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第198回 吸引して尿を調べるだけの手間いらずな肺がん診断法を開発

吸引して尿を調べるだけの手間いらずな肺がん診断法を開発初期肺がんの検診といえば低線量CT(LDCT)が標準となりつつあり、LDCT検診と肺がん患者の生存改善の関連が臨床試験で裏付けられています。しかしLDCTが普及している低~中所得国は少なく、普及している国であっても誰もが容易にLDCTを受けることができるというわけではありません。それに、本来不要な侵襲的検査を招く偽陽性も少なくはありません。そこで米国・マサチューセッツ工科大学(MIT)のSangeeta N. Bhatia氏らが率いるチームは、LDCTのような大掛かりな装置がなくとも初期肺がんを検出しうる簡便な検査法を開発し、その検査法で初期肺がんを正確に検出しうることをマウスでの検討で裏付けました1)。開発された検査は大きく分けて吸入と尿検査の2つの手順で構成されます。まず微粒子を吸入し、試験紙による尿検査でその微粒子由来の成分を検出します。吸い込む微粒子はポリマーの粒とそれを覆うDNAでできています。肺がんと関連するプロテアーゼによって切り離されたDNAは血中をめぐり、やがては尿中に排泄されて試験紙で検出することができます。初期肺がん(stageIの肺腺がん)と関連するプロテアーゼに対応する20種類の微粒子をヒトのような肺がんを発現するマウスに投与し、得られた測定結果を人工知能技術(機械学習)で解析したところ、最も正確な4種類が同定されました。その4種類の組み合わせの検出感度は84.6%、特異度は100%でした。開発された手段は非侵襲的で体を傷つける必要がなく、まず吸ってもらってしばらくしてから尿を採取するだけで事足ります。センサー役の微粒子は肺全体にくまなく行き届き、吸ってから尿検査までの時間もそれほどかかりません。マウスの検討では投与から2時間後に尿が採取されています。Bhatia氏らのチームはマウスの検討で見つかった4種類の組み合わせがヒトのがんも同様に検出しうるかどうかを、まずはヒトの生検検体を使って調べることを予定しています2)。がんの検出以外の使い道も検討されており、Bhatia氏らは肺炎の原因がウイルス、細菌、真菌のいずれなのかを同技術を利用して識別する取り組みを始めています3)。また、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などのほかの肺疾患の診断にも使えるかもしれません。Bhatia氏らは同技術の臨床試験をやがては実施することを目指していますが、同氏らが開発した似た技術による肝疾患2種・肝がんと非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の診断の検討はすでに臨床試験段階に至っています。ほかでもないBhatia氏を設立者の1人とするSunbird Bio社が第I相試験を実施しています2)。参考1)Zhong Q, et al. Sci Adv. 2024;10:eadj9591.2)Inhalable sensors could enable early lung cancer detection / Eurekalert3)How a Simple Urine Test Could Reveal Early-Stage Lung Cancer / MDedge

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脳梗塞再発予防薬のアンダーユースに介入【うまくいく!処方提案プラクティス】第57回

 脳梗塞後の再発予防薬として、その塞栓機序に基づいて抗血小板薬やDOACなどが用いられますが、出血などの問題から導入が見送りになっているケースもあります。脳梗塞が再発した場合の患者さんやその介護者への負担は大きなものとなるため、適応とならなかった原因やリスクの評価が必要です。今回は、再発予防薬のアンダーユース(本来使うべき薬が処方されていない)にどのように介入したかを紹介します。患者情報80歳 女性(個人在宅)基礎疾患アテローム性脳梗塞、高血圧症、認知症既往歴2ヵ月前に虚血性腸炎で入院、血便もあったため抗血小板薬を中止介護度要介護2訪問診療の間隔2週間に1回介護サービスの利用週2回、通所介護主な介護者同居の長女、胃瘻からの経管投与処方内容1.カンデサルタンOD錠4mg 1錠 分1 朝食後2.アムロジピンOD錠5mg 1錠 分1 朝食後3.ランソプラゾールOD錠15mg 1錠 分1 朝食後4.ピタバスタチンOD錠1mg 1錠 分1 朝食後5.ピコスルファート内用液 便秘時 適宜調節(未排便3日で10滴)本症例のポイントこの患者さんの通院には元々長女が同行していましたが、2ヵ月前の虚血性腸炎の入院を契機に訪問診療を利用することとなりました。当薬局もそのタイミングで介入となり、服薬管理や血圧の状況、排便状況のモニタリングを開始しました。気になるポイントとしては、血便をきっかけにアテローム性脳梗塞の再発予防薬が中止になっていたことです。薬局スタッフがOP(観察計画)として、抗血小板薬の再開について確認と計画を立てていました。しかし、この計画を立てた後のアクションがなく、そのままになっていたので、訪問時に血便や排便の状況を改めて確認することにしました。訪問時に長女に話を聞いたところ、退院後は血便は1回も出ておらず、排便コントロールもブリストル便形状スケール3〜4の正常便が連日出ていたことが確認できました。出血していた頃はスケール1〜2の硬便が出ていたことから、肛門口を傷つけていたのではないかと医師から話があったことも聴取できました。いずれにしても、すでに血便は解消しています。このまま抗血小板薬が再開されないことで脳梗塞の再発を招いた場合、高次機能障害から患者本人と介護者への負担が増大するというリスクを抱えていたため、医師への確認が必要だと判断しました。ブリストル便形状スケールによる便の性状分類画像を拡大する処方提案と経過医師にトレーシングレポートで、現状は排便に問題がなく、血便もないことを伝え、抗血小板薬の再開を検討してみてはどうか提案しました。医師より返事があり、出血や貧血もなく、再開をどうするか検討していたので次回の訪問診療で再開について家族に話をします、と返答がありました。また、薬剤師にこのようにリマインドしてもらえるのは、処方漏れを回避できるのでとても助かるとコメントをいただきました。その後、この患者さんはクロピドグレル錠を再開する予定でしたが、肝機能や血球系の副作用を懸念して、低用量アスピリンが開始となりました。今後は脂質の評価を行い、必要に応じてスタチンの導入を提案したいと考えています。

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急性冠症候群へのニトログリセリン、高齢者には有害?

