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年2回注射でHIV感染知らずHIV感染の治療薬として承認済みのギリアド・サイエンシズのHIVカプシド阻害薬レナカパビルの予防効果を調べた第III相試験で、半年に1回の同剤注射は2千例強の女性のHIV感染を一切許さず、毎日の経口薬服用に比べてより手っ取り早い予防手段の確かな効果が裏付けられました1)。PURPOSE 1という名称の同試験には南アフリカとウガンダの28ヵ所の生まれながらの女性(cisgender women and adolescent)5,300例超が参加しました。HIVに感染していないそれらの若い(16~25歳)女性は半年に1回のレナカパビル注射群、経口薬エムトリシタビン・テノホビル アラフェナミド(F/TAF)1日1回服用群、経口薬エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシル(F/TDF)1日1回服用群のいずれかに2対2対1の割合で割り振られました。有効なHIV予防法はすでにいくつかあることから、HIV予防の臨床試験でプラセボ群を設けることは非倫理的とおおむねみなされています。ゆえに本試験PURPOSE 1でもプラセボ群はなく、試験に集まった選定前の女性集団(世間の女性)のHIV発生率(background HIV incidence)がプラセボに代わる主たる比較対象とされ、F/TDF投与群の感染率が第2の比較対象とされました。試験の結果レナカパビル注射群の女性2,134例にHIV感染は一切生じず、その感染率(0例/100人年)は世間の女性のHIV感染率(2.41例/100人年)や1,068例中16例が感染したF/TDF投与群のHIV感染率(1.69例/100人年)に比べて有意に低いことが示されました。2,136例中39例が感染したF/TAF服用群のHIV感染率(2.02例/100人年)はF/TDFと似たりよったりで、残念ながら世間の女性に比べて有意に低いことは示せませんでした。感染予防のための経口薬の連日服用はたいてい困難なことが先立つ試験で示されています。今回の試験でのF/TAFやF/TDFの服用遵守がどうだったかは現在解析中です。レナカパビルの予防効果判明によりPURPOSE 1試験は早仕舞いとなり、F/TAFやF/TDFを服用していた被験者もレナカパビルを使えるようになります。HIV感染の恐れが大きい人へのレナカパビル年2回注射の予防効果を調べているもう1つの第III相PURPOSE 2試験の結果が今年遅くか来年早々に判明します。PURPOSE 2は米国、アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、ペルー、南アフリカ、タイで実施されており、男性として生まれた連れ合い(partner assigned male at birth)とのコンドームなしの肛門性交を受け入れている生まれながらの男性(cisgender man)、生まれたときは女性だった男性(transgender man)、生まれたときは男性だった女性(transgender woman)、無性(gender non-binary individual)の被験者3千例強(3,295例)が参加しています2)。もし成功裏となればそのPURPOSE 2の結果とPURPOSE 1の結果を使ってレナカパビルのHIV感染予防用途が承認申請されます。今回速報されたPURPOSE 1の結果の詳細は後に学会で発表されます。アナリストの調査によると、まだ感染していないがそうなる恐れが大きい人にレナカパビル年2回皮下注射は広く受け入れられそうです3)。感染予防のレナカパビル皮下注射は市場を大いに拡大し、数年のうちに年間売り上げ17億ドルを超えると同アナリストは予想しています。上述のとおりレナカパビルはHIVの治療薬として先立って承認されており、シュンレンカという製品名で販売されています。参考1)Gilead’s Twice-Yearly Lenacapavir Demonstrated 100% Efficacy and Superiority to Daily Truvada for HIV Prevention/Gilead Sciences2)PURPOSE 2試験(ClinicalTrials.gov)3)Gilead's twice-yearly HIV prevention shot hits bullseye, trial stopped early/FirstWord