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がん患者の悪夢に有効な治療法は?(大阪大学 緩和ケアチーム)

がん患者では不眠の有病率が高いことはよく知られている。また、悪夢をみることは睡眠の快適度や満足度に強い悪影響を及ぼす。大阪大学 谷向氏らはがん患者における不眠症および悪夢に対する抗うつ薬トラゾドンの治療効果を検討した。Am J Hosp Palliat Careオンライン版2012年7月9日号の報告。対象は、2008年~2010年に、大阪大学病院の緩和ケアチームにおいて不眠症(悪夢の有無にかかわらず)を訴え、トラゾドンを処方されたがん患者30例。 主な結果は以下のとおり。 ・15例(50%)で治療効果が認められた。・4例で重症な悪夢を経験していた。そのうち2例で悪夢の軽減が認められた。・トラゾドンは進行性がん患者における不眠の治療および悪夢の軽減に有用である可能性が示唆された。 (ケアネット 鷹野 敦夫) 関連医療ニュース ・せん妄対策に「光療法」が有効! ・生活と治療を支える緩和ケア ・旬レポ!“キーワード”~がん臨床現場の道しるべに~

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テネリグリプチンの日本人での有効性

2012年6月に国内での製造販売承認を取得した、新規DPP-4阻害薬「テネリグリプチン(商品名:テネリア)」の日本人2 型糖尿病患者におけるデータが発表された。テネリグリプチン1日1回投与の安全性および24時間にわたる血糖コントロールを評価したところ、テネリグリプチンが、プラセボと比較して低血糖の発現なく、食後2時間血糖値、24時間平均血糖値、空腹時血糖値を有意に改善することが明らかになった。この結果は、ピーエスクリニックの江藤氏らによりDiabetes Obes Metab誌Early Online Publication 2012年7月10日付で報告された。対象は、食事・運動療法でコントロール不十分な日本人2 型糖尿病患者99例。被験者を無作為にテネリグリプチン10mg群、同20 mg群、プラセボ群に割り付け、4週間、朝食前投与を行った。無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験である。主な結果は以下のとおり。 ・テネリグリプチン投与群は10mg、20mg両群とも、プラセボ群に比べ、食後2時間血糖値、24時間平均血糖値、空腹時血糖値を有意に低下させた。・食後2時間血糖値について、テネリグリプチン10mg群のプラセボ群に対する差は、朝食後:-50.7±7.8 mg/dL、昼食後:-34.8±9.2 mg/dL、夕食後:-37.5±7.5 mg/dLであった(最小二乗平均(LS means)±標準誤差(SE)、すべてp

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新たな分子標的薬の登場で腎細胞がん治療はどう変わるのか?

腎細胞がん治療において、現在わが国で発売されている分子標的薬は4剤あり、日本泌尿器科学会の腎診療ガイドライン2011年版では、1次治療ではMSKCCリスク分類別、2次治療では前治療別に薬剤が推奨されている。そのなかで、新たな分子標的薬であるアキシチニブ(商品名:インライタ)が、2012年6月29日、根治切除不能または転移性の腎細胞がんの治療薬として承認された。今回、ファイザー株式会社によるプレスセミナーが7月11日に開催され、慶應義塾大学泌尿器科教授 大家基嗣氏と近畿大学泌尿器科教授 植村天受氏が、腎細胞がん治療における現状・課題、アキシチニブの特性や臨床成績、今後の展望などについて講演した。その内容をレポートする。■標的部位が選択的かつ阻害活性が高いチロシンキナーゼ阻害薬まず、腎細胞がん治療における現状と課題、アキシチニブの特性や臨床試験成績、使用時の注意について、大家基嗣氏が講演した。腎細胞がんの罹患数は増加傾向にあり、わが国の年間罹患者数は約14,000人である。近年、健康診断における腹部超音波検査やほかの疾患での定期的CT検査によって、偶然発見されるケースも増えている。現在、腎細胞がんに適応を持つ分子標的薬は、チロシンキナーゼ阻害薬のスニチニブ(商品名:スーテント)とソラフェニブ(同:ネクサバール)、mTOR阻害薬のテムシロリムス(同:トーリセル)とエベロリムス(同:アフィニトール)の4剤がある。これらの薬剤によって腎細胞がん患者の予後は改善されたとはいえ、長期生存率は依然として低く、また副作用の問題で長期継続投与ができないという課題が残っている。よって、臨床現場からは、より有効性が高く、より副作用の少ない薬剤が待ち望まれている。今回承認されたアキシチニブは、チロシンキナーゼ阻害薬であり、標的部位がVEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3に選択的で、その阻害活性はほかの2剤に比べて非常に強いという特徴を持つ。国際共同第III相臨床試験(AXIS)では、1次治療に治療抵抗性を示した転移性腎細胞がん(淡明細胞がん)患者715例を対象に、アキシチニブ群とソラフェニブ群に無作為に割り付け、有効性および安全性を比較検討した。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はアキシチニブ群が6.8ヵ月と、ソラフェニブ群4.7ヵ月に比べて有意に延長した(ハザード比0.664、p