 ニトログリセリンは急性冠症候群(ACS)の第1選択薬として長い間使用されてきたが、ACSの転帰改善のための使用を支持する研究は限られている。また、高齢患者の増加や、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と最適な薬物療法(OMT)などのACS管理の進歩により、PCI後の転帰におけるニトログリセリンの有効性を再評価する必要性が高まっている。今回、宮崎大学の小牧 聡一氏らが単施設での後ろ向き研究で検討した結果、とくに75歳以上の高齢患者においてPCI実施前のニトログリセリン投与が血圧低下および有害な臨床転帰と関連することが示された。Open Heart誌2024年1月11日号に掲載。 本研究は、2013年1月~2021年5月に宮崎県立延岡病院に入院したACS患者を対象とした単施設観察研究である。ACSに対するPCIを受けた患者947例について、PCI前にニトログリセリンを投与していた群(289例)としていなかった群(658例)に分け、1年以内の主要有害心血管イベント(MACE:全死亡、非致死的心筋梗塞、脳卒中、心不全による再入院の複合)の発生率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・PCI前の収縮期血圧の中央値(四分位範囲)は、ニトログリセリン投与群で132.0(110.0~143.5)mmHg、非投与群の134.0(112.0~157.0)mmHgより有意に低かった(p=0.03)。・多変量Cox回帰分析では、PCI前のニトログリセリン使用はMACEの発生率と独立した関連を示した(ハザード比:1.57、95%信頼区間:1.09~2.28、p=0.016)。・ACSに対するPCI後1年間のMACEの発生率は、患者全体においてニトログリセリン投与群で非投与群よりも有意に高かった(p=0.024)。しかし、この傾向は75歳以上でのみ認められ(p=0.002)、75歳未満では認められなかった(p=0.773)。

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バス運転手の危険運転に対する不眠症の影響

 近年、バス運転手の心身の健康問題に起因する交通事故が増加している。一般的な睡眠障害である不眠症は、交通事故リスクやメンタルヘルス問題、とくに運転行動に関連する不安や抑うつとの有意な正の相関を持つといわれている。しかし、バス運転手のみを対象に睡眠関連の問題とメンタルヘルスを調査した研究はほとんどなく、これらの問題が運転パフォーマンスにどのように影響するかはよくわかっていない。中国・同済大学のYujun Jiao氏らは、不眠症とメンタルヘルスがバス運転手の危険運転行動に及ぼす影響を調査し、不眠症、不安、抑うつ、危険運転行動の4つの変数の相互作用を評価した。Accident Analysis & Prevention誌2024年2月号の報告。 中国・蘇州市のバス会社に勤務するバス運転手1,295人を対象にアンケート調査を実施した。不眠症、不安、抑うつに関するデータは、専門的なメンタルヘルス尺度に基づき自己申告で収集し、危険運転行動は、ドライバー行動アンケート(Driver Behavior Questionnaire)を用いて測定した。バス運転手の不眠症、不安、抑うつ、危険運転行動との関連を評価するため、2つの媒介分析と1つの連鎖媒介分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・31歳未満、バスの運転経験が11年以上、3年以内に交通事故や交通違反に関与したバス運転手は、不眠症、不安、抑うつ、危険運転行動がより重度であった。・4つの変数には、有意な正の相関と相互作用が認められた。・とくに変数間の相互作用が認められた項目は、次の3つであった。 1. 不眠症と危険運転行動に媒介される不安 2. 不眠症と危険運転行動に媒介される抑うつ 3. 不安は主に抑うつを通じて危険運転行動に影響する 著者らは、「バス運転手に対する定期的な身体的および精神的な健康状態の検査は重要であり、不眠症やメンタルヘルスに焦点を当てた介入は、バス運転手の危険運転行動を直接的および間接的に減少させるうえで役立つ可能性がある」としている。

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プラチナ治療歴のある進行TN乳がんの維持療法、オラパリブ±デュルバルマブが有効(DORA)

 プラチナ製剤ベースの化学療法に感受性のある進行トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する維持療法として、オラパリブ±デュルバルマブの有効性を検討した第II相DORA試験において、デュルバルマブ併用/非併用のいずれの群も化学療法による維持療法のヒストリカルコントロールより無増悪生存期間(PFS)が長く、BRCA野生型プラチナ製剤感受性の進行TNBCの患者集団において、化学療法なしの維持療法で持続的な病勢コントロールが可能なことが示唆された。シンガポール・国立がんセンターのTira J. Tan氏らがClinical Cancer Research誌オンライン版2024年1月18日号で報告した。 本試験は国際多施設第II相試験で、プラチナ製剤ベースの化学療法による1次治療もしくは2次治療で病勢安定(SD)持続または完全/部分奏効(CR/PR)が得られたTNBC(エストロゲン/プロゲステロン受容体発現率10%以下)患者を対象とし、オラパリブ単独群(オラパリブ300mg1日2回)とデュルバルマブ併用群(4週ごとにデュルバルマブ1,500mgを併用)に1:1で無作為に割り付けた。主要評価項目はPFSで、化学療法を継続するヒストリカルコントロールと比較した。 主な結果は以下のとおり。・計45例をオラパリブ単独群23例、デュルバルマブ併用群22例に無作為に割り付けた。・追跡期間中央値9.8ヵ月の時点で、無作為化からのPFS中央値はオラパリブ単独群で4.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:2.6~6.1)、デュルバルマブ併用群で6.1ヵ月(同:3.7~10.1)であり、いずれもヒストリカルコントロールより有意に長かった(順にp=0.0023、p<0.0001)。・臨床的有用率(SDが24週以上またはCR/PR)は、オラパリブ単独群で44%(95%CI:23~66)、デュルバルマブ併用群で36%(同:17~59)であった。・生殖細胞系列BRCA遺伝子変異やPD-L1発現にかかわらず、持続的な臨床的有用性が認められ、とくにオラパリブ単独群ではプラチナ製剤の前治療に対するCR/PRと関連する傾向がみられた。・安全性に関する新たなシグナルは報告されなかった。

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ERCP後膵炎予防、インドメタシン単独の効果は?/Lancet

 内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)施行後の膵炎のリスクが高い患者における膵炎予防では、標準治療である非ステロイド性抗炎症薬インドメタシン+予防的膵管ステント留置の併用と比較して、インドメタシン単独投与は非劣性に至らないだけでなく予防効果が劣ることが、米国・サウスカロライナ医科大学のB. Joseph Elmunzer氏らの検討で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2024年1月11日号に掲載された。北米20施設の無作為化非劣性試験 本研究は、米国とカナダの20施設で実施した無作為化非劣性試験であり、2015年9月~2023年1月に患者を登録した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。 年齢18歳以上、ERCP後膵炎のリスクが高く、膵炎予防として膵管ステント留置を要する患者1,950例(ITT集団)を登録し、予防的膵管ステント留置を行う群に975例(平均年齢55.8歳、女性61.1%)、これを行わない群に975例(55.6歳、61.4%)を無作為に割り付けた。全例にインドメタシン(50mg坐剤×2個)の直腸内投与を行った。 主要アウトカムは、ERCP後膵炎とした。ITT集団とper-protocol(PP)集団の双方において、ERCP後膵炎発生の差の、両側95%信頼区間(CI)の上限値が5%未満の場合に非劣性と判定することとした。ITT集団、PP集団の双方で非劣性を示せず ITT集団では、ERCP後膵炎は、インドメタシン単独群が975例中145例(14.9%)、インドメタシン+膵管ステント留置群は975例中110例(11.3%)で発生し、両群間のリスク差は3.6%(95%CI:0.6~6.6)と、インドメタシン単独群のインドメタシン+膵管ステント留置群に対する非劣性は確認できなかった(非劣性のp=0.18)。 PP集団(1,728例)でも、同様の結果であった(ERCP後膵炎:単独群14.4% vs.併用群11.6%、リスク群間差:2.8%、95%CI:-0.3~6.0)。 一方、ERCP後膵炎の発生率に関する両群間のリスク差の事後的なITT解析では、インドメタシン+膵管ステント留置群と比較して、インドメタシン単独群で劣ることが示された(p=0.011)。安全性アウトカムには差がない サブグループ解析では、主要アウトカムに関する膵管ステント留置の相対的な有益性を、ほとんどのサブグループでほぼ一貫して認め、膵炎リスクが最も高い患者(リスクスコア≧3)で有益性がより顕著であった(リスク群間差:13.7%、95%CI:1.8~25.6)。この集団における1件のERCP後膵炎の予防に要する治療必要数(NNT)は7(95%CI:4~56)だった。 ITT集団における安全性アウトカム(重篤な有害事象[単独群36.4% vs.併用群36.1%、リスク群間差:-0.3%、95%CI:-4.6~4.0]、ICU入室率[3.0% vs.4.0%、-1.0%、-2.7~0.6]、平均入院期間[3.2日vs.2.9日、0.4日、-0.3~1.0])は両群間に差がなかった。 著者は、「これらの知見は、エビデンスがないにもかかわらず、予防的膵管ステント留置を行わない傾向が広まっている最近の状況に異議を唱えるものである」としている。

