってきました。その後、17世紀に入ると英国人医師のトーマス・ウイルスが糖尿病患者の尿が蜂蜜のように甘いことに気付き、“Mellitus”(ラテン語の「蜂蜜」)と名付け、“Diabetes Mellitus”となりました。これらの用語が日本に伝わり、「蜜尿とう」、「蜜尿病」、「糖尿病」(のちに蜜が糖であることが判明したため)などさまざまな病名で呼ばれていましたが、1907年の第4回 日本内科学会で「糖尿病」という病名に統一され、今日に至っています。ちなみに、下垂体後葉の病気で多尿を呈する「尿崩症」は“Diabetes Insipidus”と言い、病名の“Insipidus”とは「無味」の意味で尿が甘くないことを意味しています。■患者さんとの会話でロールプレイ患者コロナのワクチン接種の際に病名を記載するのに、私の病名は「糖尿病」「高血圧」「高脂血症」でいいですか?医師はい。「糖尿病」、「高血圧」、「高脂血症」あるいは「脂質異常症」でいいですよ。患者ありがとうございます。けど、糖尿病ってあまり印象の良くない名前ですね。医師確かに。「糖が尿にでる病気」と誤解している人も多いですよね。患者そうじゃないんですか?医師正しくは、血液中の糖、血糖値が高くなる病気です。その結果、尿に糖がでるわけで、高くなくても尿に糖がでる人もいます。患者へぇ~、そうなんですか。じゃあ、どうして「糖尿病」って名前になったんですか?「高血糖症」でもよさそうなのに。医師確かに。けれど、糖尿病という名前にしようとした頃、つまり100年以上も前は血糖を測定するのは今ほど簡単じゃなかったからですね。患者なるほど。それで「尿」の名前が付いているんですね。医師そうですね。参考となる症状も多尿でしたし、トイレが水洗でなく汲み取り式だった時代には汲み取り業者が甘い臭いから「この家には糖尿病の人がいる」と言っていたという話もありましたからね。患者へぇ~。尿でそんなことがわかるんですね。医師そうなんです。他にも尿でわかることがありますよ!患者それは何ですか? 是非、教えてください(興味深々)■医師へのお勧めの言葉「昔は尿に糖がでるということで『糖尿病』という名前が使われていましたが、正しくは血液中の糖分、血糖値が上がる病気ですね」 1)Lakhtakia R. Sultan Qaboos Univ Med J. 2013;13:368-370.

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11月3日 難聴ケアの日【今日は何の日?】

【11月3日 難聴ケアの日】〔由来〕「いい(11)みみ(3)」(いい耳)と読む語呂合わせと、難聴ケアを文化にしたいという思いも込め「文化の日」の今日、補聴器を中心とした聴覚関連機器の販売などを手がける株式会社岡野電気(埼玉県・大宮市)が制定。難聴が原因で起きるさまざまな障害の重大性を知る機会を作ること、難聴予備群の方に正確な情報を提供すること、そして難聴の予防、改善するきっかけの日とすることが目的。関連コンテンツ難聴と認知症【外来で役立つ!認知症Topics】コロナ禍のコミュニケーション【コロナ時代の認知症診療】耳鳴りがするときの症状チェック【患者説明用スライド】老化に伴う難聴を脳のコレステロール補強で防ぎうる高齢者における難聴とうつ病との関係~メタ解析

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制吐薬適正使用ガイドライン 2023年10月改訂 第3版

8年ぶりの改訂、Mindsに準拠した最新指針がん薬物療法により発現する悪心・嘔吐を適切に評価し抑制することは、がん患者のQOL改善と治療完遂のための重要な課題です。8年ぶりの全面改訂となる今版は、Minds2017に準拠し作成しました。各章の総論・Questionを充実させ、非薬物療法による制吐療法、患者サポート、医療経済などについても新たにQuestionや解説を追加し、制吐療法における、患者と医療従事者の意思決定支援に必要な情報提供を目指しました。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    制吐薬適正使用ガイドライン 2023年10月改訂 第3版定価3,080円(税込)判型B5判頁数208頁(図数:44枚)発行2023年10月編集日本治療学会電子版でご購入の場合はこちら

