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第130回 年始、「肺炎」大暴れ

歴史的流行ご存じのとおり、今年のインフルエンザ感染者数は想像を超えるレベルに達しています。抗インフルエンザ薬が出荷調整を強いられています。2025年第1週になってようやく報告数が減りましたが、年末年始で正しい統計が取れているかどうかはよくわからないです1)。とりあえず、このままピークアウトしてくれると助かるところです。ただ、不気味なのは、数は多くないものの新型コロナウイルスが暗躍していることです。「当院かかりつけの患者さまで、39度の発熱で来られました」というコールを、この2週間で何度受けたことか。そんなとき、まず頭に浮かぶのはインフルエンザ。しかし、同時に新型コロナの検査もすると、意外にも新型コロナが陽性になることがあります。症状だけでは、もはや判別が難しいという現実を痛感しています。さらに、「左右両肺に肺炎があるので紹介させていただきます」といった紹介状を持って来院する患者さんも急増中です。胸部CTを撮影してみると、細気管支炎パターンが見られ、「これはマイコプラズマか?」と疑って迅速検査をしても陰性。代わりに肺炎球菌尿中抗原が陽性、さらに血液培養からも肺炎球菌が検出されるケースがありました。ダマシか!この年末年始の呼吸器臨床を端的に表すと、「肺炎大暴れ」です。インフルエンザも過去こんなに肺炎の頻度は高くなかったのに、感染中も感染後も肺炎を起こす事例が多いです。新型コロナも相変わらず器質化肺炎みたいなのをよく起こす。そして、そのほかの肺炎も多い。細菌性肺炎や膿胸も多い。もともと冬はこういった呼吸器感染症が多かったとは思います。だがしかし、いかんせん度が過ぎておる。ワシャこんな呼吸器臨床を約20年経験した記憶がないぞ。「感染症の波」は、いったい何が理由なのか?この異常事態の背景には、何があるのでしょうか。コロナ禍で国全体が感染対策に力を入れていた時期と比べると、確かに感染対策は甘めではあります。交絡要因が多いので、これによって感染症が増えているか判然としませんが、感染対策の緩和と感染症の流行には一定の相関がみられているのは確かです。長期間にわたってウイルス曝露が減り、免疫防御機能が低下するという「免疫負債説」を耳にしていましたが、新型コロナ流行から4年が経過し、むしろ「免疫窃盗」されているという考え方が主流でしょうか。感染症免疫は神々の住まう領域であり、言及するとフルボッコの懸念があるため、この議論はやめておきます。昨年のように二峰性の流行曲線になる可能性はありつつも、インフルエンザはさすがにピークアウトすると予想されます。しかし、新型コロナもマイコプラズマも含めて、呼吸器感染症に関してはまだ予断を許しません。今シーズンは新型コロナのワクチン接種率が低いことも懸念材料です。自己負担額が高いため、接種を見送る人が増えました。当院の職員も、接種率がかなり落ちました。いずれ混合ワクチンとなり、安価となればインフルエンザと同時に接種していく時代が来るかもしれません。ちなみに、年末年始に「中国でヒトメタニューモウイルスが流行している」という報道がありましたが、冬季に流行しやすいウイルスで、それほど肺炎合併例も多くなく、世界保健機関(WHO)も「異常な感染拡大はない、過度に恐れる必要はない」とコメントしています2)。参考文献・参考サイト1)厚生労働省:インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症の定点当たり報告数の推移(2025年1月14日)2)WHO:Trends of acute respiratory infection, including human metapneumovirus, in the Northern Hemisphere(2025 Jan 25)

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日本人男性のNa/K比、全死亡・NAD早期死亡・がん死亡と関連

 ナトリウム(Na)は、食塩そのものや高塩分食品の高血圧による心血管系疾患(CVD)や消化管がんへの影響を介して、非感染性疾患(NCD)リスクを高めると考えられている。 また、CVDの相対リスクはNa摂取量単独よりもNa摂取量/カリウム(K)摂取量(Na/K比)と密接に関連していると報告されているが、これらがNCDによる早期死亡リスクに及ぼす影響を調べた研究はほとんどない。今回、奈良女子大学の高地 リベカ氏らが前向きコホート研究であるJPHC研究で検討した結果、Na摂取量とNa/K比の両方が、中年男性における全死亡およびNCDによる早期死亡リスク上昇と関連し、さらにNa/K比はがん死亡とも関連していることが示された。The Journal of Nutrition誌オンライン版2024年12月27日号に掲載。 本研究では、1995~98年に11地域で45~74歳の男女8万3,048人を対象に食物摂取頻度調査票を実施した。2018年末までの158万7,901人年の追跡期間中、全死亡1万7,727人、NCD早期死亡3,555人が同定された。 主な結果は以下のとおり。・男性において、Na摂取量の多さは全死亡およびNCD早期死亡のリスク上昇と有意に関連していたが、全NCD死亡とは関連していなかった。最低五分位に対する最高五分位の多変量ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 - 全死亡のHR:1.11(95%CI:1.03~1.20、傾向のp<0.01) - NCD早期死亡のHR:1.25(95%CI:1.06~1.47、傾向のp<0.01) ・Na/K比におけるHRは以下のとおりで、がん死亡との関連を含め男性のほうが関連が強かった。 - 全死亡のHR:1.19(95%CI:1.11~1.27、傾向のp<0.01) - NCD早期死亡のHR:1.27(95%CI:1.10~1.46、傾向のp<0.01) - がん死亡のHR:1.18(95%CI:1.07~1.31、傾向のp=0.02)

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統合失調症に対するルラシドン投与量は80mg/日へ増量すべきか

 慶應義塾大学の竹内 啓善氏らは、統合失調症患者に対するルラシドンの投与量を40mg/日から80mg/日に増量した場合の有効性および安全性を評価するため、本検討を行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2025年1、2月号の報告。 対象は、6週間のルラシドン二重盲検プラセボ対照試験を完了し、その後12週間の非盲検延長試験に移行した統合失調症患者。二重盲検期間中に、ルラシドン群(40mg/日)またはプラセボ群に割り当てられた患者には、延長試験期間中にルラシドン40mg/日投与を行った。臨床医による判断に基づきルラシドン80mg/日への増量を可能とした。有効性アウトカムには、ルラシドン80mg/日の治療開始から終了までの陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアの変化を含めた。安全性アウトカムは、新たに発生した有害事象の発現率とした。 主な結果は以下のとおり。・ITT集団287例のうち、ルラシドンの投与量を40mg/日から80mg/日へ増量した患者は153例であった。・両群において、PANSS合計スコアの有意な減少が認められた(すべてp≦0.001)。・PANSS合計スコアが20%以上減少した患者の割合は、ルラシドン群で35.9%、プラセボ群で40.0%であった。・ルラシドン80mg/日での治療期間中における新たな有害事象の発現率は、ルラシドン群で47.4%、プラセボ群で48.0%であった。 著者らは「対照群がなく、盲検化されていないため、結果は慎重に解釈する必要がある」としながらも「統合失調症患者に対するルラシドン40mg/日から80mg/日への増量は、効果的かつ忍容性も良好であることが示唆された」と結論付けている。

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認知症診断後の余命と施設入所までの期間~メタ解析/BMJ