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スパイクバックス筋注の新規剤形、0.5mLバイアル製剤を承認申請/モデルナ

 Moderna(米国)の日本法人モデルナ・ジャパンは、2024年1月19日付のプレスリリースで、同日に新型コロナウイルスワクチン「スパイクバックス筋注」の新規剤形を、厚生労働省に承認申請したと発表した。 今回申請した新規の剤形は以下のとおり。・0.5mLバイアル製剤 この新規剤形は、2023年9月に開始された予防接種法上の特例臨時接種において使用されることはない。 モデルナ・ジャパンは、新型コロナウイルス感染症の感染状況が地域によっては第10波に入ったともいわれているため、1年を通した感染状況のモニタリングや、とくに高齢者や免疫不全といったリスクの高い人のワクチン接種の重要性について引き続き啓発していきたい、としている。

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冬の食中毒で多いノロウイルス

冬季に多い食中毒(ノロウイルス感染症)■冬季の食中毒の原因と症状ノロウイルスが原因となることが多く、おもにウイルスに感染した人の調理による食材からの食品汚染で経口感染、拡大します。また、ウイルスを蓄積したカキなどの二枚貝(非加熱で喫食)も原因となります。【潜伏期間】感染後、24~48時間で発症【主な症状】吐気、嘔吐、下痢、腹痛、軽い発熱。通常1~2日程度継続。(感染しても無症状、程度が軽い場合もあります)【ウイルスの拡大】ウイルスは感染してから1週間程度ふん便中に排泄され続けます。これは無症状の人でも同様です。治療:ノロウイルス感染症の治療は対症療法しかありません!予防:ノロウイルス感染症の予防では、「手洗い」「よく加熱」「次亜塩素酸ナトリウム溶液での消毒(アルコール消毒が効きません)」が3本柱になります。東京都健康安全研究センターホームページより引用(2024年1月12日閲覧)https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2023/12/07/07.htmlCopyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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猫はペストを駆逐し、文豪の心を掴んだ、2024年は猫祭りの年だ!【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第68回

第68回 猫はペストを駆逐し、文豪の心を掴んだ、2024年は猫祭りの年だ!2024年を迎えました。明けましておめでとうございます。猛威を振るった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)も、徐々に制圧されてきました。今年は正常な社会活動を取り戻すことを願っております。2024年に開催される大きなイベントをご存じでしょうか。私が思い浮かべるのは、パリで開催されるオリンピックではなく、「イーペルの猫祭り」です。これは、ベルギーのフランドル地方の街イーペルで3年に1度、5月に開催される祭りです。世界中の猫好きが街を埋め尽くします。猫耳を付けて仮装した子供から大人、世界各地で人気の猫のキャラクターがパレードする様子は楽しげです。私は残念ながら参加したことはなく、近い将来に行進の先頭に立つ日を夢見ております。祭りのクライマックスは、街にそびえる高さ70mの鐘楼から蒔くように投げられる猫のぬいぐるみをゲットすることです。幸福のぬいぐるみといわれています。イーペルの猫祭りのパレードcirdub:CC BY-SA猫の愛好家の方々に正直にお伝えしますが、この祭りは必ずしも猫に対する愛情を表現する場ではなかったのです。鐘楼から猫を投げた行事が祭りの起源とのことです。このような動物虐待に当たる行為が現在は禁止されていることは当然ですが、1817年までは本物の猫が投げられていたとする資料もあるそうです。この祭りの背景には、猫と魔女や魔術との関係があります。中世ヨーロッパでは、魔女狩りと称し無実の人々が死刑に処されました。猫が魔女の手先とみなされ、猫を殺害することで悪霊を祓うという儀式が存在したのです。中世末からルネサンス期のヨーロッパでは、ペスト(黒死病)が大流行し、人口の3分の1が死亡したといわれます。ペストの蔓延は、猫を殺し過ぎたために鼠が大繁殖したことも一因とされています。人々が猫を飼うようになり、ペストの流行も収まったといわれています。鼠を捕まえる猫は、都市の人々を感染症の危機から救ってくれる価値ある存在へと変化しました。このような猫に対する陰と陽の複雑な気持ちが凝縮された祭りが「イーペルの猫祭り」です。ペストのパンデミックから人々を解放した猫をリスペクトして、猫を題材にした文学作品を紹介し、「ケアネットの猫祭り」を開催したいと思います。すべては私の主観によるものです。『源氏物語』紫式部光源氏が41歳のときに、15歳ほど年下の女三の宮を正妻として迎えます。女三の宮のもとで飼われていた猫がじゃれ合って、つないでいた紐が絡まり、外と室内を隔てていた御簾が引き上げられます。当時の貴族の女性には、不用意に男性に顔を見られるということは禁忌ですが、女三の宮は柏木という男性に姿を見られてしまいます。柏木は、女三の宮の美しい姿に恋心を募らせ密通に及びます。ありがちな源氏物語のドロドロです。その後、女三の宮は柏木の子を出産し、光源氏は他人の子を我が子として抱くのです。このような大事件を引き起こす大役を猫に与える紫式部のセンスの良さが光ります。このように、最古の恋愛長編小説にも猫は登場します。現代の文豪にも愛される理由ですね。『吾輩は猫である』夏目 漱石誰もが最初に思い浮かべる猫の文学はこれです。漱石自身がモデルである英語教師の主人が飼うのが「吾輩」です。猫による人間観察の視点で書かれた本書は、時を経ても常に新鮮です。一番有名なのは、新潮文庫から出版されている文庫本です。昭和36年刊行で、123刷、200万部超の金字塔です。『吾輩も猫である』赤川 次郎・新井 素子・石田 衣良・荻原 浩・恩田 陸・原田 マハ・村山 由佳・山内 マリコ先に『吾輩は猫である』を紹介したのは、この『吾輩も猫である』を紹介したかったからです。夏目 漱石没後100年&生誕150年記念で企画された新潮文庫です。8人の超人気作家による猫アンソロジーです。アンソロジーとは、同一の主題の下にまとめられた諸作家の選集を意味します。猫好き作家陣が『吾輩は猫である』を模しながらも超越しようと挑む作品集です。「ねね、ちょっと、私だって猫なんですけどぉ~。名前はまだ無いんですけどぉ~」といった感じです。各々が短編で読みやすいです。電車に乗ると、乗客全員がスマホの画面を凝視している様子に不気味さを感じることはありませんか? その車内で文庫本のページをめくる貴方は素敵です。その場面で手にするのに相応しい一冊です。『100万回生きたねこ』佐野 洋子100万回死んで、生き返って、いろんな飼い主に愛された猫の話の絵本です。「死ぬのなんか平気だった」がキーフレーズです。野良猫となり自由を得て、自分が愛したシロ猫に愛された猫は、再び生き返ることはなかったのです。さまざまな人生の苦労を体験した大人には意味深いストーリーですが、この内容をしみじみと語り感動する子供は少し怖いかもしれません。この本を幼少期に読むことよりも、この本の良さを理解できる大人に成長することを願います。この本のタイトルを、『100万回死んだねこ』と間違って記憶している人が多いので注意しましょう。本書をモチーフとして、13名の著名な作家により執筆された『100万分の1回のねこ』が、講談社文庫から出版されています。これも一読に値します。『What's Michael?』小林 まこと踊る猫・マイケルを主人公にした漫画です。この本を読んでいない猫好きは、バイブルを手にしたことのないキリスト教徒のごときです。「ワッツ マイケル?」ではなく、「ホワッツ マイケル?」と発声することによって通を装うことが可能となります。何巻も続くのですが、第1巻の第1話で、マイケルがマンションの高層階から転落死するのは驚きです。ゾンビの如く復活することは当然です。マイケルが、何かを失敗した時に誤魔化すように踊る姿は秀逸です。『猫と庄造と二人のをんな』谷崎 潤一郎猫を溺愛している愚かな男である庄造、猫に嫉妬し追い出そうとする庄造の妻の福子、男への未練から猫を引き取って男の心をつなぎとめようとする庄造の元妻の品子、この3人の複雑な人間関係を描いた作品です。三者三様の痴態を通じて、猫の小悪魔的な魅力が伝わります。晩年に、溺愛していたペルシャ猫「ペル」を亡くし、剥製にして残し書斎に置いていた話は有名です。兵庫県芦屋市にある谷崎潤一郎記念館に、私もこの剥製を見学にいきました。自分には真似できない世界だと感じました。谷崎 潤一郎が雌猫しか飼わず、猫よりも魅力的な女性に出会ったことがないと語る領域は一線を越えていると感じます。文化勲章受章者たりうるには常識を超越することが必要なのでしょう。この原稿を書いた後の、2024年1月1日に能登半島地震が発生しました。地震とその関連の事故によって犠牲になられたすべての方々にお悔やみを申し上げます。私の実家は石川県金沢市ですが、幸いにも被害はありませんでした。私にも能登地域に多くの知人がおります。被災者の方々に心よりお見舞い申し上げ、皆さまの安全と1日も早い復興をお祈りしております。