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帯状疱疹ワクチン、生物製剤服用者への安全性と効果示す

関節リウマチなど自己免疫疾患で生物学的製剤を服用している患者への帯状疱疹ワクチン接種は、同発症予防に有効であることが明らかにされた。同ワクチン接種直後の帯状疱疹発症リスクについても、増大は認められなかったという。米国・アラバマ大学のJie Zhang氏らが、46万人超を対象に行った後ろ向きコホート試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2012年7月4日号で発表した。抗腫瘍壊死因子(抗TNF)療法やその他の生物学的製剤を服用している患者への、帯状疱疹弱毒生ワクチンの効果や安全性は検証データが限られており明らかになっておらず、接種は禁忌とされている。46万人超を2年間追跡研究グループは、米国高齢者向け公的医療保険「メディケア」の60歳以上受給者46万3,541人について、2006年1月1日~2009年12月31日のデータを用い、後ろ向きコホート試験を行った。被験者は、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、炎症性腸疾患のいずれかの診断を受けていた。被験者の追跡開始時の平均年齢は74歳で、72.3%が女性だった。主要アウトカムは、帯状疱疹ワクチン接種後42日以内と43日以降の、それぞれの帯状疱疹発症率で、ワクチン非接種群と比較し検討した。追跡期間の中央値は2.0年(四分位範囲:0.8~3.0)、被験者のうち帯状疱疹ワクチンを接種したのは1万8,683人(4.0%)だった。ワクチン接種で帯状疱疹発症リスクは0.61倍に、生物学的製剤服用者で発症例はなしワクチン接種後42日以内の帯状疱疹発症率は、7.8/1,000人・年(95%信頼区間:3.7~16.5)だった。接種後43日以降の帯状疱疹発症率は、6.7/1,000人・年(同:5.7~7.9)で、ワクチン非接種群の同発症率は11.6/1,000人・年(同:11.4~11.9)と比べ、大幅に低率だった(罹患率比:0.58、p<0.001)。疾患や服用薬などで多変量補正を行った後の、同ハザード比は0.61(同:0.52~0.71)だった。また、ワクチン接種時または接種後42日以内に生物学的製剤を服用していた633人で、帯状疱疹や水痘を発症した人はいなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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MRSA感染症、市中型も院内型も2005年以降は減少傾向

米国におけるMRSA感染症は、2005年以降は市中型・院内型ともに減少傾向にあることが報告された。MRSA起因の市中型皮膚軟部組織感染症についても、2006年以降は減少しているという。米国・San AntonioMilitary Medical CenterのMichael L. Landrum氏らが、米国国防総省の医療保険受給者を対象に行った観察研究の結果明らかにしたもので、JAMA誌2102年7月4日号で発表した。これまでに、院内型MRSA感染症の発症率の減少傾向は報告されているものの、市中型MRSA感染症の動向については報告がなかった。延べ追跡期間5,600万人・年のうち、MRSA感染症は約2,600人、創部膿瘍感染は8万人超研究グループは、2005~2010年に、米国国防総省の医療保険「TRICARE」受給者について観察研究を行った。主要アウトカムは、10万人・年当たりのMRSAを起因とする感染症罹患率と、2005~2010年の年間罹患率の傾向とした。延べ追跡期間は5,600万人・年で、その間にMRSA感染症は2,643人、MRSAによる創部膿瘍感染は8万281人に、それぞれ発症した。MRSA感染症の年罹患率は3.6~6.0/10万人・年、MRSA皮膚軟部組織感染症は122.7~168.9/10万人・年だった。2010年のMRSA感染症年間罹患率、市中型1.2/10万人・年、院内型0.4/10万人・年追跡期間中の年間罹患率の変化についてみると、市中型MRSA感染症の発症率は、2005年の1.7/10万人・年から、2010年の1.2/10万人・年へと減少した(傾向p=0.005)。院内型MRSA感染症も、同期間に0.7/10万人・年から0.4/10万人・年へと減少した(傾向p=0.005)。また、MRSAが原因の市中型皮膚軟部組織感染症についても、2006年には創部膿瘍の62%を占めたのをピークに、2010年にはその割合は52%へと低下した(傾向p<0.001)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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出産後のうつ病リスクは「10~15%」新スクリーニングツール期待

 先進諸国で最も頻度の高い妊娠合併症である「産後うつ病」。産後うつ病(PPD)は新たに母親になる女性の10~15%で発症する。PPDの発症が高い要因として、PPD自体に対する関心の低さや出産後の不安への対応を含むメンタルヘルスの不足が考えられる。その対策として、出産後だけでなく出産前からのメンタルヘルスが重要である。しかし、現在用いられる出産前スクリーニングツールは感度や特異性が低かった。そこで、McDonald氏らは新たなスクリーニングツールの開発を行った。Paediatr Perinat Epidemiol誌2012年7月号(オンライン版2012年5月9日号)報告。 本研究の目的は、出産前にPPDリスクを有する女性をスクリーニングできるツールを開発し、運用化することである。カルガリーで実施された妊婦対象の前向きコホート研究より得られた1,578名のデータを用い、PPDの有病率に対するスコアベースの予測尺度を開発した。PPDの定義は、出産後4ヵ月のエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)10点以上とした。 主な結果は以下のとおり。・最良なモデルとして、既知のPDDリスクファクター(妊娠後期のうつとストレス、虐待歴、夫との関係性の不足 )を含んだ。・本スクリーニングツールの感度は、妊娠後期のEPDSと比較して、有意に良好であった。・出産後の不安症状発現リスクを予測するために有用であることが示された。関連医療ニュース増加する青年期うつ病 、早期発見へうつ病治療におけるNaSSA+SNRIの薬理学的メリット統合失調症の高感度スクリーニング検査 「眼球運動検査」

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BRAF変異メラノーマのPFSを著明改善。dabrafenibの第III相試験

BRAF変異阻害薬dabrfaenibは、BRAF変異陽性の転移性メラノーマに対する臨床効果と安全性プロファイルが第I・II相試験で示されている。Hauschild氏らは、dabrafenibの臨床効果を検証するためオープンラベル第III相試験を実施し、その結果をLancet誌オンライン版2012年6月22日付で報告した。今回の試験の対象は、年齢18歳以上、未治療のStageIVまたは切除不能StageIIIBのBRAF V600遺伝子変異陽性の転移性メラノーマ患者で、2010年12月~2011年9月に登録された。登録患者中、250名が無作為にdabrafenib群(187例)とダカルバジン群(63例)に3:1に割り付けされた。プライマリエンドポイントは無増悪生存期間(PFS)であり、intention to treatで解析された。その結果、PFS中央値はdabrafenb群で5.1ヵ月、ダカルバジン群で2.7ヵ月でありdabrafenib群で有意に長かった(HR:0.30、95%CI:0.18~0.51、p