 認知症と診断された人々の平均余命は、男性では5.7(診断時65歳)~2.2年(診断時85歳)であり、女性は同年齢で8.0~4.5年であった。また、余命の約3分の1はナーシングホームで過ごしており、半数以上の人が認知症の診断後5年以内でナーシングホームに移っていた。オランダ・エラスムスMC大学医療センターのChiara C. Bruck氏らが、認知症の人々の生存またはナーシングホーム入所に関する追跡調査研究を対象に、認知症の人々のナーシングホーム入所および死亡までの期間に関するエビデンスを要約し、予後指標を探ることを目的として実施したシステマティックレビューおよびメタ解析の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「このシステマティックレビューでは、認知症診断後の予後は、患者、疾患、研究の特性に大きく依存していた。これらの知見から、個別化された予後情報とケアプランを提供できる可能性が示唆された。今後の研究では、診断時の患者を対象として、個別的要因、社会的要因、疾患ステージ、併存疾患を考慮し、生存だけでなく関連する機能的アウトカム指標を評価する必要がある」と述べている。BMJ誌2025年1月8日号掲載の報告。適格研究261件を対象にシステマティックレビューおよびメタ解析 研究グループは、2024年7月4日までにMedline、Embase、Web of Science、Cochrane、Google Scholarへ登録された文献を検索し、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。適格条件は、認知症の人々の生存またはナーシングホーム入所に関する追跡調査研究で、被験者が150例未満、急性期病院入院中に募集が行われた研究、または追跡調査期間が1年未満の研究は除外した。 検索により論文1万9,307本が特定され、適格研究261件を対象に含んだ。生存に関する報告が235件(555万3,960例)、ナーシングホーム入所に関する報告が79件(35万2,990例)であった。診断後余命中央値は4.8年、米国や欧州に比べてアジアでは1.2~1.4年長い 診断後余命中央値は4.8年(四分位範囲[IQR]:4.0~6.0、66研究)で、全体的な5年生存率は51%であった。すでに認知症と診断されている人々を対象とした53研究では、診断後余命中央値は3.1年(IQR:2.4~5.6)であった。 余命中央値は年齢に強く依存していることが見受けられ、研究開始時の年齢が高いほど短かった。診断後平均余命は、男性では5.7年(診断時65歳)から2.2年(診断時85歳)にわたっており、女性の場合は同年齢で8.0年から4.5年にわたっていた。全体的に女性の診断後平均余命は男性よりも短かった(平均差:4.1年、95%信頼区間[CI]:2.1~6.1)。これは女性のほうが診断時の年齢が高いことに起因していた。 診断後余命中央値は、米国や欧州に比べてアジアでは1.2~1.4年長く、アルツハイマー病では認知症の他のタイプと比べて1.4年長かった。また、2000年以前の研究と比較して、現在のクリニックベースの研究では余命が延長していたが(傾向のp=0.02)、地域ベースの研究ではそのような傾向はみられなかった。 総合すると、余命に関する不均一性の51%は、報告された臨床特性と研究方法のばらつきによるものであった。 ナーシングホーム入所までの期間中央値は、3.3年(IQR:1.9~4.0)であった。診断から1年以内に入所した人は13%で、5年後には57%まで増加していた。ただし、入所率の評価の際に競合死亡リスクを適切に考慮していた研究はわずかであった。

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切除不能HCC、TACEにデュルバルマブ+ベバシズマブ併用でPFS改善(EMERALD-1)/Lancet

 肝動脈化学塞栓療法(TACE)対象の切除不能な肝細胞がん(HCC)患者において、TACE+デュルバルマブ+ベバシズマブの併用療法が新たな標準治療となりうることが、スペイン・Clinica Universidad de Navarra and CIBEREHDのBruno Sangro氏らEMERALD-1 Investigatorsによる国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「EMERALD-1試験」の結果で示された。TACEは20年以上前に標準治療として確立されたが、TACEに関するガイドラインの記載は世界各地域で異なり、病期や腫瘍の大きさ、肝機能、合併症などが異なる多様な患者がTACEを受けている。無増悪生存期間(PFS)中央値は依然として約7ヵ月であり、研究グループは、ベバシズマブ併用の有無を問わずデュルバルマブの併用によりPFSを改善可能か評価した。著者は「最終的な全生存期間(OS)の解析および患者報告のアウトカムなども含むさらなる解析は、塞栓術が可能なHCCにおける、デュルバルマブ+ベバシズマブ+TACEの潜在的な臨床ベネフィットを、さらに特徴付けるのに役立つだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年1月8日号掲載の報告。日本を含む18ヵ国157施設で試験、TACE単独療法と比較評価 EMERALD-1試験は、18歳以上のTACE対象の切除不能なHCCで、登録時ECOG PSが0または1、modified RECISTに基づく測定可能な肝内病変を少なくとも1つ有する患者を、日本を含む18ヵ国157施設(研究センター、総合および専門病院を含む)で登録して行われた。 適格患者を、TACEの手法、登録地域、門脈浸潤で層別化し、対話型音声応答またはweb応答システムを用いて、(1)TACE+デュルバルマブ+ベバシズマブ併用療法群(4週ごとにデュルバルマブ1,500mg静脈内投与、その後3週ごとにデュルバルマブ1,120mg+ベバシズマブ15mg/kgの静脈内投与)、(2)TACE+デュルバルマブ併用療法群(ベバシズマブに代えてプラセボを投与)、(3)TACE単独療法群(デュルバルマブとベバシズマブに代えてそれぞれプラセボを投与)に1対1対1の割合で無作為に割り付けた。被験者、治験担当医師、アウトカム評価者はデータ解析まで治療割り付けを盲検化された。 主要評価項目は、ITT集団(治療に割り付けられた全被験者)におけるTACE+デュルバルマブ+ベバシズマブ併用療法群とTACE単独療法群を比較評価したPFS(RECIST ver1.1に基づく盲検下独立中央判定[BICR]による)であった。副次評価項目は、TACE+デュルバルマブ併用療法群とTACE単独療法群を比較評価したPFS(RECIST ver1.1に基づくBICRによる)およびOS、患者報告アウトカムの悪化などであった。 なお、被験者は、OSに関して引き続きフォローアップを受けており、OSと患者報告アウトカムについては後日公表される予定となっている。また安全性の評価は、治療に割り付けられ、試験治療(すなわちデュルバルマブ、ベバシズマブ、あるいはプラセボのいずれか)を受けた被験者を対象に解析された。TACE+デュルバルマブ+ベバシズマブ併用療法群のPFSが改善 2018年11月30日~2021年7月19日に、887例がスクリーニングを受け、616例(ITT集団)がTACE+デュルバルマブ+ベバシズマブ併用療法群(204例)、TACE+デュルバルマブ併用療法群(207例)、TACE単独療法群(205例)に無作為に割り付けられた。年齢中央値は65.0歳(四分位範囲:59.0~72.0)、135/616例(22%)が女性、481/616例(78%)が男性。アジア人375例(61%)、白人176例(29%)、アメリカインディアン/アラスカ先住民22例(4%)、黒人/アフリカ系米国人9例(1%)、ハワイ先住民/他の太平洋諸島住民1例(<1%)、その他の人種33例(5%)であった。 データカットオフ時点(2023年9月11日、PFSに関する追跡期間中央値27.9ヵ月[95%信頼区間[CI]:27.4~30.4])のPFSは、TACE+デュルバルマブ+ベバシズマブ併用療法群15.0ヵ月(95%CI:11.1~18.9)、TACE+デュルバルマブ併用療法群10.0ヵ月(9.0~12.7)、TACE単独療法群8.2ヵ月(6.9~11.1)であった。 TACE単独療法群と比較したPFSのハザード比は、TACE+デュルバルマブ+ベバシズマブ併用療法群0.77(95%CI:0.61~0.98、両側のp=0.032)、TACE+デュルバルマブ併用療法群0.94(0.75~1.19、両側のp=0.64)であった。 最も多くみられた最大Grade3~4の有害事象は、TACE+デュルバルマブ+ベバシズマブ併用療法群では高血圧(9/154例[6%])、TACE+デュルバルマブ併用療法群では貧血(10/232例[4%])、TACE単独療法群は塞栓後症候群(8/200例[4%])であった。死亡に至った治療関連有害事象は、TACE+デュルバルマブ+ベバシズマブ併用療法群では報告されなかったが、TACE+デュルバルマブ併用療法群では3/232例(1%)(動脈出血、肝損傷、多臓器不全症候群の各1例)、TACE単独療法群では3/200例(2%)(食道静脈瘤出血、上部消化管出血、皮膚筋炎の各1例)の報告があった。

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てんかん患者は網膜の神経軸索脱落が速い

 てんかんは、光干渉断層撮影(OCT)で観察される網膜神経軸索の脱落と関連しており、若年患者でも明らかな網膜の変化が見られることが知られている。また、てんかん患者における網膜神経軸索脱落の程度が、発作頻度や多剤併用療法と関連するとの報告もある。しかし縦断的研究が少ないことから、網膜変化の進行速度や発作頻度が与える影響については不明な点が多かった。ミュンヘン大学病院(ドイツ)のLivia Stauner氏らは、てんかん患者と健常者を対象に網膜の神経軸索脱落に関する追跡調査を実施。その結果の詳細が10月9日、「Epilepsia」に掲載された。 この研究の対象は、18~55歳のてんかん患者44人と健常者56人。加齢変化の影響を除外するため、年齢範囲の上限を55歳とした。患者群は平均年齢35.6±10.9歳、女性21人、健常者群(対照群)は32.7±8.3歳、女性37人であり、それぞれベースラインと7.0±1.5カ月後、6.7±1.0カ月後にOCT検査を行った。評価項目は、乳頭周囲網膜神経線維層(pRNFL)、黄斑部網膜神経線維層(mRNFL)、神経節細胞-内網状層(GCIP)、内顆粒層(INL)の厚み、および黄斑体積(TMV)であり、その変化と臨床パラメーターとの関連を検討した。 解析の結果、患者群では前記の全ての指標が追跡期間中に有意に低下しており、菲薄化や萎縮の進行が認められた。対照群もpRNFL以外の指標が有意に低下していた。一方、これらの変化を年率換算して比較すると、pRNFLでは患者群が-0.98±3.13%/年、対照群は0.42±2.38%/年(P=0.01)、GCIPでは同順に-1.24±2.56%/年、-0.85±1.52%/年(P=0.046)で、いずれも患者群の変化が速いことが示された。その他の指標の年変化率は、両群間に有意差がなかった。 サブグループ解析から、患者群のうち、pRNFLの年変化率が年齢と性別の一致する対照群より有意に大きかったのは、追跡期間中に1回以上の強直間代発作があった患者(P=0.03)のみであることが示された。追跡期間中に焦点発作のみが生じた患者(P=0.24)や発作を来さなかった患者(P=0.2)は、対照群と年変化率の有意差がなかった。 年変化率と関連のある臨床パラメーターを多重回帰分析で検討した結果、mRNFLの菲薄化は、併用している抗てんかん薬の数(β=-2.27、P=0.047)や年齢(β=-0.22、P=0.03)と有意な関連が認められた。 Stauner氏らは、併用している抗てんかん薬の数がmRNFLの菲薄化と関連していることについて、疾患活動性が反映された結果の可能性もあるとした上で、「より多くの抗てんかん薬を服用している患者は神経軸索脱落が加速するリスクがあるとも考えられ、よく考慮された効果的な薬物療法の重要性を示す結果と言える」と述べている。 なお、数人の著者が製薬企業などとの利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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慢性疾患の増加は腎機能を低下させる