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第178回 COVID-19の後遺症、倦怠感が最多、女性に多く発症

<先週の動き>1.COVID-19の後遺症、倦怠感が最多、女性に多く発症2.大学病院勤務医の教育・研究の「研鑽」は労働時間と通知/厚労省3.保険医療機関に対する指導・監査、不正請求で19.7億円返還/厚労省4.救急車の過剰利用に対策、非入院患者に7,700円徴収開始/松坂市5.脳神経外科の不適切な手術記録や説明不十分な日赤病院に対して改善指示/京都市6.糖尿病を見落とし患者死亡、神戸徳洲会病院に改善命令/神戸市1.新型コロナウイルス感染症の後遺症、倦怠感が最多、女性に多く発症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者が国内で初めて確認されてから4年が経過し、ウイルス感染後の後遺症が重要な課題となっている。世界保健機関(WHO)は「症状が少なくとも2ヵ月以上続き、ほかの病気の症状として説明がつかないもの」と定義し、通常はCOVID-19発症から「3ヵ月たった時点にもみられるもの」とされている。後遺症には疲労感、呼吸困難、集中力の低下など200以上のさまざまな症状が報告されており、北野病院の調査によると、後遺症患者のうち女性は68.8%で、男性は31.2%と女性が多かった。とくに働き盛りの年代で発症しやすい傾向があることが判明している。後遺症の原因としては、持続感染、免疫機能の異常、腸の具合の悪化などが指摘されている。また、後遺症の患者の約7割が女性であり、主な症状には倦怠感が最も多いことがわかってきた。後遺症のメカニズムについて、免疫機能に関わる物質の変化や、コルチゾールの減少、リンパ球の増加、ヘルペスウイルスの再活性化などが関連していることが示されている。ただ、後遺症の予防には、ワクチン接種が有効であり、ワクチン接種によって後遺症の発症を抑える効果があることが報告されている。一方で、治療法はまだ確立されておらず、対症療法が主になっている状況。後遺症の患者支援に、時短勤務や産業医の支援などが必要とされている。参考1)新型コロナ 国内で初確認から4年 感染と後遺症への対策が課題(NHK)2)多様なコロナ後遺症 国内発生4年 不明だった実態、徐々に明らかに(朝日新聞)3)コロナ後遺症、発症者の7割が女性 倦怠感が最多 民間病院調査(毎日新聞)4)働き盛りの女性がコロナ後遺症になりやすく 予防するには?(同)2.大学病院勤務医の教育・研究の「研鑽」は労働時間と通知/厚労省厚生労働省は、1月15日に「大学病院に勤務する医師の教育・研究活動に関連する「研鑽」を労働時間に含めるべき」とする通知を改正した。これは、医師の働き方改革の一環として行われたもので、2024年4月から勤務医の時間外労働に上限が設けられることに伴う措置。改正された通知では、大学病院勤務医の教育・研究活動が本来の業務に含まれることを明示し、これに関連する研鑽も労働時間に該当するとされた。具体的には、医学部生への講義、試験問題の作成・採点、学生の論文指導、入学試験や国家試験に関する事務などが含まれる。この改正は、教育・研究活動が自己研鑽として扱われることによる時間外労働の問題を解決するためのもので、医師と上司間のコミュニケーションを重視し、正しい理解を促すことを目的としている。参考1)医師等の宿日直許可基準及び医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方についての運用に当たっての留意事項について」の一部改正について(厚労省)2)医師等の宿日直許可基準及び医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方についての運用に当たっての留意事項について」の一部改正について 新旧対照表(同)3)大学病院勤務医、教育・研究の「研鑽」は労働に該当 厚労省が明示(朝日新聞)3.保険医療機関に対する指導・監査、不正請求で19.7億円返還/厚労省厚生労働省は、2022年度の保険医療機関と薬局に対する指導・監査の結果、不正請求などで保険指定が取り消された施設は計18件(取り消し相当を含む)であったことを明らかにした。厚労省の指導・監査によって、医療機関や薬局からの返還総額は約19.7億円となり、コロナ感染拡大の影響もあり前年度からは約28.7億円減少していた。取り消し処分を受けた施設の内訳は、医科7件、歯科9件、薬局2件で、医療保険者や医療機関の従事者からの通報・情報提供が処分のきっかけとなったケースが多かった。また、保険医や保険薬剤師の登録取り消しは計14人に上った。不正請求の内容は架空請求、付増請求、振替請求など多岐にわたり、監査は診療内容や診療報酬の請求に不正やいちじるしい不当が疑われる場合に実施された。指導・監査の実施件数は、個別指導が1,505件、新規個別指導が6,742件、適時調査が2,303件、監査が52件となっている。参考1)令和4年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況について(厚労省)2)保険医療機関・薬局の指定取消計18件 22年度、返還19.7億円(CB news)3)不正請求等で18件・14人の医師等が保険指定取り消し等の処分、診療報酬20億円弱を返還-2022年度指導・監査(Gem Med)4.救急車の過剰利用に対策、非入院患者に7,700円徴収開始/松坂市三重県松阪市は、2024年6月1日から、市内の3つの基幹病院(松阪中央総合病院、済生会松阪総合病院、松阪市民病院)に救急搬送されたが入院に至らなかった患者に対し、保険適用外の「選定療養費」として1件あたり7,700円(税込み)を徴収することを発表した。この措置は、救急車の過剰利用に歯止めをかけるために行われる。松坂市の救急車の出動件数は、2023年に過去最多の1万6,180件に達し、市は現行の医療体制が限界に近付いていると判断した。この新しい制度は、軽症者に救急車以外の選択肢を促し、医療従事者の負担軽減と緊急患者への適切な医療提供を目指している。ただし、紹介状を持参した患者や公費負担医療制度の対象者、医師の判断で必要とされる場合は徴収対象外とされる。参考1)6月から1件7,700円を徴収 救急車“便利使い”歯止め 三重・松阪市(夕刊三重)2)救急車はもはや“有料化”すべき? 出動件数「過去最高」というハードな現実、賛否渦巻くワケとは(Merkmal)3)三重・松坂の救急搬送、入院しなかったら「7,700円」徴収へ…出動急増で「助かる命が助からない」(読売新聞)5.脳神経外科の不適切な手術記録や説明不十分な日赤病院に対して改善指示/京都市京都市の京都第一赤十字病院の脳神経外科で、手術の説明や記録が不十分だった事例が発覚し、京都市は同病院に対して改善を求める行政指導を行った。この問題は、病院関係者からの通報を受け、京都市が立ち入り検査を実施した結果、明らかになったもの。市の調査では、脳腫瘍やくも膜下出血などの手術において、患者や家族への説明の不備や、医療安全管理委員会への報告不足が確認された。さらに、手術や治療後に患者が死亡した12件の重大なケースについても、市は再検証を要求している。京都第一赤十字病院は、行政指導を真摯に受け止め、適切に対応する意向を示している。参考1)手術説明不十分、京都第一赤十字病院に行政指導 患者死亡の重大事例12件も(産経新聞)2)京都第一赤十字病院、手術の説明や記録で不適切対応 京都市が行政指導(京都新聞)3)手術の説明や記録不十分 京都市が病院に改善求める行政指導(NHK)6.糖尿病を見落とし患者死亡、神戸徳洲会病院に改善命令/神戸市神戸市の神戸徳洲会病院で、70代の男性患者が糖尿病の治療を受けずに死亡した問題について、神戸市は医療法に基づく改善命令を出す方針を固めた。この患者は新型コロナウイルス感染症に感染し、肺炎の悪化により一時的に大学病院に転院した後、徳洲会病院に戻ったが、糖尿病の持病があるにも関わらず、主治医である院長がこれを見落とし、インスリンの投与などの必要な治療が行われていなかった。同病院は、この事態を内部で検証したが、結論を出さずに放置していたとされている。神戸徳洲会病院は、以前から安全管理体制に問題があり、昨年8月にはカテーテル治療を受けた別の患者が複数死亡した事件に関連して行政指導を受けていた。兵庫県内で医療法に基づく改善命令が出されるのはこれが初めて。参考1)糖尿病既往歴見落とし、入院患者死亡 神戸徳洲会病院に改善命令へ(毎日新聞)2)神戸徳洲会病院に市が改善命令へ 入院患者に糖尿病治療行わず(NHK)