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過去30年間における世界の頭痛有病率~世界疾病負荷研究

 近年、頭痛は世界的な健康課題として大きく注目されている。この懸念は、とくに低~中所得国で顕著であり、青少年や若年成人における有病率の増加に現れている。このような頭痛の急増により、頭痛患者のQOLは常に低いものとなっている。しかし、世界的な影響にもかかわらず、若年層を対象に頭痛の影響を調査した包括的な研究は、いまだ十分ではない。中国・上海交通大学のXin-Yu Li氏らは1990~2019年の30年間にわたり、15~39歳における頭痛の世界的な有病率を定量化するため、本研究を実施した。結果を踏まえて著者らは、片頭痛と緊張性頭痛(TTH)は世界の健康において大きな課題であるとし、その影響の強さは国によって違いがあり、女性、30~39歳、社会人口統計学的指数(SDI)が高い集団においては、とくに影響が大きいと指摘している。The Journal of Headache and Pain誌2023年9月18日号の報告。 研究は、1990~2019年の30年間にかけて実施された。204の異なる国と地域を対象に、とくに片頭痛とTTHの影響を評価した。包括的な評価では、年齢、性別、年、地域性、SDIなどのさまざまな人口統計学的要因と、頭痛の罹患率、有病率、障害調整生存年(DALY)との関連を分析した。 主な結果は以下のとおり。・2019年の世界における片頭痛の推定患者数は5億8,176万1,847.2例(95%不確定区間[UI]:4億8,830万9998.1~6億9,629万1,713.7)であり、1990年から16%の増加が認められた。・2019年のTTHの推定患者数は、9億6,480万8567.1例(同:8億958万2,531.8~11億5,523万5,337.2)であり、1990年から37%の増加が認められた。・片頭痛の有病率は、南アジアで最も高く、1億5,449万169.8例(同:1億3,029万6,054.6~1億8,246万4,065.6)であった。・高SDI地域では、1990年(人口10万人当たり2万2,429例)と2019年(人口10万人当たり2万2,606例)のいずれにおいても、最も顕著な片頭痛有病率が示された。・SDI分類のうち、中SDI地域は、1990年(2億1,013万6,691.6例)と2019年(2億8,757万7,250例)のいずれにおいても、TTH患者数が最も高かった。・過去30年間で片頭痛患者数が最も顕著に増加したのは、東アジアであった。・全体として、片頭痛およびTTHの疾患負荷とSDIとの間に、正の相関が認められた。 著者らは「片頭痛とTTHのマネジメントを現代医療のパラダイムに組み込むことは不可欠であり、このような戦略的統合は、頭痛に関連するリスク因子や治療介入の重要性について一般集団が認識を深めることに寄与する可能性がある」としている。

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急性虚血性脳梗塞に対する早期の降圧治療、発症8日目からの降圧治療開始との比較で90日後の死亡や神経学的後遺症に有意差なし(解説:石川讓治氏)

 血栓溶解療法を行わない発症後24~48時間の急性虚血性脳梗塞患者における収縮期血圧140~220mmHgに対して、7日以内に140/90mmHg未満を目指して早期に降圧治療を行った群と、降圧薬を7日間中止後8日目以降に140/90mmHg未満を目指して遅れて降圧治療を開始した群の間で、90日後の死亡や神経学的後遺症のリスクを比較した研究である。 早期降圧治療群において7日後の血圧が有意に低かったが、14日後の血圧は両群で有意差は認められず、その結果、90日後の死亡や神経学的後遺症のリスクには有意差はなく、むしろ早期降圧治療群において1.18倍のリスク増加が認められる傾向があった(p=0.08)。 本研究においてはどのような降圧薬が使用されたかというデータは示されていない。また、1週間後に降圧治療を開始した群においても、収縮期血圧が220mmHg以上になった場合は一時的な降圧薬の使用も認められていたことに注意が必要である。14日目の血圧レベルは両群で同じレベルにコントロールされており、降圧治療は決して遅れた(delayed)群ではないようにも思われる。本研究の結果からは、血栓溶解療法を行わない虚血性脳梗塞患者においては、急性期1週間以内の一過性(反応性)の血圧上昇に対しては、過剰に降圧することなく、2週間程度かけてゆっくり降圧していくことの重要性が示唆された。

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心理的安全性の確保【Dr. 中島の 新・徒然草】(501)