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認知症予防のポイント!MCIへのアプローチ

認知症は軽度認知障害(MCI)から始まり、徐々に認知機能が低下していくため、認知症を予防するためのひとつの方法として、MCIの段階でいかに対処していくかが重要であると考えられる。Summers氏らはMCI症例に対する神経心理学的アプローチに関する検討を行った。Neuropsychology誌2012年7月号(オンライン版2012年5月21日号)の報告。MCIの各サブタイプに分類される高齢者81名と健常者25名の計106名を対象に、視覚機能、言語記憶、注意処理機能、遂行機能、ワーキングメモリー、意味記憶の個々の結果をもとに、20ヵ月の縦断的な神経心理学的評価を行った。主な結果は以下のとおり。 ・20ヵ月後、MCI群の12.3%が認知症へ進行、62.9%がMCIの状態を維持、24.7%がMCIから健常レベルに戻った。・判別関数を用いた分析では、試験開始前の神経心理学的テストの成績から86.3%の精度で20ヵ月後の結果を予測することができた。・視覚および言語のエピソード記憶、短期記憶、ワーキングメモリー、注意処理機能の障害パターンによりMCI症例の予後を予測可能であることが示された。(ケアネット 鷹野 敦夫) 関連医療ニュース ・アルツハイマーの予防にスタチン!? ・データバンクでアルツハイマー病の治療実態が明らかに―仏BNA調査― ・MCIの診断・治療に有効な評価尺度として期待「CDR-SB」

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5価経口弱毒生ロタウイルスワクチン 7月20日より販売開始

MSD株式会社は13日、5価経口弱毒生ロタウイルスワクチン「ロタテック内用液」(以下「ロタテック」)の販売を、7月20日より開始すると発表した。ロタテックは、ロタウイルスの感染によって引き起こされる乳幼児のロタウイルス胃腸炎を予防する5価経口弱毒生ロタウイルスワクチン。ロタウイルスには多くの血清型があると報告されているが、そのうちG1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]およびG9P[8]の5種類の血清型の組み合わせで、ロタウイルス胃腸炎の原因の約90%を占めている。ロタテックは、G1、G2、G3、G4およびP1A[8]型の5つの血清型のロタウイルス株を含む5価のワクチンであり、G1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]およびG9P[8]に起因するロタウイルス胃腸炎に対して予防効果が示唆されている。また、疫学研究において、ロタウイルスに複数回感染することで、ロタウイルス胃腸炎に対する自然免疫をより高く獲得することも報告されている。その研究結果から、ロタテックは3回接種のロタウイルスワクチンとして開発されたという。ロタテックは、Merck & Co., Inc., Whitehouse Station, N.J., U.S.A.によって開発され、2005年にメキシコで承認されて以来、2012年3月時点で、世界107の国と地域で承認されている。日本では、2012年1月18日に厚生労働省より製造販売承認を取得している。詳細はプレスリリースへhttp://www.msd.co.jp/newsroom/msd-archive/2012/Pages/product_news_0713.aspx

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変形性ひざ関節症の疾患啓発サイト「ひざ科学研究所」開設

科研製薬株式会社と生化学工業株式会社は10日、ひざの痛みの予防と改善を目指し、変形性ひざ関節症の疾患啓発サイト「ひざ科学研究所」(http://www.hizaken.com)を開設した。中高年のひざの痛みは、関節の病気(多くは変形性ひざ関節症)に起因していることが多いにもかかわらず、加齢が原因だから仕方がないという誤った認識を持たれている方々が多く存在します。つまり、医師による適切な診断・治療を受けずに病気の早期発見や早期治療の機会を逸してしまうケースが見受けられます。ひざの痛みへの対処が遅れ、重症化すると歩くことも困難になり、日常生活に支障をきたす可能性があります。「ひざ科学研究所」は、様々なひざの痛みに対する誤解を解消し、いくつになっても元気に歩くことができ、自由で豊かな日常生活を過ごせるよう、多くの人にひざに関心を持っていただくことを目的に、変形性ひざ関節症の早期発見・治療に向けた情報発信を行う疾患啓発サイト。監修に東邦大学名誉教授の勝呂 徹(すぐろとおる)氏を迎え、ひざの痛みや違和感を持たれている方やその家族の方々に対して、変形性ひざ関節症に関する調査や専門家の解説を交えた情報をわかりやすく発信していくという。また、理系女子大生コミュニティ「凛」のメンバーが参加して、ひざの痛みに関する誤解や変形性ひざ関節症についての科学的な検証や調査活動をサポートしていくとのこと。主なコンテンツは、(1)アンケート調査から明らかになったひざの痛みに関する誤解と専門家による解説、(2)自分のひざの状態を確認できるチェックリスト「あなたのひざは大丈夫?3分でできる簡単チェック」(3)ひざの痛みに関する小冊子「ひざ思いやりBOOK」PDFダウンロード、などがある。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.kaken.co.jp/nr/release/nr20120710.pdf

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統合失調症患者は“骨折”しやすいって本当?

近年、統合失調症患者では骨粗鬆症の罹患率が高いことが明らかになってきているが、著しい骨密度(BMD)の減少にいたる機序や臨床的意味はまだわかっていない。慶応義塾大学の岸本氏(Zucker Hillside Hospital留学中)らは統合失調症患者における骨粗鬆症と骨折リスク、さらに抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症の骨代謝への影響について、最近の知見をもとにレビューを行った。Curr Opin Psychiatry誌オンライン版2012年6月30日付の報告。主な結果は以下のとおり。 ・16報告中15件(15/16:93.8%)において、統合失調症患者は対照群と比較して、低BMDまたは骨粗鬆症の高い罹患率のうち、少なくともいずれかと相関していた。ただし、全体の一貫性はなかった。・高い骨折リスクは、統合失調症と関係し(2/2)、抗精神病薬投与とも関係していた(3/4)。・これらの要因として、運動不足、栄養不足、喫煙、アルコール摂取、ビタミンD不足が示唆された。・抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症とBMD低下との関係を調べた報告(9/15:60.0%)では、高プロラクチン血症の影響が少なからず認められた。・本結果は、サンプルが少なく効果の小さなものが含まれており、またプロスペクティブ研究は2報だけであった。・高プロラクチン血症や不健康な生活による影響はまだ明らかになっていないが、統合失調症患者ではBMD低下や骨折リスクとの関係が示唆されることから、予防や早期発見、早期介入が必要であると考えられる。(ケアネット 鷹野 敦夫)関連医療ニュース ・肥満や糖尿病だけじゃない!脂質異常症になりやすい統合失調症患者 ・せん妄対策に「光療法」が有効! ・厚労省も新制度義務化:精神疾患患者の「社会復帰」へ