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事例040 特定疾患処方管理加算の漏れ【斬らレセプト シーズン3】

解説診療所のレセプト点検にてよく指摘させていただく事例です。主病の「高コレステロール血症」は、「B000 特定疾患療養管理料」(以下「管理料」)算定対象です。「高コレステロール血症」に対する投薬があれば「F400 注4・注5 特定疾患処方管理加算」(以下「加算」)が算定できます。投与日数が28日分以上であるので「加算」2が月1回算定できます。同月に「加算」1を算定していた場合には、「加算」1を取り消して「加算」2を算定します。この「加算」の算定要件は、生活習慣病などの厚生労働大臣が別に定める疾患(告示「特掲診療料の施設基準等」別表第1)を主病とする患者について、プライマリケア機能を担う地域のかかりつけ医師が計画的に療養上の管理(全身管理)を行うことを評価した「管理料」と同じです。対象疾病に対する投薬があれば必ず算定ができます。事例では、「高コレステロール血症」が別表1に表示されていないから算定ができないと誤解されていました。別表第1には、結核、悪性新生物など、32の病名が表示されています。この病名は「疾病、傷病及び死因の統計分類基本分類表(ICD-10)」から設定された3桁の病名分類です。この下位に続く傷病名が「管理料」と「加算」の対象となります。「高コレステロール血症」は、別表第1に示された「E78 リポ蛋白代謝障害及びその他の脂質血症」の下位「E78.0 純正型高コレステロール血症」に分類されて該当となります。また、医療機関で呼称される疾病名が異なっていても、医学的内容が同様である場合は対象となりますが、できる限り標準病名を使用することが望ましいとされています。

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ビタミンDは高齢者の風邪を減らせるか、RCTで検証

 毎日のビタミンD補給がビタミンD欠乏症において急性呼吸器感染症のリスクを低下させたという報告がある一方で、異なる集団・条件下で行われた試験では無効という結果が報告されている。米国・ハーバード大学医科大学院のCarlos A. Camargo氏らは、ビタミンDとオメガ3脂肪酸の補給に関する無作為化二重盲検プラセボ対照試験(VITAL)のデータを用いて高齢者の上気道感染症リスクに対するビタミンD補給の影響を評価した。Clinical Infectious Diseases誌オンライン版2023年12月19日号への報告。 VITAL試験は、心血管疾患やがんなどの既往のない健康な男性(50歳以上)および女性(55歳以上)が対象。事前に指定された本分析では、ベースライン時における血清25-ヒドロキシビタミンD(25[OH]D)値が利用可能な参加者1万5,804人(61%)を対象に、ビタミンD3補給群(2,000IU/日)とプラセボ群が比較された。主要アウトカムは1年の追跡調査時における自己報告による最近の上気道感染であった。 主な結果は以下のとおり。・参加者の平均年齢は68歳、51%が女性、76%が非ヒスパニック系白人、16%が黒人、8%がそのほかの人種/民族であった。・ベースライン時点で、平均血清25(OH)D値は31ng/mLであり、377人(2.4%)で<12ng/mLであった。・最近の上気道感染はビタミンD3補給群で816件(10.8%)、プラセボ群で858件(11.5%)報告され、ビタミンD補給の効果は有意ではなかった(オッズ比[OR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.86~1.06)。・最近の上気道感染のORは、血清25(OH)D値がベースラインで高かった集団(OR:0.92~1.00)と比較して<12ng/mLの集団(OR:0.64)では低かったが、その差は有意ではなかった(交互作用のp=0.30)。・事前に規定されたサブグループ(血清25[OH]D値<12ng/mLでビタミンD補給なし、255人)における最近の上気道感染のORは低かったが、有意な差はみられなかった(OR:0.60、95%CI:0.28~1.30)。・ほかのサブグループにおける効果修飾因子を評価するための統計学的検出力は限定的であった。 著者らは、「ビタミンD欠乏症の有無によって選別しない健康な高齢者全体において、ビタミンD補給は上気道感染症リスクを低下させなかった」とし、「効果がサブグループ間で異なるかどうかについては、さらなる研究が必要」としている。