五百一の段 心理的安全性の確保こないだ2023年が始まったと思ったら、もう11月です。年を取るとともに時間の過ぎるのが速くなりました。そろそろ年賀状の準備を始めなくてはなりません。さて、広島で行われた国立病院総合医学会では、医療安全のシンポジウムで「医療従事者の心理的安全性を確保するための工夫」というタイトルで話をしました。これは座長からの「医療安全+心理的安全性」というテーマで発表してほしいというリクエストに応えたものです。私にとっての最大の医療安全は「大過なく脳外科手術を終える」ということに尽きます。その一方で、心理的安全性という言葉には馴染がなかったので自分なりに調べました。以下、医療安全と心理的安全性について学会で述べた事を説明しましょう。脳神経外科手術における優先順位というのは、1: 麻痺や意識障害などの後遺症を出さない2: 動脈瘤クリップや腫瘍摘出などの目的を達する3: 速い手術ということになるかと思います。手術は「山頂にある宝物を持って帰る」というミッションにたとえることができます。宝物を目指す途中で遭難するのは論外、まずは無事に帰って来ることが最も大切です。とはいえ、やはり帰った時に宝物を持っていなかったらガッカリすることでしょう。もちろんサッと行ってサッと無事に帰り、目的も達成するに越したことはありません。つまり「遭難せずに宝物をスムーズに持って帰るミッション」という意味で「後遺症を出さずに目的を達する速い手術」が望まれるわけです。が、遭難しないことが最優先なので、時には勇気ある撤退も必要になることでしょう。で、これらを達成するために私がやっていることは、1: 他人様のアドバイスに耳を傾けること2: 多くの人の協力を得ることです。実例を挙げましょう。私が顕微鏡手術をしていると手術室に置かれた巨大モニターを見ている人たちから、「中央じゃなくて、左側の血管に吻合したほうがいいんじゃないですか」とか「今の針糸は内膜を捉えていないのでは?」とか、結構、言われ放題。わざわざ声に出すくらいですから、いちいちもっともな意見で、大いに参考にしています。「六十にして耳順う」とはよく言ったもの。また、先日の巨大腫瘍の摘出なんかは、被膜の剥離と腫瘍摘出で疲労困憊。途中でほかの術者に代わってもらいました。その術者も出血の多さに4時間ほどで戦意喪失。さらに別の術者に代わってもらい、ようやく全摘できました。何人掛かりでやろうが、何時間掛かろうが、結果が良ければそれで良しです。このように遠慮なくアドバイスしたり交代したりすることができる、というのが心理的安全性というものだろうと思います。心理的安全性というのは、ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンドソン教授が1990年代に言い出した概念だそうです。彼女は「率直に議論しても人間関係が壊れないチーム」を心理的安全性の高い組織だと言います。最近になって心理的安全性という言葉が流行り出したのは、ピョートル・フェリクス・グジバチさんの影響かもしれません。彼は、あのGoogleでの研究「プロジェクト・アリストテレス」で心理的安全性の高いチームが生産性も高かったということを見出しました。グジバチさんはポーランド生まれですが、千葉大学にいたことがあるそうで、日本語もペラペラです。YouTubeでグジバチさんがしゃべっているのを見ると、「心理的安全性の高い組織には残酷な率直さがある」と発言していました。彼は、例として「チャック開いてますよ」という指摘を挙げています。確かにこのようなことを言われるのは恥ずかしいですが、指摘されなかったら大変なことになってしまいます。もっとも私なんかは関西人なので、もし「チャックが開いてるよ」と言われたら、「風に当てて冷やしていたんや」と返してしまうかもしれません。ともあれ、こういった率直なコミュニケーションはいろいろな場面で大切だと思います。さらに私が心掛けているのは、手術室での麻酔科医とのコミュニケーションです。かなり出血していると思えば「体感で500mLは出ています。必要なら遠慮なく輸血してください」と言うことにしています。大量出血している時なんかは出血量のカウントが追いついておらず、麻酔科医が事態を把握できていないことがあるので、早めに声を掛けておくべきですね。また、長時間になってしまった手術では、麻酔科医に「もう先が見えてきました」とか「もう少し止血したら閉頭にかかります」とか、そういう声掛けをしておくと全体にスムーズに進行するものと思います。ということで、学会では私を含めて3人の演者によるシンポジウム形式のセッションでしたが、皆が心の中で感じていたことだったのか、思いがけず質疑応答も盛り上がりました。もちろん心理的安全性の高い組織といっても、「なあなあ」に陥ってしまってはなりません。やはり、高く明確な目標を掲げて皆で頑張る、ということが大切ですね。ということで最後に1句霜月や チャックが開き 冷えすぎだ