 高齢者における多疾患併存は腎機能低下と強く関連しており、慢性疾患の数が増えるほど腎機能の低下度も大きくなることが、新たな研究で明らかになった。研究論文の筆頭著者であるカロリンスカ研究所(スウェーデン)のGiorgi Beridze氏は、「われわれの研究結果は、高齢者の腎機能低下のリスクを評価する際に、慢性疾患の全体的な負担だけでなく、疾患間の複雑な相互作用も考慮した包括的な評価の重要性を強調するものだ」と述べている。この研究の詳細は、「Journal of the American Geriatrics Society(JAGS)」に12月17日掲載された。 この研究でBeridze氏らは、老化研究(Swedish National study on Aging and Care in Kungsholmen;SNAC-K)の一環として、スウェーデンの高齢者3,094人(平均年齢73.9歳)の健康状態を15年間にわたって追跡調査した。多疾患併存として慢性疾患の数を調査してそのパターンを特定し、経時的な推算糸球体濾過量(eGFR)の絶対的変化および相対的変化(ベースラインからの25%以上の低下)との関連を検討した。対象者の87%が多疾患併存に該当した。 解析の結果、慢性疾患の数とeGFRの絶対的な低下および相対的な低下との間には独立した容量依存関係が認められることが明らかになった。具体的には、慢性疾患が1つ増えるごとに、eGFRは年平均0.05mL/分/1.73m2低下し、ベースラインからeGFRが25%以上低下するリスクは23%増加すると推定された。 多疾患併存には、「非特異的な低負荷パターン」「非特異的な高負荷パターン」「認知機能障害や感覚障害を特徴とするパターン」「精神疾患や呼吸器疾患を特徴とするパターン」「心代謝性疾患を特徴とするパターン」の5つが特定された。「非特異的な低負荷パターン」を基準として、それぞれのパターンとeGFRとの関連を解析した結果、「非特異的な高負荷パターン」および「心代謝性疾患を特徴とするパターン」は、eGFRの絶対的および相対的な低下と有意に関連することが示された。具体的には、「非特異的な高負荷パターン」では、慢性疾患が1つ増えるごとにeGFRは年平均0.15mL/分/1.73m2低下し、ベースラインからeGFRが25%以上低下するリスクが45%増加すると推定された。また、「心代謝性疾患を特徴とするパターン」では、eGFRは年平均0.77mL/分/1.73m2低下し、25%以上低下するリスクは245%増加すると推定された。さらに、「認知機能障害や感覚障害を特徴とするパターン」では、eGFRが25%以上低下するリスクが53%増加することも推定された。 研究グループは、「高血圧や心疾患などの慢性疾患は糖尿病と関連しているため、あるいは臓器にダメージを与える炎症を引き起こすため、腎臓にダメージを与える可能性がある」との見方を示している。そして、「加齢に伴うこのような疾患パターンを追跡し、慢性疾患を管理することが、腎臓の健康を維持するのに役立つ可能性がある」と結論付けている。 Beridze氏は、「高齢者で、高リスクの多疾患併存パターンに該当する患者には、腎機能のモニタリングを強化し、健康的なライフスタイルを推進し、タイムリーな薬理学的介入を行うことで患者にベネフィットがもたらされる可能性がある」と話している。

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変形性膝関節症の新たな検査法を開発

 変形性膝関節症(OA)は、関節内の軟骨が劣化して骨同士が擦れ合うことで生じる。しかし、OAは軟骨の劣化が進行した末期段階で診断されることが多いため、それが軟骨の摩耗により生じたOA(一次性OA)なのか、あるいは炎症性疾患により生じた炎症性関節炎なのかを判断するのは難しいとされる。こうした中、関節内の潤滑液に含まれる2種類の成分を指標として用いた新たな検査法により、これら2種類の関節炎を正確に区別できる可能性のあることが明らかになった。米Zimmer Biomet社の一部門であるCD DiagnosticsのDaniel Keter氏らによるこの研究結果は、「Journal of Orthopaedic Research」に12月18日掲載された。 研究グループによると、米国では60歳以上の成人の最大15%がOAに罹患しており、人口の高齢化や肥満などのリスク因子の増加により、OAの蔓延はさらに進むことが予想されているという。 これまでの研究では、OA患者の患側の関節滑液では、軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP)と呼ばれる非コラーゲン性糖タンパク質の値が上昇していることが明らかにされている。しかし、COMP濃度だけを頼りに一次性OAと炎症性関節炎を区別することはできない。 今回の研究でKeter氏らは、COMP濃度に加え、インターロイキン-8(IL-8)と呼ばれる炎症性化学物質の濃度を組み合わせたアルゴリズムを構築し、これにより一次性OAと炎症性関節炎を区別できるかを検討した。COMPは軟骨が破壊されるときに放出されるため、一次性OA患者の関節滑液中では濃度が高くなる傾向がある。一方、IL-8の濃度は、OAでは低いが関節リウマチなどの炎症性疾患では高くなることが知られている。 COMP濃度およびCOMPとIL-8の濃度比率の臨床的基準値を設定し、171例の膝関節滑液標本を用いてアルゴリズムの性能を評価した。その結果、このアルゴリズムは、感度87.0%、特異度88.9%という高い精度で一次性OAと炎症性関節炎を区別することが示された。 こうした結果を受けて研究グループは、「一次性OAを他の炎症性関節炎と区別することは、OAの正確で的を絞った治療を可能にする、より優れた診断に貢献する」と結論付けている。またKeter氏は、「この検査は、OAの客観的な診断に対するアンメットニーズに対応し、臨床上の意思決定と患者の転帰改善に寄与する」と述べている。 ただし研究グループは、「この検査が広く使用されるようになる前に、その有効性を検証する必要がある」と述べている。

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誘惑に弱いのが人の常、厳しさは優しさへの道【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第80回