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初発統合失調症の臨床症状改善とBMIとの関連

 統合失調症患者は、一般集団と比較し、肥満の有病率が高いことが知られている。これまでの研究では、統合失調症患者における体重増加は、抗精神病薬に対する治療反応と関連していることが報告されている。しかし、統合失調症患者のBMIと治療効果との関連は依然としてよくわかっていない。中国・北京大学のXiaofang Chen氏らは、初回エピソードおよび抗精神病薬未治療の統合失調症患者におけるベースライン時のBMIと抗精神病薬治療による臨床症状改善効果との関連を調査するため、本研究を実施した。その結果、統合失調症患者のベースライン時のBMIは、その後の陰性症状改善と関連している可能性が示唆された。Frontiers in Pharmacology誌2023年11月9日号の報告。 対象は、初回エピソードおよび抗精神病薬未治療の統合失調症患者241例。12週間のリスペリドン治療を実施した。症状重症度の評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いた。BMIは、ベースライン時および12週間のフォローアップ時に測定した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬治療により、初回エピソードおよび抗精神病薬未治療の統合失調症患者の体重は増加した。・12週間の抗精神病薬治療後、ベースライン時のBMIと陰性症状改善との間に負の相関が確認された(r=-0.14、p=0.03)。・線形回帰分析では、ベースライン時のBMIは、統合失調症の初期段階において抗精神病薬リスペリドンに対する治療反応の独立した予測因子であることが示唆された。

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妊娠高血圧腎症予防のCa補充、低用量vs.高用量/NEJM

 妊娠中のカルシウム補充について、低用量(500mg/日)は高用量(1,500mg/日)に対し、妊娠高血圧腎症のリスクに関して非劣性を示したことが、インドとタンザニアでそれぞれ行われた無作為化試験の結果で示された。また、早産のリスクに関して、インドの試験では非劣性であったが、タンザニアの試験では同様の所見は示されなかったという。インド・St. John's Research InstituteのPratibha Dwarkanath氏らが報告した。世界保健機関(WHO)は、妊娠高血圧腎症のリスク軽減のため、食事からのカルシウム摂取量が少ない住民集団の妊婦に対して、1日1,500~2,000mgのカルシウムを3回に分けて補充するよう推奨している。しかし、服薬アドヒアランスへの懸念と複雑な投与計画に伴う高コストのプログラムのために、現状では高用量カルシウム補充を実施している国は数ヵ国にとどまるという。NEJM誌2024年1月11日号掲載の報告。インド、タンザニアで各1.1万例を対象に無作為化試験 研究グループは、妊娠中の低用量カルシウム補充の有効性と安全性に関する先行研究(対高用量、対プラセボ)の結果を踏まえ、妊娠高血圧腎症と早産の発生率に関して、低用量補充と高用量補充の有効性は同等であるとの仮説を立て検証試験を行った。インドとタンザニアでそれぞれ独立した無作為化試験を行い、カルシウム補充500mg/日群の同1,500mg/日群に対する非劣性を評価した。 各試験の主要アウトカムは、妊娠高血圧腎症と早産で、相対リスクに関する非劣性マージンを妊娠高血圧腎症は1.54、早産は1.16とした。 インドの試験では、2018年11月~2022年2月に女性3万3,449例がスクリーニングを受け、妊婦1万1,000例(500mg/日群5,497例、1,500mg/日群5,503例)が登録された。タンザニアの試験では、2019年3月~2022年3月に女性4万5,186例がスクリーニングを受け、妊婦1万1,000例(5,503例、5,497例)が登録された。妊娠高血圧腎症について低用量群の非劣性を確認 妊娠高血圧腎症の累積発生率は、インドの試験では500mg/日群3.0%、1,500mg/日群3.6%(相対リスク:0.84、95%信頼区間[CI]:0.68~1.03)、タンザニアの試験では500mg/日群3.0%、1,500mg/日群2.7%(相対リスク:1.10、95%CI:0.88~1.36)であり、両試験で低用量群の非劣性が確認された。 早産の割合は、インドの試験では500mg/日群11.4%、1,500mg/日群12.8%(相対リスク:0.89、95%CI:0.80~0.98)で、非劣性のマージン(1.16)以内であったが、タンザニアの試験では500mg/日群10.4%、1,500mg/日群9.7%(相対リスク:1.07、95%CI:0.95~1.21)で、非劣性マージンを超えていた。