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検索型AIを活用する【医療者のためのAI活用術】第8回

ChatGPTは情報検索に向いていないこれまでの連載で、ChatGPTの活用について説明してきました。ChatGPTは文章の書き換えや英文校正などに向いていますが、無料版のChatGPTは情報検索には向いていません。これは、ChatGPTが学習したデータは2021年までの情報であり、また生成された回答には引用元がついていないため、情報の真偽が確認できないためです。有料版を利用していれば、プラグインやBingのブラウザを利用して検索することも可能ですが、ChatGPT以外にも情報検索に特化した無料で利用可能なAIツールがあるため、そちらを利用することをお勧めします。今回は、ChatGPT以外に、情報検索で使える無料のツールを2つ紹介します。(1)Perplexity AIPerplexity AIは2022年12月に発表されたサービスです。ChatGPTは事前に学習した内容から回答を考える「対話型AI」であるのに対し、Perplexity AIはインターネット上から情報を得る「検索型AI」といえます。Perplexity AIの特徴は以下のとおりです。基本的な機能は無料で利用可能(有料版も存在する)ログイン不要多言語に対応(日本語よりも英語の方が精度は高い)検索範囲の指定(WikipediaやYouTube、論文など)出典元が表示される使い方はシンプルで、Perplexity AIのウェブサイトにアクセスし、検索したい内容を文章で入力します(図1)。この時に、Focusのボタンをクリックすると、どの情報源を検索するか選ぶことができ、医療情報を検索したい時には「Academic」をクリックすると、論文から引用してくれます。検索ボタンをクリックすると、検索した情報が1段落程度の文章にまとめられて表示され、どの文献から引用したかも示されます(図2)。調べる際は日本語でも入力可能ですが、英語のほうが精度が高いため、英語で検索した後に回答を日本語に翻訳する方が良いかもしれません。欠点としては、検索した内容が必ずしも網羅的ではなく、引用の仕方も不正確な場合がある点です。自分の専門分野について検索すると、情報の妥当さは75点ぐらいの印象です。使い方としては、自分が詳しくない分野の検索の入り口として使用し、細かい内容はそれぞれの論文を読んだり、他の検索ツールを使ったりして補うのが良いと思います。(図1)論文の情報から医療情報を検索する方法画像を拡大する(図2)検索結果画像を拡大する(2)Elicitもう1つ、論文の検索に特化した無料のAIツールに「Elicit」があります。こちらも使い方は簡単で、ウェブサイトにアクセスし、調べたい内容を入力するだけです(図3)。すると、論文を検索し、論文の抄録から関連する内容を抽出して表示してくれます(図4)。Perplexity AIと違う点は、回答がひとまとまりの段落で表示されるのではなく、それぞれの論文から関連する要素を抽出した文章が個別に表示される点で、これにより一つひとつの論文をより吟味したり、取捨選択したりしやすくなります。また、ランダム化比較試験やメタ解析など、論文の種類を指定して検索することができます。さらに、表示順もカスタマイズできるのが優れている点で、たとえば、「Citation(引用回数)」を選択すると、他の論文に引用された回数が多い論文が優先的に表示されるため、その領域の鍵となる論文を簡単に見つけることができます。Perplexity AIよりも、1歩踏み込んだ詳しい内容の検索をするのに向いているといえます。(図3)調べたい内容を入力するだけで検索可能画像を拡大する(図4)検索結果と検索のカスタマイズ方法画像を拡大する

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第69回 ほとんどの成人が日本脳炎ワクチン未接種者の地域は?