人間は誘惑に弱い存在2024年、米大リーグでプレーする大谷 翔平選手が日本中を沸かせました。ロサンゼルス・ドジャースへ移籍1年目から54本塁打、59盗塁と前人未踏の「50-50」を達成しました。どこか落ち込んでいる日本人に勇気と自信を与えてくれる大谷選手、2025年のさらなる活躍を期待します。いいニュースだけではありませんでした。元専属通訳による違法賭博関与や大谷選手の銀行口座からの不正送金というスキャンダルが発覚しました。自分が携わっている医学領域でも、研究成果の捏造や研究費の不正使用などがしばしば問題となります。不正への関与によって、順風満帆にみえる人生が一変する契機となります。今回は、人間は誘惑に弱い存在であるという観点から、不正が発生する背景と防止策について考えてみたいと思います。お金や権力、快楽といった魅力的なものが目の前に現れると、モラルや規範を忘れ、その誘惑に屈することがあります。とくに金銭への誘惑には弱いものです。不正行為の多くは、「自分だけなら」「誰にもバレないだろう」といった心理があります。こうした行為を未然に防ぐために、厳密な入出金システムや監査体制を設けることは、個人が不正に手を染めるリスクを減らし、結果的にその人の社会的な信用を守ることにつながります。ただし、その仕組みは透明性、効率性、公平性を持ち、人間関係の信頼を損なわないように設計されるべきです。不正できない環境作りは「優しさ」でもある大谷選手と元専属通訳の場合、天文学的ともいえる金額を稼ぐ世界のトップアスリートの資金管理が、その額に見合うだけの厳しさに欠けていたことが残念です。大谷選手の大らかさと表裏一体と思われる金銭面、資金管理への無頓着さが、被害を拡大した面もあるかもしれません。決して元専属通訳を擁護する訳ではありません。法の裁きに従って罪を償っていただく以外に道はありません。ただ、個人のモラルだけに頼らなくとも、不正が物理的にできない環境を作ることは、人間の弱さを前提とした優しさであると伝えたいのです。これにより、「疑われる」心配がなくなり、安心感を保つことができます。研究費の不正使用を防止するために、大学で資金の使用には何重ものチェック機構があります。とても面倒に感じることもありますが、誘惑に弱い自分を守ってくれる優しさだと考えるようにしています。誘惑に弱いのは人間としての人だけでなく、法律上の「架空の人間」として作り上げられた「法人」にも同様です。営利企業は法人と呼ばれます。法人は法律の枠組みの中で独立した主体とみなされ、契約や財産の所有が可能です。しかし法人もまた、実態は人間によって運営される組織であり、そこには個々の人間の欲望や倫理観が反映されます。このため、法人も誘惑に弱い人間と同じように、不正や不透明な行動に陥る可能性を持っています。典型的な例として、粉飾決算や汚職があります。日本の製造業で組織ぐるみの検査不正行為が続出したことはご存じと思います。利益を増やしたい、株主を満足させたい、あるいは社会的地位を守りたいといった誘惑が、法人を不正に向かわせる原動力となります。これらの不正行為は短期的には法人に利益をもたらすかもしれませんが、最終的には信用を失い、社会的な損害を引き起こします。一つの解決策は、法人に倫理的なガバナンスを徹底することです。透明性の高い運営と厳格な規制を設けることで、法人が誘惑に屈するリスクを最小限に抑えることができます。また、内部告発や外部監査の仕組みを強化することも有効です。最終的に、法人は「架空の人間」であると同時に、私たち一人ひとりの集合体でもあります。個々の人間が誘惑に打ち勝つ力を持ち、倫理的に行動することが、法人全体の健全性を支える鍵となるのです。法人を「人」として捉える視点は、私たち自身の行動を省みるきっかけとなり得るかもしれません。誘惑に打ち勝つには、猫の誘惑に負けること!?人は誘惑に打ち勝つ強い心を持ち、倫理的に行動すべきことは理解できます。時には甘い誘いに乗りたいのが人間です。どこかでバランスをとる必要があります。猫の誘惑に身を任せ、猫の下僕になることは、ある意味で、誘惑に負ける正しい方法といえるでしょう。その理由を考えてみます。猫の存在は、多くの人にとって癒しの象徴です。モフモフの毛、愛らしい仕草、気まぐれな態度に翻弄されることは、日常のストレスを和らげ、心に平穏をもたらしてくれます。こうした誘惑に身を任せることで、自分自身の心の健康を保つことができます。他の誘惑、たとえば金銭や権力、不正に関わる誘惑と比較して、猫の誘惑は倫理的な問題を引き起こしません。むしろ、人間の持つ優しさや愛情といった良い側面を引き出してくれる存在です。この誘惑に負けることは、むしろ推奨されるべき行為だといえます。猫の自由気ままな生き方は、人間にとって一種の理想です。無理に抗うよりも、素直に身を任せるほうが幸せです。繰り返しになりますが、大谷選手の一層の活躍を願っております。彼は、野球だけでなく犬のしつけにも卓越した手腕を示しました。「デコピン」です。休日の大谷選手は愛犬の下僕としてヘイコラしているのかもしれませんね。

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尿閉【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第22回

尿閉の患者さんを診ることはよくあると思います。最も頻度が高い原因は前立腺肥大症とされていますが、他の疾患で生じることもあるため、系統立てて除外する必要があります1)。今回は救急外来を受診した患者さんを通じて、さまざまな可能性を考えながら対応してみましょう。<症例>63歳、男性主訴尿が出ない既往歴前立腺肥大症、高血圧内服薬アムロジピン病歴受診日前日夕方より尿意があるが尿が出ない状況が続いている。深夜2時ごろに腹痛が出現し、耐えられなくなったため救急外来を受診した。救急外来で働いているとよく聞く病歴だと思います。しかしながら、尿閉のアプローチはさまざまです。今回は、Emergency Medicine Practiceの「An Evidence-Based Approach To Emergency Department Management Of Acute Urinary Retention」のアプローチをベースにまとめてみたいと思います2)。(A)本当に尿閉かどうかを鑑別上記症例であれば、ほぼほぼ尿閉で間違いないのですが、無尿を「まるで尿閉」のように訴えて来院する患者さんがいます。とくに認知症のある人や、前立腺肥大症など排尿に問題がある人に多いです。以前、「尿閉」の主訴で受診したものの、実はS状結腸憩室炎に伴う急性腎不全のため無尿という結果になったケースがありました。別のパターンで、尿閉を「便秘」と訴えて受診した人もいました。便秘と考えて排便をしようと腹圧をかけると、少し尿が出て楽になり、「便秘」と判断してしまったようです。これらのケースでは、腹部超音波検査が有用です。拡張し緊満した膀胱を認めれば、尿閉と診断できます。私は、便秘の訴えがある患者さんで、初回もしくは「いつもの便秘と違う」という訴えがある場合は腹部超音波を行うことがあります。この患者さんは下腹部に膨隆を認めて、腹部超音波検査をしたところ膨満した膀胱を認めました。(B)外陰部の診察非常にまれですが、外陰部の障害が原因となり尿閉を発症することがあります。男性であれば包茎、嵌頓包茎、腫瘤などで、女性であれば子宮脱、膀胱脱、腫瘤などが挙げられます。本症例はとくに問題がありませんでした。なお、ここまでの(A)(B)は手短に終了しましょう。というのも尿閉に伴う腹痛はかなりつらいためです。(C)導尿まれに包茎で尿道が同定できない、前立腺肥大症による通過障害で導尿が難しいということがあります。私は2トライして難しいようでしたら泌尿器科に相談しています。通過障害であれば先端が固いチーマンカテーテルなど、種々の導尿デバイスがありますが、手馴れていない場合は無理をしないほうがよいと考えます。続いてバルーン留置するか、単回の導尿にするかどうかです。これはケースバイケースと考えます。本症例のように深夜帯に受診し、朝になればかかりつけ医を受診できるような場合であればバルーン留置は必要ないと考えます。しかし、フォローアップまでに時間がかかり、再度尿閉症状が出てまた救急外来を受診しなければならないリスクが高い場合はバルーン留置を実施します。私は最終的には患者さんと相談し決定していますが、この患者さんの場合は日中すぐ受診できるため、単回導尿としました。800mLほど排尿があり、腹痛症状が消失ました。(D)尿閉の原因を探索思わず「前立腺肥大症が原因でしょう」と言いたくなりますが、ほかの可能性を否定しましょう。私は大きく4つは救急外来で必ず否定するようにしています。(1)神経因性膀胱、(2)薬剤性、(3)尿路感染症、(4)便秘による通過障害、です。(1)に関してはとくに脊髄に障害がないかを確認する必要がありますが、ほとんどの場合は排便に障害があるなどの病歴で絞れます。懸念があれば、肛門周囲の感覚や肛門括約筋の収縮を確認します。(2)については、多数の薬が尿閉を誘発することがあります。新規に開始した薬剤がないかを確認しましょう。私がよく経験するのが、抗ヒスタミン薬やエフェドリンを含有した風邪薬を内服しているケースです。いずれも膀胱の収縮を弱めます。(3)は膀胱炎や尿道炎により尿の通過が悪くなるため発生します。こちらは尿検査で確認しましょう。(4)は蓄積した便が直腸を通じて尿道を圧排して尿閉が生じることがあります。排便の経過をチェックしましょう。この患者さんは、排便に問題なく、新規薬剤もなく、尿検査で膿尿や細菌尿は認めませんでした。最終的に前立腺肥大症の可能性が高いと判断しました。(E)血液検査の必要性の検討尿閉で血液検査が必要になるのはどういったときでしょうか? 私は尿閉の経過が数日以上の場合には実施しています。(A)で述べたように便秘だと思って数日間我慢したケースや、認知症などにより意思疎通がとれず、いつから尿閉なのかわからないケースです。なぜかというと、腎後性腎不全を生じている可能性があるからです。腎不全を起こしていた場合、入院して適切な体液管理が必要になることが多いです。本症例は数時間前からの発症なので血液検査は必要ないと判断しました。この患者さんは排尿後に症状が軽快して帰宅となりました。上記がさまざまな可能性を考えながら尿閉に対応した場合の流れです。日々の診療に役立てばと思います。1)Selius BA, et al. Am Fam Physician. 2008;77:643-650.2)Marshall JR, et al. Emerg Med Pract. 2014;16:1-20.