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乳がんと診断された女性の労働時間の変化

女性が乳がんと診断された場合、その後の労働時間に影響はあるのか? また退職や労働時間短縮に関連する要因は何なのか? スウェーデンのHøyer氏らがコホート研究の結果をJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2012年7月9日号に報告した。本試験は、Regional Breast Cancer Quality Register of Central Swedenで登録された735例を対象としたコホート研究であり、ベースライン時(診断後平均4ヵ月)およびフォローアップ時(診断後平均16ヵ月)のアンケートを完了した女性505例(診断時63歳未満)を解析した。未婚・既婚、子供の有無、学歴など社会人口統計学的因子に関する情報はベースライン時に、また自己申告による仕事に関わる情報はフォローアップ時に収集した。その結果、労働時間について、診断前と比較したところ、変化なしが72%、増加が2%、減少が15%、フォローアップ時には退職していた患者が 11%であった。また、化学療法が退職や労働時間短縮の可能性を増加させる(オッズ比[OR]:2.45、95%CI:1.38~4.34)ことが示された。この結果について、化学療法を受けた患者では、診断前のフルタイムの仕事(OR:3.25、95%CI:1.51~7.01)、がんに関連した労働制限(OR:5.26、95%CI:2.30~12.03)、仕事に対する低い価値観(OR:3.69、95%CI:1.80~7.54)が関連していた。一方、化学療法を受けなかった患者では、年齢の高さ(OR:1.09、95%CI:1.02~1.17)と仕事に対する低い価値観(OR:5.00、95%CI:2.01~12.45)が関連していた。著者らは、サポートが必要な女性を識別するには化学療法とがんに関連する労働制限が重要な因子であり、さらに労働市場に参加することについての女性自身の価値判断を考慮することが重要であると述べている。(ケアネット 金沢 浩子)

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3つの新規経口抗凝固薬、術後血栓塞栓症の予防に有効だが出血傾向も

3つの新規経口抗凝固薬リバーロキサバン*1、ダビガトラン*2、アピキサバンは、従来の標準治療であるエノキサパリンに比べ、全般的に術後の静脈血栓塞栓症の予防効果が高いが出血リスクも上昇傾向にあることが、スペイン医薬品・医療機器機構(マドリッド市)のAntonio Gomez-Outes氏らの検討で明らかとなった。欧米では、これら3つの新規薬剤は、人工股関節/膝関節全置換術後の静脈血栓塞栓症の予防治療として承認されているが、主要な臨床試験が標準治療では通常行われない下肢の静脈造影所見で評価され、出血の定義が試験によって異なるなどの理由で、臨床アウトカムや相対的な効果、安全性は明確ではないという。また、3剤を直接比較した最新の試験は行われていない。BMJ誌2012年6月30日号(オンライン版2012年6月14日号)掲載の報告。術後の静脈血栓塞栓症の予防効果をメタ解析で評価研究グループは、人工股関節/膝関節全置換術後の静脈血栓塞栓症の予防治療における新規経口抗凝固薬リバーロキサバン、ダビガトラン、アピキサバンの臨床アウトカムを評価するために、エノキサパリンとの直接比較試験の系統的レビューおよびメタ解析を実施し、3剤の間接的な比較も行った。データベース(2011年4月現在のMedlineとCENTRAL)、臨床試験登録、学会記録集、規制機関のウェブサイトを検索し、人工股関節/膝関節全置換術後の静脈血栓塞栓症の予防治療における3つの新規抗凝固薬とエノキサパリンを比較した無作為化対照比較試験の論文を選出した。2名の研究者が別個にデータを抽出した。ランダム効果モデルを用いたメタ解析で、症候性静脈血栓塞栓症、臨床的に問題となる出血、死亡、複合エンドポイント(症候性静脈血栓塞栓症、大出血、死亡)の相対リスク(RR)を評価した。3剤に有効性と安全性の差はない16試験(3万8,747例)が解析の対象となった。症候性静脈血栓塞栓症のリスクは、エノキサパリンに比べリバーロキサバンは有意に低かった(RR:0.48、95%信頼区間[CI]:0.31~0.75、p=0.001)が、ダビガトラン(同:0.71、0.23~2.12、p=0.54)とアピキサバン(同:0.82、0.41~1.64、p=0.57)は低い傾向はみられたものの有意差はなかった。臨床的に問題となる出血のリスクは、エノキサパリンに比しリバーロキサバンは有意に高く(RR:1.25、95%CI:1.05~1.49、p=0.01)、ダビガトランは同等で(同:1.12、0.94~1.35、p=0.21)、アピキサバンは有意に低かった(同:0.82、0.69~0.98、p=0.03)。複合エンドポイントは、直接的および間接的な比較のいずれにおいても差はなかった。著者は、「新規の経口抗凝固薬は、エノキサパリンに比べ全般的に静脈血栓塞栓症の予防効果が高かったが、出血リスクも高い傾向がみられた。3つの新規薬剤の有効性と安全性に差は認めなかった」と結論している。(菅野守:医学ライター) *1商品名:イグザレルト。本邦では人工股関節/膝関節全置換術後の静脈血栓塞栓症発症抑制については未適応。*2商品名:プラザキサ。本邦では人工股関節/膝関節全置換術後の静脈血栓塞栓症発症抑制については未適応。