静岡県で日本脳炎Unsplashより使用静岡県の医療機関に2ヵ月間入院している高齢者の抗体検査によって、この患者さんが日本脳炎ウイルスに感染していることが先日判明し、話題となりました。今年7月には、熊本県において、15頭のブタのうち1頭で日本脳炎ウイルスに直近に感染していたことを示す抗体が検出され、日本脳炎注意報が発令されています。日本脳炎ウイルスは、ヒトからヒトには感染しませんが、ウイルスに感染したブタを吸血したコガタアカイエカに刺されることで感染します。感染した場合に0.1~1%が急性脳炎を発症するやっかいなウイルス感染症です。ほとんどが無症状なのですが、発症した場合の死亡率が20~40%と高く、生存したとしても多くは後遺症を残してしまいます。日本脳炎ワクチンの予防接種は小児の定期接種に位置付けられているので、現在は取りこぼしがほとんどなく接種できています。日本脳炎ワクチンの接種時期は、基本的に3歳になってからと認識されていることが多いですが、ワクチンの接種そのものは生後6ヵ月から可能です。日本小児科学会では、日本脳炎の流行地域に渡航・滞在、最近日本脳炎の患者が発生した地域に居住、ブタの日本脳炎抗体保有率が高い地域(茨城県、千葉県、静岡県、山梨県、三重県、鳥取県、愛媛県、高知県、大分県、福岡県、佐賀県、長崎県など)に居住している子供について、生後6ヵ月からの接種を推奨しています1)。日本人における日本脳炎抗体の保有状況は、2022年のデータによると40代から急速にダウンしていることがわかると思います(図1)。小児も6ヵ月時点での接種はほとんどなく、基本的に3歳以降の接種のままになっていることがわかります。画像を拡大する図1.感染症流行予測調査グラフ(国立感染症研究所)2)北海道の定期接種は2016年から北海道では、媒介するコガタアカイエカが生息していなかったことから、日本脳炎ワクチンの定期接種は過去行われていませんでした。法定接種の対象になったのは2016年のことです。ゆえに、北海道民の成人のほとんどが日本脳炎ワクチン未接種者と考えられます。大学時代、北海道出身の友人がいたのですが、日本脳炎ワクチンを接種していないということで、慌てて接種していたのを覚えています。北海道に住んでいる人皆がそのまま北海道に住み続けるわけではありませんし、北海道の平均気温もどんどん上昇しています(図2)。なので、どの地域であっても、気温が上昇し続けている日本に住んでいる限り、日本脳炎ワクチンを接種しておいたほうがよいと考えられます。画像を拡大する図2.北海道の気温のこれまでの変化(札幌管区気象台)3)副反応を心配する声もあるかと思いますが、感染・発症したときの健康インパクトが大き過ぎるので、相対的にワクチンの重要性は増すということです。参考文献・参考サイト1)日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会. 日本脳炎罹患リスクの高い者に対する生後6か月からの日本脳炎ワクチンの推奨について.2)感染症流行予測調査グラフ(国立感染症研究所)3)北海道の気温のこれまでの変化(札幌管区気象台)

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ADHDと自閉スペクトラム症のWAIS-IVまたはWISC-Vによる認知プロファイル~メタ解析

 これまでの研究によると、神経発達の状態は、ウェクスラー式知能検査(最新版はWAIS-IV、WISC-V)における特有の認知プロファイルと関連している可能性がある。しかし、自閉スペクトラム症または注意欠如多動症(ADHD)患者の認知プロファイルをどの程度反映できているかは、はっきりしていなかった。英国・ニューカッスル大学のAlexander C. Wilson氏は、同検査による自閉スペクトラム症とADHDの認知プロファイルの評価を調査する目的でメタ解析を実施した。その結果、WAIS-IVまたはWISC-Vの成績パターンは、診断目的で使用するには感度および特異度が不十分であるものの、自閉スペクトラム症では、言語的および非言語的推論の相対的な強さと処理速度の低さの認知プロファイルと関連していることが示唆された。一方、ADHDでは、WAIS-IVまたはWISC-Vにおける特定の認知プロファイルとの関連性は低かった。Archives of Clinical Neuropsychology誌オンライン版2023年9月29日号の報告。ADHD患者のWAIS-IVまたはWISC-Vの結果は年齢で予想されるレベル 2022年10月までに公表された研究をPsycInfo、Embase、Medlineより検索した。自閉スペクトラム症またはADHDと診断された小児または成人を対象に、WAIS-IVまたはWISC-Vを用いて認知パフォーマンスを評価した研究を検索対象に含めた。検査のスコアはメタ解析を用いて集計した。自閉スペクトラム症とADHDのWAIS-IVまたはWISC-Vを用いた認知プロファイルの評価を調査した主な結果は以下のとおり。・18件のデータソースより報告された、ニューロダイバーシティ(神経多様性)1,800例超のスコアを分析した。・自閉スペクトラム症の小児および成人は、言語的および非言語的推論において典型的な範囲内のパフォーマンスを発揮していたが、処理速度スコアは平均より約1 SD低く、作業記憶スコアはわずかに低かった。これは、自閉スペクトラム症における「spiky」の認知プロファイルの根拠と考えられる。・ADHDの小児および成人のWAIS-IVまたはWISC-Vにおけるパフォーマンス結果は、ほとんどが年齢で予想されるレベルであったが、作業記憶スコアはわずかに低かった。 結果を踏まえて著者は、「自閉スペクトラム症では、自身の長所や困難を特定しサポートするための認知評価が、とくに有益である可能性がある」としている。