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周産期うつ病、家族要因を問わず死亡リスク増大/BMJ

 スウェーデン・カロリンスカ研究所のNaela Hagatulah氏らは、同国の全国規模の住民ベース適合コホート試験の結果、周産期うつ病と診断された女性では、家族的要因を考慮してもとくに診断直後の1年間の自殺による死亡リスクが増加していたことを報告した。周産期うつ病は、妊娠に伴い最もよくみられる合併症の1つで、出産前後の女性の罹患率は最大で20%と報告されている。産後精神障害(精神病性障害、感情障害、不安障害など)を有する女性は、それらの影響を受けなかった女性や一般の女性集団と比べて死亡リスクが高いことが報告されているが、産前を含む周産期うつ病との関連についてエビデンスは限定的であった。また、家族内で共有する要因が周産期うつ病や自殺による死亡リスクの増加に寄与する可能性も指摘されているが、検討された試験データはなかった。著者は今回の結果を踏まえて、「周産期うつの影響を受けた女性、その家族、医療従事者は、これら周産期うつ病後の重大な健康リスクを認識する必要がある」と提言している。BMJ誌2024年1月10日号掲載の報告。スウェーデンで行われた追跡期間18年間のコホート試験 研究グループは、周産期うつ病を発症した女性は、発症していない女性、および実の姉妹と比較して、死亡リスクの上昇が認められるかを調べるため、スウェーデンの全国規模の健康レジスターを活用して、国民ベースの適合コホート試験を行った。姉妹の比較のために共有する家族の交絡因子の調節も行った。 レジスターの対象期間は2001年1月1日~2018年12月31日。対象被験者は、出産時の年齢と暦年で適合し特定した初めて周産期うつ病と診断され、専門的ケアと抗うつ薬の投与を受けた女性8万6,551人と、周産期うつ病に罹患しなかった女性86万5,510人であった。家族の交絡因子を調節するため、対象期間中に1人以上の単児出産をした実の姉妹27万586人(周産期うつ病罹患女性2万4,473人、非罹患の実姉妹24万6,113人)との比較も行われた。 主要アウトカムは、あらゆる要因による死亡。副次アウトカムは、死因別の死亡(すなわち、不自然および自然な死因)とした。 多変量Cox回帰法を用いて、交絡因子を考慮し、周産期うつ病の罹患女性と非罹患女性および姉妹を比較した死亡ハザード比を推算。周産期うつ病の経時的パターン、周産期うつ病発症の産前と産後の違いも検討した。死亡リスクは2.11倍、産後うつ発症者でリスクが高い 最長18年間の追跡調査において、周産期うつ病と診断された女性522人の死亡(1,000人年当たり0.82人)が報告された(年齢中央値31.0歳[四分位範囲[IQR]:27.0~35.0])。 周産期うつ病を罹患した女性は、非罹患女性と比較して死亡リスクの増大と関連していた(補正後ハザード比[HR]:2.11(95%信頼区間[CI]:1.86~2.40)。同様の関連は、精神障害の既往ありの女性となしの女性の間でも報告された。また、死亡リスクは、うつ病発症が産後の場合のほうが、産前の場合よりも高かった(HR:2.71[95%CI:2.26~3.26] vs.1.62[1.34~1.94])。姉妹間の比較においても、周産期うつ病について同様の関連性が認められた(2.12[1.16~3.88])。 関連性は、周産期うつ病発症後1年以内に最も顕著であり、追跡調査開始後18年間にわたり継続していた。 周産期うつ病の女性において、死亡リスクの増加は、死因を問わず関連が認められ(不自然な死因のHR:4.28[95%CI:3.44~5.32] vs.自然な死因のHR:1.38[95%CI:1.16~1.64])、その中で自殺の件数は少なかったが(1,000人年当たり0.23)、関連性は最も強かった(6.34[4.62~8.71])。

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耳かきによる外耳道がん、利き手側に多い【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第249回

耳かきによる外耳道がん、利き手側に多いUnsplashより使用耳かきをし過ぎると、外耳道がんのリスクが上昇するということが知られています。右利きの人は、右耳を重点的に掃除しやすく、左利きの人は左耳を重点的に掃除しやすいそうです。確かに、利き腕側の穴のほうがきれいに掃除できる気がする…。ホジホジ。ということは、利き腕側に外耳道がんが発生しやすいということでしょうか。それを調べた研究を紹介しましょう。Tsunoda A, et al. Right dominance in the incidence of external auditory canal squamous cell carcinoma in the Japanese population: Does handedness affect carcinogenesis?Laryngoscope Investig Otolaryngol. 2017 Feb;2(1):19-22.この後ろ向き観察研究は、68例の外耳道がん(扁平上皮がん)を登録し、左右どちらの耳に発がんしたのかを観察した後ろ向き研究です。全体としては、52例が右側、16例が左側の外耳道がんだったのですが、利き腕と耳かきの習慣については、34例のみで情報収集可能でした。34例の利き手に関しては、29例が右利き、4例が左利き、1例が両利きという結果でした。右利き29例中27例および両利き1例では右側にがんが発生し、左利き3例では左側にがんが発生しました(表)。表. 外耳道がん発生の詳細(文献より引用)すなわち、ほとんどの症例が自分の利き手と同じ側に外耳道がんを発症しており、統計学的に有意差があったと記載されています。耳かきは、とくに日本でポピュラーな習慣ですが、実は今から3千年以上前の、河南省安陽の殷墟婦好墓から、耳かきが2本出土していることが耳かき界ではよく知られていることです。クセになって外耳道がんのリスクが上がるというのは困ったものですね。個人的には毎日やらないよう、注意しています。

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第194回 医師の善意が被災者の誤解に?~災害処方箋のケース