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ヒマラヤ登山死、商業化で低下傾向に

ヒマラヤ登山における死亡リスクは、登山経験が豊富だからといって低減せず、従来の非商業的で探索的な登山よりも、むしろ最近の商業登山のほうが死亡リスクを改善する傾向にあることが、米国Madigan Healthcare System(ワシントン州タコマ)のJohn L Westhoff氏らの調査で明らかとなった。登山は人気が高いがきわめて危険な活動であり、ほかのほとんどの娯楽的活動よりも死亡率が高い。ヒマラヤ登山の商業化の傾向に伴い、比較的経験の浅い登山者が、自力で登るには経験不足な山頂を職業的ガイドの指導の下で目指すことが多くなったが、登山による負傷率はこの数十年、下降傾向にあるという。BMJ誌2012年6月30日号(オンライン版2012年6月13日号)掲載の報告。ヒマラヤ登山の死亡リスクを後ろ向きコホート試験で評価研究グループは、過去のヒマラヤ登山の経験と登山死のリスク低減の関連および商業登山と従来の登山の死亡リスクの違いを評価するために、レトロスペクティブなコホート試験を行った。1970年1月1日~2010年春の登山好適期までに、ネパールのヒマラヤ山脈登山の参加者を対象に、登山経験に基づく生存解析を行った。ヒマラヤ山脈の探索、探検の時代である1970~1989年と、1990年頃に始まる現在の商業化されたヒマラヤ登山の時代を比較した。商業登山で死亡リスクが37%低減3万9,038人の登山者のうちベースキャンプからポーターなしの登山を試みたのは2万3,995人(男性2万1,555人[89.8%])で、標高8,000メートル以上に到達したのは2万3,295人(同:2万1,293[91.4%])だった。登山時の平均年齢は32歳。1万6,976人(70.8%)は初回のみで、それ以上のヒマラヤ登山は行っていなかった。登山経路(標準、標準外)、登頂目標(アンナプルナI、エベレストなど8つ)、登山時の年齢、季節、性別、登頂の成功/不成功、登山年で調整したところ、ヒマラヤ登山の経験回数は死亡率と関連しなかった(初回登山者の死亡率:1.5%、2~4回目:1.5%、5~9回目:1.6%、10回以上:1.5%、オッズ比[OR]:1.00、95%信頼区間[CI]:0.96~1.05、p=0.904)。商業登山の参加者は従来の非商業的登山隊に比べ死亡率が37%低かったが、有意な差はなかった(0.7% vs 1.7%、OR:0.63、95%CI:0.37~1.09、p=0.100)。最も死亡率が高い登頂目標はアンナプルナIの4.0%で、ほかのすべての登頂目標の包括的な死亡リスクよりも有意に高かった(p<0.001)。年代が進むに従い、死亡率の有意な低下傾向が認められた(1970年代:3.0%、80年代:2.2%、90年代:1.3%、2000年代:0.9%、OR:0.98、95%CI:0.96~0.99、p=0.011)。著者は、「ヒマラヤ登山経験の豊富さや非商業的な従来の登山による生存ベネフィットは認めなかった」と結論し、「最近になるほど死亡率が低くなることから、生存率の改善には個人の経験よりも集団の知識の集積や一般的な技術革新が重要なことが示唆される」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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ひざの痛みの原因と治療に対する3つの誤解とは?

科研製薬株式会社と生化学工業株式会社が共同で運営している変形性ひざ関節症の疾患啓発サイト「ひざ科学研究所」(http://www.hizaken.com)は、「ひざの痛みと対処法に関するアンケート調査」の結果を発表した。アンケートの結果から、ひざの痛みの原因や治療に関してさまざまな誤解があることが明らかになった。調査は、2012年4月27日~5月1日の期間に、全国の40歳から79歳の男女10,000 名を対象にスクリーニング調査を行い、ひざの痛みの経験者800名、ひざの痛みの未経験者200名を抽出し、実施されたもの。その結果、「ひざの病気は高齢者だけのもの」「自己流の対処で痛みがとれれば大丈夫」「病院に行くほどのことではない」という3つの誤解があることが明らかになった。全体の60%を超える人がひざの痛みの原因は「年齢的なもの(ひざの痛みのある人60.1%、ない人64.9%)」であると考えていた。また、50代以上の約半数となる46%の人が、現在または過去にひざの痛みを経験していることがわかり、ひざの痛みのある人の25%が40代で痛みを感じ始めていることが浮き彫りになった。さらに、痛みの原因を「年齢的なもの」「運動不足」「肥満」と考える人に比べて、「ひざの病気」と認識する人はひざの痛みのある人(6.6%)・ひざの痛みのない人(19.5%)ともに少ないとの結果も得られた。ひざが痛いときの対処法とその選択理由を聞いたところ、ひざの痛みのある人では「サポーターをする(36.3%)」「病院に行く(29.8%)」「運動する(29.2%)」「市販の薬を使う(28.14%)」「サプリメントを飲む(24.2%)」と続き、ひざの痛みのない人には(痛くなったとき自分が選ぶと思われる対処法を選択してもらった結果、「病院に行く(27.5%)」「思いつかない(24.3%)」「整骨院やマッサージに行く(22.6%)」「減量する(19.9%)」「サポーターをする(19.8%)」と続いた。しかし、その選択理由については両方の人々ともに「なんとなく(ひざの痛みのある人47.4%、ない人70.3%)」と答えた人が最多となった。ひざの痛みの対処法として「病院に行く」を選ばなかった人に、なぜ病院に行かなかったのかを聞いたところ、一番多くの人が選んだ理由は「病院に行くほどではないと思ったから(56.7%)」であった。また、どのようになったら病院に行くかを聞いた設問では、「痛みがひどくなったら(45.3%)」「歩くのがつらくなったら(58.5%)」という回答が多く、症状が悪化するまで受診を見送る人が多い現状が認められた。その一方で、病院に行った人は、ひざの痛みの対処法として「病院に行く(67.1%)」ことを勧める割合が一番多いことがわかった。詳細はプレスリリースへ(PDF)※4ページからhttp://www.kaken.co.jp/nr/release/nr20120710.pdf