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診療科別2024年下半期注目論文5選(糖尿病・代謝・内分泌内科編)

Intensive Blood-Pressure Control in Patients with Type 2 DiabetesBi Y, et al. N Engl J Med. 2024 Nov 16. [Epub ahead of print]<BPROAD試験>:2型糖尿病において、目標収縮期血圧を120mmHg未満にすることで心血管イベントリスクが低減2型糖尿病における至適な血圧目標値は、一般に130/80mmHg未満とされています。心血管疾患高リスクの2型糖尿病を有する中国人を対象とした本研究(RCT)では、収縮期血圧120mmHg未満を目標にすることにより、心血管イベントが統計学的に有意に低下することが示されました。Randomized Trial for Evaluation in Secondary Prevention Efficacy of Combination Therapy-Statin and Eicosapentaenoic Acid (RESPECT-EPA)Miyauchi K, et al. Circulation. 2024;150:425-434.<RESPECT-EPA>:EPAをスタチンに上乗せ投与しても心血管イベントリスクは低減しないEPA(eicosapentaenoic acid)は動脈硬化を抑制することが想定されています。しかしながら、ハイリスクの日本人冠動脈疾患患者にEPAをスタチンに上乗せ投与しても心血管イベントリスクは有意には低減しませんでした。一方、心房細動リスクが有意に上昇しました。Insulin Efsitora versus Degludec in Type 2 Diabetes without Previous Insulin TreatmentWysham C, et al. N Engl J Med. 2024;391:2201-2211.<QWINT-2>:肥満2型糖尿病において、efsitoraの効果はデグルデクに非劣性大きな期待がかけられているweeklyタイプのインスリン・efsitora。肥満2型糖尿病患者において、efsitoraの効果と安全性はインスリン・デグルデクと比較し非劣性であることが示されました。低血糖や体重増加は両剤とも同等でした。Once-weekly insulin efsitora alfa versus once-daily insulin degludec in adults with type 1 diabetes (QWINT-5): a phase 3 randomised non-inferiority trialBergenstal RM, et al. Lancet. 2024;404:1132-1142.<QWINT-5>:1型糖尿病において、efsitoraの効果はデグルデクに非劣性1型糖尿病患者を対象としたRCTで、インスリン・デグルデクに対するインスリン・efsitoraによる血糖降下作用の非劣性が示されたものの、中等度~重度の低血糖リスクが有意に上昇しました。1型糖尿病におけるインスリン・イコデク(weekly製剤)投与に伴う低血糖リスクも同様であったことが報告されています(Russell-Jones D, et al. Lancet. 2023;402:1636-1647.)The Effect of Denosumab on Risk for Emergently Treated Hypocalcemia by Stage of Chronic Kidney Disease : A Target Trial EmulationBird ST, et al. Ann Intern Med. 2024 Nov 19. [Epub ahead of print]<デノスマブによる低カルシウム血症>:重症低カルシウム血症リスクはCKD病期と関連CKD進展に伴い、ビスフォスフォネートと比較しデノスマブで重症低カルシウム血症のリスクが高まることが示唆されました。デノスマブを投与する際には、デノタス®(カルシウム/天然型ビタミンD3/マグネシウム配合剤)の投与と血清カルシウム値のモニタリングが重要です。

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第246回 美容外科医献体写真をSNS投稿、“脳外科医竹田くん”のモデルが書類送検、年末の2つの出来事から考える医師のプロフェッショナル・オートノミー

示談が成立していてもトラブルが公になり、様々な社会的、経済的制裁を受ける時代こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。年末から年始にかけて世の中を騒がせている事件に、タレント、中居 正広氏による女性との間に起こった高額“解決金”トラブルがあります。週刊文春などの報道によれば、中居氏は2023年6月、テレビ局幹部(フジテレビのプロデューサーと報道されていますが、同局は否定しています)がセッティングした会食に参加するも、結果的に中居氏と女性(フジテレビのアナウンサーと報道されています)の2人きりで食事をする流れとなり、そこで女性は中居氏から「意に沿わない性的行為」を受けたとのことです、中居氏の代理人も「双方の間でトラブルがあったことは事実」だと認め、解決金として9,000万円ほどを支払ったとのことです。中居氏は1月9日に自身のウェブサイトで、「トラブルがあったことは事実です。そして、双方の代理人を通じて示談が成立し、解決していることも事実です。(中略)なお、示談が成立したことにより、今後の芸能活動についても支障なく続けられることになりました。また、このトラブルについては、当事者以外の者の関与といった事実はございません」とトラブルがあったことを認めるコメントを公表しました。「芸能活動についても支障なく続けられる」と本人側から言ってみたり、「当事者以外の者の関与はない」と付け加えたりと、多分に意味深なコメントと言えますが、昨年の松本 人志氏と同様、現場復帰は難航しそうです。それにしても、21世紀のテレビ局において、宴席で女子アナが“生贄”のように供されていたらしいという報道には「いつの時代の話だ」と呆れてしまいました。さらには、示談が成立しているにもかかわらずトラブルが公になり、さまざまな社会的、経済的制裁を受けることになったことにも驚きます。いろいろな意味で厳しい世の中になったものです。ということで、今回は年始年末に報道された医師に関する2つの社会部ネタの事件について取り上げたいと思います。「頭部がたくさん並んでいるよ」とする文言とともに献体の写真を投稿1つめは、東京美容外科を運営する医療法人社団東美会(東京都中央区)所属の女性医師(45歳)が、グアムで実施された解剖研修で撮影したという献体とみられる写真を投稿し大炎上、NHKをはじめ大手マスコミも報道する至った事件です。各紙報道等によれば、この医師は11月末にグアム大学で実施された解剖研修の様子をSNSとブログに投稿しました。「いざ Fresh cadaver(新鮮なご遺体)解剖しに行きます!」「頭部がたくさん並んでいるよ」とする文言とともに献体が並んでいる写真や、献体の前で集合しピースサインをする写真なども投稿されたとのことです。また、献体の写真の一部にはモザイクがかかっていなかったそうです。解剖研修は米・インディアナ大学が主催、グアム大学で実施する美容形成外科医解剖学研修コースでした。解剖実習に使われる献体は、ホルマリンなどで防腐処理した遺体が使われる日本と異なり、死後、時間があまり経過していない遺体が使われるため、研修費用は高額(一部報道によれば3,000ドル前後)にもかかわらず、日本からの参加者も多いとのことです。この投稿についてSNSでは「倫理観が欠如している」「不謹慎過ぎる」などと批判が相次ぎ大炎上、医師は12月23日までに投稿を削除しましたが、クリスマス直前に大ニュースとなってしまいました。一般社団法人・日本美容外科学会は12月28日までに公式サイトを更新、この件に関して「この度、一部の美容外科医師がご遺体の解剖に関して不適切な行動を取ったとの報道がなされました。このような行為は、医療従事者としての倫理観を著しく欠いたものであり、断じて容認できるものではありません。当該医師は日本美容外科学会(JSAPS)の会員ではありませんが、美容外科医としてその肩書を用いる以上、社会的責任を伴う行動が求められることを強調したいと思います」との声明を発表しています。なお東美会は12月27日、この医師を12月30日付で解任することを決定したと発表しました。この事件、「医師としてあるまじき行為」などと、アンプロフェッショナルな行動が非難されるのは当然と言えますが、私が思い起こしたのは、昨年11月の兵庫県知事選で斎藤 元彦知事を当選させる原動力となったSNS戦略をnoteなどで公開したPR会社の女性社長(33歳)です。言わなくてもいいことまでnoteで自慢気に公開してしまうところは、献体写真をSNSなどでアップしてしまった女性医師とも共通する、SNSにある意味毒された現代の若者の特性のようにも感じました。誤って神経を一部切断して患者に重い後遺障害を負わせたとして、執刀した医師を業務上過失傷害罪で在宅起訴もう一つは、いわゆる、漫画「脳外科医 竹田くん」のモデルとされる医師の書類送検です。地元紙、赤穂民報などの報道によりますと、兵庫県赤穂市の赤穂市民病院で行われた脳神経外科手術で2020年1月、業務上の注意義務を怠り、誤って神経を一部切断して患者に重い後遺障害を負わせたとして、神戸地検姫路支部は12月27日、執刀した医師、松井 宏樹被告(46)を業務上過失傷害罪で在宅起訴しました。手術で助手を務め、松井被告とともに今年7月に書類送検された上司の科長(60)は不起訴となりました。松井被告の認否は明らかになっていません。起訴状などによると、松井被告は2020年1月22日、脊柱管狭窄症と診断された女性患者(当時74歳)の手術を執刀しました。ドリルで腰椎を切削する際、止血を十分に行わず、術野の目視が困難な状態で漫然とドリルを作動して硬膜を損傷、さらにドリルに神経の一部を巻き込んで脊髄神経も切断し患者に全治不能の傷害を負わせた、などとしています。なお、この女性患者の実際の手術映像は、2024年11月19日に放送されたNHKのクローズアップ現代「“リピーター医師”の衝撃 病院で一体何が?」の回で放送され、医療関係者にも大きな衝撃を与えました。松井被告については、関わった手術のうち少なくとも8件で患者が死亡または後遺障害が残る医療事故が発生しており大きな問題となっていました。別の70代女性患者に対する手術で起こした医療事故でも業務上過失傷害容疑で書類送検されましたが、神戸地検姫路支部は2024年9月に不起訴としています。その手術に関しては、虚偽の医療事故報告書を作成したとして松井被告と科長、同僚医師が有印公文書偽造・同行使容疑で書類送検されましたが、12月27日に不起訴となっています。12月27日付の赤穂民報は、「時効(業務上過失傷害罪は5年)まで残り1ヵ月を切ったタイミングでの起訴に、検察幹部は『複数の専門医の意見を聴くなど慎重に捜査を進めた。結果の重大性などを鑑みて起訴の判断に至った』と語った」と書いています。また、女性患者の長女は自身のブログに、「二度と母のような医療被害者を生むことがないよう、執刀した医師を厳罰に処し、医療過誤を起こした医師が繰り返し手術したり不適切な診療を続けることのないよう、医道審議会には厳しい行政処分を下していただけますよう強く望みます」と綴っています。医師を法の裁きの場に出すには相当な覚悟と努力、そして時間がこの件については、本サイトのコラム「現場から木曜日」担当の倉原 優氏も取り上げ、「医療行為が刑事事件として問われるのは、明らかな注意義務違反や重大な過失がある場合に限られるのが一般的です。しかし、今回は地検側が手術映像を専門家に見てもらい検証した結果、刑事責任を問えると判断しました。このような形での起訴は珍しいケースですね」と書いています1)。私も本連載の「第173回 兵庫で起こった2つの“事件”を考察する(前編) 神戸徳洲会病院カテーテル事故と『脳外科医 竹田くん』」などで、“竹田くん”(結局“竹”は“松”だったわけですね、なるほど)について取り上げてきました。今回の書類送検のニュースを聞いて思ったのは、告発や報道がこれだけ以前から行われてきたにもかかわらず、よく警察や検察が動かなかったな、という点です。医師を法の裁きの場に出すには相当な覚悟と努力、そして時間がかかるようです。しかし一方で、前述した美容整形外科医による献体写真のSNSへの投稿は、法律に抵触しているわけでもないのに、“大炎上”しただけで所属していたクリニックを解雇され、瞬時に社会的制裁を受けることになりました。事件の重大さは大きく異なりますが、この違いは一体何なのでしょうか。身内を守ろうとする医師たちにプロフェッショナル・オートノミーは期待できないそれはおそらく、医師が医療行為で起こした瑕疵に対して、身内の医師たちは甘く、事を起こした医師をまず守ろうとする特性が影響していると考えられます。対して、献体写真の投稿は医療行為ではなく、医師個人の生活習慣に関することであり、自分に火の粉が降りかかることもないため、守ろうという意識は働きません。まったく同様のことを、「第199回 脳神経外科の度重なる医療過誤を黙殺してきた京都第一赤十字病院、背後にまたまたあの医大の影(前編)」、「第200回 同(後編)」で取り上げた、京都第一赤十字病院の脳神経外科の事故についても感じました。京都第一赤十字病院では、杜撰な手術に加え、過誤のもみ消しとも取れる行為を病院幹部が行っていたことに対し京都市保健所が立ち入り調査を行い、改善を求める行政指導を行っています。行政指導が行われたということは、病院内だけで(あるいは医師だけで)事故に正しく対応できず、過誤への対応法も改善できなかったことを意味します。今から4年前、三重大の臨床麻酔部の教授が逮捕されたときに、「第40回 三重大元教授逮捕で感じた医師の『プロフェッショナル・オートノミー』の脆弱さ」というタイトルで、医師のプロフェッショナル・オートノミー(専門職としての自律)がいかに頼りなく、脆弱なものかについて書きましたが、今となっては医師の世界でプロフェッショナル・オートノミーはほぼ機能しておらず、期待もできないということなのでしょう。医師の働き方改革が進めば、医師の技術の習得には今まで以上に時間がかかることになるでしょう。また、人口減、患者減で、そもそも医師が手術などの腕を磨く機会も激減していくでしょう。そうなれば、医療事故、医療過誤も頻発することになりそうです。プロフェッショナル・オートノミーが機能しない中での事故頻発は、新たな医療崩壊へとつながっていきそうです。日本の医療は今、そんなモダンホラーの世界のとば口に立っているような気がしてなりません。参考1)現場から木曜日 第129回 「脳外科医竹田くん」在宅起訴