令和6年能登半島地震の発生からすでに2週間以上が経過した。しかし、現地は今も混乱が続いていることは、多くの人がニュースで知っていることだろう。実は私はこの1週間、金沢市に滞在していた。被災地である能登半島での取材を考えて現地入りしたのだが、これほど苦労する現場はほかになかったと言ってもよい。結論から言うと、能登半島そのものに入ることはあたわずだった。とにかく足場が悪すぎたのである。金沢にいてもそれなりに情報が入る。それによると主要幹線道路である国道249号線は今も道路状況が悪い。いわんや、その周辺道路となるとさらに不安定だ。「余震の時に急停止したら脇の丘から軽い土砂崩れが起きた」とか「一夜明けたら昨日にはなかった倒木が道路を遮っていた」などの話はよく耳にした。この状況下でペーパードライバーである私が運転をするのはリスクが高過ぎる。たまたま県外から現地入りしていた友人が、レンタカーを調達できれば、代わりに運転して輪島市や珠洲市まで連れて行くと申し出てくれたが、そもそも彼の予定が取れる日に金沢市内はおろか石川県内全域、富山県高岡市まで含め、調達できるレンタカーは皆無だった。また、この間に現地支援に入っている知人がいる志賀町の拠点に入れれば、そこからは車で随行できる可能性も生まれた。ただ、公共交通機関が使えるのはその20km手前まで。友人が出発する早朝に間に合わせるためには公共交通機関の最終便で向かい、そこから夜通し歩くしかなかった。ちなみに「徒歩20kmは無理だろう」という人がいるかもしれないが、私の普段の万歩計の歩数は、ジムでのトレッドミルの利用も含め2万歩強(14km強)である。東日本大震災時は1日合計で徒歩15kmなどは日常的だった。さらに言えば、将来起こるとされている東海地震(いわば南海トラフ地震)発生を念頭に、2003年に都内から徒歩で取材に向かう想定で静岡駅まで歩いたことがある(当時は30代)。都内の自宅を朝6時に出て、朝と昼はカロリーメイトを歩いて食べながら、3日後の午後7時過ぎに静岡駅に着いた(今はこれよりは明らかに時間がかかるだろう)。しかし、今回は天候も悪過ぎた。ここ1週間の石川県内が晴れたのはたった2日間のみ。それ以外は冷たい雨か吹雪に見舞われた。普段は真冬でも都内では素肌の上にTシャツ、スリーシーズン用ジャケットの私でも耐え難い寒さだった(ちなみに冬期の札幌への短期出張程度なら同じ格好で赴く)。もちろんこれに備えてダウンジャケットは持参(着用はしていない)していたが、それでも悪天候、低気温、悪路、街灯も少ないところを不眠不休で徒歩移動した後の取材はリスクが高い。これも断念せざるを得なかった。その意味で今回の取材は能登半島入りという点では完敗だった。ただ、一見しただけならばいつもの金沢市内も、よく見ていると、さまざまなところで地震の影響が見て取れた。まず、当初は2泊3日のホテル予約で現地入りしたが、その後は空室の確保に苦労した。石川県による2次避難者向けのホテル・旅館の確保が始まったうえに、復興作業関係者の金沢入りも本格化し、急激に空室が減っていったからである。金沢駅を中心に明らかに復興・支援関係者と思われる装備をした人をよく見かけた。そんな彼らに何気なくかつさりげなく(相手がそう思っているかはわからない)話しかけたり、閉庁直前に行政にコンタクトを取ったりすると、多様な情報が一定程度は入ってくる。それらの情報は医療関連以外のものもかなり多いのだが、医療に関する情報で「ああ、その点はね」と思うものがあった。何かというと、「災害処方箋」のことだ。ほとんどの医療従事者は知識として災害処方箋のことは知っていると思う。災害救助法に基づくもので、DMATなど医療チームが避難所の救護所や巡回診療など、保険医療機関以外で薬剤を処方する際に交付される処方箋である。これに基づく調剤は救護所、近隣で機能している保険薬局、あるいは日本薬剤師会が今回現地へ派遣したモバイルファーマシーなどで行われる。災害処方箋に伴う調剤・薬剤費用は全額自治体が負担する。あくまで災害時の一時避難的措置のため、保険診療による通常の処方箋発行が全面的に機能するまでの繋ぎである。ちょうど今の能登半島の被災地は、まさに災害処方箋から保険診療の処方箋への移行時期、端的に言って両者が混在する時期である。こうなるとややドタバタが起こる。たとえば、今回の被災地域は高齢者が多い。国立社会保障・人口問題研究所が公表している「日本の地域別将来推計人口」(2023年推計)によると、能登半島の4市5町の2020年の高齢化率(65歳以上人口率)は、最低の中能登町ですら37.2%。最大は災害関連死も含め死者が最も多い珠洲市の51.4%である。しかも、避難所の環境はあまり良いとは言えない。現地入りした支援関係者によると、日中に暖房を使用していても、一部の被災者が寒さを感じ、常に毛布をまとっている避難所もあるという。そうなると危惧されるのが、災害関連死である。2016年の熊本地震では、地震による直接死の4倍超の災害関連死が発生したこともあり、この点は報道も含め盛んに警鐘が鳴らされている。石川県の発表によると、1月17日午後2時現在までに確認された死者232人のうち、自治体が災害関連死と判断した事例は14人。当然、医療者も警戒レベルを上げる。このため災害関連死リスクが高い基礎疾患を有する高齢者に対しては、なるべく基礎疾患のコントロールを安定化させようと、原則は1週間処方とされる災害処方箋で、医師が慢性疾患治療薬を30日を超えて処方するケースも散見されるという。これは何とも言い難い事例と言える。しかも、現在の石川県の場合、災害関連死を防ごうと、県が能登半島内の1次避難所にいる被災者を半島外の金沢市などにある1.5次避難所や2次避難所への移送を進めている。1次避難所で診察する医師は、移送先の避難所の状況が必ずしもわからないため、善意でこうした処方が増えがちになる。しかしながら、災害処方箋の本来の目的や医療の正常化の面から考えると、こうした処方はやや逸脱したものだ。しかも、災害処方箋による処方・調剤料金を全額負担する自治体側は、なるべく災害処方箋での処方そのものを最小化したいはずである。薬局側も現在も続く医薬品不足下では、保険診療の処方箋でも30日超の処方は、時に在庫の取り揃えに悩まされる。さらにいえば災害処方箋による調剤の場合、薬局は通常の技術料は請求できず、県市町村との取り決めによる手数料が支払われるが、これは平時の平均的な技術料と比べると安価。経営的にも悩ましい。一方、災害処方箋に基づく処方の場合、被災者は一切の自己負担が要らない。このため、過去の自然災害では被災者の一部が「病院が復旧していても、避難所で薬をもらえばタダになる」と誤解し、避難所にいる医師に長期処方をお願いするケースもあったことを私は耳にしている。誤解と書いたのは、ここでは釈迦に説法だが、災害救助法適用地域では時限的に保険診療も自己負担が生じないからである。そしてこうした誤解は、今回の能登地域でもごく一部であるらしい。避難所内は口コミ情報の浸透度が早く、たとえ公的通知が掲示されていたとしても、一度広がった誤解を解くには時間を要する。このように災害処方箋1つとっても、県、市町村、現地医療機関・薬局、支援医療チーム、被災者の思惑と法制度、さらに現状が複雑に絡み合い、悩ましい事態が起こり得る。そもそも災害による被災状況に定型があるとは言えない以上、こうしたことが発生してしまうのはやむを得ない。これをすっきり解決する公式もない。能登半島入りを果たせなかった以上に、こうした何とも言えない状況によるモヤモヤに支配されたまま、私は金沢を後にしたのである。

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肺がんと悪液質、8,000例超の後ろ向き研究と悪液質合併肺がんの前向き研究【肺がんインタビュー】 第98回

第98回 肺がんと悪液質、8,000例超の後ろ向き研究と悪液質合併肺がんの前向き研究8,000例超の進行肺がんにおける悪液質の疫学、発症危険因子、また悪液質が治療経過におよぼす影響を調べた肺登録合同委員会の調査結果が発表された。さらに、悪液質を合併した未治療の非小細胞肺がん患者における、治療レジメンごとの食欲、体重、QOLへの影響を調査した前向き試験の結果が発表された。この2つの臨床研究について、順天堂大学附属順天堂医院の宿谷 威仁氏が解説する。

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日本人双極性障害外来患者における離婚の予測因子

 双極性障害は、躁状態とうつ状態を繰り返すことを特徴とする精神疾患であり、社会的障害を引き起こすことが知られている。さらに、双極性障害は、離婚や家族のサポートを失うリスクを高め、予後を悪化させる可能性が明らかとなっている。しかし、リアルワールドにおける双極性障害患者の離婚の予測因子に関するエビデンスは限られている。獨協医科大学の徳満 敬大氏らは、日本人双極性障害患者における離婚の予測因子を特定するため、調査を行った。その結果から、日本人双極性障害患者における離婚の予測因子として、ベースライン時の年齢が若い、BMIが低いことが特定された。Annals of General Psychiatry誌2023年12月12日号の報告。 日本精神神経科診療所協会の会員クリニック176施設の精神科医を対象に、観察アプローチ研究を実施した。医療記録のレトロスペクティブレビューを実施し、双極性障害と診断された患者に焦点を当てたアンケート調査を行った。2017年9月~10月に、ベースライン時の患者の特徴に関するデータを収集した。さらに、ベースラインから2019年9月~10月までの2年間の離婚率を調査した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象は、双極性障害外来患者1,071例。・2年間の離婚率は、2.8%(1,071例中30例)であった。・双極性障害患者の離婚率は、一般的な日本人の離婚率よりも非常に高かった。・二項ロジスティック回帰分析では、すべての対象患者における離婚の予測因子は、ベースライン時の年齢が若い、BMIが低いことが統計学的に有意であると確認された。・離婚の予測因子について性別ごとに評価したところ、男性患者における統計学的に有意な離婚の予測因子は、ベースライン時の年齢が若い、双極II型障害よりも双極I型障害である点であった。・女性患者における有意な離婚の予測因子は、BMIが低い、抗不安薬の使用であった。 著者らは「双極性障害患者における離婚の予測因子は、男女間で大きく異なることが明らかとなった。本発見は、実臨床現場における双極性障害患者に対する社会的サポートを検討する際、家族の観点から重要なポイントを提供するものである」とまとめている。

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