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病床規制の問題1:千葉県の病床配分と医療危機

亀田総合病院小松 秀樹 2012年7月11日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 ●はじめに 2012年3月30日の厚労省による病床規制継続宣言、千葉県による大量の病床配分と時を同じくして、千葉県最大の基幹病院である国保旭中央病院が、医師不足のため、救急受け入れ制限に追い込まれた。本稿では、病床規制と大量の病床配分が千葉県の医療に与える影響を考える。 ●千葉県の病床配分 千葉県では、埼玉県、神奈川県と共に全国屈指のスピードで高齢化が進行しつつある。これに伴い、医療・介護需要が増加している。こうした中で、2012年3月30日、千葉県は、千葉県保健医療計画に基づく病床配分を発表した。配分可能病床数3725床に対し、66施設から、5762床の増床計画書が提出され、51施設に3122床が配分された。許可病床を求めて一斉に群がった感がある。 群がるのは、医療機関が、自らの意思だけで増床できないこと、許可病床が、たとえ実際に使われていなくても既得権益として保持されてきたことによる。破綻した銚子市立総合病院の許可病床数393床も返上されていない。旧銚子市立総合病院を引き継いだ銚子市立病院は、2012年4月5日現在、最大53床で入院診療を行っている。 千葉県は、許可病床の内、実際に使われている病床数を公表していない。ある病院の幹部は、医師・看護師不足のため、一般病床については、許可病床の70%程度しか使われていないのではないかと推定している。 既得権益化を悪として、増床が遅れたことを理由に、病床配分を取り消すのは難しい。病床の配分を受けると、病棟の建設、看護師募集が始められる。しかし、看護師をどれだけ集められるか分からない。集められた分の病床を開くことになる。実際の増床は、病棟建設から相当遅れることになる。遅れた分、金利負担が増える。増床が遅れたことを理由に、許可病床の配分が取り消されると、建設費を回収できず、破産しかねない。そもそも、取り消される可能性があるとすれば、融資を受けられない。 病床規制がなければ、無理な増床計画は生じない。建物を建てても医師や看護師を集められなければ、赤字が膨らむだけだからである。 ●千葉県の医師・看護師不足 平成23年度千葉県保健医療計画によると、平成20年末の千葉県の人口10万対医療施設従事医師数は、161.0人(47都道府県中、45位)であり、全国平均の212.9人を大きく下回っている。保健師、助産師、看護師、准看護師を合わせた就業看護職員数も、全国45位と少ない。計画には、「今後、高齢化が急速に進展することにより、看護職員がますます不足することが予想されます」と記載されている。 千葉県の病院経営者の多くは、医師不足より、むしろ、看護師不足が増床の障害になると考えている。各都道府県では、厚労省が決めた調査方法に基づいて、看護師の需給見通しを作成している。医療機関に職員配置計画を問い合わせて、それを集計している。人口動態から推計された医療需要に基づいているわけではない。需給見通しは、調査時点での各病院の許可病床数と在職看護師数に大きく依存する。最新の第7次千葉県看護職員需給見通しは、平成21年10月から同年12月に実施された医療機関等実態調査に基づいて算定された。その結果、千葉県では、平成23年において2430.5人、平成27年において1481.6人の供給不足が見込まれるという。今回の3122床の配分は、調査の時期からみて、各医療機関からの回答には、一切反映されていない。3000床の増床だと、おおむね3000人の看護師が新たに必要になる。増床させようとすると合計5,500人不足することになる。しかも、千葉県では、看護師養成数が少なく、人口10万対看護学生数は全国45位である。 ●九十九里医療センター構想の苦闘 千葉県の東部、長大な九十九里浜の中央部は、日本有数の医療過疎地帯である。この地域では、2000年代の半ば以後、自治体病院から勤務医が退職して、医療提供体制が文字通り崩壊状態に陥った。崩壊が顕在化する前の2003年、老朽化した県立東金病院を廃院にして、山武郡市広域行政組合を設立主体とする九十九里医療センターを新設する構想が持ち上がった。400床の規模で、救命救急を担おうという計画だった。ところが、2008年、センター長に、支援病院への病床数割り振り権限を与えるかどうかをめぐって、山武郡市首長会議が紛糾した。支援病院と位置付けられた国保成東病院、国保大網病院が切り捨てられることを、それぞれの病院を持つ自治体が恐れたためである。自治体間の合意を形成することができず、設立主体が東金市、九十九里町の2市町だけになった。その後、予定名称が、東千葉メディカルセンターに変更された。314床、22診療科、医師数56人の計画で、2014年4月の開院に向けて準備が進められている。常識的には、この医師数だと、二次救急ならまだしも、救命救急は不可能に近い。他にもいくつかの懸念がある。 まず、財務上の懸念である。この計画で、医師・看護師が確保できなければ、膨大な赤字になり、自治体といえども持ちこたえられない。そもそも、自治体が設立主体だと、首長、議員が病院に対し大きな発言権を持つ。首長や議員は、支持者の利益誘導を図ろうとしがちである。4年ごとに選挙で選ばれるため、住民受けの良い短期的手柄を求めて活動する。事務職員は自治体からの出向であり、医療経営について専門知識を持たない。病院より市役所での出世が優先されるので、専門知識を高めようとするインセンティブが生じない。かくして自治体病院は、提供するサービスの割に過大な費用がかかり、赤字を生むことになる。 2011年1月31日の朝日新聞によると、千葉県の指導を受けて、東金市と九十九里町が、山武郡市、長生郡市の自治体に支援を要請した。しかし、山武市は、さんむ医療センター(旧国保成東病院)に運営費負担金を年間4億円から5億円拠出している。茂原市も、公立長生病院に年間8億8千万円を拠出している。自治体立病院はどこも大赤字なのである。両者とも東千葉メディカルセンターへの財政的支援に難色を示した。 千葉県立病院のデータも、自治体病院の赤字体質を示している。2012年5月1日付の千葉日報は、県立7病院が2010年度に黒字転換したこと、中期計画で黒字拡大を目指していることを報じた。この報道は読者に誤解を与える。千葉県病院事業の2010年度実績は、医業収益が306億円、医業費用が385億円だった。医業収益を100とすると、費用が125.8かかっている。医業外収益として、当初より税金が103億円投入されている。赤字が103億円以内にとどまっただけの話である。民間病院なら、存続不可能な大赤字である。千葉日報は、報道機関として、取材能力あるいは批判精神のいずれかが不足している。 看護師集めにも問題がある。実は、今回の病床配分以前から、近隣で看護師争奪戦が発生している。この地域の看護学生にとって、卒業後の就職が条件になるものの、奨学金がいきわたるようになった。一部で、奨学金だけでなく、支度金まで用意されると聞く。地方公共団体が採算度外視で看護師集めを展開すると、民間病院の看護師確保は困難になり、病床の維持が難しくなる。 加えて、この計画に限っていえば、看護師より、医師集めの方が難しい。大規模な医師集めは、急性期病院に勤務する医師を勇気づけるような対策を含めて、あらゆる工夫をして全国規模で募集しなければならない。しかし、九十九里医療センター構想では、当初より、医師の供給を千葉大学だけに頼ることを前提としている。日本では80大学に医学部がある。人口150万人に1校である。千葉県は人口620万人だが医学部は千葉大学のみであり、千葉大学の医局は常に医師不足状態にある。にもかかわらず、多くの大学医局と同様、外部の医師との協働に熱心ではない。 日本の大学医局は、自然発生の排他的運命共同体であり、派遣病院を領地として医局の支配下に置く。医局出身者以外、あるいは別の大学から院長を採用したり、他の医局の医師を採用したりするだけで、医師を一斉に引き揚げることがある。医局は、しばしば、医師の参入障壁になる(引用1)。 職務に就いていない医師を56人も抱え続けることはできない。千葉大学だけに頼った医師供給は、ゼロサムゲームにならざるをえない。東千葉メディカルセンターが56人の医師を確保するためには、千葉大学、あるいは、千葉大学関連病院から56人の医師をひきはがさなければならない。こうした乱暴な方法だと、医師不足による労働条件の悪化や医局内の軋轢が生じ、病院からの医師の立ち去りを増やしてしまう。事情を知る医師の多くは、東千葉メディカルセンターの医師確保は困難だと思っている。 ●旭中央病院 2012年4月22日の朝日新聞に、東千葉メディカルセンターの計画を根幹から揺るがす報道があった。国保旭中央病院が4月から、救急の受入れを制限したのである。旭中央病院は、病床数が989床。2011年度の救急患者数は、6万人で、その内、6300人が入院した。全体として、筆者の勤務する亀田総合病院と同様の診療規模だが、救急患者に限れば、亀田総合病院よりはるかに多い。しかし、常勤医師数が、亀田総合病院に比べて少なかった。今年度、研修医を含む常勤医師数が253人から239人に減少した。以前より、ギリギリの状況だと聞いていたが、内科の中堅医師が減少したため、負荷が限界を超えた。 旭中央病院は、千葉県の医療を支える最大拠点である。東千葉メディカルセンターがなくても、東金市や九十九里町から千葉市まで、比較的短時間で患者を搬送できる。一方、旭中央病院が機能しなくなると、医療過疎に悩む千葉県北東部、茨城県南東部の住民100万人が困ることになる。銚子市立総合病院の破綻後、旭中央病院に対する依存度はさらに高まっている。医師、看護師不足の中での千葉県の大幅な病床配分は、医師・看護師需給を一気に逼迫させる。旭中央病院の危機回避を妨げ、千葉県の医療供給体制の崩壊を別の次元に進めかねない。 <引用>1. 小松秀樹:医師参入障壁としての医局 医師を引き揚げるが、他から採用することは許さない. MRIC by 医療ガバナンス学会, Vol368, 2012年1月16日.http://medg.jp/mt/2012/01/vol368.html