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転移乳がんのエリブリン2投2休、後治療のPFSを有意に延長/日本治療学会

 転移を有する乳がん患者にエリブリンを標準スケジュールである21日周期(21日ごとに1・8日目に投与:2投1休)で投与する場合と比較して、28日周期(28日ごとに1・8日目に投与:2投2休)の投与は後治療の無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、全生存期間(OS)は有意差はなかったものの延長傾向にあったことを、市立四日市病院の水野 豊氏が第61回日本治療学会学術集会(10月19~21日)で発表した。 エリブリンは腫瘍免疫微小環境の改善効果により、後治療の良好な効果が推測されている。しかし、血液毒性などの有害事象のため標準の21日周期では治療の中断・中止を余儀なくされることがある。これまでエリブリンを1・15日目に投与する28日周期の投与スケジュールにおけるPFSはすでに報告されているが、異なる投与スケジュールが後治療の効果に与える影響を調べた研究はなかった。そこで水野氏らは、エリブリンの異なる治療スケジュールと後治療のPFSの関連を評価するために研究を実施した。 エリブリン治療はまず標準スケジュールである21日周期の1・8日目投与で開始し、2サイクル目の1日目に好中球数が1,500mm3以上であれば標準スケジュールを継続し(2投1休群)、1,500mm3未満であった場合は28日周期の1・8日目投与に変更してその後も28日周期を継続した(2投2休群)。3サイクル目以降も同様に1日目の好中球数が1,500mm3以上かどうかでスケジュールを検討した。 対象は、転移を有する乳がん患者81例(うちde novo StageIVが23例[28%])で、年齢中央値は67歳(範囲:39~90歳)であった。主な転移部位は骨(48%)、肝臓(40%)、所属リンパ節(38%)、肺(32%)。ER/PgR陽性が63%、トリプルネガティブが37%。前治療の化学療法歴なしが31%、1ラインが44%、2ライン以上が25%であった。 主な結果は以下のとおり。<エリブリン治療>・奏効率は9%、病勢コントロール率は30%、臨床的有用率は56%であった。・全体のPFS中央値は6.3ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.5~8.6)であった。治療スケジュール別のPFS中央値は、2投1休群(49例)が6.1ヵ月(95%CI:3.4~8.4)、2投2休群(32例)が8.6ヵ月(95%CI:5.1~13.0)で有意差は認められなかったものの延長傾向にあった(p=0.149)。・全体のOS中央値は20.6ヵ月(95%CI:14.6~27.1)であった。2投1休群は17.1ヵ月(95%CI:10.2~21.1)、2投2休群は27.1ヵ月(95%CI:14.6~30.9)で、PFSと同様に有意差は認められなかったものの延長傾向にあった(p=0.0833)。<後治療>・後治療を行ったのは47例で、多かったレジメンはパクリタキセル+ベバシズマブ(32%)、AC/EC療法(19%)、カペシタビン±シクロホスファミド(13%)、S-1(11%)、内分泌療法(11%)などであった。・全体のPFS中央値は4.9ヵ月(95%CI:3.0~8.1)であった。2投1休群は3.3ヵ月(95%CI:2.8~5.6)であった一方、2投2休群では10.4ヵ月(95%CI:2.1~14.5)で有意に改善した(p=0.0195)。・OS中央値は2投1休群17.1ヵ月(95%CI:10.9~21.1)、2投2休群28.5ヵ月(95%CI:14.6~53.5)で延長傾向にあった(p=0.0965)。 これらの結果より、水野氏は「エリブリンの標準とは異なる2投2休の投与スケジュールはPFSおよびOSを延長させ、さらに後治療にも好影響をもたらす」とまとめるとともに、質疑応答で「十分に血球を回復させるために2週間休薬することが重要だと考える。好中球数が減少していたとしてもしっかりと回復させる期間が得られ、それによって後治療に好影響をもたらすのではないか」と見解を述べた。