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高腫瘍量濾胞性リンパ腫1次治療に対するモスネツズマブ皮下注の評価(MITHIC-FL1)/ASH2024

 高腫瘍量濾胞性リンパ腫(HTB-FL)の1次治療に対する、CD20/CD3二重特異性抗体モスネツズマブ皮下注射の多施設第II相試験の結果が第66回米国血液学会(ASH2024)で発表された。 初発進行期のHTB-FLでは、抗CD20抗体併用化学療法が行われる。一方、近年の研究で、FLは深い免疫抑制状態を特徴とし、腫瘍内のT細胞の機能不全が臨床経過に影響するとの報告もある1)。そのような中、CD3陽性T細胞に、CD20陽性FL細胞を認識させ排除させるCD20/CD3二重特異性抗体が、FL治療の鍵を握る選択肢2)として期待される。・試験デザイン:第II相多施設試験・対象:未治療のCD20陽性Stege II~IVのHTB-FL(Grade1~3A)GELF規準により治療が必要とされる患者・介入:mosunetuzumab 21日サイクル(1サイクル目:day1に5mg、day8、15に45mg、2~8サイクル:45mg)→完全奏効(CR)症例:経過観察、部分奏効症例:45mgを17サイクルまで継続投与、PR未満症例:試験中止・評価項目【主要評価項目】CR割合(Lugano分類による効果判定)【副次評価項目】奏効割合(ORR)、安全性、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)など 主な結果は以下のとおり。・2022年6月~2024年7月に78例が登録された。・カットオフ(2024年11月1日)時点の追跡期間中央値は13.3ヵ月。・有効性評価対象76例のORRは96%で、CR割合は80%であった。86%(65例)の患者が最小でも80%の腫瘍量減少を示した。・12ヵ月推定PFS割合は91%であった。・12ヵ月CR割合は90%であった。・12ヵ月推定OS割合は99%であった。・頻度の多い(≧20%)治療中発現有害事象(TEAE)は、注射部位反応(70%)、感染症(56%)、サイトカイン放出症候群(CRS)(54%)、発疹、皮膚乾燥などであった。・CRSを発現した症例は42例、そのうち40例はGrade1、残りの2例はGrade2だった。CRSの48%が1サイクルのday1に発現していた。・免疫細胞関連神経毒性症候群(ICANS)、腫瘍崩壊症候群は認められなかった。