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PETでみるアリピプラゾール薬理作用「なぜ、EPSが少ないのか」

第二世代抗精神病薬は第一世代抗精神病薬と比較して、錐体外路症状(EPS)を軽減し、抗精神作用を示す。この要因として、放射線医学総合研究所の高畑氏らは優先的な線条体外のドパミンD2受容体占有(辺縁系選択的)が影響しているのではないかと考え、本仮説を検証するため、第二世代抗精神病薬であるアリピプラゾールの薬理学的プロファイルについてPET検査を用い検証した。Psychopharmacology誌2012年7月号(オンライン版2012年1月12日号)の報告。健康成人男性11人を対象に、アリピプラゾール6mg経口投与後の線条体および線条体外のドパミンD2受容体占有率を調べるため、高比放射能合成技術によって得られた2つの超高比放射能のドパミンD2受容体リガンド である[11C]ラクロプライドと[11C]FLB457を用い、PET検査を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・線条体でのドパミンD2受容体占有率は70.1%~74.1%([11C]ラクロプライドにより測定)、線条体外のドパミンD2受容体占有率は46.6%~58.4%であった([11C]FLB457により測定)。・本研究では、アリピプラゾールの優先的な線条体外のドパミンD2受容体占有は認められなかった。・アリピプラゾールが有するパーシャルアゴニスト作用が、EPSリスクを低下させる要因である可能性が高いと考えられる。 (ケアネット 鷹野 敦夫) 関連医療ニュース ・統合失調症の病態にメラトニンが関与?! ・うつ病治療におけるNaSSA+SNRIの薬理学的メリット ・“ヨガ”で精神症状とQOLが改善

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SGLT3は、腎臓におけるNaトランスポーター?