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BA.2.86「ピロラ」感染3週間後の抗体応答が大幅に増強/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株であるオミクロン株BA.2.86(通称:ピロラ)は、2023年8月初頭にデンマークで初めて報告され、スウェーデンでは8月7日に初めて検出された。本症例(インデックスケース)は、慢性疾患のない免疫不全の女性であった。本症例の血清および鼻腔粘膜の抗体応答について、2023年2月に得られた検体と、BA.2.86感染から3週間後に得られた検体を用いて比較したところ、BA.2.86感染後ではIgA値およびIgG値の上昇が認められ、感染前より抗体応答が大幅に増強されることが示唆された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のOscar Bladh氏らによる、NEJM誌2023年10月26日号CORRESPONDENCEに掲載の報告。 スウェーデンの医療従事者2,149人を対象としたCovid-19 Immunity(COMMUNITY)コホート研究内のスクリーニングプログラムにおいて、8月7日にBA.2.86感染の最初の症例が確認された。本症例は、慢性疾患のない免疫不全の女性で、SARS-CoV-2感染歴があり、BA.2.86感染の診断前にBNT162b2ワクチン(ファイザー製)を4回接種していた。症状は鼻漏、悪寒、発熱があり、症状期間は3日間であった。これらの症状は前年のSARS-CoV-2感染時よりも軽かった。 主な結果は以下のとおり。・2023年2月の検体採取時に得られた詳細な免疫データから、被験者はBA.2.86感染前では、COMMUNITYコホートと同程度の血清IgG値および鼻腔粘膜IgA値を有していたことが認められた。・BA.2.86感染から3週間後に得られた血清および粘膜検体を用いて、2023年2月に得られた検体と抗体応答について比較したところ、血清中のヌクレオカプシドIgG力価は36倍上昇していた。・野生株およびBA.5スパイクタンパク質に対する血清IgG結合は、2023年2月に得られた検体と比較して、BA.2.86感染後の検体では1.1倍および1.5倍だった。・一方、野生株およびBA.5スパイクタンパク質に対する粘膜IgA結合は、2023年2月に得られた検体と比較して、BA.2.86感染後の検体では3.6倍および3.4倍であり、血清IgGより強く誘導されていた。 本研究により、BA.2.86感染により抗体応答が大幅に増強されるという結果が得られた。著者らは、ワクチン接種を受けた免疫不全者や過去に感染したことのある正常な抗体レベルの人がBA.2.86に感染する可能性があることを裏付けており、BA.2.86が世界的な感染者急増を引き起こす可能性があることを指摘している。また、本研究では2月に検体を採取してから8月にBA.2.86感染と診断されるまでに6ヵ月が経過していたため、9月に抗体価が上昇する以前に抗体価が減少し、感染後の上昇率が過小評価されている可能性もあるという。

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インフルエンザワクチン接種率、コロナ前後でどう変化した?