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2025年に医師会が掲げる4つの課題/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、定例会見を開催し、2025年の医師会の課題を語った。 新年の挨拶として松本氏は、年末年始にインフルエンザ患者の診療対応にあたった診療所の医師、医療者などに感謝の意を示すとともに、地域によっては予想を超えるインフルエンザ患者が来院したことを明らかにした。また、依然としてインフルエンザの検査キット、注射薬、治療薬などが不足していること、厚生労働省と協議し、各メーカーに増産を要請していることを述べるとともに、引き続き、マスクの着用や手指衛生など感染対策の実施と医療機関にはなるべく診療時間内に診療を受診するように述べた。 その他、年始に恒例となっている「箱根マラソン」に触れ、たすきを渡してゴールへ向かうチームの結束に思いを寄せ、医師会も次世代にたすきを渡し、継承を途切れることなく行っていきたいと決意を新たに語った。引き続く医療機関の経営悪化に適切な支援を望む 2025年の医師会の課題として4つを示し、説明を行った。1)参議院選挙について 先の衆議院議員選挙で少数与党となり、不安定な政局となっている。今夏に行われる参議院議員選挙は医療の未来を左右する重要な選挙と考えている。今後も医療現場の声を政府に的確につなげていく。2)令和8年度の診療報酬改定について 社会経済がインフレ局面であり、物価・賃金上昇に診療報酬が追いついていない現状。全国の医療・介護施設が赤字経営となり、逼迫性が増している。医療界では病院の経営が危機的な状況となっている。 昨年、医師会では物価高騰への考慮を政府にお願いし、今回補正予算で認められたことは評価している。しかし、人員の補充や設備投資に回せないなど支援はまだ不十分である。 これからも急騰していく物価などに対し、地域医療に影響がでないように補助金など機動的な経済対応をお願いしていく。 今回の診療報酬改定では、物価賃金の上昇に応じて、適切な仕組み作りが行われることを求めていく。併せて、地域医療機関の逼迫した経営状況を考慮し、まずは補助金での迅速な対応を希望し、必要があれば期中の改定も視野に要望していく。 また、財政の見直しを行い物価賃金の伸びに合わせた上昇をお願いし、骨太の方針に向けて別次元の対応を求めていく。 その他、小児・周産期医療では、急激な少子化により対象が減少しているだけでなく、医療の担い手も減少という相互に関連することであり、今後、抜本的な解決が必要とされる。3)新たな地域医療構想と医師の偏在の対策について 地域医療構想は、昨年、国が関係ガイドラインを策定し、実施が待たれるとともに、医師偏在対策では区域設定で是正プランができるなど実効性のある取り組みが期待される。医師会としては、これらの施策の中に「地域の実情を加味する」という文言が入り評価している。 医師会は昨年、医師偏在への提言を行い、厚生労働省から対策への総合パッケージが示された。この中には医師会の提言や要望も含まれており、解決にはあらゆる方策を相互に駆使して取り組む必要であることも示されるとともに、今回の総合パッケージには、若手医師だけでなく、すべての世代の医師への配慮もされていることも評価している。 一方、地域医療に従事しない医師などに「勧告」など罰則的な事項も掲げられており、こうした対応には反対する。医師会は、かかりつけ機能の充実に向け、地域医療の取り組みに一層取り組んでいく。4)かかりつけ医機能報告制度の施行について 2026年からスタートする「かかりつけ医機能報告制度」について、その目的は、地域医療機能と医療資源の不足などの把握と理解している。医師会としては、面としての地域かかりつけ医機能を発揮するためにも、より多くの医療機関に参加してもらうことが重要と考えている。 松本氏は、これらの課題について、「地域医師会とともに対応に向けて、情報発信をしっかりと行っていく」と述べ、新年の挨拶を終えた。 続いて、平成24年より開催されている「日本医師会 赤ひげ大賞」の第13回の受賞者5名と「赤ひげ功労賞」の受賞者14名が発表された。本賞は都道府県医師会からの推薦で決定され、今回は選考委員にはじめて医学生が加わったことが説明された。

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自閉スペクトラム症と歯ぎしりとの関連〜エコチル調査

 自閉スペクトラム症(ASD)患者では、咀嚼筋の不随意運動による歯ぎしりがしばしばみられる。歯ぎしりは睡眠障害とも関連しており、乳児の睡眠時間が、歯ぎしりの発症に関連しているかは、よくわかっていない。東北福祉大学の土谷 昌広氏らは、新生児期の短時間睡眠と歯ぎしりとの関連を評価するため、調査を行った。PLOS ONE誌2024年12月6日号の報告。 全国的な出生コホート研究である「子どもの健康と環境に関する全国調査(JECS)」より、8万3,720人のデータを用いて、検討を行った。母親と子どもに関連するいくつかの変数を調整したロジスティック回帰分析を用いて、多重代入法を行った。新生児期の短時間睡眠と母親が報告したASDの子どもの歯ぎしりの有病率との関連を評価した。 主な内容は以下のとおり。・ASDの有病率は1.2%、歯ぎしりの有病率は7.2%。・共変量で調整した後、ASD患者における歯ぎしりの有病率増加のオッズ比は1.59(95%信頼区間[CI]:1.31〜1.94)であった。・生後1ヵ月の新生児期における短時間睡眠は、ASD患者の歯ぎしりの有病率増加と有意な関連が認められた。 著者らは「ASD児に頻繁にみられる歯ぎしりの発生率増加は、とくに新生児期における短時間睡眠と関連していることが示唆された。ASD患者の歯ぎしりの発症をより理解することは、口腔疾患の予防にも有用であろう」としている。

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コーヒーを飲むなら朝が良い?/Eur Heart J

 コーヒーの適度な摂取は、全死亡や心血管疾患などのリスク低下と関連することが報告されている。しかし、摂取のタイミングの影響は明らかになっていない。そこで、米国・テュレーン大学のXuan Wang氏らの研究グループは、コーヒーを摂取する時間帯(朝、終日)と全死亡および原因別死亡リスクとの関連を検討した。その結果、朝のコーヒー摂取が全死亡および心血管死のリスク低下と関連したが、終日にわたってコーヒーを摂取する場合はその関連はみられなかった。本研究結果は、European Heart Journal誌オンライン版2025年1月8日号で報告された。 本研究は、米国の国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)に参加した18歳以上の4万725例を対象とした。参加者の24時間食事記録に基づき、コーヒー摂取の有無やタイミングで、非摂取群、朝型群(主に午前中に摂取)、終日群(朝から夜まで摂取)の3群に分類した。さらに、朝型群と終日群は摂取量(1日当たり1杯以下、1杯超2杯以下、2杯超3杯以下、3杯超)でも分類した。 主な結果は以下のとおり。・非摂取群は1万9,593例、朝型群は1万4,643例、終日群は6,489例であった。・追跡期間(中央値9.8年)中に、全死亡が4,295例、心血管死が1,268例、がん死亡が934例に発生した。・多変量解析の結果、朝型群は非摂取群と比較して全死亡(ハザード比[HR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.74~0.95)および心血管死(同:0.69、0.55~0.87)のリスクが有意に低下した。終日群ではこれらのリスク低下は認められなかった。・がん死亡リスクについては、朝型群と終日群のいずれの群でもリスク低下は認められなかった。・朝型群ではコーヒー摂取量の増加に伴って全死亡、心血管死のリスクが低下したが(いずれもp for linearity<0.001)、終日群ではコーヒー摂取量との関連はみられなかった。・非摂取群を対照した場合の朝型群、終日群のコーヒー摂取量別にみた全死亡のHR(95%CI)は以下のとおりであった。 【1杯以下】朝型群:0.85(0.71~1.01) 終日群:0.85(0.61~1.20) 【1杯超2杯以下】朝型群:0.84(0.73~0.96) 終日群:0.93(0.77~1.12) 【2杯超3杯以下】朝型群:0.71(0.60~0.86) 終日群:0.99(0.81~1.22) 【3杯超】朝型群:0.79(0.65~0.96) 終日群:0.85(0.71~1.02) 本研究結果について、著者らは「コーヒー摂取のタイミングは、コーヒー摂取量にかかわらず全死亡リスクや心血管死リスクと関連することが示された。とくに、朝にコーヒーを摂取することが、全死亡リスクの低下に強く関連していることが示唆される」とまとめた。

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日本初、認知症診療支援のための神経心理検査用プログラム発売

 大塚製薬とアイ・ブレインサイエンスは、認知症の診療支援のための神経心理検査用プログラム(商品名:ミレボ)について、2025年1月1日付で認知症領域のSaMD(Software as a Medical Device、プログラム医療機器)として初めて保険適用を取得し、1月14日より販売を開始した。 ミレボは、アイトラッキング(視線計測)技術を用いて行う神経心理検査用プログラムである。タブレット端末にインストールしたアプリ「ミレボ」を用いることにより、約3分で簡便に検査を行い、客観的な検査結果を得ることができる。また、画面に表示される質問に沿って被検者が正解の箇所を見つめることにより、データが自動的にスコア化され、定量的かつ検査者の知識や経験に依存せず客観的に評価することが可能になる。 なお、従来の認知機能検査は、患者の心理的負担(緊張、焦り、落胆、怒りなど自尊心を傷付け心理的ストレスを招きやすい)、医療者負担(時間的制約、専門スタッフの在籍)、検査者間変動(採点のバラツキ)などが課題になっているが、本プログラムはこれらを解決し、認知症の早期発見の一助になるものとして期待される。

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qSOFAによる敗血症アラートで院内死亡率が低下/JAMA