新規糖尿病治療薬として、腎臓のグルコース再吸収に関与する輸送体である、SGLT2選択的阻害薬の開発が進んでいる。一方で、SGLT3については、SGLT2と高い類似性を示すものの、ヒトの腎臓における存在と機能的役割についてはほとんど知られていなかった。今回、Kothinti RK氏らにより、ヒトの腎組織および近位尿細管培養細胞(HK-2)におけるSGLT3の mRNAとタンパク質の発現についての研究結果が発表された。この結果、SGLT3は、ヒトの近位尿細管に発現が認められ、新規のナトリウムトランスポーターとして機能している可能性が示唆された。著者は、糖尿病患者において、近位尿細管でのSGLT3のアップレギュレーションが、腎機能障害や過剰濾過進行中のネフロン部位での、ナトリウム輸送を増加させている可能性があると述べている。Eur J Pharmacol誌オンライン版2012年7月2日付の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・ヒトの腎組織(in vivo)、およびHK-2(in vitro)の両方で、ヒトSGLT3(hSGLT3)とタンパク質の発現が示された。 また、hSGLT3の強力なアゴニストである、イミノ糖のデオキシノジリマイシン(DNJ)で処理後のヒトのCOS-7細胞、およびHK-2細胞における、hSGLT3過剰発現に伴うタンパク質活性を調べたところ、結果は以下のとおりであった。 ・COS-7細胞においてhSGLT3を過剰発現させたところ、グルコース輸送に影響を与えることなく、細胞内のナトリウム濃度は3倍まで増加した。・HK-2細胞において、DNJ(50μM)処理により、hSGLT3を過剰発現させたところ、ナトリウム濃度は5.5倍増加したが、この効果はSGLT阻害薬であるフロリジン(50μM)により完全に阻害された。 (ケアネット 佐藤 寿美) 関連情報 ・動画による糖尿病セミナー (インスリンなど)

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HIV母子感染、抗レトロウイルス薬28週治療が有効:BAN試験

授乳に代わる安全な育児法がない環境においては、HIVに感染した母親あるいは未感染乳児に対する28週の抗レトロウイルス薬予防治療により、乳児へのHIV感染が減少することが、米国疾病対策予防センター(CDC)のDenise J Jamieson氏らの検討で示された。HIVの母子感染は世界的に減少傾向にあるが、医療資源が乏しい地域では解決すべき課題とされる。WHOは、医療資源が限られ、授乳に代わる安全な育児法がない環境では、授乳期間中は母親あるいは乳児のいずれかに対する抗レトロウイルス薬の予防投与を推奨している。Lancet誌2012年6月30日号(オンライン版2012年4月26日号)掲載の報告。母親あるいは乳児に対する予防治療の有効性を無作為化試験で評価BAN(Breastfeeding、 Antiretrovirals、 and Nutrition)試験は、HIV感染母親から子どもへの感染予防における母親あるいは乳児に対する抗レトロウイルス薬の28週投与の有効性を検討する無作為化対照比較試験。2004年4月21日~2010年6月28日まで、アフリカ南東部の国マラウイの首都リロングウェ市で実施された。HIVに感染し、CD4陽性リンパ球細胞数≧250個/1μLの授乳期の母親2,369人とその乳児を対象とし、3つのレジメンのいずれかに無作為に割り付けた。すべての母親と乳児に、ネビラピン(商品名:ビラミューン)(母親:200mg/kg、乳児:2mg/kg)を1回経口投与し、ジドブジン(商品名:レトロビル)(母親:300mg/kg、乳児:2mg/kg)+ラミブジン(商品名:エピビル)(母親:150mg/kg、乳児:4mg/kg)の合剤(母親は錠剤、乳児はシロップ)を1日2回、7日間投与した。対照群(668人)にはこれ以上の治療は行わなかった。母親に対する抗レトロウイルス薬3剤併用療法群(849人)には、ジドブジン+ラミブジン合剤(商品名:コンビビル)を28週投与し、ネビラピンは出産後最初の2週は1日1回、15日~28週は1日2回投与した。乳児に対するネビラピン療法群(852人)は、出生後最初の2週は10mg/kgを、3~18週は20mg/kgを、19~28週は30mg/kgをそれぞれ1日1回投与した。なお、ネビラピンは、その肝毒性に関するFDA勧告に基づき、2005年2月以降はネルフィナビル(商品名:ビラセプト)に、2006年2月以降はロピナビル+リトナビル合剤(商品名:カレトラ)に変更した。母親には産後24~28週の離乳が推奨された。治療割り付け情報は、現地の医療従事者と患者には知らされたが、それ以外の研究者にはマスクされた。主要評価項目は48週時の乳児のHIV感染とした。48週乳児HIV感染率:対照群7%、母親3剤併用群4%、乳児ネビラピン群4%母親3剤併用群の676組、乳児ネビラピン群の680組、対照群の542組が、48週のフォローアップを完遂した。産後28週以降は授乳を中止した母親は2つの介入群を合わせ96%、対照群は88%だった。生後2~48週の間にHIVに感染した乳児は、母親3剤併用群が30人、乳児ネビラピン群が25人、対照群は38人で、そのうち28人(30%)は28週の治療終了以降に感染していた(それぞれ9人、13人、6人)。48週までの乳児HIV感染リスクは、対照群の7%に比し、母親3剤併用群が4%(p=0.0273)、乳児ネビラピン群も4%(p=0.0027)と、いずれも有意に良好だった。乳児における重篤な有害事象の頻度は、治療期間中よりも治療終了後(29~48週)のほうが有意に高く(1.1件/100人・週 vs 0.7件/100人・週、p<0.0001)、下痢、マラリア、発育不良、結核、死亡のリスクが高かった。産後2~48週の間に9人の母親が死亡した(母親3剤併用群:1人、乳児ネビラピン群:2人、対照群:6人)。著者は、「医療資源が限られ、授乳に代わる安全な育児法がない環境では、母親あるいは乳児に対する抗レトロウイルス薬の28週予防投与により乳児のHIV感染が減少するが、6ヵ月での離乳は乳児の罹病率を増加させる可能性がある」と結論している。なお、WHOは現在、本試験を含む知見に基づき、授乳期12ヵ月間の抗レトロウイルス薬予防治療を推奨しているという。(菅野守:医学ライター)

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