 コロナ禍を経て、インフルエンザワクチン接種に対する意識はどう変化しただろうか。米国・ブリガム・ヤング大学のTy J. Skyles氏らによる研究の詳細が、Journal of Community Health誌オンライン版2023年9月11日号に報告された。インフルエンザワクチン接種率は12.4%から30.5%に増加 本研究では、同大学に通う440人の学生にアンケートを実施し、2007年のデータと比較した。アンケートでは、インフルエンザワクチン接種に対する意識の実態および過去16年間の変化の要因を調査した。また、回答者には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経験やCOVID-19によるワクチン接種への意識の変化についても質問した。 インフルエンザワクチン接種に対する意識の実態を調査した主な結果は以下のとおり。・大学生のインフルエンザワクチン接種率は、2007年の12.4%から2023年には30.5%に増加したことがわかった。・ワクチン未接種者の意識について、2007年と比較し、費用が28%、ワクチン接種によるインフルエンザ罹患への恐れが20%、副作用への恐れが17%、情報不足が15%、それぞれ低下した。・インフルエンザワクチン接種を避ける大きな要因としては、時間、利便性、ワクチン接種によるリスクが挙げられた。・医療提供者や保護者から受けるインフルエンザワクチン接種奨励の効果は薄れてきている。・COVID-19の流行はワクチンに対する考え方に変化をもたらし、ワクチン疲れが大きな要因となっている。・支持政党がインフルエンザワクチン接種の予測因子となり、保守派ほどワクチン接種をしない傾向があった。・個人の安全から公共の安全へと、関心が変化したことも認められた。

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心筋症を伴うATTRアミロイドーシス、パチシランが機能的能力を維持/NEJM

 心筋症を伴うトランスサイレチン型アミロイドーシス(ATTR心アミロイドーシス)患者において、パチシランは12ヵ月時の機能的能力を維持する。米国・コロンビア大学アービング医療センターのMathew S. Maurer氏らが21ヵ国69施設で実施中の国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「APOLLO-B試験」の結果を報告した。ATTRアミロイドーシスは、トランスサイレチンがアミロイド線維として心臓、神経、消化管、筋骨格組織に沈着することによって引き起こされる疾患で、心臓への沈着により心筋症が進行する。パチシランは、RNA干渉により肝臓におけるトランスサイレチンの産生を抑制し、遺伝性ATTRアミロイドーシス(トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー)患者における臨床試験において、ATTR心アミロイドーシスに対する有効性が示唆されていた。NEJM誌2023年10月26日号掲載の報告。18~85歳のATTR心アミロイドーシス患者360例が対象 研究グループは、心エコーによる拡張末期の心室中隔厚が12mmを超え心不全の既往のある18~85歳のATTR心アミロイドーシス患者を、パチシラン(0.3mg/kg、最大30mg)群またはプラセボ群に、ベースラインでのタファミジスの使用の有無、遺伝子型(変異型ATTR vs.野生型ATTR)、NYHA心機能分類クラス(IまたはII vs.III)および年齢(75歳未満vs.75歳以上)で層別化し、1対1の割合で無作為に割り付け、3週に1回12ヵ月間投与した。 主要エンドポイントは、12ヵ月時における6分間歩行距離のベースラインからの変化量、副次エンドポイントは、(1)カンザスシティ心筋症質問票の全体サマリースコア(KCCQ-OS、スコア範囲:0~100点、点数が高いほど健康状態とQOLが良好)のベースラインから12ヵ月時までの変化、(2)12ヵ月間における全死因死亡、心血管イベントおよび6分間歩行距離の変化の複合、(3)12ヵ月間の全死因死亡、あらゆる入院、心不全による緊急受診の複合とし、階層的手順を用いて検証した。 2019年10月~2021年5月に、計360例が登録されパチシラン群(181例)およびプラセボ群(179例)に無作為に割り付けられた。ベースラインから1年時までの6分間歩行距離の低下はパチシラン群で有意に少ない 12ヵ月時におけるベースラインからの6分間歩行距離の変化量は、パチシラン群-8.15m(95%信頼区間[CI]:-16.42~1.50)、プラセボ群-21.35m(-34.05~-7.52)で、群間差(Hodges-Lehmann推定差中央値)は14.69m(95%CI:0.69~28.69、p=0.02)であり、パチシラン群がプラセボ群より有意に小さかった。 12ヵ月時のKCCQ-OSスコアは、パチシラン群ではベースラインから増加し、プラセボ群では減少した(最小二乗平均差:3.7ポイント、95%CI:0.2~7.2、p=0.04)。全死因死亡、心血管イベントおよび6分間歩行距離の変化の複合は、両群で有意差は認められなかった。 有害事象は、パチシラン群91%(165/181例)、プラセボ群94%(168/178例)に発現した。パチシラン群での発現率が5%以上でプラセボ群より3%以上発現率が高かった有害事象は、注入に伴う反応、関節痛および筋痙縮であった。

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