 病棟入院患者では、敗血症スクリーニングを行わない場合と比較して、quick Sequential Organ Failure Assessment(qSOFA)スコアを用いた電子的敗血症スクリーニングは、90日院内死亡率を有意に低下させ、昇圧薬治療や多剤耐性菌の発現を減少させることが、サウジアラビア・Ministry of National Guard-Health Affairs(MNG-HA)のYaseen M. Arabi氏らが実施した「SCREEN試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年12月10日号に掲載された。サウジアラビアのStepped Wedgeクラスター無作為化試験 SCREEN試験は、病棟入院患者における電子的敗血症スクリーニングによる死亡率の抑制効果の評価を目的とするStepped Wedgeクラスター無作為化試験であり、2019年10月~2021年7月にサウジアラビアの5つのMNG-HA病院で行われた(MNG-HAのKing Abdullah International Medical Research Centerによる助成を受けた)。 45の病棟(クラスター)を5病棟ずつ9つのシークエンスに無作為に割り付け、各シークエンスで介入を2ヵ月ずつずらして開始した。介入として、qSOFAの3つの構成要素(収縮期血圧≦100mmHg、呼吸数≧22回/分、グラスゴー昏睡尺度スコア<15点)のうち2つ以上を満たした場合に、電子医療記録(EMR)にアラートを発生させた。ベースラインの2ヵ月は、全病棟で医師と看護師へのアラートを非公開モードとし、その後各シークエンスで2ヵ月ごとに順次、アラートを公開モードとした。 主要アウトカムは、90日時の院内死亡率とした。副次アウトカムには、緊急事態(コードブルー)の発動、昇圧薬治療、腎代替療法の導入、多剤耐性菌の発現、Clostridioides difficileの発生など11の項目が含まれた。スクリーニング群は乳酸値検査、静脈内輸液が多い 6万55例を登録した。2万9,442例がスクリーニング群、3万613例が非スクリーニング群であった。全体の年齢中央値は59歳(四分位範囲:39~68)、3万596例(51.0%)が男性だった。 アラートは、スクリーニング群で4,299例(14.6%)、非スクリーニング群で5,394例(17.6%)に発生した。非スクリーニング群に比べスクリーニング群は、アラートから12時間以内に血清乳酸値の検査(補正後相対リスク[aRR]:1.30、95%信頼区間[CI]:1.16~1.45)および静脈内輸液の指示(2.17、1.92~2.46)を受ける可能性が高かった。 90日院内死亡率は、スクリーニング群が3.2%、非スクリーニング群は3.1%であり、両群間に差はなかった(群間差:0.0%、95%CI:-0.2~0.3)が、介入時期、病棟のクラスター化、病院、COVID-19の感染状況で補正すると、90日院内死亡率はスクリーニング群で有意に低かった(aRR:0.85、95%CI:0.77~0.93、p<0.001)。コードブルー、腎代替療法、C. difficile発生は増加 スクリーニング群では、昇圧薬治療(aRR:0.86、95%CI:0.78~0.94、p=0.002)および新規の多剤耐性菌の発現(0.88、0.78~0.99、p=0.03)が有意に低下したが、コードブルーの発動(1.24、1.02~1.50、p=0.03)、腎代替療法の導入(1.20、1.11~1.31、p<0.001)、C. difficileの新規発生(1.30、1.03~1.65、p=0.03)が有意に増加した。 著者は、「アラートによって死亡リスクの高い患者が同定された」「死亡率の低下は感染の有無にかかわらず一貫して観察されたことから、スクリーニングの効果は敗血症患者に限定されないことが示唆された」「この試験のプロトコールでは、アラート後の看護師と医療チームとのコミュニケーションが義務付けられており、これによっておそらく治療の調整と早期発見が改善されたものと考えられる」としている。

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多剤耐性結核の家庭内曝露小児、予防的レボフロキサシン投与は有効か/NEJM

 多剤耐性(MDR)結核に家庭内で曝露した小児は、レボフロキサシンによる予防的治療を受けた集団で、プラセボと比較し結核の発症率が低いもののその差は有意ではなく、Grade3または4の有害事象の頻度は同程度であることが、南アフリカ共和国・ステレンボッシュ大学のAnneke C. Hesseling氏らが実施した「TB-CHAMP試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2024年12月19・26日号で報告された。南アフリカ共和国のクラスター無作為化プラセボ対照試験 TB-CHAMP試験は、南アフリカ共和国の5施設が参加した二重盲検クラスター無作為化プラセボ対照試験であり、2017年9月~2023年1月に行われた(Unitaidなどの助成を受けた)。 対象は、細菌学的に確認されたMDR肺結核の成人に家庭内で曝露した小児であった。5歳未満はインターフェロンγ遊離試験の結果またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)への感染状態を問わず適格とし、5~17歳はインターフェロンγ遊離試験またはHIV感染が陽性の場合に適格とした。個々の世帯を試験レジメンに無作為に割り付け、これらの世帯の小児にレボフロキサシンまたはプラセボを24週間1日1回投与した。 有効性の主要エンドポイントは、無作為化から48週目までの、結核による死亡を含む結核の発症とした。安全性の主要エンドポイントは、投与期間中に発現した試験レジメンに関連する可能性があるとされたGrade3以上の有害事象であった。有効性の主要エンドポイントは1.1% vs.2.6% 922例を登録し、レボフロキサシン群に453例、プラセボ群に469例を割り付けた。全体の年齢中央値は2.8歳(四分位範囲:1.3~4.2)で、91.0%が5歳未満であり、49.2%が男児であった。各群の86%が、割り付けられた用量の80%以上の投与を受けた。 48週目までに結核を発症したのは、レボフロキサシン群5例(1.1%)、プラセボ群12例(2.6%)で、それぞれ100人年当たり1.2例(95%信頼区間[CI]:0.5~2.9)および2.9例(95%CI:1.6~5.2)であり、両群間に有意な差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.44、95%CI:0.15~1.25、p=0.12)。感度分析の結果は、この主解析と一致していた。Grade3以上の試験レジメン関連有害事象は0.9% vs.1.7% 投与期間中のGrade3以上の有害事象は、レボフロキサシン群で4例(0.9%)、プラセボ群で8例(1.7%)に発現し、担当医により試験レジメンに関連する可能性があると判定された(HR:0.52、95%CI:0.16~1.71、p=0.29)。 追跡期間中に2例(各群1例ずつ)が死亡したが、いずれも担当医によって試験レジメンまたは結核による死亡ではないと判定された。また、レボフロキサシン群の1例にGrade2の腱炎がみられたが、投与中止から21日後に治癒した。有害事象による投与中止が、レボフロキサシン群の6例(1.3%)、プラセボ群の1例(0.2%)にみられた(HR:5.00、95%CI:0.61~41.32、p=0.14)。 著者は、「これらの知見は、異なる集団における他の試験の結果と統合し、世界的な施策や実臨床に役立てる必要がある」としている。

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SBTの最適な頻度と手法は?(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 本研究は、人工呼吸器の離脱に最適な自発呼吸トライアル(SBT)の施行頻度とその手技の方法について検討された。人工呼吸管理されている患者の状態が改善し、人工呼吸器が必要とされた原因が解決したときにウィーニングが開始される。一般的には長期間人工呼吸器で管理された症例は慎重かつ徐々にウィーニングを行い、短期間であれば早期に離脱が可能である。本研究では患者が自発的に呼吸を開始し、人工呼吸器をトリガーできる能力があること、動脈血酸素分圧(PaO2)と吸入酸素濃度(FiO2)の比が200mmHg以上であること、呼吸数が35回/分以下、心拍数が140回/分以下であること、呼吸数と1回換気量の指標(Rapid Shallow Breathing Index:RSBI)が105回/分/L未満であること、人工呼吸器設定のPEEPが10cmH2O以下であることが挙げられている。 SBTスクリーニングの頻度が1日1回と頻回施行、PS SBTとTピースSBTで抜管成功までの期間が評価された。人工呼吸管理されている患者はウィーニングで人工呼吸器に依存する割合が減り、逆に呼吸仕事量が増大する。その増大した呼吸仕事量に耐えうるか、実際に抜管が可能かどうかを確認する手技がSBTである。一般的な感覚であるが、SBTは人工呼吸管理されている患者にとっても負担が掛かり、失敗した場合には十分に状態を立て直してから再度臨むべきと考える。本研究の結果からも頻回なスクリーニングは好ましくないのであろう。 PS+PEEPによるSBTと、TピースによるSBTの手技の違いも検討されている。PS SBTであれば人工呼吸器で患者の呼吸状態が詳細にモニタリングできるため、呼吸回数や換気量の変化などで状態を把握できる。Tピースは簡便であるが、吹き流しのため呼吸状態の正確なモニタリングがなされない点に注意が必要となる。初回SBTから72時間後の人工呼吸器からの離脱率を検討した2019年のJAMA誌の報告では、PS SBTとTピースによるSBTの比較で抜管成功率は、PS SBT群が82.3%、TピースによるSBT群が74.0%でPS SBT群が有意に良好であった(Subira C, et al. JAMA. 2019;321:2175-2182.)。当院でも人工呼吸管理を行っている症例のSBTは1日1回、PS SBTに沿って抜管可能かを判断している。 この試験は北米の23施設のICUで行われたが、24時間以上の侵襲的人工呼吸管理や一定以下の酸素濃度などの厳しいエントリー基準があり、全体の90%程度が除外されている。研究結果からはSBTの施行頻度や手技方法から有意差は認められなかったが、本研究結果を実際の臨床に活かすことは、医療機関の規模や機材の差異、専門スタッフや看護体制の状況などに相当左右されるであろうと推察する。

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